(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100579
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】鍔形状を利用したプレキャストコンクリート部材の接合構造
(51)【国際特許分類】
E01C 11/22 20060101AFI20240719BHJP
H02G 9/04 20060101ALI20240719BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
E01C11/22 Z
H02G9/04
H02G1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004681
(22)【出願日】2023-01-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日 2022年11月30日 ウェブサイトのアドレス https://global.toyota/jp/mobility/frontier-research/38234593.html https://global.toyota/en/mobility/frontier-research/38234647.html https://www.toyota-ts.co.jp/?p=2199
(71)【出願人】
【識別番号】000241474
【氏名又は名称】トヨタT&S建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101535
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 好道
(74)【代理人】
【識別番号】100161104
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 浩康
(72)【発明者】
【氏名】益木 勇人
(72)【発明者】
【氏名】安井 敬治
(72)【発明者】
【氏名】中谷 浩之
(72)【発明者】
【氏名】小島 渉
【テーマコード(参考)】
2D051
5G352
5G369
【Fターム(参考)】
2D051AC06
5G352CG03
5G369BA03
5G369DB05
(57)【要約】
【課題】縁石に力が加わった際に、地中に埋設され、ケーブルを収納している部材が損傷することを抑制できる鍔形状を利用したプレキャストコンクリート部材の接合構造を提案する。
【解決手段】地中に埋設する下側埋設部材2と、下側埋設部材2の上側に取り付ける上側部材3を有し、下側埋設部材2に上側部材3を取り付けた状態で、その内部に収納空間4を形成し、上側部材3に鍔状の連結部9を形成し、下側埋設部材2に第1連結部材20を設け、上側部材の前記連結部に貫通孔10を形成し、貫通穴10に挿通するとともに、第1連結部材20に取り外し可能に連結する第2連結部材21を設け、連結部9における貫通孔10の外側に切り欠き11を形成した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設するプレキャストコンクリート製の下側埋設部材と、該下側埋設部材の上側に取り付けるプレキャストコンクリート製の上側部材を有し、前記下側埋設部材に前記上側部材を取り付けた状態で、その内部に収納空間を形成し、
前記上側部材に鍔状の連結部を形成し、
前記下側埋設部材に第1連結部材を設け、前記上側部材の前記連結部に貫通孔を形成し、該貫通穴に挿通するとともに、前記第1連結部材に取り外し可能に連結する第2連結部材を設け、
前記連結部における貫通孔の外側に切り欠きを形成したことを特徴とする鍔形状を利用したプレキャストコンクリート部材の接合構造。
【請求項2】
前記上側部材の連結において、前記貫通穴と前記切り欠きと、その周囲に鉄筋が配筋されていないことを特徴とする請求項1記載の鍔形状を利用したプレキャストコンクリート部材の接合構造。
【請求項3】
前記第2連結部材を、前記貫通穴に対して遊嵌して設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の鍔形状を利用したプレキャストコンクリート部材の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍔形状を利用したプレキャストコンクリート部材の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地震や台風等の自然災害による電柱の倒壊、景観の向上、道路の利便性向上等の観点から無電柱化が行われている。この無電柱化に際し、電線等のケーブルを、縁石の内部に設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、縁石に車両等により力が加わった際に、地中に埋設されるとともに、ケーブルを収納する部材にまで力が伝播し破損してしまう恐れがある。損傷個所を交換するには、地中を掘り返して部材を交換する必要が生じ、手間がかかるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、縁石に力が加わった際に、地中に埋設され、ケーブルを収納している部材が損傷することを抑制できる鍔形状を利用したプレキャストコンクリート部材の接合構造を提供すことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明は、地中に埋設するプレキャストコンクリート製の下側埋設部材と、該下側埋設部材の上側に取り付けるプレキャストコンクリート製の上側部材を有し、前記下側埋設部材に前記上側部材を取り付けた状態で、その内部に収納空間を形成し、
前記上側部材に鍔状の連結部を形成し、
前記下側埋設部材に第1連結部材を設け、前記上側部材の前記連結部に貫通孔を形成し、該貫通穴に挿通するとともに、前記第1連結部材に取り外し可能に連結する第2連結部材を設け、
前記連結部における貫通孔の外側に切り欠きを形成したことを特徴とするものである。
【0007】
また、前記上側部材の連結において、前記貫通穴と前記切り欠きと、その周囲に鉄筋が配筋されていなくてもよい。
【0008】
また、記第2連結部材を、前記貫通穴に対して遊嵌して設けてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、下側埋設部材に第1連結部材を設け、上側部材の連結部に貫通孔を形成し、貫通穴に挿通するとともに、第1連結部材に取り外し可能に連結する第2連結部材を設け、連結部における貫通孔の外側に切り欠きを形成したことにより、上側部材に車両からの衝撃等の力が加わった際に、その衝撃により、上側部材の貫通穴と切り欠き部分が優先的に破損し、この破損により衝撃を吸収し、下側埋設部材に伝わることを抑え、下側埋設部材に衝撃が伝わることを抑え、下側埋設部材が破損等することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例のコンクリート部材の側面図。
【
図4】本発明の実施例に用いる第1上側部材の縦段面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図に示す実施例に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の鍔形状を利用したプレキャストコンクリート部材の接合構造を用いたコンクリート部材1の側面図を示す。
【0013】
コンクリート部材1は、
図1に示すように、地中に埋設するプレキャストコンクリート製の下側埋設部材2と、下側埋設部材2の上側に載置し、取り付けるプレキャストコンクリート製の上側部材3を有する。隣接する下側埋設部材2,2間、上側部材3,3間には、図示しないゴム製等のパッキンが設けられている。
【0014】
本実施例では、下側埋設部材2と、上側部材3の延在方向が、直線状となるように形成したが、コンクリート部材1を設置する道路の形状等に応じて、円弧状等任意に形成することができる。
【0015】
下側埋設部材2に上側部材3を取り付けた状態において、
図2,
図3に示すように、その内部に、コンクリート部材1の延在方向(
図1の左右方向)の両端部が開口する収納空間4が形成されている。収納空間4内には、高圧配電線や低圧配電線などの電線や、通信線等のケーブル5が収納されている。なお、収納空間4内を、架台等により複数の空間となるように区画してもよい。また、ケーブル5を、治具等を用いて固定するようにしてもよい。
【0016】
上側部材3は、
図1に示すように、上方に縁石の役割を果たす縁石部6Aが上方に突出するように形成された第1上側部材3Aと、コンクリート部材1の延在方向において、一方から他方に向かう程、高さが徐々に低くなるように形成された傾斜縁石部6Bを有する第2上側部材3Bと、縁石部6A,6Bを有しない平板状に形成された第3上側部材3Cの3種類の部材で構成されている。
【0017】
第1上側部材3Aには、
図2に示すように、内面形状が円弧状で、かつ、コンクリート部材1の延在方向の両端部と下側が開口する上側収納空間4Aが形成されているが、第2上側部材3Bと第3上側部材3Cには、
図3に示すように、上側収納空間4Aが形成されていない。なお、上側部材3Bと第3上側部材3Cにも、下側が開口する上側収納空間4Aを形成してもよい。
【0018】
下側埋設部材2と上側部材3との間には、外部から前記収納空間内への水の侵入を抑制するとともに、ゴム等で構成された抑制部材7が設けられている。抑制部材7は、ゴム等の弾性を有する部材で構成することが好ましい。
【0019】
各上側部材3は、
図2~
図6に示すように、本体部8を有し、本体部8におけるコンクリート部材1の延在方向と直交する方向の両端部には、鍔状の連結部9,9が設けられている。連結部9におけるコンクリート部材1の延在方向に2個の貫通孔10が、上下方向に貫通形成されている。本実施例では、貫通孔10は、各上側部材3に4個設けたが、その数は任意に設定することができる。
【0020】
貫通孔10の上面形状は、
図6に示すようにコンクリート部材1の延在方向が長手方向となる長孔状に形成されている。貫通孔10の上面形状は、長孔状以外にも円形状に形成してもよい。
【0021】
連結部9の貫通孔10における、コンクリート部材1の延在方向と直交する方向の外側には、
図5,
図6に示すように、横方向の外側と上下が開口する切り欠き11が形成されている。切り欠き11は、貫通孔10の近傍に形成されている。貫通孔10の中心と切り欠き11の中心間の距離は、貫通孔10の径と同じか、それ以下とすることが好ましい。また、コンクリート部材1の延在方向において、切り欠き11の中心が、貫通孔10におけるコンクリート部材1の延在方向の範囲内に位置するように形成されている。
【0022】
各上側部材3には、
図4~
図6に示すように、鉄筋13が配筋されているが、連結部9における、貫通孔10と切り欠き11を設けた位置と、その周囲には設けられていない。本実施例では、貫通孔10と、その貫通穴の外縁から貫通孔10の直径分外側に位置する範囲内には、鉄筋13が配筋されていない。
【0023】
下側埋設部材2は、第1下側埋設部材2Aと、第1下側埋設部材2Aより上下方向の高さが高い第2下側埋設部材2Bの2種類で構成されている。
【0024】
下側埋設部材2は、
図2,
図3に示すように、左右に設けた側壁15,15と、下部に設けた底板16で構成され、側壁15,15と底板16で囲まれた下側収納空間4Bが形成されている。下側収納空間4Bは、コンクリート部材1の延在方向の両端部と上側が開口している。この下側収納空間4Bは、上側部材3に形成した上側収納空間4Aと連通して、両収納空間4A,4Bにより収納空間4を構成している。
【0025】
底板16には、下側収納空間4B内と外部とが連通するように水抜き穴17が設けられている。また、側壁15,15の外側面と内面には、夫々、収納空間4内と連通しない凹部18,19が、設けられている。
【0026】
各側壁15,15の上端部には、上方が開口する第1連結部材20が、上側部材3の貫通孔10に対応した位置に固設されている。本実施例では、第1連結部材20の内周面には雌ネジが刻設されている。
【0027】
図2,
図3に示すように、第2連結部材21であるボルトを貫通孔10に、遊嵌するように挿通するとともに、第2連結部材21であるボルトを、第1連結部材20の雌ネジに螺号することにより、下側埋設部材2に対し、上側部材3を取り付けることができるようになっている。
【0028】
各下側埋設部材2には、図示しない鉄筋が埋設されている。
【0029】
なお、下側埋設部材2に上側部材3を取り付けた状態において、その内部に、収納空間4が形成されていればよく、収納空間4を、上側部材3のみに形成してもよいし、下側埋設部材のみに形成するようにしてもよい。
【0030】
本発明のコンクリート部材1において、縁石部6A,6Bを有する第1上側部材3Aと、第2上側部材3Bを備えたコンクリート部材1を、車道と歩道の間に縁石部6A,6Bが、路面から上方に露出するように埋設することで、コンクリート部材1を縁石として利用することができる。
【0031】
また、収納空間4内にケーブル5を敷設することにより、電線等を安価に埋設でき、無電柱化を実現しやすい。
【0032】
また、縁石が不要な道路で、かつ、ケーブルを埋設したい場合には、縁石部6A,6Bを有しない第3上側部材3Cを有するコンクリート部材1を道路に埋設することで、縁石がない道路部においても、ケーブルを地中に埋設できる。
【0033】
第2連結部材21であるボルトを貫通孔10に対して遊嵌して設けたとともに、下側埋設部材2と上側部材3との間に、ゴム等で構成された抑制部材7を設けたことにより、上側部材3の縁石部6A,6Bに車両からの衝撃等の力が加わった際に、その力が、下側埋設部材2に伝わることを抑え、衝撃等による破損等を上側部材3のみに抑え、下側埋設部材2が破損等することを抑えることができる。損傷した際も、上側部材3のみを交換すればよく、工事時間の短縮等を図ることができる。
【0034】
また、上側部材3の連結部9において、貫通孔10の外側に切り欠き11を設けるとともに、貫通孔10と切り欠き11の部分及びその周囲に鉄筋13が配筋されていないことにより、上側部材3の縁石部6A,6Bに車両からの衝撃等の力が加わった際に、貫通孔10と切り欠き11とその周辺部分が、優先的に破壊されて衝撃を吸収し、下側埋設部材2に衝撃が伝わることを抑え、下側埋設部材2が破損等することを抑えることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 コンクリート部材
2 下側埋設部材
3 上側部材
4 収納空間
9 連結部
10 貫通孔
11 切り欠き
13 鉄筋
20 第1連結部材
21 第2連結部材