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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100443
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】無線タグ通信装置
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/00 20060101AFI20240719BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20240719BHJP
   H04B 5/48 20240101ALI20240719BHJP
   H04B 1/59 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G06K7/00 095
G06K7/10 144
H04B5/02
H04B1/59
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004441
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】槌田 直
(72)【発明者】
【氏名】大石 禎利
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅一
【テーマコード(参考)】
5K012
【Fターム(参考)】
5K012AC09
5K012AC11
5K012AE01
(57)【要約】
【課題】 無線送信するデータ信号のデータレートが受信電力の低下に伴って低下する無線タグとの通信を適正に行える状況を確保する。
【解決手段】 実施形態の無線タグ通信装置は、抽出部、取得部、測定部及び出力部を備える。抽出部は、無線タグから送信された無線信号から、データを符号化して得られたデータ信号を抽出する。取得部は、抽出部により抽出されたデータ信号から無線信号を送信した無線タグの識別子を取得する。測定部は、抽出部により抽出されたデータ信号におけるビット長を測定する。出力部は、測定部により測定されたビット長が予め定められた過大状態であるか否かを判別可能とする判別情報を、取得部により取得された識別子とともに出力する。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグから送信された無線信号から、データを符号化して得られたデータ信号を抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出されたデータ信号から無線信号を送信した無線タグの識別子を取得する取得部と、
前記抽出部により抽出されたデータ信号におけるビット長を測定する測定部と、
前記測定部により測定されたビット長が予め定められた過大状態であるか否かを判別可能とする判別情報を、前記取得部により取得された識別子とともに出力する出力部と、
を具備する無線タグ通信装置。
【請求項2】
前記測定部により測定されたビット長が予め定められた過大状態であるか否かを判定する判定部、
をさらに備え、
前記出力部は、前記判定部による判定結果を表す情報を前記判別情報として出力する、
請求項1に記載の無線タグ通信装置。
【請求項3】
前記判定部により過大状態であると判定された場合に、警報を発する発報部、
をさらに具備する請求項2に記載の無線タグ通信装置。
【請求項4】
無線信号を送信する送信部と、
前記送信部から送信された無線信号から得た電力により動作する無線タグから送信された無線信号から、データを符号化して得られたデータ信号を抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出されたデータ信号から無線信号を送信した無線タグの識別子を取得する取得部と、
前記抽出部により抽出されたデータ信号におけるビット長を測定する測定部と、
前記測定部により測定されたビット長に応じて前記送信部の送信電力を調整する調整部と、
を具備する無線タグ通信装置。
【請求項5】
前記測定部により測定されたビット長が予め定められた過大状態であるか否かを判定する判定部、
をさらに備え、
前記調整部は、前記判定部により過大状態であると判定された場合に、前記送信部の送信電力を増大させる、
請求項4に記載の無線タグ通信装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線タグ通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
受信電力を用いて動作して無線送信を行う無線タグの中には、無線送信するデータ信号のデータレートが受信電力の大きさに伴って変化するものがある。
そして無線タグ通信装置が、そのような特性の無線タグとの通信を適正に行える状況が確保できることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-345050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、無線送信するデータ信号のデータレートが受信電力の大きさに伴って変化する無線タグとの通信を適正に行える状況を確保することができる無線タグ通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の無線タグ通信装置は、抽出部、取得部、測定部及び出力部を備える。抽出部は、無線タグから送信された無線信号から、データを符号化して得られたデータ信号を抽出する。取得部は、抽出部により抽出されたデータ信号から無線信号を送信した無線タグの識別子を取得する。測定部は、抽出部により抽出されたデータ信号におけるビット長を測定する。出力部は、測定部により測定されたビット長が予め定められた過大状態であるか否かを判別可能とする判別情報を、取得部により取得された識別子とともに出力する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態に係るタグ読取装置の要部回路構成を表すブロック図。
図2図1中の読取テーブルに含まれるデータレコードの1つのデータ構造を模式的に表す図。
図3】第1の実施形態における読取処理のフローチャート。
図4】タグデータの構造の一例を表す図。
図5図1中の復調回路から出力されるデータ信号の波形の一例を表す図。
図6】ビット長の計測処理の概念を表す図。
図7】結果画面の一例を表す図。
図8】編集後の結果画面の一例を表す図。
図9】第2の実施形態における読取処理のフローチャート。
図10】確認画面の一例を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、第1及び第2の2つの実施の形態について図面を用いて説明する。なお、以下においては、無線タグからデータを読み取るタグ読取装置を例に説明する。なお、無線タグは、広くRFID(radio frequency identification)タグとも称されるので、以下においてはRFIDタグと記すこととする。タグ読取装置は、RFIDタグとの通信を行ってデータを読み取るのであって、無線タグ通信装置の一例である。
以下に説明するタグ読取装置は、例えば作業者の手に持って利用されるハンディタイプとされて、倉庫などにおける物品探索のために用いられることが想定される。ただし、これに限らず、どのような形態、用途の通信装置として実現されても構わない。
【0008】
図1は実施形態に係るタグ読取装置1の要部回路構成を表すブロック図である。
図1に表す構成は、第1の実施形態及び第2の実施形態で共通である。
タグ読取装置1は、発振器11、DA(digital to analog)変換器12、変調器13、電力増幅器14、アンテナ共用器15、アンテナ16、直交検波器17、増幅器18、AD(analog to digital)変換器19、ベースバンド処理部20、プロセッサ21、記憶ユニット22、表示ユニット23、入力ユニット24及び通信ユニット25を含む。なお、アンテナ16、表示ユニット23及び入力ユニット24などの一部の要素は、タグ読取装置1に含まれず、タグ読取装置1に外付けされる形態であってもよい。
【0009】
発振器11は、予め定められた周波数の正弦波及び余弦波を搬送波として発生する。
DA変換器12は、ベースバンド処理部20からディジタル状態で出力される送信用のデータ信号を、アナログ化する。
変調器13は、DA変換器12でアナログ化されたデータ信号を変調信号とし、発振器11により発生された搬送波を変調して、送信信号を得る。
電力増幅器14は、変調器13から出力される送信信号を、無線送信に適するレベルまで電力増幅する。
【0010】
アンテナ共用器15は、電力増幅器14が入力端に接続される。アンテナ共用器15は、アンテナ16が入出力端に接続される。アンテナ共用器15は、直交検波器17が出力端に接続される。アンテナ共用器15は、電力増幅器14で増幅された後の送信信号が入力端に入力されると、この送信信号を入出力端からアンテナ16へと供給する。アンテナ共用器15は、アンテナ16から出力される受信信号を入出力端から入力し、出力端から出力する。
【0011】
アンテナ16は、アンテナ共用器15から供給される送信信号に応じた電波を放射する。アンテナ16は、RFIDタグ2から送信されて到来する電波に応じた電気信号を受信信号として生じさせる。なお、RFIDタグ2から送信されて到来する電波に応じてアンテナ16に生じる受信信号は、アンテナ16から放射した電波をRFIDタグ2がバックスキャッタし、RFIDタグ2が記憶しているデータ(以下、タグデータと称する)を符号化して得られたデータ信号により変調した信号を含む。上記の符号化には、例えばNRZ(non-return to zero)符号が用いられる。
【0012】
直交検波器17は、アンテナ共用器15の出力端から出力された受信信号を、発振器11により発生された搬送波を用いて直交検波する。直交検波器17は、検波により得られるアナログ状態のデータ信号を出力する。
増幅器18は、直交検波器17から出力されるデータ信号を、後述する復調回路202で復調可能なレベルまで増幅する。増幅器18は、直流成分の影響により飽和することを防止するために、増幅に先立ってコンデンサを通して直流成分を遮断する。
AD変換器19は、増幅器18により増幅されたのちのデータ信号をディジタル化する。
【0013】
ベースバンド処理部20は、符号化回路201、復調回路202、測定回路203、復号回路204及び制御回路205を含む。ベースバンド処理部20としては、例えばFPGA(field-programmable gate array)が用いられ、その内部回路として符号化回路201、復調回路202、測定回路203、復号回路204及び制御回路205がそれぞれ形成される。
【0014】
符号化回路201は、RFIDタグ2へと送るために制御回路205から出力される送信データを予め定められた符号化方式で符号化して送信用のデータ信号を得て、DA変換器12へと出力する。
復調回路202は、増幅器18でのコンデンサ通過により微分波形となっているデータ信号から、元のNRZ符号に準じた波形のデータ信号に相当する復調信号を得る。
【0015】
かくして、制御回路205、符号化回路201、DA変換器12、変調器13及び電力増幅器14での各処理が、アンテナ16からの無線送信のための処理であり、これら制御回路205、符号化回路201、DA変換器12、変調器13及び電力増幅器14の協働によって送信部としての機能が実現される。また直交検波器17、増幅器18、AD変換器19及び復調回路202による一連の処理によって、アンテナ16により受けられた無線信号からデータ信号が抽出されているのであり、これら直交検波器17、増幅器18、AD変換器19及び復調回路202の協働によって抽出部としての機能が実現される。
【0016】
測定回路203は、復調回路202から出力される復調信号のビット長を計測する。つまり測定回路203は、測定部の一例である。
復号回路204は、復調回路202から出力される復調信号に含まれるタグデータを、復号する。復号回路204は、タグデータを復号するために、測定回路203により測定されたビット長に基づいて動作タイミングを後述のように変化させる。
制御回路205は、予め定められた読取シーケンスで複数のRFIDタグ2からタグデータを読み取るべく送信データの出力を行うとともに、復号回路204から出力されたタグデータを、そのタグデータの復号元となった復調信号に関して測定回路203により測定されたビット長とともにプロセッサ21に通知する。
【0017】
プロセッサ21は、表示ユニット23及び入力ユニット24を用いたユーザインタフェースのための情報処理、あるいは通信ユニット25に接続された外部機器とのデータ授受のための情報処理などを行う。プロセッサ21としては、例えばMPU(micro processing unit)が用いられる。プロセッサ21は、各種の情報処理を、記憶ユニット22に記憶されたアプリケーションプログラムに従って実行する。
【0018】
記憶ユニット22は、上記のアプリケーションプログラムを記憶する。記憶ユニット22は、プロセッサ21が各種の情報処理を行う上で必要なデータ、あるいはプロセッサ21が各種の情報処理を行って生成されたデータなどを記憶する。記憶ユニット22が記憶するデータの1つは、読取結果を記録するための読取テーブルTAAである。読取テーブルTAAの詳細については後述する。記憶ユニット22は、例えばROM(read-only memory)、RAM(random-access memory)、EEPROM(electric erasable programmable read-only memory)、HDD(hard disc drive)、SSD(solid state drive)、あるいはその他の周知の各種の記憶デバイスを、単独で、又は組み合わせて利用できる。
【0019】
表示ユニット23は、操作者に対する各種の情報提示のための表示動作を行う表示デバイスを備える。表示デバイスは、例えば任意の画面を表示する液晶表示器である。表示デバイスは、警報のための発光を行うランプである。表示ユニット23は、他のタイプの様々な表示デバイスを備えても構わない。
【0020】
入力ユニット24は、操作者による各種指示を入力するための入力デバイスを備える。入力デバイスは、例えば表示ユニット23が備える液晶表示器の表示面に重ねられた透明なタッチセンサである。入力デバイスは、例えばハードキーである。入力ユニット24は、他のタイプの様々な入力デバイスを備えても構わない。
【0021】
通信ユニット25は、接続される外部機器とのデータ通信のための処理を行う。通信ユニット25は、例えばUSB(universal serial bus)規格に準拠したインタフェースデバイスなどのように外部機器と直接的に通信するデバイス、あるいはLAN(local area network)規格に準拠した通信デバイスなどのように外部機器と通信ネットワークを介して通信するデバイスを、単独で、又は組み合わせて利用できる。
【0022】
図2は読取テーブルTAAに含まれるデータレコードREAの1つのデータ構造を模式的に表す図である。
読取テーブルTAAは、タグデータの読み取りが完了したRFIDタグ2のそれぞれに関連付けられたデータレコードREAを含む。従って、タグデータの読み取りが完了したRFIDタグ2が1つのみであれば、この1つのRFIDタグ2に関連付けられたデータレコードREAのみが読取テーブルTAAに含まれる。複数のRFIDタグ2のタグデータの読み取りが完了していれば読取テーブルTAAは、それら複数のRFIDタグ2にそれぞれ関連付けられた複数のデータレコードREAの集合となる。
【0023】
データレコードREAは、フィールドFEA,FEB,FECを含む。フィールドFEAには、関連付けられたRFIDタグ2のタグデータの読み取り順毎に付与された読取番号がセットされる。フィールドFEBには、関連付けられたRFIDタグ2から読み取られたタグデータがセットされる。フィールドFECには、フィールドFEBにセットされるタグデータとともに制御回路205から通知されたビット長がセットされる。
【0024】
[第1の実施形態]
次に以上のように構成されたタグ読取装置1の第1の実施形態における動作につき説明する。なお、RFIDタグ2を読み取るための動作のうちの多くは、既に知られた動作と同様である。ここでは、タグ読取装置1で特徴的な動作を中心として説明する。また、以下に説明する各種の処理の内容は一例であって、一部の処理の順序の変更、一部の処理の省略、あるいは別の処理の追加などは適宜に可能である。
例えば入力ユニット24での予め定められた操作によって読取開始が指示されると、プロセッサ21はタグデータの読取のための情報処理(以下、読取処理と称する)を、記憶ユニット22に記憶されているアプリケーションプログラムに従って開始する。
【0025】
図3は第1の実施形態における読取処理のフローチャートである。
ACT11としてプロセッサ21は、タグ読取装置1との通信が可能な状態にあるRFIDタグ2からのタグデータの読み取りを行うための読取送信の開始を制御回路205に指示する。読取送信は、RFIDタグ2を動作させるための電波をアンテナ16から放射させるための動作である。送信動作中に制御回路205は、アンテナ16から放射した電波をバックスキャッタし、タグデータで変調した反射波を発生させる動作を、アンテナ16から放射させた電波を受信可能なRFIDタグ2に順次に行わせるように、周知のシーケンスで送信データを出力する。
【0026】
この送信データが、符号化回路201、DA変換器12、変調器13及び電力増幅器14により順次に処理されて得られた送信信号がアンテナ共用器15を介してアンテナ16へと供給されることにより、アンテナ16から上記の電波が放射される。
このようにアンテナ16から放射された電波を受けたRFIDタグ2は、この電波から得た電力により動作し、タグデータで変調した反射波を発生する。なおRFIDタグ2は、タグデータに先立って、プリアンブル及びスタートビットで変調した反射波を発生する。
【0027】
図4はタグデータの構造の一例を表す図である。
タグデータは、プリアンブル、スタートビット及び実データを含む。プリアンブルは、「1」及び「0」が交互に表れる2byteのデータである。スタートビットは、「11001100」なる1byteのデータである。実データは、RFIDタグ2毎で異なる4byteのデータである。実データは、どのようなデータであっても構わないが、RFIDタグ2の個々を識別するための識別子としてのタグIDを少なくとも含む。タグデータは、タグIDのみであることが多い。しかしながら、タグデータには、タグIDの他に、タグIDとは異なる任意のデータが含まれていてもよい。例えば、CRC(cyclic redundancy check)コードなどのチェック用データが実データに含まれてもよい。プリアンブル及びスタートビットは、全てのRFIDタグ2で共通である。
RFIDタグ2から放射された反射波がアンテナ16に到達することによりアンテナ16に生じる受信信号は、直交検波器17、増幅器18、AD変換器19及び復調回路202により順次に処理されてデータ信号とされて、測定回路203及び復号回路204に入力される。
【0028】
図5は復調回路202から出力されるデータ信号の波形の一例を表す図である。
復調回路202から出力されるデータ信号においては、プリアンブルの期間については、ハイレベルとローレベルとが、1ビット分の間隔で交互に表れる。復調回路202から出力されるデータ信号においては、スタートビットの期間については、ハイレベルとローレベルとが、2ビット分の間隔で交互に表れる。復調回路202から出力されるデータ信号においては、実データの期間については、ハイレベルとローレベルとが実データの内容に応じて表れる。
【0029】
図6はビット長の計測処理の概念を表す図である。
測定回路203は、例えばプリアンブル期間において、復調信号の立ち上がりから立ち下がりまでの期間の長さとしてビット長を測定する。より具体的には測定回路203は例えば、ビット長よりも十分に短い周期PAの基準クロックのクロック数を、復調信号の立ち上がりから立ち下がりまでの期間においてカウントし、そのカウント値Nを基準クロックの周期PAに乗じることにより求まる値をビット長の計測結果とする。
【0030】
復号回路204は、復調信号の立ち上がりを検出したら、プリアンブルの検出を開始する。そして復号回路204は、一定間隔での復調信号の立ち上がり及び立ち下がりの繰り返しを一定回数検出できたならば、プリアンブル検出とする。さらに復号回路204はその後、測定回路203から通知されるビット長の2倍の時間に及ぶ周期での立ち上がり及び立ち下がりの繰り返しが復調信号に表れたことをもって、スタートビット検出とする。復号回路204は、スタートビット検出後、測定回路203から通知されるビット長と同じ周期のサンプリングタイミングで復調信号をサンプリングすることで実データを復号する。
制御回路205は、1つのRFIDタグ2に関する実データの復号が完了したならば、当該実データを、測定回路203により測定された最新のビット長とともにプロセッサ21に通知する。この通知を、以下においては読取通知と称する。
【0031】
プロセッサ21は、図3中のACT11にて読取送信を開始させたのちには、ACT12へと進む。
ACT12としてプロセッサ21は、上記の読取通知がなされたか否かを確認する。そしてプロセッサ21は、該当の事象を確認できないならばNOと判定し、ACT13へと進む。
ACT13としてプロセッサ21は、後述する完了通知がなされたか否かを確認する。そしてプロセッサ21は、該当の事象を確認できないならばNOと判定し、ACT12へと戻る。
かくしてプロセッサ21はACT12及びACT13としては、読取通知又は完了通知を待ち受ける。そしてプロセッサ21は、上述の読取通知がなされたことが確認できたならばACT12にてYESと判定し、ACT14へと進む。
【0032】
ACT14としてプロセッサ21は、読取テーブルTAAを更新する。プロセッサ21は例えば、今回の読取通知により通知された実データを送信したRFIDタグ2に関連付けた新たなデータレコードREAを読取テーブルTAAに追加する。プロセッサ21は、ここで追加する新たなデータレコードREAのフィールドFEAには、既に読取テーブルTAAに含まれているデータレコードREAのフィールドFEAにセットされている読取番号の最大値よりも1つ大きな数値をセットする。プロセッサ21は、ここで追加する新たなデータレコードREAのフィールドFEBには、今回の読取通知により通知された実データをセットする。プロセッサ21は、ここで追加する新たなデータレコードREAのフィールドFECには、今回の読取通知により通知されたビット長をセットする。実データは、タグIDを含むから、プロセッサ21がこのように実データを記憶ユニット22に記憶させる処理を行うことによって、タグIDの取得が行われていることになり、プロセッサ21は取得部として機能する。
【0033】
プロセッサ21は、読取テーブルTAAを更新し終えたならば、ACT12及びACT13の待ち受け状態に戻る。かくしてプロセッサ21は、タグ読取装置1との通信が可能な状態にある複数のRFIDタグ2から順次に反射波が放射され、読取通知が繰り返し行われる状況にあってはACT14を繰り返し、上記複数のRFIDタグ2のそれぞれに関連付けたデータレコードREAを読取テーブルTAAに追加する。
【0034】
さて制御回路205は、タグ読取装置1との通信が可能な状態にある全てのRFIDタグ2が反射波を放射し終えたために、復号回路204にて新たな実データを復号できない状況となると、プロセッサ21に対して読み取りの完了を通知する。この通知を受けるとプロセッサ21は、完了通知がなされたとしてACT13にてYESと判定し、ACT15へと進む。
ACT15としてプロセッサ21は、読取送信を停止させる。
ACT16としてプロセッサ21は、結果画面を生成する。結果画面は、読み取りの結果を表した画面である。
【0035】
図7は結果画面SCAの一例を表す図である。
図7に表す結果画面SCAは、読取テーブルTAAに基づく一覧表を表した画像IMAを含む。プロセッサ21は、読取テーブルTAAに含まれるデータレコードREAのフィールドFEAにセットされている読取番号と、フィールドFEBにセットされている実データのうちのタグIDと、フィールドFECにセットされているビット長とを、それぞれ図7のように表して結果画面SCAを生成する。なお、図7においてタグIDは例えば「AAAAAAAA」のように表し、ビット長は例えば「WA」のように表しているが、実際にはタグIDは異なる形態の文字列であり、またビット長は数値である。
【0036】
ACT17としてプロセッサ21は、過大状態となっているか否かを確認する。過大状態は、今回の読み取りの対象となったRFIDタグ2のいずれか1つでもビット長が過大である状態である。プロセッサ21は例えば、読取テーブルTAAに含まれる全てのデータレコードREAのそれぞれのフィールドFECにセットされているビット長の全てが、予め定められた基準値未満であるならば、今回の読み取りの対象となったRFIDタグ2はいずれも過大状態ではないとする。そしてプロセッサ21は、この場合はNOと判定し、ACT18へと進む。
ACT18としてプロセッサ21は、ACT16にて生成した結果画面SCAを表示する。プロセッサ21は例えば、ACT16にて生成した結果画面SCAを表示ユニット23に表示させる。そしてプロセッサ21は、こののち、読取処理を終了する。
【0037】
一方、プロセッサ21は、例えば読取テーブルTAAに含まれる全てのデータレコードREAのそれぞれのフィールドFECにセットされているビット長の1つでも基準値以上であるならば、過大状態のRFIDタグ2があるとしてACT17にてYESと判定し、ACT19へと進む。かくしてプロセッサ21は、過大状態であるか否かを判定する判定部として機能する。
【0038】
ACT19としてプロセッサ21は、ACT19で生成した結果画面SCAを、過大状態であると判定する原因となったRFIDタグ2を識別可能とするように更新する。プロセッサ21は例えば、読み取りの対象となったRFIDタグ2のうちで、過大状態であると判定する原因となったRFIDタグ2がいずれであるかを識別可能なように結果画面SCAを編集する。
ハイライト表示は、文字色、背景色、フォント種類、あるいはフォント種類などの変更によってもよい。あるいは、過大状態ではないRFIDタグ2と過大状態であるRFIDタグ2とで別々とした読取結果の一覧をそれぞれ表すなどにより両者を区別容易としてもよい。
【0039】
図8は編集後の結果画面SCAの一例を表す図である。
図8は、ビット長WBが規定値以上であるために過大状態であると判定された場合である。図8に表す結果画面SCAは、図7に表す結果画面SCAにおける画像IMAが画像IMBに置き換えられている。画像IMBは、ビット長WBと、このビット長WBが測定された際に読取対象となったRFIDタグ2のタグIDである「BBBBBBBB」とを、斜体とすることでハイライト表示とした画像である。なお、図8は1つのRFIDタグ2のみが過大状態である場合の例であるが、複数のRFIDタグ2が過大状態であるならば、該当する複数のRFIDタグ2のそれぞれに関するタグID及びビット長をハイライト表示とする。
【0040】
ACT20としてプロセッサ21は、ACT19にて更新した結果画面SCAを表示する。プロセッサ21は例えば、ACT19にて更新した結果画面SCAを表示ユニット23に表示させる。
ACT21としてプロセッサ21は、警報動作を実行する。警報動作は、過大状態であることを操作者に報知するための予め定められた動作である。警報動作は例えば、表示ユニットに含まれるランプの点灯又は点滅である。かくしてプロセッサ21と表示ユニット23との協働により発報部としての機能が実現されている。
そしてプロセッサ21は、こののち、読取処理を終了する。
【0041】
以上のように第1の実施形態においてタグ読取装置1は、測定したビット長を結果画面SCAに表す。かくして操作者は、今回の読取対象となったRFIDタグ2のうちに、ビット長が過大となっているRFIDタグ2が含まれるならば、そのことを結果画面に基づいて認識できる。ビット長が増大する原因の1つに、RFIDタグ2における電力不足がある。そしてこの電力不足は、アンテナ16から放射された電波をRFIDタグ2が良好に受けることができれば改善されることがある。そこで操作者は、過大状態であるRFIDタグ2に関して、物品への取り付け状態、取り付け先の物品の配置、あるいは周囲の電波妨害物の撤去などの処置を適宜に講じて、読み取り状況の改善を試みることが可能となる。そして、読み取り状況の適正な改善を図ることで、無線送信するデータ信号のデータレートが受信電力の低下に伴って低下するようなRFIDタグ2との通信を適正に行える状況を確保することができる。
【0042】
なお、図7又は図8に表すような結果画面SCAからは、このように測定されたビット長が予め定められた過大状態であるか否かを判別可能であるから、判別情報の一例であり、結果画面SCAの表示は判別情報の出力の一例である。従って、プロセッサ21と表示ユニット23との協働によって出力部としての機能が実現されている。
【0043】
また第1の実施形態においてタグ読取装置1は、図8に表すようなハイライト表示を行うので、どの程度のビット長が過大状態に相当するかを認識していない操作者であっても、どのRFIDタグ2に関してビット長が過大状態となっているかを容易に認識することが可能である。
【0044】
[第2の実施形態]
次に前述のように構成されたタグ読取装置1の第2の実施形態における動作につき説明する。
タグ読取装置1の第2の実施形態における動作は、第1の実施形態における動作と一部共通である。そこで以下においては、第1の実施形態とは相違する動作を中心に説明することとする。
タグ読取装置1の第2の実施形態における動作で第1の実施形態と異なるのは、プロセッサ21による読取処理の内容である。
【0045】
図9は第2の実施形態における読取処理のフローチャートである。
なお図9において、図3と同一の処理には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
プロセッサ21は、ACT11~ACT15は第1の実施形態と同様に実行する。つまりプロセッサ21は、今回の読み取りの対象となるRFIDタグ2の読み取りに関して、第1の実施形態と同様に行う。なおプロセッサ21は、ACT11にて開始する読取送信における送信電力は、予め定められた基準電力とする。そしてプロセッサ21は、ACT15を終えると、ACT17へと進む。基準電力は、例えばタグ読取装置1の設計者又は管理者などによって適宜に定められてよい。
【0046】
プロセッサ21は、過大状態のRFIDタグ2があるとしてACT17にてYESと判定したならば、ACT31へと進む。
ACT31としてプロセッサ21は、再度の読み取りを自動で行う設定となっているか否かを確認する。プロセッサ21は例えば、操作者又は管理者の指示に応じて、タグ読取装置1の動作設定として、再度の読み取りを自動で行うか否かを設定しておく。そしてプロセッサ21は例えば、この設定を確認してACT31の判定を行う。そしてプロセッサ21は、自動で行う設定となっていないならばNOと判定し、ACT32へと進む。
ACT32としてプロセッサ21は、確認画面を表示する。確認画面は、再度の読み取りを行うか否かを操作者に確認するための画面である。
【0047】
図10は確認画面SCBの一例を表す図である。
確認画面SCBは、文字メッセージMEA及びボタンBUA,BUBを表す。文字メッセージMEAは、再度の読み取りを行うか否かの指定を操作者に促すメッセージを表す。ボタンBUAは、再度の読み取りの実行を操作者が指示するためのソフトキーである。ボタンBUBは、再度の読み取りを行わないことを操作者が指示するためのソフトキーである。
【0048】
操作者は、再度の読み取りを行うべきであると考えるならば、ボタンBUAをタップするなどの予め定められた操作により再度の読み取りの実行を指示する。あるいは操作者は、再度の読み取りが不要であると考えるならば、ボタンBUBをタップするなどの予め定められた操作により再度の読み取りを行わないことを指示する。
【0049】
プロセッサ21は、図9中のACT32を終えると、ACT33へと進む。
ACT33としてプロセッサ21は、再度の読み取りの実行が指示されたか否かを確認する。そしてプロセッサ21は、上記のように再度の読み取りの実行が指示されたことを確認できたならばYESと判定し、ACT34へと進む。
なおプロセッサ21は、再度の読み取りを自動で行う設定となっているのであれば、ACT31にてYESと判定し、ACT32及びACT33をパスしてACT34へと進む。
【0050】
ACT34としてプロセッサ21は、読取テーブルTAAをクリアする。
ACT35としてプロセッサ21は、読取送信における送信電力を前回の読取送信のときよりも増大しての読取送信を開始する。プロセッサ21は例えば、前回の読取送信における送信電力から、予め定められた増大量又は増大率で増大させた電力を今回の送信電力とする。あるいはプロセッサ21は例えば、送信電力の増大量又は増大率として、ACT34にてクリアする前の読取テーブルTAAに含まれる全てのデータレコードREAのそれぞれのフィールドFECにセットされているビット長の最大値を判定し、当該の最大値が大きいほどに大きくなるように予め定められた増大量又は増大率を適用するのでもよい。このときの最大値に基づく増大量又は増大率の決定は、予め定められた演算により行われるのでもよいし、最大値と増大量又は増大率とを関連付けて表したデータテーブルを参照して行われるのでもよい。このときプロセッサ21は、測定されたビット長に応じて送信電力を調整している。つまりプロセッサ21は、調整部として機能する。
【0051】
そしてプロセッサ21はこののち、ACT12及びACT13の待ち受け状態に戻り、以降を前述と同様に繰り返す。つまりプロセッサ21は、今回の読み取りの対象となるRFIDタグ2に関する読み取りをやり直すべく各部を制御するのであり、制御部として機能している。このときには、アンテナ16から放射された電波からRFIDタグ2にて得ることができる電力量が増大し、前回の読み取りにおいてビット長が過大となっていたRFIDタグ2からの新たな反射波からの復調信号におけるビット長が短縮され、過大状態が解消される可能性がある。
【0052】
プロセッサ21は、今回の読み取りの対象となったRFIDタグ2はいずれも過大状態ではないためにACT17にてNOと判定したならば、ACT16へと進む。またプロセッサ21は、確認画面SCBの表示に応じて、再読み取りを行わないことの指示が前述のようになされたならば、ACT33にてNOと判定し、ACT16へと進む。プロセッサ21は、さらにその後にACT18へと進む。つまりプロセッサ21は、今回の読み取りの対象となったRFIDタグ2はいずれも過大状態ではないならば、あるいは再読み取りを行わないことが指示されたならば、例えば図7に表すような結果画面を表示して読み取り結果を操作者に提示した上で、読取処理を終了する。ただし、ここで表示する結果画面には、ビット長を表さなくてもよい。
【0053】
以上のように第2の実施形態においてタグ読取装置1は、測定回路203により測定されたビット長に応じて読取送信の送信電力を調整する。これにより、RFIDタグ2からの反射波からの復調信号におけるビット長の適正化を図り、この復調信号からのデータ復号を適正に行える可能性を高めることができる。つまり、無線送信するデータ信号のデータレートが受信電力の低下に伴って低下するようなRFIDタグ2との通信を適正に行える状況を確保することができる。
【0054】
また第2の実施形態においてタグ読取装置1は、自動で行う設定であれば、送信電力の調整をプロセッサ21が自動的に行う。このため、自動で行う設定としておけば、操作者は調整の実行を指示する操作を行う必要がない。
【0055】
また第2の実施形態においてタグ読取装置1は、操作者による指示に応じて送信電力の調整を行うこともできる。この場合には、操作者の判断に応じて、送信電力の調整を行うか否かを柔軟に変更することができる。
【0056】
また第2の実施形態においてタグ読取装置1は、送信電力の調整をプロセッサ21が自動で行うか、操作者による指示に応じて行うかを、適宜に変更できる。これにより利用者のニーズに適応した柔軟な運用が可能である。
【0057】
また第2の実施形態においてタグ読取装置1は、送信電力の調整後に再読取するので、好適な条件での読取結果を得ることが可能となる。
【0058】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
第2の実施形態において、確認画面SCBに、過大状態であるRFIDタグ2のタグID及びビット長を表すようにしてもよい。あるいは確認画面SCBに、図7又は図8に表すような読取結果のリストを表すようにしてもよい。このようにすれば、操作者は、送信電力の調整を行うか、あるいは送信電力の調整は行わずに、第1の実施形態の場合と同様の処置を講ずるかを、任意に選択できる。
【0059】
第1の実施形態においては、ビット長の数値を表示せずに、過大状態であるRFIDタグのタグIDを表す文字列を、過大状態ではないRFIDタグのタグIDを表す文字列に対してハイライト表示するなどにより、過大状態であるか否かを区別可能としてもよい。
【0060】
例えば、読取テーブルTAAをそのまま通信ユニット25から外部機器に送信するなど、表示以外の方法での出力としてもよい。
【0061】
過大状態の判定のためのビット長の測定は、スタートビット又は実データの期間において行ってもよい。例えば、実データの期間中に「010」なるビット列を見つけて、このうちの「1」に相当する期間を測定するのでもよい。なお、符号化にRZ(return to zero)符号を用いるのであれば、実データの期間中に生じた「1」の期間を測定すればよい。
【0062】
ビット長は、復調信号の立ち下がりから立ち上がりまでの期間の長さとして測定してもよい。この場合は、実データの期間中に「101」なるビット列を見つけて、このうちの「0」に相当する期間を測定するのでもよい。
【0063】
情報処理によりプロセッサ21が実現する各機能は、その一部又は全てをロジック回路などのようなプログラムに基づかない情報処理を実行するハードウェアにより実現することも可能である。また上記の各機能のそれぞれは、上記のロジック回路などのハードウェアにソフトウェア制御を組み合わせて実現することも可能である。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1…タグ読取装置、2…RFIDタグ、11…発振器、12…DA変換器、13…変調器、14…電力増幅器、15…アンテナ共用器、16…アンテナ、17…直交検波器、18…増幅器、19…AD変換器、20…ベースバンド処理部、21…プロセッサ、22…記憶ユニット、23…表示ユニット、24…入力ユニット、25…通信ユニット、201…符号化回路、202…復調回路、203…測定回路、204…復号回路、205…制御回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10