(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100512
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】セラミックスヒーター
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240719BHJP
H05B 3/74 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H05B3/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004562
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】北林 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】下嶋 浩正
【テーマコード(参考)】
3K092
5F131
【Fターム(参考)】
3K092PP09
3K092QA04
3K092QA05
3K092QB02
3K092QB43
3K092RF11
3K092RF19
3K092RF20
3K092RF26
3K092VV22
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131BA00
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131BA23
5F131CA03
5F131CA06
5F131EA03
5F131EA04
5F131EB01
5F131EB11
5F131EB52
5F131EB53
5F131EB54
5F131EB81
(57)【要約】
【課題】半導体プロセスにおいて局所的な領域の基板の温度分布を小さくすることができ、製膜やエッチングプロセスを均質化することができるセラミックスヒーターを提供する。
【解決手段】セラミックス焼結体により形成された基材110と、前記基材110に埋設された発熱抵抗体120と、前記基材110の上面112から上方に突出して形成された複数の凸部130と、を備え、前記基材110の上面112と前記凸部の上端面132との距離を前記凸部130の高さhとし、複数の前記凸部130の高さhの最大値と最小値との差をΔ1、複数の前記凸部130の高さhの代表値をh
Mとしたとき、|Δ1|/h
M×100≦1.5であり、任意の□30mmの領域に形成されている複数の前記凸部130の高さhの最大値と最小値との差をΔ1
localとしたとき、|Δ1
local|/h
M×100≦0.75である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスヒーターであって、
セラミックス焼結体により形成された基材と、
前記基材に埋設された発熱抵抗体と、
前記基材の上面から上方に突出して形成された複数の凸部と、を備え、
前記基材の上面と前記凸部の上端面との距離を前記凸部の高さhとし、複数の前記凸部の高さhの最大値と最小値との差をΔ1、複数の前記凸部の高さhの代表値をhMとしたとき、
|Δ1|/hM×100≦1.5
であり、
任意の□30mmの領域に形成されている複数の前記凸部の高さhの最大値と最小値との差をΔ1localとしたとき、
|Δ1local|/hM×100≦0.75
であることを特徴とするセラミックスヒーター。
【請求項2】
複数の前記凸部の高さhが極大となる点が2つ以上存在することを特徴とする請求項1に記載のセラミックスヒーター。
【請求項3】
前記基材の上面は、凸状または凹状であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックスヒーター。
【請求項4】
セラミックスヒーターであって、
セラミックス焼結体により形成された基材と、
前記基材に埋設された発熱抵抗体と、
前記基材の上面から上方に突出して形成された複数の凸部と、を備え、
前記基材の上面と前記凸部の上端面との距離を前記凸部の高さhとし、複数の前記凸部の上端面によって画定される基板載置面を近似する回転放物面を基準面として、複数の前記凸部の上端面が前記基準面を鉛直方向に超える値の最大値と下回る値の最小値との差をΔ2、複数の前記凸部の高さhの代表値をhMとしたとき、
|Δ2|/hM×100≦1.5
であり、
任意の□30mmの領域に形成されている複数の前記凸部のうち、複数の前記凸部の上端面が前記基準面を鉛直方向に超える値の最大値と下回る値の最小値との差をΔ2localとしたとき、
|Δ2local|/hM×100≦0.75
であることを特徴とするセラミックスヒーター。
【請求項5】
前記hMは、100μm以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のセラミックスヒーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置用部材として、電極(発熱抵抗体)が埋設されたセラミックスヒーターが用いられてきた。セラミックスヒーターは、載置した基板を加熱することができる。
【0003】
特許文献1は、下面に溝を有するプレート部材と、中央が開口し、前記プレート部材の下面の一部に接合された基盤と、前記溝と前記基盤の上面との間に配置された抵抗発熱体と、前記プレート部材の上面に形成され、それぞれの上面が同一の平面を構成する複数の凸部と、を具備することを特徴とするヒータユニットが開示されている。
【0004】
特許文献2は、その表面または内部に抵抗発熱体が形成された半導体製造・検査装置用セラミック基板であって、その外縁部には、半導体ウエハを嵌合させるための突部が形成され、上記突部の内側には、上記半導体ウエハと接触する多数の凸状体が形成されていることを特徴とする半導体製造・検査装置用セラミック基板が開示されている。
【0005】
特許文献3は、セラミックス焼結体により形成された基体と、前記基体に埋設された電極と、前記基体の上面から上方に突出して形成された複数のピン状凸部と、を備え、前記複数のピン状凸部の上端により構成される載置曲面を前記基体の中心軸をZ軸として前記Z軸を通る断面で切断した断面曲線は、所定の基準面と前記断面との交線をX軸としたときに、前記中心軸の近傍でZの値の最大値をとり前記基体の外周に向かって単調減少する曲線、または前記中心軸の近傍でZの値の最小値をとり前記基体の外周に向かって単調増加する曲線である電極埋設部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-146793号公報
【特許文献2】特開2002-237375号公報
【特許文献3】特開2022-131548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまで、セラミックスヒーターの基板載置面は、大域的および局所的に精密に制御された平面や曲面にされることはなかった。これは、基板の温度分布は基板載置面の形状よりも発熱抵抗体の性質のバラツキの影響が大きかったこと、およびセラミックスヒーターの基板載置面を大域的および局所的に精密に制御された平面や曲面にすることがセラミックスヒーターの材質や加工方法では難しかったことからである。しかしながら、近年、半導体プロセスの高精度化に伴い、半導体プロセスにおいて局所的な領域の基板の温度分布を小さくすることができ、製膜やエッチングプロセスを均質化することができるセラミックスヒーターが要望されていた。
【0008】
特許文献1、および特許文献2は、凸部等の高さについての記載はあるものの、ヒーターの全面でのプロセスの均一性やヒーターの使用環境や設置方法によって影響する凸部等の高さのバラツキの影響および凸部の上面によって画定される面の形状に関する記載はない。また、特許文献3は、載置曲面の断面曲線が所定の形状になるように制御しているが、載置曲面全体を大域的および局所的に精密に制御してはいないため、局所的な領域の基板の温度分布を全面にわたり小さくすることができない場合があった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、半導体プロセスにおいて局所的な領域の基板の温度分布を小さくすることができ、製膜やエッチングプロセスを均質化することができるセラミックスヒーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記の目的を達成するため、本発明のセラミックスヒーターは、以下の手段を講じた。すなわち、本発明の適用例のセラミックスヒーターは、セラミックスヒーターであって、セラミックス焼結体により形成された基材と、前記基材に埋設された発熱抵抗体と、前記基材の上面から上方に突出して形成された複数の凸部と、を備え、前記基材の上面と前記凸部の上端面との距離を前記凸部の高さhとし、複数の前記凸部の高さhの最大値と最小値との差をΔ1、複数の前記凸部の高さhの代表値をhMとしたとき、|Δ1|/hM×100≦1.5であり、任意の□30mmの領域に形成されている複数の前記凸部の高さの最大値と最小値との差をΔ1localとしたとき、|Δ1local|/hM×100≦0.75であることを特徴としている。
【0011】
これにより、半導体製造プロセスで基板処理時に局所的な領域の基板の温度分布を小さくすることができ、製膜やエッチングプロセスを均質化することができる。その結果、基板に多数形成されるデバイスの均質化ができ、歩留まりが向上する。
【0012】
(2)また、上記(1)の適用例のセラミックスヒーターにおいて、複数の前記凸部の高さhが極大となる点が2つ以上存在することを特徴としている。
【0013】
このように、凸部の極大値を2つ以上とすることで、基板の座りをよくすることができ、安定した吸着状態とすることができる。その結果、局所的な領域の基板の温度分布をさらに小さくすることができる。
【0014】
(3)また、上記(1)または(2)の適用例のセラミックスヒーターにおいて、前記基材の上面は、凸状または凹状であることを特徴としている。
【0015】
このように、基材の上面を凸状、凹状にすることによってセラミックスヒーターの構造や使用環境によって生じる基板載置面の半径方向の温度分布を改善することができる。また、基板の座りをよくすることができ、安定した吸着状態とすることができる。その結果、局所的な領域の基板の温度分布をさらに小さくすることができる。
【0016】
(4)また、本発明の適用例のセラミックスヒーターは、セラミックスヒーターであって、セラミックス焼結体により形成された基材と、前記基材に埋設された発熱抵抗体と、前記基材の上面から上方に突出して形成された複数の凸部と、を備え、前記基材の上面と前記凸部の上端面との距離を前記凸部の高さhとし、複数の前記凸部の上端面によって画定される基板載置面を近似する回転放物面を基準面として、複数の前記凸部の上端面が前記基準面を鉛直方向に超える値の最大値と下回る値の最小値との差をΔ2、複数の前記凸部の高さhの代表値をhMとしたとき、|Δ2|/hM×100≦1.5であり、任意の□30mmの領域に形成されている複数の前記凸部のうち、複数の前記凸部の上端面が前記基準面を鉛直方向に超える値の最大値と下回る値の最小値との差をΔ2localとしたとき、|Δ2local|/hM×100≦0.75であることを特徴としている。
【0017】
これにより、半導体製造プロセスで基板処理時に局所的な領域の基板の温度分布を小さくすることができ、製膜やエッチングプロセスを均質化することができる。その結果、基板に多数形成されるデバイスの均質化ができ、歩留まりが向上する。また、基板載置面を回転放物面で近似できる形状にすることで、セラミックスヒーターの構造や使用環境によって生じる半径方向の温度分布を改善することができる。また、基板の座りをよくすることができ、安定した吸着状態とすることができる。
【0018】
(5)また、上記(1)から(4)のいずれかの適用例のセラミックスヒーターにおいて、前記hMは、100μm以上であることを特徴としている。
【0019】
このように、凸部の高さの代表値hMを100μm以上とすることで、凸部の形状や基材の上面からの影響による伝熱の変動を相対的に小さくすることができる。その結果、基板に対する伝熱量をより精密に制御することができ、局所的な領域の基板の温度分布をさらに改善することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のセラミックスヒーターによれば、半導体プロセスにおいて局所的な領域の基板の温度分布を小さくすることができ、製膜やエッチングプロセスを均質化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るセラミックスヒーターの一例を示す模式的な断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係るセラミックスヒーターの上面の一例を示す模式図である。
【
図3】(a)、(b)は、それぞれ拡大した凸部を示す模式的な部分断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係るセラミックスヒーターの変形例を示す模式的な断面図である。
【
図5】第1の実施形態に係るセラミックスヒーターの変形例を示す模式的な断面図である。
【
図6】発熱抵抗体の平面形状の一例を示す模式図である。
【
図7】第1の実施形態に係る支持部材付きセラミックスヒーターの一例を示す模式的な断面図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係るセラミックスヒーターの一例を示した模式的な断面図である。
【
図9】
図8のセラミックスヒーターの部分拡大図である。
【
図10】第2の実施形態に係るセラミックスヒーターの変形例を示した模式的な断面図である。
【
図11】第2の実施形態に係る支持部材付きセラミックスヒーターの一例を示す模式的な断面図である。
【
図12】実施例および比較例の形状の特徴および測定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。なお、構成図において、各構成要素の大きさは概念的に表したものであり、必ずしも実際の寸法比率を表すものではない。
【0023】
[第1の実施形態]
(セラミックスヒーターの構成)
本発明の第1の実施形態に係るセラミックスヒーターについて、
図1および
図2を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るセラミックスヒーターの一例を示した模式的な断面図である。
図2は、第1の実施形態に係るセラミックスヒーターの上面の一例を示した模式図である。本実施形態に係るセラミックスヒーター100は、基材110、発熱抵抗体120、および複数の凸部130を備えている。
【0024】
基材110は、セラミックス焼結体により略平板状に形成されている。基材110は略円板状のほか、多角形板状または楕円板状などのさまざまな形状であってもよい。なお、略平板状とは、後述する凸形状または凹形状を含む。
【0025】
発熱抵抗体120は、基材110に埋設されている。発熱抵抗体120は、基板(ウエハ)Wを加熱するためのヒーター用電極として用いられる。これ以外の用途に用いられる電極、例えば、静電吸着用電極や高周波電極がさらに埋設されていてもよい。
【0026】
凸部130は、基材110の上面112から上方に突出して複数形成される。凸部130の形状は、円柱状、角柱状等の柱状、円錐状、角錐状等の錐状、円錐台状、角錐台状等の錐状の上部を切断した形状等から適宜選択される。
【0027】
凸部130の配置は特に限定されない。既知の形態またはそれに類似する形態であればよく、例えば、
図2に示されるような三角格子状のほか、同心円状、または正方格子状など規則的に配置される。隣接する凸部130の中心間の距離(ピッチ)は、4mm以上20mm以下であることが好ましい。凸部の上端面132の最大径は、0.5mm以上5mm以下であることが好ましい。凸部の上端面132の表面粗さは、Ra0.01μm以上0.8μm以下であることが好ましい。
【0028】
複数の凸部の上端面132は、全体として基板Wを載置する所定の形状の平面または曲面(基板載置面134)を画定する。これにより、複数の凸部130は、基板Wを支持する。なお、複数の凸部130のうち、上端面が基板Wと当接しないものがあってもよい。これは、そのような凸部があっても、周りの凸部130の配置によっては、基板Wを支持することが可能だからである。なお、
図1では、凸部の上端面132の全面が基板Wと当接しているが、凸部の上端面132の一部のみが基板Wと当接していてもよい。本実施形態の基板載置面134は、基材110の上面112に沿った平面または曲面となる。
【0029】
基材110の上面112と凸部の上端面132との距離を凸部の高さhとする。複数の凸部130の高さhの最大値と最小値との差をΔ1、複数の凸部130の高さhの代表値をhMとしたとき、|Δ1|/hM×100≦1.5である。ここで、複数の凸部130の高さhの代表値hMとは、基材110の上面112に□30mmの領域(一辺の長さ30mmの正方形に囲まれた領域)を辺が接するように全面に配置したときの、各々の□30mmの領域の中心(重心)に最も近い凸部の高さhの平均値とする。ただし、□30mmの領域が上面112に収まらない領域は、代表値hMを求める際に用いない。また、基材110の上面112方向から見た任意の□30mmの領域(一辺の長さ30mmの正方形に囲まれた領域)に形成されている複数の凸部の高さhの最大値と最小値との差をΔ1localとしたとき、|Δ1local|/hM×100≦0.75である。
【0030】
このように、大域的な領域内での複数の凸部130の高さhのバラツキを小さくしつつ、局所的な領域内での複数の凸部130の高さhのバラツキをさらに小さくすることにより、半導体製造プロセスで基板処理時に局所的な領域の基板Wの温度分布を小さくすることができ、製膜やエッチングプロセスを均質化することができる。その結果、基板Wに多数形成されるデバイスの均質化ができ、歩留まりが向上する。
【0031】
凸部130の高さhや凸部の上端面132の3次元的な位置は、3次元測定器で測定できる。なお、セラミックスヒーター100に基板Wを載置または吸着したときに基板Wが凸部の上端面132に十分追従している場合、厚み0.775mm、平坦度(TTV : Total Thickness Variation)がSEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)やJEIDA(日本電子工業振興協会)の規格より小さい(例えば、平坦度(TTV)1.0μm)シリコンウエハを載置または吸着したときの基板載置面134と反対側の面(基板Wの表面)をレーザー干渉計で測定した平面または曲面を、基板載置面134とみなしてもよい。基板Wが凸部の上端面132に十分追従している場合とは、凸部の上端面132が基板Wと当接していない凸部130が隣接していないことをいう。
【0032】
複数の凸部130の高さhが極大となる点が2つ以上存在することが好ましい。これにより、基板Wの座りをよくすることができ、安定した吸着状態とすることができる。その結果、局所的な領域の基板Wの温度分布をさらに小さくすることができる。
【0033】
図3(a)、(b)は、それぞれ拡大した凸部130を示す模式的な部分断面図である。セラミックスヒーター100の凸部130は、加工方法の制約により、裾の形状が基材110の上面112に対して垂直ではなく一定の広がりを有する。そのため、
図3(a)と比較して
図3(b)のように凸部130の高さhが低いと基材110の凸部130の裾の形状の影響を受け、凸部の上端面132による固体接触による伝熱量が変動する要因となる。また、基材110の上面112からの輻射による伝熱にも差が生じ、伝熱量が変動する要因となる。
【0034】
上記の理由により、複数の凸部130の高さhの代表値hMは、100μm以上であることが好ましい。また、代表値hMの上限は、加工方法の制約により1000μm以下であることが好ましい。これにより、凸部130の形状や基材110の上面112からの影響による伝熱の変動を相対的に小さくすることができる。その結果、基板Wに対する伝熱量をより精密に制御することができ、基板Wの局所的な領域の温度分布をさらに改善することができる。
【0035】
セラミックスヒーター100は、環状凸部140を備えていてもよい。環状凸部140が備えられる場合、環状凸部140の外径は基材110の外径と同一かまたは基材110の外径より小さく設定される。環状凸部140の幅は、0.2mm以上8mm以下であることが好ましい。環状凸部140の高さは、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。また、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。環状凸部140の高さとは、基材110の上面112と環状凸部の上端面142との距離である。環状凸部140の高さは、複数の凸部130の高さhと同一高さであることがより好ましい。これにより、ガスを封止することができる。環状凸部の上端面142の表面粗さ(中心線平均粗さ)Raは、0.01μm以上1.6μm以下であることが好ましい。
【0036】
セラミックスヒーター100は、端子150および端子穴152を備えていてもよい。また、セラミックスヒーター100は、図示しないリフトピン孔、通気孔等を備えていてもよい。
【0037】
図4、または
図5は、本発明の第1の実施形態に係るセラミックスヒーターの変形例を示す模式的な断面図である。
図4または
図5に示されるように、基材110の上面112は、凸状または凹状であることが好ましい。これにより、セラミックスヒーター100の構造や使用環境によって生じる基板載置面134の半径方向の温度分布を改善することができる。特に、セラミックスヒーター100をプラズマ環境下で使用する場合、
図6のような周方向に延びる複数の環状の電極を組み合わせた発熱抵抗体120が埋設されている場合、または基材110の下面114に後述する支持部材160を接合した場合に基板載置面134の半径方向の温度分布を改善することができる。
図6は、発熱抵抗体120の平面形状の一例を示す模式図である。また、基板の座りをよくすることができ、安定した吸着状態とすることができる。その結果、局所的な領域の基板の温度分布をさらに小さくすることができる。
【0038】
基材110の上面112が凸状または凹状である場合、基板載置面134の平坦度は、50μm以下であることが好ましい。または、複数の凸部130の高さhの代表値hMの30%以下であることが好ましい。これにより、基板Wにしわが寄ることなく基板Wを載置できる。基板載置面134の平坦度とは、基板載置面134の全ての点についての鉛直方向の最大値から最小値を引いた差である。なお、平坦度の下限は、基材110の径や基板載置面134の形状によって異なるが、例えば、5μm以上であることが好ましい。
【0039】
基材110の上面112が凸状または凹状である場合、基材110の下面114の形状は、基板載置面と略同一の曲面で形成してもよい。よって、基材110が略平板状とは、
図4または
図5のような凸状または凹状、さらに下面114が凹状または凸状であるような形状を含むこととする。
【0040】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る支持部材付きセラミックスヒーター200の一例を示す模式的な断面図である。本実施形態に係る支持部材付きセラミックスヒーター200は、セラミックスヒーター100と、支持部材160と、を備える。セラミックスヒーター100の基本的構成は、上記のとおりである。
【0041】
支持部材160は、セラミックス焼結体からなり、セラミックスヒーター100を支持する。支持部材160は、セラミックスヒーター100の基材110の下面114の所定の位置に接合面を介して接合されている。接合は、固相接合であってもよいし、接合材を用いた接合であってもよい。支持部材160は、セラミックスヒーター100の基材110と同一の主成分を有するセラミックス焼結体で形成されていることが好ましい。支持部材160は、円筒状であることが好ましい。
【0042】
なお、
図7は、
図1のセラミックスヒーター100と支持部材160を組み合わせた支持部材付きセラミックスヒーター200の一例であるが、支持部材付きセラミックスヒーター200は、
図4や
図5、またはその他の形状のセラミックスヒーター100と支持部材160を組み合わせてもよい。
【0043】
[第2の実施形態]
図8は、本発明の第2の実施形態に係るセラミックスヒーター100の一例を示す模式的な断面図である。本実施形態に係るセラミックスヒーター100は、基本的な構成は第1の実施形態に係るセラミックスヒーター100と同様であるので、以下では、異なる点のみ説明する。
【0044】
基材110は、基材の中心116が自然に定まる形状であることが好ましい。これにより、基材の中心116を通る軸を後述する基準面136の中心軸とすることができる。
【0045】
複数の凸部の上端面132は、全体として基板Wを載置する所定の形状の曲面(基板載置面134)を画定する。これにより、複数の凸部130は、基板Wを支持する。なお、複数の凸部130のうち、上端面が基板Wと当接しないものがあってもよい。これは、そのような凸部があっても、周りの凸部130の配置によっては、基板Wを支持することが可能だからである。なお、凸部の上端面132の全面が基板Wと当接していてもよいが、凸部の上端面132の一部のみが基板Wと当接していてもよい。
【0046】
本実施形態の複数の凸部の上端面132によって画定される基板載置面134は、それを近似する回転放物面が決定される形状である。
図9は、
図8のセラミックスヒーター100の部分拡大図である。基材110の上面112と凸部の上端面132との距離を凸部の高さhとし、複数の凸部の高さhの代表値をh
Mとする。代表値h
Mは、第1の実施形態と同様に定義される。また、基板載置面134を近似する回転放物面を基準面136として、複数の凸部の上端面132が基準面136を鉛直方向に超える値の最大値と下回る値の最小値との差をΔ2とする。このとき、|Δ2|/h
M×100≦1.5である。また、基材110の上面112方向から見た任意の□30mmの領域に形成されている複数の凸部130のうち、複数の凸部の上端面132が基準面を鉛直方向に超える値の最大値と下回る値の最小値との差をΔ2
localとしたとき、|Δ2
local|/h
M×100≦0.75である。
【0047】
このように、大域的な領域内での複数の凸部130の高さhの基準面136に対するバラツキを小さくしつつ、局所的な領域内での複数の凸部130の高さhの基準面136に対するバラツキをさらに小さくすることにより、半導体製造プロセスで基板処理時に局所的な領域の基板Wの温度分布を小さくすることができ、製膜やエッチングプロセスを均質化することができる。その結果、基板Wに多数形成されるデバイスの均質化ができ、歩留まりが向上する。また、基板載置面134を回転放物面で近似できる形状にすることで、セラミックスヒーター100の構造や使用環境によって生じる半径方向の温度分布を改善することができる。特に、セラミックスヒーター100をプラズマ環境下で使用する場合、
図6のような周方向に延びる複数の環状の電極を組み合わせた発熱抵抗体120が埋設されている場合、または基材110の下面114に支持部材160を接合した場合に基板載置面134の半径方向の温度分布を改善することができる。また、基板Wの座りをよくすることができ、安定した吸着状態とすることができる。
【0048】
基準面136となる回転放物面は、基材の中心116を通る鉛直方向の軸または基板載置面134の極大値を与える点を通る鉛直方向の軸を回転軸とした回転放物面である。凸部130の高さhまたは凸部の上端面132の3次元的な位置は、3次元測定器で測定できる。これらを用いて基板載置面134を画定することで、基準面136を算出することができる。すなわち、基準面136は、複数の凸部の上端面132の形状(上方から見た形状)の重心位置の半径方向の座標(r座標)と基材110の厚み方向の座標(z座標)から算出される。なお、本実施形態でも、セラミックスヒーター100に基板Wを載置または吸着したときに基板Wが凸部の上端面132に十分追従している場合、厚み0.775mm、平坦度(TTV)がSEMIやJEIDAの規格より小さい(例えば、平坦度(TTV)1.0μm)シリコンウエハを載置または吸着したときの基板載置面134と反対側の面(基板Wの表面)をレーザー干渉計で測定した曲面を、基板載置面134とみなしてもよい。
【0049】
基板載置面134の平坦度は、50μm以下であることが好ましい。または、複数の凸部130の高さhの代表値hMの30%以下であることが好ましい。本実施形態においても、基板載置面134の平坦度とは、基板載置面134の全ての点についての鉛直方向の最大値から最小値を引いた差である。なお、平坦度の下限は、基材110の径や基板載置面134の形状によって異なるが、例えば、5μm以上であることが好ましい。
【0050】
図10は、第2の実施形態に係るセラミックスヒーター100の変形例を示す模式的な断面図である。
図8のセラミックスヒーター100は、基板載置面134が凸状に形成されていたが、本実施形態に係るセラミックスヒーター100は、
図10に示されるように、基板載置面134が凹状に形成されていてもよい。この場合も、複数の凸部の上端面132によって画定される基板載置面134は、それを近似する回転放物面が決定される形状である。
【0051】
図11は、本発明の第2の実施形態に係る支持部材付きセラミックスヒーター200の一例を示す模式的な断面図である。本実施形態に係る支持部材付きセラミックスヒーター200は、セラミックスヒーター100と、支持部材160と、を備える。セラミックスヒーター100の基本的構成は、上記のとおりである。なお、
図11は、
図8のセラミックスヒーター100と支持部材160を組み合わせた支持部材付きセラミックスヒーター200であるが、支持部材付きセラミックスヒーター200は、
図10、またはその他の形状のセラミックスヒーター100と支持部材160を組み合わせてもよい。
【0052】
[セラミックスヒーターの製造方法]
次に、第1および第2の実施形態に係るセラミックスヒーターの製造方法を説明する。実施形態に係るセラミックスヒーターは、例えば、粉末ホットプレス法によって作製される。粉末ホットプレス法は、セラミックス原料粉と所定の電極を交互に重ねることにより電極をセラミックスの内部に埋設し、それを1軸ホットプレス焼成する方法である。粉末ホットプレス法を採用することで短期間に作製することができる。なお、製法は本方法に限られず、例えば、特許6148845号で開示されている成形体ホットプレス法や、従前のグリーンシート積層法等であってもよい。
【0053】
例えば、セラミックス粉末に焼結助剤、バインダー、可塑剤、分散剤などの添加剤を適宜添加して混合して、セラミックス原料粉(スラリー)を作製し、スプレードライ法等により造粒粉を造粒する。混合方法は、湿式、乾式の何れであってもよく、例えば、ボールミル、振動ミルなどの混合器を用いることができる。原料となるセラミックス粉末としては、炭化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素などが用いられる。
【0054】
セラミックス粉末は、高純度であることが好ましく、その純度は、好ましくは96%以上、より好ましくは98%以上である。また、セラミックス粉末の平均粒径は、原料とするセラミックス粉末の種類によっても異なるが、例えば、AlNを原料とする場合、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.3μm以上0.8μm以下であることがより好ましい。
【0055】
セラミックス焼結体に埋設される発熱抵抗体の材質は、Mo、W、またはこれらの合金を用いることが好ましい。これらの材質のメッシュ、箔、コイル、または薄膜で電極を形成することができる。例えば、Moメッシュ(線径0.1mm、50メッシュ、平織)を所定の形状に裁断して、発熱抵抗体とする。外径は基材の外側面から露出しないように基材外径より小さい。外部電源との接続用の端子が同時に埋設されてもよい。
【0056】
焼結は、一軸ホットプレス焼成や常圧焼成を用いることができる。一軸ホットプレス焼成は、有底のカーボン型に基体を形成する造粒粉を充填し、一軸プレス後に所定形状に裁断された発熱抵抗体を成形体上に配置する。その上に同じ造粒粉を充填しカーボン型のパンチを載せ成形後、所定の焼成条件で焼成する。例えば、AlNを原料とする場合、1700℃以上2000℃以下の温度条件、1MPa以上20MPa以下の圧力条件で、0.1時間以上20時間以下、ホットプレス焼成することが好ましい。
【0057】
焼成後は、複数の凸部の形成、裏面の加工、端子穴の形成のほか所定の形状に研削や研磨加工を行なう。形成方法としては、ブラスト加工、ミリング加工、レーザー加工等によって形成することが可能である。必要な場合は、通気孔、環状凸部等を形成してもよい。これにより、内部に発熱抵抗体が埋設され一方の主面に複数の凸部が形成された基材を準備することができる。
【0058】
次に、複数の凸部の上端面によって画定される基板載置面の精度を向上させるため、研磨加工を行う。研磨加工は、外周部の複数の凸部(環状凸部が形成されている場合は環状凸部も含む)または中心部の複数の凸部から順に研磨を行う。研磨加工は、基板載置面を精度の高い平面状または所定の回転放物面を基準面とした精度の高い曲面状にする。この場合の精度とは、大域的および局所的な凸部の高さの差または基準面と凸部の差を小さくすることである。研磨途中で3次元測定器やレーザー干渉計による確認を行ってもよい。基板載置面を形成する研磨加工は、複数の凸部を形成する前に行ってもよいが、複数の凸部を形成した後に行う方が微小な研磨量を調整でき、時間短縮にもなるため好ましい。
【0059】
研磨加工後、端子穴にロウ材等で端子を接続する。端子は、Ni等を用いることができる。また、ロウ材はAuロウ等を用いることができる。
【0060】
支持部材付きのセラミックスヒーターとする場合、セラミックス粉末を造粒した造粒粉から、焼成後支持部材となるセラミックス成形体を形成する。セラミックス粉末は、セラミックスヒーター(ヒータープレート)で使用したセラミックス粉末と主成分が同一であることが好ましい。
【0061】
次に、セラミックス成形体を所定の温度以上、所定の時間以上脱脂処理してセラミックス脱脂体を作製する。例えば、AlNを原料とする場合、400℃以上800℃以下の温度で熱処理され、セラミックス脱脂体となる。脱脂時間は、1時間以上120時間以下であることが好ましい。脱脂には、大気炉または窒素雰囲気炉を用いることができるが、大気炉の方が好ましい。
【0062】
次に、セラミックス脱脂体を焼成してヒータープレートを支持する支持部材を焼成する。支持部材の焼成は、常圧焼成であることが好ましい。例えば、AlNを原料とする場合、焼成温度は、1500℃以上2000℃以下であることが好ましい。焼成時間は、1時間以上12時間以下であることが好ましい。焼成雰囲気は、例えば、窒素や不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。
【0063】
そして、ヒータープレートの下面の所定の位置に支持部材を配置し、接合面に垂直方向に加圧しつつ加熱することでヒータープレートと支持部材とを接合する。加圧する力は、1MPa以上であることが好ましい。また、加熱温度は、1500℃以上2000℃以下であることが好ましい。加熱時間は、0.5時間以上5時間以下であることが好ましい。加熱雰囲気は、例えば、窒素や不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。これにより、ヒータープレートと支持部材とが固相接合される。なお、接合手段は固相接合に限られず、無機系の接合材を介在させた手段であってもよい。
【0064】
なお、支持部材付きセラミックスヒーターの凸部の形成や凸部の研磨、研削、端子のロウ付け等は、ヒータープレートと支持部材との接合後に行なうことが好ましい。
【0065】
このようにすることで、本発明の実施形態に係るセラミックスヒーターを製造することができる。
【0066】
[実施例および比較例]
(実施例1)
実施例1は、
図1に示されるような、平面状の基板載置面を有するセラミックスヒーターである。径φ320mm、厚さt24mmの略円板状であり、Mo製の発熱抵抗体が埋設された基材を準備し、ブラスト加工することで、環状凸部および複数の凸部を形成した。基材の材質は、窒化アルミニウム(AlN)に焼結助剤としてY
2O
3を3wt%添加したセラミックス焼結体からなる。環状凸部は、外径φ298mm、幅3mm、基材上面からの高さ約100μmで形成した。複数の凸部は、環状凸部の内径より内側にピッチ約16.7mmの三角格子状にφ2mm、基材上面からの高さ約100μmで形成した。
【0067】
次に、環状凸部および複数の凸部を研磨加工することで基板載置面の大域的および局所的な精度を高くした。大域的な平面度が1.5μm以下、環状凸部および複数の凸部の上端面の表面粗さ(中心線平均粗さ)Raが0.2μmとなるように研磨加工した。外周部の環状凸部および複数の凸部から順に遊離砥粒によるラップ研磨を行い、基板載置面を精度の高い平面状にした。
【0068】
研磨加工後、基材の上面に□30mmの領域を設定し、全ての複数の凸部の高さhを測定し、hの代表値hM、hの最大値と最小値との差Δ1、任意の□30mmの領域に形成されている複数の凸部の高さhの最大値と最小値との差Δ1localを算出した。また、複数の凸部の高さhが極大となる点の個数を求めた。hM=99.8μm、Δ1=1.4μm、Δ1local=0.7μmであり、複数の凸部の高さhが極大となる点の個数は2であった。
【0069】
(実施例2)
実施例2のセラミックスヒーターは、複数の凸部を基材上面からの高さ約150μmで形成した以外、実施例1と同様の条件で製造した。研磨加工後算出したhM=150.5μm、Δ1=1.4μm、Δ1local=0.6μmであり、複数の凸部の高さhが極大となる点の個数は3であった。
【0070】
(実施例3)
実施例3のセラミックスヒーターは、複数の凸部を基材上面からの高さ約200μmで形成した以外、実施例1と同様の条件で製造した。研磨加工後算出したhM=202.3μm、Δ1=1.3μm、Δ1local=0.3μmであり、複数の凸部の高さhが極大となる点の個数は4であった。
【0071】
(実施例4)
実施例4のセラミックスヒーターは、複数の凸部を基材上面からの高さ約150μmで形成した以外、実施例1と同様の条件で製造した。研磨加工後算出したhM=150.7μm、Δ1=1.1μm、Δ1local=0.3μmであり、複数の凸部の高さhが極大となる点の個数は4であった。
【0072】
(実施例5)
実施例5のセラミックスヒーターは、複数の凸部を基材上面からの高さ約200μmで形成した以外、実施例1と同様の条件で製造した。研磨加工後算出したhM=204.1μm、Δ1=1.5μm、Δ1local=0.3μmであり、複数の凸部の高さhが極大となる点の個数は4であった。
【0073】
(実施例6)
実施例6のセラミックスヒーターは、複数の凸部を基材上面からの高さ約50μmで形成した以外、実施例1と同様の条件で製造した。研磨加工後算出したhM=51.0μm、Δ1=0.7μm、Δ1local=0.3μmであり、複数の凸部の高さhが極大となる点の個数は2であった。
【0074】
(実施例7)
実施例7のセラミックスヒーターは、複数の凸部を基材上面からの高さ約90μmで形成した以外、実施例1と同様の条件で製造した。研磨加工後算出したhM=88.8μm、Δ1=1.3μm、Δ1local=0.6μmであり、複数の凸部の高さhが極大となる点の個数は2であった。
【0075】
(実施例8)
実施例8のセラミックスヒーターは、研磨方法を変更した以外、実施例1と同様の条件で製造した。研磨加工後算出したhM=106.0μm、Δ1=1.5μm、Δ1local=0.7μmであり、複数の凸部の高さhが極大となる点の個数は1であった。
【0076】
(実施例9)
実施例9は、
図5に示されるような、凹状の上面および基板載置面を有するセラミックスヒーターであり、セラミックスヒーターの下面側に支持部材(シャフト)を接合した。シャフトは、焼結助剤を添加していない窒化アルミニウム(AlN)により作製した。実施例9のセラミックスヒーターは、基材の上面の断面が2次曲線状の凹状となるように複数の凸部を形成した。基材の上面の中心部と外縁部の高さの差は27μmとした。そして、研磨加工後の複数の凸部の基材上面からの高さが約150μmとなるように研磨加工した。それ以外は、実施例1と同様の条件で製造した。研磨加工後算出したh
M=152.7μm、Δ1=1.3μm、Δ1
local=1.1μmであり、複数の凸部の高さhが極大となる点の個数は2であった。
【0077】
(実施例10)
実施例10は、
図4に示されるような、凸状の上面および基板載置面を有するセラミックスヒーターであり、セラミックスヒーターの下面側に実施例9と同様のシャフトを接合した。実施例10のセラミックスヒーターは、基材の上面の断面が2次曲線状の凸状となるように複数の凸部を形成した。基材の上面の中心部と外縁部の高さの差は35μmとした。そして、研磨加工後の複数の凸部の基材上面からの高さが約150μmとなるように研磨加工した。それ以外は、実施例1と同様の条件で製造した。研磨加工後算出したh
M=148.7μm、Δ1=2.1μm、Δ1
local=1.0μmであり、複数の凸部の高さhが極大となる点の個数は3であった。
【0078】
(実施例11)
実施例11は、
図10に示されるような、平面状の上面および凹状の基板載置面を有するセラミックスヒーターであり、セラミックスヒーターの下面側に実施例9と同様のシャフトを接合した。実施例11のセラミックスヒーターは、複数の凸部を基材上面からの高さ約220μmで形成した。そして、研磨加工後の複数の凸部の上端面で画定される基板載置面が凹状の回転放物面となるように研磨加工した。基材の上面の中心部の凸部と外縁部の凸部の高さの差は38μmとした。それ以外は、実施例1と同様の条件で製造した。
【0079】
研磨加工後、全ての複数の凸部の高さhを測定し、複数の凸部の上端面で画定される基板載置面を近似する回転放物面を算出した。そして、hの代表値hM、算出した回転放物面を基準面として、複数の凸部の上端面が基準面を鉛直方向に超える値の最大値と下回る値の最小値との差Δ2、任意の□30mmの領域に形成されている複数の凸部のうち、複数の凸部の上端面が基準面を鉛直方向に超える値の最大値と下回る値の最小値との差Δ2localを算出した。hM=124.4μm、Δ2=1.7μm、Δ2local=0.8μmであった。
【0080】
(実施例12)
実施例12は、
図8に示されるような、平面状の上面および凸状の基板載置面を有するセラミックスヒーターであり、セラミックスヒーターの下面側に実施例9と同様のシャフトを接合した。実施例12のセラミックスヒーターは、研磨加工後の複数の凸部の上端面で画定される基板載置面が凸状の回転放物面となるように研磨加工し、基材の上面の中心部の凸部と外縁部の凸部の高さの差は30μmとした。それ以外は、実施例10と同様の条件で製造した。研磨加工後算出したh
M=119.3μm、Δ2=1.6μm、Δ2
local=0.9μmであった。
【0081】
(比較例1)
比較例1のセラミックスヒーターは、研磨加工において、大域的な平面度が2.0μm以下となるように加工した以外、実施例1と同様の条件で製造した。研磨加工後算出したhM=101.5μm、Δ1=1.5μm、Δ1local=0.8μmであり、複数の凸部の高さhが極大となる点の個数は1であった。
【0082】
(比較例2)
比較例2のセラミックスヒーターは、複数の凸部を基材上面からの高さ約200μmで形成し、研磨加工において、大域的な平面度が3.5μm以下となるように加工した以外、実施例1と同様の条件で製造した。研磨加工後算出したhM=198.7μm、Δ1=3.3μm、Δ1local=1.5μmであり、複数の凸部の高さhが極大となる点の個数は1であった。
【0083】
(基板温度分布評価)
セラミックヒーターを減圧チャンバに搭載した。セラミックヒーターの基板載置面に表面を黒体化した温度評価用基板を載置し、基材の温度を400℃に制御した。チャンバはArガス雰囲気で3000Paに調整した。環状凸部と基板によって画定される空間を排気することによって、その空間の圧力をArガス雰囲気で500Paに調節した。その結果、チャンバとの差圧で基板は真空吸着された。基板の温度はサファイアビューポートを介して赤外線カメラを用い、Φ298mm以内の全面の平均温度と任意の□30mmの領域の温度を測定した。そして、全面の(最高温度-最小温度)を全面の温度分布とした。また、各領域の(最高温度-最小温度)を各領域の温度分布とし、その最大値を算出し、局所的な領域の温度分布とした。
【0084】
(評価結果)
図12は、実施例および比較例の形状の特徴および測定結果を示す表である。実施例1~12は、比較例1、2と比較して、各領域の温度分布が2.2℃以下と温度差が小さくなっている。これにより、|Δ1|/h
M×100≦1.5、かつ|Δ1
local|/h
M×100≦0.75、または|Δ2|/h
M×100≦1.5、かつ|Δ2
local|/h
M×100≦0.75を満たす場合、これを満たさない比較例と比較して、各領域の温度分布が小さくなることが確かめられた。
【0085】
複数の凸部の高さの代表値hMが100μmより小さい実施例6および実施例7は、各領域の温度分布が2.0℃より大きかった。これは、複数の凸部の高さの代表値hMが小さいことにより、凸部から基板または基板から凸部の伝熱に凸部の裾の形状が大きく影響したためと考えられる。そのため、複数の凸部の高さの代表値hMは、100μm以上であることがより好ましいことが確かめられた。
【0086】
基材の上面が凸状または凹状である実施例9および実施例10は、セラミックヒーターにシャフトが設けられたため、シャフトへの伝熱の影響により基板載置面の半径方向に温度勾配が生じやすくなるが、本発明の構成とすることにより各領域の温度分布を小さく抑制することができた。
【0087】
基材の上面が平面で、基板載置面が回転放物面に十分に近い凸状または凹状である実施例11および実施例12は、セラミックヒーターにシャフトが設けられたため、シャフトへの伝熱の影響により基板載置面の半径方向に温度勾配が生じやすくなるが、本発明の構成とすることにより各領域の温度分布を小さく抑制することができた。
【0088】
実施例1および実施例8により、hM、Δ1、Δ1localは概ね目標とする数値範囲に収めることができ、精度よく加工することができた。
【0089】
以上により、本発明のセラミックスヒーターは、半導体プロセスにおいて局所的な領域の基板の温度分布を小さくすることができ、製膜やエッチングプロセスを均質化することができることが確かめられた。
【0090】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形および均等物に及ぶことはいうまでもない。また、各図面に示された構成要素の構造、形状、数、位置、大きさ等は説明の便宜上のものであり、適宜変更しうる。
【符号の説明】
【0091】
100 セラミックスヒーター
110 基材
112 上面
114 下面
116 基材の中心
120 発熱抵抗体
130 凸部
132 凸部の上端面
134 基板載置面
136 基準面
140 環状凸部
142 環状凸部の上端面
150 端子
152 端子穴
160 支持部材
200 支持部材付きセラミックスヒーター
W 基板