(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100543
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】タイヤおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60C 9/04 20060101AFI20240719BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20240719BHJP
D02G 3/48 20060101ALI20240719BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20240719BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20240719BHJP
B29D 30/38 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B60C9/04 C
B60C9/00 B
B60C9/00 D
B60C9/00 C
D02G3/48
D03D1/00 A
D03D15/283
B29D30/38
B60C9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004617
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】石塚 浩貴
【テーマコード(参考)】
3D131
4F215
4F501
4L036
4L048
【Fターム(参考)】
3D131AA32
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA36
3D131AA44
3D131AA51
3D131BC49
3D131DA01
3D131LA28
4F215AA24
4F215AA29
4F215AA30
4F215AH20
4F215VA11
4F215VD10
4F215VD17
4F215VL18
4F215VL24
4F501TA11
4F501TC10
4F501TC17
4F501TE13
4F501TE19
4F501TH01
4F501TV23
4L036MA04
4L036MA05
4L036MA06
4L036PA21
4L036UA25
4L048AA13
4L048AA20
4L048AA24
4L048AA25
4L048AB06
4L048AB12
4L048BA01
4L048CA01
4L048DA42
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】縦糸群の残留トーションに起因するタイヤカーカス用プライのねじれが小さく抑えること
【解決手段】
複数の縦糸61a,61bが横方向に沿って並べられた縦糸群60と、縦糸群60に対して横方向に通された複数の横糸71を有する横糸群70と、縦糸群60と横糸群70とを被覆するゴムとを有している。縦糸群60は、S撚りの縦糸61aとZ撚りの縦糸61bとが交互に配置されている。横糸群70の複数の横糸71のうち少なくとも一部の横糸71は、縦糸群60のうち隣り合うS撚りの縦糸61aとZ撚りの縦糸61bとを一組の縦糸とし、縦糸群60のうち一組の縦糸61a,61b毎に前と後に順に通されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の縦糸が横方向に沿って並べられた縦糸群と、
前記縦糸群に対して横方向に通された複数の横糸を有する横糸群と、
前記縦糸群と横糸群とを被覆するゴムと
を有し、
前記縦糸群は、S撚りの縦糸とZ撚りの縦糸とが交互に配置されており、
前記横糸群の複数の横糸のうち少なくとも一部の横糸は、前記縦糸群のうち隣り合うS撚りの縦糸とZ撚りの縦糸とを一組の縦糸とし、前記縦糸群のうち前記一組の縦糸毎に前と後に順に通されている、
タイヤ。
【請求項2】
前記一組の縦糸は、前記横糸が通される方向に沿って、S撚りの縦糸の撚りが解ける方向と、Z撚りの縦糸の撚りが解ける方向とが互いに離れる方向に向いている、請求項1に記載されたタイヤ。
【請求項3】
前記一組の縦糸は、前記横糸が通される方向に沿って、S撚りの縦糸の撚りが解ける方向と、Z撚りの縦糸の撚りが解ける方向とが互いに向かい合う方向に向いている、請求項1に記載されたタイヤ。
【請求項4】
前記縦糸が、アラミド、ポリエステル、ナイロンおよびレーヨンのうち少なくとも一つの繊維からなる、請求項1から3までの何れか一項に記載されたタイヤ。
【請求項5】
縦糸群を用意する工程と、
前記縦糸群に対して、横糸を通す工程と、
前記縦糸群と、前記縦糸群に通された複数の横糸からなる横糸群とをゴムで被覆する工程と
を有し、
前記縦糸群を用意する工程では、S撚りの縦糸とZ撚りの縦糸とが交互に、横方向に沿って並べられ、
前記横糸を通す工程では、前記縦糸群のうち隣り合うS撚りの縦糸とZ撚りの縦糸とを一組の縦糸とし、前記縦糸群のうち前記一組の縦糸毎に前と後に順に通される、
タイヤの製造方法。
【請求項6】
前記横糸を通す工程において、S撚りの縦糸の撚りが解ける方向と、Z撚りの縦糸の撚りが解ける方向とが互いに離れるように前記一組の縦糸が設定されている、
請求項5に記載されたタイヤの製造方法。
【請求項7】
前記横糸を通す工程において、S撚りの縦糸の撚りが解ける方向と、Z撚りの縦糸の撚りが解ける方向とが互いに向かい合うように前記一組の縦糸が設定されている、請求項6に記載されたタイヤの製造方法。
【請求項8】
前記縦糸が、アラミド、ポリエステル、ナイロンおよびレーヨンのうち少なくとも一つの繊維からなる、請求項5から7までの何れか一項に記載されたタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平5-31829号公報には、多数本のコードの両側がゴムシートで被覆されたタイヤカーカス用プライの製造方法が開示されている。同公報で開示された製造方法では、ロールの外周に軸方向に離れて形成された多数の周方向溝の一部に、撚り方向の異なったコードを交互に侵入させるとともに、該コードが侵入している部位に第1ゴムシートが供給され、第1ゴムシートをコードの一側に圧着する。次に、第1ゴムシートが圧着したコードの反対側に第2ゴムシートを圧着し、コードの両側がゴムシートで被覆される。これによって、ピッチに乱れのないプライが製造できる、とされている。コードは、S撚りコードと、Z撚りコードとが幅方向に交互に配置されている。かかる構成によれば、カール現象を防止することができる、とされている。さらに、切断後接合する際の接合精度が向上するとともに、プライの薄肉化が可能となる、とされ、タイヤの品質が向上し、軽量化を図ることもできる、とされている。
【0003】
特開2011-235864号公報には、S撚りの片撚りコードとZ撚りの片撚りコードとが、幅方向中心部に対して、対称的に配置されている、ゴム‐コード複合体が開示されている。たとえば、ゴム‐コード複合体の幅方向末端部において、S撚りの片撚りコードとZ撚りの片撚りコードとを、1本ずつ交互に配置することが開示されている。また、S撚りの片撚りコードとZ撚りの片撚りコードとを、複数本ずつ交互に配置することが開示されている。また、S撚りの片撚りコードとZ撚りの片撚りコードとが、2本ずつ、あるいは、1本ずつ交互に配置されていることが開示されている。かかるゴム‐コード複合体によれば、ゴム量を増大させることなくゴム‐コード複合体のねじれを抑制することができ、タイヤ成型工程における作業性を向上させつつ、低発熱性かつ軽量であって、転がり抵抗の低い空気入りタイヤを実現できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-31829号公報
【特許文献2】特開2011-235864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者は、タイヤユニフォミティーの向上のため、タイヤカーカス用プライに用いられるゴム‐コード複合体のねじれを小さく抑えたい、と考えている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここでの開示されるタイヤは、複数の縦糸が横方向に沿って並べられた縦糸群と、縦糸群に対して横方向に通された複数の横糸を有する横糸群と、縦糸群と横糸群とを被覆するゴムとを有している。縦糸群は、S撚りの縦糸とZ撚りの縦糸とが交互に配置されている。横糸群の複数の横糸のうち少なくとも一部の横糸は、縦糸群のうち隣り合うS撚りの縦糸とZ撚りの縦糸とを一組の縦糸とし、縦糸群のうち前記一組の縦糸毎に前と後に順に通されている。
【0007】
ここでの開示されるタイヤの製造方法は、縦糸群を用意する工程と、縦糸群に対して、横糸を通す工程と、縦糸群と、前記縦糸群に通された複数の横糸からなる横糸群とをゴムで被覆する工程とを有している。縦糸群を用意する工程では、S撚りの縦糸とZ撚りの縦糸とが交互に、横方向に沿って並べられる。横糸を通す工程では、縦糸群のうち隣り合うS撚りの縦糸とZ撚りの縦糸とを一組の縦糸とし、縦糸群のうち前記一組の縦糸毎に前と後に順に通される。
【発明の効果】
【0008】
かかるタイヤおよびその製造方法によれば、タイヤカーカス用プライに用いられるゴム‐コード複合体のねじれが抑えられる。このため、タイヤのユニフォミティーの向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図2は、タイヤカーカス用プライの縦糸群と横糸群の配置を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、タイヤカーカス用プライの縦糸群と横糸群の配置を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、他の形態におけるタイヤカーカス用プライの縦糸群と横糸群の配置を模式的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、他の形態におけるタイヤカーカス用プライの縦糸群と横糸群の配置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ここで開示されるタイヤおよびその製造方法を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、各図面は、一例を示すのみであり、特に言及されない限りにおいて本発明を限定しない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
《タイヤ10》
図1は、タイヤ10の断面図である。
図1では、ホイールリム11に装着されたタイヤ10の径方向に沿った断面が示されている。タイヤ10は、いわゆる空気入りタイヤである。タイヤ10は、
図1に示されているように、ホイールリム11の外周を覆うようにホイールリム11に装着される。タイヤ10とホイールリム11とで囲われた空間には、空気が充填され、保持される。
【0012】
〈タイヤ10の各部位〉
タイヤ10は、
図1に示されているように、ビード部31と、サイドウォール部32と、ショルダー部33と、トレッド部34とを備えている。
【0013】
ビード部31は、ホイールに組み合わせる部分で、ホイールリム11に全周に渡って装着され、タイヤ10とホイールリム11を固定させる部位である。サイドウォール部32は、タイヤ10の側面で径方向に沿った部位である。サイドウォール部32は、タイヤが最もたわむ部分である。
【0014】
トレッド部34は、直接路面と接する部分であり、タイヤ10の外周面に設けられており、外周面に沿って周方向に連続した接地面を有している。トレッド部34は、路面との摩擦によって徐々に摩耗していく部位である。トレッド部34は、所要の厚さを有しており、予め定められたパターンの溝34aが形成されている。かかる溝34aは、トレッドパターンとも称される。トレッド部34には、周方向において予め定められた複数箇所にスリップサイン35が設けられている。ショルダー部33は、サイドウォール部32とトレッド部34とを繋ぐ部分である。ショルダー部33は、路面と摩擦によって走行時に発生するトレッド部34や内部の熱を発散する役目がある。
【0015】
〈タイヤ10の構造〉
また、タイヤ10は、ゴム41の成形品である。ゴム41には、タイヤ10の骨格を形成するカーカス42やベルト43やビードワイヤー44などと称されるタイヤコードが内蔵されている。カーカス42には、例えば、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどの高分子材料からなる樹脂性コード等が使用されうる。ベルト43には、例えば、高炭素鋼が束ねられたスチールワイヤーが用いられる。ビードワイヤー44には、例えば、高炭素鋼が束ねられたスチールワイヤーが用いられる。このようにカーカス42やベルト43やビードワイヤー44などのタイヤコードは、タイヤ10に所要の機械強度を付与する部材である。タイヤコードは、それぞれ所要の機械強度を有する材料で構成されている。
【0016】
カーカス42は、タイヤコードと称されるコードが含まれたコード層である。カーカス42は、トレッド部34、タイヤ10の両側のショルダー部33、サイドウォール部32、ビード部31の内部において連続している。ベルト43は、トレッド部34においてカーカス42の外径側に配置され、周方向に連続したコード層である。ビードワイヤー44は、スチールワイヤーを束ねてゴムで被覆したリング状の補強部材である。ビードワイヤー44は、タイヤ10の両側のビード部31にそれぞれ配置されている。ビードワイヤー44には、カーカス42の端部が折り返されている。ビードワイヤー44は、カーカス42の端部を保持している。ビードワイヤー44は、カーカス42に掛かるテンションを受け止めてリムに固定する役目を担っている。このようにタイヤコードが内蔵されていることによって、荷重、衝撃、充填空気圧などに耐える機械的な強度が確保されている。また、タイヤ10の内周面、タイヤコードの内側には、インナーライナーと称されるゴム層が形成されており、気密性が確保されている。タイヤコードの内側には、オーバーレイヤーと称されるゴム層が形成されており、オーバーレイヤーの表面部(外側部)にトレッド部34が形成されている。
【0017】
なお、ここでは、いわゆるラジアル構造の空気入りタイヤが例示されているが、タイヤは、特に言及されない限りにおいて、ラジアル構造に限定されない。ここで開示されるタイヤは、上述のようなトレッド部の摩耗を検知することができる。タイヤは、外周面に沿って周方向に連続した接地面を有するトレッド部を備えているとよい。かかる観点において、タイヤの構造は、特段言及されない。タイヤは、いわゆるバイアス構造でもよい。また、タイヤはチューブを有するチューブタイヤでもよい。タイヤは、トレッド部34だけを張り替えることができるリドレッドタイヤでもよい。
【0018】
ここで開示されるタイヤでは、カーカス42にタイヤコードが含まれている。
図2は、タイヤカーカス用プライの縦糸群と横糸群の配置を模式的に示す平面図である。
図3は、タイヤカーカス用プライの縦糸群と横糸群の配置を模式的に示す断面図である。
【0019】
カーカス42のタイヤコードは、
図2および
図3に示されているように、縦糸群60と、横糸群70とを有している。カーカス42では、これら縦糸群60と横糸群70とがゴムで被服されている。
【0020】
縦糸群60には、S撚りの片撚りコードからなるS撚りの縦糸61aとZ撚りの片撚りコードからなるZ撚りの縦糸61bとが含まれている。縦糸群60は、複数の縦糸61a,61bが横方向に沿って並べられている。この実施形態では、縦糸群60は、S撚りの縦糸61aとZ撚りの縦糸61bとが交互に配置されている。ここで、縦糸群60のうち隣り合うS撚りの縦糸61aとZ撚りの縦糸61bとを一組の縦糸61a,61bとする。横糸群70は、縦糸群60に対して横方向に通された複数の横糸71を有している。横糸群70の複数の横糸71は、
図3に示されているように、それぞれ縦糸群60のうち一組の縦糸61a,61b毎に前(F)と後(Rr)に順に通されている。つまり、
図3に示されているように、縦糸群60は、S撚りの片撚りコードからなるS撚りの縦糸61aとZ撚りの片撚りコードからなるZ撚りの縦糸61bとを一組とし、一組の縦糸61a,61b毎に、前後に横切るように横糸71が通されている。
【0021】
この実施形態では、縦糸群60の縦糸61a,61bは、アラミド繊維からなる。ここで、縦糸61a,61bに用いられるアラミド繊維は、例えば、1400dtex/2(デシテックス)である。ここで、/2は、上撚りが2本撚りという意味である。つまり、1400dtex/2は、1400dtexの下撚りコードを2本撚ったもので構成されている。横糸群70の横糸71は、27dtex/1が用いられている。つまり、横糸71には、27dtexの下撚りコードが用いられている。縦糸61a,61bと横糸71には、ここで例示されるものに限らず、タイヤコードに用いられる種々の繊維が用いられうる。
【0022】
図2において、矢印Aは、縦糸群60の搬送方向であり、縦糸群60が引っ張られる方向である。矢印B1は、カーカスプライの面内における、一組の縦糸61a,61bのうちS撚りの縦糸61aの残留トーションの方向を示している。矢印B2は、カーカスプライの面内における、一組の縦糸61a,61bのうちZ撚りの縦糸61bの残留トーションの方向を示している。S撚りの縦糸61aの残留トーションの方向は、S撚りの縦糸の撚りが解ける方向に一致している。Z撚りの縦糸61bの残留トーションの方向は、Z撚りの縦糸の撚りが解ける方向と傾向が一致している。残留トーションの方向は、縦糸がそれぞれ流れる方向と傾向が一致している。換言すると、残留トーションの方向は、テンションが緩む際に縦糸がずれる向きに傾向が一致している。
【0023】
ここで開示されるタイヤの製造方法には、以下の工程が含まれうる。
縦糸群60を用意する工程と、縦糸群60に対して横糸71を通す工程と、縦糸群60と、縦糸群60に通された複数の横糸71からなる横糸群70とをゴムで被覆する工程とを有する。縦糸群60を用意する工程では、S撚りの縦糸61aとZ撚りの縦糸61bとが交互に配置され、横方向に沿って並べられる。横糸71を通す工程では、縦糸群60のうち隣り合うS撚りの縦糸61aとZ撚りの縦糸61bとを一組の縦糸61a,61bとし、縦糸群60のうち一組の縦糸61a,61b毎に前と後に順に通される。
【0024】
図2および
図3に示された形態では、縦糸群60に対して横糸71を通す工程において、S撚りの縦糸61aの撚りが解ける方向と、Z撚りの縦糸61bの撚りが解ける方向とが互いに離れるように、一組の縦糸61a,61bが設定されて横糸71が通される。
【0025】
このようにタイヤコードが織り込まれたタイヤカーカス用プライは、S撚りの片撚りコードからなる縦糸61aと、Z撚りの片撚りコードからなる縦糸61bとが一組となって、横糸71で纏められている。一組の縦糸61a,61bは、それぞれ残留トーション方向が、反対向きである。このため、横糸71で纏められた一組の縦糸61a,61bでは、互いの残留トーションが相殺される。この結果、縦糸群60の残留トーションに起因するタイヤカーカス用プライのゴム‐コード複合体のねじれが小さく抑えられる。タイヤカーカス用プライのねじれが小さく抑えられるので、タイヤカーカス用プライを用いて生タイヤの形状が安定しやすい。このため、加硫成形後のタイヤユニフォミティーを向上させることが期待できる。
【0026】
また、この実施形態では、一組の縦糸61a,61bは、横糸71が通される方向に沿って、S撚りの縦糸の撚りが解ける方向と、Z撚りの縦糸の撚りが解ける方向とが互いに離れる方向に向いている。このため、横糸71で纏められる一組の縦糸61a,61bは、互いに離れやすい。さらに、横糸71を通した際の糸の間隔の乱れも緩和されやすい。また、一組の縦糸61a,61bが接近し、擦れ合うことを抑制できる。この結果、縦糸群60のフレッティングによるタイヤ性能低下の防止を図ることができる。
【0027】
上述のように、縦糸群60の縦糸61a,61bは、この実施形態では、アラミド繊維からなる。アラミド繊維は、耐熱性・強度・難燃性・耐薬品性に優れている。他方で、アラミド繊維は、残留トーションによって糸が流れやすい傾向がある。上記のように、
図2に示された形態では、S撚りの片撚りコードからなる縦糸61aと、Z撚りの片撚りコードからなる縦糸61bとが一組となって、横糸71で纏められている。このため、縦糸群60の縦糸61a,61bが、アラミド繊維からなる場合でも、縦糸群60の残留トーションに起因するタイヤカーカス用プライのカールが小さく抑えられ、加硫成形後のタイヤユニフォミティーを向上させることができる。なお、ここでは、アラミド繊維を挙げているが、ポリエステル、ナイロンおよびレーヨンなどの他の繊維であっても、S撚りの片撚りコードからなる縦糸61aと、Z撚りの片撚りコードからなる縦糸61bとが一組となって、横糸71で纏められていることによって、縦糸群60の残留トーションに起因するタイヤカーカス用プライのカールが小さく抑えられうる。このように、縦糸群60の縦糸61a,61bは、アラミド、ポリエステル、ナイロンおよびレーヨンのうち少なくとも一つの繊維からなるとよい。縦糸群60の縦糸61a,61bには、高分子材料からなる繊維が採用されているとよい。縦糸61a,61bに用いられる繊維は、同じ材料が用いられていてもよい。また、縦糸61a,61bに用いられる繊維には、2種以上の異なる材料が含まれていてもよい。なお、縦糸61a,61bの太さは、特に言及されない限りにおいて限定されず、タイヤコードに用いられうる太さの繊維が適宜に用いられる。特に限定されないが、縦糸61a,61bには、例えば、940dtex~3300dtexの糸が用いられうる。
【0028】
ところで、
図2および
図3に示された形態では、縦糸群60を用意する工程において、一組の縦糸61a,61bは、横糸71が通される方向に沿って、S撚りの縦糸61aの撚りが解ける方向と、Z撚りの縦糸61bの撚りが解ける方向とが互いに離れる方向に向けられている。ここで開示されるタイヤは、かかる形態に限定されない。
【0029】
図4および
図5は、他の形態を示す図である。このうち、
図4は、タイヤカーカス用プライの縦糸群と横糸群の配置を模式的に示す平面図である。
図5は、タイヤカーカス用プライの縦糸群と横糸群の配置を模式的に示す断面図である。
【0030】
図4および
図5に示された形態では、一組の縦糸61a,61bは、横糸71が通される方向に沿って、S撚りの縦糸61aの撚りが解ける方向と、Z撚りの縦糸61bの撚りが解ける方向とが互いに向かい合う方向に向いている。この場合、縦糸群60に対して横糸71を通す工程において、S撚りの縦糸61aの撚りが解ける方向と、Z撚りの縦糸61bの撚りが解ける方向とが互いに向かい合うように、一組の縦糸61a,61bが設定されて横糸71が通される。
【0031】
かかる構成によれば、横糸71によって纏められる一組の縦糸61a,61bは、糸が流れる方向が相殺されるので、横糸71によって纏められる一組の縦糸61a,61bの位置が安定している。また、一組の縦糸61a,61bが纏まりやすく横糸71を通しやすい。かかる構成によれば、縦糸群60の残留トーションに起因するタイヤカーカス用プライのねじれが小さく抑えられる。タイヤカーカス用プライのねじれが小さく抑えられるので、タイヤカーカス用プライを用いて生タイヤの形状が安定しやすい。このため、加硫成形後のタイヤユニフォミティーを向上させることが期待できる。
【0032】
上述した実施形態では、横糸71は、縦糸群60のうち隣り合うS撚りの縦糸61aとZ撚りの縦糸61bとを一組の縦糸61a,61bとし、縦糸群60のうち一組の縦糸61a,61b毎に前と後に順に通されている。
図2~
図5に示された形態では、横糸71は、全て縦糸群60のうち一組の縦糸61a,61b毎に前と後に順に通されている。本案ではこれに限らない。横糸71の一部において、縦糸群60に対して異なる通され方がされた横糸71が含まれていてもよい。上述したように、縦糸群60の残留トーションに起因するタイヤカーカス用プライのねじれが小さく抑えるとの観点において、横糸群70の複数の横糸71のうち少なくとも一部の横糸71が、縦糸群60のうち隣り合うS撚りの縦糸61aとZ撚りの縦糸61bとを一組の縦糸61a,61bとし、縦糸群60のうち一組の縦糸61a,61b毎に前と後に順に通されているとよい。縦糸群60の残留トーションに起因するタイヤカーカス用プライのねじれが小さく抑えるとの観点において、例えば、カーカス42(
図1参照)に含まれる横糸71のうち、例えば、60%以上、好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%の横糸が、縦糸群60のうち隣り合うS撚りの縦糸61aとZ撚りの縦糸61bとを一組の縦糸61a,61bとし、縦糸群60のうち一組の縦糸61a,61b毎に前と後に順に通されているとよい。
【0033】
以上、ここでの開示について、種々説明したが、ここでの開示は、特に言及されない限りにおいて、上述した実施形態や変形例に限定されない。また、種々言及した実施形態や変形例の各構成は、互いに阻害しない関係であれば、適宜に組み合わせることができる。
【0034】
本発明(1)は、タイヤおよびその製造方法に関する。
ここで、本発明(1)におけるタイヤは、
複数の縦糸が横方向に沿って並べられた縦糸群と、
前記縦糸群に対して横方向に通された複数の横糸を有する横糸群と、
前記縦糸群と横糸群とを被覆するゴムと
を有し、
前記縦糸群は、S撚りの縦糸とZ撚りの縦糸とが交互に配置されており、
前記横糸群の複数の横糸のうち少なくとも一部の横糸は、前記縦糸群のうち隣り合うS撚りの縦糸とZ撚りの縦糸とを一組の縦糸とし、前記縦糸群のうち前記一組の縦糸毎に前と後に順に通されている。
【0035】
本発明(2)は、本発明(1)におけるタイヤに関し、
前記一組の縦糸は、前記横糸が通される方向に沿って、S撚りの縦糸の撚りが解ける方向と、Z撚りの縦糸の撚りが解ける方向とが互いに離れる方向に向いている。
【0036】
本発明(3)は、本発明(1)におけるタイヤに関し、
前記一組の縦糸は、前記横糸が通される方向に沿って、S撚りの縦糸の撚りが解ける方向と、Z撚りの縦糸の撚りが解ける方向とが互いに向かい合う方向に向いている。
【0037】
本発明(4)は、本発明(1)から(3)までの何れかに記載されたタイヤに関し、
前記縦糸が、アラミド、ポリエステル、ナイロンおよびレーヨンのうち少なくとも一つの繊維からなる。
【0038】
本発明(5)は、タイヤの製造方法に関する。
ここで、本発明(5)におけるタイヤの製造方法は、
縦糸群を用意する工程と、
前記縦糸群に対して、横糸を通す工程と、
前記縦糸群と、前記縦糸群に通された複数の横糸からなる横糸群とをゴムで被覆する工程と
を有し、
前記縦糸群を用意する工程では、S撚りの縦糸とZ撚りの縦糸とが交互に、横方向に沿って並べられ、
前記横糸を通す工程では、前記縦糸群のうち隣り合うS撚りの縦糸とZ撚りの縦糸とを一組の縦糸とし、前記縦糸群のうち前記一組の縦糸毎に前と後に順に通される。
【0039】
本発明(6)は、本発明(5)におけるタイヤの製造方法に関し、
前記横糸を通す工程において、S撚りの縦糸の撚りが解ける方向と、Z撚りの縦糸の撚りが解ける方向とが互いに離れるように前記一組の縦糸が設定されている。
【0040】
本発明(7)は、本発明(5)におけるタイヤの製造方法に関し、
前記横糸を通す工程において、S撚りの縦糸の撚りが解ける方向と、Z撚りの縦糸の撚りが解ける方向とが互いに向かい合うように前記一組の縦糸が設定されている。
【0041】
本発明(8)は、本発明(5)から(7)までの何れかに記載されたタイヤの製造方法に関し、
前記縦糸が、アラミド、ポリエステル、ナイロンおよびレーヨンのうち少なくとも一つの繊維からなる。
【符号の説明】
【0042】
10 タイヤ
11 ホイールリム
31 ビード部
32 サイドウォール部
33 ショルダー部
34 トレッド部
34a 溝
35 スリップサイン
41 ゴム
42 カーカス
43 ベルト
44 ビードワイヤー
60 縦糸群
61a S撚りの縦糸
61b Z撚りの縦糸
70 横糸群
71 横糸