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特開2024-10053シュードモナス・エルギノーサに対する殺菌活性を有する溶解素及びその誘導体の特定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010053
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】シュードモナス・エルギノーサに対する殺菌活性を有する溶解素及びその誘導体の特定
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20240116BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20240116BHJP
   C12N 15/56 20060101ALI20240116BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240116BHJP
   C12N 9/24 20060101ALI20240116BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240116BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240116BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240116BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
A61K38/16 ZNA
A61P31/04
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/72
A61K9/12
A61K45/00
A61K31/407
C12N15/56
C12N15/63 Z
C12N9/24
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023181425
(22)【出願日】2023-10-20
(62)【分割の表示】P 2020531748の分割
【原出願日】2018-12-12
(31)【優先権主張番号】62/597,577
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/721,969
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】514284475
【氏名又は名称】コントラフェクト コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シューフ レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】インディアニ キアラ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】グラム陰性細菌、特にシュードモナス・エルギノーサに対して活性を有する医薬組成物、及びその使用方法を提供する。
【解決手段】新規の溶解素ポリペプチド、それを含有する医薬組成物、及びグラム陰性細菌感染を治療し、より一般にはグラム陰性細菌の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させる(限定されるものではないが、かかる細菌によって形成されるバイオフィルムを破壊することを含む)ためのその使用方法を開示する。或る特定の開示の溶解素は、非荷電アミノ酸による或る特定の荷電アミノ酸の置換え、及び/又はリンカーが介在する若しくは介在しないN末端若しくはC末端での抗菌ペプチド配列との融合により、溶解素と比較してアミノ酸配列が修飾されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GN147、GN146、GN156、GN92、GN54、GN201、GN202、GN121、GN94、GN200、GN204、GN205の1つ以上からなる群から選択される単離溶解素ポリペプチド、又は溶解素活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物であって、前記溶解素ポリペプチド又はフラグメント又は変異体が、シュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の少なくとも1つの他の種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させるのに効果的な量で存在する、医薬組成物。
【請求項2】
有効量のGN3、GN13、GN17、GN9、GN10、GN105、GN108、GN123、GN150、GN203の1つ以上からなる群から選択される単離溶解素ポリペプチド、又は溶解素活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物であって、前記溶解素ポリペプチドがシュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の少なくとも1つの他の種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させるのに効果的な量で存在する、医薬組成物。
【請求項3】
溶液、懸濁液、エマルション、吸入用粉末、エアロゾル又はスプレーである、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
グラム陰性細菌の治療に適した1つ以上の抗生物質を更に含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
請求項1若しくは2に記載の溶解素ポリペプチドをコードする核酸分子を含む単離ポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドの相補的配列を含むベクターであって、前記コードされる溶解素ポリペプチドがシュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の少なくとも1つの他の種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させる、ベクター。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のポリペプチドのアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチドをコードする核酸を含む組換え発現ベクターであって、前記コードされる溶解素ポリペプチドがシュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の少なくとも1つの他の種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させる特性を有し、前記核酸が異種プロモーターに作動可能に連結する、組換え発現ベクター。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項8】
核酸配列がcDNA配列である、請求項5又は6に記載の組換えベクター。
【請求項9】
GN147、GN146、GN156、GN92、GN54、GN201、GN202、GN121、GN94、GN200、GN204、GN205からなる群から選択される溶解素ポリペプチド、又は溶解素活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体をコードする核酸分子を含む単離ポリヌクレオチドであって、前記溶解素ポリペプチドがシュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の少なくとも1つの他の種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させる、単離ポリヌクレオチド。
【請求項10】
cDNAである、請求項9に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
グラム陰性細菌の少なくとも1つの種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させる方法であって、前記細菌と、シュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の少なくとも1つの他の種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させるのに効果的な量のGN147、GN146、GN156、GN92、GN54、GN201、GN202、GN121、GN94、GN200、GN204、GN205、GN3、GN13、GN17、GN9、GN10、GN105、GN108、GN123、GN150、GN203の1つ以上からなる群から選択される溶解素ポリペプチド、又は溶菌活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体を含有する医薬組成物とを接触させることを含む、方法。
【請求項12】
シュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の1つ以上の付加的な種からなる群から選択されるグラム陰性細菌によって引き起こされる細菌感染を治療する方法であって、細菌感染と診断された、そのリスクがある又はその症状を示す被験体に、シュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の少なくとも1つの他の種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させるのに効果的な量のGN147、GN146、GN156、GN92、GN54、GN201、GN202、GN121、GN94、GN200、GN204、GN205、GN3、GN13、GN17、GN9、GN10、GN105、GN108、GN123、GN150、GN203の1つ以上からなる群から選択される溶解素ポリペプチド、又は溶解素活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体を含有する組成物を投与することを含む、方法。
【請求項13】
グラム陰性細菌の少なくとも1つの種がシュードモナス・エルギノーサ、クレブシエラ属種、エンテロバクター属種、大腸菌、シトロバクター・フロインディイ、ネズミチフス菌、エルシニア・ペスティス及び野兎病菌からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記グラム陰性細菌感染がシュードモナス・エルギノーサによって引き起こされる感染である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
被験体におけるシュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の1つ以上の付加的な種からなる群から選択されるグラム陰性細菌によって引き起こされる局所又は全身病原性細菌感染を治療する方法であって、被験体に、シュードモナス・エルギノーサ及び任意に少なくとも1つの他のグラム陰性細菌の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させるのに効果的な量のGN147、GN146、GN156、GN92、GN54、GN201、GN202、GN121、GN94、GN200、GN204、GN205、GN3、GN13、GN17、GN9、GN10、GN105、GN108、GN123、GN150、GN203の1つ以上からなる群から選択される溶解素ポリペプチド、又は溶解素活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体を含有する組成物を投与することを含む、方法。
【請求項16】
細菌感染を予防又は治療する方法であって、細菌感染と診断された、そのリスクがある又はその症状を示す被験体に、有効量のGN147、GN146、GN156、GN92、GN54、GN201、GN202、GN121、GN94、GN200、GN204、GN205、GN3、GN13、GN17、GN9、GN10、GN105、GN108、GN123、GN150、GN203の1つ以上からなる群から選択される溶解素ポリペプチド、又は溶菌活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素
ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体を含有する第1の有効量の組成物と、グラム陰性細菌感染の治療に適した第2の有効量の抗生物質との組合せを同時投与することを含む、方法。
【請求項17】
前記抗生物質がセフタジジム、セフェピム、セフォペラゾン、セフトビプロール、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、アミノグリコシド、イミペネム、メロペネム、ドリペネム、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ピペラシリン、チカルシリン、ペニシリン、リファンピシン、ポリミキシンB及びコリスチンの1つ以上から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
グラム陰性細菌感染の治療に適した抗生物質の有効性を高める方法であって、前記抗生物質をGN147、GN146、GN156、GN92、GN54、GN201、GN202、GN121、GN94、GN200、GN204、GN205、GN3、GN13、GN17、GN9、GN10、GN105、GN108、GN123、GN150、GN203の1つ以上からなる群から選択される1つ以上の溶解素ポリペプチド、又は溶菌活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体と組み合わせて同時投与することを含み、組合せの投与が、グラム陰性細菌の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させる上で、前記抗生物質又は前記溶解素ポリペプチド若しくはその活性フラグメントのいずれか個別の投与よりも効果的である、方法。
【請求項19】
GN147、GN146、GN156、GN92、GN54、GN201、GN202、GN121、GN94、GN200、GN204、GN205からなる群から選択される単離溶解素ポリペプチド、又は溶解素活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体であって、該溶解素ポリペプチドがシュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の少なくとも1つの他の種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させる、単離溶解素ポリペプチド又はフラグメント又は変異体。
【請求項20】
GN3、GN9、GN10、GN13、GN17、GN105、GN108、GN123、GN150及びGN203からなる群から選択されるグラム陰性天然溶解素を含む溶解素ポリペプチド、又は溶菌活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体であって、該天然溶解素又はフラグメントが非荷電アミノ酸残基による1つ~3つの荷電アミノ酸残基の置換によって任意に修飾されており、修飾された天然溶解素又はフラグメントが溶菌活性を保持する、溶解素ポリペプチド又はフラグメント又は変異体。
【請求項21】
GN2、GN4、GN14、GN43及びGN37からなる群から選択されるグラム陰性天然溶解素を含む溶解素ポリペプチド、又は溶菌活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体であって、該天然溶解素又は変異体又はフラグメントが非荷電アミノ酸残基による1つ~3つの荷電アミノ酸残基の置換によって修飾されており、修飾された天然溶解素又はフラグメントが溶菌活性を保持する、溶解素ポリペプチド又はフラグメント又は変異体。
【請求項22】
前記溶解素ポリペプチドがGN156、GN121、GN108及びGN123の1つ以上、又はその活性フラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記細菌がバイオフィルム中にあり、方法により該バイオフィルムの破壊がもたらされる、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
グラム陰性細菌、特にシュードモナス属の成員は、深刻な、生命に関わる恐れのある侵襲的感染の重要な原因である。シュードモナス感染は、熱傷創、慢性創傷、慢性閉塞性肺障害(COPD)及び他の器質的肺疾患、嚢胞性線維症、免疫抑制患者及び集中治療(ICU)患者等の脆弱な患者に対して多くの脅威を及ぼす移植生体材料上、並びに院内環境表面(hospital surface)及び給水設備内での表面増殖において大きな問題となる。
【0002】
シュードモナス・エルギノーサ(P. aeruginosa、緑膿菌)は、患者において定着した
後、治療が特に困難な場合がある。そのゲノムは、β-ラクタム抗生物質及びアミノグリコシド抗生物質への耐性を与える多剤排出ポンプ及び酵素を含む多くの耐性遺伝子をコードし、新規の抗微生物治療剤がないことから、このグラム陰性病原体に対する療法は、特に困難なものとなっている。この難点は、細菌を宿主防御及び従来の抗微生物化学療法から保護することによって感染を引き起こす細菌の能力を高める可能性があるバイオフィルム中で増殖するシュードモナス・エルギノーサの能力によって複雑になる。
【0003】
医療現場では、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)の薬物耐性株の発生率が増加している。多州にわたる点有病率調査から、シュードモナス・エルギノーサが全院内感染(HAI)の7%の原因であったことが推定された(1)。毎年、シュードモナス・エルギノーサによって引き起こされる51000件のHAIのうち6000件(13%)超が多剤耐性(MDR)であり、年間およそ400件の死亡を伴う(2)。広範囲薬剤耐性(XDR)株及び汎薬剤耐性(PDR)株は、利用可能な治療が限られているか又は存在しない新たな脅威である(3)。最も致死的なHAIの1つである血流感染(BSI)を含む侵襲的シュードモナス・エルギノーサ感染では、例えばシュードモナス・エルギノーサは、全BSIの3%~7%を占め、死亡率は27%~48%である(4)。シュードモナス・エルギノーサによって引き起こされるものを含む侵襲的血流感染の発生率は、米国内での医療の大半がより小さな非教育地域病院で行われていることから低く見積もられている可能性がある。地域病院におけるBSIの観察研究では、シュードモナス・エルギノーサが上位4つのMDR病原体の1つであり(5)、全院内死亡率は18%であった。さらに、MDRシュードモナス・エルギノーサの大流行がよく記載されている(6)。不良な転帰が、コリスチン等の最終手段の薬物による治療を必要とすることが多いシュードモナス・エルギノーサのMDR株と関連付けられている(7)。限定されるものではないが、BSIを含む侵襲的感染の治療にとってMDRシュードモナス・エルギノーサを標的とする新規の機構を有する様々な抗微生物に対する満たされていない医学的必要性があるのは明らかである。
【0004】
細菌感染を治療する革新的なアプローチは、溶解素と呼ばれる、バクテリオファージにコードされる細胞壁ペプチドグリカン(PG)ヒドロラーゼのファミリーに焦点を合わせている(8)。溶解素技術は現在、様々なグラム陽性(GP)病原体に対して外部から作用し、接触時に数log倍(multi-log-fold)の死滅を伴う細菌細胞の溶解を引き起こす精製組換え溶解素タンパク質の使用に基づく。溶解素は、「分子バサミ」として作用し、細胞形状の維持及び内部浸透圧への抵抗に関与するペプチドグリカン(PG)網を分解する。PGの分解は浸透圧溶解をもたらす。抗生物質と比べて急速な死滅及び新規の作用様式に加え、溶解素活性の他の特徴として、抗バイオフィルム活性、既存の耐性がないこと、抗生物質との強力な相乗作用(最小阻止濃度(MIC)以下で)、溶解素に加えて抗生物質を使用する場合の抗生物質に対する耐性の抑制が挙げられる。重要なことには、複数の研究グループが、複数の動物モデルにおいて抗生物質耐性GP細菌病原体を制御する溶
解素の局所投与、鼻腔内投与及び非経口投与の能力を実証している(9~11)。
【0005】
溶解素技術は本来、GP病原体の治療のために開発された。グラム陰性(GN)細菌を標的とする溶解素の開発は、これまで限られていた。グラム陰性細菌の外膜(OM)は、細胞外巨大分子に対する障壁として重要な役割を果たし、下にあるペプチドグリカンへのアクセスを制限する(12~14)。
【0006】
OMは、GN細菌の際立った特徴であり、リン脂質の内葉と大部分がリポ多糖(LPS)からなる両親媒性の外葉とを有する脂質二重層を含む(15)。LPSは、リピドAと呼ばれるヘキサアシル化グルコサミンベースのリン脂質、多糖コア、及びO抗原と呼ばれる伸長した外部多糖鎖の3つの要部を有する。OMは、i)特にカチオンが存在し、リン酸基を中和する場合のLPS分子の互いに対する強い結合、ii)殆どが飽和したアシル鎖の密な充填、及びiii)リピドA部分の疎水性スタッキングを含む3つの主な相互作用によって安定化している非流動性の連続体を示す。生じる構造は、疎水性分子及び親水性分子の両方にとって障壁となる。OMの下では、PGが加水分解に非常に影響を受けやすい薄層を形成する。厚さ30nm~100nmであり、最大40層からなるGP細菌のPGとは異なり、GN細菌のPGは、厚さが僅か2nm~3nmであり、1層~3層のみからなる。GN細菌を標的とする溶解素を単独で又はOMを不安定化する作用物質及び/又は抗生物質と組み合わせてOMを透過するように操作することで、強力な抗微生物活性が達成される可能性がある。
【0007】
したがって、OMを透過するGN溶解素の発見及び開発が重要な目標であり、グラム陰性細菌感染の治療又は予防に効果的な療法を考案する重要な、未だ満たされていない必要性を満たし得る。OM透過化活性及びOM破壊活性を有する複数の作用物質が以前に記載されている。例えば、ポリミキシン抗生物質及びアミノグリコシドを含むポリカチオン性化合物は、LPS中のリン脂質との相互作用についてOM中の安定化二価カチオンと競合し、OMの崩壊を引き起こす(16)。同様に、EDTA及び弱酸は、二価カチオンをキレートし、OM崩壊を引き起こす(17)。また、自然発生抗微生物ペプチド及びその合成ペプチド模倣薬(本明細書でAMPと称される)の大きな群が自己促進取込み経路に基づいてOMを透過することが知られている(18~20)。ポリカチオン性AMP及び両親媒性AMPの両方の移行は、LPSとの一次静電相互作用、その後のカチオン変位、膜の崩壊及び一時的開口、場合によってはAMPの内在化によって推進される。多くのAMPの膜との相互作用による抗微生物活性は、疎水性、全電荷、及び疎水面での極性残基の位置を変更するか、又は全てがLの対応部分の代わりにD,L残基を組み込むことで両親媒性ドメインを戦略的に操作することによって血液中で「活性化」することができる(18、19、21、22)。
【0008】
本発明者らは、本明細書で概説されるように、OM透過を可能にする様々な手法を用いてGN病原体に対処するために溶解素技術を発展させた。実際に、本発明者らは以前に、2016年9月16日付で出願され、国際公開第2017/049233号として公開された国際出願PCT/US2016/052338号を出願している。この先行PCT出願は、全ての目的で引用することにより完全に本明細書の一部をなす。例えば、溶解素GN2、GN4、GN14、GN43及びGN37は、上述のPCT出願において初めて開示された。
【0009】
最近の研究により、GN細菌に対する内因性抗微生物活性を有する溶解素が特定されている(12、13、17)。幾つかの場合での抗微生物効果は、LPSの透過及びOMを介した移行を推進し、PG分解及び浸透圧溶解をもたらすN末端又はC末端の両親媒性又はポリカチオン性α-ヘリックスドメインによるものである。興味深いことに、かかる溶解素のPGへのアクセスは、EDTA及び弱い有機酸を含むOMを不安定化する化合物に
よって促進することができる。EDTA及び弱い有機酸との組合せは薬物として実用的ではないが、この研究結果によりGN溶解素活性を促進する概念が説明される。
【0010】
より最近のアプローチでは、OMを介した移行を促進するためにポリカチオン性、両親媒性及び疎水性の特性を有する特定のα-ヘリックスドメインに融合したGN溶解素が用いられる。これらの研究結果により、in vitroで活性が高く、局所適用が想定される「artilysin」と呼ばれるGN溶解素が得られた(17)。しかしながら、in vivoでのartilysinの低い活性が報告されている。これと一致して、本開示において対照に指定したartilysin GN126(表4を参照されたい)は、同様に低い活性を示した。
【0011】
内因性抗微生物活性を伴うartilysin、及びGN溶解素を含む溶解素のin vitro効力にも関わらず、ヒト血液マトリックス中での活性の明らかな欠如に関して大きな制限が残っており、全身療法は困難である(13、14)。生理学的塩及び二価カチオンがLPS結合部位について競合し、GN溶解素を含む溶解素のα-ヘリックス移行ドメインを妨げることで血液中、より具体的には血清の存在下での活性を制限し、それにより侵襲的感染の治療に溶解素を使用する可能性が制限されると考えられる(23)。OMを透過及び不安定化する複数の異なるAMPについて、同様の血液中での活性の欠如が報告されている(18~20、22)。
【発明の概要】
【0012】
全身投与による侵襲的感染の治療のためのGN溶解素の開発において直面する大きな設計課題は、血液中(又は例えばヒト血清中)での不活性化を軽減する必要があることである。
【0013】
固有活性(すなわち、HEPESバッファー中で高レベルの活性及びヒト血清中で低レベルの活性)を有する天然GN溶解素を初めに特定し、続いて活性の改善及び血清中での活性の改善のために非荷電アミノ酸による荷電アミノ酸の置換え及び/又はα-ヘリックス抗微生物ペプチドとの融合によって修飾した。
【0014】
この研究に基づき、推定天然溶解素を特定し、活性について評価した。溶解素を表3に挙げ、それらの配列によって説明する。非修飾溶解素は、ヒト血清の存在下で様々なレベルの活性を示す。
【0015】
溶解素タンパク質の修飾は、以下に基づくものとした:i)OM透過を促進するか、若しくはヒト血清に対する感受性を低下させるか、若しくはその両方のために分子の全pIを変化させる、溶解素タンパク質へのアミノ酸置換の組込み、及び/又はii)外膜透過及び移行を促進するために融合ポリペプチドを形成する、溶解素のN末端若しくはC末端への抗微生物ペプチド配列(好ましくは、血清中で活性であることが知られるもの)の融合。
【0016】
修飾GN溶解素を、溶解素タンパク質を本明細書に記載のように修飾することによって得た。この修飾GN溶解素は、親(非修飾)溶解素と比較して、ヒト血清中での活性の改善を示すことが実証される。天然溶解素タンパク質の荷電アミノ酸残基を非荷電アミノ酸残基によって無作為に突然変異させ、得られるポリペプチドを、ヒト血清の存在下での活性を含む活性について試験した。活性修飾ポリペプチドは通例、1つ~3つのアミノ酸残基で親ポリペプチドと異なっていた。代替的又は付加的には、抗微生物ペプチド(AMP)配列を天然又は修飾GN溶解素配列にリンカーを用いて又は用いずに融合させた。抗微生物ペプチドは、外膜の破壊及び溶解素の移行を媒介するα-ヘリックスドメインを特徴とする。リンカーは、可動性であり(例えば、セリン及び/又はグリシン残基に富む)、
融合ポリペプチドのAMP又は溶解素部分のいずれの構造も乱さず、各々が自由に動けるように設計された、5アミノ酸長~20アミノ酸長の短いペプチド配列である。
【0017】
本明細書に記載される推定溶解素及び修飾GN溶解素は各々、90%超の均一性で精製されているか又は精製することができ、in vitro活性を評定するために一連のアッセイにおいて試験される。
【0018】
本開示は、合成及び/又は組換えにより作製される溶解素ポリペプチド及び修飾溶解素ポリペプチドを包含する。本発明は、特に血液マトリックス、例えばヒト血清の存在下でのグラム陰性細菌による感染の治療のための新規の溶解素ポリペプチド及び修飾溶解素ポリペプチド、並びに上記ポリペプチドの使用を包含する。
【0019】
さらに、本発明は、例えば人工装具又は他の医療用具、in vivo、ex vivo又はin vitroでのグラム陰性微生物を含むバイオフィルムを破壊するための溶解素ポリペプチド及び修飾溶解素ポリペプチドの使用を包含する。バイオフィルムのグラム陰性微生物としては、シュードモナス属種、例えばシュードモナス・エルギノーサが挙げられる。
【0020】
一態様では、本開示は、配列番号2、4、5~9及び配列番号13~27からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する単離溶解素ポリペプチド、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有し、溶菌活性を有するペプチドを有効量と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物又は製剤であって、溶解素ポリペプチドがグラム陰性細菌の少なくとも1つの種の増殖を阻害するか、又はその数(population)を減少させるか、又はそれを死滅させる、医薬組成物又は製剤に関する。
【0021】
一実施の形態では、医薬組成物は、ペプチドGN3、CN147、GN146、GN156、GN54、GN92、GN121、GN94、GN9、GN10、GN13、GN17、GN105、GN108、GN123、GN150、GN200、GN201、GN203、GN204及びGN205からなる群から選択される少なくとも1つの溶解素ポリペプチド、又は溶菌活性を維持するそのフラグメントを有効量と、薬学的に許容可能な担体とを含み、溶解素ポリペプチド又はフラグメントは、グラム陰性細菌の少なくとも1つの種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させる。
【0022】
本医薬組成物/製剤は、一実施の形態では、有効量の少なくとも1つの溶解素ポリペプチドと、グラム陰性細菌の治療に適した少なくとも1つの抗生物質とを含む。幾つかの実施の形態では、組成物は、一方が本開示による溶解素を含有し、一方が抗生物質を含有する、合わせて又は別個に投与される2つの成分の組合せである。幾つかの実施の形態では、抗生物質は、最適値以下の用量で提供される。幾つかの実施の形態では、抗生物質は、グラム陰性細菌が耐性を発現した抗生物質であってもよい(溶解素の使用は、この耐性を克服するのに役立つ)。
【0023】
幾つかの実施の形態では、本組成物(抗生物質を含む又は含まない)又は組合せ(溶解素と抗生物質とを含む)は、経口投与、局所投与、非経口投与又は吸入投与(inhalable administration)に適している。幾つかの実施の形態では、組合せの一方の成分を他方の成分とは異なる経路による投与に適合させてもよい。例えば、下記に詳述する実験では、抗生物質を皮下(SC)投与する一方で、溶解素を静脈内(IV)投与する。
【0024】
一実施の形態では、抗生物質は、下記に提示するGNに適した抗生物質のリスト及びそれらの組合せから選択することができる。より具体的な実施の形態では、抗生物質は、アミカシン、アジスロマイシン、アズトレオナム、シプロフロキサシン、コリスチン、リフ
ァンピシン、カルバペネム及びトブラマイシン、並びに上記の2つ以上の組合せから選択することができる。
【0025】
本開示の或る特定の実施の形態は、溶解素ポリペプチドと任意に1つ以上の付加的な成分とを含む上述の医薬組成物の1つを収容する滅菌容器を企図する。例としては、限定されるものではないが、滅菌容器がキットの一構成要素であり、キットは、例えば少なくとも1つの付加的な治療剤を収容する第2の滅菌容器を含んでいてもよい。このため、本明細書に開示されるGN抗生物質とGN溶解素との組合せの1つは、任意にかかるキット内で提供されてもよい。
【0026】
一態様では、本発明は、配列番号2、4、5~9及び配列番号13~27からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する溶解素ペプチド、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有し、溶菌活性を有するペプチドをコードする核酸分子を含むベクターであって、コードされる溶解素ポリペプチドがヒト血清の非存在下又は存在下でグラム陰性細菌の少なくとも1つの種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させる、ベクターを包含する。
【0027】
別の実施の形態では、ベクターは、その少なくとも80%の配列同一性の変異体を含む、上述の溶解素ポリペプチドの1つをコードする核酸を含む組換え発現ベクターであり、コードされる溶解素ペプチドは、ヒト血清の非存在下及び/又は存在下でグラム陰性細菌の少なくとも1つの種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させる特性を有し、核酸が異種プロモーターに作動可能に連結している。
【0028】
上述のベクターを含む宿主細胞も企図される。幾つかの実施の形態では、核酸配列はcDNA配列である。
【0029】
また別の態様では、本開示は、配列番号2、4、5~9及び配列番号13~27からなる群から選択される配列を含む溶解素ポリペプチドをコードする、単離され、精製された核酸に関する。代替的な実施の形態では、単離され、精製された核酸は、配列番号33~配列番号54からなる群から選択されるヌクレオチド配列、その縮重コード及びその転写産物を含む。本明細書に提示される実施の形態によると、規定の核酸は、同一の核酸だけでなく、特に同義コドン(同じアミノ酸残基を指定する異なるコドン)を生じる置換を含む、任意の僅かな塩基変異も含む。このため、核酸に対する請求項は、列挙される任意の一本鎖配列の相補的配列を包含するとみなされる。任意に、核酸はcDNAである。
【0030】
他の態様では、本開示は、様々な方法/使用に関する。かかる方法/使用の1つは、グラム陰性細菌の少なくとも1つの種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させる方法/使用であり、該方法は、細菌と配列番号2、4、5~9及び配列番号13~27からなる群から選択される配列を含むGN溶解素ポリペプチド、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有し、溶菌活性を有するペプチドを有効量含む組成物とを、ヒト血清の非存在下及び/又は存在下で上記増殖を阻害するか、又は上記数を減少させるか、又は上記グラム陰性細菌の少なくとも1つの種を死滅させるのに十分な時間にわたって接触させることを含む。
【0031】
別のかかる方法/使用は、グラム陰性細菌の少なくとも1つの種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させる方法/使用であり、該方法は、細菌と配列番号2、4、5~9及び配列番号13~27に記載のGN溶解素からなる群から選択される少なくとも1つのGN溶解素ポリペプチド又はその活性フラグメントを有効量含む組成物とを接触させることを含み、ポリペプチド又は活性フラグメントは、ヒト血清の非存在下及び/又は存在下でシュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の少
なくとも1つの他の種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させる特性を有する。
【0032】
別の方法/医学的使用は、シュードモナス・エルギノーサ又はアシネトバクター・バウマンニ(A. baumannii)等のグラム陰性細菌によって引き起こされる細菌感染を治療する方法/医学的使用であり、細菌感染と診断された、そのリスクがある又はその症状を示す被験体に上述の組成物の1つ以上を投与することを含む。
【0033】
上述の方法/医学的使用のいずれにおいても、グラム陰性細菌は、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、シュードモナス・エルギノーサ、大腸菌(E. coli)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、エンテロバクター・
クロアカエ(Enterobacter cloacae)、サルモネラ属種、淋菌(N. gonorrhoeae)及びシゲラ属種からなる群から選択される少なくとも1つである。代替的には、グラム陰性細菌はシュードモナス・エルギノーサである。
【0034】
別の方法/医学的使用は、治療を必要とする被験体に上述の組成物の1つを投与することを含む、グラム陰性細菌によって引き起こされる局所又は全身病原性細菌感染を治療又は予防する方法/医学的使用である。局所感染には、抗菌剤の局部又は局所適用によって治療することができる感染が含まれる。局所感染の例としては、器官又は組織又は移植された人工装具又は他の医療用具等の特定の位置に限局された感染が挙げられる。例は、皮膚、歯肉の感染、感染創、耳等の感染、カテーテルを設置した部位の感染等である。
【0035】
別のかかる方法/医学的使用は、細菌感染と診断された、そのリスクがある又はその症状を示す被験体に、第1の有効量の上述の組成物の1つと、グラム陰性細菌感染の治療に適した第2の有効量の抗生物質との組合せを同時投与することを含む、細菌感染を予防又は治療する方法/医学的使用である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義
本明細書で使用される場合、以下の用語及びその同語源語は、文脈上そうでないことが明示されない限り、下記でそれらに属するとみなされる意味を有するものとする。
【0037】
医薬組成物に適用される「担体」は、活性化合物と共に投与される希釈剤、賦形剤、添加剤又はビヒクルを指す。かかる医薬担体は、滅菌液、例えば水、生理食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール水溶液、及び石油、動物、植物又は合成起源のものを含む油、例えばラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等であり得る。他の例としては、分散媒、可溶化剤、コーティング剤、保存料、等張剤及び吸収遅延剤(absorption delaying agents)、界面活性剤、噴射剤等が挙げられる。好適な医薬担体は、"Remington's Pharmaceutical Sciences" by E.W. Martin, 18th Editionに記載されている。
【0038】
「薬学的に許容可能な担体」は、生理学的に適合する上述の担体のいずれかを含む。担体(複数の場合もある)は、薬剤中で通常使用される量で治療対象の被験体に有害でないという意味で「許容可能」でなくてはならない。薬学的に許容可能な担体は、組成物をその意図される目的に不適なものにすることなく組成物の他の成分に適合する。さらに、薬学的に許容可能な担体は、過度の有害な副作用(毒性、刺激及びアレルギー応答等)なしに本明細書に提示される被験体への使用に適している。副作用は、それらのリスクが組成物によってもたらされる利益を上回る場合に「過度」である。
【0039】
作用物質との関連での「殺菌」は従来、細菌の初期数において18時間~24時間にわたって少なくとも3log10(99.9%)以上の減少の程度まで細菌の死滅を引き起
こす特性を有するか、又は細菌を死滅させることが可能であることを意味する。
【0040】
「静菌」は従来、細菌細胞の増殖を阻害し、それにより細菌の初期数において18時間~24時間にわたって2log10(99%)以上かつ最大3log弱の減少を引き起こすことを含む、細菌増殖を阻害する特性を有することを意味する。
【0041】
作用物質との関連での「抗菌剤」は、静菌剤及び殺菌剤の両方を含むように総称的に使用される。
【0042】
「抗生物質」は、細胞壁ペプチドグリカンの生合成に影響を及ぼすもの、細胞膜の完全性に影響を及ぼすもの、又は細菌におけるDNA若しくはタンパク質の合成に影響を及ぼすもののいずれかであり得る抗生物質化合物を指す。グラム陰性細菌に対して活性を有する抗生物質の非限定的な例としては、セフトリアキソン-セフォタキシム、セフタジジム、セフェピム、セフォペラゾン、セフトビプロール等のセファロスポリン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン等のフルオロキノロン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ピペラシリン、チカルシリン等のアミノグリコシド、イミペネム、メロペネム、ドリペネム等のカルバペネム、βラクタマーゼ阻害剤と併用する又は併用しない広域スペクトルペニシリン等のGN細菌に対して活性を有する他のβラクタム系抗生物質、リファンピシン等のアンサマイシン、並びにポリミキシンB及びコリスチン等の殺菌ポリペプチドが挙げられる。
【0043】
病原体、より具体的には細菌との関連での「薬物耐性」は、概して薬物の抗菌活性に抵抗性を示す細菌を指す。より具体的に使用される場合、薬物耐性は、特に抗生物質耐性を指す。場合によっては、一般に特定の抗生物質の影響を受けやすい細菌は、抗生物質に対する耐性を発現し、それにより薬物耐性微生物又は株となる可能性がある。「多剤耐性」(「MDR」)病原体は、各々が単剤療法として使用される少なくとも2つのクラスの抗微生物薬に対する耐性を発現した病原体である。例えば、シュードモナス・エルギノーサの或る特定の株が、特にセフトロザン-タゾバクタム、セフタジジム、セフェピム、ピペラシリン-タゾバクタム、アズトレオナム、イミペネム、メロペネム、シプロフロキサシン、チカルシリン、トブラマイシン、アミカシン及びコリスチンを含む幾つかの抗生物質に抵抗性を示すことが見出されている。当業者は、薬物又は抗生物質に対する細菌の感受性又は耐性を決定する日常的な実験技術を用いて、細菌が薬物耐性であるかを容易に決定することができる。例えば、Cabot, G. et al, 2016, Antimicrob. Agents and Chemother. 60(3):1767, DOI: 10.1128/AAC.02676-15及びAntibiotic Resistant Threats in the United States, 2013, U.S. Department of Health and Services, Centers for Disease
Control and Preventionを参照されたい。
【0044】
「有効量」は、適切な頻度又は投与計画で適用又は投与した場合に、細菌増殖若しくは細菌負荷を予防、低減、阻害若しくは解消するか、又は治療される障害(ここではグラム陰性細菌病原体の増殖又は感染)の発症、重症度、期間若しくは進行を予防、低減若しくは改善するか、治療される障害の進展を予防するか、治療される障害の退行を引き起こすか、又は抗生物質若しくは静菌療法等の別の療法の予防効果若しくは治療効果(複数の場合もある)を高める若しくは改善するのに十分な量を指す。本ポリペプチドの有用な有効量範囲は、約0.01mg/kg~約50mg/kgであり、典型的な範囲は約0.01mg/kg~25mg/kgであり、一般的な範囲は約0.01mg/kg~約10mg/kgである。下限値の上方修正が特定の溶解素の効力に応じて企図され、上限値の下方修正も主に特定の溶解素の毒性に応じて企図される。かかる修正は、当業者の能力の範囲内である。さらに、溶解素を抗生物質と同時に投与する場合、溶解素の量は、同時に投与される抗生物質に対して標的細菌を再感作するのに必要とされる量に基づいて調整することができる。
【0045】
「同時投与する」は、順次的な溶解素ポリペプチド及び抗生物質又は任意の他の抗菌剤の別々の投与、並びに実質的に同時の、例えば単一の混合物/組成物中での、又は別個に与えられるが、それでも実質的に同時に、例えば同日又は24時間中に異なる時点で被験体に投与される用量でのこれらの作用物質の投与を包含することを意図する。このような溶解素ポリペプチドと1つ以上の付加的な抗菌剤との同時投与は、最大数日、数週間又は数ヶ月続く継続的な治療として行うことができる。さらに、用途に応じて、同時投与は、継続的又は同延的(coextensive)である必要はない。例えば、用途が局所抗菌剤として
、例えば細菌性潰瘍又は感染した糖尿病性潰瘍を治療することがであった場合、溶解素を初めのみ、最初の抗生物質の使用の24時間以内に投与することができ、その後、抗生物質の使用を溶解素の更なる投与なしに継続してもよい。
【0046】
「被験体」は、治療対象の被験体を指し、特に哺乳動物、植物、下等動物、単細胞生物又は細胞培養物を含む。例えば、「被験体」という用語は、細菌感染、例えばグラム陰性細菌感染の影響を受けやすい又はそれを患う生物、例えば原核生物及び真核生物を含むことを意図する。被験体の例としては、哺乳動物、例えばヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット及びトランスジェニック非ヒト動物が挙げられる。或る特定の実施形態では、被験体はヒト、例えばかかる感染が全身性であるか、局所性であるか、又は別の形で特定の器官若しくは組織に集中若しくは限局しているかに関わらず、野生型(親)溶解素が効果的なグラム陰性細菌による感染を患う、それを患うリスクがある又はその影響を受けやすいヒトである。
【0047】
「ポリペプチド」は、本明細書で「タンパク質」及び「ペプチド」という用語と区別なく使用され、アミノ酸残基からなり、概して少なくとも約30個のアミノ酸残基を有するポリマーを指す。この用語は、単離形態のポリペプチドだけでなく、その活性フラグメント及び誘導体も含む。「ポリペプチド」という用語は、下記の溶解素ポリペプチドを含み、溶解素機能を維持する融合タンパク質又は融合ポリペプチドも包含する。文脈に応じて、ポリペプチド又はタンパク質又はペプチドは、自然発生ポリペプチド、又は組換え、改変若しくは合成的に作製されたポリペプチドであり得る。特定の溶解素ポリペプチドは、例えば酵素的若しくは化学的切断によって天然タンパク質(すなわち、天然源からこのタンパク質について単離されたものと同一のアミノ酸配列を有するタンパク質)から得るか若しくは取り出しても、又は従来のペプチド合成法(例えば、固相合成)若しくは分子生物学的手法(例えば、Sambrook, J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual,
Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)に開示されるもの)を用いて調製しても、又は戦略的に切断若しくはセグメント化して、同じ若しくは少なくとも1つの一般的な標的細菌に対する溶解素活性を維持する活性フラグメントを得てもよい。
【0048】
「融合ポリペプチド」は、通例、異なる特性又は機能性を有する2つのドメイン又はセグメントを有する融合発現産物を生じる、2つ以上の核酸セグメントの融合から得られる発現産物を指す。より特定の意味では、「融合ポリペプチド」という用語は、直接、又はアミノ酸若しくはペプチドリンカーを介して共有結合的に連結した2つ以上の異種ポリペプチド又はペプチドを含むポリペプチド又はペプチドも指す。融合ポリペプチドを形成するポリペプチドは通例、C末端からN末端に連結されるが、C末端からC末端、N末端からN末端又はN末端からC末端に連結されてもよい。「融合ポリペプチド」という用語は、「融合タンパク質」という用語と区別なく使用される場合もある。このため、或る特定の構造「を含むポリペプチド」というオープンエンドの表現は、融合ポリペプチド等の列挙される構造よりも大きい分子を含む。
【0049】
「異種」は、天然では隣接しないヌクレオチド、ペプチド又はポリペプチドの配列を指す。例えば、本開示との関連で、「異種」という用語は、融合ペプチド又はポリペプチド
が通常は天然に見られない2つ以上のペプチド及び/又はポリペプチドの組合せ又は融合、例えば増強した溶解素活性を有し得る、溶解素ポリペプチド又はその活性フラグメント、並びにカチオン性及び/又はポリカチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、sushiペプチド(Ding et al. Cell Mol Life Sci., 65(7-8):1202-19 (2008))、ディフェンシンペプチド(Ganz, T. Nature Reviews Immunology 3, 710-720 (2003))、疎水性ペプチド及び/又は抗微生物ペプチドを記載するために使用することができる。2つ以上の溶解素ポリペプチド又はその活性フラグメントがこの定義に含まれる。これらを用いて溶解素活性を有する融合ポリペプチドを作製することができる。
【0050】
「活性フラグメント」は、フラグメントが得られた単離ポリペプチドの1つ以上の機能又は生物活性、例えば外膜に結合する能力を保持するか否かに関わらず、1つ以上のグラム陰性細菌に対する殺菌活性、又はより具体的には溶菌活性を保持する、本明細書に開示される完全長ポリペプチドの部分を指す。
【0051】
「両親媒性ペプチド」は、親水性官能基及び疎水性官能基の両方を有するペプチドを指す。二次構造では疎水性及び親水性アミノ酸残基が両親媒性ペプチドの反対側(例えば、内側対外側)に置かれるのが好ましい。これらのペプチドは多くの場合、ヘリックス二次構造を取る。
【0052】
「カチオン性ペプチド」は、正に帯電したアミノ酸残基を高い割合で有するペプチドを指す。カチオン性ペプチドは、8.0以上のpKa値を有するのが好ましい。本開示との関連での「カチオン性ペプチド」という用語は、主に正に帯電したアミノ酸残基、特にリシン及び/又はアルギニン残基で構成される、合成的に作製されたペプチドであるポリカチオン性ペプチドも包含する。正に帯電していないアミノ酸残基は、中性に帯電したアミノ酸残基及び/又は負に帯電したアミノ酸残基及び/又は疎水性アミノ酸残基であり得る。
【0053】
「疎水性基」は、水分子に対する親和性が低いか又は親和性を有しないが、油分子に対してより高い親和性を有するアミノ酸側鎖等の化学基を指す。疎水性物質は、水又は水相への溶解性が低いか又は溶解性を有しない傾向があり、通例非極性であるが、油相への溶解性がより高い傾向がある。疎水性アミノ酸の例としては、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、プロリン(Pro)、フェニルアラニン(Phe)、メチオニン(Met)及びトリプトファン(Trp)が挙げられる。
【0054】
本開示との関連での「高める(Augmenting)」は、抗微生物活性の程度がそうでない場合よりも高いことを意味する。「高める」は、相加的効果及び相乗(超相加的(superadditive))効果を包含する。例えば、本開示による天然溶解素の構造的修飾は、血清の存
在下での溶解素の活性を高める働きをする。
【0055】
効果に関する「相乗的」又は「超相加的」は、独立して働く2つの作用物質の効果の総和を、好ましくは大幅に超える、組合せでの2つの活性物質によってもたらされる有益な効果を意味する。一方又は両方の活性成分を閾値下レベル、すなわち活性物質が個別に用いられる場合に効果を生じない又は非常に限られた効果しか生じないレベルで(又は少なくとも最適値以下のレベル、すなわち活性物質がその最大効果を大幅に下回る効果を生じるレベルで)用いることができる。代替的には、効果は、本明細書に記載されるチェッカーボードアッセイ等のアッセイによって測定することができる。
【0056】
「治療」は、ヒトを含む被験体が、直接的又は間接的に、障害を治癒するか、又は病原体を根絶するか、又は被験体の状態を改善する目的で医療を受ける任意のプロセス、行為
、適用、療法等を指す。治療は、発生率の低減、若しくは症状の軽減、再発の解消、再発の予防、発生の予防、若しくは発生リスクの低減、症状の改善、予後の改善、又はそれらの組合せも指す。「治療」は、被験体における細菌の数、増殖速度又は病原性を低減することで、被験体における細菌感染、又は器官若しくは組織若しくは環境の細菌汚染を制御又は低減することを更に包含する。このため、発生率を低減する「治療」は、被験体であるか又は環境であるかを問わず、特定のミリュー(milieu)での少なくとも1つのグラム陽性細菌の増殖を阻害するのに効果的である。一方、既に確立された感染の「治療」は、感染又は汚染の原因となるグラム陽性細菌の数を減少させるか、又はそれを死滅させるか、その増殖を阻害すること(更には根絶することを含む)を指す。
【0057】
「予防する」という用語は、細菌感染等の障害の発生、再発、拡大、発症又は確立の予防を含む。本開示が感染の完全な予防又は感染の確立の予防に限定されることは意図されない。幾つかの実施形態では、発症を遅らせるか、又は続いて発症した(contracted)疾患の重症度若しくはその発症の可能性を低減することが予防例を構成する。
【0058】
本開示との関連での発症した疾患は、発熱、敗血症又は菌血症(BSI)の検出、並びにかかる病理と関連する症状が未だ現れていない場合の細菌病原体の増殖の検出(例えば、培養物中での)等の、臨床症状又は不顕性(subclinical)症状が現れた疾患の両方を
包含する。
【0059】
ペプチド又はポリペプチド(本明細書で述べられるように活性フラグメントを含む)との関連での「誘導体」という用語は、例えば溶解素活性に実質的に悪影響を与えない若しくは溶解素活性を損なわない、アミノ酸以外の1つ以上の化学的部分を含有するように修飾されたポリペプチドを包含することを意図する。化学的部分は、例えばアミノ末端のアミノ酸残基、カルボキシ末端のアミノ酸残基又は内部アミノ酸残基を介してペプチドに共有結合的に連結することができる。かかる修飾としては、反応性部分への保護基若しくはキャップ基(capping group)の付加、抗体及び/又は蛍光標識等の検出可能な標識の付
加、グリコシル化の付加若しくは修飾、又はPEG(ペグ化)等の嵩高基(bulking group)の付加、並びに溶解素ポリペプチドの活性に実質的に悪影響を与えない若しくは溶解
素ポリペプチドの活性を損なわない他の変化が挙げられる。溶解素ポリペプチドに付加することができる、一般に使用される保護基としては、t-Boc及びFmocが挙げられるが、これらに限定されない。限定されるものではないが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)及びmCherry等の一般に使用される蛍光標識タンパク質は、細胞タンパク質の正常機能に干渉することなく、溶解素ポリペプチドに共有結合的若しくは非共有結合的に結合するか、又は溶解素ポリペプチドに融合させることができる小型のタンパク質である。通例、蛍光タンパク質をコードするポリヌクレオチドが溶解素ポリヌクレオチド配列の上流又は下流に挿入される。これにより、細胞機能又はそれが結合した溶解素ポリペプチドの機能を妨げない融合タンパク質(例えば、溶解素ポリペプチド::GFP)が生じる。タンパク質へのポリエチレングリコール(PEG)のコンジュゲーションが、多くの医薬タンパク質の循環半減期を延長する方法として使用されている。このため、溶解素ポリペプチド誘導体との関連で、「誘導体」という用語は、1つ以上のPEG分子の共有結合によって化学修飾された溶解素ポリペプチドを包含する。ペグ化溶解素ポリペプチドは、生物活性及び治療活性を保持した上で非ペグ化溶解素ポリペプチドと比較して延長された循環半減期を示すことが予想される。別の例は、in vitro抗レンサ球菌活性を改善するために短いポリカチオン性及び両親媒性αヘリックスをレンサ球菌溶解素のN末端又はC末端に付加する「artilysin」の使用である(Rodriguez-Rubio et al., 2016)。
【0060】
溶解素ポリペプチド配列に関する「パーセントアミノ酸配列同一性」は、最大のパーセ
ント配列同一性を達成するように配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入した後に、任意の保存的置換を配列同一性の一部とみなさずに、特定の溶解素ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一の候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして本明細書で規定される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的でのアラインメントは、当業者の能力の範囲内の様々な方法で、例えばBLAST等の公開されているソフトウェア、又は例えばDNASTARにより市販されているソフトウェアを用いて達成することがで
きる。2つ以上のポリペプチド配列は、0%~100%の間のいずれか、又はその間の任意の整数値で同一であり得る。本開示との関連で、2つのポリペプチドは、アミノ酸残基の少なくとも80%(好ましくは少なくとも約85%、少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%)が同一である場合に「実質的に同一」である。
【0061】
本明細書に記載される「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」という用語は、溶解素ペプチドにも当てはまる。このため、「実質的に同一」という用語は、本明細書に記載される単離溶解素ポリペプチド及びペプチドの突然変異型、切断型、融合型、又は別の形で配列が修飾された変異体、及びその活性フラグメント、並びに参照(野生型又は他の無傷)ポリペプチドと比較して相当の配列同一性(例えば、例えば1つ以上の上記の方法によって測定される少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の同一性)を有するポリペプチドを包含する。2つのアミノ酸配列は、アミノ酸残基の少なくとも約80%(好ましくは少なくとも約85%、少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%又は98%)が同一であるか、又は保存的置換を示す場合に「実質的に相同」である。本開示の溶解素ポリペプチドの配列は、溶解素ポリペプチドのアミノ酸の1つ以上、又は幾つか、又は最大10%、又は最大15%、又は最大20%が同様の又は保存的アミノ酸置換で置換され、得られる溶解素が本明細書に開示される溶解素ポリペプチドの活性、抗菌効果及び/又は細菌特異性のプロファイルを有する場合に実質的に相同である。本明細書に記載される「実質的に相同」の意味は、溶解素ペプチドにも当てはまる。
【0062】
「吸入用組成物」は、日常呼吸又は補助呼吸(例えば、気管気管支内(intratracheobronchial)投与、経肺投与及び/又は経鼻投与による)時の、又はそれと同時の気道への
直接送達のために配合されている本開示の医薬組成物を指し、霧化、噴霧化、乾燥粉末及び/又はエアロゾル化配合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
「バイオフィルム」は、表面に付着し、細菌及び/又は宿主に由来する成分で構成され得る水和したポリマーマトリックス中に凝集した細菌を指す。バイオフィルムは、生物表面又は非生物表面上で細胞が互いに接着した微生物の凝集物である。これらの接着細胞は、限定されるものではないが、細胞外高分子物質(EPS)で構成されるマトリックス中に埋め込まれることが多い。バイオフィルムのEPSは、スライム(スライムと記載されたもの全てがバイオフィルムという訳ではない)又はプラークとも称され、一般に細胞外DNA、タンパク質及び多糖で構成されるポリマー集塊である。
【0064】
或る特定の細菌に対する使用に適した抗生物質との関連での「適した、好適な(Suitable)」は、耐性が後に発現する場合であっても、これらの細菌に対して効果的であることが見出された抗生物質を指す。
【0065】
ヒト血清中でシュードモナス・エルギノーサに対して殺菌活性を有する溶解素の特定。本開示は、対数期シュードモナス・エルギノーサ株PAOIに対して強力な抗菌活性を有する5つの溶解素の特定に基づく(実施例1及び2)。この株は、シュードモナス・エルギノーサ株の代表的なものである。本開示の溶解素ポリペプチドを特定するために、本発明者らは、抗菌スクリーニングと併せたバイオインフォマティクスベースのアプローチを用いた。推定溶解素及び溶解素様分子(表1を参照されたい)をGenBankデータベ
ースから特定した。GenBank配列を仮定的又は予測タンパク質のいずれかとして注釈付けし、場合によっては推定ファージタンパク質及び/又は推定溶解素としてリスト化した。本発明者らは、これらのポリペプチドについての活性の報告を一切認識しなかった。また、それらの活性、ましてやヒト血清の存在下でのそれらの活性は、それらの配列から予測することができなかった。
【0066】
【表1】
【0067】
ヒト血清中でシュードモナス・エルギノーサに対して改善された殺菌活性を有する修飾溶解素の特定。5つの溶解素GN3、GN150、GN203、GN4及びGN37を用いて、12個の新規のGN溶解素誘導体を生成した。表2を参照されたい。修飾(アミノ酸置換、又はリンカーを用いる若しくは用いないN末端若しくはC末端ペプチド融合)を個別又は同時に天然溶解素又は修飾溶解素に適用し得ることが企図される。このため、例えば表2に開示されるN末端及び/又はC末端ペプチドの付加が、溶解素ポリペプチドの修飾について企図される。より具体的な例として、GN156又はGN92の一部であるペプチドがGN147について企図されるが、かかる構築物を表2には例示していない。また、かかるペプチドを、例えばGN4又はGN146のいずれかに付加することができる。言い換えると、抗微生物ペプチドを天然溶解素、又は荷電アミノ酸残基の代わりに非荷電アミノ酸置換によって修飾された溶解素のN末端又はC末端に融合させることができる。さらに、本節で上記に説明されるように、N末端及び/又はC末端ペプチド、及び/又は抗微生物ペプチドをリンカードメイン、例えば表2に規定されるリンカードメイン、又は別の適切なリンカーを介して溶解素ポリペプチドに結合させることができる。
【0068】
【表2】
【0069】
本溶解素及び修飾GN溶解素、並びにそれらのアミノ酸配列を表3にまとめる。上述のような国際公開第2017/049233号に開示される非修飾溶解素も表3に含まれる
【0070】
【表3】
【0071】
GN3及びGN4(各々、リゾチーム様スーパーファミリーの成員)については、修飾誘導体GN147及びGN146をそれぞれ、in vitro抗菌活性(バッファー及び/又は培地中)及びin vivo抗菌活性(動物感染モデル内)の両方を改善することがヒトリゾチームにおいて示されている位置(31~33)に相当する位置での2つのアミノ酸置換の導入に基づいて生成した。
【0072】
GN3溶解素ポリペプチドをアミノ酸置換、特にR101D及びR117Hアミノ酸置換を含むように修飾した。これにより修飾ポリペプチドGN147が得られた。これらのアミノ酸置換は、GN3ポリペプチド中の9.98からGN147ポリペプチド中の9.39へのpIの低下をもたらした。
【0073】
GN4溶解素をアミノ酸置換、特にK99D、R115Hを含むように修飾した。これにより修飾溶解素ポリペプチドGN146が得られた。これらのアミノ酸置換は、GN4ポリペプチド中の9.58からGN146ポリペプチド中の8.01へのpIの低下をもたらした。
【0074】
GN3及びGN4中の各突然変異の位置を、HuLYZがGN3又はGN4のいずれかとアミノ酸配列レベルで顕著な相同性を有しないことから、ヒトリゾチーム(HuLYZ
)中の突然変異との概略比較に基づいて評価した。
【0075】
溶解素GN3及びGN4は、T4リゾチームとアミノ酸レベルでは似ていないが、同様の大きさである。それらの構造の整列により荷電残基が明らかになった。したがって、同等性は、T4リゾチームの一次配列中とほぼ同じ位置でのGN3及びGN4中の荷電残基の存在によってのみ判断した。この場合も、上記のように、荷電アミノ酸は概して、電荷を有しないアミノ酸によって置換され、突然変異体を活性についてスクリーニングした。
【0076】
Daniels and Schepartz, 2007(34)に記載のはるかに大きな抗微生物ペプチド(A
MP)に由来するN末端ペプチド配列(GPRRPRRPGRRAPV-配列番号28)の付加を含むGN3及びGN4ポリペプチドの両方の付加的な修飾も導入し、GN205及びGN156をそれぞれ生成した。
【0077】
GN溶解素ポリペプチドをpI変更突然変異の付加によって更に修飾することができる。一実施形態では、アミノ酸置換(R101D)及び(R117H)をGN3溶解素に導入して、GN147溶解素を生成した。別の実施形態では、アミノ酸置換(K99D)及び(R115H)をGN4溶解素に導入して、GN146溶解素を生成した。
【0078】
GN4ポリペプチドを、Briers et al. 2014(36)によって以前に記載されているリンカードメインAGAGAGAGAGAGAGAGAS(配列番号31)を介してGN4に結合する、以前に記載されている2つの異なるN末端カチオン性AMPであるKFFKFFKFFK(配列番号29)又はKRKKRKKRK(配列番号30)(35、36)のいずれかの付加によっても修飾し、修飾溶解素GN92及びGN54をそれぞれ生成した。
【0079】
溶解素GN37、GN150及びGN203(各々、VanYスーパーファミリーの成員)の修飾を、ブタ骨髄抗微生物ペプチド-36(PMAP-36)の誘導体として以前に開発された(22)、C末端AMPであるRKKTRKRLKKIGKVLKWI(配列番号32)の付加によって生成した。C末端RI18ペプチド配列の付加によるGN37、GN150及びGN203の修飾により修飾誘導体GN121、GN200及びGN204がそれぞれ得られた。上記のAMP(KFFKFFKFFK-配列番号29)(35)及びリンカードメイン(AGAGAGAGAGAGAGAGAS-配列番号31)(36)をGN37のN末端に付加し、修飾溶解素GN94を生成する付加的な修飾も含めた。
【0080】
GN121、GN156、GN200、GN201、GN202、GN204及びGN205の作製に使用されるペプチドは、以前に溶解素の修飾に使用されていないと考えられる。それらを使用する根拠は、以下の通りであった:1)指定の溶解素に付加した場合に、AMP及び溶解素の両方の予測二次構造が感知し得るほど変化しないか、又は全く変化しないこと(既知のタンパク質構造予測プログラムを用いて決定される);2)これらのペプチドが強力な活性を有するとして以前に文献に記載されていること;並びに3)本発明者らが血清中でこれらのAMPを試験し、強力な活性を見出したこと。同じことがGN92及びGN9に使用されるペプチドにも当てはまる。しかしながら、AMPと溶解素とを接合し、AMPが溶解素に融合する場合にAMPの適切な二次構造(遊離AMPの二次構造によく似ている)が得られるように、リンカー配列もこれらの構築物に用いた。
【0081】
GN54については、AMP及びリンカーの両方が以前に溶解素の修飾に使用されているが、血清中での活性の報告は文献に見られない。GN54は、血清中で活性を有する。
【0082】
溶解素GN3、GN9、GN10、GN13、GN17、GN105、GN108、G
N123及びGN150を合成し、及び/又は組換えにより作製し、(90%超の)均一性まで精製し、一連の活性アッセイにおいて試験した。MICアッセイを、CAA及び25%ヒト血清を添加したCAA(「CAA/HuS」)の2つの培地タイプで培養したシュードモナス・エルギノーサを用いて行った。多くのGN溶解素(表4中の対照T4リゾチームを含む)の活性がCAA及びCAA/HuSの両方において抑制される。
【0083】
ここで試験した9つの新規のGN溶解素のセット(すなわち、GN3、GN9、GN10、GN13、GN17、GN105、GN108、GN123及びGN150)について、CAA及びCAA/HuSの両方において2~128超のMIC範囲が観察された。
【0084】
修飾溶解素GN54、GN92、GN94、GN121、GN146及びGN147を各々(90%超の)均一性まで精製し、一連のin vitro活性アッセイにおいて試験した。表4に示されるように、CAA/HuSにおけるGN溶解素の各々についてのMIC値(μg/mL単位)は、以下の通りである:GN54、2;GN92、4;GN94、2;GN121、0.5;GN146、2;GN147、4。
【0085】
【表4】
【0086】
重要なことには、親溶解素分子GN3、GN4及びGN37の各々についてCAA/HuSを用いて決定されたMIC値(μg/mL単位)は、それぞれ16、16及び32である。したがって、各作用物質の修飾は、ヒト血清中での活性の改善をもたらした。T4リゾチーム(MIC=128μg/mL超)をヒト血清中で不活性なGN溶解素の対照標準として含めた。GN126(MIC=128μg/mL)も対照として含めたが、これはArt-175(37)に対応する。Art-175は、AMP SMAP-29とGN溶解素KZ144との融合体からなる、文献に記載されるartilysinである。
【0087】
MIC分析に加えて、修飾GN溶解素(GN54、GN92、GN94、GN121、GN146及びGN147)も強力な抗バイオフィルム活性を有することが示された。ここで、最小バイオフィルム根絶濃度(MBEC)値は、0.25μg/mL~2μg/m
Lの範囲である。表5を参照されたい。
【0088】
GN3、GN9、GN10、GN13、GN17、GN105、GN108及びGN123は各々、強力な抗バイオフィルム活性を有し、MBEC値が0.125μg/mL~4μg/mLの範囲であり(表5)、いかなる溶血活性も有しない(表6)ことが示された。残りの修飾溶解素が親溶解素と比較してバイオフィルムに対する活性の改善を示し、溶血特性の低下又は解消を有すると共に、ヒト血清を含む血液マトリックスの存在下での活性の増大も有することが予想される。
【0089】
【表5】
【0090】
修飾GN溶解素(GN54、GN92、GN94、GN121、GN146及びGN147)も溶血活性(128μg/mL超のMHC値)を有しないことが示された。表6を参照されたい。
【0091】
【表6】
【0092】
修飾GN溶解素(GN54、GN92、GN94、GN121、GN146及びGN147)も、溶解素の添加の3時間後までに3Log10以上のCFUの減少と規定される時間-死滅フォーマットで殺菌活性を有することが示された。表7及び表8を参照されたい。
【0093】
時間-死滅アッセイフォーマットでは、GN3、GN17、GN108、GN123及びGN150は各々、CAA/HuS又はHEPESバッファー中10μg/mLの濃度での添加の3時間後の時点で殺菌活性を示した(それぞれ表7及び8)。
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
GN溶解素のサブセット(GN4、GN37、GN108及びGN150)をCAA/HuSを用いるチェッカーボードアッセイにおいて試験したところ、アミカシン、アジスロマイシン、アズトレオナム、シプロフロキサシン、コリスチン、リファンピシン及びトブラマイシンを含む様々な抗生物質と相乗作用を示すことが示された(表9)。
【0097】
重要なことには、修飾溶解素GN92、GN121及びGN147は各々、表9に示されるように、CAA/HuSにおいてグラム陰性細菌に対して活性を有する様々な抗生物質(アミカシン、アジスロマイシン、アズトレオナム、シプロフロキサシン、コリスチン、リファンピシン及びトブラマイシン)と相乗作用を示すことが示された。これらのデータから、相乗作用がヒト血清の存在下にてin vivoで持続することが示される。
【0098】
【表9】
【0099】
ヒト血清の存在下での特定のGN溶解素の活性(並びにそれらのアミノ酸配列の性質及び他の溶解素との相同性、並びにタンパク質発現及び精製プロファイル)に基づくと、溶解素GN3、GN9、GN10、GN13、GN17、GN105、GN108、GN123、GN150及び203は、それらの天然溶解素形態で、又は本明細書に記載される方法、すなわち非荷電残基による通例1つ~3つの荷電アミノ酸残基の置換(並びにヒト血清の非存在下及び存在下での活性の維持)及び/又はαヘリックス構造を有するAMPペプチドへのN末端又はC末端での融合による更なる修飾後に更なる開発にとって優れた候補であることが予想される。
【0100】
GN200~GN205に対応する修飾溶解素は、依然として分析中であり、GN54、GN92、GN94、GN121、GN146及びGN147と同様の活性を有し得る。
【0101】
本発明者らは、ヒト血清の存在下で様々なレベルの活性を有するGN溶解素を特定した。さらに、修飾GN溶解素が得られたが、これはヒト血清の存在下で親溶解素又は既知のリゾチーム(T4)又は既知のartilysin(GN126)と比較して活性の改善を示すことが示される。
【0102】
本明細書に開示される特定の実施形態は、特許請求の範囲で「からなる(consisting of)」及び/又は「から本質的になる(consisting essentially of)」という言い回しを用いて更に限定され得る。請求項で用いられる場合、出願時のものであるか又は補正によって追加されたかに関わらず、「からなる」という移行句は、その請求項に明記されない任意の要素、工程又は成分を除外する。「から本質的になる」という移行句は、請求項の範囲を指定の材料又は工程、及び基本的な新規の特徴(複数の場合もある)に実質的に影響を与えない材料又は工程に限定する。そのように特許請求される本発明の実施形態は、本明細書において本質的又は明示的に記載され、可能になる。出願人は、本明細書に記載される任意の実施形態又は特徴を放棄する権利を留保する。
【実施例0103】
実施例1. 細菌株及び増殖条件
ニューヨーク州のHospital for Special Surgeryから得られた(病理臨床検査医学教授であるLars Westblade博士により提供された)ヒト血液に由来するシュードモナス・エルギノーサ臨床分離株(CFS-1292)を用いて抗菌スクリーニングを行った。CFS-1292株を溶原性ブロス(lysogeny broth)(LB;Sigma-Aldrich)、カザミノ酸
(CAA)培地(5g/Lカザミノ酸、Ameresco/VWR;5.2mM KHPO、Sigm
a-Aldrich;1mM MgSO、Sigma-Aldrich)、又は25%ヒト血清(AB型、男性、プール;Sigma-Aldrich)を添加したCAAのいずれかにおいて培養した。本開示の目
的上、特定のシュードモナス・エルギノーサの分離株は重要ではなく、市販の分離株を本実験に使用することもできた。
【0104】
実施例2. 遺伝子合成及びクローニング
全ての溶解素及び修飾溶解素をgBlocks(IDT Technologies)として合成し、オーバーラップ伸長PCR又は適合性の付着末端のライゲーションによってアラビノース誘導性発現ベクターpBAD24(24)にクローニングした。全ての構築物を大腸菌株TOP10(Thermo Fisher Scientific)に形質転換した。他の市販の発現ベクター及び系を用いることもできた。
【0105】
実施例3. 固有活性を有する溶解素の特定
最大250個の一連の推定溶解素及び溶解素様酵素をシュードモナス・エルギノーサのゲノム配列のGenBankデータベースにおいて特定した。3つの検索方法を用いた:i)既知の溶解素の問い合わせ配列を用いた全てのシュードモナス・エルギノーサゲノムの標的化BLASTpスクリーニング、ii)溶解素(及び細胞壁ヒドロラーゼ)触媒及び結合ドメインと関連する全てのスーパーファミリー指定に焦点を合わせた全ての注釈付きシュードモナス・エルギノーサゲノムのキーワードベースの検索、並びにiii)非注釈付きゲノムのファージ配列における溶解素様遺伝子の視覚検索。特定された後、溶解素配列をgBlocks合成し、pBAD24にクローニングし、大腸菌TOP10細胞に形質転換した。次いで、大腸菌クローンを、50mM Trisバッファー(pH7.5)に懸濁した軟寒天で構成されるオーバーレイにおけるGN溶解素活性の検出が可能となるよう修正した寒天オーバーレイプレートに基づく方法(11、13)を用いる一次抗菌活性スクリーニング(生きたシュードモナス・エルギノーサに対する)において試験した。10個の溶菌クローンのセットを特定し、発現及び精製のために選択した。
【0106】
実施例4. 溶解素及び修飾溶解素の発現及び精製
広範な宿主/発現ベクターの組合せを、本開示の溶解素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の発現に用いることができる。多数の好適なベクターが当業者に既知であり、市販されている。適切なベクターの例は、Sambrook et al, eds., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd Ed.), Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory (2001)に提示されている。かかるベクターとしては、特に染色体ベクター、エピソームベク
ター及びウイルス由来ベクター、例えば細菌プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入因子、酵母染色体要素、バキュロウイルス、SV40等のパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルス等のウイルスに由来するベクター、並びにそれらの組合せに由来するベクター、例えばプラスミドとコスミド及びファージミド等のバクテリオファージ遺伝要素とに由来するベクターが挙げられる。さらに、上記ベクターは、本開示の溶解素ポリペプチドの構成的又は誘導性発現をもたらすことができる。より具体的には、好適なベクターとしては、SV40の誘導体、並びに既知の細菌プラスミド、例えば大腸菌プラスミドcolEl、pCR1、pBR322、pMB9及びそれらの誘導体、RP4、pBAD24及びpBAD-TOPO等のプラスミド;ファージDNA、例えばファージλの多数の誘導体、例えばNM989、並びに他のファージDNA、例えばM13及び繊維状一本鎖ファージDNA;2Dプラスミド等の酵母プラスミド又はその誘導体;昆虫又は哺乳動物細胞に有用なベクター等の真核細胞に有用なベクター;ファージDNA又は他の発現制御配列を用いるように改変されたプラスミド等のプラスミドとファージDNAとの組合せに由来するベクター等が挙げられるが、これらに限定されない。上述のベクターの多くがNew England Biolabs、Addgene、Clontech、Life Technologies等の供給業者(その
多くが好適な宿主細胞も提供している)から市販されている。
【0107】
さらに、ベクターは、様々な調節要素(プロモーター、リボソーム結合部位、ターミネーター、エンハンサー、発現レベルを制御する様々なシスエレメントを含む)を含んでいてもよく、ベクターは、宿主細胞に応じて構築される。広範な発現制御配列(それに作動可能に連結したポリヌクレオチド配列の発現を制御する配列)のいずれかを、溶解素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を発現するために、これらのベクターに用いることができる。有用な制御配列としては、例えばSV40、CMV、ワクシニア、ポリオーマ又はアデノウイルスの初期又は後期プロモーター、lac系、trp系、TAC系、TRC系、LTR系、ファージλの主要オペレーター及びプロモーター領域、fd外被タンパク質の制御領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ又は他の解糖酵素のプロモーター、酸性ホスファターゼ(例えば、Pho5)のプロモーター、酵母接合因子のプロモーター、細菌における発現のための大腸菌プロモーター、並びに原核若しくは真核細胞、又はそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御することが知られる他のプロモーター配列、並びにそれらの様々な組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
広範な宿主細胞が本開示の溶解素ポリペプチドの発現に有用である。本開示の溶解素ポリペプチドの発現に適した宿主細胞の非限定的な例としては、大腸菌、シュードモナス属、バシラス属、ストレプトミセス属の株、酵母等の真菌、並びに組織培養物中のCHO、R1.1、B-W及びL-M細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(例えば、COS 1、COS 7、BSC1、BSC40及びBMT10)等の動物細胞、昆虫細胞(例えば、Sf9)、並びにヒト細胞及び植物細胞等の既知の真核生物及び原核生物宿主が挙げられる。発現宿主は、任意の既知の発現宿主細胞であってもよいが、好ましい実施形態では、発現宿主は大腸菌株の1つである。これらとしては、Top10(Thermo Fisher Scientific)、DH5oc(Thermo Fisher Scientific)、XL1-Blue(Agilent Technologies)、SCS110(Stratagene)、JM109(Promega)、LMG194(ATCC
)及びBL21(Thermo Fisher Scientific)等の市販の大腸菌株が挙げられるが、これらに限定されない。大腸菌を宿主系として使用することの利点は幾つかあり、最適な環境条件下で、その倍加時間が約20分間である急速な増殖動態(Sezonov et al., J. Bacteriol. 189 8746-8749 (2007))、容易に達成される高密度の培養物、外来性DNAによる容易かつ急速な形質転換等が挙げられる。プラスミド選択及び株選択を含む、大腸菌におけるタンパク質発現に関する詳細は、Rosano, G. and Ceccarelli, E., Front Microbiol., 5: 172 (2014)に詳細に論考されている。
【0109】
溶解素ポリペプチド及びそのベクターの効率的な発現は、最適発現シグナル(転写及び翻訳の両方のレベルで)、正確なタンパク質フォールディング及び細胞増殖特性等の様々な要因によって決まる。ベクターを構築する方法及び構築した組換えベクターを宿主細胞に形質導入する方法に関して、当該技術分野で既知の従来の方法を利用することができる。全てのベクター、発現制御配列及び宿主が本開示の溶解素ペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を発現するよう同様に良好に機能するわけではないことが理解されるが、当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく所望の発現を達成するために過度な実験なしに適当なベクター、発現制御配列及び宿主を選択することが可能である。幾つかの実施形態では、本発明者らは、発現レベルと発現されたポリペプチドの活性との間に相関を見出した。特に大腸菌発現系では、中程度の発現レベル(例えば、約1mg/L~10mg/L)で、大腸菌においてより高レベル(例えば、約20mg/L~約100mg/L)で発現されたものよりも高レベルの活性を有する溶解素ポリペプチドが産生された。場合によっては、高レベルでポリペプチドを発現する大腸菌により完全に不活性なポリペプチドが産生された。
【0110】
本開示の溶解素ポリペプチドは、限定されるものではないが、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロー
スクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーを含む既知の方法によって組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。高速液体クロマトグラフィーを溶解素ポリペプチド精製に用いることもできる。
【0111】
代替的には、本開示の溶解素ポリペプチドの作製に用いられるベクター系は、無細胞発現系であってもよい。様々な無細胞発現系が市販されており、限定されるものではないが、Promega、LifeTechnologies、Clonetech等から入手可能なものが挙げられる。
【0112】
タンパク質の可溶化及び精製(1つ以上のクロマトグラフ法を用いる)は、好適なイオン強度の一価塩、例えば300mM~500mMに相当するイオン強度のNaClを含有する十分に緩衝化された溶液中で行われる。
【0113】
固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)を初期精製工程として用いるのが好ましい。付加的な精製が必要とされる場合、サイズ排除クロマトグラフィー(ゲル濾過)を更なる工程に用いてもよい。必要に応じて、イオン交換クロマトグラフィーを最終工程として用いることができる。
【0114】
様々な誘導時間及び温度を用いて、タンパク質発現及び精製の最適条件を特定した。主な方法論は、以前の研究に記載されている(11、13、25)。簡潔に述べると、各発現クローンの複製をLB培地及びRM培地(Thermo Fisher Scientific)の両方において24℃~37℃で2時間~24時間にわたって誘導した。次いで、誘導された培養物を、ペレット化及びBugBuster(Millipore Sigma)を用いて破壊した後、可溶性タ
ンパク質発現の評定をSDS-PAGE及びクマシー染色によって行った。次いで、各溶解素の発現の最適条件を用いて作製をスケールアップした。精製を、Unicorn 6.3ソフトウェアを実行するAkta(商標) Pure FPLCシステムにより陰イオン交換カラム(HiTrap DEAE FF)、陽イオン交換カラム(HiTrap
Capto MMC)、疎水性相互作用カラム(HiTrap Phenyl FF)及び/又はサイズ排除カラム(HiLoad 16/600 SuperDex)のいずれかを用いて行った。場合によっては、Mg2+の添加を用いて溶解性を改善し、クロマトグラフィー樹脂への結合能を増大させた。精製中に、標的GN溶解素を、還元SDS Pageゲルを用いて分子量によって特定した。最後の精製工程後に、対象のGN溶解素を含有する画分をプールし、7.2~9.0の範囲のpH値(タンパク質のpIに応じて)を有する25mM Tris、150mM塩化ナトリウムにバッファー交換し、約2mg/mLまで濃縮した。濃度をNanoDropによって測定し、タンパク質を500μLアリコートで-80℃にて保管した。
【0115】
実施例5. 最小阻止濃度(MIC)の決定
シュードモナス・エルギノーサに対する各GN溶解素の最小阻止濃度を、米国臨床検査標準協議会(Clinical and Laboratory Standards Institute;CLSI)によって規定
される標準微量液体希釈参照法の修正を用いて決定した(26)。修正は、CAA培地又は25%ヒト血清を添加したCAAのいずれかによるミューラーヒントンブロス置換えに基づくものであった。
【0116】
実施例6. 最小バイオフィルム根絶濃度(MBEC)の決定
CF-301のMBECを、修正した微量液体希釈MIC法の変法を用いて決定した(27、28)。ここで、シュードモナス・エルギノーサ株ATCC 17647の新鮮コロニーをPBSに懸濁し(0.5マクファーランド単位)、TSBg(0.2%グルコースを添加したトリプシンソイブロス)で100倍希釈し、0.15mlアリコートとしてCalgary Biofilm Device(96個のポリカーボネートペグを備え
る蓋を有する96ウェルプレート;Innovotech)に添加し、37℃で24時間インキュベートした。バイオフィルムを洗浄し、TSBg中の2倍希釈系列のCF-301によって37℃で24時間処理した。全サンプルを三連で試験した。処理後に、ウェルを洗浄し、37℃で風乾し、0.05%クリスタルバイオレットで10分間染色した。染色後に、バイオフィルムを33%酢酸で脱染し、抽出されたクリスタルバイオレットのOD600を決定した。各サンプルのMBECが、クリスタルバイオレット定量化によって評定される、バイオフィルムのバイオマスの95%超を除去するのに必要とされる最小薬物濃度であった。
【0117】
実施例7. 抗生物質との相乗作用を試験するチェッカーボードアッセイ
チェッカーボードアッセイは、微量液体希釈によるMIC決定のためのCLSIの方法の修正に基づく(26、29)。チェッカーボードを、初めに横軸に沿って各ウェルが同量の2倍希釈した抗生物質を含む96ウェルポリプロピレンマイクロタイタープレートの列を作成することによって構築した。別のプレートに、縦軸に沿って各ウェルが同量の2倍希釈したGN溶解素を有する比較用の行を作成した。次いで、各列が一定量の抗生物質及びGN溶解素の2倍希釈物を含み、各行が一定量のGN溶解素及び抗生物質の2倍希釈物を含むように、GN溶解素及び抗生物質の希釈物を組み合わせた。これにより、各ウェルがGN溶解素と抗生物質との独自の組合せを含んでいた。細菌を、25%ヒト血清を含むCAA中で1×10CFU/mLの濃度で薬物の組合せに添加した。次いで、単独及び組合せでの各薬物のMICを、周囲空気中にて37℃で16時間の後に記録した。部分阻止濃度の総和(ΣFIC)を各薬物について算出し、最小のΣFIC値(ΣFICmin)を用いて相乗作用を決定した。ΣFICは、以下のように算出した:ΣFIC=FIC A+FIC B(ここで、FIC Aは、組合せでの各抗生物質のMIC/単独での各抗生物質のMICであり、FIC Bは、組合せでの各GN溶解素のMIC/単独での各GN溶解素のMICである)。組合せは、ΣFICが0.5以下である場合に相乗的、ΣFICが0.5超~1未満である場合に強く相加的、ΣFICが1~2未満である場合に相加的、ΣFICが2以上である場合に拮抗的とみなされる。
【0118】
実施例8. GN溶解素の溶血活性のアッセイ
GN溶解素の溶血活性を、ヒト赤血球の溶解によって放出されるヘモグロビンの量として測定した(30)。簡潔に述べると、ヘパリンの入ったポリカーボネートチューブ内のプールした健常ドナー(BioreclamationIVT)から得られた3mlの新鮮ヒト血液細胞(
hRBC)を1000×gにて4℃で5分間遠心分離した。得られた赤血球をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液(pH7.2)で3回洗浄し、30 PBSに再懸濁した。50μl容量の赤血球溶液を2倍希釈範囲(128μg/mL~0.25μg/mL)の50μlの各GN溶解素(PBS中)と共に37℃で1時間インキュベートした。無傷赤血球を1000×gにて4℃で5分間の遠心分離によってペレット化し、上清を新たな96ウェルプレートに移した。ヘモグロビンの放出を、570nmでの吸光度を測定することによってモニタリングした。陰性対照として、PBS中のhRBCを0.1%Triton X-100で上記のように処理した。
【0119】
実施例9. GN溶解素活性の時間-死滅アッセイ
シュードモナス・エルギノーサの一晩培養物を新鮮CAA培地で50倍希釈し、撹拌しながら37℃で2.5時間増殖させた。次いで、対数期細菌をペレット化し、1/5培養液量の25mM HEPES(pH7.4)に再懸濁した後、0.5のマクファーランド値に相当する光学密度に最終調整した。次いで、調整した培養物を25mM HEPES(pH7.4)又はCAA/HuSのいずれかで50倍希釈し、GN溶解素を10μg/mLの最終濃度で添加した。溶解素を添加しない対照培養物を含めた(すなわち、バッファー対照)。全ての処理物(treatments)を通気しながら37℃でインキュベートした。溶解素(又はバッファー対照)の添加前の時点、並びにその後1時間及び3時間の間隔を
置いた時点で、培養サンプルをCAA寒天プレート上での定量プレーティングのために取り出した。
【0120】
in vivoでの計画実験
以下のような本ポリペプチドのin vivo活性を試験する1つ以上の実験が現在進行中である。
【0121】
A. 急性致死的菌血症のマウスモデルにおけるパイロットPKスクリーニング及び有効性
全身曝露を有するGN溶解素を特定するために、単回IV注射として投与されるGN溶解素で処理したCD1マウスにおいてPKスクリーニングを行う。血液PKプロファイルを、最大10個のGN溶解素について、マウス血清において適格の研究グレードの生物学的分析アッセイを用いて分析する。適切なPKプロファイルを有する複数のGN溶解素が特定されることが予想される。1を超えるAUC/MIC濃度を達成する血液曝露を示す候補を全身感染モデルにおいて試験する。このモデルについては、シュードモナス・エルギノーサ株(PAO1及び他の臨床分離株)をブタ胃ムチンに再懸濁し、対照マウスにおいて24時間~48時間にわたる完全罹患率及び死亡率をもたらす接種材料での腹腔内投与によってCD1マウスに投与する。致死的チャレンジの2時間後に、マウスにビヒクル又はGN溶解素を外側尾静脈への静脈内(IV)注射によって投与する。罹患率及び死亡率を72時間にわたって評定する。適切な投与濃度では、GN溶解素で処理したマウスがビヒクル対照と比較して罹患率及び死亡率の低下を示すことが予想される。研究が抗生物質の同時投与を伴っていてもよい。生存データを、GraphPad prismを用いるカプランマイヤー生存分析によって分析し、50%有効濃度(EC50)を各分子について算出する。in vivo活性を有する複数のGN溶解素が特定されることが予想される。
【0122】
B. 確立された侵襲的感染のマウスモデルにおけるGN溶解素の有効性
本実験、並びに肺及び腎臓等の他のマウス感染モデルの目的は、これらのモデルにおける有効性データを生成することである。この下位目的(sub aim)で提唱された有効性モ
デルは概して、細菌による組織(大腿、肺又は腎臓)でのマウス感染を利用する。溶解素による処理後に、組織における細菌負荷(組織1g当たりのCFU)を実験の終了時に定量化し、処理のロバスト性を評定する。加えて、これらのモデルの各々を用いて、PK/PD指数及び有効性の大きさ、例えばAUC/MICを規定することができる。このため、これらのモデルを用いて、単独での又は抗生物質と組み合わせた、肺感染のマウスモデルにおける代表的なGN抗シュードモナス溶解素の有効性を評価し、更なるin vivo試験及び開発に最良のGN溶解素候補を決定する。アシネトバクター・バウマンニを用いて同様のモデルを確立し、本溶解素の有効性の試験に用いることができる。
【0123】
B.1 マウス好中球減少性大腿感染及び肺感染モデル
大腿感染モデル
第1のモデルを確立するために、CD-1マウス(n=12)を、好中球数の99%超の減少(-4日目の150mg/kg及び-1日目の100mg/kg)をもたらす投与計画に従って腹腔内投与される20mg/mLシクロフォスファミドの投与によって好中球減少状態にする。大腿感染を、免疫抑制剤の2回目の投与の24時間後にシュードモナス・エルギノーサ(3×10cfu又は1×10cfu又は3×10cfu又は1×10cfu/大腿)の適切な接種材料の両方の外側大腿筋への筋肉内(IM)注射によって確立する。マウスは、両方の外側大腿筋への筋肉内注射による吸入麻酔下で感染させる。各大腿に、およそ1.4×10CFUのアシネトバクター・バウマンニNCTC
13301(及び/又は等量のシュードモナス・エルギノーサ株)を与えることができる。しかし、試験により適切であると示される場合に接種材料の量の調整を行ってもよい
【0124】
4匹のマウスの群(6つ、ビヒクルのみ(最終群))に感染の2時間後、6時間後及び10時間後に試験GN溶解素又はビヒクル又は対照溶解素を静脈内(iv)注射によって投与する。感染の2時間後に、4匹の動物の対照群を、過剰量のペントバルビトンを用いて人道的に安楽死させ、処理前対照群(開始)を得る。感染の16時間後に、残り全ての群をペントバルビトンによって人道的に安楽死させる。各動物から両大腿を切除し、個別に秤量する(2回の独立した評価とみなす)。試験する溶解素は、血液マトリックスの存在下で有望な特性、すなわち実質的な溶菌活性及び実質的な活性の維持を有する天然及び修飾溶解素を含み得る。本実験及び本明細書で詳述する他の実験において試験する投与量範囲は、0.01mg/kg~500mg/kgの広い範囲に含まれるが、上限値は毒性に依存し、下限値は固有活性に応じてより低い可能性がある。試験する溶解素の例としては、GN108、GN121、GN123及びGN156が挙げられる。
【0125】
個々の大腿組織サンプルを氷冷滅菌リン酸緩衝生理食塩水中でホモジナイズする。次いで、大腿ホモジネートをCLED寒天上で定量的に培養し、37℃で24時間インキュベートした後、コロニーを数える。溶解素が細菌コロニーの大幅な減少又は除去をもたらすことが予想される。
【0126】
マウス肺感染モデル
1処理当たり最大8匹の麻酔した(100mg/kgケタミン/6mg/kgキシラジンの混合物のIP注射)マウスの群を各鼻孔への20μlの接種材料の鼻腔内注入(鼻孔間に5分間)によって感染させ、感染後約10分間にわたって立位に維持する。適切な接種材料の強度及び量は、上記のように予め決定される。
【0127】
接種材料濃度は、シュードモナス・エルギノーサATCC 27853については約2.5×10cfu/ml(1.0×10cfu/肺)、又はアシネトバクター・バウマンニNCTC 13301については約8.8×10cfu/ml(3.5×10cfu/肺)である。溶解素(例えば、前述の実験において特定される溶解素)を、同じ投与経路及び投与指針を用いて投与し、大腿モデルのように計数のために肺を切除し、調製する。37℃で24時間のインキュベーション後にコロニーを数える。有効性をマウスの体重及び肺ホモジネートの細菌負荷の点で評定する。細菌コロニーの実質的な減少又は除去によって測定されるように、溶解素が感染を緩和する上で十分に機能することが予想される。
【0128】
B.2 好中球減少マウス肺感染モデル
好中球減少BALB/cマウスに、肺感染を確立するのに十分な接種材料を含有するシュードモナス・エルギノーサ細菌を麻酔下で鼻腔内注入により接種する。4匹のマウスの群(6つ、ビヒクルのみ(最終群))に感染の2時間後、6時間後及び10時間後にGN溶解素、ビヒクル又は対照溶解素を皮下(SC)注射によって投与する。感染の2時間後に、4匹の動物の対照群を、過剰量のペントバルビトンを用いて人道的に安楽死させ、処理前対照群(開始)を得る。感染の16時間後に、残り全ての群をペントバルビトンによって人道的に安楽死させる。動物の体重を測り、各動物から両肺を切除し、個別に秤量する。溶解素及び投与は、上記と同じにすることができる。
【0129】
個々の肺組織サンプルを氷冷滅菌リン酸緩衝生理食塩水中でホモジナイズする。次いで、大腿ホモジネートをCLED寒天上で定量的に培養し、37℃で24時間インキュベートした後、コロニーを数える。処理の有効性を体重及び細菌負荷の点で評定する。
【0130】
1処理当たり最大8匹の麻酔した(100mg/kgケタミン/6mg/kgキシラジ
ンの混合物のIP注射)マウスの群を各鼻孔へのシュードモナス・エルギノーサ接種材料の鼻腔内注入(鼻孔間に5分間)によって感染させ、感染後約10分間にわたって立位に維持する。シクロフォスファミドを-4日目に200mg/kg及び-1日目に150mg/kgで皮下投与することでマウスを予め免疫抑制する。感染は、第2の免疫抑制投与の24時間後に行う。
【0131】
開始接種材料濃度は、シュードモナス・エルギノーサATCC 27853については約2.5×10cfu/ml(1.0×10cfu/肺)であり得る。約1log10cfu/g(肺)の非処理マウスの細菌負荷の増大をもたらす目的で接種材料の調整を行ってもよい。下記の生存研究については、24時間~72時間で死亡を引き起こす接種材料を選択する。
【0132】
次いで、溶解素を鼻腔内投与し、マウスを安楽死させ、体重を測り、肺を摘出し、秤量し、大腿モデルのように計数のために肺を切除し、調製する。37℃で24時間のインキュベーション後にコロニーを数える。上記と同じ溶解素及び投与を用いることができる。溶解素は、5ml/kgで静脈内投与される。
【0133】
関連実験では、グラム陰性細菌に対して活性を有する抗生物質の最適値以下の用量を選択し、溶解素と共に閾値下レベルで用いる。適切な閾値下レベルは、感染マウスを様々な用量の抗生物質で処理することによって確立することができ、この用量は最小有効用量未満、最小有効用量及び最小有効用量超である。対照マウスは、様々な用量のビヒクル単独で処理する。溶解素処理の代わりとなる1つのビヒクル及び抗生物質の代わりとなる別のビヒクルがある。試験する各溶解素について40匹のマウスを用いる(1群当たり5匹)。
【0134】
イミペネムが抗生物質である場合、好適な閾値下用量は、10mg/kg~100mg/kgとなる可能性が高く(より一般には、閾値下又は最適値以下の用量は、細菌負荷の1log又は2logの低下をもたらす用量であり得る)、例えば本実験及び組合せ(抗生物質+溶解素)実験では5ml/kgで皮下又は静脈内に投与される。
【0135】
組合せ実験については、抗生物質(例えば、イミペネム)の用量が試験される最大の閾値下用量であることが企図される。溶解素の適切な用量は、組合せ処理において異なる用量の溶解素を試験し、どこで相乗効果が生じるかを調べることによって決定する。次いで、溶解素及び抗生物質の量の最適なセットを選択する。溶解素及び抗生物質の第1の処理を感染の2時間後に行う。第2の抗生物質処理を感染の6時間後に行う。組織を感染の9時間後に採取する。
【0136】
同様の研究を、同じマウス肺感染モデルを用いて行うが、マウス生存のみを評定する。感染マウスに溶解素(又はビヒクル若しくは対照溶解素)を感染の24時間後に投与する。3つの異なる用量の各溶解素を用いることが企図される。溶解素投与の6時間後にイミペネム(又はビヒクル)を投与する。感染の72時間後に実験を終了する。生存実験に1群当たり7匹のマウス、すなわち試験する各溶解素について63匹のマウスを用いることが企図される。組合せを投与した場合に生存率(%)が優れていることが予想される。
【0137】
C. マウス感染モデルにおけるPK/PD分析
有効性と最も密接に関連するPK/PD変量(例えば、Cmax/MIC、AUC/MIC又は%時間/MIC)を描く抗感染薬を用いた動物実験は、臨床的成功にとって高度に予測的である(31)。用量分割を用いて、有効性と関連するPK/PDパラメーターを決定する。単一の総用量を1日1回(q24h)、1日2回(q12h)又は1日4回(q6h)の投与に分割することで、一定のAUCを維持した上でCmax及び遊離薬物
時間>MIC(fT>MIC)の複数の値を得ることができる。複数回用量の分割は、有効性エンドポイントと比較した場合に、有効性に必要とされるPK指数及び大きさとしてのCmax/MIC、fT>MIC及びAUC/MICの識別を可能にする独自の曝露プロファイルを生じる。
【0138】
上記で特定された1つ以上のマウス感染モデルにおいてロバストな活性を有するGN溶解素にPK/PD分析を行う。PK研究は、複数のPKプロファイルを生成するように行われ、Cmax/MIC、AUC/MIC及びfT>MICの範囲をカバーするようにモデル化される。用量分割研究を上記のような肺有効性モデル(マウス、ラット又はウサギ)において行う。組織細菌負荷をPDエンドポイントとして利用し、CFU/g(組織)を異なるPK/PDパラメーターの関数としてプロットすることによってデータを分析する。線形回帰分析により、いずれのPK/PDパラメーターが有効性に重要であるかを決定する。これらのデータを用いて、非臨床活性の用量を報告する。
【0139】
PK研究を行う方法の1つは、以下の通りである。
【0140】
【表10】
【0141】
表10に示す時点で、マウスを安楽死させ、1時点当たり3匹のマウスの群から血液サンプルを心穿刺により採取する。分離した血漿サンプルを2つのアリコートに分ける。血液採取後に、3つの気管支肺胞洗浄サンプル(PBS)を気管に作られた狭い横開口部から採取する。3つのBALサンプルを合わせ、遠心分離して細胞残屑を除去する。BAL上清を2つのアリコートに分ける。血漿及びBALの1つのサンプルを溶解素含量及び細菌負荷について更に試験する。第2のサンプルを尿素含量について分析し、BALの採取時の上皮被覆液(epithelial lining fluid;ELF)の希釈率を算出する。
【0142】
D. in vivoでの耐性の発現のモニタリング
耐性を発現する可能性を特定するために、マウス有効性研究からのin vivoホモジネートをMIC分析に供する。MICの2倍を超える増大が観察された場合、細菌をプレーティングし、全ゲノムシークエンシングのためにコロニーを単離する。
【0143】
実施形態
【0144】
A. GN147、GN146、GN156、GN92、GN54、GN201、GN202、GN121、GN94、GN200、GN204、GN205の1つ以上からなる群から選択される単離溶解素ポリペプチド、又は溶解素活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物であって、前記溶解素ポリペプチド又はフラグメント又は変異体が、シュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム
陰性細菌の少なくとも1つの他の種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させるのに効果的な量で存在する、医薬組成物。
【0145】
B. 有効量のGN3、GN13、GN17、GN9、GN10、GN105、GN108、GN123、GN150、GN203の1つ以上からなる群から選択される単離溶解素ポリペプチド、又は溶解素活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物であって、前記溶解素ポリペプチドがシュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の少なくとも1つの他の種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させるのに効果的な量で存在する、医薬組成物。
【0146】
C. 溶液、懸濁液、エマルション、吸入用粉末、エアロゾル又はスプレーである、実施形態A又はBに記載の医薬組成物。
【0147】
D. グラム陰性細菌の治療に適した1つ以上の抗生物質を更に含む、実施形態Bに記載の医薬組成物。
【0148】
E. 実施形態A若しくはBに記載の溶解素ポリペプチドをコードする核酸分子を含む単離ポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドの相補的配列を含むベクターであって、前記コードされる溶解素ポリペプチドがシュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の少なくとも1つの他の種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させる、ベクター。
【0149】
F. 実施形態A又はBに記載のポリペプチドのアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチドをコードする核酸を含む組換え発現ベクターであって、前記コードされる溶解素ポリペプチドがシュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の少なくとも1つの他の種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させる特性を有し、前記核酸が異種プロモーターに作動可能に連結する、組換え発現ベクター。
【0150】
G. 実施形態E又はFに記載のベクターを含む宿主細胞。
【0151】
H. 核酸配列がcDNA配列である、実施形態E又はFに記載の組換えベクター。
【0152】
I. GN147、GN146、GN156、GN92、GN54、GN201、GN202、GN121、GN94、GN200、GN204、GN205からなる群から選択される溶解素ポリペプチド、又は溶解素活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体をコードする核酸分子を含む単離ポリヌクレオチドであって、前記溶解素ポリペプチドがシュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の少なくとも1つの他の種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させる、単離ポリヌクレオチド。
【0153】
J. cDNAである、実施形態Iに記載のポリヌクレオチド。
【0154】
K. グラム陰性細菌の少なくとも1つの種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させる方法であって、前記細菌と、シュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の少なくとも1つの他の種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させるのに効果的な量のGN147、GN146、GN156、GN92、GN54、GN201、GN202、GN121、GN94、GN20
0、GN204、GN205、GN3、GN13、GN17、GN9、GN10、GN105、GN108、GN123、GN150、GN203の1つ以上からなる群から選択される溶解素ポリペプチド、又は溶菌活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体を含有する医薬組成物とを接触させることを含む、方法。
【0155】
L. シュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の1つ以上の付加的な種からなる群から選択されるグラム陰性細菌によって引き起こされる細菌感染を治療する方法であって、細菌感染と診断された、そのリスクがある又はその症状を示す被験体に、シュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の少なくとも1つの他の種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させるのに効果的な量のGN147、GN146、GN156、GN92、GN54、GN201、GN202、GN121、GN94、GN200、GN204、GN205、GN3、GN13、GN17、GN9、GN10、GN105、GN108、GN123、GN150、GN203の1つ以上からなる群から選択される溶解素ポリペプチド、又は溶解素活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体を含有する組成物を投与することを含む、方法。
【0156】
M. グラム陰性細菌の少なくとも1つの種がシュードモナス・エルギノーサ、クレブシエラ属種、エンテロバクター属種、大腸菌(Escherichia coli)、シトロバクター・フロインディイ(Citrobacter freundii)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、エルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)及び野兎病菌(Franciscella tulerensis)からなる群から選択される、実施形態Lに記載の方法。
【0157】
N. 前記グラム陰性細菌感染がシュードモナス・エルギノーサによって引き起こされる感染である、実施形態Lに記載の方法。
【0158】
O. 被験体におけるシュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の1つ以上の付加的な種からなる群から選択されるグラム陰性細菌によって引き起こされる局所又は全身病原性細菌感染を治療する方法であって、被験体に、シュードモナス・エルギノーサ及び任意に少なくとも1つの他のグラム陰性細菌の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させるのに効果的な量のGN147、GN146、GN156、GN92、GN54、GN201、GN202、GN121、GN94、GN200、GN204、GN205、GN3、GN13、GN17、GN9、GN10、GN105、GN108、GN123、GN150、GN203の1つ以上からなる群から選択される溶解素ポリペプチド、又は溶解素活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体を含有する組成物を投与することを含む、方法。
【0159】
P. 細菌感染を予防又は治療する方法であって、細菌感染と診断された、そのリスクがある又はその症状を示す被験体に、有効量のGN147、GN146、GN156、GN92、GN54、GN201、GN202、GN121、GN94、GN200、GN204、GN205、GN3、GN13、GN17、GN9、GN10、GN105、GN108、GN123、GN150、GN203の1つ以上からなる群から選択される溶解素ポリペプチド、又は溶菌活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体を含有する第1の有効量の組成物と、グラム陰性細菌感染の治療に適した第2の有効量の抗生物質との組合せを同時投与することを含む、方法。
【0160】
Q. 前記抗生物質がセフタジジム、セフェピム、セフォペラゾン、セフトビプロール、
シプロフロキサシン、レボフロキサシン、アミノグリコシド、イミペネム、メロペネム、ドリペネム、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ピペラシリン、チカルシリン、ペニシリン、リファンピシン、ポリミキシンB及びコリスチンの1つ以上から選択される、実施形態Pに記載の方法。
【0161】
R. グラム陰性細菌感染の治療に適した抗生物質の有効性を高める方法であって、前記抗生物質をGN147、GN146、GN156、GN92、GN54、GN201、GN202、GN121、GN94、GN200、GN204、GN205、GN3、GN13、GN17、GN9、GN10、GN105、GN108、GN123、GN150、GN203の1つ以上からなる群から選択される1つ以上の溶解素ポリペプチド、又は溶菌活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体と組み合わせて同時投与することを含み、組合せの投与が、グラム陰性細菌の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させる上で、前記抗生物質又は前記溶解素ポリペプチド若しくはその活性フラグメントのいずれか個別の投与よりも効果的である、方法。
【0162】
S. GN147、GN146、GN156、GN92、GN54、GN201、GN202、GN121、GN94、GN200、GN204、GN205からなる群から選択される単離溶解素ポリペプチド、又は溶解素活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体であって、該溶解素ポリペプチドがシュードモナス・エルギノーサ及び任意にグラム陰性細菌の少なくとも1つの他の種の増殖を阻害するか、又はその数を減少させるか、又はそれを死滅させる、単離溶解素ポリペプチド又はフラグメント又は変異体。
【0163】
T. GN3、GN9、GN10、GN13、GN17、GN105、GN108、GN123、GN150及びGN203からなる群から選択されるグラム陰性天然溶解素を含む溶解素ポリペプチド、又は溶菌活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体であって、該天然溶解素又はフラグメントが非荷電アミノ酸残基による1つ~3つの荷電アミノ酸残基の置換によって任意に修飾されており、修飾された天然溶解素又はフラグメントが溶菌活性を保持する、溶解素ポリペプチド又はフラグメント又は変異体。
【0164】
U. GN2、GN4、GN14、GN43及びGN37からなる群から選択されるグラム陰性天然溶解素を含む溶解素ポリペプチド、又は溶菌活性を有するそのフラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体であって、該天然溶解素又は変異体又はフラグメントが非荷電アミノ酸残基による1つ~3つの荷電アミノ酸残基の置換によって修飾されており、修飾された天然溶解素又はフラグメントが溶菌活性を保持する、溶解素ポリペプチド又はフラグメント又は変異体。
【0165】
V. 前記溶解素ポリペプチドがGN156、GN121、GN108及びGN123の1つ以上、又はその活性フラグメント、又は溶菌活性を有し、前記溶解素ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体からなる群から選択される、実施形態A又はBに記載の医薬組成物。
【0166】
W. 前記細菌がバイオフィルム中にあり、方法により該バイオフィルムの破壊がもたらされる、実施形態Kに記載の方法。
【0167】
引用文献

【表11】
【配列表】
2024010053000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-11-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【外国語明細書】