(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100489
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】車載温調システム
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20240719BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240719BHJP
F25B 5/02 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B60H1/22 651A
B60H1/22 671
B60H1/22 651C
F25B1/00 331
F25B1/00 399Y
F25B5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004520
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】道川内 亮
(72)【発明者】
【氏名】藍川 嗣史
(72)【発明者】
【氏名】沼田 将成
(72)【発明者】
【氏名】大船 悠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 達人
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA11
3L211CA14
3L211CA18
3L211DA28
3L211DA42
3L211EA50
3L211FA23
3L211FB05
(57)【要約】
【課題】車両の室内への送風空気の温度が変化してしまうことを抑制する。
【解決手段】車両に搭載された車載温調システムであって、
車載温調システム1は、冷凍回路2と、低温回路3と、制御装置5を有する。冷凍回路は、冷却水から冷媒に吸熱させるチラー27と、冷媒から外部に放熱させるコンデンサ22と、を有すると共に、これらを通って冷媒を循環させることで冷凍サイクルを実現する。低温回路は、チラーと、外部から第1熱媒体に吸熱させる外部熱交換器と、を有すると共に、これらを通って冷却水を循環させる。制御装置は、チラーにおける冷媒の吸熱量を変化させることができる機器を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、車両の室内の暖房中に、チラーを流れる冷却水の温度が基準値以上変化した場合には、冷却水の温度の変化に伴うチラーにおける冷媒の吸熱量の変化が小さくなる方向に、機器を制御する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車載温調システムであって、
第1熱媒体から冷媒に吸熱させて該冷媒を蒸発させる第1熱交換器と、前記冷媒から外部に放熱させて冷媒を凝縮させると共に放出された熱を前記車両の室内の暖房に用いることができる第2熱交換器と、を有すると共に、これらを通って前記冷媒を循環させることで冷凍サイクルを実現するように構成された冷凍回路と、
前記第1熱交換器と、外部から前記第1熱媒体に吸熱させる外部熱交換器と、を有すると共に、これらを通って前記第1熱媒体を循環させるように構成された第1熱回路と、
前記第1熱交換器における前記冷媒の吸熱量を変化させることができる機器であって前記冷凍回路又は前記第1熱回路に関連する機器を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記車両の室内の暖房中に、前記第1熱交換器を流れる前記第1熱媒体の温度が基準値以上変化した場合又は前記第1熱交換器を流れる前記第1熱媒体の温度が基準値以上変化することが予測される場合には、該第1熱媒体の温度の変化に伴う前記第1熱交換器における前記冷媒の吸熱量の変化が小さくなる方向に、前記機器を制御する、車載温調システム。
【請求項2】
前記第1熱交換器を流れる前記第1熱媒体の温度を検出する温度検出器を更に有し、
前記制御装置は、前記車両の室内の暖房中に前記温度検出器によって検出された温度が単位時間当たりに基準値以上変化した場合に、前記第1熱媒体の温度の変化に伴う前記第1熱交換器における前記冷媒の吸熱量の変化が小さくなる方向に、前記機器を制御する、請求項1に記載の車載温調システム。
【請求項3】
前記第1熱回路は、前記第1熱媒体が流れる複数の並列な流路を有し、
当該車載温調システムは、
前記第1熱交換器を流れる前記第1熱媒体の温度を検出する第1温度検出器と、
前記第1熱回路のうち、前記流路を切り替える前には前記第1熱媒体が循環しておらず且つ前記流路を切り替えた後に前記第1熱媒体が循環する前記流路内の前記第1熱媒体の温度を検出する第2温度検出器と、を更に有し、
前記制御装置は、前記第1温度検出器によって検出された温度と前記第2温度検出器によって検出された温度とに基づいて、前記流路を切り替えることによって前記第1熱交換器を流れる前記第1熱媒体の温度が基準値以上変化するか否かを予測する、請求項1又は2に記載の車載温調システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記車両の室内の暖房中に前記第1熱交換器を流れる前記第1熱媒体の温度が基準値以上変化することが予測された場合には、該予測の後に前記第1熱交換器を流れる前記第1熱媒体の温度が前記基準値よりも小さい第2基準値以上変化したときに、該第1熱媒体の温度の変化に伴う前記第1熱交換器における前記冷媒の吸熱量の変化が小さくなる方向に、前記機器を制御する、請求項1又は2に記載の車載温調システム。
【請求項5】
前記第2熱交換器と、前記車両の室内の暖房に用いられるヒータコアと、を有すると共に、これらを通って第2熱媒体を循環させるように構成された第2熱回路を更に有し、
前記第2熱交換器は、前記冷媒から前記第2熱媒体に放熱する、請求項1又は2に記載の車載温調システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記車両の室内の暖房中に、前記第1熱交換器に流入する前記第1熱媒体の温度が基準値以上変化した場合又は前記第1熱媒体に流入する前記第1熱媒体の温度が基準値以上変化することが予測される場合に、前記第1熱媒体の温度の変化に伴って前記ヒータコアに流入する前記第2熱媒体の温度が変化する前に、前記機器の制御を開始する、請求項5に記載の車載温調システム。
【請求項7】
前記第2熱交換器には、前記ヒータコアに流入する前記第2熱媒体を加熱する電気ヒータが設けられていない、請求項5に記載の車載温調システム。
【請求項8】
前記機器は、前記冷凍回路における前記冷媒の流量、前記第1熱回路における前記第1熱媒体の流量、前記第1熱交換器に流入する前記冷媒の過熱度、及び前記外部熱交換器における吸熱量のうちの少なくともいずれか一つのパラメータの値を変化させることができる機器である、請求項1又は2に記載の車載温調システム。
【請求項9】
前記機器は、前記冷凍回路に設けられると共に前記冷媒を圧縮するコンプレッサを含み、
前記制御装置は、前記冷凍回路における冷媒の流量を制御すべく、前記コンプレッサの吐出流量を制御する、請求項8に記載の車載温調システム。
【請求項10】
前記機器は、前記第1熱回路に設けられると共に前記第1熱媒体を圧送するポンプを含み、
前記制御装置は、前記第1熱回路における前記第1熱媒体の流量を制御すべく、前記ポンプの吐出流量を制御する、請求項8に記載の車載温調システム。
【請求項11】
前記機器は、前記冷凍回路に設けられると共に前記冷媒を減圧させる膨張弁を含み、
前記制御装置は、前記第1熱交換器に流入する前記冷媒の過熱度を制御すべく、前記膨張弁の開度を制御する、請求項8に記載の車載温調システム。
【請求項12】
前記外部熱交換器は、第3熱媒体を介して外部の熱源と前記第1熱回路の前記第1熱媒体との間で熱交換するように構成され、
前記制御装置は、前記外部熱交換器における吸熱量を制御すべく、前記外部熱交換器における前記第3熱媒体の流量を制御する、請求項8に記載の車載温調システム。
【請求項13】
前記外部の熱源は、前記車両を駆動する電動機である、請求項12に記載の車載温調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、低温側熱媒体が循環する低温側熱回路と冷媒が循環する冷凍回路と高温側熱媒体が循環する高温側熱回路とを有する車載温調システムが知られている(特許文献1)。特許文献1に記載の車載温調システムでは、チラーによって熱媒体から冷媒への吸熱が行われ、コンデンサにおいて車両の室内の暖房に用いられる熱が冷媒から放熱される車載温調システムが知られている(特許文献1)。
【0003】
特に、特許文献1には、低温側熱回路に設けられたバッテリの冷却要求がある状態からない状態へ変化する場合、或いは斯かる冷却要求がない状態からある状態へ変化する場合に、チラーを通る冷媒の流量を一時的に減少させて、コンプレッサの耐久性の悪化を抑制することが開示されている。また、特許文献1では、チラーを通る冷媒の流量が減少することによって暖房モードにおける車両の室内への送風空気の温度が低下するために、電気ヒータによって高温側熱媒体を加熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された制御では、暖房モードにおける送風空気の温度の低下を抑制すべく、高温側熱媒体が電気ヒータによって加熱されている。したがって、電気ヒータが設けられていない場合には、暖房モードにおける送風空気の温度が低下してしまう可能性がある。
【0006】
上記課題に鑑みて、本開示の目的は、低温側熱回路における低温側熱媒体の温度が変化しても、車両の室内への送風空気の温度が変化してしまうことを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0008】
(1)車両に搭載された車載温調システムであって、
第1熱媒体から冷媒に吸熱させて該冷媒を蒸発させる第1熱交換器と、前記冷媒から外部に放熱させて冷媒を凝縮させると共に放出された熱を前記車両の室内の暖房に用いることができる第2熱交換器と、を有すると共に、これらを通って前記冷媒を循環させることで冷凍サイクルを実現するように構成された冷凍回路と、
前記第1熱交換器と、外部から前記第1熱媒体に吸熱させる外部熱交換器と、を有すると共に、これらを通って前記第1熱媒体を循環させるように構成された第1熱回路と、
前記第1熱交換器における前記冷媒の吸熱量を変化させることができる機器であって前記冷凍回路又は前記第1熱回路に関連する機器を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記車両の室内の暖房中に、前記第1熱交換器を流れる前記第1熱媒体の温度が基準値以上変化した場合又は前記第1熱交換器を流れる前記第1熱媒体の温度が基準値以上変化することが予測される場合には、該第1熱媒体の温度の変化に伴う前記第1熱交換器における前記冷媒の吸熱量の変化が小さくなる方向に、前記機器を制御する、車載温調システム。
(2)前記第1熱交換器を流れる前記第1熱媒体の温度を検出する温度検出器を更に有し、
前記制御装置は、前記車両の室内の暖房中に前記温度検出器によって検出された温度が単位時間当たりに基準値以上変化した場合に、前記第1熱媒体の温度の変化に伴う前記第1熱交換器における前記冷媒の吸熱量の変化が小さくなる方向に、前記機器を制御する、上記(1)に記載の車載温調システム。
(3)前記第1熱回路は、前記第1熱媒体が流れる複数の並列な流路を有し、
当該車載温調システムは、
前記第1熱交換器を流れる前記第1熱媒体の温度を検出する第1温度検出器と、
前記第1熱回路のうち、前記流路を切り替える前には前記第1熱媒体が循環しておらず且つ前記流路を切り替えた後に前記第1熱媒体が循環する前記流路内の前記第1熱媒体の温度を検出する第2温度検出器と、を更に有し、
前記制御装置は、前記第1温度検出器によって検出された温度と前記第2温度検出器によって検出された温度とに基づいて、前記流路を切り替えることによって前記第1熱交換器を流れる前記第1熱媒体の温度が基準値以上変化するか否かを予測する、上記(1)又は(2)に記載の車載温調システム。
(4)前記制御装置は、前記車両の室内の暖房中に前記第1熱交換器を流れる前記第1熱媒体の温度が基準値以上変化することが予測された場合には、該予測の後に前記第1熱交換器を流れる前記第1熱媒体の温度が前記基準値よりも小さい第2基準値以上変化したときに、該第1熱媒体の温度の変化に伴う前記第1熱交換器における前記冷媒の吸熱量の変化が小さくなる方向に、前記機器を制御する、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の車載温調システム。
(5)前記第2熱交換器と、前記車両の室内の暖房に用いられるヒータコアと、を有すると共に、これらを通って第2熱媒体を循環させるように構成された第2熱回路を更に有し、
前記第2熱交換器は、前記冷媒から前記第2熱媒体に放熱する、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の車載温調システム。
(6)前記制御装置は、前記車両の室内の暖房中に、前記第1熱交換器に流入する前記第1熱媒体の温度が基準値以上変化した場合又は前記第1熱媒体に流入する前記第1熱媒体の温度が基準値以上変化することが予測される場合に、前記第1熱媒体の温度の変化に伴って前記ヒータコアに流入する前記第2熱媒体の温度が変化する前に、前記機器の制御を開始する、上記(5)に記載の車載温調システム。
(7)前記第2熱交換器には、前記ヒータコアに流入する前記第2熱媒体を加熱する電気ヒータが設けられていない、上記(5)又は(6)に記載の車載温調システム。
(8)前記機器は、前記冷凍回路における前記冷媒の流量、前記第1熱回路における前記第1熱媒体の流量、前記第1熱交換器に流入する前記冷媒の過熱度、及び前記外部熱交換器における吸熱量のうちの少なくともいずれか一つのパラメータの値を変化させることができる機器である、上記(1)~(7)のいずれか1つに記載の車載温調システム。
(9)前記機器は、前記冷凍回路に設けられると共に前記冷媒を圧縮するコンプレッサを含み、
前記制御装置は、前記冷凍回路における冷媒の流量を制御すべく、前記コンプレッサの吐出流量を制御する、上記(8)に記載の車載温調システム。
(10)前記機器は、前記第1熱回路に設けられると共に前記第1熱媒体を圧送するポンプを含み、
前記制御装置は、前記第1熱回路における前記第1熱媒体の流量を制御すべく、前記ポンプの吐出流量を制御する、上記(8)又は(9)に記載の車載温調システム。
(11)前記機器は、前記冷凍回路に設けられると共に前記冷媒を減圧させる膨張弁を含み、
前記制御装置は、前記第1熱交換器に流入する前記冷媒の過熱度を制御すべく、前記膨張弁の開度を制御する、上記(8)~(10)のいずれか1つに記載の車載温調システム。
(12)前記外部熱交換器は、第3熱媒体を介して外部の熱源と前記第1熱回路の前記第1熱媒体との間で熱交換するように構成され、
前記制御装置は、前記外部熱交換器における吸熱量を制御すべく、前記外部熱交換器における前記第3熱媒体の流量を制御する、上記(8)~(11)のいずれか1つに記載の車載温調システム。
(13)前記外部の熱源は、前記車両を駆動する電動機である、上記(12)に記載の車載温調システム。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、低温側熱回路における低温側熱媒体の温度が変化しても、車両の室内への送風空気の温度が変化してしまうことが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一つの実施形態に係る車載温調システムを搭載する車両の構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、車載温調システムを概略的に示す構成図である。
【
図3】
図3は、車載温調システムを搭載した車両の空調用の空気通路を概略的に示す構成図である。
【
図4】
図4は、熱媒体の一つの流通態様(第1停止モード)を概略的に示す図である。
【
図5】
図5は、熱媒体の一つの流通態様(第2停止モード)を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、熱媒体の一つの流通態様(冷房モード)を概略的に示す図である。
【
図7】
図7は、熱媒体の一つの流通態様(第1暖房モード)を概略的に示す図である。
【
図8】
図8は、熱媒体の一つの流通態様(第2暖房モード)を概略的に示す図である。
【
図9】
図9は、暖房モードにおけるコンプレッサ及び第2膨張弁を制御するための処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、五方弁の接続状態等のタイムチャートである。
【
図12】
図12は、暖房時における第2ポンプを制御するための処理のフローチャートである。
【
図13】
図13は、変形例に係る第2暖房モードにおける熱媒体の流通態様を概略的に示す図である。
【
図16】
図16は、暖房時におけるコンプレッサ及び第2膨張弁を制御するための処理のフローチャートである。
【
図18】
図18は、暖房時におけるコンプレッサ及び第2膨張弁を制御するための処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0012】
第1実施形態
<車両の構成>
図1は、第一実施形態に係る車載温調システム1を搭載する車両100の構成を概略的に示す図である。
図1では、左側が車両100の前方、右側が車両100の後方をそれぞれ示している。
図1に示されるように、車両100は、電気自動車(BEV)であり、車両を駆動するモータジェネレータ(MG)110と、MG110に電気的に接続されたパワーコントロールユニット(PCU)112と、PCU112に電気的に接続されたバッテリ114と、を備える。
【0013】
MG110は、電動機及び発電機として機能する。MG110は、車両100を駆動したり、車両100を制動する際に回生を行ったりするのに用いられる。なお、本実施形態では、車両100を駆動するモータとして、発電機としても機能するMG112が用いられているが、発電機として機能せずに電動機としてのみ機能するモータが用いられてもよい。
【0014】
PCU112は、バッテリ114とMG110との間に接続されて、MG110へ供給される電力を制御する。PCU112は、モータを駆動するインバータ、電圧を制御する昇圧コンバータ、高電圧を降圧するDCDCコンバータ等の発熱部品を有する。バッテリ114は、PCU112に接続されて、車両100を駆動するための電力をMG110に供給する。
【0015】
なお、車両100は、車両100を駆動するために電動機に加えて内燃機関を備えるハイブリッド車(HEV)であってもよい。また、例えば、車両100は、主に車両100の駆動用に用いられるMGと、主に発電用に用いられるMGとの二つのMGを有するように構成されてもよい。
【0016】
<車載温調システムの構成>
図1~
図3を参照して、一つの実施形態に係る車載温調システム1の構成について説明する。
図2は、車載温調システム1を概略的に示す構成図である。車載温調システム1は、冷凍回路2、低温回路3(第1熱回路)、高温回路4(第2熱回路)及び制御装置5を備える。冷凍回路2、低温回路3及び高温回路4は、回路の外部との間で熱の授受を行う熱回路として機能する。
【0017】
≪冷凍回路≫
まず、冷凍回路2について説明する。冷凍回路2は、コンプレッサ21、コンデンサ22の冷媒配管22a、レシーバ23、第1膨張弁24、第2膨張弁25、エバポレータ26、チラー27の冷媒配管27a、第1電磁調整弁28及び第2電磁調整弁29を備える。冷凍回路2は、コンプレッサ21が駆動されるとこれら構成部品を通って冷媒が循環することで冷凍サイクルを実現するように構成される。冷媒には、例えば、ハイドロフルオロカーボン(例えば、HFC-134a)等、一般的に冷凍サイクルで冷媒として用いられる任意の物質が用いられる。
【0018】
また、冷凍回路2は、冷凍基本流路2aと、エバポレータ流路2bと、チラー流路2cとを有する。エバポレータ流路2bと、チラー流路2cとは互いに並列に設けられ、それぞれ冷凍基本流路2aに接続されている。
【0019】
冷凍基本流路2aには、冷媒の循環方向において、コンプレッサ21、コンデンサ22の冷媒配管22a及びレシーバ23がこの順番に設けられる。エバポレータ流路2bには、冷媒の循環方向において、第1電磁調整弁28、第1膨張弁24及びエバポレータ26がこの順番に設けられる。一方、チラー流路2cには、第2電磁調整弁29、第2膨張弁25及びチラー27の冷媒配管27aがこの順番に設けられる。
【0020】
コンプレッサ21は、冷媒を圧縮する圧縮機として機能し、チラー27における冷却水から冷媒への吸熱量を変化させることができる吸熱量変化機器(以下、「吸熱量変化機器」という)の一例である。特に、コンプレッサ21は、冷凍回路2に関する吸熱量変化機器の一例である。本実施形態では、コンプレッサ21は、電動式であり、コンプレッサ21への供給電力が調整されることによりその吐出容量が無段階に変化せしめられるように構成される。したがって、コンプレッサ21は、冷凍回路2における冷媒の流量を変化させることができる。コンプレッサ21では、エバポレータ26又はチラー27から流出した低温・低圧であって主にガス状である冷媒が、断熱的に圧縮されることにより、高温・高圧であって主にガス状である冷媒に変化せしめられる。
【0021】
コンデンサ22は、冷媒配管22aと冷却水配管22bとを有する。コンデンサ22は、冷媒から、後述する高温回路4の冷却水配管22bを流れる冷却水に放熱させて冷媒を凝縮させる熱交換器(第2熱交換器)として機能する。したがって、コンデンサ22の冷媒配管22aは、冷凍サイクルにおいて冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する。また、コンデンサ22の冷媒配管22aでは、コンプレッサ21から流出した高温・高圧であって主にガス状である冷媒が、等圧的に冷却されることにより、高温・高圧の主に液状の冷媒に変化せしめられる。
【0022】
レシーバ23は、コンデンサ22の冷媒配管22aによって凝縮された冷媒を貯留する。また、コンデンサ22では必ずしも全ての冷媒を液化することができないため、レシーバ23は気液の分離を行うように構成される。レシーバ23からはガス状の冷媒が分離された液状の冷媒のみが流出する。
【0023】
第1膨張弁24及び第2膨張弁25は、冷媒を膨張させる膨張器として機能し、冷凍回路2に関する吸熱量変化機器の一例である。これら膨張弁24、25は、例えば、細径の通路を備えると共に、この細径の通路から冷媒を噴霧することで冷媒の圧力を急激に低下させる。特に、膨張弁24、25は、その開度が小さいほど、冷媒の圧力が大きく低下するように構成されている。よって、膨張弁24、25は、エバポレータ26又はチラー27に流入する冷媒の過熱度を変化させることができる。第1膨張弁24は、レシーバ23から供給された液状の冷媒を、エバポレータ26内に霧状に噴霧する。同様に、第2膨張弁25は、レシーバ23から供給された液状の冷媒を、チラー27の冷媒配管27a内に霧状に噴霧する。これら膨張弁24、25では、レシーバ23から流出した高温・高圧の液状の冷媒が、減圧されて部分的に気化することにより、低温・低圧の霧状の冷媒に変化せしめられる。
【0024】
エバポレータ26は、冷媒に吸熱させて冷媒を蒸発させる蒸発器として機能し、冷凍回路2に関する吸熱量変化機器の一例である。具体的には、エバポレータ26は、エバポレータ26周りの空気から冷媒へ吸熱させ、冷媒を蒸発させる。したがって、エバポレータ26では、第1膨張弁24から流出した低温・低圧の霧状の冷媒が、蒸発することにより、低温・低圧のガス状の冷媒に変化せしめられる。この結果、エバポレータ26周りの空気は冷却せしめられ、車両100の室内の冷房を行うことができる。
【0025】
チラー27は、冷媒配管27aと冷却水配管27bとを備える。チラー27は、後述する低温回路3の冷却水配管27bを流れる冷却水から冷媒へ吸熱させ、冷媒を蒸発させる熱交換器(第1熱交換器)として機能する。チラー27の冷媒配管27aは、冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。また、チラー27の冷媒配管27aでは、第2膨張弁25から流出した低温・低圧の霧状の冷媒が、蒸発することにより、低温・低圧のガス状の冷媒に変化せしめられる。この結果、低温回路3の冷却水は冷却せしめられる。
【0026】
第1電磁調整弁28及び第2電磁調整弁29は、冷凍回路2内における冷媒の流通態様を変更するように用いられる。第1電磁調整弁28の開度が大きくなるほどエバポレータ流路2bに流入する冷媒が多くなり、よってエバポレータ26に流入する冷媒が多くなる。また、第2電磁調整弁29の開度が大きくなるほどチラー流路2cに流入する冷媒が多くなり、よってチラー27に流入する冷媒が多くなる。なお、冷凍基本流路2aからエバポレータ流路2b及びチラー流路2cへ流入する流量を調整することができれば、これら電磁調整弁28、29の代わりに如何なる弁が設けられてもよい。
【0027】
なお、本実施形態では、冷凍回路2は、冷凍回路2内の冷媒から外部へ熱を放出する熱交換器として、コンデンサ22を有する。しかしながら、冷凍回路2は、冷媒から外部(例えば、外気)へ熱を放出する他の熱交換器を有していてもよい。
【0028】
≪低温回路≫
次に、低温回路3について説明する。低温回路3は、第1ポンプ31、第2ポンプ32、チラー27の冷却水配管27b、低温ラジエータ33、五方弁34を備える。加えて、低温回路3は、バッテリ熱交換器35、PCU熱交換器36及びMG熱交換器37を備える。低温回路3では、これら構成部品を通って冷却水が循環する。なお、低温回路3内を流れる冷却水は第1熱媒体の一例であり、低温回路3内では、冷却水の代わりに任意の他の熱媒体が用いられてもよい。
【0029】
低温回路3は、低温ラジエータ流路3aと、循環流路3bと、発熱機器流路3cと、バッテリ流路3dと、チラー流路3eと、を有する。低温ラジエータ流路3a、循環流路3b、発熱機器流路3c、バッテリ流路3d及びチラー流路3eは、互いに並列になるように、その一端が五方弁34に接続されている。また、低温ラジエータ流路3a、循環流路3b、バッテリ流路3d及びチラー流路3eは、その他端が互いに接続されている。発熱機器流路3cの他端は、循環流路3bに接続されている。
【0030】
低温ラジエータ流路3aには、低温ラジエータ33が設けられる。発熱機器流路3cには、冷却水の循環方向において、PCU熱交換器36、第1ポンプ31及びMG熱交換器37がこの順番に設けられる。発熱機器流路3cには、PCU112やMG110以外の発熱機器と熱交換する熱交換器が設けられてもよい。バッテリ流路3dには、バッテリ熱交換器35が設けられる。また、チラー流路3eには、冷却水の循環方向において、第2ポンプ32及びチラー27の冷却水配管27bがこの順番に設けられる。
【0031】
第1ポンプ31及び第2ポンプ32は、低温回路3内を循環する冷却水を圧送する。したがって、第1ポンプ31及び第2ポンプ32は、低温回路3内を流れる冷却水の流量を変化させることができる。よって、第1ポンプ31及び第2ポンプ32は、低温回路3に関する吸熱量変化機器の一例である。本実施形態では、第1ポンプ31及び第2ポンプ32は、電動式のウォータポンプであり、第1ポンプ31及び第2ポンプ32への供給電力又はディーティー比が調整されることによりその吐出容量が無段階に変化せしめられるように構成される。
【0032】
低温ラジエータ33は、低温回路3内を循環する冷却水と車両100の外部の空気(外気)との間で熱交換を行う熱交換器であり、よって冷却水から外部に放熱させるか又は外部から冷却水に吸熱させる外部熱交換器の一例である。低温ラジエータ33は、冷却水の温度が外気の温度よりも高いときには冷却水から外気への放熱を行い、冷却水の温度が外気の温度よりも低いときには外気から冷却水への吸熱を行うように構成される。
【0033】
五方弁34は、低温回路3内を循環する冷却水の流通態様を制御する。五方弁34は、低温ラジエータ流路3aと、循環流路3bと、発熱機器流路3cと、バッテリ流路3dと、チラー流路3eとに接続される。そして、五方弁34は、これら流路同士を任意の組み合わせにて接続する。本実施形態では、五方弁34は、第1状態から第4状態を含む複数の接続状態に設定することができるように構成される。第1状態は、循環流路3bと発熱機器流路3cが接続され且つバッテリ流路3dとチラー流路3eとが接続されると共にそれ以外の流路同士は接続されていない接続状態である。第2状態は、低温ラジエータ流路3aとチラー流路3eとが接続され且つ循環流路3bと発熱機器流路3cとが接続されると共にそれ以外の流路同士は接続されていない接続状態である。第3状態は、低温ラジエータ流路3aと発熱機器流路3cが接続され且つバッテリ流路3dとチラー流路3eとが接続されると共にそれ以外の流路同士は接続されていない接続状態である。第4状態は、低温ラジエータ流路3a、循環流路3b、発熱機器流路3c及びチラー流路3eが互いに接続されると共に、バッテリ流路3dは他の流路に接続されていない接続状態である。なお、本実施形態では、五方弁34が用いられているが、低温回路3の接続状態を第1状態から第4状態に設定することができれば、2つの三方弁を用いるなど、五方弁以外の流通態様制御装置が設けられてもよい。
【0034】
バッテリ熱交換器35は、外部から冷却水に吸熱させる外部熱交換器の一例であり、また、低温回路3に関する吸熱量変化機器の一例である。特に、バッテリ熱交換器35は、発熱機器(外部の熱源)である車両100のバッテリと冷却水との間で熱交換するように構成される。具体的には、バッテリ熱交換器35は、例えば、バッテリの周りに設けられた配管を備え、この配管を流れる冷却水とバッテリとの間で熱交換が行われるように構成される。
【0035】
また、PCU熱交換器36は、外部から冷却水に吸熱させる外部熱交換器の一例であり、また、低温回路3に関する吸熱量変化機器の一例である。特に、PCU熱交換器36は、発熱機器(外部の熱源)である車両100のPCU112と冷却水との間で熱交換するように構成される。具体的には、PCU熱交換器36は、PCU112の周りに設けられた配管を備え、この配管を流れる冷却水とバッテリとの間で熱交換が行われるように構成される。
【0036】
MG熱交換器37は、外部から冷却水に吸熱させる外部熱交換器の一例であり、また、低温回路3に関する吸熱量変化機器の一例である。特に、MG熱交換器37は、発熱機器(外部の熱源)である車両100のMG110(又はモータ)と冷却水との間で熱交換する発熱機器用の熱交換器として機能する。具体的には、MG熱交換器37は、MG110の周り及び冷却水の周りに設けられた配管と、これら配管内を流れるオイル(第3熱媒体)と、このオイルを配管内で循環させるオイルポンプと、を有する。MG熱交換器37では、オイルポンプが駆動されてこの配管内をオイルが流れることにより、MG110と冷却水との間で熱交換が行われる。したがって、オイルポンプは、オイルを介してMG110と低温回路3の冷却水との間で熱交換するように構成される。この結果、オイルポンプは、MG熱交換器37における吸熱量を変化させることができる。また、オイルポンプは、低温回路3に関する吸熱量変化機器の一例である。
【0037】
≪高温回路≫
次に、高温回路4について説明する。高温回路4は、第3ポンプ41、コンデンサ22の冷却水配管22b、高温ラジエータ42、三方弁43及びヒータコア44を備える。高温回路4でもこれら構成部品を通って冷却水が循環する。なお、この冷却水は第2熱媒体の一例であり、高温回路4内では、冷却水の代わりに任意の他の熱媒体が用いられてもよい。
【0038】
また、高温回路4は、高温基本流路4aと、高温ラジエータ流路4bと、ヒータ流路4cとを有する。高温ラジエータ流路4bとヒータ流路4cとは、互いに並列に高温基本流路4aに接続されている。
【0039】
高温基本流路4aには、冷却水の循環方向において、第3ポンプ41、コンデンサ22の冷却水配管22bがこの順番に設けられる。高温ラジエータ流路4bには高温ラジエータ42が設けられ、ヒータ流路4cにはヒータコア44が設けられる。高温基本流路4aと高温ラジエータ流路4b及びヒータ流路4cとの間には三方弁43が設けられる。
【0040】
第3ポンプ41は、高温回路4内を循環する冷却水を圧送する。本実施形態では、第3ポンプ41は、第1ポンプ31及び第2ポンプ32と同様な、電動式のウォータポンプである。また、高温ラジエータ42は、低温ラジエータ33と同様に、高温回路4内を循環する冷却水と外気との間で熱交換を行う熱交換器である。
【0041】
三方弁43は、コンデンサ22の冷却水配管22bから流出した冷却水の流通態様を制御する。三方弁43は、高温ラジエータ流路4bとヒータ流路4cとの間で選択的に流通先を変更することができるように構成される。三方弁43が、高温ラジエータ流路4b側に設定されていると、コンデンサ22の冷却水配管22bから流出した冷却水は高温ラジエータ流路4bを流れる。一方、三方弁43が、ヒータ流路4c側に設定されていると、コンデンサ22の冷却水配管22bから流出した冷却水はヒータコア44を流れる。なお、高温ラジエータ流路4b及びヒータ流路4cに流入する冷却水の流量を適切に調整することができれば、三方弁43の代わりに、調整弁や開閉弁等の他の流通態様制御装置が用いられてもよい。
【0042】
ヒータコア44は、高温回路4内を循環する冷却水とヒータコア44周りの空気との間で熱交換を行って、車両100の室内の暖房を行うように構成される。具体的には、ヒータコア44は、冷却水からヒータコア44周りの空気へ排熱するように構成される。したがって、ヒータコア44に高温の冷却水が流れると、冷却水の温度が低下すると共に、ヒータコア44周りの空気が暖められる。
【0043】
なお、本実施形態に係る高温回路4には、高温回路4内の冷却水を加熱する電気ヒータは設けられていない。したがって、高温回路4内の冷却水は、基本的に、コンデンサ22において冷媒から移動される熱によって加熱される。
【0044】
また、低温ラジエータ33及び高温ラジエータ42は、
図1に示されるように、車両100のフロントグリルの内側に、配置される。したがって、車両100が走行しているときにはこれらラジエータ33、42には走行風が当たる。また、これらラジエータ33、42に隣接してファン76が設けられる。ファン76は駆動されるとラジエータ33、42に風が当たるように構成される。したがって、車両100が走行していないときでも、ファン76を駆動することにより、ラジエータ33、42に風を当てることができる。
【0045】
≪空気通路≫
図3は、車載温調システム1を搭載した車両100の空調用の空気通路6を概略的に示す構成図である。空気通路6では、図中に矢印で示した方向に空気が流れる。
図3に示される空気通路6は、車両100の外部又は室内の空気吸い込み口に接続されており、空気通路6には制御装置5による制御状態に応じて外気又は室内の空気が流入する。また、
図3に示される空気通路6は車両100の室内へ空気を吹き出す吹き出し口に接続されており、空気通路6からは制御装置5による制御状態に応じてこのうち任意の吹き出し口に空気が供給される。
【0046】
図3に示されるように、本実施形態の空調用の空気通路6には、空気の流れ方向において、ブロワ71と、エバポレータ26と、エアミックスドア72と、ヒータコア44とがこの順番に設けられる。
【0047】
ブロワ71は、ブロワモータ71aとブロワファン71bとを備える。ブロワ71は、ブロワモータ71aによってブロワファン71bが駆動されると、外気又は室内の空気が空気通路6に流入して、空気通路6を通って空気が流れるように構成される。
【0048】
エアミックスドア72は、空気通路6を流れる空気のうち、ヒータコア44を流れる空気の流量を調整する。エアミックスドア72は、空気通路6を流れる全ての空気がヒータコア44を流れる状態と、空気通路6を流れる全ての空気がヒータコア44を流れない状態と、その間の状態との間で調整することができるように構成される。
【0049】
このように構成された空気通路6では、ブロワ71が駆動されているときに、エバポレータ26に冷媒が流されている場合には、空気通路6を流れる空気が冷却される。したがって、室内の冷房が行われる。また、ブロワ71が駆動されているときに、ヒータコア44に冷却水が流されていて且つ空気がヒータコア44を流れるようにエアミックスドア72が制御されている場合には、空気通路6内を流れる空気が暖められる。したがって、室内の暖房が行われる。
【0050】
≪制御装置≫
図2を参照すると、制御装置5は、電子制御ユニット(ECU)51を備える。ECU51は、各種演算を行うプロセッサと、プログラムや各種情報を記憶するメモリと、各種アクチュエータや各種センサと接続されるインタフェースとを備える。
【0051】
また、制御装置5は、バッテリ熱交換器35を流れる冷却水の温度を検出するバッテリ水温センサ(温度検出器)52と、PCU熱交換器36を流れる冷却水の温度を検出するPCU水温センサ(温度検出器)53と、低温ラジエータ33を流れる冷却水の温度を検出するラジエータ水温センサ(温度検出器)54と、チラー27を流れる冷却水の温度を検出するチラー水温センサ55(温度検出器)と、を備える。加えて、制御装置5は、チラー27を流れる冷媒の温度及び圧力を検出する温度・圧力センサ56と、ヒータコア44を流れる冷却水の温度を検出するヒータコア水温センサ57と、空気通路6から室内へ流出する空気の温度を検出する吹出し温度センサ58(
図3)と、を備える。更に、制御装置5は、車両100の室内の温度を検出する室内温度センサ61と、車両100の室外の温度を検出する外気温度センサ62と、ユーザによって操作される操作パネル63と、バッテリ114の温度を検出するバッテリ温度センサ64(
図1)と、を備える。ECU51はこれらセンサ及び操作パネル63に接続され、ECU51にはこれらセンサ及び操作パネル63からの出力信号が入力される。
【0052】
ECU51は、例えば、室内温度センサ61、外気温度センサ62及び操作パネル63からの出力信号に基づいて冷房要求及び暖房要求の有無を判断する。例えば、ユーザが操作パネル63の暖房スイッチをONにしている場合には、ECU51は暖房が要求されていると判断する。また、ユーザが操作パネル63のオートスイッチをONにしている場合には、例えば、ユーザによって設定されている目標室内温度が室内温度センサ61によって検出された温度よりも高いときにECU51は暖房が要求されていると判断する。加えて、ECU51は、例えば、バッテリ温度センサ64の出力に基づいてバッテリ114の冷却要求の有無を判断する。例えば、ECU51は、バッテリ114の温度が冷却基準温度以上である場合にはバッテリ114の冷却が要求されていると判定する。
【0053】
また、ECU51は、車載温調システム1の各種アクチュエータに接続されて、これらアクチュエータを制御する。具体的には、ECU51は、コンプレッサ21、電磁調整弁28、29、ポンプ31、32、41、MG熱交換器37のオイルポンプ、五方弁34、三方弁43、ブロワモータ71a、エアミックスドア72及びファン76に接続されて、これらを制御する。したがって、ECU51は、冷凍回路2、低温回路3、高温回路4における熱媒体(冷媒及び冷却水)に関する機器を制御する制御装置として機能する。
【0054】
<車載温調システムにおける流通態様>
次に、
図4~
図8を参照して、車載温調システム1における、熱媒体(冷媒及び冷却水)の代表的な流通態様について説明する。
図4~
図8では、冷媒や冷却水が流れている流路が実線で、冷媒や冷却水が流れていない流路が破線でそれぞれ示されている。また、図中の細い矢印は冷媒や冷却水が流れる方向を、図中の太い矢印は熱の移動方向をそれぞれ示している。なお、本実施形態では、PCU112及びMG110の冷却要求は常にあり、よってPCU熱交換器36及びMG熱交換器37には熱媒体の流通態様にかかわらず常に冷却水が循環している。
【0055】
≪停止モード≫
まず、
図4及び
図5を参照して、冷房要求及び暖房要求のどちらもない場合の熱媒体の流通態様(停止モード)について説明する。
図4は、冷房要求及び暖房要求のどちらもなく且つバッテリ114の冷却要求もない場合における熱媒体の流通態様(第1停止モード)を概略的に示す図である。したがって、第1停止モードでは、PCU112及びMG110の冷却が行われると共に、バッテリ114の冷却は行われない。
【0056】
図4に示されるように、第1停止モードでは、低温回路3の第1ポンプ31が作動されると共に第2ポンプ32は停止される。加えて、第1停止モードでは、五方弁34は、循環流路3bと発熱機器流路3cとが接続された第1状態に設定される。この結果、低温回路3では、冷却水が、PCU熱交換器36及びMG熱交換器37を通って循環する。一方、第1停止モードでは、コンプレッサ21及び第3ポンプ41が停止される。したがって、冷凍回路2では冷媒は循環せず、また、高温回路4でも冷却水は循環しない。
【0057】
この結果、第1停止モードでは、PCU熱交換器36においてPCU112から冷却水に熱が吸収され、MG熱交換器37においてMG110から冷却水に熱が吸収される。そして、冷却水に吸収された熱は、低温回路3を循環している間に外気へ放出される。したがって、第1停止モードでは、PCU112及びMG110から熱が吸収され、低温回路3においてその熱が放出される。なお、第1停止モードにおいて、五方弁34は、低温ラジエータ流路3aと発熱機器流路3cとが接続された第3状態に設定されてもよい(
図5参照)。
【0058】
図5は、冷房要求及び暖房要求のどちらもなく且つバッテリ114の冷却要求がある場合における熱媒体の流通態様(第2停止モード)を概略的に示す図である。したがって、第2停止モードでは、PCU112、MG110及びバッテリ114の冷却が行われる。
【0059】
図5に示されるように、第2停止モードでは、低温回路3の第1ポンプ31及び第2ポンプ32が作動される。加えて、第1停止モードでは、五方弁34が、低温ラジエータ流路3aと発熱機器流路3cとが接続されると共にバッテリ流路3dとチラー流路3eとが接続される第3状態に設定される。この結果、低温回路3では、冷却水が、PCU熱交換器36、MG熱交換器37及び低温ラジエータ33を通って循環する。加えて、低温回路3内の別の冷却水が、バッテリ熱交換器35及びチラー27を通って循環する。
【0060】
加えて、第2停止モードでは、冷凍回路2のコンプレッサ21が作動されると共に、第1電磁調整弁28が閉じられ、第2電磁調整弁29が開かれる。したがって、冷凍回路2では、冷媒が、エバポレータ26を通らずに、チラー27及びコンデンサ22を通って循環する。さらに、第2停止モードでは、高温回路4の第3ポンプ41が作動されると共に、三方弁43は、冷却水がヒータコア44を通らずに高温ラジエータ42を流れるように設定される。
【0061】
この結果、第2停止モードでは、PCU熱交換器36及びMG熱交換器37においてPCU112及びMG110から冷却水に熱が吸収されると共に、低温ラジエータ33においてその熱が放出される。加えて、第2停止モードでは、バッテリ熱交換器35においてバッテリ114から熱が吸収されると共に、チラー27において低温回路3の冷却水から冷凍回路2の冷媒へ熱が移動する。さらに、第2停止モードでは、コンデンサ22において、冷凍回路2の冷媒から高温回路4の冷却水へ熱が移動し、その熱が高温ラジエータ42において外気へ放出される。したがって、第2停止モードでは、PCU112及びMG110から熱が吸収されて低温ラジエータ33においてその熱が放出される。加えて、バッテリ熱交換器35においてバッテリ114から熱が吸収されて高温ラジエータ42においてその熱が放出される。なお、第2停止モードにおいて、五方弁34は、循環流路3bと発熱機器流路3cとが接続された第1状態に設定されてもよい(
図4参照)。
【0062】
≪冷房モード≫
次に、
図6を参照して、冷房要求がある場合の熱媒体の流通態様(冷房モード)について説明する。
図6は、冷房要求があり且つバッテリ114の冷却要求はない場合における熱媒体の流通態様(冷房モード)を概略的に示す図である。したがって、
図6に示される冷房モードでは、冷房が行われると共に、PCU112及びMG110の冷却が行われる。
【0063】
図6に示されるように、冷房モードでは、低温回路3の第1ポンプ31が作動されると共に第2ポンプ32は停止される。加えて、冷房モードでは、五方弁34は、循環流路3bと発熱機器流路3cとが接続された第1状態に設定される。この結果、低温回路3では、冷却水が、PCU熱交換器36及びMG熱交換器37を通って循環する。
【0064】
加えて、冷房モードでは、冷凍回路2のコンプレッサ21が作動されると共に、第1電磁調整弁28が開かれ、第2電磁調整弁29が閉じられる。したがって、冷凍回路2では、冷媒が、チラー27を通らずに、エバポレータ26及びコンデンサ22を通って循環する。さらに、冷房モードでは、高温回路4の第3ポンプ41が作動されると共に、三方弁43は、冷却水がヒータコア44を通らずに高温ラジエータ42を流れるように設定されている。
【0065】
この結果、冷房モードでは、PCU112及びMG110から熱が吸収され、低温回路3においてその熱が放出される。加えて、冷房モードでは、エバポレータ26において周囲の空気から冷媒へ熱が吸収され、コンデンサ22にて冷媒から高温回路4の冷却水へ熱が移動される。そして、高温回路4では、コンデンサ22において冷却水に吸収された熱が高温ラジエータ42において放出される。したがって、冷房モードでは、エバポレータ26において空気通路6を流れる周囲の空気から熱が吸収されて車両100の室内の冷房が行われ、高温ラジエータ42においてその熱が放出される。
【0066】
なお、バッテリ114の冷却要求がある場合、冷房モードでは、第2ポンプ32が駆動されて
図5に示される例と同様にチラー27とバッテリ熱交換器35との間で冷却水が循環されてもよい。この場合、第1電磁調整弁28に加えて第2電磁調整弁29も開かれ、これによって冷媒の一部はチラー27を通って循環する。
【0067】
≪暖房モード≫
次に、
図7及び
図8を参照して、暖房要求がある場合の熱媒体に流通態様(暖房モード)について説明する。
図7は、暖房要求があり且つバッテリ114の冷却要求がある場合における熱媒体の流通態様(第1暖房モード)を概略的に示す図である。したがって、第1暖房モードでは、暖房が行われると共に、PCU112、MG110及びバッテリ114の冷却が行われる。
【0068】
図7に示されるように、第1暖房モードでは、低温回路3の第1ポンプ31及び第2ポンプ32が作動される。加えて、第1暖房モードでは、五方弁34が、循環流路3bと発熱機器流路3cとが接続されると共にバッテリ流路3dとチラー流路3eとが接続される第1状態に設定される。この結果、低温回路3では、冷却水が、PCU熱交換器36及びMG熱交換器37を通って循環する。加えて、低温回路3内の別の冷却水が、バッテリ熱交換器35及びチラー27を通って循環する。
【0069】
加えて、第1暖房モードでは、冷凍回路2のコンプレッサ21が作動されると共に、第1電磁調整弁28が閉じられ、第2電磁調整弁29が開かれる。したがって、冷凍回路2では、冷媒が、エバポレータ26を通らずに、チラー27及びコンデンサ22を通って循環する。さらに、第1暖房モードでは、高温回路4の第3ポンプ41が作動されると共に、三方弁43は、冷却水が高温ラジエータ42を通らずにヒータコア44を流れるように設定される。
【0070】
この結果、第1暖房モードでは、PCU112及びMG110から熱が吸収され、低温回路3においてその熱が放出される。加えて、第1暖房モードでは、バッテリ熱交換器35においてバッテリ114から熱が吸収されると共に、チラー27において低温回路3の冷却水から冷凍回路2の冷媒へ熱が移動する。さらに、第1暖房モードでは、コンデンサ22において、冷凍回路2の冷媒から高温回路4の冷却水へ熱が移動し、その熱がヒータコア44において周囲の空気へ放出される。したがって、第1暖房モードでは、バッテリ熱交換器35においてバッテリ114から熱が吸収され、ヒータコア44において空気通路6を流れる周囲の空気へその熱が放出されて、車両100の室内の暖房が行われる。なお、本実施形態では、このとき、エアミックスドア72は全ての空気がヒータコア44を流れるように配置される。
【0071】
図8は、暖房要求があり且つバッテリ114の冷房要求がない場合における熱媒体の流通態様(第2暖房モード)を概略的に示す図である。したがって、第1暖房モードでは、暖房が行われると共に、PCU112及びMG110の冷却が行われる。
【0072】
図8に示されるように、第2暖房モードは、第1暖房モードに対して、低温回路3の五方弁34の接続状態のみが異なっている。第2暖房モードでは、五方弁34は、低温ラジエータ流路3aとチラー流路3eとが接続されると共に循環流路3bと発熱機器流路3cとが接続された第2状態に設定される。この結果、第2暖房モードでは、PCU熱交換器36及びMG熱交換器37においてPCU112及びMG110から冷却水に熱が吸収される。加えて、第2暖房モードでは、低温ラジエータ33において外気から低温回路3の冷却水へ熱が吸収されると共に、チラー27においてその熱が冷却水から冷凍回路2の冷媒へ移動し、最終的にその熱はヒータコア44において周囲の空気へ放出される。したがって、第2暖房モードでは、低温ラジエータ33において外気から熱が吸収され、ヒータコア44において空気通路6を流れる周囲の空気へその熱が放出されて、車両100の室内の暖房が行われる。なお、本実施形態では、このとき、エアミックスドア72は全ての空気がヒータコア44を流れるように配置される。
【0073】
<コンプレッサ及び膨張弁の制御>
次に、
図9を参照して、暖房モードにおけるコンプレッサ21及び第2膨張弁25の制御について簡単に説明する。本実施形態では、コンプレッサ21の目標吐出流量(目標出力)は、空気通路6から室内へ流出する空気の温度(以下、「吹き出し温度」ともいう)又はヒータコア44を流れる冷却水の温度(以下、「ヒータ温度」ともいう)が目標温度になるようにフィードバック制御される。一方、第2膨張弁25の開度は、チラー27から流出した冷媒の過熱度が目標過熱度になるようにフィードバック制御される。
【0074】
図9は、暖房モードにおけるコンプレッサ21及び第2膨張弁25を制御するための処理の流れを示すフローチャートである。
図9に示されるフローチャートは一定の時間間隔毎にECU51において実行される。
【0075】
図9に示されるように、まず、ECU51は、暖房要求が有るか否かを判定する(ステップS11)。本実施形態では、ECU51は、室内温度センサ61、外気温度センサ62及び操作パネル63からの出力信号に基づいて暖房要求の有無を判定する。ステップS11において暖房要求が無いと判定された場合には、処理が終了される。
【0076】
一方、ステップS11において暖房要求があると判定された場合には、ECU51は、目標吹き出し温度と実際の吹き出し温度との偏差、又は目標ヒータ温度と実際のヒータ温度との偏差を算出する(ステップS12)。目標吹き出し温度及び目標ヒータ温度は、室内温度センサ61及び操作パネル63からの出力信号に基づいて算出される。また、実際の吹き出し温度は、例えば、吹き出し温度センサ58によって検出され、実際のヒータ温度は、例えば、ヒータコア水温センサ57によって検出される。
【0077】
その後、ECU51は、チラー27から流出した冷媒の目標過熱度と実際の過熱度との偏差を算出する(ステップS13)。目標過熱度は、一定値であってもよいし、目標吹き出し温度、目標ヒータ温度、チラー水温センサ55によって検出された冷却水の温度等に基づいて設定されてもよい。実際の過熱度は、例えば、チラー27から流出する冷媒の温度及び圧力を検出する温度・圧力センサ56の出力に基づいて算出される。
【0078】
次いで、ECU51は、ステップS12において算出された温度の偏差(吹き出し温度の偏差又はヒータ温度の偏差)に基づいて、この偏差がゼロになるようにコンプレッサ21の目標吐出流量を算出する(ステップS14)。そして、ECU51は、コンプレッサ21の吐出流量が、算出された目標吐出流量になるようにコンプレッサ21を制御する。
【0079】
次いで、ECU51は、ステップS14において算出された過熱度の偏差に基づいて、この偏差がゼロになるように第2膨張弁25の目標膨張弁開度を算出する(ステップS15)。そして、ECU51は、第2膨張弁25の開度が目標膨張弁開度になるように、第2膨張弁25を制御する。
【0080】
<五方弁切り替え時の吹き出し温度の変化>
ところで、上述したようにコンプレッサ21の吐出流量や第2膨張弁25の開度をフィードバック制御すると、暖房中に五方弁34の接続状態を切り替えたときなどに、車両100の室内への吹き出し温度が大きく変化してしまう場合がある。特に、五方弁34の接続状態が、バッテリ熱交換器35等の発熱機器との熱交換器を通って流れてきた冷却水がチラー27に流入する状態と、発熱機器との熱交換器を通らずに低温ラジエータ33を通って流れてきた冷却水がチラー27に流入する状態と、の間で切り替えられたときに、吹き出し温度の変化が生じやすい。
【0081】
この様子を、
図10を用いて説明する。
図10は、五方弁34の接続状態、チラー27を流れる冷却水の温度、チラー27を流れる冷却水の流量、チラー27における冷却水から冷媒への吸熱量、車両100の室内への吹き出し温度、コンプレッサ21の吐出流量(出力)及びチラー27から流出した冷媒の過熱度のタイムチャートである。
図10に示される例では、時刻t
1において、車載温調システム1の作動モードが、第1暖房モードから第2暖房モードに切り替えられた場合を示している。すなわち、
図10に示される例では、時刻t
1において、五方弁34の接続状態が第1状態(
図7)から第2状態(
図8)に切り替えられる。
【0082】
図10に示されるように、五方弁34の接続状態が第1状態から第2状態に切り替えられると、チラー27を流れる冷却水の温度が低下する。これは、第1状態ではチラー27にバッテリ熱交換器35を通った比較的高温の冷却水が流入するのに対して、第2状態では、チラー27に低温ラジエータ33を通った比較的低温の冷却水が流入するためである。このように冷却水の温度が低下すると、それに伴ってチラー27における冷却水から冷媒への吸熱量が低下する。その結果、コンデンサ22における冷媒から冷却水への吸熱量が低下し、ヒータコア44を流れる冷却水の温度が低下し、よって
図10に示されるように車両100の室内への吹き出し温度が低下する。このように車両100の室内への吹き出し温度が低下すると、フィードバック制御によりコンプレッサ21の吐出流量が増大され、コンデンサ22における冷媒の温度が高くなり、コンデンサ22における冷却水から冷媒への吸熱量が増大し、その結果、車両100の室内への吹き出し温度が上昇する。
【0083】
ここで、吹き出し温度又はヒータ温度に基づいてフィードバック制御されているため、コンプレッサ21の吐出流量は吹き出し温度又はヒータ温度が低下したときに増大される。このため、コンプレッサ21の吐出流量はチラー27を流れる冷却水の温度が低下してから遅れて増大され、
図10に示されるように、車両100の室内への吹き出し温度が一時的に低下する。この結果、車両100の乗員の空調快適性が悪化する可能性がある。
【0084】
また、チラー27を流れる冷却水の温度が急激に低下することにより、冷媒の温度も急激に低下する。このように冷媒の温度が急激に低下することにより、第2膨張弁25の開度のフィードバック制御に遅れが生じる。この結果、
図10に示されるように、チラー27から流出した冷媒の過熱度が目標過熱度から大きく変化する。このようにチラー27から流出した冷媒の過熱度が目標過熱度から大きく変化すると、コンプレッサ21に流入する冷媒に液相の冷媒が混入する可能性があり、コンプレッサ21の耐久性の低下を招く。
【0085】
また、
図10に示される例とは逆に五方弁34の接続状態が第2状態から第1状態に切り替えられた場合、車両100の室内への吹き出し温度が一時的に上昇する。したがって、このような場合にも、車両100の乗員の空調快適性が悪化する可能性がある。また、この場合には、チラー27から流出した冷媒の過熱度が一時的に上昇し、コンプレッサ21等に流れる冷媒の圧力が上昇し、この結果、コンプレッサ21を含む冷凍回路2の耐久性の低下を招く。
【0086】
<暖房時における温調制御>
そこで、本実施形態では、制御装置5は、車両100の室内の暖房中に、チラー27を流れる冷却水の温度が予め定められた基準値以上変化した場合には、冷却水の温度の変化に伴うチラー27における冷媒の吸熱量の変化が小さくなる方向に、第2ポンプ32の吐出流量を制御する。特に、本実施形態では、斯かる冷却水の温度が基準値以上変化した場合に、この温度の変化に伴ってヒータコア44に流入する冷却水の温度が変化する前に、第2ポンプ32の制御が開始される。
【0087】
具体的には、本実施形態では、チラー27を流れる冷却水の温度が単位時間あたりに基準値以上上昇した場合には、チラー27において熱交換がされにくくなるように、第2ポンプ32の吐出流量が減少される。逆に、チラー27を流れる冷却水の温度が単位時間当たりに基準値以上低下した場合には、チラー27において熱交換がされ易くなるように、第2ポンプ32の吐出流量が増大される。
【0088】
図11は、五方弁34の接続状態等の、
図10と同様なタイムチャートである。図中の破線は、本実施形態に係る温調制御を行わなかった場合(
図10と同様)の各パラメータの推移を示している。
図11に示した例では、時刻t
1前においては、第2ポンプ32の吐出流量は通常通りに制御されている。具体的には、第2ポンプ32の吐出流量は、予め定められた一定値に制御されるか、又は例えばバッテリ温度センサ64によって検出されたバッテリ114の温度等に基づいて変更される。
【0089】
図11に示されるように、五方弁34の接続状態が第1状態(
図7)から第2状態(
図8)に切り替えられると、チラー27を流れる冷却水の温度が低下し、その結果、チラー27における冷却水から冷媒への吸熱量が低下する。
【0090】
チラー27を流れる冷却水の温度が低下して時刻t2において単位時間当たりの冷却水の温度の変化量が基準値以上になると、チラー27における冷媒の吸熱量の変化が小さくなる方向に、第2ポンプ32が制御される。具体的には、第2ポンプ32は、チラー27を流れる冷却水の流量が多くなるように制御される。この結果、チラー27において熱交換がされやすくなり、吸熱量の低下が抑制される。また、チラー27における吸熱量の低下が抑制されることによって冷凍回路2の冷媒の温度の低下が抑制され、結果的に、チラー27から流出した冷媒の過熱度の低下が抑制される。加えて、チラー27における吸熱量の低下が抑制されることによって、高温回路4の冷却水の温度の低下が抑制され、結果的に、車両100の室内への吹き出し温度の低下が抑制される。
【0091】
その後、チラー27を流れる冷却水の温度の単位時間当たりの変化量が基準値以下になると、チラー27を流れる冷却水の流量を多くするような第2ポンプ32の制御は終了される。したがって、第2ポンプ32の吐出流量は通常通りに制御される。
【0092】
上述したように、本実施形態によれば、チラー27を流れる冷却水の温度の変化量が基準値以上になると、チラー27における冷媒の吸熱量の変化が小さくなる方向に、第2ポンプ32が制御される。この結果、車両100の室内への吹き出し温度の変化を抑制することができ、よって車両100の乗員の空調快適性の悪化を抑制することができる。また、チラー27から流出した冷媒の過熱度の変化を抑制することができ、よってコンプレッサ21を含む冷凍回路2の耐久性の低下が抑制される。
【0093】
図12は、暖房時における第2ポンプ32を制御するための処理のフローチャートである。
図12に示される処理は、ECU51により一定時間間隔毎に実行される。
【0094】
まず、ECU51は、チラー27を流れる冷却水の温度の単位時間当たりの変化量ΔTwを算出する(ステップS21)。変化量ΔTwの算出は、チラー27を流れる冷却水の温度を検出するチラー水温センサ55の出力に基づいて行われる。
【0095】
次いで、ECU51は、ステップS21で算出された冷却水の温度の変化量ΔTwが、第1基準値Twref1以上であるか否かを判定する(ステップS22)。第1基準値Twref1は、例えば、予め定められた一定値である。或いは、第1基準値Twref1は、低温回路3の冷却水の温度等に基づいて変化する値であってもよい。いずれにせよ、第1基準値Twref1は、低温回路3の冷却水の温度の変化に伴ってヒータコア44に流入する冷却水の温度が変化する前(すなわち、吹き出し温度が変化する前)に冷却水の温度の変化量ΔTwが第1基準値Twref1以上であると判定されるような値に設定される。ステップS22において冷却水の温度の変化量ΔTwが第1基準値Twref1未満であると判定された場合には、ECU51は、第2ポンプ32の目標吐出流量を、基準吐出流量に設定する(ステップS23)。基準吐出流量は通常時に設定される吐出流量であり、予め定められた一定値であるか又はバッテリ114の温度等に基づいて設定される。
【0096】
一方、ステップS22において冷却水の温度の変化量ΔTwが第1基準値Twref1以上であると判定された場合には、ECU51は、基準吐出流量に対して変更させる吐出流量である変更流量を算出する(ステップS24)。変更流量は、例えば、ステップS21において算出された冷却水の温度の変化量ΔTwに応じて設定される。冷却水の温度の変化量ΔTwが正の値である場合(水温が上昇している場合)には変更流量は負の値に設定され、冷却水の温度の変化量ΔTwが負の値である場合には変更流量は正の値に設定される。また、変更流量は、冷却水の温度の変化量ΔTwの絶対値が大きいほど、その絶対値が大きくなるように設定される。
【0097】
次いで、ECU51は、基準吐出流量にステップS24において算出された変更流量を加算した流量を、目標吐出流量として算出する(ステップS25)。変更流量が正の値である場合には、目標吐出流量は基準吐出流量よりも多くなり、変更流量が負の値である場合には、目標吐出流量は基準吐出流量よりも少なくなる。
【0098】
<変形例>
次に、
図13及び
図14を参照して、第1実施形態の変形例について説明する。上記第一実施形態では、第2暖房モードにおいて、五方弁34は第2状態に設定されているが、本変形例では、第4状態に設定される。
【0099】
図13は、変形例に係る第2暖房モードにおける熱媒体の流通態様を概略的に示す図である。
図13に示される流通態様では、
図12に示される流通態様と比較して、五方弁34の接続状態が異なっている。変形例に係る第2暖房モードでは、
図13に示されるように、五方弁34から低温ラジエータ33を流出した冷却水がチラー27に流入して再び五方弁34に戻る。また、五方弁34から循環流路3bに流出した冷却水の一部もチラー27に流入して再び五方弁34に戻る。加えて、五方弁34から循環流路3bに流出した冷却水の残りは、発熱機器流路3cを通って再び五方弁34に戻る。したがって、変形例に係る第2暖房モードでは、低温ラジエータ33、PCU熱交換器36及びMG熱交換器37を通って流れた冷却水がチラー27に流入する。
【0100】
そして、本変形例では、チラー27を流れる冷却水の温度が予め定められた基準値以上変化した場合には、冷却水の変化に伴うチラー27における冷媒の吸熱量の変化が小さくなる方向に、第2ポンプ32に加えて、MG熱交換器37のオイルポンプが制御される。
【0101】
具体的には、チラー27を流れる冷却水の温度が単位時間あたりに基準値以上上昇した場合には、冷却水の温度を低くすべく、オイルの流量が少なくなるようにオイルポンプの吐出流量が減少される。一方、チラー27を流れる冷却水の温度が単位時間当たりに基準値以上低下した場合には、冷却水の温度を上昇させるべく、オイルの流量が多くなるようにオイルポンプの吐出流量が増大される。
【0102】
図14は、五方弁34の接続状態等の、
図11と同様なタイムチャートである。
図14では、
図11のタイムチャートに対して、MG熱交換器37を流れるオイル流量の推移が加えられている。
図14から分かるように、チラー27を流れる冷却水の温度が低下して時刻t
2において単位時間当たりの冷却水の温度の変化量が基準値以上になると、冷却水の温度を上昇させるべく、オイルの流量が多くなるようにオイルポンプが制御される。
【0103】
このように、本変形例では、チラー27を流れる冷却水の温度の変化量が基準値以上になると、チラー27を流れる冷却水の流量に加えて、チラー27における冷媒の吸熱量の変化が小さくなる方向に、オイルポンプの吐出流量が制御される。この結果、車両100の室内への吹き出し温度の変化をより抑制することができ、よって車両100の乗員の空調快適性の悪化をより抑制することができる。なお、本変形例では、第2ポンプ32に加えてオイルポンプを制御している。しかしながら、第2ポンプ32を制御せずに、オイルポンプのみを制御してもよい。
【0104】
第2実施形態
次に、
図15及び
図16を参照して、第2実施形態に係る車載温調システム1について説明する。第2実施形態に係る車載温調システム1における構成及び制御は、基本的に、第1実施形態に係る車載温調システム1における構成及び制御と同様である。以下では、第1実施形態に係る車載温調システム1とは異なる部分を中心に説明する。
【0105】
本実施形態では、制御装置5は、車両100の室内の暖房中に、チラー27を流れる冷却水の温度が予め定められた基準値以上変化した場合には、冷却水の変化に伴うチラー27における冷媒の吸熱量の変化が小さくなる方向に、コンプレッサ21の吐出流量及び第2膨張弁25の開度が制御される。本実施形態でも、斯かる冷却水の温度が基準値以上変化した場合に、この温度の変化に伴ってヒータコア44に流入する冷却水の温度が変化する前に、コンプレッサ21及び第2膨張弁25の制御が開始される。
【0106】
具体的には、本実施形態では、チラー27を流れる冷却水の温度が単位時間あたりに基準値以上上昇した場合には、チラー27において熱交換がされにくくなるように、コンプレッサ21の吐出流量が減少される。また、この場合、チラー27における熱交換を抑制してチラー27から流出する冷媒の過熱度の上昇を抑制すべく、第2膨張弁25の開度が大きくされる。逆に、チラー27を流れる冷却水の温度が単位時間当たりに基準値以上低下した場合には、チラー27において熱交換がされ易くなるように、コンプレッサ21の吐出流量が増大される。また、この場合、チラー27における熱交換を促進してチラー27から流出する冷媒の過熱度の低下を抑制すべく、第2膨張弁25の開度が小さくされる。
【0107】
図15は、五方弁34の接続状態等の、
図10と同様なタイムチャートである。図中の破線は、本実施形態に係る温調制御を行わなかった場合(
図10と同様)の各パラメータの推移を示している。
図15に示した例では、時刻t
1前においては、コンプレッサ21の吐出流量及び第2膨張弁25の開度は
図9に示される処理によって通常通りに制御されている。
【0108】
図15に示されるように、時刻t
1において五方弁34の接続状態が第1状態(
図7)から第2状態(
図8)に切り替えられると、チラー27を流れる冷却水の温度が低下し、時刻t
2において単位時間当たりの冷却水の温度の変化量が基準値以上になる。
【0109】
本実施形態では、時刻t2において、チラー27における冷媒の吸熱量の変化が小さくなる方向に、コンプレッサ21及び第2膨張弁25が制御される。具体的には、コンプレッサ21は、吐出流量が多くなるように制御されると共に、第2膨張弁25は、開度が小さくなるように制御される。この結果、チラー27から流出する冷媒の過熱度の低下が抑制されると共に、チラー27における吸熱量の低下が抑制される。そして、チラー27における吸熱量の低下が抑制されることにより、結果的に、車両100の室内への吹き出し温度の低下が抑制される。
【0110】
その後、チラー27を流れる冷却水の温度の単位時間当たりの変化量が基準値未満になると、吐出流量を多くするようなコンプレッサ21の制御及び開度を小さくするような第2膨張弁25の制御は終了される。したがって、コンプレッサ21の吐出流量及び第2膨張弁25の開度は通常通りに制御される。
【0111】
このように、本実施形態によれば、チラー27を流れる冷却水の温度の変化量が基準値以上になると、チラー27における冷媒の吸熱量の変化が小さくなる方向に、コンプレッサ21及び第2膨張弁25が制御される。この結果、車両100の室内への吹き出し温度の変化を抑制することができ、よって車両100の乗員の空調快適性の悪化を抑制することができる。また、チラー27から流出した冷媒の過熱度の変化を抑制することができ、よってコンプレッサ21を含む冷凍回路2の耐久性の低下が抑制される。
【0112】
図16は、暖房時におけるコンプレッサ21及び第2膨張弁25を制御するための処理のフローチャートである。
図16に示される処理は、ECU51により一定時間間隔毎に実行される。なお、
図16のステップS31~S33、S36及びS37は
図9のステップS11~S15とそれぞれ同様であり、
図16のステップS34及びS35は
図12のステップS21及びS22とそれぞれ同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0113】
ステップS35において冷却水の温度の変化量ΔTwが第1基準値Twref1未満であると判定された場合には、ECU51は、温度の偏差に基づいてコンプレッサ21の目標吐出流量を算出する(ステップS36)。加えて、ECU51は、過熱度の偏差に基づいて第2膨張弁25の目標膨張弁開度を算出する(ステップS37)。
【0114】
一方、ステップS35において冷却水の温度の変化量ΔTwが第1基準値Twref1以上であると判定された場合には、ECU51は、温度の偏差及びステップS34で算出された冷却水の温度の変化量ΔTwに基づいてコンプレッサ21の目標吐出流量を算出する(ステップS38)。具体的には、ECU51は、まず、冷却水の温度の変化量ΔTwに基づいて変更流量を算出する。冷却水の温度の変化量ΔTwが正の値である場合(水温が上昇している場合)には変更流量は負の値に設定され、水温の変化量ΔTwが負の値である場合には変更流量は正の値に設定される。そして、ECU51は、ステップS36と同様にして温度の偏差に基づいて算出された吐出流量に変更流量を加算することで目標吐出流量を算出する。
【0115】
加えて、ECU51は、過熱度の偏差及び冷却水の温度の変化量ΔTwに基づいて第2膨張弁25の目標膨張弁開度を算出する(ステップS39)。具体的には、ECU51は、まず、冷却水の温度の変化量ΔTwに基づいて変更開度を算出する。冷却水の温度の変化量ΔTwが正の値である場合(水温が上昇している場合)には変更開度は正の値に設定され、水温の変化量ΔTwが負の値である場合には変更開度は負の値に設定される。そして、ECU51は、ステップS37と同様にして過熱度の偏差に基づいて算出された膨張弁開度に変更開度を加算することで目標膨張弁開度を算出する。
【0116】
第3実施形態
次に、
図17及び
図18を参照して、第3実施形態に係る車載温調システム1について説明する。第3実施形態に係る車載温調システム1における構成及び制御は、基本的に、第1実施形態又は第2実施形態に係る車載温調システム1における構成及び制御と同様である。以下では、第1実施形態又は第2実施形態に係る車載温調システム1とは異なる部分を中心に説明する。
【0117】
上記第1実施形態及び第2実施形態では、ECU51は、車両100の室内の暖房中に、チラー27を流れる冷却水の温度が基準値以上変化した場合に、チラー27における冷媒の吸熱量の変化が小さくなる方向に、吸熱量変化機器を制御していた。本実施形態では、ECU51は、チラー27を流れる冷却水の温度が第1基準値以上変化することが予測される場合には、上述した方向に吸熱量変化機器を制御するようにしている。
【0118】
特に、本実施形態では、チラー27を流れる冷却水の温度が第1基準値以上変化することが予測された場合には、斯かる予測がされた後にチラー27を流れる冷却水の温度が第1基準値よりも小さい第2基準値以上変化したときに、上述した方向に吸熱量変化機器を制御するようにしている。
【0119】
また、本実施形態では、ECU51は、バッテリ水温センサ52、PCU水温センサ53、ラジエータ水温センサ54及びチラー水温センサ55によって検出された冷却水の温度に基づいて、五方弁34を切り替えた場合に冷却水の温度が第1基準値以上変化するか否かを予測する。より詳細には、ECU51は、五方弁34を切り替えた場合、すなわち低温回路3における流路を切り替えた場合におけるチラー27を流れる冷却水の温度の変化量を、これらセンサによって検出された温度に基づいて予測する。そして、このようにして予測された温度の変化量が第1基準値以上である状態でチラー27を流れる冷却水の温度が第2基準値以上変化したときに、ECU51は、冷却水の温度が第1基準値以上変化すると予測する。
【0120】
特に、本実施形態では、五方弁34を切り替える前には冷却水が循環しておらず且つ五方弁34を切り替えた後には冷却水が循環する流路を流れる冷却水の温度と、チラー27を流れる冷却水の温度とに基づいて、五方弁34を切り替えた場合の冷却水の温度が予測される。例えば、五方弁34が第1状態から第2状態に切り替えられる場合、五方弁34の切り替え前において、切り替え前には冷却水が循環しておらず且つ切り替え後に冷却水が循環することになる低温ラジエータ流路3aを流れる冷却水の温度と、チラー27を流れる冷却水の温度とに基づいて、五方弁34を切り替えた場合の冷却水の温度の変化量が予測される。具体的には、五方弁34の切り替え前にラジエータ水温センサ54及びチラー水温センサ55によって検出された冷却水の温度に基づいて五方弁34を切り替えた場合の冷却水の温度の変化量が予測される。特に、五方弁34を切り替えた場合の冷却水の温度の変化量の予測値は、五方弁34の切り替え前にラジエータ水温センサ54によって検出された冷却水の温度とチラー水温センサ55によって検出された冷却水の温度との差よりも小さい値とされる。
【0121】
図17は、五方弁34の接続状態等の、
図10と同様なタイムチャートである。図中の破線は、本実施形態に係る温調制御を行わなかった場合(
図10と同様)の各パラメータの推移を示している。また、図中の水温変化量の予測値は、五方弁34の接続状態が切り替えられた場合の冷却水の温度の変化量の予測値を表している。
図17に示した例では、時刻t
1前においては、コンプレッサ21の吐出流量及び第2膨張弁25の開度は
図9に示される処理によって通常通りに制御されている。
【0122】
図17に示される例では、時刻t
1において、五方弁34の接続状態が第1状態(
図7)から第2状態(
図8)に切り替えられる。そして、この時刻t
1において、冷却水の温度の変化量の予測値が第1基準値以上となっている。
【0123】
時刻t1において五方弁34の接続状態が第1状態から第2状態に切り替えられると、チラー27を流れる冷却水の温度が低下し、チラー27を流れる冷却水の温度が第1基準値以上変化することが予想された状態で、時刻t2において単位時間当たりの冷却水の温度の変化量が第2基準値以上になる。第2基準値は、第1基準値よりも小さい値である。本実施形態では、この時刻t2において、ECU51は、チラー27を流れる冷却水の温度が第1基準値以上変化すると予想する。したがって、ECU51は、時刻t2において、チラー27における冷媒の吸熱量の変化が小さくなる方向に、コンプレッサ21及び第2膨張弁25を制御する。
【0124】
その後、チラー27を流れる冷却水の温度の単位時間当たりの変化量が第2基準値未満になると、又はチラー27を流れる冷却水の温度の変化量の予測値が第1基準値未満になると予想されると、吐出流量が多くするようなコンプレッサ21の制御及び開度を小さくするような第2膨張弁25の制御は終了される。したがって、コンプレッサ21の吐出流量及び第2膨張弁25の開度は通常通りに制御される。
【0125】
このように、本実施形態によれば、チラー27を流れる冷却水の温度が第1基準値以上変化することが予想されると、チラー27における冷媒の吸熱量の変化が小さくなる方向に、コンプレッサ21及び第2膨張弁25が制御される。この結果、車両100の室内への吹き出し温度の変化を抑制することができ、よって車両100の乗員の空調快適性の悪化を抑制することができる。また、チラー27から流出した冷媒の過熱度の変化を抑制することができ、よってコンプレッサ21を含む冷凍回路2の耐久性の低下が抑制される。
【0126】
なお、上記実施形態では、五方弁34の接続状態が切り替えられるとチラー27を流れる冷却水の温度が第1基準値以上変化することが予想されている状態で斯かる冷却水の温度の単位時間当たりの変化量が第2基準値以上になったときに、冷媒の吸熱量の変化が小さくなる方向にコンプレッサ21及び第2膨張弁25が制御される。しかしながら、ECU51は、五方弁34の接続状態が切り替えられるとチラー27を流れる冷却水の温度が第1基準値以上変化することが予想されている状態で、五方弁34の接続状態が実際に切り替えられたときに、チラー27を流れる冷却水の温度が第1基準値以上変化すると予想してもよい。また、コンプレッサ21及び第2膨張弁25ではなく、第2ポンプ32又はMG熱交換器37のオイルポンプが制御されてもよい。また、上記実施形態では、低温回路3内の冷却水の温度を検出するセンサの出力に基づいて予測値が算出されているが、その他のパラメータに基づいて予測値が算出されてもよい。
【0127】
図18は、暖房時におけるコンプレッサ21及び第2膨張弁25を制御するための処理のフローチャートである。
図18に示される処理は、ECU51により一定時間間隔毎に実行される。なお、
図18のステップS41~S43、S46~S47及びS49~S51は、
図16のステップS31~S33、S36~S37、S34~S35及びS38~S39とそれぞれ同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0128】
ステップS42及びS43において、温度の偏差及び過熱度の偏差が算出されると、ECU51は、五方弁34の接続状態が切り替えられた場合のチラー27を流れる冷却水の温度の変化量の予測値ΔTwpを算出する(ステップS44)。ECU51は、バッテリ水温センサ52、PCU水温センサ53、ラジエータ水温センサ54及びチラー水温センサ55等によって検出された冷却水の温度に基づいて、予測値ΔTwpを算出する。
【0129】
次いで、ECU51は、ステップS44で算出された予測値ΔTwpが第1基準値Twref1以上であるか否かを判定する(ステップS45)。ステップS45において予測値ΔTwpが第1基準値Twref1未満であると判定された場合には、ECU51は、温度の偏差及び過熱度の偏差に基づいてコンプレッサ21の目標吐出流量及び第2膨張弁25の目標膨張弁開度をそれぞれ算出する(ステップS46、S47)。
【0130】
一方、ステップS45において予測値ΔTwpが第1基準値Twref1以上であると判定された場合には、ECU51は、冷却水の温度の変化量ΔTwを算出する(ステップS48)と共に、算出された冷却水の温度の変化量ΔTwが第1基準値Twref1よりも小さい第2基準値Twref2以上であるか否かを判定する(ステップS49)。ステップS49において却水の温度の変化量ΔTwが第2基準値Twref2未満であると判定された場合には、ECU51は、温度の偏差及び過熱度の偏差に基づいてコンプレッサ21の目標吐出流量及び第2膨張弁25の目標膨張弁開度をそれぞれ算出する(ステップS46、S47)。一方、ステップS49において却水の温度の変化量ΔTwが第2基準値Twref2以上であると判定された場合には、ECU51は、温度の偏差及び予測値ΔTwpに基づいてコンプレッサ21の目標吐出流量を算出し(ステップS50)、過熱度の偏差及び予測値ΔTwpに基づいて第2膨張弁25の目標膨張弁開度を算出する(ステップS51)。
【0131】
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。
【0132】
例えば、
図2及び
図3に示される車載温調システム1の構成は一つの例であり、車載温調システムは異なる構成を有していてもよい。具体的には、例えば、高温回路4は設けられずに、コンデンサ22がヒータコア44の代わりに空気通路6に設けられてもよい。
【0133】
また、上記実施形態では、五方弁34の接続状態を変更することによってチラー27を流れる冷却水の温度が変化する場合を例にとって説明している。しかしながら、必ずしも五方弁34の接続状態を変更した場合でなくても、チラー27の温度が大きく変化する場合(例えば、バッテリ114における発熱量が急激に変化した場合など)であれば、上記実施形態に係る制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0134】
1 車載温調システム
2 冷凍回路
3 低温回路
4 高温回路
5 制御装置
6 空気通路
21 コンプレッサ
22 コンデンサ
27 チラー
31 第1ポンプ
32 第2ポンプ
34 五方弁
44 ヒータコア