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特開2024-100591再生骨材の製造方法、およびコンクリートの製造方法
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  • 特開-再生骨材の製造方法、およびコンクリートの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100591
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】再生骨材の製造方法、およびコンクリートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/167 20230101AFI20240719BHJP
   C04B 18/10 20060101ALI20240719BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C04B18/167
C04B18/10 B
C04B28/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004697
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】塚本 康誉
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA20
4G112PB02
(57)【要約】
【課題】コンクリートの材料を用いた新たな二酸化炭素の固定技術を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態によれば、余剰生コンクリートを準備し、前記余剰生コンクリートに炭化物を混入させて撹拌しながら再生骨材を製造することを含む再生骨材の製造方法が提供される。上記再生骨材の製造方法において、前記炭化物は、バイオ炭であってもよい。上記再生骨材の製造方法において、前記炭化物の各々のサイズは、1μm以上5000μm以下であってもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
余剰生コンクリートを準備し、
前記余剰生コンクリートに炭化物を混入させて撹拌しながら再生骨材を製造することを含む、
再生骨材の製造方法。
【請求項2】
前記炭化物は、バイオ炭である、
請求項1に記載の再生骨材の製造方法。
【請求項3】
前記炭化物の各々のサイズは、1μm以上5000μm以下である、
請求項1に記載の再生骨材の製造方法。
【請求項4】
前記炭化物を混入させた後に、前記余剰生コンクリートに二酸化炭素を吹きつける、
請求項1に記載の再生骨材の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の再生骨材を使用してコンクリートを製造する、
コンクリートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、再生骨材の製造方法、およびコンクリートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガス排出源の一つとして、農業用地から排出される温室効果ガスが指摘されている。このことから、気候変動に対する国際的な取り組みの中で、農業分野においても地球温暖化対策の推進が求められている。例えば、わが国においては、バイオ炭の農地への施用が農作物の収穫量の増加に加え炭素貯留に効果があるとの考えから、炭素貯留技術をはじめ循環型の温室効果ガス削減システムの開発が進められている(例えば、非特許文献1参照)。なお、バイオ炭とは、農林業の廃棄物や廃木材、森林の主伐材または間伐材、食品廃棄物などの有機物(バイオマス)を炭素化したものをいう。木材は光合成により二酸化炭素を吸収し炭素を固定する。このため、バイオ炭を農地に埋め込むことで、間接的に大気中の二酸化炭素を農地に固定化しているといえる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“木質バイオマスのカスケード利用による分散型炭素貯留技術”、インターネットhttps://www.challenge-zero.jp/jp/casestudy/257
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、新たな取り組みとして、バイオ炭を用いた二酸化炭素固定技術をコンクリート材料に適用することが検討されている。この場合、生コンクリートにバイオ炭を含ませることになる。しかしながら、バイオ炭は、粉体であるがゆえに水分の吸着量が大きく、さらに生コンクリートに含まれる混和剤を吸着しやすいため、生コンクリートの流動性を低下させてしまう。したがって、生コンクリートによる二酸化炭素の固定が難しい。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、コンクリートの材料を用いた新たな二酸化炭素の固定技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、余剰生コンクリートを準備し、前記余剰生コンクリートに炭化物を混入させて撹拌しながら再生骨材を製造することを含む再生骨材の製造方法が提供される。
【0007】
上記再生骨材の製造方法において、前記炭化物は、バイオ炭であってもよい。
【0008】
上記再生骨材の製造方法において、前記炭化物の各々のサイズは、1μm以上5000μm以下であってもよい。
【0009】
上記再生骨材の製造方法において、前記炭化物を混入させた後に、前記余剰生コンクリートに二酸化炭素を吹きつけてもよい。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、上記再生骨材を使用してコンクリートを製造する、コンクリートの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、コンクリートの材料を用いた新たな二酸化炭素の固定技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る再生骨材の断面模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る再生骨材の製造フロー図である。
図3】本発明の一実施形態に係る再生骨材の製造方法を用いて製造された再生骨材の写真である。
図4】本発明の一実施形態に係る再生骨材の製造フロー図である。
図5】本発明の一実施形態に係る再生骨材の断面模式図である。
図6】本発明の一実施形態に係る再生骨材の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にA,Bなどを付した符号)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0014】
「バイオ炭」とは、燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350℃超の温度でバイオマスを加熱して作られる固形物と定義されている(2019年改良IPCCガイドライン)。本実施形態においては、木竹由来の白炭、黒炭、竹炭、粉炭、オガ炭に加え、家畜の糞尿由来、草本由来、籾殻及び稲藁由来、木の実由来、製紙汚泥及び下水汚泥由来等の炭、並びに木材を利用した木質バイオマスガス化発電装置により発電することで副生される炭を含むものとする。また、バイオ炭には、多孔質構造を有する炭にリンと鉄が担持されたバイオ炭(以下「リンを含む炭化物」ともいう)が含まれてもよい。なお、リンと鉄が担持されたバイオ炭の詳細については、特開2019-107632号公報、特開2020-011211号公報に開示されている。以下の説明において「バイオ炭」とは特段の断りがない限り上記に例示されるバイオ炭及びそれに類するものが含まれるとする。また、「バイオ炭を含む土壌改良資材」とは、バイオ炭を指し、またバイオ炭に他の付加物との混合物を含み、例えば、バイオ炭に堆肥が混合されたものを含むものとする。
【0015】
本明細書における「余剰生コンクリート」とは、生コンクリートのうち、製造後に攪拌装置が搭載されている専用の運搬車で運搬し、時間内に荷卸しが出来なかったもの、建設作業や土木作業など作業において使用しきれず残ってしまったもの(残コンクリート、戻りコンクリートともいう。)、コンクリートの打設において、コンクリートの圧送開始に先立って輸送管を通過させた先送りモルタル、品質不適合のものなどを含む。
【0016】
<第1実施形態>
本実施形態における再生骨材および再生骨材の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
(1.再生骨材の構成)
図1は、再生骨材100の断面模式図である。図1に示すように、再生骨材100は、第1骨材110、モルタル120を含む。再生骨材100のサイズは、75μm以上50mm以下である。
【0018】
第1骨材110(天然骨材ともいう)は、石または砂利を含む。第1骨材110のサイズは、75μm以上40mm以下であり、この範囲において適宜選択される。図1において、再生骨材100は、1つの第1骨材110を含むが、2つ以上の第1骨材110を含んでもよい。
【0019】
モルタル120は、砂、セメント、混和剤などの材料に加えて、炭化物130を含む。モルタル120に対する炭化物130の質量含有率は、1/5以下、好ましくは1/10以下、より好ましくは1/24以下である。炭化物130は、粉体(粒子)の形状を有する。具体的には、炭化物130は、バイオ炭である。炭化物130の各々のサイズは、1μm以上5000μm以下、より好ましくは2.5μm以上2750μm以下である。
【0020】
(2.再生骨材の製造方法)
次に、再生骨材の製造方法を説明する。図2は、再生骨材の製造方法を示すフロー図である。
【0021】
まず、余剰生コンクリートを準備する(ステップS100)。余剰生コンクリートには、アジテーター車に残された生コンクリートを用いることができる。余剰生コンクリートには、石や砂利などの第1骨材、並びに砂、混和剤、セメントを含むモルタルが含まれる。
【0022】
次に、余剰生コンクリートに炭化物を混錬し、攪拌する(ステップS200)。この例では、炭化物としてバイオ炭が用いられる。具体的には、余剰生コンクリート1mに対して、バイオ炭を10kg~200kg以下の範囲で投入することが望ましい。バイオ炭は、粉体状であり、バイオ炭のサイズは、1μm以上5000μm以下、より好ましくは2.5μm以上2750μm以下である。バイオ炭は、吸水性が高い。これにより、余剰生コンクリート、とくにモルタル中の水分を効率的に吸着することができる。
【0023】
以上の方法により、生コンクリートが徐々に硬化するとともに、細分化して再生骨材が製造される(ステップS300)。図3は、製造された再生骨材の写真である。再生骨材のサイズは、75μm以上50mm以下である。なお、上記の再生骨材の製造方法の場合、アジテーター車の中で攪拌することにより第1骨材の周りにモルタルおよび炭化物が付着していく。そのため、再生骨材は、第1骨材に比べて丸みを帯びている。
【0024】
また、本実施形態の場合、第1骨材(天然骨材)の周りにモルタルと一緒にバイオ炭(炭化物)を固着させる(閉じ込める)ことができる。バイオ炭は、木質バイオマスガス化発電装置により発電することで生成される副生物である。従来は、バイオ炭を燃焼することで処分しており、その処分工程において二酸化炭素を大気中に放出していた。しかしながら、本実施形態の場合、バイオ炭は、再生骨材の中に閉じ込められるため、バイオ炭の処分に伴う二酸化炭素の排出が抑えられる。つまり、本実施形態を用いることにより、二酸化炭素を固定化することができる。なお、本実施形態の場合、生コンクリート1m当たり20kg~120kg程度のバイオ炭を含有させることができるため、良好な二酸化炭素の排出削減効果を有する。
【0025】
また、従来の場合、生コンクリートに直接バイオ炭を混ぜてしまうと、生コンクリート中の水分を吸収するとともに、バイオ炭に混和剤が吸着してしまい、生コンクリートの流動性に影響を与えてしまう。しかしながら、本実施形態の場合、再生骨材によってバイオ炭は固定されている。このため、再生骨材を生コンクリートの材料として用いたとしても、バイオ炭が水分、混和剤を吸着することが抑えられる。このため、コンクリートの製造における生コンクリートの流動性への影響を回避することができる。また、製造された再生骨材は、生コンクリートに含有させて、コンクリートの材料として用いることができる。この場合、二酸化炭素を固定化したコンクリートを製造することができるということができる。なお、再生骨材は、破砕して路盤材として利用してもよい。つまり、本実施形態を用いることにより、コンクリートの材料を用いた新たな二酸化炭素の固定技術を提供することができる。
【0026】
また、本実施形態により余剰生コンクリートを利用して再生骨材を製造することが可能である。従来、余剰生コンクリートを産業廃棄物として処理すると、270kg-CO/m程度の二酸化炭素を排出していた。また、余剰生コンクリートを産業廃棄物として処理する際の産廃棄場所の確保も必要であり、環境負荷の原因となっていた。本実施形態により余剰生コンリートを用いて再生骨材を製造することで、環境の負荷を低減しつつ、二酸化炭素を固定した再生骨材を再利用することができる。
【0027】
さらに、本実施形態を用いることにより、炭化物、特に粉体状であるバイオ炭を余剰生コンクリートに混ぜることにより、バイオ炭が水を吸収するため、吸水性を高めることができ、再生骨材の製造時間を短縮することができる。
【0028】
<第2実施形態>
本実施形態では、第1実施形態とは異なる再生骨材の製造方法について説明する。具体的には、余剰生コンクリートに炭化物を加えることに加えて、二酸化炭素を吹き付ける例について説明する。
【0029】
図4は、再生骨材の製造方法を示すフロー図である。図4に示すように、本実施形態では、余剰生コンクリートにバイオ炭を混入させて攪拌させた状態(ステップS200)、二酸化炭素を吹き付ける(ステップS250)処理を行う。ここで、余剰生コンクリートは、成分上アルカリ性であるため、再生骨材が硬化しても中性化させる必要がある。しかしながら、本実施形態のように、二酸化炭素を吹き付けて、余剰生コンクリートに二酸化炭素を吸収させることにより、余剰生コンクリートを中和しながら、さらに多くの二酸化炭素を固定化することができる。
【0030】
<第3実施形態>
本実施形態では、第1実施形態とは異なる再生骨材の構成について説明する。具体的には、第1骨材を含まない再生骨材について説明する。
【0031】
図5は、再生骨材100Aの断面模式図である。再生骨材100Aは、第1骨材110を含まず、モルタル120、炭化物130および炭化物135を含んでもよい。炭化物135は、ペレット状のバイオ炭であってもよい。
【0032】
<第4実施形態>
本実施形態では、第1実施形態とは異なる再生骨材の構成について説明する。具体的には、第1骨材の内部に炭化物を含む例について説明する。
【0033】
図6は、再生骨材100Bの断面模式図である。再生骨材100Bは、第1骨材110B、モルタル120、および炭化物130を含む。第1骨材110Bは、空隙112を含んでもよい。この場合、空隙112に炭化物130が設けられてもよい。これにより、さらに多くの炭化物(バイオ炭)を閉じ込めることができ、二酸化炭素を固定化させることができる。
【0034】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に想到し得るものであり、それら変更例および修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、各実施形態の組み合わせ、又は、処理の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
100・・・再生骨材,110・・・第1骨材,112・・・空隙,120・・・モルタル,130・・・炭化物,135・・・炭化物
図1
図2
図3
図4
図5
図6