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特開2024-10049シアリルトランスフェラーゼ及びシアリル化オリゴ糖の生産におけるその使用
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  • 特開-シアリルトランスフェラーゼ及びシアリル化オリゴ糖の生産におけるその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010049
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】シアリルトランスフェラーゼ及びシアリル化オリゴ糖の生産におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/26 20060101AFI20240116BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240116BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240116BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240116BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240116BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20240116BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20240116BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
C12P19/26 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A23L33/125
C12N9/10
C12N15/54
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023181133
(22)【出願日】2023-10-20
(62)【分割の表示】P 2020503973の分割
【原出願日】2018-07-25
(31)【優先権主張番号】17183391.6
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】511149751
【氏名又は名称】クリスチャン.ハンセン・ハー・エム・オー・ゲー・エム・ベー・ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・イェネバイン
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・ワルテンベルク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】1つ又は2つのシアル酸残基を有する四糖、五糖及び六糖を大量かつ高純度で生産するためのコスト効率の高いプロセスを提供する。
【解決手段】a)異種シアリルトランスフェラーゼを含む少なくとも1つの遺伝子操作された細胞を提供するステップであって、異種シアリルトランスフェラーゼが、シアル酸残基を、ドナー基質としてのそのヌクレオチド活性化形態からアクセプター分子に転移するための、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼ活性及び/又はα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ活性を有することが可能であり、アクセプター分子が、ラクトース、ラクト-N-トリオースII及びヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される、ステップ;
b)シアリル化オリゴ糖の生産を許容する条件下で、少なくとも1つの細胞を、発酵ブロス中で培養するステップ;及び任意選択で、
c)シアリル化オリゴ糖を回収するステップ
を含む、方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアリル化オリゴ糖を生産するための方法であって、
a)異種シアリルトランスフェラーゼを含む少なくとも1つの遺伝子操作された細胞を提供するステップであって、異種シアリルトランスフェラーゼが、シアル酸残基を、ドナー基質としてのそのヌクレオチド活性化形態からアクセプター分子に転移するための、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼ活性及び/又はα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ活性を有することが可能であり、アクセプター分子が、ラクトース、ラクト-N-トリオースII及びヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される、ステップ;
b)シアリル化オリゴ糖の生産を許容する条件下で、少なくとも1つの細胞を、発酵ブロス中で培養するステップ;及び任意選択で、
c)シアリル化オリゴ糖を回収するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
シアリル化オリゴ糖が、3’-シアリルラクトース、6’-シアリルラクトース、LST-a、LST-b、LST-c及びDSLNTからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
発酵ブロスが、少なくとも1つの炭素源を含み、少なくとも1つの炭素源が、グルコース、フルクトース、スクロース、グリセロール及びそれらの組み合わせからなる群から好ましくは選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
発酵ブロスが、N-アセチルグルコサミン、ガラクトース及びシアル酸からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの細胞が、N-アセチルグルコサミン、ガラクトース及びシアル酸からなる群から選択される1つ以上の非存在下で、及び/又はそれを添加せずに培養される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの細胞が、ラクトース、ラクト-N-トリオースII、LNT及びLNntからなる群から選択される少なくとも1つの存在下で培養される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
シアリル化オリゴ糖を生産するための遺伝子操作された細胞であって、遺伝子操作された細胞が、異種シアリルトランスフェラーゼを含み、異種シアリルトランスフェラーゼが、シアル酸残基を、ドナー基質としてのそのヌクレオチド活性化形態からアクセプター分子に転移するための、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼ活性及び/又はα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ活性を有することが可能であり、アクセプター分子が、ラクトース、ラクト-N-トリオースII及びヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される、遺伝子操作された細胞。
【請求項8】
アクセプター分子が、三糖、四糖及び五糖からなる群から選択され、好ましくは3-フコシルラクトース、ラクト-N-テトラオース、ラクト-N-ネオテトラオース、シアリルラクト-N-テトラオースa、シアリルラクト-N-テトラオースb、ラクト-N-フコペンタオースI及びラクト-N-フコペンタオースIIからなる群から選択されるヒトミルクオリゴ糖である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法又は請求項7に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項9】
異種シアリルトランスフェラーゼが、
i.配列番号1~33のいずれか1つで表されるアミノ酸配列を含む又はからなるポリペプチド;
ii.配列番号1~33のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列のいずれか1つに対して少なくとも80%の配列類似性を有するアミノ酸配列を含む又はからなるポリペプチド;及び
iii.i及びiiのポリペプチドのいずれか1つの断片
からなる群から選択される、請求項1~6又は8のいずれか一項に記載の方法又は請求項7又は8に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項10】
遺伝子操作された細胞が、異種シアリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み、ヌクレオチド配列が、
i.配列番号1~33のいずれか1つで表されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
ii.配列番号34~66のいずれか1つで表されるヌクレオチド配列;
iii.配列番号1~33のいずれか1つで表されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の1つに対して少なくとも80%の配列類似性を有するヌクレオチド配列;
iv.配列番号34~66で表されるヌクレオチド配列のいずれか1つと少なくとも80%の配列類似性を有するヌクレオチド配列;
v.i、ii、iii及びivのヌクレオチド配列のいずれか1つに相補的なヌクレオチド配列;及び
vi.i、ii、iii、iv及びvのヌクレオチド配列のいずれか1つの断片
からなる群から選択され、
ヌクレオチド配列が、遺伝子操作された細胞において異種シアリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳をもたらす少なくとも1つの核酸発現制御配列に作動可能に連結される、請求項1~6又は8~9のいずれか一項に記載の方法又は請求項7~9のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項11】
遺伝子操作された細胞が、遺伝子操作される前の細胞と比較して、CMP-N-アセチルノイラミン酸、UDP-N-アセチルグルコサミン、UDP-ガラクトース及びGDP-フコースからなる群から選択されるヌクレオチド活性化糖の1つ以上の生産増加を有する、請求項1~6又は8~10のいずれか一項に記載の方法又は請求項7~10のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項12】
遺伝子操作された細胞が、遺伝子操作される前の細胞と比較して、L-グルタミン:D-フルクトース-6-リン酸アミノトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ、グルコサミン-1-リン酸アセチルトランスフェラーゼ、ホスホグルコサミンムターゼ、グルコサミン-6-リン酸-N-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-2-エピメラーゼ、UDP-N-アセチルグルコサミン-2-エピメラーゼ、シアル酸シンターゼ、ホスホエノールピルビン酸シンターゼ、CMP-シアル酸シンテターゼ、UDP-ガラクトース-4-エピメラーゼ、ガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ホスホグルコムターゼ、グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ホスホマンノムターゼ、マンノース-1-リン酸グアノシルトランスフェラーゼ、GDP-マンノース-4,6-デヒドラターゼ、GDP-L-フコースシンターゼ及びフコースキナーゼ/L-フコース-1-リン酸-グアニルトランスフェラーゼからなる群から選択される酵素活性を有することが可能なポリペプチドをコードする1つ以上の遺伝子の過剰発現を有する、請求項1~6又は8~11のいずれか一項に記載の方法又は請求項7~11のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項13】
細胞が、遺伝子操作される前の細胞と比較して、β-ガラクトシダーゼ、グルコサミン-6-リン酸デアミナーゼ、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸デアセチラーゼ、N-アセチルマンノサミンキナーゼ、N-アセチルマンノサミン-6-リン酸エピメラーゼ及びN-アセチルノイラミン酸アルドラーゼからなる群から選択される酵素活性の1つ以上の活性低下を有する若しくは欠如している、請求項1~6又は8~12のいずれか一項に記載の方法又は請求項7~12のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項14】
β-ガラクトシダーゼ、グルコサミン-6-リン酸デアミナーゼ、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸デアセチラーゼ、N-アセチルマンノサミンキナーゼ、N-アセチルマンノサミン-6-リン酸エピメラーゼ及びN-アセチルノイラミン酸アルドラーゼをコードする遺伝子の1つ以上が、削除されている又はその発現が、遺伝子操作された細胞内で不活性化されている、請求項1~6又は8~13のいずれか一項に記載の方法又は請求項7~13のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項15】
少なくとも1つの細胞が、機能的ラクトースパーミアーゼ、機能的フコースパーミアーゼ及び機能的シアル酸トランスポーター(インポーター)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、好ましくは、機能的ラクトースパーミアーゼ、機能的フコースパーミアーゼ及び機能的シアル酸トランスポーター(インポーター)からなる群から選択される1つをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含み及び発現する、請求項1~6又は8~14のいずれか一項に記載の方法又は請求項7~14のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項16】
細胞が、β-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼ及びα-2,6-シアリルトランスフェラーゼからなる群から選択される少なくとも1つのグリコシルトランスフェラーゼの活性を有する、請求項1~6又は8~15のいずれか一項に記載の方法又は請求項7~15のいずれか一項に記載の遺伝子操作された細胞。
【請求項17】
シアリル化オリゴ糖を生産するための方法であって、
a)反応混合物中にシアリルトランスフェラーゼを提供するステップであって、シアリルトランスフェラーゼが、シアル酸残基を、ドナー基質としてのそのヌクレオチド活性化形態からアクセプター分子に転移するための、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼ活性及び/又はα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ活性を有することが可能であり、アクセプター分子が、ラクトース、ラクト-N-トリオースII及びヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される、ステップ;
b)シアリルトランスフェラーゼをドナー基質及びアクセプター分子と接触させるステップであって、アクセプター分子が、ラクトース、ラクト-N-トリオースII及びヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される、ステップ
を含む、方法。
【請求項18】
栄養組成物、好ましくは乳児用組成物を製造するための、請求項1~6又は8~17のいずれか一項に記載の方法により生産されたシアリル化オリゴ糖の使用。
【請求項19】
少なくとも1つのシアリル化オリゴ糖を含む栄養組成物であって、少なくとも1つのシアリル化オリゴ糖が、請求項1~6又は8~18のいずれか一項に記載の方法によって生産されている、栄養組成物。
【請求項20】
栄養組成物が、少なくとも1つの中性HMOと組み合わせて3’-SL及び/又は6’-SLを含み、少なくとも1つの中性HMOが、好ましくは2’-FLである、請求項19に記載の栄養組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアリルトランスフェラーゼ、シアリル化オリゴ糖の生産におけるその使用及び栄養製剤の提供における前記シアリル化オリゴ糖の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、150以上の構造的に異なるヒトミルクオリゴ糖(human milk oligosaccharide;HMO)が同定されている。HMOはヒト母乳の極めて少量の総栄養素の一つに過ぎないが、授乳で育てられた乳児の発達に対する非常に有益な効果が、過去数十年に渡って明らかになってきた。
【0003】
ヒト母乳の総HMO含有量の20%までは酸性である。したがって、これらのHMO分子は少なくとも1つのシアル酸部分を持っている。ヒト母乳に含まれるシアル酸の3%のみが遊離形態で利用できるが、23%及び74%はそれぞれ(糖)タンパク質及びオリゴ糖に結合している。シアル酸ファミリーの最も一般的なメンバーは、N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)である。オリゴマーの糖の一部として、N-アセチルノイラミン酸はしばしば糖の生物活性の主要因である。
【0004】
シアリル化HMO(SHMO)は、胃腸と同様に、病原体に対する耐性を支持することが観察された。興味深いことに、最近の研究は、早産児における最も一般的で致命的な疾患の1つである壊死性腸炎に対する長鎖SHMOの保護効果を実証した。さらに、SHMOは、幼児の脳の発達及びその認知能力を維持すると考えられている。
【0005】
異なるドナー間でのHMOプロフィールの広範な変動(特にシアリルラクト-N-テトラオースの構造異性体に影響を及ぼす)が酸性オリゴ糖の絶対的定量化を妨げており、最も豊富な酸性HMOは3’-シアリルラクトース(3’-SL)、6’-シアリルラクトース(6’-SL)、シアリルラクト-N-テトラオースa(LST-a)、シアリルラクト-N-テトラオースb(LST-b)、シアリルラクト-N-テトラオースc(LST-c)及びジシアリルラクト-N-テトラオース(DSLNT)である。
【0006】
シアリル化HMOの構造の複雑さ(図1)の点で、それらの化学的又は(化学)酵素的合成は難しく、例えば、立体化学の制御、特定の連結の形成、原料の入手可能性などの広範な困難を伴う。最後に、このような合成プロセスのアセンブリは一部のSHMOで成功したものの、その高価で不満足な収率が、商業目的でのシアリル化HMOのコスト効率の高い生産を制限している。
【0007】
一般的に言えば、HMOを生産するための微生物の代謝工学は、工業規模でHMOを生産するための最も有望なアプローチであり、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、3’-シアリルラクトースについては、すでに開発されている。
【0008】
それにもかかわらず、HMOの生産のための生合成経路の設計は、しばしば、所望のHMO、例えば、特に組換え細菌細胞などの異種発現系内のフコシル、ガラクトシル、N-アセチルグルコサミニル又はシアリルトランスフェラーゼなどの、生合成に関与するグリコシルトランスフェラーゼの特異性及び活性によって、制限される。
【0009】
残念ながら、ヒトシアリルトランスフェラーゼをコードする遺伝子は、原核微生物においてほとんど発現しない。したがって、これらの遺伝子及び酵素は、シアリル化HMOを生産するために大腸菌などの遺伝子操作された細菌株を使用するバイオテクノロジーの手段には適用できない。
【0010】
これまでに、例えば、ナイセリア属(Neisseria)、カンピロバクター属(Campylobacter)、パスツレラ属(Pasteurella)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、フォトバクテリウム属(Photobacterium)並びに哺乳類及びウイルスなどの細菌種由来の一部のシアリルトランスフェラーゼ(SiaT)が同定及び特徴付けられている。シアリルトランスフェラーゼは、タンパク質配列の類似性に基づいて、一般に6つのグリコシルトランスフェラーゼ(GT)ファミリーに分類されている。その中で、すべての真核生物及びウイルスのシアリルトランスフェラーゼはGTファミリー29に分類されるが、細菌SiaTはグループGT4、GT38、GT42、GT52又はGT80に含まれる。その上、シアリルトランスフェラーゼとポリシアリルトランスフェラーゼは、それらが、例えば、α-2,3-、α-2,6-及びα-2,8-シアリルトランスフェラーゼに形成する連結により区別することができる。これらのすべてのシアリルトランスフェラーゼは、シアル酸残基を、シチジン5’-一リン酸シアル酸(例えばCMP-Neu5Ac)からさまざまなアクセプター分子、通常はガラクトース(Gal)、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)又はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)部分又は別のシアル酸(Sia)部分に転移させる。
【0011】
一部の細菌のシアリルトランスフェラーゼは、過去によく特徴付けられており、3’-SL又は6’-SLの生産に適していることがすでに証明されている。LST-a、LST-b、DSLNTなどのシアリル化五糖又は六糖の合成を可能にするシアリルトランスフェラーゼに関する知識はほとんど得られなかったため、これらのSHMOのいずれか一つの生産プロセスの確立が制限されていた。結果として、高純度量のこれらの所望のオリゴ糖の入手困難性が、それらの健康に有益な特性の幅広い科学的評価を妨げている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、1つ以上のSHMO、特に1つ又は2つのシアル酸残基を有する四糖、五糖及び六糖を大量かつ高純度で生産するためのコスト効率の高いプロセスが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
とりわけ、新しいシアリルトランスフェラーゼの同定及び特徴付け、並びに、全細胞発酵又は生体触媒の手段によるシアリル化ヒトミルクオリゴ糖の生産におけるその使用により、目的は解決される。
【0014】
第1の態様によれば、シアリル化オリゴ糖を生産する方法であって、遺伝子操作された細胞が前記シアリル化オリゴ糖を生産するために使用される方法が、提供される。前記遺伝子操作された細胞は、シアル酸残基をドナー基質からアクセプター分子に転移することが可能な少なくとも1つの異種シアリルトランスフェラーゼを含み、前記アクセプター分子は、ラクトース、LNT-II及びヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される。
【0015】
第2の態様によれば、シアリル化オリゴ糖を生産する方法での使用のための遺伝子操作された細胞であって、遺伝子操作された細胞は、前記シアル酸残基をドナー基質からアクセプター分子に転移することが可能な異種シアリルトランスフェラーゼを発現するように遺伝子操作され、前記アクセプター分子は、ラクトース、LNT-II及びヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される細胞が、提供される。
【0016】
第3の態様によれば、細胞内で増殖したときに異種シアリルトランスフェラーゼを発現するための組換え核酸分子であって、前記シアリルトランスフェラーゼはドナー基質からアクセプター分子にシアル酸残基を転移することが可能であり、前記アクセプター分子はラクトース、LNT-II及びヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される核酸分子が、提供される。
【0017】
第4の態様によれば、ドナー基質からアクセプター分子にシアル酸残基を転移することが可能なシアリルトランスフェラーゼであって、前記アクセプター分子は、ラクトース、LNT-II及びヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択されるシアリルトランスフェラーゼが、提供される。
【0018】
第5の態様によれば、ドナー基質からアクセプター分子にシアル酸残基を転移することが可能なシアリルトランスフェラーゼの使用であって、シアリル化オリゴ糖の生産のため、前記アクセプター分子は、ラクトース、LNT-II及びヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される使用が、提供される。
【0019】
第6の態様によれば、インビトロ生体触媒作用によりシアリル化オリゴ糖を生産する方法であって、シアリルトランスフェラーゼが使用され、前記シアリルトランスフェラーゼは、シアル酸残基をドナー基質からアクセプター分子に転移することが可能であり、前記アクセプター分子は、ラクトース、LNT-II及びヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される方法が、提供される。
【0020】
第7の態様によれば、第1の態様による方法又は第6の態様による方法によって生産されるシアリル化オリゴ糖が提供される。
【0021】
第8の態様によれば、栄養組成物を製造するための第7の態様によるシアリル化オリゴ糖の使用が提供される。
【0022】
第9の態様によれば、第7の態様による少なくとも1つのシアリル化オリゴ糖を含む栄養組成物が提供される。
【0023】
第10の態様によれば、少なくとも1つのシアリル化ヒトミルクオリゴ糖を含む調製粉乳が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ヒト母乳中の最も豊富な酸性オリゴ糖:3’-SL(A)、6’-SL(B)、LST-a(C)、LST-b(D)、LST-c(E)及びDSLNT(F)の化学構造を示す図である。
図2】シアリルトランスフェラーゼ遺伝子過剰発現プラスミドpDEST14及びpET11aのマップを示す図である。
図3】適切なシアリルトランスフェラーゼの過剰発現による、シアリルラクト-N-テトラオース-a及びシアリルラクト-N-テトラオース-b(矢印で示す)のインビボ生産を示す図である。siaT9-又はsiaT19過剰発現大腸菌BL21(DE3)#2130細胞の薄層クロマトグラフィーによる細胞内分画の分離が図示される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
シアリル化HMOの製造プロセスにおける使用に適したシアリルトランスフェラーゼを同定する試みにおいて、核酸データベース及びタンパク質データベースが検索された。100の推定シアリルトランスフェラーゼが、公知のグリコシルトランスフェラーゼとの配列類似性により同定された。前記推定シアリルトランスフェラーゼは、シアリルトランスフェラーゼ活性について評価された。
【0026】
第1の態様によれば、シアリル化オリゴ糖を生産する方法であって、以下のステップ:
a)異種シアリルトランスフェラーゼを含む少なくとも1つの遺伝子操作された細胞を提供するステップであって、前記異種シアリルトランスフェラーゼは、シアリル残基を、ドナー基質としてのCMP活性化形態からラクトース、LNT-II及びヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択されるアクセプター分子に転移するための、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼ活性及び/又はα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ活性を有することが可能である、ステップ;
b)発酵ブロス中で少なくとも1つの遺伝子操作された細胞を前記シアリル化オリゴ糖の生産を許容する条件下で培養するステップ;及び
c)前記シアリル化オリゴ糖を回収するステップ
を含む方法が提供される。
【0027】
本方法は、シアリル化オリゴ糖の生産方法である。
【0028】
本明細書で使用する「オリゴ糖」という用語は、単糖残基のポリマーを指し、前記ポリマーは少なくとも3個の単糖残基であるが、10個以下の単糖残基、好ましくは7個以下の単糖残基を含む。オリゴ糖は、単糖の直鎖であるか、又は分岐している。さらに、オリゴ糖の単糖残基は、多くの化学修飾を特徴としている。したがって、オリゴ糖は1つ以上の非糖質部分を含んでもよい。
【0029】
本明細書で使用される「シアリル化オリゴ糖」という用語は、1つ以上のシアル酸残基を含むオリゴ糖を指す。好ましい実施形態において、シアル酸残基は、N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)残基である。N-アセチルノイラミン酸残基は典型的には、ドナー基質としてのCMP-Neu5Acからアクセプター分子に転移される。
【0030】
シアリル化オリゴ糖を生産する方法は、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼ活性及び/又はα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ活性を有することが可能な異種シアリルトランスフェラーゼを含む遺伝子操作された細胞を提供するステップを含む。
【0031】
遺伝子操作された細胞は、原核細胞又は真核細胞である。好ましくは、遺伝子操作された細胞は、微生物細胞である。適切な微生物細胞には、酵母細胞、細菌細胞、古細菌細胞、藻類細胞、真菌細胞が含まれる。
【0032】
追加の及び/又は代替の実施形態において、微生物細胞は、原核細胞、好ましくは細菌細胞、より好ましくはバチルス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、スポロラクトバチルス属種(Sporolactobacillus spp.)、ミクロモノスポラ属種(Micromomospora spp.)、ミクロコッカス属種(Micrococcus spp.)、ロドコッカス属種(Rhodococcus spp.)及びシュードモナス属(Pseudomonas)からなる群から選択される細菌細胞である。適切な細菌種は、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・サーモフィラス(Bacillus thermophilus)、バチルス・ラテロスポルス(Bacillus laterosporus)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・マイコイデス(Bacillus mycoides)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、シトロバクター・フロインディ(Citrobacter freundii)、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、クロストリジウム・ユングダーリー(Clostridium ljungdahlii)、クロストリジウム・オートエタノゲナム(Clostridium autoethanogenum)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・サーモフィレス(Enterococcus thermophiles)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、エルビニア・ヘルビコーラ(パントエア・アグロメランス)(Erwinia herbicola (Pantoea agglomerans))、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・デルブルエキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・カセイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、ラクトバチルス・ラクティス(Lactococcus lactis)、パントエア・シトレア(Pantoea citrea)、ペクトバクテリウム・カロトヴォラム(Pectobacterium carotovorum)、プロプリオニバクテリウム・フロイデンレイチイ(Proprionibacterium freudenreichii)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、スプレプトコッカス・サーモフィレス(Streptococcus thermophiles)及びキサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)である。
【0033】
代替的な実施形態において、真核細胞は酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞又は哺乳動物細胞である。酵母細胞は、好ましくは、サッカロミセス属種(Saccharomyces sp.)、特にサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミコプシス属種(Saccharomycopsis sp.)、ピキア属種(Pichia sp.)、特にピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ハンセヌラ属種(Hansenula sp.)、クルイベロミセス属種(Kluyveromyces sp.)、ヤロウィア属種(Yarrowia sp.)、ロドトルラ属種(Rhodotorula sp.)及びシゾサッカロミセス属種(Schizosaccharomyces sp.)からなる群から選択される。
【0034】
遺伝子操作された細胞は、異種シアリルトランスフェラーゼを含むように遺伝子操作されている。
【0035】
本明細書で使用される「遺伝子操作された」という用語は、分子生物学的方法を使用した細胞の遺伝子構成の修飾を指す。細胞の遺伝子構成の修飾には、種の境界内及び/又は種の境界を越えた遺伝子の転移、ヌクレオチド、トリプレット、遺伝子、オープンリーディングフレーム、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター及びその遺伝子発現を媒介及び/又は制御する他のヌクレオチド配列の挿入、削除、置換及び/又は修飾が含まれてもよい。細胞の遺伝子構成の修飾は、特定の望ましい特性を有する遺伝子修飾生物を生成することを目的としている。遺伝子操作された細胞は、細胞の天然の(遺伝子操作されていない)形態では存在しない1つ以上の遺伝子を含むことができる。細胞の遺伝情報のヌクレオチド配列を挿入、削除又は変更するために、細胞の遺伝情報に外因性核酸分子を導入及び/又は外因性核酸分子(組換え、異種)を挿入する技術は、当業者公知である。遺伝子操作された細胞は、細胞の天然の形態で存在する1つ以上の遺伝子を含むことができ、前記遺伝子は修飾され、人工的手段により細胞に再導入される。「遺伝的に操作された」という用語は、細胞にとって内因性である核酸分子を含み、細胞から核酸分子を除去することなく修飾された細胞も包含する。そのような修飾には、遺伝子置換、部位特異的変異及び関連技術によって得られるものが含まれる。
【0036】
遺伝子操作された細胞には、異種シアリルトランスフェラーゼが含まれる。
【0037】
本明細書で使用される「シアリルトランスフェラーゼ」という用語は、シアリルトランスフェラーゼ活性を有することが可能なポリペプチドを指す。「シアリルトランスフェラーゼ活性」とは、ドナー基質からアクセプター分子へのシアル酸残基、好ましくはN-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)残基の転移を指す。「シアリルトランスフェラーゼ」という用語は、本明細書に記載のシアリルトランスフェラーゼの機能的断片、本明細書に記載のシアリルトランスフェラーゼの機能的変異体及びその機能的変異体の機能的断片を含む。これに関して「機能的」とは、断片及び/又は変異体がシアリルトランスフェラーゼ活性を有することを意味する。シアリルトランスフェラーゼの機能的断片は、シアリルトランスフェラーゼ活性を保有することが可能な、天然に存在する遺伝子によってコードされるシアリルトランスフェラーゼの切断型を包含する。切断型の例は、典型的にはポリペプチドを特定の細胞内局在に向けるいわゆるリーダー配列を含まないシアリルトランスフェラーゼである。典型的には、そのようなリーダー配列は、その細胞内輸送中にポリペプチドから除去され、天然に存在する成熟シアリルトランスフェラーゼにも存在しない。
【0038】
異種シアリルトランスフェラーゼは、シアル酸残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させることが可能である。異種シアリルトランスフェラーゼに関する「可能」という用語は、異種シアリルトランスフェラーゼのシアリルトランスフェラーゼ活性及び異種シアリルトランスフェラーゼがその酵素活性を保有するために適切な反応条件が必要であるという規定を指す。適切な反応条件がない場合、異種シアリルトランスフェラーゼはその酵素活性を有さないが、その酵素活性を保持し、適切な反応条件が回復すると酵素活性を有する。適切な反応条件には、適切なドナー基質の存在、適切なアクセプター分子の存在、例えば一価又は二価イオンなどの必須補因子の存在、適切な範囲のpH値、適切な温度などが含まれる。異種シアリルトランスフェラーゼの酵素反応に影響を与える各々のすべての因子の最適値が満たされる必要はないが、反応条件は異種シアリルトランスフェラーゼがその酵素活性を発揮するようなものではなくてはならない。したがって、「可能」という用語は、異種シアリルトランスフェラーゼの酵素活性が不可逆的に損なわれた状態を除外し、異種シアリルトランスフェラーゼのそのような状態への曝露も除外する。代わりに、「可能」とは、シアリルトランスフェラーゼに許容反応条件(シアリルトランスフェラーゼがその酵素活性を発揮するために必要なすべての要件)が提供される場合、シアリルトランスフェラーゼが酵素的に活性であること、すなわち、そのシアリルトランスフェラーゼ活性を有することを意味する。
【0039】
シアリルトランスフェラーゼは、それらが形成する糖連結のタイプで区別できる。本明細書で使用する場合、「α-2,3-シアリルトランスフェラーゼ」及び「α-2,3-シアリルトランスフェラーゼ活性」という用語は、ガラクトース又はアクセプター分子のガラクトース残基にα-2,3連結と共にシアル酸残基を付加するポリペプチド及びその酵素活性を指す。同様に、用語「α-2,6-シアリルトランスフェラーゼ」及び「α-2,6-シアリルトランスフェラーゼ活性」は、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミン及び/又はN-アセチルグルコサミン、アクセプター分子のガラクトース残基又はN-アセチルガラクトサミン残基及び/又はN-アセチルグルコサミン残基にα-2,6連結と共にシアル酸残基を付加するポリペプチド及びそれらの酵素活性を指す。同様に、「α-2,8-シアリルトランスフェラーゼ」及び「α-2,8-シアリルトランスフェラーゼ活性」という用語は、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミン及び/又はN-アセチルグルコサミン、アクセプター分子のガラクトース残基又はN-アセチルガラクトサミン残基及び/又はN-アセチルグルコサミン残基にα-2,8連結と共にシアル酸残基を付加するポリペプチド及びその酵素活性を指す。
【0040】
本明細書で使用される「異種」という用語は、細胞又は生物にとって外来性のポリペプチド、アミノ酸配列、核酸分子又はヌクレオチド配列、すなわち、前記細胞又は生物内に天然に発生しないポリペプチド、アミノ酸配列、核酸分子又はヌクレオチド配列を指す。本明細書で使用される「異種配列」又は「異種核酸」又は「異種ポリペプチド」は、特定の宿主細胞にとって、外来の供給源から(例えば、異なる種から)由来するものであるか、又は同じ供給源からのものならば元の形態から修飾されたものである。したがって、プロモーターに作動可能に連結された異種核酸は、プロモーターが由来したものとは異なる供給源に由来するか、又は同じ供給源に由来するならばその元来の形態から修飾されている。異種配列は、例えば、宿主微生物の宿主細胞のゲノムへのトランスフェクション、形質転換、接合又は形質導入により、安定に導入することができ、したがって遺伝子修飾された宿主細胞を表す。配列が導入される宿主細胞に依存する技術が適用され得る。様々な技術が当業者公知であり、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)に開示されている。したがって、「異種ポリペプチド」は、細胞内で天然に発生しないポリペプチドであり、「異種シアリルトランスフェラーゼ」は、細胞内で天然に発生しないシアリルトランスフェラーゼである。
【0041】
異種シアリルトランスフェラーゼは、例えばN-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)残基などのシアル酸残基を、例えばCMP-Neu5Acなどのドナー基質から、アクセプター分子へ転移することが可能である。アクセプター分子は、ラクトース、ラクト-N-トリオースII(LNT-II)又はヒトミルクオリゴ糖類からなる群から選択されるオリゴ糖である。
【0042】
追加の及び/又は代替の実施形態において、アクセプター分子は、三糖、四糖及び五糖からなる群から選択されるヒトミルクオリゴ糖である。
【0043】
追加及び/又は代替の実施形態において、アクセプター分子は、ラクト-N-テトラオース、ラクト-N-ネオテトラオース、LST-a及びLST-bからなる群から選択されるヒトミルクオリゴ糖である。
【0044】
一実施形態において、異種シアリルトランスフェラーゼは、
I.配列番号1~33のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列を含む又はからなるポリペプチド;
II.配列番号1~33のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列のいずれか1つに対して少なくとも80%の配列類似性を有するアミノ酸配列を含む又はからなるポリペプチド;及び
III.I及びIIのポリペプチドのいずれか1つの断片からなる群から選択される。
【0045】
追加の及び/又は代替の実施形態において、遺伝子操作された細胞は、異種シアリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含むように形質転換されている。好ましくは、ヌクレオチド配列は、
i.配列番号1~33のいずれか1つで表されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
ii.配列番号34~66のいずれか1つで表されるヌクレオチド配列;
iii.配列番号1~33のいずれか1つで表されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の1つに対するヌクレオチド配列の1つに対して少なくとも80%の配列類似性を有するヌクレオチド配列;
iv.配列番号34~66で表されるヌクレオチド配列のいずれか1つと少なくとも80%の配列類似性を有するヌクレオチド配列;
v.i、ii、iii及びivのヌクレオチド配列のいずれか1つに相補的なヌクレオチド配列;及び
vi.i、ii、iii、ivの及びvヌクレオチド配列のいずれか1つの断片
からなる群から選択される。
【0046】
「配列番号1~33のいずれか1つ」という表現は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号33からなる群のいずれか1つを指す。同じ原理が「配列番号34~66のいずれか1つ」という表現にも当てはまる。一般的に言えば、表現「配列番号X~Zのいずれか1つ」、ここで「X」及び「Z」は自然数を表す、は、XからZの識別番号を含む「配列番号」のいずれか1つによって表されるすべての配列(ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列)を指す。
【0047】
さらに、遺伝子操作された細胞は、異種シアリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を発現するように遺伝子操作されている。この目的のために、異種シアリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列は、遺伝子操作された細胞において異種シアリルトランスフェラーゼをコードする前記ヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳をもたらす少なくとも1つの発現制御に作動可能に連結される。
【0048】
本明細書で使用される「作動可能に連結された」という用語は、異種シアリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列と第2ヌクレオチド配列、核酸発現制御配列(プロモーター、オペレーター、エンハンサー、レギュレーター、転写因子結合部位の列、転写ターミネーター、リボソーム結合部位などの)との間の機能的連結を指す。ここで、発現制御配列は、異種シアリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列に対応する核酸の転写及び/又は翻訳に影響を与える。したがって、「プロモーター」という用語は、DNAポリマー内の遺伝子に通常「先行」し、mRNAへの転写の開始部位を提供するDNA配列を指す。「レギュレーター」DNA配列は、通常、特定のDNAポリマーの遺伝子の「上流」にあり(つまり先行し)、転写開始の頻度(又は速度)を決定するタンパク質に結合する。「プロモーター/レギュレーター」又は「制御」DNA配列と総称される、機能的DNAポリマー内の選択された遺伝子(又は一連の遺伝子)に先行するこれらの配列は、遺伝子の転写(及び最終的な発現)が起こるか否かを協同して決定する。DNAポリマー中の遺伝子を「追跡」し、mRNAへの転写の終結のシグナルを提供するDNA配列は、転写「ターミネーター」配列と呼ばれる。
【0049】
一実施形態において、遺伝子操作された細胞は、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼ活性を有することが可能な異種シアリルトランスフェラーゼを含み、ヒトミルクオリゴ糖はLNTである。このようにして生産されたシアリル化オリゴ糖はLST-aである。
【0050】
追加の及び/又は代替の実施形態において、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼ活性を有することが可能な異種シアリルトランスフェラーゼは、
I.配列番号1~27のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列を含む又はからなるポリペプチド;
II.配列番号1~27のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列のいずれか1つと少なくとも80%の類似性を有するアミノ酸配列を含む又はからなるポリペプチド;及び
III.I及びIIのポリペプチドのいずれか1つの断片からなる群から選択される。
【0051】
追加の及び/又は代替の実施形態において、遺伝子操作された細胞は、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼ活性を有することが可能な前記異種シアリルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む組換え又は合成核酸分子を含み、前記少なくとも1つのヌクレオチド配列は、
i.配列番号1~27のいずれか1つにより表されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
ii.配列番号34~60のいずれか1つにより表されるヌクレオチド配列;
iii.配列番号1~27のいずれか1つにより表されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の1つと少なくとも80%の配列類似性を有するヌクレオチド配列;
iv.配列番号34~60で表されるヌクレオチド配列のいずれか1つと少なくとも80%の配列類似性を有するヌクレオチド配列;
v.i、ii、iii及びivのヌクレオチド配列のいずれか1つに相補的なヌクレオチド配列;及び
vi.i、ii、iii、iv及びvのヌクレオチド配列のいずれか1つの断片
からなる群から選択される。
【0052】
追加の及び/又は代替の実施形態において、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼ活性を有することが可能な異種シアリルトランスフェラーゼは、実施例5に記載の方法に従ったLC-MS/MSを用いたLNTシアリル化の定量分析により、少なくとも100倍、少なくとも200倍、少なくとも300倍、少なくとも1000倍、少なくとも10000倍の相対的効力を配列番号27で表されるSiaT16の相対的有効性と比較して有する。
【0053】
別の実施形態において、異種シアリルトランスフェラーゼは、α-2,6-シアリルトランスフェラーゼ活性を有することが可能であり、ヒトミルクオリゴ糖はLNTである。このようにして生産されたシアリル化オリゴ糖はLST-bである。
【0054】
さらなる実施形態において、α-2,6-シアリルトランスフェラーゼ活性を有することが可能な異種シアリルトランスフェラーゼは、
I.配列番号28~33のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列を含む又はからなるポリペプチド;
II.配列番号28~33のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%の類似性を有するアミノ酸配列を含む又はからなるポリペプチド;及び
III.I及びIIのポリペプチドのいずれか1つの断片
からなる群より選択される。
【0055】
追加の及び/又は代替の実施形態において、遺伝子操作された細胞は、α-2,6-シアリルトランスフェラーゼ活性を有することが可能な前記異種シアリルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む組換え又は合成核酸分子を含み、前記少なくとも1つのヌクレオチド配列は、
i.配列番号28~33のいずれか1つにより表されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
ii.配列番号61~66のいずれか1により表されるヌクレオチド配列;
iii.配列番号28~33のいずれか1つにより表されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の1つと少なくとも80%の配列類似性を有するヌクレオチド配列;
iv.配列番号61~66で表されるヌクレオチド配列のいずれか1つと少なくとも80%の配列類似性を有するヌクレオチド配列;
v.i、ii、iii及びivのヌクレオチド配列のいずれか1つに相補的なヌクレオチド配列;及び
vi.i、ii、iii、iv及びvのヌクレオチド配列のいずれか1つの断片
からなる群より選択される。
【0056】
追加の及び/又は代替の実施形態において、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼ活性を有することが可能な異種シアリルトランスフェラーゼは、実施例5に記載の方法に従ったLC-MS/MSを用いたLNTシアリル化の定量分析により、配列番号33で表されるSiaT5の相対的有効性と比較して、少なくとも100倍、より好ましくは少なくとも200倍、最も好ましくは少なくとも300倍の相対効力を有する。
【0057】
追加の及び/又は代替の実施形態において、少なくとも1つの遺伝子操作された細胞は、CMP-N-アセチルノイラミン酸、UDP-N-アセチルグルコサミン、UDP-ガラクトース及びGDPフコースからなる群から選択される1つ以上のヌクレオチド活性化糖の生産増加を有する。好ましくは、少なくとも1つの遺伝子操作された細胞は、1つ以上の前記ヌクレオチド活性化糖の生産増加を有するようにさらに遺伝子操作されている。前記ヌクレオチド活性化糖の少なくとも1つの生産は、少なくとも1つの前記ヌクレオチド活性化糖の生産増加を有するようにさらに遺伝子操作される前のさらに遺伝子操作された細胞の前駆細胞における同じヌクレオチド活性化糖の生産と比較して、さらに遺伝子操作された細胞において増加する。
【0058】
追加の及び/又は代替の実施形態において、少なくとも1つの細胞は、L-グルタミン:D-フルクトース-6-リン酸アミノトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ、グルコサミン-1-リン酸アセチルトランスフェラーゼ、ホスホグルコサミンムターゼ、グルコサミン-6-リン酸-N-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-2-エピメラーゼ、UDP-N-アセチルグルコサミン-2-エピメラーゼ、シアル酸シンターゼ、ホスホエノールピルビン酸シンターゼ、CMP-シアル酸シンテターゼ、UDP-ガラクトース-4-エピメラーゼ、ガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ホスホグルコムターゼ、グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ホスホマンノムターゼ、マンノース-1-リン酸グアノシルトランスフェラーゼ、GDP-マンノース-4,6-デヒドラターゼ、GDP-L-フコースシンターゼ及びフコースキナーゼ/L-フコース-1-リン酸-グアニルトランスフェラーゼからなる群から選択される酵素活性を有することが可能なポリペプチドをコードする1つ以上の遺伝子を過剰発現するようにさらに遺伝子操作されている。前記1つ以上の遺伝子の過剰発現は、前記1つ以上の遺伝子の過剰発現を有するようにさらに遺伝子操作された細胞の、さらに遺伝子操作される前の前駆細胞と比較して、過剰発現である。
【0059】
前記遺伝子の1つ以上の過剰発現は、遺伝子操作された細胞における対応する酵素の量を増加させ、したがって細胞における対応する酵素活性を増加させて、前記ヌクレオチド活性化糖の少なくとも1つの細胞内生産を増強する。
【0060】
追加の及び/又は代替の実施形態において、少なくとも1つの遺伝子操作された細胞は、遺伝子操作される前の細胞と比較して、β-ガラクトシダーゼ活性、グルコサミン-6-リン酸デアミナーゼ、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸デアセチラーゼ、N-アセチルマンノサミンキナーゼ、N-アセチルマンノサミン-6-リン酸エピメラーゼ及びN-アセチルノイラミン酸アルドラーゼからなる群から選択される1つ以上の酵素活性の活性低下を欠如している又は有する。
【0061】
追加及び/又は代替の実施形態において、β-ガラクトシダーゼ、グルコサミン-6-リン酸デアミナーゼ、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸デアセチラーゼ、N-アセチルマンノサミンキナーゼ、N-アセチルマンノサミン-6-リン酸エピメラーゼ及びN-アセチルノイラミン酸アルドラーゼをコードする1つ以上の遺伝子が、遺伝子操作された細胞のゲノムから削除されているか、又はβ-ガラクトシダーゼ、グルコサミン-6-リン酸デアミナーゼ、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸デアセチラーゼ、N-アセチルマンノサミンキナーゼ、N-アセチルマンノサミン-6-リン酸エピメラーゼ及びN-アセチルノイラミン酸アルドラーゼをコードする遺伝子の1つ以上の発現が、細胞のさらなる遺伝子操作により、遺伝子操作された細胞において不活性化されているか若しくは少なくとも低減している。前記遺伝子の発現は、前記遺伝子の発現低下を有するようにさらに遺伝子操作された細胞の、さらに遺伝子操作される前の前駆細胞と比較して、さらに遺伝子操作された細胞において減少する。
【0062】
追加の及び/又は代替の実施形態において、少なくとも1つの遺伝子操作された細胞は、機能性ラクトースパーミアーゼ、機能性フコースパーミアーゼ及び機能性シアル酸トランスポーター(インポーター)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、好ましくは機能性ラクトースパーミアーゼ、機能性フコースパーミアーゼ及び機能性シアル酸トランスポーター(インポーター)からなる群から選択される1つをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含みかつ発現する。
【0063】
追加の及び/又は代替の実施形態において、遺伝子操作された細胞は、β-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼ及びα-2,6-シアリルトランスフェラーゼからなる群から選択される少なくとも1つのグリコシルトランスフェラーゼの活性を有する。
【0064】
追加の及び/又は代替の実施形態において、少なくとも1つの遺伝子操作された細胞は、シアリル化オリゴ糖の生産を許容する条件下、発酵ブロス中で培養される。
【0065】
発酵ブロスには、遺伝子操作された細胞のための少なくとも1つの炭素源が含まれる。少なくとも1つの炭素源は、グルコース、フルクトース、スクロース、グリセロール及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。
【0066】
追加の及び/又は代替の実施形態において、発酵ブロスは、N-アセチルグルコサミン、ガラクトース及びシアル酸からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0067】
少なくとも1つの遺伝子操作された細胞が、N-アセチルグルコサミン、ガラクトース及びシアル酸からなる群から選択される1つ以上の非存在下で、及び/又はそれを添加せずに培養される追加の及び/又は代替の実施形態において、少なくとも1つの遺伝子操作された細胞は、ラクトース、ラクト-N-トリオースII(LNT-II)又は少なくとも1つのHMO、好ましくは三糖、四糖及び五糖からなる群から選択されるHMO、より好ましくはLNT及びLNnTからなる群から選択されるHMOの存在下で培養される。
【0068】
本方法は、発酵ブロス内での培養中に少なくとも1つの遺伝子操作された細胞によって生産されたシアリル化オリゴ糖を回収する任意のステップを含む。シアリル化オリゴ糖は、例えば遠心分離によって、遺伝子操作された細胞が除去された後に発酵ブロスから回収でき及び/又は、例えば、遠心分離によって細胞が発酵ブロスから収穫されるという点で細胞から回収でき、細胞溶解ステップに供せされる。その後、当業者公知の適切な技術により、シアリル化オリゴ糖を発酵ブロス及び/又は細胞溶解物からさらに精製することができる。適切な技術としては、精密濾過、限外濾過、ダイアフィルトレーション、擬似移動床式クロマトグラフィー、電気透析、逆浸透、ゲル濾過、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーなどが含まれる。
【0069】
第2の態様によれば、シアリル化オリゴ糖を生産する方法における使用のための遺伝子操作された細胞が、提供される。前記遺伝子操作された細胞及び前記遺伝子操作された細胞の好ましい実施形態は、本方法に関連して前に本明細書において説明されている。したがって、遺伝子操作された細胞は、異種シアリルトランスフェラーゼを含み、前記異種シアリルトランスフェラーゼは、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼ活性及び/又はシアル酸残基、例えばN-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)残基をドナー基質としてのヌクレオチド活性化型、例えばCMP-Neu5Acから、アクセプター分子へ転移するためのα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ活性を有することが可能であり、ここで、アクセプター分子は、ラクトース、ラクト-N-トリオースII及びヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される。
【0070】
第3の態様によれば、細胞内で増殖した場合にシアリルトランスフェラーゼを発現するための組換え核酸分子であって、前記シアリルトランスフェラーゼは、細胞内で発現した場合、異種シアリルトランスフェラーゼである、組換え核酸分子が提供される。組換え核酸分子は、シアル酸残基、例えばN-アセチルノイラミン酸残基をドナー基質からアクセプター分子へ転移することが可能であるシアリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、前記アクセプター分子は、ラクトース、ラクト-N-トリオースII及びヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択される。
【0071】
シアル酸残基をドナー基質からラクトース、ラクト-N-トリオースII及びヒトミルクオリゴ糖からなる群から選択されるアクセプター分子に転移することが可能なシアリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列(例えば、好ましいヌクレオチド配列)の好ましい実施形態は、シアリル化オリゴ糖を生産する方法に関連して前に本明細書において開示されている。例えば、シアリルトランスフェラーゼは、N-アセチルノイラミン酸残基をCMP-Neu5Acからラクトース、ラクト-N-トリオースII又はヒトミルクオリゴ糖に転移させることが可能である。
【0072】
シアリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列は、少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されている。したがって、追加の及び/又は代替の実施形態において、組換え核酸分子は、前記組換え核酸分子が細胞内で増殖する場合、シアリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳を媒介する少なくとも1つの発現制御配列を含む。
【0073】
第4の態様によれば、シアル酸残基、例えばN-アセチルノイラミン酸残基をドナー基質、例えばCMP-Neu5Acからアクセプター分子に転移するα-2,3-シアリルトランスフェラーゼ活性及び/又はα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ活性を有することが可能なシアリルトランスフェラーゼが、提供される。ここで、前記アクセプター分子は、ラクトース、ラクト-N-トリオースII又はヒトミルクオリゴ糖である。
【0074】
一実施形態において、アクセプター分子は、三糖、四糖及び五糖からなる群から選択される。追加及び/又は代替の実施形態において、アクセプター分子は、LST-a及びLST-bからなる群から選択される。
【0075】
追加の及び/又は代替の実施形態において、シアリルトランスフェラーゼは、
I.配列番号1~33のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列を含む又はからなるポリペプチド;
II.配列番号1~33のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列のいずれか1つに対して少なくとも80%の配列類似性を有するアミノ酸配列を含む又はからなるポリペプチド;及び
III.I及びIIのポリペプチドのいずれか1つの断片
からなる群から選択される。
【0076】
第5の態様によれば、シアリル化オリゴ糖を生産するために、例えばN-アセチルノイラミン酸残基をCMP Neu5ACからアクセプター分子に、シアル酸残基をドナー基質から転移させることが可能な、前に本明細書において記載したシアリルトランスフェラーゼの使用であって、前記アクセプター分子は、ラクトース、ラクト-N-トリオースII又はヒトミルクオリゴ糖である、使用が提供される。
【0077】
前記シアリルトランスフェラーゼは、シアル酸残基をアクセプター分子に転移することが可能であり、前記アクセプター分子はヒトミルクオリゴ糖であり、それによりシアリル化オリゴ糖を生産する。
【0078】
ヒトミルクオリゴ糖は、中性オリゴ糖又は酸性オリゴ糖、すなわち、少なくとも1つのシアル酸残基を含むヒトミルクオリゴ糖であり得る。
【0079】
前に本明細書において記載したシアリルトランスフェラーゼを使用することにより生産されるシアリル化オリゴ糖は、ヒトミルクオリゴ糖であってもよく、天然に存在するヒト母乳に見られないシアリル化オリゴ糖であってもよい。
【0080】
第6の態様によれば、インビトロ触媒作用によりシアリル化オリゴ糖を生産する方法であって、シアリルトランスフェラーゼが使用され、前記シアリルトランスフェラーゼは、シアル酸残基をドナー基質から、例えばN-アセチルノイラミン酸残基をCMP-Neu5Acからアクセプター分子に転移することが可能であり、前記アクセプター分子はヒトミルクオリゴ糖である、方法が提供される。
【0081】
本方法は、
・-反応混合物中に-シアル酸残基、好ましくはN-アセチルノイラミン酸をドナー基質からアクセプター分子に転移させることが可能なシアリルトランスフェラーゼ、ドナー基質及びアクセプター分子を提供するステップ;
・シアリルトランスフェラーゼがシアル酸残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させて、シアリル化オリゴ糖を得るステップ;及び
・反応混合物からシアリル化オリゴ糖を回収するステップ
から構成される。
【0082】
第7の態様によれば、第1の態様による方法又は第6の態様による方法によって生産されるシアリル化オリゴ糖が提供される。
【0083】
一実施形態において、シアリル化オリゴ糖は、ヒトミルクオリゴ糖、好ましくは四糖、五糖又は六糖、より好ましくはLST-a、LST-b及びDSLNTからなる群から選択されるシアリル化オリゴ糖である。
【0084】
第8の態様によれば、栄養組成物を製造するための、前に本明細書において記載した全細胞発酵アプローチ又はインビトロ生体触媒によって生産されるシアリル化オリゴ糖の使用が、提供される。前記栄養組成物は、前に本明細書において開示された方法によって生産された少なくとも1つのシアリル化オリゴ糖を含む。
【0085】
したがって、第9の態様によれば、前に本明細書において記載した方法によって生産された少なくとも1つのシアリル化オリゴ糖を含む栄養組成物が、提供される。好ましくは、少なくとも1つのシアリル化オリゴ糖は、3’-シアリルラクトース、6’-シアリルラクトース、LST-a、LST-b、LST-c又はDSLNTである。
【0086】
追加の及び/又は代替の実施形態において、栄養組成物は、少なくとも1つの中性HMO、好ましくは2’-FLをさらに含む。
【0087】
追加の及び/又は代替の実施形態において、栄養組成物は3-SL、6-SL及び2’-FLを含む。
【0088】
さらなる実施形態において、栄養組成物は、医薬製剤、調製粉乳及び栄養補助食品からなる群から選択される。
【0089】
栄養組成物は、液体形態又は粉末、顆粒、フレーク及びペレットを含むがこれらに限定されない固体形態で存在してもよい。
【0090】
第10の態様によれば、少なくとも1つのシアリル化HMOを含む調製粉乳が提供される。前記シアリル化HMOは、前に本明細書において記載した方法により生産されたシアリル化オリゴ糖類の群から選択されるHMOである。
【0091】
一実施形態において、調製粉乳に含まれる少なくとも1つのシアリル化HMOは、3-SL、6-SL、LST-a、LST-b、LST-c及びDSLNTからなる群から選択される。
【0092】
追加の及び/又は代替の実施形態において、調製粉乳は、少なくとも1つのシアリル化HMO及び1つ以上の中性HMOを含む。
【0093】
追加の及び/又は代替の実施形態において、調製粉乳は、3-SL、6-SL及び2’-FLを含む。
【0094】
本発明は、特定の実施形態に関して、図面を参照して説明されるが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。さらに、本文及び特許請求の範囲における第1、第2などの用語は、類似の要素の間を区別するために使用され、必ずしも時間的、空間的、ランク又は他の様式で順序を記述するために使用されない。そのように使用される用語は適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載又は図示される以外の順序で作動が可能であることを理解されたい。
【0095】
特許請求の範囲で使用される「含む」という用語は、他の要素やステップを除外するものではなく、その後に列挙された手段に限定されると解釈されるべきではないことに留意されたい。したがって、言及された特徴、整数、ステップ又は成分の存在を具体化させるものと解釈されるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、成分又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。したがって、「手段A及びBを含むデバイス」という表現の範囲は、成分A及びBのみからなるデバイスに限定されるべきではない。それは、本発明に関して、デバイスの関連する成分のみがA及びBであることを意味する。
【0096】
本明細書を通して「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所における「一実施形態において」又は「実施形態において」というフレーズの出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけではないし、そうであってもよい。さらに、特定の特徴、構造又は特性は、本開示から当業者には明らかなように、1つ以上の実施形態において、任意の適切な様式で組み合わせてもよい。
【0097】
同様に、本発明の例示的な実施形態の記載において、開示を合理化し、1つ以上の様々な発明の態様の理解を助ける目的で、本発明の様々な特徴が単一の実施形態、図又はその説明にグループ化される場合があることを理解されたい。しかしながら、この開示方法は、特許請求された発明が各請求項に明示的に記載されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明の態様は、単一の前述の開示された実施形態のすべての特徴よりも少ない状態にある。したがって、詳細な説明に続く請求項は、各請求項が本発明の別個の実施形態としてそれ自身が成り立つように、この詳細な説明に明示的に取り込まれている。
【0098】
さらに、本明細書に記載の一部の実施形態は、他の実施形態に含まれる一部の特徴を含むが、他は含まず、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内にあると意味され、当業者によって理解されるように、異なる実施形態を形成する。例えば、以下の請求項において、請求された実施形態のいずれも、任意の組み合わせで使用することができる。
【0099】
さらに、実施形態のいくつかは、コンピュータシステムのプロセッサによって又は機能を実行する他の手段によって実装できる方法又は方法の要素の組み合わせとして本明細書で記載される。したがって、そのような方法又は方法の要素を実行するために必要な指示を備えたプロセッサは、方法又は方法の要素を実行するための手段を形成する。さらに、本明細書において記載される装置の実施形態の要素は、本発明を行う目的で要素によって実行される機能を行うための手段の一例である。
【0100】
本明細書で提供される説明及び図面では、多数の特定の詳細が示されている。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの特定の詳細無く実行され得ることが理解される。他の例では、この説明の理解を不明瞭にしないために、周知の方法、構造及び技術は詳細に示されていない。
【0101】
次に、本発明の一部の実施形態の詳細な説明によって本発明を記載する。本発明の他の実施形態は、本発明の真の精神又は技術的教示から逸脱することなく、当業者の知識にしたがって構成され得ることは明らかであり、本発明は添付の特許請求の範囲の事項によってのみ限定される。
【実施例0102】
[実施例1] アクセプターとしてラクトースを使用したシアリルトランスフェラーゼのインビボスクリーニングができる大腸菌Neu5Ac生産株の開発
代謝工学には、それぞれ特定の遺伝子の突然変異誘発と欠失及び異種遺伝子のゲノム組み込みが含まれていた。遺伝子lacZ及びaraAを、Ellisら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:6742~6746頁(2001))に記載されるミスマッチオリゴヌクレオチドを使用した突然変異誘発により不活性化した。
【0103】
Datsenko及びWannerの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:6640~6645頁(2000))にしたがってゲノム欠失を行った。N-アセチルノイラミン酸の細胞内分解を防ぐために、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸デアセチラーゼ(nagA)及びグルコサミン-6-リン酸デアミナーゼ(nagB)をコードする遺伝子、並びにN-アセチルマンノサミンキナーゼ(nanK)をコードするN-アセチルノイラミン酸異化遺伝子クラスター全体、N-アセチルマンノサミン-6-リン酸エピメラーゼ(nanE)、N-アセチルノイラミン酸アルドラーゼ(nanA)及びシアル酸パーミアーゼ(nanT)を、大腸菌株BL21(DE3)株のゲノムから削除した。遺伝子wzxC-wcaJも削除した。WcaJは、コラン酸合成の第1ステップを触媒するUDP-グルコース:ウンデカプレニルリン酸グルコース-1-リン酸トランスフェラーゼをコードする(Stevensonら,J.Bacteriol.1996,178:4885~4893頁)。さらに、L-フコースイソメラーゼ及びL-フクロースキナーゼをそれぞれコードする遺伝子fucI及びfucKを除去した。
【0104】
異種遺伝子のゲノム組み込みは転位によって行われた。EZ-Tn5(商標)トランスポザーゼ(Epicentre、USA)を使用して線状DNAフラグメントを組み込む又はマリナートランスポザーゼHimar1(mariner transposase Himar1)の高活性C9変異体を転置に採用した(Lampeら、Proc.Natl.Acad.Sci.1999,USA 96:11428~11433頁)。EZ-Tn5トランスポソームを生産するために、FRT部位に隣接する抗生物質耐性マーカーとともに目的の遺伝子をプライマー1119及び1120を用いて増幅した(使用したすべてのプライマーは以下の表3に列挙される);得られたPCR産物は、EZ-Tn5トランスポザーゼの19bpモザイクエンド認識部位の両方の部位を保持していた。目的のHimar1トランスポザーゼ発現コンストラクト(オペロン)を使用した組み込みについては、FRT部位に隣接する抗生物質耐性マーカーとともにpEcomarベクターに、同様にクローニングした。pEcomarベクターは、アラビノース誘導プロモーターParaBの制御下でマリナートランスポザーゼHimar1の高活性C9変異体をコードする。発現断片<Ptet-lacY-FRT-aadA-FRT>(配列番号67)は、EZ-Tn5トランスポザーゼを使用して組み込まれた。大腸菌K12 TG1(受託番号ABN72583)からのラクトースインポーターLacYについての遺伝子組み込みの成功後、プラスミドpCP20(Datsenko及びWanner、Proc.Natl.Acad.Sci.2000,USA 97:6640~6645頁)にコードされたFLPリコンビナーゼにより、ストレプトマイシン耐性クローンから耐性遺伝子を除去して、株#534を生成した。さらに、唯一の炭素源としてスクロース上で株が成長することができる、スクロースペルマーゼ(sucrose permase)、フルクトキナーゼ、スクロースヒドロラーゼ及び転写リプレッサーの遺伝子(それぞれ遺伝子cscB、cscK、cscA及びcscR)を含む大腸菌W(受託番号CP002185.1)のcsc遺伝子クラスターがゲノムに挿入された。このcscクラスターは、プラスミドpEcomar-cscABKRを使用した転位により、大腸菌BL21(DE3)株のゲノムに組み込まれた。UDP-N-アセチル-グルコサミンの新規合成を増強するために、L-グルタミン:D-フクトース-6-リン酸アミノトランスフェラーゼ(glmS)、大腸菌K-12亜株MG1655からのホスホグルコサミンムターゼ(glmM)及び大腸菌K-12亜株MG1655からのN-アセチルグルコサミン-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ/グルコサミン-1-リン酸アセチルトランスフェラーゼ(glmU)(それぞれ受託番号NP_418185、NP_417643、NP_418186)をコードする遺伝子は、コドン最適化され、遺伝子合成によって得られた。オペロンglmUMは、構成的テトラサイクリンプロモーターPtetの制御下でクローン化され、glmSは構成的PT5プロモーター下でクローン化された。マリナー様エレメントHimar1トランスポザーゼによって特異的に認識される逆方向末端反復配列に隣接するトランスポゾンカセット<Ptet-glmUM-PT5-glmS-FRT-dhfr-FRT>(配列番号68)がpEcomar-glmUM-glmSから挿入された。全体として、記載されるゲノムの修飾は、株開発のシャーシを表す大腸菌BL21(DE3)株#942をもたらす。表1、2及び3にはそれぞれ、すべての株、クローニングに使用されるオリゴヌクレオチド及びこの研究で使用される一般的なプラスミドが含まれる。
【0105】
発現カセット<Ptet-glmSm-gna1-FRT-aacC1-FRT>(配列番号69)、<Ptet-slr1975-FRT-cat-FRT>(配列番号70)、<Ptet-neuBC-FRT-kan-FRT>(配列番号71)及び<Ptet-ppsA-FRT-aad1-FRT>(配列番号72)のゲノム組み込みにより、#942株がシアル酸の生産のために修飾された。すべての遺伝子は、大腸菌での発現のためにコドン最適化され、GenScriptの協力により合成して調製された。GlmSmはGlmSの変異型を表し、グルコサミン-6-リン酸によるフィードバック阻害を排除する。遺伝子gna1は、サッカロマイセス・セレビシエに由来するグルコサミン-6-リン酸アセチルトランスフェラーゼをコードしている。遺伝子は、構成的プロモーターPtetの背後にオペロンとしてサブクローニングされ、プライマーglmSm/gna1_1~8を使用してFRT部位に隣接するゲンタマイシン耐性遺伝子と融合された。同様に、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)に由来するシアル酸シンターゼをコードする遺伝子neuB(受託番号AF305571)及びUDP-N-アセチルグルコサミン-2-エピメラーゼをコードするneuC(受託番号AF305571)は、構成的プロモーターPtetの背後にあるオペロンとしてサブクローニングされ、プライマーneuBC_1~6を使用してFRT部位に隣接するカナマイシン耐性遺伝子と融合された。遺伝子slr1975(受託番号BAL35720)も、構成的プロモーターPtetの背後にクローニングされ、プライマーslr_1~4を使用してFRT部位に隣接するクロラムフェニコール耐性遺伝子と融合され、シネコシスチス属種(Synechocystis sp.)PCC6803からのN-アセチルグルコサミン2-エピメラーゼをコードする。大腸菌BL21(DE3)のホスホエノールピルビン酸シンターゼをコードする遺伝子ppsA(受託番号ACT43527)を構成的発現のために同様にクローニングし、プライマーppsA_1~4を使用してFRT部位に隣接するストレプトマイシン耐性遺伝子と融合した。ゲノム組み込みにより、最終的にNeu5Ac生産株#1363がもたらされ、シアリルトランスフェラーゼ1~26のスクリーニングに使用された。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
[実施例2] ラクトースをアクセプターとして使用するがシアル酸の外因性添加を必要とするシアリルトランスフェラーゼのインビボスクリーニングができる大腸菌株の開発
大腸菌BL21(DE3)株#942を使用して、シアリルトランスフェラーゼ27~100をコードするプラスミドのスクリーニング株を構築した。したがって、シアル酸の取り込みとヌクレオチド活性化ができるようにするために、それぞれ遺伝子nanT及びneuAが組み込まれた。大腸菌Neu5Ac主要促進因子スーパーファミリートランスポーターをコードする、nanT遺伝子(受託番号B21_03035)は、大腸菌BL21(DE3)のゲノムDNAから増幅され、カンピロバクター・ジェジュニ(受託番号AF305571)由来のneuA遺伝子は、コドン最適化され、合成により得られた。遺伝子は、構成的テトラサイクリンプロモーターPtetの制御下でオペロンとしてクローニングされ、得られた発現フラグメント<Ptet-neuA-nanT-lox66-kan-lox72>(配列番号73)は、EZ-Tn5トランスポザーゼを使用して組み込まれ、スクリーニング株#1730を得た。
【0109】
【表3】
【0110】
[実施例3] シアリルトランスフェラーゼをコードするプラスミドコレクションの生成
特徴付けられた又は推定のシアリルトランスフェラーゼの遺伝子配列は、文献及び公共データベースから入手した。シアリルトランスフェラーゼは、そのシグナルペプチドが削除されたときに高活性を示すとしばしば説明されているため、我々は対応するタンパク質配列をオンライン予測ツールSignalPにより解析した(Petersenら、Nature Methods、2011年9月29日;8(10):785~6頁)。遺伝子は、注釈付き、全長形態又はシグナルペプチドが予測される場合には、N末端シグナルペプチドを欠く短縮型変異体として、GenScriptの協力により合成的に合成された(表4)。
【0111】
シアリルトランスフェラーゼ1~26は、遺伝子特異的プライマー(表2)を使用したSLICにより、neuAとともにオペロンとしてpDEST14に各々サブクローニングされ、一般的な種類のプラスミドpDEST14-siaT-neuAを得た。残りのシアリルトランスフェラーゼ27~100は、制限部位NdeI及びBamHIを使用してGenScriptの協力によりプラスミドpET11aに直接サブクローニングされた。両方の発現システムにより、IPTG誘導性遺伝子発現がなされる(図2)。インビボ活性スクリーニングのために、プラスミドは株#1363又は#1730に形質転換された一方で、大腸菌BL21(DE3)野生型又はそのlacZ欠損変異体(株#287)をインビトロアッセイに使用した。
【0112】
【表4】
【0113】
[実施例4] アクセプター基質としてラクトースを使用するα-2,3-及びα-2,6-シアリルトランスフェラーゼの同定及び特徴付け
100個のシアリルトランスフェラーゼをコードするプラスミドを保持する大腸菌BL21(DE3)#1363及び#1730を、2%(wt/vol)グルコース、アンピシリン100μg ml-1、カナマイシン15μg ml-1及びゼオシン40μg ml-1を補充した20mlの無機塩培地を満たした100ml振盪フラスコ中に30℃で増殖させた(Samainら、J.Biotech. 1999,72:33-47頁)。培養物が0.1~0.3のOD600に達したときに、0.3mM IPTGの添加により遺伝子発現を誘導した。1時間のインキュベーション後、1.5mMラクトースを#1363培養液に加え、1.5mMラクトース及び1.5mMシアル酸を#1730培養液に加えた。インキュベーションを72~96時間継続した。次に、細胞を遠心分離によって収穫し、ガラスビーズを使用して、規定された容量で機械的に破砕した。その後、シリカゲル60 F254(Merck KGaA、Darmstadt、ドイツ)上の薄層クロマトグラフィー(TLC)にサンプルを適用した。ブタノール:アセトン:酢酸:HO(35/35/7/23(v/v/v/v))の混合物を移動相として使用した。分離された物質の検出のために、TLCプレートをチモール試薬(95mlエタノールに溶解した0.5gチモール、5ml硫酸を添加)に浸し、加熱した。
【0114】
結果を表5にまとめる。スクリーニング全体で、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼをコードする、すなわち3’-SLを生産する32個の遺伝子が同定された。19個の酵素が6’-SLを合成し、α-2,6-シアリルトランスフェラーゼとして示された。α-2,3-及びα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ活性は、3つの酵素のみで観察できた。したがって、46個の酵素の発現は、シアリルラクトース形成をもたらさなかった。広く特徴付けられたシアリルトランスフェラーゼの記載された活性、例えば、SiaT1(Gilbertら、J Biol Chem. 1996年11月8日;271(45):28271~6頁;Gilbertら、Eur J Biochem. 1997年10月1日;249(1):187~94頁)、SiaT6(Tsukamotoら、J Biochem. 2008年2月;143(2):187~97頁)及びSiaT11(Yamamotoら、J Biochem. 1996年7月;120(1):104~10頁)を確認できたため、スクリーニングは非常に正確だと考えられた。生産物の形成に関しては、実験設定によりスクリーニングされた酵素の半定量的比較ができた。しかし、それらの速度論的特性についてのより深い知識を得るために、3つの潜在的に最高の性能を持つα-2,3-及びα-2,6-シアリルトランスフェラーゼをインビトロアッセイに適用した。
【0115】
【表5】
【0116】
[実施例5] アクセプター基質としてラクト-N-テトラオースを使用したα-2,3-及びα-2,6-シアリルトランスフェラーゼの同定及び特徴付け
100個のシアリルトランスフェラーゼをコードするプラミドを保持する大腸菌BL21(DE3)を、アンピシリン100μgml-1を補充した20mlの2YT培地で満たした100ml振盪フラスコ中、30℃で増殖させた。培養液が0.1~0.3のOD600に達したとき、0.3mM IPTGの添加により遺伝子発現を誘導させ、インキュベーションを12~16時間継続した。遠心分離により細胞を収穫し、ガラスビーズを使用して、規定された容量の50mM Tris-HCl pH7.5中で機械的に破砕した。タンパク質抽出物は、アッセイが開始されるまで氷上に置いた。50mM Tris-HCl pH7.5、5mM MgCl、10mM CMP-Neu5Ac及び5mM LNTを含む25μlの総容量でインビトロアッセイを行った。アッセイは、3μlのタンパク質抽出物の添加により開始し、16時間継続した。生産物生成は、質量分析により決定した。
【0117】
質量分析は、LC Triple-Quadrupole MS検出システムを使用したMRM(複数反応モニタリング)によって実行した。前駆体イオンを選択し、四重極1で分析し、CIDガスとしてアルゴンを使用して衝突セル内でフラグメンテーションを行い、フラグメントイオンの選択を四重極3で実行する。HO(LC/MSグレード)での培養上清の1:100希釈後のラクトース、3’-シアリルラクトース、6’-シアリルラクトースのクロマトグラフィー分離は、XBridge Amideガードカートリッジ(3.5μm、2.1x10mm)(Waters、米国)を備えたXBridge Amide HPLCカラム(3.5μm、2.1x50mm)(Waters、米国)で実行した。HPLCシステムのカラムオーブン温度は50℃であった。移動相はアセトニトリル:10mM酢酸アンモニウムを含むHOで構成されていた。1μlのサンプルを装置に注入した;試行は、400μl/minの流量で3.60分間、行った。3’-シアリルラクトース及び6’-シアリルラクトースをESI陽イオン化モードでMRMにより分析した。質量分析計は単位分解能で操作した。シアリルラクトースは、m/z 656.2 [M+Na]のイオンを形成する。シアリルラクトースの前駆イオンは、さらに衝突セル内でフラグメント化させ、フラグメントイオンm/z 612.15、m/z 365.15及びm/z 314.15にさせる。衝突エネルギー、Q1及びQ3 Pre Biasは、各分析物に対して個別に最適化された。無粒子生体触媒反応又は粗抽出物をそれぞれHO(LC/MSグレード)で1:50に希釈した後、ラクトース、LNT-II、LNT及びLST-a又は-bのクロマトグラフィー分離を、XBridge Amideガードカートリッジ(3.5μm、2.1x10mm)(Waters、米国)を備えたXBridge Amide HPLCカラム(3.5μm、2.1x50mm)(Waters、米国)で実行した。カラムオーブンは35℃で行った。移動相は、アセトニトリル:0.1%水酸化アンモニウムを含むHOで構成された。1μlのサンプルを装置に注入し、試行を、300μl/minの流量で3.50分間、実行した。ラクトース、LNT-II、LNT並びにLST-a及び-bを、ESI陰イオン化モードでMRMにより分析した。質量分析計は、単位分解能で操作した。ラクトースはm/z 341.00 [M-H]のイオンを形成する。ラクトースの前駆イオンは、衝突セル内でフラグメントイオンm/z 179.15、m/z 161.15及びm/z 101.05に、さらにフラグメント化された。LNT-IIは、m/z 544.20 [M-H]のイオンを形成する。LNT-IIの前駆イオンは、フラグメントイオンm/z 382.10、m/z 161.00及びm/z 112.90に、さらにフラグメント化された。LNTはm/z 706.20 [M-H]のイオンを形成する。LNTの前駆イオンは、フラグメントイオンm/z 382.10、m/z 202.10及びm/z 142.00に、さらにフラグメント化された。LST-a及び-bは、m/z 997.20 [M-H]のイオンを形成する。LST-a及び-bの前駆イオンは、フラグメントイオンm/z 290.15、m/z 202.15及びm/z 142.15に、さらにフラグメント化された。衝突エネルギー、Q1及びQ3 Pre Biasは、各分析物に対して個別に最適化された。定量化方法は、市販の標準(Carbosynth、Compton、英国)を使用して確立された。
【0118】
インビトロスクリーニングの結果を表5に要約する。28の遺伝子がLST-aを生産することを同定したが、6つの酵素のみがLST-bを合成した。したがって、66の酵素の発現は、LST-a又はLST-bの形成をもたらさなかった。LNTをシアリル化することがすでに記載されているSiaT1の活性(Gilbertら、J Biol Chem. 1996年11月8日;271(45):28271~6頁;Gilbertら、Eur J Biochem. 1997年10月1日;249(1):187~94頁)を検証できたため、このアッセイは正確であるとみなされた。タンパク質の過剰発現レベルに関係なく、K及びVmaxの測定に最適に生産されたシアリルトランスフェラーゼが選択された。
【0119】
[実施例6] 選択されたシアリルトランスフェラーゼの速度論的特性の特徴付け
最高性能のシアリルトランスフェラーゼをランク付けするために、ドナー及びアクセプター基質のK値をインビトロで決定した。大腸菌BL21(DE3)株#287を酵素の過剰生産に使用した。細胞を、100μgml-1アンピシリンを補充した振盪フラスコ内の100ml 2YT培地中で、OD6000.3に達するまで30℃でインキュベートした。次に、0.3mM IPTGを添加し、インキュベーションを12~16時間継続させた。遠心分離により細胞を収穫し、ガラスビーズを使用して、規定の容量の50mM Tris-HCl pH7.5中で機械的に破砕した。タンパク質抽出物は、アッセイが開始されるまで氷上に置いた。インビトロアッセイは、50mM Tris-HCl pH7.5、5mM MgCl及びさまざまな濃度のCMP-Neu5Ac(0.05~30mM)並びにラクトース又はLNT(0.1~50mM)を含む総容量50μl中で行った。アッセイは、35~750μgのタンパク質抽出物の添加で開始した。30℃で1~10分間インキュベートした後、95℃、5分間でアッセイを不活性化した。生産物の形成は、質量分析により決定された。K及びVmaxを計算するために、SigmaPlot v12.5の酵素動態モジュールを使用してデータを評価した。
【0120】
スクリーニング中、LST-a生産について最高性能のα-2,3-シアリルトランスフェラーゼは、SiaT8、SiaT9及びSiaT20のようであった。対照的に、SiaT6、SiaT18及びSiaT19は、試験されたα-2,6-シアリルトランスフェラーゼの中で、LNTを最も効率的にシアリル化することが観察された。CMP-Neu5Ac及びLNT並びにラクトースについての速度論的パラメーターを表6に示す。SiaT20だけはミカエリス-メンテンの速度論に従わない。
【0121】
【表6】
【0122】
[実施例7] アクセプター基質としてLNTを使用してシアリルトランスフェラーゼのインビボ活性をスクリーニングするためのラクト-N-テトラオース生産株の生成
大腸菌BL21(DE3)株#534を使用して、ラクト-N-テトラオース(LNT)生産株を構築した。ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)MC58由来のβ-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ遺伝子lgtA(受託番号NP_274923)は、大腸菌での発現のためにコドン最適化され、遺伝子合成により合成的に調製された。遺伝子合成により同様に得られた、大腸菌K-12亜株MG1655(受託番号NP_415279)由来のガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼをコードする遺伝子galTとともに、lgtAは、プラスミドpEcomar-lgtA-galTを使用して転位(配列番号188)により挿入された。UDP-N-アセチルグルコサミンの新規合成を増強するために、L-グルタミン:D-フクトース-6-リン酸アミノトランスフェラーゼ(glmS)をコードする遺伝子、大腸菌K-12亜株MG1655(glmM)由来のホスホグルコサミンムターゼ及び大腸菌K-12亜株MG1655からのN-アセチルグルコサミン-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ/グルコサミン-1-リン酸アセチルトランスフェラーゼ(glmU)(それぞれ受託番号NP_418185、NP_417643、NP_418186)は、コドン最適化され、遺伝子合成によって得られた。オペロンglmUMは、構成的テトラサイクリンプロモーターPtetの制御下でクローニングされ、glmSは構成的PT5プロモーター下でクローニングされた。マリナー様要素Himar1トランスポザーゼによって特異的に認識される逆方向末端反復配列に隣接した、トランスポゾンカセット<Ptet-glmUM-PT5-glmS-FRT-dhfr-FRT>がpEcomar-glmUM-glmSから挿入され、ラクト-N-トリオースII生産株が明らかになった。代謝工学には、pEcomar-wbdO-galEから挿入された、mariner様要素Himar1トランスポザーゼによって特異的に認識される逆方向末端反復配列に隣接した、トランスポゾンカセット<Ptet-wbdO-PT5-galE-FRT-cat-FRT>(配列番号187)のゲノム組み込みがさらに含まれる。N-アセチルノイラミン酸の細胞内分解を防ぐために、Datsenko及びWanner(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:6640~6645頁(2000))の方法にしたがって、nanKETA遺伝子クラスターを大腸菌株BL21(DE3)株のゲノムから削除した。LNTのシアリル化に十分なドナー基質(CMP-Neu5Ac)を提供するために、シアル酸の取り込みメカニズム並びにそのヌクレオチド活性化能力が大腸菌株に実装された。上記のように、遺伝子nanT及びneuAは、構成的テトラサイクリンプロモーターPtetの制御下で、オペロンとしてクローニングされ(プライマーneuA/nanT_1~6を使用して)及び結果として生じる発現フラグメント<Ptet-neuA-nanT-lox66-kan-lox72>は、EZ-Tn5トランスポザーゼを使用して組み込まれ、最終的に株#2130を生成した。
【0123】
[実施例8] 異なるシアリルトランスフェラーゼを発現する大腸菌BL21(DE3)#2130のバッチ発酵
シアリルトランスフェラーゼSiaT9又はSiaT19をコードする発現プラミドを保持する大腸菌BL21(DE3)#2130細胞を、2%(wt/vol)グルコース、5g/l NHCl、アンピシリン100μg ml-1、カナマイシン15μg ml-1及びゲンタマイシン5μg ml-1を補充した25mlの無機塩培地(Samainら、J. Biotech.1999、72:33~47頁)を満たした100mlの振盪フラスコ中、30℃で増殖させた。培養物が0.5~1のOD600に達した時に、3mMのラクトースを添加した。24時間のインキュベーション後、0.3mM IPTGの添加によりシアリルトランスフェラーゼ遺伝子発現が誘導された。付随して、3mMのシアル酸を培養液に加えた。インキュベーションは48時間継続させた。その後、細胞を遠心分離により収穫し、ガラスビーズを使用して、規定の容積で機械的に破砕した。続いて、シアリルラクト-N-テトラオース-a及び-bの細胞内形成を確認するために薄層クロマトグラフィー(TLC)を実行した。図3に示すように、株#2130でのsiaT9又はsiaT19の発現は、それぞれLST-a及びLST-bの形成をもたらした。結果は、質量分析によって検証された。
図1
図2
図3
【配列表】
2024010049000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-11-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアリル化オリゴ糖を生産するための方法であって、
a)異種シアリルトランスフェラーゼを含む少なくとも1つの遺伝子操作された細胞を提供するステップであって、異種シアリルトランスフェラーゼが、シアル酸残基を、ドナー基質としてのそのヌクレオチド活性化形態からアクセプター分子に転移するための、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼ活性及び/又はα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ活性を有しており、アクセプター分子が、ラクト-N-テトラオースであり、異種シアリルトランスフェラーゼが、
i.配列番号34、35、36、40、61、62及び63のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;又は
ii.配列番号34、35、36、40、61、62及び63のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片
から選択される、ステップ;
b)前記シアリル化オリゴ糖の生産を許容する条件下で、前記少なくとも1つの遺伝子操作された細胞を、発酵ブロス中で培養するステップであって、前記シアリル化オリゴ糖の生産は、発酵ブロス中での遺伝子操作された細胞の培養中に起こるステップ;及び
c)発酵ブロス又は前記少なくとも1つの遺伝子操作された細胞から、発酵ブロス中での培養中に前記少なくとも1つの遺伝子操作された細胞によって生産されたシアリル化オリゴ糖を回収するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
シアリル化オリゴ糖が、LST-a、LST-b、LST-c及びDSLNTからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
発酵ブロスが、少なくとも1つの炭素源を含み、少なくとも1つの炭素源が、グルコース、フルクトース、スクロース、グリセロール及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
発酵ブロスが、N-アセチルグルコサミン、ガラクトース及びシアル酸からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの細胞が、N-アセチルグルコサミン、ガラクトース及びシアル酸からなる群から選択される1つ以上の非存在下で、及び/又はそれを添加せずに培養される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの細胞が、ラクトースラクト-N-トリオースII及びLNTからなる群から選択される少なくとも1つの存在下で培養される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
遺伝子操作された細胞が、異種シアリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み、ヌクレオチド配列が、
i.配列番号1、2、3、7、28、29及び30のいずれか1つで表されるヌクレオチド配列;
ii.配列番号34、35、36、40、61、62及び63のいずれか1つで表されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
iii.i及びiiのヌクレオチド配列のいずれか1つに相補的なヌクレオチド配列;及び
iv.i、ii及びiiiのヌクレオチド配列のいずれか1つの断片
からなる群から選択され、
ヌクレオチド配列が、遺伝子操作された細胞において異種シアリルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳をもたらす少なくとも1つの核酸発現制御配列に作動可能に連結される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
遺伝子操作された細胞が、遺伝子操作される前の細胞と比較して、CMP-N-アセチルノイラミン酸、UDP-N-アセチルグルコサミン、UDP-ガラクトース及びGDP-フコースからなる群から選択されるヌクレオチド活性化糖の1つ以上の生産増加を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
遺伝子操作された細胞が、遺伝子操作される前の細胞と比較して、L-グルタミン:D-フルクトース-6-リン酸アミノトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ、グルコサミン-1-リン酸アセチルトランスフェラーゼ、ホスホグルコサミンムターゼ、グルコサミン-6-リン酸-N-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-2-エピメラーゼ、UDP-N-アセチルグルコサミン-2-エピメラーゼ、シアル酸シンターゼ、ホスホエノールピルビン酸シンターゼ、CMP-シアル酸シンテターゼ、UDP-ガラクトース-4-エピメラーゼ、ガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ホスホグルコムターゼ、グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ホスホマンノムターゼ、マンノース-1-リン酸グアノシルトランスフェラーゼ、GDP-マンノース-4,6-デヒドラターゼ、GDP-L-フコースシンターゼ及びフコースキナーゼ/L-フコース-1-リン酸-グアニルトランスフェラーゼからなる群から選択される酵素活性を有することが可能なポリペプチドをコードする1つ以上の遺伝子の過剰発現を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
細胞が、遺伝子操作される前の細胞と比較して、β-ガラクトシダーゼ、グルコサミン-6-リン酸デアミナーゼ、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸デアセチラーゼ、N-アセチルマンノサミンキナーゼ、N-アセチルマンノサミン-6-リン酸エピメラーゼ及びN-アセチルノイラミン酸アルドラーゼからなる群から選択される酵素活性の1つ以上の活性低下を有する若しくは欠如している、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
β-ガラクトシダーゼ、グルコサミン-6-リン酸デアミナーゼ、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸デアセチラーゼ、N-アセチルマンノサミンキナーゼ、N-アセチルマンノサミン-6-リン酸エピメラーゼ及びN-アセチルノイラミン酸アルドラーゼをコードする遺伝子の1つ以上が、削除されている又はその発現が、遺伝子操作された細胞内で不活性化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの細胞が、機能的ラクトースパーミアーゼ、機能的フコースパーミアーゼ及び機能的シアル酸トランスポーター(インポーター)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、好ましくは、機能的ラクトースパーミアーゼ、機能的フコースパーミアーゼ及び機能的シアル酸トランスポーター(インポーター)からなる群から選択される1つをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含み及び発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
細胞が、β-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼ及びα-2,6-シアリルトランスフェラーゼからなる群から選択される少なくとも1つのグリコシルトランスフェラーゼの活性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
シアリル化オリゴ糖を生産するための方法であって、
a)反応混合物中にシアリルトランスフェラーゼを提供するステップであって、シアリルトランスフェラーゼが、シアル酸残基を、ドナー基質としてのそのヌクレオチド活性化形態からアクセプター分子に転移するための、α-2,3-シアリルトランスフェラーゼ活性及び/又はα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ活性を有しており、アクセプター分子が、ラクト-N-テトラオースであり、異種シアリルトランスフェラーゼが、
i.配列番号34、35、36、40、61、62及び63のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;又は
ii.配列番号34、35、36、40、61、62及び63のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片
から選択される、ステップ;
b)シアリルトランスフェラーゼをドナー基質及びアクセプター分子と接触させるステップであって、アクセプター分子が、ラクト-N-テトラオースである、ステップ
を含む、方法。