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特開2024-100430制御装置、制御方法およびエンジンシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100430
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法およびエンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/023 20060101AFI20240719BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
F01N3/023 K
F01N3/035 E
F01N3/023 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004425
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 光良
(72)【発明者】
【氏名】相川 剛
(72)【発明者】
【氏名】宮原 哲順
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達矢
【テーマコード(参考)】
3G190
【Fターム(参考)】
3G190AA02
3G190AA06
3G190AA12
3G190AA16
3G190BA06
3G190BA12
3G190BA33
3G190CB18
3G190CB19
3G190CB23
3G190CB26
3G190CB34
3G190CB35
3G190CB37
3G190DA03
3G190DA04
3G190DA18
3G190DA24
3G190DA39
3G190DB02
3G190DB05
3G190DB12
3G190DB15
3G190DB20
3G190DB73
3G190DD02
3G190EA01
3G190EA02
3G190EA14
3G190EA23
3G190EA24
3G190EA25
3G190EA36
(57)【要約】
【課題】再生終了時に残存させるススの量を少なくする。
【解決手段】制御装置は、エンジンと、エンジンの排気通路内に設けられた酸化触媒と、エンジンの排気ガスに含まれるススを排気通路内で捕集するフィルタとを備えるエンジンシステムの制御装置であって、フィルタに堆積するアッシュ量を推定するアッシュ堆積量推定部と、アッシュ量が所定の閾値以下の場合にフィルタ内にススが所定量残存するようにフィルタの再生を制御し、アッシュ量が閾値より大きい場合にフィルタ内のススの残存量が所定量よりも小さくなるようにフィルタの再生を制御する再生制御部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンの排気通路内に設けられた酸化触媒と、前記エンジンの排気ガスに含まれるススを前記排気通路内で捕集するフィルタとを備えるエンジンシステムの制御装置であって、
前記フィルタに堆積するアッシュ量を推定するアッシュ堆積量推定部と、
前記アッシュ量が所定の閾値以下の場合に前記フィルタ内に前記ススが所定量残存するように前記フィルタの再生を制御し、前記アッシュ量が前記閾値より大きい場合に前記フィルタ内の前記ススの残存量が前記所定量よりも小さくなるように前記フィルタの再生を制御する再生制御部と
を備える制御装置。
【請求項2】
前記再生制御部は、前記アッシュ量が前記閾値以下の場合に前記アッシュ量が前記閾値より大きい場合よりも前記酸化触媒の出口温度が低くなるように前記再生を制御し、前記アッシュ量が前記閾値より大きい場合に前記アッシュ量が前記閾値以下の場合よりも前記酸化触媒の出口温度が高くなるように前記再生を制御することで、前記残存量を調節する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記再生制御部は、前記アッシュ量が前記閾値以下の場合に前記アッシュ量が前記閾値より大きい場合よりも前記フィルタの再生時間が短くなるように前記再生を制御し、前記アッシュ量が前記閾値より大きい場合に前記アッシュ量が前記閾値以下の場合よりも前記フィルタの再生時間が長くなるように前記再生を制御することで、前記残存量を調節する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記再生制御部は、前記アッシュ量が前記閾値以下の場合に前記アッシュ量が前記閾値より大きい場合よりも前記酸化触媒の出口温度が低くかつ前記フィルタの再生時間が短くなるように前記再生を制御し、前記アッシュ量が前記閾値より大きい場合に前記アッシュ量が前記閾値以下の場合よりも前記酸化触媒の出口温度が高くかつ前記フィルタの再生時間が長くなるように前記再生を制御することで、前記残存量を調節する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記アッシュ堆積量推定部は、燃料噴射量に基づき前記アッシュ量を推定する
請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
エンジンと、前記エンジンの排気通路内に設けられた酸化触媒と、前記エンジンの排気ガスに含まれるススを前記排気通路内で捕集するフィルタとを備えるエンジンシステムの制御方法であって、
前記フィルタに堆積するアッシュ量を推定するステップと、
前記アッシュ量が所定の閾値以下の場合に前記フィルタ内に前記ススが所定量残存するように前記フィルタの再生を制御し、前記アッシュ量が前記閾値より大きい場合に前記フィルタ内の前記ススの残存量が前記所定量よりも小さくなるように前記フィルタの再生を制御するステップと
を含む制御方法。
【請求項7】
エンジンと、
前記エンジンの排気通路内に設けられた酸化触媒と、
前記エンジンの排気ガスに含まれるススを前記排気通路内で捕集するフィルタと、
前記フィルタの再生を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置が、
前記フィルタに堆積するアッシュ量を推定するアッシュ堆積量推定部と、
前記アッシュ量が所定の閾値以下の場合に前記フィルタ内に前記ススが所定量残存するように前記フィルタの再生を制御し、前記アッシュ量が前記閾値より大きい場合に前記フィルタ内の前記ススの残存量が前記所定量よりも小さくなるように前記フィルタの再生を制御する再生制御部と
を備えるエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、制御方法およびエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質(Particulate Matter(PM))を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、「DPF」という)については、スス(煤;スート(soot))がある程度堆積している状態の方がススの捕集率が高まることが確認されている(特許文献1の段落[0009])。このため、DPFに堆積したススを燃焼除去する再生処理(以下、「再生」という)の直後には、ススの捕集率が低下する場合がある。そこで、特許文献1に記載されている排気浄化装置では、ススを適度に残した状態で再生を終了させることで、再生直後にススの捕集率が低下することを抑制している。
【0003】
また、非特許文献1および非特許文献2には次のような技術的事項が記載されている。非特許文献1には、DPFの隔壁表面にスス層が形成されることでDPFの捕集率が向上すること等が記載されている。また、非特許文献2には、DPFに形成されたアッシュ(Ash;灰)層がススの壁内への侵入を阻害すること等が記載されている。
【0004】
なお、ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質(以下、「PM」という)は、スス、アッシュ等を含む。ススは、 エンジンから排出される炭素であり、エンジン後に設置されるDPFに堆積する。DPFに堆積したススは、再生により、二酸化窒素や酸素と反応し、DPFから除去される。一方、アッシュは、エンジンオイル中に含まれる灰分であり、燃焼室で入った微量なオイルが燃焼することでDPFに堆積する。アッシュは再生を行っても除去されずDPF内部に残る。またアッシュはエンジン稼働と共に増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-307746号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】常吉孝治、 高木修、山本和弘、「DPFの初期PM捕集性能に対する表面粗さの影響」、日本機械学会論文集(B編)、一般社団法人日本機械学会、2010年7月25日、76巻、767号、p.100-107(p.1110-1117)
【非特許文献2】薄井陽、植西徹、福間隆雄、草鹿仁、「Ashの堆積を含むDiesel Particulate Filterの評価」、自動車技術会論文集、公益社団法人自動車技術会、2018年7月、49巻、4号、p.690-695
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように特許文献1に記載されている排気浄化装置ではススを所定量残した状態で再生を終了させる。しかしながら、ススを所定量残す場合、残す量が多くなると、運転状況等によっては例えば次に再生が必要となるまでの時間が短くなるおそれがある。この点では再生終了時に残すススの量はできるだけ少ない方が望ましい。
【0008】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、再生終了時に残存させるススの量を少なくすることができる制御装置、制御方法およびエンジンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、エンジンと、前記エンジンの排気通路内に設けられた酸化触媒と、前記エンジンの排気ガスに含まれるススを前記排気通路内で捕集するフィルタとを備えるエンジンシステムの制御装置であって、前記フィルタに堆積するアッシュ量を推定するアッシュ堆積量推定部と、前記アッシュ量が所定の閾値以下の場合に前記フィルタ内に前記ススが所定量残存するように前記フィルタの再生を制御し、前記アッシュ量が前記閾値より大きい場合に前記フィルタ内の前記ススの残存量が前記所定量よりも小さくなるように前記フィルタの再生を制御する再生制御部とを備える制御装置である。
【0010】
本開示の一態様は、エンジンと、前記エンジンの排気通路内に設けられた酸化触媒と、前記エンジンの排気ガスに含まれるススを前記排気通路内で捕集するフィルタとを備えるエンジンシステムの制御方法であって、前記フィルタに堆積するアッシュ量を推定するステップと、前記アッシュ量が所定の閾値以下の場合に前記フィルタ内に前記ススが所定量残存するように前記フィルタの再生を制御し、前記アッシュ量が前記閾値より大きい場合に前記フィルタ内の前記ススの残存量が前記所定量よりも小さくなるように前記フィルタの再生を制御するステップとを含む制御方法である。
【0011】
本開示の一態様は、エンジンと、前記エンジンの排気通路内に設けられた酸化触媒と、前記エンジンの排気ガスに含まれるススを前記排気通路内で捕集するフィルタと、前記フィルタの再生を制御する制御装置とを備え、前記制御装置が、前記フィルタに堆積するアッシュ量を推定するアッシュ堆積量推定部と、前記アッシュ量が所定の閾値以下の場合に前記フィルタ内に前記ススが所定量残存するように前記フィルタの再生を制御し、前記アッシュ量が前記閾値より大きい場合に前記フィルタ内の前記ススの残存量が前記所定量よりも小さくなるように前記フィルタの再生を制御する再生制御部とを備えるエンジンシステムである。
【発明の効果】
【0012】
本開示の制御装置、制御方法およびエンジンシステムによれば、再生終了時に残存させるススの量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の第1~第3実施形態に係るエンジンシステムの概略構成図である。
図2】本開示の第1~第3実施形態に係るECUの構成例を示すブロック図である。
図3】本開示の第1実施形態に係るECUの動作例を示すフローチャートである。
図4】本開示の第1実施形態の動作例を模式的に示すタイミングチャートである。
図5】本開示の第2実施形態に係るECUの動作例を示すフローチャートである。
図6】本開示の第2実施形態の動作例を模式的に示すタイミングチャートである。
図7】本開示の第3実施形態に係るECUの動作例を示すフローチャートである。
図8】本開示の第3実施形態の動作例を模式的に示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。図1は、本開示の第1~第3実施形態に係るエンジンシステムの概略構成図である。図2は、本開示の第1~第3実施形態に係るECUの構成例を示すブロック図である。図3は、本開示の第1実施形態に係るECUの動作例を示すフローチャートである。図4は、本開示の第1実施形態の動作例を模式的に示すタイミングチャートである。図5は、本開示の第2実施形態に係るECUの動作例を示すフローチャートである。図6は、本開示の第2実施形態の動作例を模式的に示すタイミングチャートである。図7は、本開示の第3実施形態に係るECUの動作例を示すフローチャートである。図8は、本開示の第3実施形態の動作例を模式的に示すタイミングチャートである。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0015】
<第1実施形態>
[エンジンシステムの概略構成]
図1は、第1~第3実施形態に係るエンジンシステム10の概略構成を模式的に示す。エンジンシステム10は、ディーゼルエンジン1(以下、エンジンともいう)と、エンジン1の制御系や排気浄化装置を含むシステムである。エンジン1は、例えば、鉱山や道路等の建設現場において、掘削、地均し等の作業や土砂等の運搬を行う作業機械に搭載される。この場合、作業機械は、例えば、油圧ショベル、ホイールローダ、ブルドーザ、モータグレーダ、クレーン等の建設機械や、ダンプトラック、フォークリフト等の運搬車両である。ただし、本実施形態のエンジンシステム10は、作業機械に搭載される場合に限定されず、様々な車両や機器に利用することができる。
【0016】
図1に示すエンジンシステム10は、エンジン1と、ターボチャージャー2と、ECU(エンジンコントロールユニット)100と、車両コントローラ200と、排気浄化装置300とを備える。エンジン1は、例えば、多気筒のディーゼルエンジンであり、エンジン回転速度を検出するエンジン回転数センサ91と、エンジン1に燃料を噴射する図示していない燃料噴射装置11等が設けられている。エンジン回転数センサ91の検出データは、信号線90を介して、ECU100に出力される。また、ECU100は、車両コントローラ200から送られてくるアクセルの開度を示す信号等に応じて燃料噴射装置11が噴射する燃料噴射量等を制御する。信号線90は、例えば、CAN(Controller Area Network)用の通信線や、センサ毎の信号線等を含む。また、ターボチャージャー2は、エンジン1の排気ガスによってタービンを回転してエンジン1に供給する空気を圧縮する。
【0017】
[排気浄化装置]
排気浄化装置300は、エンジン1の排気ガス中のPMやNOx(窒素酸化物)等の残留物質の捕集や還元などの後処理を行う装置であり、ECU100によって制御される。排気浄化装置300は、エンジン1から排出される排気ガスの流れ方向における上流側から順に、排気絞り弁71と、燃料噴射装置72と、DPF装置5と、尿素水噴射装置73と、選択還元触媒(Selective Catalytic Reduction;以下「SCR」という)装置6とを備える。DPF装置5は、ディーゼル酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst;以下「DOC」という)51と、DPF52とを備える。これらのDPF装置5、SCR装置6等は、エンジン1からの排気ガスが流通する排気通路3内に設けられる。この排気通路3は、エンジン1に接続されたターボチャージャー2からの排気ガスをDPF装置5に導入する入口管31と、DPF装置5とSCR装置6とを接続する出口管32と、SCR装置6の出口に接続された出口管33とを備える。また、出口管32の中には、尿素水噴射装置73から供給された尿素水を拡散する機構を持つ。
【0018】
[排気絞り弁]
排気絞り弁71は、入口管31に配置されたバタフライバルブ等で構成される。排気絞り弁71の弁開度はECU100で制御されており、弁開度を調節することで、排気ガスの温度が制御される。弁開度を小さくすると、排気絞り弁71前方で排気ガスが圧縮され、排気通路3を流れる排気ガスの圧力や温度が高くなる。
【0019】
[DPF装置]
DPF装置5は、上述したように、DOC51と、DPF52とを備え、DOC51の作用によってDPF52を再生する。DPF装置5は、DPF52でPMを捕集し、例えばDPF52の上流に設けられたDOC51で変換された二酸化窒素によって下流で捕集されたPM中のススを酸化して二酸化炭素とし、ススを除去する。
【0020】
DOC51は、ケースを備え、ケースの内部にはディーゼル酸化触媒が収容されている。DOC51は、排気ガス中に必要に応じて供給される燃料(以下、「ドージング燃料」という。また、ドージング燃料を供給することを「燃料ドージング」という)を酸化、発熱させて、排気ガス温度を所定の高温域まで上昇させる触媒である。この温度が上昇した排気ガスを利用することで、例えば、上述したようにDPF52を再生するとともに、後述するように出口管32等に堆積した尿素デポジットを分解除去することで出口管32等を再生する。ドージング燃料は、例えばエンジン燃料と同じ軽油であり、ドージング燃料をエンジンシリンダ内に供給する場合では、エンジンシリンダ内噴射用の燃料噴射装置11によりポスト噴射によってドージング燃料を供給することになる。また、本実施形態では、入口管31に設けた燃料ドージング用の燃料噴射装置72によって、排気ガス中に燃料を供給し、排気ガスと共にDOC51内に流入させる。
【0021】
[尿素水噴射装置]
尿素水噴射装置73は、排気ガス中に還元剤水溶液としての尿素水溶液を添加する装置である。尿素水噴射装置73は、DPF装置5の出口管32に取り付けられ、出口管32内部に尿素水溶液を噴射する噴射ノズルである。尿素水噴射装置73には、尿素水溶液が貯蔵される図示していない尿素水タンクから噴射ノズルへ尿素水溶液を供給する図示していないポンプユニットが接続されている。ECU100は、尿素水噴射装置73およびポンプユニットを制御し、尿素水噴射装置73から出口管32内に尿素水溶液を噴射する。出口管32内に噴射された尿素水溶液は、排気ガスの熱によって加水分解され、アンモニアとなる。
【0022】
[SCR装置]
SCR装置6は、尿素水溶液を加水分解させて得られるアンモニアを還元剤とすることで、排気ガス中の窒素酸化物を還元浄化する装置である。アンモニアは、還元剤として排気ガスと共にSCR装置6へ供給される。なお、SCR装置6の下流側にアンモニア酸化触媒を設けてもよい。アンモニア酸化触媒は、SCR装置6で未使用とされたアンモニアを酸化処理して無害化するものであり、排気ガスのエミッションをより低減させる。尿素水噴射装置73から尿素水溶液を噴射すると、尿素が出口管32中で結晶化して析出する場合がある。このため、排ガス温度を高温にすることで、出口管32内の析出物(尿素デポジット)を分解する再生処理を行う必要がある。なお、本開示の実施形態において、再生は、上述したDPF装置5の再生と、出口管32内の尿素デポジットを分解する再生とを含む。
【0023】
[センサ]
排気浄化装置300には、ディーゼルエンジン1や排気浄化装置300の状況を検出するための各種センサが設けられている。すなわち、DPF装置5には、DOC51の入口温度を測定する入口温度センサ92と、DOC51の出口温度を測定する出口温度センサ93と、DPF52の前後の差圧を測定する差圧センサ94とが設けられている。なお、図1に示すセンサ以外に、例えば、排気ガスに含まれる窒素酸化物の濃度を検出する1または複数のNOxセンサ、DPF52の出口温度を測定する出口温度センサ、SCR装置6の出口温度を測定するSCR出口温度センサ等が配置される。各センサの出力信号は、信号線90を介してECU100へ送信される。なお、差圧センサ94の出力は、DPF52の内部抵抗値を表す値としてモニタリングされている。また、DOC51の出口温度は、DPF52の入口温度に対応するとともに、DPF52の再生温度に対応する。
【0024】
[車両コントローラ]
車両コントローラ200は、例えば、図示していない各操作装置の操作状態(オン状態、オフ状態、操作量等)を示す信号を入力したり、ECU100等の他のコントローラと所定のデータを送受信したりすることで、エンジン1を搭載する例えば作業機械の各部を制御する。本実施形態では、車両コントローラ200は、ECU100に対して、例えば、アクセル開度を示すデータを送信する。なお、操作装置は、例えば、アクセル、ブレーキ、ステアリング、シフトレバー、作業機レバー等を含む。また、アクセルは、エンジン1の回転数(回転速度)(あるいは加速度合い)を操作する装置であり、アクセルペダル、アクセルレバー等の形態を有する。本実施形態ではアクセルの操作量を「アクセル開度」という。
【0025】
[ECU]
次に、ECU100の構成について説明する。ECU100は、マイクロコンピュータ等のコンピュータとその周辺回路や周辺装置等を用いて構成することができ、コンピュータ等のハードウェアとそのコンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせ等から構成される機能的構成として図2に示す各部を備える。すなわち、図2に示すように、ECU100は、情報取得部101、アッシュ堆積量推定部102および再生制御部103を備える。なお、図2は、ECU100が備える機能的構成のうち、主に排気浄化装置300の再生に係る部分のみを示し、燃料噴射装置11の制御等に係る他の部分については図示を省略している。また、ECU100は、本開示の制御装置の一構成例である。
【0026】
[情報取得部]
情報取得部101は、エンジン回転数センサ91、入口温度センサ92、出口温度センサ93、差圧センサ94等の各センサの測定データを所定の周期で繰り返し取得するとともに、車両コントローラ200からアクセル開度を示すデータ等を所定の周期で繰り返し取得する。
【0027】
[アッシュ堆積量推定部]
アッシュ堆積量推定部102は、DPF52に堆積しているアッシュ量を推定する。アッシュ堆積量推定部102は、例えば燃料噴射装置11が噴射した燃料噴射量に基づきDPF52に堆積しているアッシュ量を推定する。上述したようにアッシュは、エンジン1の燃焼室に入った微量なエンジンオイルが燃焼した後に残った灰分であり、DPF52に堆積するアッシュ量は燃料噴射装置11からの燃料噴射量に相関があり、燃料噴射量に基づいてアッシュ量を推定することができる。アッシュ堆積量推定部102は、車両コントローラ200から取得したアクセル開度、エンジン回転数等に基づき燃料噴射量の積算値を算出し、燃料噴射量の積算値に基づきDPF52に堆積しているアッシュ量を推定する。ただし、燃料噴射量に基づく場合に限定されず、アッシュ堆積量推定部102は、例えばエンジン1の稼働時間、燃料計の測定結果等に基づく燃料消費量、特許文献1に記載されている手法等に基づいてDPF52に堆積するアッシュ量を推定してもよい。
【0028】
[再生制御部]
再生制御部103は、再生状態判定部1031と昇温制御実行部1032とを含む。再生状態判定部1031は、再生要求の有無を判定するとともに、アッシュ量が所定の閾値(閾値Mとする)以下であるか否かを判定する。再生要求は、例えば、差圧センサ94が測定したDPF52の差圧が所定の閾値を超えた場合、前回の再生から所定時間が経過した場合、オペレータの手動操作で再生の開始が指示された場合等に「有り」に設定される。閾値Mは、再生によってDPF52に堆積しているススを例えば100%除去した場合であっても、アッシュの堆積によってDPF52の捕集率を所定値以上とすることができるアッシュ量に対応する値である。ここで、捕集率は、DPF52に流入するPMに対するDPF52から流出するPMの比率であり、例えば、PN(Particulate Number;粒子数)によって定義される。DPF52に堆積するアッシュ量は、DPF52が新品の場合にはゼロ(あるいはDPF52の洗浄後にはほぼゼロ)であり、エンジン1の稼働に伴って増加する。DPF52に堆積しているアッシュ量が所定量(例えば閾値M)以下である場合、再生後に所定量のススを残すことで捕集率を所定値以上とすることができる。一方、DPF52に堆積しているアッシュ量が所定量(例えば閾値M)より大きい場合、再生後にススを残さないようにしても(例えばススの残存量がゼロとなることを許容してDPF52を再生しても)捕集率を所定値以上とすることができる。
【0029】
昇温制御実行部1032は、再生要求がある場合、排気浄化装置300を再生する際に排気ガスを昇温させる制御(昇温制御)を実行する。昇温制御実行部1032は、昇温制御において、DOC51の出口温度に目標温度(「DOC出口再生目標温度TEMP0」とする)を設定し、DOC出口再生目標温度TEMP0を基準とする所定の範囲内(TEMP0[℃]~(TEMP0[℃]-TEMPa[℃]))にDOC出口温度を制御する。設定値TEMPaは温度制御におけるマージンである。
【0030】
昇温制御実行部1032は、昇温制御において、まず、排気絞り弁71の弁開度を制御して排気ガスの温度を昇温させ、入口温度センサ92で測定される入口温度が設定温度以上になると、例えばエンジン1の燃料噴射装置11によるポスト噴射と燃料噴射装置72からの噴射による燃料ドージングを開始し、排気ガスの温度をさらに昇温させる。燃料ドージングを開始する設定温度は、DOC51に含まれる触媒が活性化する温度(ライトオフ温度)に基づいて設定される。燃料ドージングにおいて噴射される燃料はDOC入口温度とDOC出口再生目標温度の差などから算出される。ドージング燃料は、DOC51に排気ガスと共に供給され、DOC51の酸化触媒と化学反応して発熱する。このため、排気絞り弁71の弁開度の制御によって上昇した排気ガスの温度は、DOC51を流れる際に更に上昇する。また、昇温制御実行部1032は、例えばDOC出口温度が予め設定した温度閾値(TEMP0-TEMPa)を超えた時間が予め設定した時間閾値(「時間管理再生時間閾値T0」とする)分、積算された場合に、昇温制御を終了し、再生要求を無しに設定する。この場合、時間管理再生時間閾値T0が、DPF52の再生時間となる。なお、温度閾値(TEMP0-TEMPa)を超えた時間は時間管理再生時間閾値T0の間連続していなくてもよく、例えば所定の時間内に積算した値が時間管理再生時間閾値T0を超えれば再生が終了したと判定することができる。
【0031】
本実施形態において再生制御部103は、アッシュ堆積量推定部102が推定したアッシュ量が閾値M以下であると再生状態判定部1031が判定した場合に昇温制御実行部1032によってDPF52内にススが所定量残存するようにDPF52の再生を制御し、アッシュ量が閾値Mより大きい場合にDPF52内のススの残存量がその所定量よりも小さくなるようにDPF52の再生を制御する。その際、第1実施形態では、再生制御部103は、昇温制御実行部1032によって、アッシュ量が閾値M以下である場合には、アッシュ量が閾値Mより大きい場合の温度よりもDOC51の出口温度(DPF52の再生温度)が低くなるように再生を制御し、アッシュ量が閾値Mより大きい場合には、アッシュ量が閾値M以下の場合の温度よりもDOC51の出口温度が高くなるように再生を制御することで、DPF52におけるススの残存量を調節する。
【0032】
[第1実施形態の動作例]
図3は、本開示の第1実施形態に係るECU100による1回の再生における処理の流れの例を示す。図3に示す処理は、再生要求が有りとなった場合に開始される。図3に示す処理が開始されると、昇温制御実行部1032が昇温制御を開始する(ステップS11)。次に、アッシュ堆積量推定部102が、アッシュ堆積量(以下、「推定アッシュ堆積量」といもいう)を推定する(ステップS12)。次に、再生状態判定部1031が、推定アッシュ堆積量が閾値Mより大きいか否かを判定する(ステップS13)。
【0033】
推定アッシュ堆積量が閾値Mより大きい場合(ステップS13:YES)、昇温制御実行部1032はDOC出口再生目標温度TEMP0を設定値TEMP1とし(ステップS14)、推定アッシュ堆積量が閾値M以下の場合(ステップS13:NO)、昇温制御実行部1032はDOC出口再生目標温度TEMP0を設定値TEMP2とする(ステップS15)。ここで、設定値TMEP1は、DPF52に堆積するアッシュ量が閾値Mより大きい場合のDOC出口再生目標温度TEMP0の値であり、例えば、DPF52に堆積するススをゼロ(あるいは、ほぼゼロ)とすることができる高さの温度に対応する値とすることができる。設定値TMEP2は、DPF52に堆積するアッシュ量が閾値M以下の場合のDOC出口再生目標温度TEMP0の値であり、設定値TEMP1未満の値であって(すなわち、TEMP2<TEMP1)、捕集率を所定値以上とするようにDPF52に所定量のススを残すことができる値である。なお、設定値TEMP1、設定値TEMP2、後述する設定値T1、設定値T2等の設定値は、例えばエンジンシステム10やDPF装置5のモデルを用いたシミュレーションの結果や、実機等での試験結果等に基づいて設定することができる。
【0034】
次に、昇温制御実行部1032は、“DOC出口再生目標温度TEMP0-TEMPa<DOC出口温度”を満たしている再生積算時間が、時間管理再生時間閾値T0より大きいか否かを判定する(ステップS16)。再生積算時間が時間管理再生時間閾値T0より大きい場合(ステップS16:YES)、昇温制御実行部1032は、再生要求を無しとして、再生を終了し(ステップS17)、図3に示す処理を終了する。再生積算時間が時間管理再生時間閾値T0以下の場合(ステップS16:NO)、昇温制御実行部1032は、ステップS12へ戻り、ステップS12以降の処理を再度実行する。
【0035】
なお、上記説明では、図3に示す処理においてステップS14~S17の処理を昇温制御実行部1032が実行することとしたが、例えば、再生状態判定部1031が主体的に実行してもよい。また、ステップS16の処理が「NO」となった場合の戻り先は、例えばステップS16としてもよい。
【0036】
図4は、横軸を時間(エンジン1の累積稼働時間)とし、縦軸にDPF52の内部抵抗と、再生状態と、再生温度をとり、DPF52の内部抵抗と再生状態と再生温度の時間変化の概要を模式的に示す。DPF52の内部抵抗は、DPF52の差圧[kPa]、PMの堆積量[g]、[g/L]等で表される。実線はDPF52の内部抵抗(全体)であり、鎖線は堆積したアッシュによるDPF52の内部抵抗であり、破線は閾値Mに対応する堆積したアッシュによるDPF52の内部抵抗である。DPF52の内部抵抗をPMの堆積量[g]または[g/L]で表す場合には、実線は全PM(スス、アッシュ等)の堆積量、鎖線は堆積したアッシュ量、破線は閾値Mに対応する堆積したアッシュ量を表す。なお、内部抵抗R1は、閾値Mに対応する内部抵抗からのマージンである。点CPは、DPF52に堆積するアッシュ量が、閾値Mに対応する値となった点である。再生状態は再生要求「有り」または「無し」を表す。再生温度は、DOC51の出口温度[℃]である。
【0037】
時刻ta1は新品のDPF52の使用開始時刻である。図4に示す例では、時刻ta2から時刻ta3までで1回目の再生、時刻ta4から時刻ta5までで2回目の再生、時刻ta7から時刻ta8までで3回目の再生、時刻ta9から時刻ta10までで4回目の再生、時刻ta11から時刻ta12までで5回目の再生が実行される。また、時刻ta6で、アッシュ量が閾値Mに到達している。実線で示すDPF内部抵抗は、時間経過に伴い、再生が行われていない場合に徐々に増加し、再生が開始すると徐々に減少し、再生が終了すると再び徐々に増加する。
【0038】
時刻ta6でアッシュ量が閾値Mに到達する前は、DOC出口再生目標温度TEMP0-設定値TMEPaが設定値TEMP2-設定値TEMPaに制御され、時刻ta6より後は、DOC出口再生目標温度TEMP0-設定値TMEPaが設定値TEMP1-設定値TEMPaに制御される。時間管理再生時間閾値T0は同一である。図4に示す例では、設定値TEMP2が、再生終了時のDPF内部抵抗が閾値Mに内部抵抗R1を加えた分残されるように設定されている。また、設定値TEMP1が、再生終了時にDPF52に堆積するススがゼロ(またはほぼゼロ)となるまで除去できるように設定されている。この場合、時刻ta6以前は再生終了時の内部抵抗が閾値Mに内部抵抗R1を加えた値に調節され、時刻ta6より後は再生終了時の内部抵抗が堆積したアッシュ量による内部抵抗に対応した値となる。
【0039】
[第1実施形態の作用・効果]
第1実施形態において、ECU100は、エンジン1と、エンジン1の排気通路3内に設けられたDOC51(酸化触媒)と、エンジン1の排気ガスに含まれるススを排気通路3内で捕集するDPF52(フィルタ)とを備えるエンジンシステム10の制御装置であって、DPF52に堆積するアッシュ量を推定するアッシュ堆積量推定部102と、アッシュ量が所定の閾値M以下の場合にDPF52内にススが所定量残存するようにDPF52の再生を制御し、アッシュ量が閾値Mより大きい場合にDPF52内のススの残存量がその所定量よりも小さくなるようにDPF52の再生を制御する再生制御部103とを備える。この構成によれば、DPF52に堆積するアッシュ量が閾値Mより大きくなった場合に、DPF52の再生終了時に残存させるススの量を容易に少なくすることができる。
【0040】
なお、第1実施形態では、再生制御部103は、アッシュ量が閾値M以下の場合にアッシュ量が閾値Mより大きい場合よりもDOC51の出口温度が低くなるように再生を制御し、アッシュ量が閾値Mより大きい場合にアッシュ量が閾値M以下の場合よりもDOC51の出口温度が高くなるように再生を制御することで、残存量を調節する。この構成によれば、アッシュ量が閾値M以下であるか否かに応じてDPF52の再生温度を変化させることでススの残存量を調節することができる。
【0041】
<第2実施形態>
次に、本開示の第2実施形態について、図5および図6を参照して説明する。第2実施形態に係るエンジンシステム10およびECU100の構成は、図1および図2を参照して説明した第1実施形態の構成と基本的に同一である。ただし、第1実施形態と第2実施形態では、ECU100が有する再生制御部103の動作が一部異なる。第1実施形態では、アッシュ量が閾値M以下か否かに応じてDPF52の再生における再生温度を変化させた。これに対し、第2実施形態では、アッシュ量が閾値M以下か否かに応じてDPF52の再生における再生時間を変化させる。以下、第2実施形態について、主に第1実施形態との相違部分について説明する。
【0042】
本実施形態において再生制御部103は、第1実施形態と同様に、アッシュ堆積量推定部102が推定したアッシュ量が閾値M以下であると再生状態判定部1031が判定した場合に昇温制御実行部1032によってDPF52内にススが所定量残存するようにDPF52の再生を制御し、アッシュ量が閾値Mより大きい場合にDPF52内のススの残存量がその所定量よりも小さくなるようにDPF52の再生を制御する。その際、第2実施形態では、再生制御部103は、昇温制御実行部1032によって、アッシュ量が閾値M以下である場合には、アッシュ量が閾値Mより大きい場合の時間よりもDPF52の再生時間が短くなるように再生を制御し、アッシュ量が閾値Mより大きい場合には、アッシュ量が閾値M以下の場合の時間よりもDPF52の再生時間が長くなるように再生を制御することで、DPF52におけるススの残存量を調節する。
【0043】
[第2実施形態の動作例]
図5は、本開示の第2実施形態に係るECU100による1回の再生における処理の流れの例を示す。図5に示すフローは、図3に示すフロート比較して、図3に示すステップS14に対応する図5に示すステップS14bの内容と、図3に示すステップS15に対応する図5に示すステップS15bの内容とが第1実施形態と異なる。他のステップについては第1実施形態と第2実施形態とで同一である。
【0044】
図5に示す処理では、推定アッシュ堆積量が閾値Mより大きい場合(ステップS13:YES)、昇温制御実行部1032は、時間管理再生時間閾値T0を設定値T1とし(ステップS14b)、推定アッシュ堆積量が閾値M以下の場合(ステップS13:NO)、昇温制御実行部1032は時間管理再生時間閾値T0を設定値T2とする(ステップS15b)。ここで、設定値T1は、DPF52に堆積するアッシュ量が閾値Mより大きい場合の時間管理再生時間閾値T0の値であり、例えば、DPF52に堆積するススをゼロ(あるいは、ほぼゼロ)とすることができる長さの再生時間に対応する値とすることができる。設定値T2は、DPF52に堆積するアッシュ量が閾値M以下の場合の時間管理再生時間閾値T0の値であり、設定値T1未満の値であって(すなわち、T2<T1)、捕集率を所定値以上とするようにDPF52に所定量のススを残すことができる値である。
【0045】
図6は、図4と同様に、DPF52の内部抵抗と再生状態と再生温度の時間変化の概要を模式的に示す。時刻tb1は新品のDPF52の使用開始時刻である。図6に示す例では、時刻tb2から時刻tb3までで1回目の再生、時刻tb4から時刻tb5までで2回目の再生、時刻tb7から時刻tb8までで3回目の再生、時刻tb9から時刻tb10までで4回目の再生、時刻tb11から時刻tb12までで5回目の再生が実行される。また、時刻tb6で、アッシュ量が閾値Mに到達している。実線で示すDPF内部抵抗は、時間経過に伴い、再生が行われていない場合に徐々に増加し、再生が開始すると徐々に減少し、再生が終了すると再び徐々に増加する。
【0046】
時刻tb6でアッシュ量が閾値Mに到達する前は、再生時間が設定値T2に制御され、時刻tb6より後は、再生時間が設定値T1に制御される。DOC出口再生目標温度TEMP0と設定値TEMPaは同一である。図6に示す例では、設定値T2が、再生終了時のDPF内部抵抗が閾値Mに内部抵抗R1を加えた分残されるように設定されている。また、設定値T1が、再生終了時にDPF52に堆積するススがゼロ(またはほぼゼロ)となるまで除去できるように設定されている。この場合、時刻tb6以前は再生終了時の内部抵抗が閾値Mに内部抵抗R1を加えた値に調節され、時刻tb6より後は再生終了時の内部抵抗が堆積したアッシュ量による内部抵抗に対応した値となる。
【0047】
[第2実施形態の作用・効果]
第2実施形態において、ECU100は、エンジン1と、エンジン1の排気通路3内に設けられたDOC51(酸化触媒)と、エンジン1の排気ガスに含まれるススを排気通路3内で捕集するDPF52(フィルタ)とを備えるエンジンシステム10の制御装置であって、DPF52に堆積するアッシュ量を推定するアッシュ堆積量推定部102と、アッシュ量が所定の閾値M以下の場合にDPF52内にススが所定量残存するようにDPF52の再生を制御し、アッシュ量が閾値Mより大きい場合にDPF52内のススの残存量がその所定量よりも小さくなるようにDPF52の再生を制御する再生制御部103とを備える。この構成によれば、DPF52に堆積するアッシュ量が閾値Mより大きくなった場合に、DPF52の再生終了時に残存させるススの量を容易に少なくすることができる。
【0048】
なお、第2実施形態では、再生制御部103は、アッシュ量が閾値M以下の場合にアッシュ量が閾値Mより大きい場合よりもDPF52の再生時間が短くなるように再生を制御し、アッシュ量が閾値Mより大きい場合にアッシュ量が閾値M以下の場合よりもDPF52の再生時間が長くなるように再生を制御することで、残存量を調節する。この構成によれば、アッシュ量が閾値M以下であるか否かに応じてDPF52の再生時間を変化させることでススの残存量を調節することができる。
【0049】
<第3実施形態>
次に、本開示の第3実施形態について、図7および図8を参照して説明する。第3実施形態に係るエンジンシステム10およびECU100の構成は、図1および図2を参照して説明した第1実施形態の構成と基本的に同一である。ただし、第1実施形態と第3実施形態では、ECU100が有する再生制御部103の動作が一部異なる。第1実施形態では、アッシュ量が閾値M以下か否かに応じてDPF52の再生における再生温度を変化させた。これに対し、第3実施形態では、アッシュ量が閾値M以下か否かに応じてDPF52の再生における再生温度と再生時間を変化させる。以下、第3実施形態について、主に第1実施形態との相違部分について説明する。
【0050】
本実施形態において再生制御部103は、第1実施形態と同様に、アッシュ堆積量推定部102が推定したアッシュ量が閾値M以下であると再生状態判定部1031が判定した場合に昇温制御実行部1032によってDPF52内にススが所定量残存するようにDPF52の再生を制御し、アッシュ量が閾値Mより大きい場合にDPF52内のススの残存量がその所定量よりも小さくなるようにDPF52の再生を制御する。その際、第3実施形態では、再生制御部103は、昇温制御実行部1032によって、アッシュ量が閾値M以下である場合には、アッシュ量が閾値Mより大きい場合の温度よりもDPF52の再生温度が低く、かつ、アッシュ量が閾値Mより大きい場合の時間よりもDPF52の再生時間が短くなるように再生を制御し、アッシュ量が閾値Mより大きい場合には、アッシュ量が閾値Mより大きい場合の温度よりもDPF52の再生温度が高く、かつ、アッシュ量が閾値M以下の場合の時間よりもDPF52の再生時間が長くなるように再生を制御することで、DPF52におけるススの残存量を調節する。
【0051】
[第3実施形態の動作例]
図7は、本開示の第3実施形態に係るECU100による1回の再生における処理の流れの例を示す。図7に示すフローは、図3に示すフロート比較して、図3に示すステップS14に対応する図7に示すステップS14cの内容と、図3に示すステップS15に対応する図7に示すステップS15cの内容とが第1実施形態と異なる。他のステップについては第1実施形態と第3実施形態とで同一である。
【0052】
図7に示す処理では、推定アッシュ堆積量が閾値Mより大きい場合(ステップS13:YES)、昇温制御実行部1032は、DOC出口再生目標温度TEMP0を設定値TEMP1とし、かつ、時間管理再生時間閾値T0を設定値T1とし(ステップS14c)、推定アッシュ堆積量が閾値M以下の場合(ステップS13:NO)、昇温制御実行部1032は、DOC出口再生目標温度TEMP0を設定値TEMP2とし、かつ、時間管理再生時間閾値T0を設定値T2とする(ステップS15b)。ここで、設定値TEMP1と設定値T1は、DPF52に堆積するアッシュ量が閾値Mより大きい場合のDOC出口再生目標温度TEMP0の値と時間管理再生時間閾値T0の値であり、例えば、DOC出口再生目標温度TEMP0を設定値TEMP1とし、かつ、時間管理再生時間閾値T0を設定値T1とした場合に、DPF52に堆積するススをゼロ(あるいは、ほぼゼロ)とすることができる高さの再生温度と長さの再生時間の組み合わせに対応する各値とすることができる。設定値TEMP2と設定値T2は、DPF52に堆積するアッシュ量が閾値M以下の場合のDOC出口再生目標温度TEMP0の値と時間管理再生時間閾値T0の値であり、それぞれ設定値TEMP1未満かつ設定値T1未満の値であって(すなわち、TEMP2<TEMP1かつT2<T1)、捕集率を所定値以上とするようにDPF52に所定量のススを残すことができる各値の組み合わせである。
【0053】
図8は、図4と同様に、DPF52の内部抵抗と再生状態と再生温度の時間変化の概要を模式的に示す。時刻tc1は新品のDPF52の使用開始時刻である。図8に示す例では、時刻tc2から時刻tc3までで1回目の再生、時刻tc4から時刻tc5までで2回目の再生、時刻tc7から時刻tc8までで3回目の再生、時刻tc9から時刻tc10までで4回目の再生、時刻tc11から時刻tc12までで5回目の再生が実行される。また、時刻tc6で、アッシュ量が閾値Mに到達している。実線で示すDPF内部抵抗は、時間経過に伴い、再生が行われていない場合に徐々に増加し、再生が開始すると徐々に減少し、再生が終了すると再び徐々に増加する。
【0054】
時刻tc6でアッシュ量が閾値Mに到達する前は、DOC出口再生目標温度TEMP0-設定値TMEPaが設定値TEMP2-設定値TEMPaに、かつ、再生時間が設定値T2に制御され、時刻tc6より後は、DOC出口再生目標温度TEMP0-設定値TMEPaが設定値TEMP1-設定値TEMPaに、かつ、再生時間が設定値T1に制御される。DOC出口再生目標温度TEMP0と設定値TEMPaは同一である。図8に示す例では、設定値TEMP2および設定値T2が、再生終了時のDPF内部抵抗が閾値Mに内部抵抗R1を加えた分残されるように設定されている。また、設定値TEMP1および設定値T1が、再生終了時にDPF52に堆積するススがゼロ(またはほぼゼロ)となるまで除去できるように設定されている。この場合、時刻tc6以前は再生終了時の内部抵抗が閾値Mに内部抵抗R1を加えた値に調節され、時刻tc6より後は再生終了時の内部抵抗が堆積したアッシュ量による内部抵抗に対応した値となる。
【0055】
[第3実施形態の作用・効果]
第3実施形態において、ECU100は、エンジン1と、エンジン1の排気通路3内に設けられたDOC51(酸化触媒)と、エンジン1の排気ガスに含まれるススを排気通路3内で捕集するDPF52(フィルタ)とを備えるエンジンシステム10の制御装置であって、DPF52に堆積するアッシュ量を推定するアッシュ堆積量推定部102と、アッシュ量が所定の閾値M以下の場合にDPF52内にススが所定量残存するようにDPF52の再生を制御し、アッシュ量が閾値Mより大きい場合にDPF52内のススの残存量がその所定量よりも小さくなるようにDPF52の再生を制御する再生制御部103とを備える。この構成によれば、DPF52に堆積するアッシュ量が閾値Mより大きくなった場合に、DPF52の再生終了時に残存させるススの量を容易に少なくすることができる。
【0056】
なお、第3実施形態では、再生制御部103は、アッシュ量が閾値M以下の場合にアッシュ量が閾値Mより大きい場合よりもDOC51の出口温度が低くかつDPF52の再生時間が短くなるように再生を制御し、アッシュ量が閾値Mより大きい場合にアッシュ量が閾値M以下の場合よりもDOC51の出口温度が高くかつDPF52の再生時間が長くなるように再生を制御することで、ススの残存量を調節することができる。
【0057】
[本開示の作用・効果]
本開示によれば、アッシュ量が所定の閾値Mより大きい場合にDPF52内のススの残存量が所定量よりも小さくなるようにDPF52の再生を制御するので、アッシュ量が所定の閾値Mより大きい場合にDPF52の再生終了時に残存させるススの量を容易に少なくすることができる。
【0058】
[変形例等]
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、排気ガスを昇温させる装置は、バーナー、可変ターボチャージャー等としてもよい。なお、閾値等との比較は以下を未満、より大きいを以上と読み替えてもよい。また、上記実施形態でコンピュータが実行するプログラムの一部または全部は、コンピュータ読取可能な記録媒体や通信回線を介して頒布することができる。
[付記]
実施形態に記載の制御装置(ECU100)は、次のように把握することができる。
【0059】
(1)本開示の第1の態様に係る制御装置(ECU100)は、エンジン1と、エンジン1の排気通路3内に設けられた酸化触媒(DOC51)と、エンジン1の排気ガスに含まれるススを排気通路3内で捕集するフィルタ(DPF52)とを備えるエンジンシステム10の制御装置であって、前記フィルタに堆積するアッシュ量を推定するアッシュ堆積量推定部102と、前記アッシュ量が所定の閾値以下の場合に前記フィルタ内に前記ススが所定量残存するように前記フィルタの再生を制御し、前記アッシュ量が前記閾値より大きい場合に前記フィルタ内の前記ススの残存量が前記所定量よりも小さくなるように前記フィルタの再生を制御する再生制御部103とを備える。本態様および以下の各態様によれば、再生終了時に残存させるススの量を少なくすることができる。
【0060】
(2)本開示の第2の態様に係る制御装置は、(1)の制御装置であって、前記再生制御部は、前記アッシュ量が前記閾値以下の場合に前記アッシュ量が前記閾値より大きい場合よりも前記酸化触媒の出口温度が低くなるように前記再生を制御し、前記アッシュ量が前記閾値より大きい場合に前記アッシュ量が前記閾値以下の場合よりも前記酸化触媒の出口温度が高くなるように前記再生を制御することで、前記残存量を調節する。
【0061】
(3)本開示の第3の態様に係る制御装置は、(1)の制御装置であって、前記再生制御部は、前記アッシュ量が前記閾値以下の場合に前記アッシュ量が前記閾値より大きい場合よりも前記フィルタの再生時間が短くなるように前記再生を制御し、前記アッシュ量が前記閾値より大きい場合に前記アッシュ量が前記閾値以下の場合よりも前記フィルタの再生時間が長くなるように前記再生を制御することで、前記残存量を調節する。
【0062】
(4)本開示の第4の態様に係る制御装置は、(1)の制御装置であって、前記再生制御部は、前記アッシュ量が前記閾値以下の場合に前記アッシュ量が前記閾値より大きい場合よりも前記酸化触媒の出口温度が低くかつ前記フィルタの再生時間が短くなるように前記再生を制御し、前記アッシュ量が前記閾値より大きい場合に前記アッシュ量が前記閾値以下の場合よりも前記酸化触媒の出口温度が高くかつ前記フィルタの再生時間が長くなるように前記再生を制御することで、前記残存量を調節する。
【0063】
(5)本開示の第5の態様に係る制御装置は、(1)~(4)の制御装置であって、前記アッシュ堆積量推定部は、燃料噴射量に基づき前記アッシュ量を推定する。本態様によれば、燃料噴射量に基づき前記アッシュ量を推定することができる。
【符号の説明】
【0064】
10…エンジンシステム、100…ECU、101…情報取得部、102…アッシュ堆積量推定部、103…再生制御部、1031…再生状態判定部、1032…昇温制御実行部、1…エンジン、2…ターボチャージャー、11、72…燃料噴射装置、300…排気浄化装置、3…排気通路、71…排気絞り弁、5…DPF装置、51…DOC、52…DPF、73…尿素水噴射装置、6…SCR装置、91…エンジン回転数センサ、92…入口温度センサ、93…出口温度センサ、94…差圧センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8