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特開2024-100462トンネル覆工方法及びトンネル用プレキャスト版の支持構造
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  • 特開-トンネル覆工方法及びトンネル用プレキャスト版の支持構造 図1
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  • 特開-トンネル覆工方法及びトンネル用プレキャスト版の支持構造 図16
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100462
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】トンネル覆工方法及びトンネル用プレキャスト版の支持構造
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/08 20060101AFI20240719BHJP
   E21D 11/10 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
E21D11/08
E21D11/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004477
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(71)【出願人】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000228660
【氏名又は名称】日本コンクリート工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000228785
【氏名又は名称】日本サミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 泰文
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慎八
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 賢
(72)【発明者】
【氏名】八木 恒司
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA05
2D155BB02
2D155CA03
2D155FB01
2D155FB05
2D155JA01
2D155JA02
(57)【要約】
【課題】複雑な構造を用いることなく少ない回数で裏込め材の注入を行うことのできるトンネル覆工方法及びトンネル用プレキャスト版の支持構造を提供する。
【解決手段】アーチ状に設置されたプレキャスト版10の内側にプレキャスト版10の内周面側を支持する支持架台30を配置するとともに、プレキャスト版10の注入孔11に螺合する注入ニップル33を支持架台30に固定することによりプレキャスト版10を支持架台30に固定した後、注入ニップル33から裏込め材5を注入するようにしたので、支持架台30によってプレキャスト版10のトンネル径方向内側及び外側への変位を規制することができる。これにより、一次覆工3とプレキャスト版10との間隙全体に裏込め材5を一括で注入した場合でも、裏込め材5の圧力でプレキャスト版10がトンネル径方向内側及び外側の何れの方向に対しても変形を生ずることがなく、裏込め材5の注入回数を少なくして効率よく施工することができる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の湾曲形状のプレキャスト版を互いにトンネル周方向に突き合わせてアーチ状に設置した後、プレキャスト版に設けられた注入孔からプレキャスト版の外周面側に裏込め材を注入するトンネル覆工方法において、
アーチ状に設置されたプレキャスト版の内側にプレキャスト版の内周面側を支持する支持構造物を配置するとともに、
プレキャスト版の注入孔に螺合する注入ニップルを支持構造物に固定することによりプレキャスト版を支持構造物に固定した後、
注入ニップルから裏込め材を注入する
ことを特徴とするトンネル覆工方法。
【請求項2】
前記プレキャスト版が載置された搬送架台をプレキャスト版の設置位置まで移動してプレキャスト版を設置した後、
搬送架台をプレキャスト版の設置位置から待避させるとともに、
搬送架台の進入方向反対側から前記支持構造物をプレキャスト版の設置位置に移動し、
プレキャスト版と支持構造物との固定及び裏込め材の注入を行う
ことを特徴とする請求項1記載のトンネル覆工方法。
【請求項3】
裏込め材注入用の注入孔を有する複数の湾曲形状のプレキャスト版を互いにトンネル周方向に突き合わせてアーチ状に設置するとともに、プレキャスト版の内側に配置した支持構造物によってプレキャスト版の内周面側を支持するようにしたトンネル用プレキャスト版の支持構造において、
前記プレキャスト版の注入孔に螺合する注入ニップルを前記支持構造物に固定することによりプレキャスト版を支持構造物に固定した
ことを特徴とするトンネル用プレキャスト版の支持構造。
【請求項4】
前記支持構造物はプレキャスト版の内周面を支持する支持部を有し、
支持部に設けた挿通孔を挿通する注入ニップルをプレキャスト版の注入孔に螺合することにより注入ニップルで支持部をプレキャスト版に締結した
ことを特徴とする請求項3記載のトンネル用プレキャスト版の支持構造。
【請求項5】
前記支持部はプレキャスト版の内周面に当接する当接部を有し、
当接部はトンネル径方向に移動可能に設けられている
ことを特徴とする請求項4記載のトンネル用プレキャスト版の支持構造。
【請求項6】
前記支持部はプレキャスト版の内周面に当接する当接部を有し、
当接部はトンネル周方向に傾動可能に設けられている
ことを特徴とする請求項4記載のトンネル用プレキャスト版の支持構造。
【請求項7】
前記支持部はプレキャスト版の内周面に当接する当接部を有し、
当接部はプレキャスト版の内周面の曲率よりも大きい曲率の曲面状または球面状に形成されている
ことを特徴とする請求項4記載のトンネル用プレキャスト版の支持構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内に設置したプレキャスト版の外周面側に裏込め材を注入するトンネル覆工方法及びトンネル用プレキャスト版の支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、トンネルの施工においては、掘削したトンネルの内周面に吹付けコンクリートによって一次覆工を形成した後、一次覆工に沿って型枠を設置し、型枠にコンクリートを打設することにより二次覆工を構築する施工方法が一般的である。しかしながら、このような工法では型枠の設置及び撤去等に多くの工数を要する。
【0003】
また、他の覆工方法として、予め工場等で製作した湾曲形状のプレキャスト版を用いて覆工版を構築するようにした工法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この工法では、現場に搬入したプレキャスト版をフォークリフトやエレクター等の架設機を用いてトンネル周方向及び軸方向に並べてアーチ状に設置することにより覆工版を構築することができるので、覆工コンクリートを現場で打設する必要がなく、効率よく施工を行うことができる。
【0004】
前記プレキャスト版を用いて覆工版を構築する場合は、複数のプレキャスト版を互いにトンネル周方向に突き合わせるように設置した後、プレキャスト版に設けられた注入孔からプレキャスト版の外周面側と一次覆工との間に裏込め材を注入するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-89200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記裏込め材の注入は、プレキャスト版に加わる裏込め材の圧力を軽減するために、例えば1日一回ずつ5日間に亘って注入するなど、注入作業を複数回に分けて行うようにしているため、施工日数が多くなり、作業員のコストが高くつくという問題がある。
【0007】
また、裏込め材の注入回数を少なくするためには、アーチ状に設置したプレキャスト版を裏込め材の注入圧力で変形しないように支持することが考えられる。その方法としては、プレキャスト版の内周面側を支保工で支持する方法があるが、これではプレキャスト版の内側への変形を防止することはできても外側への変形を防止することができない。そこで、プレキャスト版を貫通する多数の押しボルトによってプレキャスト版を一次覆工に固定して外側への変形を防止する方法を前記支保工による支持方法と組み合わせることにより、内外両方への変形を防止する施工方法が考えられる。しかしながら、この場合は支保工と押しボルトを用いる複雑な構造となるため、多大な手間を要するとともに細工も多くなり、効率よく施工を行うことができないという問題点がある。
【0008】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複雑な構造を用いることなく少ない回数で裏込め材の注入を行うことのできるトンネル覆工方法及びトンネル用プレキャスト版の支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記目的を達成するために、複数の湾曲形状のプレキャスト版を互いにトンネル周方向に突き合わせてアーチ状に設置した後、プレキャスト版に設けられた注入孔からプレキャスト版の外周面側に裏込め材を注入するトンネル覆工方法において、アーチ状に設置されたプレキャスト版の内側にプレキャスト版の内周面側を支持する支持構造物を配置するとともに、プレキャスト版の注入孔に螺合する注入ニップルを支持構造物に固定することによりプレキャスト版を支持構造物に固定した後、注入ニップルから裏込め材を注入するようにしている。
【0010】
また、本発明は前記目的を達成するために、裏込め材注入用の注入孔を有する複数の湾曲形状のプレキャスト版を互いにトンネル周方向に突き合わせてアーチ状に設置するとともに、プレキャスト版の内側に配置した支持構造物によってプレキャスト版の内周面側を支持するようにしたトンネル用プレキャスト版の支持構造において、前記プレキャスト版の注入孔に螺合する注入ニップルを前記支持構造物に固定することによりプレキャスト版を支持構造物に固定している。
【0011】
これにより、アーチ状に設置されたプレキャスト版の内側にプレキャスト版の内周面側を支持する支持構造物が配置されるとともに、プレキャスト版の注入孔に螺合する注入ニップルを支持構造物に固定することによりプレキャスト版が支持構造物に固定されることから、支持構造物によってプレキャスト版のトンネル径方向内側及び外側への変位が規制され、プレキャスト版の外周面側に裏込め材を一括で注入した場合でも、裏込め材の圧力でプレキャスト版がトンネル径方向内側及び外側の何れの方向に対しても変形を生ずることがない。この場合、プレキャスト版に設けられている裏込め材注入用の注入孔に螺合する注入ニップルを用いて支持構造物とプレキャスト版が固定されることから、支持架台とプレキャスト版とを固定するための部品を別途必要としない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プレキャスト版の外周面側に裏込め材を一括で注入した場合でも、裏込め材の圧力でプレキャスト版がトンネル径方向内側及び外側の何れの方向に対しても変形を生ずることがないので、裏込め材の注入回数を少なくして効率よく施工することができる。これにより、裏込め材の注入に要する作業員のコストを低減することができるとともに、工期を大幅に短縮することができる。この場合、支持構造物とプレキャスト版とを固定するための部品を別途必要としないので、部品の兼用による構造の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態を示す覆工版の部分斜視図
図2】プレキャスト版の支持構造を示す一部分解正面拡大断面図
図3】覆工工程を示すトンネルの正面断面図
図4】覆工工程を示すトンネルの正面断面図
図5】覆工工程を示すトンネルの正面断面図
図6】覆工工程を示すトンネルの正面断面図
図7】覆工工程を示すトンネルの正面断面図
図8】覆工工程を示すトンネルの正面断面図
図9】覆工工程を示すトンネルの側面断面図
図10】覆工工程を示すトンネルの側面断面図
図11】覆工工程を示すトンネルの側面断面図
図12】覆工工程を示すトンネルの側面断面図
図13】覆工工程を示すトンネルの側面断面図
図14】本発明の他の実施形態に係るプレキャスト版の支持構造を示す正面拡大断面図
図15】支持部の側面断面図
図16】A-A線矢視方向断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至図13は本発明の一実施形態を示すもので、トンネル内に設置したプレキャスト版の外周面側に裏込め材を注入するトンネル覆工方法を示すものである。
【0015】
本実施形態の覆工版1は、例えば山岳部の道路や鉄道、或いは水路用のトンネルの二次覆工として構築されるもので、トンネル幅方向両側にそれぞれ配置される湾曲形状のプレキャスト版10を互いに上端部を突き合わせるように設置することによりアーチ状に形成される。
【0016】
プレキャスト版10は工場等で製作されるパネル状のコンクリートからなり、左右一対のプレキャスト版10によってアーチ状の覆工版1を形成するようになっている。プレキャスト版10には、裏込め材注入用の複数の注入孔11が互いにトンネル周方向に間隔をおいて設けられ、各注入孔11は後述する注入ニップル33が螺合するように内周面に雌ネジが形成されている。
【0017】
本実施形態では、トンネル内にプレキャスト版10を搬入するための自走式の搬送架台20と、トンネル内に設置されたプレキャスト版10を支持する支持構造物としての自走式の支持架台30とを用いるとともに、搬送架台20及び支持架台30はトンネル内に敷設した左右一対のレール40上を走行するようになっている。
【0018】
搬送架台20は、内側を図示しない一般車両が通行可能に形成された門型の架台本体21を備え、架台本体21上にプレキャスト版10が載置されるようになっている。搬送架台20は、架台本体21の下端にレール40上を走行するための車輪21aを有し、図示しない駆動源によりレール40上を自走するようになっている。
【0019】
支持架台30は、内側を図示しない一般車両が通行可能に形成された門型の架台本体31を備え、架台本体31に設けられた複数の支持部32と注入ニップル33によってプレキャスト版10を支持するようになっている。支持架台30は、架台本体31の下端にレール40上を走行するための車輪31aを有し、図示しない駆動源によりレール40上を自走するようになっている。
【0020】
支持部32は、架台本体31からトンネル径方向に突出するブラケットからなり、その先端側にはプレキャスト版10の内周面に当接する当接部としての当接板32aが設けられている。また、当接板32aには注入ニップル33を挿通する挿通孔32bが設けられている。
【0021】
注入ニップル33は、裏込め材の注入ホース50をプレキャスト版10の注入孔11に接続するとともに、プレキャスト版10を支持架台30に固定するように構成されており、注入ニップル33の軸方向一端側には注入孔11に螺合する第1の雄ネジ部33aが設けられている。注入ニップル33の軸方向他端側には注入ホース50の接続部が螺合する第2の雄ネジ部33bが設けられ、注入ニップル33の軸方向中央側には六角ナット状の拡径部33cが設けられている。
【0022】
即ち、支持架台30は、図2に示すように、プレキャスト版10の内周面に支持部32の当接板32aを当接させるとともに、支持部32の挿通孔32bに注入ニップル33の一端側を挿通し、第1の雄ネジ部33aを注入孔11に螺合して拡径部33cを工具で締め付けることにより、支持部32とプレキャスト版10が注入ニップル33によって締結されるようになっている
次に、図3乃至図13を参照し、本実施形態の覆工方法について説明する。まず、図3に示すように地山2のトンネル内周面に吹き付けコンクリートからなる一次覆工3を形成する。尚、既設トンネルの修復の場合は既設覆工が一次覆工となる。
【0023】
次に、図9に示すように、トンネル軸方向一方において、例えば予め上端部同士を連結された左右のプレキャスト版10を3列に連結したものを搬送架台20に載置する。続いて、図10に示すようにプレキャスト版10を載置した搬送架台20をトンネル軸方向一方からプレキャスト版10の設置位置に移動し、図4に示すようにトンネル内の側壁4上にプレキャスト版10をアーチ状に設置する。
【0024】
この後、図11に示すようにプレキャスト版10を積み降ろした搬送架台20をトンネル軸方向一方に移動して、図5に示すようにプレキャスト版10から待避させるとともに、図12に示すようにトンネル軸方向他方で待機させていた支持架台30を搬送架台20の進入方向反対側からプレキャスト版10の設置位置に移動し、図6に示すように支持架台30の架台本体31または各支持部32をジャッキアップしてプレキャスト版10の内周面に各支持部32の当接板32aを当接させるとともに、注入ニップル33をプレキャスト版10の各注入孔11に接続し、各注入ニップル33によってプレキャスト版10を支持架台30に固定する。
【0025】
この後、図7に示すように注入ホース50を注入ニップル33に接続し、図示しない注入ポンプ車から注入ホース50を介してプレキャスト版10の外周面側に裏込め材5を注入し、一次覆工3とプレキャスト版10との間に裏込め材5を充填する。この場合、図7に示すように最上部の注入ニップル33に注入ホース50を接続して一次覆工3とプレキャスト版10との間隙全体に裏込め材5を注入するようにしてもよいし、下方の注入ニップル33から上方の注入ニップル33に注入ホース50を順次接続し、各上下位置の注入ニップル33ごとに裏込め材5を注入するようにしてもよい。尚、注入ホース50が接続されていない注入ニップル33は、例えば図示しない逆止弁によって閉鎖される。
【0026】
続いて、図8に示すように一次覆工3とプレキャスト版10との間隙全体に裏込め材5を充填した後、プレキャスト版10から注入ニップル33を取り外し、図13に示すように支持架台30をトンネル軸方向他方に待避させることにより、プレキャスト版10の設置及び裏込め材の充填が完了する。
【0027】
そして、図13に示すように新たなプレキャスト版10を載置した搬送架台20をトンネル軸方向一方からプレキャスト版10の次の設置位置に移動し、前記工程を繰り返すことにより、トンネル内のプレキャスト版10の設置及び裏込め材5の注入をトンネル軸方向に亘って順次行う。
【0028】
また、前記裏込め材5の注入の際、プレキャスト版10には注入された裏込め材5の圧力が加わるが、一端側がプレキャスト版10の注入孔11に螺合する注入ニップル33の他端側が支持架台30の支持部32に固定されているので、アーチ状に設置されたプレキャスト版10が支持架台30によってトンネル径方向内側及び外側への変位を規制される。
【0029】
このように、本実施形態によれば、アーチ状に設置されたプレキャスト版10の内側にプレキャスト版10の内周面側を支持する支持架台30を配置するとともに、プレキャスト版10の注入孔11に螺合する注入ニップル33を支持架台30に固定することによりプレキャスト版10を支持架台30に固定した後、注入ニップル33から裏込め材5を注入するようにしたので、支持架台30によってプレキャスト版10のトンネル径方向内側及び外側への変位を規制することができる。これにより、一次覆工3とプレキャスト版10との間隙全体に裏込め材5を一括で注入した場合でも、裏込め材5の圧力でプレキャスト版10がトンネル径方向内側及び外側の何れの方向に対しても変形を生ずることがなく、裏込め材5の注入回数を少なくして効率よく施工することができる。従って、裏込め材5の注入に要する作業員のコストを低減することができるとともに、工期を大幅に短縮することができる。
【0030】
また、プレキャスト版10に設けられている裏込め材注入用の注入孔11に螺合する注入ニップル33を用いて支持架台30とプレキャスト版10とを固定するようにしているので、支持架台30とプレキャスト版10とを固定するための部品を別途必要とせず、部品の兼用による構造の簡素化を図ることができる。
【0031】
この場合、支持架台30にプレキャスト版10の内周面を支持する支持部32を設け、支持部32に設けた挿通孔32bを挿通する注入ニップル33をプレキャスト版10の注入孔11に螺合することにより注入ニップル33で支持部32をプレキャスト版10に締結するようにしたので、支持架台30とプレキャスト版10との固定作業を容易に行うことができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0032】
また、プレキャスト版10が載置された自走式の搬送架台20をプレキャスト版10の設置位置まで移動してプレキャスト版10を設置した後、搬送架台20をプレキャスト版10の設置位置から待避させるとともに、搬送架台20の進入方向反対側から自走式の支持架台30をプレキャスト版10の設置位置に移動し、プレキャスト版10と支持架台20との固定及び裏込め材5の注入を行うようにしているので、この工程を繰り返すことによりプレキャスト版10の設置作業と裏込め材5の注入作業とを効率よく行うことができ、覆工版全体における施工効率の向上を図ることができる。
【0033】
この場合、門型の搬送架台20と支持架台30を用いることにより、搬送架台20及び支持架台30の内側を一般車両が通行できるようにしたので、トンネル内を交通開放しながら作業を行うことができ、高速道路や幹線道路等の交通量の多いトンネルの修復に極めて有利である。
【0034】
図14乃至図16は本発明の他の実施形態を示すもので、支持架台30の前記支持部32に代えて可動構造の支持部34を備えたものである。尚、前記実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0035】
本実施形態の支持部34は、プレキャスト版10の内周面に当接する当接部としての円板状の当接板34aを有し、当接板34aの中央には注入ニップル33を挿通する挿通孔34bが設けられている。当接板34aはプレキャスト版10との当接面(凸面側)がプレキャスト版10の内周面の曲率よりも大きい曲率の球面状に形成され、その背面側には第1の円筒部材34cの一端が固定されている。
【0036】
第1の円筒部材34cは、注入ニップル33を挿通可能な大きさの内径を有し、第1の円筒部材34c内は当接板34aの挿通孔34bと連通している。第1の円筒部材34cの外周面側には第2の円筒部材34dが設けられ、第1及び第2の円筒部材34c,34dは、それぞれの外周面及び内周面に設けられたネジ部によって互いに螺合している。これにより、当接板34aを回転させて第1の円筒部材34cを第2の円筒部材34dに対して回動すると、当接板34aが円筒部材34c,34dの軸方向に移動し、架台本体31からの当接板34aの突出高さを調整できるようになっている。
【0037】
第2の円筒部材34dは、軸方向に直交する方向(トンネル軸方向)に延びる一対の支軸34eを介して左右一対の固定部材34fに回動自在に支持されており、各固定部材34fは架台本体31に固定されている。これにより、第2の円筒部材34dが支軸34eを中心に回動することにより、当接板34aがトンネル周方向に傾動し、プレキャスト版10に対する当接板34aの向きを調整できるようになっている。
【0038】
本実施形態において、プレキャスト版10を支持架台30によって支持する場合は、架台本体31または各支持部34をジャッキアップし、図14に示すようにプレキャスト版10の内周面に各支持部34の当接板34aを当接させるとともに、注入ニップル33を第1の円筒部材34c内を通じてプレキャスト版10の注入孔11に接続し、注入ニップル33によってプレキャスト版10を支持架台30に固定する。
【0039】
その際、当接板34aはプレキャスト版10の内周面の曲率よりも大きい曲率の球面状に形成されているので、当接板34aとプレキャスト版10との間に隙間を生ずることがなく、当接板34aとプレキャスト版10とを注入ニップル33で確実に固定することができる。
【0040】
また、当接板34aを回転させてトンネル径方向に移動させることにより当接板34aの突出高さを調整することができるので、当接板34aを常に架台本体31からプレキャスト版10の内周面までの距離に応じた突出高さにすることができ、プレキャスト版10を支持架台30に確実に固定することができる。
【0041】
更に、支軸34eを中心に当接板34aをトンネル周方向に傾動させることにより当接板34aの向きを調整することができるので、当接板34aを常にプレキャスト版10の内周面に対して適正な向きで当接させることができ、プレキャスト版10を支持架台30に確実に固定することができる。
【0042】
尚、前記実施形態では、当接板34aをプレキャスト版10の内周面の曲率よりも大きい曲率の球面状に形成したものを示したが、トンネル周方向に沿って湾曲した曲面状の当接板を用いるようにしてもよい。
【0043】
また、前記各実施形態は本発明の一実施例であり、本発明は前記実施形態に記載されたものに限定されない。
【符号の説明】
【0044】
1…覆工版、5…裏込め材、10…プレキャスト版、20…搬送架台、30…支持架台、32…支持部、32a…当接板、33…注入ニップル、32b…挿通孔、34…支持部、34a…当接板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16