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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100525
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/29 20060101AFI20240719BHJP
   A61N 5/10 20060101ALI20240719BHJP
   G01T 1/18 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G01T1/29 A
A61N5/10 Q
G01T1/18 D
G01T1/18 C
G01T1/29 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004585
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】518119249
【氏名又は名称】株式会社ビードットメディカル
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】古川 卓司
(72)【発明者】
【氏名】石原 駿
(72)【発明者】
【氏名】益田 大志
【テーマコード(参考)】
2G188
4C082
【Fターム(参考)】
2G188AA01
2G188BB12
2G188BB13
2G188BB14
2G188CC02
2G188CC03
2G188EE07
2G188EE12
2G188EE29
2G188EE39
4C082AA01
4C082AC04
4C082AE01
4C082AP01
(57)【要約】
【課題】電離ガスを循環させる構造を簡便に実現できる計測装置を提供する。
【解決手段】計測装置は、貫通部が形成された基板と、基板に設けられている電極と、基板において電極の周囲に配置されている囲い部材と、基板と対向し、電離ガスが流れる空間を形成するように配置された対向部材と、を備える。空間は、基板、電極、囲い部材および対向部材によって区画され、貫通部と連通するように形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通部が形成された基板と、
前記基板に設けられている電極と、
前記基板において前記電極の周囲に配置されている囲い部材と、
前記基板と対向し、電離ガスが流れる空間を形成するように配置された対向部材と、を備え、
前記空間は、前記基板、前記電極、前記囲い部材および前記対向部材によって区画され、前記貫通部と連通するように形成されている、
計測装置。
【請求項2】
前記対向部材は、荷電粒子ビームの計測を行うための電極が設けられている基板を含む、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記基板を第1の基板、前記電極を第1の電極、前記電離ガスを第1の電離ガス、前記囲い部材を第1の囲い部材、前記対向部材を第1の対向部材とするとき、
貫通部が形成されている第2の基板と、
前記第2の基板に設けられている第2の電極と、
前記第2の基板において前記第2の電極の周囲に配置されている第2の囲い部材と、
第2の電離ガスが流れる空間を形成するように配置された第2の対向部材と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置された仕切り部材と、をさらに備え、
前記第2の電離ガスが流れる空間は、前記第2の基板、前記第2の電極、前記第2の囲い部材および前記第2の対向部材によって区画され、前記第2の基板の貫通部と連通するように形成されており、
前記第1の電極は、荷電粒子ビームの位置を計測するための電極であり、
前記第2の電極は、前記荷電粒子ビームの線量を計測するための電極であり、
前記仕切り部材は、前記第1の電離ガスが流れる経路の一部および前記第2の電離ガスが流れる経路の一部を形成するように配置されている、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項4】
前記仕切り部材は、本体部と、前記本体部に固定された前記荷電粒子ビームが通過する薄膜と、前記本体部と前記第1の基板との間に位置する第1のスペーサ部と、前記本体部と前記第2の基板との間に位置する第2のスペーサ部とを有する、
請求項3に記載の計測装置。
【請求項5】
前記本体部は、前記第1の電離ガスが流れる経路と外部とを接続する、前記第1の電離ガスが導入または排出される第1の通気孔と、前記第2の電離ガスが流れる経路と外部とを接続する、前記第2の電離ガスが導入または排出される第2の通気孔と、を有する、
請求項4に記載の計測装置。
【請求項6】
前記第1の基板の前記荷電粒子ビームの入射側に配置されており、外部と連通する第3の通気孔が形成された第1のフレーム部材と、
前記第2の基板の前記荷電粒子ビームの出射側に配置されており、外部と連通する第4の通気孔が形成された第2のフレーム部材と、をさらに備え、
前記第1の通気孔、前記第1の囲い部材によって区画される空間および前記第3の通気孔は、前記第1の電離ガスが流れる経路を形成し、
前記第2の通気孔、前記第2の囲い部材によって区画される空間および前記第4の通気孔は、前記第2の電離ガスが流れる経路を形成し、
前記第1の通気孔、前記第2の通気孔、前記第3の通気孔および前記第4の通気孔は、前記計測装置の同一面に形成されている、
請求項5に記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高エネルギーに加速された荷電粒子ビーム(「粒子線」ともいう。)を癌などの悪性腫瘍に照射し、悪性腫瘍を治療する粒子線治療が行われている。陽子線または炭素線などの荷電粒子ビームを用いた粒子線治療では、スキャニング照射法が注目されており、その手法を実施する施設数は増加している。スキャニング照射法は、荷電粒子ビームを走査して照射標的をスポット毎に照射する方法であり、高い照射精度が求められる。そのため、照射の精度を確認するためにビームモニター装置を用いることが一般的である。
【0003】
ビームモニター装置には、ビーム線量を測定する線量モニターとビーム形状および位置を測定する位置モニターとを用いることが一般的である。特許文献1には、線量モニターおよび位置モニターを積層させることで、モニター装置のビーム軸方向の長さを短縮し、気中の散乱などによる測定誤差を減少させることが記載されている。
【0004】
また、特許文献1には、積層させた高圧電極基板と検出電極基板との間にスペーサを設けることで、ビーム線量、ビーム形状および位置を測定するために必要となる電離ガスを含む電離空間を形成することが記載されている。
【0005】
特許文献2には、基板を積層するタイプのモニターにおける電離空間の形成に関して記載されている。
【0006】
ビームモニター装置は、一般的に患者の近い位置に設けられる。たとえば、特許文献3には、スキャニング照射装置においては、スキャニング電磁石のすぐ下流(患者)側に設けられていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-6051号公報
【特許文献2】特開2011-153833号公報
【特許文献3】特開2020-779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、電離ガスは、モニター装置の使用とともにその濃度が低下するため、電離ガスを循環させる必要がある。特許文献1~3には、電離ガスを循環させる具体的な方法が記載されていない。
【0009】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、電離ガスを循環させる構造を簡便に実現できる計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様の計測装置は、貫通部が形成された基板と、基板に設けられている電極と、基板において電極の周囲に配置されている囲い部材と、基板と対向し、電離ガスが流れる空間を形成するように配置された対向部材と、を備える。空間は、基板、電極、囲い部材および対向部材によって区画され、貫通部と連通するように形成されている。
【0011】
この態様によれば、電離ガスを循環させる構造を簡便に実現できる計測装置を提供できる。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電離ガスを循環させる構造を簡便に実現できる計測装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る荷電粒子ビーム照射装置の概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係るビームモニタの概略構成を示す図である。
図3】同実施形態に係るセンサ部が有する基板の一例を示す図である。
図4】基板と該基板と隣接する基板を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るセンサ部の概略構成を示す図である。
図6】同実施形態に係るセンサ部の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態]
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る荷電粒子ビーム照射装置1の概略構成図である。荷電粒子ビーム照射装置1は、加速器(図示しない。)によって加速した荷電粒子ビームが入射する真空ダクト32、振分電磁石33、扇型真空ダクト34、偏向電磁石40および照射ノズル100を含む。
【0017】
振分電磁石33は、荷電粒子ビームを偏向し、扇型真空ダクト34を通じて、偏向電磁石40へ荷電粒子ビームを出射する。偏向電磁石40は、アイソセンターへ向かう荷電粒子ビームの角度を連続的に変えるように構成されている。
【0018】
照射ノズル100は、荷電粒子ビームを用いた治療等が行われる治療室50内にあり、治療室50内の壁面51に設けられたガイドレール52に沿って移動する駆動部110に移動可能に支持されている。
【0019】
また、ガイドレール52は、治療室50内側の壁面51の一部を構成するカバーであってもよく、該カバーに照射ノズル100が設置され、該カバーが偏向電磁石40の出射側43の形状に沿って連続的に移動することで、照射ノズル100が偏向電磁石40の出射側43の形状に沿って連続的に移動するようにしてもよい。このとき、照射ノズル100は、該カバーに対して固定されたものであってもよいし、該カバーに対して相対移動できるように構成されていてもよい。
【0020】
駆動部110は、たとえば、駆動モータと該駆動モータにより駆動する機構を備え、該機構がガイドレール52にガイドされ移動することで、照射ノズル100の出射側43の形状に沿うように連続的に移動する。
【0021】
偏向電磁石40の出射側43から出た荷電粒子ビームは、直線的に進行する。偏向電磁石40から出た荷電粒子ビームが照射ノズル100の入射端(中心位置)に入射されることで、荷電粒子ビームの減衰が最も抑えられる。照射ノズル100を出射側43の形状に沿うように移動させることで、荷電粒子ビームは照射ノズル100の入射端に入射するのが容易となり、荷電粒子ビームの減衰も避ける(または低減する)ことができる。
【0022】
照射ノズル100は、走査電磁石101、ビームモニタ102(計測装置)、及びエネルギー変換手段103を備える。
【0023】
走査電磁石101は、流れる電流量や電流の向きを調整することで、照射ノズル100から出射する荷電粒子ビームの進行方向を微調整し、所定の範囲内でスキャン(走査)可能にするための電磁石である。ビームモニタ102は、荷電粒子ビームを監視し、線量モニタやビームの位置や平坦度を計測する位置モニタを含む。位置モニタには、たとえば、電離箱の電荷収集電極を複数の短冊状に加工したマルチストリップ型モニターや、電荷収集電極を複数のワイヤで形成したマルチワイヤ型モニターがあり、いずれもビーム形状に応じた分布が各ストリップ(マルチワイヤ型では各ワイヤ)から出力される。
【0024】
エネルギー変換手段103は、荷電粒子ビームのエネルギーを調整して荷電粒子ビームの患者内の到達する深さを調整するものであり、たとえば、レンジモジュレータ、散乱体、リッジフィルタ、患者コリメータ、患者ボーラス、またはアプリケータなどである。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態に係るビームモニタ102の概略構成を示す図である。ビームモニタ102は、センサ部20、高電圧電源22、検知回路24および制御装置26を備える。図2では、z軸は、荷電粒子ビームの照射方向に平行であり、x軸は、z軸に垂直であり、y軸は、z軸およびx軸に垂直である。
【0026】
センサ部20は、荷電粒子ビームの計測(具体的には、荷電粒子ビームの位置および線量の検出)の基板を有し、具体的には、電荷収集用のプリント基板および高電圧印加用のプリント基板を積層した構造を有する。センサ部20は、主線量モニタ200、副線量モニタ220および位置モニタ240を有する。
【0027】
主線量モニタ200は、荷電粒子ビームの線量を計測するための電極がそれぞれ設けられた基板202,204,206を有し、これらの基板は、荷電粒子ビームの入射側から基板204,206,202の順で積層されている。基板202,204には、電極(たとえば負極)が設けられ、基板206には、ガスが電離して生成されるイオン(たとえば陰イオン)を検出するための検出電極(たとえば正極)が設けられ、これらの電極には高電圧電源22から電圧が供給される。基板202と基板206との間および基板204と基板206との間の電離空間209には、ガスが満たされている。このガスは、たとえば大気であってよい。主線量モニタ200は、この電離空間209が外部と通じ、電離ガスが循環できるように構成されている。
【0028】
副線量モニタ220は、荷電粒子ビームの線量を計測するための電極がそれぞれ設けられた基板222,224,226を有し、これらの基板は、荷電粒子ビームの入射側から基板224,226,222の順で積層されている。基板222,224に設けられた電極(たとえば負極)および基板226に設けられた検出電極(たとえば正極)には、高電圧電源22から電圧が供給される。基板222と基板226との間および基板224と基板226との間の電離空間にはガスが満たされている。このガスは、たとえば大気であってよい。副線量モニタ220は、この電離空間が外部と通じ、電離ガスが循環できるように構成されている。
【0029】
位置モニタ240は、荷電粒子ビームの位置を計測するための電極がそれぞれ設けられた基板242,244,245,246,248を有し、これらの基板は、荷電粒子ビームの入射側から基板244,248,245,246,242の順で積層されている。基板242,244,245に設けられた電極(たとえば負極)および基板246,248に設けられた検出電極(たとえば正極)には、高電圧電源22から電圧が供給される。また、基板246および基板248に設けられた検出電極は、荷電粒子ビームの位置(それぞれx方向またはy方向の位置)を検出するために設けられている。基板242,244,245,246,248の隣り合う2つの基板の間には電離空間が形成されており、これらの電離空間にはガスが満たされている。このガスは、CF4(四フッ化メタンガス)およびHe(ヘリウム)の混合ガスであってよい。位置モニタ240は、これらの電離空間が外部と通じ、電離ガスが循環できるように構成されている。
【0030】
各検出電極は、1軸方向へ電気的に非接続な多数のストリップで区切られた構成を有してよい。荷電粒子ビームが照射されると、主線量モニタ200、副線量モニタ220および位置モニタ240のそれぞれの電離空間においてガスが電離する。その電離に応じて生じる陽イオンまたは陰イオンがそれぞれのモニタに配置されている検出電極に衝突し、その衝突によって電離電流が生じる。電離電流は、検知回路24に流れ、この検知回路24において積分、演算がなされ、各ストリップでの単位時間あたりの線量分布が出力される。これは、荷電粒子ビームの分布を示しているため、ビームの形状、位置を測定することができる。
【0031】
たとえば、図2に示すように、荷電粒子ビームが照射されると、主線量モニタ200の電離空間209においてガスが電離する。電離によって陽イオンおよび陰イオンが生成され、陰イオンは、基板206に引き寄せられ、陽イオンは、基板202,204に引き寄せられる。その結果、陰イオンは、基板206の検出電極に衝突し、その衝突に応じて生じる電離電流が基板206から検知回路24に流れ、線量が検出される。
【0032】
本実施形態では、検出電極が設けられた基板の両面側に、その検出電極とは反対の極性をもつ電極が設けられた基板が位置している。たとえば、検出電極が設けられた基板206には、その検出電極とは逆の極性をもつ電極が設けられた基板202,204が配置されている。
【0033】
高電圧電源22は、制御装置26による制御に基づいて、センサ部20に電圧を供給する。本実施形態では、主線量モニタ200、副線量モニタ220および位置モニタ240に共通の高電圧電源22が設けられる例を説明するが、これに限らず、それぞれのモニタについて別個に高電圧電源が設けられてよく、たとえば3つの高電圧電源が設けられてよい。
【0034】
検知回路24は、電離電流に基づきイオン数をカウントし、そのカウント結果を制御装置26に伝送する。図2では、1つの検知回路24を示しているが、主線量モニタ200、副線量モニタ220および位置モニタ240について別個の検知回路が設けられてよい。
【0035】
制御装置26は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などを備えてよい。制御装置26は、高電圧電源22の動作を制御したり、検知回路24の検出結果に基づく処理を行ったりすることができる。制御装置26は、電離電流に基づくイオンのカウント数に基づいて、荷電粒子ビームの線量および位置を検知する。制御装置26は、検知回路24から伝送された情報(たとえばカウント数など)に基づいて、保有している履歴情報を参照し、荷電粒子ビームの異常を検出してよい。
【0036】
図3は、本実施形態に係るセンサ部20が有する基板280の一例を示す図である。図3に示す基板280は、図2に示す基板202,204,206,222,224,226,242,244,245,246または248であってよい。
【0037】
基板280には、電極286が設けられている。電極286は、高電圧が印加される正極または負極、あるいは検出電極であってよい。本実施形態に係る電極286は、荷電粒子ビームが通過する位置に配置されている。電極286は、たとえばアルミニウムなどの金属で構成されてよく、その金属は、用いられるモニタの種類(主線量モニタ、副線量モニタまたは位置モニタ)に応じて適宜選択されてよい。
【0038】
基板280には、電極286の周囲に配置されており、電極286を囲む囲い部材288が設けられている。囲い部材288は、たとえば矩形(あるいは環状)の樹脂製のパッキンで構成されてよい。囲い部材288は、基板280と密着している。本実施形態に係る囲い部材288は、電極286から所定の距離離れた位置に設けられている。また、電極286の外側であって、囲い部材288の内側の基板280には、基板280を貫通する孔284(貫通部)が形成されている。
【0039】
本実施形態に係るセンサ部20は、基板280と対向し、電離ガスが流れる空間を形成するように配置された対向部材を有する。対向部材は、平板状の各種の部材であってよく、本実施形態では、対向部材が荷電粒子ビームの計測(たとえば線量または位置の計測)を行うための電極が設けられている基板である。具体的には、対向部材は、上述した基板202,204,206,222,224,226,242,244,245,246または248であってよい。たとえば、基板206に着目したとき、対向部材は基板202,204である。
【0040】
図4は、基板280と隣接する基板290(対向部材)を示す図である。基板280と基板290とは、囲い部材288によって接続されている。囲い部材288は、基板290とも密着している。基板290には、孔294(貫通部)が形成されており、電極296が固定されている。基板280,290、電極286,296および囲い部材288によって空間298が区画されている。この空間298は、基板280の孔284および基板290の孔294と連通している。この空間298は、電離ガスが流れる通路の一部を形成し、電離ガスは孔294からガスが流入し、空間298内のガスは孔284から流出してよい。
【0041】
図5,6は、本実施形態に係るセンサ部20の概略構成を示す図である。図5,6では、副線量モニタ220を省略している。図5,6に示すように、主線量モニタ200の入射側には、トップフレーム300(第1のフレーム部材)が設けられており、位置モニタ240と主線量モニタ200との間には、仕切り部材320が設けられており、位置モニタ240の出射側には、ボトムフレーム340(第2のフレーム部材)が設けられている。トップフレーム300、仕切り部材320およびボトムフレーム340は、たとえばアルミニウムなどで構成されてよい。
【0042】
図6を参照しながら、本実施形態における電離ガスの循環について説明する。各モニタは、内部空間の電離ガスが循環できるように構成されており、本実施形態では、荷電粒子ビームの入射側から出射側に向かう方向に電離ガスが流れるように構成されている。
【0043】
主線量モニタ200は、矢印で示す方向に電離ガスが流れるように構成されている。具体的には、主線量モニタ200は、トップフレーム300から電離ガスが電離空間209に流入し、主線量モニタ200の内部空間を電離ガスが流れ、仕切り部材320から電離ガスが流出できるように構成されている。
【0044】
位置モニタ240は、矢印で示す方向に電離ガスが流れるように構成されている。具体的には、位置モニタ240は、仕切り部材320から電離ガスが電離空間249に流入し、位置モニタ240の内部空間を電離ガスが流れ、電離空間249からボトムフレーム340に流出できるように構成されている。
【0045】
このように、本実施形態によれば、仕切り部材320によって、主線量モニタ200の電離ガス(第1の電離ガス)が循環する経路と、位置モニタ240の電離ガス(第2の電離ガス)が流れる経路とが仕切られる。これにより、主線量モニタ200と位置モニタ240とで循環する電離ガスが異ならせ、主線量モニタ200と位置モニタ240とで、より適切に荷電粒子ビームの線量および位置を検出することが可能となる。
【0046】
トップフレーム300は、内部空間(主線量モニタ200の電離空間209を含む。)と外部と連通する通気孔302が形成されている。通気孔302には外部からガスが流入する。通気孔302の開口部303の付近には流量計(図示しない。)が設けられており、その流量計によって流入するガスの流量が計測され、電離ガスが正常に循環しているかどうかが確認される。
【0047】
ボトムフレーム340は、外部および位置モニタ240の内部空間と連通する通気孔342を有する。通気孔342から外部に位置モニタ240の電離ガスが流出する。通気孔342の開口部343の付近には流量計(図示しない。)が設けられており、その流量計によって流出する電離ガスの流量が計測され、電離ガスが正常に循環しているかどうかが確認される。
【0048】
仕切り部材320は、本体部321と、本体部321に固定された荷電粒子ビームが通過する薄膜327と、本体部321と基板202(第1の基板)との間に位置する第1のスペーサ部325と、本体部321と基板244(第2の基板)との間に位置する第2のスペーサ部326とを有する。図6では、本体部321、第1のスペーサ部325および第2のスペーサ部326が別体であるように示されているが、本体部321、第1のスペーサ部325および第2のスペーサ部326は、一体的に形成されてよい。
【0049】
本体部321は、主線量モニタ200の内部空間と外部と接続する通気孔322と、位置モニタ240の内部空間と外部と接続する通気孔324とを有する。主線量モニタ200の電離ガスは、通気孔322から排出され、位置モニタ240のガスは、通気孔324から導入される。このように、本実施形態に係る仕切り部材320によって主線量モニタ200および位置モニタ240のガスの導排出をセンサ部20の中央にまとめることができるため、ガスを導排出するための構成を簡略にできる。
【0050】
仕切り部材320は、荷電粒子ビームが通過する部分が薄膜327で構成されている。これにより、荷電粒子ビームの通過が仕切り部材320によって阻害されることが抑制される。
【0051】
トップフレーム300と基板204との間、基板204と基板206との間、および基板206と基板202との間のそれぞれには、電離ガスが循環する経路の一部をそれぞれ区画するための囲い部材214,216,212がそれぞれ設けられている。また、基板202および仕切り部材320によって、仕切り部材320の通気孔322と主線量モニタ200の内部空間とを接続する空間328が形成される。
【0052】
基板244と基板248との間、基板248と基板245との間、基板245と基板246との間、および基板246とボトムフレーム340との間のそれぞれには、電離ガスが循環する経路の一部をそれぞれ区画するための囲い部材254,255,258,256がそれぞれ設けられている。また、基板244および仕切り部材320によって、仕切り部材320の通気孔324と位置モニタ240の内部空間とを接続する空間329が形成される。
【0053】
このように、本実施形態に係る仕切り部材320の本体部321は、第1のスペーサ部325によって基板202と距離がとられ、第2のスペーサ部326によって基板244と距離がとられる。主線量モニタ200の位置モニタ240とで循環する電離ガスが異なる場合、空間329と空間329との間に気圧差が生じる。この気圧差によって本体部321に固定された薄膜327がたわむが、そのときに薄膜327が隣接する基板202,244の電極に接近したり接触したりすることを抑制できる。これにより、荷電粒子ビームの位置および線量の計測精度の低下を抑制できる。
【0054】
本実施形態に係る主線量モニタ200および位置モニタ240のそれぞれのモニタでは、隣り合う2つの基板が、互いにy軸方向にずれた位置に孔を有する。これにより、より効率よくガスを循環させることが可能となる。なお、これらの孔は、x軸方向に互いにずれてよいし、x軸およびy軸から傾いた方向に互いにずれてよい。
【0055】
また、本実施形態では、主線量モニタ200のガスの導排出のための通気孔302,322および位置モニタ240のガスの導排出のための通気孔324,343は、図6に示すy軸に垂直な仮想的な面380に形成されている。通気孔302,322,324,342のそれぞれには、ガスを導入または排出するためのチューブ(図示しない。)が設けられるが、これらの通気孔が同一面に設けられることにより、チューブの取り扱いが容易となり、ガスの循環を効率的に行うことができる。
【0056】
(補足)
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0057】
上記実施形態では、主として、電極が設けられた基板が対向部材である例を説明した。これに限らず、対向部材は、基板と対向するように配置された各種の部材であってよく、たとえば、基板202または基板244と対向するように配置された仕切り部材320であってよい。この場合、たとえば基板202と仕切り部材320とを囲い部材で接続し、その囲い部材、基板202、基板202の電極および仕切り部材320によって電離ガスが流れる空間が形成されてよい。
【0058】
上記実施形態では、主線量モニタ200のガスは、トップフレーム300の通気孔302から導入され、仕切り部材320の通気孔322から排出される例を説明した。これに限らず、主線量モニタ200のガスは、仕切り部材320の通気孔322から導入され、トップフレーム300の通気孔302から排出されてよい。また、上記実施形態では、位置モニタ240のガスは、仕切り部材320の通気孔324から導入され、ボトムフレーム340の通気孔342から排出される例を説明した。
【符号の説明】
【0059】
1 荷電粒子ビーム照射装置、100 照射ノズル、102 ビームモニタ、20 センサ部、22 高電圧電源、24 検知回路、26 制御装置、200 主線量モニタ、220 副線量モニタ、240 位置モニタ、280 基板、284 孔(貫通部)、286 電極、288 囲い部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2