(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100576
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】自転車用荷台
(51)【国際特許分類】
B62J 7/04 20060101AFI20240719BHJP
B62J 7/08 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B62J7/04 B
B62J7/08 A
B62J7/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004678
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】523017833
【氏名又は名称】下田 智一
(74)【代理人】
【識別番号】100109254
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 雅典
(72)【発明者】
【氏名】下田 智一
(72)【発明者】
【氏名】下田 光晴
(72)【発明者】
【氏名】下田 英子
(57)【要約】
【課題】 自転車のデザイン性への影響が少ない小型の荷台でありながら、リュックサック、エコバッグ、レジ袋等を気軽に積載することができる自転車用荷台を提供することを目的とする。
【解決手段】 略水平に取り付けられて荷物が載置される本体部と、その前端近傍に位置する左右方向軸に一端を支持されることにより本体部に沿うように略水平に倒伏する倒伏位置と略垂直に起立する起立位置との間で揺動可能に設けられる揺動部と、揺動部において他端に設けられて荷物を係留するための係留部と、起立位置に揺動させた揺動部を起立状態に保持する保持機構と、揺動部を伸縮させる伸縮機構と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪自転車の後輪上方に取り付けられる自転車用荷台において、
略水平に取り付けられて荷物が載置される本体部と、
前記本体部の前端近傍に位置する左右方向軸に一端部側を支持されることにより前記本体部の上面側に沿うように略水平に倒伏する倒伏位置と前記本体部に対して略垂直に起立する起立位置との間で揺動可能に設けられる揺動部と、
前記揺動部において前記一端部とは反対側の端部に設けられて荷物を繋ぎ留めるための係留部と、
前記揺動部を起立状態に保持可能な保持機構と、
前記揺動部を伸縮させることにより前記係留部の高さ位置を調整可能な伸縮機構と、を備えることを特徴とする自転車用荷台。
【請求項2】
前記揺動部は、倒伏させられたときに前記本体部の後端より後方に突出しない長さに短縮可能であることを特徴とする請求項1記載の自転車用荷台。
【請求項3】
前記本体部は、上面側に荷物が載置される凹部を有しており、
前記揺動部は、長さを短縮することにより、倒伏させられたときに前記凹部に収容可能であることを特徴とする請求項1記載の自転車用荷台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪自転車の後輪上方に設けられる自転車用荷台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二輪自転車に荷物を積めるようにするため、一般に、ハンドル前方にカゴを取り付けたり、後輪上方に荷台を取り付けたりしているが、自転車のデザイン性が損なわれるとする意見もあり、近年、カゴや荷台を設けない自転車も販売されている。これに対し、デザイン性への影響を最小限に抑えるべく、あまり目立たない小型の荷台をシートポスト等に取り付ける提案がなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
但し上記のような荷台は、普段持ち歩く鞄等の手荷物を積載するには小さすぎるため、自転車に乗る人は荷物をリュックサック等に入れて身体に装着することで対応している。しかし、荷物が重い場合は、肩や腰など身体の負担が大きくなる。また、エコバッグやレジ袋はそもそも身体に装着できず、出先で買物したくても諦めざるを得ないことがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、自転車のデザイン性への影響が少ない小型の荷台でありながら、鞄、エコバッグ、レジ袋等を気軽に積載することができる自転車用荷台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、
二輪自転車の後輪上方に取り付けられる自転車用荷台において、
略水平に取り付けられて荷物が載置される本体部と、
前記本体部の前端近傍に位置する左右方向軸に一端部側を支持されることにより前記本体部の上面側に沿うように略水平に倒伏する倒伏位置と前記本体部に対して略垂直に起立する起立位置との間で揺動可能に設けられる揺動部と、
前記揺動部において前記一端部とは反対側の端部に設けられて荷物を繋ぎ留めるための係留部と、
前記揺動部を起立状態に保持可能な保持機構と、
前記揺動部を伸縮させることにより前記係留部の高さ位置を調整可能な伸縮機構と、を備えることを特徴とする自転車用荷台
を提供する。
【0007】
請求項2の発明は、
前記揺動部は、倒伏させられたときに前記本体部の後端より後方に突出しない長さに短縮可能であることを特徴とする請求項1記載の自転車用荷台
を提供する。
【0008】
請求項3の発明は、
前記本体部は、上面側に荷物が載置される凹部を有しており、
前記揺動部は、長さを短縮することにより、倒伏させられたときに前記凹部に収容可能であることを特徴とする請求項1記載の自転車用荷台
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、略水平に取り付けられる本体部に鞄やエコバッグ等の荷物を載置し、その荷物の持手部等を、起立した揺動部の上端で適宜の高さ位置に調整した係留部に繋ぎ留めることにより、荷物は底面を本体部に軽く支持されると共に持手部が引き上げられて姿勢が安定した状態に維持される。これにより、たとえ本体部が自転車のデザイン性に配慮した小型のものであり、積載面が小さくカゴのような深さを有していなくても、荷物が本体部から脱落したり、単に係留部にぶら下がって不安定に揺れたりすることはなく、自転車に安全に乗ることができる。
【0010】
揺動部は、本体部の上面側に沿うように倒伏させることができ、更に倒伏されたときに本体部の後端より突出させないようにしたり、本体部の上面側に形成された凹部に収納したりできるので、荷物を積載しないときは折り畳んで、自転車のデザイン性を良好に維持し、自転車の取扱いに支障を生じないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】自転車用荷台を二輪自転車に取り付けた状態を示す(a)側面図と、(b)その部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態である自転車用荷台1を図面参照しながら説明する。なお、
図1、2における本体部2の枠体21と左右方向軸23、
図5において本体部2の枠体21と底板22はそれぞれ断面を示す。また、
図5において固定部4を図示省略している。
【0013】
自転車用荷台1は、
図1、2に示すように、二輪自転車の後輪Rの上方に取り付けられる小型の荷台であり、本体部2と、揺動部3を備えてなる。本体部2は、略水平に取り付けられて荷物が載置される荷台本体である。揺動部3は、本体部2の前端近傍に基端31a側を揺動支持されることにより、
図1に示すように、本体部2の上面側に沿うように倒伏する倒伏位置Xと、本体部2に対して略垂直に起立する起立位置Yの間で揺動可能であり、
図2に示すように、揺動支持される基端31a側とは反対側の端部(揺動端)に荷物Bの持手部を繋ぎ留めるための係留部34が設けられている。なお、揺動部3は、後述する保持機構により起立状態に保持可能とされており、後述する伸縮機構で伸縮することにより係留部34を任意の高さ位置に調整可能としている。上記の他、本体部2を二輪自転車に固定するための固定金具である固定部4が備えられている。
【0014】
本体部2は、
図3~5に示すように、二輪自転車の車長方向(
図3、4中の左右方向)に細長い平面視概ね矩形状の枠体21と、枠体21の前後端に架け渡される矩形板状の底板22と、枠体21の前端近傍に位置する左右方向軸23と、を有する。枠体21は、スチール製の帯板を矩形の環状体を成すように折り曲げて突き合わされた端部同士を溶接することにより形成される。底板22は、スチール製で枠体21より幅の狭い矩形状の平板であり、枠体21の前後端の下部同士を繋ぐように溶接される。枠体21と底板22は、
図2に示すように本体部2の上面側に荷物Bが載置される凹部2Aを形成する。本体部2は、一般的な自転車用荷台に比べて幅が狭く全長も短く設定されているが、荷物Bは、係留部34により持手部を引き上げられた状態で載置されるため、本体部2から脱落することはない。なお、
図2では、袋状の荷物Bを係留部34に繋ぎ留めるためにカラビナKを用いているが、荷物Bの持手部を係留部34に直接括り付けるようにしてもよい。底板22には、その前端から延設される本体部支持金具42(固定部4)が一体形成されているが、これについては後述する。
【0015】
左右方向軸23は、左右両端にネジ部が設けられており、枠体21の前端近傍の左右両側に設けた貫通穴に挿通されて、外側に突出したネジ部にナット23a、23aを螺合されることにより固定される。左右方向軸23は、概ねU字形状の揺動部3の長手方向の一方にある二つの基端31a、31a側にそれぞれ設けられた長穴31b、31bに挿通される。これにより、
図1(a)に示すように、揺動部3は、本体部2の上面側の凹部2Aに収容されるように略水平に倒伏する倒伏位置Xと、本体部2に対して略垂直に起立する起立位置Yとの間で揺動可能に支持される。左右方向軸23において、揺動部3の二つの基端31a、31a側を支持する各部位の両側にはそれぞれ外周溝が設けられており、これらに計4個のスナップリング23bが係止されて、揺動部3を軸方向にずれ動かないように留めている。なお、左右方向軸23は、
図1(b)に示すように、その軸心と枠体21の前端の内側面との距離が、後述する基部31の板幅(2D)の半分(D)に設定されている。
【0016】
揺動部3は、
図3~5に示すように、本体部2の左右方向軸23に揺動可能に支持される二本の棒状の基部31、31と、基部31、31に摺動可能に支持されるロック部32、32と、概ねU字形状でロック部32、32に固定される延長部33と、延長部33の連結辺部(U字の対向辺部33a、33aを連結する辺部)33bの中央内側に設けられて輪状を成す係留部34と、を有してなり、倒伏位置Xにおいて本体部2の後端より後方に突出しないように、すなわち本体部2の上面側の凹部2Aに収容されるように縮めることができる。基部31は、スチール製の帯板を、
図3に示すように、枠体21の長手方向の内寸法よりやや短い棒状体に切り出し、
図4に示すように、基端31a側において板幅方向の中央部を長手方向に延びる長穴31bを設けると共に、基端31aを半径Dの半円形状に丸めることにより形成される。なお、半円形状の中心は、基部31(揺動部3)が揺動する際に長穴31b内において左右方向軸23の軸心が存在する位置である。
【0017】
これにより、揺動部3は、
図1(a)に示すように、長穴31bの端部に位置する左右方向軸23を揺動中心として倒伏位置Xから起立位置Yまで揺動することができる。起立位置Yまで揺動すると、
図1(b)に示されるように、基部31の前側端部(倒伏位置Xにあるときの上端部)の直線部分が枠体21の前端の内側面に当接して、それより先への揺動は阻止される。但し、左右方向軸23が挿通されている長穴31bは、基部31の長手方向に延びるように設けられているため、手を離すことにより、揺動部3は、そのまま長穴31b内で左右方向軸23を相対的に上方移動させるように下方に落ち込んで、
図1(b)に実線で示される位置Zに収まる。このとき、基部31は、底板22の左右両側に設けられた枠体21の窓状の空き部分から本体部2の下方へ突出する。位置Zでは、枠体21の前端の内側面に対して、基部31の前側端部の直線部分が全面的に当接するため、揺動部3は、前後何れの方向にも揺動不能となり起立状態に維持される。すなわち、枠体21と左右方向軸23と基部31は協働して、揺動部3を半自動的に起立状態に保持する保持機構として機能する。なお、揺動部3(基部31)を上方に引き上げて位置Yに戻すことで起立状態は解除される。
【0018】
ロック部32は、基部31に対して任意の位置でブレーキをかけて相対摺動しないようにロックすることができる機能を有している。ロック部本体32aは、
図3~5に示すように、レバー32bがヒンジ固定され、レバー32bで覆われる部位にブレーキシュー32c(
図3、5)を内蔵している。レバー32bをロック部本体32aに沿わせるように倒されていることにより、レバー32bがその内側に配設されているブレーキシュー32cを基部31に強く押し付けて、相対摺動が生じないようにロックする。また、
図5に示すように、レバー32bを開くように起こすことにより、ブレーキシュー32cによる強い押し付けがなくなり相対摺動が可能になる。すなわち、
図5に示すように、揺動部3は、起立させた状態でレバー32bを起こすことにより、ロック部32に固定される延長部33を基部31に対して長手方向に相対移動させて伸縮し、係留部34の高さ位置を調整可能な伸縮機構を有している。レバー32bを倒して相対移動しないようにロックすることにより、係留部34は任意の高さ位置で固定される。
【0019】
固底部4は、
図1~4に示すように、ポスト固定金具41と、本体部支持金具42と、二本の補助金具43、43を備える。ポスト固定金具41は、シートポストPを握持するように設けられて締め具(ボルト・ナット)41aで締め付けることにより固定される。本体部支持金具42は、本体部2から前方に延在する横断面凹形状部材で、前端に設けられる二枚の取付片42a、42aが締め具41aによりポスト取付金具41と共締めされることにより固定される。なお、本体部支持金具42の後端は、凹形状の下辺が底板22と一体的に連続している一方、左右両側辺が枠体の前端外側面と溶接されていることにより、本体部2と強固に連結されている。二本の補助金具43、43は、
図1(a)、2及び4に示すように、本体部支持金具42の下面に設けられた支持部42bに一端が固定される一方、他端がシートステーSに支持されており、これにより本体部支持金具42及び本体部2を下方に傾動させないように支持している。
【0020】
自転車用荷台1は、上記のように構成されているので、荷物を積載しないときは、揺動部3を縮めて本体部2に沿わせるように折り畳むことにより目立たないようにして自転車のデザイン性を良好に保ち、自転車の取扱いに支障を生じないようにすることができる。揺動部3は、折り畳んだ際に本体部2の後端から突出しないように凹部2Aに収容されるので、更に自転車のデザイン性を良好に維持することができ、突起物により安全性が損なわれることがない。鞄、エコバッグ、レジ袋等の荷物を積載したいときには、揺動部3を起立させて上方に伸ばすことにより、本体部2に載置された荷物の持手部等を適宜の高さ位置に調整した係留部34に引き上げさせて、荷物を安定的に積載することができる。本体部2の積載面が小さくても、またカゴのような深さを有していなくても、荷物が本体部2から脱落することはなく、単に係留部34にぶら下がって揺れたりすることもなく、自転車に安全に乗ることができる。なお、係留部34に繋ぎ留めることができる荷物であれば、鞄、エコバッグ、レジ袋等に限らず、リュックサックその他の荷物を積載してもよい。起立させた揺動部3に棒状の長尺物を紐などで括り付けるようにして積載してもよい。小さな荷物であれば、揺動部3が折り畳まれた状態において従来の自転車用荷台と同様に、積載した荷物を紐で縛ることにより固定することもできる。
【0021】
上記実施形態では、本体部2や揺動部3を帯板で形成したが、パイプ等、他の材料で形成してもよい。上記実施形態では、揺動部3を起立状態に保持する保持機構として、枠体21とその前端近傍に架け渡される左右方向軸23及び長穴31bを備える基部31を協働させるものを採用したが、これに限らず、例えば本体部2に係止部材を設けて、これを揺動部3に係合することにより起立状態を維持するようにしても良い。その他、本発明はその要旨を変更しない範囲で種々の変更をなし得るものである。
【符号の説明】
【0022】
1 自転車用荷台
2 本体部
2A 凹部
21 枠体
22 底板
23 左右方向軸
3 揺動部
31 基部
32 ロック部
33 延長部
34 係留部
4 固定部
41 ポスト固定金具
42 本体部支持金具
43 補助金具