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特開2024-10055マイタンシノールをアシル化する改善された方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010055
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】マイタンシノールをアシル化する改善された方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 498/18 20060101AFI20240116BHJP
   A61K 31/537 20060101ALI20240116BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C07D498/18
A61K31/537
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023181529
(22)【出願日】2023-10-23
(62)【分割の表示】P 2022029253の分割
【原出願日】2013-09-26
(31)【優先権主張番号】61/705,731
(32)【優先日】2012-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504039155
【氏名又は名称】イミュノジェン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(72)【発明者】
【氏名】ウィディソン,ウェイン・シー.
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,ロバート・ヤンシン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】マイタンシノールのアミノ酸エステルの調製方法を提供する。
【解決手段】マイタンシノールを乾燥剤の存在下でアミノ酸のN-カルボキシ無水物(NCA)と反応させることによってマイタンシノールのアミノ酸エステルを調製する方法が開示される。マイタンシノールのアミノ酸エステルを調製する方法において、マイタンシノールと、アミノ酸のN-カルボキシ無水物との反応完了後に求核試薬を反応混合物に加える、改善された方法もまた開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式:
【化1】
(式中、Rは水素、置換されていてもよいC1~C10アルキル基、又はアミノ酸側鎖であり、但し、前記アミノ酸側鎖が反応性官能基を有する場合には前記反応性官能基は保護されていてもよく;
は水素又は置換されていてもよいC1~C10アルキル基である)で表される化合物を調製する方法であって、
マイタンシノールとN-カルボキシ無水物とを、塩基及び乾燥剤を追加して含ませた反応混合物において反応させ、それによって前記式(I)の化合物を形成するステップを含み、
前記N-カルボキシ無水物は次の式:
【化2】
で表されるものである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連案件への参照
本願は、米国特許法第119条(e)項に基づき、2012年9月26日出願の米国仮出願第61/705,731号の出願日の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、マイタンシノイド及びその抗体複合体の合成において中間体を調製するための改善された方法である。
【背景技術】
【0003】
マイタンシノイドは細胞傷害性の高い化合物であり、下に示すようなマイタンシノールや、マイタンシノールのC-3エステルがある(米国特許第4,151,042号)。
【0004】
【化1】
【0005】
天然及び合成の、マイタンシノールのC-3エステルは2つの群に分類できる:(a)N-メチル-L-アラニン又はN-メチル-L-アラニンの誘導体をもったC-3エステルである、マイタンシン(2)及びその類似体(例えばDM1及びDM4)(米国特許第4,137,230号;第4,260,608号;第5,208,020号;及び、Chem.Pharm.Bull.12:3441(1984));(b)単純なカルボン酸をもったC-3エステルであるアンサマイトシン(米国特許第4,248,870号;第4,265,814号;第4,308,268号;第4,308,269号;第4,309,428号;第4,317,821号;第4,322,348号;及び第4,331,598号)。
【0006】
マイタンシン(2)、その類似体、及び各アンサマイトシン種は、マイタンシノール(1)のエステル化によって調製できる、マイタンシノールのC3エステルである。米国特許第7,301,019号及び第7,598,375号は、下に示す通り、塩基の存在下、アミノ酸のN-カルボキシ無水物(NCA、5)とともにマイタンシノール(1)をアシル化して、マイタンシノールのアミノ酸エステル(May-AA、6)を形成する方法を記載する。
【0007】
【化2】
【0008】
マイタンシノールのアミノ酸エステルは、カルボン酸に結合してマイタンシノイドをもたらすことができる貴重な中間体である。例えば下に示す通り、マイタンシノールと(4S)-3,4-ジメチル-2,5-オキサゾリジンジオン(5a)の反応は、N2’-デアセチル-マイタンシン(6a)を形成し、次に3-(メチルジチオ)プロピオン酸(7)に結合し、塩酸N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド(EDAC)を用いてDM1-SMe(8)を形成することができる。
【0009】
【化3】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
マイタンシノールのアミノ酸エステルを形成するアシル化反応の大きな短所は、それが、余剰(Extra)なN-メチル-アラニル成分(「余剰NMA」(9)と称す)をC3側鎖に含む副生成物をも形成することである。N2’-デアセチル-マイタンシンがア
シル化されるとき、余剰NMA(9)もまたアシル化され、余剰NMA-DM1-SMe(9a)を形成する。余剰NMA(9)及び余剰NMA-DM1-SMe(9a)の構造を下に示す。
【0011】
【化4】
【0012】
下に示す通り、還元によってDM1(3)をDM1-SMe(8)から調製することができ、そうしてまた、余剰NMA-DM1-SMe(9a)を全て余剰NMA-DM1(10)に変換する。
【0013】
【化5】
【0014】
余剰NMA-DM1(10)はDM1(3)から除去することが困難であるが、これは、両者の化合物が似た極性を有し、精製したDM1(3)のHPLCトレースにおいてピークのオーバーラップを見せることによる。DM1(3)とDM4(4)は抗体複合体を調製するのに用いられており、そのいくつかは現在臨床治験にある。
【0015】
したがって、かかるマイタンシノイドを調製する方法の収率と頑健性を改善し、その調製で用いる反応の間に形成される副生成物を最小にする必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
実施例1~4に示す通り、現在、マイタンシノールとアミノ酸のN-カルボキシ無水物との反応に乾燥剤を添加することがマイタンシノールのアミノ酸エステルの収率を実質的
に増加させるということが分かっている。また、実施例6~8に示す通り、マイタンシノールとアミノ酸のN-カルボキシ無水物との反応の後に続いて求核試薬を使う予備クエンチングステップを追加することが、余剰NMAなど望ましくない副生成物の形成を実質的に低減させるということも分かっている。これらの発見に基づいて、マイタンシノールのアミノ酸エステルを調製する改善された方法が本明細書に開示される。
【0017】
本発明の第1の実施形態は、式(I):
【0018】
【化6】
(式中、Rは水素、置換されていてもよいC1~C10アルキル基、又はアミノ酸側鎖であり、但し、アミノ酸側鎖が官能基を有する場合はその官能基は保護されていてもよく;Rは水素又は置換されていてもよいC1~C10アルキル基である)で表されるマイタンシノールのアミノ酸エステルを調製する方法である。
【0019】
本方法はマイタンシノールとN-カルボキシ無水物とを、塩基及び乾燥剤を追加して含ませた反応混合物において反応させることを含む。N-カルボキシ無水物は次の式:
【0020】
【化7】
で表される。式(II)の変数は全て式(I)において定義した通りである。
【0021】
本発明の第2の実施形態は、式(I)で表されるマイタンシノールのアミノ酸エステルを調製する方法であって、a)マイタンシノールと、式(II)で表されるN-カルボキシ無水物とを、塩基を追加して含ませた反応混合物において反応させることと;b)ステップa)で未反応であったN-カルボキシ無水物を求核試薬と反応させることと、を含む。式(I)及び(II)の変数は全て本発明の第1の実施形態において定義した通りである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、N2’-デアセチル-マイタンシンをカルボン酸と縮合剤でアシル化することを示す模式図である。
図2図2は、N2’-デアセチル-マイタンシンをカルボン酸と縮合剤でアシル化することを示す模式図である。
図3図3は、N2’-デアセチル-マイタンシンを活性化カルボン酸でアシル化することを示す模式図である。
図4図4は、N2’-デアセチル-マイタンシンを活性化カルボン酸でアシル化することを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、マイタンシノールと、式(II)で表されるN-カルボキシ無水物とから、式(I)で表されるアミノ酸エステルを調製する方法に関する。アミノ酸エステルは、さらにエステル化してDM1、DM4等のマイタンシノイドを調製することができ、次いでマイタンシノイドの抗体複合体へとさらに生成させることができる。好ましくは、アミノ酸エステルは式(Ia)で表され、N-カルボキシ無水物は式(IIa)で表される:
【0024】
【化8】
及び
【0025】
【化9】
式(Ia)及び(IIa)の変数は式(I)及び(II)のところで記載した通りである。
【0026】
式(I)、(II)、(Ia)、及び(IIa)の場合、好ましくは、Rは天然のアミノ酸の側鎖であり、但し、その側鎖が反応性官能基を有する場合にその官能基は保護されていてもよく;Rはメチルである。あるいは、Rはアルキルであり、Rはメチルである。より好ましくは、RとRの両方はメチルである。
【0027】
本発明の第1の実施形態では、本方法はマイタンシノールと、式(II)又は(IIa)で表されるN-カルボキシ無水物とを、塩基及び乾燥剤を追加して含ませた反応混合物において反応させることを含む。
【0028】
一好適実施形態では、反応混合物はルイス酸をさらに含む。好適ルイス酸は金属カチオンを含む。
【0029】
別の好適実施形態では、まずマイタンシノールとN-カルボキシ無水物を反応させ、次いで反応混合物を炭酸水素又は炭酸を含有する水溶液に接触させるか、又は反応混合物を金属捕捉剤に接触させる。金属捕捉剤は当技術分野で既知のものを用いることができる(例えば“The Power of Functional Resin in Organic Synthesis”by Aubrey Mendoca,Wiley-VCH Verlag GmbH&Co.KGaA,2008の第9章参照)。金属捕捉剤
の例としては、ポリマー系及びシリカ系金属捕捉剤(例えば、Sigma-AldrichのQuadraPure(商標)及びQuadraSil(商標)、SiliCycleのSiliaMetS(登録商標)、Johnson MattheyのSmopex(登録商標)、Biotageの金属捕捉剤)、炭素系捕捉剤(例えば、Sigma-AldrichのQuadraPure(商標)C)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
別の好適実施形態では、まずマイタンシノール及びN-カルボキシ無水物を反応させ、次いでルイス酸の金属カチオンを反応混合物から除去する。例えば、反応混合物を炭酸水素又は炭酸を含有する水溶液に接触させるか、又は反応混合物を金属捕捉剤に接触させるかすることによって、ルイス酸の金属カチオンを反応混合物から除去する。
【0031】
第2の実施形態では、本方法は、a)マイタンシノールと、式(II)又は(IIa)で表されるN-カルボキシ無水物とを、塩基を追加して含ませた反応混合物において反応させることと;b)ステップa)で未反応であったN-カルボキシ無水物を求核試薬と反応させることと、を含む。
【0032】
一好適実施形態では、ステップa)の反応混合物はルイス酸をさらに含む。好適ルイス酸は金属カチオンを含む。
【0033】
別の好適実施形態では、ステップb)の後の反応混合物を炭酸水素又は炭酸を含有する水溶液に接触させるか、又は金属捕捉剤に接触させる。
【0034】
別の好適実施形態では、ステップb)を実施した後、即ち求核試薬を未反応N-カルボキシ無水物に反応させた後、ルイス酸の金属カチオンを反応混合物から除去する。例えば、反応混合物を炭酸水素又は炭酸を含有する水溶液に接触させるか、又は反応混合物を金属捕捉剤に接触させることによって、ルイス酸の金属カチオンを反応混合物から除去する。
【0035】
なおも別の好適実施形態では、ステップa)の反応混合物は乾燥剤をさらに含む。
【0036】
「塩基」という用語は、水素イオン(プロトン)を受け取ることができる物質、又は一対の価電子を与えることができる物質を指す。適例な塩基は、式(II)で表されるN-カルボキシ無水物に対して非求核性・非反応性である。適切な塩基の例としては、トリアルキルアミン(例えば、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、及び1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン)、金属アルコキシド(例えば、tert-ブトキシドナトリウム及びtert-ブトキシドカリウム)、アルキル金属(例えば、tert-ブチルリチウム、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、リチウムジ-イソプロピルアミド、ペンチルナトリウム、及び2-フェニルイソプロピル-カリウム)、アリール金属(例えば、フェニルリチウム)、金属水素化物(例えば、水素化ナトリウム)、金属アミド(例えば、ナトリウムアミド、カリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド及びリチウムテトラメチルピペリジド)、及びシリコン系アミド(例えば、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド及びカリウムビス(トリメチルシリル)アミド)が挙げられる。好ましくは、塩基はトリアルキルアミンである。より好ましくは、塩基はジイソプロピルエチルアミンである。
【0037】
「乾燥剤」という用語は水分を溶液から除去することができる剤を指す。適切な乾燥剤の例としては、モレキュラーシーブ、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、及び硫酸マグネシウムが挙げられるがこれらに限定されない。乾燥剤の物理的形態としては、顆粒状ビーズ又は粉末が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、乾燥剤
はモレキュラーシーブである。あるいは、乾燥剤は硫酸ナトリウムである。
【0038】
「ルイス酸」という用語は、酸性物質であって、それ自体の原子の1つで安定な基を完成させるに当たって他の分子の孤立電子対を使うことのできる物質を指す。本開示の方法で用いられる適例なルイス酸としては、亜鉛トリフレート、塩化亜鉛、臭化マグネシウム、マグネシウムトリフレート、銅トリフレート、臭化銅(II)、塩化銅(II)、及び塩化マグネシウムが挙げられる。好ましくは、ルイス酸は亜鉛トリフレートである。
【0039】
「求核試薬」という用語は、式(II)で表されるN-カルボキシ無水物の正電荷中心と反応してN-カルボキシ無水物を分解する反応物を指す。適切な求核試薬の例としては、水、アルコール(メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、又はtert-ブタノール)、及び一級又は二級アミン(例えば、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン等)が挙げられる。好ましくは、求核試薬はアルコールである。あるいは、求核試薬は水である。
【0040】
式(I)で表されるマイタンシノールのアミノ酸エステルを調製するための適例な反応条件は下に記載する。具体的な条件は実施例で記載する。
【0041】
N-カルボキシ無水物に対しては等モル量のマイタンシノールを用いることができるけれども、より一般的にはN-カルボキシ無水物を過剰に用いる。マイタンシノール対N-カルボキシ無水物の適例なモル比は、1:1~1:10、より一般的には1:2~1:7又は1:1~1:4の範囲である。一好適実施形態では、マイタンシノール対N-カルボキシ無水物のモル比は約1:5である。
【0042】
本開示の方法では、ルイス酸を用いてもよい。その場合、典型的には、マイタンシノールに対して過剰に、例えば20倍まで過剰に用いる。より一般的にはマイタンシノール対ルイス酸のモル比は1:5~1:8、より好ましくは1:7の範囲である。より少ない量のルイス酸を用いることもできる。
【0043】
反応溶媒から溶存水を除去するのに十分な量の乾燥剤を用いる。乾燥剤の量は決定的に重要なものではないが、但し、反応溶液を実質的に無水物にするものとする。乾燥剤は、反応容器の中に直接用いるか、又は容器中で焼結ガラス容器など半透性バリアに入れて用いることができる。
【0044】
反応に要する時間は、高圧液体クロマトグラフィーや薄層クロマトグラフィー等、但しこれらに限定されない技術を用いて、当業者に容易にモニターできる。典型的な反応は24時間撹拌した後完了するが、反応温度や反応物の濃度など種々の要因によって、反応の実施はより遅くもより速くもなり得る。
【0045】
反応は、-20℃~80℃の間、好ましくは-10℃~60℃の間、より好ましくは-10℃~40℃の間、最も好ましくは0℃~35℃の間で実施できる。
【0046】
適切な溶媒は当業者に容易に決定でき、無水ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はジメチルアセトアミド(DMA)等の極性非プロトン性溶媒、ヘキサン、エーテル(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジオキサン等)、ジクロロメタン、又はその混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0047】
ルイス酸が反応混合物中に存在する場合、マイタンシノールとN-カルボキシ無水物の反応の後の反応混合物は、好ましくは、炭酸水素又は炭酸を含有する水溶液か、金属捕捉剤と接触させる。好ましくは、反応混合物は、炭酸水素又は炭酸を含有する水溶液か金属
捕捉剤と接触させる前に、求核試薬と反応させて過剰なN-カルボキシ無水物を分解する。
【0048】
金属カチオンを含むルイス酸が反応混合物中に存在する場合、反応のワークアップ(work-up)の一部として、好ましくは金属カチオンを反応混合物から除去する。金属カチオンの除去は、反応混合物を炭酸水素又は炭酸を含有する水溶液か金属捕捉剤と接触させることによって達成することができる。好ましくは、金属カチオンの除去の前にN-カルボキシ無水物を求核試薬と反応させる。
【0049】
ステップb)における求核試薬の量は、当業者に容易に決定できる。好ましくは、十分な量の求核試薬を用いて、未反応のN-カルボキシ無水物を分解する。これは、典型的には等モル量の求核試薬であるが、過剰な量の求核試薬を用いることもできる。典型的な反応は1時間撹拌した後完了するが、温度など種々の要因によって、反応の実施はより遅くもより速くもなり得る。
【0050】
また、本発明の範囲内にはマイタンシノールのアミノ酸エステルをアシル化する方法も入る。本方法は、式(I)又は式(Ia)で表されるマイタンシノールのアミノ酸エステルを上に記載した通りに調製したものを、式「RCOOH」を有するカルボン酸に縮合剤の存在下で反応させるか、又は式「RCOX」を有する活性カルボン酸に反応させて、次の式の1つで表される化合物をそれぞれ形成することを含む:
【0051】
【化10】
及び
【0052】
【化11】
【0053】
式(III)又は(IIIa)において、R及びRは式(I)、(II)、(Ia)、及び(IIa)において定義した通りであり;Rはアルキル基又は置換アルキル基であり;RCOXのXは脱離基である。好ましくは、Xは、ハロゲン化物、アルコキシ
基、アリールオキシ基、イミダゾール、又は、フェニルがニトロ若しくは塩化物で置換されていてもよい-S-フェニル、又は、Rが直鎖C1~C10アルキル基、分岐C1~C10アルキル基、環状C3~C10アルキル基、若しくはC1~C10アルケニル基である-OCORである。一実施形態では、上に記載の式「RCOX」において-COXは反応性エステル、例えば、置換されていてもよいN-サクシニミドエステルである。反応性エステルの例としては、N-サクシニミジル、N-スルホサクシニミジル、N-フタルイミジル、N-スルホフタルイミジル、2-ニトロフェニル、4-ニトロフェニル、2,4-ジニトロフェニル、3-スルホニル-4-ニトロフェニル、及び3-カルボキシ-4-ニトロフェニルエステルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0054】
好ましくは、Rは-Y-S-SRであり、YはC1~C10アルキレンであり、RはC1~C10アルキル、アリール、又はヘテロアリールである。別の代替形態では、Yは-CHCH-又は-CHCHC(CH-であり、Rはメチルである。
【0055】
別の実施形態では、Rは-L-Eであり;Lは
【0056】
【化12】
又は-(CHCHO)CHCHNHC(=O)CHCH-又は
【0057】
【化13】
であり;Eは
【0058】
【化14】
又は
【0059】
【化15】
又は
【0060】
【化16】
又は
【0061】
【化17】
であり;X’はハロゲン化物であり;nは1、2、3、4、5、又は6であり;mは0又は1~20の整数であり;qは0又は1である。あるいは、Lは-(CH-であり;nは上に定義した通りであるか又はnは5である。別の代替形態では、Lは
【0062】
【化18】
であり、n及びmは上に記載の通り;あるいは、nは4でmは3である。
【0063】
なおも別の代替形態では、R3は次の式:
【0064】
【0065】
【化19】
【0066】
【化20】
【0067】
【化21】
【0068】
【化22】
【0069】
【化23】
【0070】
【化24】
【0071】
【化25】
及び
【0072】
【化26】
より選択される。
【0073】
「縮合剤」という用語は、カルボン酸のヒドロキシル基と反応してそれを脱離基に変換し、アミン又はヒドロキシル基に置き換えることができる試薬を指す。適切な縮合剤の例としては、カルボジイミド(塩酸N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド)、ウロニウム、活性エステル、ホスホニウム、2-アルキル-1-アルキルカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン(2-イソブトキシ-1-イソブトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン)、2-アルコキシ-1-アルコキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン(2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン)、又はクロロギ酸アルキル(クロロギ酸イソブチル)が挙げられる。好ましくは、縮合剤はカルボジイミドである。より好ましくは、塩酸N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミドである。
【0074】
「脱離基」という用語は、アミン等、求核試薬に容易に置き換わることのできる、荷電成分又は非荷電成分の基を指す。当技術分野で周知のかかる脱離基としては、ハロゲン化物、エステル、アルコキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、トシレート、トリフレート、メ
シレート、ニトリル、アジド、イミダゾール、カルバミン酸、ジスルフィド、チオエステル、チオエーテル(即ち、-S-フェニルが置換されていてもよい)、及びジアゾニウム化合物が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、脱離基は、ハロゲン化物、アルコキシ基、アリールオキシ基、イミダゾール、又は、-NO若しくはクロロで置換されていてもよい-S-フェニル、又は、Rが直鎖C1~C10アルキル基、分岐C1~C10アルキル基、環状C3~C10アルキル基、若しくはC1~C10アルケニル基である-OCORである。別の好適実施形態では、脱離基は、反応性エステル中の置換され得る成分(例えば、-COX)である。反応性エステルとしては、N-サクシニミジル、N-スルホサクシニミジル、N-フタルイミジル、N-スルホフタルイミジル、2-ニトロフェニル、4-ニトロフェニル、2,4-ジニトロフェニル、3-スルホニル-4-ニトロフェニル、及び3-カルボキシ-4-ニトロフェニルエステルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0075】
本発明はまた、マイタンシノールのC3エステルを用いてその誘導体を調製する方法を含む。本方法は、上で調製した式(III)又は(IIIa)で表されるマイタンシノールのC3エステルを還元剤と反応させて、次の式の1つで表される化合物を形成するステップを含む:
【0076】
【化27】
及び
【0077】
【化28】
【0078】
式(IV)及び(IVa)において、R及びRは式(I)、(II)、(Ia)、及び(IIa)において定義した通りであり;Yは式(III)又は(IIIa)において定義した通りである。
【0079】
「還元剤」という用語は、ジスルフィド結合を硫化水素基に変換する、還元酸化反応の要素又は化合物を指す。適切な還元剤の例としては、ジチオスレイトール(DTT)、(
トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)(TCEP)、及びNaBHが挙げられる。
【0080】
が-LEである場合の式(III)若しくは(IIIa)の化合物、又は式(IV)若しくは(IVa)の化合物は、抗体又は修飾抗体と反応して抗体-マイタンシノイド複合体を形成することができる。例えば、米国特許第7,521,541号、第5,208,020号、及び第7,811,872号を参照のこと。あるいは、式(IV)又は(IVa)の化合物は二官能性クロスリンカーと反応してリンカー化合物を形成することが可能であり、このリンカー化合物は、抗体と反応して抗体-マイタンシノイド複合体を形成することのできる反応性基を保持する。例えば、米国特許第6,441,163号、米国特許出願公開第2011/0003969(A1)号、及び米国特許出願公開第2008/0145374号を参照のこと。
【0081】
「アルキル」とは、本明細書で使用される場合、直鎖、分岐、又は環状アルキルを指す。
【0082】
「直鎖又は分岐アルキル」とは、本明細書で使用される場合、炭素原子が1~20の飽和直鎖又は分岐鎖一価炭化水素ラジカルを指す。アルキルの例としては、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-メチル-1-プロピル、-CHCH(CH、2-ブチル、2-メチル-2-プロピル、1-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、2-メチル-2-ブチル、3-メチル-2-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-1-ブチル、-CHCHCH(CH、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、3,3-ジメチル-2-ブチル、1-ヘプチル、1-オクチル等が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、アルキルは1~10の炭素原子を有する。より好ましくは、アルキルは1~4の炭素原子を有する。
【0083】
「アルキレン」とは、本明細書で使用される場合、直鎖、分岐、又は環状アルキレンを指す。
【0084】
「直鎖又は分岐アルキレン」とは、本明細書で使用される場合、炭素原子が1~20の飽和直鎖又は分岐鎖二価炭化水素ラジカルを指す。アルキルの例としては、メチレン、エチレン、1-プロピレン、2-プロピレン、1-ブチレン、2-メチル-1-プロピレン、-CHCH(CH-、2-ブチレン、2-メチル-2-プロピレン、1-ペンチレン、2-ペンチレン、3-ペンチレン、2-メチル-2-ブチレン、3-メチル-2-ブチレン、3-メチル-1-ブチレン、2-メチル-1-ブチレン、-CHCHCH(CH-、1-ヘキシル、2-ヘキシレン、3-ヘキシレン、2-メチル-2-ペンチレン、3-メチル-2-ペンチレン、4-メチル-2-ペンチレン、3-メチル-3-ペンチレン、2-メチル-3-ペンチレン、2,3-ジメチル-2-ブチレン、3,3-ジメチル-2-ブチレン、1-ヘプチレン、1-オクチレン等が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、アルキレンは1~10の炭素原子を有する。より好ましくは、アルキレンは1~4の炭素原子を有する。
【0085】
「直鎖又は分岐アルケニル」とは、少なくとも1つの不飽和部位、即ち炭素-炭素二重結合をもった、炭素原子が2~20の直鎖又は分岐鎖一価炭化水素ラジカルを指し、アルケニルラジカルには、「シス」及び「トランス」配位、又は「E」及び「Z」配位を有するラジカルも含める。例としては、エチレニル又はビニル(-CH=CH)、アリル(-CHCH=CH)等が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、アルケニルは2~10の炭素原子を有する。より好ましくは、アルケニルは2~4の炭素原子を有
する。
【0086】
「環状アルキル」とは一価の飽和炭素環ラジカルを指す。好ましくは、環状アルキルは三~十員の単環ラジカルである。より好ましくは、環状アルキルはシクロヘキシルである。
【0087】
「アリール」とは、1つの水素原子を親芳香族環系の単一炭素原子から除去することによって誘導される、炭素原子が6~18の一価芳香族炭化水素ラジカルを意味する。アリールには、飽和・部分的不飽和環に縮合した芳香族環、又は、芳香族炭素環若しくは芳香族複素環を含む二環式ラジカルも含める。典型的なアリール基としては、ベンゼン(フェニル)、置換ベンゼン(例えば、パラニトロフェニル、オルトニトロフェニル、及びジニトロフェニル)、ナフタレン、アントラセン、インデニル、インダニル、1,2-ジヒドロナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル等、これらから誘導されるラジカルが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、アリールは、置換されていてもよいフェニル(例えば、フェニル、フェノール、又は保護フェノール)である。
【0088】
「ヘテロアリール」とは、五員環又は六員環の一価芳香族ラジカルを指し、窒素、酸素、及びイオウより互いに独立して選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含有する、5~18の原子の縮合環系(そのうちの少なくとも1つは芳香族)を含む。ヘテロアリール基の例としては、ピリジニル(例えば、2-ヒドロキシピリジニル)、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、ピリミジニル(例えば、4-ヒドロキシピリミジニル)、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、及びフロピリジニルがある。
【0089】
アルキル基に適切な置換基は、本開示の反応に大きく干渉しないものである。本開示の反応に干渉する置換基は当技術分野に周知の、例えば、T.W.Greene and P.G.M.Wuts“Protective Groups in Organic Synthesis”John Wiley&Sons,Inc.,New York 1999に記載の方法に従って保護することができる。適例な置換基としては、アリール(例えば、フェニル、フェノール、及び保護フェノール)、ヘテロアリール(例えば、インドリル及びイミダゾリル)ハロゲン、グアニジウム[-NH(C=NH)NH]、-
OR100、NR101102、-NO、-NR101COR102、-SR100、-SOR101で表されるスルホキシド、-SO101で表されるスルホン、硫酸-SO100、スルホン酸-OSO100、-SONR101102で表されるスルホンアミド、シアノ、アジド、-COR101、-OCOR101、-OCONR101102が挙げられ;R101及びR102はそれぞれ互いに独立して、H、直鎖、分岐、若しくは環状アルキル、1~10の炭素原子を有するアルケニル又はアルキニルより選択される。
【0090】
「ハロゲン化物」という用語は、-F、-Cl、-Br、又は-Iを指す。
【0091】
「アミノ酸」という用語は、NH-C(Raa’aa)-C(=O)OHで表される天然のアミノ酸又は非天然のアミノ酸を指し、Raa及びRaa’はそれぞれ互いに独立して、H、置換されていてもよい直鎖、分岐、若しくは環状アルキル、1~10の炭素原子を有するアルケニル若しくはアルキニル、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシ
クリルである。「アミノ酸」という用語はまた、-NH-C(Raa’aa)-C(=O)O-等、1つの水素原子がアミノ酸のアミン及び/又はカルボキシ末端から除去される場合の対応残基を指す。下の具体的な実施例は例示的に過ぎず、本開示の他の部分をいかようにも限定しないと解釈されるものとする。さらに工夫をしなくても、当業者は本明細書の記載に基づいて本発明を最大限活用することができると確信する。本明細書に引用される全ての刊行物は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、下に提示するいかなる技法も、特許請求する発明の範囲をいかようにも制限するものではない。
【実施例0092】
材料と方法
下に与えるプロセスパラメーターは、当業者の特定の必要性に合うように当業者が適応させ採用することができる。
【0093】
全ての反応は、アルゴン下、磁気撹拌によって実施した。テトラヒドロフラン及びジメチルホルムアミドをAldrichから無水物溶媒として購入した。マイタンシノールを(Widdison et al.,J.Med.Chem.,49:4392-4408(2006))に記載の通り生成させた。N-メチル-アラニン,(4S)-3,4-ジメチル-2,5-オキサゾリジンジオンのN-カルボキシ無水物を(Akssira,M.etal.,J.Marocain de Chimie Heterocyclique,1:44-47(2002))に記載の通りに調製した。核磁気共鳴(NMR)のスペクトル(H 400MHz、13C 100MHz)をBruker ADVANCE(商標)シリーズNMRで得た。HPLC/MSデータを、Agilent 1100シリーズHPLCにBruker ESQUIRE(商標)3000イオントラップ質量分析計を併せ用いて得た。HPLC法1を用いてDM1を分析した。他の分析には全てHPLC法2を用いた。
【0094】
分析HPLC法1:
UV検出器又は同等機器を備えた水(Water)HPLCシステム
カラム:YMC-Pack ODS-AQ 250×4.6mm;5μm(品番=AQ12S05-2546WT)
流量:1mL/分(グラジエント)
移動相:A=水1リッター中85%HPO1ml;B=アセトニトリル/テトラヒドロフラン 30:70(v/v)(注:LC/MS分析で移動相A中に、H3PO4の代わりに0.1%TFAを用いた)
グラジエント表:
【0095】
【表1】
ラン時間:60分+ポストタイム:10分
UV検出:252nm
注入量=アセトニトリル中約1mg/mlのDM1が5μL
カラム温度=15℃(他に記載していない場合)
試料温度=2~8℃
【0096】
分析HPLC/MS法2:
カラム:150×4.6mm C8、粒子サイズ 5ミクロン、Zorbax品番993967-906
溶媒:A脱イオン水+0.1%TFA
溶媒B:アセトニトリル
流量 1.0mL/分
温度:室温
注入量:15μL
グラジエント
【0097】
【表2】
HPLCトレース中データを0~25分表示した。
【0098】
分析HPLC法2のための試料調製:
所与の混合物のアリコート(20μL)をオートサンプラーバイアル中アセトニトリル(1.5mL)に加えた。バイアルにキャップをし、振盪し、次いで15℃のオートサンプラー中に置いた。各HPLCランごとに注入量(15μL)を分析した。
【0099】
実施例1 乾燥剤として4Aモレキュラーシーブを加えたDM1-SMeの調製
マイタンシノール(50.1mg、0.0888mmol)、(4S)-3,4-ジメチル-2,5-オキサゾリジンジオン(30.2mg、0.233mmol、2.6当量)、亜鉛トリフレート(133mg、0.366mol)及び、真空下250℃で予備乾燥し、次いで室温で冷却した4Aモレキュラーシーブ(0.50g)を、10mlフラスコに加えた。内容物を無水ジメチルホルムアミド(0.75mL)中に取り、ジイソプロピルエチルアミン(62μL、0.357mmol)を加えた。混合物を室温で24時間撹拌した。粗混合物の資料をHPLCによって分析したところ、N2’-デアセチル-マイタンシン生成物が総HPLC面積の80%を占めた。反応混合物を、1:1の飽和NaHCO:飽和NaCl(1.2mL)と酢酸エチル(3mL)で希釈し、混合し、次いでセライトでろ過し、次いでリン酸カリウム緩衝液(1mL、400mM、pH7.5)で洗った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、次いで蒸発させると、黄色い固体が形成された。この固体に、3-メチルジチオプロパン酸(25mg、0.16mmol)、塩酸N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド(30mg、0.16mmol)、及びジクロロメタン(3mL)を加えた。2時間撹拌した後、混合物を酢酸エチル(8mL)で希釈し、1.0M pH6.5リン酸カリウム緩衝液(2mL)で洗い、水溶液を酢酸エチル(2×8mL)で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、濃縮し、シリカクロマトグラフィー、95:5のジクロロメタン:メタノールで精製すると、51mg(70%)のDM1-SMeが得られた。
【0100】
実施例2 実施例1の10倍拡大
実施例1の反応を10倍大きい規模で行い、490mg(68%)のDM1-SMeを得た。
【0101】
実施例3 乾燥剤の添加のないDM1-SMeの調製
25mLフラスコの無水ジメチルホルムアミド(15mL)中にマイタンシノール(1.0g、1.77mmol)を溶解させ、氷/水浴中冷却した。2分後、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、0.92g、7.07mmol)及び亜鉛トリフレート(3.8g、10.6mmol)を磁気撹拌しながら加え、次いで(4S)-3,4-ジメチル-2,5-オキサゾリジンジオン(0.913g、7.07mmol)を手早く加え、混合物を24時間撹拌した。粗混合物の試料をHPLCによって分析したところ、N2’-デアセチル-マイタンシン生成物が総HPLC面積の65%を占めた。反応混合物を、1:1の飽和NaHCO:飽和NaCl(25mL)と酢酸エチル(40mL)で希釈し、混合し、次いでセライトでろ過し、飽和NaClで洗った。有機層を無水物硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、次いで蒸発させた。残渣をジクロロメタン(30mL)中に取り、3-メチルジチオプロパン酸(1.1g、7.0mmol)及び塩酸N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド(1.34g、7.0mmol)を手早く加え、反応物をアルゴン下室温で2時間撹拌した。混合物を酢酸エチル(30mL)で希釈し、1.0Mリン酸カリウム緩衝液(30mL)、pH6.5、で洗い、水溶液を酢酸エチル(2×40mL)で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮し、シリカクロマトグラフィー、95:5のジクロロメタン:メタノールで精製すると、698mg(50%)のDM1-SMeが得られた。
【0102】
実施例4 実施例3の繰り返し
実施例3の反応を同じ規模で繰り返し、735mg(53%)のDM1-SMeを得た。
【0103】
実施例5 粗N2-デアセチル-マイタンシン保存液
25mLフラスコの無水ジメチルホルムアミド(7mL)中にマイタンシノール(0.5g、0.89mmol)を溶解させ、氷/水浴中冷却した。2分後、ジイソプロピルエチルアミン(0.5g、3.5mmol)及び亜鉛トリフレート(1.9g、5.3mmol)を磁気撹拌しながら加え、次いで(4S)-3,4-ジメチル-2,5-オキサゾリジンジオン(4.52g、3.5mmol)を手早く加え、混合物を24時間撹拌した。この保存液のアリコート(各0.5mL)を次の実験で用いるため、各アリコートを約0.13mmolのマイタンシノールから作製した。
【0104】
実施例6 N2’-デアセチル-マイタンシン抽出とそれに続くプロピオン酸(対照)への結合
【0105】
【化29】
2’-デアセチル-マイタンシン保存液(0.50mL)を酢酸エチル(1.5mL)及び1:1の飽和NaCl:NaHCO(0.75mL)を含有する6mL容量バイアルに加え、手早くキャップをし、混合した。有機層を保持し、無水NaSO(120mg)上で乾燥した。有機層(1.0mL)を取り、プロピオン酸(20.0μL、0.27mmol)。溶液を、次いで、塩酸N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド(40mg、0.209mmol)を含有するバイアルへ移した。反応を2.5時間進行させ、その後それをHPLCによって分析した。
【0106】
下に示す通り、前述の反応の副生成物であるMay-NMA2から次の副生成物も生成した。
【0107】
【化30】
【0108】
17:16でHPLCパーセント面積の比率は3.0:71.7であった。16のMS(M+H+)706(M+Na)728;17のMS(M+Na)813。
【0109】
実施例7 実施例6の実験を繰り返した
17:16で、HPLCパーセント面積の比率は3.0:70.9であった。
【0110】
実施例8 N2’-デアセチル-マイタンシン抽出とそれに続くメタノール予備クエン
チに次のプロピオン酸への結合(過剰5aを破壊する予備クエンチ)
2’-デアセチル-マイタンシン保存液(0.50mL)を6mL容量バイアルに加え、それにメタノール(75μL、1.8mmol)を加え、バイアルにキャップをし、内容物を1時間磁気撹拌した。次いで酢酸エチル(1.5mL)及び1:1の飽和NaCl:NaHCO(0.75mL)を加え、バイアルにキャップをし、混合した。有機層を保持し、無水NaSO(120mg)上で乾燥した。有機層(1.0mL)を取り、プロピオン酸(20.0μL、0.27mmol)を加えた。次いで溶液を、塩酸N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド(40mg、0.209mmol)を含有するバイアルに移した。反応を2.5時間進行させ、その後それをHPLCによって分析した。17に対するHPLCのピークはほとんど検出できず、積分はできなかった。反応を繰り返しが、再度17はほとんど検出できず、積分はできなかった。したがって、予備クエンチング法は、望ましさがより低くない化合物15及び17を生成させる。
【0111】
実施例9 余剰NMA-DM1-SMe(9a)の合成
【0112】
【化31】
マイタンシノール(1.2mg、2.1mmol)を50mLフラスコへ秤量し、ジメチルホルムアミド(12mL)及びテトラヒドロフラン(6mL)の混合物に溶解させた。フラスコを氷/水浴中冷却した。5分後、ジイソプロピルエチルアミン(1.5mL、8.5mmol)、亜鉛トリフルオロメタンスルホン酸(4.5g、12.6mmol)、及び2,5-オキサゾリジンジオン、3,4-ジメチル(4S)(1.1g、8.5mmol)を逐次加えた。17時間撹拌した後、反応物を1:1の飽和水性NaCl:飽和水性NaHCO(14mL)及び酢酸エチル(100mL)で抽出した。有機層を保持し、無水NaSO上で乾燥した。乾燥剤を除去し、溶媒の約2/3を減圧回転蒸発に
よって除去した。次いで、N-メチル-N-[(2-メチルジチオ)-1-オキソプロピル]-L-アラニン(1.0g、4.2mmol)を加え、続いて塩酸N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミド(0.889g、4.6mmol)を加えた。塩化メチレン(10mL)を加えて混合物に溶解させた。4時間後、反応物を塩化メチレン(70mL)及び1:4の飽和水性NaCl:飽和水性NaHCO(20mL)で抽出した。有機層を保持し、無水NaSO上で乾燥した。溶媒を減圧回転蒸発によって除去した。得られた濃い油をアセトニトリル(3mL)中に溶解させ、物質の約1/2をwaters symmetry shield C8カラム(19×150mmミクロン、5ミクロン粒子サイズ)でHPLCによって精製した。カラムの溶出を、0.2%ギ酸を含有する脱イオン水で、アセトニトリルグラジエント(18分で30%~60%アセトニトリル)にて行った。カラムに95%アセトニトリルを5分間流し、次いでランとランの間に30%アセトニトリルで6分間再平衡化した。注入量の範囲は100~800uLである。未反応マイタンシノールを8.5分で溶出し、余剰NMA-DM1-SMeのイソマーで所望でないものを13.8分で溶出し、余剰NMA-DM1-SMeのイソマーで所望のものを15.1分で溶出した。何回かのランから得た所望の生成物断片を合わせ、溶媒を減圧回転蒸発によって除去した。残渣をできるだけ少ない量の酢酸エチルに取り、細かい不純物をKromasilシアノカラム(250mm×21mm、10ミクロン粒子サイズ)でHPLCによって除去した。カラムを67:9:24のヘキサン:2-プロパノール:酢酸エチルの定組成移動相により21mL/分でランにかけた。所望の生成物は22.6分で溶出し、不純物は12.6分で溶出した。何回かのランから得た生成物画分を合わせ、溶媒を減圧回転蒸発によって除去すると、生成物95mg(収率10%)が得られた。
1H NMR(400MHz,CDCl-d)δ=7.26,6.81(d,J=1.6Hz,1H),6.67(d,J=11.1Hz,1H),6.56(d,J=1.6Hz,1H),6.42(dd,J=11.4,15.2Hz,1H),6.30(s,1H),5.67(dd,J=9.1,15.2Hz,1H),5.52-5.40(m,1H),5.27(d,J=7.1Hz,1H),4.85-4.69(m,1H),4.26(t,J=10.9Hz,1H),3.96(s,3H),3.7(bs,1),3.57(d,J=12.6Hz,1H),3.48(d,J=8.8Hz,1H),3.34(s,3H),3.23(s,3H),3.10(d,J=12.6Hz,1H),3.03-2.90(m,3H),2.87(s,3H),2.82-2.64(m,5H),2.63-2.50(m,1H),2.45-2.30(m,3H),2.15(d,J=14.1Hz,1H),1.62(s,3H),1.57(d,J=13.6Hz,1H),1.45(d,J=6.3Hz,1H),1.29(d,J=7.1Hz,3H),1.26(d,J=6.3Hz,4H),1.18(d,J=6.3Hz,3H),0.79(s,3H)
13C NMR(CDCl3,100MHz)δ170.86,170.50,170.35,168.69,156.19,152.35,142.2,140.90,139.29,133.27,128.05,125.1,122.07,119.15,113.31,88.72,80.96,78.51,74.23,66.19,60.66,60.13,56.81,56.71,54.97,47.90,46.72,38.99,36.41,35.68,33.19,32.54,30.90,30.02,23.01,15.62,14.75,14.59,13.54,12.35.
HRMS 計算値 C4057ClN11(M+Na) m/z=891.3052;測定値 891.3049。
【0113】
実施例10 余剰NMA-DM1(10)の合成
【0114】
【化32】
2’-デアセチル-N2’-(3-メチルジチオ-1-オキソプロピル-N-メチル-L-アラニル)-マイタンシン(95mg、0.109mmol)を2:1のジメトキシエタン:100mMカリウムリン酸塩緩衝液pH7.5に溶解させ、そこにジチオスレイトール(110mg、mmol)を加えた。2時間後、溶液を、2:1の酢酸エチル:塩化メチレン(5mL)と飽和水性NaCl(1mL)の混合物で抽出した。有機層を保持し、無水Na2SO4上で乾燥した。乾燥剤を減圧ろ過によって除去し、溶媒を減圧回転蒸発によって除去した。残渣を、できるだけ少ない量の1:1の酢酸エチル:塩化メチレンに取り、Kromasilシアノカラム(250mm×21mm、10ミクロン粒子サイズ)でHPLCによって精製した。カラムを64:19:17のヘキサン:2-プロパノール:酢酸エチルの定組成移動相により21mL/分でランにかけた。所望の生成物を16分で溶出した。何回かのランから得た生成物断片を合わせ、溶媒を減圧回転蒸発によって除去すると、生成物62mg(収率69%)が得られた。
H NMR(400MHz,CDCl)δ6.81(d,J=1.6Hz,1H),
6.67(d,J=11.1Hz,1H),6.58(d,J=1.6Hz,1H),6.43(dd,J=15.3Hz,11.1Hz,1H),6.26(s,1H),5.67(dd,J=15.3Hz,9.0Hz,1H),5.47(q,J=6.6Hz,1H),5.28-5.22(m,J=6.7Hz,1H),4.81(dd,J=12.0Hz,2.9Hz,1H),4.26(t,J=10.5Hz,1H),3.96(s,3H),3.59(d,J=12.7Hz,1H),3.49(d,J=9.0Hz,1H),3.41(bs,1H),3.36(s,3H),3.24(s,3H),3.11(d,J=12.7Hz,1H),2.98(d,J=9.6Hz,1H),2.85(s,3H),2.84-2.80(m,1H),2.79(s,3H),2.76(s,1H),2.68-2.61(m,2H),2.58(d,J=12.1Hz,1H),2.17(dd,J=14.3Hz,J=2.8Hz,1H),1.71(t,J=8.4Hz,1H),1.64(s,3H),1.62-1.59(m,1H),1.49-1.40(m,,1H),1.31(d,J=6.9Hz,3H),1.29(d,J=6.4Hz,3H),1.27-1.23(m,1H),1.20(d,J=6.7Hz,3H),0.81(s,3H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)δ170.37,170.30,170.25,168.53,156.07,152.16,142.31,140.74,139.16,133.12,127.09,125.32,121.92,119.92,113.15,88.57,80.83,78.37,74.08,67.01,59.97,58.66,56.56,53.54,49.17,46.58,38.86,37.33,36.25,35.53,32.39,30.81,29.80,21.02,19.87,15.47,14.80,13.4,12.22.
HRMS 計算値 C3955ClN11S (M+Na) m/z=845.3174;測定値 845.3166。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式:
【化1】
(式中、Rは水素、置換されていてもよいC1~C10アルキル基、又はアミノ酸側鎖であり、但し、前記アミノ酸側鎖が反応性官能基を有する場合には前記反応性官能基は保護されていてもよく;
は水素又は置換されていてもよいC1~C10アルキル基である)で表される化合物を調製する方法であって、
マイタンシノールとN-カルボキシ無水物とを、塩基及び乾燥剤を追加して含ませた反応混合物において反応させ、それによって前記式(I)の化合物を形成するステップを含み、
前記N-カルボキシ無水物は次の式:
【化2】
で表されるものである、方法。
【請求項2】
次の式:
【化3】
(式中、Rは水素、置換されていてもよいC1~C10アルキル基、又はアミノ酸側鎖であり、但し、前記アミノ酸側鎖が反応性官能基を有する場合には前記反応性官能基は保護されていてもよく;
は水素又は置換されていてもよいC1~C10アルキル基である)で表される化合物を調製する方法であって、
a)マイタンシノールとN-カルボキシ無水物とを、塩基を追加して含ませた反応混合物において反応させ、それによって前記式(I)の化合物を形成するステップを含み、前記N-カルボキシ無水物は次の式:
【化4】
で表されるものであり、
b)ステップa)の反応混合物の未反応N-カルボキシ無水物を求核試薬と反応させるステップを含む、
方法。