(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100431
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】自着テープ
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240719BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20240719BHJP
C09J 7/20 20180101ALI20240719BHJP
【FI】
B32B27/00 M
B32B27/00 D
C09J7/30
C09J7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004426
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】390021670
【氏名又は名称】株式会社NichiRica
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】榊原 善和
(72)【発明者】
【氏名】土屋 真一
(72)【発明者】
【氏名】内田 真帆
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
4F100AA20C
4F100AK03A
4F100AK07A
4F100AK12C
4F100AK29B
4F100AK51B
4F100AK54B
4F100AL01B
4F100AL06C
4F100AN01C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA23C
4F100CB05C
4F100DG10A
4F100DJ00A
4F100EH46
4F100EJ65B
4F100EJ86
4F100JA12C
4F100JK06
4F100JM01C
4F100YY00B
4F100YY00C
4J004AA04
4J004AA05
4J004AA06
4J004CA02
4J004CA04
4J004CB03
4J004CC02
4J004CC03
4J004FA01
(57)【要約】
【課題】接着力が高くしかも容易に巻き解くことができるとともに、耐水性および筆記性を備えた自着テープを提供する。
【解決手段】基材1の片面にアンカー剤層2と自着剤層3がこの順に積層された自着テープにおいて、自着剤層3同士の自着力が1.2N/6mm以上であり、自着剤層3と基材1との接着力が0.4N/15mm以下である
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の片面にアンカー剤層と自着剤層がこの順に積層された自着テープにおいて、前記自着剤層同士の自着力が1.2N/6mm以上であり、前記自着剤層と前記基材との接着力が0.4N/15mm以下である自着テープ。
【請求項2】
前記アンカー剤が、ポリオレフィン樹脂にポリエーテルウレタンを75/25~80/25の重量比で混合したものである請求項1に記載の自着テープ。
【請求項3】
前記自着剤が、バインダーとしての天然ゴムラテックス原液および変性スチレン・ブタジエン共重合体と、充填材としての非晶質シリカからなり、充填材/バインダー比が0.044~0.066である請求項1または2に記載の自着テープ。
【請求項4】
前記自着剤が、天然ゴムラテックス原液100重量部に対して変性スチレン・ブタジエン共重合体を5部~10部含有している請求項1または2に記載の自着テープ。
【請求項5】
前記基材が、合成紙である請求項1または2に記載の自着テープ。
【請求項6】
前記基材が、ポリプロピレン樹脂を主原料とし、多数の微細な空孔を有する合成紙である請求項1または2に記載の自着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤塗布面どうしを重ねて加圧して接着する自着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、青果や生花などの束の結束や、物品の情報を記載したタグ付けのために用いられる自着テープが知られている(例えば特許文献1及び2参照)。自着テープは、軽い圧力で自着する自着剤を長尺の基材の片面に塗布した構成であり、自着剤塗布面どうしを重ねて加圧することにより、この加圧部分のみを接着する機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-316646号公報
【特許文献2】特開2006-1580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自着テープはコイル状に巻いて製品とされ、使用者が自着テープを巻き解いて使用に適した長さに切断し、例えば生花の束の茎に巻いて自着テープの両端部の自着剤塗布面どうしを重ねて加圧することで接着する。
【0005】
このような自着テープでは、自着テープどうしを強固に接着できることは勿論のこと、容易に自着テープを巻き解けることも重要である。また、花束は水に生けられることから、耐水性を有することが求められ、さらに、鉛筆などの筆記具で必要事項を記載することがあることから筆記性も求められる。
【0006】
したがって、本発明は、接着力が高くしかも容易に巻き解くことができるとともに、耐水性および筆記性を備えた自着テープを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基材の片面にアンカー剤層と自着剤層がこの順に積層された自着テープにおいて、前記自着剤層同士の自着力が1.2N/6mm以上であり、前記自着剤層と前記基材との接着力が0.4N/15mm以下である自着テープである。
【0008】
本発明においては、アンカー剤が、ポリオレフィン樹脂にポリエーテルウレタンを75/25~80/20の重量比で混合したポリオレフィン樹脂であることが望ましい。
【0009】
また、自着剤は、バインダーとしての天然ゴムラテックス原液および変性スチレン・ブタジエン共重合体と、充填材としての非晶質シリカからなり、充填材/バインダー比が0.044~0.066であることが望ましい。
【0010】
さらに自着剤は、天然ゴムラテックス原液100重量部に対して変性スチレンア・ブタジエン共重合体を5部~10部含有していることが望ましい。
【0011】
基材は、合成紙であることが望ましく、ポリプロピレン樹脂を主原料とし、多数の微細な空孔を有することがさらに望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自着力が高くしかも容易に巻き解くことができるとともに、耐水性および筆記性を備えた自着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態の自着テープを示す断面図である。
【
図2】本発明の実施例における密着性試験を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のより好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施形態の自着テープの断面図である。自着シート積層体は、
図1に示されているように、基材1の片面にアンカー剤層2を設け、アンカー剤層2に自着剤層3を設けて構成されている。
【0015】
基材1は合成紙からなり、合成紙としては、合成樹脂に充填剤等の添加剤を加えて混合し、押出し機で溶融混練後、ダイスリットから押出して成膜した無延伸タイプ、その後に二軸延伸加工を施した二軸延伸タイプのものを使用することができる。二軸延伸タイプのものでは、内部に微細空孔を形成することができる。
【0016】
また、合成紙としては、上記のようなフィルム状のものに限らず、合成繊維を抄紙したものも含む。合成繊維としては、ポリアミド繊維、ポリエチレンテフタレート繊維(以下、PET、又はPET繊維ともいう)に代表されるポリエステル系繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維、アラミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維(以下、PPS繊維ともいう)、ポリアセタール繊維、液晶ポリマー繊維、ポリイミド繊維等が使用可能である。これら合成繊維は、それぞれ単独で使用することができるが、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。さらに、合成紙としては、従来の紙の両面に樹脂製のフィルムをラミネートしたものも用いることができる。フィルムには多数の空孔が設けられる。
【0017】
アンカー剤としては、ポリオレフィン樹脂にポリエーテルウレタンを75/25~80/20の重量比で混合したものが好適に用いられる。ここで、ポリオレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ヘプテン等から選ばれたオレフィン類の単独重合体又は共重合体、及び該オレフィン類と酢酸ビニル、ブタジエン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等との共重合体があげられる。具体的には、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレン-プロピレン共重合体、塩素化エチレン-酢酸ビニル共重合体等が好適である。
【0018】
ポリエーテルウレタンは、イソシアネートとポリオールの組み合わせで、イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、4,4´-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン-2,4-(又は-2,6-)ジイソシアネート、1,3-(又は1,4-)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,2-シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、4,4´-トルイジンジイソシアネート、4,4´-ジフェニルエーテルイソシアネート、(m-もしくはp-)フェニレンジイソシアネート、4,4´-ビフェニレンジイソシアネート、3,3´-ジメチル-4,4´-ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4-フェニルイソシアネート)等の芳香族ジイソシアネート化合物等がある。
【0019】
また、ポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン-プロピレン(ブロック又はランダム)グリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、ポリオクタメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール等がある。
【0020】
自着剤層3は、通常の状態で殆どの物質に接着することなく、加圧により自着剤層同士が接着する自着剤の中から選択される。たとえば、自着剤の主剤としては、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、合成ゴム系樹脂、天然ゴムラテックス原液、天然ゴムラテックス系、アクリル系樹脂、等が挙げられる。性能とコストのバランスを考慮すると、天然ゴムラテックス原液が好ましい。
【0021】
自着剤層3におけるバインダーは、充填剤の脱落防止及び基材との密着性向上に寄与するものであり、例えば、アクリル共重合体、アクリルニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム、変性スチレン・ブタジエン共重合体等が挙げられるが、変性スチレン・ブタジエン共重合体が好ましい。
【0022】
自着剤層3における充填剤としては、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機充填剤、及び、小麦澱粉、コーンスターチ、椰子澱粉等の有機充填剤が用いられる。充填材としては、非晶質シリカが好適である。ここで、充填材/バインダー比は、4.2/95.8~6.2/93.8が好適である。
【0023】
自着剤層3は、必要に応じて、防腐剤、消臭剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、硬化剤、帯電防止剤、分散剤、増粘剤、離型剤、蛍光染料、有色染料、染料定着剤、インク定着剤等の添加剤を添加してもよい。
【0024】
上記構成の自着テープは、自着剤層同士の自着力が1.2N/6mm以上であり、自着剤層と基材との接着力が0.4N/15mm以下であるから、自着力が高くしかも容易に巻き解くことができる。また、基材として合成紙を用いることにより耐水性を備え、さらに、基材1に微細な空孔を設けることで筆記性を備えることができる。
【実施例0025】
以下、実施例によって、本発明の構成及び効果を具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0026】
1.自着テープの作製
〈実施例1〉
坪量66.4g/m2の合成紙を基材とし、この基材の片面に、ポリオレフィン樹脂にポリエーテルウレタンを75/25~80/20の重量比で混合したアンカー剤をリバースロールコーターにより乾燥時の塗布量が、1.5g/m2となるように塗布した。次いでアンカー剤層上に下記の自着剤層用塗料をリバースロールコーターにより乾燥時の塗布量が8g/m2となるように塗布し、自着テープを作製した。
【0027】
自着剤層塗料
天然ゴムラテックス原液 100重量部
変性スチレン・ブタジエン共重合体 7.5重量部
非晶質シリカ 6重量部
【0028】
〈実施例2〉
自着剤層用塗料を下記のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の実施例2の自着テープを作製した。
自着剤層塗料
天然ゴムラテックス原液 100重量部
変性スチレン・ブタジエン共重合体 5重量部
非晶質シリカ 6重量部
【0029】
〈実施例3〉
自着剤層用塗料を下記のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の実施例3自着テープを作製した。
自着剤層塗料
天然ゴムラテックス原液 100重量部
変性スチレンア・ブタジエン共重合体 10重量部
非晶質シリカ 6重量部
【0030】
〈比較例1〉
実施例1のアンカー剤層用塗料を塩素化ポリオレフィン(日本製紙製、スーパークロン390S)に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1の自着テープを作製した。
【0031】
〈比較例2〉
アンカー剤層を有さないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の自着テープを作製した。
【0032】
〈比較例3〉
基材をポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例3の自着テープを作製した。
【0033】
〈比較例4〉
基材を坪量70g/m2の晒クラフト紙に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例4の自着テープを作製した。
【0034】
〈比較例5〉
自着剤層用塗料を下記のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の比較例5の自着テープを作製した。
自着剤層塗料
天然ゴムラテックス原液 100重量部
変性スチレン・ブタジエン共重合体 7.5重量部
非晶質シリカ 1重量部
【0035】
〈比較例6〉
自着剤層用塗料を下記のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の比較例5の自着テープを作製した。
自着剤層塗料
天然ゴムラテックス原液 100重量部
変性スチレンア・ブタジエン共重合体 7.5重量部
非晶質シリカ 10重量部
【0036】
2.評価方法
上記のようにして作製された実施例及び比較例の自着テープについて、以下の方法に従って自着剤層同士の接着力、密着性、自着層反対面の鉛筆筆記性、耐水性、自着剤層とその反対面の接着力を評価した。これらの評価結果を表1に示した。
【0037】
〈自着層同士の接着力〉
自着剤層同士が対向するように積層させ、荷重350gのロールを1往復させ、圧着する。引張試験機(商品名:テンシロンRTG-1210、エーアンド・デイ社製)を用いて、引張速度300mm/分でT型剥離による接着力(N/6mm)を測定した。
【0038】
〈密着性〉
自着テープを15mm幅×200mm長にカットした。自着テープの先端を長手方向に自着剤層を内側に約10mm程度折り、自着層と重ね合わせた。自着テープで直径15mm、長さ150mm、重さ約20gの円柱の中心を包み、自着テープの両端の自着剤層同士を重ね合わせた。自着剤層同士を重ね合わせた方向に円柱を3回転させ、次いで、円柱を逆方向に戻した。テープの両端を手で掴み素早く剥した時の状態を確認した。
○:
図2(A)に示すように自着剤層同士の界面で剥がれる
×:
図2(B)に示すように自着剤層が円柱に付着する。もしくは、自着剤層が相手側の自着剤層に取られる。
【0039】
〈自着層反対面の鉛筆筆記性〉
自着層反対面への手書きによる筆記性を確認した。筆記には、ユニ0.5-201HBのシャープペン替芯(三菱鉛筆製)を使用した。
○:筆記部がはっきりと判別可能
×:筆記が事実上出来ない
【0040】
〈耐水性〉
自着テープを1時間水に浸した後、両手で軽く引っ張った時、テープが切断しないか調べた。
○:切断なし
×:切れ目が入る。もしくは完全に切断した
【0041】
〈自着剤層とその反対面の接着力〉
自着剤層とその反対面(基材)を対向するように積層させ、500g/cm2の圧力で圧着し、50℃の環境に96時間放置した後、引張試験機(商品名:テンシロンRTG-1210、エーアンド・デイ社製)を用いて、引張速度300mm/分でT型剥離による接着力(N/15mm)を測定した。
【0042】
【0043】
表1に示すように、実施例1~3では、自着剤層3同士の自着力が1.2N/6mm以上であり、自着剤層とその反対面(基材)との接着力が0.4N/15mm以下となり、自着力が高くしかも容易に巻き解くことができる。また、実施例1~3では、密着性、筆記性、および耐水性のいずれも満足な結果が得られた。
【0044】
これに対して、比較例1では、アンカー剤が塩素化ポリオレフィンであったために、アンカー剤層と自着剤層との密着力が弱く、その結果、
図2(B)に示すように、自着剤層が円柱に付着した。
【0045】
比較例2では、アンカー剤層を有しないため、基材と自着剤層との接着力が弱く、その結果、
図2に示すように、自着剤層が円柱に付着した。また、比較例2では、自着剤層とその反対面との接着力が0.4N/15mmを超えているため、容易に巻き解くことができないものとなった。
【0046】
比較例3では、基材がPET樹脂であったため、筆記ができなかった。
【0047】
比較例4では、基材が晒クラフト紙であったために、自着テープが切断した。
【0048】
比較例5では、充填材/バインダー比が0.009であり、0.044を下回ってバインダー比が高かったため、自着剤層とその反対面の接着力が0.40N/15mmを上回って容易に巻き解くことができないものとなった。
【0049】
比較例6では、充填材/バインダー比が0.093であり、0.066を上回って充填材比が高かったため、自着剤層とその反対面の接着力が0.40N/15mmを大幅に下回った結果、自着力が1.2N/6mmを下回った。