(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100601
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
A61M25/00 620
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004710
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保木 哲平
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA04
4C267BB02
4C267BB16
4C267CC07
4C267GG04
4C267GG05
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG09
4C267GG22
4C267GG24
(57)【要約】
【課題】先端部が柔軟であり、トルク伝達性にも優れたカテーテルの提供を目的とする。
【解決手段】カテーテル1は、先端から基端に亘って貫通する内腔11hを有する中空形状のカテーテル本体11と、カテーテル本体11の外周を覆うように設けられたコイル体21と、を備えているカテーテルであって、カテーテル本体11は、先端側筒状部11Aと、先端側筒状部11Aの基端側に配置された基端側筒状部11Bと、を有し、先端側筒状部11Aの剛性は、基端側筒状部11Bの剛性よりも小さく、コイル体21は、第1固定部311にて先端側筒状部11Aに固定されていると共に、第2固定部312にて基端側筒状部11Bに固定されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端から基端に亘って貫通する内腔を有する中空形状のカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の外周を覆うように設けられたコイル体と、を備えているカテーテルであって、
前記カテーテル本体は、先端側筒状部と、前記先端側筒状部の基端側に配置された基端側筒状部と、を有し、
前記先端側筒状部の剛性は、前記基端側筒状部の剛性よりも小さく、
前記コイル体は、第1固定部にて前記先端側筒状部に固定されていると共に、第2固定部にて前記基端側筒状部に固定されていることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記第1固定部と前記第2固定部とは互いに独立して配置され、前記第1固定部と前記第2固定部との間の領域において、前記コイル体と前記カテーテル本体とは互いに固定されていない請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記基端側筒状部は、金属製の部材を含んでいる請求項1または請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記先端側筒状部の先端側に先端チップが備えられており、
前記先端チップは、先端から基端に亘って貫通しかつ前記カテーテル本体の内腔に連通する内腔を有し、
前記先端側筒状部と前記コイル体とは、前記先端チップを介して互いに固定されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記カテーテル本体の内周に、フッ素樹脂および/またはポリアミド樹脂で形成された内層が設けられている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、血管内にある病変部をカテーテルを用いて処置する際、カテーテルに先立ってガイドワイヤを病変部まで挿入した後、ガイドワイヤに沿ってカテーテルを病変部まで送達している。
【0003】
このようなカテーテルとしては、例えば、チューブの外周にコイルを取り付けた構成を有するコイル付きチューブが知られており(特許文献1)、このカテーテルにおいては、長軸方向全体に亘って樹脂製のチューブで構成されている。そのため、その全体が高い柔軟性を有しており、ガイドワイヤに沿って湾曲した血管に追従しながらカテーテルを円滑に進退することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来のカテーテルを用いて手技を行う場合、カテーテル自体は柔軟であるために追従性は高いものの、単独で病変部まで送達したり、単独で回転操作をすることが難しい。このため、病変部へカテーテルを誘導するためには、ガイドワイヤを併用した煩雑な手技が必要となっている。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、先端部が柔軟であり、トルク伝達性にも優れたカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のいくつかの態様は、
(1)先端から基端に亘って貫通する内腔を有する中空形状のカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の外周を覆うように設けられたコイル体と、を備えているカテーテルであって、
前記カテーテル本体は、先端側筒状部と、前記先端側筒状部の基端側に配置された基端側筒状部と、を有し、
前記先端側筒状部の剛性は、前記基端側筒状部の剛性よりも小さく、
前記コイル体は、第1固定部にて前記先端側筒状部に固定されていると共に、第2固定部にて前記基端側筒状部に固定されていることを特徴とするカテーテル、
(2)前記第1固定部と前記第2固定部とは互いに独立して配置され、前記第1固定部と前記第2固定部との間の領域において、前記コイル体と前記カテーテル本体とは互いに固定されていない前記(1)に記載のカテーテル、
(3)前記基端側筒状部は、金属製の部材を含んでいる前記(1)または(2)に記載のカテーテル、
(4)前記先端側筒状部の先端側に先端チップが備えられており、
前記先端チップは、先端から基端に亘って貫通しかつ前記カテーテル本体の内腔に連通する内腔を有し、
前記先端側筒状部と前記コイル体とは、前記先端チップを介して互いに固定されている前記(1)から(3)のいずれか1項に記載のカテーテル、および
(5)前記カテーテル本体の内周に、フッ素樹脂および/またはポリアミド樹脂で形成された内層が設けられている前記(1)から(4)のいずれか1項に記載のカテーテル、である。
【0008】
なお、本明細書において、「先端側」とは、カテーテル本体の長手方向に沿う方向であって、カテーテルが治療部位に向って進行する方向を意味する。「基端側」とは、カテーテル本体の長手方向に沿う方向であって、上記先端側と反対の方向を意味する。また、「先端」とは、任意の部材または部位における先端側の端部、「基端」とは、任意の部材または部位における基端側の端部をそれぞれ示す。「長軸方向」とは、特に限定がない限り、カテーテル本体の長手方向に沿う方向を指す。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、先端部が柔軟であり、トルク伝達性にも優れたカテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1の一部を拡大して示す概略的縦断面図である。
【
図3】第2の実施形態の一部を拡大して示す概略的縦断面図である。
【
図4】変形例を示す一部拡大概略的縦断面図である。
【
図5】変形例を示す一部拡大概略的縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示のカテーテルは、先端から基端に亘って貫通する内腔を有する中空形状のカテーテル本体と、上記カテーテル本体の外周を覆うように設けられたコイル体と、を備えているカテーテルであって、上記カテーテル本体は、先端側筒状部と、上記先端側筒状部の基端側に配置された基端側筒状部と、を有し、上記先端側筒状部の剛性は、上記基端側筒状部の剛性よりも小さく、上記コイル体は、第1固定部にて上記先端側筒状部に固定されていると共に、第2固定部にて上記基端側筒状部に固定されている。
【0012】
以下、本発明の第1および第2の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。また、図面に示した各部の寸法は、実施内容の理解を容易にするために示した寸法であり、必ずしも実際の寸法に対応するものではない。また、各図面において、図示左側が体内のより深部に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される基端側(近位側、手元側)である。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態を示す概略的側面図である。
図1に示すように、カテーテル1は、概略的に、カテーテル本体11と、コイル体21と、コネクタ41とにより構成されている。
【0014】
カテーテル本体11は、先端に開口11aを有し、先端から基端に亘って貫通する内腔11hを有する中空形状の部材である。カテーテル本体11は、先端側筒状部11Aと、基端側筒状部11Bとを有している。
【0015】
先端側筒状部11Aは、カテーテル本体11の先端部に位置する筒状の部位である。内腔11hのうちの先端側の部位が、先端側筒状部11Aの内腔を構成している。
【0016】
基端側筒状部11Bは、先端側筒状部11Aの基端側に配置された筒状の部位である。内腔11hのうちの基端側の部位が、基端側筒状部11Bの内腔を構成している。
【0017】
本開示のカテーテル1は、先端側筒状部11Aの剛性が、基端側筒状部11Bの剛性よりも小さくなるように構成されている。カテーテル本体11は、具体的には、例えば、先端側筒状部11Aは一重の均質な筒状の部材で構成されていると共に、基端側筒状部11Bは同心円状かつ互いに接触するように配置され、それぞれが均質な二重の筒状の部材で構成されていてもよい。なお、本実施形態のカテーテル本体11は、先端側筒状部11Aを構成する部材および基端側筒状部11Bのうちの内側に配置された部材が一体的に形成された部材(以下、「第1チューブ11T1」ともいう)と、基端側筒状部11Bのうちの外側に配置された部材(以下、「第2チューブ11T2」ともいう)と、で構成されている。
【0018】
先端側筒状部11Aおよび基端側筒状部11Bを形成する材料は、先端側筒状部11Aの剛性が基端側筒状部11Bの剛性よりも小さい限り特に限定されないが、基端側筒状部11Bは、金属製の部材を含んでいることが好ましい。基端側筒状部11Bが金属製の部材を含むことで、用いられる金属材料およびその配置を調整することにより、基端側筒状部11Bの剛性を容易に調整することができる。また、基端側筒状部11Bが金属製の部材を含むことで、カテーテル1のトルク伝達性が更に向上する。上記金属製の部材は、例えば、チューブ状の部材であってもよく、長軸方向に沿って巻回された線状若しくはリボン状の部材であってもよく、チューブ状の部材にスリット加工を施した部材であってもよい。
【0019】
先端側筒状部11Aを形成する材料としては、例えば、熱可塑性ポリウレタン(TPU),ポリアミド(PA),ポリカーボネイト(PC),ポリエチレン(PE),ポリイミド(PI),ポリアミドイミド(PAI),ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)などの樹脂材料等が挙げられる。
【0020】
基端側筒状部11Bを形成する材料としては、上述した先端側筒状部11Aを形成する樹脂材料と同じ樹脂材料;ステンレス鋼(SUS304など),超弾性合金(Ni-Ti合金など)等の金属材料;これらを組み合わせた材料等を採用することができる。
【0021】
カテーテル本体11を異種の材料で形成された二以上の部材で構成する場合、部材どうしは、例えば、加熱溶着により接合してもよく、接着剤により接着してもよく、ロウ材により蝋付けしてもよく、カシメるなど機械的に固定してもよい。なお、接着剤およびロウ材としては、例えば、後述する第1固定部311および第2固定部312に用いるものと同様のものを採用することができる。
【0022】
本実施形態では、第1チューブ11T1が樹脂材料で形成され、第2チューブ11T2が金属材料で形成されている。第1チューブ11T1および第2チューブ11T2は、第1チューブ11T1を構成する樹脂材料を加熱溶着することで、第2チューブ11T2と接合されている。
【0023】
コイル体21は、カテーテル本体11の外周を覆うように設けられた部材である。コイル体21は、例えば、1本の単線若しくは複数本の単線、または1本の撚線若しくは複数本の撚線を、カテーテル本体11の先端部(先端側筒状部11A)の外周を覆うように螺旋状に巻回することで形成することができる。但し、単線とは1本の単一線を意味し、撚線とは複数本の単一線を予め互いに撚り合って形成した一束の線群を意味する。
【0024】
コイル体21を構成する材料としては、例えば、SUS316などのステンレス鋼;Ni-Ti合金などの超弾性合金;白金、タングステンなどの放射線不透過性の金属材料;これらを組み合わせた材料等を採用することができる。
【0025】
カテーテル1は、コイル体21が、第1固定部311および第2固定部312でカテーテル本体11に固定されている。
【0026】
第1固定部311は、コイル体21のうちの先端側筒状部11Aに固定されている部位である。本実施形態では、第1固定部311は、先端側筒状部11Aの先端外周(第1チューブ11T1の先端外周)上に位置している。
【0027】
第2固定部312は、コイル体21のうちの基端側筒状部11Bに固定されている部位である。本実施形態では、第2固定部312は、基端側筒状部11Bの先端(第2チューブ11T2の先端)上に位置している。
【0028】
カテーテル1は、第1固定部311と第2固定部312とは互いに独立して配置され、第1固定部311と第2固定部312との間の領域Rにおいて、コイル体21とカテーテル本体11とは互いに固定されていない。すなわち、カテーテル本体11の長軸方向に沿って設けられた第1固定部311と第2固定部312とは、間隔を開けて配置されており、第1固定部311と第2固定部312との間の領域Rでは、コイル体21とカテーテル本体11とが相互に拘束されていない(領域Rでは、コイル体21とカテーテル本体11とが相対的に動くことができる)。
【0029】
コイル体21とカテーテル本体11との固定方法は、特に限定されない。上記固定方法としては、例えば、母材を加熱溶融して溶着する方法、ロウ材を用いて蝋付けする方法、接着剤を用いて接着する方法等が挙げられる。
【0030】
上記ロウ材としては、例えば、Sn-Pb合金、Pb-Ag合金、Sn-Ag合金、Au-Sn合金などの金属ロウ等が挙げられる。接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤、シアノアクリレート系接着剤等が挙げられる。
【0031】
本実施形態のコイル体21とカテーテル本体11とは、第1固定部311と第2固定部312にて接着剤により固定されている。具体的には、コイル体21の先端が、第1固定部311にて、先端側筒状部11Aの先端外周(第1チューブ11T1の先端外周)に、接着剤Bを用いて固定されている。また、コイル体21の基端が、第2固定部312にて、基端側筒状部11Bの先端(第2チューブ11T2の先端)に、接着剤Bを用いて固定されている。
【0032】
コネクタ41は、オペレータがカテーテル1を操作する部材である。コネクタ41は、カテーテル本体11の基端部に接続されている。コネクタ41は、例えば、基端に開口41aを有し、カテーテル本体11の内腔11hに連通する内腔41hを有している。コネクタ41の形状は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、例えば、オペレータが操作しやすい形状に形成することができる。
【0033】
なお、カテーテル1においては、内腔11hと内腔41hとによりルーメンL1が形成されている。
【0034】
次に、カテーテル1の二つの使用態様について例説する。第1の使用態様は、ガイドワイヤと共に用いる手技である。まず、カテーテル1の挿入に先立って、ガイドワイヤ(不図示)をその先端から血管内に挿入し、体外に露出しているガイドワイヤを操作してその先端部を病変部(例えば、血栓が形成された部位)まで押し進める。
【0035】
次に、ガイドワイヤの基端(体外に露出した手元側の端部)を、開口11aからカテーテル1のルーメンL1に挿入する。次いで、コネクタ41を操作しながらガイドワイヤに沿ってカテーテル1の先端部を病変部まで押し進める。次いで、ガイドワイヤを体外に抜去した後、カテーテル1を用いて所定の手技(例えば、ルーメンL1を通して薬剤を注入したり、血栓などを除去したり、長尺状の医療用デバイスを挿入する手技など)を行う。その際、カテーテル1は先端部の柔軟性と優れたトルク伝達性を有しているため、コネクタ41を回転操作したり押し引き操作をすることでカテーテル1の先端部が回転や進退し、ガイドワイヤを再び挿入することなく、血管内におけるカテーテルの先端部の位置を調整しながら迅速に処置を行うことができる。
【0036】
第2の使用態様は、ガイドワイヤを用いずにカテーテル1を単独で病変部まで送達する手技である。この手技では、カテーテル1をその先端から血管内に挿入し、コネクタ41を押し込みながらカテーテル1の先端部を病変部まで押し進める。次いで、カテーテル1を用いて所定の手技を行う。その際、カテーテル1は先端部の柔軟性と優れたトルク伝達性を有しているため、コネクタ41を回転操作したり押し引き操作をすることでカテーテル1の先端部が回転や進退し、血管内における先端部の位置を調整しながら迅速に処置を行うことができる。
【0037】
以上のように、カテーテル1は、上記構成であるので、その先端部が柔軟であると共に、剛性が高い基端側筒状部11Bを通して伝わる回転力を、コイル体21の第2固定部312および第1固定部311を介し、剛性が低い先端側筒状部11Aへと良好に伝えることができ、トルク伝達性にも優れている。その結果、カテーテル1は、例えば、ガイドワイヤを用いることなくその先端部を単独で回転や進退させることができ、手技を迅速に行うことができると共に、手技の裕度を拡げることができる。
【0038】
[第2の実施形態]
図3は、第2の実施形態の一部を拡大して示す概略的縦断面図である。
図3に示すように、カテーテル2は、概略的に、カテーテル本体12と、コイル体21と、先端チップ52と、コネクタ41(不図示)とにより構成されている。カテーテル2は、カテーテル本体12、および先端チップ52を備えている点で、第1の実施形態と異なっている。なお、コイル体21、およびコネクタ41は、第1の実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。また、以下に示すカテーテル本体12の構成以外のカテーテル本体12の構成、およびカテーテル2の使用態様は、第1の実施形態のそれらと同様である。
【0039】
カテーテル本体12は、先端から基端に亘って貫通する内腔12hを有する中空形状の部材である。カテーテル本体12は、先端側筒状部12Aと、基端側筒状部12Bとを有している。
【0040】
先端側筒状部12Aは、カテーテル本体12の先端部に位置する部位である。基端側筒状部12Bは、先端側筒状部12Aの基端側に配置されている。先端側筒状部12Aの剛性は、基端側筒状部12Bの剛性よりも小さくなるように構成されている。
【0041】
本実施形態のカテーテル本体12は、先端側筒状部12Aを構成する部材と、基端側筒状部12Bのうちの内側に配置された部材とが一体的に形成された部材(以下、「第1チューブ12T1」ともいう)と、基端側筒状部12Bのうちの外側に配置された部材(以下、「第2チューブ12T2」ともいう)とで構成されている。
【0042】
カテーテル本体12の内周には、フッ素樹脂および/またはポリアミド樹脂で形成された内層12nが設けられている。具体的には、例えば、内層12nを有する第1チューブ12T1が、カテーテル本体12の先端から基端に亘って配置されていてもよい。
【0043】
内層12nは、カテーテル本体12の先端から基端に亘って、連続的に配置されていてもよく、長手方向の独立した複数の部位に分かれて配置されていてもよい。内層12nは、フッ素樹脂およびポリアミド樹脂のうちのいずれか一方の樹脂であってもよく、フッ素樹脂およびポリアミド樹脂が長手方向の複数の部位に分かれて配置されていてもよい。
【0044】
カテーテル本体12には、内層12nの外周を覆うように編組体12bが埋設されている。編組体12bは、具体的には、例えば、素線をメッシュ状に編み込むことで形成され、第1チューブ12T1に埋設することができる。カテーテル本体12が編組体12bを有することで、先端側筒状部12Aの柔軟性を維持しながらカテーテル本体12を補強することができる。
【0045】
編組体12bを構成する材料としては、例えば、SUS304などのステンレス鋼;Ni-Ti合金などの超弾性合金;白金、タングステンなどの放射線不透過性の金属等を採用することができる。
【0046】
先端チップ52は、先端側筒状部12Aの先端側に備えられた部材である。先端チップ52は、先端に開口52aを有し、先端から基端に亘って貫通しかつカテーテル本体12の内腔12hに連通する内腔52hを有している。先端チップ52は、カテーテル2が体腔内を進行し易いように、例えば、先端側に向かって突出するような半球形状など、先端側に向かって先細るような形状に形成してもよい。
【0047】
本実施形態では、先端側筒状部12Aとコイル体21とは、先端チップ52を介して互いに固定されている。具体的には、例えば、第1固定部321において、コイル体21は、カテーテル本体12(詳細には、先端側筒状部12A)に直接的には固定されておらず、先端チップ52に固定されている。
【0048】
先端チップ52を形成する材料としては、例えば、上述したロウ材などの金属材料;ポリウレタン、ポリウレタンエラストマーなどの樹脂材料等が挙げられる。
【0049】
先端チップ52と、コイル体21およびカテーテル本体12それぞれとを固定する方法としては、例えば、コイル体21の先端部やカテーテル本体12の先端部を、ロウ材で形成された先端チップ52に蝋付けしたり、樹脂材料で形成された先端チップ52に溶着や埋設する方法、接着剤により接着する方法等が挙げられる。
【0050】
なお、カテーテル2においては、内腔52hと内腔12hと内腔41hとによりルーメンL2が形成されている。
【0051】
以上のように、カテーテル2は、先端側筒状部12Aとコイル体21とは先端チップ52を介して互いに固定されている。このため、先端チップ52の形状を適宜選定することで、例えば、カテーテル2が前進する際の抵抗を減らしたり、組織への損傷を抑制することができる。
【0052】
また、カテーテル2は、上述したように、カテーテル本体12の内周に、フッ素樹脂および/またはポリアミド樹脂で形成された内層12nが設けられている。このため、カテーテル本体12の内腔12hに挿入される医療用デバイスとの摺動性を高めたり、内腔12hを通して投入する薬液や内腔12hを通して回収する閉塞物などとの摩擦抵抗を低減することができ、手技を円滑に行うことができる。
【0053】
なお、本開示は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。上述した実施形態の構成のうちの一部を削除したり、他の構成に置換してもよく、上述した実施形態の構成に他の構成を追加等してもよい。
【0054】
例えば、
図4に示すように、基端側筒状部13Bの先端を、半径方向外側を向くような傾斜面13cに形成し、コイル体21の基端が傾斜面13cに載置するように配置されていてもよい。これにより、コイル体21の基端と基端側筒状部13Bの先端との位置決めを容易かつ確実に行うことができ、バラツキが少なく位置精度が高いカテーテルを量産することができる。
【0055】
また、
図5に示すように、コイル体21の基端部が基端側筒状部14Bの先端部の外周面14sに接するように配置されてもよい。これにより、長軸方向においてコイル体21と基端側筒状部14Bとが接する長さを容易に長くすることができ、例えば、コイル体21と基端側筒状部14Bとの接合強度をより高めることができる。
【0056】
また、上述した実施形態では、コイル体21と先端側筒状部11A,12Aとが離間しているカテーテル1,2について説明した。しかしながら、第1固定部と第2固定部との間の領域Rにおいて、コイル体と先端側筒状部とが離間可能に接触配置されていてもよい。
【0057】
また、上述した実施形態では、先端側筒状部11A,12Aおよび基端側筒状部11B,12Bを、第1チューブ11T1,12T1および第2チューブ11T2,12T2を用いて形成したカテーテル1,2について説明した。しかしながら、先端側筒状部と基端側筒状部とは一体的に形成されていてもよく、先端側筒状部および基端側筒状部それぞれが一体的に形成され、先端側筒状部の基端部と基端側筒状部の先端部とが接合されていてもよい。
【0058】
また、上述した第2の実施形態では、先端チップ52、並びに内層12nおよび編組体12bを有するカテーテル2について説明した。しかしながら、これら全てを有していないカテーテル(第1の実施形態のカテーテル1など)や、これらのうちの少なくともいずれかを備えているカテーテルであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1,2 カテーテル
11,12,13,14 カテーテル本体
11A,12A 先端側筒状部
11B,12B,13B,14B 基端側筒状部
11h,12h 内腔
12n 内層
21 コイル体
311,321,331,341 第1固定部
312,322,332,342 第2固定部
52 先端チップ
52h 内腔
R 領域