(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100568
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】上端にカール部を有する金属カップ
(51)【国際特許分類】
B65D 1/26 20060101AFI20240719BHJP
B21D 51/26 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B65D1/26 110
B21D51/26 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004665
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠島 信宏
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 健
(72)【発明者】
【氏名】田中 章太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 江利華
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA08
3E033BA08
3E033BA09
3E033CA11
3E033CA14
3E033DA08
3E033DD02
3E033EA04
3E033GA02
(57)【要約】
【課題】洗浄性が向上したカール部を有する金属カップを提供する。
【解決手段】筒状の胴部壁3と、胴部壁3の下端を閉じている底部壁5とを有しており、胴部壁3の上部が開口されている金属カップ1において、胴部壁3の上部先端にカール部13が形成されており、カール部13により囲まれた中空部15は、密閉空間となっていることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の胴部壁と、該胴部壁の下端を閉じている底部壁とを有しており、該胴部壁の上部が開口されている金属カップにおいて、
前記胴部壁の上部の先端部分にカール部が形成されており、
前記カール部により囲まれた中空部は、密閉空間となっていることを特徴とする金属カップ。
【請求項2】
前記カール部の先端は、側面図でみて、上下方向に延びている前記胴部壁の面と接触しており、これにより、前記中空部が密閉空間となっている請求項1に記載の金属カップ。
【請求項3】
前記カール部の先端には、樹脂製被覆材が設けられており、側面図でみて、上下方向にストレートに延びている前記胴部壁の面に、該樹脂製被覆材が接触しており、これにより、前記中空部が密閉空間となっている請求項1に記載の金属カップ。
【請求項4】
前記カール部の先端の指向方向は、側面図でみて、前記胴部壁の上下方向に延びている面との接触部に対して30~90度の範囲の角度を有している請求項2または3に記載の金属カップ。
【請求項5】
前記カール部は、外方側にカールしている請求項1に記載の金属カップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口上端にカール部を有している金属カップに関する。
【背景技術】
【0002】
各種飲料の喫飲などのために使用されるカップ形状の器としては、従来、紙やプラスチック製のものが広く使用されていた。これらの素材から成形された器は、軽量であり、しかも成形容易であるため、安価であり、使い捨ての用途に適しているからである。しかしながら、近年における資源の枯渇、ゴミ問題などの環境上の観点から、金属カップが注目されている。金属カップは、紙やプラスチック製のカップに比して、強度や耐久性が高く、繰り返し使用に適しており、資源の枯渇化やゴミの発生を大幅に抑制することができるからである。
【0003】
ところで、金属カップは、鋭利な開口端部が人体に触れないように、その上端には、丸められたカール部が形成されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記のようなカール部が形成されている金属カップは、洗浄性に難がある。即ち、喫飲に使用された金属カップは、廃棄せずに、洗浄して繰り返し使用することができるという利点を有しているが、カールされている部分に洗浄水が残存し易く(水はけが悪い)、洗浄後の乾燥に時間がかかるなどの問題を生じており、その改善が必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、洗浄性が向上したカール部を有する金属カップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、筒状の胴部壁と、該胴部壁の下端を閉じている底部壁とを有しており、該胴部壁の上部が開口されている金属カップにおいて、
前記胴部壁の上部先端にカール部が形成されており、
前記カール部により囲まれた中空部は、密閉空間となっていることを特徴とする金属カップが提供される。
【0008】
本発明の金属カップにおいては、
(1)前記カール部の先端は、側面図でみて、上下方向に延びている前記胴部壁の面と接触しており、これにより、前記中空部が密閉空間となっていること、
(2)前記カール部の先端には、樹脂製被覆材が設けられており、側面図でみて、上下方向にストレートに延びている前記胴部壁の面に、該樹脂製被覆材が接触しており、これにより、前記中空部が密閉空間となっていること、
(3)前記カール部の先端の指向方向は、側面図でみて、前記胴部壁の上下方向に延びている面との接触部に対して30~90度の範囲の角度を有していること、
(4)前記カール部は、外方側にカールしていること、
という態様を好適に採り得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明の金属カップは、カール部に囲まれている中空部が密閉空間となっている。即ち、この金属カップを水などの液体で洗浄したとき、カール部で囲まれている部分には、このような洗浄液は侵入しない。従って、水等の洗浄液の液はけが良好であり、優れた洗浄性を示す。勿論、カール部に囲まれている中空部には、金属カップに入れられた飲料も侵入しないので、この中空部に洗浄液が侵入しないからといって、衛生性が損なわれることも無い。
このように、本発明の金属カップは、洗浄性に優れており、カール部を有していながら、繰り返し使用に適している金属カップの特性を十分に発揮できる。また、カール部の形成により、鋭利な金属先端が人体に接触することも防止され、安全性も高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の金属カップの全体の形態を示す概略側断面図である。
【
図2】
図1の金属カップが有するカール部の一例を示す部分拡大側断面図。
【
図3】
図1の金属カップが有するカール部の他の例を示す部分拡大側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、全体として1で示す本発明の金属カップは、上端が開口している筒状胴部壁3と、該胴部壁3の下端を閉じている底部壁5とを有している。
【0012】
底部壁5は、フラットであってもよいが、通常、環状の接地部7を有しており、この接地部7の外側が、屈曲しているチャーム部9により筒状胴部壁3の下端に連なっており、接地部7の内側が、上げ底状の凹部11となっていることが好適である。底部壁5がこのような形態を有することにより、鋭利な角部の形成を回避することができる。
【0013】
また、スタック性を確保する場合には、
図1に示されているように、筒状胴部壁3の上方部分は、通常、若干外方に膨らんだ湾曲形状を有しており、筒状胴部壁3の上端開口径Dが、筒状胴部壁3の下端の外径dよりも大きく設定される。特に、これにより、空の金属カップ1を積み重ねることができるので、搬送や保管に有利である。
【0014】
上述した形態の金属カップ1においては、また、筒状胴部壁3の上端に、外方に向かって凸となっているカール部13が全周にわたって形成されている。即ち、このような上端に連ねてカール部13を形成することにより、金属製の鋭利な端部が人体に接触することが有効に防止される。
【0015】
このような形態の金属カップ1において、構成素材である金属は、種々の金属ないし合金材であってよく、例えば、アルミニウム、銅、鉄或いは、これらの金属を含む合金、さらにはブリキなどの錫めっき鋼板や化成処理を施したアルミニウム板などの表面処理鋼板であってよい。一般的には、スチール、ステンレススチール、アルミニウムもしくはアルミニウム合金などが好適であるが、特に軽量性や加工性などの観点から、アルミニウム若しくはその合金が好適である。
【0016】
さらに、金属カップ1の内面は、有機樹脂被覆が積層されていてもよい。有機樹脂被覆としては、アクリル系塗料、ウレタン系塗料、シリコン系塗料、フッ素系塗料などの塗料に由来する被覆や、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性樹脂であり、耐腐食性や、過酷な成形加工に際しての表面荒れなどを抑制するために設けられるものであり、通常、100μm以下の薄い膜である。
また、上記のような有機樹脂被覆は、印刷特性や耐腐食性、耐傷付き性を確保するため、金属カップ1の外面に設けられていてもよい。
【0017】
このような金属カップ1は、例えば、金属製の薄肉の素板(内面となる側には、前述した有機樹脂被覆が形成されていてよい)を用いての打抜き、絞り、再絞り-しごき加工を行い、必要に応じて再絞りを複数回行い、次いで底部についてドーミング加工を行い、その後、洗浄乾燥を行った後、必要に応じて、外面塗料の焼付、仕上げニス塗布焼付などにより外面に有機樹脂被覆を形成し、さらに、塗料により有機樹脂被覆を形成する場合には、外面塗料の塗布及び焼き付けを行った後、カール加工が行われ、カール部13が形成される。
【0018】
上記金属カップ1のカール部13の側面図を拡大して示す
図2を参照して、本発明においては、カール部13により囲まれた中空部15が、密閉空間となっていることが大きな特徴である。
即ち、
図2において、胴部壁3の上端は、外方に向かってカールしてカール部13を形成しているが、カール部13の先端13aは、上下方向に延びている胴部壁3の外側面3aに接触しており、これにより、カール部13により囲まれた中空部15が、密閉空間となっている。
【0019】
図2の例は、カール部13の先端13aが胴部壁3の外側面3aに直接接触していることにより中空部15を密閉空間としたものであるが、
図3に示すように、カール部13の先端13aに、樹脂製被覆材17を設けておき、この樹脂製被覆材17を胴部壁3の面3aに直接接触せしめることによっても、カール部13により囲まれた中空部15を密閉空間とすることができる。
図2の例では、剛性のカール部13の先端13aが直接胴部壁3の上端部分の面3aに接触しているため、先端13aと面3aとの間に微小な空隙が形成され易いが、樹脂製被覆材17を設けた場合には、該被覆材17の柔軟性が高く、封止材として有効に機能するため、中空部15の密閉度を高くすることができ、さらには、カール部13の先端13a(鋭利な部分)が外部に露出せずに隠れた状態にあるため、本発明には最適である。
【0020】
本発明では、カール部13により囲まれた中空部15が密閉空間となっているため、優れた洗浄性が発揮される。
即ち、従来の金属カップ1では、水等の洗浄液で洗浄し、さらにはすすぎを行った場合、中空部15内に洗浄液などが侵入してしまうため、所謂水はけが悪く、乾燥等に長時間を要するという不具合がある。しかるに、本発明では、中空部15が密閉空間となっているため、喫飲に際して飲料などの液体の中空部15への侵入が有効に防止されると共に、繰り返し使用に際して行われる洗浄に際して、水等の液体が中空部15に侵入する不都合が確実に防止されるため、この金属カップ1は、水はけがよく、洗浄性に優れており、繰り返し使用に最適なものとなっている。
【0021】
尚、本発明において、上記樹脂製被覆材17の素材としては、特に制限されないが、熱融着により、カール部13の先端13aに容易に設けることができる熱可塑性樹脂が好適であり、特に弾性が高く、封止材としての機能に優れた熱可塑性エラストマーが最適である。このような熱可塑性エラストマーとしては、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体等のエチレン-α-オレフィン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体等のエチレン-α-オレフィン-非共役ジエン共重合体エラストマー、スチレン-ブタジエン共重合体エラストマー、スチレン-イソプレン共重合体エラストマー、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体等のスチレン系エラストマーを挙げることができ、一般的には、コスト等の観点から、エチレン-α-オレフィン共重合体エラストマーが好適である。
【0022】
また、本発明においては、
図2及び
図3に示されているように、カール部13の先端13aの指向方向Xは、胴部壁3の上下方向に延びている面3aとの接触部分(接線方向)に対して30~90度の範囲の角度θを有していることが好ましい。このような角度θを有しているとき、カール部13の先端13aのコーナー部から側面にかけて面3aと接触し、両者が密着する部分の面積が大きくなり、高い密閉度を確保することができるばかりか(
図2の例)、カール部13の先端13aが外部に露出しない状態に位置しており、安全性の点でも好適である。
【0023】
尚、
図2及び
図3の例では、カール部13が外方側に向かってカールしているが、勿論、このカール部13は、内方側に向かってカールしている形態であってもよい。この場合、カール部13の先端13a(或いは樹脂製被覆材17)が接触する胴部壁3の面3aは、金属カップ1(胴部壁3)の内面側の面となる。
【0024】
上述した本発明の金属カップ1は、優れた洗浄性を有し、さらには安全性も高く、スポーツ観戦などに際して販売されるビールなどの炭酸飲料や各種ジュース類のためのカップとして好適に使用される。
【符号の説明】
【0025】
1:金属カップ
3:胴部壁
3a:胴部壁の面
5:底部壁
7:接地部
13:カール部
13a:カール部先端
15:中空部
17:樹脂製被覆材