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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100450
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】エーミング方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 3/00 20060101AFI20240719BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G01C3/00 120
G01C15/00 103B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004464
(22)【出願日】2023-01-16
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000128603
【氏名又は名称】株式会社オートバックスセブン
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】上松 禎知
【テーマコード(参考)】
2F112
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112AD05
2F112BA12
2F112CA05
(57)【要約】
【課題】例えば、エーミングを行うときに、簡易にかつ正確に行うことが可能な校正方法を提供すること。
【解決手段】車両の前方を認識する認識装置が接続された電子制御装置のエーミング方法であって、車両の後方中心に設置したレーザ装置からレーザを照射し、照射したレーザがスリット部を通過するように車両前方にレーザターゲットを設置し、前記レーザターゲットと水平となる位置にエーミングターゲットを設置し、前記認識装置が前記エーミングターゲットを認識することで、前記電子制御装置のエーミング処理を実行する。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方を認識する認識装置が接続された電子制御装置のエーミング方法であって、
車両の後方の中央に設置したレーザ装置からレーザを照射し、
照射したレーザがスリット部を通過するように車両前方にレーザターゲットを設置し、
前記レーザターゲットと水平となる位置にエーミングターゲットを設置し、
前記認識装置が前記エーミングターゲットを認識することで、前記電子制御装置のエーミング処理を実行する
エーミング方法。
【請求項2】
前記車両の中心から前方にかけて、サポートシートを設置し、
前記サポートシートは、当該サポートシートの短手方向の中央に中央設置線と、中央設置線から所定の距離だけ左右に離れた位置に、当該中央設置線に変更して左右設置線とを設けており、
前記中央設置線又は/及び左右設置線上に前記エーミングターゲットを設置する
請求項1に記載のエーミング方法。
【請求項3】
前記所定の距離は、550mm又は600mmである請求項2に記載のエーミング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エーミング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される機器のエーミングをする方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-111730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、例えば、エーミングを行うときに、簡易にかつ正確に行うことが可能な校正方法を提供することを一つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のエーミング方法は、車両の前方を認識する認識装置が接続された電子制御装置のエーミング方法であって、車両の後方の中央に設置したレーザ装置からレーザを照射し、照射したレーザがスリット部を通過するように車両前方にレーザターゲットを設置し、前記レーザターゲットと水平となる位置にエーミングターゲットを設置し、前記認識装置が前記エーミングターゲットを認識することで、前記電子制御装置のエーミング処理を実行する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、例えば、エーミングを行うときに、簡易にかつ正確に行うことが可能な校正方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態におけるシステム概要を説明する図である。
図2】本実施形態におけるエーミング方法の概要を説明する図である。
図3】本実施形態におけるレーザターゲットの斜視図である。
図4】本実施形態におけるレーザターゲットの(a)正面図、(b)平面図である。
図5】本実施形態におけるレーザターゲットの(a)側面図、(b)平面図である。
図6】本実施形態におけるレーザターゲットとレーザ光との関係を説明する図である。
図7】本実施形態におけるレーザターゲットとレーザ光との関係を説明する図である。
図8】本実施形態におけるサポートシートの平面図である。
図9】本実施形態におけるサポートシートの平面図である。
図10】本実施形態におけるサポートシートの設置状態を示す図である。
図11】本実施形態におけるサポートシートの設置状態を示す図である。
図12】本実施形態における(a)エーミングターゲットの一例、(b)エーミングターゲットの一部の拡大図である。
図13】本実施形態におけるLレーザターゲットの(a)側面図、(b)背面図である。
図14】本実施形態におけるエーミング方法の一例を示す図である。
図15】本実施形態におけるエーミングの実施例である。
図16】本実施形態におけるエーミングの実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明を提供した一つの実施形態であり、以下の記載に基づいて本願発明の内容が限定して解釈されるものではない。
【0009】
車両と正対した位置を取得したい場面がさまざま考えられる。例えば、車両に搭載された機器をエーミングするときは、エーミングに利用するターゲットを正しい位置に設置する必要がある。
【0010】
エーミングに利用するターゲットは、例えば車両に対して正対した位置に設置する必要がある。ここで、一般的に車両に正対した位置を出すためには、以下のような操作を行うことが一般的である。
【0011】
(1)車両の前後の中心となる位置を割り出す。例えば、ボディのエンブレムや、ナンバープレートの中心を割り出す。そして、この車両の中心のなる位置に、錘を吊り下げる。この中心となる位置にマーキングを行う。例えば、車両後方において、マーキングを行う。
【0012】
(2)続いて、車両の前後反対側から、レーザ装置を利用して、レーザ光を射光する。このとき、レーザ光は、錘に照射するように照射することで、車両の中心線を求めることが可能となる。
【0013】
車両の中心線を求めた後、一般的に車両の装置をエーミングするとき、エーミング用のターゲットをエーミングの対照となっている機器が検出できる位置に設置する必要があるが、このエーミング用のターゲットは、車両に正対する位置に設置する必要がある。しかし、ターゲットを設置する車両と、ターゲットとが正対しているかどうかは、必ずしも解らないという課題があった。
【0014】
また、上述したように、車両の前後において錘を吊り下げ、その錘に対してレーザ光を照射しなければならず、必ずしも簡単に行えるものではなかった。
【0015】
以下に開示した技術では、例えば、簡易な方法でエーミングを行うことが可能な技術を提供するものである。
【0016】
[1.システム概要]
[1.1 車両の構成]
図1及び図2を参照して、本実施形態におけるシステムの概要について説明する。図1は、本実施形態における車両1の概要図、図2は、エーミングを行う場合の仕組みの概要について示す概略図である。
【0017】
まず、車両1は、車両全体を制御する車両制御部30を有している。車両制御部30は、車両1の全体を制御するための機能部である。車両制御部30は、記憶装置(不図示)に記憶されている各種プログラムを読み出して実行することにより各種機能を実現しており、例えばCPU(Central Processing Unit)等により構成されている。
【0018】
車両制御部30は、駆動部42、制動部44、操舵部46を制御することができる。例えば、駆動部42は、内燃機関であるエンジンや、電動モータで構成されており、車両1のタイヤ(駆動輪)を回転させることで駆動力を発生させる。
【0019】
また、制動部44は、いわゆるブレーキ(例えば、電子制御ブレーキシステムであってもよい)等により構成可能である。制動部44は、タイヤ(駆動輪)をブレーキにより制動させ、車両1を停止させることが可能である。
【0020】
操舵部46は、いわゆる操舵装置(例えば、電動パワーステアリングシステムであってもよい)である。操舵部46は、タイヤ(駆動輪)の操舵角を制御することで、車両1の方向転換を変えることが可能である。
【0021】
また、車両1は、駆動部42、制動部44、操舵部46を適切に制御することで、車両の安全な運行に直結する機能として、様々な機能が提供されている。これらの車両の安全な運行を制御するための機能を制御するために、車両1は、電子制御装置10を更に有している。
【0022】
電子制御装置10は、車両の安全な運行に直結する装置を制御する。電子制御装置10は、例えば、自動運行装置12、衝突被害軽減制動制御装置14(例えば、自動ブレーキ等)、自動命令型操舵装置16(例えば、レーンキープ等)を制御する。
【0023】
また、電子制御装置10は、車両の周囲を認識する認識装置20を有している。認識装置20は、例えば車両の前方や、後方、周囲を認識するための装置である。認識装置20は、例えばカメラ装置22(単眼カメラ、複眼カメラを利用した装置)、レーダ装置24(ミリ波レーダ赤外線レーザを利用した装置)、レーザ装置26等によって構成されている。認識装置20は、車両1に1つだけ設けてもよいし、複数設けてもよい。また、車両1は、カメラ装置22を複数設けてもよいし、カメラ装置22以外の認識装置20(例えば、レーダ装置24)を必要な箇所に設けてもよい。また、カメラ装置22と、レーダ装置24と、レーザ装置26とを適宜組み合わせてもよい。本実施形態では、電子制御装置10は、認識装置20により車両の前方を認識した結果を利用する装置について説明する。
【0024】
通信部50は、車両制御部30を介して、各種情報を他の装置と通信を行うことが可能なインタフェースである。例えば、OBDコネクタにスキャンツール60を接続することで、電子制御装置10のエーミング処理を実行してもよい。また、通信部50は、例えば、無線LANや、LTE/4G/5Gといったネットワークに接続可能な通信モジュールであってもよい。
【0025】
スキャンツール60は、電子制御装置10に対してエーミング処理の実行が可能な装置である。スキャンツール60は、制御部62と、記憶部64とを有している。
【0026】
制御部62は、スキャンツールの全体を制御するための機能部である。制御部62は、記憶部64に記憶されている各種プログラムを読み出して実行することにより各種機能を実現しており、例えばCPU(Central Processing Unit)により構成される。
【0027】
記憶部64は、スキャンツール60の動作に必要な各種プログラムや、各種データが記憶されている機能部である。記憶部64は、例えば、半導体メモリや、HDD(Hard Disk Drive)や、SSD(Solid State Drive)等により構成されている。
【0028】
また、記憶部64は、後述するエーミング処理に必要なパラメータを記憶してもよい。例えば、エーミングターゲットを設置する距離や、設置箇所、認識装置20の設定等をパラメータとして記憶してもよい。なお、以下、単にエーミングというときは、電子制御装置10を対象に実行されるエーミング処理、作業員が各ツールや、ターゲットを設置することで実行するエーミングの方法のことを含むものとする。
【0029】
[1.2 一般的なエーミングの方法]
ここでエーミングの方法について簡単に説明する。エーミングは、例えば車両に搭載されている電子制御装置が正しく動作するために、キャリブレーション(校正処理)を行うものである。
【0030】
電子制御装置10の整備は、例えば、以下のようなときに必要となる。
(1)自動運行装置の取り外しや作動に影響を及ぼすおそれのある整備や改造が行われたとき
【0031】
(2)衝突被害軽減装置や自動命令型操舵装置に用いられる認識装置の取り外しや、認識装置を含む機能調整
【0032】
(3)認識装置が取り付けられている車体前部(例えば、バンパ、グリル等)の脱着、窓ガラスの脱着等
【0033】
エーミングを実行するときは、認識装置20が認識できる位置であって、車両毎に予め決められた位置(距離)に、エーミングターゲットを車両1と正対となるような位置に設置する。そして、認識装置20が、エーミングターゲットを認識し、スキャンツールを活用することで、電子制御装置10のエーミングを行うことができる。
【0034】
図2は、車両1の電子制御装置10をエーミング行う場合の例である。図2の車両1では、車両1の前方を認識するために、認識装置20がa1に設けられている。また、L1は車両1の中心線を示す仮想線である。
【0035】
ここで、a1から車両1の前方に所定距離b1離れた位置に、エーミングターゲットを設置する必要がある。例えば、仮想線L2は、車両1と正対する位置を示している。仮想線L2上に、エーミングターゲットの設置ポイントTP1、TP2、TP3を設ける。また、設置ポイントTP2、TP3は、中央から所定距離C1離れた位置に設置される。
【0036】
ここで、エーミングターゲットは、例えば、認識装置20がカメラ装置22の場合は、カメラ装置が認識するための所定のパターン(図形)であってもよい。また、エーミングターゲットは、認識装置20がレーダ装置24の場合は、レーダが反射するためのリフレクタであってもよい。
【0037】
エーミングターゲットは、認識装置20を含めた電子制御装置10のエーミングを行うために、車両1(認識装置20)に正対する位置に設置する必要がある。また、エーミングターゲットは、電子制御装置10のエーミングに必要となる設置ポイントTP1、TP2、TP3のうち、1又は複数の箇所に順次設置する必要がある。
【0038】
エーミングターゲットを設置する位置は、車両(メーカ、車種等)毎によって異なっている。そして、エーミングターゲットを正しい位置に設置した状態で、スキャンツールを操作し、エーミングターゲットの認識状態に基づいて、電子制御装置10の調整(エーミング)を行うことができる。
【0039】
なお、図2に示した所定距離は、メーカ毎又は車両毎にそれぞれ設定されてもよい。例えば、本実施形態の車両1においては、b1は3000mm、c1は550mmとする。また、エーミングターゲットをTP1、TP2、TP3の位置にそれぞれ設置し、認識装置20がエーミングターゲットを認識する。
【0040】
そして、電子制御装置10は、スキャンツールを利用することで、電子制御装置10のエーミング処理(校正処理)を実行することができる。具体的には、エーミング処理を実行することで、センサ(例えば、レーダセンサや、音波センサ)が正しく機能することで、電子制御装置10が正しく作動することになる。例えば、電子制御装置10が調整モードのときに、ターゲットの位置を認識させることで、センサ、カメラ等の基準が校正されることになるため、電子制御装置10は正しく動作することになる。エーミング処理は、電子制御装置10が実行する処理であってもよいし、OBD等を介して接続されたスキャンツールにより実行されてもよい。また、整備員が目視によって実行してもよい。
【0041】
このように、対象となる車両1は電子制御装置10のエーミングのときに、エーミングターゲットを設置するTP1、TP2、TP3の正確な位置決め作業が必要となる。このTP1、TP2、TP3の位置決め作業にあたり、対象となる車両1は、フロントガラスの内側上部に認識装置20(例えば、カメラ装置22)が取り付けされており、車両1の最前部や、最後部からの測定では位置決めが難しい状態である。
【0042】
そのため、メーカ指定の方法では、一旦車両1から一定の位置にある2点を位置決めしたうえで、その後それぞれ半円を描きその交点から3点(TP1点、TP2点、TP3点)を導き出す工程としていた。
【0043】
この「半円を描く」という作業が精度(メーカの指定の誤差は±3mm程度)を保つ上では必要だが、多数の作業工程(従来の方法では15工程程度)が発生する要因となっている。
【0044】
また、「半円を描く」作業について、メーカの作業手順書等で指定される方法は「ひもを使用」としており、これは専用の道具類を使わないという考えで作業方法が決められている。
【0045】
また、このような複雑な工程が課されているため、エーミングターゲットを設置する正しい位置を求めることに時間がかかってしまい、また、正確さを欠いてしまうという問題点が生じていた。
【0046】
また、エーミングターゲットは、車両1と正対させる必要があるが、本当に正対される位置に設置させることが難しいという課題が生じていた。
【0047】
また、電子制御装置10は、車両の運行を安全に行うための装置であり、僅かな誤差であっても生じることは好ましくない。
【0048】
そこで、以下に説明するエーミングの方法によれば、作業車が簡易に、かつ、正確にターゲットを設置することが可能となり、正しいエーミングを行うことができるようになる。
【0049】
[2.エーミング(ツール)]
つづいて、本実施形態におけるエーミング方法について、以下説明する。まず、本実施形態のエーミング方法において利用するツールについて説明する。
【0050】
[2.1 レーザターゲット]
図3は、レーザターゲットR1の斜視図である。図4(a)は、レーザターゲットR1の正面図、図4(b)はレーザターゲットR1の背面図である。図5(a)は、レーザターゲットR1の側面図(右側面図)、図5(b)はレーザターゲットR1を上面視した平面図である。
【0051】
レーザターゲットR1は、地面に置いたときに地面に載置される側となる載置部R5と、載置部R5の一端に接続された反射部R3とを有している。反射部R3は、載置部R5から鉛直上方に延出している。
【0052】
そして、レーザターゲットR1は、反射部R3と、載置部R5の屈曲角度が好ましくは90度の側面視L字状に形成される部材である。なお、屈曲角度は、90度であることが好ましいが、設計誤差を含むものであり、例えば85度~95度の角度であってもよい。
【0053】
また、レーザターゲットR1は、反射部R3と、載置部R5とは、一体的に形成されていることが好ましい。レーザターゲットR1は、例えば、スチール、アルミニウム、銅といった何れかの金属で構成されることが好ましいが、例えば、ゴムや、木材といったもので構成されていてもよい。
【0054】
反射部R3と、載置部R5との長さは同一であってもよいし、一方が長くてもよい。レーザターゲットR1の安定性を考えると、反射部R3と、載置部R5の長さは同一か、載置部R5の方が長いことが好ましい。
【0055】
レーザターゲットR1は、載置部R5の中央近傍及び反射部R3の中央近傍にスリットR7を設けている。スリットR7は、反射部R3の一部と、載置部R5とにある幅の狭い切り欠き形状であり、レーザターゲットR1の反射部R3の一部及び載置部R5を切り欠き加工することで形成される。スリットR7は、例えば反射部R3の高さの半分程度の長さを有していることが好ましいが、スリットR7によりレーザターゲットR1が左右に分離されなければよい。すなわち、スリットR7は、反射部R3においては、載置部R5側から上方(載置部R5と反対側)に向かって切り欠き加工され、反射部R3の半分の長さまでスリットR7が形成される。また、載置部R5側から上方に向かって、反射部R3の高さの3分の2程度までスリットR7が形成されてもよい。また、スリットR7は、レーザターゲットR1の幅方向中央近傍にあることが好ましいが、どちらかに偏っていてもよい。また、本実施形態では1つであるが、例えば複数のスリットを設けてもよい。
【0056】
また、スリットR7は、後述するレーザ光がレーザターゲットR1を抜ける必要があるため、載置部R5は前後(図3のX方向)に亘ってスリットR7を有している。
【0057】
スリットR7は、レーザ光がX方向に通過するための幅で形成されていることが好ましい。例えば、スリットR7は、1mmから3mm程度の幅で形成されるとよく、本実施形態では2mmであることがより好ましい。
【0058】
また、本実施形態では、説明の都合上、反射部R3側を正面側、載置部R5が延びている側を背面側という。なお、レーザターゲットR1は、レーザ光がスリットR7を通り抜ければよいため、正面側又は背面側をどちら側の向きに載置してもよい。すなわち、測定者は、レーザ装置から射光されるレーザ光をレーザターゲットR1の正面側から照射してもよいし、背面側から照射してもよい。
【0059】
例えば、図5(b)は、レーザターゲットR1を上面視した平面図である。スリットR7は、載置部R5をレーザターゲットR1の正面側から背面側に設けられている。また、スリットR7は、反射部R3の一部に設けられている。スリットR7も断面(側面視)ではL字形状となる。
【0060】
図6は、レーザ装置L10と、レーザターゲットR1とを置いた状態を説明する図である。ここで、レーザ装置L10から、レーザターゲットR1に対してレーザ光を照射(射光)する。図6では、レーザ光の光跡を一点鎖線で示している。なお、レーザ装置L10は、3Dレーザ装置(XYZ方向にレーザ光を射光できる装置)であることが好ましい。
【0061】
レーザ装置L10から射光されたレーザ光をスリットR7に通すようにレーザターゲットR1を載置する。ここで、レーザターゲットR1のスリットR7をレーザ光が通り抜けたときは、図6(a)に示すように、レーザターゲットR1と、レーザ装置L10とが正対している状態、平行な状態となる。
【0062】
仮に、図6(b)に示すように、レーザ装置L10と、レーザターゲットR1との角度が異なっているとき、すなわち、レーザターゲットR1とレーザ装置L10とが正対していない、平行になっていないとき、レーザ光は、スリットR7の側面にあたり、レーザ光がレーザターゲットR1を通り抜けないことになる。
【0063】
したがって、ユーザは、レーザ装置L10から射光されたレーザ光が、レーザターゲットR1のスリットR7を通り抜けるようにレーザターゲットR1を載置するだけで、必然的にレーザターゲットR1と、レーザ装置L10とが正対がとれるようになる。
【0064】
[2.2 サポートシート]
図8は、サポートシートP1の平面図を示す図である。また、図9は、説明のために、図8のサポートシートP1を反転させた状態を示す図である。サポートシートP1は、床面に敷き使用する為、汚れを考慮して黒色とすることが好ましい。また、一般的な工場では、様々な色の床があり、整備工場では白線を基準とするのが一般的である。したがって、サポートシートP1は、図8の状態の配色(黒色を基調に、線分等が白線)であることが好ましいが、説明の都合上、以下は反転した状態の図9に基づいて説明する。
【0065】
サポートシートP1は、長手方向(図9のFB方向)に沿って、中央に中央設置線P12が、左右端部側に左右設置線P14、設置線P16が設けられている。また、サポートシートP1は、短手方向(図9のLR方向)に沿って、距離毎にメモリ線が平行に複数設けられている。この短手方向のメモリ線に対応する位置に距離を示す表示がP20に記載されている。
【0066】
サポートシートP1は、図9の下側(図9のB側)を車両1側になるように床面に設置される。このとき、サポートシートP1に記載されている中央設置線P12と、短手方向のメモリ線との交点を中心とし、車両1の前方中央の先端部が当該位置に来るようにサポートシートP1を設置する。なお、このサポートシートP1に記載されている中央設置線P12と、短手方向のメモリ線との交点が解りやすくなるように、表示P30が示されてもよい。サポートシートP1が、車両1の前方中央の先端部が当該位置に来るようにサポートシートP1を設置したとき、P20に記載されている数値が、車両前方からの距離を示している。図9では、0cmから250cmまでを示している。
【0067】
また、サポートシートP1の中心を、車両1の前方中央の先端部の位置に設置できないときは、車両1の前方中央先端部から、F方向に延長した直線上の位置にサポートシートP1を設置してもよい。このとき、P20に記載されている数値に、車両1の前方中央の先端部から、表示P30に含まれる中心の位置までの距離を加算することで、車両1の前方中央の先端部からの例えば、エーミングターゲットを設置した距離を求めることができる。
【0068】
また、サポートシートP1は、短手方向の中心にある中央設置線P12から左右対称の位置に、長手方向に(図9のFB方向)にそって、左右設置線P14が設けられている。左右設置線P14は、例えば、中央設置線P12から左側(L側)に第1の距離分離れた位置に左設置線P14Lが引かれている。このとき、図9のサポートシートP1では、所定の距離は550mmである。すなわち、左設置線P14L、中央設置線P12間は550mmとなる。また、中央設置線P12から右側(R側)に、所定の距離分離れた位置に右設置線P14Rが引かれている。この中央設置線P12、右設置線P14R間も所定の距離(550mm)となる。
【0069】
この右設置線P14Rは、エーミングターゲットを設置する場所である。エーミングターゲットの中心を、左右設置線P14(左設置線P14L、右設置線P14R)の位置に重なるように設置する。このようにすることで、中心から所定の距離(550mm)離れた位置に、自動的にエーミングターゲットを設置することができる。この距離は、図2で説明したc1の距離である。
【0070】
エーミングターゲットは、車両によって設置する場所が異なる。そこで、サポートシートP1は、他の車両でも使用する距離に応じて線分が引かれていてもよい。例えば、サポートシートP1は、左右設置線P16が引かれている。このとき、中央設置線P12、左設置線P16L(又は右設置線P16R)間の距離は600mmになっている。
【0071】
すなわち、車両1のエーミングを実行するとき、図2のc1の距離が550mの位置にエーミングターゲットを設置する必要があるときは、エーミングターゲットの中心を左右設置線P14上になるように設置する。また、車両1のエーミングを実行するとき、図2のc1の距離が600mの位置にエーミングターゲットを設置する必要があるときは、エーミングターゲットの中心を左右設置線P16上になるように設置する。
【0072】
なお、サポートシートP1は、普段は丸めて収納するとコンパクトに収納することができ、持ち運ぶことが容易となる。このとき、サポートシートP1が正しく伸びるような部材を使用したり、錘を端部に設けたりしてもよい。例えば、サポートシートP1は、端部の裏面又は表面に錘P40が貼り付けてもよい。錘P40の自重により、サポートシートP1の設置が安定する。
【0073】
また、サポートシートP1は、素材としてターポリンを利用してもよい。ターポリン素材を利用することにより、伸縮が少ないため、例えば作業環境(屋外、耐水、耐候)を考慮しても正しい距離、目盛りの位置を維持することができる。
【0074】
図10は、車両の前にサポートシートP1を設置したときの写真である。このように、車両前方にサポートシートP1を設置する。そして、正しい位置に設置した後は、図11に示すように、サポートシートP1に示された左右設置線P14又は左右設置線P16の位置に、エーミングターゲットT10の中心を設置する。
【0075】
図12(a)は、エーミングターゲットT10の模式図である。エーミングターゲットT10は、土台T12に、支柱T14を介してターゲットパターンT16が設けられている。ターゲットパターンT16は、車両1毎(メーカ毎)に異なるパターンが印刷されている。
【0076】
土台T12には、中心に中心線T12aが印刷されている。図12(b)は、エーミングターゲットT10を、サポートシートP1の左設置線P14Lに設置した状態を示す拡大図である。エーミングターゲットT10の土台に印刷されている中心線T12aが、サポートシートP1の左設置線P14Lと同じ位置になるようにエーミングターゲットT10を設置する。これにより、エーミングターゲットT10は、中心から正しい位置に簡単に設置することができる。また、エーミングターゲットT10は、中心線T12aと、左設置線P14Lとが一致することにより、車両1と正対する位置に正しく設置することができる。また、サポートシートP1の短手方向のメモリ線分上にエーミングターゲットT10の土台T12の一辺を揃えることで、エーミングターゲットT10は、車両1に正対する位置に設置されることになる。
【0077】
[2.3 Lレーザターゲット]
図13は、LレーザターゲットRT1である。図13は、図3で説明したレーザターゲットR1と比較し、長手方向に長く、スリットが入っていないタイプである。図13(a)は、LレーザターゲットRT1の側面図(左側面図)であり、図13(b)は、LレーザターゲットRT1の背面図である。
【0078】
LレーザターゲットRT1は、反射部RT3と、載置部RT5とを有している。ここで、図3で示したレーザターゲットR1との違いは、LレーザターゲットRT1は、スリット部を有していない。
【0079】
また、LレーザターゲットRT1は、長手方向におよそ2メートルの長さを有している。このため、車両1と正対する位置に設置したとき、車両1の車幅をほぼ含むことが可能となる。
【0080】
[3.エーミング方法]
つづいて、上述したツールを利用して、エーミングを実行する方法について以下説明する。図14は、エーミングを実行するときの処理フローであり、図15は具体的な設置例である。
【0081】
まず、車両1における後方の中央位置を特定する(S10)。例えば、車両1のリアバンパ中央(リアに設けられているエンブレムの中心位置)から、先端のとがった錘を鉛直下に垂らし、当該錘の先端の位置に基づいて地面にマーキングをする。このマーキングした点が、車両1における後方の中央位置であり、例えば、図15のポイントCP1となる。
【0082】
つづいて、車両1における前方の中央位置を特定する(S12)。例えば、車両1のフロントバンパ中央(フロントに設けられているエンブレムの中心位置)から、先端のとがった錘を鉛直下に垂らし、当該錘の先端の位置に基づいて地面にマーキングする。このマーキングした点が、車両1における前方の中央位置であり。例えば、図15のポイントCP3となる。
【0083】
つづいて、車両1の前方の中央位置に基づき、サポートシートP1を車両の前方の地面に設置する(S14)。また、車両前方の中央位置に基づき、エーミングターゲットT10を置く距離に、レーザターゲットR1を設置する(S16)。すなわち、エーミングターゲットT10が、所定距離(例えば、図2におけるb1の距離となる位置)の位置に設置されるように、レーザターゲットR1の設置位置を調整する。
【0084】
つづいて、車両1の後方の中央から、レーザ装置L10によってレーザを照射する(S18)。このとき、レーザ装置L10より射光されたレーザが、レーザターゲットR1のスリットR7を通過する用に、レーザターゲットR1の向きを調整する。ここで、レーザターゲットR1のスリットR7をレーザが通過したとき、レーザターゲットR1は、車両1に正対している状態となる。また、レーザ装置L10により射光されたレーザの光跡が、中央設置線P12と重なることが好ましい。
【0085】
そして、レーザターゲットR1の位置が決まったことから、エーミングターゲットT10を設置する(S20)。このとき、サポートシートP1のメモリ線の位置にエーミングターゲットT10の端部を揃えて設置することで、車両1に正対した位置でエーミングターゲットT10を設置することができる。
【0086】
具体的には、サポートシートP1のうち、中央設置線P12上に位置する設置ポイントTP1の位置にエーミングターゲットT10を設置し、エーミング作業を実行する(S22)。例えば、エーミングターゲットT10を設置した状態で、通信部50を介して接続したスキャンツールを実行してエーミングを行う。エーミングは、例えば、メーカから指定された数値を入力することで、認識装置20から取得されたエーミングターゲットを利用してセンサの距離や画角といったことを調整する。
【0087】
そして、エーミングターゲットT10を、設置ポイントTP1以外に、TP2、TP3と移動し、その都度スキャンツール60を活用してエーミングを実行する。
【0088】
なお、図16では、メモリ線がある位置にエーミングターゲットT10を設置することを説明したが、メモリ線がない位置に、エーミングターゲットT10を設置することも可能である。
【0089】
例えば、図16は、他の方法を利用してエーミングターゲットT10を設置している。例えば、レーザターゲットR1を、車両1の直下又は直下近傍に設置する。そして、レーザ装置L10から射光されたレーザ光が、レーザターゲットR1のスリットR7を通過することで、レーザターゲットR1は、車両1の中心であり、かつ、車両1に正対される形で設置される。
【0090】
つづいて、レーザ装置L20からレーザを射光し、レーザターゲットR1にレーザ光を照射する。例えば、レーザターゲットR1の反射部R3にレーザが照射されることで、レーザ装置L20は、レーザターゲットR1と正対に設置することができる。
【0091】
そして、レーザ装置L20の照射側と反対側にLレーザターゲットRT1を設置する。このとき、レーザ装置L20の一端部と、LレーザターゲットRT1とが設置されることで、LレーザターゲットRT1は、車両1と等距離かつ正対して設置される。
【0092】
そして、設置されたLレーザターゲットRT1に沿って、エーミングターゲットT10を中央設置線P12、左右設置線P14上に設置する。これにより、例えばサポートシートP1だけで車両1(認識装置20)からエーミングターゲットT10までの距離を測定できなかったとしても、LレーザターゲットRT1を利用することで、エーミングターゲットT10を適切に設置することが可能となる。
【0093】
また、図14で示したエーミング方法は、スキャンツール60において実行してもよい。例えば、制御部62が、図14で示した処理を実行するための機能を実現してもよい。また、スキャンツール60にカメラ装置等を搭載し、確認してもよい。例えば、S10において、スキャンツール60は、カメラ装置で車両の後方を撮影することで、中央位置を特定してもよい。このとき、スキャンツール60は、例えばレーザ光等を利用して、車両1の後方の中央位置を示してもよい。また、ユーザがスキャンツール60において、正しく車両1の後方中央位置が特定できたことを入力してもよい。
【0094】
すなわち、スキャンツール60は、各ステップにおいて、適切に設置ができたことを、レーザ光を検知できたことを認識してもよい、また、スキャンツール60は、各ステップにおいて、作業員から正しい手順が行われたことをその都度入力したり、次の作業手順を表示したりしてもよい。
【0095】
[4.エーミング環境の記録]
例えば、エーミングターゲットが正しく設置されたかを記録してもよい。例えば、レーザターゲットR1のスリットR7を通過したレーザ光を検知すると、記録するシステム(記録装置)を提供してもよい。記録装置は、例えば、レーザ光の入力を検知する光センサや、カメラ装置を利用してもよい。また、記録装置は、スキャンツール60と一体化されてもよい。また、記録装置は、併せてレーザターゲットR1の位置を記録してもよい。
【0096】
これにより、車両1の後方から射光されたレーザ光が、車両1の前方に向かって軌跡を描き、レーザターゲットR1のスリットを通過していることが記録される。これにより、少なくともレーザターゲットR1が、車両1に正対する位置に設置されていることが確認できる。また、レーザターゲットR1に沿ってエーミングターゲットが設置されていることから、エーミングターゲットが車両1に正しく正対していることを記録することができる。
【0097】
また、記録装置は、エーミング時に利用したパラメータを併せて記録してもよい。すんわち、エーミングに利用するために入力されたパラメータと、レーザターゲットR1や、エーミングターゲットが正しく設置されたことを併せて記録してもよい。
【0098】
[5.効果]
本実施形態のエーミングの方法は、上述したツールを活用することで、基本原理はシート状の素材であるサポートシートP1に「平行」と「直角」の原理を活用し、あらかじめエーミングターゲットの設置場所の位置決めが簡易に可能となる様にメモリを印刷したものである。
【0099】
これにより、作業員が電子制御装置10のエーミングを行うときに、「半円を描く」作業工程が発生しないため以下のような効果が得られた。
【0100】
(1)作業工程数の減少
車両の停止から、エーミングターゲットを設置するポイントの正確な位置決めまでの工程数が大きく減少した。例えば、Aメーカ指定の方法では15工程かかったが、本実施形態の方法では、8工程まで減少した。
【0101】
(2)作業時間の短縮
上述したように、工程数の減少とともに作業員の作業時間が短縮した。例えば、AメーカB車種のときAメーカ指定の方法では40分かかったが、本実施形態の方法では7分20秒で作業が完了した。
【0102】
(3)上記(1)(2)による精度向上
それぞれのエーミングの作業工程は、作業員がミリ単位での位置決めを繰り返す必要があった。そのため、作業員の作業工程が減ると当然誤差は少なくなるが、単純な工程数を減らすだけでは精度向上だけでなく、更に誤差が生じてしまう可能性がある。
【0103】
とくにメーカ指定の方法では、太さ1mm程度のひもを使用し「半円を描く」工程があったが、本実施形態では当該工程がなくなるため、メーカ指定の作業方法より精度は向上する。例えば、メーカが指定する誤差の許容範囲は±3mmであるが、本実施形態の方法では誤差範囲は±1mm程度までおさえることが可能となる。
【0104】
[6.変形例]
本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0105】
また、明細書に記載したいずれの技術についても、補正又は分割出願等において権利取得する意思を有する。また、明細書に記載された何れの技術についても、他の出願(例えば、特許出願、意匠登録出願)に変更する意思を有するものである。
【符号の説明】
【0106】
C1 車両
10 電子制御装置
12 自動運行装置
14 衝突被害軽減制動制御装置
16 自動命令型操舵装置
20 認識装置
22 カメラ装置
24 レーダ装置
26 レーザ装置
30 車両制御部
42 駆動部
44 制動部
46 操舵部
50 通信部
60 スキャンツール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16