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特開2024-100603液性免疫応答の制御剤、B細胞の胚中心B細胞への分化制御剤、IgG1+B細胞の細胞死の制御剤、液性免疫応答の制御組成物、B細胞の胚中心B細胞への分化制御組成物、IgG1+B細胞の細胞死の制御組成物、液性免疫応答の制御候補物質のスクリーニング方法、B細胞の胚中心B細胞への分化の制御候補物質のスクリーニング方法、およびIgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質のスクリーニング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100603
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】液性免疫応答の制御剤、B細胞の胚中心B細胞への分化制御剤、IgG1+B細胞の細胞死の制御剤、液性免疫応答の制御組成物、B細胞の胚中心B細胞への分化制御組成物、IgG1+B細胞の細胞死の制御組成物、液性免疫応答の制御候補物質のスクリーニング方法、B細胞の胚中心B細胞への分化の制御候補物質のスクリーニング方法、およびIgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240719BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALI20240719BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240719BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61K38/02
A61K31/7088
A61K48/00
A61K39/00 H
A61P43/00 121
C12N5/0781
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
C12N15/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】42
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004713
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】500409219
【氏名又は名称】学校法人関西医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003557
【氏名又は名称】弁理士法人レクシード・テック
(72)【発明者】
【氏名】松田 達志
【テーマコード(参考)】
2G045
4B065
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045DA36
2G045DA37
4B065AA94X
4B065AC14
4B065BB40
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA13
4C084AA17
4C084BA44
4C084DA01
4C084NA14
4C084ZC01
4C084ZC41
4C084ZC42
4C084ZC75
4C085AA03
4C085BB11
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZC01
4C086ZC41
4C086ZC42
4C086ZC75
(57)【要約】
【課題】 B細胞全体の除去と比較して、自然抗体への影響を低減した状態で、かつ、抗原特異的な抗体産生を制御免疫機能の異常を処置しうる液性免疫応答の制御剤を提供する。
【解決手段】 本開示の液性免疫応答の制御剤は、ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性化物質またはArf1の活性抑制物質を含む。
【選択図】 図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性化物質またはArf1の活性抑制物質を含む、液性免疫応答の制御剤。
【請求項2】
前記Arf1の活性化物質は、Arf1のアゴニスト、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性化物質、GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性抑制物質、または恒常活性型Arf1である、請求項1に記載の制御剤。
【請求項3】
前記GEFは、ADPリボシル化因子グアニンヌクレオチド交換因子1(ADP Ribosylation Factor Guanine Nucleotide Exchange Factor 1:ArfGEF1)である、請求項2に記載の制御剤。
【請求項4】
前記活性抑制物質は、Arf1のアンタゴニスト、Arf1の発現抑制核酸分子、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性抑制物質、またはGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性化物質である、請求項1から3のいずれか一項に記載の制御剤。
【請求項5】
ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性化物質またはArf1の活性抑制物質を含む、B細胞の胚中心B細胞への分化制御剤。
【請求項6】
前記Arf1の活性化物質は、Arf1のアゴニスト、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性化物質、GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性抑制物質、または恒常活性型Arf1である、請求項5に記載の制御剤。
【請求項7】
前記GEFは、ADPリボシル化因子グアニンヌクレオチド交換因子1(ADP Ribosylation Factor Guanine Nucleotide Exchange Factor 1:ArfGEF1)である、請求項6に記載の制御剤。
【請求項8】
前記活性抑制物質は、Arf1のアンタゴニスト、Arf1の発現抑制核酸分子、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性抑制物質、またはGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性化物質である、請求項5から7のいずれか一項に記載の制御剤。
【請求項9】
ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性化物質またはArf1の活性抑制物質を含む、IgG1+B細胞の細胞死の制御剤。
【請求項10】
前記Arf1の活性化物質は、Arf1のアゴニスト、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性化物質、GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性抑制物質、または恒常活性型Arf1である、請求項9に記載の制御剤。
【請求項11】
前記GEFは、ADPリボシル化因子グアニンヌクレオチド交換因子1(ADP Ribosylation Factor Guanine Nucleotide Exchange Factor 1:ArfGEF1)である、請求項10に記載の制御剤。
【請求項12】
前記活性抑制物質は、Arf1のアンタゴニスト、Arf1の発現抑制核酸分子、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性抑制物質、またはGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性化物質である、請求項9から11のいずれか一項に記載の制御剤。
【請求項13】
ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性化物質またはArf1の活性抑制物質と、標的抗原として免疫原とを含む、標的抗原に対する液性免疫応答の制御組成物。
【請求項14】
前記Arf1の活性化物質は、Arf1のアゴニスト、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性化物質、GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性抑制物質、または恒常活性型Arf1であり、
前記液性免疫応答の制御は、液性免疫応答の増強である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記GEFは、ADPリボシル化因子グアニンヌクレオチド交換因子1(ADP Ribosylation Factor Guanine Nucleotide Exchange Factor 1:ArfGEF1)である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記活性抑制物質は、Arf1のアンタゴニスト、Arf1の発現抑制核酸分子、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性抑制物質、またはGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性化物質であり
前記液性免疫応答の制御は、液性免疫応答の抑制である、請求項13または14のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記標的抗原は、免疫疾患の抗原である、請求項13または14のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性化物質またはArf1の活性抑制物質と、標的抗原として免疫原とを含む、B細胞の胚中心B細胞への分化制御組成物。
【請求項19】
前記Arf1の活性化物質は、Arf1のアゴニスト、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性化物質、GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性抑制物質、または恒常活性型Arf1であり、
前記B細胞の胚中心B細胞への分化制御は、B細胞の胚中心B細胞への分化促進である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記GEFは、ADPリボシル化因子グアニンヌクレオチド交換因子1(ADP Ribosylation Factor Guanine Nucleotide Exchange Factor 1:ArfGEF1)である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記活性抑制物質は、Arf1のアンタゴニスト、Arf1の発現抑制核酸分子、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性抑制物質、またはGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性化物質であり、
前記B細胞の胚中心B細胞への分化制御は、B細胞の胚中心B細胞への分化抑制である、請求項18から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記標的抗原は、免疫疾患の抗原である、請求項18から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性化物質またはArf1の活性抑制物質と、標的抗原として免疫原とを含む、IgG1+B細胞の細胞死の制御組成物。
【請求項24】
前記Arf1の活性化物質は、Arf1のアゴニスト、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性化物質、GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性抑制物質、または恒常活性型Arf1であり、
前記IgG1+B細胞の細胞死の制御は、IgG1+B細胞の細胞死の抑制である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記GEFは、ADPリボシル化因子グアニンヌクレオチド交換因子1(ADP Ribosylation Factor Guanine Nucleotide Exchange Factor 1:ArfGEF1)である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記活性抑制物質は、Arf1のアンタゴニスト、Arf1の発現抑制核酸分子、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性抑制物質、またはGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性化物質であり、
前記IgG1+B細胞の細胞死の制御は、IgG1+B細胞の細胞死の促進である、請求項23から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記標的抗原は、免疫疾患の抗原である、請求項23から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
被検物質から、ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性を増強または抑制する被検物質を、液性免疫応答の制御候補物質として選択する選択工程を含む、液性免疫応答の制御候補物質のスクリーニング方法。
【請求項29】
前記Arf1の発現系に、前記被検物質を共存させる共存工程と、
前記発現系におけるArf1の活性を検出する検出工程と、
前記Arf1の活性を増強または抑制する被検物質を、前記液性免疫応答の制御候補物質として選択する選択工程とを含む、請求項28に記載のスクリーニング方法。
【請求項30】
前記Arf1の発現系は、非ヒト動物である、請求項29に記載のスクリーニング方法。
【請求項31】
前記検出工程では、前記非ヒト動物における抗体量を検出することにより、前記Arf1の活性を検出する、請求項30に記載のスクリーニング方法。
【請求項32】
前記被検物質が、低分子化合物、ペプチド、タンパク質、および核酸からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項28から31のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
【請求項33】
被検物質から、ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性を増強または抑制する被検物質を、B細胞の胚中心B細胞への分化の制御候補物質として選択する選択工程を含む、B細胞の胚中心B細胞への分化の制御候補物質のスクリーニング方法。
【請求項34】
前記Arf1の発現系に、前記被検物質を共存させる共存工程と、
前記発現系におけるArf1の活性を検出する検出工程と、
前記Arf1の活性を増強または抑制する被検物質を、前記B細胞の胚中心B細胞への分化の制御候補物質として選択する選択工程とを含む、請求項33に記載のスクリーニング方法。
【請求項35】
前記Arf1の発現系は、非ヒト動物である、請求項34に記載のスクリーニング方法。
【請求項36】
前記検出工程では、前記非ヒト動物における抗体量を検出することにより、前記Arf1の活性を検出する、請求項35に記載のスクリーニング方法。
【請求項37】
前記被検物質が、低分子化合物、ペプチド、タンパク質、および核酸からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項33から36のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
【請求項38】
被検物質から、ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性を増強または抑制する被検物質を、IgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質として選択する選択工程を含む、IgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質のスクリーニング方法。
【請求項39】
前記Arf1の発現系に、前記被検物質を共存させる共存工程と、
前記発現系におけるArf1の活性を検出する検出工程と、
前記Arf1の活性を増強または抑制する被検物質を、前記IgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質として選択する選択工程とを含む、請求項38に記載のスクリーニング方法。
【請求項40】
前記Arf1の発現系は、非ヒト動物である、請求項39に記載のスクリーニング方法。
【請求項41】
前記検出工程では、前記非ヒト動物における抗体量を検出することにより、前記Arf1の活性を検出する、請求項40に記載のスクリーニング方法。
【請求項42】
前記被検物質が、低分子化合物、ペプチド、タンパク質、および核酸からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項38から41のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液性免疫応答の制御剤、B細胞の胚中心B細胞への分化制御剤、IgG1+B細胞の細胞死の制御剤、液性免疫応答の制御組成物、B細胞の胚中心B細胞への分化制御組成物、IgG1+B細胞の細胞死の制御組成物、液性免疫応答の制御候補物質のスクリーニング方法、B細胞の胚中心B細胞への分化の制御候補物質のスクリーニング方法、およびIgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫疾患は、免疫機能の異常により、免疫系が自己を攻撃することにより生じる。一例として、全身性エリテマトーデス(Systemic lupus erythematosus:SLE)等の自己免疫疾患では、自己の組織に発現する自己抗原を異物と認識し、前記自己抗原に対する抗体(自己抗体)の産生が誘導される。そして、前記自己抗体によって、前記自己の組織に炎症が生じ、最悪の場合は死に至る(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Ding X, Diaz LA, Fairley JA, Giudice GJ, Liu Z. “The anti-desmoglein 1 autoantibodies in pemphigus vulgaris sera are pathogenic.”, J Invest Dermatol., 1999 May;112(5):739-43. doi: 10.1046/j.1523-1747.1999.00585.x. PMID: 10233765.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自己抗体が関連するSLE等の自己免疫疾患の治療薬としては、B細胞除去機能のあるリツキサン(リツキシマブ、抗CD20抗体)等の薬剤が使用され、前記B細胞を除去することにより、その中に含まれている自己抗体産生性のB細胞も除去し、自己抗体の産生を抑制している。しかしながら、リツキサンは、B細胞全体を除去するため、自然抗体を産生するB1B細胞も除去される。これにより、リツキサンで自然抗体が消失するため、日和見感染等のリスクが生じる。
【0005】
そこで、本開示は、例えば、B細胞全体の除去と比較して、自然抗体への影響を低減し、かつ、抗原特異的な抗体産生を制御しうる、液性免疫応答の制御剤、B細胞の胚中心B細胞への分化制御剤、IgG1+B細胞の細胞死の制御剤、液性免疫応答の制御組成物、B細胞の胚中心B細胞への分化制御組成物、IgG1+B細胞の細胞死の制御組成物、液性免疫応答の制御候補物質のスクリーニング方法、B細胞の胚中心B細胞への分化の制御候補物質のスクリーニング方法、およびIgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質のスクリーニング方法等の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本開示は、液性免疫応答の制御剤(以下、「制御剤」ともいう)であって、前記液性免疫応答の制御剤は、Arf1の活性化物質またはArf1の活性抑制物質を含む。
【0007】
本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化制御剤(以下、「分化制御剤」ともいう)は、Arf1の活性化物質またはArf1の活性抑制物質を含む。
【0008】
本開示のIgG1+B細胞の細胞死の制御剤(以下、「細胞死制御剤」ともいう)は、Arf1の活性化物質またはArf1の活性抑制物質を含む。
【0009】
本開示の液性免疫応答の制御組成物(以下、「制御組成物」ともいう)は、Arf1の活性化物質またはArf1の活性抑制物質と、標的抗原として免疫原とを含む。
【0010】
本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化制御組成物(以下、「分化制御組成物」ともいう)は、Arf1の活性化物質またはArf1の活性抑制物質と、標的抗原として免疫原とを含む。
【0011】
本開示のIgG1+B細胞の細胞死の制御組成物(以下、「細胞死制御組成物」ともいう)は、Arf1の活性化物質またはArf1の活性抑制物質と、標的抗原として免疫原とを含む。
【0012】
本開示の液性免疫応答の制御候補物質のスクリーニング方法は、被検物質から、Arf1の活性を増強または抑制する被検物質を、液性免疫応答の制御候補物質として選択する選択工程を含む。
【0013】
本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化の制御候補物質のスクリーニング方法は、被検物質から、Arf1の活性を増強または抑制する被検物質を、B細胞の胚中心B細胞への分化の制御候補物質として選択する選択工程を含む。
【0014】
本開示のIgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質のスクリーニング方法は、被検物質から、Arf1の活性を増強または抑制する被検物質を、IgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質として選択する選択工程を含む。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、B細胞全体の除去と比較して、自然抗体への影響を低減し、かつ、抗原特異的な抗体産生を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例1における、フローサイトメトリーによる、結果を示したグラフである。
図2図2は、実施例1における、OVAに対する、抗体産生能の評価する方法の模式図およびELISAによるOVA特異的な抗体産生の測定結果を示したグラフである。
図3図3は、実施例1における、NP-Ficollに対する、抗体産生能の評価をする方法の模式図およびELISAによるNP-Ficoll特異的な抗体産生の測定結果を示したグラフである。
図4図4は、実施例1における、ELISAによるイムノグロブリンを定量した結果を示したグラフである。
図5図5は、実施例1における、ELISAによるRag2KOマウスの血清調製物におけるイムノグロブリンを定量した結果を示したグラフである。
図6図6は、実施例1における、IL-2の産生量を示したグラフである。
図7図7は、実施例2における、OVAに対する、抗体産生能の評価する方法の模式図およびELISAによるOVA特異的な抗体産生の測定結果を示したグラフである。
図8図8は、実施例2における、フローサイトメトリーによる、結果を示したグラフである。
図9図9は、実施例2における、免疫染色像を示す写真である。
図10図10は、実施例2における、フローサイトメトリーによる、結果を示したグラフである。
図11図11は、実施例2における、免疫染色像を示す写真である。
図12図12は、実施例2における、内在性のB細胞を欠損した免疫不全マウスmblCre/CreマウスにArf1-BKOマウスの骨髄細胞を移植し、B細胞の胚中心B細胞への分化を評価する方法の模式図、フローサイトメトリーによる結果、およびELISAによるIgA産生の測定結果を示したである。
図13図13は、実施例2における、フローサイトメトリーによる、結果を示したグラフである。
図14図14は、実施例2における、フローサイトメトリーによる、結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<定義>
本明細書において、「ADPリボシル化因子1」(ADP ribosylation factor 1:Arf1)は、低分子量Gタンパク質Rasスーパーファミリーに属し、かつ、前記ADPリボシル化因子ファミリー(Arfファミリー)に属するタンパク質を意味する。前記Arfファミリーは、6つのアイソフォームが同定されており、Arf1、Arf2、Arf3、Arf4、Arf5、およびArf6が知られている。
【0018】
前記Arf1は、グアノシン三リン酸(Guanosine triphosphate:GTP)結合型Arf1およびグアノシン二リン酸(Guanosine diphosphate:GDP)結合型Arf1の2つの型を有する。前記GTP結合型Arf1は、活性化型であり、前記GDP結合型Arf1は、不活性化型である。前記GAP結合型Arf1は、GTPアーゼ活性化タンパク質(GTPase-activating protein:GAP)によって加水分解が促進され、不活性型である前記GDP結合型Arf1に変換される。前記GDP結合型Arf1は、グアニンヌクレオチド交換因子(Guanine-nucleotide exchange factor:GEF)によって、活性型である前記GTP結合型Arf1に変換される。前記Arf1は、2つの型により、例えば、小胞輸送を制御する。前記GTP結合型Arf1は、小胞の出芽を促進し、前記GTP結合型Arf1が前記GDP結合型Arf1に変換されると、前記小胞が輸送される。各種動物由来のArf1は、例えば、既存のデータベースに登録されている情報を参照できる。具体例として、ヒト由来Arf1は、例えば、UniProt(http://www.uniprot.org/)のアクセッション番号P84077で登録されている下記のアミノ酸配列(配列番号1)からなるタンパク質があげられる。また、ヒト由来Arf1遺伝子は、例えば、NCBIのアクセッション番号NM_001024226で登録されている核酸配列からなるポリヌクレオチドがあげられる。
【0019】
ヒトArf1タンパク質(配列番号1)
MGNIFANLFKGLFGKKEMRILMVGLDAAGKTTILYKLKLGEIVTTIPTIGFNVETVEYKNISFTVWDVGGQDKIRPLWRHYFQNTQGLIFVVDSNDRERVNEAREELMRMLAEDELRDAVLLVFANKQDLPNAMNAAEITDKLGLHSLRHRNWYIQATCATSGDGLYEGLDWLSNQLRNQK
【0020】
本明細書において、「GTPアーゼ活性化タンパク質」(GTPase-activating protein:GAP)は、Gタンパク質に結合したGTPをGDPに変換することにより、Gタンパク質の機能調整を行うタンパク質を意味する。前記GAPは、例えば、ADPリボシル化因子GTPアーゼ活性化タンパク質1(ADP ribosylation factor GTPase activating protein:ARFGAP1)、Ran GTPアーゼ活性化タンパク質1(Ran GTPase activating protein 1:RanGAP 1)、およびRho特異的GTPアーゼ活性化タンパク質(Rho specific GTPase activating protein)等があげられる。
【0021】
本明細書において、「グアニンヌクレオチド交換因子」(Guanine-nucleotide exchange factor:GEF)は、Gタンパク質において、GDPを放出させることにより、GTPとの結合を可能にするタンパク質を意味する。前記GEFは、例えば、ADPリボシル化因子グアニンヌクレオチド交換因子1(ADP Ribosylation Factor Guanine Nucleotide Exchange Factor 1:ArfGEF1)、Ranグアニンヌクレオチド交換因子(Ran Guanine Nucleotide Exchange Factor:RanGEF)、およびRho特異的グアニンヌクレオチド交換因子(Rho guanine nucleotide exchange factor:RhoGEF)等があげられる。前記ArfGEF1は、brefeldin A-inhibited guanine nucleotide-exchange protein 1とも呼ばれる。前記ArfGEF1は、Arf1において、GDPからGTPへの交換を促進する。各種動物由来のArfGEF1は、例えば、既存のデータベースに登録されている情報を参照できる。具体例として、ヒト由来ArfGEF1は、例えば、UniProtのアクセッション番号Q9Y6D6に登録されている下記のアミノ酸配列(配列番号2)からなるタンパク質があげられる。また、ヒト由来ArfGEF1遺伝子は、例えば、NCBIのアクセッション番号NM_001413184.1で登録されている核酸配列からなるポリヌクレオチドがあげられる。
【0022】
ヒトArfGEF1タンパク質(配列番号2)
MYEGKKTKNMFLTRALEKILADKEVKKAHHSQLRKACEVALEEIKAETEKQSPPHGEAKAGSSTLPPVKSKTNFIEADKYFLPFELACQSKCPRIVSTSLDCLQKLIAYGHLTGNAPDSTTPGKKLIDRIIETICGCFQGPQTDEGVQLQIIKALLTAVTSQHIEIHEGTVLQAVRTCYNIYLASKNLINQTTAKATLTQMLNVIFARMENQALQEAKQMEKERHRQHHHLLQSPVSHHEPESPQLRYLPPQTVDHISQEHEGDLDLHTNDVDKSLQDDTEPENGSDISSAENEQTEADQATAAETLSKNEVLYDGENHDCEEKPQDIVQNIVEEMVNIVVGDMGEGTTINASADGNIGTIEDGSDSENIQANGIPGTPISVAYTPSLPDDRLSVSSNDTQESGNSSGPSPGAKFSHILQKDAFLVFRSLCKLSMKPLSDGPPDPKSHELRSKILSLQLLLSILQNAGPIFRTNEMFINAIKQYLCVALSKNGVSSVPEVFELSLSIFLTLLSNFKTHLKMQIEVFFKEIFLYILETSTSSFDHKWMVIQTLTRICADAQSVVDIYVNYDCDLNAANIFERLVNDLSKIAQGRGSQELGMSNVQELSLRKKGLECLVSILKCMVEWSKDQYVNPNSQTTLGQEKPSEQEMSEIKHPETINRYGSLNSLESTSSSGIGSYSTQMSGTDNPEQFEVLKQQKEIIEQGIDLFNKKPKRGIQYLQEQGMLGTTPEDIAQFLHQEERLDSTQVGEFLGDNDKFNKEVMYAYVDQHDFSGKDFVSALRMFLEGFRLPGEAQKIDRLMEKFAARYLECNQGQTLFASADTAYVLAYSIIMLTTDLHSPQVKNKMTKEQYIKMNRGINDSKDLPEEYLSAIYNEIAGKKISMKETKELTIPTKSSKQNVASEKQRRLLYNLEMEQMAKTAKALMEAVSHVQAPFTSATHLEHVRPMFKLAWTPFLAAFSVGLQDCDDTEVASLCLEGIRCAIRIACIFSIQLERDAYVQALARFTLLTVSSGITEMKQKNIDTIKTLITVAHTDGNYLGNSWHEILKCISQLELAQLIGTGVKPRYISGTVRGREGSLTGTKDQAPDEFVGLGLVGGNVDWKQIASIQESIGETSSQSVVVAVDRIFTGSTRLDGNAIVDFVRWLCAVSMDELLSTTHPRMFSLQKIVEISYYNMGRIRLQWSRIWEVIGDHFNKVGCNPNEDVAIFAVDSLRQLSMKFLEKGELANFRFQKDFLRPFEHIMKRNRSPTIRDMVVRCIAQMVNSQAANIRSGWKNIFSVFHLAASDQDESIVELAFQTTGHIVTLVFEKHFPATIDSFQDAVKCLSEFACNAAFPDTSMEAIRLIRHCAKYVSDRPQAFKEYTSDDMNVAPEDRVWVRGWFPILFELSCIINRCKLDVRTRGLTVMFEIMKTYGHTYEKHWWQDLFRIVFRIFDNMKLPEQQTEKAEWMTTTCNHALYAICDVFTQYLEVLSDVLLDDIFAQLYWCVQQDNEQLARSGTNCLENVVILNGEKFTLEIWDKTCNCTLDIFKTTIPHALLTWRPNSGETAPPPPSPVSEKPLDTISQKSVDIHDSIQPRSVDNRPQAPLVSASAVNEEVSKIKSTAKFPEQKLFAALLIKCVVQLELIQTIDNIVFFPATSKKEDAENLAAAQRDAVDFDVRVDTQDQGMYRFLTSQQLFKLLDCLLESHRFAKAFNSNNEQRTALWKAGFKGKSKPNLLKQETSSLACGLRILFRMYMDESRVSAWEEVQQRLLNVCSEALSYFLTLTSESHREAWTNLLLLFLTKVLKISDNRFKAHASFYYPLLCEIMQFDLIPELRAVLRRFFLRIGVVFQISQPPEQELGINKQ
【0023】
本明細書において、「活性化」は、タンパク質の機能が発揮される状態に変化すること、または、変化した状態を意味する。
【0024】
本明細書において、「抑制」は、タンパク質の機能が抑制された状態に変化すること、または、抑制された状態を意味する。
【0025】
本明細書において、「Arf1の活性化物質」は、Arf1とGTPとの結合を直接または間接的に促進する物質を意味する。
【0026】
本明細書において、「Arf1の活性抑制物質」は、Arf1とGTPの結合を直接または間接的に阻害する物質を意味する。
【0027】
本明細書において、「免疫」は、生体内に侵入したウイルスや細菌等の異物に対する防御システムを意味する。前記免疫は、例えば、自然免疫および獲得免疫に分類される。前記自然免疫は、典型的には、マクロファージ、好中球、樹状細胞、およびNK細胞等の細胞が、生体内に侵入した異物を排除する免疫反応であり、通常は、抗原非特異的な免疫応答である。前記獲得免疫は、典型的には、抗原特異的な細胞性免疫応答および液性免疫応答である。前記細胞性免疫は、T細胞が特異的に作用し、生体内に侵入した前記異物を攻撃し、前記異物を排除する免疫応答である。前記液性免疫は、B細胞の非特異的な活性化またはB細胞が特異的抗原を認識し、前記抗原に対する抗体を作ることで、生体内に侵入した前記異物および抗原を排除する免疫反応である。
【0028】
前記T細胞は、白血球の一種であり、リンパ球に分類される、T細胞受容体を発現する細胞である。
【0029】
前記B細胞は、白血球の一種であり、リンパ球に分類される、B細胞受容体を発現する細胞である。前記B細胞は、抗体を産生可能な細胞である。前記B細胞は、主に、B1B細胞およびB2B細胞の2つのサブセットを含む。前記B1B細胞は、例えば、腹腔、胸腔、および腸管等に存在し、自然抗体の産生に寄与すると考えられている。前記B2B細胞は、例えば、末梢血等に存在し、抗原特異的液性免疫応答に寄与すると考えられている。
【0030】
本明細書において、「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子の断片により実質的または部分的にコードされる、1または複数のポリペプチドを含むタンパク質を意味する。免疫グロブリン遺伝子は、例えば、κ、λ、α(α1、α2を含む)、γ(γ1、γ2、γ3、γ4を含む)、δ、εおよびμ等の定常領域をコードする遺伝子と、V領域、D領域、J領域等の無数の免疫グロブリン可変領域をコードしうる遺伝子とを含む。前記抗体は、例えば、重鎖および軽鎖を含む。前記軽鎖は、κおよびλを含み、それぞれ、κ鎖およびλ鎖を構成する。前記重鎖は、γ、μ、α、δ、またはεを含み、それぞれ、免疫グロブリンのクラスであるIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを構成する。前記IgGは複数のサブクラスを有し、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4等があげられる。前記IgMは、例えば、IgM1、およびIgM2等があげられる。前記抗体は、四量体から構成される典型的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位であってもよい。この場合、前記抗体は、2つの同一のポリペプチド鎖の対から構成され、各対は、1つの軽鎖(約25kDa)と1つの重鎖(約50~70kDa)とから構成される。また、各鎖のN末端は、主に抗原認識に関与する約100~110個またはそれ以上のアミノ酸から構成される可変領域を規定する。前記抗体は、全長の免疫グロブリンでもよいし、その抗原結合断片でもよい。前記抗体の種の由来は、特に制限されず、例えば、ヒト、ウサギ、マウス、およびラット等の種々があげられる。
【0031】
本明細書において、「クラススイッチ」は、あるクラスの抗体を産生している細胞が、他のクラスの抗体を産生するように転換することを意味する。前記B細胞は、抗原に反応すると、IgM抗体を産生し、さらにヘルパーT細胞等の刺激を受け、前記クラススイッチが起こることが知られている。前記クラススイッチが生じ、IgG1抗体を産生または発現するB細胞は、IgG1+B細胞と表すことができる。
【0032】
本明細書において、「抗原抗体反応」は、抗原と抗体の間で特異的な結合が起こる反応を意味する。前記抗原抗体反応によって、ウイルス等の抗原の生物活性は失われる。前記抗原抗体反応を利用した試験方法として、例えば、酵素結合免疫吸着検査法(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay:ELISA)、ウエスタンブロッティング法(Western Blotting:WB)、および免疫沈降法(ImmunoPrecipitation:IP)等があげられる。前記酵素結合免疫吸着検査法(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay:ELISA)は、例えば、抗原と結合する抗体等の結合能力を定量的に測定することができる。
【0033】
本明細書において、「アジュバント」または「免疫賦活化剤」は、製剤または組成物において、特定の免疫原(抗原)と組み合わせて使用されるとき、得られる免疫応答を増強、改変、または修飾する化合物を意味する。前記免疫応答の増強、改変、または修飾は、例えば、抗体応答および細胞性免疫応答の少なくとも一方の特異性の強化、増加、または増強を意味する。前記免疫応答の増強、改変、または修飾は、特定の抗原特異的免疫応答の低下、低減、または抑制を意味してもよい。
【0034】
本明細書において、「胚中心(Germinal centers:GC)」は、免疫応答において、リンパ節、パイエル板、および脾臓等のリンパ系組織に形成される一過性の微小な構造であり、抗原に反応したB細胞が分化・成熟する場所を意味する。前記胚中心を形成するB細胞は、胚中心B細胞(GC-B細胞)とも呼ばれる。前記胚中心において、B細胞の免疫グロブリン遺伝子のクラススイッチが生じることが知られている。
【0035】
本明細書において、「免疫応答の制御」は、免疫応答の増強および/または抑制することを意味する。
【0036】
本明細書において、「抗体産生の誘導」は、所望の抗原に対する抗体が新たに産生されること、または所望の抗原に対する抗体の量が増強されることを意味する。
【0037】
本明細書において、「抗体産生の抑制」は、所望の抗原に対する抗体の量が低減することを意味する。
【0038】
本明細書において、「B細胞の胚中心B細胞への分化の制御」は、B細胞の胚中心B細胞への分化の促進および/または抑制することを意味する。
【0039】
本明細書において、「IgG1+B細胞の細胞死の制御」は、IgG1抗体を産生または発現するB細胞(IgG1+B細胞)の細胞死を促進および/または抑制することを意味する。
【0040】
本明細書において、「陽性(+)」は、抗原抗体反応を利用して検出されるフローサイトメトリー等の解析方法により、前記抗原を発現しない陰性対照細胞または前記抗原と反応しない抗体を用いる陰性対照反応と比較して、高いシグナルが検出されることを意味する。また、本明細書において、「陰性(-)」は、前記抗原を発現しない陰性対照細胞または前記抗原と反応しない抗体を用いる陰性対照反応と比較して、同等またはそれ以下のシグナルが検出されることを意味する。
【0041】
本明細書において、「発現系」は、所望のタンパク質または遺伝子を発現できる系を意味する。
【0042】
本明細書において、「低分子化合物」は、分子量の小さい化合物を意味し、典型的には、分子量約1000以下の化合物を意味する。本明細書において、低分子化合物は、特に言及がある場合を除き、その塩を含む。
【0043】
本明細書において、「ペプチド」は、数個の未修飾アミノ酸(天然のアミノ酸)、修飾アミノ酸、および/または人工アミノ酸から構成されるポリマーを意味する。
【0044】
本明細書において、「タンパク質」または「ポリペプチド」は、未修飾アミノ酸(天然のアミノ酸)、修飾アミノ酸、および/または人工アミノ酸から構成されるポリマーを意味する。前記タンパク質またはポリペプチドは、10アミノ酸以上の長さを有するペプチドである。
【0045】
本明細書において、「核酸」または「核酸分子」は、デオキシリボヌクレオチド(DNA)、リボヌクレオチド(RNA)、および/または改変ヌクレオチドのポリマーを意味する。前記核酸は、例えば、ゲノムDNA、cDNA、mRNA等があげられる。前記核酸は、例えば、一本鎖または二本鎖等であってもよい。
【0046】
以下、本開示について例をあげて説明するが、本開示は以下の例等に限定されるものではなく、任意に変更して実施できる。また、本開示における各説明は、特に言及がない限り、互いに援用可能である。なお、本明細書において、「~」という表現を用いた場合、その前後の数値または物理値を含む意味で用いる。また、本明細書において、「Aおよび/またはB」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「AおよびBの双方」が含まれる。
【0047】
<液性免疫応答の制御剤>
ある態様において、本明細書は、液性免疫応答の制御剤を提供する。本開示の液性免疫応答の制御剤は、前述のように、液性免疫応答の制御に用いる制御剤であって、前記液性免疫応答の制御剤は、Arf1の活性化物質、またはArf1の活性抑制物質を含む。本開示の液性免疫応答の制御剤は、Arf1の活性化物質、またはArf1の活性抑制物質を含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。
【0048】
本発明者らは鋭意研究の結果、Arf1の活性を制御することにより、抗原特異的なB細胞による抗体の産生誘導を増強または抑制(低減)できることを見出した。また、本発明者らは、Arf1は、抗原特異的液性免疫応答における抗体の産生量の影響と比較して、自然抗体の産生量への影響が相対的に小さいこと、すなわち、Arf1は、抗原特異的な抗体の産生への寄与と比較して、自然抗体の産生への寄与が相対的低いこと見出し、本開示を確立するに至った。本開示によれば、B細胞を維持した状態で、抗原特異的な抗体の産生誘導を制御できるため、B細胞全体の除去と比較して、自然抗体への影響を低減しつつ、抗原特異的な抗体産生を制御できる。また、本開示の制御剤によれば、例えば、前記制御剤を免疫原(抗原)と組合せることにより、前記抗原特異的な抗体の産生を誘導または抑制できる。さらに、本開示の制御剤によれば、例えば、既に生体内で生じている抗原特異的な抗体の産生を抑制できる。
【0049】
本開示において、前記制御剤は、T細胞を介した液性免疫応答の制御機能を示すことが好ましい。前記液性免疫応答は、例えば、抗原特異的なB細胞による液性免疫応答、すなわち、抗原特異的な抗体の産生応答があげられる。
【0050】
前記液性免疫応答の制御機能は、例えば、B細胞の抗体産生誘導系において、Arf1の活性を増強または抑制する被検物質を共存させた際に、前記被検物質の非存在下と比較して、抗体の産生量を抑制または増強できるかにより評価できる。具体的には、前記被検物質の液性免疫応答の抑制機能は、活性化したB細胞による抗体の産生量の抑制率に基づき、評価できる。前記評価では、例えば、前記抑制率が、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の場合、前記被検物質は、液性免疫応答の抑制機能があると評価できる。他方、前記被検物質の液性免疫応答の増強機能は、前記活性化したB細胞による抗体の産生量の増強率に基づき、評価できる。前記評価では、例えば、前記増強率が、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の場合、前記被検物質は、液性免疫応答の増強機能があると評価できる。前記活性化したB細胞としては、例えば、LPS(リポ多糖)、または抗IgM抗体およびIL-4により活性化されたB細胞を使用できる。前記抗体の産生量は、例えば、1~7日間である。
【0051】
前記Arf1の活性化物質は、例えば、免疫原(抗原)と組合わせることにより、前記抗原特異的な抗体の産生を誘導できる。前記Arf1の活性化物質は、例えば、Arf1とGDPとの結合を阻害、Arf1とGTPとの結合、および/または、Arf1と結合したGTPのGDPへの変換の阻害、Arf1とGTPとの結合を促進する物質があげられる。前記阻害は、直接的な阻害でもよいし、間接的な阻害でもよい。前記促進は、例えば直接的な促進でもよいし、間接的な促進でもよい。
【0052】
前記Arf1の活性化物質の種類は、特に制限されず、例えば、低分子化合物、ペプチド、タンパク質、および核酸等があげられる。具体例として、前記低分子化合物は、例えば、Arf1のアゴニストがあげられる。前記タンパク質は、例えば、抗体またはその抗原結合断片があげられる。前記抗体は、例えば、モノクローナル抗体でもよいし、ポリクローナル抗体でもよい。前記ペプチドは、例えば、Arf1に結合するペプチドがあげられる。前記ペプチドは、例えば、環状ペプチドまたは特殊環状ペプチドであってもよい。前記核酸は、例えば、Arf1に結合する結合核酸分子、Arf1の発現を増強する発現増強核酸分子等があげられる。前記結合核酸分子は、例えば、DNA、RNA、またはDNAおよびRNAからなるアプタマー等があげられる。前記発現増強核酸分子は、例えば、Arf1をコードする核酸分子またはそれを含むベクター等があげられる。前記Arf1の活性化物質は、例えば、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0053】
前記Arf1の活性化物質は、例えば、Arf1のアゴニスト、GEFの活性化物質、GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性抑制物質、および恒常活性型Arf1等があげられる。前記Arf1のアゴニストは、活性化型であるGTP結合型Arf1と、類似の機能を発揮するように、Arf1の状態を変化させる物質である。前記Arf1のアゴニストは、例えば、GGA3(Golgi-localized gamma-ear containing, Arf1-binding protein 3)等があげられる。各種動物由来のGGA3は、例えば、既存のデータベースに登録されている情報を参照できる。具体例として、ヒト由来GGA3は、例えば、UniProtのアクセッション番号Q9NZ52に登録されているアミノ酸配列からなるタンパク質があげられる。前記恒常活性型Arf1は、例えば、71番目のアミノ酸が、グルタミンからロイシンに置換されたArf1 Q71L変異体があげられる。
【0054】
前記Arf1の活性抑制物質は、例えば、免疫原(抗原)と組合せることにより、前記抗原特異的な抗体の産生を抑制できる。前記Arf1の活性抑制物質は、例えば、Arf1とGDPとの結合を促進、Arf1と結合したGTPのGDPへの変換の促進、および/または、Arf1とGDPとの解離を抑制することにより、Arf1とGTPとの結合を阻害する物質である。前記阻害は、直接的な阻害でもよいし、間接的な阻害でもよい。前記促進は、例えば直接的な促進でもよいし、間接的な促進でもよい。
【0055】
前記Arf1の活性抑制物質の種類は、特に制限されず、例えば、低分子化合物、ペプチド、タンパク質、および核酸等があげられる。具体例として、前記低分子化合物は、例えば、前記Arf1のアンタゴニストがあげられる。前記タンパク質は、例えば、抗体またはその抗原結合断片があげられる。前記抗体は、例えば、モノクローナル抗体でもよいし、ポリクローナル抗体でもよい。前記ペプチドは、例えば、Arf1に結合するペプチドがあげられる。前記ペプチドは、例えば、環状ペプチドまたは特殊環状ペプチドであってもよい。前記核酸は、例えば、Arf1に結合する結合核酸分子、Arf1の発現を抑制する発現抑制核酸分子等があげられる。前記結合核酸分子は、例えば、DNA、RNA、またはDNAおよびRNAからなるアプタマー等があげられる。前記発現抑制核酸分子は、例えば、siRNA等のRNA干渉剤、アンチセンス、リボザイム等があげられる。前記Arf1の活性抑制物質は、例えば、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0056】
前記Arf1の活性抑制物質は、例えば、Arf1のアンタゴニスト、Arf1発現抑制核酸分子、およびGEF活性抑制物質等があげられる。前記Arf1のアンタゴニストは、不活性化型であるGDP結合型Arf1と、類似の機能を発揮するように、Arf1の状態を変化させる物質である。前記Arf1のアンタゴニストは、例えば、GGA3のArf1結合ドメイン(GATドメイン)の過剰発現等があげられる。前記GATドメインは、具体例として、由来がマウスの場合、例えば、GenBankのアクセッション番号AK031086に登録されているアミノ酸配列の171~299番目のアミノ酸配列からなるタンパク質があげられる(配列番号3)。前記Arf1発現抑制核酸分子は、例えば、siRNA、shRNA、miRNA等のRNA干渉剤、アンチセンス、リボザイム等があげられる。前記GEF活性抑制物質は、例えば、ブレフェルジンA(BFA)、およびGolgicide A等があげられる。前記GEFが、ArfGEF1の場合、ArfGEF1活性抑制物質は、例えば、ブレフェルジンA(BFA)、等があげられる。
【0057】
マウスGATドメイン(配列番号3)
DEEKSKLLARLLKSKNPDDLQEANRLIKSMVKEDEARIQKVTKRLHTLEEVNNNVKLLHEMLLHYSQEYSSDADKELMKELFDRCENKRRTLFKLASETEDNDNSLGDILQASDNLSRVINSYKTIIEG
【0058】
本開示の制御剤は、単独で用いてもよいし、免疫原と用いてもよい。前記免疫原と用いることにより、本開示の制御剤は、前記免疫原特異的な抗体産生応答を制御できる。前記免疫原は、例えば、ペプチド、タンパク質、脂質、糖鎖、および細胞等があげられる。前記免疫原は、特に制限されず、任意の物質とでき、具体例として、自己抗原、アレルゲン、不活化ウイルスおよび微生物等があげられる。本開示の制御剤は、組成物を構成してもよい。
【0059】
本開示の制御剤は、免疫賦活化剤またはアジュバントと用いてもよい。前記アジュバントは、例えば、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、および水酸化アルミニウム等があげられる。
【0060】
本開示の制御剤の投与対象は、特に制限されない。本開示の制御剤をin vivoで使用する場合、前記投与対象は、例えば、ヒト、またはヒトを除く非ヒト動物があげられる。前記非ヒト動物としては、例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル、イルカ、アシカ等の哺乳類;鳥類;魚類;等があげられる。前記本開示の制御剤をin vitroで使用する場合、前記投与対象は、例えば、細胞、組織、器官等があげられ、前記細胞は、例えば、生体から採取した細胞、培養細胞等があげられ、前記組織または器官は、例えば、生体から採取した組織(生体組織)または器官等があげられる。本開示の制御剤は、例えば、研究用試薬として使用することもでき、医薬品として使用することもできる。後者の場合、本開示の制御剤は、液性免疫応答に起因する疾患用医薬または医薬組成物ということもできる。
【0061】
本開示の制御剤をin vivoで使用する場合、前記投与対象は、例えば、液性免疫応答が異常であると診断された対象、液性免疫応答が異常である疑いがある対象等があげられる。前記液性免疫応答の異常は、例えば、原発性免疫不全症、液性免疫不全症等があげられる。
【0062】
本開示の制御剤の使用条件(投与条件)は、特に制限されず、例えば、投与対象の種類等に応じて、投与形態、投与時期、投与量等を適宜設定できる。
【0063】
本開示の制御剤の投与量は、前記投与対象に前記制御剤を投与した場合に、前記投与対象に投与していない場合と比較して、液性免疫応答の制御機能を得ることができる量(処置有効量)である。である。前記投与量は、例えば、被検者の年齢、体重、症状等によって適宜決定することができる。
【0064】
本開示の制御剤の投与回数は、1または複数回である。前記複数回は、例えば、2回、3回、4回、5回またはそれ以上である。前記投与回数は、対象の処置効果を確認しながら、適宜決定されてもよい。前記複数回投与する場合、投与間隔は、対象の処置効果を確認しながら、適宜決定でき、例えば、1日1回、1週1回、2週1回、1ヶ月1回、3ヶ月1回、6か月1回等があげられる。
【0065】
本開示の制御剤は、例えば、他の液性免疫応答異常に用いられる薬剤および/または方法と併用してもよい。前記液性免疫応答異常に用いられる薬剤としては、例えば、プレドニゾン等のコルチコステロイド;リツキサン等の抗モノクローナル抗体;等があげられる。
【0066】
本開示の制御剤の投与形態は、特に制限されない。本開示の制御剤をin vivoで投与する場合、経口投与でもよいし、非経口投与でもよい。前記非経口投与は、例えば、静脈注射(静脈内投与)、筋肉注射(筋肉内投与)、経皮投与、皮下投与、皮内投与、経腸投与、直腸投与、経膣投与、経鼻投与、経肺投与、腹腔内投与、局所投与等があげられる。
【0067】
本開示の制御剤の剤型は、特に制限されず、例えば、前記投与形態に応じて適宜決定できる。前記剤型は、例えば、液体状、固体状があげられる。具体例として、前記剤型は、放出調節製剤(腸溶性製剤、徐放性製剤等)、カプセル剤、経口液剤(エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、芳香水剤、リモナーデ剤等)、シロップ剤(シロップ用剤等)、顆粒剤(発泡顆粒剤、細粒等)、散剤、錠剤(口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、溶解剤、被覆錠剤等)、丸剤、経口ゼリー剤等の経口投与用製剤;口腔用錠剤(ガム剤、舌下剤、トローチ剤、ドロップ剤、バッカル錠、付着錠等)、口腔用スプレー剤、口腔用半固形剤、含嗽剤等の口腔内適用製剤;注射剤(埋め込み注射、持続性注射剤、輸液剤(点滴用製剤等)、凍結乾燥注射剤、粉末注射剤、充填済シリンジ剤、カートリッジ剤等)等の注射投与用製剤;透析用剤(腹膜透析用剤、血液透析用剤)等の透析用製剤;吸入剤(吸入エアゾール剤、吸入液剤、吸入粉末剤等)等の気管支・肺適用製剤;眼軟膏剤、点眼剤等の目投与用製剤;点耳剤等の耳投与製剤;点鼻剤(点鼻液剤、点鼻粉末剤等)等の鼻適用製剤;坐剤、直腸用半固形剤、注腸剤等の直腸適用製剤;膣用坐剤、膣錠等の膣適用製剤;外用液剤(酒精剤、リニメント剤、ローション剤等)、クリーム剤、ゲル剤、外用固形剤(外用散剤等)、スプレー剤(外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤等)、貼付剤(テープ剤、パップ剤等)、軟膏剤等の皮膚適用剤;等があげられる。本開示の血管拡張剤を経口投与する場合、前記剤型は、例えば、錠剤、被覆錠剤、丸剤、細粒剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、液剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等があげられる。本開示の液制御剤を非経口投与する場合、前記剤型は、例えば、注射投与用製剤、点滴用製剤等があげられる。本開示の制御剤を経皮投与する場合、前記剤型は、例えば、貼付剤、塗布剤、軟膏、クリーム、ローション等の外用薬があげられる。
【0068】
本開示の制御剤は、例えば、必要に応じて、添加剤を含んでもよく、本開示の制御剤を医薬または医薬組成物として使用する場合、前記添加剤は、薬学的に許容可能な添加剤または薬学的に許容可能な担体を含むことが好ましい。前記添加剤は、特に制限されず、例えば、基剤原料、賦形剤、着色剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定化剤、保存剤、香料等の矯味矯臭剤等があげられる。本開示の制御剤において、前記添加剤の配合量は、Arf1の活性物質またはArf1の活性抑制物質の機能を妨げるものでなければ、特に制限されない。
【0069】
前記賦形剤は、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、αデンプン、デキストリン等のデンプン誘導体;結晶セルロース等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン等の有機系賦形剤;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等のケイ酸塩誘導体;リン酸水素カルシウム等のリン酸塩;炭酸カルシウム等の炭酸塩;硫酸カルシウム等の硫酸塩等の無機系賦形剤があげられる。前記滑沢剤は、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;タルク;ポリエチレングリコール;シリカ;硬化植物油等があげられる。前記矯味矯臭剤は、例えば、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、桂皮末等の香料、甘味料、酸味料等があげられる。前記結合剤は、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等があげられる。前記崩壊剤は、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾デンプンおよび化学修飾セルロース類等があげられる。前記安定剤は、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾール等のフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;ソルビン酸等があげられる。
【0070】
本開示の制御剤が、例えば、前記制御剤が液性免疫応答の増強機能を有する場合、本開示の制御剤は、アジュバントまたは免疫賦活剤として使用できる。他方、本開示の制御剤が、例えば、前記制御剤が液性免疫応答の抑制機能を有する場合、本開示の制御剤は、免疫抑制剤として使用できる。
【0071】
<B細胞の胚中心B細胞への分化制御剤>
別の態様において、本明細書は、B細胞の胚中心B細胞への分化制御剤を提供する。本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化制御剤は、前述のように、B細胞の胚中心B細胞への分化に用いる制御剤であって、前記B細胞の胚中心B細胞への分化制御剤は、Arf1の活性化物質、またはArf1の活性抑制物質を含む。本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化制御剤は、Arf1の活性化物質、またはArf1の活性抑制物質を含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化制御剤によれば、B細胞の胚中心形成を制御することができ、液性免疫応答制御の効果を得ることができる。
【0072】
前記「B細胞の胚中心B細胞への分化制御」は、前記B細胞の胚中心形成が促進または抑制されることによって、B細胞の胚中心B細胞への分化が促進または抑制されることを意味する。前記B細胞の胚中心B細胞への分化制御は、例えば、B細胞の抗体産生誘導系において、Arf1の活性を増強または抑制する被検物質を共存させた際に、前記被検物質の非存在下と比較して、B細胞の胚中心B細胞への分化を抑制または促進できるかにより評価できる。具体的には、前記被検物質のB細胞の胚中心B細胞への分化抑制は、胚中心B細胞数の減少率に基づき、評価できる。前記評価では、例えば、前記被検物質が共存しない対照群における胚中心B細胞の数を基準として、前記被検物質存在下での胚中心B細胞の減少率が、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の場合、前記被検物質は、B細胞の胚中心B細胞への分化抑制効果があると評価できる。他方、前記被検物質のB細胞の胚中心B細胞への分化の増強は、前記胚中心B細胞数の増加率に基づき、評価できる。前記評価では、例えば、前記被検物質が共存しない対照群における胚中心B細胞の数を基準として、前記被検物質存在下での胚中心B細胞の増加率が、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の場合、前記被検物質は、B細胞の胚中心B細胞への分化促進効果があると評価できる。
【0073】
本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化制御剤は、例えば、投与対象に対して使用することにより、B細胞の胚中心B細胞への分化を制御することができる。これにより、本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化制御剤は、例えば、B細胞の胚中心形成を制御することができ、液性免疫応答制御の効果を得ることができる。本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化制御剤の使用条件(投与条件)は、前記本開示の液性免疫応答の制御剤の説明を援用できる。
【0074】
<IgG1+B細胞の細胞死の制御剤>
別の態様において、本明細書は、IgG1+B細胞の細胞死の制御剤を提供する。本開示のIgG1+B細胞の細胞死の制御剤は、前述のように、IgG1+B細胞の細胞死に用いる制御剤であって、前記IgG1+B細胞の細胞死の制御剤は、Arf1の活性化物質、またはArf1の活性抑制物質を含む。本開示のIgG1+B細胞の細胞死の制御剤は、Arf1の活性化物質、またはArf1の活性抑制物質を含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本開示のIgG1+B細胞の細胞死の制御剤によれば、IgG1+B細胞数を制御することができ、液性免疫応答制御の効果を得ることができる。
【0075】
前記「IgG1+B細胞の細胞死の制御」は、前記IgG1+B細胞の細胞死が促進または抑制されることを意味する。前記IgG1+B細胞の細胞死の制御は、例えば、後述の実施例2(8)のB細胞の抗体産生誘導系において、Arf1の活性を増強または抑制する被検物質を共存させた際に、前記被検物質の非存在下と比較して、IgG1+B細胞の細胞死を抑制または促進できるかにより評価できる。具体的には、前記被検物質のIgG1+B細胞の細胞死の抑制は、IgG1+B細胞の細胞数の減少率に基づき、評価できる。前記評価では、例えば、前記被検物質が共存しない対照群におけるIgG1+B細胞の数を基準として、前記被検物質存在下でのIgG1+B細胞の抑制率が、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の場合、前記被検物質は、IgG1+B細胞の細胞死の抑制効果があると評価できる。他方、前記被検物質のIgG1+B細胞の細胞死の促進は、前記IgG1+B細胞数の増加率に基づき、評価できる。前記評価では、例えば、前記被検物質が共存しない対照群におけるIgG1+B細胞の数を基準として、前記被検物質存在下でのIgG1+B細胞の増加率が、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の場合、前記被検物質は、IgG1+B細胞の細胞死の促進効果があると評価できる。
【0076】
本開示のIgG1+B細胞の細胞死の制御剤は、例えば、投与対象に対して使用することにより、IgG1+B細胞の細胞死を制御することができる。これにより、本開示のIgG1+B細胞の細胞死の制御剤は、例えば、液性免疫応答制御の効果を得ることができる。本開示のIgG1+B細胞の細胞死の制御剤の使用条件(投与条件)は、前記本開示の液性免疫応答の制御剤の説明を援用できる。
【0077】
<標的抗原に対する液性免疫応答の制御組成物>
別の態様において、本明細書は、標的抗原に対する液性免疫応答の制御組成物を提供する。本開示の標的抗原に対する液性免疫応答の制御組成物は、前述のように、液性免疫応答の制御に用いる制御組成物であって、前記標的抗原に対する液性免疫応答の制御組成物は、Arf1の活性化物質またはArf1の活性抑制物質と、標的抗原として免疫原とを含む。本開示の制御組成物は、Arf1の活性化物質、またはArf1の活性抑制物質、および標的抗原として免疫原を含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本開示によれば、例えば、標的抗原特異的な液性免疫応答を制御できる。
【0078】
本開示の制御組成物の投与対象および使用条件(投与条件)は、前記本開示の制御剤の使用条件(投与条件)の説明を援用できる。
【0079】
<標的抗原に対するB細胞の胚中心B細胞への分化の制御組成物>
別の態様において、本明細書は、標的抗原に対するB細胞の胚中心B細胞への分化の制御組成物を提供する。本開示の標的抗原に対するB細胞の胚中心B細胞への分化の制御組成物は、前述のように、B細胞の胚中心B細胞への分化の制御に用いる制御組成物であって、前記標的抗原に対するB細胞の胚中心B細胞への分化の制御組成物は、Arf1の活性化物質またはArf1の活性抑制物質と、標的抗原として免疫原とを含む。本開示の分化制御組成物は、Arf1の活性化物質、またはArf1の活性抑制物質、および標的抗原として免疫原を含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本開示によれば、例えば、標的特異的なB細胞の胚中心B細胞への分化を制御できる。
【0080】
本開示の分化制御組成物の投与対象および使用条件(投与条件)は、前記本開示の制御剤の使用条件(投与条件)の説明を援用できる。
【0081】
<標的抗原に対するIgG1+B細胞の細胞死の制御組成物>
別の態様において、本明細書は、標的抗原に対するIgG1+B細胞の細胞死の制御組成物を提供する。本開示の標的抗原に対するIgG1+B細胞の細胞死の制御組成物は、前述のように、IgG1+B細胞の細胞死の制御に用いる制御組成物であって、前記標的抗原に対するIgG1+B細胞の細胞死の制御組成物は、Arf1の活性化物質またはArf1の活性抑制物質と、標的抗原として免疫原とを含む。本開示の細胞死制御組成物は、Arf1の活性化物質、またはArf1の活性抑制物質、および標的抗原として免疫原を含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本開示によれば、例えば、標的特異的なIgG1+B細胞の細胞死を制御できる。
【0082】
本開示の細胞死制御組成物の投与対象および使用条件(投与条件)は、前記本開示の制御剤の使用条件(投与条件)の説明を援用できる。
<液性免疫応答の制御方法>
別の態様において、本明細書は、液性免疫応答の制御方法を開示する。本開示の液性免疫応答の制御方法は、液性免疫応答の制御剤を使用する。本開示の液性免疫応答の制御方法は、前記本開示の液性免疫応答の制御剤を使用すること、すなわち、前記本開示のArf1の活性化物質またはArf1の活性抑制物質を使用することが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本開示の液性免疫応答の制御方法は、前記本開示の制御剤を使用するため、自然抗体への影響を抑えた状態で、抗原特異的な抗体産生を制御できる。本開示の液性免疫応答の制御方法は、前記本開示の液性免疫応答の制御剤および制御組成物の説明を援用できる。
【0083】
本開示の液性免疫応答の制御方法は、例えば、前記本開示の液性免疫応答の制御剤を投与する投与工程を含み、具体的には、投与対象に、前記制御剤を投与する投与工程を含む。前記制御剤は、in vitroで投与されてもよいし、in vivoで投与してもよい。本開示の制御剤の投与対象および使用条件(投与条件)は、例えば、本開示の制御剤における投与対象および投与条件の説明を援用できる。
【0084】
<B細胞の胚中心B細胞への分化の制御方法>
別の態様において、本明細書は、B細胞の胚中心B細胞への分化の制御方法を開示する。本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化の制御方法は、B細胞の胚中心B細胞への分化の制御剤を使用する。本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化の制御方法は、前記本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化の制御剤を使用すること、すなわち、前記本開示のArf1の活性化物質またはArf1の活性抑制物質を使用することが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化の制御方法は、前記本開示の分化制御剤を使用するため、自然抗体への影響を抑えた状態で、抗原特異的な抗体産生を制御できる。本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化の制御方法は、前記本開示の制御剤および制御組成物の説明を援用できる。
【0085】
本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化の制御方法は、例えば、前記本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化の制御剤を投与する投与工程を含み、具体的には、投与対象に、前記分化制御剤を投与する投与工程を含む。前記分化制御剤は、in vitroで投与されてもよいし、in vivoで投与してもよい。本開示の分化制御剤の投与対象および使用条件(投与条件)は、例えば、本開示の制御剤における投与対象および投与条件の説明を援用できる。
【0086】
<IgG1+B細胞の細胞死の制御方法>
別の態様において、本明細書は、IgG1+B細胞の細胞死の制御方法を開示する。本開示のIgG1+B細胞の細胞死の制御方法は、IgG1+B細胞の細胞死の制御剤を使用する。本開示のIgG1+B細胞の細胞死の制御方法は、前記本開示のIgG1+B細胞の細胞死の制御剤を使用すること、すなわち、前記本開示のArf1の活性化物質またはArf1の活性抑制物質を使用することが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本開示のIgG1+B細胞の細胞死の制御方法は、前記本開示の細胞死制御剤を使用するため、自然抗体への影響を抑えた状態で、抗原特異的な抗体産生を制御できる。本開示のIgG1+B細胞の細胞死の制御方法は、前記本開示の制御剤および制御組成物の説明を援用できる。
【0087】
本開示のIgG1+B細胞の細胞死の制御方法は、例えば、前記IgG1+B細胞の細胞死の制御剤を投与する投与工程を含み、具体的には、投与対象に、前記細胞死制御剤を投与する投与工程を含む。前記細胞死制御剤は、in vitroで投与されてもよいし、in vivoで投与してもよい。本開示の細胞死制御剤の投与対象および使用条件(投与条件)は、例えば、本開示の制御剤における投与対象および投与条件の説明を援用できる。
【0088】
<標的抗原に対する液性免疫応答の制御方法>
別の態様において、本明細書は、標的抗原に対する液性免疫応答の制御方法を開示する。本開示の標的抗原に対する液性免疫応答の制御方法は、標的抗原に対する液性免疫応答の制御組成物を使用する。本開示の標的抗原に対する液性免疫応答の制御方法は、前記本開示の標的抗原に対する液性免疫応答の制御組成物を使用すること、すなわち、前記本開示のArf1の活性化物質またはArf1の活性抑制物質と、標的抗原として免疫原を使用することが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本開示の標的抗原に対する液性免疫応答の制御方法は、前記本開示の制御組成物を使用するため、自然抗体への影響を抑えた状態で、抗原特異的な抗体産生を制御できる。本開示の標的抗原に対する液性免疫応答の制御方法は、前記本開示の制御剤、制御組成物、および液性免疫応答の制御方法の説明を援用できる。
【0089】
本開示の標的抗原に対する液性免疫応答の制御方法は、例えば、前記免疫原と、前記制御組成物とを投与する投与工程を含み、具体的には、投与対象に、前記免疫原と、前記制御組成物とを投与する投与工程を含む。前記制御組成物は、in vitroで投与されてもよいし、in vivoで投与してもよい。本開示の標的抗原に対する液性免疫応答の制御組成物の投与対象および使用条件(投与条件)は、例えば、本開示の制御剤における投与対象および投与条件の説明を援用できる。
【0090】
<標的抗原に対するB細胞の胚中心B細胞への分化の制御方法>
別の態様において、本明細書は、標的抗原に対するB細胞の胚中心B細胞への分化の制御方法を開示する。本開示の標的抗原に対するB細胞の胚中心B細胞への分化の制御方法は、標的抗原に対するB細胞の胚中心B細胞への分化の制御組成物を使用する。本開示の標的抗原に対するB細胞の胚中心B細胞への分化の制御方法は、前記本開示の標的抗原に対するB細胞の胚中心B細胞への分化の制御組成物を使用すること、すなわち、前記本開示のArf1の活性化物質またはArf1の活性抑制物質と、標的抗原として免疫原を使用することが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本開示の標的抗原に対するB細胞の胚中心B細胞への分化の制御方法は、前記本開示の分化制御組成物を使用するため、自然抗体への影響を抑えた状態で、抗原特異的な抗体産生を制御できる。本開示の標的抗原に対するB細胞の胚中心B細胞への分化の制御方法は、前記本開示の制御剤、分化制御剤、制御組成物、分化制御組成物、液性免疫応答の制御方法、およびB細胞の胚中心B細胞への分化制御方法の説明を援用できる。
【0091】
本開示の標的抗原に対するB細胞の胚中心B細胞への分化の制御方法は、例えば、前記免疫原と、前記分化制御組成物とを投与する投与工程を含み、具体的には、投与対象に、前記免疫原と、前記分化制御組成物とを投与する投与工程を含む。前記分化制御組成物は、in vitroで投与されてもよいし、in vivoで投与してもよい。本開示の標的抗原に対するB細胞の胚中心B細胞への分化の制御組成物の投与対象および使用条件(投与条件)は、例えば、本開示の制御剤における投与対象および投与条件の説明を援用できる。
【0092】
<標的抗原に対するIgG1+B細胞の細胞死の制御方法>
別の態様において、本明細書は、標的抗原に対するIgG1+B細胞の細胞死の制御方法を開示する。本開示の標的抗原に対するIgG1+B細胞の細胞死の制御方法は、標的抗原に対するIgG1+B細胞の細胞死の制御組成物を使用する。本開示の標的抗原に対するIgG1+B細胞の細胞死の制御方法は、前記本開示の標的抗原に対するIgG1+B細胞の細胞死の制御組成物を使用すること、すなわち、前記本開示のArf1の活性化物質またはArf1の活性抑制物質と、標的抗原として免疫原を使用することが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本開示の標的抗原に対するIgG1+B細胞の細胞死の制御方法は、前記本開示の細胞死制御組成物を使用するため、自然抗体への影響を抑えた状態で、抗原特異的な抗体産生を制御できる。本開示の標的抗原に対するIgG1+B細胞の細胞死の制御方法は、前記本開示の制御剤、細胞死制御剤、制御組成物、細胞死制御組成物、液性免疫応答の制御方法、およびIgG1+B細胞の細胞死の制御方法の説明を援用できる。
【0093】
本開示の標的抗原に対するIgG1+B細胞の細胞死の制御方法は、例えば、前記免疫原と、前記細胞死制御組成物とを投与する投与工程を含み、具体的には、投与対象に、前記免疫原と、前記細胞死制御組成物とを投与する投与工程を含む。前記細胞死制御組成物は、in vitroで投与されてもよいし、in vivoで投与してもよい。本開示の標的抗原に対するIgG1+B細胞の細胞死の制御組成物の投与対象および使用条件(投与条件)は、例えば、本開示の制御剤における投与対象および投与条件の説明を援用できる。
【0094】
<液性免疫応答の制御候補物質のスクリーニング方法>
別の態様において、本明細書は、液性免疫応答の制御候補物質のスクリーニング方法を開示する。本開示の液性免疫応答の制御候補物質のスクリーニング方法は、被検物質から、ADPリボシル化因子1(Arf1)の活性を増強または抑制する被検物質を、液性免疫応答の制御候補物質として選択する選択工程を含む。本開示は、液性免疫応答の制御候補物質のターゲットがArf1であることが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本開示のスクリーニング方法は、前記本開示の液性免疫応答の制御剤、標的抗原に対する液性免疫応答の制御組成物、液性免疫応答の制御方法、および標的抗原に対する液性免疫応答の制御方法の説明を援用できる。
【0095】
前記被検物質は、例えば、低分子化合物、ペプチド、タンパク質、および核酸等があげられる。前記低分子化合物は、例えば、公知の低分子化合物のライブラリ等があげられる。前記ペプチドは、例えば、直鎖、分枝、または環状のペプチドである。前記タンパク質は、天然のタンパク質または人工のタンパク質のいずれでもよい。前記タンパク質は、例えば、抗体、成長因子、増殖因子、またはこれらの改変体等があげられる。前記核酸は、例えば、Arf1の発現抑制物質があげられ、具体例として、Arf1遺伝子からのmRNAの転写を抑制する物質、転写されたmRNAを切断する物質およびmRNAからのタンパク質の翻訳を抑制する物質等があげられる。前記核酸は、例えば、siRNA等のRNA干渉剤、アンチセンス、リボザイム等があげられる。
【0096】
本開示のスクリーニング方法は、Arf1の活性を指標に被検物質が液性免疫応答の制御しうるかをスクリーニングする。このため、本開示のスクリーニング方法は、例えば、前記選択工程の前に、Arf1の発現系に、前記被検物質を共存させる共存工程を含んでもよい。前記共存工程は、例えば、前記Arf1の発現系に、前記被検物質を添加することで実施できる。
【0097】
前記発現系は、Arf1を発現可能な系であればよく、例えば、Arf1を発現する細胞系、Arf1を発現可能な細胞系、無細胞系、または動物があげられる。前記発現系が動物の場合、前記発現系は、例えば、ヒトを除く非ヒト動物があげられる。前記非ヒト動物としては、例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル、イルカ、アシカ等の哺乳類;ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ等の鳥類;魚類;等があげられる。前記細胞系は、例えば、生体から単離されたB細胞、B細胞に由来する培養細胞株等があげられる。
【0098】
本開示のスクリーニング方法は、前記共存工程の後に、Arf1の活性を検出する検出工程を含んでもよい。前記Arf1の活性の検出は、直接または間接的な検出である。前記直接的な検出は、例えば、プルダウンアッセイ、Split-Venusを用いたモニタリングシステム等により検出できる。前記プルダウンアッセイを用いた場合、前記検出工程では、例えば、GST等のタグを融合したGGA3と会合する活性型Arf1をプルダウンし、ウエスタンブロッティング法等を用いて、活性型Arf1を定量してもよい。前記プルダウンアッセイは、例えば、市販のキットを用いて行ってもよく、例えば、活性型Arf1定量キット(Cytoskeleton社製)等を用いてもよい。前記Split-Venusを用いたモニタリングシステムを用いる場合、前記検出工程では、細胞内における、蛍光タンパク質等の標識を融合または付加させたGGA3とArf1との会合をモニターすることで、Arf1の活性を検出することができる。前記間接的な検出は、前記Arf1の発現系におけるArf1の活性の変動により生じる抗体の産生量の変動を検出することにより実施できる。具体的には、前記検出工程では、例えば、前記Arf1の発現系における抗体量を検出することにより、Arf1の活性を検出する。この場合、前記Arf1の発現系は、例えば、生体から単離されたB細胞およびB細胞に由来する培養細胞株を使用できる。前記Arf1の発現系の抗体量は、例えば、前記細胞系の培養上清の抗体量があげられる。また、抗体量を検出する場合、前記共存工程では、前記Arf1の発現系は、B細胞の活性化物質を共存させることが好ましい。前記B細胞の活性化物質は、例えば、LPS、B細胞受容体に対する抗体、IL-4等のサイトカイン、またはこれらの組合せ等があげられる。前記抗体量は、例えば、酵素免疫測定法(ELISA)等によって測定できる。
【0099】
本開示のスクリーニング方法は、前記検出工程の検出結果に基づき、被検物質を選択する選択工程を含んでもよい。前記選択工程は、例えば、前記Arf1の活性を増強または抑制する被検物質を、前記液性免疫応答の制御候補物質として選択する。具体的には、前記選択工程は、例えば、前記Arf1の活性が、前記被検物質が非共存下の場合と比較して、前記被検物質が共存下で低い、または、高い場合、前記選択工程では、それぞれ、液性免疫応答の抑制候補物質および液性免疫応答の活性化候補物質等の液性免疫応答の制御候補物質として選択する。また、前記検出工程において、前記抗体量を検出している場合、前記選択工程では、例えば、前記抗体の産生量を増強または抑制する被検物質を、前記液性免疫応答の制御候補物質として選択する。具体的には、前記選択工程は、例えば、前記抗体の産生量が、前記被検物質が非共存下の場合と比較して、前記被検物質が共存下で低い、または、高い場合、前記選択工程では、それぞれ、液性免疫応答の抑制候補物質および液性免疫応答の活性化候補物質等の液性免疫応答の制御候補物質として選択する。
【0100】
前記発現系が非ヒト動物である場合、前記検出工程では、前記Arf1の活性を直接または間接的に検出する。前記直接的な検出は、例えば、前記非ヒト動物から採取したB細胞について、qPCR法等により検出できる。前記間接的な検出は、前記Arf1の発現系におけるArf1の活性の変動により生じる抗体の産生量の変動を検出することにより実施できる。具体的には、前記検出工程では、例えば、前記Arf1の発現系における抗体量を検出することにより、Arf1の活性を検出する。この場合、前記Arf1の発現系は、例えば、生体から単離された生体試料を使用できる。前記生体試料は、例えば、血清、血漿等の血液試料;リンパ液;糞便等があげられ、好ましくは、血清である。また、前記抗体量は、例えば、前記生体試料の抗体量があげられる。前記抗体量は、例えば、酵素免疫測定法(ELISA)等によって測定できる。そして、前記選択工程では、例えば、前記抗体量が、前記被検物質が非共存下の場合と比較して、前記被検物質が共存下で低い、または、高い場合、前記選択工程では、それぞれ、液性免疫応答の抑制候補物質および液性免疫応答の活性化候補物質等の液性免疫応答の制御候補物質であるとして選択する。
【0101】
これにより、本開示のスクリーニング方法では、前記本開示の制御剤をスクリーニングできる。
【0102】
<B細胞の胚中心B細胞への分化制御候補物質のスクリーニング方法>
別の態様において、本明細書は、B細胞の胚中心B細胞への分化制御候補物質のスクリーニング方法を開示する。本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化制御候補物質のスクリーニング方法は、被検物質から、ADPリボシル化因子1(Arf1)の活性を増強または抑制する被検物質を、B細胞の胚中心B細胞への分化制御候補物質として選択する選択工程を含む。本開示は、B細胞の胚中心B細胞への分化制御候補物質のターゲットがArf1であることが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化制御候補物質のスクリーニング方法は、前記本開示の液性免疫応答の制御剤、本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化制御剤、標的抗原に対する液性免疫応答の制御組成物、標的抗原に対するB細胞の胚中心B細胞への分化制御組成物、液性免疫応答の制御方法、B細胞の胚中心B細胞への分化制御方法、標的抗原に対する液性免疫応答の制御方法、標的抗原に対するB細胞の胚中心B細胞への分化制御方法、および液性免疫応答の制御候補物質のスクリーニング方法の説明を援用できる。
【0103】
本開示のB細胞の胚中心B細胞への分化制御候補物質のスクリーニング方法は、前記共存工程の後に、Arf1の活性を検出する検出工程を含んでもよい。前記Arf1の活性の検出は、直接または間接的な検出である。前記直接的な検出および間接的な検出は、液性免疫応答の制御候補物質のスクリーニング方法の説明を援用できる。前記間接的な検出は、前記Arf1の発現系におけるArf1の活性の変動により生じる胚中心B細胞数または割合の変動を検出することにより実施してもよい。具体的には、前記検出工程では、例えば、前記Arf1の発現系における胚中心B細胞数または割合を検出することにより、Arf1の活性を検出する。この場合、前記Arf1の発現系は、例えば、生体から単離されたB細胞およびB細胞に由来する培養細胞株を使用できる。前記胚中心B細胞数または割合の検出は、例えば、フローサイトメトリー法等を用いて実施できる。
【0104】
本開示のスクリーニング方法は、前記検出工程の検出結果に基づき、被検物質を選択する選択工程を含んでもよい。前記選択工程は、例えば、前記Arf1の活性を増強または抑制する被検物質を、前記分化制御候補物質として選択する。具体的には、前記選択工程は、例えば、前記Arf1の活性が、前記被検物質が非共存下の場合と比較して、前記被検物質が共存下で低い、または、高い場合、前記選択工程では、それぞれ、分化抑制候補物質および分化促進候補物質等の分化制御候補物質として選択する。また、前記検出工程において、前記胚中心B細胞数または割合を検出している場合、前記選択工程では、例えば、前記抗体の胚中心B細胞数または割合を、増強または抑制する被検物質を、前記分化制御候補物質として選択する。具体的には、前記選択工程は、例えば、前記胚中心B細胞数または割合が、前記被検物質が非共存下の場合と比較して、前記被検物質が共存下で低い、または、高い場合、前記選択工程では、それぞれ、分化抑制候補物質および分化促進候補物質等の分化制御候補物質として選択する。
【0105】
<IgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質のスクリーニング方法>
別の態様において、本明細書は、IgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質のスクリーニング方法を開示する。本開示のIgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質のスクリーニング方法は、被検物質から、ADPリボシル化因子1(Arf1)の活性を増強または抑制する被検物質を、IgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質として選択する選択工程を含む。本開示は、IgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質のターゲットがArf1であることが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本開示のIgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質のスクリーニング方法は、前記本開示の液性免疫応答の制御剤、本開示のIgG1+B細胞の細胞死の制御剤、標的抗原に対する液性免疫応答の制御組成物、標的抗原に対するIgG1+B細胞の細胞死の制御組成物、液性免疫応答の制御方法、IgG1+B細胞の細胞死の制御方法、標的抗原に対する液性免疫応答の制御方法、標的抗原に対するIgG1+B細胞の細胞死の制御方法、および液性免疫応答の制御候補物質のスクリーニング方法の説明を援用できる。
【0106】
本開示のIgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質のスクリーニング方法は、前記共存工程の後に、Arf1の活性を検出する検出工程を含んでもよい。前記Arf1の活性の検出は、直接または間接的な検出である。前記直接的な検出および間接的な検出は、液性免疫応答の制御候補物質のスクリーニング方法の説明を援用できる。前記間接的な検出は、前記Arf1の発現系におけるArf1の活性の変動により生じるIgG1+B細胞数の変動を検出することにより実施してもよい。具体的には、前記検出工程では、例えば、前記Arf1の発現系におけるIgG1+B細胞数または割合を検出することにより、Arf1の活性を検出する。この場合、前記Arf1の発現系は、例えば、生体から単離されたB細胞およびB細胞に由来する培養細胞株を使用できる。前記IgG1+B細胞の細胞死の検出は、例えば、Annexinアッセイ、カスパーゼアッセイ、およびTUNELアッセイ等の細胞死アッセイを用いて実施できる。前記IgG1+B細胞数または割合の検出は、例えば、フローサイトメトリー法等を用いて実施できる。
【0107】
本開示のスクリーニング方法は、前記検出工程の検出結果に基づき、被検物質を選択する選択工程を含んでもよい。前記選択工程は、例えば、前記Arf1の活性を増強または抑制する被検物質を、前記細胞死の制御候補物質として選択する。具体的には、前記選択工程は、例えば、前記Arf1の活性が、前記被検物質が非共存下の場合と比較して、前記被検物質が共存下で低い、または、高い場合、前記選択工程では、それぞれ、細胞死の促進候補物質および細胞死の抑制候補物質等の細胞死の制御候補物質として選択する。また、前記検出工程において、前記IgG1+B細胞数または割合を検出している場合、前記選択工程では、例えば、前記抗体のIgG1+B細胞数または割合を、増強または抑制する被検物質を、前記細胞死の制御候補物質として選択する。具体的には、前記選択工程は、例えば、前記IgG1+B細胞数または割合が、前記被検物質が非共存下の場合と比較して、前記被検物質が共存下で低い、または、高い場合、前記選択工程では、それぞれ、細胞死の促進候補物質および細胞死の促進候補物質等の細胞死の制御候補物質として選択する。
【0108】
<使用>
本開示は、液性免疫応答の制御、B細胞の胚中心B細胞への分化制御、および/またはIgG1+B細胞の細胞死の制御のための、ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性化物質またはArf1の活性抑制物質の使用である。本開示は、標的抗原に対する液性免疫応答の制御、標的抗原に対するB細胞の胚中心B細胞への分化制御、および/または標的抗原に対するIgG1+B細胞の細胞死の制御のための、ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性化物質またはArf1の活性抑制物質と、標的抗原としての免疫原との使用である。本開示は、液性免疫応答の制御剤、B細胞の胚中心B細胞への分化制御剤、および/またはIgG1+B細胞の細胞死の制御剤の製造のための、ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性化物質またはArf1の活性抑制物質の使用である。また、本開示は、標的抗原に対する液性免疫応答の制御組成物、B細胞の胚中心B細胞への分化制御組成物、および/またはIgG1+B細胞の細胞死の制御組成物の製造ための、ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性化物質またはArf1の活性抑制物質と、標的抗原としての免疫原との使用である。
【実施例0109】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に記載された態様に限定されるものではない。なお、特に示さない限り、市販の試薬およびキット等は、そのプロトコルに従い使用した。
【0110】
[実施例1]
本発明のB細胞特異的Arf1の欠損が、自然抗体を維持していることを確認した。
【0111】
(1)B細胞特異的Arf1コンディッショナルノックアウトマウスの作製
B細胞特異的Arf1コンディッショナルノックアウトマウス(Arf1-BKO)は、B細胞特異的にCreを発現するmb1-Creマウスと、組織特異的Arf1コンディッショナルノックアウトマウスであるArf1-floxマウスとを、交配することで得た。
【0112】
(2)骨髄における、B細胞特異的Arf1欠損によるB細胞の分化への影響
B細胞特異的Arf1の欠損によって、B細胞の分化が影響を受けるか評価するために、フローサイトメトリーを用いた。具体的には、Arf1コンディッショナルノックアウトマウス、およびコントロールマウス(WT)から骨髄細胞を採取した。前記骨髄細胞から赤血球を除去し、前記除去後、ブロッキング抗体(Clone:2.4G2、BD社製)でブロッキングした。前記ブロッキング後、前記骨髄細胞は、4℃で30分の条件下で、異なる蛍光色素で標識した抗B220抗体(Clone:RA3-6B2、Biolegend社製)、抗IgM抗体(Clone:RMM-1Biolegend社製)、抗CD25抗体(Clone:PC61.5、Biolegend社製)、抗CD43抗体(Clone:S7、Biolegend社製)および7-AAD(7-amino-Actinomycin D)で染色した。蛍光活性化セルソーティング(FACS)解析は、FACSCanto II(BD社製)を用いて行った。7-AAD陽性の死細胞を除き、B220intIgM-のpro-B細胞/pre-B細胞画分(IgM)、B220 intIgM+の未成熟B細胞画分(immature)、およびB220 hiIgM+のB細胞画分(circulating)に分類し、それぞれの割合を評価した。また、pro-B/pre-B画分(IgM)に占めるpro-B細胞およびpre-B細胞の割合を評価した。
【0113】
図1は、フローサイトメトリーによる、結果を示したグラフである。図1(A)は、WTおよびArf1-BKOにおける、7-AAD陽性の死細胞を除いたB細胞の分化集団の割合を示したグラフであり、図1(B)は、図1(A)のフローサイトメトリーによる結果から、WTおよびArf1-BKOにおける各分化集団の割合をプロットしたグラフである。図1(C)は、WTおよびArf1-BKOにおける、B220IgM-画分に占めるpro-B細胞およびpre-B細胞の割合を示したグラフである。図1(D)は、図1(C)のフローサイトメトリーによる結果から、WTおよびArf1-BKOにおけるpro-B細胞およびpre-B細胞の割合をプロットしたグラフである。図1(E)は、図1(A)および図1(B)のフローサイトメトリーによる結果から、WTおよびArf1-BKOにおけるpre-B細胞に対するimmatureのB細胞の割合をプロットしたグラフである。図1(F)は、図1(A)および図1(B)のフローサイトメトリーによる結果から、WTおよびArf1-BKOにおけるimmatureのB細胞に対するcirculatingのB細胞の割合をプロットしたグラフである。図1(A)において、縦軸は、B220を示し、横軸は、IgMを示す。図1(B)において、縦軸は、骨髄(BM)における細胞数の割合を示し、横軸は、細胞の種類を示す。図1(C)において、縦軸は、CD43を示し、横軸は、CD25を示す。図1(D)において、縦軸は、B220IgM-における細胞数の割合を示し、横軸は、細胞の種類を示す。図1(E)において、縦軸は、pre-B細胞に対するimmatureのB細胞の割合を示し、横軸は、細胞の種類を示す。図1(F)において、縦軸は、immatureのB細胞に対するcirculatingのB細胞の割合を示し、横軸は、細胞の種類を示す。図1(B)および(D)~(F)において、白丸が、WTを示し、グレーの丸がArf1-BKOを示す(以下、特に言及がない場合、同様)。図1(A)に示すように、IgMおよびimmatureのB細胞の割合は、WTとArf1-BKOにおいて差が見られなかった。しかしながら、図1(B)~(D)に示すように、WTに比べてArf1-BKOでは、骨髄における、pre-B細胞、immatureのB細胞、およびcirculatingのB細胞の割合は減少していることがわかった。また、図1(E)および図1(F)に示すように、Arf1-BKOにおける、pre-B細胞に対するimmatureのB細胞の割合およびimmatureのB細胞に対するcirculatingのB細胞の割合は、WTと比べて差がなかった。以上のことから、Arf1の欠損において、骨髄におけるB細胞の分化割合は減少するものの、骨髄で分化したB細胞は、WTと同様に末梢に排出されていることが示唆された。
【0114】
(3)B細胞特異的Arf1欠損によるB細胞の抗体産生能への影響
B細胞特異的Arf1の欠損によって、抗体産生能が影響を受けるか評価するために、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay:酵素結合免疫吸着測定法)を用いて、抗原特異的な免疫応答における抗体価を検討した。前記検討は、図2(A)に示すように行った。具体的には、抗原として、100μg 卵白アルブミン(OVA、シグマ社製)およびAlumアジュバント(Imject Alum、Thermo Fisher Scientific社製)を1:1で混合した混合物を調製した。前記調製後、WTマウスおよびArf1-BKOマウスの腹腔内に前記混合物を投与した。さらに、1回目の投与の2週間後に、前記WTマウスおよび前記Arf1-BKOマウスの腹腔内に前記混合物を投与した。そして、2回目の投与のさらに2週間後に、各マウスの全採血を行った。前記全採血で得た血液から血清を調製後、得られた血清をリン酸緩衝液(PBS)で希釈し、OVAに対する抗体価を測定した。前記OVAに対する抗体価の測定は、37℃で2時間の条件下で、血清(500倍希釈)を反応させ、前記反応後、37℃で30分の条件下で、2次抗体HRP標識Anti-マウスIg(3000倍希釈、GEヘルスケア社製)を反応させた。前記反応後、プレートリーダー(Bio-Rad社製)で吸収波長450nmにおける吸光度を測定した。これらの結果を図2(B)に示す。なお、図中におけるアスタリスクは、p値を示し、*は、p<0.05、**は、p<0.01を意味する。また、統計的解析は、Student’s t法により実施した(以下、同様)。
【0115】
図2(B)は、ELISAによる、OVA特異的な抗体産生の結果を示したグラフである。図2(B)において、縦軸は、吸光度(OD)を示し、横軸は、マウスの種類を示す。Arf1-BKOマウスの血清では、WTマウスの血清と比べて、OVA特異的な抗体産生は有意に少なく、ほとんど見られなかった。以上のことから、B細胞特異的Arf1欠損マウスでは、外来抗原に対する抗体の産生能が極めて低いことがわかった。
【0116】
(4)B細胞特異的Arf1欠損によるB細胞の抗体産生能への影響
一般的に、タンパク質抗原に対する抗体産生は、T細胞のヘルプが必要である。一方で、T細胞非依存的抗原に対する抗体産生は、T細胞のヘルプが不要である。そこで、B細胞特異的Arf1の欠損によって、T細胞非依存的な抗体産生能が影響を受けるか評価するために、ELISAを用いて検討した。前記検討は、図3(A)に示すように行った。具体的には、T細胞非依存的抗原として、NP-Ficoll(NP(57)-AECM-Ficoll、Biosearch Technologies社製)を用い、WTマウスおよびArf1-BKOマウスの腹腔内に75μgのNP-Ficollを投与した。1回目の投与の2週間後に、前記WTマウスおよび前記Arf1-BKOマウスの腹腔内にNP-Ficollを投与した。2回目の投与のさらに2週間後に、各マウスから全採血を行った。前記全採血で得た血液から、血清を調製した。前記血清をリン酸緩衝液(PBS)で希釈し、NP-Ficollに対する抗体価を測定した。前記NP-Ficollに対する抗体価の測定は、10μg/ml NP(41)-BSAを固相後、5%スキムミルクでブロッキングした96ウェルプレートに対して、37℃で2時間の条件下で、血清(500倍希釈)を反応させ、前記反応後、37℃で30分の条件下で、2次抗体としてHRP標識Anti-マウスIg(3000倍希釈、GEヘルスケア社製)を反応させた。前記反応後、プレートリーダー(Bio-Rad社製)で吸収波長450nmにおける吸光度を測定した。これらの結果を図3(B)に示す。
【0117】
図3(B)は、ELISAによる、NP-Ficoll特異的な抗体産生の結果を示したグラフである。図3(B)において、縦軸は、吸光度(OD)を示し、横軸は、マウスの種類(白丸:WT、グレーの丸:Arf1-BKO)を示す。Arf1-BKOマウスの血清では、WTマウスの血清と比べて、NP-Ficoll特異的な抗体産生は有意に少なく、ほとんど見られなかった。以上のことから、B細胞特異的Arf1欠損マウスでは、T細胞の関与に関わらず、外来抗原に対する抗体の産生能が極めて低いことがわかった。また、抗原に対するB細胞による抗体の産生に、Arf1が関与していることがわかった。
【0118】
(5)B細胞特異的Arf1欠損による自然抗体産生への影響
B細胞特異的Arf1の欠損によって、自然抗体の産生が影響を受けるか評価するために、抗体アイソタイピングをELISAで行った。具体的には、未免疫のWTマウス、Arf1-BKOマウス、およびArf6-BKOマウスから全採血を行った。得られた全採血から得た血液から血清を調製し、血清調製物を得た。また、WTマウス、Arf1-BKOマウス、およびArf6-BKOマウスの糞便から抽出液を調製し、糞便調製物を得た。具体的には、マウスの糞便を-20℃で凍結した後、2mmol/l PMSF(Phenylmethylsulfonyl fluoride)および0.2mg/ml ベンザミジン含有PBSを100mgの糞便に対して500μl添加した。前記添加後、ペッスルを用いてホモジェナイズした。その後、4℃、15000rpm、10分間の条件下で、遠心を行った。前記遠心後、上清を回収した。前記回収後、前記上清を、4℃、15000rpm、2分間の条件で、遠心を行った。前記遠心後、上清を回収し、サンプルを得た。前記サンプルは、使用するまで-20℃で保存した。前記血清調製物および前記糞便調製物は、SBA Clonotyping System-C57BL/6-HRPキット(Southern Biotech社製)を用いてイムノグロブリンの同定および定量を行った。これらの結果を図4に示す。
【0119】
図4は、ELISAによる、イムノグロブリンを定量した結果を示したグラフである。図4(A)は、血清調製物における各イムノグロブリンを定量した結果を示したグラフであり、図4(B)は、糞便調製物におけるイムノグロブリンIgAを定量した結果を示したグラフである。図4(A)において、縦軸は、WTの各イムノグロブリンを100としたときの相対値を示し、横軸は、イムノグロブリンの種類を示す。図4(B)において、縦軸は、WTのIgAを100としたときの相対値を示し、横軸はマウスの種類を示す。図4の各イムノグロブリンの種類において、マウスの種類は、左側から、WT、Arf1-BKO、およびArf6-BKO)の順番である。図4(A)に示すように、WTの血清と比較して、Arf1-BKOの血清(Arf1-BKO)では、IgM、IgA、IgG1、IgG2b、IgG2c、およびIgG3の含有量は少なく、IgGクラスの含有量は顕著に少なかった。他方、B細胞特異的Arf1の欠損下でも、IgM、IgA、IgG1、IgG2b、IgG2c、およびIgG3は、一定量産生されていることがわかった。また、Arf6-BKOの血清(Arf6-BKO)では、IgM、IgG3以外のクラスの抗体価はWTの血清と差が見られなかった。図4(B)に示すように、WTの糞便と比較して、Arf1-BKOの糞便(Arf1-BKO)では、IgAの含有量は少なかった。他方、B細胞特異的Arf1の欠損下でも、IgAが一定量産生されていることがわかった。また、Arf6-BKOの糞便(Arf6-BKO)では、IgAの含有量は、WTの糞便と差が見られなかった。以上のことから、Arf6に比べ、Arf1は、抗体産生への寄与が高いことがわかった。また、B細胞特異的Arf1の欠損下でも、自然抗体が産生されており、Arf1は、抗原特異的な抗体産生の誘導と比較して、自然抗体の産生誘導への寄与が相対的に少ないことがわかった。
【0120】
(6)B細胞特異的Arf1欠損によるB1細胞由来抗体産生能への影響
B細胞は、主に、2つのサブセットから構成され、その1つがB1細胞である。前記B1細胞は、主に腹腔等に常在しているB細胞である。B細胞特異的Arf1の欠損によって、B1細胞由来の抗体産生能が影響を受けるか評価するために、T細胞、B細胞、およびNKT細胞を完全に欠損した免疫不全マウスRag2(recombination activating gene 2)欠損マウスに腹腔内B細胞を移植し、得られたマウスについて、抗体アイソタイピングをELISAで行った。具体的には、WTマウスおよびArf1-BKOマウスの腹腔内を洗浄し、腹腔内洗浄液を得た。その後、前記腹腔内洗浄液から細胞を回収し、前記細胞をPBSで10細胞/mlになるように調整した。前記調整後、前記細胞100μlを、Rag2欠損マウス(Jax mice stock #008449)の腹腔内に投与した。コントロール(Rag2 KO Ctrl)には、PBSを腹腔内に投与した。前記投与の30日後、前記Rag2欠損マウスから全採血を行った。その後、前記全採血で得た血液から、血清を調製し血清調製物を得た。前記血清調製物は、SBA Clonotyping System-C57BL/6-HRPキット(Southern Biotech社製)を用いてイムノグロブリンの同定および定量を行った。これらの結果を図5に示す。
【0121】
図5は、ELISAによる、Rag2KOマウスの血清調製物におけるイムノグロブリンを定量した結果を示したグラフである。図5において、縦軸は、定量値(μg/ml)を示し、横軸は、イムノグロブリンの種類を示す。コントロール(Rag2 KO ctrl)では、血清中にIgMおよびIgAは存在しなかった。他方、WTを投与した群では、Rag2 KO ctrlと比較して、IgMおよびIgAの含有量が大きく増加した。Arf1-BKOを投与した群では、WTを投与した群と比較して、IgMおよびIgAの含有量は顕著に少ないものの、一定量のIgMおよびIgAが観察された。このため、B細胞特異的Arf1の欠損マウスの腹腔のB1B細胞によって、IgMおよびIgAが産生されることがわかった。
【0122】
(7)B細胞特異的Arf1の欠損によるT細胞のサイトカイン分泌への影響
B細胞特異的Arf1の欠損によって、T細胞におけるサイトカイン分泌能が影響を受けるかを評価するために、T細胞刺激時に産生されるIL-2の濃度をELISAにより評価した。具体的には、Arf1/Arf6コンディッショナルノックアウトマウス(Arf1/6-KO)およびコントロールマウス(WT)からT細胞を採取した。前記T細胞を、抗CD3抗体(145-2C11、Biolegend社製)および抗CD28抗体(35.51、Biolegend社製)を用いて刺激後、Arf経路阻害剤brefeldin Aで処理し、サイトカインの細胞外への分泌を阻害した。前記brefeldin Aの濃度は、終濃度が、0、0.1、0.3、0.5、および1μg/mlとなるように調製した。つぎに、前記処理後のT細胞の培養上清を回収し、得られた培養上清について、ELISA Max deluxe set mouse IL-2(Biolegend社製)を用いて、IL-2濃度を測定した。そして、Arf1-BKOおよびWTのT細胞について、brefeldin Aの濃度が0μg/mlの培養上清におけるIL-2の産生量を100%として、各brefeldin Aの濃度における培養上清中のIL-2の産生量の相対値を算出した。これらの結果を図6に示す。
【0123】
図6は、IL-2の産生量を示すグラフである。図6において、(A)は、コントロール(ctrl)およびArf1/6-KOにおける、IL-2の分泌濃度を示したグラフであり、(B)は、各brefeldin A(BFA)濃度における、ctrlおよびArf1/6-KOのIL-2の分泌量の相対値を示すグラフである。図6(A)において、縦軸は、濃度(ng/ml)を示し、横軸は、細胞の種類を示している。図6(B)において、縦軸は、IL-2の産生量の相対値(%)を示し、横軸は、BFA濃度を示している。Arf1/6-KOにおけるIL-2の産生量は、BFA濃度に関わらず、ctrlと同様の割合を示した。以上のことから、Arf1の欠損は、T細胞におけるサイトカイン分泌に影響を与えないことがわかった。
【0124】
以上の結果から、Arf1は、抗原特異的な抗体の産生への寄与と比較して、自然抗体の産生への寄与が相対的に低いことがわかった。また、Arf1の有無により、抗原特異的な抗体の産生量を制御できることから、B細胞全体の除去と比較して、自然抗体への影響を低減した状態で、かつ、抗原特異的な抗体産生を制御できること、すなわち、液性免疫応答を制御できることがわかった。
[実施例2]
本発明のB細胞特異的Arf1の欠損が、B細胞の胚中心B細胞への分化を抑制していることを確認した。
【0125】
(1)膝窩リンパ節における、B細胞特異的Arf1欠損B細胞の抗体産生能の評価
前記実施例1(4)の結果から、B細胞特異的Arf1欠損では、T細胞非依存的に抗原産生能が低下していることがわかったため、より詳細な解析を行った。具体的には、footpadに局所的な免疫を行い、リンパ節での抗体産生能について評価するために、ELISAを用いて検討した。前記検討は、図4(A)に示すように行った。具体的には、抗原として、100μg 卵白アルブミン(OVA、シグマ社製)およびSigma Adjuvant System(SAS、シグマ社製)を1:1で混合した混合物を調製した。前記調製後、WTマウスおよびArf1-BKOマウスのfootpadに前記混合物を投与した。さらに、1回目の投与の3週間後に、前記WTマウスおよび前記Arf1-BKOマウスのfootpadに前記混合物を投与した。そして、2回目の投与のさらに2週間後に、各マウスの全採血を行った。前記全採血で得た血液から血清を調製後、得られた血清をリン酸緩衝液(PBS)で希釈し、OVAに対する抗体価を測定した。前記OVAに対する抗体価の測定は、37℃で2時間の条件下で、血清(500倍希釈)を反応させ、前記反応後、37℃で30分の条件下で、2次抗体HRP標識Anti-マウスIg(3000倍希釈、GEヘルスケア社製)を反応させた。前記反応後、プレートリーダー(Bio-Rad社製)で吸収波長450nmにおける吸光度を測定した。これらの結果を図7(B)に示す。
【0126】
図7(B)は、ELISAによる、OVA特異的な抗体産生の結果を示したグラフである。図7(B)において、縦軸は、吸光度(OD)を示し、横軸は、マウスの種類を示す。Arf1-BKOマウスの血清では、WTマウスの血清と比べて、OVA特異的な抗体産生は、見られなかった。
【0127】
(2)膝窩リンパ節における、B細胞特異的Arf1欠損B細胞の分化の検討
前記実施例2(1)の結果を踏まえ、免疫によって肥大した膝窩リンパ節(pLN)における、B細胞の分化を評価するために、フローサイトメトリーを用いた。具体的には、前記実施例2(1)で免疫したArf1コンディッショナルノックアウトマウス、およびコントロールマウス(WT)から肥大した膝窩リンパ節を採取した。前記膝窩リンパ節は、77μmのナイロンメッシュで挟み、シリンジのゴム部分でホモジナイズを行った。その後、コニカルチューブに細胞を回収した。前記回収後、前記膝窩リンパ節由来の細胞を、ブロッキング抗体(Clone:2.4G2、BD Biosciences(BD)社製)でブロッキングした。前記ブロッキング後、前記膝窩リンパ節由来の細胞は、4℃で30分の条件下で、異なる蛍光色素で標識した、抗B220抗体(Clone:RA3-6B2、Biolegend社製)、抗GL7抗体(Clone:GL7、Biolegend社製)、biotin標識抗CD95抗体(抗Fas抗体、Clone:JO2、BD Biosciences社製)、抗PD-1抗体(Clone:RMP1-30、eBioscience社製)、抗CXCR5抗体(Clon:L138D7、Biolegend社製)、および7-AAD(7-amino-Actinomycin D)で染色した。蛍光活性化セルソーティング(FACS)解析は、FACSCanto II(BD社製)を用いて行った。7-AAD陽性の死細胞を除き、B220+GL7+Fas+のGC-B細胞(胚中心B細胞)画分、PD-1hiCXCR5+の濾胞ヘルパーT細胞画分に分類し、それぞれの割合を評価した。これらの結果を図8に示す。
【0128】
図8は、フローサイトメトリーによる、結果を示したグラフである。図8(A)は、WTおよびArf1-BKOにおける、7-AAD陽性の死細胞を除き、GL7およびFasを発現する細胞を評価したフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図8(B)は、図8(A)のフローサイトメトリーによる結果から、B220+ B細胞における、WTおよびArf1-BKOにおける胚中心B細胞の割合をプロットしたグラフである。図8(C)は、WTおよびArf1-BKOにおける、7-AAD陽性の死細胞を除き、PD-1およびCXCR5を発現する細胞を評価したフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図8(D)は、図8(C)のフローサイトメトリーによる結果から、WTおよびArf1-BKOにおける濾胞ヘルパーT細胞の割合をプロットしたグラフである。図8(A)において、縦軸は、GL7を示し、横軸は、Fasを示す。図8(B)において、縦軸は、B220+ B細胞におけるGC-B細胞数の割合を示し、横軸は、試料の種類を示す。図8(C)において、縦軸は、PD-1を示し、横軸は、CXCR5を示す。図8(D)において、縦軸は、濾胞ヘルパーT細胞数の割合を示し、横軸は、試料の種類を示す。図8(A)および図8(B)に示すように、WTに比べてArf1-BKOでは、免疫後の胚中心B細胞の割合が増加しないことがわかった。図8(C)および図8(D)に示すように、胚中心B細胞を刺激し分化を誘導する役割を有する濾胞ヘルパーT細胞の割合は、WTに比べてArf1-BKOでは少ないものの、維持されていることがわかった。以上の結果から、膝窩リンパ節では、Arf1の欠損において、免疫後の胚中心B細胞の割合が増加しないことがわかった。
【0129】
(3)膝窩リンパ節における、B細胞特異的Arf1欠損B細胞の胚中心B細胞への分化制御の検討
前記実施例2(2)の結果を踏まえ、胚中心の構造を解析するために、膝窩リンパ節の免疫染色を行った。具体的には、前記実施例2(1)で免疫したArf1コンディッショナルノックアウトマウス、およびコントロールマウス(WT)から肥大した膝窩リンパ節を採取した。前記採取後、前記膝窩リンパ節を、4℃の条件下で、10、20、および30%スクロール溶液に、この順番で置換した。前記置換後、O.C.Tコンパウンド(Sakura Finetechnical社製)で包埋し、-80℃の条件下で、凍結した。前記凍結後、クリオスタット(Leica Biosystems社製)を用いて、10μmの凍結切片を作成し、風乾した。前記風乾後、冷アセトンを用いて、3分間固定を行った。前記固定後、各抗体を用いて染色した。前記抗体は、biotin標識抗GL7抗体(Clone:GL-7、eBioscience社製)、PE標識抗IgD抗体(Clone:11-26c、eBioscience社製)、抗Desmin rabbit抗体(Clone:Y66、abcam社製)、Alexa Flour 488標識抗B220抗体(Clone:RA3-6B2、eBioscience社製)、PE標識抗CD138抗体(Clone: 281-2、BD Bioscience社製)、biotin標識抗LYVE-1抗体(Cat No:BAF2125、R&D Systems社製)を使用した。前記染色後、Permafluor mountant(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて封入し、試料を得た。その後、前記試料は、蛍光顕微鏡BZ-X800(キーエンス社製)で観察し、Adobe Photoshop CS6を用いて解析を行った。これらの結果を、図9に示す。
【0130】
図9は、免疫染色像を示す写真である。図9(A)において、左の写真は、WTの写真を示し、右の写真は、Arf1-BKOの写真を示し、GL7(胚中心B細胞マーカー)、IgD(B細胞マーカー)、およびDesminで染色した染色像を示す。図9(B)において、左側の写真は、WTの写真を示し、右側の写真は、Arf1-BKOの写真を示し、B220(B細胞マーカー)、CD138(形質細胞マーカー)、およびLYVE-1の染色像を示す。図9(A)において、矢印で示す破線で囲った箇所は、GL7の発現を示す。図9(B)において、矢印で示す破線で囲った箇所は、CD138の発現を示す。図9において、スケールバーは、500μmを示す。図9(A)に示すように、WTでは、胚中心が形成されているのに対して、Arf1-BKOでは、胚中心が形成されていないことがわかった。また、図9(B)に示すように、WTに対して、Arf1-BKOでは、形質細胞に分化した細胞が著しく少ないことがわかった。これらの結果から、Arf1を欠損したB細胞は、胚中心B細胞への分化が制御されており、これにより、形質細胞への分化が起こらないことがわかった。以上の結果から、Arf1は、膝窩リンパ節において、B細胞の胚中心B細胞への分化を制御し、抗原特異的抗体の産生を制御していることが示唆された。
【0131】
(4)パイエル板における、B細胞特異的Arf1欠損B細胞の胚中心B細胞への分化制御の検討
リンパ節に胚中心が形成されない場合でも、パイエル板では胚中心が形成されうることが報告されている(参考文献1)。前記実施例2(3)の結果から、Arf1欠損B細胞では、膝窩リンパ節での胚中心B細胞への分化が抑制されていることがわかったため、パイエル板でのB細胞の胚中心B細胞への分化が抑制されているか検討した。具体的には、免疫後のパイエル板における、B細胞の分化を評価するために、フローサイトメトリーを用いた。前記実施例2(2)の方法で、膝窩リンパ節の代わりにパイエル板を用いた以外は、同様の方法で行った。これらの結果を、図10に示す。
参考文献1:Biram, Adi et al. “B Cell Diversification Is Uncoupled from SAP-Mediated Selection Forces in Chronic Germinal Centers within Peyer's Patches.” Cell reports vol. 30,6 (2020): 1910-1922.e5. doi:10.1016/j.celrep.2020.01.032
【0132】
図10は、フローサイトメトリーによる、結果を示したグラフである。図10において、図10(A)は、WTおよびArf1-BKOにおける、7-AAD陽性の死細胞を除き、GL7およびFasを発現する細胞を評価したフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図10(B)は、図10(A)のフローサイトメトリーによる結果から、B220+ B細胞における、WTおよびArf1-BKOにおける胚中心B細胞の割合をプロットしたグラフである。図10(C)は、WTおよびArf1-BKOにおける、7-AAD陽性の死細胞を除き、PD-1およびCXCR5を発現する細胞を評価したフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図10(D)は、図10(C)のフローサイトメトリーによる結果から、WTおよびArf1-BKOにおける濾胞ヘルパーT細胞の割合をプロットしたグラフである。図10(A)において、縦軸は、GL7を示し、横軸は、Fasを示す。図10(B)において、縦軸は、B220+ B細胞における胚中心B細胞数の割合を示し、横軸は、試料の種類を示す。図10(C)において、縦軸は、PD-1を示し、横軸は、CXCR5を示す。図10(D)において、縦軸は、濾胞ヘルパーT細胞数の割合を示し、横軸は、試料の種類を示す。図10(A)および図10(B)に示すように、WTに比べてArf1-BKOでは、免疫後の胚中心B細胞の割合が少ないものの、維持されていることがわかった。図10(C)および図10(D)に示すように、胚中心B細胞を刺激し分化を誘導する役割を有する濾胞ヘルパーT細胞の割合は、WTに比べてArf1-BKOでは少ないものの、維持されていることがわかった。以上の結果から、パイエル板では、Arf1の欠損においても、免疫後の胚中心が形成されていることがわかった。
【0133】
(5)パイエル板における、B細胞特異的Arf1欠損B細胞の胚中心B細胞への分化制御の検討
前記実施例2(4)の結果を踏まえ、胚中心の構造を解析するために、パイエル板の免疫染色を行った。具体的には、前記実施例2(3)の方法で、膝窩リンパ節の代わりにパイエル板を用いた以外は、同様の方法で行った。これらの結果を、図11に示す。
【0134】
図11は、免疫染色像を示す写真である。図11(A)において、左の写真は、WTの写真を示し、右の写真は、Arf1-BKOの写真を示し、B220(B細胞マーカー)、GL7(胚中心B細胞マーカー)、およびDesminで染色した染色像を示す。図11(B)において、左の写真は、WTの写真を示し、右の写真は、Arf1-BKOの写真を示し、GL7の染色像を示す。図11(A)および図11(B)に示すように、WTおよびArf1-BKOにおいて、胚中心が形成されていることがわかった。これらの結果から、Arf1を欠損したB細胞では、パイエル板においてはB細胞の胚中心B細胞への分化が抑制されていないことがわかった。
【0135】
(6)パイエル板における、B細胞特異的Arf1欠損B細胞の胚中心B細胞への分化制御の検討
B細胞特異的Arf1の欠損によって、パイエル板における、B細胞の胚中心B細胞への分化が制御されていないか、さらに検討した。前記検討は、図12(A)に示すように行った。具体的には、内在性のB細胞を欠損した免疫不全マウスmblCre/Creマウスに、Arf1-BKOマウスの骨髄細胞を移植し、移植2か月後のマウスのパイエル板の細胞について、フローサイトメトリーを用いてB細胞の分化を評価した。前記フローサイトメトリーには、前記実施例2(2)の方法で、膝窩リンパ節の代わりにパイエル板を用いたこと、抗体に異なる蛍光色素で標識した抗B220抗体、抗H57抗体(Cat No:H57-597, BioLegend社製)、抗GL7抗体、およびbiotin標識抗CD95抗体を用いたこと以外は、同様の方法で行った。また、移植2か月後のマウスの糞便について、IgAの産生量についてELISAを用いて測定した。前記ELISAには、前記実施例1(5)と同様の方法で行った。これらの結果を図12(B)~(D)に示す。
【0136】
図12(B)の左のグラフは、Arf1-BKOマウスの骨髄細胞を移植したmblCre/Creマウスのパイエル板における、7-AAD陽性の死細胞を除き、B220およびH57を発現する細胞を評価したフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図12(B)の右のグラフは、図12(B)の左のグラフの結果から、B細胞をソートし、GL7およびFasを発現するB細胞を評価したフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図12(C)は、図12(B)のフローサイトメトリーによる結果から、B220+ B細胞における、胚中心B細胞(GL7+Fas+)の割合をプロットしたグラフである。図12(B)の左のグラフにおいて、縦軸は、B220の蛍光強度を示し、横軸は、H57の蛍光強度を示す。図12(B)の右のグラフにおいて、縦軸は、GL7を示し、横軸は、Fasを示す。図12(C)において、縦軸は、B220+ B細胞における胚中心B細胞数の割合を示す。図12(B)および図12(C)に示すように、Arf1-BKOマウスの骨髄細胞を移植したmblCre/Creマウスにおいて、胚中心B細胞が検出された。
【0137】
図12(D)は、糞便調製物におけるイムノグロブリンIgAを定量した結果を示したグラフである。図12(D)において、縦軸は、IgAの産生量を示し、横軸はマウスの種類を示す。図12(D)に示すように、mblCre/Creマウスでは、IgAの産生はほぼ見られないのに対し、Arf1-BKOマウスの骨髄細胞を移植したmblCre/Creマウス(Arf1-BKO BMT)では、IgAの産生が見られた。これらの結果から、Arf1を欠損したB細胞は、パイエル板において、胚中心が形成され、IgAを産生できることがわかった。
【0138】
(7)パイエル板における、B細胞特異的Arf1欠損B細胞のイムノグロブリンクラスの検討
パイエル板において、胚中心が形成されることがわかったため、B細胞特異的Arf1の欠損B細胞のパイエル板における、B細胞のイムノグロブリンクラスについて、検討した。具体的には、免疫後のパイエル板における、B細胞のイムノグロブリンクラスを評価するために、フローサイトメトリーを用いた。前記実施例2(2)の方法で、膝窩リンパ節の代わりにパイエル板を用いたこと、抗体に抗GL7抗体、蛍光標識IgA抗体(Ca No:11-44-2、Southern Biotech社製)、およびIgG1抗体(Ca No:A85-1、BD Biosciences社製)を用いた以外は、同様の方法で行った。これらの結果を、図13に示す。
【0139】
図13は、フローサイトメトリーによる、結果を示したグラフである。図13(A)は、WTおよびArf1-BKOにおける、7-AAD陽性の死細胞を除き、GL7およびIgAを発現する細胞を評価したフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図13(B)は、図13(A)のフローサイトメトリーによる結果から、B220+ B細胞における、WTおよびArf1-BKOにおけるIgA+胚中心B細胞の割合をプロットしたグラフである。図13(C)は、WTおよびArf1-BKOにおける、7-AAD陽性の死細胞を除き、GL7およびIgG1を発現する細胞を評価したフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図13(D)は、図13(C)のフローサイトメトリーによる結果から、WTおよびArf1-BKOにおけるIgG1+胚中心B細胞の割合をプロットしたグラフである。図13(A)において、縦軸は、GL7を示し、横軸は、IgAを示す。図13(B)において、縦軸は、B220+ B細胞におけるIgA+胚中心B細胞数の割合を示し、横軸は、細胞の種類を示す。図13(C)において、縦軸は、GL7を示し、横軸は、IgG1を示す。図13(D)において、縦軸は、IgG1+胚中心B細胞数の割合を示し、横軸は、細胞の種類を示す。図13(A)および図13(B)に示すように、WTおよびArf1-BKOでは、免疫後のIgA+胚中心B細胞の割合は同じぐらいであることがわかった。図13(C)および図13(D)に示すように、WTに比べてArf1-BKOでは、IgG1+胚中心B細胞の割合は、顕著に少ないことがわかった。以上の結果から、胚中心B細胞のIgAへのクラススイッチは、Arf1非依存的に行われていることがわかった。また、Arf1は、胚中心B細胞のIgG1へのクラススイッチを、促進していることが示唆された。
【0140】
(8)B細胞特異的Arf1欠損B細胞のIgG1クラススイッチの制御の検討
Arf1は、胚中心B細胞のIgG1へのクラススイッチを、促進していることが示唆されたため、Arf1によって、胚中心B細胞のIgG1へのクラススイッチが制御されているか検討した。具体的には、in vitroで、脾臓由来のB細胞を、IgAまたはIgG1にクラススイッチする系を確立し、前記検討を行った。WTのB細胞(CD45.1)およびArf1欠損B細胞(CD45.1)を、1:1で混合した。前記混合後、IgA誘導条件下またはIgG1誘導条件下で、3日間培養を行った。前記IgA誘導条件は、αCD40(10μg/ml)、IL-21(10ng/ml)、IL-5(10ng/ml)、TGFβ(1ng/ml)、BAFF(100ng/ml)、およびレチノイン酸(RA)(10nmol/l)を含む培養液の存在下での培養とした。前記IgG1誘導条件は、αCD40(10μg/ml)、IL-21(10ng/ml)、IL-4(10ng/ml)を含む培養液の存在下での培養とした。前記培養後、クラススイッチした細胞について、フローサイトメトリーを用いて解析を行った。前記フローサイトメトリーにおいて、抗体は、抗IgM抗体(Cat No:RMM-1、Bio Legend社製)、IgA抗体、およびIgG1抗体を用いた。これらの結果を図14に示す。
【0141】
図14は、フローサイトメトリーによる、結果を示したグラフである。図14において、図14(A)は、IgG1またはIgAへのクラススイッチを評価したフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図14(A)において、左列のヒストグラムは、0日目の各細胞の分布を示すグラフであり、真ん中の列のドットプロットは、IgG1(上段)またはIgA(下段)を発現する細胞を評価したフローサイトメトリーの結果を示すグラフであり、右列のヒストグラムは、3日目のCD45.1陽性または陰性細胞の割合を示すグラフである。図14(B)は、図14(A)のフローサイトメトリーによる結果から、WTに対するArf1欠損B細胞の比(KO/WT)を取り、さらに0日目のKO/WTに対する比を1としたときの、IgG1およびIgAへのクラススイッチを示したグラフである。図14(A)の真ん中の列の上段のグラフにおいて、縦軸は、IgMを示し、横軸は、IgG1を示す。図14(A)の真ん中の列の下段のグラフにおいて、縦軸は、IgMを示し、横軸は、IgAを示す。図14(B)において、縦軸は、0日目のKO/WTに対する3日目のKO/WTの相対値を示し、横軸は、イムノグロブリンの種類を示す。図14に示すように、WTおよびArf1欠損B細胞では、IgA+B細胞の比率は1:1であった。それに対して、Arf1欠損B細胞では、IgG1+B細胞はほとんど見られなかった。以上の結果から、Arf1を欠損したB細胞では、IgG1への分化誘導過程において、細胞死が引き起こされることがわかった。
【0142】
以上、実施形態および実施例を参照して本開示を説明したが、本開示は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0143】
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
<液性免疫応答の制御剤>
(付記1)
ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性化物質またはArf1の活性抑制物質を含む、液性免疫応答の制御剤。
(付記2)
前記Arf1の活性化物質は、Arf1のアゴニスト、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性化物質、GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性抑制物質、または恒常活性型Arf1である、付記1に記載の制御剤。
(付記3)
前記GEFは、ADPリボシル化因子グアニンヌクレオチド交換因子1(ADP Ribosylation Factor Guanine Nucleotide Exchange Factor 1:ArfGEF1)である、付記2に記載の制御剤。
(付記4)
前記活性抑制物質は、Arf1のアンタゴニスト、Arf1の発現抑制核酸分子、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性抑制物質、またはGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性化物質である、付記1から3のいずれかに記載の制御剤。
<B細胞の胚中心B細胞への分化制御剤>
(付記5)
ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性化物質またはArf1の活性抑制物質を含む、B細胞の胚中心B細胞への分化制御剤。
(付記6)
前記Arf1の活性化物質は、Arf1のアゴニスト、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性化物質、GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性抑制物質、または恒常活性型Arf1である、付記5に記載の制御剤。
(付記7)
前記GEFは、ADPリボシル化因子グアニンヌクレオチド交換因子1(ADP Ribosylation Factor Guanine Nucleotide Exchange Factor 1:ArfGEF1)である、付記6に記載の制御剤。
(付記8)
前記活性抑制物質は、Arf1のアンタゴニスト、Arf1の発現抑制核酸分子、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性抑制物質、またはGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性化物質である、付記5から7のいずれかに記載の制御剤。
<IgG1+B細胞の細胞死の制御剤>
(付記9)
ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性化物質またはArf1の活性抑制物質を含む、IgG1+B細胞の細胞死の制御剤。
(付記10)
前記Arf1の活性化物質は、Arf1のアゴニスト、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性化物質、GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性抑制物質、または恒常活性型Arf1である、付記9に記載の制御剤
(付記11)
前記GEFは、ADPリボシル化因子グアニンヌクレオチド交換因子1(ADP Ribosylation Factor Guanine Nucleotide Exchange Factor 1:ArfGEF1)である、付記10に記載の制御剤。
(付記12)
前記活性抑制物質は、Arf1のアンタゴニスト、Arf1の発現抑制核酸分子、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性抑制物質、またはGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性化物質である、付記9から11のいずれかに記載の制御剤。
<液性免疫応答の制御組成物>
(付記13)
ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性化物質またはArf1の活性抑制物質と、標的抗原として免疫原とを含む、標的抗原に対する液性免疫応答の制御組成物。
(付記14)
前記Arf1の活性化物質は、Arf1のアゴニスト、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性化物質、GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性抑制物質、または恒常活性型Arf1であり、
前記液性免疫応答の制御は、液性免疫応答の増強である、付記13に記載の組成物。
(付記15)
前記GEFは、ADPリボシル化因子グアニンヌクレオチド交換因子1(ADP Ribosylation Factor Guanine Nucleotide Exchange Factor 1:ArfGEF1)である、付記14に記載の組成物。
(付記16)
前記活性抑制物質は、Arf1のアンタゴニスト、Arf1の発現抑制核酸分子、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性抑制物質、またはGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性化物質であり、
前記液性免疫応答の制御は、液性免疫応答の抑制である、付記13から15のいずれかに記載の組成物。
(付記17)
前記標的抗原は、免疫疾患の抗原である、付記13から16のいずれかに記載の組成物。
<B細胞の胚中心B細胞への分化制御組成物>
(付記18)
ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性化物質またはArf1の活性抑制物質と、標的抗原として免疫原とを含む、B細胞の胚中心B細胞への分化制御組成物。
(付記19)
前記Arf1の活性化物質は、Arf1のアゴニスト、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性化物質、GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性抑制物質、または恒常活性型Arf1であり、
前記B細胞の胚中心B細胞への分化制御は、B細胞の胚中心B細胞への分化促進である、付記18に記載の組成物。
(付記20)
前記GEFは、ADPリボシル化因子グアニンヌクレオチド交換因子1(ADP Ribosylation Factor Guanine Nucleotide Exchange Factor 1:ArfGEF1)である、付記19に記載の組成物。
(付記21)
前記活性抑制物質は、Arf1のアンタゴニスト、Arf1の発現抑制核酸分子、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性抑制物質、またはGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性化物質であり、
前記B細胞の胚中心B細胞への分化制御は、B細胞の胚中心B細胞への分化抑制である、付記18から20のいずれかに記載の組成物。
(付記22)
前記標的抗原は、免疫疾患の抗原である、付記18から21のいずれかに記載の組成物。
<IgG1+B細胞の細胞死の制御組成物>
(付記23)
ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性化物質またはArf1の活性抑制物質と、標的抗原として免疫原とを含む、IgG1+B細胞の細胞死の制御組成物。
(付記24)
前記Arf1の活性化物質は、Arf1のアゴニスト、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性化物質、GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性抑制物質、または恒常活性型Arf1であり、
前記IgG1+B細胞の細胞死の制御は、IgG1+B細胞の細胞死の抑制である、付記23に記載の組成物。
(付記25)
前記GEFは、ADPリボシル化因子グアニンヌクレオチド交換因子1(ADP Ribosylation Factor Guanine Nucleotide Exchange Factor 1:ArfGEF1)である、付記24に記載の組成物。
(付記26)
前記活性抑制物質は、Arf1のアンタゴニスト、Arf1の発現抑制核酸分子、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の活性抑制物質、またはGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の活性化物質であり、
前記IgG1+B細胞の細胞死の制御は、IgG1+B細胞の細胞死の促進である、付記23から25のいずれかに記載の組成物。
(付記27)
前記標的抗原は、免疫疾患の抗原である、付記23から26のいずれかに記載の組成物。
<液性免疫応答の制御候補物質のスクリーニング方法>
(付記28)
被検物質から、ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性を増強または抑制する被検物質を、液性免疫応答の制御候補物質として選択する選択工程を含む、液性免疫応答の制御候補物質のスクリーニング方法。
(付記29)
前記Arf1の発現系に、前記被検物質を共存させる共存工程と、
前記発現系におけるArf1の活性を検出する検出工程と、
前記Arf1の活性を増強または抑制する被検物質を、前記液性免疫応答の制御候補物質として選択する選択工程とを含む、付記28に記載のスクリーニング方法。
(付記30)
前記Arf1の発現系は、非ヒト動物である、付記29に記載のスクリーニング方法。
(付記31)
前記検出工程では、前記非ヒト動物における抗体量を検出することにより、前記Arf1の活性を検出する、付記30に記載のスクリーニング方法。
(付記32)
前記被検物質が、低分子化合物、ペプチド、タンパク質、および核酸からなる群から選択された少なくとも一つである、付記28から31のいずれかに記載のスクリーニング方法。
<B細胞の胚中心B細胞への分化の制御候補物質のスクリーニング方法>
(付記33)
被検物質から、ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性を増強または抑制する被検物質を、B細胞の胚中心B細胞への分化の制御候補物質として選択する選択工程を含む、B細胞の胚中心B細胞への分化の制御候補物質のスクリーニング方法。
(付記34)
前記Arf1の発現系に、前記被検物質を共存させる共存工程と、
前記発現系におけるArf1の活性を検出する検出工程と、
前記Arf1の活性を増強または抑制する被検物質を、前記B細胞の胚中心B細胞への分化の制御候補物質として選択する選択工程とを含む、付記33に記載のスクリーニング方法。
(付記35)
前記Arf1の発現系は、非ヒト動物である、付記34に記載のスクリーニング方法。
(付記36)
前記検出工程では、前記非ヒト動物における胚中心B細胞を検出することにより、前記Arf1の活性を検出する、付記35に記載のスクリーニング方法。
(付記37)
前記被検物質が、低分子化合物、ペプチド、タンパク質、および核酸からなる群から選択された少なくとも一つである、付記33から36のいずれかに記載のスクリーニング方法。
<IgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質のスクリーニング方法>
(付記38)
被検物質から、ADPリボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1:Arf1)の活性を増強または抑制する被検物質を、IgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質として選択する選択工程を含む、IgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質のスクリーニング方法。
(付記39)
前記Arf1の発現系に、前記被検物質を共存させる共存工程と、
前記発現系におけるArf1の活性を検出する検出工程と、
前記Arf1の活性を増強または抑制する被検物質を、前記IgG1+B細胞の細胞死の制御候補物質として選択する選択工程とを含む、付記38に記載のスクリーニング方法。
(付記40)
前記Arf1の発現系は、非ヒト動物である、付記39に記載のスクリーニング方法。
(付記41)
前記検出工程では、前記非ヒト動物におけるIgG1+B細胞を検出することにより、前記Arf1の活性を検出する、付記40に記載のスクリーニング方法。
(付記42)
前記被検物質が、低分子化合物、ペプチド、タンパク質、および核酸からなる群から選択された少なくとも一つである、付記38から41のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【産業上の利用可能性】
【0144】
以上のように、本開示によれば、B細胞全体の除去と比較して、自然抗体への影響を低減し、かつ、抗原特異的な抗体産生を制御できる。このため、本開示は、医薬分野、臨床分野および生化学分野において極めて有用である。
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【配列表】
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