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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100420
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】バッテリーケース
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/224 20210101AFI20240719BHJP
   H01M 50/242 20210101ALI20240719BHJP
【FI】
H01M50/224
H01M50/242
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004412
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 吉則
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 憲一
(72)【発明者】
【氏名】下田 陽一朗
(72)【発明者】
【氏名】戸田 要
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA01
5H040AA14
5H040JJ03
5H040LL01
5H040NN00
(57)【要約】
【課題】軽量化を図る。
【解決手段】バッテリーケースAは、バッテリーモジュールBが載置されるロアトレイ21と、ロアトレイ21の底壁部22の下面に対し、水平方向に並列した状態で溶接されたリインフォース31と、を備え、ロアトレイ21は、リインフォース31よりも密度の小さい材料からなる。ロアトレイ21をリインフォース31よりも密度の小さい材料としたので、ロアトレイ21がリインフォース31と同じ材料からなるものに比べると、軽量化を実現できる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーモジュールが載置されるロアトレイと、
前記ロアトレイの底壁部の下面に対し、水平方向に並列した状態で溶接されたリインフォースと、を備え、
前記ロアトレイは、前記リインフォースよりも密度の小さい材料からなるバッテリーケース。
【請求項2】
前記ロアトレイの材料はアルミニウム合金であり、
前記リインフォースの材料は鋼材である請求項1に記載のバッテリーケース。
【請求項3】
前記リインフォースは、貫通孔を有しており、
前記リインフォースは、前記貫通孔が前記ロアトレイの前記底壁部によって塞がれるように配置され、
前記貫通孔内に収容された溶接金属が前記ロアトレイの前記底壁部に溶着することによって、前記ロアトレイと前記リインフォースの接合部が形成されている請求項1又は請求項2に記載のバッテリーケース。
【請求項4】
前記リインフォースは、細長い形状をなし、平面視において両端部が前記ロアトレイから突出するように配置され、
複数の前記接合部が、前記リインフォースの長さ方向に沿って間隔を空けて並ぶように配置され、
前記リインフォースの長さ方向に隣り合う前記接合部間のピッチが、前記リインフォースの長さ方向中央部よりも長さ方向両端部の方が狭い請求項3に記載のバッテリーケース。
【請求項5】
前記リインフォースの長さ方向に隣り合う前記接合部間のピッチは、前記リインフォースの長さ方向中央から長さ方向両端に向かうほど狭くなるように設定されている請求項4に記載のバッテリーケース。
【請求項6】
前記溶接金属が、前記貫通孔の開口縁に引っ掛かる拡径部を有している請求項3に記載のバッテリーケース。
【請求項7】
前記溶接金属が、前記ロアトレイと同一材質の金属である請求項3に記載のバッテリーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電池パックを収容するための電池パックトレーが開示されている。この電池パックトレーは、電池パックを載せるためのトレー本体と、トレー本体の上面に並列配置した複数本のクロスメンバと、トレー本体の外側壁に沿って配置されてクロスメンバの端部同士を連結する一対の補強フレームとを備えて構成されている。クロスメンバと補強フレームとによって、電池パックトレーの変形が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-019203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の電池パックトレーにおいては、トレー本体の変形防止機能を高めるために、トレー本体、クロスメンバ、補強フレームの材料として、剛性の高い金属が用いられている。コストと剛性のバランスを勘案すると、一般的には、鉄又は鉄を主成分とする合金が用いられる。しかし、鉄は比重が大きいため、電池パックトレー全体が重量化するという問題がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、軽量化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のバッテリーケースは、
バッテリーモジュールが載置されるロアトレイと、
前記ロアトレイの底壁部の下面に対し、水平方向に並列した状態で溶接されたリインフォースと、を備え、
前記ロアトレイは、前記リインフォースよりも密度の小さい材料からなる。
【発明の効果】
【0007】
ロアトレイをリインフォースよりも密度の小さい材料としたので、ロアトレイがリインフォースと同じ材料からなるものに比べると、軽量化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1のバッテリーケースの斜視図
図2】ロアトレイとバッテリーモジュールとアッパカバーを分離した状態をあらわす斜視図
図3】補強部材をロアトレイから外した状態をあらわす斜視図
図4】ロアケースの底面図
図5】ロアトレイとリインフォースの溶接前の状態をあらわす部分拡大断面図
図6】ロアトレイとリインフォースを溶接した状態をあらわす部分拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。下記の複数の実施形態を、矛盾を生じない範囲で任意に組み合わせたものも、発明を実施するための形態に含まれる。
ロアトレイの材料はアルミニウム合金であり、リインフォースの材料は鋼材である。この構成によれば、鉄を主成分とする鋼材は高い強度を有しているので、リインフォースは衝撃吸収性能に優れている。アルミニウムは鉄に比べると比強度が大きいので、ロアトレイは、軽量であると同時に変形を生じ難くなっている。
【0010】
リインフォースは貫通孔を有しており、リインフォースは、貫通孔がロアトレイの前記底壁部によって塞がれるように配置されている。貫通孔内に収容された溶接金属がロアトレイの底壁部に溶着することによって、ロアトレイとリインフォースの接合部が形成されている。この構成によれば、ロアトレイの底面に固着された溶接金属が、貫通孔の内周面に引っ掛かることによって、ロアトレイとリインフォースとの位置ずれを防止できる。
【0011】
リインフォースは、細長い形状をなす。リインフォースは、平面視において両端部がロアトレイから突出するように配置されている。複数の接合部は、リインフォースの長さ方向に沿って間隔を空けて並ぶように配置されている。リインフォースの長さ方向に隣り合う接合部間のピッチは、リインフォースの長さ方向中央部よりも長さ方向両端部の方が狭い。リインフォースの長さ方向の端部に衝撃が加わったときに、衝撃に起因して接合部に生じる剪断力は、リインフォースの端部において最大である。この点に鑑み、リインフォースの両端部における接合部間のピッチを狭くしたので、1つの接合部に生じる剪断力を低減し、接合部の破壊を抑制できる。
【0012】
リインフォースの長さ方向に隣り合う接合部間のピッチは、リインフォースの長さ方向中央から長さ方向両端に向かうほど狭くなるように設定されている。この構成によれば、リインフォースの端部に衝撃が加わったときに生じる剪断力を、効果的に低減できる。
【0013】
溶接金属は、貫通孔の開口縁に引っ掛かる拡径部を有している。この構成によれば、リインフォースが、貫通孔内の溶接金属から離脱して落下することを防止できる。
【0014】
溶接金属が、ロアトレイと同一材質の金属である。この構成によれば、溶接金属とロアトレイとの接合強度が高い。
【0015】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図6を参照して説明する。尚、以下の説明において、前後の方向については、図1~6におけるF方向を前方と定義する。上下の方向については、図1~3,5,6におけるH方向を上方と定義する。左右の方向については、図1~4におけるR方向を右方と定義する。
【0016】
本実施例1のバッテリーケースAは、バッテリーモジュールBを下から支えるロアケース20と、ロアケース20に対しバッテリーモジュールBを覆い隠すように取り付けられる金属製のアッパカバー10とを備えて構成されている。ロアケース20は、金属製のロアトレイ21と、金属製の補強部材30とを備えて構成されている。図2に示すように、ロアトレイ21は、平面視形状が略方形をなす水平な底壁部22と、底壁部22の外周縁から立ち上がった下部周壁部23と、下部周壁部23の立ち上がり端縁から水平方向外方へ張り出した下部フランジ部24とを有する単一部材である。
【0017】
図1,2に示すように、アッパカバー10は、平面視形状が略方形をなす水平な上壁部11と、上壁部11の外周縁から斜め下方へ張り出した上部周壁部12と、上部周壁部12の下端縁から水平方向外方へ張り出した上部フランジ部13とを有する単一部材である。アッパカバー10は、上部フランジ部13を下部フランジ部24に載置した状態で、ロアトレイ21に取り付けられている。上部フランジ部13と下部フランジ部24をボルト締め等によって固定することによって、アッパカバー10とロアトレイ21が組付け状態に保持されている。バッテリーモジュールBは、ロアトレイ21とアッパカバー10とによって形成された収容空間(図示省略)内に収容される。
【0018】
図3に示すように、補強部材30は、4本のリインフォース31と、8つのブラケット40と、6本の連結部材46とを組み付けて構成されている。リインフォース31とブラケット40と連結部材46は、高張力鋼(金属材料)からなる。
【0019】
リインフォース31は、全体として左右方向に細長い形状をなする単一部品である。リインフォース31は、リインフォース31の全長に亘って形成された基部32と、同じくリインフォース31の全長に亘って形成された一対の受板部35とを有する。基部32は、左右方向に細長い水平な基板部33と、基板部33の前後両縁部から斜め上方へリブ状に延出した一対の細長い支持板部34とからなる。一対の受板部35は、基部32(両支持板部34)の上端縁から前後方向へ水平に延出した形態である。
【0020】
リインフォース31を長さ方向(左右方向)に見た側面視において、基板部33と支持板部34が角度(鈍角又は直角)をなして連なり、基部32の前後両端(支持板部34の上端)に対して一対の受板部35が角度(鈍角又は直角)をなして連なっている。したがって、リインフォース31は、その長さ方向の軸線を屈曲させるように曲げ変形や座屈変形が生じ難い。つまり、リインフォース31は、長さ方向(左右方向)の外力を受けたときの軸剛性が高いものとなっている。
【0021】
図4に示すように、4本のリインフォース31の左右両端部は、ロアトレイ21の下部周壁部23を構成する左右両側壁部27よりも側方へ突出している。リインフォース31の左右両端部は、受圧部36として機能する。受圧部36は、平面視においてロアトレイ21の下部周壁部23の外部に配されている。
【0022】
図3に示すように、ブラケット40は、本体部41と背板部44とから構成された単一部品である。本体部41は、上板部42と、上板部42の前後両側部に連なり、上板部42よりも低い位置に配置された前後一対の下板部43とから構成されている。背板部44は、本体部41の左右方向における一方の端縁から上方へフランジ状に張り出した形態である。背板部44は、ロアトレイ21の側壁部27の外側面に固着されている。ロアトレイ21と背板部44との固着は、後述するロアトレイ21とリインフォース31との固着と同様、アークスポット溶接によって行われる。ブラケット40の両下板部43は、リインフォース31の受板部35における左右両端部(受圧部36)の上面に載置するように重ねられている。下板部43と受板部35は、溶接等によって固着されている。
【0023】
1本のリインフォース31に対して左右対称な一対のブラケット40が一体化されている。リインフォース31の左端部においては、受圧部36の左側の端面とブラケット40の下板部43の左側の端面とが、左右方向において同じ位置に配され、面一状の位置関係で上下に連なっている。リインフォース31の右端部においては、受圧部36の右側の端面とブラケット40の下板部43の右側の端面とが、左右方向において同じ位置に配され、面一状の位置関係で上下に連なっている。
【0024】
連結部材46は、前後方向(リインフォース31の長さ方向と直交する方向)に長い形状である。連結部材46は、水平な平板状をなす連結機能部47と、連結機能部47の左右いずれかの側縁部から下向き(連結機能部47と直角)に延出した平板状の押圧機能部48とを有する単一部品である。図に示すように、連結部材46は、前後に隣り合う2本のリインフォース31の左端部同士の間、及び右端部同士の間に橋渡されるように配置されている。連結機能部47の前後両端部は、前後方向に隣り合うブラケット40の下板部43の上面に載置されている。連結機能部47と下板部43は、溶接によって固着されている。連結部材46は、ブラケット40を介すことによって、前後方向に隣り合うリインフォース31の左端部(受圧部36)同士と右端部(受圧部36)同士を連結している。左側の押圧機能部48は左側の受圧部36を左方から覆っている。右側の押圧機能部48は右側の受圧部36を右方から覆っている。
【0025】
図4に示すように、4本のリインフォース31は、ロアトレイ21の底壁部22の下面に取り付けられている。4本のリインフォース31は、長さ方向を左右方向に向け、前後方向に間隔を空けて並列するように配置されている。ロアトレイ21の底壁部22は、並列配置した4本のリインフォース31の受板部35の上面に載置され、アークスポット溶接によって固着されている。ロアトレイ21に収容したバッテリーモジュールBの重量は、底壁部22(ロアトレイ21)を介して4本のリインフォース31によって下から支えられる。
【0026】
リインフォース31とロアトレイ21との固着構造について説明する。リインフォース31とロアトレイ21との溶接部分を、接合部37と定義する。接合部37においては、リインフォース31のうちロアトレイ21と底壁部22に接触する受板部35には、受板部35を上下に貫通する複数の貫通孔38が形成されている。尚、図3では、貫通孔38の図示を省略している。貫通孔38の平面視形状は、円形である。貫通孔38の内径は、受板部35の上面から下面に亘って同一寸法である。つまり、受板部35をその板厚方向と平行に切断したときの貫通孔38の断面形状は、方形である。貫通孔38の上端の開口は、底壁部22の下面によって塞がれている。
【0027】
アークスポット溶接を行う際には、ロアトレイ21を上下反転させ、底壁部22の上にリインフォース31を載置し、ロアトレイ21とリインフォース31を治具によって固定する。貫通孔38は、上板部42の上方へ開口した状態となっている。この状態で、棒状の溶接金属50を貫通孔38に挿入して底壁部22に接触させ、溶接金属50と底壁部22との間にアークを発生させ、溶接金属50を溶融させて底壁部22と一体化させる。溶接金属50は、底壁部22と同一の材料(アルミ合金)からなるので、溶接金属50と底壁部22は強固に接合される。
【0028】
溶融した溶接金属50は、貫通孔38内の全体に充填され、更に貫通孔38の上端から溢れ出ている。溢れた溶接金属50のうち、受板部35の上面における貫通孔38の開口縁部に盛り上がった部分は、拡径部51となる。受板部35のうち貫通孔38の内壁部を構成する部位は、底壁部22と拡径部51との間で上下方向に挟み付けられた状態となる。受板部35の材料である高張力鋼の融点は、底壁部22及び溶接金属50の材料であるアルミニウム合金の融点よりも高いので、アーク溶接の際に、受板部35が溶融することはない。
【0029】
リインフォース31の材料とロアトレイ21の材料は、異種金属(アルミニウム合金と高張力鋼)の組み合わせであるため、両者を直接、接触させると電食が発生する。電食防止手段として、受板部35の上面と底壁部22の下面との間には、防水剤としてシーラー52を介在させている。シーラー52は、アーク溶接工程の前に、予め、受板部35に塗布されている。尚、図6においては、シーラー52の図示を省略している。
【0030】
ロアトレイ21とリインフォース31は、複数の接合部37において接合されている。図4に示すように、複数の接合部37は、リインフォース31の長さ方向(左右方向)に一直線状に並ぶように配置されている。左右に隣り合う接合部37間のピッチP,Pn,Pw(間隔)は、一定ではない。具体的には、リインフォース31の長さ方向両端部における接合部37間のピッチP,Pnは、リインフォース31の長さ方向中央部における接合部37間のピッチP,Pwよりも狭く設定されている。左右に隣り合う接合部37間のピッチP,Pn,Pwのうち、リインフォース31の長さ方向中央に位置する2つの接合部37間のピッチPwが、最も大きい。リインフォース31の長さ方向両端に近いほど、接合部37間のピッチP,Pnが次第に狭くなっている。
【0031】
リインフォース31の長さ方向に沿って並ぶ複数の接合部37のうち、リインフォース31の長さ方向最端に最も近い2つの接合部37間のピッチPnが、最も狭い。この最もピッチPnの狭い接合部37は、左右方向からリインフォース31に衝撃が作用したときに、衝撃が最大となる受圧部36に最も近い位置に配置されている。そして、リインフォース31のうち衝撃が最大となる受圧部36の近い領域では、接合部37間が高密度(狭いピッチP,Pn)で配置されている。
【0032】
このような配置としたことによって、受圧部36に作用した衝撃が、リインフォース31の端部に近い複数の接合部37に分散されるので、1つ1つの接合部37に生じる左右方向の剪断力が低減される。衝撃と剪断力を、リインフォース31の長さ方向に効率良く分散させたことによって、リインフォース31の座屈変形と、リインフォース31の座屈に伴う底壁部22(ロアトレイ21)の変形を抑制又は防止するとこができる。
【0033】
本実施例1のバッテリーケースAは、バッテリーモジュールBが載置されるロアトレイ21と、リインフォース31とを備えている。リインフォース31は、ロアトレイ21の底壁部22の下面に対し、水平方向に並列した状態で溶接されている。ロアトレイ21は、リインフォース31よりも密度の小さい材料からなる。ロアトレイ21をリインフォース31よりも密度の小さい材料としたので、ロアトレイ21がリインフォース31と同じ材料からなるものに比べると、軽量化を実現できる。
【0034】
ロアトレイ21の材料はアルミニウム合金であり、リインフォース31の材料は鋼材である。鉄を主成分とする鋼材は高い強度を有しているので、リインフォース31は衝撃吸収性能に優れている。アルミニウムは鉄に比べると比強度が大きいので、ロアトレイ21は、軽量であると同時に変形を生じ難くなっている。
【0035】
リインフォース31は、貫通孔38を有している。リインフォース31は、貫通孔38がロアトレイ21の底壁部22によって塞がれるように配置されている。貫通孔38内に収容された溶接金属50がロアトレイ21の底壁部22に溶着することによって、ロアトレイ21とリインフォース31の接合部37が形成されている。ロアトレイ21の底面に固着された溶接金属50が、貫通孔38の内周面に引っ掛かることによって、ロアトレイ21とリインフォース31との位置ずれを防止できる。
【0036】
リインフォース31は、細長い形状をなしている。平面視において、リインフォース31の両端部は、ロアトレイ21から突出するように配置されている。複数の接合部37は、リインフォース31の長さ方向に沿って間隔を空けて並ぶように配置されている。リインフォース31の長さ方向に隣り合う接合部37間のピッチP,Pn,Pwは、リインフォース31の長さ方向中央部よりも、長さ方向両端部の方が狭い。リインフォース31の長さ方向の端部に衝撃が加わったときに、衝撃に起因して接合部37に生じる剪断力は、リインフォース31の端部において最大である。しかし、リインフォース31の両端部における接合部37間のピッチP,Pnを狭くしているので、1つの接合部37に生じる剪断力を低減し、接合部37の破壊を抑制できる。
【0037】
リインフォース31の長さ方向に隣り合う接合部37間のピッチP,Pn,Pwは、リインフォース31の長さ方向中央から長さ方向両端に向かうほど狭くなるように設定されている。リインフォース31の長さ方向中央から両端に向かうほど、隣り合う接合部37の間隔が狭くなっているので、リインフォース31の端部に衝撃が加わったときに生じる剪断力を、効果的に低減できる。
【0038】
リインフォース31は、ロアトレイ21の底壁部22の下面に配置されており、貫通孔38の内径は、受板部35の上面から下面に亘って一定の寸法である。そのため、溶接金属50と貫通孔38の内壁面との間の接合力だけでは、リインフォース31が底壁部22から外れて落下することが懸念される。その点、本実施例1では、溶接金属50が、貫通孔38の開口縁に引っ掛かる拡径部51を有しているので、リインフォース31が、貫通孔38内の溶接金属50から離脱して落下することを防止できる。溶接金属50は、ロアトレイ21と同一材質の金属であるから、溶接金属50とロアトレイ21との接合強度が高い。
【0039】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
・ロアトレイとリインフォースの材料の組合せは、アルミニウム合金と高張力鋼に限らず、アルミニウム合金と高張力鋼以外の金属との組合せでもよく、アルミニウム合金以外の金属と高張力鋼との組合せでもよく、アルミニウム合金以外の金属と高張力鋼以外の金属との組合せでもよい。
・ロアトレイの材質は、アルミニウム合金に限らず、例えば、マグネシウム合金等でもよい。
・リインフォースの材質は、高張力鋼に限らず、鉄を主材とする各種鋼材(ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、マンガン鋼)等でもよい。
・ロアトレイとリインフォースを溶接する方法は、アークスポット溶接以外の各種アーク溶接や、抵抗溶接等を用いてもよい。
・溶接金属は、拡径部を有しない形状でもよい。
・溶接金属とロアトレイは、異種の金属であってもよい。
・リインフォースの長さ方向中央部における接合部間のピッチは、一定でもよい。
・リインフォースの長さ方向両端部における接合部間のピッチは、一定でもよい。
・リインフォースの全長に亘って、接合部間のピッチを一定にしてもよい。
・リインフォースの本数は、3本以下でもよく、5本以上でもよい。
・貫通孔の平面視形状は、円形に限らず、長円形、楕円形、三角形、方形、5辺以上の多角形などでもよい。
・貫通孔の断面形状は、方形に限らず、受板部の上面から下面に向かって幅寸法が次第に大きくなる台形でもよく、受板部の上面から下面に向かって幅寸法が次第に小さくなる台形でもよい。
・シーラーは、底壁部に塗布してもよく、受板部と底壁部の両方に塗布してもよい。
【符号の説明】
【0040】
A…バッテリーケース
B…バッテリーモジュール
P,Pn,Pw…接合部間のピッチ
21…ロアトレイ
22…底壁部
31…リインフォース
37…接合部
38…貫通孔
50…溶接金属
51…拡径部
図1
図2
図3
図4
図5
図6