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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100427
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/14 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004422
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 治彦
(72)【発明者】
【氏名】添田 勝之
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AG29
2C057AG30
2C057AG44
2C057AG68
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】液体の吐出性能を確保できる液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】一実施形態にかかる液体吐出ヘッドは、流路部と、アクチュエータ部と、を備える。流路部は、複数の圧力室と、複数の前記圧力室の一次側に連通する上部共通室と、複数の前記圧力室の二次側に連通するとともに、重心が前記上部共通室の重心よりも下に位置する下部共通室と、を有する。アクチュエータ部は、前記圧力室を駆動する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧力室と、複数の前記圧力室の一次側に連通する上部共通室と、複数の前記圧力室の二次側に連通するとともに、重心が前記上部共通室の重心よりも下に位置する下部共通室と、を有する流路部と、
前記圧力室を駆動するアクチュエータ部と、
を備える、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記上部共通室から前記圧力室までの流路抵抗は、前記圧力室から下部共通室までの流路抵抗よりも小さい、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記圧力室は一方向に複数並列して配置され、
複数の圧力室の列に対して、前記一方向と交差する延出方向において一方側と、他方側にそれぞれ前記下部共通室が配置され、
一方側の前記下部共通室に連通する前記圧力室と、他方側の前記下部共通室に連通する前記圧力室とが、前記一方向において交互に配列される、
請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記流路部は、複数の前記圧力室と、複数の前記圧力室のそれぞれに連通する複数の個別供給流路と、複数の前記個別供給流路に連通する前記上部共通室と、前記圧力室のそれぞれに連通する複数の個別排出流路と、複数の個別排出流路に連通する前記下部共通室と、を有する流路部材と、を備え、
前記アクチュエータ部は、電圧の印加により変形することで前記複数の圧力室の容積を変化させる複数の圧電素子を備える
請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記流路部の排出側を負圧とする圧力調整部を備える、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドと、
前記上部共通室の一次側に連通する上流タンクと、
前記下部共通室の二次側に連通する下流タンクと、
を備え、
前記上流タンクと前記下流タンクとの間の高低差により前記液体吐出ヘッドに液体を供給する、液体吐出装置。
【請求項7】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドと、
前記上部共通室の一次側に連通する上流タンクと、
前記下部共通室の二次側に連通する下流タンクと、
を備え、
前記上流タンクと前記下流タンクの圧力差により前記液体吐出ヘッドに液体を供給する、液体吐出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドなどの液体吐出ヘッドにおいて、PZT等の圧電体で構成されるアクチュエータを用いて圧力室を変形させ、圧力室に連通するノズルから液体を吐出させる方式が用いられている。例えば液体吐出ヘッドは、電圧印加により変形する複数のアクチュエータと、アクチュエータに当接配置される振動板と、所定の流路を形成する流路部と、を備える。例えば流路は各アクチュエータに対向する複数の圧力室と、複数の圧力室に連通する複数の個別流路と、複数の個別流路に連通する共通室と、を有する。
【0003】
このような液体吐出ヘッドにおいて、条件によっては液体が流れにくく、液適量を確保することが困難となる場合がある。例えば粘度の高い液体を、大液適量や高周波で吐出する場合に、共通室から個別流路に分岐する流路で液体が流れにくくなり、所定の液適量を確保することが困難な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】2008-289739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、液体の吐出性能を確保できる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態にかかる液体吐出ヘッドは、流路部と、アクチュエータ部と、を備える。流路部は、複数の圧力室と、複数の前記圧力室の一次側に連通する上部共通室と、複数の前記圧力室の二次側に連通するとともに、重心が前記上部共通室の重心よりも下に位置する下部共通室と、を有する。アクチュエータ部は、前記圧力室を駆動する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る液体吐出装置の構成を概略的に示す説明図。
図2】同実施形態にかかる液体吐出ヘッドの流路構成を概略的に示す説明図。
図3】同液体吐出ヘッドの一部を示す断面図。
図4】他の実施形態にかかる液体吐出ヘッドの一部を示す断面図。
図5】他の実施形態にかかる液体吐出ヘッドの一部を示す断面図。
図6】他の実施形態にかかる液体吐出ヘッドの一部を示す断面図。
図7】他の実施形態にかかる液体吐出ヘッドの一部を示す断面図。
図8】他の実施形態にかかる液体吐出ヘッドの一部を示す断面図。
図9】他の実施形態にかかる液体吐出ヘッドの一部を示す断面図。
図10】他の実施形態にかかる液体吐出ヘッドの一部を示す断面図。
図11】他の実施形態にかかる液体吐出ヘッドの流路基板の一例を示す断面図。
図12】他の実施形態にかかる液体吐出ヘッドの流路基板の一例を示す断面図。
図13】他の実施形態にかかる液体吐出ヘッドの流路基板の一例を示す断面図。
図14】他の実施形態にかかる液体吐出ヘッドの構成を示す断面図。
図15】他の実施形態にかかる液体吐出ヘッドの構成を示す断面図。
図16】他の実施形態にかかる液体吐出ヘッドの構成を示す断面図。
図17】他の実施形態にかかる液体吐出ヘッドの構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド1及び液体吐出装置100について、図1乃至図5を参照して説明する。図1は液体吐出装置100の説明図である。図2は、液体吐出ヘッド1の概略構成を示す断面図である。図3は液体吐出ヘッドの一部を示す断面図である。図中矢印X、Y、Zは互いに直交する3方向をそれぞれ示す。本実施形態においてXはノズル51や圧力室52の並列方向、Yは延出方向、Zはノズルの軸方向に沿う姿勢を例示する。各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示す。
【0009】
図1に示すように、液体吐出装置100は、液体吐出ヘッド1と、液体吐出ヘッド1の一次側に接続された第1タンクとしての上流タンク2と、液体吐出ヘッド1の二次側に接続された第2タンクとしての下流タンク3と、液体吐出ヘッド1と上流タンク2、下流タンク3とを接続する接続流路4と、上流タンク2に接続される供給タンク5と、制御部6と、を備える。液体吐出装置100はこの他、媒体を保持する媒体保持部や、送液ポンプや圧力調整装置などの負圧制御装置をさらに備えていてもよい。液体吐出装置100は例えばインクジェット記録装置である。
【0010】
液体吐出ヘッド1は、アクチュエータ部20と、振動板30と、流路部40と、を備える。
【0011】
アクチュエータ部20は、例えば、PZT等の圧電部材で構成される圧電素子21を有する。例えば複数の圧電素子21が一方向に並び、それぞれ複数の圧力室52に対向して設けられている。圧電素子21は、電極を有し、制御部6によって電極に電圧が印加されることで、変形する。一例として、複数の圧電素子21は柱状に構成され、電界を印加することで、Z方向である縦方向に変形し、Z方向に対向配置される振動板30を変形させる。各圧電素子21に形成された電極は駆動回路23を介して制御部6に接続され、制御部6によって駆動制御可能に構成される。
【0012】
振動板30は、変形可能に構成される。振動板30は、例えば金属板である。振動板30は振動方向であるZ方向と直交する面に沿って延びる。振動板30は、複数の圧電素子21に接合されるとともに流路部40に支持される。例えば振動板30は圧電素子21の伸長と圧縮によって当該圧電素子21に対向配置された振動部が変位することで、変形する。
【0013】
流路部40は、所定のヘッド流路50を形成する流路部材を備える。例えば流路部40は流路部材として、ノズルプレート41と、複数の流路基板44、45、46を有する基板ユニット42と、流路ブロック43と、備える。例えば流路部40はヘッド入口11とヘッド出口12とを有し、ヘッド入口11が接続流路4を介して上流タンク2に、ヘッド出口12が接続流路4を介して下流タンク3に、それぞれ接続される。
【0014】
ノズルプレート41は貫通孔であるノズル51が複数形成される板状部材である。例えばノズル51は一方向に沿って複数並んで配置される。例えばノズルプレート41と、複数の流路基板44、45、46と、流路ブロック43とが、ねじなどの締結部材によって一体に締結されることで、液体吐出ヘッド1内に所定形状のヘッド流路50が形成される。
【0015】
各流路基板44、45、46は、振動方向であるZ方向と直交する面に沿って延びる板状部材である。例えば各流路基板44、45、46は、流路を構成する開口や段差を有する、フィルタプレートやリストリクトプレートである。複数の流路基板44、45、46が積層されることで、絞り部や段差やメッシュ部を有する所定のヘッド流路50が形成される。
【0016】
流路ブロック43は、ノズルプレート41及び基板ユニット42に重ねて組付けられる。流路ブロック43は所定の凹みや開口を有し、並び方向に並列する複数の圧力室52と、圧力室52のそれぞれに連通する複数の個別排出流路55と、複数の個別排出流路55に連通する下部共通室56と、を形成する。流路ブロック43は複数の部材を組み合わせて構成されていてもよい。一例として流路ブロック43は、ノズルプレート41上に積層される下側の第1ブロック43aと、基板ユニット42上に積層される上側の第2ブロック43bと、を有し、一対のブロック43a,43bの間に、所定のヘッド流路50を形成するとともに、振動板30や基板ユニット42を保持する。
【0017】
ヘッド流路50は、複数のノズル51と、複数の圧力室52と、複数の個別供給流路53と、複数の個別供給流路53に連通する上部共通室54と、複数の個別排出流路55と、複数の個別排出流路55に連通する下部共通室56と、を有する。例えばヘッド流路50は、ヘッド入口11から、上部共通室54、複数の個別供給流路53、複数の圧力室52を通って複数のノズル51に至る供給側の流路と、複数の圧力室52から複数の個別排出流路55と、複数の個別排出流路55とを経てヘッド出口12に至る排出側の流路と、を有する。
【0018】
複数の圧力室52は、複数のノズル51に対向して配置される。各圧力室52は、流路基板46の振動領域の一方側に形成される空間である。圧力室52は、供給側及び排出側にそれぞれ形成される個別供給流路53、個別排出流路55を介して供給側の共通室54及び排出側の共通室56にそれぞれ連通する。複数の圧力室52は、流路部40の壁部材によって隔てられる。各圧力室52は、一方側に配されるノズル51に連通する。圧力室52は、振動板30の振動によって変形することで、ノズル51からインク等の液体を吐出する。
【0019】
複数の個別供給流路53は、複数の圧力室52の一次側に連通し、それぞれ並び方向に交差する延出方向(Y方向)に沿って延びる。例えば個別供給流路53は段差や絞り部などを備えていてもよい。例えば個別供給流路53は、圧力室52の上端部からY方向の一方に延出する。
【0020】
上部共通室54は、複数の個別供給流路53に連通する流路である。上部共通室54は、並び方向であるX方向に延出し、複数の圧力室52の一次側に連通する。上部共通室54はヘッド入口11に連通する。すなわち上部共通室54の一次側は、ヘッド入口11を介して接続流路4に接続され、上流タンク2を介してカートリッジ等の供給タンク5に接続される。
【0021】
複数の個別排出流路55は、複数の圧力室52の二次側に連通する。複数の個別排出流路55は、それぞれY方向に沿って延出する。例えば個別排出流路55は段差や絞り部などを備えていてもよい。個別排出流路55は、圧力室52の上端部からY方向の他方側に延出する。
【0022】
下部共通室56は、複数の個別排出流路55の圧力室52とは反対側の端部に連通する流路である。下部共通室56は、例えばX方向に延出して構成され、複数の圧力室52に連通する。下部共通室56はヘッド出口12に至る。すなわち下部共通室56の二次側は、ヘッド出口12を介して接続流路4に接続される。
【0023】
ここで、下部共通室56の重心P2は、上部共通室54の重心P1よりも、低い位置に設けられる。すなわち上部共通室54と下部共通室56とはZ方向の位置が異なり、高低差h1による圧力差が生じる。本実施形態においては、一例として、上部共通室54が、振動板30上に配置され、振動板30の下側において個別供給流路53及び個別排出流路55が一方向に沿って並んで配置されている。そして、下部共通室56は個別排出流路55の下方に拡大して形成される。すなわち、本実施形態の液体吐出ヘッド1の流路部40は、上部共通室54の下端部が下部共通室56の上端部よりも上側に配置されている。
【0024】
駆動回路23は、駆動ICを備え、駆動ICによって駆動電圧を圧電素子21の電極に印加することで、圧電素子21を駆動し、圧力室52の容積を増減させて、ノズル51から液滴を吐出させる。駆動回路23は、液体吐出装置の制御部から入力された画像信号に従い、液体を吐出させるタイミング及び液体を吐出させる圧電素子21を選択するなどの各圧電素子21を制御するための制御信号及び駆動信号を生成する。圧電素子21は、振動板30を変位させて圧力室52の容積を変化させるように駆動する。例えば、駆動ICは、データバッファ、デコーダ、ドライバを備え、液体吐出装置100の制御部6に接続される。
【0025】
上流タンク2は、チューブ等で構成される接続流路4を介して、ヘッド入口11に接続される。すなわち上流タンク2は上部共通室54の一次側に接続される。また、上流タンク2は供給タンク5に接続され、供給タンク5からの液体を貯留する。
【0026】
下流タンク3は、チューブ等で構成される接続流路4を介して、ヘッド出口12に接続される。すなわち下流タンク3は下部共通室56の二次側に接続される。例えば下流タンク3の二次側は接続流路を介して供給タンク5に接続される。
【0027】
例えば下流タンク3は、上流タンクよりも下位に配置される。すなわち、2つのタンク2、3には高低差h2により差圧が生じる。
【0028】
制御部6は、コントローラであるCPU(Central Processing Unit)等の制御回路と、各種のプログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)と、各種の可変データや画像データなどを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、外部からのデータの入力及び外部へのデータの出力をするインターフェイス部と、を備える。
【0029】
以上のように構成された液体吐出装置100において、制御部6は、例えばインターフェイスにおいてユーザが操作入力部の操作による印刷指示を検出すると、所定のタイミングで印字信号を出力することで、液体吐出ヘッド1を駆動する。液体吐出ヘッド1は吐出動作として、画像データに応じた画像信号により、駆動ICに駆動信号を送り、吐出対象の圧電素子21を選択的に駆動して例えば所定の振動方向に振動させる。そして、圧電素子21による、引張方向の変形と圧縮方向の変形を組み合わせて、振動板30を変形させ、圧力室52の容積を変化させることで、上部共通室54から液体を導き、ノズル51から吐出させ、用紙等の印刷媒体に画像を形成する。また、制御部6は、液体吐出ヘッド1に接続される供給ポンプ等を駆動することで、供給側の第1タンクに、所定のタイミングで液体を供給する。
【0030】
液体吐出装置100において、液体は供給タンク5から上流タンク2を経てヘッド入口11からヘッド内に送られ、上部共通室54、個別供給流路53、を経て圧力室52に供給される。そして、圧力室52に供給された液体の一部は圧電素子21の駆動動作によってノズル51から吐出される。また、圧力室52に供給された液体の一部は、個別排出流路55から下部共通室56へ導かれ、ヘッド出口12から排出される。このとき、上部共通室54が下部共通室56よりも上位に配置され、高低差があることにより、圧力室52の一次側と二次側に水頭圧差が生じ、当該水頭圧差によって、液体の一次側から二次側への供給動作が促進される。そして、下部共通室56から排出された液体は回収側の接続流路4を通って回収側の下流タンク3に送られ、循環流路によって循環する。
【0031】
実施形態に係る液体吐出ヘッド1及び液体吐出装置100によれば液体吐出ヘッド1において、上部共通室54を下部共通室56よりも高い位置に配置したことで、液体の吐出性能を確保できる。すなわち、一次側の上部共通室54と二次側の下部共通室56の高低差による水頭圧で、一次側から二次側への液体の流れが発生するため、粘度が高い液体であっても液体の供給を促すことができ、所望の吐出量を確保しやすい。また、水頭差による供給は、ポンプによる供給と比べて脈動を抑えることができるため、体積変動による影響を抑えられる。
【0032】
さらに、上記実施形態においては、液体吐出ヘッド1の一次側に上流タンク2を接続し、液体吐出ヘッド1の二次側に下流タンク3を接続し、上流タンク2と下流タンク3にも高低差を持たせたことにより、液体の供給をより促進することができる。
【0033】
上述した実施形態によれば、上部共通室と下部共通室との重心に高低差を設けることで、
液体の吐出性能を確保できる。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0035】
図4は他の実施形態にかかる液体吐出ヘッド1Aの構成を示す説明図である。液体吐出ヘッド1Aは、上部共通室54から圧力室52までの流路抵抗が、圧力室52から下部共通室56までの流路抵抗よりも小さく構成される。その他の構成については上記第1実施形態にかかる液体吐出ヘッド1と同様である。具体例として、液体吐出ヘッド1Aは、圧力室52の二次側に接続される個別排出流路55の流路断面積が、圧力室52の一次側に接続される個別供給流路53の流路断面積よりも小さく構成されている。
【0036】
本実施形態にかかる液体吐出ヘッド1Aによれば、二次側の流路抵抗を一次側の流路抵抗よりも大きくすることにより、液体の供給をより促進することができる。
【0037】
また、上記第1実施形態にかかる液体吐出ヘッド1において、流路部40は、上部共通室54の下端部が下部共通室56の上端部よりも上側に配置される例を示したが、これに限られるものではない。例えば他の実施形態として図5に示す液体吐出ヘッド1Bのように、上部共通室54と下部共通室56とは、一部が同高さに並んで配置されていてもよい。すなわち、図5に示す液体吐出ヘッド1Bにおいて、下部共通室56は個別排出流路55の上側に拡大する流路形状であり、上部共通室54の重心P1の位置よりも低い位置に重心P2を有している。すなわち、上部共通室54の重心P1と下部共通室56の重心P2は高低差h1を有している。その他の構成については上記液体吐出ヘッド1Aと同様である。本実施形態においても、上部共通室54と下部共通室56とに高低差が設けられていることにより、一次側から二次側への液体の供給が促進できる。
【0038】
また、上記第1実施形態にかかる液体吐出ヘッド1の流路部40において、個別排出流路55は圧力室52の上端部から、Y方向に延出する例を示したが、これに限られるものではない。例えば他の実施形態として図6に示す液体吐出ヘッド1Cのように、個別排出流路55の位置を、圧力室52の下部に設けてもよい。すなわち、図6に示す液体吐出ヘッド1Cは、個別排出流路55が圧力室52の下部領域から、Y方向の他方側に延出する。その他の構成については上記液体吐出ヘッド1と同様である。本実施形態においても、上部共通室54と下部共通室56とに高低差が設けられていることにより、一次側から二次側への液体の供給が促進できる。
【0039】
また、上記第1実施形態にかかる液体吐出ヘッド1において、個別供給流路53、上部共通室54、個別排出流路55、及び下部共通室56をそれぞれ1つずつ備える例を示したが、これに限られるものではない。例えば個別供給流路53、上部共通室54、個別排出流路55、及び下部共通室56の少なくともいずれかを複数備える構成であってもよい。
【0040】
図7乃至9は他の実施形態にかかる液体吐出ヘッド1Dの構成を示す説明図である。本実施形態にかかる液体吐出ヘッド1Dにおいて、個別供給流路53、上部共通室54、個別排出流路55、及び下部共通室56はそれぞれ一対設けられる。例えば液体吐出ヘッド1Dは、並び方向に配列される複数の圧力室52に対して、延出方向の一方側と、他方側に、それぞれ個別供給流路53、上部共通室54、個別排出流路55、及び下部共通室56が設けられる。そして、一方側の下部共通室56に連通する圧力室52と、他方側の下部共通室56に連通する圧力室52とが、並び方向において交互に配列される。言い換えると、圧力室52のうち一個おきに配列された半数あるいは約半数の圧力室52から一方側に個別供給流路53が延び、当該複数の個別供給流路53は一方側に連続する上部共通室54に連通する。さらに当該一個おきに配列された半数あるいは約半数の圧力室52から他方側に個別排出流路55が延び、当該複数の個別排出流路55は他方側に連続する下部共通室56に連通する。
【0041】
そして、圧力室52のうち一個おきに配列された残りの半数あるいは約半数の圧力室52から他方に個別供給流路53が延び、当該複数の個別供給流路53は他方側に連続する上部共通室54に連通する。さらに、当該残りの半数あるいは約半数の圧力室52から一方側に個別排出流路55が延び、当該複数の個別排出流路55は一方側に連続する下部共通室56に連通する。この場合、並列方向において隣接する圧力室52の流路の延出方向は互いに反対の方向となる。本実施形態によれば、隣接する圧力室52に帯する共通室54、56を分けて配置することで、隣接する圧力室52間の干渉を低減できる。
【0042】
また、上記第1実施形態にかかる液体吐出ヘッド1の流路部40において、圧力室52から一本の個別排出流路55が延出する例を示したが、これに限られるものではない。例えば他の実施形態として図10に示す液体吐出ヘッド1Eのように、個別排出流路55を複数本有する構成としてもよい。すなわち、図10に示す液体吐出ヘッド1Eは、個別排出流路55が圧力室52の上下方向における3箇所から、それぞれY方向の他方側に延出する。その他の構成については上記液体吐出ヘッド1と同様である。本実施形態にかかる液体吐出ヘッド1Eによれば、流路を複数に分岐することで、吐出圧の漏れにくい構成とすることができる。すなわち、圧力室52において、ノズル51に近い位置において個別排出流路55が設けられると、液体の流動時にノズル51から個別排出流路55に気泡が混入しやすく、また吐出圧が抜けて吐出量が減少する傾向があるが、個別排出流路55を複数配置することで、ノズル近傍の液体流動を小さくすることができ、ノズルから気泡が混入することを抑制できる。また、流路の分岐により吐出圧が漏れにくくすることが可能である。
【0043】
また、流路部40の構成も適宜変更可能である。例えば流路部40は、上記ノズルプレート41、基板ユニット42、流路ブロック43、の組み合わせに限らず、各種構造体を適用することができる。
【0044】
例えば他の実施形態として図11に示す流路部140において、個別排出流路55を構成する基板ユニット142は、複数の流路基板144、145、146、147、148備える。例えば一部の流路基板145、146、147には、それぞれ所定箇所に開口145a、146a、147aが形成されている。これらの複数の流路基板144、145、146、147、148を積層することで、絞り部や段差やメッシュ部を有するヘッド流路50を容易に形成できる。すなわち、複数の流路基板144、145、146、147、148の形状を組み合わせることで、流路の開口面積や流路長を調整することが可能である。
【0045】
例えば他の実施形態として図12に示す流路部240において、個別排出流路55を構成する基板ユニット242は、複数の流路基板244、245、246、247、248を備える。例えば一部の流路基板245、246、247には、それぞれ所定箇所に開口245a、246a、247aが形成されている。これらの複数の流路基板244、245、246、247、248を積層することで、絞り部や段差やメッシュ部を有するヘッド流路50を容易に形成できる。すなわち、複数の流路基板244、245、246、247、248の形状を組み合わせることで、流路の開口面積や流路長を調整することが可能である。
例えば他の実施形態として図13に示す流路部340は個別排出流路55の流路内に、抵抗体341を備える。例えば抵抗体341は、流路内に配された板バネ状の突起部であり逆止弁を構成する。本実施形態によれば、下部共通室56からの液体の逆流を防止することができる。
【0046】
また、上記第1実施形態にかかる液体吐出ヘッド1の流路部40において、上部共通室54と下部共通室56とは圧力室52の延出方向の一方側と他方側にそれぞれ配置される例を示したが、これに限られるものではない。例えば他の実施形態として図14及び図15に示す液体吐出ヘッド1Fのように、上部共通室54と下部共通室56とは上下に並ぶ構成であってもよい。液体吐出ヘッド1Fにおいて、圧力室52の上端部から延出方向の一方側に個別供給流路53が延びるとともに、圧力室52の下端部から延出方向の一方側に個別排出流路55が延びる構成であって、下部共通室56が基板ユニット442を挟んで上部共通室54の下部に配置されている。また本実施形態にかかる液体吐出ヘッド1Fにおいて、流路部40は、所定の並び方向に並列する複数のノズル51を有するノズルプレート41と、流路ブロック43と、基板ユニット442と、と、を備える。
【0047】
流路ブロック43は、例えば複数の部材で構成され、例えば下側の第1ブロック43a及び上側の第2ブロック43bを備える。
下側の第1ブロック43aは、基板ユニット442の下側に積層され、並び方向に並列する複数の圧力室52と、圧力室52のそれぞれに連通する複数の個別排出流路55と、複数の個別排出流路55に連通する下部共通室56と、を形成する。
【0048】
上側の第2ブロック43bは、第1ブロック43a及び基板ユニット442上に接合される。第2ブロック43bは、複数の圧力室52のそれぞれに連通する複数の個別供給流路53と、複数の個別供給流路53に連通する上部共通室54と、を形成する。例えば第2ブロック43bは圧電素子21を保持する
基板ユニット442は、第1ブロック43a上に接合される流路基板444を備える。流路基板444は所定箇所に流路を連通する開口444aを有する。
【0049】
その他の構成については上記液体吐出ヘッド1と同様である。本実施形態においても、上部共通室54と下部共通室56とに高低差h1が設けられていることにより、一次側から二次側への液体の供給が促進できる。
【0050】
図15及び図16は、他の実施形態にかかる液体吐出ヘッド1Gを示す。液体吐出ヘッド1Gにおいて、上部共通室54と下部共通室56とは上下に並んで配置される。本実施形態にかかる液体吐出ヘッド1Gにおいて、流路部40は、所定の並び方向に並列する複数のノズル51を有するノズルプレート41と、基板ユニット542と、流路ブロック43と、を備える。
【0051】
液体吐出ヘッド1Gにおいて、圧力室52の上端部から延出方向の一方側に個別供給流路53が延びるとともに、圧力室52の下端部から延出方向の一方側に個別排出流路55が延びる。液体吐出ヘッド1Gは、下部共通室56が基板ユニット542を挟んで上部共通室54の下部に配置されている。
流路ブロック43は、例えば第1ブロック43a及び第2ブロック43bを備える。例えば流路ブロック43は、下側の第1ブロック43aと上側の第2ブロック43bが対向配置され、内部に液室を構成する。
【0052】
第1ブロック43aは例えばノズルプレート41上に接合される。第1ブロック43aは並び方向に並列する複数の圧力室52と、圧力室52のそれぞれに連通する複数の個別排出流路55と、複数の個別排出流路55に連通する下部共通室56と、を形成する。なお、第1ブロック43aの、下部共通室56の基板ユニット542に対向する開口縁には、開口縁に沿うシール部材62が装着され、基板ユニット542と流路ブロック43とが液密に装着される。シール部材62はOリングやパッキン部材であり、下部共通室56の開口縁の外周を囲む環状に構成される。例えばシール部材62は、締結部と、下部共通室の開口縁との間の所定箇所に設けられる。
第2ブロック43bは、第1ブロック43a及び基板ユニット542上に接合される。第2ブロック43bは、複数の圧力室52のそれぞれに連通する複数の個別供給流路53と、複数の個別供給流路53に連通する上部共通室54と、を形成する。例えば第2ブロック43bは圧電素子21を保持する。
【0053】
基板ユニット542は、第1ブロック43a上に接合される。基板ユニット542は、複数の流路基板544、545、546、547を備える。
【0054】
例えば一部の流路基板545、546、547には、それぞれ所定箇所に開口が形成されている。これらの複数の流路基板544、545、546、547を積層することで、絞り部や段差やメッシュ部を有するヘッド流路50が形成される。すなわち、複数の流路基板544、545、546、547の形状を組み合わせることで、流路の開口面積や流路長を調整する。
【0055】
液体吐出ヘッド1Gにおいて、基板ユニット542を構成する複数の流路基板544、545、546、547と、流路ブロック43の上下の流路ブロック43a,43bとが、ねじ等の締結部材61により締結され、組付けられることで、所定のヘッド流路50が構成される。このとき、流路ブロック43aの、下部共通室56の基板ユニット542に対向する開口縁に設けられたシール部材62により、基板ユニット542と流路ブロック43aとが液密に装着される。
【0056】
液体吐出ヘッド1Gは前記流路部の排出側を負圧とする圧力調整部63を備える。具体例として、圧力調整部63は、例えば下部共通室56の排出側の下流タンク3に接続され、下流タンク3内を負圧とする真空ポンプである。一例として、圧力調整部63は、インク循環状態における下部共通室56を、-20kPa~-40kPaの負圧状態に設定する。
【0057】
その他の構成については上記液体吐出ヘッド1や液体吐出ヘッド1F等と同様である。本実施形態においても、上部共通室54と下部共通室56とに高低差h1が設けられていることにより、一次側から二次側への液体の供給が促進できる。
【0058】
また、液体吐出ヘッド1Gによれば、下部共通インク室の排出側に負圧を発生させて、インク流路の排出側を負圧とすることで、ヘッド内のインクの循環を促進できる。例えばインクの粘度が高い場合に、流入側から加圧送液すると、流路抵抗が小さいノズル孔からインクが排出され、インクが排出側の流路に流れなくなり循環効率が低下するが、本実施形態によれば、排出側から負圧を与えることにより、インクの粘度によらず、ヘッド内のインクの循環を促進できる。
【0059】
また、本実施形態にかかる液体吐出ヘッド1Gによれば、流路部において、互いに積層して締結される部材間を液密にシールするシール部材62を備えることで、流路部の部材間の隙間から液漏れを防止できる。したがって、下部共通室56を負圧にする場合にあっても、液漏れを抑制し、良好な圧力状態を確保することができる。
【0060】
なお、上記液体吐出ヘッド1Gにおいて、上部共通室の排出側の流路と下部共通室の排出側の流路を接続して合流させ、合流部の排出側で負圧を発生させる構成としてもよい。この場合、上部共通室54と下部共通室56とから、インクがともに排出され、さらに循環効率を改善できる。
【0061】
例えば上記実施形態において、上部共通室54と下部共通室56の高低差h1による液体供給促進に加えて、上流タンク2と下流タンク3に高低差を持たせて液体の供給を促す例を示したが、これに限られない。したがって、例えば各タンク2、3は同高さに配置されていてもよい。上流タンク2と下流タンク3に対して外部から圧力を与えることにより、上流タンク2と下流タンク3タンクとの間にタンク内の圧力差を設けて液体の供給を促してもよい。すなわち、上流タンク2内の圧力が、下流タンク3内の圧力よりも高く設定されることにより、液体吐出ヘッド1への液体供給を促進することができる。あるいは上流タンク2と下流タンク3タンクが無い構成であってもよい。この場合においても、上記実施形態と同様に、上部共通室54と下部共通室56の高低差によって液体供給を促進できる。
【0062】
また、例えば吐出周波数に応じて水頭差を変えることができる構成とし、液体供給量を調整可能に構成してもよい。
【0063】
ノズル51や圧力室52の配列も上記実施形態に限られるものではない。たとえばノズル51を2列以上配列してもよい。また複数の圧力室52の間に、ダミー室となる空気室を形成してもよい。
【0064】
この他、アクチュエータ部20、流路部40の具体的な形状や各部品の構成や位置関係は上述した例に限られるものではなく、適宜変更可能である。
【0065】
また、吐出する液体は印字用の液体に限られるものではなく、例えばプリント配線基板の配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出する装置等であっても良い。
【0066】
また、上記実施形態において、液体吐出ヘッド1は、インクジェット記録装置等の液体吐出装置に用いられる例を示したが、これに限られるものではなく、例えば3Dプリンタ、産業用の製造機械、医療用途にも用いることが可能であり、小型軽量化及び低コスト化が可能である。
【0067】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、上部共通室と下部共通室との重心に高低差を設けることで、液体の吐出性能を確保することができる。
【0068】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G…液体吐出ヘッド、2…上流タンク、3…下流タンク、4…接続流路、5…供給タンク、6…制御部、11…ヘッド入口、12…ヘッド出口、20…アクチュエータ部、21…圧電素子、23…駆動回路、40…流路部、41…ノズルプレート、42、142,242、342、442…基板ユニット、43…流路ブロック、44~46、144~148、244~248、444、544~547…流路基板、50…ヘッド流路、51…ノズル、52…圧力室、53…個別供給流路、54…上部共通室、55…個別排出流路、56…下部共通室、100…インクジェット記録装置(液体吐出装置)、140、240、340…流路部、344a…抵抗体、P1…重心、P2…重心、h1…高低差。

図1
図2
図3
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図10
図11
図12
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図17