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特開2024-100418心不全予測支援システム及び通知装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100418
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】心不全予測支援システム及び通知装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20240719BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240719BHJP
   G16H 10/60 20180101ALI20240719BHJP
【FI】
G16H50/20
A61B5/00 102C
G16H10/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004410
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 和重
(72)【発明者】
【氏名】山岸 宏匡
(72)【発明者】
【氏名】卯川 悟史
(72)【発明者】
【氏名】オン グアン イ
【テーマコード(参考)】
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
4C117XA01
4C117XB04
4C117XB12
4C117XC21
4C117XD24
4C117XE13
4C117XE15
4C117XE20
4C117XE23
4C117XE57
4C117XJ03
4C117XJ33
4C117XJ48
4C117XL01
5L099AA15
5L099AA21
(57)【要約】
【課題】患者の心不全を予測する際の精度を向上させること。
【解決手段】本実施形態に係る心不全予測支援システムは、第1予測部と、第2予測部と、第3予測部とを備えている。前記第1予測部は、患者の埋込デバイスから得られたデバイス計測値に基づいて、前記患者の心不全への移行の有無を予測する。前記第2予測部は、前記患者の主訴及び身体計測値に基づいて、前記患者の心不全への移行の有無を予測する。前記第3予測部は、前記第1予測部及び前記第2予測部の各々の予測結果に基づいて、前記患者の心不全への移行の有無を予測する。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の埋込デバイスから得られたデバイス計測値に基づいて、前記患者の心不全への移行の有無を予測する第1予測部と、
前記患者の主訴及び身体計測値に基づいて、前記患者の心不全への移行の有無を予測する第2予測部と、
前記第1予測部及び前記第2予測部の各々の予測結果に基づいて、前記患者の心不全への移行の有無を予測する第3予測部と、
を備えた心不全予測支援システム。
【請求項2】
前記第3予測部は、前記各々の予測結果が前記移行の有りを示し、且つ前記デバイス計測値の推移と前記主訴及び前記身体計測値の推移とが対応する場合に、前記移行の有りを予測する、請求項1記載の心不全予測支援システム。
【請求項3】
前記埋込デバイスは、心臓ペースメーカーであり、
前記デバイス計測値の推移は、前記患者の心拍数の増加を含み、
前記主訴及び前記身体計測値の推移は、前記患者の血圧の減少を含む、請求項2記載の心不全予測支援システム。
【請求項4】
前記埋込デバイスは、心臓ペースメーカーであり、
前記デバイス計測値の推移は、前記患者の胸郭インピーダンス値の低下を含み、
前記主訴及び前記身体計測値の推移は、前記患者の体重の増加を含む、請求項2記載の心不全予測支援システム。
【請求項5】
前記第3予測部が前記移行の有りを予測する場合、前記患者の担当医に対して、前記患者の経過観察又は来院通知のいずれかの指示の入力を促す画面をディスプレイに表示させる表示制御部、を更に備えた請求項1乃至4のいずれか一項に記載の心不全予測支援システム。
【請求項6】
前記来院通知の指示の入力を受け付けると、前記患者の端末に対して来院通知を送信する通知部、を更に備えた請求項5記載の心不全予測支援システム。
【請求項7】
前記第3予測部は、前記第1予測部が前記移行の無しを予測し、前記第2予測部が前記移行の有りを予測する場合に、前記患者の端末に対して、前記移行の無しを通知する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の心不全予測支援システム。
【請求項8】
前記入力を受け付けた指示に基づき、前記第3予測部の予測結果の的中又は失中を前記第1予測部及び前記第2予測部にフィードバックするフィードバック部、を更に備えた請求項5記載の心不全予測支援システム。
【請求項9】
前記第1予測部は、前記的中又は前記失中に基づいて、前記デバイス計測値のうち、前記移行の有りの予測に用いたデバイス計測値の重み付けを更新し、
前記第2予測部は、前記的中又は前記失中に基づいて、前記主訴及び前記身体計測値のうち、前記移行の有りの予測に用いた前記主訴及び前記身体計測値の重み付けを更新する、請求項8記載の心不全予測支援システム。
【請求項10】
前記第1予測部、前記第2予測部及び前記第3予測部は、クラウドシステム上に構築されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の心不全予測支援システム。
【請求項11】
患者の埋込デバイスから得られたデバイス計測値と前記患者の主訴及び身体計測値とに基づいて前記患者の心不全への移行の有無を予測するクラウドシステムから、前記移行の有無を予測した結果を取得する取得部と、
前記予測した結果が前記移行の有りを示す場合、前記患者の担当医に対して、前記患者の経過観察又は来院通知のいずれかの指示の入力を促す画面をディスプレイに表示させる表示制御部と、
を備えた通知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、心不全予測支援システム及び通知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
体内埋込式心臓ペースメーカー等を使用している患者に対し、遠隔モニタリングを用いて心不全の予測を行う場合がある。
【0003】
遠隔モニタリングでは、例えば、心臓ペースメーカーのデバイスメーカーが開設している専用ウェブサイトから、病院スタッフがデバイスメーカーのサーバー上で遠隔モニタリングデータの作成される日付、曜日や時間、あるいは所定のアラートの条件を入力して設定する。心臓ペースメーカーと関連付けられている遠隔モニタリング装置は心臓ペースメーカーと常時通信し、通常は1日1回、通常は就寝中に心臓ペースメーカーにより取得されたデータをデバイスメーカーのサーバーへ送信する。また、遠隔モニタリング装置は、24時間モニタリングにより所定のアラートを検出した場合にも心臓ペースメーカーにより取得されたデータをデバイスメーカーのサーバーへ送信する。デバイスメーカーのサーバーでは、前出の設定されたデータの送信される日付、曜日や時間のタイミングで、あるいは設定されたアラート条件を検出したタイミングで、サーバー上に、遠隔モニタリングの結果データが作成される。そして、病院スタッフは、必要に応じて専用ウェブサイトへアクセスし、サーバーに蓄積されている患者についての結果データを参照し、適宜、医師に連絡する。医師は、結果データを参照して患者の心不全への移行を予測した場合、病院スタッフを介して患者に連絡し、患者に来院を促す。なお、これに限らず、遠隔モニタリングでは、患者に対し、不調を自覚した際には自発的に来院することを勧めている。このように、遠隔モニタリングでは、患者の心不全を未然に防ぐようにしている。
【0004】
しかしながら、遠隔モニタリングにおいて、心臓ペースメーカーのデータを参照した医師による心不全の予測は、精度が低い状況にある。また、遠隔モニタリング中の患者が不調の自覚だけで心不全を自己判断することは心理的に困難である。また、患者が心不全を自己判断した場合でも、自己判断による心不全の予測は、精度が低い状況にある。そのため、医師がデータ参照により来院を促した場合でも結果として不要な受診や診察が多く医療現場のひっ迫を招いており、一方で患者は自覚に乏しい場合に心不全増悪を招き、重篤な状態になってからの救急搬送が後を絶たず、医療現場の重要課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-173652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、患者の心不全を予測する際の精度を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る心不全予測支援システムは、第1予測部と、第2予測部と、第3予測部とを備えている。前記第1予測部は、患者の埋込デバイスから得られたデバイス計測値に基づいて、前記患者の心不全への移行の有無を予測する。前記第2予測部は、前記患者の主訴及び身体計測値に基づいて、前記患者の心不全への移行の有無を予測する。前記第3予測部は、前記第1予測部及び前記第2予測部の各々の予測結果に基づいて、前記患者の心不全への移行の有無を予測する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る心不全予測支援システムの機能構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示される通知装置の機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、図1に示されるユーザ端末の機能構成を示すブロック図である。
図4図4は、一実施形態における動作を説明するための模式図である。
図5図5は、一実施形態における動作を説明するためのシーケンス図である。
図6図6は、図3に示されるユーザ端末のディスプレイで表示される患者向け画面の一例を表す図である。
図7図7は、図3に示されるユーザ端末のディスプレイで表示される患者向け画面の他の一例を表す図である。
図8図8は、図3に示されるユーザ端末のディスプレイで表示される患者向け画面のさらに他の一例を表す図である。
図9図9は、図2に示される通知装置のディスプレイで表示される医師向け画面の一例を表す図である。
図10図10は、図2に示される通知装置のディスプレイで表示される医師向け画面の他の一例を表す図である。
図11図11は、図3に示されるユーザ端末のディスプレイで表示される患者向け画面のさらに他の一例を表す図である。
図12図12は、図5に示されるステップST11を説明するための表形式の図である。
図13図13は、一実施形態の変形例に係る第1予測部が用いる第1予測テーブルの一例を表す図である。
図14図14は、一実施形態の変形例に係る第2予測部が用いる第2予測テーブルの一例を表す図である。
図15図15は、図13に示される第1予測テーブルの更新の一例を説明するための図である。
図16図16は、図13に示される第1予測テーブルの更新の他の例を説明するための図である。
図17図17は、一実施形態の変形例に係る第1予測テーブルを用いた予測の一例を説明するための図である。
図18図18は、一実施形態の変形例に係る第1予測テーブルを用いた、異常検出の取消しの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態について図面を用いて説明する。
【0010】
図1は、第1の実施形態に係る心不全予測支援システム1の機能構成の例を示すブロック図である。図1に示される心不全予測支援システム1は、病院内システム10、及びクラウドシステム20を備える。病院内システム10とクラウドシステム20とは、例えば、専用回線により接続されている。クラウドシステム20は、例えば、遠隔モニタリング装置30及びユーザ端末40に通信可能となっている。遠隔モニタリング装置30は、患者の心臓ペースメーカーと通信し、心臓ペースメーカーにより取得されたデータをクラウドシステム20へ送信する。ユーザ端末40は、患者の操作に応じて、患者の主訴及び身体計測値を含むデータをクラウドシステム20へ送信する。遠隔モニタリング装置30及びユーザ端末40によるデータ送信は、例えば、1日1回のように、連続的・定期的に行われる。
【0011】
クラウドシステム20は、遠隔モニタリング装置30及びユーザ端末40から送信されたデータを取得し、取得したデータを予め設定された共通の共通化形式に変換して蓄積する。クラウドシステム20は、例えば、所定の機能をネットワークを介して複数の装置で分担及び共同して実現するクラウドコンピューティングシステムである。
【0012】
クラウドシステム20には、デバイスメーカーにより製造され、遠隔モニタリングの対象となる患者に埋め込まれている心臓ペースメーカーにより取得されたデータが蓄積されている。例えば、心臓ペースメーカーと関連付けられている遠隔モニタリング装置30は、心臓ペースメーカーと常時通信し、通常は1日1回、例えば就寝中に、心臓ペースメーカーにより取得されたデータをクラウドシステム20へ送信する。また、遠隔モニタリング装置30は、24時間モニタリングにより所定のアラートを検出した場合にも心臓ペースメーカーにより取得されたデータをクラウドシステム20へ送信する。
【0013】
クラウドシステム20は、遠隔モニタリング装置30から受信したデータに基づき、予め設定された頻度で、又は受信したデータが所定の要件を満たす場合、遠隔モニタリングの結果データを作成して蓄積する。
【0014】
遠隔モニタリング装置30からクラウドシステム20へ送信されるデータは、例えば、予め設定された規格に準拠している。予め設定された規格は、例えば、IHE(Integrating the Healthcare Enterprise)が定めるIDCO(Implantable Device Cardiac Observation)を用いて記述されたHL7(Health Level 7)である。なお、予め設定された規格は、情報交換のための規格であれば、HL7に限定されない。HL7に準拠して送信されるデータには、遠隔モニタリングに関する種々の情報、例えば、監視対象となる患者に関する患者情報、及び計測に関する計測情報等が含まれる。
【0015】
患者情報は、例えば、患者を特定するための患者特定情報を含む。患者特定情報は、患者名であっても、所定の番号であっても構わない。なお、患者情報に含まれる情報は、これに限定されない。例えば、患者情報には、デバイスメーカーの名称を表すメーカー名、デバイスの名称を表すデバイス名、デバイスの種類、及びデバイスのシリアル番号等が含まれていても構わない。
【0016】
計測情報は、例えば、心臓ペースメーカーから遠隔モニタリング装置30へ送信されたデータに含まれるデータ記録期間(セッションと呼ぶ)のセッション開始時刻を表すセッション日時、セッションの継続時間、心臓ペースメーカーから送信されたデータに基づいたアラートレベルを表すアラートステータス、心臓ペースメーカーから送信されたアラートについて記述するアラートディスクリプション、並びに、心臓ペースメーカーで計測された計測項目及びこの計測項目についてのデバイス計測値等を含む。なお、計測情報に含まれる情報は、これらに限定されない。例えば、いずれかの情報がなくても構わないし、新たな情報が加わっていても構わない。また、1回の送信に含まれる、セッション日時、セッションの継続時間、アラートステータス、アラートディスクリプション、並びに、計測項目及びデバイス計測値等は、1回のセッションで心臓ペースメーカーから取得されるデータに限定されない。複数のセッションデータが、1回の送信に含まれていても構わない。
【0017】
心臓ペースメーカーで計測された計測項目としては、例えば、AF/ATバーデン、ペーシング率、及びリードセンス情報等、複数のパラメータが挙げられる。特に心不全の予兆の計測項目には、心拍数、安静時または就寝時心拍数、胸郭インピーダンス値、重篤な期外収縮率、呼吸数、VT/VFイベント発生有無や回数、当該セッションまたは過去の複数セッションに基づく統計結果が含まれていても構わない。AFは、心房細動(atrial fibrillation)の略語である。ATは、心房頻拍(atrial tachycardia)の略語である。VTは、心室頻拍(ventricular fibrillation)の略語である。VFは、心室細動(ventricular tachycardia)の略語である。
【0018】
遠隔モニタリング装置30から送信されるデータには、監視対象となる患者について計測された情報が詳細に記載された詳細情報が添付されていても構わない。なお、詳細情報には、過去に計測された情報(一般的には長期の推移を示すトレンドに関する情報やグラフ)が含まれていても構わない。詳細情報は、例えば、PDF形式のデータファイルで添付される。
【0019】
ユーザ端末40から送信されるデータには、患者の主訴(例、現在の体調、体調の変化、悪い体調の項目)及び身体計測値(例、体重、最高血圧、最低血圧、心拍数、体温、と身体計測を行った室温)が含まれている。
【0020】
クラウドシステム20は、ネットワークを介して複数の装置で分担及び協働することで、例えば、上記データを蓄積する機能と共に、第1予測機能21、第2予測機能22及び第3予測機能23を備えている。言い換えると、第1予測機能21、第2予測機能22及び第3予測機能23は、クラウドシステム20上に構築されている。
【0021】
第1予測機能21は、患者の埋込デバイス(心臓ペースメーカー)から得られたデバイス計測値に基づいて、患者の心不全への移行の有無を予測する。第1予測機能21は、第1予測部の一例である。
【0022】
第2予測機能22は、患者の主訴及び身体計測値に基づいて、患者の心不全への移行の有無を予測する。第2予測機能22は、第2予測部の一例である。
【0023】
第3予測機能23は、第1予測機能21及び第2予測機能22の各々の予測結果に基づいて、患者の心不全への移行の有無を予測する。例えば、第3予測機能23は、第1予測機能21及び第2予測機能22の各々の予測結果を常時突合し、両者の予測結果が特定条件に合致する場合に、心不全への移行可能性が高いと予測する。例えば、第3予測機能23は、当該各々の予測結果が当該移行の有りを示し、且つデバイス計測値の推移と主訴及び身体計測値の推移とが対応する場合に、当該移行の有りを予測するようにしてもよい。当該対応する場合、例えば、デバイス計測値の推移は、患者の心拍数の増加を含み、主訴及び身体計測値の推移は、患者の血圧の減少を含んでもよい。また例えば、当該対応する場合、デバイス計測値の推移は、患者の胸郭インピーダンス値の低下を含み、主訴及び身体計測値の推移は、患者の体重の増加を含んでもよい。なお、第3予測機能23は、第1予測機能21が当該移行の無しを予測し、第2予測機能22が当該移行の有りを予測する場合に、患者のユーザ端末40に対して、当該移行の無しを通知してもよい。第3予測機能23は、第3予測部の一例である。
【0024】
図1に示される病院内システム10は、病院内で構築されるシステムである。病院内システム10は、例えば、通知装置11、部門サーバー12、病院情報システム13、及び通信端末14を備える。通知装置11は、クラウドシステム20と専用回線により接続され、部門サーバー12及び病院情報システム(HIS:Hospital Information System)13のHISサーバー131とそれぞれ接続されている。部門サーバー12とHISサーバー131とは、LAN(Local Area Network)等の病院内ネットワークを介してデータ通信可能に接続されている。なお、病院内ネットワークへの接続は、有線接続、及び無線接続を問わない。
【0025】
部門サーバー12は、循環器部門情報システムで用いられるサーバーである。循環器部門情報システムは、診療部門の一つである循環器部門において、例えば、埋込みデバイスに関する情報等を管理するシステムである。部門サーバー12は、通知装置11から出力されるデータを内部に設けられるメモリに記憶する。
【0026】
なお、図1では、部門サーバー12が1台である場合を例に示しているが、これに限定されない。部門サーバー12は、必要に応じて複数設けられていても構わない。
【0027】
病院情報システム13は、例えば、電子カルテに係る情報を管理するシステムである。病院情報システム13は、例えば、HISサーバー131を有する。HISサーバー131は、病院情報システム13において、電子カルテに係る情報を記憶している。HISサーバー131は、例えば、医師から入力される情報に基づき、記憶している情報を更新する。
【0028】
なお、図1では、病院情報システム13に含まれるサーバーがHISサーバー131のみである場合を例に示しているが、これに限定されない。HISサーバー131は、必要に応じて複数設けられていても構わない。例えば、HISサーバー131は、管理する情報毎に設けられても構わない。具体的には、例えば、病院情報システム13は、電子カルテシステム、及び、オーダエントリシステムを有しており、システム毎にサーバーが設けられていても構わない。
【0029】
通信端末14は、例えば、医師が院内LANに接続されているシステム及びサーバー等へアクセスするための端末である。なお、図1では、通信端末14は、病院情報システム13、及び部門情報システムのいずれにも属していない場合を示しているが、これに限定されない。通信端末14は、医師等のユーザが使用可能であれば、病院情報システム13、及び部門情報システムのいずれに属していても構わない。
【0030】
通知装置11は、クラウドシステム20で記憶されるデータを取得し、取得したデータを効率的な形式で医師又は医療スタッフに表示する。本実施形態において、医療スタッフとは、例えば、医療デバイスが専門の臨床工学技士及び看護師を含む。なお、図1では、病院内システム10に含まれる通知装置11が1台のみである場合を例に示しているが、これに限定されない。通知装置11は、複数設けられていても構わない。
【0031】
図2は、図1に示される通知装置11の機能構成の例を示すブロック図である。図2に示される通知装置11は、処理回路111、メモリ112、入力インタフェース113、ディスプレイ114、及び通信インタフェース115を有する。処理回路111、メモリ112、入力インタフェース113、ディスプレイ114、及び通信インタフェース115は、例えば、バスを介して互いに通信可能に接続されている。
【0032】
処理回路111は、通知装置11の中枢として機能するプロセッサである。処理回路111は、メモリ112等に記憶されている、プログラムを実行することにより、当該プログラムに対応する機能を実現する。
【0033】
メモリ112は、例えば、種々の情報を記憶するROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、及び集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、メモリ112は、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、及びフラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。なお、メモリ112は、必ずしも単一の記憶装置により実現される必要は無い。例えば、メモリ112は、複数の記憶装置により実現されても構わない。また、メモリ112は、通知装置11と接続された他のコンピュータ内にあってもよい。
【0034】
メモリ112は、本実施形態に係るプログラム等を記憶している。プログラムは、例えば、メモリ112に予め記憶されていてもよい。また、例えば、非一過性の記憶媒体に記憶されて配布され、非一過性の記憶媒体から読み出されてメモリ112にインストールされてもよい。また、メモリ112には、クラウドシステム20から読み出され、処理回路111で処理されたデータを記憶する。
【0035】
メモリ112は、遠隔モニタリングの対象となっている患者についての患者情報を記憶している。例えば、メモリ112は、患者情報として、患者ID、患者名、性別、生年月日、患者についてのその他の情報、メーカー名、デバイス名、デバイス種類、シリアル番号、コメント、操作履歴、最終データ取得日、フォローの有無、及び最後に表示した計測・統計データの内容を記憶している。なお、患者情報はこれらに限定されない。例えば、いずれかの情報がなくても構わないし、新たな情報が加わっても構わない。患者情報は、例えば、部門サーバー12又は病院情報システム13からの指示により更新される。
【0036】
入力インタフェース113は、ユーザから各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路111へ出力する。入力インタフェース113は、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド、及び操作面へ触れることで指示が入力されるタッチパネル等の入力機器に接続されている。また、入力インタフェース113に接続される入力機器は、ネットワーク等を介して接続された他のコンピュータに設けられた入力機器でもよい。
【0037】
ディスプレイ114は、処理回路111からの指示に従って種々の情報を表示する。ディスプレイ114は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等、任意のディスプレイが適宜利用可能である。
【0038】
通信インタフェース115は、クラウドシステム20、部門サーバー12、及びHISサーバー131との間でデータ通信を行う。例えば、通信インタフェース115は、例えば、専用回線を利用した任意の規格に則り、クラウドシステム20とデータ通信を行う。また、通信インタフェース115は、予め設定されている既知の規格に則り、部門サーバー12、及びHISサーバー131とデータ通信を行う。
【0039】
図2に示される処理回路111は、例えば、メモリ112に記憶されているプログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。例えば、処理回路111は、取得機能1111、表示制御機能1112、通知機能1113、及びフィードバック機能1114を有する。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによって取得機能1111、表示制御機能1112、通知機能1113、及びフィードバック機能1114が実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより取得機能1111、表示制御機能1112、通知機能1113、及びフィードバック機能1114を実現しても構わない。
【0040】
取得機能1111は、クラウドシステム20に蓄積されるデータや予測結果を取得する機能であり、取得部の一例である。具体的には、例えば、取得機能1111において処理回路111は、予め設定された周期で、クラウドシステム20に記憶されるデバイス計測値などのデータ、主訴及び身体計測値などのデータを取得する。また、処理回路111は、例えば、医師又は医療スタッフ等から入力される指示に従い、クラウドシステム20に記憶されるPDFデータ、テキストデータ、又はこれらの両方を取得する。また例えば、取得機能1111は、患者の埋込デバイスから得られたデバイス計測値と患者の主訴及び身体計測値とに基づいて患者の心不全への移行の有無を予測するクラウドシステム20から、当該移行の有無を予測した結果を取得する。
【0041】
表示制御機能1112は、メモリ112に記憶されているデータに基づき、所望の情報をディスプレイ114に表示させる機能であり、表示制御部の一例である。具体的には、例えば、表示制御機能1112において処理回路111は、医師又は医療スタッフから入力される指示に従い、医師又は医療スタッフが所望する内容でデータを表示する。また、処理回路111は、医師又は医療スタッフから入力される指示に従い、メモリ112に記憶されているデータを分類し、又はメモリ112に記憶されているデータから所望のデータを抽出して表示する。また例えば、表示制御機能1112において処理回路111は、第3予測機能23により予測した結果が当該移行の有りを示す場合、患者の担当医に対して、患者の経過観察又は来院通知のいずれかの指示の入力を促す画面をディスプレイ114に表示させる。来院通知は、心不全に備えた診察を要する診察通知に限らず、心不全に備えた入院を表す入院通知を含んでもよい。
【0042】
通知機能1113は、医師の操作に応じて、心不全への移行が予測された患者のユーザ端末40に来院通知を送信する。具体的には、例えば、通知機能1113において処理回路111は、患者の経過観察又は来院通知のいずれかの指示の入力を促す画面の表示中、来院通知の指示の入力を受け付けると、患者のユーザ端末40に対して来院通知を送信する。通知機能1113は、通知部の一例である。
【0043】
フィードバック機能1114は、入力を受け付けた指示に基づき、第3予測機能23の予測結果の的中又は失中を第1予測機能21及び第2予測機能22にフィードバックする。フィードバック機能1114は、フィードバック部の一例である。
【0044】
図3は、図1に示されるユーザ端末40の機能構成の例を示すブロック図である。図3に示されるユーザ端末40は、処理回路41、メモリ42、入力インタフェース43、ディスプレイ44、及び通信インタフェース45を有する。処理回路41、メモリ42、入力インタフェース43、ディスプレイ44、及び通信インタフェース45は、例えば、バスを介して互いに通信可能に接続されている。
【0045】
処理回路41は、ユーザ端末40の中枢として機能するプロセッサである。処理回路41は、メモリ42等に記憶されている、プログラムを実行することにより、当該プログラムに対応する機能を実現する。
【0046】
メモリ42は、例えば、種々の情報を記憶するROM、RAM、HDD、SSD、及び集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、メモリ42は、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、及びフラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。なお、メモリ42は、必ずしも単一の記憶装置により実現される必要は無い。例えば、メモリ42は、複数の記憶装置により実現されても構わない。また、メモリ42は、ユーザ端末40と接続された他のコンピュータ内にあってもよい。
【0047】
メモリ42は、本実施形態に係るプログラム等を記憶している。プログラムは、例えば、メモリ42に予め記憶されていてもよい。また、例えば、非一過性の記憶媒体に記憶されて配布され、非一過性の記憶媒体から読み出されてメモリ42にインストールされてもよい。また、メモリ42には、通知装置11から送信された来院通知、クラウドシステム20から送信された経過観察通知、処理回路41で処理されたデータを記憶する。
【0048】
入力インタフェース43は、ユーザから各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路41へ出力する。入力インタフェース43は、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド、及び操作面へ触れることで指示が入力されるタッチパネル等の入力機器に接続されている。また、入力インタフェース43に接続される入力機器は、ネットワーク等を介して接続された他のコンピュータに設けられた入力機器でもよい。
【0049】
ディスプレイ44は、処理回路41からの指示に従って種々の情報を表示する。ディスプレイ44は、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等、任意のディスプレイが適宜利用可能である。
【0050】
通信インタフェース45は、クラウドシステム20、通知装置11との間でデータ通信を行う。例えば、通信インタフェース45は、例えば、専用回線を利用した任意の規格に則り、クラウドシステム20とデータ通信を行う。また、通信インタフェース45は、予め設定されている既知の規格に則り、通知装置11とデータ通信を行う。
【0051】
図3に示される処理回路41は、例えば、メモリ42に記憶されているプログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。例えば、処理回路41は、管理機能411、及び表示制御機能412を有する。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによって管理機能411、及び表示制御機能412が実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより管理機能411、及び表示制御機能412を実現しても構わない。あるいは、管理機能411を実現するユーザ端末40と、表示制御機能412を実現するユーザ端末40とを別々の装置として設けてもよい。
【0052】
管理機能411は、患者の操作に応じて、入力された主訴及び身体計測値を管理する機能である。具体的には、例えば、管理機能411において処理回路41は、入力された主訴及び身体計測値をメモリ42に保存して管理すると共に、メモリ42内の主訴及び身体計測値などのデータをクラウドシステム20に送信する。
【0053】
表示制御機能412は、メモリ42に記憶されているデータに基づき、所望の情報をディスプレイ44に表示させる機能である。具体的には、例えば、表示制御機能412において処理回路41は、主訴及び身体計測値を入力するための患者向け画面をディスプレイ44に表示する。また、処理回路41は、通知装置11又はクラウドシステム20から受けた来院通知又は経過観察通知を含む患者向け画面をディスプレイ44に表示する。
【0054】
次に、以上のように構成された心不全予測支援システム1の動作について図4乃至図12を参照しながら説明する。なお、図4及び図5は、心不全予測支援システム1の全体的な動作の説明に用い、図6乃至図12は、ユーザ端末40、通知装置11又はクラウドシステム20の動作の説明に用いる。
【0055】
図4及び図5に示すように、ステップST1において、遠隔モニタリング装置30は、患者の心臓ペースメーカーと通信し、心臓ペースメーカーにより取得されたデバイス計測値を含むデータをクラウドシステム20へ送信する。
【0056】
ステップST1の後、ステップST2において、クラウドシステム20は、デバイス計測値を含むデータを受信すると、第1予測機能21により、受信したデバイス計測値に基づいて、患者の心不全への移行の有無を予測し、予測結果を得る。具体的には例えば、以下の如き、予測事例HF1、HF2が挙げられる。
【0057】
(第1予測機能21による予測事例HF1)
心不全を起こす主たる要因の一つに、胸郭内に貯留する胸水が増加し、心嚢が圧迫され、拍出機能が低下し、心不全に至る場合がある。拍出機能が低下する場合、安静時においても血液循環不足を補償するために、安静時(就寝時)心拍数の増大が起こる。過去の複数セッションに基づく統計結果から得られる安静時心拍数の顕著かつ継続的な増加を示すデバイス計測値の推移が複数日に亘って得られる場合、第1予測機能21は、心不全の予兆として、心不全への移行有りを予測する。
【0058】
(第1予測機能21による予測事例HF2)
心不全を起こす主たる要因の一つに、胸郭内に貯留する胸水が増加し、心嚢が圧迫され、拍出機能が低下し、心不全に至る場合がある。胸郭内に貯留する胸水が増加する場合、導電性のある胸水が増えるため、胸郭部の電気的インピーダンスの低下が起こる。埋込デバイス(心臓ペースメーカー)は、体表のデバイス本体での計測、またはリードとデバイス本体間の胸郭内電気的インピーダンスを継続的に計測する。過去の複数セッションに基づく統計結果から得られる胸郭インピーダンス値の顕著かつ継続的な低下を示すデバイス計測値の推移が複数日に亘って得られる場合、第1予測機能21は、心不全の予兆として、心不全への移行有りを予測する。
【0059】
ステップST2の後、ステップST3において、ユーザ端末40は、患者の操作に応じて、主訴及び身体計測値などのデータを入力してメモリ42に保存すると共に、当該データをクラウドシステム20に送信する。例えば、ユーザ端末40の処理回路41は、表示制御機能412により、図6乃至図8に示すように、患者の操作に応じて、心不全の予測に寄与する主訴及び身体計測値を入力するための患者向け画面ps1~ps3を順にディスプレイ44に表示させる。
【0060】
図6に示す患者向け画面ps1は、主訴としての現在の体調及び体調の変化をそれぞれ入力するためのラジオボタンrb1,rb2と、緊急通知を送信するための緊急ボタンbt1と、次画面へ遷移する遷移ボタンbt2とを含んでいる。ラジオボタンrb1は、現在の体調として、「かなり良い」、「良い」、「悪い」、「かなり悪い」を選択的に入力可能となっている。ラジオボタンrb2は、体調の変化として、「良くなってきている」、「変化なし」、「昨日よりわるそう」、「昨日よりひどく悪くなった」を選択的に入力可能となっている。
【0061】
図7に示す次画面としての患者向け画面ps2は、主訴としての悪い体調の項目を入力するためのチェックボックスcbと、次画面へ遷移する遷移ボタンbt3とを含んでいる。チェックボックスcbは、悪い体調の項目として、「息切れがする」、「動悸がする」、「むくみがある」、「疲労感がある」、「手足の冷え、冷感がある」、「胸やお腹に痛みがある」を選択的に入力可能となっている。
【0062】
図8に示す次画面としての患者向け画面ps3は、身体計測値を入力するための入力領域iaと、入力した主訴及び身体計測値を保存及び送信するための送信ボタンbt4とを含んでいる。入力領域iaは、身体計測値として、体重、最高血圧、最低血圧、心拍数、体温、(身体計測を行った)室温を入力可能となっている。
【0063】
ステップST3の後、ステップST4において、クラウドシステム20は、主訴及び身体計測値を含むデータを受信すると、第2予測機能22により、受信した主訴及び身体計測値に基づいて、患者の心不全への移行の有無を予測し、予測結果を得る。具体的には例えば、以下の如き、予測事例HF3、HF4が挙げられる。
【0064】
(第2予測機能22による予測事例HF3)
心不全を起こす主たる要因の一つに、胸郭内に貯留する胸水が増加し、心嚢が圧迫され、拍出機能が低下し、心不全に至る場合がある。拍出機能が低下する場合、計測される血圧の低下が起こる場合がある。拍出機能が低下する場合、末梢血管での血流量低下を招き、結果として手足の冷え、冷感が増すことがある。身体計測デバイスが継続的に血圧値を計測してユーザ端末40に自動入力するか、または患者が継続的に血圧値をユーザ端末40に手動入力する。これにより、血圧値の顕著かつ継続的減少を示す身体計測値の推移が複数日に亘って得られた場合、かつ、患者自身の手足の冷え、冷感が増す感覚を示す主訴が得られた場合、第2予測機能22は、心不全の予兆として、心不全への移行有りを予測する。
【0065】
(第2予測機能22による予測事例HF4)
心不全を起こす主たる要因の一つに、胸郭内に貯留する胸水が増加し、心嚢が圧迫され、拍出機能が低下し、心不全に至る場合がある。腎機能が低下した場合、身体の水分の排出機能が低下して浮腫(むくみ)、結果として胸郭内に貯留する胸水増加がおこり、体重増加が起こる。身体計測デバイスが継続的に体重を計測してユーザ端末40に自動入力するか、または患者が継続的に体重をユーザ端末40に手動入力する。これにより、体重の顕著かつ継続的増加を示す身体計測値の推移が複数日に亘って得られ、かつ、患者自身のむくみの自覚や腎機能低下に伴いやすい倦怠感を示す主訴が得られた場合、第2予測機能22は、心不全の予兆として、心不全への移行有りを予測する。
【0066】
ステップST4の後、ステップST5において、クラウドシステム20は、第3予測機能23により、ステップST2,ST4の各々の予測結果に基づいて、患者の心不全への移行の有無を予測し、予測結果を得る。例えば、クラウドシステム20は、第3予測機能23により、当該各々の予測結果が一致して当該移行の有りを示し、且つデバイス計測値の推移と主訴及び身体計測値の推移とが対応する場合に、当該移行の有りを示す予測結果を得る。当該対応する場合、例えば、デバイス計測値の推移は、予測事例HF1に示す如き、患者の心拍数の増加を含み、主訴及び身体計測値の推移は、予測事例HF3に示す如き、患者の血圧の減少を含んでいる。また例えば、当該対応する場合、デバイス計測値の推移は、予測事例HF2に示す如き、患者の胸郭インピーダンス値の低下を含み、主訴及び身体計測値の推移は、予測事例HF4に示す如き、患者の体重の増加を含んでいる。
【0067】
ステップST5の結果、心不全への移行の有りを示す予測結果を得た場合、ステップST6に移行する。また、ステップST5の結果、心不全への移行の無しを示す予測結果を得た場合、ステップST9に移行する。
【0068】
ステップST5の後、ステップST6において、クラウドシステム20は、心不全への移行の有りを示す予測結果を通知装置11に送信する。
【0069】
ステップST6の後、ステップST7において、通知装置11の処理回路111は、取得機能1111により、クラウドシステム20に蓄積されるデータや予測結果を取得してメモリ112に保存する。また、処理回路111は、表示制御機能1112により、メモリ112に保存されているデータに基づき、所望の情報をディスプレイ114に表示させる。例えば、処理回路111は、表示制御機能1112により、図9に示すように、患者の担当医の操作に応じて、クラウドシステム20により心不全への移行の有無を予測した結果を示す医師向け画面ds1をディスプレイ114に表示させる。図9中、予測した結果は、「計測値・主訴共に90%以上の確度で心不全予兆または状況です」というテキストで表示されている。また、医師向け画面ds1は、例えば、不整脈イベントトレンドを表すグラフ及び心拍ヒストグラムと、次画面への遷移ボタンbt11とを含んでいる。処理回路111は、医師向け画面ds1中、遷移ボタンbt11の操作に応じて、図10に示す医師向け画面ds2をディスプレイ114に表示させる。医師向け画面ds2は、クラウドシステム20により予測した結果が当該移行の有りを示す場合、患者の担当医に対して、患者の経過観察又は来院通知のいずれかの指示の入力を促す画面である。医師向け画面ds2は、例えば、患者の主訴が推移する状況を時系列に沿って示すグラフと、経過観察の指示を入力する経過観察ボタンbt12と、来院通知の指示を入力する来院通知ボタンbt13とを含んでいる。しかる後、処理回路111は、医師向け画面ds2の表示中、担当医の操作に応じて、来院通知の指示の入力を受け付けると、患者のユーザ端末40に対して来院通知を送信する。これにより、患者のユーザ端末40は、受信した来院通知に基づき、図11に示すように、来院を促す患者向け画面ps4をディスプレイ44に表示する。図11に示す患者向け画面ps4は、例えば、2段階の来院通知「すぐに救急車を手配ください」、「至急受診を検討してください」のうち、図9に示した予測の確度が高い状況に応じて、より緊急性の高い方の来院通知を表している。また、患者向け画面ps4は、患者の確認済みを通知装置11に返信するための確認ボタンbt5を含んでいる。患者のユーザ端末40は、受認ボタンbt5の操作により、確認済みを通知装置11に返信する。通知装置11は、確認済みの返信を受けると、図10に示すように、「緊急来院通知済み、通知を患者確認済み」といったメッセージmsgを医師向け画面ds2に表示する。当該メッセージmsgは、通知装置11を操作する医師に視認される。
【0070】
ステップST7の後、ステップST8において、通知装置11の処理回路111は、医師の操作に応じて、第3予測機能23の予測結果の的中又は失中をフィードバックする指示の入力を受け付ける。また、処理回路111は、フィードバック機能1114により、入力を受け付けた指示に基づき、予測結果の的中又は失中をクラウドシステム20の第1予測機能21及び第2予測機能22にフィードバックする。クラウドシステム20は、第1予測機能21により、フィードバックされた的中又は失中に基づいて、デバイス計測値のうち、移行の有りの予測に用いたデバイス計測値の重み付けを更新する。また、クラウドシステム20は、第2予測機能22により、フィードバックされた的中又は失中に基づいて、主訴及び身体計測値のうち、移行の有りの予測に用いた主訴及び身体計測値の重み付けを更新する。
【0071】
ステップST8の後、ステップST9において、クラウドシステム20は、第3予測機能23により、第2予測機能22が移行の有りを予測したか否かに応じて、主訴・身体計測値に基づく予測の有無を判定する。この判定の結果、主訴・身体計測値に基づく予測が有る場合(ステップST9:Yes)には、ステップST10に移行する。また、ステップST9の判定の結果、主訴・身体計測値に基づく予測が無い場合(ステップST9:No)には、ステップST11に移行する。
【0072】
ステップST10において、クラウドシステム20は、第3予測機能23により、患者のユーザ端末40に対して、心不全の移行の無しを通知する。患者のユーザ端末40は、心不全の移行の無しが通知されると、図11に示した患者向け画面ps4のうち、心不全への移行の無しを示す通知「心不全の心配は少ないです」を有効にして表示する。患者のユーザ端末40は、受認ボタンbt5の操作により、確認済みをクラウドシステム20に返信する。
【0073】
ステップST9の後、ステップST11において、クラウドシステム20は、第3予測機能23により、第1予測機能21及び第2予測機能22の各々の予測結果などに応じて、医師の通知装置11及び患者のユーザ端末40に通知を行う。この通知は、例えば、図12に示すように、第1予測機能21の予測結果(移行の有無)、第2予測機能22の予測結果(移行の有無)、デバイス計測値なし、主訴・身体計測値なし、を組合せたケース1乃至9に応じて行われる。ステップST11では、ケース3乃至9が行われる。
【0074】
ケース1は、第2予測機能22の予測結果(移行有り)と、第1予測機能21の予測結果(移行有り)との組合せである。ケース1は、ステップST6,ST7に述べたように、心不全への移行有りの旨が医師及び患者に通知される。
【0075】
ケース2は、第2予測機能22の予測結果(移行有り)と、第1予測機能21の予測結果(移行無し)との組合せである。ケース2は、ステップST10に述べたように、心不全への移行無しの旨が患者に通知される。
【0076】
ケース3は、第2予測機能22の予測結果(移行有り)と、デバイス計測値なしとの組合せである。ケース3は、「デバイス計測値なし、遠隔モニタリング装置30の至急確認依頼」の旨が患者のユーザ端末40に通知される。患者への通知に伴い、医師の通知装置11には、注意喚起のメッセージが通知される。
【0077】
ケース4は、第2予測機能22の予測結果(移行無し)と、第1予測機能21の予測結果(移行有り)との組合せである。ケース4は、医師の通知装置11に、注意喚起のメッセージが通知される。患者への通知の有無は、医師の判断による。
【0078】
ケース5は、第2予測機能22の予測結果(移行無し)と、第1予測機能21の予測結果(移行無し)との組合せである。ケース5は、問題ない状況であり、医師及び患者への通知はない。
【0079】
ケース6は、第2予測機能22の予測結果(移行無し)と、デバイス計測値なしとの組合せである。ケース6は、「デバイス計測値なし、遠隔モニタリング装置30の至急確認依頼」の旨が患者のユーザ端末40に通知される。患者への通知に伴い、医師の通知装置11に、注意喚起のメッセージが通知される。
【0080】
ケース7は、主訴・身体計測値なしと、第1予測機能21の予測結果(移行有り)との組合せである。ケース7は、医師の通知装置11に、注意喚起のメッセージが通知される。患者への通知の有無は、医師の判断による。
【0081】
ケース8は、主訴・身体計測値なしと、第1予測機能21の予測結果(移行無し)との組合せである。ケース8は、医師の通知装置11に、主訴・身体計測値なし、が通知される。患者への通知の有無は、医師の判断による。
【0082】
ケース9は、主訴・身体計測値なしと、デバイス計測値なしとの組合せである。ケース9は、両データがない状況であり、緊急対応が必要かどうかを含めて、医師の判断による。
【0083】
ステップST11の後、前述したステップST1以降の処理が繰り返し実行される。
【0084】
上述したように一実施形態によれば、心不全予測支援システム1において、第1予測機能21は、患者の埋込デバイスから得られたデバイス計測値に基づいて、患者の心不全への移行の有無を予測する。第2予測機能22は、患者の主訴及び身体計測値に基づいて、患者の心不全への移行の有無を予測する。第3予測機能23は、第1予測機能21及び第2予測機能22の各々の予測結果に基づいて、患者の心不全への移行の有無を予測する。このように、患者が入力できない客観的なデータであるデバイス計測値と、患者が入力可能な主観的なデータである主訴及び身体計測値とに基づいて、心不全への移行の有無を予測する構成により、患者の心不全を予測する際の精度を向上させることができる。これにより、不要な受診や診察を抑制でき、また、患者が気のせいかと迷っていても、緊急性のある状況を効果的に検出し、診察や入院を促すことで重篤な状態への移行を未然に防ぐことができる。
【0085】
また、一実施形態によれば、第3予測機能23は、各々の予測結果が上記移行の有りを示し、且つデバイス計測値の推移と主訴及び身体計測値の推移とが対応する場合に、移行の有りを予測してもよい。この場合、前述した効果に加え、客観的なデータと主観的なデータとの時系列的な変化(推移)が対応する旨を確認することから、より精度の向上を図ることができる。
【0086】
また、一実施形態によれば、埋込デバイスは心臓ペースメーカーであり、デバイス計測値の推移は患者の心拍数の増加を含み、主訴及び身体計測値の推移は患者の血圧の減少を含んでもよい。この場合、前述した効果に加え、心不全への移行有りを予測した根拠として、血液循環不足に起因した複数の状況を整合的に確認することができる。
【0087】
また、一実施形態によれば、埋込デバイスは心臓ペースメーカーであり、デバイス計測値の推移は患者の胸郭インピーダンス値の低下を含み、主訴及び身体計測値の推移は患者の体重の増加を含んでもよい。この場合、前述した効果に加え、心不全への移行有りを予測した根拠として、腎機能の低下に伴う水分排出機能の低下に起因した複数の状況を整合的に確認することができる。
【0088】
また、一実施形態によれば、通知装置11の処理回路111は、第3予測機能23が移行の有りを予測する場合、表示制御機能1112により、患者の担当医に対して、患者の経過観察又は来院通知のいずれかの指示の入力を促す画面をディスプレイ114に表示させてもよい。これにより、前述した効果に加え、第3予測機能23の予測結果を担当医が確認できるので、より一層、精度の向上を図ることができる。
【0089】
また、一実施形態によれば、通知装置11の処理回路111は、通知機能1113により、来院通知の指示の入力を受け付けると、患者のユーザ端末40に対して来院通知を送信してもよい。この場合、前述した効果に加え、心不全への移行有りが予測される状況において、至急、患者に来院を促すことができる。
【0090】
また、一実施形態によれば、第3予測機能23は、第1予測機能21が移行の無しを予測し、第2予測機能22が移行の有りを予測する場合に、患者のユーザ端末40に対して、移行の無しを通知してもよい。これにより、前述した効果に加え、客観的なデータから心不全への移行がなく、主観的なデータから心不全への移行がある状況において、患者の気のせいによる無用な心配を解消することができる。
【0091】
また、一実施形態によれば、通知装置11の処理回路111は、フィードバック機能1114により、入力を受け付けた指示に基づき、第3予測機能23の予測結果の的中又は失中を第1予測機能21及び第2予測機能22にフィードバックしてもよい。この場合、担当医による経過観察の指示の入力に応じて失中を、来院通知の指示の入力に応じて的中を、それぞれフィードバックできる。従って、前述した効果に加え、フィードバックされた的中又は失中に基づき、第1予測機能21及び第2予測機能22の各々による次回以降の予測精度の向上を図ることができる。
【0092】
また、一実施形態によれば、第1予測機能21は、フィードバックされた的中又は失中に基づいて、デバイス計測値のうち、移行の有りの予測に用いたデバイス計測値の重み付けを更新する。また、第2予測機能22は、フィードバックされた的中又は失中に基づいて、主訴及び身体計測値のうち、移行の有りの予測に用いた主訴及び身体計測値の重み付けを更新する。従って、前述した効果に加え、患者の疾病態様ごとに異常値の発生傾向が異なる状況において、医師の診断結果をフィードバックすることにより、より対象となる患者毎に得られる異常計測値にカスタマイズした予測精度の向上を図ることができる。補足すると、年齢や既往症などに応じて心不全の予兆が異なる複数の患者に関し、心不全への移行の有無を予測する主訴の項目や計測値の項目の重み付けを患者毎に調整できるので、患者固有の予測精度の向上を図ることができる。
【0093】
また、一実施形態によれば、第1予測機能21、第2予測機能22及び第3予測機能23は、クラウドシステム20上に構築されてもよい。この場合、前述した効果に加え、患者のデバイス計測値を含むデータや主訴・身体計測値を含むデータを医療機関内で保管、管理する負荷を軽減することができる。
【0094】
(変形例)
一実施形態では、フィードバックされた的中又は失中の個数を管理していなかったが、これに限定されない。例えば、図13に示す如き、デバイス計測値(異常値)、的中数及び失中数を関連付けて記憶する第1テーブルTb1を第1予測機能21が管理してもよい。この例では、デバイス計測値の異常値は、「AT/AFバーデン25%以上」、「左心室ペーシング率20%上昇」、「安静時心拍数20%上昇」、「心拍数20%上昇」、「胸郭インピーダンス値20%下降」、「期外収縮率20%上昇」、「NSVTイベントあり」の7項目がある。NSVTは、非持続性心室頻拍(Non-sustained ventricular tachycardia)の略語である。第1予測機能21は、7項目のデバイス計測値(異常値)のうち、2項目に当てはまる異常値を観測した場合、心不全への移行有りの予測結果を第3予測機能23に出力する。なお、「2項目」は例示であり、これに限定されない。しかる後、医師の診断に応じて通知装置11からフィードバックされたデバイス計測値(異常値)の的中数と失中数を第1テーブルTb1に記録する。これにより、第1予測機能21は、例えば、心不全診断(予兆なしも含む)が閾値(例、10回)を超えた記録後に、例えば的中数上位3位の数、失中数0の異常値がある場合、単独であっても、心不全予兆の異常値として採用する。例えば、第1予測機能21は、的中数が最下数(またはなし)、失中が上位3位の数があっても、心不全予兆の異常値として採用しない。このように変形しても、一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0095】
同様に、図14に示す如き、主訴(異常)、的中数及び失中数を関連付けて記憶する第2テーブルTb2を第2予測機能22が管理してもよい。この例では、主訴の異常は、「息切れがする」、「動悸がする」、「むくみがある」、「疲労感がある」、「手足の冷え、冷感がある」、「胸やお腹に痛みがある」、「体調が悪い」、「体重が2kg以上増加」、「最低血圧が20%低下」の9項目がある。第2予測機能22は、9項目の主訴(異常)のうち、3項目に当てはまる主訴を観測した場合、心不全への移行有りの予測結果を第3予測機能23に出力する。なお、「3項目」は例示であり、これに限定されない。しかる後、医師の診断に応じて通知装置11からフィードバックされた主訴(異常)の的中数と失中数を第2テーブルTb2に記録する。これにより、第2予測機能22は、例えば、心不全診断(予兆なしも含む)が閾値(例、10回)を超えた記録後に、例えば的中数上位3位の数、失中数0の主訴がある場合、主訴2つであっても、心不全予兆の主訴として採用する。例えば、第2予測機能22は、的中数が最下数(またはなし)、失中数が上位3位の数があっても、心不全予兆の主訴として採用しない。このように変形しても、一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0096】
次に、第1テーブルTb1及び第2テーブルTb2を更新する場合について、第1テーブルTb1を代表例に挙げて説明する。以下の説明は、第2テーブルTb2についても同様に適用可能である。
【0097】
始めに、予測が的中した場合の例を述べる。第1予測機能21は、図15の左側に示すように、心不全の予兆として、2項目のデバイス計測値(異常値)を検出し、心不全への移行有りを予測したとする。その後、通知装置11から予測の的中がフィードバックされると、第1予測機能21は、図15の右側に示すように、第1テーブルTb1中、予測に用いた項目の的中数を+1増加して更新する。これにより、一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0098】
続いて、予測が失中した場合の例を述べる。第1予測機能21は、図16の左側に示すように、心不全の予兆として、2項目のデバイス計測値(異常値)を検出し、心不全への移行有りを予測したとする。その後、通知装置11から予測の失中がフィードバックされると、第1予測機能21は、図16の右側に示すように、第1テーブルTb1中、予測に用いた項目の失中数を+1増加して更新する。これにより、一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0099】
また、高い予測精度のデバイス計測値(異常値)を用いた予測の例について図17を用いて述べる。図17中、理解を容易にするため、第1テーブルTb1内に検出項目の列を示している。第1予測機能21は、前述した通り、第1テーブルTb1内の2項目のデバイス計測値(異常値)を検出すると、心不全への移行有りを予測するが、これに限定されない。第1予測機能21は、1項目のデバイス計測値(異常値)のみを検出したとしても「的中数が上位3項目に入ること」、「失中数が最下位項目であること」等の高い予測精度の条件を満たす場合、心不全への移行有りを予測する。例えば、図17に示す例の場合、第1予測機能21は、1項目のデバイス計測値(異常値)が「的中数が最上位」、「失中数が最下位」であって、高い予測精度の条件を満たすため、心不全への移行有りを予測する。これにより、一実施形態と同様に、心不全への移行の有無を予測する計測値(異常値)の項目の重み付けを患者毎に調整できるので、患者固有の予測精度の向上を図ることができる。
【0100】
また、低い予測精度のデバイス計測値(異常値)を用いた予測の例について図18を用いて述べる。図18中、理解を容易にするため、第1テーブルTb1内に検出項目の列を示している。第1予測機能21は、前述した通り、第1テーブルTb1内の2項目のデバイス計測値(異常値)を検出すると、心不全への移行有りを予測するが、これに限定されない。第1予測機能21は、2項目のデバイス計測値(異常値)を検出したとしても「的中数が上位3項目に入らないこと」、「失中数が最上位項目であること」等の低い予測精度の条件を満たす場合、当該デバイス計測値(異常値)を異常値として扱わず、異常検出としない。例えば、図18に示す例の場合、第1予測機能21は、2項目のデバイス計測値(異常値)が「的中数が上位3項目に入らない」、「失中数が最上位」であって、低い予測精度の条件を満たすため、心不全への移行無しを予測する。これにより、一実施形態と同様に、心不全への移行の有無を予測する計測値(異常値)の項目の重み付けを患者毎に調整できるので、患者固有の予測精度の向上を図ることができる。
【0101】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、患者の心不全を予測する際の精度を向上させることができる。
【0102】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリに保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、プログラムが記憶回路に保存される代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1乃至図4のいずれかの図面における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0103】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0104】
1 心不全予測支援システム
10 病院内システム
11 通知装置
111,41 処理回路
1111 取得機能
1112,412 表示制御機能
1113 通知機能
1114 フィードバック機能
112,42 メモリ
113,43 入力インタフェース
114,44 ディスプレイ
115,45 通信インタフェース
12 部門サーバー
13 病院情報システム
131 HISサーバー
14 通信端末
20 クラウドシステム
21 第1予測機能
22 第2予測機能
23 第3予測機能
30 遠隔モニタリング装置
40 ユーザ端末
411 管理機能
図1
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