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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100537
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】義手
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/54 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
A61F2/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004609
(22)【出願日】2023-01-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)NEDO 2019 課題解決型福祉用具実用化開発支援事業「触覚フィードバック付サイボーグ義手の開発」
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横井 浩史
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 達也
(72)【発明者】
【氏名】山野井 佑介
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 佳子
(72)【発明者】
【氏名】井上 祐希
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA12
4C097BB02
4C097BB09
4C097CC01
4C097CC12
4C097CC16
4C097TA03
4C097TB01
4C097TB05
(57)【要約】
【課題】母指関節が残存しない者に対しても適用可能で、且つ高効率に動作可能な義手を提供する。
【解決手段】リンク機構6は、ベース側リンク16と第1リンク17と第2リンク18とを有する。第1リンク17と第2リンク18とは、ベース側リンク16が一方向Aへ回転することにより、第1義指11と第2義指12とを閉方向へ傾動させ、ベース側リンク16が他方向へ回転することにより、第1義指11と第2義指12とを開方向へ傾動させる。第1義指11と第2義指12とが最も閉じた閉状態で、第1義指11の先端部と第2義指12の先端部とは近接または接触する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指が欠損した上肢に装着される義手であって、
前記上肢に移動不能に支持されるベースと、
前記ベースに傾動可能に支持される第1義指と、
前記ベースに傾動可能に支持される第2義指と、
前記第1義指の傾動と前記第2義指の傾動とを連動させて、前記第1義指と前記第2義指とを開閉させるリンク機構と、を備え、
前記リンク機構は、
前記ベースに回転自在に支持されるベース側リンクと、
一端側が前記ベース側リンクに回転自在に連結され、他端側が前記第1義指に回転自在に連結される第1リンクと、
一端側が前記ベース側リンクに回転自在に連結され、他端側が前記第2義指に回転自在に連結される第2リンクと、を有し、
前記第1リンクと前記第2リンクとは、前記ベース側リンクが一方向へ回転することにより、前記第1義指と前記第2義指とを閉方向へ傾動させ、前記ベース側リンクが他方向へ回転することにより、前記第1義指と前記第2義指とを開方向へ傾動させ、
前記第1義指と前記第2義指とが最も閉じた閉状態で、前記第1義指の先端部と前記第2義指の先端部とは近接または接触する
ことを特徴とする義手。
【請求項2】
請求項1に記載の義手であって、
前記リンク機構は、
前記ベースに回転自在に支持され、アクチュエータによって回転駆動される主動リンクと、
一端側が前記主動リンクに回転自在に連結され、他端側が前記第2義指に回転自在に連結される従動リンクと、を含み、
前記主動リンクと前記従動リンクとは、前記第2義指の傾動範囲において前記閉状態で特異点に最も近付く倍力機構を構成する
ことを特徴とする義手。
【請求項3】
請求項2に記載の義手であって、
前記主動リンクは、前記ベース側リンクであり、
前記従動リンクは、前記第2リンクである
ことを特徴とする義手。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の義手であって、
前記従動リンクは、粘弾性を有する
ことを特徴とする義手。
【請求項5】
請求項1に記載の義手であって、
前記リンク機構は、一端側が前記ベースに回転自在に支持され、他端側が前記第2義指に回転自在に連結される形態可変リンクを有し、
前記形態可変リンクの前記一端側は、アクチュエータによって回転駆動され、
前記形態可変リンクは、粘弾性を有し、外力を受けていない無負荷状態で前記一端側と前記他端側との間でL状に曲折または湾曲する
ことを特徴とする義手。
【請求項6】
請求項1に記載の義手であって、
前記第1義指は、第1回転軸を中心として傾動可能に前記ベースに支持され、
前記第2義指は、第2回転軸を中心として傾動可能に前記ベースに支持され、
前記第1回転軸と前記第2回転軸とは、ねじれの位置に配置される
ことを特徴とする義手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、義手に関する。
【背景技術】
【0002】
先天的事由または事故等の後天的事由による手掌部の欠損者や形成不全者に対し、手の形態や機能を復元する手先具を備えた義手を装着することが行われる。
【0003】
例えば特許文献1には、スライダ軸とスライダとからなるスライダ機構を備え、母指CM関節の内外転および屈伸によって、母指側リンクと4指側リンクを駆動させて摘み動作を行うことが可能な摘まみ機構を有する手先具を備えた義手が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-146839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された摘まみ機構を有する義手によれば、義手を装着した者の意図に従い、母指関節を4指側に向かって回動および屈伸させることにより、母指に対して4指を駆動して摘まみ動作を行うことができる。しかしながら、特許文献1の摘まみ機構は、母指関節が残存しない者に対して適用することができない。また、特許文献1の摘まみ機構は、スライダ軸がスライダの長穴に対して摺動する滑り対偶で あることから、摩擦による動作の渋りや摩耗などが生じる恐れがあり、その対策が必要になる。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、母指関節が残存しない者に対しても適用可能で、且つ高効率に動作可能な義手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、代表的な本発明の義手の一つは、
指が欠損した手に装着される義手であって、
上肢に対して移動不能に支持されるベースと、
前記ベースに傾動可能に支持される第1義指と、
前記ベースに傾動可能に支持される第2義指と、
前記第1義指の傾動と前記第2義指の傾動とを連動させて、前記第1義指と前記第2義指とを開閉させるリンク機構と、を備え、
前記リンク機構は、
前記ベースに回転自在に支持されるベース側リンクと、
一端側が前記ベース側リンクに回転自在に連結され、他端側が前記第1義指に回転自在に連結される第1リンクと、
一端側が前記ベース側リンクに回転自在に連結され、他端側が前記第2義指に回転自在に連結される第2リンクと、を有し、
前記第1リンクと前記第2リンクとは、前記ベース側リンクが一方向へ回転することにより、前記第1義指と前記第2義指とを閉方向へ傾動させ、前記ベース側リンクが他方向へ回転することにより、前記第1義指と前記第2義指とを開方向へ傾動させ、
前記第1義指と前記第2義指とが最も閉じた閉状態で、前記第1義指の先端部と前記第2義指の先端部とは近接または接触することにより達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、母指関節が残存しない者に対しても適用可能で、且つ高効率に動作可能な義手を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態にかかる義手の開状態を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1の義手の閉状態を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、第1実施形態にかかる義手をモデル化して示す図である。
図4図4は、第1実施形態にかかる義手をモデル化して示す他の図である。
図5図5は、第2実施形態の変形例にかかる義手の開状態を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、第3実施形態にかかる義手をモデル化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明にかかる第1実施形態を、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、第1実施形態にかかる義手1の開状態を模式的に示す斜視図、図2は、図1の義手1の閉状態を模式的に示す斜視図、図3は、第1実施形態にかかる義手1をモデル化して示す図、図4は、第1実施形態にかかる義手1をモデル化して示す他の図である。義手1が装着される上肢ULは、左手側であり、全ての指が欠損し、手掌部PMおよび前腕部FAが残存しているものとする。上肢ULは右手側であってもよく、母指および示指以外の一部または全部の指が残存していてもよい。また、手掌部PMが欠損していてもよい。
【0011】
図1に示すように、義手1は、ソケット2と、ソケット2に取り付けられる手先具3とによって構成される。手先具3は、ベース4と、アクチュエータとしての電動モータ5と、リンク機構6と、母指に相当する第1義指11と、示指に相当する第2義指12と、中指に相当する第3義指13と、環指に相当する第4義指14と、小指に相当する第5義指15と、カバー部材7とを備える。カバー部材7は、ベース4、電動モータ5、リンク機構6、第1義指11、第2義指12、第3義指13、第4義指14および第5義指15を覆う。なお、カバー部材7は、外表面が柔軟であり、リンク機構6および義指11~15の移動を阻害せず、且つ手先具3の内部構造を保護する機能を備える。
【0012】
第2義指12と第3義指13と第4義指14と第5義指15とは、互いに並行し、基端側が連結されて一体化した櫛歯状の部材である。なお、第3義指13、第4義指14および第5義指15の一部または全部を第2義指12と一体化せず、第2義指12から分離してもよい。
【0013】
ソケット2は、手掌部PMに対して移動不能に装着される。ソケット2を前腕部FAまで延長し、前腕部FAに対して移動不能に装着してもよい。また、手掌部PMが欠損している場合には、前腕部FAにソケット2を装着すればよい。
【0014】
ベース4は、ソケット2に対して固定される。すなわち、ベース4は、ソケット2を介して上肢ULに移動不能に支持される。
【0015】
第1義指11の基端側は、第1回転軸8を中心として傾動可能にベース4に支持される。第2義指12の基端側は、第2回転軸9を中心として傾動可能にベース4に支持される。第1義指11および第2義指12の傾動範囲は、各々の開位置と閉位置との間に設定され、第1義指11および第2義指12が開方向へ傾動することにより、図1に示すように、両者の先端部が互いに離れて第1義指11と第2義指12とが開く。第1義指11および第2義指12が閉方向へ傾動することにより、図2に示すように、両者の先端部が互いに近付いて第1義指11と第2義指12とが閉じる。第1義指11と第2義指12とが最も閉じた閉状態では、第1義指11の先端部と第2義指12の先端部とが近接または接触する。第1義指11および第2義指12が閉方向へ傾動することにより、第1義指11の先端部と第2義指12の先端部との間で物を挟む指尖摘まみ動作を行うことができる。
【0016】
図3に示すように、第1回転軸8と第2回転軸9とはねじれの位置に配置されている(偏心対立配置)。偏心対立配置とすることにより、第1義指11および第2義指12が開位置へ傾動した開状態において、第1義指11と第2義指12とを同一平面状に配置することが可能となる。これにより、開状態の掌側が平坦となり、掌側で物体を支持する際に第1義指11が障碍とならず、面積の広い物体を支えることができる。
【0017】
図1図3に示すように、リンク機構6は、ベース側リンク16と、第1リンク17と、第2リンク18とを有する。ベース側リンク16の一端側は、ベース4に回転自在に支持される。第1リンク17の一端側は、第1一端接続部21を介してベース側リンク16に回転自在に連結され、他端側は、第1他端接続部22を介して第1義指11に回転自在に連結されている。第2リンク18の一端側は、第2一端接続部23を介してベース側リンク16に回転自在に連結され、他端側は、第2他端接続部24を介して第2義指12に回転自在に連結されている。これらの接続部21,22,23,24は、例えば自在継手(ユニバーサルジョイント)のように、連結する2つの部材間において任意な方向への角度変化を許容する構成を有する。なお、図では第1リンク17および第2リンク18を直線状に表示しているが、第1リンク17および第2リンク18の形状は直線状に限定されず、曲線状であってもよい。また、図3では、第1一端接続部21を、第1ジョイント25と第2ジョイント26とによって示し、第2一端接続部23を、第1ジョイント25と第3ジョイント27とによって示している。
【0018】
電動モータ5は、ベース4に固定され、ベース側リンク16は、電動モータ5によって回転駆動される。本実施形態では、ベース側リンク16が主動リンクとして機能し、第2リンク18が従動リンクとして機能する。第1リンク17と第2リンク18とは、ベース側リンク16が一方向(図1中の矢印A方向)へ回転することにより、第1義指11と第2義指12とを閉方向へ傾動させ、ベース側リンク16が他方向(矢印A方向の逆方向)へ回転することにより、第1義指11と第2義指12とを開方向へ傾動させる。
【0019】
ベース側リンク16と第2リンク18とは、トグルクランプの原理を引き側で用いた倍力機構を構成する。ピンチ力(第1義指11の先端部と第2義指12の先端部との間に挟んだ物体を第2義指12の先端部が押す力)は、開状態が最も弱く(図3(a))、開状態から閉方向へ傾動することによって徐々に増大し(図3(b))、閉状態で最も強くなる(図3(c))。ピンチ力は、第2義指12が傾動範囲を逸脱し、ベース側リンク16と第2リンク18とが閉状態をわずかに超えた特異点において無限大となる。第2義指12の閉位置は特異点の近傍に設定され、閉状態で特異点に最も近付く。このため、小型で出力トルクが小さい電動モータ5であっても、十分なピンチ力を得ることができる。
【0020】
手掌部PMが残存する手指の形成不全では、リンク機構6や電動モータ5などのリンク機構部品を設置するスペースが大きく制限されるが、電動モータ5を小型化することによって、リンク構成部品の設置スペースが確保し易くなる。また、リンク構成部品を設置してもスペースに余裕がある場合には、第1義指11および第2義指12以外の義指を独立して駆動するための部品(例えば他の電動モータ)を設置することが可能となる。
【0021】
本実施形態によれば、リンク機構6を用いて動力伝達を行っているので、滑り対偶に比べ摩擦損失が少なく、高効率の動作を実現できるとともに、摩耗による部品の消耗を抑制することができる。また、母指に相当する第1義指11がベース4に傾動可能に支持されるので、母指関節が残存しない者に対しても適用することができる。
【0022】
また、第1義指の基端部と第2義指の基端部とに傘歯車をそれぞれ設け、2つの傘歯車を噛合させて第1義指と第2義指とを連動させる歯車機構の場合、第1義指や第2義指に作用する外力の増大により傘歯車同士の噛合位置がずれて、第1義指と第2義指との相対位置が初期状態から変わってしまうおそれがある。一方、本実施形態では、リンク機構6によって第1義指11と第2義指12とを連動させるので、第1義指11と第2義指12との相対位置が初期状態から変わることがなく、安定した動作を行わせることができる。
【0023】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態の第2リンク18を粘弾性を有する材料によって形成する。第2リンク18が粘性を有しているので、ベース4と第2義指12との間の振動の伝達を第2リンク18によって抑制することができる。また、第2リンク18が弾性を有しているので、摘まみ動作等によって第2義指12へ入力する外力(衝撃)を第2リンク18によって吸収することができ、リンク機構6が破損し難い。さらに、第2リンク18が弾性を有しているので、手掌部PMに残存する機能を有効活用する能動義手に適用することができる。
【0024】
なお、図5は、第2実施形態の変形例にかかる義手1の開状態を模式的に示す斜視図である。この変形例では、ベース側リンク16を駆動せず、第2リンク18を粘弾性を有する材料で形成せずに、リンク機構6に主動リンク19と従動リンク20を追加している。主動リンク19は、ベース4に回転自在に支持され、ベース4に固定された電動モータ5によって回転駆動される。従動リンク20は、一端側がベース側リンク16に回転自在に連結され、他端側が第2義指12に回転自在に連結される。主動リンク19と従動リンク20とは、第2義指12の傾動範囲において閉状態で特異点に最も近付く倍力機構を構成し、従動リンク20は、粘弾性を有する材料によって形成される。
【0025】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態にかかる義手1をモデル化して示す図である。
電動モータ5による駆動トルクを指パーツである第2義指12にリンク機構6を介して伝達する場合、リンクの配置と材質によってモーメントアームを変更することが可能となるため、これによる倍力機構を構成することが可能である。
【0026】
第3実施形態では、第1実施形態のリンク機構6に、外力に応じてリンク長を拡縮することを可能とする形態可変リンク30を追加し、指バーツの駆動力を調整する機能を付与している。形態可変リンク30の一端側は、ベース4に回転自在に支持され、他端側は、第2義指12に回転自在に連結される。形態可変リンク30の一端側は、アクチュエータである電動モータ34によって回転駆動される。形態可変リンク30は、粘弾性を有し、外力を受けていない無負荷状態で一端側と他端側との間でL状に曲折または湾曲する。形態可変リンク30の基端側(電動モータによる駆動側)は主動リンク部31として機能し、先端側(第2義指12に連結される従動側)は従動リンク部32として機能する。
【0027】
電動モータによる駆動トルクをτ、主動リンク部31の長さをR、従動リンク部32と第2義指12との相対角度をθとすると、従動リンク部32が第2義指12を引っ張る力(従動リンク力)fは、次式(1)によって求められる。
f=τ/Rcosθ・・・(1)
第2義指12の駆動力は、Rとcosθに反比例し、ゼロ~無限大の範囲で値が変わる。
【0028】
図6の(a)は、形態可変リンク30が無負荷状態に近い形状を維持している状態を示している。(b)は、(a)の状態のまま第2義指12の傾動を抑止することにより、形態可変リンク30が変形し、主動リンク部31が短縮した状態を示している。(c)は、形態可変リンク30を支持するベース4側の駆動回転軸33によって形態可変リンク30の基端側が巻き取られ、(b)の状態から第2義指12が閉方向へ傾動した状態を示している。なお、図6では、形態可変リンク30による第2義指12の傾動に直接関連しない部材(例えば第1義指11)の図示を省略している。
【0029】
第2義指12の長さLが一定であるため、主動リンク部31のリンク長Rが短縮すると、第2義指12の先端部のピンチ力(指先ピンチ力)Fが増大し、移動速度が遅くなる。逆にリンク長Rが伸長すると、指先ピンチ力Fが減少し、移動速度が速くなる。従動リンク力fおよび指先ピンチ力Fは、図6の(a)の状態よりも(b)の状態の方が強く、(b)の状態よりも(c)状態の方が強い。また、第2義指12の先端部(指先)にかかる外力がマイナス方向に作用する場合には、従動リンク部32が屈曲することにより、外力による衝撃を吸収することができる。
【0030】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0031】
本明細書は、以下の発明の開示を含む。
(第1の形態)
指が欠損した上肢に装着される義手であって、
前記上肢に移動不能に支持されるベースと、
前記ベースに傾動可能に支持される第1義指と、
前記ベースに傾動可能に支持される第2義指と、
前記第1義指の傾動と前記第2義指の傾動とを連動させて、前記第1義指と前記第2義指とを開閉させるリンク機構と、を備え、
前記リンク機構は、
前記ベースに回転自在に支持されるベース側リンクと、
一端側が前記ベース側リンクに回転自在に連結され、他端側が前記第1義指に回転自在に連結される第1リンクと、
一端側が前記ベース側リンクに回転自在に連結され、他端側が前記第2義指に回転自在に連結される第2リンクと、を有し、
前記第1リンクと前記第2リンクとは、前記ベース側リンクが一方向へ回転することにより、前記第1義指と前記第2義指とを閉方向へ傾動させ、前記ベース側リンクが他方向へ回転することにより、前記第1義指と前記第2義指とを開方向へ傾動させ、
前記第1義指と前記第2義指とが最も閉じた閉状態で、前記第1義指の先端部と前記第2義指の先端部とは近接または接触する
ことを特徴とする義手。
【0032】
(第2の形態)
第1の形態の義手であって、
前記リンク機構は、
前記ベースに回転自在に支持され、アクチュエータによって回転駆動される主動リンクと、
一端側が前記主動リンクに回転自在に連結され、他端側が前記第2義指に回転自在に連結される従動リンクと、を含み、
前記主動リンクと前記従動リンクとは、前記第2義指の傾動範囲において前記閉状態で特異点に最も近付く倍力機構を構成する
ことを特徴とする義手。
【0033】
(第3の形態)
第2の形態の義手であって、
前記主動リンクは、前記ベース側リンクであり、
前記従動リンクは、前記第2リンクである
ことを特徴とする義手。
【0034】
(第4の形態)
第2の形態または第3の形態の義手であって、
前記従動リンクは、粘弾性を有する
ことを特徴とする義手。
【0035】
(第5の形態)
第1の形態~第4の形態のいずれかの義手であって、
前記リンク機構は、一端側が前記ベースに回転自在に支持され、他端側が前記第2義指に回転自在に連結される形態可変リンクを有し、
前記形態可変リンクの前記一端側は、アクチュエータによって回転駆動され、
前記形態可変リンクは、粘弾性を有し、外力を受けていない無負荷状態で前記一端側と前記他端側との間でL状に曲折または湾曲する
ことを特徴とする義手。
【0036】
(第6の形態)
第1の形態~第5の形態のいずれかの義手であって、
前記第1義指は、第1回転軸を中心として傾動可能に前記ベースに支持され、
前記第2義指は、第2回転軸を中心として傾動可能に前記ベースに支持され、
前記第1回転軸と前記第2回転軸とは、ねじれの位置に配置される
ことを特徴とする義手。
【符号の説明】
【0037】
1…義手、2…ソケット、3…手先具、4…ベース、5…電動モータ、6…リンク機構、7…カバー部材、8…第1回転軸,9…第2回転軸,11…第1義指、12…第2義指、13…第3義指、14…第4義指、15…第5義指、16…ベース側リンク、17…第1リンク、18…第2リンク、19…主動リンク、20…従動リンク、21…第1一端接続部、22…第1他端接続部、23…第2一端接続部、24…第2他端接続部、25…第1ジョイント、26…第2ジョイント、27…第3ジョイント、30…形態可変リンク、31…主動リンク部、32…従動リンク部、33…駆動回転軸、34…電動モータ、UL…上肢、PM…手掌部、FA…前腕部
図1
図2
図3
図4
図5
図6