(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100570
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ズームレンズ及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 15/20 20060101AFI20240719BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004671
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】野田 隆行
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087MA14
2H087MA15
2H087MA16
2H087MA19
2H087NA18
2H087PA08
2H087PA09
2H087PA11
2H087PA15
2H087PA16
2H087PB12
2H087PB14
2H087PB15
2H087PB16
2H087PB20
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA12
2H087QA14
2H087QA21
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA26
2H087QA34
2H087QA37
2H087QA41
2H087QA45
2H087QA46
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA36
2H087RA42
2H087RA43
2H087RA46
2H087SA23
2H087SA27
2H087SA29
2H087SA32
2H087SA43
2H087SA46
2H087SA50
2H087SA52
2H087SA55
2H087SA57
2H087SA61
2H087SA62
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA66
2H087SA71
2H087SA72
2H087SA75
2H087SB04
2H087SB05
2H087SB06
2H087SB12
2H087SB13
2H087SB14
2H087SB23
2H087SB24
2H087SB25
2H087SB31
2H087SB33
2H087SB34
2H087SB43
2H087SB45
(57)【要約】
【課題】小型かつ軽量で迷光フレアが低減された高い光学性能を有するズームレンズ及び撮像装置を提供する。
【解決手段】ズームレンズは、正の屈折力を有する第nレンズ群(G1)を有し、第nレンズ群より像面側に負の屈折力を有し、かつ回折光学素子を有する第mレンズ群(G2)を有し、第mレンズ群より物体側のレンズの数が5枚以下である。当該ズームレンズは、特定の式で表される特定の光学特性を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正の屈折力を有する第nレンズ群(nは1以上の整数)を有し、前記第nレンズ群より像面側に負の屈折力を有する第mレンズ群(mは2以上であってnより大きい整数)を有し、隣り合うレンズ群間の間隔を変化させることにより変倍動作を行うズームレンズであって、
前記第nレンズ群は回折光学素子を有し、
前記第mレンズ群は、前記ズームレンズに含まれる負の屈折力を有するレンズ群の中で最も物体側に配置され、
前記第mレンズ群より物体側のレンズの数が5枚以下であり、
以下の式を満足する、ズームレンズ。
0.40<φd/φ1<0.85・・・・・(1)
但し、
φd:前記回折光学素子の回折面での軸上光線の有効径
φ1:前記ズームレンズにおける最も物体側のレンズ面での軸上光線の有効径
【請求項2】
前記回折面は、物体側に凸の面に形成されている、請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記第nレンズ群は、接合レンズを有し、前記接合レンズの接合面に前記回折光学素子を有する、請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項4】
変倍に際して、前記第nレンズ群は固定である、請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項5】
以下の式を満足する、請求項1に記載のズームレンズ。
50<νp<77・・・・・(2)
但し、
νp:前記第nレンズ群に含まれる正の屈折力を有するレンズのd線におけるアッベ数の平均値
【請求項6】
以下の式を満足する、請求項1に記載のズームレンズ。
0.00<Ddol/Dn<0.30・・・・・(3)
但し、
Ddol:前記回折面から前記第nレンズ群の最も像面側のレンズ面までの光軸上の距離
Dn:前記ズームレンズの無限遠合焦時における望遠端での、前記ズームレンズにおける最も物体側のレンズ面と、前記第nレンズ群の最も像面側のレンズ面との間の光軸上の距離
【請求項7】
以下の式を満足する、請求項1に記載のズームレンズ。
0.15<Dn/Dt<0.40・・・・・(4)
但し、
Dn:前記ズームレンズの無限遠合焦時における望遠端での、前記ズームレンズにおける最も物体側のレンズ面と、前記第nレンズ群の最も像面側のレンズ面との間の光軸上の距離
Dt:前記ズームレンズの無限遠合焦時における望遠端での光学全長
【請求項8】
以下の式を満足する、請求項1に記載のズームレンズ。
0.1<|BNt/BNw|<10.0・・・・・(5)
但し、
BNt:前記第mレンズ群の無限遠合焦時における望遠端での横倍率
BNw:前記第mレンズ群の無限遠合焦時における広角端での横倍率
【請求項9】
前記第nレンズ群は、物体側から順に負の屈折力を有するレンズと正の屈折力を有するレンズとの接合レンズを有し、前記接合レンズの接合面に前記回折光学素子を有する、請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のズームレンズと、当該ズームレンズの像面側に設けられた、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備える、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズ及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルスチルカメラの等の固体撮像素子を用いた撮影装置が普及している。それに伴い、光学系の長焦点化が進み、35mm換算で焦点距離80mmより望遠を含むようなズームレンズいわゆる望遠側ズームレンズ又は望遠側ズームレンズを含む撮像装置システムが急速に普及してきている。当該ズームレンズのズーム領域に回折光学素子(以下「DOE」とも言う)を有することで、高解像度を維持したまま小型軽量化を進めたレンズが検討されてきている。
【0003】
上記のような望遠側ズームレンズとしては、例えば、物体側から順に、各レンズ群の符号が正負負正であり、第1レンズ群がDOEを有するズームレンズが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、物体側から順に、各レンズ群の符号が正負正正であり、第1レンズ群にDOEを有するズームレンズが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、物体側から順に、各レンズ群の符号が負正負負であり、第1レンズ群の物体側にDOEを有する光学系が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-197534号公報
【特許文献2】特開平11-271616号公報
【特許文献3】特開2016-197169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のズームレンズでは、第1レンズ群での重量が大きく、軽量化が求められる。また、特許文献1に記載のズームレンズには、像面側の重量とのバランスが悪く、望遠側の撮影をする際に、手振れなどの像揺れが起きてしまいやすいという問題がある。また、特許文献2に記載のズームレンズでは、DOEが第1レンズ群内において像面側に配置されているものの、第1レンズ群が非常に薄く、DOEの回折面が光学全長に対して第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から近い位置に存在する。特許文献3に記載のズームレンズでは、DOEの回折面が第1レンズ群内の物体側に配置されている。このため、特許文献2に記載のズームレンズ及び特許文献3に記載の光学系では、迷光フレアに対する対策が不十分であるという問題がある。
【0008】
本発明の一態様は、小型かつ軽量で迷光フレアが低減された高い光学性能を有するズームレンズ及び撮像装置を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るズームレンズは、正の屈折力を有する第nレンズ群(nは1以上の整数)を有し、前記第nレンズ群より像面側に負の屈折力を有する第mレンズ群(mは2以上であってnより大きい整数)を有し、隣り合うレンズ群間の間隔を変化させることにより変倍動作を行うズームレンズであって、前記第nレンズ群は回折光学素子を有し、前記第mレンズ群は、前記ズームレンズに含まれる負の屈折力を有するレンズ群の中で最も物体側に配置され、前記第mレンズ群より物体側のレンズの数が5枚以下であり、以下の式を満足する。
0.40<φd/φ1<0.85・・・・・(1)
但し、
φd:前記回折光学素子の回折面での軸上光線の有効径
φ1:前記ズームレンズにおける最も物体側のレンズ面での軸上光線の有効径
【0010】
また、前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る撮像装置は、前記のズームレンズと、当該ズームレンズの像面側に設けられた、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、小型かつ軽量で迷光フレアが低減された高い光学性能を有するズームレンズ及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1のズームレンズの無限遠合焦時における広角端での光学的な構成を模式的に示す図である。
【
図2】実施例1のズームレンズの広角端での無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図3】実施例1のズームレンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図4】実施例1のズームレンズの望遠端での無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図5】実施例2のズームレンズの無限遠合焦時における広角端での光学的な構成を模式的に示す図である。
【
図6】実施例2のズームレンズの広角端での無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図7】実施例2のズームレンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図8】実施例2のズームレンズの望遠端での無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図9】実施例3のズームレンズの無限遠合焦時における広角端での光学的な構成を模式的に示す図である。
【
図10】実施例3のズームレンズの広角端での無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図11】実施例3のズームレンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図12】実施例3のズームレンズの望遠端での無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図13】実施例4のズームレンズの無限遠合焦時における広角端での光学的な構成を模式的に示す図である。
【
図14】実施例4のズームレンズの広角端での無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図15】実施例4のズームレンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図16】実施例4のズームレンズの望遠端での無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図17】実施例5のズームレンズの無限遠合焦時における広角端での光学的な構成を模式的に示す図である。
【
図18】実施例5のズームレンズの広角端での無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図19】実施例5のズームレンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図20】実施例5のズームレンズの望遠端での無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図21】本発明の一実施形態に係る撮像装置の構成の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係るズームレンズ及び撮像装置の実施の形態を説明する。本実施形態は、より詳しくは、固体撮像素子等を用いたデジタルスチルカメラ及びデジタルビデオカメラ等のデジタル入出力機器の撮影光学系に好適な、ズームレンズに関する。また、当該ズームレンズを有する交換レンズ装置及び撮像装置に関する。但し、以下に説明する当該ズームレンズ及び撮像装置は、本発明に係るズームレンズ及び撮像装置の一態様であって、本発明に係るズームレンズ及び撮像装置は以下の態様に限定されるものではない。
【0014】
1.ズームレンズ
1-1.光学的構成
本発明の一実施形態に係るズームレンズは、正の屈折力を有する第nレンズ群(nは1以上の整数)を有し、第nレンズ群より像面側に負の屈折力を有する第mレンズ群(mは2以上であってnより大きい整数)を有する。当該ズームレンズは、隣り合うレンズ群間の間隔を変化させることにより変倍動作を行う。第nレンズ群は回折光学素子を有する。第mレンズ群は、当該ズームレンズに含まれる負の屈折力を有するレンズ群の中で最も物体側に配置される。第mレンズ群より物体側のレンズの数が5枚以下である。また、当該ズームレンズは、後述する式(1)を満たす。当該ズームレンズは、このような構成を備えているため、小型かつ軽量で迷光フレアが低減された高い光学性能を有する。
【0015】
ここで、「第mレンズ群は、当該ズームレンズに含まれる負の屈折力を有するレンズ群の中で最も物体側に配置される」とは、第mレンズ群よりも物体側に、正の屈折力を有するレンズ群が1つ以上存在することを示す。第mレンズ群よりも物体側には、正の屈折力を有するレンズ群が2つ以上あってもよい。
【0016】
また、「nは1以上の整数」とは、DOEを有する第nレンズ群が、第1レンズ群であってもよく、第1レンズ群に限らず第2レンズ群以降であってもよいことを示す。なお、DOEを有する第nレンズ群以外にも、さらに、他の1つ以上のレンズ群がDOEを有していてもよい。
【0017】
「他の1つ以上のレンズ群がDOEを有している場合」とは、第mレンズ群より物体側に、DOEを有する複数のレンズ群が存在することを表す。「他の1つ以上のレンズ群がDOEを有している場合」、nを含む条件式は、上記の複数のレンズ群のうち、最も物体側にあるDOEを有するレンズ群において該当する。すなわち、第nレンズ群以外のDOEを有するレンズ群は、第nレンズ群よりも物体側に位置し、第nレンズ群は、DOEを有する複数のレンズ群のうちの最も像面側のレンズ群となる。「他の1つ以上のレンズ群がDOEを有している場合」、nを含む条件式は、第nレンズ群だけでなく、第nレンズ群以外のDOEを有するレンズ群にも該当することが好ましい。第nレンズ群以外の他の1つ以上のレンズ群が複数のDOEを有していてもよい。第nレンズ群以外の他の1つ以上のレンズ群がDOEを有していることは、軸上光線による迷光フレアを低減しつつDOEによる色消し効果等を増加させる観点から好ましい。
【0018】
なお、本明細書中において、「レンズ群」とは、変倍動作において連動する、1枚以上のレンズの集合を意味する。レンズ群は、1枚の単レンズにより構成されていてもよいし、複数の単レンズにより構成されていてもよい。例えば、レンズ群は、空気間隔を介することなく複数の単レンズを一体化した接合レンズを含んでいてもよいし、1枚の単レンズと樹脂とを、空気間隔を介することなく一体化した複合レンズを含んでいてもよい。レンズ群におけるレンズは、変倍動作において、相対的な位置関係を保ったまま移動する。変倍動作は、レンズ群間の間隔を変化させることによって行われ、同一のレンズ群に属するレンズ間の間隔は、変倍動作において変化しない。
【0019】
なお、本明細書中において、「レンズ」とは、1枚の単レンズを意味する。例えば、2枚の単レンズからなる接合レンズは、2枚のレンズとして説明する。本明細書中において、単レンズは、球面レンズ、非球面レンズ、及びDOEを含むレンズのいずれであってもよい。非球面レンズには、表面に非球面フィルムが貼設されたいわゆる複合非球面レンズも含まれるものとする。DOEを含むレンズには、光学面に回折格子構造が形成されているレンズ、複数層の樹脂等による層が設けられたレンズも含まれるものとする。なお、接合レンズに挟まれる接着層及びパワーを有していない平行平面板は、レンズとしてカウントしないものとする。
【0020】
(1)第1レンズ群
第1レンズ群は、本実施形態に係るズームレンズにおいて最も物体側に配置されるレンズ群である。第1レンズ群が正の屈折力を有することは、望遠画角化の観点から好ましい。第nレンズ群が正の屈折力を有することは、入射瞳で規定される第1レンズ群の有効径に対し、第2レンズ群以降の有効径の小径化、及びこれに伴う第2レンズ群以降の軽量化の観点から好ましい。また、第1レンズ群が正の屈折力を有することは、全長の短縮化の観点から好ましい。
【0021】
最も物体側に配置される第1レンズ群は、全体重量に支配的であり、また、像面側のレンズ群の重量とのバランスの点、ならびに揺れ及び手振れ対策の点でも軽量化が大切である。第1レンズ群と、第2レンズ群との距離を離すことは、第1レンズ群の重量削減の観点、及び第2レンズ群以降の有効径の小径化による、軽量化の観点から好ましい。
【0022】
第1レンズ群のパワーは適切な範囲であることが好ましく、第1レンズ群のパワーが弱くなると、変倍時の各ズーム群の移動量が大きくなるため、当該ズームレンズが大型化してしまうことがある。第1レンズ群のパワーが強くなると、当該ズームレンズの小型化にとって有利であるが、発生する単色収差が大きくなり、高画質を達成できないことがある。
【0023】
第1レンズ群は、正の屈折力を有するレンズを2枚以上有することが好ましく、2~3枚有することがより好ましい。また、第1レンズ群は、負の屈折力を有するレンズを少なくとも1枚有することが好ましい。第1レンズ群は、2~3枚の正の屈折力を有するレンズと、1枚の負の屈折力を有するレンズの合計3~4枚のレンズから構成されることが好ましい。これらの構成は、高性能化と全長短縮とのバランスの観点から好ましい。
【0024】
さらに、第1レンズ群は、2枚の正の屈折力を有するレンズと、1枚の負の屈折力を有するレンズの合計3枚のレンズから構成されることがより好ましい。これらの構成は、高性能化と全長短縮とのバランスの観点から、さらに全長短縮が求められる際に好ましい。
【0025】
第1レンズ群は、第1レンズ群の重量を低減する観点から、少なくとも4枚のレンズから構成されることが好ましく、少なくとも3枚のレンズから構成されることがより好ましい。
【0026】
(2)第nレンズ群
第nレンズ群は、本実施形態に係るズームレンズにおいて物体側から数えてn番目に配置されているレンズ群である。nは1以上の整数である。第nレンズ群は、回折光学素子(以下、「DOE」とも称する)を有している。DOEは、回折面を有している。第nレンズ群がDOEを有することは、解像を維持しつつ比重が軽い硝種を選択可能となるため、軽量化の観点から好ましい。さらに、厚さがある第nレンズ群内において、DOEを第nレンズ群内の2枚目以降に配置することは、軸外光線による迷光フレアを低減する観点から好ましい。
【0027】
ここで、回折面は下記式で表される位相差関数により規定される回折格子構造を有するものとする。例えば、硝材製レンズ、プラスチック製レンズ等の光学要素の光学面に、切削法、フォトリソグラフィー法、モールド法等により、回折格子構造を形成することにより、回折光学素子を得ることができる。また、上記光学要素の光学面に回折格子構造を有する一層又は複数層の樹脂層を設け、当該樹脂層により回折面が付与された回折光学素子であってもよい。本明細書中では、このような回折光学素子を含むレンズ群を第nレンズ群と称する。
【0028】
【0029】
但し、上記式において、φ(h)は位相差関数であり、「m」は回折次数であり、「λ」は規格化波長である。また、「C1」、「C2」、「C3」、及び「C4」はそれぞれ回折面係数であり、「h」は同径方向における光軸からの長さである。なお、規格化波長は、当該光学系の使用波長域内の波長であり、例えば、可視光波長域内の波長であることが好ましい。
【0030】
DOEとして、空気層と接する側の面にのみ上記回折面を備える単層回折光学素子を用いることができる。また、例えば、接合レンズの接合面を上記回折面とするなど、一の硝材層と、他の硝材層との間に回折面が形成された積層型の複層回折光学素子を用いることもできる。単層回折光学素子よりも複層回折光学素子を用いた方が、より広い波長範囲において色収差等を良好に補正することができる。但し、複層回折光学素子において、硝材層は光学ガラス材からなる層に限らず、光学プラスチック等の光学ガラス以外の光学素子形成材からなる層であってもよい。
【0031】
また、当該回折面は、球面であってもよく、非球面であってもよい。回折面を非球面とすることは、より少ない枚数の光学要素で色収差等の諸収差をさらに良好に補正する観点から好ましい。
【0032】
当該ズームレンズが、上記回折面を含む所定のレンズ群を有することは、回折面を備えない通常の屈折光学系と比較して、少ない光学要素で色収差等を良好に補正することができる観点から好ましい。このため、この構成は、当該ズームレンズの小型化及び軽量化を図りつつ、高度な色収差補正を実現することができる観点から好ましい。
【0033】
また、当該ズームレンズが回折面を含む構成とすることは、当該ズームレンズ全体の色特性を改善する観点からも好ましい。具体的には、当該ズームレンズが回折面を有することは、上述のように少ない光学要素で色収差等を良好に補正する観点から好ましい。このため、色収差等の補正には有効であるが比重が大きい重たい硝材からなる光学要素の枚数を減らすことができる。そして、第nレンズ群が、当該ズームレンズ全体において、今回の軽量化によらず良好な結像性能を維持することができる。
【0034】
第nレンズ群は、正の屈折力を有する。この構成は、色収差等の補正がより良好になるという観点から、好ましい。
【0035】
また、第nレンズ群に含まれる負の屈折力を有するレンズのd線におけるアッベ数は、45より小さいことが、色収差を良好に補正する観点から好ましい。また、第nレンズ群に含まれる少なくとも1つの正の屈折力を有するレンズのd線におけるアッベ数は、45より大きいことが色収差を良好に補正する観点から好ましい。第nレンズ群に含まれる2つ以上の正の屈折力を有するレンズのうち最もd線におけるアッベ数の大きいレンズのd線におけるアッベ数は、70より大きいことが好ましく、2番目にd線におけるアッベ数が大きなレンズは60より大きいことが好ましい。なお、本明細書中における「アッベ数」は、d線におけるアッベ数を指す。
【0036】
また、第nレンズ群に含まれる正の屈折力を有するすべてのレンズのd線におけるアッベ数が50より大きいことは、色収差を良好に補正する観点からさらに好ましい。
【0037】
また、第nレンズ群に含まれる負の屈折力を有するすべてのレンズのd線におけるアッベ数が65より小さいことは、色収差を良好に補正する観点からさらに好ましい。
【0038】
第nレンズ群は、接合レンズを有することが好ましい。この構成のうち、屈折率差が少ないレンズ面とレンズ面との境界面にDOEを配置することは、空気層とレンズ面との境界面にDOEを配置する場合に比較して、光源近傍の迷光フレアを軽減する観点から好ましい。また、第nレンズ群が物体側から順に負の屈折力を有するレンズと正の屈折力を有するレンズとの接合レンズを有することは、周辺光線入射角度を小さくする観点から好ましい。
【0039】
さらに、第nレンズ群内の回折面への入射角度を小さくする配置にすることは、DOE段差による反射による迷光フレアを低減する観点から好ましい。このため、回折面は、物体側に凸の面、又は鈍い凹の面に形成されていることが好ましく、物体側に凸の面に形成されていることがより好ましい。
【0040】
また、第nレンズ群がDOEを有することは、比重が軽いガラスを選択できる観点から好ましい。例えば、第nレンズ群に含まれる正の屈折力を有するレンズの内、接合しているレンズのd線におけるアッベ数が50~70の範囲にすることが可能となる。この構成は、当該ズームレンズの軽量化、及び色収差を良好に補正する観点から好ましい。
【0041】
変倍に際して、第nレンズ群は固定であることが好ましい。全体重量に支配的な第nレンズ群を固定群とすることは、第nレンズ群の機構及び鏡枠の軽量化の観点から好ましい。
【0042】
第nレンズ群は、接合レンズを有し、当該接合レンズの接合面にDOEを有することが好ましい。この構成は、屈折率差が少ない境界面に回折素子を配置することで光源近傍の迷光フレアを低減する観点から好ましい。
【0043】
また、第nレンズ群は、物体側から順に負の屈折力を有するレンズと正の屈折力を有するレンズとの接合レンズを有し、当該接合レンズの接合面にDOEを有することが好ましい。この構成は、回折面に対する光束の入射角を、極力小さくするような配置にすることで、回折面の回折効率を向上することが可能となり、撮影レンズ等の広い波長域(λ=400nm~700nm程度)でDOEを効果的に使用できる観点から好ましい。
【0044】
(第nレンズ群が第1レンズ群である場合)
第nレンズ群におけるnは1以上の整数であり、1であることが好ましい。すなわち、第nレンズ群は、当該ズームレンズにおいて最も物体側に配置されるレンズ群である第1レンズ群であることが好ましい。特に、第nレンズ群が第1レンズ群であることは、広角端から望遠端にかけてDOEに対する光束の入射角度の変化を小さくする観点から好ましい。
【0045】
また、第nレンズ群が第1レンズ群であり、第1レンズ群が固定であることは、第1レンズ群の機構及び鏡枠の軽量化の観点から好ましい。
【0046】
また、第nレンズ群が第1レンズ群であり、第1レンズ群が接合レンズを有することは、屈折率差が少ない境界面にDOEを配置することで光源近傍の迷光フレアを軽減する観点から好ましい。
【0047】
また、第nレンズ群が第1レンズ群であり、第1レンズ群の回折面が物体側に凸の面に形成されていることは、DOE段差による反射による迷光フレアを低減する観点から好ましい。
【0048】
また、第nレンズ群が第1レンズ群であり、第1レンズ群が、物体側から順に負の屈折力を有するレンズと正の屈折力を有するレンズとの接合レンズを有し、当該接合レンズの接合面にDOEを有することが好ましい。この構成は、回折面に対する光束の入射角を、極力小さくするような配置にすることで、回折面の回折効率を向上することが可能となり、撮影レンズ等の広い波長域(λ=400nm~700nm程度)でDOEを効果的に使用できる観点から好ましい。
【0049】
DOEを第1レンズ群に使用する目的は、主に色収差補正である。また、第1レンズ群がDOEを有することは、非常に重量に大きな影響を与える第1レンズ群のレンズ枚数の少なくすることが可能となる観点から好ましい。また、色収差に寄与するレンズの負担を軽減させ、レンズの枚数を削減することが可能となる。したがって、レンズの硝材選択制の自由度を向上させ、比重が軽いレンズを選択可能となる。そのため、当該ズームレンズの軽量化、及び物体側に配置されるレンズと像面側に配置されるレンズとの重量のバランスをとることが可能となる。
【0050】
また、第1レンズ群内でも、物体側に配置するよりも、第1レンズ群の最終面側に配置することで、有効域外の広角の不要光が回折面に入りにくくなり、迷光フレアを低減する効果がある。また、DOEの外径小径化によりDOE自身の軽量化にも役立つ。さらには、周辺光線の入射角度のズーム変動を小さくする効果が期待できる。
【0051】
また、第nレンズ群が第1レンズ群であり、第1レンズ群がDOEを1つのみ有することは、迷光フレアを低減する観点から好ましい。
【0052】
(3)第mレンズ群
第mレンズ群は、本実施形態に係るズームレンズにおいて物体側から数えてm番目に配置されているレンズ群である。mは2以上であってnより大きい整数である。第mレンズ群は、第nレンズ群より像面側に配置されている。また、第mレンズ群は、当該ズームレンズに含まれる負の屈折力を有するレンズ群の中で最も物体側に配置されている。すなわち、第mレンズ群は、物体側から最初の負の屈折力を有するレンズ群である。第mレンズ群が強い負の屈折力を有することは、第mレンズ群よりも物体側で発生した色収差及び球面収差を良好に補正し、高解像化の観点、さらに高倍率化の観点から好ましい。
【0053】
第mレンズ群は、上述のように全体で負の屈折力を有する。そのため、第mレンズ群は正の屈折力を有するレンズを少なくとも1枚有することは、色収差を良好に補正する観点から好ましい。また、当該正の屈折力を有するレンズは、他のレンズと接合していることが、色収差を良好に補正する観点から好ましい。
【0054】
また、第mレンズ群が負の屈折力を有するレンズを2枚以上有することは、広角端での像面湾曲、及び望遠端での色収差を良好に補正する観点から好ましい。
【0055】
また、当該ズームレンズの広角端において入射瞳位置をできる限り物体側に配置することは、径方向の小型化につながる。そのため、第mレンズ群において、負の屈折力を有するレンズ1枚が、正の屈折力を有するレンズの物体側に配置されることは、小型化の観点から好ましい。そのため、第mレンズ群内の正の屈折力を有するレンズの前にそれぞれ負の屈折力を有するレンズを配置することが好ましい。
【0056】
また、第mレンズ群において、正の屈折力を有するレンズの像面側に負の屈折力を有するレンズを配置することは、望遠端の色収差を良好に補正する観点から好ましい。そのため、第mレンズ群の最も像面側の負の屈折力を有するレンズの前に、正の屈折力を有するレンズを配置することが好ましい。
【0057】
また、第mレンズ群の最も物体側の正の屈折力を有するレンズは、d線における屈折率が1.7より大きいことが小型化の点で好ましく、1.8より大きいことがより好ましい。
【0058】
第mレンズ群に含まれる物体側にある負の屈折力を有するレンズと正の屈折力を有するレンズとが接合されていることは、間隔が少なくなることによる全長短縮化の観点から好ましい。さらに負の屈折力を有するレンズと正の屈折力を有するレンズとが接合されていることは、空気間隔を介して配置した構成と比較して、全長短縮設計の結果発生しやすい、偏芯誤差及び単レンズ間の空気間隔の誤差等、種々の製造誤差を小さくする観点から好ましい。したがって、光学性能の高いズームレンズを歩留まりよく製造することができる。
【0059】
第mレンズ群の中でも最も像面側に配置するレンズは、入射角特性が軸外光線と軸上光線で差が小さいため、軸上色収差の補正効果が軸外に比べて高い。そのため、第mレンズ群に含まれる正の屈折力を有するレンズは、低分散ガラスであることが好ましい。また、第mレンズ群に含まれる正の屈折力を有するレンズのd線におけるアッベ数が40より大きいことは、色収差を良好に補正する観点から好ましい。
【0060】
(4)第mレンズ群の像面側に隣接するレンズ群
第mレンズ群の像面側に隣接するレンズ群は、正の屈折力を有することが好ましい。第mレンズ群の像面側に隣接するレンズ群が正の屈折力を有することは、ズーム全域の球面収差及び色収差を良好に補正する観点から好ましい。また、後続の各レンズ群の径及び後続する絞りの径を小さくすることができ、メカ部品の配置に有利である。
【0061】
正の屈折力を有する第mレンズ群の像面側に隣接するレンズ群は、少なくとも1枚の負の屈折力を有するレンズを有することが好ましい。この構成は、像面性の向上及び色収差の低減、ならびに広角端では第mレンズ群で発生する像面湾曲及び歪曲を打ち消しあうことができる観点から好ましい。
【0062】
(5)フォーカス群
当該ズームレンズにおいて、フォーカス群を用いて合焦を行う。この際、少なくとも当該ズームレンズ中の少なくとも1枚のレンズを光軸方向に移動させればよい。
【0063】
なお、複数のレンズ群又は複数のレンズ群の一部分をフォーカス群としてもよい。すなわち、フローティング方式により合焦してもよい。フローティング方式を採用することは、より近接合焦時の球面収差及び像面性をよくすることが出来るため、高性能化の観点から好ましい。
【0064】
(6)開口絞り
本明細書中において、開口絞りは、当該ズームレンズの光束径を規定する開口絞り、すなわち当該ズームレンズのFnoを規定する開口絞りをいう。
【0065】
しかしながら、開口絞りを第mレンズ群から像面側に配置することは、絞りユニットの小型化の観点から好ましい。第mレンズ群での変倍作用が比較的大きいため、第mレンズ群に対する入射光束の径の変動は小さい。そのため、第mレンズ群から像面側に開口絞りを配置することは、開口絞りの径の小型化の観点、及び開口絞り径の変動を低減する観点から好ましい。
【0066】
(7)その他の構成
当該ズームレンズが、第mレンズ群より前に、正の屈折力を有するレンズ群を2つ以上有する場合、当該正の屈折力を有するレンズ群は、負の屈折力を有するレンズを少なくとも2枚有することが好ましい。この構成は、色収差、球面収差、及び像面性を良好に補正する観点から好ましい。
【0067】
また、当該ズームレンズは、本発明の効果が得られる範囲において、フィルター等のレンズ以外の光学素子を含んでいてよい。例えば、当該ズームレンズは、像面側に赤外線カットフィルターを有することが好ましい。
【0068】
1-2.動作
(1)変倍
当該ズームレンズにおいて、広角端から望遠端への変倍に際して、少なくともレンズ群間の空気間隔を変化させる。また、広角端から望遠端への変倍に際して、第nレンズ群を含む第mレンズ群よりも前に配置されている正の屈折力を有するレンズ群と、第mレンズ群との間の空気間隔は、増加するように変化させることが好ましい。また、第mレンズ群と、第mレンズ群の像面側に隣接するレンズ群との間の間隔は、減少するように変化させることが好ましい。このように移動させることは、ズームレンズにおけるズーム比を増加させる観点から好ましい。
【0069】
また、広角端から望遠端への変倍に際して、第mレンズ群が像面側へ移動することが好ましい。このように移動させることは、ズームレンズにおけるズーム比を増加させる観点から好ましい。
【0070】
(2)合焦
当該ズームレンズにおいて、合焦は、前述したフォーカス群によって実施することが可能である。無限遠から近接物体への合焦の際に移動するフォーカス群は、前述したように如何なるレンズまたはレンズ群であってもよい。また、合焦時におけるフォーカス群の移動の方向は限定されない。
【0071】
1-3.ズームレンズの条件を表す式
本実施形態に係るズームレンズは、前述した構成を採用すると共に、次に説明する式を少なくとも1つ以上満足することが望ましい。
【0072】
1-3-1.式(1)
0.40<φd/φ1<0.85・・・・・(1)
但し、
φd:回折面での軸上光線の有効径
φ1:ズームレンズにおける最も物体側のレンズ面での軸上光線の有効径
【0073】
式(1)は、第nレンズ群の最も物体側のレンズ面での軸上光線の有効径に対する回折面での軸上光線の有効径を適切に設定するための式である。式(1)を満足することは、回折面が第nレンズ群の後方の小径化された面にあることを示す。回折面が第nレンズ群の後方の小径化された面にあることは、回折面での「迷光フレアの低減」に著しい効果があるため、好ましい。具体的には、回折面が第nレンズ群の後方の小径化された面にあることで、回折面における径方向の隅に到達する有効域外の光線の入射光線角度を限定することが可能になり「迷光フレアの低減」に著しい効果がある。
【0074】
φd/φ1が式(1)の下限を下回る場合、十分な色収差補正が困難となることがある。また、φd/φ1が式(1)の上限を上回る場合、迷光フレアの低減が困難となることがある。
【0075】
十分な色収差補正を実現する観点から、φd/φ1は、0.42超であることがより好ましい。また回折面が第1レンズ群の後方の小径化された面にあることを示し、回折面での「迷光フレアの低減」を実現する観点から、φd/φ1は、0.80未満であることがより好ましい。
【0076】
1-3-2.式(2)
50<νp<77・・・・・(2)
但し、
νp:第nレンズ群に含まれる正の屈折力を有するレンズのd線におけるアッベ数の平均値
【0077】
式(2)は、第nレンズ群に含まれる正の屈折力を有するレンズのd線におけるアッベ数の平均値を適切に設定するための式である。式(2)を満足することは、第nレンズ群において比較的比重が小さい硝材選択が可能である観点から好ましい。特に第nレンズ群が第1レンズ群である場合では、第1レンズ群において比較的比重が小さい硝材選択が可能である。
【0078】
νpが式(2)の下限を下回る場合、望遠端での色収差を十分に補正することが困難となることがある。また、νpが式(2)の上限を上回る場合、比較的比重が小さい硝材選択することが困難となることがある。
【0079】
望遠端での色収差を十分に補正する観点から、νpは、55超であることが好ましく、60超であることがより好ましい。また、比較的比重が小さい硝材選択が可能である観点から、νpは、小さいことが好ましく、例えば75未満であることがより好ましい。
【0080】
1-3-3.式(3)
本実施形態に係るズームレンズは、第nレンズ群は、最も物体側のレンズ群である第1レンズ群であり、以下の式を満足することが好ましい。
【0081】
0.00<Ddol/Dn<0.30・・・・・(3)
但し、
Ddol:回折面から第nレンズ群の最も像面側のレンズ面までの光軸上の距離
Dn:ズームレンズの無限遠合焦時における望遠端での、ズームレンズにおける最も物体側のレンズ面と、第nレンズ群の最も像面側のレンズ面との間の光軸上の距離
【0082】
式(3)は、ズームレンズの最も物体側のレンズ面と、第nレンズ群の最も像面側のレンズ面との間の光軸上の距離に対する、回折面から第nレンズ群の最も像面側のレンズ面までの光軸上の距離を適切に設定するための式である。式(3)を満足することは、回折面を第nレンズ群の最終面側に配置することで、有効域外の広角の不要光が回折面に入りにくくなり、迷光フレアを低減する観点から好ましい。また、DOEの外径小径化により、DOE自身の軽量化にも役立つ。回折面が第nレンズ群に複数ある場合は、そのいずれかの回折面が式(3)を満足することが好ましい。
【0083】
Ddol/Dnが下限を下回る場合、DOEの回折面を第nレンズ群の最終レンズの像面側に配置することが困難となることがある。また、Ddol/Dnが式(3)の上限を上回る場合、迷光フレアの低減を実現することが困難となることがある。
【0084】
迷光フレアの低減を実現する観点から、Ddol/Dnは、小さいことが好ましく、例えば0.27未満であることがより好ましく、0.24未満であることがさらに好ましい。
【0085】
1-3-4.式(4)
0.15<Dn/Dt<0.40・・・・・(4)
但し、
Dn:ズームレンズの無限遠合焦時における望遠端での、ズームレンズにおける最も物体側のレンズ面と、第nレンズ群の最も像面側のレンズ面との間の光軸上の距離
Dt:ズームレンズの無限遠合焦時における望遠端での光学全長
【0086】
式(4)は、ズームレンズの無限遠合焦時における望遠端での光学全長に対する第nレンズ群の最も物体側のレンズ面と、第nレンズ群の最も像面側のレンズ面との間の光軸上の距離を適切に設定するための式である。式(4)を満足することは、第nレンズ群の軽量化を実現する観点から好ましい。特に第nレンズ群が第1レンズ群である場合では、第1レンズ群の軽量化を実現することができる。
【0087】
Dn/Dtが式(4)の下限を下回る場合、高解像化及びズーム比高倍率化が困難となることがある。また、Dn/Dtが式(4)の上限を上回る場合、軽量化が困難となることがある。
【0088】
高解像化及びズーム比高倍率化を実現する観点から、Dn/Dtは、0.17超であることがより好ましく、0.20超であることがさらに好ましい。また、軽量化を実現する観点から、Dn/Dtは、0.35未満であることがより好ましく、0.30未満であることがさらに好ましい。
【0089】
1-3-5.式(5)
0.1<|BNt/BNw|<10.0・・・・・(5)
但し、
BNt:第mレンズ群の無限遠合焦時における望遠端での横倍率
BNw:第mレンズ群の無限遠合焦時における広角端での横倍率
【0090】
式(5)は、第mレンズ群の広角端での横倍率に対する第mレンズ群の望遠端での横倍率の絶対値を適切に設定するための式である。式(5)を満足することは、ズーム時の変倍効果を高める観点から好ましい。
【0091】
|BNt/BNw|が式(5)の下限を下回る場合、ズーム時の変倍効果を十分に高めることが困難となることがある。
【0092】
ズーム時の変倍効果を高める観点から、|BNt/BNw|は、大きいことが好ましく、例えば1.0超であることがより好ましく、2.0超であることがさらに好ましい。また、軽量化を実現する観点から、|BNt/BNw|は、8.0未満であることが好ましい。
【0093】
1-3-6.式(6)
0.10<fn/ft<2.00・・・・・(6)
但し、
fn:第nレンズ群の焦点距離
ft:ズームレンズの無限遠合焦時における望遠端での焦点距離
【0094】
式(6)は、ズームレンズの無限遠合焦時における望遠端での焦点距離に対するズームレンズの無限遠合焦時における望遠端での焦点距離を適切に設定するための式である。式(6)を満足することは、第nレンズ群による望遠端での色消し収差の補正の効果を高める観点から好ましい。特に第nレンズ群が第1レンズ群である場合では、第1レンズ群による望遠端での色消し収差の補正の効果を高めることができる。
【0095】
fn/ftが式(6)の下限を下回る場合、色収差以外の歪曲収差等を良好に補正することが困難となることがある。また、fn/ftが式(6)の上限を上回る場合、望遠端での色消し収差を良好に補正すること及び適切なレベルの全長短縮が困難となることがある。
【0096】
色収差以外の歪曲収差等を良好に補正する観点から、fn/ftは、0.18超であることがより好ましく、0.20超であることがさらに好ましい。また、望遠端での色消し収差を良好に補正すること及び適切なレベルの全長短縮を実現する観点から、fn/ftは、1.80未満であることがより好ましく、1.50未満であることがさらに好ましい。
【0097】
1-3-7.式(7)
0.2<fn/fw<4.5・・・・・(7)
但し、
fn:第nレンズ群の焦点距離
fw:ズームレンズの無限遠合焦時における広角端での焦点距離
【0098】
式(7)は、ズームレンズの無限遠合焦時における広角端での焦点距離に対するズームレンズの無限遠合焦時における広角端での焦点距離を適切に設定するための式である。式(7)を満足することは、第nレンズ群による広角端での歪曲抑制及び色消し収差の補正の効果を高める観点から好ましい。特に第nレンズ群が第1レンズ群である場合では、第1レンズ群による広角端での歪曲抑制及び色消し収差の補正の効果を高めることができる。
【0099】
fn/fwが式(7)の下限を下回る場合、歪曲収差を良好に補正することが困難となることがある。また、fn/fwが式(7)の上限を上回る場合、色消し収差を良好に補正することが困難となることがある。
【0100】
歪曲収差を良好に補正する観点から、fn/fwは、0.3超であることがより好ましく、0.4超であることがさらに好ましい。また、色消し収差を良好に補正する観点から、fn/fwは、1.8未満であることがより好ましく、1.5未満であることがさらに好ましい。
【0101】
1-3-8.式(8)
-0.16<fm/ft<-0.03・・・・・(8)
但し、
fm:第mレンズ群の焦点距離
ft:ズームレンズの無限遠合焦時における望遠端での焦点距離
【0102】
式(8)は、ズームレンズの無限遠合焦時における望遠端での焦点距離に対する第mレンズ群の焦点距離を適切に設定するための式である。式(8)を満足することは、第mレンズ群による望遠端での色消し収差の補正の効果を高める観点から好ましい。
【0103】
fm/ftが式(8)の下限を下回る場合、歪曲収差を良好に補正することが困難となることがある。また、fm/ftが式(8)の上限を上回る場合、色消し収差を良好に補正することが困難となることがある。
【0104】
歪曲収差を良好に補正する観点から、fm/ftは、-0.14超であることがより好ましく、-0.12超であることがさらに好ましい。また、色消し収差を良好に補正する観点から、fm/ftは、-0.04未満であることがより好ましく、-0.06未満であることがさらに好ましい。
【0105】
2.撮像装置
次に、本発明の一実施形態に係る撮像装置について説明する。当該撮像装置は、上記実施形態に係るズームレンズと、当該ズームレンズの像面側に設けられた、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備える。
【0106】
ここで、撮像素子に限定はなく、撮像素子には、CCD(Charge Coupled Device)センサ及びCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの固体撮像素子を用いることができ、銀塩フィルム、赤外線カットフィルター(IRCF)等も用いることができる。本実施形態に係る撮像装置は、デジタルカメラ及びビデオカメラ等の、上記の固体撮像素子を用いた撮像装置に好適である。また、当該撮像装置は、レンズが筐体に固定されたレンズ固定式の撮像装置であってもよいし、一眼レフカメラ及びミラーレス一眼カメラ等のレンズ交換式の撮像装置であってもよい。特に、本実施形態に係るズームレンズは交換レンズシステムに好適なバックフォーカスを確保することができる。そのため、光学式ファインダー、位相差センサ及びこれらに光を分岐するためのリフレックスミラー等を備えた一眼レフカメラ等の撮像装置に好適である。
【0107】
図17は、本実施形態に係る撮像装置の構成の一例を模式的に示す図である。
図17に示されるように、ミラーレス一眼カメラ1は、本体2及び本体2に着脱可能な鏡筒3を有している。ミラーレス一眼カメラ1は、撮像装置の一態様である。
【0108】
鏡筒3は、ズームレンズ30を有している。ズームレンズ30は、第1レンズ群31と、第2レンズ群32と、第3レンズ群33と、第4レンズ群34と、第5レンズ群35と、第6レンズ群36と、第7レンズ群37を備えている。ズームレンズ30は、例えば前述した式(1)を満足するように構成されている。第1レンズ群31は、回折光学素子38を備えている。なお、第4レンズ群34の最も像面側には、開口絞り39が配置されている。
【0109】
第1レンズ群31は、正の屈折力を有しており、前述の第nレンズ群に相当する。第2レンズ群32は、負の屈折力を有しており、前述の第mレンズ群に相当する。第3レンズ群33は、正の屈折力を有している。第4レンズ群34は、正の屈折力を有している。第5レンズ群35は、負の屈折力を有している。第6レンズ群36は、負の屈折力を有している。第7レンズ群37は、正の屈折力を有している。
【0110】
本体2は、撮像素子としてのCCDセンサ21及び赤外線カットフィルター22を有している。CCDセンサ21は、本体2中における、本体2に装着された鏡筒3内のズームレンズ30の光軸OAが中心軸となる位置に配置されている。本体2は、赤外線カットフィルターIRCF22の代わりに、カバーガラス等の実質的な屈折力を有さない平行平面板を有していてもよく、この場合であっても解像性能上何ら問題ない。
【0111】
本実施形態に係る撮像装置は、撮像素子により取得した撮像画像データを電気的に加工して、撮像画像の形状を変化させる画像処理部、ならびに、当該画像処理部において撮像画像データを加工するために用いる画像補正データ及び画像補正プログラム等を保持する画像補正データ保持部、等を有することがより好ましい。
【0112】
本実施形態に係る撮像装置は、小型かつ軽量で迷光フレアが低減された高い光学性能を有する。ズームレンズを小型化した場合、結像面において結像された撮像画像形状の歪み(歪曲)が生じやすくなる。その際、撮像画像形状の歪みを補正することが好ましい。当該補正は、例えば、画像補正データ保持部に予め撮像画像形状の歪みを補正するための歪み補正データを保持させておき、上記画像処理部において、画像補正データ保持部に保持された歪み補正データを用いることによって実施することができる。このような撮像装置によれば、ズームレンズの小型化をより一層図ることができ、秀麗な撮像画像を得ると共に、撮像装置全体の小型化を図ることができる。
【0113】
さらに、本実施形態に係る撮像装置において、上記画像補正データ保持部に予め倍率色収差補正データを保持させておくことが好ましい。また、上記画像処理部において、画像補正データ保持部に保持された倍率色収差補正データを用いて、当該撮像画像の倍率色収差補正を行わせることが好ましい。画像処理部により、倍率色収差、すなわち、色の歪曲収差を補正することで、ズームレンズを構成するレンズの数を削減することが可能になる。そのため、このような撮像装置によれば、ズームレンズの小型化をより一層図ることができ、秀麗な撮像画像を得ると共に、撮像装置全体の小型化を図ることができる。
【0114】
本発明は、上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0115】
(まとめ)
本発明の態様1に係るズームレンズは、正の屈折力を有する第nレンズ群(nは1以上の整数)を有し、第nレンズ群より像面側に負の屈折力を有する第mレンズ群(mは2以上であってnより大きい整数)を有し、隣り合うレンズ群間の間隔を変化させることにより変倍動作を行うズームレンズであって、第nレンズ群は回折光学素子を有し、前記第mレンズ群は、前記ズームレンズに含まれる負の屈折力を有するレンズ群の中で最も物体側に配置され、第mレンズ群より物体側のレンズの数が5枚以下であり、以下の式を満足する、ズームレンズである。
0.40<φd/φ1<0.85・・・・・(1)
但し、
φd:回折光学素子の回折面での軸上光線の有効径
φ1:ズームレンズにおける最も物体側のレンズ面での軸上光線の有効径
【0116】
本発明の態様2に係るズームレンズは、前記の態様1において、回折面は、物体側に凸の面に形成されている、ズームレンズとしてもよい。
【0117】
本発明の態様3に係るズームレンズは、前記の態様1又は2において、第nレンズ群は、接合レンズを有し、接合レンズの接合面に回折光学素子を有する、ズームレンズとしてもよい。
【0118】
本発明の態様4に係るズームレンズは、前記の態様1~3のいずれか1つにおいて、変倍に際して、第nレンズ群は固定である、ズームレンズとしてもよい。
【0119】
本発明の態様5に係るズームレンズは、前記の態様1~4のいずれか1つにおいて、以下の式を満足する、ズームレンズとしてもよい。
50<νp<77・・・・・(2)
但し、
νp:第nレンズ群に含まれる正の屈折力を有するレンズのd線におけるアッベ数の平均値
【0120】
本発明の態様6に係るズームレンズは、前記の態様1~5のいずれか1つにおいて、以下の式を満足する、ズームレンズとしてもよい。
【0121】
0.00<Ddol/Dn<0.30・・・・・(3)
但し、
Ddol:回折面から第nレンズ群の最も像面側のレンズ面までの光軸上の距離
Dn:ズームレンズの無限遠合焦時における望遠端での、ズームレンズにおける最も物体側のレンズ面と、第nレンズ群の最も像面側のレンズ面との間の光軸上の距離
【0122】
本発明の態様7に係るズームレンズは、前記の態様1~6のいずれか1つにおいて、以下の式を満足する、ズームレンズとしてもよい。
0.15<Dn/Dt<0.40・・・・・(4)
但し、
Dn:ズームレンズの無限遠合焦時における望遠端での、ズームレンズにおける最も物体側のレンズ面と、第nレンズ群の最も像面側のレンズ面との間の光軸上の距離
Dt:ズームレンズの無限遠合焦時における望遠端での光学全長
【0123】
本発明の態様8に係るズームレンズは、前記の態様1~7のいずれか1つにおいて、以下の式を満足する、ズームレンズとしてもよい。
0.1<|BNt/BNw|<10.0・・・・・(5)
但し、
BNt:第mレンズ群の無限遠合焦時における望遠端での横倍率
BNw:第mレンズ群の無限遠合焦時における広角端での横倍率
【0124】
本発明の態様9に係るズームレンズは、前記の態様1~8のいずれか1つにおいて、第nレンズ群は、物体側から順に負の屈折力を有するレンズと正の屈折力を有するレンズとの接合レンズを有し、接合レンズの接合面に回折光学素子を有する、ズームレンズとしてもよい。
【0125】
本発明の態様10に係るズームレンズは、前記の態様1~9のいずれか1つにおいて、以下の式を満足する、ズームレンズとしてもよい。
0.10<fn/ft<2.00・・・・・(6)
但し、
fn:第nレンズ群の焦点距離
ft:ズームレンズの無限遠合焦時における望遠端での焦点距離
【0126】
本発明の態様11に係るズームレンズは、前記の態様1~10のいずれか1つにおいて、以下の式を満足する、ズームレンズとしてもよい。
0.2<fn/fw<4.5・・・・・(7)
但し、
fn:第nレンズ群の焦点距離
fw:ズームレンズの無限遠合焦時における広角端での焦点距離
【0127】
本発明の態様12に係るズームレンズは、前記の態様1~11のいずれか1つにおいて、以下の式を満足する、ズームレンズとしてもよい。
0.20<fm/ft<1.30・・・・・(8)
但し、
fn:第mレンズ群の焦点距離
ft:ズームレンズの無限遠合焦時における望遠端での焦点距離
【0128】
本発明の態様13に係る撮像装置は、前記の態様1~12のいずれか1つのズームレンズと、当該ズームレンズの像面側に設けられた、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備える、撮像装置であってもよい。
【実施例0129】
本発明の一実施例について以下に説明する。なお、以下の各表において、長さの単位は
全て「mm」であり、画角の単位は全て「°」である。また、「E+a」は「×10a」
を示す。
【0130】
[実施例1]
図1は、実施例1のズームレンズの広角端における無限遠合焦時における光学的な構成を模式的に示す図である。実施例1の当該ズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、負の屈折力を有する第5レンズ群G5と、負の屈折力を有する第6レンズ群G6と、正の屈折力を有する第7レンズ群G7から構成されている。
【0131】
無限遠物体から近接物体への合焦の際、第5レンズ群G5が光軸に沿って像面側に移動する。開口絞りSは、第4レンズ群G4の最も像面側に配置されている。第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間の空気間隔は、ズームレンズの広角端における空気間隔の中で最も大きく、同時にレンズ群間隔の変動量が最も大きい。
【0132】
以下、各レンズ群の構成を説明する。第1レンズ群G1は、前述の第nレンズ群に相当する。第1レンズ群G1は、物体側から順に、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと、両凹形状の負の屈折力を有するレンズと、両凸形状の正の屈折力を有するレンズから構成されている。回折面は、物体側から3つ目のレンズの像面側の面と、物体側から4つ目のレンズの物体側の面との境界面にある。
【0133】
第2レンズ群G2は、前述の第mレンズ群に相当する。第2レンズ群は、物体側から順に、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと両凹形状の負の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズと、両凹形状の負の屈折力を有するレンズから構成されている。
【0134】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと両凹形状の負の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズと、物体側に凸の負の屈折力を有するメニスカスレンズから構成されている。
【0135】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと両凹形状の負の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズと、両凹形状の負の屈折力を有するレンズと物体側に凸の正の屈折力を有するメニスカスレンズとが接合された接合レンズと、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと両凹形状の負の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズと、両凸形状の正の屈折力を有するレンズから構成されている。
【0136】
第5レンズ群G5は、物体側から順に、物体側に凹の正の屈折力を有するメニスカスレンズと両凹形状の負の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズから構成されている。
【0137】
第6レンズ群G6は、物体側から順に、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと両凹形状の負の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズから構成されている。
【0138】
第7レンズ群G7は、物体側から順に、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと両凸形状の正の屈折力を有するレンズと両凹形状の負の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズと、両凹形状の負の屈折力を有するレンズと物体側に凸の正の屈折力を有するメニスカスレンズとが接合された接合レンズと、物体側に凹の負の屈折力を有するメニスカスレンズから構成されている。
【0139】
実施例1のズームレンズでは、広角端から望遠端への変倍時に、像面に対して、第1レンズ群G1が物体側に移動し、第2レンズ群G2が物体側に移動し、第3レンズ群G3が物体側に移動し、第4レンズ群G4が物体側に移動する。
【0140】
実施例1のズームレンズでは、広角端から望遠端への変倍時に、像面に対して、第1レンズ群G1は固定であり、第2レンズ群G2は像面側に移動し、第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4は固定であり、第5レンズ群G5は物体側へ移動し、第6レンズ群G6は物体側へ移動し、第7レンズ群7G7は固定である。
【0141】
また、
図1に示す「IMG」は像面(結像面)である。また、第7レンズ群G7と結像面IMGとの間には、赤外線カットフィルターIRCFが配置されている。これらの点は、他の実施例で示す光学的な構成を模式的に示す図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0142】
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表1に当該ズームレンズの面データを示す。
【0143】
なお、本発明の実施例における面データの表において、「面NO.」は物体側から数えたレンズ面の順番、「r」はレンズ面の曲率半径、「d」はレンズ面の光軸上の間隔、「Nd」はd線(波長λ=587.56nm)に対する屈折率、「νd」はd線に対するアッベ数、面番号の次の欄に表示する「ASP」は当該レンズ面が非球面であること、「DOE」は当該面が回折面であることを表す。さらに、「d」の欄における「D(9)」、「D(14)」等の表示は、レンズ面の光軸上の間隔が変倍時又は合焦時に変化する可変間隔であることを意味する。
【0144】
なお、曲率半径の「INF」は平面を意味する。表1において、No.1~9は第1レンズ群G1の面番号である。No.10~14は第2レンズ群G2の面番号である。No.15~21は第3レンズ群G3の面番号である。No.22~33は第4レンズ群G4の面番号である。No.34~36は第5レンズ群G5の面番号である。No.37~39は第6レンズ群G6の面番号である。No.40~49は第7レンズ群G7の面番号である。No.50、51は赤外線カットフィルターIRCFの面番号である。
【0145】
[表1]
面NO. ASP&DOE r d Nd νd
1 185.715 7.418 1.4875 70.44
2 -1701.966 90.630
3 135.468 6.748 1.4970 81.61
4 -458.102 0.350
5 -361.472 2.400 1.8348 42.72
6 300.983 0.010 1.6709 33.70
7 DOE 300.983 0.010 1.6297 24.90
8 300.983 4.111 1.4875 70.44
9 -12207.869 D(9)
10 8214.807 3.428 1.8052 25.46
11 -77.405 1.500 1.7292 54.67
12 83.560 2.667
13 -113.615 1.500 1.8348 42.72
14 1679.763 D(14)
15 67.017 5.767 1.4970 81.61
16 -97.541 0.200
17 50.490 6.499 1.4970 81.61
18 -90.372 2.000 1.8061 33.27
19 281.758 5.503
20 42.194 1.300 1.8545 25.15
21 31.145 D(21)
22 82.382 3.583 1.5710 50.80
23 -105.031 1.300 1.8707 40.73
24 -666.863 2.500
25 -142.223 1.200 1.7440 44.90
26 26.448 3.680 1.8061 33.27
27 79.452 2.500
28 61.860 4.549 1.6034 38.01
29 -41.731 1.200 1.9108 35.25
30 153.414 2.446
31 114.962 3.269 1.7174 29.50
32 -76.080 1.557
33 0.000 D(33) (開口絞り)
34 -39544.481 2.797 1.8061 33.27
35 -35.405 1.000 1.8348 42.72
36 55.619 D(36)
37 51.555 4.993 1.8545 25.15
38 -20.448 1.000 1.9229 20.88
39 51.783 D(39)
40 45.735 4.068 1.6990 30.05
41 -40.488 4.817
42 56.697 4.142 1.6889 31.16
43 -20.991 1.000 1.8810 40.14
44 48.729 8.514
45 -40.066 1.000 1.8707 40.73
46 17.044 5.696 1.6477 33.84
47 -18.165 1.042
48 ASP -16.979 1.200 1.9004 37.37
49 -57.888 56.596
50 0.000 2.500 1.5168 64.20
51 0.000 1.000
【0146】
表2は、実施例1のズームレンズの緒元表を示す。当該緒元表中、「F」は無限遠合焦時における当該ズームレンズの焦点距離、「Fno」はFナンバー、「W」は半画角、「OBJ」は無限遠合焦時における当該ズームレンズの物体距離、「Y」は有効像高をそれぞれ表す。当該諸元表の紙面に対して左側三列では、左から順に、無限遠合焦時における、広角端、中間焦点距離状態、及び望遠端での、それぞれの値を示している。また、当該諸元表の紙面に対して右側三列では、左から順に、物体距離が11760mmであるときの広角端での値、物体距離が18000mmであるときの中間焦点距離状態での値、物体距離が278200mmであるときの望遠端での値を示している。これらの物体距離が各焦点距離における最短撮像距離である。
【0147】
[表2]
F 411.754 629.560 970.006 357.251 509.851 716.429
Fno 10.342 10.884 11.490 10.465 11.144 12.250
W 2.925 1.915 1.243 2.881 1.869 1.189
OBJ Inf Inf Inf 11760 18000 278200
Y 21.633 21.633 21.633 21.633 21.633 21.633
D(10) 33.885 55.988 74.572 33.885 55.988 74.572
D(15) 64.235 35.030 1.500 64.235 35.030 1.500
D(22) 3.916 11.018 25.963 3.916 11.018 25.963
D(34) 20.453 18.328 4.423 21.973 20.665 7.758
D(37) 14.825 16.008 30.785 13.305 13.672 27.449
D(40) 1.500 2.441 1.570 1.500 2.441 1.570
【0148】
表3は、実施例1のズームレンズを構成する各レンズ群の焦点距離を示す。
【0149】
[表3]
レンズ群No 焦点距離
1 252.953
2 -63.946
3 86.120
4 191.418
5 -63.100
6 -283.994
7 174.014
【0150】
表4は、実施例1のズームレンズにおける回折面のDOE係数を示す。第1レンズ群1Gに含まれる回折面について、その面番号、有効径、回折次数(m)、規格化波長(回折波長)(λ)、回折面係数(C01、C02、C03)を示す。他の実施例においても同様である。
【0151】
[表4]
面番号 7
有効径 24.0655
回折次数 1
回折波長 587.56
C01 -0.000008
C02 -5.23928E-10
C03 -2.93612E-13
【0152】
表5は、実施例1のズームレンズにおける非球面の非球面係数を示す。当該表における非球面係数は、各非球面形状を下記式で定義したときの値である。
【0153】
X(Z)=CZ2/[1+{1-(1+K)・C2Z2}1/2]+A4・Z4+A6・Z6+A8・Z8+A10・Z10+A12・Z12
【0154】
上記式において、「X」は光軸方向の基準面からの変位量、「C」は面頂点での曲率、「Z」は光軸に垂直な方向の光軸からの高さ、「Κ」はコーニック係数、「An」はn次の非球面係数とする。他の実施例においても同様である。
【0155】
[表5]
No. K A4 A6 A8 A10
48 0.000E+00 1.111E-05 6.569E-08 -1.469E-10 4.113E-12
【0156】
また、
図2、3、4は、それぞれ、実施例1のズームレンズの広角端、中間焦点距離状態、望遠端での無限遠合焦時における縦収差図を示す図である。各図に示す縦収差図は、図面に向かって左側から順に、それぞれ球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)である。他の実施例においても同様である。
【0157】
球面収差を表す図では、縦軸は開放F値との割合とし、横軸にデフォーカスとしている。球面収差を表す図では、実線がd線(波長λ=587.56nm)、鎖線がg線(波長λ=435.83nm)、点線がC線(波長λ=656.27nm)における球面収差を示す。
【0158】
非点収差を表す図では、縦軸は像高とし、横軸にデフォーカスとしている。非点収差を表す図では、実線がd線に対するサジタル像面(S)、四点鎖線がd線に対するメリジオナル像面(M)を示す。
【0159】
歪曲収差を表す図では、縦軸は像高とし、横軸に%としている。なお、収差図における「IMG HT」は像高を表す。これらの縦収差図に関する事項は、他の実施例で示す
縦収差図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0160】
[実施例2]
図5は、実施例2のズームレンズの広角端における無限遠合焦時における光学的な構成を模式的に示す図である。実施例2の当該ズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、負の屈折力を有する第5レンズ群G5と、負の屈折力を有する第6レンズ群G6から構成されている。
【0161】
無限遠物体から近接物体への合焦の際、第5レンズ群G5が光軸に沿って像面側に移動する。開口絞りSは、第4レンズ群G4の最も像面側に配置されている。第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間の空気間隔は、ズームレンズの広角端における空気間隔の中で最も大きく、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間の空気間隔は、レンズ群間隔の変動量が最も大きい。
【0162】
以下、各レンズ群の構成を説明する。第1レンズ群G1は、前述の第nレンズ群に相当する。第1レンズ群G1は、物体側から順に、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと、物体側に凹の負の屈折力を有するメニスカスレンズと、物体側に凹の正の屈折力を有するメニスカスレンズレンズから構成されている。回折面は、物体側から3つ目のレンズの像面側の面と、物体側から4つ目のレンズの物体側の面との境界面にある。
【0163】
第2レンズ群G2は、前述の第mレンズ群に相当する。第2レンズ群は、物体側から順に、物体側に凹の正の屈折力を有するメニスカスレンズと両凹形状の負の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズと、両凹形状の負の屈折力を有するレンズから構成されている。
【0164】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと両凹形状の負の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズと、物体側に凸の負の屈折力を有するメニスカスレンズから構成されている。
【0165】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと両凹形状の負の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズと、物体側に凸の負の屈折力を有するメニスカスレンズと物体側に凸の正の屈折力を有するメニスカスレンズとが接合された接合レンズと、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと物体側に凹の負の屈折力を有するメニスカスレンズとが接合された接合レンズと、両凸形状の正の屈折力を有するレンズから構成されている。
【0166】
第5レンズ群G5は、物体側から順に、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと両凹形状の負の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズ構成されている。
【0167】
第6レンズ群G6は、物体側から順に、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと両凹形状の負の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズと、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと両凹形状の負の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズと、両凹形状の負の屈折力を有するレンズと両凸形状の正の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズと、物体側に凹の負の屈折力を有するメニスカスレンズから構成されている。
【0168】
実施例2のズームレンズでは、広角端から望遠端への変倍時に、像面に対して、第1レンズ群G1は固定であり、第2レンズ群G2は像面側に移動し、第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4は固定であり、第5レンズ群G5は物体側に移動し、第6レンズ群G6は固定である。
【0169】
表6は、実施例2のズームレンズの面データの表である。表6において、No.1~9は第1レンズ群G1の面番号である。No.10~14は第2レンズ群G2の面番号である。No.15~21は第3レンズ群G3の面番号である。No.22~33は第4レンズ群G4の面番号である。No.34~36は第5レンズ群G5の面番号である。No.37~49は第6レンズ群G6の面番号である。No.50、51は赤外線カットフィルターIRCFの面番号である。
【0170】
[表6]
面NO. ASP&DOE r d Nd νd
1 212.884 7.241 1.4875 70.44
2 -1431.781 65.500
3 258.759 7.173 1.4875 70.44
4 -190.854 0.430
5 -174.222 2.400 1.8352 41.01
6 -946.777 0.000 1.6700 34.00
7 DOE -946.777 0.000 1.6300 25.00
8 -946.777 10.000 1.4920 67.32
9 -231.180 D(9)
10 -249.587 4.357 1.8052 25.46
11 -49.182 1.500 1.7170 47.96
12 303.504 2.047
13 -94.798 1.500 1.8194 42.95
14 261.372 D(14)
15 63.470 6.071 1.4970 81.61
16 -100.516 3.825
17 53.036 7.795 1.4970 81.61
18 -78.418 2.000 1.8061 33.27
19 100.906 8.095
20 28.809 1.300 1.9037 31.31
21 27.117 D(21)
22 83.070 3.746 1.5661 41.46
23 -93.439 1.300 1.8860 38.66
24 750.487 0.200
25 491.198 1.200 1.7462 46.27
26 22.210 3.989 1.8026 25.03
27 48.389 5.443
28 74.142 3.791 1.6016 36.04
29 -35.847 1.200 1.9151 22.24
30 -825.294 0.200
31 101.077 3.309 1.7153 27.07
32 -100.930 1.598
33 0.000 D(33) (開口絞り)
34 274.824 1.769 1.8525 22.33
35 -246.948 1.000 1.8285 42.61
36 50.905 D(36)
37 48.154 4.182 1.8539 27.09
38 -29.325 1.000 1.9230 20.89
39 42.760 0.450
40 79.533 3.431 1.6741 31.51
41 -35.639 4.966
42 29.985 4.454 1.6688 29.80
43 -22.438 1.000 1.8833 40.76
44 36.896 9.558
45 -133.162 1.000 1.8830 40.80
46 14.720 7.930 1.6635 30.17
47 -16.602 0.210
48 ASP -15.763 1.200 1.9285 34.98
49 -230.639 60.169
50 0.000 2.500 1.5168 64.20
51 0.000 1.000
【0171】
表7は、実施例2のズームレンズの諸元表を示す。表8は、実施例2のズームレンズを構成する各レンズ群の焦点距離を示す。表9は、実施例2のズームレンズにおける回折面のDOE係数を示す。表10は、実施例2のズームレンズにおける非球面の非球面係数を示す。
【0172】
[表7]
F 412.431 629.719 969.833 289.867 317.084 287.580
Fno 10.161 10.798 11.498 10.557 11.789 14.340
W 2.987 1.952 1.267 2.880 1.794 1.016
OBJ Inf Inf Inf 4085 4085 4085
Y 21.633 21.633 21.633 21.633 21.633 21.633
D(9) 44.840 64.800 80.132 44.840 64.800 80.132
D(14) 66.035 36.754 3.600 66.035 36.754 3.600
D(21) 5.693 15.014 32.835 5.693 15.014 32.835
D(33) 19.481 16.491 3.163 23.859 26.651 26.480
D(36) 10.924 13.914 27.243 6.547 3.754 3.926
【0173】
[表8]
レンズ群No 焦点距離
1 229.777
2 -63.243
3 89.722
4 187.248
5 -76.932
6 -212.937
【0174】
[表9]
面番号 7
有効径 27.5808
回折次数 1
回折波長 587.56
C01 -0.000017
C02 5.26177E-10
C03 -3.39692E-13
【0175】
[表10]
No. K A4 A6 A8 A10
48 0.000E+00 2.913E-05 7.736E-08 5.079E-12 2.997E-12
【0176】
[実施例3]
図9は、実施例3のズームレンズの広角端における無限遠合焦時における光学的な構成を模式的に示す図である。実施例3の当該ズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4から構成されている。
【0177】
無限遠物体から近接物体への合焦の際、第3レンズ群G3及び第4レンズ群G4がそれぞれ光軸に沿って物体側に移動する。開口絞りSは、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間に位置しズーム変動時に固定している。第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間の空気間隔は、ズームレンズの広角端における空気間隔の中で最も大きい。また、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間のレンズ群間隔の変動量が最も大きい。
【0178】
以下、各レンズ群の構成を説明する。第1レンズ群G1は、前述の第nレンズ群に相当する。第1レンズ群G1は、物体側から順に、第1レンズ群G1は、前述の第nレンズ群に相当する。第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸の正の屈折力を有するメニスカスレンズを有するレンズと、物体側に凸の負の屈折力を有するメニスカスレンズと物体側に凸の負の屈折力を有するメニスカスレンズとが接合された接合レンズと、物体側に凸の正の屈折力を有するメニスカスレンズから構成されている。回折面は、物体側から2つ目のレンズの像面側の面と、物体側から3つ目のレンズの物体側の面との境界面にある。
【0179】
第2レンズ群G2は、前述の第mレンズ群に相当する。第2レンズ群は、物体側から順に、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと両凹形状の負の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズと、両凹形状の負の屈折力を有するレンズから構成されている。
【0180】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、物体側に凸の負の屈折力を有するメニスカスレンズと、両凸形状の正の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズから構成されている。
【0181】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、物体側に凸の負の屈折力を有するメニスカスレンズと両凸形状の正の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズと、物体側に凹の負の屈折力を有するメニスカスレンズから構成されている。
【0182】
実施例3のズームレンズでは、広角端から望遠端への変倍時に、像面に対して、第1レンズ群G1は固定であり、第2レンズ群G2は像面側に移動し、第3レンズ群G3は物体側に移動した後像面側に移動し、第4レンズ群G4は像面側に移動する。
【0183】
表11は、実施例3のズームレンズの面データの表である。表11において、No.1~7は第1レンズ群G1の面番号である。No.8~12は第2レンズ群G2の面番号である。No.13は開口絞りである。No.14~16は第3レンズ群G3の面番号である。No.17~21は第4レンズ群G4の面番号である。No.22、23は赤外線カットフィルターIRCFの面番号である。
【0184】
[表11]
面NO. ASP&DOE r d Nd νd
1 310.609 9.278 1.4891 70.44
2 1272.566 180.000
3 163.688 6.000 1.8550 23.78
4 DOE 95.925 35.000 1.7234 50.23
5 77.171 6.300
6 80.112 18.028 1.6831 51.04
7 5798.240 D(7)
8 640.914 43.266 1.7617 27.58
9 -104.560 6.490 1.5680 43.99
10 110.617 16.456
11 -91.726 4.000 1.4891 70.40
12 103.300 D(12)
13 0.000 D(13) (開口絞り)
14 197.944 17.000 1.7493 42.24
15 85.000 14.000 1.5181 67.47
16 -245.323 D(16)
17 181.106 1.200 1.7617 27.58
18 127.991 20.000 1.6925 49.96
19 -101.004 6.000
20 -89.353 1.200 1.7617 27.58
21 -208.934 D(21)
22 0.000 2.500 1.5183 64.14
23 0.000 22.000
【0185】
表12は、実施例3のズームレンズの諸元表を示す。表13は、実施例3のズームレンズを構成する各レンズ群の焦点距離を示す。表14は、実施例3のズームレンズにおける回折面のDOE係数を示す。
【0186】
[表12]
F 250.000 400.000 710.430 250.000 400.000 710.429
Fno 6.579 10.050 12.917 6.453 9.774 11.273
W 4.992 3.104 1.738 5.097 3.202 2.000
OBJ Inf Inf Inf 3000 3000 3000
Y 21.633 21.633 21.633 21.633 21.633 21.633
D(7) 5.000 28.784 50.131 5.000 28.784 50.131
D(12) 46.131 22.346 1.000 46.131 22.347 1.000
D(13) 74.934 62.812 130.983 72.144 41.808 1.000
D(16) 103.689 144.844 158.670 89.378 122.284 189.740
D(21) 111.530 82.497 0.500 128.630 126.061 99.413
【0187】
[表13]
レンズ群No 焦点距離
1 272.483
2 -83.358
3 314.809
4 171.076
【0188】
[表14]
面番号 4
有効径 43.7699
回折次数 1
回折波長 587.56
C01 7.46016E-12
C02 -3.18869E-15
C03 0
【0189】
[実施例4]
図13は、実施例4のズームレンズの広角端における無限遠合焦時における光学的な構成を模式的に示す図である。実施例4の当該ズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、正の屈折力を有する第5レンズ群から構成されている。
【0190】
無限遠物体から近接物体への合焦の際、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5がそれぞれ光軸に沿って物体側に移動する。開口絞りSは、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間に固定して配置されている。第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間の空気間隔は、ズームレンズの広角端における群間の空気間隔の中で最も大きく、同時にレンズ群間隔の変動量が最も大きい。
【0191】
以下、各レンズ群の構成を説明する。第1レンズ群G1は、前述の第nレンズ群に相当する。第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸の正の屈折力を有するメニスカスレンズと、物体側に凸の負の屈折力を有するメニスカスレンズと物体側に凸の正の屈折力を有するメニスカスレンズとが接合された接合レンズから構成されている。回折面は、物体側から2つ目のレンズの像面側の面と、物体側から3つ目のレンズの物体側の面との境界面にある。
【0192】
第2レンズ群は、物体側から順に、物体側に凸の負の屈折力を有するメニスカスレンズと物体側に凸の正の屈折力を有するメニスカスレンズとが接合された接合レンズから構成されている。
【0193】
第3レンズ群G3は、前述の第mレンズ群に相当する。第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと両凹形状の負の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズと、両凹形状の負の屈折力を有するレンズから構成されている。
【0194】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、物体側に凸の負の屈折力を有するメニスカスレンズと両凸形状の正の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズから構成されている。
【0195】
第5レンズ群G5は、物体側から順に、物体側に凸の負の屈折力を有するメニスカスレンズと物体側に凸の正の屈折力を有するメニスカスレンズとが接合された接合レンズと、両凸形状の正の屈折力を有するレンズと、両凸形状の正の屈折力を有するレンズから構成されている。
【0196】
実施例4のズームレンズでは、広角端から望遠端への変倍時に、像面に対して、第1レンズ群G1は固定であり、第2レンズ群G2は像面側に移動し、第3レンズ群G3は像面側に移動し、第4レンズ群G4は像面側に移動した後物体側に移動し、第5レンズ群は像面側に移動する。
【0197】
表15は、実施例4のズームレンズの面データの表である。表15において、No.1~5は第1レンズ群G1の面番号である。No.6~8は第2レンズ群G2の面番号である。No.9~13は第3レンズ群G3の面番号である。No.14は開口絞りである。No.15~18は第4レンズ群G4の面番号である。No.19~25は第5レンズ群G5の面番号である。No.26、27は赤外線カットフィルターIRCFの面番号である。
【0198】
[表15]
面NO. ASP&DOE r d Nd νd
1 360.718 17.000 1.4891 70.40
2 -605.937 97.000
3 108.595 6.389 1.7010 32.38
4 DOE 52.390 12.000 1.5761 63.00
5 95.599 D(5)
6 103.134 1.200 1.5067 61.25
7 45.487 9.000 1.6349 58.06
8 221.761 D(8)
9 640.914 5.500 1.7617 27.58
10 -104.560 1.200 1.6266 59.60
11 110.617 16.456
12 -94.875 4.000 1.6234 60.22
13 124.116 D(13)
14 0.000 D(14) (開口絞り)
15 197.944 0.000
16 197.944 1.200 1.6178 37.02
17 85.000 5.697 1.5019 69.04
18 -468.301 D(18)
19 212.002 6.000 1.7514 38.62
20 80.000 9.000 1.7617 27.58
21 93.945 6.000
22 100.000 8.226 1.5050 68.73
23 -180.370 245.069
24 756.843 5.000 1.4891 70.40
25 -382.792 D(25)
26 0.000 2.500 1.5183 64.14
27 0.000 21.502
【0199】
表16は、実施例4のズームレンズの諸元表を示す。表17は、実施例4のズームレンズを構成する各レンズ群の焦点距離を示す。表18は、実施例4のズームレンズにおける回折面のDOE係数を示す。
【0200】
[表16]
F 250.000 400.000 710.400 250.000 400.000 710.430
Fno 6.579 10.050 12.917 6.430 9.512 15.729
W 4.947 3.085 1.736 5.066 3.266 1.430
OBJ Inf Inf Inf 3000 3000 3000
Y 21.633 21.633 21.633 21.633 21.633 21.633
D(5) 12.000 16.478 20.789 12.000 16.478 20.789
D(8) 10.000 33.157 44.886 10.000 33.157 44.886
D(13) 44.712 17.129 1.000 44.712 17.129 1.000
D(14) 104.313 103.869 1.380 106.531 104.486 1.000
D(18) 63.838 94.403 201.010 45.242 50.920 26.916
D(25) 35.201 5.028 1.000 51.580 47.894 175.473
【0201】
[表17]
レンズ群No 焦点距離
1 903.690
2 200.395
3 -64.882
4 354.222
5 263.613
【0202】
[表18]
面番号 4
有効径 24.587
回折次数 1
回折波長 587.56
C01 2.55065E-09
C02 8.41962E-12
C03 0
【0203】
[実施例5]
図17は、実施例5のズームレンズの広角端における無限遠合焦時における光学的な構成を模式的に示す図である。実施例5の当該ズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、正の屈折力を有する第5レンズ群G5から構成されている。
【0204】
無限遠物体から近接物体への合焦の際、第4レンズ群G4が光軸に沿って像面側に移動する。開口絞りSは、第4レンズ群G4の最も物体側に配置されている。第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間の空気間隔は、ズームレンズの広角端における空気間隔の中で最も大きく、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間の空気間隔は、レンズ群間隔の変動量が最も大きい。
【0205】
以下、各レンズ群の構成を説明する。第1レンズ群G1は、物体側から順に、両凸の正の屈折力を有するレンズと、両凹の負の屈折力を有するレンズと両凸の正の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズと、物体側に凸面を有する正の屈折力を有するメニスカスレンズと、両凹の負の屈折力を有するレンズから構成されている。
【0206】
第2レンズ群G2は、前述の第nレンズ群に相当する。第2レンズ群G2は、物体側に凸面を有する正の屈折力を有するメニスカスレンズから構成されている。回折面は、当該レンズの物体側の面にある。
【0207】
第3レンズ群G3は、前述の第mレンズ群に相当する。第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸の正の屈折力を有するレンズと、両凹の負の屈折力を有するレンズと物体側に凹の負の屈折力を有するメニスカスレンズとが接合された接合レンズから構成されている。
【0208】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、物体側に凸の正の屈折力を有するメニスカスレンズと、両凸の正の屈折力を有するレンズと、物体側に凹面を有する負の屈折力を有するメニスカスレンズとが接合された3枚の接合レンズから構成されている。
【0209】
第5レンズ群G5は、物体側から順に、物体側に凸の正の屈折力を有するメニスカスレンズと両凸の正の屈折力を有するレンズとが接合された接合レンズと、両凸の正の屈折力を有するレンズと、物体側に凹面を有する負の屈折力を有するレンズから構成されている。
【0210】
実施例5のズームレンズでは、広角端から望遠端への変倍時に、像面に対して、第1レンズ群G1は物体側に移動した後像面側に移動し、第2レンズ群G2は物体側に移動した後像面側に移動し、第3レンズ群G3は像面側に移動し、第4レンズ群G4は物体側に移動し、第5レンズ群G5は物体側に移動した後像面側に移動する。
【0211】
表19は、実施例5のズームレンズの面データの表である。表19において、No.1~9は第1レンズ群G1の面番号である。No.10、11は第2レンズ群G2の面番号である。No.12~16は第3レンズ群G3の面番号である。No.17~21は第4レンズ群G4の面番号である。No.22~28は第5レンズ群G5の面番号である。No.29、30は赤外線カットフィルターIRCFの面番号である。なお、No.1の面の有効径は263.98であり、No.10の面の有効径は144.22であった。
【0212】
[表19]
面NO. ASP&DOE r d Nd νd
1 1500.000 23.000 1.4891 70.44
2 -1300.000 90.000
3 -2236.155 8.653 1.8550 23.78
4 300.000 46.872 1.7234 50.23
5 -519.428 0.200
6 167.604 31.689 1.6759 32.03
7 1420.186 24.837
8 -7102.875 1.200 1.7479 44.85
9 208.483 D(9)
10 DOE 325.394 2.968 1.7617 27.58
11 387.894 D(11)
12 654.957 10.476 1.7617 27.58
13 -96.914 6.490 1.6188 60.53
14 89.663 16.456
15 -77.855 1.200 1.6990 49.25
16 -1087.839 D(16)
17 0.000 14.422 (開口絞り)
18 ASP 148.131 0.500 1.5392 41.21
19 152.882 18.473 1.4891 70.40
20 -101.858 1.200 1.7604 28.60
21 -196.927 D(21)
22 228.818 1.200 1.7495 41.88
23 128.408 14.215 1.4891 70.40
24 -486.570 1.000
25 139.091 12.087 1.4891 70.40
26 -784.022 51.676
27 -146.365 1.600 1.7479 44.85
28 -390.560 D(28)
29 0.000 5.000 1.5183 64.14
30 0.000 72.2032
【0213】
表20は、実施例5のズームレンズの諸元表を示す。表21は、実施例5のズームレンズを構成する各レンズ群の焦点距離を示す。表22は、実施例5のズームレンズにおける回折面のDOE係数を示す。表23は、実施例5のズームレンズにおける非球面の非球面係数を示す。
【0214】
[表20]
F 250.000 400.000 710.400 250.000 400.000 710.430
Fno 6.579 10.050 12.917 6.430 9.512 15.729
W 4.947 3.085 1.736 5.066 3.266 1.430
OBJ Inf Inf Inf 14422.000 14422.000 14422.000
Y 21.633 21.633 21.633 21.633 21.633 21.633
D(9) 63.226 57.173 47.449 63.226 57.174 47.449
D(11) 7.830 80.605 137.316 7.830 80.605 137.316
D(16) 164.148 88.840 10.729 170.781 127.673 86.653
D(21) 132.599 128.637 141.671 127.277 106.882 82.734
D(28) 11.311 37.155 31.878 10.000 20.078 14.892
【0215】
[表21]
レンズ群No 焦点距離
1 517.203
2 2000.000
3 -77.471
4 224.283
5 231.198
【0216】
[表22]
面番号 10
有効径 144.22
回折次数 1
回折波長 587.56
C01 -5.70E-05
C02 2.73E-09
C03 -3.08E-13
【0217】
[表23]
No. K A4 A6 A8 A10
18 0.000E+00 -5.652E-08 -3.531E-12 2.847E-15 -5.366E-19
【0218】
実施例1~5における前述の各式による算出値を表24に示す。
【0219】
[表24]
実施例1 実施例2 実施例3 実施例4 実施例5
0.40<φd/φ1<0.85 式(1) 0.686 0.789 0.446 0.586 0.546
50<νp<77 式(2) 74.133 69.367 69.293 66.500 70.440
0.00<Ddol/Dn<0.30 式(3) 0.035 0.102 0.086 0.221 0.010
0.15<Dn/Dt<0.40 式(4) 0.281 0.235 0.273 0.206 0.335
0.1<|BNt/BNw|<10.0 式(5) 2.411 2.194 6.027 3.371 4.040
0.10<fn/ft<2.00 式(6) 0.261 0.237 0.799 1.273 0.629
0.2<fn/fw<4.5 式(7) 0.614 0.557 1.865 3.615 1.787
-0.16<fm/ft<-0.03 式(8) -0.066 -0.065 -0.117 -0.091 -0.109