(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100449
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】クリーニング装置
(51)【国際特許分類】
B08B 1/32 20240101AFI20240719BHJP
B08B 6/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B08B1/04
B08B6/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004463
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 久崇
【テーマコード(参考)】
3B116
【Fターム(参考)】
3B116AA01
3B116AA46
3B116AB03
3B116AB42
3B116BA02
3B116BA08
3B116BA15
3B116BC01
(57)【要約】
【課題】本発明は、設置スペースを削減できるクリーニング装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のクリーニング装置は、板状又はフィルム状の対象物の少なくとも一方の面に付着する異物を除去するクリーニング装置であって、上記対象物の他方の面に接触しつつ上記対象物を固定する固定具と、上記一方の面に接触しつつ上記一方の面上を通過するブラシローラと、上記ブラシローラの通過方向の下流側に配置され、上記一方の面に接触しつつ上記一方の面上を上記ブラシローラと同方向に通過するクリーニングローラとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状又はフィルム状の対象物の少なくとも一方の面に付着する異物を除去するクリーニング装置であって、
上記対象物の他方の面に接触しつつ上記対象物を固定する固定具と、
上記一方の面に接触しつつ上記一方の面上を通過するブラシローラと、
上記ブラシローラの通過方向の下流側に配置され、上記一方の面に接触しつつ上記一方の面上を上記ブラシローラと同方向に通過するクリーニングローラと
を備えるクリーニング装置。
【請求項2】
上記ブラシローラ及び上記クリーニングローラが、帯電している請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項3】
上記ブラシローラが、上記通過方向に対して逆方向に回転し、
上記クリーニングローラが、上記通過方向に対して順方向に回転する請求項1又は請求項2に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
上記クリーニングローラが、
上記一方の面上を通過する際に上記通過方向と垂直かつ上記一方の面と平行となるように配置されている回転軸と、
上記回転軸を上記一方の面の方向に付勢する付勢具と
を有し、
上記回転軸と上記一方の面との間隔が可変となるように構成されている請求項1又は請求項2に記載のクリーニング装置。
【請求項5】
上記対象物の一方の面に接触しつつ上記対象物を固定する他の固定具と、
上記他方の面に接触しつつ上記他方の面上を通過する他のブラシローラと、
上記他のブラシローラの通過方向の下流側に配置され、上記他方の面に接触しつつ上記他方の面上を上記他のブラシローラと同方向に通過する他のクリーニングローラと
をさらに備える請求項1又は請求項2に記載のクリーニング装置。
【請求項6】
対向する第1面及び第2面を有する筐体を備え、
上記ブラシローラ及び上記クリーニングローラが、上記第1面側に配設され、
上記他のブラシローラ及び上記他のクリーニングローラが、上記第2面側に配設されている請求項5に記載のクリーニング装置。
【請求項7】
上記ブラシローラ及び上記クリーニングローラが、上記一方の面を通過する方向と、
上記他のブラシローラ及び上記他のクリーニングローラが、上記他方の面を通過する方向とが逆方向である請求項6に記載のクリーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイ(FPD)のガラス基板、電子部品を搭載するプリント基板、樹脂薄板、フィルム材料、金属薄板等の対象物表面に付着する塵埃などの異物を取り除くためのクリーニング装置が開発されている。
【0003】
このようなクリーニング装置として、対象物を搬送しつつ表面の異物を除去するクリーニング装置が一般に用いられている(例えば特開2022-034005号公報参照)。このクリーニング装置では、クリーニング機構と、このクリーニング機構の上流側及び下流側にそれぞれ配置される上流側外部搬送機構及び下流側搬送機構により構成されている。そして、このクリーニング装置では、対象物を上記上流側外部搬送機構にセットすると、上記上流側外部搬送機構が上記対象物を上記クリーニング機構に送り込み、上記クリーニング機構で異物が除去された対象物は、上記下流側搬送機構により上記クリーニング機構から回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来のクリーニング装置では、クリーニング機構の前後に水平方向に突出する外部搬送機構を有していることもあり、クリーニング装置の設置スペースを必要とする。このためフラットパネルディスプレイ(FPD)等の製造ラインを省スペース化するにあたり、阻害要因の1つとなり得る。
【0006】
本発明はこのような不都合に鑑みてなされたものであり、設置スペースを削減できるクリーニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るクリーニング装置は、板状又はフィルム状の対象物の少なくとも一方の面に付着する異物を除去するクリーニング装置であって、上記対象物の他方の面に接触しつつ上記対象物を固定する固定具と、上記一方の面に接触しつつ上記一方の面上を通過するブラシローラと、上記ブラシローラの通過方向の下流側に配置され、上記一方の面に接触しつつ上記一方の面上を上記ブラシローラと同方向に通過するクリーニングローラとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明のクリーニング装置は、設置スペースを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るクリーニング装置の構成を示す模式的断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のクリーニングユニットの構成を示す模式的斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のクリーニングユニットの模式的側面図(断面図)である。
【
図4】
図4は、
図2の第1クリーニングローラの回転軸部分の構成を示す模式的斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4の第1クリーニングローラの回転軸等を支持する第1クリーニングユニットの側壁を示す模式的平面図である。
【
図6】
図6は、
図1とは異なる実施形態に係るクリーニング装置の構成を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0011】
本発明の一実施形態に係るクリーニング装置は、板状又はフィルム状の対象物の少なくとも一方の面に付着する異物を除去するクリーニング装置であって、上記対象物の他方の面に接触しつつ上記対象物を固定する固定具と、上記一方の面に接触しつつ上記一方の面上を通過するブラシローラと、上記ブラシローラの通過方向の下流側に配置され、上記一方の面に接触しつつ上記一方の面上を上記ブラシローラと同方向に通過するクリーニングローラとを備える。
【0012】
当該クリーニング装置は、対象物を固定し、ブラシローラ及びクリーニングローラを移動させることで対象物の一方の面の異物を除去する。つまり、対象物を移動させるための外部搬送機構を必要としないため、当該クリーニング装置はコンパクトに設計することが可能であり、設置スペースを削減できる。
【0013】
上記ブラシローラ及び上記クリーニングローラが、帯電しているとよい。このように上記ブラシローラ及び上記クリーニングローラを帯電させることで、静電吸着力により異物を効率的に除去することができる。
【0014】
上記ブラシローラが、上記通過方向に対して逆方向に回転し、上記クリーニングローラが、上記通過方向に対して順方向に回転するとよい。このように上記ブラシローラを上記通過方向に対して逆方向に回転させ、上記クリーニングローラを上記通過方向に対して順方向に回転させることで、上記ブラシローラによって対象物から比較的大きな異物を除去できるとともに上記クリーニングローラによって対象物から微細な異物を効率良く除去することができる。
【0015】
上記クリーニングローラが、上記一方の面上を通過する際に上記通過方向と垂直かつ上記一方の面と平行となるように配置されている回転軸と、上記回転軸を上記一方の面の方向に付勢する付勢具とを有し、上記回転軸と上記一方の面との間隔が可変となるように構成されているとよい。このように上記クリーニングローラを構成することで、移動する上記クリーニングローラが上記固定具に衝突してクリーニングできなくなることを抑止するとともに、上記対象物に対して適度な押圧を加えつつ上記クリーニングローラを接触させることができるので、上記クリーニングローラの異物除去効率を高められる。
【0016】
上記対象物の一方の面に接触しつつ上記対象物を固定する他の固定具と、上記他方の面に接触しつつ上記他方の面上を通過する他のブラシローラと、上記他のブラシローラの通過方向の下流側に配置され、上記他方の面に接触しつつ上記他方の面上を上記他のブラシローラと同方向に通過する他のクリーニングローラとをさらに備えるとよい。このように他の固定具、他のブラシローラ及び他のクリーニングローラを備えることで、対象物の一方の面に加えて、他方の面についても効率的に異物除去を行うことができる。
【0017】
対向する第1面及び第2面を有する筐体を備え、上記ブラシローラ及び上記クリーニングローラが、上記第1面側に配設され、上記他のブラシローラ及び上記他のクリーニングローラが、上記第2面側に配設されているとよい。このように当該クリーニング装置を構成すると、上記第1面側で対象物の一方の面の異物除去を行うこととなり、この場合、上記一方の面は上記第1面と対向している。また、上記筐体において上記第2面は上記第1面に対向しているため、上記対象物をそのまま上記筐体を挟んで第2面側に移動させると、上記対象物の他方の面が上記第2面と対向するので、そのまま上記対象物の他方の面の異物除去を行うことができる。つまり、単純な上記対象物の移動で、上記対象物の両面の異物除去を行うことができる。
【0018】
上記ブラシローラ及び上記クリーニングローラが、上記一方の面を通過する方向と、上記他のブラシローラ及び上記他のクリーニングローラが、上記他方の面を通過する方向とが逆方向であるとよい。このように上記ブラシローラ及び上記クリーニングローラと、上記他のブラシローラ及び上記他のクリーニングローラとの間で通過方向を逆方向とすることで、当該クリーニング装置の往復動のそれぞれで片面ずつ異物除去を行うことができる。そして、異物除去が行われない面側については、その間に対象物の交換を行うことができるので、クリーニング時間を短縮することができる。
【0019】
なお、「通過方向に対して順方向に回転する」とは、連れ回りするように回転することを意味し、対象物とローラとの接触位置において、通過方向と回転方向とが逆向きとなることを意味する。そして、「通過方向に対して逆方向に回転する」とは、上記順方向とは逆向きの回転を意味する。また、本明細書において、「垂直」とは、正確に垂直である場合に加え、垂直線に対する交差角度が±10°以内である場合を含むものとする。同様に「平行」とは、正確に平行である場合に加え、2直線がなす角度が±10°以内である場合を含むものとする。
【0020】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の一実施形態に係るクリーニング装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1に示すクリーニング装置1は、板状又はフィルム状の対象物の少なくとも一方の面(
図1のクリーニング装置1では両面)に付着する異物を除去するクリーニング装置である。具体的には、
図1に示す当該クリーニング装置1は、第1対象物S1の一方の面に付着する異物と、第2対象物S2の他方の面に付着する異物とを除去することができる。以下、対象物の一方の面を「表面」、他方の面を「裏面」と称して区別するが、単に便宜上の区別であり、必ずしも対象物を使用する際の表側及び裏側に対応するものではない。
【0022】
〔対象物〕
上記対象物は、
図1では平板状の部材を例示しているが、板状又はフィルム状の部材であれば特に制限はない。
【0023】
板状の対象物としては、例えばFPDのガラス基板や、樹脂基板や、電子部品搭載用プリント基板や、積層セラミックコンデンサ等を形成するためのセラミックグリーンシートや、樹脂薄板等が挙げられる。フィルム状の対象物としては、例えば樹脂フィルム等が挙げられる。
【0024】
上記対象物は、積層体であってもよい。当該クリーニング装置1は、例えばポリエチレンテレフタレート基板(PET基板)にセラミック層(グリーンシート)が積層されたような剥離し易い積層体の異物除去も行うことができる。
【0025】
上記対象物の表面及び裏面は、
図1に示すように平坦であってもよいが、窪みが存在していてもよい。また、上記対象物には、孔等が存在していてもよい。さらに、表面又は裏面に電気配線描画等のパターンが形成されており、そのパターンが段差を形成しているような対象物であっても、当該クリーニング装置1は、異物除去を行うことができる。
【0026】
上記対象物の平均厚さは、特に限定されるものではないが、その下限としては、30μmが好ましく、50μmがより好ましい。上記対象物の平均厚さが上記下限未満であると、上記対象物が取扱いし難くなるおそれがある。一方、上記対象物の平均厚さの上限としては、特に限定されないが、例えば5mmである。
【0027】
〔クリーニング装置〕
当該クリーニング装置1は、
図1に示すように、クリーニングユニット10と、一対の固定具20とを備える。
【0028】
<固定具>
一対の固定具20は、一の固定具である第1固定具21と、他の固定具である第2固定具22とから構成されている。
【0029】
第1固定具21は、第1対象物S1の裏面S1bに接触しつつ第1対象物S1を固定する。第2固定具22は、第2対象物S2の表面S2aに接触しつつ第2対象物S2を固定する。すなわち一対の固定具20は、第1対象物S1の表面S1a及び第2対象物S2の裏面S2bがそれぞれ露出するように固定されている。
【0030】
固定具20が上記対象物を固定する機構としては、各対象物を固定できる限り特に限定されないが、例えば真空吸着式のチャックを用いることができる。また、異物除去時に上記対象物が撓まないように固定具20は、上記対象物が接触する側の面(接触面)全体を覆えることが好ましい。すなわち、固定具20が上記対象物に接する面の面積が、上記対象物の接触面の面積より大きいことが好ましい。
【0031】
第1固定具21と第2固定具22とは、後述するクリーニングユニット10の通過方向(
図1の矢印の方向)に並んで配置されており、第1固定具21と第2固定具22との間をクリーニングユニット10が通過可能である。
図1では、第1固定具21が通過方向の上流側に配置されているが、第2固定具22が通過方向の上流側に配置されていてもよい。あるいは、第1固定具21と第2固定具22とを上記通過方向に対して垂直に対向するように配置することも可能である。
【0032】
さらに詳説すると、第1固定具21は、クリーニングユニット10の筐体11の第1面11a側に、第1対象物S1の表面S1aが第1面11aと対向するように配置されている。クリーニングユニット10が第1固定具21の位置を通過する際には、第1対象物S1の表面S1aが第1ブラシローラ12a及び第1クリーニングローラ12bと接するように配置されている。なお、クリーニングユニット10は、上記通過方向とは逆方向に移動することがあるが、その際には第1対象物S1の表面S1aは第1ブラシローラ12a及び第1クリーニングローラ12bに接しない位置に退避していることが好ましい。この退避位置としては、第1面11aと垂直方向に離間する位置であってもよく、クリーニングユニット10の通過方向から第1面11aに水平方向に離間する位置であってもよい。
【0033】
第2固定具22は、クリーニングユニット10の筐体11の第2面11b側に、第2対象物S2の裏面S2bが第2面11bと対向するように配置されている。クリーニングユニット10が第2固定具22の位置を通過する際には、第2対象物S2の裏面S2bが第2ブラシローラ13a及び第2クリーニングローラ13bと接するように配置されている。なお、クリーニングユニット10は、上記通過方向とは逆方向に移動する際には第2対象物S2の裏面S2bは第2ブラシローラ13a及び第2クリーニングローラ13bに接しない位置に退避していることが好ましい。
【0034】
第1固定具21に固定されている第1対象物S1は、クリーニングユニット10により表面S1aの異物が除去された後に、第2固定具22に移動させて固定し、裏面S1bの異物を除去することができる。このように1つの対象物を第1固定具21及び第2固定具22の間を移動させることで両面の異物を除去することが可能となる。
【0035】
第1固定具21及び第2固定具22の間の移動は、搬送機や作業員による手作業により行ってもよいが、第1固定具21又は第2固定具22が移動して第1対象物S1の授受を行ってもよい。第1固定具21から第2固定具22に移動させる場合、第2固定具22は、第1固定具21に固定されている第1対象物S1は表面S1aが露出しているため、例えばこの表面S1aを第2固定具22に吸着して、第1固定具21の固定を解除すると、第2固定具22に移動した第1対象物S1は裏面S1bが露出するので、効率的に移動を行うことができる。
【0036】
なお、一対の固定具20は、当該クリーニング装置1に専用に設けてもよいが、他の装置の固定具と兼用してもよい。当該クリーニング装置1は、例えば製造ラインに組み込まれて利用されるものである。一般に製造ラインには搬送装置が備わっているので、一対の固定具20として、その搬送装置を利用することも可能である。この場合、さらに省スペース化を進めることができる。
【0037】
<クリーニングユニット>
クリーニングユニット10は、
図2及び
図3に示すように、筐体11と、表側クリーニングユニット12と、裏側クリーニングユニット13とを備える。なお、表側クリーニングユニット12及び裏側クリーニングユニット13は、メインテナンス性の観点から、独立して着脱可能に構成されている。
【0038】
(筐体)
筐体11は、対向する第1面11a及び第2面11bを有する。
図1のクリーニング装置1では、第1面11aが筐体11の下面を構成し、第2面11bが筐体11の上面を構成しているが、第1面11aと第2面11bとが側面を構成してもよい。なお、第1面11a及び第2面11bは、上記通過方向に対して平行である。
【0039】
(表側クリーニングユニット)
表側クリーニングユニット12は、第1ブラシローラ12aと、第1クリーニングローラ12bとを有する。第1ブラシローラ12a及び第1クリーニングローラ12bは、筐体11の第1面11a側に配設されている。
【0040】
第1ブラシローラ12aは、第1対象物S1の表面S1aに接触しつつ、表面S1a上を通過する。
【0041】
この第1ブラシローラ12aは、第1対象物S1の表面S1a上を通過する際に上記通過方向と垂直かつ表面S1aと平行となるように配置されている回転軸で、第1ブラシローラ12aが、外部駆動源からの動力により、上記通過方向に対して逆方向に回転していることが好ましい。
【0042】
また、第1ブラシローラ12aは、非帯電状態であってもよいが、帯電していることが好ましい。
【0043】
第1ブラシローラ12aは、上記通過方向に対して逆方向の回転となるよう回転駆動されることにより、第1対象物S1の表面S1aに付着の異物を掻き起こして上記ブラシ毛に付着させることができる。また、第1ブラシローラ12aに電圧を印加して帯電させることで、電界の力による吸着力を作用させ、効果的に第1対象物S1の表面S1aの異物を後述するブラシ毛に吸着させることができる。特に、第1ブラシローラ12aを帯電させることで、第1対象物S1に孔や表面の窪みが存在する場合においても、上記孔や窪みの中にある異物を効率的に除去することができる。
【0044】
このような第1ブラシローラ12aとしては、円柱状の芯棒(回転軸)と、芯棒の外周面に接着層を介して植設される複数のブラシ毛とを有する構成とすることができる。
【0045】
上記芯棒は、例えば金属、カーボン材、合成樹脂複合材等の導電性を有する材料により形成される。上記導電性を有する材料の体積抵抗率の上限としては、例えば105Ωcmである。第1ブラシローラ12aを帯電させる場合、この芯棒には、外部電源等の電圧印加機構により電圧が印加される。また、上記芯棒に印加される電圧は、第1クリーニングローラ12bよりも同極性かつ絶対値が大きくなるように設定するとよい。なお、芯棒に印加される電圧の下限としては、-800Vが好ましく、-600Vがより好ましい。一方、上記電圧の上限としては、-200Vが好ましく、-300Vがより好ましい。
【0046】
上記ブラシ毛としては、物理的に異物が付着し易いものが好ましく、例えば合成樹脂繊維製のものが挙げられる。また、上記ブラシ毛としては、第1対象物S1の表面S1aに付着する異物を吸着するための電荷を帯電し得るものが好ましく、例えばカーボンブラック、炭素繊維、金属粉、金属ウィスカ等の導電性材料を含有する合成樹脂繊維製のものが好適に使用できる。
【0047】
上記ブラシ毛の断面形状は特に限定されるものではなく、例えば円形状、楕円形状、星型形状等が挙げられる。また、上記ブラシ毛の外形も特に限定されるものではなく、例えば直線状、波曲線形状、曲線と直線とが組み合わされて構成された形状等が挙げられる。なお、上記ブラシ毛は、表面積が大きいほど異物を吸着し易くなる。そのため、上記ブラシ毛としては、表面積を大きく確保できる断面形状が異形状のもの、例えば星型形状のものを用いることができる。
【0048】
以上述べたように、第1ブラシローラ12aは、ブラシ毛を有すること、通過方向に対して逆方向に回転すること、及び第1クリーニングローラ12bよりも同極性かつ絶対値の大きい電圧を印加することで、ミリオーダーの比較的大きな異物を第1対象物S1の表面S1aから除去することができる。
【0049】
第1ブラシローラ12aの第1対象物S1への平均圧接量の下限としては、0.3mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、上記平均圧接量の上限としては、1.5mmが好ましく、1mmがより好ましい。上記平均圧接量が上記下限未満であると、第1対象物S1の表面S1aの異物を十分に掻き起こせないおそれがある。逆に、上記平均圧接量が上記上限を超えると、上記ブラシ毛と第1対象物S1の表面S1aとの間の抵抗が大きくなるため、第1対象物S1の表面S1aを傷付けるおそれがある。なお、「圧接量」とは、第1対象物S1への上記ブラシ毛の食い込み量であり、上記ブラシ毛の平均長さから、上記芯棒の表面と第1対象物S1の表面S1aとの最小距離を差分した値を意味する。
【0050】
第1ブラシローラ12aの周速度の下限としては、1m/minが好ましく、2m/minがより好ましい。一方、第1ブラシローラ12aの周速度の上限としては、30m/minが好ましく、15m/minがより好ましい。第1ブラシローラ12aの周速度が上記下限未満であると、第1対象物S1の表面S1aの異物を十分に掻き起こせないおそれがある。逆に、第1ブラシローラ12aの周速度が上記上限を超えると、上記ブラシ毛と第1対象物S1の表面S1aとの間の抵抗が大きくなるため、第1対象物S1の表面S1aが傷付くおそれがある。また、クリーニングユニット10の移動速度Wに対する第1ブラシローラ12aの周速度Bの比率(B/W)の上限は、25%が好ましい。上記比率が大き過ぎると、比較的大きな異物を第1ブラシローラ12aにより掻き起こすのが困難となるおそれがある。
【0051】
第1クリーニングローラ12bは、第1ブラシローラ12aの通過方向の下流側に配置され、第1対象物S1の表面S1aに接触しつつ表面S1a上を第1ブラシローラ12aと同方向に通過する。
【0052】
この第1クリーニングローラ12bは、第1対象物S1の表面S1a上を通過する際に上記通過方向と垂直かつ表面S1aと平行となるように配置されている回転軸で、第1クリーニングローラ12bが、上記通過方向に対して順方向に回転していることが好ましい。第1クリーニングローラ12bは、外部駆動源からの動力により回転駆動されていてもよいが、連れ回りしていることが好ましい。連れ回りにおいては、第1クリーニングローラ12bが第1対象物S1の表面S1aに接触すると、クリーニングユニット10の移動に伴って第1クリーニングローラ12bと第1対象物S1の表面S1aとの摩擦により第1クリーニングローラ12bが回転することとなる。このように構成することで、第1クリーニングローラ12bに対して特段の動力を与えることなく回転駆動させることができる。
【0053】
また、第1クリーニングローラ12bは、非帯電状態であってもよいが、帯電していることが好ましい。
【0054】
第1クリーニングローラ12bは、上記通過方向に対して順方向の回転となるよう回転することにより、第1対象物S1の表面S1aに付着の異物、特に比較的微細な異物(例えばミリサイズよりも小さい異物)を除去することができる。また、第1クリーニングローラ12bに電圧を印加して帯電させることで、電界の力による吸着力を作用させ、効果的に第1対象物S1の表面S1aの異物を後述する外層部に吸着させることができる。特に、第1クリーニングローラ12bを帯電させることで、第1対象物S1に孔や表面の窪みが存在する場合においても、上記孔や窪みの中にある異物を効率的に除去することができる。
【0055】
このような第1クリーニングローラ12bとしては、芯棒(回転軸)と、この芯棒の外周面に形成される内層部と、この内層部の外周面を被覆する外層部とを有する弾性ローラとすることができる。
【0056】
上記芯棒は、導電性材料により円柱状に形成されている。上記芯棒に用いる導電性材料としては、例えば金属材料等が挙げられ、具体的にはステンレス、銅、アルミニウム等が挙げられる。
【0057】
上記内層部は、第1クリーニングローラ12bによる第1対象物S1への一定の押圧力やニップ幅を確保するものである。すなわち、上記内層部は、第1対象物S1に対する所望の密着力や接触幅を確保し、その表面S1aからの比較的微細な異物の効率的な除去に寄与するものである。この内層部を形成する材料としては、弾性及び導電性を有している樹脂材料が好ましく、ポリウレタン、シリコーン樹脂、天然ゴム、合成ゴム等の樹脂成分とカーボンとを含有する樹脂材料がより好ましい。
【0058】
このポリウレタンとしては、例えばアクリル混合ウレタン、フッ素混合ウレタン等が挙げられる。ここで、「アクリル混合ウレタン」とは、ポリエステルポリウレタン又はポリエーテルポリウレタンを主成分とする樹脂であって、(1)熱可塑性ポリウレタン及びシリコン・アクリル共重合樹脂の混合物、(2)アクリル樹脂(例えばメタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体からなる主鎖にアミノエチル基がグラフトされてなるグラフト化合物)及び熱可塑性ポリウレタンからなる混合物、又は(3)アクリル樹脂、ポリウレタン及びフッ素系表面コーティング剤からなる混合物を意味する。「フッ素混合ウレタン」とは、ポリウレタンを主成分とする樹脂で、熱可塑性ポリウレタンにウレタン・フッ素共重合体を混合したものを意味する。「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば50質量%以上含有される成分である。
【0059】
上記内層部を形成する材料としては、ポリエステル系ポリウレタン及びカーボンブラックを含有する導電性エラストマーがさらに好ましい。これらの材料により、第1クリーニングローラ12bの弾性が十分に確保され、第1クリーニングローラ12bによって第1対象物S1に異物が過度に押し付けられることを回避し、異物の除去効率の低下を抑制できる。なお、上記内層部のJIS-A硬度の下限としては、15°が好ましい。また、上記JIS-A硬度の上限としては、70°が好ましい。さらに、上記内層部の電気抵抗としては、108Ω以下が好ましい。上記内層部のJIS-A硬度を上記範囲内とすることで、第1クリーニングローラ12bの弾性を十分に確保し、第1対象物S1の異物除去を効果的に行えるニップ幅を確保することができる。
【0060】
第1クリーニングローラ12bは、
図4に示すように、第1クリーニングローラ12bの回転軸14を第1対象物S1の表面S1aの方向に付勢する付勢具15を有し、回転軸14と表面S1aとの間隔が可変となるように構成されていることが好ましい。このように第1クリーニングローラ12bを構成することで、移動する第1クリーニングローラ12bが第1固定具21に衝突してクリーニングできなくなることを抑止するとともに、第1対象物S1に対して適度な押圧を加えつつ第1クリーニングローラ12bを接触させることができるので、第1クリーニングローラ12bの異物除去効率を高められる。以下、この構成の具体例について
図4及び
図5を用いてさらに詳説する。
【0061】
図4に示すように、第1クリーニングローラ12bの回転軸14は、表側クリーニングユニット12の側壁16を貫通し、その外側で第1ギア17に連結されている。この第1ギア17は、第2ギア18と噛み合い、さらに第2ギア18は、第3ギア19と噛み合っている。このような構成において、第1クリーニングローラ12bが連れ回りにより回転すると、その回転により第2ギア18が回転し、さらに第3ギア19に伝わって第3ギア19を回転させることができる。この第3ギア19の回転は、例えば後述する集塵ブラシローラ12eや第2集塵ローラ12fの回転駆動源として利用することができる。
【0062】
付勢具15は、
図4に示すように、回転軸14の位置を定めるリング15aと、リング15aを第1対象物S1の表面S1aの方向に付勢するスプリング15bとを有する。
【0063】
表側クリーニングユニット12の側壁16には、
図5に示すように、それぞれのギアに対応して第1ギア用貫通孔17a、第2ギア用貫通孔18a及び第3ギア用貫通孔19aが設けられている。ここで、第2ギア用貫通孔18a及び第3ギア用貫通孔19aは、第2ギア18及び第3ギア19の回転軸がブレないように、円形であり、その貫通孔の直径は各ギアの回転軸の直径に合うように設計されているのに対し、第1ギア用貫通孔17aは、楕円状もしくは長丸状に形成されている。つまり、第1ギア17の回転軸、すなわち第1クリーニングローラ12bの回転軸14は、移動可能に構成されている。
【0064】
第1クリーニングローラ12bの回転軸14は、第1対象物S1の表面S1a等に接触していない場合は、スプリング15bにより下方に付勢されるため、
図5に示すように、回転軸14は、第1ギア用貫通孔17aの下方(第1対象物S1の表面S1aの方向)に位置する。このときの回転軸14の中心と、第2ギア用貫通孔18aの中心とを結ぶ直線Lに対して、第1ギア用貫通孔17aの長径が垂直となるように、第1ギア用貫通孔17aは形成されている。このように第1ギア用貫通孔17aを形成すると、第1クリーニングローラ12bが第1対象物S1の表面S1aに接触すると、表面S1aにより上方の力を受け、
図5の矢印の方向に移動する。この移動によりスプリング15bが縮むため、その縮み、すなわち表面S1aと回転軸14との距離に応じて反発し、第1対象物S1に対して適度な押圧を加えることができる。また、回転軸14が移動しても、回転軸14の中心と第2ギア用貫通孔18aの中心とを結ぶ直線Lに対して、第1ギア用貫通孔17aの長径が垂直となる方向であるので、移動後の直線Lの長さが比較的一定に保たれるため、第1ギア17と第2ギア18との噛み合わせへの影響が低く、ギアが回転しない等の支障が生じることを回避できる。
【0065】
回転軸14の最大移動距離としては、0.5mm以上1mm以下が好ましい。上記最大移動距離が上記下限未満であると、第1対象物S1に対して適度な押圧を加え難くなるおそれがある。逆に、上記最大移動距離が上記上限を超えると、第1ギア17と第2ギア18との噛み合わせに影響を及ぼすおそれがある。
【0066】
(裏側クリーニングユニット)
裏側クリーニングユニット13は、他方の面である第2対象物S2の裏面S2bに接触しつつ裏面S2b上を通過する他のブラシローラである第2ブラシローラ13aと、第2ブラシローラ13aの通過方向の下流側に配置され、裏面S2bに接触しつつ裏面S2b上を第2ブラシローラ13aと同方向に通過する他のクリーニングローラである第2クリーニングローラ13bとを有する。第2ブラシローラ13a及び第2クリーニングローラ13bは、筐体11の第2面11b側に配設されている。
【0067】
上述の点を除き、裏側クリーニングユニット13は、表側クリーニングユニット12と同様に構成できるので、詳細説明を省略する。
【0068】
<その他の構成>
(表側クリーニングユニット)
表側クリーニングユニット12は、
図3に示すように、第1ブラシローラ12aと平行に配設され、表面を帯電させた状態で第1ブラシローラ12aの外周側に接触させる第1集塵ローラ12cと、第1集塵ローラ12c表面に付着した異物を掻き取る第1スクレーパー12dとを備えてもよい。
【0069】
第1集塵ローラ12cの材質として、導電性材料が用いられる。このような導電性材料としては、例えばステンレス、アルミニウム等の金属材料が挙げられる。第1集塵ローラ12cとしてアルミニウム等の酸化し易い導電性材料を使用する場合には、第1集塵ローラ12cの表面にニッケルめっきや金めっき等の耐食性のめっき処理を行なうことが好ましい。
【0070】
第1ブラシローラ12aを帯電させる場合、第1集塵ローラ12cには、第1ブラシローラ12aへの印加電圧よりも高い電圧を印加する。これにより、第1集塵ローラ12c表面が第1ブラシローラ12aの外周側よりも電位が高くなるので、第1ブラシローラ12aに付着した異物が第1集塵ローラ12c表面に吸着され、第1ブラシローラ12aに付着の異物が第1集塵ローラ12cに移動する。これにより、第1ブラシローラ12aに集積される異物の除去作業を省略又は軽減することができる。
【0071】
なお、第1集塵ローラ12cの回転方向は、いずれの方向であってもよい。
【0072】
第1スクレーパー12dは、例えば矩形状の板であり、軸方向に亘って第1集塵ローラ12c表面に接触可能な部分を有している。
図3の表側クリーニングユニット12では、1つの第1スクレーパー12dが設けられているが、第1スクレーパー12dは側面視で第1集塵ローラ12cの両側に一対設けてもよい。ここで、第1スクレーパー12dの第1集塵ローラ12c表面に接触する長辺を先端部と呼ぶこととする。
【0073】
第1スクレーパー12dは、熱硬化性ポリウレタン等の合成樹脂製の弾性体などで形成される。第1集塵ローラ12cの回転に伴い、第1集塵ローラ12c表面に接触する第1スクレーパー12dの先端部によって第1集塵ローラ12c表面に付着した異物が掻き取られる。これにより、第1集塵ローラ12c表面が異物の除去された清浄な状態となる。
【0074】
また、表側クリーニングユニット12は、
図3に示すように、帯電かつ回転駆動させつつ第1クリーニングローラ12b表面に接触させる集塵ブラシローラ12eと、集塵ブラシローラ12eと平行に配設され、表面を帯電させた状態で集塵ブラシローラ12eの外周側に接触させる第2集塵ローラ12fと、第2集塵ローラ12f表面に付着した異物を掻き取る第2スクレーパー12gとを備えてもよい。
【0075】
集塵ブラシローラ12eは、第1クリーニングローラ12bと平行に配設される。集塵ブラシローラ12eは、円柱状の芯金と、複数の毛により形成され、上記芯金の周面へ設けられるブラシ毛とを有する。上記芯金及び上記ブラシ毛としては、例えば第1ブラシローラ12aの芯金及びブラシ毛と同様の材質のものを用いることができる。
【0076】
なお、回転駆動される集塵ブラシローラ12eの回転方向は、いずれの方向でもよいが、第1クリーニングローラ12bと集塵ブラシローラ12eとの接点部分において互いの周面における移動方向が逆向きとなるとよい。このように集塵ブラシローラ12eを回転させることで、第1クリーニングローラ12b表面に付着の異物が掻き起こされ易くなるため、異物が集塵ブラシローラ12eに移動し易くなる。この場合、集塵ブラシローラ12eは、第1クリーニングローラ12bと同じ回転方向に回転駆動することとなる。
【0077】
集塵ブラシローラ12eには、第1クリーニングローラ12bへの印加電圧よりも同極性かつ絶対値が高い電圧を印加する。これにより、集塵ブラシローラ12eの外周側が第1クリーニングローラ12b表面よりも電位が高くなるので、第1クリーニングローラ12b表面に付着した異物が集塵ブラシローラ12eに吸着され、第1クリーニングローラ12b表面の異物が集塵ブラシローラ12eに移動する。
【0078】
具体的な集塵ブラシローラ12eへの印加電圧(上記芯金に印加される電圧)の下限としては、-800Vが好ましく、-600Vがより好ましい。一方、上記印加電圧の上限としては、-200Vが好ましく、-300Vがより好ましい。
【0079】
第2集塵ローラ12fは、帯電かつ回転駆動されながら、表面が集塵ブラシローラ12eの外周側と接触するよう、集塵ブラシローラ12eと平行に配設される。
【0080】
第2集塵ローラ12fの材質は、第1集塵ローラ12cと同様とできる。第2集塵ローラ12fの回転方向は、いずれの方向であってもよい。第2集塵ローラ12fは、後述する第2スクレーパー12gにより第2集塵ローラ12f表面から掻き取られる異物が回収され易い回転方向で駆動するとよい。
【0081】
第2集塵ローラ12fには、集塵ブラシローラ12eへの印加電圧よりも同極性かつ絶対値が高い電圧を印加する。これにより、第2集塵ローラ12f表面が集塵ブラシローラ12eの外周側よりも電位が高くなるので、集塵ブラシローラ12eに付着した異物が第2集塵ローラ12f表面に吸着され、第2集塵ローラ12fに移動する。これにより、集塵ブラシローラ12eに集積される異物の除去作業を省略又は軽減できる。
【0082】
具体的な第2集塵ローラ12fへの印加電圧の下限としては、-1500Vが好ましく、-1200Vがより好ましい。一方、上記印加電圧の上限としては、-400Vが好ましく、-600Vがより好ましい。上記印加電圧を上記範囲内とすることで、集塵ブラシローラ12eに付着した異物を第2集塵ローラ12fの外周面に容易に吸着させることができる。
【0083】
また、第2集塵ローラ12fへの印加電圧と集塵ブラシローラ12eへの印加電圧との差の絶対値の下限としては、200Vが好ましく、300Vがより好ましい。一方、上記差の絶対値の上限としては、600Vが好ましく、500Vがより好ましい。上記差を上記範囲内とすることで、集塵ブラシローラ12eに付着した異物を第2集塵ローラ12fの外周面に効果的に吸着させることができる。
【0084】
第2スクレーパー12gは、例えば矩形状の板であり、軸方向に亘って第2集塵ローラ12f表面に接触可能な部分を有している。第2スクレーパー12gは、例えば第1スクレーパー12dと同様のものを用いることができるので、詳細説明を省略する。
【0085】
(裏側クリーニングユニット)
裏側クリーニングユニット13は、
図3に示すように、第2ブラシローラ13aと平行に配設され、表面を帯電させた状態で第2ブラシローラ13aの外周側に接触させる第1集塵ローラ13cと、第1集塵ローラ13c表面に付着した異物を掻き取る第1スクレーパー13dとを備えてもよい。
【0086】
また、裏側クリーニングユニット13は、
図3に示すように、帯電かつ回転駆動させつつ第2クリーニングローラ13b表面に接触させる集塵ブラシローラ13eと、集塵ブラシローラ13eと平行に配設され、表面を帯電させた状態で集塵ブラシローラ13eの外周側に接触させる第2集塵ローラ13fと、第2集塵ローラ13f表面に付着した異物を掻き取る第2スクレーパー13gとを備えてもよい。
【0087】
各構成要素は、表側クリーニングユニット12の対応する構成要素と同様であるので、詳細説明を省略する。
【0088】
(異物回収部)
第1スクレーパー12d、13dや第2スクレーパー12g、13gの下方には異物回収部12h、13hが設けられている。なお、表側クリーニングユニット12の第1スクレーパー12dのように直下に異物回収部12hを設けることが困難である場合、異物誘導板12iを利用してもよい。
【0089】
異物誘導板12iは、例えば矩形状の板であり、
図3に示すように、表側クリーニングユニット12の第1スクレーパー12dの直下から後述する異物回収部12hの直上に亘って、一方の面が上方に向くように配設されている。また、異物誘導板12iは異物回収部12h側が下がるように傾斜して設けられている。この配置により、第1スクレーパー12dにより掻き取られた異物は、第1異物誘導板12iの表面に落下し、異物誘導板12iの傾斜によって異物回収部12hの直上に誘導され、異物回収部12hに落下して回収される。
【0090】
異物回収部12h、13hは、第1スクレーパー12d、13dや第2スクレーパー12g、13g、傾斜して設けられる異物誘導板12iの下端の直下等に設けられており、これらから落下する異物を回収する。異物回収部12h、13hは、
図3に示すように、1つのスクレーパーや異物誘導板12iに対して1つずつ設けられてもよいが、1つの異物回収部12h、13hで2箇所以上からの異物を回収するように設けてもよい。
【0091】
異物回収部12h、13hの形状は、特に限定されないが、皿状、すなわち端部が上方へ屈曲した平板とすることが好ましい。異物回収部12h、13hの形状を皿状とすることで、回収した異物が異物回収部12h、13hの外へ散逸することを抑止できる。
【0092】
異物回収部12h、13hに回収された異物は、クリーニングユニット10の外部へ排出される。異物の排出方法としては、吸引装置により排出する方法やブラシ等により掃き出す方法などを採用することができる。
【0093】
<クリーニング装置の動作>
当該クリーニング装置1では、クリーニングユニット10が移動することにより異物の除去が行われる。以下に、当該クリーニング装置1の動作について説明する。
【0094】
まず、当該クリーニング装置1では、第1対象物S1及び第2対象物S2をそれぞれ第1固定具21及び第2固定具22に固定する。第1対象物S1の表面S1a及び第2対象物S2の裏面S2bが異物除去の対象となる。このとき、クリーニングユニット10は、第1固定具21及び第2固定具22に対して通過方向(
図1の矢印の方向)の上流側に位置している。
【0095】
この状態で、クリーニングユニット10は、通過方向に移動する。
図1に示すクリーニング装置1では、クリーニングユニット10は、最初に第1固定具21に固定されている第1対象物S1の表面S1aに接触する。具体的には、第1ブラシローラ12a及び第1クリーニングローラ12bがこの順に接触し、第1対象物S1の表面S1aを通過していく。
図1はこの状態を示している。
【0096】
なお、第1ブラシローラ12a及び第1クリーニングローラ12bが第1対象物S1に接触する際は、まず第1対象物S1の側面に当接することになるが、第1ブラシローラ12aにあっては、ブラシ毛が当接するため、上記ブラシ毛の可撓性により第1対象物S1の表面S1aに乗り上げることができる。また、第1クリーニングローラ12bにあっては、第1対象物S1の側面に当接すると、上述の付勢具15により第1クリーニングローラ12bの回転軸14が持ち上げられ、第1対象物S1の表面S1aに乗り上げることができる。そして、第1ブラシローラ12a及び第1クリーニングローラ12bが第1対象物S1の表面S1aを通過する際には、第1ブラシローラ12aは上記ブラシ毛の弾性により、第1クリーニングローラ12bでは付勢具15の付勢により、適度な押圧が加えられるため、異物除去効率を高められる。
【0097】
さらに、クリーニングユニット10が通過方向に移動すると、第1対象物S1の表面S1aの異物除去が完了し(すなわち、第1対象物S1の表面S1a上の通過を完了し)、第2固定具22に固定されている第2対象物S2の裏面S2bに接触する。具体的には、第2ブラシローラ13a及び第2クリーニングローラ13bがこの順に接触し、第2対象物S2の裏面S2bを通過していく。
【0098】
第2ブラシローラ13a及び第2クリーニングローラ13bが第2対象物S2の裏面S2bを通過していく点以外は、第1対象物S1の場合と同様であるので、詳細説明を省略する。
【0099】
第2対象物S2の裏面S2bの異物除去が完了すると(すなわち、第2対象物S2の裏面S2b上の通過を完了すると)、クリーニングユニット10は当初の位置(第1固定具21及び第2固定具22に対して通過方向の上流側の位置)に戻る。つまり、クリーニングユニット10は通過方向とは逆向きに移動する。
【0100】
このとき、第1固定具21及び第2固定具22は、退避位置に移動し、第1ブラシローラ12a等が第1対象物S1や第2対象物S2に接触しないことが好ましい。また、第1固定具21及び第2固定具22が退避位置に移動している間に、第1対象物S1及び第2対象物S2を新たな対象物に交換しておくとよい。このようにクリーニングユニット10が当初の位置に移動している間に対象物を交換しておくことで、異物除去効率を高められる。なお、この交換において、第1対象物S1を第2対象物S2とすることで、同一の対象物の両面の異物除去を行うことができる。
【0101】
以下、同様の手順を繰り返すことで、当該クリーニング装置1は、異物の除去を連続して行うことができる。
【0102】
<利点>
当該クリーニング装置1は、対象物を固定し、ブラシローラ及びクリーニングローラを移動させることで対象物の各面の異物を除去する。つまり、対象物を移動させるための外部搬送機構を必要としないため、当該クリーニング装置1はコンパクトに設計することが可能であり、設置スペースを削減できる。
【0103】
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【0104】
上記実施形態では、クリーニングユニットが、表側クリーニングユニットと、裏側クリーニングユニットとが着脱可能にユニット化されている場合を説明したが、このようなユニット化は必須の構成ではない。表側クリーニングユニット及び裏側クリーニングユニットの各構成要素が筐体内部に固定して配設されているクリーニング装置も本発明の意図するところである。
【0105】
上記実施形態では、クリーニングユニットが表側クリーニングユニットと、裏側クリーニングユニットとを共に備える場合を説明したが、表側クリーニングユニットのみあるいは裏側クリーニングユニットのみを備えるクリーニング装置も本発明の意図するところである。
【0106】
上記実施形態では、クリーニングローラが、その回転軸を付勢する付勢具を有している場合を説明したが、付勢具は必須の構成要素ではない。付勢具を有さないクリーニング装置にあっては、上記回転軸は移動不可能に固定されていることが好ましい。このようなクリーニング装置では、クリーニングローラが対象物の側面に当接した場合、クリーニングローラの回転力により対象物の表面に乗り上げることになる。
【0107】
また、異物除去を行う手段は上記実施形態の集塵ローラ等を用いる構成に限定されるものではなく、他の構成を採用することもできる。
【0108】
上記実施形態では、クリーニングユニットが一方向へ移動する際に第1対象物の表面と第2対象物の裏面との異物を除去する場合を説明したが、
図6に示すクリーニング装置2のように、一方向(
図6の矢印の方向)へ移動する際に第1対象物S1の表面S1aの異物除去を行い、逆方向(
図6の矢印の方向と反対の方向)へ移動する際に第2対象物S2の裏面S2bの異物除去を行う構成とすることもできる。つまり、第1ブラシローラ12a及び第1クリーニングローラ12bが、対象物の一方の面を通過する方向と、他のブラシローラ及び他のクリーニングローラである第2ブラシローラ13a及び第2クリーニングローラ13bが、対象物の他方の面を通過する方向とが逆方向である。このような構成のクリーニング装置2にあっては、表側クリーニングユニット12の第1ブラシローラ12a及び第1クリーニングローラ12bの並び順と、裏側クリーニングユニット13の第2ブラシローラ13a及び第2クリーニングローラ13bの並び順とが逆になる点を除き、
図1に示すクリーニング装置1と同様に構成することができるので、同一符号を付して詳細説明は省略する。
【0109】
図6に示すようにクリーニング装置2を構成すると、クリーニングユニット10を一方向に移動する際に、第1固定具21に固定された第1対象物S1の表面S1aの異物除去を行い、クリーニングユニット10が第1対象物S1を通過後に、第1対象物S1を第2固定具22に移動させて固定した後、クリーニングユニット10を逆方向に移動させると、第2固定具22に固定された第1対象物S1の裏面S1bの異物除去を行うことができる。つまり、クリーニングユニット10の一度の往復で、同一対象物の表面と裏面との異物除去を行うことができるので、異物除去効率を高められる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上説明したように、本発明のクリーニング装置は、設置スペースを削減できる。
【符号の説明】
【0111】
1、2 クリーニング装置
10 クリーニングユニット
11 筐体
11a 第1面
11b 第2面
12 表側クリーニングユニット
12a 第1ブラシローラ
12b 第1クリーニングローラ
12c 第1集塵ローラ
12d 第1スクレーパー
12e 集塵ブラシローラ
12f 第2集塵ローラ
12g 第2スクレーパー
12h 異物回収部
12i 異物誘導板
13 裏側クリーニングユニット
13a 第2ブラシローラ
13b 第2クリーニングローラ
13c 第1集塵ローラ
13d 第1スクレーパー
13e 集塵ブラシローラ
13f 第2集塵ローラ
13g 第2スクレーパー
13h 異物回収部
14 回転軸
15 付勢具
15a リング
15b スプリング
16 側壁
17 第1ギア
17a 第1ギア用貫通孔
18 第2ギア
18a 第2ギア用貫通孔
19 第3ギア
19a 第3ギア用貫通孔
20 固定具
21 第1固定具
22 第2固定具
S1 第1対象物
S2 第2対象物
S1a、S2a 表面
S1b、S2b 裏面
L 直線