(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100545
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】タイヤ製造装置およびタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/26 20060101AFI20240719BHJP
B29D 30/38 20060101ALI20240719BHJP
B29D 30/30 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B29D30/26
B29D30/38
B29D30/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004619
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】中谷 泰輔
【テーマコード(参考)】
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215VA02
4F215VD10
4F215VK02
4F215VL12
4F215VP01
4F501TA02
4F501TC10
4F501TD03
4F501TL01
4F501TL10
4F501TV17
(57)【要約】
【課題】テキスタイルコード周辺の空気をより確実に骨格部材の外部に押し出す。
【解決手段】タイヤ製造装置100は、テキスタイルコード5Aを含むシート状のタイヤの骨格部材4、5が巻回される円筒状のドラム20と、ドラム20と軸線方向を揃えるように配置されたブラシローラ30と、ドラム20に巻回された骨格部材4、5にブラシローラ30を押し当てる押圧機構40と、を備える。ブラシローラ30は、円筒状の軸31と、軸31によって保持された第1グループの毛32Aと、軸31によって保持され第1グループの毛32Aと混在するように配置された第2グループの毛32Bと、を備える。第2グループの毛32Bの長さは、第1グループの毛32Aの長さよりも短い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テキスタイルコードを含むシート状のタイヤの骨格部材が巻回される円筒状のドラムと、
前記ドラムと軸線方向を揃えるように配置されたブラシローラと、
前記ドラムに巻回された前記骨格部材に前記ブラシローラを押し当てる押圧機構と、を備え、
前記ブラシローラは、
円筒状の軸と、
前記軸によって保持された第1グループの毛と、
前記軸によって保持され、前記第1グループの毛と混在するように配置された第2グループの毛と、を備え、
前記第2グループの毛の長さは、前記第1グループの毛の長さよりも短い、
タイヤ製造装置。
【請求項2】
前記骨格部材は、前記テキスタイルコードにゴムフィルムがトッピングされたプライと、インナーライナーと、を含み、
前記インナーライナーは、前記ドラムに対して前記プライよりも径方向の内側に巻かれ、軸線方向の長さが前記プライよりも短い、
請求項1に記載のタイヤ製造装置。
【請求項3】
前記第2グループの毛は、前記第1グループの毛よりも剛性が高い、
請求項1に記載のタイヤ製造装置。
【請求項4】
テキスタイルコードを含むシート状のタイヤの骨格部材を円筒状のドラムに巻く工程と、
前記ドラムに巻回された前記骨格部材にブラシローラを押し当てる工程と、を含み、
前記ブラシローラは、
円筒状の軸と、
前記軸によって保持された第1グループの毛と、
前記軸によって保持され、前記第1グループの毛と混在するように配置された第2グループの毛と、を備え、
前記第2グループの毛の長さは、前記第1グループの毛の長さよりも短い、
タイヤの製造方法。
【請求項5】
前記骨格部材は、前記テキスタイルコードにゴムフィルムがトッピングされたプライと、インナーライナーと、を含み、
前記インナーライナーは、前記ドラムに対して前記プライよりも径方向の内側に巻かれ、軸線方向の長さが前記プライよりも短い、
請求項4に記載のタイヤの製造方法。
【請求項6】
前記第2グループの毛は、前記第1グループの毛よりも剛性が高い、
請求項4に記載のタイヤ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ製造装置、および、タイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、タイヤのインナーライナー(特許文献1ではライナ)とプライとを円筒状に成形するタイヤ部品アプライヤが開示されている。特許文献1に開示されたタイヤ部品アプライヤは、タイヤ組立ドラムと、タイヤ組立ドラムに巻きつけられたインナーライナーおよびプライをタイヤ組立ドラムに押し当てるブラシローラと、を備えている。特許文献1に開示されたブラシローラは、タイヤドラムの軸方向の外縁部のブラシ剛性が中心線近傍よりも高く構成されている。これにより、ブラシローラがタイヤ組立ドラムの中心線近傍を押す力を弱く、外縁部を押す力を強くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テキスタイルコードを含むシート状のタイヤの骨格部材を円筒状に成形する際にブラシローラを使用すると、ブラシの毛が押しつけ力により屈折する。本願発明者の知見によれば、この毛の屈折により押しつけ力が分散して弱まり、その結果、テキスタイルコード周辺の空気を骨格部材の外部に押し出すことが十分にできない場合がある。
【0005】
ここでは、テキスタイルコード周辺の空気をより確実に骨格部材の外部に押し出すことができるタイヤ製造装置を提案する。また、テキスタイルコード周辺の空気をより確実に骨格部材の外部に押し出すことができるタイヤの製造方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示するタイヤ製造装置は、テキスタイルコードを含むシート状のタイヤの骨格部材が巻回される円筒状のドラムと、前記ドラムと軸線方向を揃えるように配置されたブラシローラと、前記ドラムに巻回された前記骨格部材に前記ブラシローラを押し当てる押圧機構と、を備える。前記ブラシローラは、円筒状の軸と、前記軸によって保持された第1グループの毛と、前記軸によって保持され前記第1グループの毛と混在するように配置された第2グループの毛と、を備えている。前記第2グループの毛の長さは、前記第1グループの毛の長さよりも短い。
【0007】
また、ここに開示するタイヤの製造方法は、テキスタイルコードを含むシート状のタイヤの骨格部材を円筒状のドラムに巻く工程と、前記ドラムに巻回された前記骨格部材にブラシローラを押し当てる工程と、を含む。前記ブラシローラは、円筒状の軸と、前記軸によって保持された第1グループの毛と、前記軸によって保持され前記第1グループの毛と混在するように配置された第2グループの毛と、を備えている。前記第2グループの毛の長さは、前記第1グループの毛の長さよりも短い。
【0008】
上記タイヤ製造装置およびタイヤの製造方法によれば、ブラシローラの第1グループの毛が押しつけ力によって屈折しても、第2グループの毛が骨格部材に押し当るため、ブラシローラの押しつけ力を保つことができる。そのため、上記タイヤ製造装置およびタイヤの製造方法によれば、テキスタイルコード周辺の空気をより確実に骨格部材の外部に押し出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】タイヤの製造工程の一部を示す工程図である。
【
図4】サイドウォールゴム、インナーライナー、およびプライが重なった状態を模式的に示す断面図である。
【
図6】プライに当て付けた状態のブラシローラの模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態に係るタイヤ製造装置およびタイヤの製造方法を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。各図面は、一例を示すのみであり、特に言及されない限りにおいて本発明を限定しない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
図1は、一実施形態に係るタイヤ1の断面図である。
図1に示すように、タイヤ1は、自動車等のホイールに装着されたときに地面に接地するトレッド部2、タイヤ1の側面を構成するサイドウォール3、タイヤ1の内側面を形成するインナーライナー4、タイヤ1の骨格を形成するプライ5、およびホイールとの接続部であるビード6等を備えている。タイヤ1は、未加硫のトレッドゴム、サイドウォールゴム3A(
図3参照)等のゴム材料でインナーライナー4、プライ5、ビードコア6A等を巻き込んで成形したローカバー(生タイヤ)を加硫することにより製造される。
【0012】
図2は、タイヤ1の製造工程の一部を示す工程図である。
図2に示すように、タイヤ1の製造工程には、押出成形工程S10と、切断工程S20と、プライ製作工程S30と、ビード製作工程S40と、成形工程S50と、加硫工程S60と、が含まれている。押出成形工程S10では、押出成形装置のダイプレートからゴム材料が連続的に押し出される。切断工程S20では、押出成形工程S10で押出成形された帯状のゴム材料を予め定められた長さに切断する。これにより、トレッド部2を形成するトレッドゴムや、サイドウォール3を形成するサイドウォールゴム3Aが形成される。
【0013】
プライ製作工程S30では、テキスタイルコード5A(
図4参照)にゴムフィルム5B(同じく
図4参照)をトッピングし、タイヤ1の骨格部材の1つであるプライ5を形成する。ビード製作工程S40では、ビードワイヤにエイペックスゴムを貼付してビードコア6Aを形成する。
【0014】
成形工程S50では、プライ5とインナーライナー4とによってビードコア6Aを巻き上げ、さらに、これにサイドウォールゴム3Aとトレッドゴムとを組み合わせて、ローカバーを成形する。ただし、成形工程S50は、例えば、プライ5とインナーライナー4とによってビードコア6Aを巻き上げる1st成形工程と、これにサイドウォールゴム3Aを貼付する工程と、さらにこれにトレッドゴムを組み付けて成形する2nd成形工程と、に分けられていてもよい。サイドウォールゴム3Aは、2nd成形工程でプライ5等に組み合わされてもよい。加硫工程S60では、ローカバーを加硫してタイヤ1を加硫成形する。これにより、タイヤ1が完成する。
【0015】
[成形機の構成]
以下では、成形工程S50において使用される成形機10の構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る成形機10の模式的な側面図である。本実施形態に係るタイヤ製造装置100は、成形機10を備えている。
図3に示すように、成形機10は、テキスタイルコード5Aを含むタイヤ1の骨格部材が巻回される円筒状のドラム20と、ドラム20と軸線方向を揃えるように配置されたブラシローラ30と、ドラム20に巻回された骨格部材にブラシローラ30を押し当てる押圧機構40と、を備えている。図示は省略するが、成形機10は、トレッドゴムを装着する機構や、膨張してローカバーを成形するブラダーをさらに備えている。本実施形態では、タイヤ1の骨格部材には、インナーライナー4と、テキスタイルコード5Aにゴムフィルム5Bがトッピングされたプライ5と、が含まれている。なお、タイヤ1の骨格部材に含まれるインナーライナー4の枚数およびプライ5の枚数は複数であってもよい。図面では、ドラム20およびブラシローラ30の軸線方向を符号Xで示す。
図3では、軸線方向Xは、紙面奥行き方向である。
【0016】
図3に示すように、本実施形態では、ドラム20には、インナーライナー4およびプライ5の他に、サイドウォールゴム3Aが巻かれる。これらは、ドラム20の側(径方向内側)から、サイドウォールゴム3A、インナーライナー4、プライ5の順に配置される。
図4は、サイドウォールゴム3A、インナーライナー4、およびプライ5が重なった状態を模式的に示す断面図である。
図4は、ドラム20の軸線方向Xおよび上下方向に延びる縦断面を
図3のY方向に向かって見た図である。
図4に示すように、サイドウォールゴム3Aは、ドラム20の軸線方向Xの端部に巻かれ、ドラム20よりも軸線方向Xの外側にはみ出している。関係する装置構成の図示および説明や詳しい説明は省略するが、
図4の状態で貼り合わされたサイドウォールゴム3A、インナーライナー4、およびプライ5の端部がビードコア6Aを包むように巻き上げられることにより、タイヤ1のビード6が形成される。サイドウォールゴム3Aは立ち上がり、サイドウォール3を形成する。
【0017】
図4に示すように、プライ5は、インナーライナー4よりもドラム20の軸線方向Xの外側にはみ出している。インナーライナー4は、プライ5よりもドラム20の軸線方向Xの内側に下がっている。インナーライナー4は、ドラム20に対してプライ5よりも径方向の内側に巻かれ、軸線方向Xの長さがプライ5よりも短い。そのため、サイドウォールゴム3Aとプライ5との間の一部には、インナーライナー4の厚みに相当する隙間4aが形成されている。
【0018】
ドラム20は、円筒状に構成され、円筒の軸線21周りに回転する。成形機10は、ドラム20を回転させる駆動部を備えていてもよい。ただし、ドラム20は、例えば、ブラシローラ30の回転に伴って従動的に回転されてもよい。
【0019】
ブラシローラ30は、サイドウォールゴム3A、インナーライナー4、およびプライ5をドラム20に押し当てて貼り合わせる部材である。ブラシローラ30は、サイドウォールゴム3A、インナーライナー4、およびプライ5のうちで最も外側に配置されたプライ5を押す。ブラシローラ30は、プライ5を押すことにより、プライ5のテキスタイルコード5Aとゴムフィルム5Bとの間の空気、プライ5とインナーライナー4との間の空気、インナーライナー4とサイドウォールゴム3Aとの間の空気などを外部に押し出す。サイドウォールゴム3A、インナーライナー4、およびプライ5を重ね合わせたものの中に残留している空気が多いと、加硫後のタイヤ1にディフェクトが発生する可能性がある。
【0020】
図5は、ブラシローラ30の模式的な側面図である。
図5に示すように、ブラシローラは、円筒状の軸31と、軸31によって保持され放射状に延びる多数の毛32を備えている。ブラシローラ30は、長さの異なる複数種類の毛32を備えている。ここでは、ブラシローラ30は、長さの異なる2種類の毛32を備えている。ただし、ブラシローラ30は、長さの異なる3種類以上の毛32を備えていてもよい。以下、長さが長い方の毛32を第1グループの毛32Aと、長さが短い方の毛32を第2グループの毛32Bとも呼ぶ。第1グループの毛32Aと第2グループの毛32Bとは、境界を形成することなく混在して配置されている。
【0021】
第1グループの毛32Aと第2グループの毛32Bとは、ここでは、同じ材料によって形成されている。毛32の材料は、好適には、例えば、ナイロンである。毛32の材料がナイロンである場合、その線径(直径)は、好ましくは、2mm以下である。毛32の線径(直径)は、さらに好ましくは、1.2mm以下である。毛32の材料がナイロンであって直径が1.2mm以下であれば、毛32の好ましい剛性が得られる。ただし、第1グループの毛32Aと第2グループの毛32Bとは、異なる材料によって形成されていてもよい。毛32の材料は特に限定されない。
【0022】
第1グループの毛32Aの長さと第2グループの毛32Bの長さとを異ならせる理由については後述する。第1グループの毛32Aと第2グループの毛32Bとの長さの差D1は、好適には、2mm以上6mm以下である。
【0023】
押圧機構40は、ドラム20に巻回された骨格部材(ここでは、インナーライナー4およびプライ5)にブラシローラ30を押し当てる機構である。押圧機構40は、例えば、エアシリンダを備えている。ただし、押圧機構40が備えるアクチュエータはエアシリンダには限定されず、例えば、電動モータや油圧シリンダであってもよい。成形機10は、ブラシローラ30を軸線周りに回転させる駆動部を備えていてもよい。
【0024】
成形工程S50は、サイドウォールゴム3A、インナーライナー4、およびプライ5をドラム20に巻く工程と、ドラム20に巻回されたサイドウォールゴム3A、インナーライナー4、およびプライ5にブラシローラ30を押し当てる工程と、を含んでいる。サイドウォールゴム3A、インナーライナー4、およびプライ5をドラム20に巻く工程では、ブラシローラ30をドラム20から離してドラム20を回転させる。サイドウォールゴム3A、インナーライナー4、およびプライ5にブラシローラ30を押し当てる工程では、押圧機構40によってブラシローラ30をドラム20の方に押す。ただし、押圧機構40は、ドラム20をブラシローラ30に押し当てるように押してもよく、ドラム20およびブラシローラ30をともに押してもよい。
【0025】
[実施例]
以下では、実施例について説明する。表1は、毛32の線径(直径)と第2グループの毛32Bの長さとを振ってタイヤ1を製造したときの条件および評価結果を示す表である。
【表1】
【0026】
第1グループの毛32Aの長さは20mmとした。表1に示すように、第2グループの毛32Bの長さは2mm~18mmの範囲において2mm間隔で振った。毛32の材料としてはナイロンを使用した。毛32の直径は、表1に示すように、1.6mm、1.4mm、1.2mm、1mmの間で振った。プライ5とサイドウォールゴム3Aとの間の隙間の幅(インナーライナー4の厚さ)は、3mmとした。評価としては、ローカバーおよび加硫後のタイヤ1にエア残りがなければOK、エア残りがあればNGとした。
【0027】
表1に示すように、第2グループの毛32Bの長さを第1グループの毛32Aよりも短くすることにより、エア残りの評価結果が向上した。特に毛32の直径が小さく、毛32の剛性が低い場合には、効果が顕著に見られた。詳しくは、毛32の直径が1.6mmの場合には、第2グループの毛32Bの長さが14mm~18mmにおいてエア残りの評価結果がOKであった。毛32の直径が1.4mmの場合には、第2グループの毛32Bの長さが10mm~18mmにおいてエア残りの評価結果がOKであった。毛32の直径が1.2mmおよび1mmの場合には、第2グループの毛32Bの長さが2mm~18mmにおいてエア残りの評価結果がOKであった。
【0028】
上記より、第2グループの毛32Bの好適な長さは14mm以上18mm以下(第1グループの毛32Aと第2グループの毛32Bとの長さの好適な差は2mm以上6mm以下)であることが分かる。第1グループの毛32Aと第2グループの毛32Bとの長さの差が2mm以上6mm以下であれば、実施例のどの線径でもエア残りを抑制する効果が見られる。
【0029】
また、毛32の直径が1.2mm以下の場合には、第2グループの毛32Bの長さがほぼどのような長さであっても(具体的には、2mm~18mmのどの長さであっても)、エア残りを抑制する効果が見られる。よって、毛32の材料がナイロンである場合、毛32の好ましい直径は1.2mm以下である。
【0030】
図6は、プライ5に当て付けた状態のブラシローラ30の模式的な側面図である。
図6に示すように、ブラシローラ30をプライ5に当て付けると、長さの長い第1グループの毛32Aが屈折する。本願発明者の知見によれば、従来のブラシローラのように全ての毛の長さが同じブラシローラを使用する場合には、毛の屈折により、プライ5を押す力が分散して弱まる。その結果、サイドウォールゴム3A、インナーライナー4、およびプライ5の内部の空気をこれらの外部に押し出すことが十分にできない場合がある。
【0031】
それに対し、本実施形態に係るブラシローラ30によれば、第1グループの毛32Aが屈折すると、
図6に示すように、それにより第2グループの毛32Bがプライ5に当接し、プライ5を押す力があまり弱まらない。そのため、サイドウォールゴム3A、インナーライナー4、およびプライ5の内部の空気をより確実に押し出すことができる。
【0032】
表1に示した結果より、毛32の剛性が弱い方が、第2グループの毛32Bの長さの選択に自由度が生まれる。一方、第2グループの毛32Bと第1グループの毛32Aとの差がある程度以下であれば(表1の例では6mm以下であれば)、毛32の剛性の選択に自由度が生まれる。
【0033】
[実施形態の作用効果]
以下に、本実施形態に係るタイヤ製造装置100が奏することのできる作用効果について説明する。
【0034】
本実施形態に係るタイヤ製造装置100は、テキスタイルコード5Aを含むシート状のタイヤ1の骨格部材4、5が巻回される円筒状のドラム20と、ドラム20と軸線方向を揃えるように配置されたブラシローラ30と、ドラム20に巻回された骨格部材4、5にブラシローラ30を押し当てる押圧機構40と、を備えている。ブラシローラ30は、円筒状の軸31と、軸31によって保持された第1グループの毛32Aと、軸31によって保持され第1グループの毛32Aと混在するように配置された第2グループの毛32Bと、を備えている。第2グループの毛32Bの長さは、第1グループの毛32Aの長さよりも短い。
【0035】
かかるタイヤ製造装置100によれば、ブラシローラ30を骨格部材4、5に押し当てることにより第1グループの毛32Aが屈折しても、第2グループの毛32Bが骨格部材4、5に当接し、骨格部材4、5を押す力があまり弱まらない。そのため、テキスタイルコード5A周辺の空気をより確実に骨格部材4、5の外部に押し出すことができる。
【0036】
本実施形態では、タイヤ1の骨格部材4、5は、テキスタイルコード5Aにゴムフィルム5Bがトッピングされたプライ5と、インナーライナー4と、を含んでいる。インナーライナー4は、ドラム20に対してプライ5よりも径方向の内側に巻かれ、軸線方向Xの長さがプライ5よりも短い。かかる構成によれば、プライ5よりもドラム20の径方向の内側にインナーライナー4の厚さに相当する隙間4aができる。この隙間4aの空気は抜けにくいため、本実施形態に係るブラシローラ30を効果的に利用することができる。
【0037】
[他の実施形態]
以上、一実施形態に係るタイヤ製造装置およびタイヤの製造方法について、種々説明した。しかし、本発明のタイヤ製造装置およびタイヤの製造方法は、特に言及されない限り、上述した実施形態に限定されない。例えば、成形機の構成は上記したものに限定されず、タイヤの製造工程は上記したものに限定されない。
【0038】
例えば、第1グループの毛32Aと第2グループの毛32Bとは異なる剛性を有していてもよい。好ましくは、第2グループの毛32Bは、第1グループの毛32Aよりも剛性が高くてもよい。第2グループの毛32Bの剛性を第1グループの毛32Aよりも高くする(第1グループの毛32Aの剛性を第2グループの毛32Bよりも低くする)ことにより、第1グループの毛32Aと第2グループの毛32Bとの長さの差に高い自由度を持たせつつ(実施例を参照)、剛性の高い第2グループの毛32Bにより、タイヤ1の骨格部材4、5を強く押すことができる。剛性の差は、例えば、第1グループの毛32Aと第2グループの毛32Bとで素材を異ならせることによって実現してもよい。または、剛性の差は、例えば、第1グループの毛32Aと第2グループの毛32Bとで線径を異ならせることによって実現してもよい。
【0039】
種々言及した実施形態や変形例の各構成は、互いに阻害しない関係であれば、適宜に組み合わせることができる。本明細書は以下の発明を含んでおり、以下の発明は、上記した実施形態には限定されない。
【0040】
本発明(1)は、テキスタイルコードを含むシート状のタイヤの骨格部材が巻回される円筒状のドラムと、ドラムと軸線方向を揃えるように配置されたブラシローラと、ドラムに巻回された骨格部材にブラシローラを押し当てる押圧機構と、を備えている。ブラシローラは、円筒状の軸と、軸によって保持された第1グループの毛と、軸によって保持され第1グループの毛と混在するように配置された第2グループの毛と、を備えている。第2グループの毛の長さは、第1グループの毛の長さよりも短い。
【0041】
本発明(2)は、本発明(1)に記載のタイヤ製造装置であり、骨格部材は、テキスタイルコードにゴムフィルムがトッピングされたプライと、インナーライナーと、を含んでいる。インナーライナーは、ドラムに対してプライよりも径方向の内側に巻かれ、軸線方向の長さがプライよりも短い。
【0042】
本発明(3)は、本発明(1)または(2)に記載のタイヤ製造装置であり、第2グループの毛は、第1グループの毛よりも剛性が高い。
【0043】
本発明(4)は、タイヤの製造方法であって、テキスタイルコードを含むシート状のタイヤの骨格部材を円筒状のドラムに巻く工程と、ドラムに巻回された骨格部材にブラシローラを押し当てる工程と、を含んでいる。ブラシローラは、円筒状の軸と、軸によって保持された第1グループの毛と、軸によって保持され第1グループの毛と混在するように配置された第2グループの毛と、を備えている。第2グループの毛の長さは、第1グループの毛の長さよりも短い。
【0044】
本発明(5)は、本発明(4)に記載のタイヤの製造方法であり、骨格部材は、テキスタイルコードにゴムフィルムがトッピングされたプライと、インナーライナーと、を含んでいる。インナーライナーは、ドラムに対してプライよりも径方向の内側に巻かれ、軸線方向の長さがプライよりも短い。
【0045】
本発明(6)は、本発明(4)または(5)に記載のタイヤ製造方法であり、第2グループの毛は、第1グループの毛よりも剛性が高い。
【符号の説明】
【0046】
1 タイヤ
3A サイドウォールゴム
4 インナーライナー(骨格部材)
5 プライ(骨格部材)
5A テキスタイルコード
5B ゴムフィルム
10 成形機
20 ドラム
30 ブラシローラ
31 軸
32 毛
32A 第1グループの毛
32B 第2グループの毛
40 押圧機構
100 タイヤ製造装置