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  • 特開-プラント用の事故対策計画システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100470
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】プラント用の事故対策計画システム
(51)【国際特許分類】
   E04H 5/02 20060101AFI20240719BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20240719BHJP
   E04H 9/16 20060101ALI20240719BHJP
   G06Q 10/06 20230101ALI20240719BHJP
【FI】
E04H5/02
E04H9/14 K
E04H9/16 A
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004489
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】神田 憲一
【テーマコード(参考)】
2E139
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
2E139AA03
2E139AA23
2E139AB21
2E139AC12
2E139DA00
5L010AA06
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】プラントの外部で起こる不確実性のある事象の影響を考慮して事故対策を計画できるプラント用の事故対策計画システムの提供。
【解決手段】プラント外での事故対策を入力する事故対策入力手段2と、事故対策での移動経路を示す経路情報、及び経路の移動時間を示す移動時間情報が含まれる複数のコスト情報であって、経路の出発地点と到着地点の組み合わせが異なる複数のコスト情報を導出するコスト情報導出手段3と、各コスト情報についてプラントの外部で起こる外部事象による外部リスク情報を導出する外部リスク導出手段4と、各コスト情報についてプラントの外部での被ばくリスク情報を導出する被ばくリスク導出手段5と、複数のコスト情報から外部リスクと被ばくリスク情報とに基づいて導出される総リスク情報が最も低いものを選出する対策選出手段6とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計画の対象とする事故対策であって、プラントの外部での移動を伴う事故対策を入力する事故対策入力手段と、
前記事故対策入力手段に入力された前記事故対策における出発地点と到着地点とを含む経路を示す経路情報、及び前記経路の移動時間を示す移動時間情報が含まれる複数のコスト情報であって、それぞれの出発地点と到着地点の組み合わせが異なる複数のコスト情報を導出するコスト情報導出手段と、
前記複数のコスト情報のそれぞれについてプラントの外部で起こる外部事象による外部リスクを示す外部リスク情報を導出する外部リスク導出手段と、
前記複数のコスト情報のそれぞれについてプラントの外部での被ばくリスクを示す被ばくリスク情報を導出する被ばくリスク導出手段と、
前記複数のコスト情報のうち、前記外部リスク情報と前記被ばくリスク情報とに基づいて導出される総リスク情報が最も低いものを選出する対策選出手段と、を備える、
プラント用の事故対策計画システム。
【請求項2】
前記外部リスク導出手段は、前記外部事象に積雪を示す情報が設定されている場合に、積雪量、確率分布、積雪エリアの地形を示す情報を出力する積雪情報出力手段を有し、
前記被ばくリスク導出手段は、前記積雪情報に基づいて前記被ばくリスク情報を変更する積雪リスク評価手段を有する、
請求項1に記載のプラント用の事故対策計画システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントで事故が起きた際に行う事故対策の計画をたてるプラント用の事故対策計画システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記プラント用の事故対策計画システムとして、例えば、原子力発電所等のプラントでは、例えば、特許文献1に示されているような、事故が起きた際に、プラントの運転情報から同定した事故の状況に基づいて避難対策を立案するように構成されたシステムが利用されており、プラントで事故が起きた場合は、かかるシステムが立案した避難対策に従ってプラント内の人員や、プラント周辺の住民等が避難している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-215246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、事故対策の中にはプラントの外部で活動が行われるものもあり、このような事故対策では、プラントの外部で起きる外部事象(例えば、天候や、天災等)の影響を受けるリスクも発生する。
【0005】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、プラントの外部で起こる不確実性のある事象の影響を考慮して事故対策を計画できるプラント用の事故対策計画システムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプラント用の事故対策計画システムは、
計画の対象とする事故対策であって、プラントの外部での移動を伴う事故対策を入力する事故対策入力手段と、
前記事故対策入力手段に入力された前記事故対策における出発地点と到着地点とを含む経路を示す経路情報、及び前記経路の移動時間を示す移動時間情報が含まれる複数のコスト情報であって、それぞれの出発地点と到着地点の組み合わせが異なる複数のコスト情報を導出するコスト情報導出手段と、
前記複数のコスト情報のそれぞれについてプラントの外部で起こる外部事象による外部リスクを示す外部リスク情報を導出する外部リスク導出手段と、
前記複数のコスト情報のそれぞれについてプラントの外部での被ばくリスクを示す被ばくリスク情報を導出する被ばくリスク導出手段と、
前記複数のコスト情報のうち、前記外部リスク情報と前記被ばくリスク情報とに基づいて導出される総リスクが最も低いものを選出する対策選出手段と、を備える。
【0007】
上記構成のプラント用の事故対策計画システムによれば、コスト情報はプラントの外部での移動を伴う事故対策の内容を示す情報であり、このコスト情報について被ばくリスク情報だけでなく外部リスク情報も導出したうえで、最も総リスクが低いコスト情報が選出されるため、プラントの外部で起こる外部事象の影響によるリスクも含めて事故対策を計画することができるようになっている。
【0008】
本発明のプラント用の事故対策計画システムにおいて、
前記外部リスク導出手段は、前記外部事象に積雪を示す情報が設定されている場合に、積雪量、確率分布、積雪エリアの地形を示す情報を出力する積雪情報出力手段を有し、
前記被ばくリスク導出手段は、前記積雪情報に基づいて前記被ばくリスク情報を変更する積雪リスク評価手段を有する、ようにしてもよい。
【0009】
積雪に伴い、例えば、グランドシャインが増加するというような被ばくリスク情報が高まる現象が引き起こされることがあるが、上記構成のプラント用の事故対策計画システムによれば、積雪に関する情報に基づいて被ばくリスク情報を変更することで、より安全な事故対策を計画することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明のプラント用の事故対策計画システムは、プラントの外部で起こる不確実性のある事象の影響を考慮して事故対策を計画できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るプラント用の事故対策計画システムのブロック図である。
図2図2は、同実施形態に係るプラント用の事故対策計画システムのメインフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態にかかるプラント用の事故対策計画システム(以下、計画システムと称する)について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0013】
本実施形態に係る計画システム1は、図1に示すように、計画の対象とする事故対策であって、プラントの外部での移動を伴う事故対策を入力する事故対策入力手段2と、事故対策入力手段2に入力された事故対策における出発地点と到着地点とを含む経路を示す経路情報、及び経路情報が示す経路の移動時間を示す移動時間情報が含まれる複数のコスト情報であって、それぞれの出発地点と到着地点の組み合わせが異なる複数のコスト情報を導出するコスト情報導出手段3と、複数のコスト情報のそれぞれについてプラントの外部で起こる外部事象による外部リスクに関する外部リスク情報を導出する外部リスク導出手段4と、複数のコスト情報のそれぞれについてプラントの外部での被ばくリスクを示す被ばくリスク情報を導出する被ばくリスク導出手段5と、複数のコスト情報のうち、外部リスク情報と被ばくリスク情報とに基づいて導出される総リスク情報が最も低いものを選出する対策選出手段6と、を備える。
【0014】
事故対策入力手段2では、例えば、事故対策としての後方支援拠点の設置、物資の輸送、住民の避難や従業員の避難等の対策を入力可能である。
【0015】
前記コスト情報導出手段3は、出発地点と到着地点を設定する地点設定処理を実行する発着地点設定手段30と、出発地点から到着地点に至る経路の候補(以下、候補経路と称する)を複数導出する候補導出処理を実行する候補経路導出手段31と、複数の候補経路のそれぞれについて出発地点から到着地点までの移動時間を導出する移動時間導出処理を実行する移動時間導出手段32と、移動時間導出手段32が導出した移動時間に基づいて複数の候補経路の中うち、最も移動時間が短い候補経路を最短経路として選択する最短経路選択処理を実行する最短経路選択手段33と、前記最短経路と前記移動時間とを関連付けたコスト情報を出力するコスト情報出力処理を実行するコスト情報出力手段34と、を有する。
【0016】
このように、コスト情報導出手段3は、設定処理、候補経路導出処理、移動時間導出処理、最短経路選択処理、コスト情報導出処理を順番に実行することによって、1つのコスト情報を導出する動作をとるように構成されている。
【0017】
本実施形態のコスト情報導出手段3は、上記の動作を複数回繰り返し行うことによって、複数のコスト情報を導出するようになっている。このとき、発着地点設定手段30では、導出済みのコスト情報の最短経路の出発地点と到着地点の組み合わせとは異なる組み合わせの出発地点と到着地点が設定される。
【0018】
なお、発着地点設定手段30は、新たなコスト情報の最短経路の出発地点と到着地点の組み合わせが、導出済みのコスト情報の最短経路の出発地点と到着地点の組み合わせと異なっていれば、出発地点又は到着地点の一方に、既に設定した地点と同じ地点を設定することが可能である。例えば、出発地点又は到着地点がプラントに限られているような事故対策について複数の経路情報を導出する場合は、出発地点又は到着地点の一方に、プラントの位置(地点)を設定し続けることが可能である。
【0019】
外部リスク導出手段4は、外部事象情報を設定する外部事象設定手段40と、外部事象設定手段40で設定した事象によるリスクを示す外部リスク情報を導出する外部リスク評価手段41と、を有する。
【0020】
外部事象情報には、例えば、天候(例えば、積雪や降雨等)、や、天災(例えば、地震、津波、竜巻、台風等)を示す情報が設定される。
【0021】
外部リスク評価手段41は、外部事象が示す事象に伴って引き起こされるリスク(交通上のリスク)に関する情報を外部リスク情報として導出する処理を実行する。
【0022】
また、外部リスク評価手段41は、外部事象情報に積雪を示す情報が設定されている場合、積雪量、確率分布、積雪エリアの地形を示す積雪情報を出力する処理を実行するように構成されている。
【0023】
被ばくリスク導出手段5は、プラントから放射性物質が放出される確率と、放射性物質が放出される量とが含まれる放出情報を導出する放出条件導出手段50と、プラントから放出される放射性物質の拡散に関する拡散情報を導出する拡散評価手段51と、プラントから放出される放射性物質の量を示す線量情報を導出する被ばく線量評価手段52と、放出情報、拡散情報、線量情報、コスト情報に基づいて被ばくリスク情報を導出する被ばくリスク評価手段53と、を有する。
【0024】
放出条件導出手段50は、例えば、プラントの状態を示すプラント情報と、プラントで起きる事故に関するシナリオ情報とに基づいて放出情報を導出するように構成されていればよい。
【0025】
なお、被ばくリスク導出手段5は、外部事象設定手段40によって外部事象情報に積雪を示す情報が設定されている場合(外部事象情報に積雪を示す情報が設定されている場合)、積雪情報に基づいて被ばくリスク情報を変更するリスク更新処理を実行するように構成されている。積雪は、グランドシャインの増加というような、被ばくリスク情報を高める事象を引き起こすため、リスク更新処理では、積雪情報に基づいて被ばくリスク情報を高めるようにすればよい。
【0026】
対策選出手段6は、上述のように、複数のコスト情報の中から総リスク情報が最も低いコスト情報を選出する。また、対策選出手段6は、事故対策入力手段2で入力された事故対策と、外部リスク情報、被ばくリスク情報、総リスク情報に対して選出したコスト情報を関連付けて出力するように構成されている。これにより、事故対策に対して、安全且つ事故の対応に適した移動経路が設定される。
【0027】
なお、対策選出手段6は、計画システム1によって再び同じ事故対策の計画を行う場合、既出の事故対策情報に新たに導出した事故対策情報を上書きするように構成されており、計画システム1が一連の動作を繰り返し実行することにより、事故対策情報が最新の情報に更新され続けるようになっている。
【0028】
本実施形態に係る計画システム1の構成は、以上の通りである。続いて、計画システム1の動作を説明する。
【0029】
計画システム1は、事故対策入力手段2による計画対象となる事故対策の指定、コスト情報導出手段3、外部リスク導出手段4によるリスクの評価、対策選出手段6による安全且つ適正な対策内容(本実施形態では、事故対策での移動経路)の選出を順番に行うようになっている。
【0030】
より具体的に説明すると、計画システム1では、図2に示すように、事故対策入力手段2によって計画の対象とする事故対策が入力され(S1)、コスト情報導出手段3が事故対策について複数のコスト情報を導出する(S2)。
【0031】
続いて、外部リスク導出手段4が外部リスク情報を導出する(S3)。このとき、外部事象情報に積雪を示す情報が含まれていれば(S4でYes)、外部リスク評価手段41が積雪情報を導出する(S5)。
【0032】
そして、被ばくリスク導出手段5が被ばくリスク情報を導出する(S6)。このとき、外部事象情報に積雪を示す情報が含まれていれば(S7でYes)、被ばくリスク導出手段5がリスク更新処理を実行して被ばくリスク情報を更新する(S8)。
【0033】
続いて対策選出手段6が複数のコスト情報の中から総リスク情報が最も低いものを選出する(S9)。
【0034】
事故対策の計画を続ける場合は(S10でYes)、再度、事故対策入力手段2による計画対象となる事故対策を入力する(S1)。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る計画システム1によれば、プラントの外部での移動を伴う事故対策の計画として、移動に関する複数の候補経路を導出したり、この候補経路から一つの候補経路を選出したりすること、そして、複数のコスト情報を導出したり、この複数のコスト情報の中から最もリスクが低いものを選出したりすることができる。
【0036】
そして、プラントの外部での移動を伴う事故対策の内容を示す情報であるコスト情報について被ばくリスク情報だけでなく外部リスク情報も導出したうえで、最も総リスク情報が低いコスト情報が選出されるため、プラントの外部で起こる外部事象の影響によるリスクも含めて事故対策を計画することができるようになっている。
【0037】
従って、計画システムは、プラントの外部で起こる不確実性のある事象の影響を考慮して事故対策を計画できるという優れた効果を奏し得る。
【0038】
また、計画システムを繰り返し実行すれば、対策選出手段6が新たに出力した事故対策情報で既存の事故対策情報を上書きする(更新する)ため、事故対策の内容を最新の情報に保つことができ、事故対策が必要な場合は、この最新の事故対策を提示することが可能となる。
【0039】
また、積雪が起きた場合は、例えば、グランドシャインが増加するというような、被ばくリスク情報が高まる現象が引き起こされることがあるが、積雪に関する情報に基づいて被ばくリスク情報を変更することによってより安全な事故対策を計画することもできるようになっている。
【0040】
なお、本発明に係るプラント用の事故対策計画システムは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0041】
上記実施形態において特に言及しなかったが、例えば、外部リスク導出手段4による外部リスク情報を導出する処理や、外部リスク導出手段4による被ばくリスク情報を導出する処理は、確率論的リスク評価法(いわゆる、PRA)により行われるようになっていてもよい。
【0042】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、外部事象情報には、例えば、構造物(建屋や、道路、橋等の交通設備)の崩壊を示す情報が設定されていてもよい。この場合、外部リスク評価手段41は、構造物の崩壊を示す外部事象情報に基づいて外部リスク情報を導出するように構成されていればよい。
【0043】
上記実施形態の計画システム1において、外部リスク評価手段41は、外部事象情報に積雪を示す情報が含まれていれば、外部リスク評価手段41が積雪の状況を示す積雪情報を出力するように構成されていたが、例えば、外部リスク評価手段41は、積雪情報を出力する処理の他、例えば、外部事象情報に降雨のような他の天候を示す情報が含まれていれば、この天候の状況を示す情報を出力するように構成されていてもよいし、外部事象情報に天災を示す情報が含まれていれば、天災の状況を示す情報を出力するように構成されていてもよい。
【0044】
また、被ばくリスク導出手段5は、外部事象情報に積雪を示す情報が含まれていれば、積雪情報に基づいて被ばくリスク情報を更新するリスク更新処理を実行するように構成されていたが、例えば、他の天候を示す情報や、天災を示す情報が含まれている場合も、
リスク更新処理を実行するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…計画システム、2…事故対策入力手段、3…コスト情報導出手段、4…外部リスク導出手段、5…リスク導出手段、6…対策選出手段、30…発着地点設定手段、31…候補経路導出手段、32…移動時間導出手段、33…最短経路選択手段、34…コスト情報出力手段、40…外部事象設定手段、41…外部リスク評価手段、50…放出条件導出手段、51…拡散評価手段、52…線量評価手段、53…リスク評価手段
図1
図2