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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100569
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ドアホールシール
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
B60J5/00 501E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004666
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】伊石 博之
(57)【要約】
【課題】ワイヤハーネスの抜き差し時にスリットからの破れが生じにくいドアホールシールを実現する。
【解決手段】ドアホールシール(1)は、ドアホール(D2)を車内側から塞ぎ、第1スリット(11)が形成された第1シート(10)と、第1シート(10)の車外側に接着し、第1スリット(11)よりも鉛直下側の位置に第2スリット(21)が形成された第2シート(20)と、第1シート(10)と第2シート(20)とを接着する第1接着部(31)と、を備え、第1接着部(31)は、第1スリット(11)の一方の第1端部(11a)と、第2スリット(21)において第1端部(11a)側の第3端部(21a)との間から、第1端部(11a)よりも外側の第1位置(P1)まで延びて形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアのドアインナーパネルに形成されたドアホールに取り付けられるドアホールシールであって、
前記ドアホールを車内側から塞ぎ、第1スリットが形成された第1シートと、
前記第1シートの車外側に接着し、前記第1スリットよりも鉛直下側の位置に第2スリットが形成された第2シートと、
前記第1シートと前記第2シートとを接着する第1接着部と、を備え、
前記第1接着部は、前記第1スリットの一方の端部である第1端部と、前記第2スリットにおいて前記第1端部側に位置する端部である第3端部との間から、前記第1スリットに対して前記第1端部よりも外側に位置する第1位置まで延びて形成されている、ドアホールシール。
【請求項2】
前記第1シートと前記第2シートとを接着する第2接着部をさらに備え、
前記第2接着部は、前記第1スリットにおける前記第1端部とは異なる端部である第2端部と、前記第2スリットにおける前記第3端部とは異なる端部である第4端部との間から、前記第1スリットに対して前記第2端部よりも外側に位置する第2位置まで延びて形成されている、請求項1に記載のドアホールシール。
【請求項3】
前記第1接着部は、前記第1スリットに対して前記第1端部よりも鉛直上側の位置まで、前記第1位置からさらに延びて形成されており、
前記第2接着部は、前記第1スリットに対して前記第2端部よりも鉛直上側の位置まで、前記第2位置からさらに延びて形成されている、請求項2に記載のドアホールシール。
【請求項4】
前記第1シートと前記第2シートとを接着する第3接着部をさらに備え、
前記第3接着部は、前記第1スリットおよび前記第2スリットを囲み、少なくとも一部が、前記第1接着部の一部および前記第2接着部の一部と、車内外方向において重なる位置に形成されている、請求項2または3に記載のドアホールシール。
【請求項5】
前記第3接着部は、前記第1端部および前記第2端部と車内外方向において重なる位置に形成されている、請求項4に記載のドアホールシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアホールシールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のドアのドアインナーパネルに形成されたサービスホールを塞ぐために、ドアホールシールが使用されている。ドアホールシールには、車外側から車内側にワイヤハーネスを通すためのスリットが形成される場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、ワイヤハーネスを抜き出すための、第一スリットを有するスリット機構を設けたドアホールシールが開示されている。第一スリットには、端部にスリット巾よりも直径の大きい丸穴形状の部位が設けられている。また、特許文献2には、スリットを車両上方から覆う溶着部が、車両後方側において下方且つ車両前方側へと斜めに延長されたサブシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-282127号公報
【特許文献2】特開2009-51459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなスリットにワイヤハーネスを抜き差しする場合、当該スリットを形成するドアホールシールの周縁部に力がかかり、スリットの終端部を起点としてドアホールシールが破れてしまう恐れがある。
【0006】
特許文献1に記載の第一スリットは、端部に丸穴形状の部位を設けることでドアホールシールが破れにくくなっているが、改善の余地があった。また、特許文献2に記載の溶着部は、ワイヤハーネスの移動を制限する作用を有するものであるが、スリットを起点としたドアホールシールの破れを防止するものではない。
【0007】
本発明の一態様は、従来よりもスリットからの破れが生じにくいドアホールシールを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明の態様1に係るドアホールシールは、車両のドアのドアインナーパネルに形成されたドアホールに取り付けられるドアホールシールであって、前記ドアホールを車内側から塞ぎ、第1スリットが形成された第1シートと、前記第1シートの車外側に接着し、前記第1スリットよりも鉛直下側の位置に第2スリットが形成された第2シートと、前記第1シートと前記第2シートとを接着する第1接着部と、を備え、前記第1接着部は、前記第1スリットの一方の端部である第1端部と、前記第2スリットにおいて前記第1端部側に位置する端部である第3端部との間から、前記第1スリットに対して前記第1端部よりも外側に位置する第1位置まで延びて形成されている。
【0009】
前記構成によれば、第1スリットの第1端部と第2スリット第3端部との間に、第1接着部が形成されている。そのため、ワイヤハーネスの抜き差し等により、第1スリットに下向きの力がかかっても、第1端部が第1接着部により鉛直下側から支持される。これにより、第1端部からの第1シートの破れが発生しにくいため、第1シートの防音性を維持できる。
【0010】
また、第1シートが第1端部から破れても、当該破れが、第1スリットよりも鉛直下側に位置する第2スリットの方向に延びていくことを、第1接着部が阻害する。これにより、第1スリットの破れが、鉛直方向において第2スリットの位置まで延びにくいため、第2スリットから浸入した水が、第1スリットの破れから車室内まで浸入する恐れを低減できる。
【0011】
本発明の態様2に係るドアホールシールは、前記態様1において、前記第1シートと前記第2シートとを接着する第2接着部をさらに備え、前記第2接着部は、前記第1スリットにおける前記第1端部とは異なる端部である第2端部と、前記第2スリットにおける前記第3端部とは異なる端部である第4端部との間から、前記第1スリットに対して前記第2端部よりも外側に位置する第2位置まで延びて形成されていてもよい。
【0012】
前記構成によれば、第1スリットの第2端部と第2スリット第4端部との間に、第2接着部が形成されている。そのため、第2端部からの第1シートの破れが生じる恐れについても低減できる。また、第1スリットの破れから車室内まで水が浸入する恐れをさらに低減できる。
【0013】
本発明の態様3に係るドアホールシールは、前記態様2において、前記第1接着部は、前記第1スリットに対して前記第1端部よりも鉛直上側の位置まで、前記第1位置からさらに延びて形成されており、前記第2接着部は、前記第1スリットに対して前記第2端部よりも鉛直上側の位置まで、前記第2位置からさらに延びて形成されていてもよい。
【0014】
前記構成によれば、第1シートの破れが第1接着部の位置で止まることで、破れの広がりを低減しやすい。これにより、ドアホールシールについて高い防水性および防音性を維持できる。
【0015】
本発明の態様4に係るドアホールシールは、前記態様2または3において、前記第1シートと前記第2シートとを接着する第3接着部をさらに備え、前記第3接着部は、前記第1スリットおよび前記第2スリットを囲み、少なくとも一部が、前記第1接着部の一部および前記第2接着部の一部と、車内外方向において重なる位置に形成されていてもよい。
【0016】
前記構成によれば、第1シート10の破れが発生した場合でも、第3接着部により、当該破れが広がる範囲を小さくできるため、破れによって第1シートの防音性が低下する恐れを低減できる。また、第3接着部により第1スリットの開口範囲が必要以上に広がることを防ぐことができるため、第1スリットを起点とした破れ発生を低減できる。
【0017】
本発明の態様5に係るドアホールシールは、前記態様4において、前記第3接着部は、前記第1端部および前記第2端部と車内外方向において重なる位置に形成されていてもよい。
【0018】
前記構成によれば、第1スリットにおける第1端部および第2端部は、いずれも第3接着部により第2シートと接着している。そのため、第1スリットに外力が作用しても、第1端部および第2端部は、第1シートが破れる起点とはならない。したがって、このような第3接着部によれば、第1スリットを起点とした破れ発生を効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、従来よりもスリットからの破れが生じにくいドアホールシールを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態に係るドアホールシールが取り付けられたドアインナーパネルの車内側の構造を示す模式図である。
図2図1に示すドアホールシールの、第1スリット周辺を示す拡大図である。
図3図2に示す第1スリットに、ワイヤハーネスが通った状態を示す図である。
図4図3に示す、第1スリットにワイヤハーネスが通った状態において、第1スリットの周縁部にワイヤハーネスから力がかかった状態を示す図である。
図5】一変形例に係るドアホールシールの、第1スリット周辺を示す拡大図である。
図6】一変形例に係るドアホールシールの、第1スリット周辺を示す拡大図である。
図7】一変形例に係るドアホールシールの、第1スリット周辺を示す拡大図である。
図8】一変形例に係るドアホールシールの、第1スリット周辺を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔ドアホールシールの概要および取り付け例〕
図1を参照して、本発明の一実施形態に係るドアホールシール1の概要および取り付け例について説明する。図1の例において、紙面向かって上側が鉛直上側、下側が鉛直下側、右側がフロント側(車両の前側)、左側がリア側(車両の後側)、手前側が車内側(車両の内側)、奥側が車外側(車両の外側)に、それぞれ対応している。これは、図2図3の符号301により示す図、図4から図7についても同様である。また、図1は、フロントドアDを車内側から見た図である。ただし、これはドアホールシール1が車両に取り付けられる方向を制限するものではなく、ドアホールシール1は、車両に対していかなる方向となるように取り付けられてもよい。
【0022】
フロントドアDは、車両のドアの一例であり、車両のフロントドア用開口部(図示せず)に開閉可能に取り付けられている。フロントドアDは、ドアアウターパネル(図示せず)およびドアインナーパネルD1を備え、ドアインナーパネルD1にはドアホールD2が形成されている。ドアホールD2は、例えばフロントドアDの内部に配置された各種部品を組付けするために、作業者が手または工具等を入れるための開口部である。なお、図1に示すフロントドアDの形成態様はあくまで一例である。
【0023】
ドアインナーパネルD1の車内側の面には、ドアホールシール1が取り付けられている。ドアホールシール1は、ドアホールD2を車内側から塞ぐことで、フロントドアDの内部に浸入した雨水等が、ドアホールD2から車室内に浸入するのを防止する。また、ドアホールシール1は、ドアホールD2を塞ぐことで、フロントドアDの防音性を向上する。
【0024】
図1に示すように、ドアホールシール1は、第1シート10と第2シート20とを備えている。また、ドアホールシール1は、第1シート10と第2シート20とを接着する接着部として、第1接着部31、第2接着部32および第3接着部33を備えている。
【0025】
第1シート10は、ドアホールシール1の一部として、ドアホールD2を車内側から塞ぐ。第2シート20は、第1シート10の車外側の面に接着している。第1シート10と第2シート20とは、少なくとも第1接着部31により接着しており、さらに第2接着部32および第3接着部33により接着している。ドアホールシール1は、ドアインナーパネルD1の車内側の面に接着することで、ドアホールD2を塞ぐように取り付けられている。なお、本明細書において「接着」は、「粘着」、「圧着」および「溶着」等の概念を含む。
【0026】
ドアインナーパネルD1には、ドアホールシール1とドアインナーパネルD1との接着部分としてブチルラインBが形成されている。第2シート20は、車内外方向から見て第1シート10の外形を内包するように、第1シート10の車外側の面と接着している。ドアホールシール1は、第2シート20の車外側の面における、第1シート10と重なる部分よりも外側の周縁部分により、ブチルラインBに接着する。ただし、ドアホールシール1とドアインナーパネルD1との接着態様はブチルラインBによるものに限られず、いかなる態様により接着、または組付けられていてもよい。
【0027】
なお、上述したドアホールシール1の取り付け態様はあくまで一例である。例えば、ドアホールシール1が取り付けられる車両のドアは図1の例に示すフロントドアDに限定されず、車両のドアであればどのような種類のドアであってもよい。したがって、ドアホールシール1は、例えばリアドアまたはスライドドアに取り付けられてもよい。また、ドアホールシール1の取り付け対象となる車両についても、ハードトップ車およびコンバーチブル車をはじめとする任意の種類の車両が取り付け対象となる。
【0028】
〔ドアホールシールの材料〕
ドアホールシール1は、防水性および防音性を備えていることが好ましい。ドアホールシール1の防水性および防音性は主に、第1シート10および第2シート20の材料により調整できる。
【0029】
第1シート10の材料の例としては、エラストマーおよびエラストマーを含む複合体が挙げられる。エラストマーの例としては、エチレンプロピレンジエン重合ゴム(EPDM)等のゴムおよび熱可塑性エラストマー(Thermoplastic Elastomer:TPE)が挙げられる。TPEの例としては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(Thermoplastic Olefinic Elastomer:TPO)が挙げられる。
【0030】
また、第1シート10は、上述のようなエラストマーまたはエラストマーを含む複合体を発泡させた発泡弾性体であることが好ましい。このような構成によれば、第1シート10は、高い防音性および防水性を発揮できる。
【0031】
第2シート20の材料の例としては、合成樹脂が挙げられる。合成樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の例としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)およびEVA(エチレンビニルアセテート)が挙げられる。第2シート20がこのような材料で形成されていれば、ドアホールシール1は、高い防水性を発揮できる。
【0032】
ドアホールシール1において、第2シート20は、第1シート10の車内側の略全面を覆うように、大きさおよび第1シート10と接着する位置が設定されていることが好ましい。
【0033】
ドアホールシール1は、第2シート20の車内側の面と、第1シート10の車外側の面とを接着することで製造できる。第1シート10および第2シート20はそれぞれ、公知の方法により製造してよい。
【0034】
〔ドアホールシールの構造〕
図2から図7を参照して、ドアホールシール1の構造について説明する。図2から図7には、第1スリット11の周辺であって、図1に示す領域Rの範囲を示している。図3について、符号301により示すのは、ドアホールシール1にワイヤハーネスWを通した状態を示す模式図であり、符号302により示すのは、符号301により示す図のA-A線矢視断面図である。図3の符号302により示す図は、紙面向かって上側が鉛直上側、下側が鉛直下側、右側が車内側、左側が車外側、手前側がリア側、奥側がフロント側に、それぞれ対応している。
【0035】
図2および図3に示すように、第1シート10には、ワイヤハーネスWが挿通可能な第1スリット11が形成されている。また、第2シート20には、ワイヤハーネスWが挿通可能な第2スリット21が形成されている。ワイヤハーネスWは、ケーブルとも称され、例えば、フロントドアDのドア開閉ハンドル(不図示)と、ドアラッチ(不図示)とを接続する部材であってもよい。また、ワイヤハーネスWは、フロントドアDの内部の、スピーカまたはウインドレギュレータ等の装置(不図示)に電気を供給する部材であってもよい。
【0036】
第1シート10には、車両の前後方向に延びるスリットである第1スリット11が形成されている。第1スリット11は、第1シート10を貫通する切込みとして形成されている。第1スリット11は、車両の前後方向以外の方向に延びるスリットであってもよい。
【0037】
第2シート20には、車両の前後方向に延びるスリットである第2スリット21が形成されている。なお、図2等においては、ドアホールシール1の平面視であって、車内側から見た第1シート10が示されている。そのため、第1シート10によって隠れて見えない第2スリット21を便宜上、破線で示している。
【0038】
第2スリット21は、第2スリット21よりも車内側に位置する第1スリット11よりも鉛直下側の位置に形成されている。言い換えれば、第1スリット11は、第2スリット21よりも鉛直上側の位置に形成されている。これにより、第1スリット11の周縁部に外力が作用しない限りにおいては、フロントドアD内に浸入した水が第2スリット21を通過したとしても、さらに第1スリット11を通過して車室内に浸入することを防ぐことができる。
【0039】
第2スリット21は、第2シート20を貫通する切込みとして形成されている。第2スリット21は、車両の前後方向以外の方向に延びるスリットであってもよい。ワイヤハーネスWの抜き差しを容易にする観点から、第2スリット21の延伸方向は、第1スリット11の延伸方向と略同一であることが好ましい。
【0040】
第1スリット11は、一方の端部である第1端部11aと、第1端部11aとは異なる端部である第2端部11bと、を有している。同様に、第2スリット21は、一方の端部である第3端部21aと、第3端部21aとは異なる端部である第4端部21bと、を有している。第3端部21aは、第2スリット21において第1端部11a側に位置する端部である。また、第4端部21bは、第2スリット21において第2端部11b側に位置する端部である。
【0041】
本実施形態において、第1端部11aおよび第3端部21aは車両後方側に位置し、第2端部11bおよび第4端部21bは車両前方側に位置しているが、これらの端部が位置する方向はこの限りではない。
【0042】
第1スリット11の「端部」とは、第1スリット11において先端を含む部分を意図する。第1端部11aは、第1スリット11の車両後方側の先端を含む部分である。このような部分は、例えば、前記先端からの長さが少なくとも、第1スリット11の延伸長の20%以内であってもよく、10%以内であってもよく、5%以内であってもよい。また、前記先端からの長さは、第1スリット11の延伸長の1%以上であってもよく、3%以上であってもよい。この定義は、第2端部11bについても同様である。また、第3端部21aおよび第4端部21bについても、第2スリット21の延伸長に対して、上述の数値範囲内の長さを有する部分であってよい。
【0043】
また、図8に示すように、第1スリット11または第2スリット12はそれぞれ、少なくとも何れかの端部が丸穴形状であってもよく、いかり形状であってもよく、他の形状であってもよい。いかり形状とは、例えば、第1スリット11または第2スリット12の端部が湾曲した、船舶のいかりのような形状であってよい。
【0044】
第1接着部31は、第1端部11aと第3端部21aとの間から、第1スリット11に対して第1端部11aよりも外側に位置する第1位置P1まで延びて形成されている。「第1端部11aよりも外側の位置」とは、鉛直方向において第1スリット11の形成位置とは重ならない位置であり、かつ、第1スリット11から見て第1端部11a側の位置である。このような位置である第1位置P1は、本実施形態では、第1スリット11よりも車両後方側に位置している。
【0045】
なお、図2等においては、ドアホールシール1の平面視であって、車内側から見た第1シート10が示されている。そのため、第1シート10によって隠れて見えない第1接着部31を便宜上、破線および灰色処理で示している。これは、後述する第2接着部32および第3接着部33についても同様である。
【0046】
また、第2接着部32は、第2端部11bと第4端部21bとの間から、第1スリット11に対して第2端部11bよりも外側に位置する第2位置P2まで延びて形成されている。「第2端部11bよりも外側の位置」とは、鉛直方向において第1スリット11の形成位置とは重ならない位置であり、かつ、第1スリット11から見て第2端部11b側の位置である。このような位置である第2位置P2は、本実施形態では、第1スリット11よりも車両前方側に位置している。
【0047】
第1接着部31は、第1スリット11の第1端部11aと、第1スリット11の鉛直下側に位置する第2スリット21の第3端部21aとの間に位置する。すなわち、第1接着部31は、第1端部11aを鉛直下側から支持できる位置に形成される。
【0048】
同様に、第2接着部32は、第1スリット11の第2端部11bと、第1スリット11の鉛直下側に位置する第2スリット21の第4端部21bとの間に位置する。すなわち、第2接着部32は、第2端部11bを鉛直下側から支持できる位置に形成される。
【0049】
ここで、図3の符号302により示す図のように、第1スリット11および第2スリット21を通るワイヤハーネスWは、車外側から第2スリット21を通って、第1スリット11から車内側に向かって上方向に挿通されることになる。そのため、ワイヤハーネスWを抜き差しする場合、図4に示すように、第1スリット11の周縁部に対して下方向に力がかかりやすくなる。
【0050】
第1シート10は、上述のように発泡弾性体により形成されることが好ましい。このような第1シート10は、例えばワイヤハーネスW等から外力を受けると、第1スリット11の第1端部11aおよび/または第2端部11bを起点として破れやすい、という問題がある。
【0051】
本実施形態によれば、ワイヤハーネスWから第1シート10に力がかかっても、第1接着部31が第1端部11aを鉛直下側から支持する。これにより、第1端部11aを起点とした第1シート10の破れ発生を低減できる。同様に、第2接着部32は、第2端部11bを鉛直下側から支持するため、第2端部11bを起点とした第1シート10の破れ発生についても低減できる。
【0052】
また、ドアホールシール1には第3接着部33が形成されている。第3接着部33は、第1スリット11および第2スリット21を囲む位置に形成されている。このような第3接着部33によれば、図4に示すように、第1スリット11にワイヤハーネスWが挿通した状態で、第1スリット11の開口が必要以上に広がることを防止できる。また、第1スリット11を起点とした第1シート10の破れを、第3接着部33の範囲内に留めることができる。
【0053】
第3接着部33は、外形が矩形状として形成されているが、これに限られず、第1スリット11および第2スリット21を囲む形状であれば、特に限定されない。なお、第2シート20において、第2スリット21が形成される第3接着部33に囲まれた部分と、その他の部分とは、同一材質であってもよく、異なる材質であってもよい。
【0054】
また、第3接着部33は、少なくとも一部が、第1接着部31の一部および第2接着部32の一部と、車内外方向において重なる位置に形成されている。本実施形態では、第3接着部33は、第1接着部31における第1位置P1側の端部において、第3接着部33と重なっている。また、第3接着部33は、第2接着部32における第2位置P2側の端部において、第3接着部33と重なっている。
【0055】
言い換えれば、第1接着部31は、第3接着部33の一部が位置する第1位置P1から、第1端部11aと第3端部21aとの間まで延びて形成されている。また、第2接着部32は、第3接着部33の一部が位置する第2位置P2から、第2端部11bと第4端部21bとの間まで延びて形成されている。
【0056】
また、第1接着部31と第3接着部33とが重なる位置は、第1接着部31の端部に限定されない。例えば、第1位置P1が、第3接着部33により囲まれる範囲の外側に位置しており、第1接着部31と第3接着部33とが交差していてもよい。また、第2接着部32についても同様に、第2位置P2が、第3接着部33により囲まれる範囲の外側に位置しており、第2接着部32と第3接着部33とが交差していてもよい。
【0057】
図4に示すように、第1接着部31、第2接着部32および第3接着部33によれば、第1端部11aおよび第2端部11bを起点とした第1シート10の破れ発生を低減できる。また、第1シート10の破れが発生した場合でも、当該破れが広がる範囲を小さくできる。そのため、破れにより第1シート10の防音性が低下する恐れを低減できる。さらに、第1シート10の破れが、第2スリット21の形成位置まで延びることを防止できるため、車室内への雨水等の浸入を防止できる。
【0058】
また、このようなドアホールシール1は、フロントドアDの組み立て時およびメンテナンス時等に破損する可能性が低い。そのため、ドアホールシール1の交換頻度および廃棄量を低減できる。このような効果は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「持続可能な生産消費形態を確保する」等の達成にも貢献するものである。
【0059】
ドアホールシール1は、第1接着部31、第2接着部32および第3接着部33以外にも、第1シート10と第2シート20とを接着する接着部を備えていてよい。当該接着部の位置は特に限定されず、ドアホールシール1が取り付けられるフロントドアDの内部構造によって、適宜設計してよい。
【0060】
〔変形例〕
以下に、ドアホールシール1の変形例について説明する。ドアホールシール1は、前述した実施形態の例に限らず種々の変形例を想定できる。なお、説明の便宜上、前述の実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0061】
図5に示すように、ドアホールシール1aは、第3接着部33ではなく、第3接着部33と形状が異なる第3接着部33aを備えていてもよい。第3接着部33aは、第1端部11aおよび第2端部11bと、車内外方向において重なる位置に形成されている。図5の例では、第3接着部33aは、車両後方側において、鉛直上側から第1接着部31と接する位置まで延出する部分を有している。また、第3接着部33aは、車両前方側においても、鉛直上側から第2接着部32と接する位置まで延出する部分を有している。第3接着部33aは、これらの部分が第1端部11aおよび第2端部11bと、車内外方向において重なっている。
【0062】
なお、第3接着部33aにおける、第1端部11aまたは第2端部11bと重なる部分は、第3接着部33aのいずれの位置から、これらの端部まで延出する部分であってもよい。
【0063】
このような構成によれば、第1スリット11における第1端部11aおよび第2端部11bは、いずれも第3接着部33aにより第2シート20と接着している。そのため、第1スリット11にワイヤハーネスWからの外力が作用しても、第1端部11aおよび第2端部11bは、第1シート10が破れる起点とはならない。したがって、このような第3接着部33aによれば、第1スリット11を起点とした破れ発生を効果的に防止できる。
【0064】
第3接着部33aは、第1端部11aおよび第2端部11bの、少なくとも一方と重なっていればよい。このような構成によれば、第3接着部33aと重なるほうの端部については少なくとも、第1シート10の破れの起点となることを防止できる。
【0065】
また、図6に示すように、ドアホールシール1bは、第3接着部33を備えていなくてもよい。この場合でも、第1接着部31は、第1端部11aを鉛直下側から支持することで、第1端部11aを起点とした第1シート10の破れ発生を低減できる。また、第2接着部32は、第2端部11bを鉛直下側から支持することで、第2端部11bを起点とした第1シート10の破れ発生を低減できる。
【0066】
このような構成によれば、第3接着部33の形成を省略できるため、ドアホールシール1bの製造コストを低減できる。
【0067】
また、ドアホールシール1bは、第3接着部33だけでなく、第2接着部32についても備えていなくてもよい。ドアホールシール1bは、第1接着部31を備えていれば、少なくとも第1端部11aを起点とした第1シート10の破れ発生について低減できる。このような、ドアホールシール1bによれば、従来のドアホールシールよりも、第1スリット11を起点とした第1シート10の破れ発生を低減できる。
【0068】
また、図7の符号701により示す図のように、ドアホールシール1cは、第3接着部33を備えておらず、第1接着部31とは異なる形状の第1接着部31aを備えていてもよい。また、このようなドアホールシール1cは、第2接着部32とは異なる形状の第2接着部32aを備えていてもよい。
【0069】
第1接着部31aは、第1スリット11に対して第1端部11aよりも鉛直上側の位置まで、第1位置P1からさらに延びて形成されている。第2接着部32aは、第1スリット11に対して第2端部11bよりも鉛直上側の位置まで、第2位置P2からさらに延びて形成されている。
【0070】
第1接着部31aは、第1位置P1からさらに、鉛直上側に直線的に延びたL字状の形状として形成されている。このような第1接着部31aによれば、第1端部11aを起点として第1シート10が破れても、当該破れが第2スリット21側に延びることを防止できる。また、ワイヤハーネスWからの外力が、第1シート10に対して下方向に作用すると、第1シート10の破れもまた鉛直下側に進行しやすい。第1接着部31aによれば、第1シート10の破れが第1接着部31aの位置で止まるため、破れの鉛直下側への進行を防止できる。これにより、ドアホールシール1について高い防水性および防音性を維持できる。
【0071】
第2接着部32aは、第2位置P2からさらに、鉛直上側に直線的に延びたL字状の形状であって、第1接着部31aとは車両前後方向において対称となる形状として形成されている。このような第2接着部32aによれば、第1接着部31aと同様に、第2端部11bを起点とした第1シート10の破れが鉛直下側に進行することを防止できる。
【0072】
第1接着部31aと第2接着部32aとは、本変形例のように対称的な形状であることを要さない。ドアホールシール1は、L字状の第1接着部31aと、直線状の第2接着部32とを備えていてもよいし、直線状の第1接着部31と、L字状の第2接着部32aとを備えていてもよい。
【0073】
また、図7の符号702により示す図のように、ドアホールシール1dは、第3接着部33を備えておらず、第1接着部31とは異なる形状の第1接着部31bを備えていてもよい。また、このようなドアホールシール1dは、第2接着部32とは異なる形状の第2接着部32bを備えていてもよい。
【0074】
第1接着部31bは、第1接着部31aと同様に、第1スリット11に対して第1端部11aよりも鉛直上側の位置まで、第1位置P1からさらに延びて形成されている。ここで、第1接着部31bは、第1接着部31aとは異なり、第1位置P1から鉛直上側に延び、そこから第1スリット11側である車両前方側に延伸方向を転換し、さらに延びて形成されている。第1接着部31bは、横向きのU字形状として、第1端部11aを車両の上下および後方側から囲むように形成されている。
【0075】
このような第1接着部31bによれば、第1端部11aを起点とする第1シート10の破れの広がりを効果的に低減できる。これにより、ドアホールシール1dについて高い防水性および防音性を維持できる。
【0076】
第2接着部32bは、第2接着部32aと同様に、第1スリット11に対して第2端部11bよりも鉛直上側の位置まで、第2位置P2からさらに延びて形成されている。ここで、第2接着部32bは、第2接着部32aとは異なり、第2位置P2から鉛直上側に延び、そこから第1スリット11側である車両後方側に延伸方向を転換し、さらに延びて形成されている。第2接着部32bは、横向きのU字形状として、第2端部11bを車両の上下および前方側から囲むように形成されている。
【0077】
このような第2接着部32bによれば、第1接着部31bと同様に、第2端部11bを起点とする第1シート10の破れの広がりを効果的に低減できる。これにより、ドアホールシール1dについて高い防水性および防音性を維持できる。
【0078】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1、1a、1b、1c、1d ドアホールシール
10 第1シート
11 第1スリット
11a 第1端部
11b 第2端部
20 第2シート
21 第2スリット
21a 第3端部
21b 第4端部
31、31a、31b 第1接着部
32、32a、32b 第2接着部
33、33a 第3接着部
D フロントドア
D1 ドアインナーパネル
D2 ドアホール
P1 第1位置
P2 第2位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8