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特開2024-100616円すいころ軸受の組付け治具、複列円すいころ軸受の組付け治具、及び、複列円すいころ軸受の組付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100616
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】円すいころ軸受の組付け治具、複列円すいころ軸受の組付け治具、及び、複列円すいころ軸受の組付け方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 43/04 20060101AFI20240719BHJP
   F16C 19/38 20060101ALI20240719BHJP
   F16C 35/063 20060101ALI20240719BHJP
   B23P 21/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
F16C43/04
F16C19/38
F16C35/063
B23P21/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004735
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 遼太
【テーマコード(参考)】
3C030
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3C030CA02
3J117AA02
3J117AA06
3J117HA04
3J701AA16
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA77
3J701DA20
3J701FA44
3J701FA46
(57)【要約】
【課題】円すいころ軸受の組付け時、すなわち、円すいころ軸受に回転部材が圧入される際に、隣り合う円すいころと円すいころとの周方向の間隔のばらつき(不揃い)を解消でき、円すいころが保持器に拘束(ロック)されてしまうことを防止することが可能な円すいころ軸受の組付け治具を提供する。
【解決手段】円すいころ軸受の組付け治具10Aは、円環状に形成された円環部11と、円環部11の天面11cに、周方向に沿って等間隔に並べて配置され、かつ、軸方向に伸びるように突設された複数(円すいころ4と同じ数)の爪部12とを備える。複数の爪部12それぞれは、組付け時に、隣り合う円すいころ4と円すいころ4との間に嵌入され、かつ、基端部の周方向の長さが、すべての隣り合う円すいころ4の周方向の間隔が等しくなるように設定されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に転動自在に配された複数の円すいころと、前記複数の円すいころを保持する保持器と、を備えて構成される円すいころ軸受が回転部材に組付けられる際に用いられる円すいころ軸受の組付け治具であって、
円環状に形成された円環部と、
前記円環部の天面に、周方向に沿って等間隔に並べて配置され、かつ、軸方向に伸びるように突設された前記円すいころと同じ数の爪部と、を備え、
複数の前記爪部それぞれは、組付け時に、隣り合う円すいころと円すいころとの間に嵌入され、かつ、基端部の周方向の長さが、すべての隣り合う円すいころの周方向の間隔が等しくなるように設定されていることを特徴とする円すいころ軸受の組付け治具。
【請求項2】
前記爪部は、先端部が基端部よりも細く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の円すいころ軸受の組付け治具。
【請求項3】
前記爪部が突設された前記円環部の天面は、組付けられる際に、前記円すいころの大端面と前記内輪の大鍔との間の隙間が詰まるように、前記内輪の大鍔の内面と略面一となるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の円すいころ軸受の組付け治具。
【請求項4】
内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に転動自在に配された複数の円すいころと、前記複数の円すいころを保持する保持器と、を備えて構成される円すいころ軸受が、対となって、対向して配置された複列円すいころ軸受が回転部材に組付けられる際に用いられる複列円すいころ軸受の組付け治具であって、
組付け時に、対向して配置される、一対の請求項3に記載された円すいころ軸受の組付け治具を備えることを特徴とする複列円すいころ軸受の組付け治具。
【請求項5】
請求項4に記載された複列円すいころ軸受の組付け治具を構成する一方の円すいころ軸受の組付け治具を、隣り合う円すいころと円すいころとの間に前記爪部が嵌まるように、前記複列円すいころ軸受を構成する一方の円すいころ軸受に取付ける第1工程と、
前記複列円すいころ軸受の組付け治具を構成する他方の円すいころ軸受の組付け治具を、隣り合う円すいころと円すいころとの間に前記爪部が嵌まるように、前記複列円すいころ軸受を構成する他方の円すいころ軸受に取付ける第2工程と、
前記複列円すいころ軸受の組付け治具が取付けられた複列円すいころ軸受に回転部材を圧入する第3工程と、
前記複列円すいころ軸受の組付け治具を取り外す第4工程と、を備えることを特徴とする複列円すいころ軸受の組付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円すいころ軸受の組付け治具、及び、該円すいころ軸受の組付け治具を用いた複列円すいころ軸受の組付け治具、並びに、複列円すいころ軸受の組付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、ドライブピニオンシャフトやハブ等の回転部材を回転自在に軸支するため、ラジアル荷重と両方向のアキシアル荷重を同時に支えることができる複列円すいころ軸受(ダブルテーパローラベアリング)が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。複列円すいころ軸受は、例えば、内輪と、外輪と、内輪と外輪との間に転動自在に配された複数の円すいころと、複数の円すいころを保持する保持器とを備えて構成される円すいころ軸受が、対となって、対向して配置されて構成される。
【0003】
通常、複列円すいころ軸受は、耐久性(長寿命化)や信頼性確保等の観点から、内外輪-円すいころ間に予圧をかけて使用される。例えば、複列円すいころ軸受にシャフト等の回転部材を組付ける際に、複列円すいころ軸受(内輪)にシャフト等の回転部材を圧入して内輪径を拡大することにより、予圧が付与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-283805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複列円すいころ軸受の組付け時に、隣り合う円すいころと円すいころとの間隔が不揃い(不等間隔)になっている状態(ばらついている状態)でシャフト等の回転部材が圧入されると、円すいころが保持器に拘束(ロック)されてしまうことが起こり得る。そして、その後、このような状態(すなわち円すいころが保持器に拘束された状態)のまま回転部材が運転されると(複列円すいころ軸受が用いられると)、例えば、円すいころや内輪などが局所摩耗し、異音等の発生に至るおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、円すいころ軸受又は複列円すいころ軸受(以下「円すいころ軸受等」という)の組付け時、すなわち、円すいころ軸受等に回転部材が圧入される際に、隣り合う円すいころと円すいころとの間隔のばらつき(不揃い)を解消でき、円すいころが保持器に拘束(ロック)されてしまうことを防止することが可能な円すいころ軸受の組付け治具、及び、該円すいころ軸受の組付け治具を用いた複列円すいころ軸受の組付け治具、並びに、複列円すいころ軸受の組付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る円すいころ軸受の組付け治具は、内輪と、外輪と、内輪と外輪との間に転動自在に配された複数の円すいころと、複数の円すいころを保持する保持器とを備えて構成される円すいころ軸受が回転部材に組付けられる際に用いられる円すいころ軸受の組付け治具であって、円環状に形成された円環部と、円環部の天面に、周方向に沿って等間隔に並べて配置され、かつ、軸方向に伸びるように突設された円すいころと同じ数の爪部とを備え、複数の爪部それぞれが、組付け時に、隣り合う円すいころと円すいころとの間に嵌入され、かつ、基端部の周方向の長さが、すべての隣り合う円すいころの周方向の間隔が等しくなるように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、円すいころ軸受等の組付け時、すなわち、円すいころ軸受等に回転部材が圧入される際に、隣り合う円すいころと円すいころとの間隔のばらつき(不揃い)を解消でき、円すいころが保持器に拘束(ロック)されてしまうことを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る複列円すいころ軸受の組付け治具を構成する一方の円すいころ軸受の組付け治具の構成を示す図である。
図2】複列円すいころ軸受(一方の円すいころ軸受)に取付けられた複列円すいころ軸受の組付け治具(一方の円すいころ軸受の組付け治具)を示す部分断面図(保持器省略)である。
図3】複列円すいころ軸受(一方の円すいころ軸受)に取付けられた複列円すいころ軸受の組付け治具(一方の円すいころ軸受の組付け治具)の要部を拡大して示した断面図である。
図4】実施形態に係る複列円すいころ軸受の組付け治具を用いた複列円すいころ軸受の組付け方法を説明するための図である。
図5】複列円すいころ軸受の構成を示す断面図である。
図6図5のVI-VI線に沿った断面図である。
図7】ドライブピニオンシャフトに適用された複列円すいころ軸受の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。なお、本実施形態では、複列円すいころ軸受の組付け時、すなわち、複列円すいころ軸受にシャフト等の回転部材が圧入される際に用いられる複列円すいころ軸受の組付け治具を例にして説明する。
【0011】
まず、図1~3、及び、図5~7を併せて用いて、実施形態に係る複列円すいころ軸受の組付け治具10の構成について説明する。図1は、複列円すいころ軸受の組付け治具10を構成する一方の円すいころ軸受の組付け治具10Aの構成を示す図である。図2は、複列円すいころ軸受1(一方の円すいころ軸受1A)に取付けられた複列円すいころ軸受の組付け治具10(一方の円すいころ軸受の組付け治具10A)を示す部分断面図(保持器5省略)である。図3は、複列円すいころ軸受1(一方の円すいころ軸受1A)に取付けられた複列円すいころ軸受の組付け治具10(一方の円すいころ軸受の組付け治具10A)の要部を拡大して示した断面図である。図5は、複列円すいころ軸受1の構成を示す断面図である。図6は、図5のVI-VI線に沿った断面図である。図7は、ドライブピニオンシャフト100に適用された複列円すいころ軸受1の構成を示す断面図である。
【0012】
複列円すいころ軸受(ダブルテーパローラベアリング)1は、ラジアル荷重と両方向のアキシアル荷重を同時に支えることができ、例えば、ドライブピニオンシャフトやハブ等の回転部材100を回転自在に軸支する(図7参照)。なお、図7では、無段変速機(CVT)のドライブピニオンシャフト100に適用された複列円すいころ軸受1を示した。
【0013】
複列円すいころ軸受1は、内輪2と、外輪3と、内輪2と外輪3との間に転動自在に配された複数(例えば18個)の円すいころ4と、複数の円すいころ4を周方向に沿って保持する保持器5とを備えて構成される2個の円すいころ軸受1A、1B(一方の円すいころ軸受1A及び他方の円すいころ軸受1B)が、対となって、対向して配置されて構成される。例えば、本実施形態に係る複列円すいころ軸受1は、一対の内輪2と、一個の外輪3と、一方の内輪2と外輪3との間、及び、他方の内輪2と外輪3との間それぞれに転動自在に配された複数の円すいころ4と、複数の円すいころ4を周方向に沿って所定間隔毎に保持する一対の保持器5とを備えて構成される、外向き形の複列円すいころ軸受である。
【0014】
より詳細には、内輪2は、その外径面に円すい状の軌道面を有し、軌道面の大端側(大径側)には、外径側へ突出する大鍔(鍔部)2aが形成されている。また、円すいころ4が小端側へ脱落することを防止するために、内輪2の小端側(小径側)には小鍔(鍔部)2bが形成されている。
【0015】
外輪3はその内径面に一対の円すい状の軌道面を有し、この軌道面と内輪2の軌道面とを、保持器5で保持された複数の円すいころ4が転動(自転しながら公転)する。
【0016】
保持器5は、一対の環状部(大径側環状部及び小径側環状部)と、該環状部(大径側環状部と小径側環状部)を連結する柱部とを備え、周方向に沿って隣合う柱部間に形成された収容部(ポケット)5aに円すいころ4を回転自在に収容する。
【0017】
各円すいころ軸受1A、1Bでは、円すいころ4と内外輪の軌道面とが線接触しており、内・外輪軌道面およびころ中心が軸心上の一点で一致するよう設計されている。
【0018】
ところで、通常、複列円すいころ軸受1は、耐久性(長寿命化)や信頼性確保等の観点から、内外輪-円すいころ間に予圧をかけて使用される。例えば、複列円すいころ軸受1にシャフト等の回転部材100を組付ける際に、複列円すいころ軸受1(内輪2)にシャフト等の回転部材100を圧入して内輪径を拡大することにより、予圧が付与される。
【0019】
しかしながら、複列円すいころ軸受1の組付け時に、隣り合う円すいころ4と円すいころ4との間隔が不揃い(不等間隔)になっている状態(ばらついている状態)、すなわち円すいころ4が適正な位置にない状態でシャフト等の回転部材100が圧入されると、円すいころ4が保持器5に拘束(ロック)されてしまうことが起こり得る。そして、その後、このような状態(すなわち円すいころ4が保持器5に拘束された状態)のまま回転部材100が運転されると(複列円すいころ軸受1が用いられると)、例えば、円すいころ4や内輪2などが局所摩耗し、異音等の発生に至るおそれがある。
【0020】
そこで、複列円すいころ軸受1の組付け時、すなわち、複列円すいころ軸受1に回転部材100が圧入される際に、複列円すいころ軸受の組付け治具10が用いられる。
【0021】
ここで、複列円すいころ軸受の組付け治具(以下、単に「組付け治具」ということもある)10は、複列円すいころ軸受1の組付け時、すなわち、複列円すいころ軸受1に回転部材100が圧入される際に、隣り合う円すいころ4と円すいころ4との周方向の間隔のばらつき(不揃い)を解消して、すなわち等ピッチ化(円すいころ4を適正な位置に整列)して、円すいころ4が保持器5に拘束(ロック)されることを防止する機能を有している。
【0022】
複列円すいころ軸受の組付け治具10は、組付け時に、対向して配置される、一対の円すいころ軸受の組付け治具10A、10B(一方の(第1の)円すいころ軸受の組付け治具10A及び他方の(第2の)円すいころ軸受の組付け治具10B)を備えている。一方の円すいころ軸受の組付け治具10A(以下、「一方の組付け治具10A」ということもある)は、複列円すいころ軸受1を構成する一方の円すいころ軸受1Aに取付けられる(セットされる)。同様に、他方の円すいころ軸受の組付け治具10B(以下、「他方の組付け治具10B」ということもある)は、複列円すいころ軸受1を構成する他方の円すいころ軸受1Bに取付けられる(セットされる)。なお、一方の組付け治具10Aと他方の組付け治具10Bとは同じ形状(構成)であるので、次に、一方の組付け治具10Aを例にしてその構成を説明する。
【0023】
一方の組付け治具(コロ整列フォーク付圧入アダプタ)10Aは、主として、円環部11と、爪部12とを有して構成されている。
【0024】
円環部11は、円環状に形成されている。より具体的には、円環部11は、円環状に形成された円環本体部11aと、該円環本体部11aの上面に円環状に凸設された円環凸部11bとを有して構成されている。円環本体部11aは、後述する圧入機200の定盤(台座)201に取付けられる(嵌め込まれる)。円環凸部11bは、径方向の長さ(奥行/厚み)が、円環本体部11aよりも短く(薄く)、図3に示されるように、内輪2と保持器5との間に入り込むことができる長さ(厚み)に設定されている。
【0025】
また、爪部12が突設される円環部11の円環凸部11bの天面(上端面)11cは、円すいころ4の上下位置(軸方向の位置)を適正な位置に規制するため、図3に示されるように、組付け時に、円すいころ4の大端面4aと内輪2の大鍔2aとの間の隙間が詰まるように、内輪2の大鍔2aの内面と略面一となるように(又はそれよりも低くなるように)形成されている。
【0026】
爪部(フォーク)12は、円環部11を構成する円環凸部11bの天面11cに、周方向に沿って等間隔に(等ピッチで)並べて配置され、かつ、軸方向に伸びるように突設されている。爪部12は、円すいころ4と同じ数(例えば18)だけ設けられている。
【0027】
複数の爪部12それぞれは、組付け時に、互いに隣り合う円すいころ4と円すいころ4との間に嵌入される。複数の爪部12それぞれは、基端部(根元)の周方向の長さ(幅)が、すべての隣り合う円すいころ4の周方向の間隔が等しくなるように(等ピッチとなるように)設定されている。すなわち、爪部12は、円すいころ4を適正な位置に整列する。
【0028】
爪部12の基端部は、例えば角柱状に形成されている。また、爪部12は、隣り合う円すいころ4の間に嵌入し易くするために、先端部が基端部(根元)よりも細く形成されている。すなわち、爪部12は、先細り形状に形成されている。なお、爪部12は、先端が、少なくとも周方向に細くなっていればよい。
【0029】
複列円すいころ軸受の組付け治具10(円環部11、爪部12)は、円すいころ4等を傷つけないように、例えば、樹脂(エンジニアリングプラスチック)等から形成される。
【0030】
次に、図4を参照しつつ、複列円すいころ軸受の組付け治具10を用いた複列円すいころ軸受の組付け方法について説明する。図4は、複列円すいころ軸受の組付け治具10を用いた複列円すいころ軸受の組付け方法(第1工程~第3工程)を説明するための図である。
【0031】
複列円すいころ軸受1の組付け時、すなわち、複列円すいころ軸受1に回転部材(シャフト)100が圧入される際に、まず、第1工程では、圧入機200の定盤(台座)201に取付けられた(嵌め込まれた)複列円すいころ軸受の組付け治具10を構成する一方の組付け治具10Aに、隣り合う円すいころ4と円すいころ4との間に爪部12が嵌まるように、複列円すいころ軸受1を構成する一方の円すいころ軸受1Aが取付けられる(セットされる)。これにより、一方の円すいころ軸受1Aの円すいころ4が等ピッチ化される(円すいころ4が適正な位置に整列される)。
【0032】
次に、第2工程では、複列円すいころ軸受の組付け治具10を構成する他方の組付け治具10Bが、隣り合う円すいころ4と円すいころ4との間に爪部12が嵌まるように、複列円すいころ軸受1を構成する他方の円すいころ軸受1Bに取付けられる(セットされる)。ここで、他方の組付け治具10Bは、一方の組付け治具10Aと対向するように(すなわち、天地が逆になるように)取付けられる。これにより、他方の円すいころ軸受1Bの円すいころ4が等ピッチ化される(円すいころ4が適正な位置に整列される)。
【0033】
続いて、第3工程では、圧入機200の圧入シリンダ202により(圧入シリンダ202が下降して)、複列円すいころ軸受の組付け治具10(一方の組付け治具10A及び他方の組付け治具10B)が取付けられた複列円すいころ軸受1(一方の円すいころ軸受1A及び他方の円すいころ軸受1B)に回転部材(ドライブピニオンシャフト)100が圧入される。
【0034】
そして、その後、第4工程において、複列円すいころ軸受1から複列円すいころ軸受の組付け治具10が取り外される。すなわち、一方の円すいころ軸受1Aから一方の組付け治具10Aが取外され、他方の円すいころ軸受1Bから他方の組付け治具10Bが取外される。
【0035】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、円環状に形成された円環部11と、円環部11の天面11cに、周方向に沿って等間隔に並べて配置され、かつ、軸方向に伸びるように突設された複数(円すいころ4と同じ数)の爪部12とを備え、複数の爪部12それぞれが、組付け時に、隣り合う円すいころ4と円すいころ4との間に嵌入され、かつ、基端部の周方向の長さが、すべての隣り合う円すいころ4の周方向の間隔が等しくなるように設定されている。そのため、すべての隣り合う円すいころ4と円すいころ4との周方向の間隔を等しくそろえる(すなわち等ピッチ化して円すいころ4を適正な位置に整列する)ことができる。その結果、本実施形態によれば、複列円すいころ軸受1の組付け時、すなわち、複列円すいころ軸受1に回転部材100が圧入される際に、隣り合う円すいころ4と円すいころ4との(周方向の)間隔のばらつき(不揃い)を解消でき、円すいころ4が保持器5に拘束(ロック)されてしまうことを防止することが可能となる。
【0036】
そして、円すいころ4や内輪2などが局所摩耗することを防ぐことができ、異音等の発生を防止することが可能となる。
【0037】
本実施形態によれば、爪部12の先端部が基端部よりも細く形成されている。そのため、隣り合う円すいころ4の間(円すいころ4と円すいころ4との間)に爪部12を容易に嵌めることができる。
【0038】
本実施形態によれば、爪部12が突設された円環部11の円環凸部11bの天面11cが、組付け時に、円すいころ4の大端面4aと内輪2の大鍔2aとの間の隙間が詰まるように、内輪2の大鍔2aの内面と略面一となるように形成されている。そのため、円すいころ4の上下位置(軸方向の位置)を適正な位置に規制することができる。
【0039】
本実施形態によれば、組付け時に、対向して配置される、一対の組付け治具10A、10Bを備えている。すなわち、同形状の組付け治具10A、10Bを2個用いることにより、複列円すいころ軸受1に対応することができる。
【0040】
本実施形態に係る組付け方法によれば、一方の組付け治具10Aが、隣り合う円すいころ4と円すいころ4との間に爪部12が嵌まるように、一方の円すいころ軸受1Aに取付けられる第1工程と、他方の組付け治具10Bが、隣り合う円すいころ4と円すいころ4との間に爪部12が嵌まるように、他方の円すいころ軸受1Bに取付けられ第2工程と、一方の組付け治具10A及び他方の組付け治具10B(組付け治具10)が取付けられた複列円すいころ軸受1に回転部材100が圧入される第3工程と、一方の組付け治具10A及び他方の組付け治具10B(組付け治具10)が取外される第4工程とを備える。そのため、上述したように、本実施形態によれば、複列円すいころ軸受1の組付け時、すなわち、複列円すいころ軸受1に回転部材100が圧入される際に、隣り合う円すいころ4と円すいころ4との間隔のばらつき(不揃い)を解消でき、円すいころ4が保持器5に拘束(ロック)されてしまうことを防止することが可能となる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、外向き形(複列外輪使用)の複列円すいころ軸受1を例にして説明したが、本発明は、内向き形(複列内輪使用)の複列円すいころ軸受や、組合せ円すいころ軸受に適用する(対応する)こともできる。
【0042】
また、上記実施形態では、複列の円すいころ軸受1に適用した場合を例にして説明したが、本発明は、単列の円すいころ軸受に適用することもできる。なお、単列の円すいころ軸受に適用する際には、一方の円すいころ軸受の組付け治具10A(又は10B)のみを用いればよい。
【0043】
また、複列円すいころ軸受の組付け治具10の形状や、素材、サイズ等は、上記実施形態に限られることなく、例えば、適用される複列円すいころ軸受や要件等に応じて任意に変更することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 複列円すいころ軸受(ダブルテーパローラベアリング)
1A、1B 円すいころ軸受
2 内輪
2a 大鍔
2b 小鍔
3 外輪
4 円すいころ
4a 大端面
5 保持器
5a 収容部(ポケット)
10 複列円すいころ軸受の組付け治具
10A、10B 円すいころ軸受の組付け治具
11 円環部
11a 円環本体部
11b 円環凸部
11c 天面
12 爪部
100 回転部材(シャフト)
200 圧入機
201 定盤(台座)
202 圧入シリンダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7