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  • 特開-光ファイバケーブル 図1
  • 特開-光ファイバケーブル 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100491
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
G02B6/44 366
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004522
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 豊明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文昭
(72)【発明者】
【氏名】土屋 健太
(72)【発明者】
【氏名】中山 周平
【テーマコード(参考)】
2H201
【Fターム(参考)】
2H201AX03
2H201BB06
2H201BB08
2H201BB22
2H201BB25
2H201BB44
2H201BB45
2H201BB65
2H201BB75
2H201BB80
2H201DD14
2H201KK07
2H201KK08
2H201KK12
2H201KK17
2H201KK33C
2H201KK34C
2H201KK39C
2H201KK46C
2H201KK48C
2H201MM15
2H201MM16
(57)【要約】
【課題】より高い難燃性を有する光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】複数の光ファイバを収納したケーブルコアと、前記ケーブルコアの外周に巻き付けられた押え巻きテープと、前記押え巻きテープの外周に被覆されたケーブル外被と、を備え、前記押え巻きテープの酸素指数は50以上であり、前記ケーブル外被の酸素指数は35以上である、光ファイバケーブル。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバを収納したケーブルコアと、
前記ケーブルコアの外周に巻き付けられた押え巻きテープと、
前記押え巻きテープの外周に被覆されたケーブル外被と、を備え、
前記押え巻きテープの酸素指数は50以上であり、
前記ケーブル外被の酸素指数は35以上である、光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記ケーブル外被よりも内側にある可燃物の断面積を、前記ケーブル外被を除く前記光ファイバケーブルの断面積で除すことで得られる可燃物断面積比率は33%以上である、請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
1000心以上の前記光ファイバが前記ケーブルコアに収容されている、請求項1または請求項2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記押え巻きテープには、難燃剤が塗布されている、請求項1または請求項2に記載の光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、外周が難燃シースで被覆されている難燃ケーブルを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-254016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光ファイバケーブルに求められる難燃性について、高い基準を満たそうとすると、ケーブル外被の難燃性を高めるだけでは困難なことがある。
【0005】
本開示は、より高い難燃性を有する光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための一態様に係る光ファイバケーブルは、
複数の光ファイバを収納したケーブルコアと、
前記ケーブルコアの外周に巻き付けられた押え巻きテープと、
前記押え巻きテープの外周に被覆されたケーブル外被と、を備え、
前記押え巻きテープの酸素指数は50以上であり、
前記ケーブル外被の酸素指数は35以上である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、より高い難燃性を有する光ファイバケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第一実施形態に係るスロット型光ファイバケーブルの断面図である。
図2図2は、第二実施形態に係るスロット型光ファイバケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の実施形態の説明)
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の一態様に係る光ファイバケーブルは、
(1)複数の光ファイバを収納したケーブルコアと、
前記ケーブルコアの外周に巻き付けられた押え巻きテープと、
前記押え巻きテープの外周に被覆されたケーブル外被と、を備え、
前記押え巻きテープの酸素指数は50以上であり、
前記ケーブル外被の酸素指数は35以上である。
この構成によれば、押え巻きテープの酸素指数は50以上であり、またケーブル外被の酸素指数は35以上である。つまり、押え巻きテープと、ケーブル外被と、は共に難燃性である。ケーブル外被の酸素指数は35以上であるので、燃焼しにくい。また、ケーブル外被の内側に配置される押え巻きテープの酸素指数は50以上であるので、さらに燃焼しにくい。その結果、熱が光ファイバケーブルの内部に伝わり、光ファイバケーブルの内部が延焼するのを抑制することができる。したがって、上記構成に係る光ファイバケーブルは、より高い難燃性を有する。
【0010】
(2)上記(1)に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記ケーブル外被よりも内側にある可燃物の断面積を、前記ケーブル外被を除く前記光ファイバケーブルの断面積で除すことで得られる可燃物断面積比率は33%以上であってもよい。
この構成によれば、光ファイバを高密度で実装して可燃物の断面積率を高くしたとしても、押え巻きテープおよびケーブル外被の酸素指数が高いので、上記構成に係る光ファイバケーブルは、高い難燃性を有する。
【0011】
(3)上記(1)または(2)に記載の光ファイバケーブルにおいて、1000心以上の前記光ファイバが前記ケーブルコアに収容されていてもよい。
この構成によれば、1000心以上の比較的多くの光ファイバをケーブルコアに収容させつつも、高い難燃性を有する光ファイバケーブルとすることができる。
【0012】
(4)上記(1)から(3)のいずれか一つに記載の光ファイバケーブルにおいて、前記押え巻きテープには、難燃剤が塗布されていてもよい。
この構成によれば、押え巻きテープには、高い難燃性を持たせるための難燃剤が塗布されており、酸素指数を高くすることができるので、このような押え巻きテープを備える光ファイバケーブルは高い難燃性を有する。
【0013】
(本開示の実施形態の詳細)
本開示の実施形態に係る光ファイバケーブルの具体例を、以下に図面を参照して説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0014】
(第一実施形態)
図1を参照しつつ、第一実施形態に係る光ファイバケーブル1について説明する。図1は、光ファイバケーブル1の断面図である。
【0015】
図1に例示するように、光ファイバケーブル1は、ケーブルコア2と、押え巻きテープ4と、ケーブル外被5と、を備える。光ファイバケーブル1の外径は、例えば31mm以上35mm以下である。光ファイバケーブル1は、ケーブルコア2の内部に配置され、かつケーブルコア2の中央に抗張力体33を有するスロットロッド3に、放射状に複数のスロット溝31が設けられた構造となっている。なお、複数のスロット溝31は、光ファイバケーブル1の長手方向に螺旋状またはSZ状等に撚られた形状で設けられていてもよい。
【0016】
抗張力体33は、例えば繊維強化プラスチック(FRP)から形成されている。繊維強化プラスチックとしては、例えば、アラミドFRP、ガラスFRP、カーボンFRP等である。なお、抗張力体33は、液晶ポリマーで形成されていてもよい。抗張力体33は、無誘導性であると好ましい。抗張力体33は、例えば断面視で円形状である。
【0017】
各スロット溝31には、並列状態から丸められて密集状態にされた光ファイバテープ心線10がそれぞれ複数収容されている。スロットロッド3の周囲には押え巻きテープ4が巻かれている。押え巻きテープ4の周囲にはケーブル外被5が形成されている。
【0018】
スロットロッド3は、例えば、ポリエチレン等の樹脂材料から形成されている。スロットロッド3は、複数のスロット溝31を形成するための複数のリブ32を有する。本実施形態において、スロットロッド3は6つのリブ32を有しており、当該6つのリブ32は、例えば、抗張力体33を中心として60度間隔で規則的に配置されている。したがって、光ファイバケーブル1は、6条のスロット溝31を有する6溝型の光ファイバケーブルである。
【0019】
光ファイバテープ心線10は、例えば12心の光ファイバ心線を含む。当該光ファイバ心線の外径は、例えば170μm以上200μm以下であり、比較的細い。12心の光ファイバ心線は、その長手方向に直交する方向に並列に配列されている。光ファイバテープ心線10の少なくとも一部の隣接する光ファイバ心線間には、当該隣接する光ファイバ心線間が連結された状態の連結部と、当該隣接する光ファイバ心線間が連結されていない状態の非連結部とが、光ファイバ心線の長手方向に間欠的に設けられている。本実施形態においては、2心毎に連結部と非連結部とが光ファイバ心線の長手方向に間欠的に設けられている。非連結部は、例えば、連結部を形成するための連結樹脂の一部を回転刃等で切断することにより形成される。
【0020】
本実施形態において、各スロット溝31には48枚の光ファイバテープ心線10が収容されている。つまり、各スロット溝31には576心の光ファイバ心線が収容されている。したがって、光ファイバケーブル1のケーブルコア2には、3456心の光ファイバが収容されている。
【0021】
押え巻きテープ4は、例えば、PET等の基材と、不織布と、を貼り合わせたもの等が用いられうる。当該基材および不織布には、例えば難燃剤が塗布されうる。当該難燃剤は、環境負荷低減の観点から、金属水酸化物、窒素系難燃剤、リン系難燃剤等のノンハロゲン系難燃剤が好ましい。ただし、当該難燃剤は、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤であってもよい。押え巻きテープ4の酸素指数は50以上である。なお、酸素指数とは、材料が燃焼を持続するのに必要な最低酸素濃度(容量%)である。酸素指数は、JIS K7201-2:2007に準拠して、試料(材料)の燃焼時間が180秒以上継続する、又は、接炎後の燃焼長さが50mm以上燃え続けるのに必要な最低の酸素濃度を測定することより求めることができる。押え巻きテープ4の厚さは、例えば、0.13mm以上0.15mm以下であり、比較的薄い。押え巻きテープ4の内側には、吸水剤(例えば吸水パウダ)が付与されていてもよい。
【0022】
ケーブル外被5は、例えば、ポリオレフィン系樹脂等の樹脂材料から形成されている。なお、ポリオレフィン系樹脂は、酸素指数が比較的低く、ケーブル外被5には、押え巻きテープ4に塗布される難燃剤と同様の難燃剤が塗布されているため、ケーブル外被5の酸素指数は35以上である。このように、ケーブル外被5は高い難燃性を有する。ケーブル外被5には、例えば、シリコン系の滑剤が含まれている。ケーブル外被5は、押え巻きテープ4が巻回されたスロットロッド3および複数の光ファイバテープ心線10の周囲に樹脂を押出成形することにより形成される。ケーブル外被5の厚さは、例えば、2.5mmである。
【0023】
上述したように、光ファイバケーブル1は、難燃性の高い押え巻きテープ4およびケーブル外被5を備えている。したがって、このような難燃性の高い押え巻きテープ4およびケーブル外被5が共に燃焼しない限り、ケーブルコア2の内部に収容されたスロットロッド3、光ファイバテープ心線10、抗張力体33等の可燃物は燃焼しない。このように、光ファイバケーブル1は、高い難燃性を有しており、欧州のCPR(Construction Products Regulation)規格におけるCクラス以上に適合する。
【0024】
ここで、ケーブル外被5を除く光ファイバケーブル1の断面積S1に占める可燃物(本実施形態においては、スロットロッド3、光ファイバテープ心線10、および抗張力体33)の断面積S2の比率を可燃物断面積比率とする。なお、可燃物断面積比率は、断面積S2を断面積S1で除することで求められる。光ファイバケーブル1における可燃物断面積比率は33%以上である。
【0025】
次に、本実施形態の実施例について説明する。なお、本開示は以下の実施例に限定されない。
【0026】
光ファイバケーブル1の外径、ケーブル外被5の酸素指数、押え巻きテープ4の種類、押え巻きテープ4の酸素指数および押え巻きテープ4の厚さを異ならせて、可燃物断面積比率と、光ファイバケーブル1の難燃性と、を評価した。
【0027】
表1は、実験例1から実験例8におけるケーブル外被5を除く光ファイバケーブル1の可燃物断面積比率および光ファイバケーブル1の難燃性を示している。本実施形態では、多条布設された光ファイバケーブル1を、バーナー出力20kWのバーナーで20分間燃焼させ、損傷長、発煙量、総発熱量および発熱速度を測定することで、光ファイバケーブル1の難燃性を評価した。具体的には、損傷長の測定結果に基づいて抗燃焼性を、発煙量の測定結果に基づいて低発煙性を、総発熱量および発熱速度の測定結果に基づいて発熱性を、それぞれ評価した。なお、損傷長とは、上記条件で燃焼させた際、燃えたケーブルの長さを測定したものである。発煙量とは、発生した煙の量を目視で測定したものである。発熱速度とは、物が燃えるときに発生する単位面積、単位時間あたりのエネルギーであり、総発熱量とは、燃焼開始から燃焼終了までの時間における発熱速度を累積した値である。また、光ファイバケーブル1の長さは3.5mとした。この燃焼実験は、国際難燃性標準規格EN50399に準じている。
【0028】
抗燃焼性については、損傷長が1.5m未満の場合は良好(A評価)とし、1.5m以上2m未満の場合はやや不良(B評価)とし、2m以上の場合は不良(C評価)とした。低発煙性については、発煙量が50m未満である場合は良好(A評価)とし、50m以上400m未満である場合はやや不良(B評価)とし、400m以上である場合は不良(C評価)とした。総発熱量については、15MJ/m未満の場合は良好(A評価)とし、15MJ/m以上30MJ/m未満の場合はやや不良(B評価)とし、30MJ/m以上の場合は不良(C評価)とした。発熱速度については、30kW/m未満の場合は良好(A評価)とし、30kW/m以上60kW/m未満の場合はやや不良(B評価)とし、60kW/m以上の場合は不良(C評価)とした。
【表1】
【0029】
まず初めに、実験例1および実験例2について説明する。実験例1および実験例2において、光ファイバケーブル1は、押え巻きテープ4の種類が共に非難燃テープであり、かつケーブル外被5の厚さが共に2.5mmであるが、光ファイバケーブル1の外径およびケーブル外被5の酸素指数は異なっている。実験例1に係る光ファイバケーブル1の外径は34mmであるのに対し、実験例2に係る光ファイバケーブル1の外径は31mmである。このため、実験例1および実験例2において、光ファイバケーブル1の可燃物断面積比率も異なっている。なお、実施例1および実験例2における押え巻きテープは非難燃テープであるため、実施例1および実験例2においては、押え巻きテープも可燃物として可燃物断面積比率を計算している。また、実験例1に係るケーブル外被5の酸素指数は35であるのに対し、実験例2に係るケーブル外被5の酸素指数は32である。
【0030】
実験の結果、実験例1に係る光ファイバケーブル1の抗燃焼性は良好(A評価)、低発煙性はやや不良(B評価)、総発熱量は不良(C評価)、発熱速度は不良(C評価)となった。
【0031】
実験の結果、実験例2に係る光ファイバケーブル1の抗燃焼性はやや不良(B評価)、低発煙性はやや不良(B評価)、総発熱量は不良(C評価)、発熱速度は不良(C評価)となった。
【0032】
次に、実験例3から実験例8について説明する。実験例3から実験例8において、光ファイバケーブル1は、いずれも押え巻きテープ4の種類が難燃テープであり、かつケーブル外被5の厚さが2.5mmであるが、光ファイバケーブル1の外径、ケーブル外被5の酸素指数、押え巻きテープ4の酸素指数および押え巻きテープ4の厚さは異なっている。実験例3および実験例5から実験例8に係る光ファイバケーブル1の外径は34mmであるのに対し、実験例4に係る光ファイバケーブル1の外径は31mmである。実験例3から実験例5および実験例7に係るケーブル外被5の酸素指数は35であるのに対し、実験例6および実験例8に係るケーブル外被5の酸素指数は32である。実験例3、実験例4および実験例6に係る押え巻きテープ4の酸素指数は50であるのに対し、実験例5に係る押え巻きテープ4の酸素指数は45であり、実験例7および実験例8に係る押え巻きテープ4の酸素指数は70である。実験例3から実験例6に係る押え巻きテープ4の厚さは0.13mmであるのに対し、実験例7および実験例8に係る押え巻きテープ4の厚さは0.15mmである。なお、実験例3から実験例8において、光ファイバケーブル1の可燃物断面積比率は異なっている。実験例3に係る光ファイバケーブル1の可燃物断面積比率は33%である。実験例4および実験例6から実験例8に係る光ファイバケーブル1の可燃物断面積比率は39%である。実験例5に係る光ファイバケーブル1の可燃物断面積比率は35%である。
【0033】
実験の結果、実験例3に係る光ファイバケーブル1の抗燃焼性は良好(A評価)、低発煙性は良好(A評価)、総発熱量は良好(A評価)、発熱速度は良好(A評価)となった。
【0034】
実験の結果、実験例4に係る光ファイバケーブル1の抗燃焼性は良好(A評価)、低発煙性は良好(A評価)、総発熱量は良好(A評価)、発熱速度は良好(A評価)となった。
【0035】
実験の結果、実験例5に係る光ファイバケーブル1の抗燃焼性は良好(A評価)、低発煙性は良好(A評価)、総発熱量はやや不良(B評価)、発熱速度は不良(C評価)となった。
【0036】
実験の結果、実験例6に係る光ファイバケーブル1の抗燃焼性はやや不良(B評価)、低発煙性は良好(A評価)、総発熱量はやや不良(B評価)、発熱速度はやや不良(B評価)となった。
【0037】
実験の結果、実験例7に係る光ファイバケーブル1の抗燃焼性は良好(A評価)、低発煙性は良好(A評価)、総発熱量は良好(A評価)、発熱速度は良好(A評価)となった。
【0038】
実験の結果、実験例8に係る光ファイバケーブル1の抗燃焼性はやや不良(B評価)、低発煙性は良好(A評価)、総発熱量は良好(A評価)、発熱速度は良好(A評価)となった。
【0039】
実験例1から実験例8の結果から、抗燃焼性はケーブル外被5の酸素指数に依存し、低発煙性および発熱性は押え巻きテープ4の種類と、押え巻きテープ4の酸素指数と、に依存することがわかった。また、実験例3、実験例4および実験例7の結果から、難燃テープである押え巻きテープ4の酸素指数が50以上であり、かつ、ケーブル外被5の酸素指数が35以上である光ファイバケーブル1は、抗燃焼性、低発煙性および発熱性のいずれも良好であることがわかった。そして、実験例3、実験例4および実験例7の結果から、押え巻きテープ4の酸素指数が50以上であり、かつ、ケーブル外被5の酸素指数が35以上であれば、光ファイバケーブル1における可燃物断面積比率が33%以上であっても、抗燃焼性、低発煙性および発熱性のいずれもが良好な光ファイバケーブル1が得られた。
【0040】
以上のような光ファイバケーブル1によれば、押え巻きテープ4の酸素指数は50以上であり、またケーブル外被5の酸素指数は35以上である。つまり、押え巻きテープ4とケーブル外被5は共に難燃性である。ケーブル外被5の酸素指数は35以上であるので、燃焼しにくい。また、ケーブル外被5の内側に配置される押え巻きテープ4の酸素指数は50以上であるので、さらに燃焼しにくい。その結果、熱が光ファイバケーブル1の内部に伝わり、光ファイバケーブル1の内部が延焼するのを抑制することができる。このように、光ファイバケーブル1は、より高い難燃性を有する。
【0041】
また、光ファイバケーブル1によれば、光ファイバを高密度で実装して可燃物の断面積率を高くしたとしても、押え巻きテープ4およびケーブル外被5の酸素指数が高いので、高い難燃性を有する光ファイバケーブル1とすることができる。
【0042】
また、光ファイバケーブル1によれば、3456心と、1000心以上の比較的多くの光ファイバをケーブルコア2に収容させつつも、高い難燃性を有する光ファイバケーブル1とすることができる。
【0043】
また、光ファイバケーブル1によれば、押え巻きテープ4には、高い難燃性を持たせるための難燃剤が塗布されており、酸素指数を高くすることができるので、押え巻きテープ4を備える光ファイバケーブル1は高い難燃性を有する。
【0044】
(第二実施形態)
次に、図2を参照しつつ、第二実施形態に係る光ファイバケーブル1Aについて説明する。図2は、光ファイバケーブル1Aの断面図である。なお、本実施形態において、第一実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明し、また説明が重複する部分については適宜説明を省略する。光ファイバケーブル1Aは、各スロット溝31の内側に、16枚の光ファイバテープ心線10を収容する3つのチューブ6を備えている点で、第一実施形態に係る光ファイバケーブル1と異なる。なお、光ファイバケーブル1Aのケーブルコア2においても、ケーブル外被5の酸素指数は35以上である。また、光ファイバケーブル1Aのケーブルコア2には、3456心の光ファイバが収容されている。
【0045】
チューブ6は、例えば、0.05mmから0.2mmの厚さを有する。チューブ6は、例えば、難燃性を有する低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene)等の樹脂材料から形成されていてもよい。チューブ6を形成する樹脂材料には、押え巻きテープ4に塗布される難燃剤と同様の難燃剤が塗布されていてもよい。なお、チューブ6にはそれぞれ異なる着色やマーキングが施されていてもよい。
【0046】
光ファイバケーブル1Aは、難燃性の高い押え巻きテープ4、ケーブル外被5を備えている。したがって、このような難燃性の高い押え巻きテープ4、ケーブル外被5が燃焼しない限り、ケーブルコア2の内部に収容されたスロットロッド3、光ファイバテープ心線10、抗張力体33等の可燃物は燃焼しない。このように、光ファイバケーブル1Aは、高い難燃性を有しており、欧州のCPR規格におけるCクラス以上に適合する。
【0047】
また、光ファイバケーブル1Aにおいても、第一実施形態と同様に、光ファイバケーブル1Aの可燃物断面積比率を33%以上にすることができる。
【0048】
上記構成に係る光ファイバケーブル1Aによっても、第一実施形態に係る光ファイバケーブル1と同様の効果を奏することができる。
【0049】
以上、本開示を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本開示の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本開示を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【0050】
上記の実施形態において、光ファイバケーブル1,1Aは、6条のスロット溝31を有しているが、スロット溝31の数はこれに限られない。スロット溝31の数は、例えば、3以上5以下または7以上であってもよい。また、光ファイバケーブル1,1Aは、スロットレスケーブルであってもよい。
【0051】
上記の実施形態において、光ファイバケーブル1,1Aのケーブルコア2には3456心の光ファイバが収容されているが、光ファイバケーブル1,1Aのケーブルコア2に収容されている光ファイバの心数は1000心以上であればよく、3456心に限られない。
【0052】
上記の実施形態において、ケーブル外被5は、ポリオレフィン系樹脂等の樹脂材料から形成されているが、難燃PVCや難燃ポリエチレン等の樹脂材料から形成されていてもよい。この場合、光ファイバケーブル1,1Aの難燃性をさらに高めることができる。
【0053】
上記の第二実施形態において、光ファイバケーブル1Aは、押え巻きテープ4、ケーブル外被5およびチューブ6を備えているが、押え巻きテープ4を備えていなくてもよい。
【0054】
上記の第二実施形態において、光ファイバケーブル1Aは、各スロット溝31の内側に、3つのチューブ6を備えているが、1つもしくは2つのチューブ6または4つ以上のチューブ6を備えていてもよい。また、チューブ6に収容される光ファイバテープ心線10の枚数は16枚に限られない。
【符号の説明】
【0055】
1,1A:光ファイバケーブル
2:ケーブルコア
3:スロットロッド
4:押え巻きテープ
5:ケーブル外被
6:チューブ
10:光ファイバテープ心線
31:スロット溝
32:リブ
33:抗張力体
S1:光ファイバケーブルの断面積
S2:可燃物の断面積
図1
図2