(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100479
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ガスタービンコジェネシステム、ガスタービンコジェネシステムの改造方法、および、ガスタービンコジェネシステム用追設ユニット
(51)【国際特許分類】
F02C 7/22 20060101AFI20240719BHJP
F02C 3/22 20060101ALI20240719BHJP
F02C 9/40 20060101ALI20240719BHJP
F23R 3/28 20060101ALI20240719BHJP
F02C 6/18 20060101ALI20240719BHJP
C10L 3/08 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
F02C7/22 D
F02C3/22
F02C7/22 B
F02C9/40 B
F23R3/28 A
F23R3/28 F
F02C6/18 A
C10L3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004504
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】麻尾 孝志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正平
(72)【発明者】
【氏名】秋山 陵
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の排出量を低減したガスタービンコジェネシステム、ガスタービンコジェネシステムの改造方法、および、ガスタービンコジェネシステム用追設ユニットを提供する。
【解決手段】ガスタービンコジェネシステムは、燃焼器を含むガスタービンと、ガスタービンから排出される排ガスを熱源としてボイラ蒸気を生成するための排熱回収ボイラと、排熱回収ボイラから排出される排ガスと冷媒水との熱交換によって排ガスから水分を回収するための水回収装置と、水回収装置によって回収された回収水を含む工業水(回収水&補給水)を原料物質の少なくとも1つにして、燃焼器に供給するためのガスタービン燃料ガスを生成するための燃料ガス生成設備とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器を含むガスタービンと、
前記ガスタービンから排出される排ガスを熱源としてボイラ蒸気を生成するための排熱回収ボイラと、
前記排熱回収ボイラから排出される前記排ガスと冷媒水との熱交換によって前記排ガスから水分を回収するための水回収装置と、
前記水回収装置によって回収された回収水を含む工業水を原料物質の少なくとも1つにして、前記燃焼器に供給するためのガスタービン燃料ガスを生成するための燃料ガス生成設備と
を備えるガスタービンコジェネシステム。
【請求項2】
前記燃料ガス生成設備は、前記工業水に水分解処理を施して水素ガスを生成するための水分解装置をさらに含む
請求項1に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項3】
前記燃料ガス生成設備は、
前記排熱回収ボイラから排出される前記ボイラ蒸気を用いて、前記水回収装置から排出される前記排ガスから二酸化炭素を回収するための二酸化炭素回収装置と、
前記水分解装置で生成された前記水素ガスと、前記二酸化炭素回収装置で回収された前記二酸化炭素とから、メタンガスを生成するためのメタン生成装置と、
前記メタンガスを前記ガスタービン燃料ガスとして前記燃焼器に供給するためのメタン燃料ガス供給ラインと
をさらに含む
請求項2に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項4】
前記燃料ガス生成設備は、前記水分解装置で生成される前記水素ガスを、前記ガスタービン燃料ガスとして前記燃焼器に供給するための水素燃料ガス供給ラインをさらに含む
請求項2または3に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項5】
前記燃料ガス生成設備は、
大気から窒素ガスを抽出するための窒素ガス抽出装置と、
前記水分解装置で生成された前記水素ガスと、前記窒素ガス抽出装置で抽出された前記窒素ガスとから、アンモニアを生成するための第1アンモニア生成装置と
さらに含む
請求項2または3に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項6】
前記燃料ガス生成設備は、前記第1アンモニア生成装置から排出されるアンモニアガスを、前記ガスタービン燃料ガスとして前記燃焼器に供給するための第1アンモニア燃料ガス供給ラインをさらに含む
請求項5に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項7】
前記燃料ガス生成設備は、
前記排熱回収ボイラから排出される前記ボイラ蒸気を熱源として、前記第1アンモニア生成装置から排出されるアンモニアガスから水素ガスを生成するための第1水素ガス生成装置と、
前記第1水素ガス生成装置で生成された前記水素ガスを、前記ガスタービン燃料ガスとして前記燃焼器に供給するための第1水素燃料ガス供給ラインと
をさらに含む
請求項5に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項8】
前記水分解装置で前記水素ガスが生成される過程において発生する酸素ガスを前記燃焼器に供給するための酸素ガス供給ラインをさらに備える
請求項2または3に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項9】
前記燃料ガス生成設備は、
大気から窒素ガスを抽出するための窒素ガス抽出装置と、
前記工業水と前記窒素ガス抽出装置で抽出された前記窒素ガスとから電解合成を通じてアンモニアを生成するための第2アンモニア生成装置と
をさらに含む
請求項1に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項10】
前記第2アンモニア生成装置で前記アンモニアが生成される過程において発生する酸素ガスを前記燃焼器に供給するための酸素ガス供給ラインをさらに備える
請求項9に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項11】
前記燃料ガス生成設備は、前記第2アンモニア生成装置から排出されるアンモニアガスを、前記ガスタービン燃料ガスとして前記燃焼器に供給するための第2アンモニア燃料ガス供給ラインをさらに含む
請求項9または10に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項12】
前記燃料ガス生成設備は、
前記排熱回収ボイラから排出される前記ボイラ蒸気を熱源として、前記第2アンモニア生成装置から排出されるアンモニアガスから水素ガスを生成するための第2水素ガス生成装置と、
前記第2水素ガス生成装置で生成された前記水素ガスを前記ガスタービン燃料ガスとして前記燃焼器に供給するための第2水素燃料ガス供給ラインと
をさらに含む
請求項9または10に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項13】
前記燃料ガス生成設備は、
前記ガスタービン燃料ガスと化石燃料ガスとを混合して混合燃料ガスを生成するためのガス混合装置と、
前記混合燃料ガスを前記燃焼器に供給するための混合燃料ガス供給ラインと
を含む
請求項1乃至3の何れか1項に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項14】
前記排熱回収ボイラから排出される前記ボイラ蒸気を、前記燃焼器におけるヘッドエンド側に供給するためのヘッドエンド側蒸気供給配管をさらに備える
請求項1乃至3の何れか1項に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項15】
燃焼器を含むガスタービンと、排熱回収ボイラとを備えるガスタービンコジェネシステムの改造方法であって、
前記排熱回収ボイラから排出される排ガスと冷媒水との熱交換によって前記排ガスから水分を回収するための水回収装置を追設するための水回収装置追設ステップと、
前記水回収装置によって回収された回収水を含む工業水を原料物質の少なくとも1つにして、前記燃焼器に供給するためのガスタービン燃料ガスを生成するための燃料ガス生成設備を追設するための燃料ガス生成設備追設ステップと
を備えるガスタービンコジェネシステムの改造方法。
【請求項16】
排熱回収ボイラから排出される排ガスと冷媒水との熱交換によって前記排ガスから水分を回収するための水回収装置と、
前記水回収装置によって回収された回収水を含む工業水を原料物質の少なくとも1つにして、ガスタービンの燃焼器に供給するためのガスタービン燃料ガスを生成するための燃料ガス生成設備と
を備えるガスタービンコジェネシステム用追設ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンコジェネシステム、ガスタービンコジェネシステムの改造方法、および、ガスタービンコジェネシステム用追設ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1で開示されるガスタービンコジェネシステムでは、ガスタービンの燃焼器に、アンモニアガスおよび水蒸気を含む混合気体と、天然ガスなどの燃料とが供給される。アンモニアガスは、ガスタービンコジェネシステムの排熱回収ボイラから排出される排ガスを熱源にして被処理液から生成される。排熱回収ボイラで生成される蒸気は蒸気利用設備に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排熱回収ボイラから排出される排ガスには、水分が含まれる。この水分をガスタービンコジェネシステムの燃料として利用できれば、炭素含有率が高い化石燃料の消費量を抑えることができ、カーボンニュートラル社会の実現に寄与することが期待できる。
【0005】
本開示の目的は、二酸化炭素の排出量を低減したガスタービンコジェネシステム、ガスタービンコジェネシステムの改造方法、および、ガスタービンコジェネシステム用追設ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンコジェネシステムは、
燃焼器を含むガスタービンと、
前記ガスタービンから排出される排ガスを熱源としてボイラ蒸気を生成するための排熱回収ボイラと、
前記排熱回収ボイラから排出される前記排ガスと冷媒水との熱交換によって前記排ガスから水分を回収するための水回収装置と、
前記水回収装置によって回収された回収水を含む工業水を原料物質の少なくとも1つにして、前記燃焼器に供給するためのガスタービン燃料ガスを生成するための燃料ガス生成設備と
を備える。
【0007】
本開示の一実施形態に係るコジェネシステムの改造方法は、
燃焼器を含むガスタービンと、排熱回収ボイラとを備えるガスタービンコジェネシステムの改造方法であって、
前記排熱回収ボイラから排出される排ガスと冷媒水との熱交換によって前記排ガスから水分を回収するための水回収装置を追設するための水回収装置追設ステップと、
前記水回収装置によって回収された回収水を含む工業水を原料物質の少なくとも1つにして、前記燃焼器に供給するためのガスタービン燃料ガスを生成するための燃料ガス生成設備を追設するための燃料ガス生成設備追設ステップと
を備える。
【0008】
本開示の一実施形態に係るガスタービンコジェネシステム用追設ユニットは、
排熱回収ボイラから排出される排ガスと冷媒水との熱交換によって前記排ガスから水分を回収するための水回収装置と、
前記水回収装置によって回収された回収水を含む工業水を原料物質の少なくとも1つにして、ガスタービンの燃焼器に供給するためのガスタービン燃料ガスを生成するための燃料ガス生成設備と
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、二酸化炭素の排出量を低減したガスタービンコジェネシステム、ガスタービンコジェネシステムの改造方法、および、ガスタービンコジェネシステム用追設ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係るガスタービンコジェネシステムの概略図である。
【
図2】一実施形態に係るコジェネ系統の概略図である。
【
図4】一実施形態に係る水回収システムの概略図である。
【
図5A】第1実施形態に係る燃料ガス生成設備の概略図である。
【
図5B】第2実施形態に係る燃料ガス生成設備の概略図である。
【
図5C】第3実施形態に係る燃料ガス生成設備の概略図である。
【
図5D】第4実施形態に係る燃料ガス生成設備の概略図である。
【
図5E】第5実施形態に係る燃料ガス生成設備の概略図である。
【
図5F】第6実施形態に係る燃料ガス生成設備の概略図である。
【
図6】一実施形態に係る改造前のコジェネシステムの概略図である。
【
図7】一実施形態に係るコジェネシステムの改造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0012】
<1.ガスタービンコジェネシステム10の概要>
図1は、本開示の一実施形態に係るガスタービンコジェネシステム10の概略図である。以下の説明では、「ガスタービンコジェネシステム10」を単に「コジェネシステム10」と略記する場合がある。
【0013】
コジェネシステム10は、コジェネ系統1、水回収システム40、および、燃料ガス生成設備80を備える。本例のコジェネシステム10は、既存のコジェネ系統1に対して水回収システム40と燃料ガス生成設備80が追設されることで実現される。つまり、水回収システム40と燃料ガス生成設備80は、ガスタービンコジェネシステム用追設ユニット4(以下、「追設ユニット4」という場合がある)である。他の例に係るコジェネシステム10は、コジェネ系統1、水回収システム40、および、燃料ガス生成設備80が同じタイミングで新設されることにより実現されてもよい。
【0014】
コジェネ系統1は、燃焼器3を含むガスタービン9を備える。燃焼器3は、混合燃料ガス供給設備79および起動用燃料ガス供給設備77から燃料が供給されるように構成される。また、コジェネ系統1は、ガスタービン9から排出される排ガス13を熱源としてボイラ蒸気を生成するための排熱回収ボイラ14と、排熱回収ボイラ14に供給するための水であるボイラ給水を貯める補給水タンク17と、補給水タンク17から排熱回収ボイラ14にボイラ給水を導くための給水ライン19と、排熱回収ボイラ14から排出されるボイラ蒸気によって駆動するように構成された蒸気需要体11と、排熱回収ボイラ14から排出される排ガス13が流れる排ガスライン57と、排ガスライン57を流れる排ガス13を排気塔30に導くための排気ライン29と、をさらに備える。排気ライン29には排気ダンパ31が設けられている。排気ダンパ31が閉止している間、排ガス13は排気ライン29を流れず、水回収システム40に導かれる。
【0015】
水回収システム40は、排ガス供給ライン141および水回収装置33を含む。排ガス供給ライン141は排ガスライン57と水回収装置33に接続されており、排気ダンパ31が閉止している間、排熱回収ボイラ14から排出される排ガス13は排ガス供給ライン141によって水回収装置33に導かれるようになっている。水回収装置33は、排ガス13と後述の冷媒水との熱交換によって排ガス13から水分を回収するように構成される。水回収システム40は、回収された水分を含む回収水を補給水タンク17に供給するための給水ライン43をさらに含む。従って、給水ライン19が排熱回収ボイラ14に導くボイラ給水には回収水が含まれる。
【0016】
燃料ガス生成設備80は、給水ライン19からボイラ給水を抽水するための抽水ライン49と、抽水ライン49によって抽水されたボイラ給水である工業水を受け入れるように構成される燃料ガス生成部81とを備える。燃料ガス生成部81は、工業水を原料物質の少なくとも1つにして、燃焼器3に供給するためのガスタービン燃料ガスを生成するように構成される。
【0017】
幾つかの実施形態では、燃料ガス生成部81で生成されたガスタービン燃料ガスは、燃料ガス供給ライン88を経由して、上述の混合燃料ガス供給設備79に供給される。より具体的には、燃料ガス生成設備80はガス混合装置8をさらに備え、このガス混合装置8に、燃料ガス供給ライン88によって供給されるガスタービン燃料ガスが流入するようになっている。さらに、ガス混合装置8には化石燃料ガスが流入するようになっており、ガス混合装置8は、ガスタービン燃料ガスと化石燃料ガスとを混合して得られる混合燃料ガスを生成するように構成される。さらに、燃料ガス生成設備80は、混合燃料ガスを混合燃料ガス供給設備79に供給するための混合燃料ガス供給ライン86をさらに備える。混合燃料ガス供給ライン86によって供給される混合燃料ガスは、混合燃料ガス供給設備79と混合供給ライン78を順に経由して燃焼器3に供給されるようになっている。従って、混合燃料ガス供給ライン86は、混合燃料ガスを燃焼器3に供給するように構成されていると了解される。
【0018】
上記構成によれば、排ガス13に含まれる水分は水回収装置33によって回収され、回収水を含む工業水は、ガスタービン燃料ガスの原料物質の少なくとも1つとして活用される。ガスタービン燃料ガスが燃焼器3に供給される分、化石燃料ガスといった他の燃料ガスの供給量を低減できるので、ガスタービンコジェネシステム10は二酸化炭素の排出量を低減できる。また、排ガス13に含まれる水分は水回収装置33によって回収された後にガスタービン燃料ガスとして利用され、当該ガスタービン燃料ガスの燃焼により生じる水分は、水回収装置33によって再び回収される。このように、水分を構成する物質(より詳細には後述するように水素)が、循環するガスタービンコジェネシステム10が実現され、当該システムの系外にある化石燃料ガスの供給量を減らすことができ、カーボンニュートラルに寄与できる。同様の利点は、追設ユニット4が既存のコジェネ系統1に追設されることでも実現される。
【0019】
なお、本開示は上記実施形態に限定されない。ガス混合装置8には化石燃料ガスの代わりにオフガスが流入してもよい。この場合、ガス混合装置8は、ガスタービン燃料ガスとオフガスとを混合して混合燃料ガスを生成する。あるいは、燃料ガス生成設備80は、ガス混合装置8と混合燃料ガス供給ライン86とを備えなくてもよい。この場合、燃料ガス供給ライン88がガスタービン燃料ガスを燃焼器3に直接的に供給するように構成される。いずれの実施形態においても、上記利点は得られる。
【0020】
また、燃料ガス生成設備80がガスタービン燃料ガスと化石燃料ガスを混合するガス混合装置8を備える構成によれば、燃焼器3に供給される混合燃料ガスに化石燃料ガスが含まれるので、燃焼器3の燃焼に伴い発生する発熱量を十分に確保することができる。
【0021】
以下、コジェネ系統1、水回収システム40、および、燃料ガス生成設備80の詳細な構成を順に例示する。
【0022】
<2.コジェネ系統1>
図2は、本開示の一実施形態に係るコジェネ系統1の概略図である。コジェネ系統1のガスタービン9は、圧縮機入口空気6から圧縮空気7を生成するための圧縮機16と、供給される燃料を燃焼させるとともに圧縮空気7を高温化して燃焼ガス12を生成するための燃焼器3と、燃焼器3から排出される燃焼ガス12を駆動源として回転するためのタービン2と、タービン2に連結される発電機5とを備える。燃焼器3は一例として拡散型燃焼器である。発電機5はタービン2の駆動よって発電を行うように構成される。
【0023】
燃焼器3によって供給される燃料は、起動用燃料ガス供給設備77によって供給される起動用燃料ガス、および、混合燃料ガス供給設備79によって供給される混合燃料ガスである。コジェネ系統1は、起動用燃料ガス供給設備77から燃焼器3に起動用燃料ガスを導くための起動供給ライン76と、混合燃料ガス供給設備79から燃焼器3に混合燃料ガスを導くための混合供給ライン78とを備える。
【0024】
起動供給ライン76と混合供給ライン78にはそれぞれ開閉弁76A,78Aが設けられている。これら開閉弁の開閉制御によって、燃焼器3に供給される燃料は起動用燃料ガスまたは混合燃料ガスに選択的に切り替わるようになっている。より具体的には、ガスタービン9の起動時には、開閉弁76Aは開放され開閉弁78Aは閉止される。これにより、起動供給ライン76が専ら起動用燃料ガスを燃焼器3に供給し、燃焼器3では起動用燃料ガスの専焼が起こる。ガスタービン9の起動完了後、開閉弁76Aは閉止され開閉弁78Aは開放される。これにより、起動用燃料ガスの供給は終了し、混合供給ライン78が混合燃料ガスを燃焼器3に供給する。以下では、起動用燃料ガスと混合燃料ガスを総称して「燃料ガス」という場合がある。
【0025】
図3は、本開示の一実施形態に係る燃焼器3を示す概略図である。燃焼器3は、筒状に形成される燃焼器ケーシング23と、燃焼器ケーシング23の一端部に設けられるヘッドエンド24と、ヘッドエンド24に設けられる燃料ノズル25と、未燃の空気と既燃の燃焼ガス12を隔てる円筒状の燃焼器ライナ26と、燃焼器ライナ26の下流側部に連結した燃焼器尾筒27とを備える。燃料ノズル25は、起動供給ライン76または混合供給ライン78によって供給される燃料ガスを燃焼器ライナ26の内部に噴射するように構成される。圧縮空気7は燃焼器ケーシング23に供給される。燃焼器ケーシング23内において、圧縮空気7は、燃焼器ライナ26の外側に形成される環状空間を通って、ヘッドエンド24側に向かって流れる。環状空間を流れる圧縮空気7は、燃焼器ライナ26の内部に流入し、燃料ノズル25によって噴射された燃料ガスと混ざる。燃焼器ライナ26の内部で燃料ガスは燃焼し、火炎28が燃焼器ライナ26の内部で発生する。燃焼器ライナ26の内部で発生した燃焼ガス12は、燃焼器尾筒27から排出されてタービン2に流入するようになっている。
【0026】
図2に戻り、排熱回収ボイラ14は、タービン2から排出される燃焼ガス12である排ガス13を熱源として、給水ライン19によって導かれるボイラ給水からボイラ蒸気を生成するように構成される。コジェネ系統1は、排熱回収ボイラ14から排出されるボイラ蒸気を蒸気需要体11に供給するための蒸気供給配管21を備える。本例の蒸気需要体11は蒸気タービンである。他の例に係る蒸気需要体11は、複合発電プラントの蒸気タービンあるいは産業用プロセス装置などであってもよい。
【0027】
本開示の必須の構成要素ではないが、コジェネシステム10は、蒸気供給配管21から抽気したボイラ蒸気を燃焼器3に供給するための蒸気抽気配管130を備える。同図で例示される蒸気抽気配管130は、蒸気供給配管21から抽気した蒸気を燃焼器3におけるヘッドエンド24側に供給するための上流側蒸気配管131と、抽気した蒸気を燃焼器3におけるタービン2側に供給するための下流側蒸気配管132とを含む。
【0028】
より詳細には
図3に示すように、上流側蒸気配管131は、抽気した蒸気をヘッドエンド24と燃焼器ライナ26との間に供給するように構成される。上流側蒸気配管131に設けられる上流側蒸気流調弁131Aの開度が変更されることで、上流側蒸気配管131を流れるボイラ蒸気の流量である上流側蒸気供給量は調整される。上流側蒸気供給量が増えるほど、火炎帯の温度を下げる効果が大きいため、燃焼器3において発生する窒素酸化物の量は低下する。例えば、ガスタービン燃料ガスにおける化石燃料ガスの割合が高い場合、または、燃焼器3に供給されるガスタービン燃料ガスとして後述のアンモニアガスが採用された場合には、燃焼器3において窒素酸化物の発生量が高い。この点、上記構成によれば、上流側蒸気配管131によって供給されるボイラ蒸気によって、窒素酸化物の発生を抑制できる。また、燃焼器3に供給されたボイラ蒸気は排ガス13に混入した後、排ガス13に含まれる水分として水回収装置33によって回収される。これにより、十分な量の回収水を回収できるので、燃料ガス生成設備80(
図1参照)は十分な量のガスタービン燃料ガスを生成できる。
【0029】
また、下流側蒸気配管132は、抽気したボイラ蒸気を燃焼器ライナ26の下流側に供給するように構成される。下流側蒸気配管132に設けられる下流側蒸気流調弁132Aの開度が変更されることで、下流側蒸気配管132を流れるボイラ蒸気の流量である下流側蒸気供給量は調整される。上流側蒸気供給量と下流側蒸気供給量の合計量が増えるほど、タービン2に流入して仕事をする蒸気の流量が増え、ガスタービン9の出力である発電機5の発電量は増大する。なお、下流側蒸気配管132によって供給されるボイラ蒸気も、排ガス13に混入した後、水回収装置33によって回収される。
【0030】
図2に戻り、本開示の必須の構成要素ではないが、蒸気抽気配管130は、蒸気供給配管21から抽気された蒸気の温度を下げるための減温器22をさらに備える。ボイラ蒸気が流れる方向において上流側蒸気配管131および下流側蒸気配管132よりも上流側に配置される減温器22は、例えば、排熱回収ボイラ14に供給されるボイラ給水の一部が冷水として流入するように構成されており(矢印B参照)、該冷水が減温器22の内部で噴射されることによってボイラ蒸気は冷まされる。冷まされた蒸気は、上流側蒸気配管131および下流側蒸気配管132を流れる。
【0031】
本開示の必須の構成要素ではないが、コジェネ系統1は、水回収システム40から回収した水分を含む回収水をボイラ給水として貯める補給水タンク17と、補給水タンク17に補給水を供給するための給水ライン15と、補給水タンク17と排熱回収ボイラ14とに接続される給水ライン19と、給水ライン19に設けられる給水ポンプ18とを備える。給水ポンプ18が駆動すると、補給水タンク17に貯留されるボイラ給水は給水ライン19を流れて排熱回収ボイラ14に供給される。排熱回収ボイラ14に供給されるボイラ給水の温度は高い方が好ましい。排熱回収ボイラ14がボイラ蒸気を生成するために必要とする熱量が低減し、コジェネシステム10の効率が向上するからである。
【0032】
<3.水回収システム40>
図4は、本開示の一実施形態に係る水回収システム40の概略図である。水回収システム40の構成要素である既述の水回収装置33は、排ガス供給ライン141によって導かれる排ガス13と冷媒水とを気液接触させることで排ガス13中の水分を回収水として回収するように構成される。より詳細な一例として、水回収装置33は、排ガス13と冷媒水とが流入する熱交換容器135と、熱交換容器135の内部で冷媒水を散水するための散水装置34と、熱交換容器135の内部で散水装置34の下方に位置する充填物35とを含む。排ガス供給ライン141に設けられる水回収ダンパ59が開放されると、排ガス供給ライン141から熱交換容器135に排ガス13が流入する。散水装置34によって散水される冷媒水は充填物35に付着し、熱交換容器135に流入する排ガス13と熱交換を行う。これにより、排ガス13中の水分が凝縮する。凝縮した水分と熱交換を終えた冷媒水とを含む回収水は落下し、熱交換容器135の下部を構成する貯水槽136に貯まる。なお、水分を回収された排ガス13は、水回収装置33の上部に設けられた排ガス流出口から排出される。
【0033】
水回収システム40は、水回収装置33の貯水槽136から排出される回収水を冷却するための回収水冷却装置36と、水回収装置33の貯水槽136から排出される回収水を回収水冷却装置36に導くための回収水排出ライン39と、回収水冷却装置36から排出される冷却された回収水を冷媒水として熱交換容器135に導くための回収水供給ライン42とをさらに備える。本例の回収水冷却装置36は、例えば海水などであってもよい冷却水によって、回収水を冷却するように構成される。回収水冷却装置36に冷却水を供給するための冷却水供給ライン41には冷却水供給ポンプ55が設けられる。
【0034】
水回収システム40は、回収水を補給水タンク17に導くための給水ライン43をさらに備え、給水ライン43は、高温給水ライン44と低温給水ライン47とを含む。高温給水ライン44は、回収水排出ライン39に接続されており、回収水排出ライン39から取り出された回収水を補給水タンク17に導くように構成される。回収水排出ライン39から取り出される回収水は、排ガス13から回収された熱を有するため、比較的高い温度を有する。低温給水ライン47は、回収水供給ライン42に接続されており、回収水供給ライン42から取り出された回収水を補給水タンク17に導くように構成される。回収水供給ライン42から取り出される回収水は、回収水冷却装置36による冷却処理が施されているため、比較的低い温度を有する。
【0035】
低温給水ライン47には、水回収システム40の構成要素である水処理装置46が設けられている。水処理装置46は、低温給水ライン47を流れる回収水に対して例えば硫黄などの不純物を除去する処理を施すように構成される。不純物は燃焼器3(
図3参照)での燃焼に伴って生じ、排ガス13に混入することがある。この不純物の少なくとも一部は、水回収装置33での排ガス13と冷媒水との熱交換により、回収水に溶解する。水処理装置46が、回収水に含まれる不純物を除去することで、補給水タンク17に貯留されるボイラ給水に不純物が含まれることが抑制される。一般に、処理される水の温度が低い方が、水処理装置46における不純物除去の処理能力は向上する。回収水の温度が高い場合、水処理装置46を構成するイオン交換樹脂146が損傷する可能性があり、不純物除去の処理能力が低下する虞がある。
【0036】
高温給水ライン44には高温給水開閉弁48が設けられ、低温給水ライン47には低温給水開閉弁45が設けられている。クリーンエネルギーに分類されるLPGであってもよい燃料ガスがガスタービン9の起動用燃料ガスとして燃焼器3に供給される場合、排ガス13に混入する不純物の量は許容値未満である。この場合、高温給水開閉弁48は開放され、不純物の除去処理を要さない高温の回収水が、高温給水ライン44を経由して補給水タンク17に流入する(このとき、低温給水開閉弁45は閉止されている。)。補給水タンク17から排熱回収ボイラ14に供給されるボイラ給水の温度を高くできるので、コジェネシステム10の効率は向上する。
【0037】
他方で、ガスタービン9の起動後に、混合燃料ガスが燃焼器3に供給される場合、ガスタービン燃料ガスの種類または混合燃料ガスに含まれる化石燃料ガスの割合によっては、排ガス13に混入する不純物の量が許容値以上、且つ、許容上限値未満となることがある。この場合、高温給水開閉弁48が閉止され、低温給水開閉弁45が開放され、不純物の除去処理を要する低温の回収水が、低温給水ライン47に設けられる水処理装置46を経由して、補給水タンク17に流入する。よって、給水ライン19および排熱回収ボイラ14などのコジェネシステム10を構成する機器に不純物が付着するのが回避され、コジェネシステム10の劣化を抑制できる。
【0038】
このように本例の水回収システム40では、燃焼器3に供給される燃料ガスが含む不純物の量に応じて、補給水タンク17に送る回収水の給水ライン43を切り替えることが可能になる。なお、排ガス13に含まれる不純物の量が許容上限値以上となる場合、水回収ダンパ59が閉止され、排気ダンパ31(
図2参照)が開放される。結果、排ガス13は水回収システム40に供給されることなく、排気塔30から排出される。
【0039】
<4.燃料ガス生成設備80>
図5A~
図5Fは、それぞれ、第1実施形態~第6実施形態に係る燃料ガス生成設備80A(80)~80F(80)の概略図である。第1実施形態におけるガスタービン燃料ガスはメタンガスである。第2実施形態および第4実施形態におけるガスタービン燃料ガスはアンモニアガスである。第3実施形態、第5実施形態、および、第6実施形態におけるガスタービン燃料ガスは水素ガスである。
図5A~
図5Fでは、コジェネシステム10をコジェネシステム10A(10)~10F(10)として図示している。
【0040】
<4-1.第1実施形態に係る燃料ガス生成設備80A(80)>
図5Aで示すように、燃料ガス生成設備80Aの燃料ガス生成部81A(81)は、工業水に水分解処理を施して水素ガスを生成するための水分解装置61と、水回収装置33から排出される排ガス13から二酸化炭素ガスを回収するための二酸化炭素回収装置62と、水分解装置61で生成された水素ガスと二酸化炭素回収装置62で回収された二酸化炭素ガスとからメタンガスを生成するためのメタン生成装置63と、メタンガスをガスタービン燃料ガスとしてガス混合装置8に供給するためのメタン燃料ガス供給ライン88Aと、を備える。二酸化炭素回収装置62は、二酸化炭素ガスの回収において、蒸気需要体11から排出されるボイラ蒸気を熱源として利用する。メタン燃料ガス供給ライン88Aは、燃料ガス供給ライン88(
図1参照)の一例である。
【0041】
水分解装置61は抽水ライン49に接続されており、抽水ライン49を流れる工業水は水分解装置61に流入する。水分解装置61で実行される水分解処理は、一例として、水電気分解処理である。当該処理によって生成される水素ガスは、燃料ガス生成設備80A(80)の構成要素である水素ガス供給ライン91によってメタン生成装置63に導かれる。
【0042】
二酸化炭素回収装置62は、燃料ガス生成設備80Aの構成要素であるボイラ蒸気供給ライン101によって蒸気需要体11と接続されている。蒸気需要体11から排出されるボイラ蒸気は、ボイラ蒸気供給ライン101を経由して二酸化炭素回収装置62に流入する。また、二酸化炭素回収装置62は、燃料ガス生成設備80Aの構成要素である排ガス供給ライン109によって水回収装置33の排ガス流出口と接続されている。水回収装置33から排出される熱交換を終えた排ガス13は、排ガス供給ライン109を経由して、二酸化炭素回収装置62に流入する。二酸化炭素回収装置62を通過した排ガス13は、排気塔38から大気に排出される。
【0043】
本例の二酸化炭素回収装置62では、化学吸収方法が採用される。より具体的には、水回収装置33から排出される排ガス13と、アミン液などの吸収液とを混合して、排ガス13中の二酸化炭素を吸収液に溶解させる。その後、ボイラ蒸気を熱源にして吸収液を加熱することで、吸収液から二酸化炭素ガスが回収される。吸収液と混合する前の排ガス13の温度は、比較的低温であることが好ましい。この点、水回収装置33から排出される排ガス13は、水回収装置33における冷媒水との熱交換によってある程度の冷却処理が施されている。つまり、水回収装置33は、排ガス13から水分を回収する機能と、二酸化炭素回収のために排ガス13を冷却する機能とを兼ね備える。これにより、水分回収処理と冷却処理とが無駄なく実行され、コジェネシステム10Aの省エネ化に資する。なお、二酸化炭素回収装置62では、化学吸収方法に代えて、物理吸収方法、膜分離法、または、深冷分離法が採用されてもよい。
【0044】
二酸化炭素回収装置62で生成された二酸化炭素ガスは、二酸化炭素供給ライン162を経由してメタン生成装置63に流入する。メタン生成装置63は、酸素ガスと二酸化炭素ガスとを高温高圧下において触媒の表面上で反応させることで、メタンガスを生成するように構成される。ここで、上記の触媒は、LaNi5などのNi系触媒、または、Ru-Al2O3などのRu系触媒などである。
【0045】
幾つかの実施形態では、メタン生成装置63で生成されたメタンガスはメタン燃料ガス供給ライン88Aによってガス混合装置8に供給される。他の実施形態では、メタン燃料ガス供給ライン88Aがガスタービン燃料ガスとしてのメタンガスを燃焼器3に直接的に供給してもよい。いずれの実施形態においても、メタンガスに含まれる水素は燃焼器3において酸素と結合し、水分が発生する。この水分は水回収装置33によって回収された後、メタンガスの生成に再利用される。また、メタンガスの燃焼により発生した二酸化炭素ガスも二酸化炭素回収装置62によって吸収された後、その少なくとも一部はメタンガスの生成に再利用される。つまり、コジェネシステム10Aでは、水素と炭素が循環することとなる。
【0046】
燃料ガス生成設備80Aが水分解装置61を含む構成によれば、水素ガス由来のガスタービン燃料ガスとしてメタンガスを生成でき、コジェネシステム10Aは二酸化炭素の排出量を低減できる。また、水素ガス由来のガスタービン燃料ガスが燃焼器3で燃焼することによって生じる水分が水回収装置33によって回収されるので、回収水の分量が増え、ガスタービン燃料ガスの生成量も増える。従って、系外にある化石燃料ガスなどの他の燃料ガスの依存度を低減することができる。加えて、コジェネシステム10Aの系内で水素と炭素を循環させることができる。また、二酸化炭素回収装置62の二酸化炭素の生成において、蒸気需要体11から排出されたボイラ蒸気の有する熱が利用されるので、コジェネシステム10Aは省エネ化を図ることもできる。
【0047】
なお、第1実施形態の必須の構成要素ではないが、燃料ガス生成部81Aは、水分解装置61で水素ガスが生成される過程において発生する酸素ガスを燃焼器3に供給するための酸素ガス供給ライン64をさらに備えてもよい。酸素ガス供給ライン64を流れる酸素ガスは、燃焼器ケーシング23(
図3参照)において圧縮空気7と混ざった後、燃焼器ライナ26(
図3参照)に流入する。
【0048】
酸素ガス供給ライン64が設けられる構成によれば、水分解装置61で発生した酸素ガスを燃焼器3の酸化剤として利用することで、水分解処理の対象となる工業水を無駄なく活用できる。
【0049】
<4-2.第2実施形態に係る燃料ガス生成設備80B(80)>
図5Bを参照して、燃料ガス生成設備80B(80)の構成を例示する。
図5Bでは、
図5Aを参照して説明した構成要素と同じものには同じ符号を付与しており、これらの構成要素の説明を以下では省略することがある。
【0050】
燃料ガス生成設備80Bの燃料ガス生成部81B(81)は、上述の水分解装置61を含む。さらに、燃料ガス生成部81Bは、大気から窒素ガスを抽出するための窒素ガス抽出装置66と、水分解装置61で生成された水素ガスと窒素ガス抽出装置66で抽出された窒素ガスとからアンモニアを生成するための第1アンモニア生成装置71と、第1アンモニア生成装置71から排出されるアンモニアガスをガスタービン燃料ガスとしてガス混合装置8に供給するための第1アンモニア燃料ガス供給ライン88Bとをさらに含む。第1アンモニア燃料ガス供給ライン88Bは、燃料ガス供給ライン88(
図1参照)の一例である。第1アンモニア生成装置71には、水分解装置61から排出される水素ガスが水素ガス供給配管173を経由して流入するようになっている。
【0051】
窒素ガス抽出装置66は、圧力スイング吸着(PSA;Pressure Swing Adsorption)によって大気から窒素ガスを取り出すように構成される。窒素ガス抽出装置66で生成された窒素ガスは、窒素ガス供給管174を経由して第1アンモニア生成装置71に流入するようになっている。
【0052】
第1アンモニア生成装置71は、触媒を用いた合成によって、水素ガスと窒素ガスとからアンモニアを生成するように構成されており、ハーバボッシュ法(Haber Bosch process)によるアンモニア触媒合成が採用されている。触媒を用いた合成において必要となる電力は、発電機5(
図2参照)で生成された電力によって賄われる。コジェネ発電の電力の他、再エネ電源(太陽光発電、風力発電等)を利用して電力を賄う場合もある。第1アンモニア生成装置71において生成されるアンモニアは超臨界流体の状態にある。第1アンモニア生成装置71から排出されるアンモニアはガス状であり、このアンモニアガスが第1アンモニア燃料ガス供給ライン88Bを経由してガス混合装置8に供給される。なお、第1アンモニア燃料ガス供給ライン88Bがガスタービン燃料ガスとしてのアンモニアガスを燃焼器3に直接的に供給するように構成されてもよい。いずれの実施形態においても、アンモニアガスに含まれる水素は燃焼器3において酸素と結合し、水分が発生する。この水分は水回収装置33によって回収された後、アンモニアガスの生成に再利用される。つまり、コジェネシステム10Bでは、水素が循環することとなる。
【0053】
燃料ガス生成設備80Bが水分解装置61を含む構成によれば、水素ガス由来のアンモニアガスをガスタービン燃料ガスとして燃焼器3に供給することができ、コジェネシステム10Bは、二酸化炭素の排出量を低減できる。また、水素ガス由来のアンモニアガスが燃焼器3で燃焼することによって生じる水分が水回収装置33によって回収されるので、回収水の分量が増え、ガスタービン燃料ガスの生成量も増える。従って、系外にある化石燃料ガスなどの他の燃料ガスの依存度を低減することができる。加えて、コジェネシステム10Bの系内で水素を循環させることができる。また、燃料ガス生成設備80Bが窒素ガス抽出装置66と第1アンモニア生成装置71を含む構成によれば、水素ガスからアンモニアを生成することで、ガスタービン燃料ガスの供給系統をより簡易にできる。具体的には、アンモニアの沸点は水素などの他の液体燃料の沸点よりも高いので、アンモニアを液相の状態で保管する設備を簡易にできる。こういった保管設備としての貯留タンクが、第1アンモニア燃料ガス供給ライン88Bにおいて配置されてもよい。あるいは、第1アンモニア生成装置71で生成されるアンモニアを液相の状態で保管しながら運搬する大型車またはタンカーが利用されてもよい。
【0054】
また、燃料ガス生成設備80Bが第1アンモニア燃料ガス供給ライン88Bを含む構成によれば、炭素を含まないアンモニアガスをガスタービン燃料ガスとして使用できるので、コジェネシステム10Bは二酸化炭素の排出量を低減できる。
【0055】
なお、第2実施形態の必須の構成要素ではないが、燃料ガス生成部81Bは、第1実施形態において説明した酸素ガス供給ライン64をさらに備えてもよい。酸素ガス供給ライン64が設けられることで得られる利点は、第1実施形態において説明した通りである。
【0056】
<4-3.第3実施形態に係る燃料ガス生成設備80C(80)>
図5Cを参照して、燃料ガス生成設備80C(80)の構成を例示する。
図5Cでは、
図5Bを参照して説明した構成要素と同じものには同じ符号を付与しており、これらの構成要素の説明を以下では省略することがある。
【0057】
燃料ガス生成設備80Cの燃料ガス生成部81C(81)は、水分解装置61、窒素ガス抽出装置66、窒素ガス供給管174、および、第1アンモニア生成装置71を含む。これらの構成要素の詳細は第2実施形態において説明した通りである。
【0058】
燃料ガス生成部81Cは、第1アンモニア燃料ガス供給ライン88Bに代えて、アンモニアガス排出ライン175と、第1水素ガス生成装置51と、第1水素燃料ガス供給ライン88Cとを含む。アンモニアガス排出ライン175は、第1水素ガス生成装置51とガス混合装置8とに接続されている。第1水素燃料ガス供給ライン88Cは、第1水素ガス生成装置51とガス混合装置8とに接続されている。第1水素燃料ガス供給ライン88Cは燃料ガス供給ライン88(
図1参照)の一例である。
【0059】
第1水素ガス生成装置51は、ボイラ蒸気供給ライン102を介して蒸気需要体11と接続されている。つまり、蒸気需要体11から排出されるボイラ蒸気は第1水素ガス生成装置51に流入するようになっている。第1水素ガス生成装置51は、排熱回収ボイラ14から排出されるボイラ蒸気を熱源として、第1アンモニア生成装置71から排出されるアンモニアガスから水素ガスを生成するように構成される。本例の第1水素ガス生成装置51は、触媒を用いた接触分解反応(クラッキング反応)を利用したアンモニアガスの熱分解によって、水素ガスを生成するように構成される。この熱分解において、ボイラ蒸気が熱源として利用される。また、クラッキング反応において利用される触媒は、Ru系触媒である。
【0060】
図5Cで例示される第1水素燃料ガス供給ライン88Cは、第1水素ガス生成装置51で生成された水素ガスをガスタービン燃料ガスとしてガス混合装置8に供給するように構成される。他の例に係る第1水素燃料ガス供給ライン88Cは、ガスタービン燃料ガスとしての水素ガスを燃焼器3に直接的に供給してもよい。いずれの実施形態においても、水素ガスを構成する水素は燃焼器3において酸素と結合し、水分が発生する。この水分は水回収装置33によって回収された後、アンモニアガスの生成(つまり、水素ガスの生成)に再利用される。つまり、コジェネシステム10Cでは、水素が循環することとなる。
【0061】
上記構成によれば、炭素を含まない水素ガスをガスタービン燃料ガスとして使用するので、コジェネシステム10Cは二酸化炭素の排出量を低減できる。水素ガスとしてのガスタービン燃料ガスを生成することができ、コジェネシステム10Cは二酸化炭素の排出量を低減できる。また、ガスタービン燃料ガスとしての水素ガスが燃焼器3で燃焼することによって生じる水分が水回収装置33によって回収されるので、回収水の分量が増え、ガスタービン燃料ガスの生成量も増える。従って、系外にある化石燃料ガスといった他の燃料ガスの依存度を低減することができる。加えて、コジェネシステム10Cの系内で水素を循環させることができる。また、単位重量当たりの発熱量が比較的高い水素ガスをガスタービン燃料ガスとして利用できるので、コジェネシステム10Cの系外にある化石燃料ガスといった他の燃料ガスの供給量を低減できる。
【0062】
なお、コジェネシステム10Cは、コジェネシステム10Bと同様に、窒素ガス抽出装置66、第1アンモニア生成装置71、および、酸素ガス供給ライン64を含む。これらの構成を備えることによる利点は第2実施形態において説明した通りであり、説明の重複を避けるため詳説を割愛する。
【0063】
<4-4.第4実施形態に係る燃料ガス生成設備80D(80)>
図5Dを参照して、燃料ガス生成設備80D(80)の構成を例示する。
図5Dでは、
図5Bを参照して説明した構成要素と同じものには同じ符号を付与しており、これらの構成要素の説明を以下では省略することがある。
【0064】
燃料ガス生成設備80Dの燃料ガス生成部81D(81)は、窒素ガス抽出装置66、および、窒素ガス供給管174を含む。これらの構成要素は、第2実施形態において説明した通りである。
【0065】
燃料ガス生成部81Dは、抽水ライン49と窒素ガス供給管174とに接続された第2アンモニア生成装置72と、第2アンモニア生成装置72とガス混合装置8とに接続される第2アンモニア燃料ガス供給ライン88Dとをさらに含む。第2アンモニア燃料ガス供給ライン88Dは、燃料ガス供給ライン88(
図1参照)の一例である。
【0066】
第2アンモニア生成装置72は、抽水ライン49によって供給される工業水と窒素ガス供給管174によって供給される窒素ガスとから電解合成を通じてアンモニアを生成するように構成される。本例の電解合成では、水と窒素に電圧を印加する際に両者を隔てる固体電解質が利用される。水に対する電圧印加によって発生する水素イオンが固体電解質を通過して窒素側へ移動する。結果、水素と窒素とが結合してアンモニアが生成される。生成時におけるアンモニアはガス状である。なお、電解合成で必要となる電力は、発電機5(
図2参照)によって生成された電力によって賄われる。左記電源の他、再エネ電源(太陽光発電、風力発電等)を利用して電力を賄う場合もある。
【0067】
第2アンモニア燃料ガス供給ライン88Dは、第2アンモニア生成装置72から排出されるアンモニアガスをガスタービン燃料ガスとしてガス混合装置8に供給するように構成される。他の例に係る第2アンモニア燃料ガス供給ライン88Dは、ガスタービン燃料ガスとしてのアンモニアガスを燃焼器3に直接的に供給してもよい。いずれの実施形態においても、アンモニアガスに含まれる水素は燃焼器3において酸素と結合し、水分が発生する。この水分は水回収装置33によって回収された後、アンモニアの生成に再利用される。つまり、コジェネシステム10Dでは、水素が循環することとなる。
【0068】
上記構成によれば、電解合成を通じてアンモニアを生成するため、ハーバボッシュ法を採用する場合に比べて生成に要する工程の数を減らすことができる。従って、第2アンモニア生成装置72は簡易な工程でアンモニアを生成できる。また、ガスタービン燃料ガスとしてアンモニアを利用することで、ガスタービン燃料ガスの供給系統をより簡易にできる(詳細は、第2実施形態において説明した通りである。)。また、炭素を含まないアンモニアガスをガスタービン燃料ガスとして使用するので、コジェネシステム10Dは二酸化炭素の排出量を低減できる。
【0069】
幾つかの実施形態において、燃料ガス生成設備80D(80)は、第2アンモニア生成装置72でアンモニアが生成される過程において発生する酸素ガスを燃焼器3に供給するための酸素ガス供給ライン65をさらに備えてもよい。酸素ガス供給ライン65を流れる酸素ガスは、燃焼器ケーシング23(
図3参照)において圧縮空気7と混ざった後、燃焼器ライナ26(
図3参照)に流入する。上記構成によれば、第2アンモニア生成装置72で発生した酸素ガスを燃焼器3の酸化剤として利用することで、水分解処理の対象となる工業水を無駄なく活用できる。
【0070】
<4-5.第5実施形態に係る燃料ガス生成設備80E(80)>
図5Eを参照して、燃料ガス生成設備80E(80)の構成を例示する。
図5Eでは、
図5Dを参照して説明した構成要素と同じものには同じ符号を付与しており、これらの構成要素の説明を以下では省略することがある。
【0071】
燃料ガス生成設備80Eの燃料ガス生成部81E(81)は、窒素ガス抽出装置66、窒素ガス供給管174、および、第2アンモニア生成装置72を含む。これらの構成要素は、第4実施形態において説明した通りである。また、燃料ガス生成設備80E(80)は、酸素ガス供給ライン65をさらに備える。当該構成要素も、第4実施形態において説明した通りである。
【0072】
燃料ガス生成部81Eは、アンモニアガス排出ライン176、第2水素ガス生成装置52、および、第2水素燃料ガス供給ライン88E(88)を含む。アンモニアガス排出ライン176は、第2アンモニア生成装置72と第2水素ガス生成装置52とに接続されている。アンモニアガス排出ライン176は、第2アンモニア生成装置72から排出されるアンモニアガスを第2水素ガス生成装置52に供給する。第2水素燃料ガス供給ライン88E(88)は、第2水素ガス生成装置52とガス混合装置8とに接続されている。第2水素燃料ガス供給ライン88Eは燃料ガス供給ライン88(
図1参照)の一例である。
【0073】
第2水素ガス生成装置52は、第1水素ガス生成装置51と同様の構成を有する。第2水素ガス生成装置52は、ボイラ蒸気供給ライン102を介して蒸気需要体11と接続されている。そして、第2水素ガス生成装置52は、排熱回収ボイラ14から排出されるボイラ蒸気を熱源として、第2アンモニア生成装置72から排出されるアンモニアガスから水素ガスを生成するように構成される。水素ガスの生成方法は第1水素ガス生成装置51(
図5C参照)と同様であるので、詳説を割愛する。
【0074】
第2水素燃料ガス供給ライン88Eは、第2水素ガス生成装置52で生成された水素ガスをガスタービン燃料ガスとしてガス混合装置8に供給する。なお、第2水素燃料ガス供給ライン88Eがガスタービン燃料ガスとしての水素ガスを燃焼器3に直接的に供給するように構成されてもよい。いずれの実施形態においても、水素ガスを構成する水素は燃焼器3において酸素と結合し、水分が発生する。この水分は水回収装置33によって回収された後、アンモニアの生成(つまり水素ガスの生成)に再利用される。つまり、コジェネシステム10Eでは、水素が循環することとなる。
【0075】
上記構成によれば、単位重量当たりの発熱量が比較的高い水素ガスをガスタービン燃料ガスとして利用できるので、コジェネシステム10Eの系外にある他の燃料ガスの供給量を低減できる。また、燃料ガス生成設備80Eが第2アンモニア生成装置72を備えることによる利点は第4実施形態において説明した通りであるので、詳説を割愛する。燃料ガス生成設備80Eが酸素ガス供給ライン65を備える利点も、第4実施形態において説明した通りであるので詳説を割愛する。
【0076】
<4-6.第6実施形態に係る燃料ガス生成設備80F(80)>
図5Fを参照して、燃料ガス生成設備80F(80)の構成を例示する。燃料ガス生成設備80Fの燃料ガス生成部81F(81)は、上述した水分解装置61を含む。さらに、燃料ガス生成部81Fは、水分解装置61とガス混合装置8とに接続される水素燃料ガス供給ライン88F(88)を含む。水素燃料ガス供給ライン88Fは、水分解装置61で生成される水素ガスをガスタービン燃料ガスとしてガス混合装置8に供給するように構成される。水素燃料ガス供給ライン88Fは燃料ガス供給ライン88(
図1参照)の一例である。なお、水素燃料ガス供給ライン88Fは、水素ガスを燃焼器3に直接的に供給してもよい。いずれの実施形態においても、水素ガスを構成する水素は燃焼器3において酸素と結合し、水分が発生する。この水分は水回収装置33によって回収された後、水素ガスの生成に再利用される。つまり、コジェネシステム10Eでは、水素が循環することとなる。
【0077】
上記構成によれば、単位重量当たりの発熱量が比較的高い水素ガスをガスタービン燃料ガスとして利用できるので、コジェネシステム10Fの系外にある化石燃料ガスといった他の燃料ガスの供給量を低減できる。
【0078】
<4-7.その他>
第1実施形態~第6実施形態に係る燃料ガス生成設備80A~80F(80)は、各々単独で設置されてもよいし、燃料ガス生成設備80A~80Fの任意の少なくともとも2以上が組み合わさって設置されてもよい。また、ガスタービン燃料ガスとしてアンモニアガスが採用される燃料ガス生成設備80B,80Dにおいては、上述の上流側蒸気配管131(
図2、
図3参照)が設けられることが好ましい。大型なガスタービン9を効率的に運転させる際には、燃焼器ライナ26の内側に形成される燃焼室の温度は高く、アンモニアガスの燃焼時に窒素酸化物が生成され易い。この点、上流側蒸気配管131が燃焼器3のヘッドエンド24側にボイラ蒸気を供給することで、窒素酸化物の発生量を抑制する利点が顕著に得られる。
【0079】
<5.コジェネシステム10Gの改造方法>
図1、
図6、
図7を参照して、改造前のコジェネシステム10であるコジェネシステム10Gをコジェネシステム10に改造する方法を説明する。
図6は、本開示の一実施形態に係るコジェネシステム10Gの概略図である。
図7は、コジェネシステム10Gの改造方法を示すフローチャートである。
【0080】
改造方法の説明に先立ち、コジェネシステム10G(10)を説明する。コジェネシステム10Gは、
図1で示す追設ユニット4(つまり、水回収システム40と燃料ガス生成設備80)を備えない。また、コジェネシステム10Gの排気ライン29には排気ダンパ31(
図1参照)が設けられていない。コジェネシステム10Gに対して追設ユニット4と排気ダンパ31とが追設されることで、コジェネシステム10は実現される。詳細な改造方法は以下の通りである。
【0081】
はじめに、水回収装置33を含む水回収システム40を追設する水回収システム追設ステップ(S11)が実行される。具体的には(
図4もあわせて参照)、水回収システム40を設置すると共に、排ガスライン57と排気ライン29との接続部に排ガス供給ライン141の入口を接続する。また、給水ライン43を補給水タンク17に接続する。つまり、高温給水ライン44の出口と低温給水ライン47の出口を補給水タンク17に接続する。
【0082】
次いで、排気ダンパ31を排気ライン29に追設する排気ダンパ追設ステップ(S13)を実行する。なお、改造前から排気ダンパ31が排気ライン29に設けられている場合には、S13は省略されてもよい。
【0083】
次いで、燃料ガス生成設備80を追設する燃料ガス生成設備追設ステップ(S15)を実行する。具体的には、抽水ライン49の入口を給水ライン19に接続し、混合燃料ガス供給ライン86(
図1参照)の出口を混合燃料ガス供給設備79に接続する。これにより、コジェネシステム10が完成する。
【0084】
なお、燃料ガス生成設備80A(
図5A参照)が追設される場合には、S15において、排ガス供給ライン109を用いて水回収装置33の排ガス流出口と二酸化炭素回収装置62とを接続するステップが追加的に実行される。
また、燃料ガス生成設備80C(
図5C参照)が追設される場合には、S15において、ボイラ蒸気供給ライン102を用いて第1水素ガス生成装置51と蒸気需要体11とを接続するステップが追加的に実行される。
同様に、燃料ガス生成設備80E(
図5E参照)が追設される場合には、S15において、ボイラ蒸気供給ライン102を用いて第2水素ガス生成装置52と蒸気需要体11とを接続するステップが追加的に実行される。
さらに、水分解装置61を含む燃料ガス生成設備80A,80B,80C,80F(
図5A、
図5B、
図5C、
図5F)が追設される場合には、S15において、水分解装置61と燃焼器3とを酸素ガス供給ライン64によって接続するステップが追加的に実行されてもよい。
【0085】
以上説明したコジェネシステム10Gの改造方法は、作業者、作業者によって操作されるロボットアーム、または、これらの組み合わせによって実行される。
<6.まとめ>
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0086】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンコジェネシステム(10)は、
燃焼器(3)を含むガスタービン(9)と、
前記ガスタービンから排出される排ガス(13)を熱源としてボイラ蒸気を生成するための排熱回収ボイラ(14)と、
前記排熱回収ボイラから排出される前記排ガスと冷媒水との熱交換によって前記排ガスから水分を回収するための水回収装置(33)と、
前記水回収装置によって回収された回収水を含む工業水を原料物質の少なくとも1つにして、前記燃焼器に供給するためのガスタービン燃料ガスを生成するための燃料ガス生成設備(80)と
を備える。
【0087】
上記1)の構成によれば、排ガスに含まれる水分は水回収装置によって回収され、回収水を含む工業水は、ガスタービン燃料ガスの原料物質の少なくとも1つとして活用される。ガスタービン燃料ガスが燃焼器に供給される分、化石燃料ガスといった他の燃料ガスの供給量を低減できるので、ガスタービンコジェネシステムは二酸化炭素の排出量を低減できる。また、排ガスに含まれる水分は水回収装置によって回収された後にガスタービン燃料ガスとして利用され、ガスタービン燃料ガスの燃焼により生じる水分は、水回収装置によって再び回収される。このように、水分を構成する物質が循環するガスタービンコジェネシステムが実現され、当該システムの系外にある化石燃料ガスの供給量を減らすことができ、カーボンニュートラルに寄与できる。
【0088】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のガスタービンコジェネシステムであって、
前記燃料ガス生成設備は、前記工業水に水分解処理を施して水素ガスを生成するための水分解装置(61)をさらに含む。
【0089】
上記2)の構成によれば、水素ガスとしてのガスタービン燃料ガス、または、水素ガス由来のガスタービン燃料ガスを生成することができ、二酸化炭素の排出量を低減できる。また、水素ガスとしてのガスタービン燃料ガスまたは水素ガス由来のガスタービン燃料ガスが燃焼器で燃焼することによって生じる水分が水回収装置によって回収されるので、回収水の分量が増え、ガスタービン燃料ガスの生成量も増える。従って、系外にある他の燃料ガスの依存度を低減することができる。加えて、コジェネシステムの系内で水素を循環させることができる。
【0090】
3)幾つかの実施形態では、上記2)に記載のガスタービンコジェネシステムであって、
前記燃料ガス生成設備は、
前記排熱回収ボイラから排出される前記ボイラ蒸気を用いて、前記水回収装置から排出される前記排ガスから二酸化炭素を回収するための二酸化炭素回収装置(62)と、
前記水分解装置で生成された前記水素ガスと、前記二酸化炭素回収装置で回収された前記二酸化炭素とから、メタンガスを生成するためのメタン生成装置(63)と、
前記メタンガスを前記ガスタービン燃料ガスとして前記燃焼器に供給するためのメタン燃料ガス供給ライン(88A)と
をさらに含む。
【0091】
上記3)の構成によれば、水素ガス由来のメタンガスをガスタービン燃料ガスとして燃焼器に供給できる。また、メタンガスの生成に、排ガスに含まれる二酸化炭素が利用されるので、二酸化炭素の排出量を低減できる。さらに二酸化炭素の生成時に、ボイラ蒸気の有する熱が利用されるので、省エネ化が実現される。
【0092】
4)幾つかの実施形態では、上記2)または3)に記載のガスタービンコジェネシステムであって、
前記燃料ガス生成設備は、前記水分解装置で生成される前記水素ガスを、前記ガスタービン燃料ガスとして前記燃焼器に供給するための水素燃料ガス供給ライン(88F)をさらに含む。
【0093】
上記4)の構成によれば、単位重量当たりの発熱量が比較的高い水素ガスをガスタービン燃料ガスとして利用できるので、ガスタービンコジェネシステムの系外にある他の燃料ガスの供給量を低減できる。
【0094】
5)幾つかの実施形態では、上記2)から4)のいずれかに記載のガスタービンコジェネシステムであって、
前記燃料ガス生成設備は、
大気から窒素ガスを抽出するための窒素ガス抽出装置(66)と、
前記水分解装置で生成された前記水素ガスと、前記窒素ガス抽出装置で抽出された前記窒素ガスとから、アンモニアを生成するための第1アンモニア生成装置(71)と
さらに含む。
【0095】
上記5)の構成によれば、水素ガスからアンモニアを生成することで、ガスタービン燃料ガスの供給系統をより簡易にできる。より具体的には、アンモニアの沸点は水素などの他の液体燃料の沸点よりも高いので、ガスタービンの燃料を液相の状態で保管する設備を簡易にできる。
【0096】
6)幾つかの実施形態では、上記5)に記載のガスタービンコジェネシステムであって、
前記燃料ガス生成設備は、前記第1アンモニア生成装置から排出されるアンモニアガスを、前記ガスタービン燃料ガスとして前記燃焼器に供給するための第1アンモニア燃料ガス供給ライン(88B)をさらに含む。
【0097】
上記6)の構成によれば、炭素を含まないアンモニアガスをガスタービン燃料ガスとして使用するので、二酸化炭素の排出量を低減できる。
【0098】
7)幾つかの実施形態では、上記5)に記載のガスタービンコジェネシステムであって、
前記燃料ガス生成設備は、
前記排熱回収ボイラから排出される前記ボイラ蒸気を熱源として、前記第1アンモニア生成装置から排出されるアンモニアガスから水素ガスを生成するための第1水素ガス生成装置(51)と、
前記第1水素ガス生成装置で生成された前記水素ガスを、前記ガスタービン燃料ガスとして前記燃焼器に供給するための第1水素燃料ガス供給ライン(88C)と
をさらに含む。
【0099】
上記7)の構成によれば、単位重量当たりの発熱量が比較的高い水素ガスをガスタービン燃料ガスとして利用できるので、ガスタービンコジェネシステムの系外にある他の燃料ガスの供給量を低減できる。
【0100】
8)幾つかの実施形態では、上記2)から7)のいずれかに記載のガスタービンコジェネシステムであって、
前記水分解装置で前記水素ガスが生成される過程において発生する酸素ガスを前記燃焼器に供給するための酸素ガス供給ライン(66)をさらに備える。
【0101】
上記8)の構成によれば、水分解装置で発生した酸素ガスを燃焼器の酸化剤として利用することで、水分解処理の対象となる工業水を無駄なく活用できる。
【0102】
9)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のガスタービンコジェネシステムであって、
前記燃料ガス生成設備は、
大気から窒素ガスを抽出するための窒素ガス抽出装置(66)と、
前記工業水と前記窒素ガス抽出装置で抽出された前記窒素ガスとから電解合成を通じてアンモニアを生成するための第2アンモニア生成装置(72)と
をさらに含む。
【0103】
上記9)の構成によれば、電解合成を通じてアンモニアを生成するため、第2アンモニア生成装置は簡易な工程でアンモニアを生成できる。ガスタービン燃料ガスとしてアンモニアを利用することで、ガスタービン燃料ガスの供給系統をより簡易にできる。より具体的には、アンモニアの沸点は水素などの他の液体燃料の沸点よりも高いので、ガスタービンの燃料を液相の状態で保管する設備を簡易にできる。
【0104】
10)幾つかの実施形態では、上記9)に記載のガスタービンコジェネシステムは、
前記第2アンモニア生成装置で前記アンモニアが生成される過程において発生する酸素ガスを前記燃焼器に供給するための酸素ガス供給ライン(65)をさらに備える。
【0105】
上記10)の構成によれば、第2アンモニア生成装置で発生した酸素ガスを燃焼器の酸化剤として利用することで、水分解処理の対象となる工業水を無駄なく活用できる。
【0106】
11)幾つかの実施形態では、上記9)または10)に記載のガスタービンコジェネシステムであって、
前記燃料ガス生成設備は、前記第2アンモニア生成装置から排出されるアンモニアガスを、前記ガスタービン燃料ガスとして前記燃焼器に供給するための第2アンモニア燃料ガス供給ライン(88D)をさらに含む。
【0107】
上記11)の構成によれば、上記6)と同様の作用効果を得ることができる。
【0108】
12)幾つかの実施形態では、上記9)から11)のいずれかに記載のガスタービンコジェネシステムであって、
前記燃料ガス生成設備は、
前記排熱回収ボイラから排出される前記ボイラ蒸気を熱源として、前記第2アンモニア生成装置から排出されるアンモニアガスから水素ガスを生成するための第2水素ガス生成装置(52)と、
前記第2水素ガス生成装置で生成された前記水素ガスを前記ガスタービン燃料ガスとして前記燃焼器に供給するための第2水素燃料ガス供給ライン(88E)と
をさらに含む。
【0109】
上記12)の構成によれば、上記7)と同様の作用効果を得ることができる。
【0110】
13)幾つかの実施形態では、上記1)から12)のいずれかに記載のガスタービンコジェネシステムであって、
前記燃料ガス生成設備は、
前記ガスタービン燃料ガスと化石燃料ガスとを混合して混合燃料ガスを生成するためのガス混合装置(8)と、
前記混合燃料ガスを前記燃焼器に供給するための混合燃料ガス供給ライン(86)と
を含む。
【0111】
上記13)の構成によれば、燃焼器に供給される混合燃料ガスに化石燃料ガスが含まれるので、燃焼器の燃焼に伴い発生する発熱量を十分に確保することができる。
【0112】
14)幾つかの実施形態では、上記1)から13)のいずれかに記載のガスタービンコジェネシステムは、
前記排熱回収ボイラから排出される前記ボイラ蒸気を、前記燃焼器におけるヘッドエンド側に供給するためのヘッドエンド側蒸気供給配管(上流側蒸気配管131)をさらに備える。
【0113】
上記14)の構成によれば、燃焼器においてボイラ蒸気が噴射されることで、燃焼器における窒素酸化物の発生を抑制できる。また、噴射されたボイラ蒸気は排ガスに混入した後、排ガスに含まれる水分として水回収装置によって回収される。これにより、十分な量の回収水を回収できるので、燃料ガス生成設備は十分な量のガスタービン燃料ガスを生成できる。
【0114】
15)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンコジェネシステム(10)の改造方法は、
燃焼器(3)を含むガスタービン(9)と、排熱回収ボイラ(14)とを備えるガスタービンコジェネシステム(10)の改造方法であって、
前記排熱回収ボイラから排出される排ガス(13)と冷媒水との熱交換によって前記排ガスから水分を回収するための水回収装置(33)を追設するための水回収装置追設ステップ(S11)と、
前記水回収装置によって回収された回収水を含む工業水を原料物質の少なくとも1つにして、前記燃焼器に供給するためのガスタービン燃料ガスを生成するための燃料ガス生成設備(80)を追設するための燃料ガス生成設備追設ステップ(S15)と
を備える。
【0115】
上記15)の構成によれば、上記1)と同様の作用効果を得ることができる。
【0116】
16)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンコジェネシステム用追設ユニット(4)は、
排熱回収ボイラ(14)から排出される排ガス(13)と冷媒水との熱交換によって前記排ガスから水分を回収するための水回収装置(33)と、
前記水回収装置によって回収された回収水を含む工業水を原料物質の少なくとも1つにして、ガスタービン(9)の燃焼器(3)に供給するためのガスタービン燃料ガスを生成するための燃料ガス生成設備(80)と
を備える。
【0117】
上記16)の構成によれば、上記1)と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0118】
1 :コジェネ系統
2 :タービン
3 :燃焼器
4 :ガスタービンコジェネシステム用追設ユニット
4 :追設ユニット
5 :発電機
6 :圧縮機入口空気
7 :圧縮空気
8 :ガス混合装置
9 :ガスタービン
10 :ガスタービンコジェネシステム(コジェネシステム)
11 :蒸気需要体
12 :燃焼ガス
13 :排ガス
14 :排熱回収ボイラ
21 :蒸気供給配管
24 :ヘッドエンド
25 :燃料ノズル
26 :燃焼器ライナ
27 :燃焼器尾筒
28 :火炎
29 :排気ライン
30 :排気塔
31 :排気ダンパ
33 :水回収装置
49 :抽水ライン
51 :第1水素ガス生成装置
52 :第2水素ガス生成装置
55 :冷却水供給ポンプ
57 :排ガスライン
59 :水回収ダンパ
61 :水分解装置
62 :二酸化炭素回収装置
63 :メタン生成装置
64,65 :酸素ガス供給ライン
66 :窒素ガス抽出装置
71 :第1アンモニア生成装置
72 :第2アンモニア生成装置
80 :燃料ガス生成設備
81 :燃料ガス生成部
86 :混合燃料ガス供給ライン
88 :燃料ガス供給ライン
88A :メタン燃料ガス供給ライン
88B :第1アンモニア燃料ガス供給ライン
88C :第1水素燃料ガス供給ライン
88D :第2アンモニア燃料ガス供給ライン
88E :第2水素燃料ガス供給ライン
88F :水素燃料ガス供給ライン
91 :水素ガス供給ライン
101 :ボイラ蒸気供給ライン
102 :ボイラ蒸気供給ライン
109 :排ガス供給ライン
130 :蒸気抽気配管
131 :上流側蒸気配管
131A :上流側蒸気流調弁
132 :下流側蒸気配管
132A :下流側蒸気流調弁
135 :熱交換容器
162 :二酸化炭素供給ライン
173 :水素ガス供給配管
174 :窒素ガス供給管
175,176 :アンモニアガス排出ライン