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特開2024-100438転倒検知システムおよび転倒検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100438
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】転倒検知システムおよび転倒検知方法
(51)【国際特許分類】
   A47K 13/24 20060101AFI20240719BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20240719BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A47K13/24
G08B25/04 K
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004435
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】523017280
【氏名又は名称】おおいたサテライトオフィス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】上杉 照明
【テーマコード(参考)】
2D037
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
2D037AA02
2D037AD16
5C086AA22
5C086BA04
5C086CA15
5C086DA08
5C086FA18
5C087AA21
5C087DD03
5C087DD30
5C087EE08
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF02
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG70
5C087GG83
(57)【要約】
【課題】ユーザのプライバシーを守りながらユーザが便座から立ち上がる際に転倒したか否かを検知して出力することにより、遠隔でもユーザの見守りを行うことができる転倒検知システムおよび転倒検知方法を提供する。
【解決手段】転倒検知システムは、複数の圧力センサ24a~24jが設けられ、ユーザが着座することができる着座シート22と、着座シート22の各圧力センサ24a~24jに通信可能に接続された制御装置10とを備えている。制御装置10は、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形に基づいて着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断し、ユーザが転倒したと判断したときにユーザが転倒した旨の情報を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧力センサが設けられ、ユーザが着座することができる着座シートと、
前記着座シートの各前記圧力センサに通信可能に接続された制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
各前記圧力センサによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形に基づいて前記着座シートから離座したユーザが転倒したか否かを判断し、ユーザが転倒したと判断したときにユーザが転倒した旨の情報を出力する制御部を有する、転倒検知システム。
【請求項2】
前記制御部は、各前記圧力センサによる検知結果に基づいて作成される各圧力波形と、予め設定されているユーザが転倒することなく離座したときの各圧力波形との差異に基づいて、前記着座シートから離座したユーザが転倒したか否かを判断する、請求項1記載の転倒検知システム。
【請求項3】
前記制御装置は、ユーザの身体特徴量に係る情報を受け付ける受付部を有しており、
前記制御部は、各前記圧力センサによる検知結果に基づいて作成される各圧力波形および前記受付部により受け付けたユーザの身体特徴量と、当該身体特徴量に対応する予め設定されているユーザが転倒することなく離座したときの各圧力波形との差異に基づいて、前記着座シートから離座したユーザが転倒したか否かを判断する、請求項1記載の転倒検知システム。
【請求項4】
前記着座シートには、2個乃至8個の範囲内の数の前記圧力センサからなるセンサ群が左右一対配置されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の転倒検知システム。
【請求項5】
各前記圧力センサは前記着座シートが載置される便座の手前側から奥方に向かって並ぶよう配置されている、請求項4記載の転倒検知システム。
【請求項6】
前記制御部は、左右一対の前記センサ群のうち一方の前記センサ群を構成する各前記圧力センサによる検知結果に基づいて作成される各圧力波形と、他方の前記センサ群を構成する各前記圧力センサによる検知結果に基づいて作成される各圧力波形との差異に基づいて、前記着座シートから離座したユーザが転倒したか否かを判断する、請求項4または5記載の転倒検知システム。
【請求項7】
前記制御部は、ユーザが転倒することなく前記着座シートから離座したときの各前記圧力センサによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形と、ユーザが前記着座シートから離座したときに転倒したときの各前記圧力センサによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形とをそれぞれ教師データとして機械学習により作成される学習済データを用いて、各前記圧力センサによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形に基づいて前記着座シートから離座したユーザが転倒したか否かを判断する、請求項1記載の転倒検知システム。
【請求項8】
前記制御装置は、ユーザの身体特徴量に係る情報を受け付ける受付部を有しており、
前記制御部は、ユーザが転倒することなく前記着座シートから離座したときの各前記圧力センサによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形およびこのユーザの身体的特徴と、ユーザが前記着座シートから離座したときに転倒したときの各前記圧力センサによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形およびこのユーザの身体的特徴とをそれぞれ教師データとして機械学習により作成される学習済データを用いて、各前記圧力センサによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形および前記受付部により受け付けたユーザの身体的特徴に基づいて前記着座シートから離座したユーザが転倒したか否かを判断する、請求項1記載の転倒検知システム。
【請求項9】
各前記圧力センサによる検知結果に係る情報を表示する表示装置を更に備えた、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の転倒検知システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記制御部により出力されたユーザが転倒した旨の情報を外部装置に送信する通信部を有している、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の転倒検知システム。
【請求項11】
各前記圧力センサによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形に係る情報を記憶する記憶装置を更に備えた、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の転倒検知システム。
【請求項12】
前記制御装置は、各前記圧力センサによる検知結果に係る信号を複数の圧力波形に係るデジタル情報に変換する変換器を有しており、
前記制御部は、前記変換器により信号から変換された前記デジタル情報に基づいて前記着座シートから離座したユーザが転倒したか否かを判断する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の転倒検知システム。
【請求項13】
複数の圧力センサが設けられ、ユーザが着座することができる着座シートと、前記着座シートの各前記圧力センサに通信可能に接続された制御装置とを備えた転倒検知システムによる転倒検知方法であって、
各前記圧力センサによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形に基づいて前記着座シートから離座したユーザが転倒したか否かを前記制御装置により判断する工程と、
前記制御装置によりユーザが転倒したと判断されたときにユーザが転倒した旨の情報を前記制御装置により出力する工程と、
を備えた、転倒検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが着座することができる着座シートおよび制御装置を備えた転倒検知システムおよびこのような転倒検知システムによる転倒検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
介護施設等において、高齢者等の被介護者がトイレに入ったときに便座から立ち上がる際に上手く立ち上がることができず転倒してしまうことがある。このため、被介護者の介護を行う介護者は、被介護者がトイレの中にいるときには常にトイレの前で待機していなければならず、その間に他の作業を行うことができないという問題がある。従来から、例えば特許文献1等に開示されるように被介護者が便座に座ったか否かを圧力センサにより検出するシステムは知られているが、このような従来のシステムでは被介護者が便座から立ち上がる際に転倒したか否かまでは検知することはできなかった。
【0003】
また、特許文献2には、高齢者の転倒リスクを防止する目的で、立位姿勢および座位姿勢の間の遷移に対応する起居候補運動を識別できる圧力センサシート装置が開示されている。しかしながら、特許文献2に開示される圧力センサシート装置は被計測者の足底から圧力センサシートにかかる圧力分布の変化から被計測者の坐位状態から立位状態への遷移運動を推定するものであり、被介護者が便座から立ち上がる際に転倒したか否かまでは検知することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-012426号公報
【特許文献2】特開2020-190515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、ユーザのプライバシーを守りながらユーザが便座から立ち上がる際に転倒したか否かを検知して出力することにより、遠隔でもユーザの見守りを行うことができる転倒検知システムおよび転倒検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の転倒検知システムは、
複数の圧力センサが設けられ、ユーザが着座することができる着座シートと、
前記着座シートの各前記圧力センサに通信可能に接続された制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
各前記圧力センサによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形に基づいて前記着座シートから離座したユーザが転倒したか否かを判断し、ユーザが転倒したと判断したときにユーザが転倒した旨の情報を出力する制御部を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の転倒検知方法は、
複数の圧力センサが設けられ、ユーザが着座することができる着座シートと、前記着座シートの各前記圧力センサに通信可能に接続された制御装置とを備えた転倒検知システムによる転倒検知方法であって、
各前記圧力センサによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形に基づいて前記着座シートから離座したユーザが転倒したか否かを前記制御装置により判断する工程と、
前記制御装置によりユーザが転倒したと判断されたときにユーザが転倒した旨の情報を前記制御装置により出力する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の転倒検知システムおよび転倒検知方法によれば、ユーザのプライバシーを守りながらユーザが便座から立ち上がる際に転倒したか否かを検知して出力することにより、遠隔でもユーザの見守りを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態による転倒検知システムの概略的な構成を示す概略構成図である。
図2図1に示す転倒検知システムにおける着座シートの構成を示す構成図である。
図3図1に示す転倒検知システムにおける制御装置の構成を示す構成図である。
図4】着座シートから離座したユーザが転倒することなく立ち上がったときの各圧力センサによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形のグラフである。
図5】ユーザが左手で手すりを握りながら転倒することなく着座シートから離座したときの各圧力センサによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形のグラフである。
図6図5に示すグラフのうち左側のセンサ群の各圧力センサによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形のグラフである。
図7】着座シートから離座したユーザが左側に転倒したときの各圧力センサによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形のグラフである。
図8図7に示すグラフのうち左側のセンサ群の各圧力センサによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形のグラフである。
図9図7に示すグラフのうち右側のセンサ群の各圧力センサによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図3は、本実施の形態に係る転倒検知システムを示す図である。また、図4乃至図9は、着座シートからユーザが離座したときの各圧力センサによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形のグラフである。なお、図4乃至図9に示すグラフにおいて、各グラフ61~70は、それぞれ各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される圧力波形である。具体的には、グラフ61は圧力センサ24aに対応し、グラフ62は圧力センサ24bに対応し、グラフ63は圧力センサ24cに対応し、グラフ64は圧力センサ24dに対応し、グラフ65は圧力センサ24eに対応している。また、グラフ66は圧力センサ24fに対応し、グラフ67は圧力センサ24gに対応し、グラフ68は圧力センサ24hに対応し、グラフ69は圧力センサ24iに対応し、グラフ70は圧力センサ24jに対応している。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態による転倒検知システムは、複数の圧力センサ24a~24jが設けられ、ユーザが着座することができる左右一対の着座シート22と、各着座シート22の圧力センサ24a~24jに通信可能に接続された制御装置10とを備えている。左右一対の着座シート22は便座20に載せられるようになっている。このような転倒検知システムの各構成要素について以下に詳述する。
【0012】
図1および図2に示すように、左右一対の着座シート22のうち着座したユーザから見て左側の着座シート22には、2個乃至8個の範囲内の数の圧力センサ24a~24eからなるセンサ群が設けられている。また、左右一対の着座シート22のうち着座したユーザから見て右側の着座シート22には、2個乃至8個の範囲内の数の圧力センサ24f~24jからなるセンサ群が設けられている。各圧力センサ24a~24e、24f~24jは、各々の着座シート22の裏側(すなわち、各着座シート22における便座側20の面)に配置されている。また、各圧力センサ24a~24e、24f~24jは、便座20の手前側から奥方に向かって並ぶよう配置されている。なお、図1および図2では、左右一対の着座シート22の各々に5個の圧力センサ24a~24e、24f~24jが設けられた態様が示されているが、本実施の形態では各着座シート22に設けられる圧力センサの数は5個に限定されることはない。ここで、左右一対の着座シート22の各々に設けられる圧力センサの数を2個以上とすることにより、後述するようにユーザが側壁に設置された手すりを握りながら着座シート22から離座する場合と、着座シート22から離座したユーザが転倒した場合とを区別することができる。また、左右一対の着座シート22の各々に設けられる圧力センサの数を8個以下とすることにより、着座シート22の製造コストを低減することができる。なお、左右一対の着座シート22の各々に設けられる圧力センサの数は3個乃至7個の範囲内の数であることがより好ましく、4個乃至6個の範囲内の数であることが更に好ましい。
【0013】
各圧力センサ24a~24jは、例えばセンサ部の直径が約20mmであり厚さが0.3mmである小型の円盤形状のものである。各圧力センサ24a~24jは無線または有線により制御装置10と通信可能に接続されている。
【0014】
図1に示すように、制御装置10は、制御部12と、受付部14と、通信部16と、各圧力センサ24a~24jに対応して設けられた複数の変換器18と、記憶部19とを備えている。制御部12は、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形に基づいて着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断し、ユーザが転倒したと判断したときにユーザが転倒した旨の情報を出力する。受付部14は、ユーザの身体的特徴に係る情報を外部から無線または有線の通信により受け付ける。通信部16は、制御部12により出力されたユーザが転倒した旨の情報を、外部装置(例えば、介護施設の介護者が所持する携帯端末30やトイレの外に設置されている警報器32)に送信する。各変換器18は、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に係る情報(アナログ信号)を、各圧力センサ24a~24jに対応する複数の圧力波形に係るデジタル情報に変換する。記憶部19は、予め設定されているユーザが転倒することなく離座したときの各圧力波形に係る情報を記憶している。
【0015】
このような制御装置10の具体的な構成について図3を用いて説明する。図3に示すように、制御装置10は、アナログフロントエンド11と、マルチプレクサ13とを有しており、各圧力センサ24a~24jから送信された検知信号はアナログフロントエンド11で受け付けられる。各変換器18は例えばA/Dコンバータから構成され、アナログフロントエンド11で受け付けられた信号(アナログ信号)を、各圧力センサ24a~24jに対応する複数の圧力波形に係るデジタル情報に変換する。マルチプレクサ13は、各変換器18から送られた複数の入力(すなわち、複数の圧力波形に係るデジタル情報)を1つの信号として出力する。ここで、図4乃至図9に示すように、各圧力波形は、横軸を時間、縦軸を各圧力センサ24a~24jにより検知された圧力の大きさとするグラフで示される。制御部12は、マルチプレクサ13により出力されたデジタル情報における複数の圧力波形に基づいて着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断する。制御部12による判断手法については後述する。そして、着座シート22から離座したユーザが転倒したと制御部12により判断された場合は、制御部12から通信部16に通知信号が送られ、通信部16は、制御部12から通知信号を受け付けると、ユーザが転倒した旨の情報を介護施設の介護者が所持する携帯端末30やトイレの外に設置されている警報器32に送信する。なお、このような警報器32が介護施設の事務室等に設置されていてもよい。また、制御装置10には電源部17が設けられており、外部のACアダプタ15から電源部17に電力が供給されることによりアナログフロントエンド11、マルチプレクサ13、変換器18、制御部12、通信部16、記憶部19等が作動するようになっている。
【0016】
また、図1に示すように、制御装置10には表示装置40や記憶装置50が通信可能に接続されている。表示装置40は例えばトイレの中における便座20に座ったユーザが見ることができる位置や、ユーザの介護を行う介護者が滞在する事務室等に設置されている。また、記憶装置50は、ユーザの介護を行う介護者が滞在する事務室等に設置されている。なお、記憶装置50が制御装置10の外部ではなく内部に設けられていてもよい。
【0017】
表示装置40には、図2のような便座20、左右一対の着座シート22および各圧力センサ24a~24jを模式的に示す画面が表示される。また、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に係る情報が制御装置10から通信部16により表示装置40に送信され、表示装置40におけるユーザの体重がかかっている各圧力センサ24a~24jに対応する位置にあるLEDが点灯する。例えば圧力センサ24aにユーザの体重がかかっている場合は、表示装置40における圧力センサ24aに対応する位置にあるLEDが点灯する。このことにより、ユーザや介護者はどの圧力センサ24a~24jに圧力がかかっているかを一目で認識することができるようになる。また、制御装置10の通信部16はユーザが着座シート22から離座するときの各圧力センサ24a~24jに対応する圧力波形に係る情報を記憶装置50に送信し、この情報が記憶装置50に記憶される。
【0018】
次に、このような構成からなる本実施の形態の転倒検知システムによる転倒検知方法について説明する。
【0019】
介護者にトイレに連れられた被介護者等のユーザは、トイレの室内で単独でトイレ内で便座20に座る。その後、ユーザは便座20から立ち上がってトイレから退出するが、このような動作が行われている間に便座20に載せられた左右一対の着座シート22に設けられている各圧力センサ24a~24jにより圧力検知が経時的に行われている。そして、各圧力センサ24a~24jによる圧力検知の結果が検知信号として制御装置10に送信される。制御装置10では、各圧力センサ24a~24jから送信された検知信号がアナログフロントエンド11で受け付けられる。そして、各変換器18は、アナログフロントエンド11で受け付けられた信号を、各圧力センサ24a~24jに対応する複数の圧力波形に係るデジタル情報に変換し、マルチプレクサ13は、各変換器18から送られた複数の入力を1つの信号として出力する。
【0020】
ユーザが着座シート22から転倒することなく離座した場合は、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形は図4に示すものとなる。また、ユーザが左手で手すりを握りながら転倒することなく着座シート22から離座した場合は、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形は図5に示すものとなる。一方、着座シート22から離座したユーザが左側に転倒したときの各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形のグラフは図7に示すようなものとなる。
【0021】
制御部12は、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形に基づいて、着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断する。そして、制御部12は、ユーザが転倒したと判断したときには、ユーザが転倒した旨の情報を出力する。このような制御部12によるユーザが転倒したか否かの判断方法の詳細については後述する。
【0022】
ユーザが転倒した旨の情報が制御部12により出力されると、制御部12から通信部16に通知信号が送られ、通信部16は、制御部12から通知信号を受け付けると、ユーザが転倒した旨の情報を介護施設の介護者が所持する携帯端末30やトイレの外に設置されている警報器32に送信する。このことにより、トイレから離れた場所にいる介護者はトイレ内で被介護者等のユーザが転倒したことを知ることができ、早急に対応することができる。また、トイレの傍に警報器32が設置されていれば、担当の介護者がトイレから離れた場所にいる場合でも、近くにいる別の介護者がすぐに対応することができる。
【0023】
また、例えば介護施設でユーザがリハビリを行っている際に、身体の左右のうち一方に障害がある場合に、着座シート22から離座するときに左右のバランスを取ることが難しく一方に体重が重点的にかかってしまう場合がある。このような場合に、ユーザは表示装置40に表示される画面を見ることによって、各圧力センサ24a~24jの点灯状態によって着座シート22上での体重の偏りを認識することができ、このような偏りが改善するよう着座シート22からの離座の動作を意識するようになる。すなわち、ユーザはリハビリの過程で自分の身体の現在の状態を表示装置40に表示される情報から確認することができる。このように、本実施の形態による転倒検知システムは、トイレ内でのユーザの見守りだけではなく、ユーザのリハビリにも貢献することができる。
【0024】
また、ユーザが着座シート22から離座するときの各圧力センサ24a~24jに対応する圧力波形に係る情報を記憶装置50に記憶させておくことによって、ユーザやこのユーザの介護を行う介護者は、リハビリ過程における過去のユーザの着座シート22からの離座の動作を記憶装置50に記憶されている圧力波形の情報に基づいて確認することができる。このことにより、例えばユーザのリハビリ過程において状況がどのように改善しているかをユーザや介護者が認識することができるようになる。
【0025】
次に、制御部12によるユーザが転倒したか否かの判断方法について説明する。上述したように、記憶部19には、予め設定されているユーザが転倒することなく離座したときの各圧力波形に係る情報が記憶されている。例えば、図4は、着座シート22から離座したユーザが転倒することなく立ち上がったときの各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形のグラフであるが、このような複数の圧力波形に係る情報が記憶部19に記憶されている。そして、制御部12は、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される各圧力波形と、予め設定されている(すなわち、記憶部19に記憶されている)ユーザが転倒することなく離座したときの各圧力波形との差異に基づいて、着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断する。具体的に説明すると、制御部12は、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成されるユーザが着座シート22から離座するときの各圧力波形と、予め設定されているユーザが転倒することなく離座したときの各圧力波形との間の相関係数を各圧力センサ24a~24j毎に算出する。そして、特定の1または複数の圧力センサ24a~24jに対応する相関係数が予め設定されている所定の閾値よりも小さくなった場合に、着座シート22から離座したユーザが転倒したと制御部12が判断する。この際に、制御部12は、特定の複数の圧力センサ24a~24jに対応する相関係数が全て予め設定されている所定の閾値よりも小さくなった場合に、着座シート22から離座したユーザが転倒したと判断するような設定となっていてもよい。あるいは、制御部12は、特定の複数の圧力センサ24a~24jに対応する相関係数のうち少なくとも一部の相関係数が予め設定されている所定の閾値よりも小さくなった場合に、着座シート22から離座したユーザが転倒したと判断するような設定となっていてもよい。
【0026】
具体的に説明すると、図7は、着座シート22から離座したユーザが左側に転倒したときの各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形のグラフである。ここで、図7に示すように、着座シート22から離座したユーザが左側に転倒したときには、着座したユーザから見て便座20の前から3番目の圧力センサ24cに対応する圧力波形が、ユーザが転倒しない場合の圧力波形(図4参照)と比較して大きく変化し、相関係数が小さくなる。このため、特定の圧力センサとして便座20の前から3番目の圧力センサ24c、24hを予め設定しておくことにより、この特定の圧力センサ24c、24hに対応する相関係数が予め設定されている所定の閾値よりも小さくなったことをもってして、着座シート22から離座したユーザが転倒したと制御部12が判断する。
【0027】
このような制御部12による判断方法によれば、例えばユーザが左手で手すりを握りながら転倒することなく着座シート22から離座したときには、着座シート22から離座したユーザが左右に転倒したときとは異なる複数の圧力波形のグラフとなる。すなわち、ユーザが左手で手すりを握りながら転倒することなく着座シート22から離座したときには、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形のグラフは図5に示すようなものとなり、ユーザが着座シート22から離座したときに最も大きく変化する圧力波形(グラフ64)に対応する圧力センサ24dは、着座シート22から離座したユーザが左側に転倒したときに最も大きく変化する圧力波形(グラフ63)に対応する圧力センサ24cとは異なるようになる。このため、制御部12が、特定の複数の圧力センサ24a~24j(例えば、前から3番目の圧力センサ24c、24h)に対応する相関係数が予め設定されている所定の閾値よりも小さくなった場合に、着座シート22から離座したユーザが転倒したと判断するような設定となっている場合は、ユーザが手すりを握りながら転倒することなく着座シート22から離座したときと、着座シート22から離座したユーザが転倒したときとで異なる判断結果とすることができる。
【0028】
なお、本実施の形態による制御部12によるユーザが転倒したか否かの判断方法はこのような態様に限定されることはない。
【0029】
例えば、制御部12は、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される各圧力波形だけではなく、ユーザの身体的特徴も考慮して着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断するようになっていてもよい。ここで、ユーザの身体的特徴とは、ユーザの身長、体重、BMI、年齢、性別、既往歴、認知症の度合い等のうち何れかまたはこれらを組み合わせたものをいう。この場合、記憶部19には、ユーザの身体的特徴に対応する、予め設定されているユーザが転倒することなく離座したときの各圧力波形に係る情報が記憶されている。具体的には、ユーザの身体的特徴が例えば体重である場合、所定の値のレンジ毎の(例えば、3kg刻みのレンジ毎の)、ユーザが転倒することなく離座したときの各圧力波形に係る情報が記憶部19に記憶されている。
【0030】
そして、ユーザがトイレに入る際に、このユーザの身体的特徴がユーザ自身またはユーザの介護を行う介護者によって制御装置10に入力され、入力された情報が受付部14により受け付けられる。あるいは、トイレの前にカメラが設けられており、カメラにより撮像された画像に基づいてユーザの識別が行われ、このユーザの識別情報に対応する身体的特徴が制御装置10に入力されるようになっていてもよい。そして、実際にユーザが便座20に座った後にこの便座20から立ち上がる際に、各圧力センサ24a~24jによる検知結果が制御装置10に送信され、各変換器18により複数の圧力波形に変換されるが、制御部12は、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される各圧力波形および受付部14により受け付けたユーザの身体特徴量と、当該身体特徴量に対応する予め設定されているユーザが転倒することなく離座したときの各圧力波形との差異に基づいて、着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断する。例えば、ユーザの身体的特徴として体重が例えば70kgであることが受付部14により受け付けられると、制御部12は、記憶部19に記憶されているこの70kgが含まれる体重のレンジ(例えば、69kg~72kgのレンジ)に対応するユーザが転倒することなく離座したときの各圧力波形と、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される各圧力波形との相関係数を各圧力センサ24a~24j毎に算出する。そして、特定の1または複数の圧力センサ24a~24jに対応する相関係数が予め設定されている所定の閾値よりも小さくなった場合に、着座シート22から離座したユーザが転倒したと制御部12が判断する。
【0031】
また、本実施の形態では、機械学習により生成された学習済データを用いて、着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを制御部12が判断するようになっていてもよい。具体的には、ユーザが転倒することなく着座シート22から離座したときの各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形と、ユーザが着座シート22から離座したときに転倒したときの各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形とをそれぞれ教師データとして、深層学習(ディープラーニング)等を用いて機械学習を行うことにより学習済データを作成する。そして、制御部12は、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形に係る情報が入力されると、作成された学習済データを用いて着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断する。このような方法によれば、教師データが多くなればなるほど学習済データの精度を向上させることができる。このように、機械学習によって学習済データを作成し、この学習済データを用いて制御部12が着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断する場合は、より精度よく着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断することができる。
【0032】
また、機械学習により生成された学習済データを用いて、着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを制御部12が判断するにあたり、圧力波形だけではなくユーザの身体的特徴も考慮して作成された学習済データを用いてもよい。具体的には、ユーザが転倒することなく着座シート22から離座したときの各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形およびこのユーザの身体的特徴と、ユーザが着座シート22から離座したときに転倒したときの各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形およびこのユーザの身体的特徴とをそれぞれ教師データとして、深層学習(ディープラーニング)等を用いて機械学習を行うことにより学習済データを作成する。そして、制御部12は、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形に係る情報が入力されるとともに受付部14によりユーザの身体的特徴を受け付けると、作成された学習済データを用いて着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断する。このような方法によれば、ユーザの身体的特徴も加味して機械学習によって学習済データを作成し、この学習済データを用いて制御部12が着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断することにより、判断の精度をより向上させることができる。
【0033】
また、制御部12は、予め設定されている(すなわち、記憶部19に記憶されている)ユーザが転倒することなく離座したときの各圧力波形に係る情報を用いる代わりに、左右一対のセンサ群のうち一方のセンサ群(例えば、着座したユーザから見て左側の着座シート22に設けられたセンサ群)を構成する各圧力センサ24a~24eによる検知結果に基づいて作成される各圧力波形と、他方のセンサ群(例えば、着座したユーザから見て右側の着座シート22に設けられたセンサ群)を構成する各圧力センサ24f~24jによる検知結果に基づいて作成される各圧力波形との差異に基づいて、着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断してもよい。具体的には、便座20の最も手前側にある左右一対の圧力センサ24a、24fに対応する圧力波形の相関係数、便座20の手前側から2番目にある左右一対の圧力センサ24b、24gに対応する圧力波形の相関係数、便座20の手前側から3番目にある左右一対の圧力センサ24c、24hに対応する圧力波形の相関係数、便座20の手前側から4番目にある左右一対の圧力センサ24d、24iに対応する圧力波形の相関係数、便座20の最も奥方にある左右一対の圧力センサ24e、24jに対応する圧力波形の相関係数を制御部12がそれぞれ算出し、少なくとも1つまたは複数の相関係数が所定の閾値よりも小さくなった場合に制御部12はユーザが着座シート22から離座するときに転倒したと判断する。具体的には、上述したように図7は着座シート22から離座したユーザが左側に転倒したときの各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形のグラフであるが、図8は、図7に示すグラフのうち左側のセンサ群の各圧力センサ24f~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形のグラフであり、図9は、図7に示すグラフのうち右側のセンサ群の各圧力センサ24a~24eによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形のグラフである。このように、ユーザが着座シート22から離座するときに左右のいずれか一方に転倒した場合は、左右の圧力センサ24a~24jに対応する圧力波形が大きく異なるようになるため、左右一対の圧力センサ24a~24jに対応する圧力波形の相関係数も小さくなる。このため、ユーザが転倒することなく離座したときの各圧力波形に係る情報を予め設定していなくても、左右一対の圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される各圧力波形の差異に基づいて、着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを制御部12が判断することができる。
【0034】
以上のような構成からなる本実施の形態の転倒検知システムおよびこのような転倒検知方法によれば、ユーザが着座することができる着座シート22に設けられた各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形に基づいて着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを制御装置10により判断し、制御装置10によりユーザが転倒したと判断されたときにユーザが転倒した旨の情報を制御装置10により出力する。このことにより、ユーザのプライバシーを守りながらユーザが便座20から立ち上がる際に転倒したか否かを検知して出力することにより、遠隔でもユーザの見守りを行うことができる。より詳細には、例えば、介護施設等において被介護者等のユーザがトイレで用を足すときに、このユーザの介護を行う介護者がトイレから離れていても、もしユーザが便座20から立ち上がる際に転倒した場合には、ユーザが転倒した旨の情報が制御装置10から出力される。このため、介護者はトイレのそばに居続けなければならず他の業務を行うことができないといった不便さを解消することができる。また、トイレ内のユーザの行動をカメラ等で撮影する場合はユーザのプライバシーを毀損するという問題が生じるが、本実施の形態による転倒検知システムや転倒検知方法ではトイレ内のユーザの行動自体を撮像することなくユーザが転倒したか否かを検知することができるため、ユーザのプライバシーを保護することができる。
【0035】
また、本実施の形態の転倒検知システムおよび転倒検知方法によれば、制御部12は、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される各圧力波形と、予め設定されているユーザが転倒することなく離座したときの各圧力波形との差異に基づいて、着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断する。この場合には、着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを制御部12が精度よく判断することができる。
【0036】
また、制御装置10は、ユーザの身体特徴量に係る情報を受け付ける受付部14を有しており、制御部12は、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される各圧力波形および受付部14により受け付けたユーザの身体特徴量と、当該身体特徴量に対応する予め設定されているユーザが転倒することなく離座したときの各圧力波形との差異に基づいて、着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断する。この場合には、着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを制御部12が更に精度よく判断することができる。
【0037】
また、着座シート22には、2個乃至8個の範囲内の数の圧力センサ24a~24e、24f~24jからなるセンサ群が左右一対配置されている。この場合には、制御部12は、着座シート22から離座したユーザが転倒したことと、ユーザが手すりを握りながら着座シート22から離座したことを区別することができる。
【0038】
また、上述したように、各圧力センサ24a~24e、24f~24jは着座シート22が載置される便座20の手前側から奥方に向かって並ぶよう配置されている。ここで、着座シート22から離座したユーザが転倒した場合と、ユーザが手すりを握りながら着座シート22から離座した場合とでは、ユーザの体重が最もかかる圧力センサは着座シート22の奥行き方向によって異なるものとなる。すなわち、例えば、ユーザが手すりを握りながら着座シート22から離座したときに最も大きく変化する圧力波形に対応する圧力センサは前から4番目のものであるのに対し、着座シート22から離座したユーザが転倒したときに最も大きく変化する圧力波形に対応する圧力センサは前から3番目のものである。このように、各圧力センサ24a~24e、24f~24jを、着座シート22が載置される便座20の手前側から奥方に向かって並ぶよう配置することによって、制御部12は、着座シート22から離座したユーザが転倒したことと、ユーザが手すりを握りながら着座シート22から離座したことをより確実に区別することができる。
【0039】
また、制御部12は、左右一対のセンサ群のうち一方のセンサ群を構成する各圧力センサ(例えば、各圧力センサ24a~24e)による検知結果に基づいて作成される各圧力波形と、他方のセンサ群を構成する各圧力センサ(例えば、各圧力センサ24f~24j)による検知結果に基づいて作成される各圧力波形との差異に基づいて、着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断してもよい。この場合も、着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを制御部12が更に精度よく判断することができる。
【0040】
また、制御部12は、ユーザが転倒することなく着座シート22から離座したときの各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形と、ユーザが着座シート22から離座したときに転倒したときの各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形とをそれぞれ教師データとして機械学習により作成される学習済データを用いて、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形に基づいて着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断してもよい。この場合には、機械学習により作成される学習済データを用いるため、着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを制御部12が更に精度よく判断することができる。
【0041】
また、制御装置10は、ユーザの身体特徴量に係る情報を受け付ける受付部14を有しており、制御部12は、ユーザが転倒することなく着座シート22から離座したときの各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形およびこのユーザの身体的特徴と、ユーザが着座シート22から離座したときに転倒したときの各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形およびこのユーザの身体的特徴とをそれぞれ教師データとして機械学習により作成される学習済データを用いて、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形および受付部14により受け付けたユーザの身体的特徴に基づいて着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断してもよい。この場合には、ユーザの身体的特徴も加味して学習済データを機械学習により作成しているため、着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを制御部12が更に精度よく判断することができる。
【0042】
また、本実施の形態による転倒検知システムは、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に係る情報を表示する表示装置40を更に備えている。この場合には、ユーザや介護者はどの圧力センサ24a~24jに圧力がかかっているかを一目で認識することができるようになるため、例えば表示装置40における各圧力センサ24a~24jの位置に対応するLEDの点灯状態によって着座シート22上での体重の偏りを認識することができ、このような偏りが改善するようユーザは着座シート22からの離座の動作を意識するようになる。すなわち、ユーザはリハビリの過程で自分の身体の現在の状態を表示装置40に表示される情報から確認することができる。この場合には、本実施の形態による転倒検知システムを、トイレ内でのユーザの見守りだけではなく、ユーザのリハビリにも貢献させることができる。
【0043】
また、制御装置10は、制御部12により出力されたユーザが転倒した旨の情報を外部装置(例えば、携帯端末30や警報器32)に送信する通信部16を有している。このことにより、携帯端末30を所持する介護者がトイレから離れた場所にいる場合や警報器32が設置されている事務室等にいる場合でも、ユーザが転倒した場合には介護者はすぐにこのことを認識することができるようになる。
【0044】
また、本実施の形態による転倒検知システムは、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に基づいて作成される複数の圧力波形に係る情報を記憶する記憶装置50を更に備えていてもよい。この場合には、ユーザやこのユーザの介護を行う介護者は、リハビリ過程における過去のユーザの着座シート22からの離座の動作を記憶装置50に記憶されている圧力波形の情報に基づいて確認することができるため、例えばユーザのリハビリ過程において状況がどのように改善しているかをユーザや介護者が認識することができるようになる。
【0045】
また、制御装置10は、各圧力センサ24a~24jによる検知結果に係る信号を複数の圧力波形に係るデジタル情報に変換する変換器18を有しており、制御部12は、変換器18により信号から変換されたデジタル情報に基づいて着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断するようになっている。このことにより、制御部12は複数の圧力センサ24a~24jに対応する圧力波形に基づいてユーザが転倒したか否かを精度よく判断することができるようになる。
【0046】
なお、本実施の形態による転倒検知システムや転倒検知方法は、上記の態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
【0047】
例えば、制御部12が複数の圧力波形に基づいて着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断する方法は上述したものに限定されることはない。上述した方法以外の方法により制御部12が複数の圧力波形に基づいて着座シート22から離座したユーザが転倒したか否かを判断してもよい。
【0048】
また、上記の説明ではユーザが着座シート22から離座する際に左右に転倒する場合について説明したが、ユーザが着座シート22から離座する際に前方に転倒する場合にも本実施の形態による転倒検知システムおよび転倒検知方法によりユーザが転倒したことを検知することができるようになっている。すなわち、着座シート22から離座したユーザが転倒することなく立ち上がった場合と、ユーザが着座シート22から離座する際に前に転倒する場合とで各圧力センサ24a~24jに対応する複数の圧力波形が大きく異なるようになるため、制御部12はこのような各圧力センサ24a~24jに対応する複数の圧力波形の差異に基づいてユーザが着座シート22から離座する際に転倒したか否かを判断することができるようになる。また、この際に、ユーザが手すりを握りながら着座シート22から離座した場合と、ユーザが着座シート22から離座する際に前に転倒する場合とでも各圧力センサ24a~24jに対応する複数の圧力波形が大きく異なるようになるため、制御部12は、ユーザが手すりを握りながら着座シート22から離座した場合と、ユーザが着座シート22から離座する際に前に転倒する場合とを区別することができるようになる。
【0049】
また、ユーザが転倒した旨の情報が通信部16から送信される器具として携帯端末30および警報器32を述べたが、本実施の形態による転倒検知システムや転倒検知方法では携帯端末30および警報器32の両方が設けられる必要はなく、何れか一方の器具のみが転倒検知システムや転倒検知方法に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 制御装置
11 アナログフロントエンド
12 制御部
13 マルチプレクサ
14 受付部
15 ACアダプタ
16 通信部
17 電源部
18 変換器
19 記憶部
20 便座
22 着座シート
24a~24j 圧力センサ
30 携帯端末
32 警報器
40 表示装置
50 記憶装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9