(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001005
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】医薬品、サプリメント及び摂取物質のバイオアベイラビリティを増進する組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20231226BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20231226BHJP
A61K 9/42 20060101ALI20231226BHJP
A61K 9/26 20060101ALI20231226BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20231226BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20231226BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20231226BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20231226BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K9/107
A61K9/42
A61K9/26
A61K47/36
A61K47/42
A61K39/39
A61P31/00
A61P31/04
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023127634
(22)【出願日】2023-08-04
(62)【分割の表示】P 2020503843の分割
【原出願日】2018-07-19
(31)【優先権主張番号】62/537,502
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/647,974
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/690,365
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519246261
【氏名又は名称】ローカス アイピー カンパニー、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レフコウィツ アンドリュー アール
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー ショーン
(72)【発明者】
【氏名】アリベック ケン
(72)【発明者】
【氏名】モルダコザイエブ アリベック
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象者に投与される広範囲な医薬品、サプリメント、栄養素、その他健康促進物質のバイオアベイラビリティを増進することのできる組成物及び方法を提供する。
【解決手段】健康促進物質のバイオアベイラビリティを増進した組成物であって、医薬品から選択される前記健康促進物質と、バイオアベイラビリティ増進量の1つ以上のバイオサーファクタントとを含み、前記1つ以上のバイオサーファクタントはソホロ脂質及びマンノシルエリスリトール脂質を含み、前記医薬品は、抗生物質及び/又は抗炎症化合物であり、皮膚投与によるヒト対象者への投与のために処方される、組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
健康促進物質のバイオアベイラビリティを増進した組成物であって、医薬品から選択される前記健康促進物質と、バイオアベイラビリティ増進量の1つ以上のバイオサーファクタントとを含み、前記1つ以上のバイオサーファクタントはソホロ脂質及びマンノシルエリスリトール脂質を含み、前記医薬品は、抗生物質及び/又は抗炎症化合物であり、皮膚投与によるヒト対象者への投与のために処方される、組成物。
【請求項2】
医薬的に許容される担体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1つ以上のバイオサーファクタントは、追加の糖脂質又はリポペプチドをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記追加の糖脂質は、ラムノ脂質及びトレハロース脂質から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記リポペプチドは、サーファクチン、イツリン、リケニシン及びフェンジシンから選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記1つ以上のバイオサーファクタントは、限界ミセル濃度(CMC)で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記健康促進物質は、前記1つ以上のバイオサーファクタントにより形成されたナノカプセルにカプセル化されている送達システムとして処方された、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
健康促進物質のバイオアベイラビリティを増進するためのアジュバント組成物であって、精製されたソホロ脂質と、マンノシルエリスリトール脂質とを含み、前記精製されたソホロ脂質の少なくとも90重量%がラクトン形態であり、治療有効量の前記健康促進物質と同時に、又は連続して経口経路で投与されることを特徴とする、アジュバント組成物。
【請求項9】
対象者の皮膚の上皮細胞への前記健康促進物質の浸透を増進するのに用いられることを特徴とする、請求項8に記載のアジュバント組成物。
【請求項10】
対象者の血液脳関門への前記健康促進物質の浸透を増進するのに用いられることを特徴とする、請求項8に記載のアジュバント組成物。
【請求項11】
対象者に治療有効とするのに必要な前記健康促進物質の用量を減じるのに用いられることを特徴とする、請求項8に記載のアジュバント組成物。
【請求項12】
治療有効量の前記組成物を、それを必要とする対象者に投与することを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
前記対象者の消化管の上皮細胞への前記健康促進物質の浸透を増進するのに用いられることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記対象者の血液脳関門への前記健康促進物質の浸透を増進するのに用いられることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記対象者に治療有効とするのに必要な前記健康促進化合物の用量を減じるのに用いられることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
ラムノ脂質、トレハロース脂質、サーファクチン、イツリン、リケニシン、及び/又はフェンジシンをさらに含む、請求項8に記載のアジュバント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願を相互参照
本出願は、2017年7月27日出願の米国仮出願第62/537,502号、2018年3月26日出願の米国仮出願第62/647,974号及び2018年7月27日出願の米国仮出願第62/690,365号の優先権を主張するものであり、内容を参照することにより組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
一般的に、バイオアベイラビリティとは、物質が生体の所望の体組織に到達し、進入し、中で有効になる速度と程度を指す。具体的に、薬理学に関して、バイオアベイラビリティは、薬剤が作用部位に到達する速度と程度の尺度である。栄養においては、食品や栄養サプリメントのバイオアベイラビリティは、体に吸収可能で、体内で使用されたり、蓄えることのできる投与物質(摂取物質)の割合と定義することができる。さらに、バイオアベイラビリティはまた、環境からの特定の物質が生体に進入する尺度とすることもできる。
【0003】
物質のバイオアベイラビリティは、生体に有用かつ重要な役割を果たし、様々な因子に基づいて変化する。例えば、摂取物質のバイオアベイラビリティは、物質の溶解度、上皮での物質の拒絶や、消化(GI)管の層を通じて物質が進入する速度に影響される。低溶解度の物質は、細胞やGI管の細胞間の密着結合に浸透できないため、十分な保持時間がない。このように、物質の全てが体から放出されないと、吸収されなかったり、使用されなかったりする。
【0004】
溶解度に加えて、物質の拒絶は、バイオアベイラビリティに影響する他の因子である。例えば、多くの物質は、P-糖タンパク質1、細胞から異物をポンピングする細胞膜のタンパク質により拒絶される。改まった言い方をすると、広基質特異性のATP依存性流出ポンプである。このポンプは、有害物質に対する防御機構として発達してきたと考えられているが、異物であるが、望ましい物質が体内に取り込まれようするとき、多くの場合、妨害となっている。それは、例えば、生体異物を、腸管腔にポンピングにより戻す腸上皮をはじめとする様々な臓器の細胞において、物質を胆管にポンピングする肝臓細胞において、物質を尿導管へポンピングする腎臓の近位尿細管の細胞において、そして、物質を毛細管にポンピングにより戻す血液脳関門と血液精巣関門で構成される毛細管内皮細胞において、広く分配され発現される。
【0005】
医薬品、サプリメント及び栄養は、健康的な生活を送るのに重要な要素である。対象者に投与しなければならない特定の健康促進物質の投与量は、所望の効果を得るのに実際必要とされるよりはるかに多いことがよくある。この理由は、進化による障害物が、特定の化合物や栄養素のバイオアベイラビリティが、例えば、上皮細胞や血液脳関門を通して、作用の所望の部位に到達するのを妨げるからである。
【0006】
このように、対象者に投与される広範囲な医薬品、サプリメント、栄養素、その他健康促進物質のバイオアベイラビリティを増進することのできる組成物及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、医薬品、サプリメント、栄養素及び/又はその他健康促進物質のバイオアベイラビリティを改善する材料及び方法を提供する。特に、本発明は、健康促進物質のバイオアベイラビリティを増進するのに用いる微生物増殖副生成物を含むアジュバント組成物を提供する。利点を挙げると、本発明の微生物ベースの生成物及び方法は、非毒性で費用対効果が高い。
【0008】
ある特定の実施形態において、本発明は、ある物質の、例えば、対象者の上皮細胞や血液脳関門(BBB)への浸透を減少させる、例えば、P-糖タンパク質を抑制したり、他の物理的バリア機構を調整することにより、微生物増殖副生成物を用いて、健康促進物質のバイオアベイラビリティを増進するアプローチを提供する。
【0009】
一実施形態において、健康促進化合物のバイオアベイラビリティを増進する、治療有効量の1種類以上のバイオサーファクタントを含むアジュバント組成物が提供される。
【0010】
バイオサーファクタントは、2種類の液体又は液体と固体の間の表面張力(又は界面張力)を下げる微生物により生成された表面活物質である。バイオサーファクタントは全て両親媒性であり、極性(親水性)部分と非極性(疎水性)基の2つのパートからなる。両親媒性構造ゆえ、バイオサーファクタントは、疎水性の水不溶物質の表面積を増大し、かかる物質の水のバイオアベイラビリティを増大し、細菌細胞表面 の特性を変える。さらに、バイオサーファクタントは、界面で堆積し、液体、固体及び気体の分子間の表面及び界面張力を下げ、溶液中での凝集ミセル構造の形成を促す。
【0011】
本発明によるバイオサーファクタントは、低分子量糖脂質(例えば、ソホロ脂質、ラムノ脂質、マンノシルエリスリトール脂質及びトレハロース脂質)、リポペプチド(例えば、サーファクチン、イツリン、フェンジシン及びリケニシン)、フラボ脂質、リン脂質、及び高分子量ポリマー、例えば、リポタンパク質、リポ多糖-タンパク質錯体及び多糖-タンパク質-脂肪酸錯体を含む。ある実施形態において、1つ以上のバイオサーファクタントは単離及び/又は精製される。
【0012】
1つ以上のバイオサーファクタントは、自然又は人口変性された形態を含む、バイオサーファクタントの変性形態、誘導体、フラクション、アイソフォーム又はサブタイプのいずれか、又は組み合わせをさらに含む。バイオサーファクタントの異なる異性体又は形態を使用することは、特定の健康促進化合物との相互作用に応じて、当業者がアジュバント組成物を調整することができる点で有利である。すなわち、バイオサーファクタントの特定のアイソフォームは、特定の健康促進化合物だと、例えば、その化合物の化学構造によっては、より有効となる。
【0013】
1つ以上のバイオサーファクタントが、限界ミセル濃度(CMC)で本アジュバント組成物に存在するのが好ましい。
【0014】
ある実施形態において、アジュバント組成物は、治療有効用量の目標健康促進化合物をさらに含み、そのバイオアベイラビリティの増進が求められる。本実施形態において、アジュバント組成物は、健康促進化合物と混合される。或いは、アジュバント組成物は、目標健康促進化合物とは別の組成物とすることができ、アジュバント組成物は、対象に個別に投与されてから、健康促進化合物に投与される。
【0015】
健康促進化合物は、例えば、医薬化合物、栄養サプリメント、又は単に水とすることができる。一実施形態において、本組成物は、経口消費可能な製品、例えば、カプセル、ピル又は飲用に適した液体として、処方される。他の実施形態において、本組成物は、注射、座薬、吸入又はその他の投与モードで投与されるように処方される。
【0016】
一実施形態において、本発明は、健康促進化合物の送達システムを提供するものであり、アジュバント組成物のバイオサーファクタントは、中でカプセル化された健康促進化合物によりリポソーム又はナノカプセルを形成する。一実施形態において、追加の生体高分子を含めて、ナノカプセルの構造をさらに提供することができる。
【0017】
このナノカプセル送達システムは、化合物に結合したり、化合物を分解して、標的部位への到着の妨げとなる、血液中の成分、例えば、タンパク質やその他分子から化合物を保護することによって、健康促進化合物のバイオアベイラビリティを増進する。ナノカプセル送達システムは、酸や酵素に対するバリアとなるため、GI管中の酸や酵素により分解される健康促進化合物を、経口投与できるようにする。このように、送達システムは、腸コーティングとなる。さらに、ナノカプセル送達システム処方によって、健康促進化合物の徐放が可能となり、対象における化合物の潜在的な毒性や潜在的な負の副作用を減じる。
【0018】
本発明は、健康促進化合物のバイオアベイラビリティを増進する方法をさらに提供する。治療有効量の本発明のアジュバント組成物を、それを必要とする対象者に投与し、かつ、治療有効量の健康促進化合物を対象者に投与することを含む。
【0019】
本方法をさらに用いて、GI管において、酸や酵素により分解される健康促進化合物の経口投与を行うことができる。さらに、本方法を用いると、健康促進化合物に必要な投与量を減じ、かつ、対象者における化合物の潜在的な毒性や潜在的な負の副作用を減じることができる。
【0020】
好ましい実施形態において、アジュバント組成物は、例えば、ソホロ脂質、ラムノ脂質、マンノシルエリスリトール脂質、トレハロース脂質、サーファクチン、イツリン、フェンジシン及びリケニシンから選択される、バイオサーファクタントの変性形態、誘導体、フラクション、アイソフォーム又はサブタイプをはじめとする、1つ以上のバイオサーファクタントを含む。健康促進化合物は、アジュバント組成物と同時に投与したり、アジュバント組成物を処方したらすぐに投与することができる。
【0021】
健康促進化合物(又は健康促進物)は、血液及び/又はリンパ循環、同様に、組織や臓器に分配される分子を含み、最終的に、対象者の体の部位に達して、対象者の健康に良い影響を与える。健康促進化合物としては、鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、抗ウイルス剤、抗ガン剤及び/又は化学療法化合物、抗生物質、抗菌剤、抗発作化合物、抗炎症化合物、ワクチン、コレステロールを下げる化合物、抗うつ剤、ビタミン、ミネラル、栄養素、水その他に分類される医薬品及び/又は栄養サプリメントが挙げられるがこれらに限られるものではない。
【0022】
一実施形態において、健康促進物質は、経口分配可能な健康促進物質であり、特に、初期吸収により、消化管や口の粘膜に分配される分子である(例えば、舌下や口腔内投与により)。
【0023】
利点を挙げると、本発明の材料や方法は、健康状態に何らかの支障があったり(体調不良)、健康であっても(病気やケガのない)、体の状態を良くしようと単に求めている人の生活の質の改善に役立つ。さらに、本発明を用いて、治療に有効と考えられる医薬品及び/又はサプリメントの必要な投与量を減じ、コストや、対象者に投与することにより生じる潜在的な毒性及び/又は負の副作用を減じることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、医薬品、サプリメント、栄養素及び/又は健康促進物質のバイオアベイラビリティを改善する材料及び方法を提供する。特に、本発明は、健康促進物質のバイオアベイラビリティを増進するのに用いられる微生物増殖副生成物を含むアジュバント組成物を提供する。利点を挙げると、本発明の微生物ベースの生成物及び方法は、非毒性で費用対効果が高い。
【0025】
さらに、本明細書に記載されているのは、健康促進化合物のバイオアベイラビリティを増進するアプローチであり、微生物増殖副生成物を利用して、例えば、P-糖タンパク質を抑制し、他の血漿タンパク質、及び/又は特定の化合物の対象者の上皮細胞やBBBへの浸透を減じる物理バリア機構を調節する。本発明はまた、対象者に治療有効とするのに必要な健康促進化合物の投与量を減じる方法も提供する。
【0026】
選択された定義
本明細書で用いる、本組成物に関して「アジュバント」という用語は、アジュバントと共に投与される物質の有効性を増進するのを補助し、それに寄与する補助化合物を意味する。例えば、アジュバントは、処方箋医薬品やサプリメントと共に、又はそれに含めて、目的を問わず(例えば、疾病を処置したり、体の臓器や組織の機能を増進する)、活性主成分の有効性を補助する。
【0027】
本明細書で用いる、「対象者」という用語は、健康促進物質による恩恵を必要としたり、それを望む動物、例えば、哺乳類を指す。動物は、例えば、豚、馬、ヤギ、猫、ネズミ、ラット、犬、サル、魚、チンパンジー、オラウータン、モルモット、ハムスター、牛、羊、鳥、鶏その他脊椎動物又は無脊椎動物である。恩恵としては、これらに限られるものではないが、体調不良の処置、疾病や異常の処置、体調不良、疾病や異常の予防、水分補給、運動能力や体重管理のための栄養増進や補給、免疫力、体の臓器や機能の増進、そして単に楽しみも挙げられる。本発明の好ましい対象者は、人間の男女である。ある実施形態において、対象者は、体調不良であったり、疾病や異常があり、またある実施形態においては、対象者は、健康な状態にある(病気やケガのない)が、健康の増進や特定の体の臓器や組織の機能を高めることを望んでいる。対象者は、乳児、幼児、子供、青年、成年、中高年を含むいずれの年齢や発達段階にあってよい。
【0028】
本明細書で用いる、「治療有効量」、「治療有効用量」、「有効量」及び「有効用量」という用語は、対象者に処方されると、対象者の状態、疾病や異常を処置したり改善できる、或いは、健康を増進したり、体の臓器等を機能させることのできる化合物や組成物の量や用量を指すのに用いられる。すなわち、対象者に投与したときの量が「治療有効量」である。実際の量は、これらに限られるものではないが、処置や改善しようとしている特定の症状、疾病や異常、症状の重症度、健康や機能の増進が望まれる特定の臓器や組織、患者の体格、年齢や健康状態、投与経路をはじめとする数多くの因子に応じて異なる。
【0029】
本明細書で用いる、「処置」という用語は、体調不良、疾病や異常を、ある程度まで、根絶、減少、改善又はサインや兆候を覆すことを指し、体調不良、疾病や異常の、必要条件とはされないが、完全な治癒を含む。処置とは、異常の治癒、改善、或いは部分的な改善である。「処置」にはまた、例えば、体の特定の組織の機能を、健康なホメオスタシスの高い状態までもっていく条件や特徴を改善したり、増進することも含まれる。
【0030】
本明細書で用いる、体調不良、疾病や異常の「予防」とは、体調不良、疾病や異常の特定のサインや兆候の兆しを排除、遅延、未然に防いだり、最小にすることを指す。予防には、必要条件ではないが、絶対的又は完全に、サインや兆候の発生を遅らせる意味もある。予防は、体調不良、疾病や異常の発症の重度を減少したり、体調不良、疾病や異常が、より深刻な状態や異常へ進むのを阻止するものである。
【0031】
本明細書で用いる、「微生物ベースの組成物」とは、微生物やその他細胞培養物の結果生成された成分を含む組成物を意味する。微生物ベースの組成物は、微生物自体を含む。微生物は、培養されたブロスから分離されたものであってよい。組成物は、残渣細胞成分や微生物成長副生成物を含む。好ましくは、本発明による組成物は、微生物から分離されたものである。微生物成長副生成物は、例えば、代謝物(例えば、バイオサーファクタント)、細胞膜成分、発現タンパク質やその他細胞成分である。
【0032】
本発明は、所望の結果を得るために、実際適用されるべき生成物である、「微生物ベースの生成物」をさらに提供する。微生物ベースの生成物は、微生物培養プロセスから収穫された単純な微生物ベースの組成物である。或いは、微生物ベースの生成物は、添加された成分をさらに含む場合もある。追加された成分としては、例えば、安定剤、緩衝剤及び/又は適切な担体(例えば、水や塩溶液)が挙げられる。微生物ベースの生成物は、微生物ベースの組成物の混合物であってもよい。微生物ベースの生成物はまた、これらに限られるものではないが、ろ過、遠心分離、溶解、乾燥、精製等、何らかの方法で、処理された微生物ベースの組成物の1つ以上の成分を含んでいてもよい。
【0033】
本明細書で用いる、「収穫」とは、微生物ベースの組成物の一部又は全てを、成長容器から取り出すことを指す。
【0034】
本明細書で用いる、「単離」又は「精製」核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質や有機化合物(例えば、以下に挙げるような小分子)は、自然状態で結合した細胞材料等の他の化合物を実質的に含まない。ある実施形態において、精製化合物は、少なくとも60重量%(乾燥重量)の当該化合物である。好ましくは、製剤は、少なくとも75重量%、より好ましくは、少なくとも90重量%、最も好ましくは、少なくとも99重量%の当該化合物である。例えば、精製化合物は、少なくとも90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、98重量%、99重量%又は100重量%(w/w)の所望の化合物である。純度は、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄膜クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)分析等、適切な標準的な方法により測定される。精製又は単離ポリヌクレオチド(リボ核酸(RNA)やデオキシリボ核酸(DNA))は、自然発生状態で側鎖の遺伝子やシーケンスは含まない。精製又は単離ポリペプチドは、自然発生状態で側鎖のアミノ酸やシーケンスは含まない。
【0035】
「代謝物」とは、代謝により生成された物質(すなわち、成長副生成物)又は特定の代謝プロセスに参加する必要のある物質を指す。代謝物は、代謝の出発材料(例えば、グルコース)、中間体(例えば、アセチル-CoA)又は最終生成物(例えば、n-ブタノール)である有機化合物である。代謝物としては、これらに限定されるものではないが、バイオサーファクタント、酵素、酸、溶剤、ガス、アルコール、タンパク質、ビタミン、ミネラル、微量元素、アミノ酸及びポリマーが例示される。
【0036】
「調節する」とは、変更(増減)を意味する。かかる変更は、本明細書に記載した公知の方法により標準的なやり方が検出される。
【0037】
ここに示す範囲は、範囲に含まれる値の全てについて簡潔にしたものである。例えば、1~20の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20からなる群からの任意の数字、数字の組み合わせ、又は下位範囲を含むものとして、また、同じく、上述した整数間の途中の小数点の値、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8及び1.9も含むものと考えられる。例えば、1~50の例示範囲の入れ子の下位範囲は、一方向に1~10、1~20、1~30及び1~40、多方向に50~40、50~30、50~20及び50~10である。
【0038】
「減じる」とは、少なくとも1%、5%、10%、25%、50%、75%又は100%のマイナスの変更を意味する。
【0039】
「参照」とは、スタンダード又は対照条件を意味する。
【0040】
本明細書で用いる、「バイオフィルム」は、バクテリアのような微生物の複雑な塊であり、細胞が互いに接合している。バイオフィルムの細胞は、同じ有機体のプランクトン様細胞とは生理的に異なり、液体媒体中で浮遊したり泳ぐ単一細胞である。
【0041】
本明細書で用いる、「界面活性剤」は、2つの液体間、液体と固体間の表面張力(又は界面張力)を下げる表面活性物質を指す。界面活性剤は、例えば、洗剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤及び/又は分散剤として作用する。微生物により生成された表面活性物質は、「バイオサーファクタント」と呼ばれる。
【0042】
移行句「含む」は、「有する」、「もつ」と同義であり、包括的で、制限がなく、追加の、列挙されていない、要素や方法ステップを排除しない。対照的に、移行句「からなる」は、請求項で指定していない要素、ステップや成分を排除する。移行句「から実質的になる」は、請求項の範囲を、指定した材料やステップ、そして請求した発明の、物質のバイオアベイラビリティを改善する能力のような「基本かつ新規な特徴に実質的に影響しないもの」に限定する。
【0043】
特に断りのない限り、本明細書で用いる「又は」という用語は、包括的と考えられる。特に断りのない限り、本明細書で用いる「1つの」は単数又は複数と考えられる。
【0044】
特に断りのない限り、本明細書で用いる「約」は、通常の許容範囲と考えられ、例えば、平均の2標準偏差以内である。約は、表示値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%又は0.01%以内と考えられる。
【0045】
本明細書の可変要素の定義において、化学基の列挙には、単一の基又は列挙した基の組み合わせとしての可変要素の定義が含まれる。本明細書の可変基や態様についての実施形態の列挙には、単一の実施形態や他の実施形態やその一部との組み合わせとしての実施形態が含まれる。
【0046】
本明細書に示した組成物や方法は、本明細書に示した他の組成物や方法の1つ以上と組み合わせることができる。
【0047】
本発明の他の特徴や利点は、好ましい実施形態の説明や請求項より明らかになる。本明細書に挙げた参考文献は参照として組み込まれる。
【0048】
アジュバント組成物の処方及び送達
本発明は、医薬品、サプリメント、栄養素及びその他健康促進物質のバイオアベイラビリティを増進するのに用いる微生物増殖副生成物を含むアジュバント組成物を提供する。利点を挙げると、本発明の微生物ベースの生成物及び方法は、非毒性で費用対効果が高い。
【0049】
一実施形態において、アジュバント組成物は、健康促進化合物のバイオアベイラビリティを増進するものであり、治療有効量の1つ以上のバイオサーファクタントを含む。
【0050】
ある実施形態において、アジュバント組成物は、治療有効用量の健康促進化合物をさらに含み、バイオアベイラビリティを増進しようとするものである。本実施形態において、アジュバント及び健康促進化合物は、他の任意に添加剤と共に1つの処方に一緒に含まれる。
【0051】
或いは、アジュバント組成物は、対象に個別に投与されてから、時間を置かずに(例えば、前後5分以内に)健康促進化合物に投与される。
【0052】
利点を挙げると、本発明のアジュバント組成物は、液体の表面張力を下げ、液体-液体界界面、液体-固体界面の表面張力を下げることができる。さらに、目標健康促進化合物は、本アジュバント組成物と共に消化(GI)系に処方すると、消化液(例えば、酸や酵素)による分解に対する抵抗性を示す。さらに、特定の実施形態において、本アジュバント組成物は、例えば、血漿タンパク質やP-糖タンパク質の活性、そして特定の化合物が体の目標部位へ浸透するのを防ぐその他バリア及び細胞結合の活性を抑制したり、調節するのに役立つ。
【0053】
アジュバント組成物は、微生物により生成される表面活性物質であるバイオサーファクタントを好ましくは含む。本発明に有用なバイオサーファクタントは、安全で、生物分解性であり、再生可能な物質中の選択した生物を用いて、低コストで容易に生成することができる。
【0054】
バイオサーファクタントは全て両親媒性であり、極性(親水性)部分と非極性(疎水性)基の2つの部分からなる。両親媒性構造であるため、バイオサーファクタントは、疎水性水不溶性物質の表面積を増やし、かかる物質の水バイオアベイラビリティを増やし、細菌細胞表面の特性を変える。さらに、バイオサーファクタントは、界面に堆積して、液体、固体及び気体の分子間の表面及び界面張力を減じ、これが、溶液中での凝集ミセル構造の形成へとつながる。
【0055】
大半のバイオサーファクタント生成生物は、成長媒体における炭化水素源(例えば、油、糖、グリセロール等)の存在に応答して、バイオサーファクタントを生成する。鉄濃縮物のような他の媒体成分もまた、バイオサーファクタント生成に大きく影響し得る。微生物バイオサーファクタントは、バクテリア、菌類及び酵母等の様々な微生物、例えば、Pseudomonas spp.(P.aeruginosa、P.putida、P.florescens、P.fragi、P.syringae)、Flavobacterium spp.、Bacillus spp.(B.subtilis、B.pumillus、B.cereus、B.licheniformis)、Wickerhamomyces spp.(W.anomalus)、Candida spp.(C.albicans、C.rugosa、C.tropicalis、C.lipolytica、C.torulopsis)、Rhodococcus spp.、Arthrobacter spp.、campylobacter spp.、cornybacterium spp.
Pichia spp.(P.anomala、P.occidentalis)、Starmerella spp.(S.bombicola)等により生成される。
【0056】
バイオサーファクタントは、例えば、固体状発酵、深部発酵又はこれらの組み合わせのような業界に公知の発酵プロセスにより得られる。当該微生物により生成されたバイオサーファクタントは、微生物に保持され、成長媒体に分泌される。成長媒体は、バイオサーファクタントの活性を安定化する化合物を含んでいてもよい。さらに、成長副生成物は、単離、濃縮及び/又は精製してもよい。
【0057】
本発明によるバイオサーファクタントは、低分子量糖脂質(例えば、ソホロ脂質、ラムノ脂質、マンノシルエリスリトール脂質及びトレハロース脂質)、リポペプチド(例えば、サーファクチン、イツリン、フェンジシン及びリケニシン)、フラボ脂質、リン脂質、高分子量ポリマー、例えば、リポタンパク質、リポ多糖-タンパク質錯体及び多糖-タンパク質-脂肪酸錯体を含む。
【0058】
1つ以上のバイオサーファクタントは、天然又は人工変性されたものを含む、バイオサーファクタントの変性形態、誘導体、フラクション、アイソフォーム又はサブタイプの1つ又はこれらの組み合わせをさらに含むことができる。バイオサーファクタントの異なるアイソマー又は形態を用いることは、特定の健康促進化合物との相互作用に応じて、当業者がアジュバント組成物を作製することができるという利点がある。すなわち、バイオサーファクタントの特定のアイソフォームは、例えば、化学構造によっては、特定の健康促進化合物でより有効となる。
【0059】
ある実施形態において、バイオサーファクタントは、ソホロ脂質(SLP)、例えば、ラクトン又は酸形態ソホロ脂質、非アセチル化ソホロ脂質、モノアセチル化ソホロ脂質、ジアセチル化ソホロ脂質又はその他そのアイソフォームである。
【0060】
ある実施形態において、バイオサーファクタントは、ラムノ脂質(RLP)、例えば、モノラムノ脂質、ジラムノ脂質又はその他そのアイソフォームである。
【0061】
ある実施形態において、バイオサーファクタントは、マンノシルエリスリトール脂質(MEL)、例えば、MEL-A、MEL-B、MEL-C又はMEL-D、或いは異なる脂肪酸長及び/又は疎水性部分を有するそのアイソフォームである。
【0062】
ある実施形態において、バイオサーファクタントは、トレハロース脂質(TL)又はそのアイソフォームである。
【0063】
ある実施形態において、バイオサーファクタントは、鎖状又は環状形態リポペプチド又はそのアイソフォームをはじめとするリポペプチドである。一例を挙げると、サーファクチンは、7つのアミノ酸と炭素13~15個の長さの疎水性脂肪酸鎖のペプチドループを含む構造のリポペプチドである。例示の実施形態において、アミノ酸は、L-アスパラギン酸、L-ロイシン、グルタミン酸、L-バリン及び2つのD-ロイシンを含む。
【0064】
他の例を挙げると、イツリンは、7つのアミノ酸と炭素14~17個の長さのβ-アミノ脂肪酸鎖のペプチドループを含む構造のリポペプチドである。一実施形態において、本発明においては、イツリンAを用いる。
【0065】
バイオサーファクタントは、アジュバント組成物中に治療有効量で好ましくは存在する。一実施形態において、これは、バイオサーファクタントが限界ミセル濃度(CMC)で存在することを意味する。CMCは、それを超えると、ミセルが発泡し、系に添加された追加の界面活性剤が、ミセルに変わるか、既存のミセルに追加される、界面活性剤の濃度である。
【0066】
ある実施形態において、組成物中の治療有効量のバイオサーファクタントは、0.001~90重量%(wt%)、好ましくは、50wt%以下、より好ましくは、25wt%以下、さらにより好ましくは、10wt%以下である。ある実施形態において、バイオサーファクタントは、0.01、0.02、0.03、0.05、0.08、0.1、0.2、又は0.5%を超えて存在する。
【0067】
ある実施形態において、アジュバント組成物は、バイオアベイラビリティを増進しようとする治療有効用量の目標健康促進化合物をさらに含む。本実施形態において、アジュバント組成物は、健康促進化合物と混合することができる。あるいは、アジュバント組成物は、目標健康促進化合物とは別の組成物とすることができ、アジュバント組成物は、健康促進化合物と同時に対象者に投与される。
【0068】
健康促進化合物は、例えば、医薬品化合物、栄養サプリメント又は単に水とすることができる。一実施形態において、本組成物は、例えば、カプセル、ピル又は飲用液などの経口消費可能な製品として処方される。他の実施形態において、本組成物は、注射、吸入又はその他の投与モードで投与されるように処方される。
【0069】
本発明は、「健康促進化合物」又は「健康促進物」のバイオアベイラビリティを増進するのに有用である。健康促進化合物は、血液及び/又はリンパ循環、同様に、組織や臓器に分配される分子を含み、最終的に、対象者の体の部位に達して、対象者の健康に、局部的又は全身にわたって良い影響を与える。健康促進化合物は、例えば、一例に過ぎないが、痛み、熱及び/又は炎症を緩和する、アレルギーや風邪の症状を減少する、ウイルスを抑制又は処置する、ガンを処置する、微生物感染を処置する、発作を抑制又は防ぐ、コレステロールを下げたり管理する、糖尿病を管理する、うつや不安を処置する、水分補給する、体重を管理する、運動能力を増進する、生殖能力を減少する、又は増進するために用いられる任意のカテゴリのサプリメント及び/又は医薬品(バイオ医薬品を含む)を含む。
【0070】
一実施形態において、アジュバント組成物は、健康促進化合物の送達システムとして処方され、アジュバント組成物のバイオサーファクタント中でカプセル化された健康促進化合物によりリポソーム又はナノカプセルを形成する。一実施形態において、追加の生体高分子を含めて、ナノカプセルの構造をさらに提供することができる。
【0071】
このナノカプセル送達システムは、化合物に結合したり、標的部位への浸透の妨げとなる、血液中の成分、例えば、タンパク質やその他分子から化合物を保護することによって、健康促進化合物のバイオアベイラビリティを増進する。さらに、ナノカプセル送達システムは、酸や酵素に対するバリアとなるため、GI管中の酸や酵素により分解される健康促進化合物を、経口投与できるようにする。さらに、ナノカプセル送達システム処方によって、健康促進化合物の徐放が可能となり、対象における化合物の潜在的な毒性や潜在的な負の副作用を減じる
【0072】
一実施形態において、アジュバント組成物は、経口送達可能な健康促進物質を含むように、及び/又は経口消費可能な製品と同時投与されるように処方することができる。経口送達可能な健康促進物質は、初期吸収により、消化管や口の粘膜に分配される分子である(例えば、舌下や口腔内投与により)。
【0073】
本発明による経口消費可能な製品は、消費、栄養、口腔衛生や楽しみのために好適な調製や組成物であり、ヒトや動物の口腔に取り込まれ、ある程度の期間そこに留まってから、嚥下されるか(例えば、消費される予定の食品や錠剤)、又は口腔から再び取り出される(例えば、チューインガムや口腔衛生又は口内洗浄液)ことが意図された製品である。経口送達可能な健康促進物質は、経口消費可能な製品に処方され、経口消費可能な製品は、経口送達可能な健康促進物質を含むが、2つの用語は、区別なく用いられるわけではない。
【0074】
経口消費可能な製品には、処理済み、半処理済み、又は未処理状態で、ヒトや動物により摂取されることが意図された物質や製品が全て含まれる。これにはまた、製造、処置又は処理中に経口消費可能な製品(特に、食品や医薬品)に添加される物質も含まれる。
【0075】
経口消費可能な製品はまた、ヒトや動物に嚥下されてから、未変性、調製済み、又は処理済状態で摂取されることが意図される物質も含む。従って、本発明による経口消費可能な製品にはまた、製品と共に嚥下されたり、嚥下予定のケース、コーティング又はその他カプセル化も含まれる。
【0076】
一実施形態において、経口消費可能な製品は、所望の経口送達可能な物質を含むカプセル、ピル、シロップ、乳剤又は液体懸濁液である。一実施形態において、経口消費可能な製品は、水やその他液体と混合すると、経口消費可能な製品を生成することのできる、粉末形態の経口送達可能な物質を含む。
【0077】
ある実施形態において、本発明による経口消費可能な製品は、栄養や楽しみのための1つ以上の処方を含む。例を挙げると、ベーキング製品(例えば、パン、ビスケット、ケーキその他ペストリー)、スイーツ(例えば、チョコレート、チョコレートバー製品、その他バー製品、フルーツガム、コーティング錠、カラメル、タフィーカラメル、チューインガム)、アルコールやノンアルコール飲料(例えば、ココア、コーヒー、緑茶、紅茶、緑茶や紅茶のエキス入りの緑茶や紅茶飲料、ルイボスティー、その他ハーブティー、フルーツ入りレモネード、アイソトニック飲料、ソフトドリンク、ネクター、フルーツや野菜ジュース、及びふーつや野菜ジュースプレパレーション)、インスタント飲料(例えば、インスタントココア飲料、インスタントお茶飲料及びインスタントコーヒー飲料)、ミート製品(例えば、ハム、フレッシュソーセージプレパレーション、生ソーセージプレパレーション、味付けオーダー、マリネフレッシュミートや塩漬けミート製品)、卵又は卵製品(例えば、全卵粉、白身、黄身)、シリアル製品(例えば、朝食シリアル、ミューズリーバー、及び調理済みインスタント米製品)、乳製品(例えば、全脂、ローファット、ファットフリーミルク飲料、ライスプディング、ヨーグルト、ケフィア、クリームチーズ、ソフトチーズ、ハードチーズ、粉乳、ホエー、バター、バターミルク、ミルクプロテインを含む部分又は全加水分解物)、大豆プロテインやその他大豆フラクション製品(例えば、大豆ミルク及びそれを含む製品、単離又は酵素処理済み大豆プロテイン飲料、大豆粉含有飲料、大豆レクチンを含むプレパレーション、フルーツプレパレーションと任意で、フレーバーとの混合されたものを含む豆腐やテンペなどの発酵製品)、フルーツプレパレーション(例えば、ジャム、フルーツアイスクリーム、フルーツソース、フルーツフィリング)、野菜プレパレーション(例えば、ケチャップ、ソース、乾燥野菜、急冷野菜、調理済み野菜、ゆで野菜)、スナック類(例えば、焼又はフライポテトチップ(クリスプ)、ポテト生地製品、トウモロコシや落花生ベースのエクストルーダ)、油脂や乳剤ベースの製品(例えば、マヨネーズ、レムラード、ドレッシング)、その他レディメードミールやスープ(例えば、ドライスープ、インスタントスープ、調理済みスープ)、シーズニング(例えば、スプリンクルシーズニング)、甘味料組成物(例えば、錠剤、サシェ、甘味やホワイトニング飲料やその他フード)がある。本組成物はまた、栄養や楽しみのためのその他組成物の生成のための半製品としても機能する。
【0078】
一実施形態において、アジュバント組成物は、例えば、注射(静脈内(IV)、筋肉内、腹腔内、脊髄内又は皮下)、経皮、直腸、泌尿器生殖器(例えば、膣)、眼球、耳、鼻、吸入及び皮膚経路をはじめとする投与経路で、健康促進物質を含むように、及び/又は経口消費可能な製品と同時投与されるように処方することができる。
【0079】
本組成物は、1つ以上の医薬的に許容される担体及び/又は賦形剤をさらに含み、例えば、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、ゲル、ローション、座薬、ドロップ、パッチ、注射、吸入剤等の溶液、固体、半固体、液体又は気体形態で、プレパレーションに処方することができる。
【0080】
本明細書で用いられる「医薬的に許容される」という用語は、医薬組成物の他の成分と相溶性があって、賦形剤に有害でないことを意味する。
【0081】
本発明による担体及び/又は賦形剤は、あらゆる溶剤、希釈剤、緩衝剤(例えば、中性緩衝生理食塩水、リン酸塩緩衝生理食塩水又は任意でトリス-HCl、酢酸塩又はリン酸塩緩衝剤)、水中油型又は油中水型エマルジョン、IV使用に好適な有機助剤を含む、又は含まない水性組成物、可溶化剤(例えば、Tween80、Polysorbate80)、コロイド、分散媒体、ビヒクル、フィラー、キレート化剤(例えば、EDTAやグルタチオン)、アミノ酸(例えば、グリシン)、プロテイン、崩壊剤、バインダー、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、フレーバー、香料、増粘剤、コーティング、保存料(例えば、Thimerosal、ベンジルアルコール)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム)、等張化剤、吸収遅延剤、アジュバント、充填剤(例えば、ラクトース、マンニトール)等を含むことができる。薬品やサプリメントにおける担体や賦形剤の使用は、周知されている。目標健康促進物質やアジュバント組成物と相溶性のない従来の媒体や薬剤を上木、本組成物におけるその使用が考えられる。
【0082】
一実施形態において、アジュバント組成物は、エアロゾル処方として、例えば、噴霧したり、吸入することができる。エアロゾルやスプレーの形態で投与するのに好適な医薬処方は、例えば、溶液、懸濁液又はエマルジョンである。口腔や鼻のエアロゾルや吸入投与のための処方は、例示したキャリア、例えば、塩水、ポリエチレングリコール、DPPC、メチルセルロール、又は、粉末分散剤やフルオロカーボンとの混合物で処方してもよい。エアロゾル処方は、加圧推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素、フルオロカーボン及び/又はその他業界で公知の可溶又は分散剤に入れることができる。例を挙げると、送達は、使い捨ての送達デバイス、ミストネブライザー、呼吸作動式粉末吸入器、エアロゾル定量吸入器(MDI)や、その他業界で入手可能な数多くのネブライザー送達デバイスの使用によるものであってよい。さらに、ミストテントや、気管チューブによる直接投与を用いてもよい。
【0083】
一実施形態において、アジュバント組成物は、注射により、例えば、溶液や懸濁液として、投与のために処方することができる。溶液や懸濁液は、好適な非毒性の非経口的に許容される希釈剤や溶剤、例えば、マンニトール、1,3-ブタンジオール、リンゲル液や等張塩化ナトリウム溶液、好適な分散、湿潤及び懸濁剤、例えば、合成モノ-又はジグリセリドをはじめとする無菌、無刺激、不揮発性油、及びオレイン酸をはじめとする脂肪酸を含むことができる。静脈内使用の担体の一例を挙げると、10%USPエタノール、40%USPプロピレングリコール又はポリエチレングリコール600及び残部USP注射用水(WFI)の混合物がある。静脈内使用の担体の他の例を挙げると、10%USPエタノール及びUSP WFI、USP WFI中0.01~0.1%トリエタノールアミン又はUSP WFI中0.01~0.2%ジパルミトイルジホスファチジルコリン及び1~10%スクワレン又は非経口水中植物油エマルジョンがある。水や食塩水、水性デキストロースやグリセロール溶液は、担体として、特に、注射溶液として好ましく用いられる。皮下又は筋肉内使用のための担体としては、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、WFI中5%デキストロース及びUSP WFI中0.01~0.1%トリエタノールアミン、USP WFI中5%デキストロース又は0.9%塩化ナトリウム中0.01~0.1%トリエタノールアミン、及び5%デキストロース又は0.9%塩化ナトリウム等の残部許容等張溶液、或いは、USP WFI中0.01~0.2%ジパルミトイルジホスファチジルコリン及び1~10%スクワレン又は非経口水中植物油エマルジョンが挙げられる。
【0084】
例えば、緩衝剤、担体、粘度調節剤、保存料、フレーバー、染料、その他意図する用途に特定のその他成分といったさらなる成分を、当業者により判断される通り、組成物に添加することができる。当業者であれば、上記の説明は網羅的なものでなく例示的であると認識できる。実際、投与の特定のモードに好適な多くの追加の処方技術や、医薬的に許容される賦形剤や担体溶液は、当業者に周知されている。
【0085】
健康促進物質のバイオアベイラビリティを増進する方法
本発明は、1つ以上のバイオサーファクタントを含む治療有効量のアジュバント組成物を対象者に投与し、治療有効量の健康促進化合物を対象者に投与することを含む、それを必要とする対象者において、健康促進物質のバイオアベイラビリティを増進する方法をさらに提供する。
【0086】
本方法を用いるとまた、健康促進化合物に必要な投与量を減じ、対象者における化合物の潜在的な毒性や潜在的な負の副作用を減じる。さらに、本方法を用いると、GI管中の酸や酵素により分解される健康促進化合物を、経口投与できるようになる。
【0087】
健康促進化合物は、例えば、単一処方の一部として、アジュバント組成物と同時に投与することができる。一実施形態において、本方法は、本明細書に記載したアジュバントナノカプセル送達システムを用いて、健康促進化合物を対象者に投与することを含む。
【0088】
あるいは、健康促進化合物は、アジュバント組成物とは別に投与することができる。この変形実施形態において、健康促進化合物は、アジュバント組成物を処方する直前又は処方直後に投与される。「直前」又は「直後」とは、前後5分、4分、3分、2分、1分、30秒以下を意味する。
【0089】
好ましい実施形態において、アジュバント組成物のバイオサーファクタントは、例えば、糖脂質(例えば、SLP、RLP、MELやTL)、リポペプチド(例えば、サーファクチン、イツリン、フェンジシン及びリケニシン)、その変性形態、誘導体、フラクション、アイソフォーム又はサブタイプから選択される。バイオサーファクタント及びその様々な形態も考えられる。
【0090】
本明細書で用いる、組成物や製品の「投与」とは、それを対象者に送達して、目標部位に接触させ、組成物や製品がその目標部位に影響することを指す。影響は、例えば、健康促進化合物の作用や、バイオサーファクタント組成物によるものである。投与は急性又は慢性(例えば、毎日、週1、月1等)とし、他の薬剤と組み合わせてもよい。本アジュバント組成物は、目標健康促進化合物と同じ処方で投与されても、例えば、目標化合物の5分以内に投与されても、かかる経路で処方されるのであれば、任意の投与経路で投与することができる。このように、本発明の方法及び組成物により得られる治療効果は、本発明のある用途の特定のニーズに応じて、例えば、全身、局部、組織特異性等とすることができる。
【0091】
一実施形態において、本発明による組成物は、組成物を消化管(例えば、目標部位)と接触させ、所望の局部効果を与えたり、全身への影響のために吸収させるために、対象者により摂取される。投与はまた、例えば、注射(例えば、静脈(IV)、筋肉内(IM)、腹腔内、髄腔内又は皮下)、経皮、直腸、泌尿器生殖器(例えば、膣)、眼球、耳、鼻、吸入及び皮膚経路により行うこともできる。
【0092】
一実施形態において、健康促進化合物は、サプリメントである。サプリメントは、合成又は、例えば、微生物、菌、植物や動物源から派生した天然由来のものとすることができる。サプリメントは、ダイエタリー及び/又は栄養サプリメントで、例えば、ビタミン(例えば、A(レチノイド)、B1(チアミン)、B2(リボフラビン)、B3(ナイアシン)、B5(パントテン酸)、B6(ピリドキシン)、B9(葉酸)、B12(コバラミン)、C(アスコルビン酸)、D(カルシフェロール)、E(トコフェロール)、H(ビオチン)、K及び/又はその誘導体)、電解質やミネラル(例えば、カルシウム、リン、マグネシウム、カリウム、塩化ナトリウム、ヨウ素、亜鉛、鉄、銅、クロム、フッ化物、セレン、マンガン及びモリブデン)、脂肪、炭水化物及び/又はプロテイン(例えば、ホエー、ヘンプ、大豆、コラーゲン、アミノ酸)のような栄養を与えるものである。サプリメントは、エネルギー、覚醒及び/又は身体能力増大の源であり、例えば、カフェイン、イェルバマテ、クレアチン及び/又はガラナを与えるものである。サプリメントはまた、ホリスティックな健康上の利益のための、例えば、ウコンやニンジンといった植物又はハーブサプリメントとすることもできる。
【0093】
一実施形態において、健康促進化合物は、水であり、アジュバント組成物は、増進水和又は再水和化合物として投与でき、GI管におけるバイオアベイラビリティ及び水の吸収を増大する。
【0094】
一実施形態において健康促進化合物は、医薬品又はバイオ医薬品である。本明細書で用いる、「医薬品」という用語は、医療従事者により処方されたり、店頭で入手可能な薬剤及び/又は治療用薬剤として用いるのに製造された化合物を指す。本明細書で用いる、バイオ医薬品」という用語は、医薬品として用いられる生体高分子や細胞成分、例えば、血液製剤を指す。バイオ医薬品は、典型的に、生物源からの抽出や半合成により製造される。
【0095】
一実施形態において、医薬品は、抗ウイルス(例えば、アシクロビルやバラシクロビル)、抗生物質(例えば、エリスロマイシン)、鎮痛剤及び/又は抗炎症化合物(例えば、イブプロフェンやアスピリン)から選択される。
【0096】
本発明による健康促進化合物である医薬品のさらなる例を挙げると、これらに限られるものではないが、鎮痛剤(例えば、NSAID、オピオイド、アセトアミノフェン、ナプロキセン及び局所麻酔剤)、筋肉弛緩剤、消化剤(例えば、制酸剤、逆流症抑制薬、PPI、便秘、プロバイオティクス、プレバイオティクス及び止瀉薬)、心血管薬(例えば、ベータブロッカー、カルシウム拮抗剤、利尿剤、血管収縮剤、血管拡張剤、強心性配糖体、不整脈治療剤、硝酸塩)、血圧/高血圧薬(例えば、ACE阻害剤、アルファブロッカー、アンジオテンシン受容体拮抗薬)、凝固薬(例えば、血液凝固阻止剤、ヘパリン、血小板凝集阻害薬、線維素溶解薬、抗血友病因子及び止血剤)、スタチン(例えば、LDLコレステロール阻害剤及び脂質低下薬)、内分泌助剤(例えば、アンドロゲン、抗アンドロゲン物質、エストロゲン、性腺刺激ホルモン、コルチコステロイド、HGH、バソプレシン)、抗糖尿病薬(例えば、スルホニル尿素、ビグアニド、メトホルミン、チアゾリジンジオン、インスリン)、甲状腺ホルモン及び抗甲状腺薬、泌尿生殖器系薬(例えば、抗菌類、酸中和剤キノロン、抗生物質、抗コリン作用薬、排卵誘発剤、ホルモン配合避妊薬)、中枢神経系薬(例えば、幻覚剤、催眠薬、麻酔剤、抗精神病薬、覚醒促進剤、抗うつ剤(三環系抗うつ薬、モノアミン酸化酵素阻害薬、リチウム塩及びSSRI)、鎮吐薬、抗けいれん薬/抗てんかん薬、興奮剤、アンフェタミン、ドーパミンアゴニスト、抗ヒスタミン薬、カンナビノイド、5-HTアンタゴニスト)、眼薬(例えば、表面麻酔薬、交感神経興奮薬、副交感神経遮断薬、散瞳薬、様体筋麻痺薬、マスト細胞阻害剤)、抗菌剤(例えば、抗生物質、抗菌薬、抗真菌薬、駆虫薬、抗原虫薬、抗アメーバ薬)、抗ウイルス薬(例えば、アシクロビル、リバリビン、バラシクロビル、ファムシクロビル)、抗ヒスタミン薬、抗コリン薬、消毒薬、耳垢溶解薬、気管支拡張剤、鎮咳薬、粘液溶解薬、充血緩和剤、抗マラリヤ薬、アンチトキシン、抗毒素、ワクチン、免疫グロブリン、免疫抑制剤、インターフェロン、免疫抑制剤、モノクローナル抗体、化学療法剤及び/又は体調不良、疾患や疾病を処置したり、健康を増進する任意のその他のカテゴリーの化合物がある。
【外国語明細書】