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特開2024-100538ロックボルト及びロックボルト構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100538
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ロックボルト及びロックボルト構造体
(51)【国際特許分類】
   E21D 20/00 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
E21D20/00 F
E21D20/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004610
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】592197968
【氏名又は名称】サンライズ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】福田 聡
(72)【発明者】
【氏名】三河内 永康
(72)【発明者】
【氏名】末松 幸人
(72)【発明者】
【氏名】菅原 崇秀
(72)【発明者】
【氏名】大道 敦
(72)【発明者】
【氏名】真壁 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】外川 雄大
(57)【要約】
【課題】ロックボルト打設時にナットの締付作業が不要で、打設直後から支圧プレートを打設面に倣うように当接させることができ、ロックボルトと支圧プレートの適切な打設状態を確保し、また正確な引抜試験を行うことができるロックボルトを提供する。
【解決手段】軸部11の打設方向における後側に軸部11より大径の頭部13が設けられ、頭部13の前端面131が引抜試験用カプラー6が引っ掛けられる平坦面で形成され、頭部13と軸部11との間に頭部13より小径の中間部14が設けられ、中間部14の軸部11寄りに、前方に向かって縮径し且つ軸部13が挿通される支圧プレート2の挿通穴21に係合可能なテーパ部142が形成されているロックボルト1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部の打設方向における後側に前記軸部より大径の頭部が設けられ、
前記頭部の前端面が引抜試験用カプラーが引っ掛けられる平坦面で形成され、
前記頭部と前記軸部との間に前記頭部より小径の中間部が設けられ、
前記中間部の前記軸部寄りに、前方に向かって縮径し且つ前記軸部が挿通される支圧プレートの挿通穴に係合可能なテーパ部が形成されていることを特徴とするロックボルト。
【請求項2】
前記テーパ部が外側に膨らむアール形状で形成されていることを特徴とする請求項1記載のロックボルト。
【請求項3】
軸部の打設方向における後側に前記軸部より大径の頭部が設けられ、前記頭部の前端面が平坦面で形成され、前記頭部と前記軸部との間に前記頭部より小径の中間部が設けられ、前記中間部の前記軸部寄りに前方に向かって縮径するテーパ部が形成されているロックボルトと、
前記ロックボルトの前記軸部が挿通される挿通穴を有する支圧プレートと、を備え、
前記ロックボルトの前記テーパ部が前記支圧プレートの挿通穴に係合されて地山に打設されることを特徴とするロックボルト構造体。
【請求項4】
請求項1又は2記載のロックボルトの前記軸部を前記支圧プレートの挿通穴に挿通した状態で、前記支圧プレートの挿通穴に係合される前記テーパ部で前記支圧プレートを地山に押し付けるようにして前記ロックボルトを前記地山に打設する第1工程と、
打設された状態の前記ロックボルトの前記頭部の前端面に引抜試験用カプラーの引掛部を引っ掛けて引抜方向の力を加え、前記ロックボルトの引抜耐力を認識する第2工程を備えることを特徴とするロックボルトの引抜試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロックボルト打設時にナットの締付作業が不要で適切な打設が出来且つ取り外しと再度の締め付けの作業を行う必要が無く引抜試験を行うことができるロックボルト及びロックボルト構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロックボルト打設時にナットの締付作業が不要で適切な打設が出来且つナットの取り外しと再度の締め付けの作業を行う必要が無く引抜試験を行うことができるロックボルトとして特許文献1、2のロックボルトがある。特許文献1のロックボルトには、軸部の打設方向における後側にフランジ状に突出する首部が形成され、首部の先端に軸部に外挿される支圧プレートを押圧する平坦な前端面が設けられており、首部の後側の略楕円形の頭部に引抜試験用カプラーの係合溝を係合して取り付け、引抜試験を行うようになっている。
【0003】
特許文献2のロックボルトには、軸部の打設方向における後側に軸部より大径の頭部が形成され、軸部に外挿される支圧プレートを押圧する平坦な前端面が頭部に設けられており、頭部の外周に凹部が周方向に設けられ、凹部に引抜試験用カプラーに形成された凸部を係合して引抜試験を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-46984号公報
【特許文献2】特開2022-133761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のロックボルトは軸部からフランジ状に突出する首部の平坦な前端面で支圧プレートを押圧し、特許文献2のロックボルトは軸部からフランジ状に突出する頭部の平坦な前端面で支圧プレートを押圧する構成であり、通常クリアランスが1mm程度でロックボルトの軸部がやっと通る支圧プレートの挿通穴にロックボルトの軸部を挿通し、首部や頭部の前端面で支圧プレートを押圧するようになっている。即ち、ロックボルトと支圧プレートの適切な打設状態を確保し、また正確な引抜試験を行うためには、支圧プレート及びその支圧面に対してロックボルトを略直角な状態にして地山に打設し、支圧プレートの支圧面を地山の打設面に倣うように当接させる必要がある。
【0006】
そして、例えばトンネルでは、ロックボルトを坑壁面又はそこに吹付けられた吹付コンクリート面の打設面から放射方向に規定の角度、通常は、打設面と直交するように地山に打設することを基本とするが、打設面は屈曲面であったり凹凸がある場合が多い。そのため、打設面に対してロックボルトを直交して打設できずに、打設されたロックボルトの軸部に外挿された支圧プレートが、打設面に倣うように当接されない可能性がある。
【0007】
このように適切でない状態でロックボルトが打設され支圧プレートが取り付けられた場合でも、ロックボルト打設から時間が経過してロックボルト及び支圧プレートが土圧を受ける段階になれば支圧プレートは打設面に倣うように当接されて適正に機能することになるが、ロックボルト打設直後にロックボルトの引抜試験を行う場合には、引抜試験機の反力は支圧プレートから取ることになるので、正確な引抜試験の計測を行うには、支圧プレートを打設面に倣うように当接させることが必要となる。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、ロックボルト打設時にナットの締付作業が不要でその打設直後から支圧プレートを打設面に倣うように当接させることができ、ロックボルトと支圧プレートの適切な打設状態を確保し、また正確な引抜試験を行うことができるロックボルト及びロックボルト構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のロックボルトは、軸部の打設方向における後側に前記軸部より大径の頭部が設けられ、前記頭部の前端面が引抜試験用カプラーが引っ掛けられる平坦面で形成され、前記頭部と前記軸部との間に前記頭部より小径の中間部が設けられ、前記中間部の前記軸部寄りに、前方に向かって縮径し且つ前記軸部が挿通される支圧プレートの挿通穴に係合可能なテーパ部が形成されていることを特徴とする。
これによれば、打設時にナットの締付作業が不要でロックボルトと支圧プレートの適切な打設状態を確保し、且つ引抜試験を行う際のナットの取り外しと再度の締め付けの作業を行う必要が無く、簡単に引抜試験を行うことができる。また、テーパ部を支圧プレートの挿通穴に係合可能とすることにより、支圧プレートの挿通穴をテーパ部の少なくとも一部が入り込む程度に大きめに形成し、支圧プレートの挿通穴にテーパ部を傾動可能に係合することができる。従って、ロックボルトに対して支圧プレートがある程度傾斜して配置されることを許容するロックボルトの打設、支圧プレートの取付が可能となり、地山の打設面が屈曲面であったり打設面に凹凸がある場合等でも、ロックボルト打設直後から支圧プレートを打設面に倣うように当接させることができ、ロックボルトに正確な引抜試験を行うことができる。また、特許文献2のように頭部に周方向の凹部を切削加工する必要が無く、製造コストを低減することができる。
【0010】
本発明のロックボルトは、前記テーパ部が外側に膨らむアール形状で形成されていることを特徴とする。
これによれば、ロックボルトに対する支圧プレートの傾斜配置の自由度、許容度を高めることができると共に、外側に膨らむアール形状のテーパ部でテーパ部が挿通穴に対して摺動して傾動し易くなり、ロックボルトの打設及び支圧プレートの取付時に、ロックボルトと支圧プレートの配置状態をスムーズに最適化することができる。
【0011】
本発明のロックボルト構造体は、軸部の打設方向における後側に前記軸部より大径の頭部が設けられ、前記頭部の前端面が平坦面で形成され、前記頭部と前記軸部との間に前記頭部より小径の中間部が設けられ、前記中間部の前記軸部寄りに前方に向かって縮径するテーパ部が形成されているロックボルトと、前記ロックボルトの前記軸部が挿通される挿通穴を有する支圧プレートとを備え、前記ロックボルトの前記テーパ部が前記支圧プレートの挿通穴に係合されて地山に打設されることを特徴とする。
これによれば、ロックボルト打設時にナットの締付作業が不要でロックボルトと支圧プレートの適切な打設状態を確保し、且つ引抜試験を行う際のナットの取り外しと再度の締め付けの作業を行う必要が無く、簡単に引抜試験を行うことができる。また、テーパ部を支圧プレートの挿通穴に係合することにより、支圧プレートの挿通穴をテーパ部の少なくとも一部が入り込む程度に大きめに形成し、支圧プレートの挿通穴にテーパ部を傾動可能に係合することができる。従って、ロックボルトに対して支圧プレートがある程度傾斜して配置されることを許容するロックボルトの打設、支圧プレートの取付が可能となり、地山の打設面が屈曲面であったり打設面に凹凸がある場合等でも、ロックボルト打設直後から支圧プレートを打設面に倣うように当接させることができ、ロックボルトに正確な引抜試験を行うことができる。また、特許文献2のように頭部に周方向の凹部を切削加工する必要が無く、製造コストを低減することができる。
【0012】
本発明のロックボルトの引抜試験方法は、本発明のロックボルトの前記軸部を前記支圧プレートの挿通穴に挿通した状態で、前記支圧プレートの挿通穴に係合される前記テーパ部で前記支圧プレートを地山に押し付けるようにして前記ロックボルトを前記地山に打設する第1工程と、打設された状態の前記ロックボルトの前記頭部の前端面に引抜試験用カプラーの引掛部を引っ掛けて引抜方向の力を加え、前記ロックボルトの引抜耐力を認識する第2工程を備えることを特徴とする。
これによれば、ロックボルトの頭部の前端面に引抜試験用カプラーの引掛部を引っ掛けるだけで、ナットの取り外しと再度の締め付けの作業を行う必要が無く、簡単にロックボルトの引抜試験を行うことができる。また、特許文献1のように略楕円形の頭部に引抜試験用カプラーの係合溝を被せて90°回転して係合する等の確認しずらい作業が不要であり、容易且つ確実に引抜試験用カプラーの取り付け、引抜試験の準備を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のロックボルト或いはロックボルト構造体によれば、ロックボルト打設時にナットの締付作業が不要でロックボルトと支圧プレートの適切な打設状態を確保し、且つ引抜試験を行う際のナットの取り外しと再度の締め付けの作業を行う必要が無く、簡単に引抜試験を行うことができると共に、ロックボルト打設直後から支圧プレートを打設面に倣うように当接させることができ、ロックボルトに正確な引抜試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は本発明による実施形態のロックボルトの左側面図、(b)はその正面図、(c)はその右側面図、(d)はその頭部及び中間部周辺の拡大正面図。
図2】(a)、(b)は実施形態のロックボルトへの引抜試験用カプラーの取り付けを説明する斜視説明図。
図3】(a)~(c)は実施形態のロックボルトの製造工程を説明する工程説明図。
図4】(a)~(d)は実施形態のロックボルトの施工工程を説明する工程説明図。
図5】実施形態のロックボルトを打設した地山補強構造で構成されるトンネルの模式説明図。
図6図5のトンネルの例における実施形態のロックボルトの定着メカニズムを説明する説明図。
図7】実施形態のロックボルトを打設した地山補強構造におけるロックボルトに対する引抜試験を説明する一部断面説明図。
図8】(a)は実施形態のロックボルトが打設面に直角に打設された状態を示す断面説明図、(b)は実施形態のロックボルトが打設面に傾斜して打設された状態を示す断面説明図。
図9】実施形態の第1変形例のロックボルトの正面図。
図10】実施形態の第2変形例のロックボルトの正面図。
図11】(a)、(b)は実施形態のロックボルトに外挿される変形例の支圧プレートの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態のロックボルト〕
本発明による実施形態のロックボルト1は、図1及び図2に示すように、金属材或いは棒鋼材である異形棒鋼から構成され、異形棒鋼の形状である軸部11の打設方向における先端には略円錐形の剣先部12が形成されている。尚、剣先部12に代えて、略円錐形の樹脂キャップを軸部11の先端に取り付けてもよい。
【0016】
軸部11の打設方向における後側には軸部11より大径の頭部13が形成されており、頭部13は軸部11の外周から外側に突出する略ドーム形状で形成され、例えば頭部13を覆うように防水シート58が敷設された場合に防水シートの破損を防止可能な形状になっている(図5図6参照)。頭部13の前端面131は平坦面で形成され、後述する引抜試験用カプラーが引っ掛けられるようになっている。
【0017】
頭部13と軸部11との間には頭部13より小径の中間部14が設けられている。中間部14の頭部13寄りは円柱形状の円柱部141になっており、中間部14の軸部11寄りには前方に向かって縮径するテーパ部142が形成されている。尚、実施形態の説明において、「前」はロックボルト1の打設方向の先端側を意味し、「後」はその逆側を意味する。また、本実施形態におけるテーパ部142は、外側に膨らむアール形状で形成されている。
【0018】
テーパ部142は、軸部11が挿通される支圧プレート2の挿通穴21に係合可能になっている。本実施形態では、支圧プレート2の平面視略中央に、ロックボルト1の軸部11が内挿される挿通穴21が形成されており(図1図4図6図8参照)、挿通穴21の径は挿通方向の全長に亘って略同一径で形成され、軸部11の外径よりも大きく、且つ頭部13の外径よりも小さく形成されている。
【0019】
更に、挿通穴21の径は、前方に向かって縮径するテーパ部142の軸方向の途中の外径と同一径で形成されており、支圧プレート2の支圧面22に対してロックボルト1が直角に打設された場合には、この同一径の途中箇所でテーパ部142が挿通穴21に係合されるようになっている(図8(a)参照)。また、支圧プレート2の支圧面22に対してロックボルト1が傾斜して打設された場合には、傾斜したテーパ部142の所定箇所が挿通穴21の周縁に係合するようにして、テーパ部142が挿通穴21に係合される(図8(b)参照)。
【0020】
更に、本実施形態のロックボルト1では、頭部13と中間部14と軸部11とが一体的に形成されており、例えば高張力異形棒鋼を用い、軸部11の後側に熱間鍛造によって頭部13と中間部14とが一体的に形成されている。即ち、本実施形態のロックボルト1では、同一の高張力金属材で頭部13と軸部11と中間部14とが一体的に形成されている。
【0021】
本実施形態のロックボルト1において、軸部11の後側に熱間鍛造によって頭部13と中間部14とが一体的に形成されたロックボルト1を製造する場合、素材として軸部11の外形状と外周サイズを有す棒状の金属材或いは棒鋼材が用いられ、例えば図3(a)に示す異形棒鋼1mが用いられる。異形棒鋼1mは高張力の異形棒鋼とすると好適である。
【0022】
異形棒鋼1mを熱間鍛造で加工する際には、例えば図3(a)、(b)に示すダイ31とパンチ32を用いる。ダイ31は、上下一対など一対の鍛造型を合わせるようにして構成され、一対の鍛造型を合わせたダイ31の形状において、異形棒鋼1mの外径と略同一の径で形成された挿通穴311が設けられる。挿通穴311の一方側端部は中間部14の外形状とほぼ対応する形状とサイズに拡径されている。またダイ31の挿通穴311の拡径側から異形棒鋼1mの端部を圧造するためのパンチ32には、頭部13の形状に対応する形状とサイズの型内空間321が形成されている。
【0023】
そして、高熱に加熱した異形棒鋼1mを挿通穴311に挿通された状態でダイ31の型内空間312に配置し、挿通穴311と逆側に異形棒鋼1mの一方の端部が所定長だけ型内空間312から突出した状態で配置する(図3(b)参照)。その後、異形棒鋼1mの所定長の突出部分を型内空間321にパンチ32で押し込み、異形棒鋼1mを型内空間321で押し潰すようにして圧造し、異形棒鋼1mの軸部11の一方の端部である後側に、頭部13と中間部14を一体的に形成する(図3(c)参照)。
【0024】
更に、異形棒鋼1mの先端には略円錐形の剣先部12を熱間鍛造等で別途形成し、本実施形態のロックボルト1を得る。尚、ねじ部を有するロックボルトはねじ部で強度が決まってしまうが、本実施形態のロックボルト1はねじ部が無く、更には、軸部11と頭部13と中間部14を熱間鍛造で一体形成することで、高い引張強度を発揮することが可能となる。
【0025】
次に、本実施形態のロックボルト1の施工工程について説明する。ロックボルト1を施工する際には、図4(a)、(b)に示すように、ロックボルト1の軸部11に打設方向の先端側から挿通穴21を有する支圧プレート2を外挿する。ロックボルト1の軸部11を支圧プレート2の挿通穴21に内挿する工程は適宜の仕方で行うことが可能であり、例えばロックボルト打設装置のガイドセル41の先端付近に設けられた保持機構で支圧プレート2を保持した状態にすると共に、後述するように、ガイドセル41に沿ってスライド移動する押し込み式の打設機42でロックボルト1の後端部を保持し、打設機42を前進させて、ロックボルト1の軸部11を保持機構で所定位置に保持された支圧プレート2の挿通穴21に内挿するようにすると好適である(図4(a)~(c)参照)。尚、支圧プレート2はロックボルト1の中間部14及び頭部13に近づけるように移動せずとも良く、支圧プレート2は軸部11の先端付近に配置して外挿した状態とする。また、地山50、或いは地山50と吹付コンクリート51には予め穿孔52を形成し、穿孔52内にモルタル等の定着材53を予め注入しておく(図6参照)。
【0026】
そして、図4(c)の太線矢印に示すように、ガイドセル41に沿ってスライド移動する押し込み式の打設機42でロックボルト1の後端部を保持し、打設機42を地山50に向かって前進させ、定着材53が注入されている穿孔52に剣先部12が形成された先端側からロックボルト1を押し込んでいく。ロックボルト1の押し込みは、中間部14のテーパ部142の一部が支圧プレート2の挿通穴21に入り込んで、テーパ部142が挿通穴21の周縁に当接して係合し、テーパ部142で支圧プレート2を地山50に押し付けるまで行い、支圧プレート2に入り込んでいないテーパ部142の部分と地山50の打設面(地山50の表面或いは吹付コンクリート51の表面)との間に支圧プレート2が介在するようにして、ロックボルト1を地山50に打設する(図4(d)参照)。
【0027】
この施工工程で構築された地山補強構造では、別途ナットを締め付けて支圧プレート2を固定する作業は省略され、軸部11に外挿された支圧プレート2が、支圧プレート2の挿通穴21に当接して係合しているテーパ部142で、地山50或いは吹付コンクリート51の表面に押し付けられ、地山50が押し出してきたときに支圧プレート2が押し出し力を受けることができる状態で、ロックボルト1が地山50に打設される。
【0028】
上記施工工程で構築された地山補強構造を有するトンネルの例を図5及び図6に示す。本例では、トンネルの掘削面54に沿って吹付コンクリート51が打設され、吹付コンクリート51から周囲の地山50にロックボルト1が放射状に打設されている。各ロックボルト1は、定着材53で地山50に定着されると共に、外挿された支圧プレート2が吹付コンクリート51の表面に倣うように当接、密着するように、ロックボルト1のテーパ部142が挿通穴21との係合を介して支圧プレート2に押し付けられている。
【0029】
ここで、吹付コンクリート51の表面である打設面に対してロックボルト1が傾斜して地山50に打設された場合には、支圧プレート2の支圧面22に対してロックボルト1が傾斜して打設された状態となり、傾斜したテーパ部142が挿通穴21の周縁に係合して支圧プレート2を打設面に押し付け、支圧プレート2が吹付コンクリート51の表面(打設面)に倣うように当接、密着される(図8(b)参照)。
【0030】
そして、放射状に打設されたロックボルト1によってトンネル周囲の地山50に構築されたアーチ構造55により、トンネル空間56が支保される。図示の57は覆工コンクリート、58は防水シートである。このように地山50に打設、定着されたロックボルト1と、支圧プレート2を備えるトンネルの地山補強構造では、地山50が押し出してこようとする力Fを支圧プレート2で支え、ロックボルト1に生ずる引張方向の軸力Tによって抗することにより、アーチ構造55が壊れないように支保する(図6参照)。
【0031】
次に、本実施形態のロックボルト1に対する引抜試験の例について説明する。例えば地山50の表面に沿って吹付コンクリート51が打設され、吹付コンクリート51と地山50に削孔された穿孔52にロックボルト1が打設され、穿孔52内の定着材53でロックボルト1が定着されていると共に、軸部11に外挿された支圧プレート2が挿通穴21に係合されたテーパ部142で吹付コンクリート51を介して地山50に押し付けている地山補強構造において、打設された状態のロックボルト1の頭部13の前端面131に引抜試験用カプラー6の凸条の引掛部63を引っ掛けるように係合する。引抜試験用カプラー6を介してロックボルト1とテンションロッド71を連結する(図7図2参照)。
【0032】
本例で用いられる引抜試験用カプラー6は、ロックボルト1側に配置される有底筒部61とテンションロッド71側に配置される雄ねじ部62から構成され、有底筒部61の前端内周に、ロックボルト1の頭部13の前端面131に引っ掛けられる凸条の引掛部63が形成されている。更に、引抜試験用カプラー6は、軸方向に分割された一対の半体60・60を合わせるようにして構成され、一対の半体60・60の半割部601、602、603を合わせた状態で、有底筒部61、雄ねじ部62、引掛部63がそれぞれ構成される。
【0033】
そして、地山50に打設されたロックボルト1の頭部13の位置で一対の半体60・60を合わせるようにして引抜試験用カプラー6を形成すると共に、引掛部63を頭部13の前端面131に係合して引っ掛ける。更に、一対の半体60・60を合わせて形成された引抜試験用カプラー6の雄ねじ部62をテンションロッド71の先端に形成された雌ねじ部711に相対的に螺入し、一対の半体60・60を合わせた引抜試験用カプラー6の形状を雄ねじ部62と雌ねじ部711の螺合で安定して保持すると共に、引抜試験用カプラー6を介してロックボルト1とテンションロッド71を連結する。
【0034】
図7の例では、ロックボルト1のテーパ部142の係合による押し付けで吹付コンクリート51の表面に倣うように当接している支圧プレート2に載置するようにして、リング状の角度調整台座72が設けられ、傾動で傾斜角度を調整可能な球面状の先端面731が角度調整台座72に係合されている略円筒状の反力台座73が設けられている。反力台座73は、角度調整台座72に対して角度調整自在に設けられ、支圧プレート2の支圧面22に対してロックボルト1が傾斜して打設された場合にも引抜試験を行えるようになっている(図8(b)参照)。
【0035】
角度調整台座72と反力台座73の内部には、ロックボルト1の頭部13及び中間部14の一部と、引抜試験用カプラー6とが配置されている。反力台座73の内部には、角度調整台座72と逆側に位置する貫通穴からテンションロッド71が挿入され、テンションロッド71の先端部の雌ねじ部711と引抜試験用カプラー6の雄ねじ部62が螺着されている。
【0036】
地山50と逆側に反力台座73から突出するテンションロッド71の部分には、センターホールジャッキ74、引抜試験用測定板75を外挿するように設け、テンションロッド71に押さえナット76を螺合して、引抜試験用測定板75の地山50と逆側への移動を規制する。
【0037】
そして、センターホールジャッキ74の伸長方向の加圧により、引抜試験用測定板75、押さえナット76を介してテンションロッド71に引抜力を載荷する。これにより、反力台座73と角度調整台座72から反力を得て、テンションロッド71、引抜試験用カプラー6を介して頭部13からロックボルト1に引抜方向の力が加えられる。このようにロックボルト1に引抜力を載荷して、載荷荷重からロックボルト1に加えられた軸力を算出すると共に、引抜試験用測定板74の変位を測定することにより、ロックボルト1の伸びを認識し、ロックボルト1の引抜耐力を認識する。ロックボルト1の伸びの認識による引抜耐力の認識は、例えば相互の対応関係データを記憶部に格納するパーソナルコンピュータ、スマートフォン或いは専用端末等のコンピュータ装置で算出させることにより行い、出力部で出力すると好適である。
【0038】
実施形態のロックボルト1、或いはロックボルト1と支圧プレート2で構成されるロックボルト構造体によれば、ロックボルト打設時にナットの締付作業が不要でロックボルトと支圧プレートの適切な打設状態を確保し、且つ引抜試験を行う際のナットの取り外しと再度の締め付けの作業を行う必要が無く、簡単に引抜試験を行うことができる。また、テーパ部142を支圧プレート2の挿通穴21に係合可能とすることにより、支圧プレート2の挿通穴21をテーパ部142の少なくとも一部が入り込む程度に大きめに形成し、支圧プレート2の挿通穴21にテーパ部142を傾動可能に係合することができる。従って、ロックボルト1に対して支圧プレート2がある程度傾斜して配置されることを許容するロックボルト1の打設、支圧プレート2の取付が可能となり、地山50の打設面が屈曲面であったり打設面に凹凸がある場合等でも、ロックボルト打設直後から支圧プレート2を打設面に倣うように当接させることができ、ロックボルトに正確な引抜試験を行うことができる。また、ロックボルト頭部13に周方向の凹部を切削加工する必要が無く、製造コストを低減することができる。
【0039】
また、ロックボルト1のテーパ部142を外側に膨らむアール形状で形成することにより、ロックボルト1に対する支圧プレート2の傾斜配置の自由度、許容度を高めることができる。また、外側に膨らむアール形状のテーパ部142でテーパ部142が挿通穴21或いはその周縁に対して摺動して傾動し易くなり、ロックボルト1の打設及び支圧プレート2の取付時に、ロックボルト1と支圧プレート2の配置状態をスムーズに最適化することができる。
【0040】
また、ロックボルト1の引抜試験を行う際には、ロックボルト1の頭部13の前端面131に引抜試験用カプラー6の引掛部63を引っ掛けるだけで、ナットの取り外しと再度の締め付けの作業を行う必要が無く、簡単にロックボルト1の引抜試験を行うことができる。また、ロックボルトの略楕円形の頭部に引抜試験用カプラーの係合溝を被せて90°回転して係合する等の確認しずらい作業が不要であり、容易且つ確実に引抜試験用カプラー6の取り付け、引抜試験の準備を行うことができる。
【0041】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記内容や変形例も含まれる。
【0042】
例えば本発明のロックボルトにおける中間部のテーパ部の形状は、上記実施形態のロックボルト1の外側に膨らむアール形状のテーパ部142に限定されず、前方に向かって縮径する適宜形状のテーパ部とすることが可能であり、図9の第1変形例のロックボルト1aの中間部14aのように、直線テーパ状のテーパ部142aとしてもよい。
【0043】
また、本発明のロックボルトにおける軸部の形状は適宜であり、例えば図10の第2変形例のロックボルト1bの軸部11bの形状としてもよい。尚、第2変形例のロックボルト1bの中間部14bには、第1変形例と同様に直線テーパ状のテーパ部142bが設けられているが、上記実施形態のロックボルト1のように、外側に膨らむアール形状のテーパ部としても良好である。
【0044】
また、本発明における支圧プレートの挿通穴の形状は本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、上記実施形態における支圧プレート2の挿通方向の全長に亘って略同一径で形成される挿通穴21に限定されず、例えば図11の変形例の支圧プレート2aのように、ロックボルト1の頭部13の前端面131に引掛部63が引っ掛けられることを条件として、前方に向かって穴径が縮径する挿通穴21aとしてもよい。挿通穴21aの内周面は外側に膨らむアール形状或いは直線テーパ状とすることが可能であり、図示例の挿通穴21aには前寄りの位置に挿通穴21aの最小径で同一径で延びる筒状の小径部が設けられている。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えばトンネルで打設するロックボルト、斜面に打設するロックボルト等に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1、1a、1b…ロックボルト 11、11b…軸部 12…剣先部 13…頭部 131…前端面 14、14a、14b…中間部 141…円柱部 142、142a、142b…テーパ部 1m…異形棒鋼 2、2a…支圧プレート 21、21a…挿通穴 22…支圧面 31…ダイ 311…挿通穴 312…型内空間 32…パンチ 321…型内空間 41…ガイドセル 42…打設機 50…地山 51…吹付コンクリート 52…穿孔 53…定着材 54…トンネルの掘削面 55…アーチ構造 56…トンネル空間 57…覆工コンクリート 58…防水シート 6…引抜試験用カプラー 61…有底筒部 62…雄ねじ部 63…引掛部 60…半体 601、602、603…半割部 71…テンションロッド 711…雌ねじ部 72…角度調整台座 73…反力台座 731…先端面 74…センターホールジャッキ 75…引抜試験用測定板 76…押さえナット F…地山が押し出す力 T…ロックボルトに生ずる引張方向の軸力
図1
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