(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100620
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60R 22/26 20060101AFI20240719BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240719BHJP
【FI】
B60R22/26
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004741
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝部 健一
【テーマコード(参考)】
3B087
3D018
【Fターム(参考)】
3B087BA19
3B087BD08
3B087BD09
3B087BD13
3B087CB12
3B087CB14
3B087DE06
3D018BA12
3D018CA03
3D018CB06
3D018CC04
3D018CD02
(57)【要約】
【課題】シート形態の変更に連動してバックル装置のシート前方側への突出を小さくすることができる車両用シートを得る。
【解決手段】車両用シート10は、着座面12Aを有するシートクッション12と、シートクッション12のシート後端側に配置され、背もたれ面14Aを有するシートバック14と、シートクッション12のシート幅方向の一方側に配置され、ウエビング52を介して車体に連結されるバックル装置50と、シートクッション12及びシートバック14の少なくとも一方をシート幅方向の軸周りに回動可能に支持する少なくとも一つの回転軸と、回転軸周りの回転力をシート後方側への引っ張り力に変換しバックル装置50に伝達する動力伝達部PW1と、を備えている。動力伝達部PW1は、シートクッション12又はシートバック14の回動に連動して、バックル装置50をシート後方側へ引き込む構成となっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座面を有するシートクッションと、
前記シートクッションのシート後端側に配置され、背もたれ面を有するシートバックと、
前記シートクッションのシート幅方向の一方側に配置され、ウエビングを介して車体に連結されるバックル装置と、
前記シートクッション及び前記シートバックの少なくとも一方をシート幅方向の軸周りに回動可能に支持する少なくとも一つの回転軸と、
前記回転軸周りの回転力をシート後方側への引っ張り力に変換し前記バックル装置に伝達する動力伝達部と、を備え、
前記動力伝達部は、前記シートクッション又は前記シートバックの回動に連動して、前記バックル装置をシート後方側へ引き込む、車両用シート。
【請求項2】
前記動力伝達部は、前記バックル装置をシート後方側へ引き込む際に、前記ウエビングを含む前記バックル装置の全長を短縮させる、請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記動力伝達部は、前記バックル装置をタング挿入方向の軸周りに回転させつつシート後方側へ引き込む、請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記回転軸は、前記シートクッションをシート幅方向の軸周りに回動可能に支持する第1回転軸と、前記シートバックをシート幅方向の軸周りに回動可能に支持する第2回転軸とを有し、
前記シートクッションは、前記第1回転軸周りに回動することにより、前記シートクッションに着座する乗員の臀部を支持する着座用位置と、前記着座面をシート前方側に向けて配置する跳上げ位置に設定可能に構成され、
前記シートバックは、前記第2回転軸周りに回動することにより、前記シートクッションに着座する乗員の背部を支持する背もたれ用位置と、前記背もたれ面をシート下方側に向けて配置する前倒れ位置に設定可能に構成されている、
請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいては、車室内の使用状態に応じてシート形態を変化させることができる種々の技術が知られている。このような技術を搭載するにあたり、シート形態を変化させた際に車両用シートの側方に設けられるバックル装置との干渉を低減させることが課題になる。
【0003】
下記特許文献1では、車両用シートの背もたれを前倒しして折り畳み状態にする際に、シートベルトバックルを前方に旋回させて収納位置に移動させることが提案されている。
【0004】
下記特許文献2では、車両用シートのシートクッションを前方に回動させて起立させた状態にする際に、シートクッションの前方への回動操作に伴ってシートベルトバックルが前方へ自動的に倒れるように構成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-306370号公報
【特許文献2】特開2005-145146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、バックル装置は、シート前方側への突出が大きいほどシートバックやシートクッションと干渉し易くなる。従って、シート形態の変更に連動して、バックル装置のシート前方側への突出を小さくすることが検討されている。上記特許文献1及び特許文献2に記載された技術では、この点について考慮されていないため、改善の余地がある。
【0007】
本発明は上記事実を考慮して、シート形態の変更に連動してバックル装置のシート前方側への突出を小さくすることができる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載する本発明の車両用シートは、着座面を有するシートクッションと、
前記シートクッションのシート後端側に配置され、背もたれ面を有するシートバックと、前記シートクッションのシート幅方向の一方側に配置され、ウエビングを介して車体に連結されるバックル装置と、前記シートクッション及び前記シートバックの少なくとも一方をシート幅方向の軸周りに回動可能に支持する少なくとも一つの回転軸と、前記回転軸周りの回転力をシート後方側への引っ張り力に変換し前記バックル装置に伝達する動力伝達部と、を備え、前記動力伝達部は、前記シートクッション又は前記シートバックの回動に連動して、前記バックル装置をシート後方側へ引き込む構成となっている。
【0009】
請求項1に記載する本発明の車両用シートは、シートクッション及びシートバックの少なくとも一方をシート幅方向の軸周りに回動可能に支持する少なくとも一つの回転軸を有している。また、車両用シートは、回転軸周りの回転力をシート後方側への引っ張り力に変換しバックル装置に伝達する動力伝達部を備えている。これにより、車両用シートでは、シートクッション又はシートバックの回動に連動して、バックル装置をシート後方側へ引き込むことができる。その結果、シート形態の変更に伴うシートクッションやシートバックの回動時にバックル装置のシート前方側への突出を小さくすることができる、シートクッションやシートバック等とバックル装置との干渉を抑制することができる。
【0010】
請求項2に記載する本発明の車両用シートは、請求項1に記載の構成において、前記動力伝達部は、前記バックル装置をシート後方側へ引き込む際に、前記ウエビングを含む前記バックル装置の全長を短縮させる。
【0011】
請求項2に記載する本発明の車両用シートでは、バックル装置をシート後方側へ引き込む際に、ウエビングを含むバックル装置の全長を短縮させることができるため、子と携帯を変更した際にバックル装置の小型化を図ることができる。このため、シート下部におけるバックル装置の収納スペースの確保が容易になり、シート設計に与える制約を低減させることができる。
【0012】
請求項3に記載する本発明の車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記動力伝達部は、前記バックル装置をタング挿入方向の軸周りに回転させつつシート後方側へ引き込む。
【0013】
請求項3に記載する本発明の車両用シートでは、バックル装置をタング挿入方向の軸周りに回転させつつシート後方側へ引き込むことができる。このため、例えば、バックル装置の姿勢をシート上下方向の厚みが小さくなる向きに変更するなどして周辺の部材との干渉を低減させることができる。
【0014】
請求項4に記載する本発明の車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記回転軸は、前記シートクッションをシート幅方向の軸周りに回動可能に支持する第1回転軸と、前記シートバックをシート幅方向の軸周りに回動可能に支持する第2回転軸とを有し、前記シートクッションは、前記第1回転軸周りに回動することにより、前記シートクッションに着座する乗員の臀部を支持する着座用位置と、前記着座面をシート前方側に向けて配置する跳上げ位置に設定可能に構成され、前記シートバックは、前記第2回転軸周りに回動することにより、前記シートクッションに着座する乗員の背部を支持する背もたれ用位置と、前記背もたれ面をシート下方側に向けて配置する前倒れ位置に設定可能に構成されている。
【0015】
請求項4に記載する本発明の車両用シートは、シートクッションを跳ね上げ位置に設定した状態でシートバックを前倒し位置に設定することで車両用シートを折り畳むことのできるダブルフォールディング式のシートとされている。これにより、車両用シートのシート形態をダブルフォールディング状態に変更する際に、シートクッション又はシートバックに対して行われる回動操作に連動してバックル装置をシート後方側に引き込むことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートでは、シート形態の変更に連動してバックル装置のシート前方側への突出を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る車両用シートの通常使用状態を示す側面図である。
【
図2】第1実施形態に係る車両用シートのダブルフォールディング状態を示す側面図である。
【
図3】第1実施形態に係る車両用シートのシートバックが背もたれ用位置に設定された状態におけるバックル装置を示す側面図であり、ブーツケースの一部を切り欠いて示している。
【
図4】第1実施形態に係る車両用シートのシートバックが前倒れ位置に設定された状態におけるバックル装置を示す側面図であり、ブーツケースの一部を切り欠いて示している。
【
図5】シートバックの回動に連動してバックル装置が回転しつつシート後方側へ引き込まれる動作を説明する要部側面図であり、(A)には、バックル装置の突出状態が示されており、(B)には、バックル装置の引き込み状態が示されている。
【
図6】第2実施形態に係る車両用シートのシートバックが背もたれ用位置に設定された状態におけるバックル装置を示す側面図である。
【
図7】第2実施形態に係る車両用シートのシートバックが前倒れ位置に設定された状態におけるバックル装置を示す側面図である。
【
図8】第3実施形態における車両用シートの通常使用状態を示す側面図である。
【
図9】第3実施形態における車両用シートのシートバックが背もたれ用位置に設定された状態におけるバックル装置を示す側面図である。
【
図10】第3実施形態に係る車両用シートのシートバックが前倒れ位置に設定された状態におけるバックル装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図5を用いて、第1実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRはシート前方向を示し、矢印UPはシート上方向を示している。また、特に言及しない限り、本実施形態では、車両用シート10のシート前後方向、シート上下方向、シート左右方向(シート幅方向)は、車両用シート10が搭載される車両(自動車)の車両前後方向、車両上下方向、車両左右方向とそれぞれ一致している。なお、各図においては、図面を見易くするために、符号を省略している場合がある。
【0019】
本実施形態に係る車両用シート10は、一例として、ダブルフォールディング式のシートで構成され、ワゴンやハッチバック等のタイプの車両の後部座席として配置される。このダブルフォールディング式の車両用シート10では、シートクッションを前方に引き起こしてからシートバックを前方に倒すことで、シートバックの背面が平らな荷台となる。これにより、シートバックを折り畳んで車室内の後部スペースを荷室に変えることができる。即ち、車両用シート10は、シートクッションに乗員が着座する通常使用状態と、シートバックを折り畳んで車室内の後部スペースを荷室に変えるダブルフォールディング状態とにシート形態を変更することができる。
【0020】
また、本実施形態では、シートバックを折り畳んで前倒しする動作に連動して、シートクッションの側方に設けられたバックル装置を前倒しして収納することができる。この際、バックル装置をタング挿入方向の軸周りに回転させつつシート後方側へ引き込むようにして収納位置に移動させる。これにより、バックル装置は、シート上下方向の厚みが小さくなる向きに姿勢が変更されるとともに、通常使用状態と比べてシート前方側への突出が小さくなる位置に収納される。以下、車両用シート10の詳細について説明する。
【0021】
図1は、車両用シート10の通常使用状態を示す側面図であり、
図2は、車両用シート10のダブルフォールディング状態を示す側面図である。これらの図に示されるように、車両用シート10は、着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション12と、着座乗員の背部を支持するシートバック14と、着座乗員の頭部を支持するヘッドレスト16とを備えている。
【0022】
(シートクッション)
シートクッション12は、図示しない表皮で覆われた発砲ウレタン等のクッション材が金属製のフレームで支持されたものである。
図1に示されるように、通常使用状態では、シートクッション12の着座面12Aがシート上方側を向いて配置されている。シートクッション12の下部は、クッション回動支持部20を介して車体のフロアに連結されている。クッション回動支持部20は、図示しない車体のフロアに対してシートクッション12の前端部側を回動可能に連結している。これにより、シートクッション12は、シートクッション12に着座する乗員の臀部を支持する着座用位置(
図1参照)と着座面12Aをシート前方側に向けて配置する跳上げ位置(
図2参照)との間で、シート幅方向の軸周りに回動可能とされている。
【0023】
一例として、クッション回動支持部20は、図示しない車体のフロアに固定された前方アンカーブラケット22と、前方アンカーブラケット22に支持されたガイドブラケット24と、ガイドブラケット24に対して第1回転軸26周りに回動可能に支持されたクッション回動リンク28とを含んでいる。
【0024】
前方アンカーブラケット22は、シートクッション12に対して左右一対の状態で設けられており、アンカーボルト30を用いて車体のフロアに固定されている。
【0025】
前方アンカーブラケット22の上部には、ガイドブラケット24が取り付けられている。このガイドブラケット24には、シート幅方向外側に面した側面に逆U字状のガイド溝32が形成されている。このガイド溝32には、シート幅方向を軸方向とするガイドピン34の一端が摺動可能に支持されている。
【0026】
ガイドブラケット24のシート幅方向の外側には、クッション回動リンク28が配置されている。クッション回動リンク28は、シートクッション12に対して左右一対の状態で設けられており、シート前後方向に延びている。左右一対のクッション回動リンク28の前端部は、第1回転軸26を介してシート幅方向に延びるブラケット(不図示)の両端に回動可能に連結されている。第1回転軸26は、シート幅方向を軸方向とし、シートクッションに対して左右一対の状態で設けられている。また、左右一対のクッション回動リンク28の後端部は、第3回転軸36を介してシート幅方向に延びるブラケット(不図示)を介して連結されている。かかる構成により、左右一対のクッション回動リンク28と、一対のクッション回動リンク28の前端部同士、後端部同士を連結する前後一対のブラケットにより、矩形状のフレームが形成されている。そして、左右一対のクッション回動リンク28の後端部は、後端部同士を連結するブラケットを介してシートクッション12の後端側に取り付けられている。
【0027】
ここで、左右一対のクッション回動リンク28の前端部は、ガイドブラケット24に支持されたガイドピン34の他端に固定されている。ガイドピン34は、シートクッション12の前端側を第1回転軸26周りに回動させる動作に連動して、逆U字状のガイド溝32内を摺動する。これにより、
図2に示されるように、シートクッション12全体がガイド溝32に沿って移動しながらシート前方側に案内されるとともにシートクッション12の後端側が引き起こされて跳上げ位置に設定される。シートクッション12が跳ね上げ位置に設定された状態では、着座面12Aがシート前方側に向けて配置される。
【0028】
(シートバック)
シートバック14は、図示しない表皮で覆われた発砲ウレタン等のクッション材が骨格部材としての金属製のシートバックフレーム40(
図3参照)で支持されたものである。また、シートバック14の上端部には、ヘッドレスト16が配置されている。このヘッドレスト16は、シートバックフレーム40に、図示しないステーを介して装着されている。
【0029】
図1に示されるように、通常使用状態では、シートバック14の背もたれ面14Aがシート前方側を向いて配置されている。また、シートクッション12の下端部は、ヒンジブラケット42を介して図示しない車体のフロアに固定されている。このヒンジブラケット42は、シート幅方向を軸方向とする第2回転軸44を有しており、第2回転軸44周りにシートバック14を回動可能に支持している。これにより、シートバック14は、シートバック14に着座する乗員の背部を支持する背もたれ用位置(
図1参照)と背もたれ面14Aをシート下方側に向けて配置する前倒し位置(
図2参照)との間で、シート幅方向の軸周りに回動可能とされている。
【0030】
図2に示されるように、シートクッション12を跳ね上げ位置に設定し、次いでシートバック14を前倒しすることによりダブルフォールディング状態となる。この状態では、シートバック14の背面が平らな荷台となる。
【0031】
(バックル装置)
図3に示されるように、バックル装置50は、シートクッション12のシート幅方向の一方側に配置されている。バックル装置50は、長尺帯状のウエビング52を介して車体に連結されたバックル本体54と、バックル本体54に装着されたバックルブーツ60と、バックルブーツ60に装着されたブーツケース70と、を含んでいる。なお、
図3では、図面を分かり易くするために、ブーツケース70の先端側を一部切り欠いて示している。
【0032】
バックル本体54は、長尺箱状をなしている。バックル本体54には、シート前方側へ突出した先端側にタング(不図示)が挿入係止可能に構成されている。バックル本体54には、タングを離脱させる図示しない離脱スイッチが設けられており、乗員によって離脱スイッチが操作されることで、バックル本体54からタングを離脱(引き抜き)させることができる。かかるバックル本体54の構造は公知であるため、詳細な説明は割愛する。
【0033】
また、タングには、長尺帯状のシートベルトウエビングが移動可能に挿通されており、シートベルトウエビングの基端側は、車両側に固定されたリトラクタ(不図示)に巻き取られている。シートベルトウエビングの先端には、車体側に固定されたアンカ(不図示)が連結されている。シートベルトウエビングは、タングとリトラクタとの間において、スルーアンカ(不図示)に移動可能に挿通されており、スルーアンカは、シートの上側において、車両側に支持されている。これにより、バックル本体54にタングが装着されることで、車両用シート10に着座した乗員にシートベルトウエビングが装着される。
【0034】
一方、バックル本体54の基端側には、ウエビング52の一端と、ケーブル58の一端が接続されている。なお、ケーブル58は、後述する動力伝達部PW1を構成する。
【0035】
ウエビング52は、先端側の一端がバックル本体54に接続され、基端側の他端が後方アンカーブラケット46に接続されている。後方アンカーブラケット46は、アンカーボルト48を用いて後述するサポートブラケット56と共締めされた状態で車体のフロアに固定されている。これにより、バックル本体54が、ウエビング52を介して車体に連結されている。
【0036】
バックルブーツ60は、長尺筒状をなしており、内側にウエビング52とケーブル58が挿通される。バックルブーツ60の先端側には、バックル本体54を収容するバックル収容筒部62が設けられている。車両用シート10の通常使用状態では、バックル本体54の基端側がバックル収容筒部62に収容されている。また、バックル本体54の先端側は、バックル収容筒部62からシート前方側へ突出している。
【0037】
バックル収容筒部62の内部において、バックル本体54との間に形成される空間S1には、バックル本体54、ウエビング52及びケーブル58の接続部が配置されている。また、空間S1には、バックル本体54のシート後方側への引き込み量を規制する規制部材63が配置されている。規制部材63は、一例として、ケーブル58の中間部に取り付けられる円板状又は球状の部材である。
【0038】
バックルブーツ60の基端側は、バックル収容筒部62よりも小径の筒状をなすバネ装着筒部64が設けられている。バネ装着筒部64の外周側には、付勢部材としてのコイルバネ65が遊嵌状態で巻装されている。また、コイルバネ65よりも基端側において、バネ装着筒部64の外周面には、外周面から径方向外側に突出するガイド突起66が設けられている(
図3、
図4、
図5(A)参照)。このガイド突起66は、後述するブーツケース70に形成された回転ガイド溝76に挿通されている。
【0039】
ここで、バックルブーツ60のバックル収容筒部62とバネ装着筒部64は、板状の仕切り部68によって内部空間が仕切られている。この仕切り部68には、板厚方向に貫通形成されたスリット69を有している(
図5(A)参照)。バックル本体54から延びる帯状のウエビング52と線状のケーブル58は、仕切り部68のスリット69を通ってバネ装着筒部64の内側に挿通されている。一方で、空間S1内でケーブル58に取り付けられた規制部材63は、仕切り部68のスリット69を挿通不能となっている。
【0040】
かかる構成では、所定の引っ張り力でケーブル58をシート後方側へ引き込むと、バックル本体54がバックルブーツ60のバックル収容筒部62内に引き込まれる。次いで、ケーブルの引き込み量が所定量を超えた場合に、規制部材63がスリット69に係止され、バックル収容筒部62内へのバックル本体54の引き込み量が規制される。
【0041】
コイルバネ65は、バックルブーツ60の仕切り部68、バネ装着筒部64及び後述するブーツケース70との間に形成される空間S2内に収容されている。上述のように、ケーブル58のシート後方側への引き込み量が所定量を超えた場合、規制部材63がスリット69に係止される。次いで、規制部材63が仕切り部68を軸方向に押圧する。これにより、空間S2内のコイルバネ65が圧縮され、圧縮されたコイルバネ65によってバックルブーツ60がシート前方側へ付勢される。
【0042】
ブーツケース70は、長尺筒状をなしており、バックルブーツ60の外周側に装着される。ブーツケース70の先端側には、バックルブーツ60のバネ装着筒部64の先端側を覆うバネ収容筒部72が設けられている。このバネ収容筒部72は、バックルブーツ60のバネ装着筒部64とともに空間S2を形成し、空間S2内にコイルバネ65が収容される。
【0043】
ブーツケース70には、バネ収容筒部72に隣接して、回転ガイド筒部74が形成されている。回転ガイド筒部74は、バネ収容筒部72よりも小径な長尺筒状をなしており、バネ装着筒部64の基端側を覆っている。回転ガイド筒部74には、バネ装着筒部64の外周面に設けられたガイド突起66が挿通される回転ガイド溝76が形成されている。回転ガイド溝76は、回転ガイド筒部74の外周面に沿って螺旋状に延びている。バネ装着筒部64から突出するガイド突起66は、コイルバネ65の圧縮に伴ってブーツケース70内にバックルブーツ60が引き込まれると、回転ガイド溝76に沿って摺動しつつ、バックルブーツ60を回転させる。これにより、バックルブーツ60に支持されたバックル本体54がシート後方側へ引き込まれつつ、タング挿入方向の軸周りに回転する。
【0044】
ここで、
図3に示されるように、ブーツケース70は、図示しない車体のフロアに固定されたサポートブラケット56と、付勢部材としてのねじりバネ57によって支持されている。サポートブラケット56は、後方アンカーブラケット46と共締めされた状態で車体のフロアに固定されており、ブーツケース70を挟んでシート幅方向に対向する一対の縦壁部56Aを有する。一対の縦壁部56Aのそれぞれには、ブーツケース70側に突出する支持軸56Bが設けられている。これらの支持軸56Bには、ねじりバネ57が遊嵌状態で巻装されている。即ち、ねじりバネ57は、ブーツケース70を挟んで一対の状態で設けられている。ねじりバネ57の一端は対応する縦壁部56Aに係止されており、ねじりバネ57の他端はブーツケース70のバネ収容筒部72の底面に当接して係止されている。一対のねじりバネ57は、ブーツケース70に係止された他端同士を連結することにより、1本の線材で構成することができる。
【0045】
シートバック14が前倒しされると、シートバック14に押し下げられることによりブーツケース70が支持軸56Bを中心としてシート幅方向の軸周りに傾けられる(
図4参照)。この状態では、ねじりバネ57は、傾けられたブーツケース70に対して、ブーツケース70を立ち上げる方向に付勢力を付与する。これにより、シートバック14が前倒し位置から背もたれ用位置に戻されると、ねじりバネ57の付勢力によって、ブーツケース70が立ち起こされる。更に、バックルブーツ60に装着されたコイルバネ65の弾性復帰により、バックル本体54及びバックルブーツ60は、タング挿入方向の軸周りに逆回転しながら伸長する。
【0046】
(動力伝達部)
次に、バックル装置50に設置された動力伝達部PW1について説明する。この動力伝達部PW1は、シートバック14の回動に伴う回転力をシート後方側への引っ張り力に変換し、バックル装置50に伝達する。
図3に示されるように、動力伝達部PW1は、バックル本体54に一端が接続されたケーブル58と、バックルブーツ60と、ブーツケース70と、コイルバネ65と、を含んで構成される。
【0047】
ケーブル58は、延在方向の一端がバックル本体54に接続されて、延在方向の他端が固定ブラケット41を介してシートバックフレーム40の下端部に接続されている。即ち、ケーブル58は、バックル本体54からシート後方側に向かって延び、シートバック14よりも後方側の位置で、図示しないブラケット等を介して中間部が折り返されて、シート前方側に延びている。そして、折り返された延在方向の他端がシートバックフレーム40の下端部に接続されている。
【0048】
ケーブル58は、シートバック14が第2回転軸44周りに回動し、
図3に示される背もたれ用位置から
図4に示される前倒し位置へと移動されると、シートバックフレーム40に接続された他端がシート前方側に移動する。そして、バックル本体54に接続されたケーブル58の一端が、シート後方側に引き込まれる。この際、シートバック14の背もたれ面14Aがバックル装置50をシート下方側に押圧し、バックル装置50を前倒しする。これにより、バックル装置50は、シートバック14の回動に連動してシート後方側に引き込まれつつ、後方アンカーブラケット46の支持軸56Bを支点にシート前方側へ前倒しされる。
【0049】
ここで、
図5(A)に示されるように、ケーブル58の一端がシート後方側に引き込まれると、
図5(B)に示されるように、バックル本体54がバックルブーツ60内に引き込まれる。このとき、ケーブル58は、バックルブーツ60内を仕切る仕切り部68に形成されたスリット69を通って引き込まれる。これにより、通常使用状態に比べてバックルブーツ60から突出するバックル本体54の突出量が減少する。
【0050】
次いで、
図5(C)に示されるように、ケーブル58の引き込みにより、規制部材63がスリット69に係止されると、規制部材63によって仕切り部68が押圧される。この押圧力により、バックルブーツ60に装着されたコイルバネ65が圧縮されて(
図4参照)、バックルブーツ60がブーツケース70内に引き込まれる。このとき、バックルブーツ60のバネ装着筒部64から突出するガイド突起66がブーツケース70の回転ガイド筒部74に設けられた回転ガイド溝76に案内される。これにより、バックルブーツ60は、シート後方側に引き込まれつつ、タング挿入方向の軸周りに回転する。本実施形態では、一例として、シートバック14が背もたれ用位置から前倒し位置まで移動されると、バックルブーツ60及びバックル本体54が略90度回転する。
【0051】
バックルブーツ60の引き込みにより、通常使用時と比べてブーツケース70から突出するバックルブーツ60の突出量が減少する。また、バックルブーツ60の回転により、バックル装置50は、シート上下方向の厚みが小さくなる向きに姿勢が変更される。
【0052】
(作用並びに効果)
以上説明したように、本実施形態に係る車両用シート10では、動力伝達部PW1は、シートバック14の前倒し動作に連動して、バックル装置50をシート後方側かつ下方側に引き込みつつ、タング挿入方向の軸周りに回転させる。これにより、車両用シート10のシート形態がダブルフォールディング状態にされると、通常使用状態と比べてシート前方側への突出が小さくなる位置にバックル装置50が収納される。バックル装置50のシート前方側への突出が小さくなることにより、シート形態の変更に伴うバックル装置50の干渉を低減させることができる。
【0053】
例えば、ダブルフォールディング状態においては、シートバック14がバックル装置50に対してシート上方側に配置される。従って、シートバック14の前倒しに連動してバックル装置50のシート前方側への突出を小さくすることで、シートバック14とバックル装置50との干渉を低減させることができる。これにより、シートバック14の可動域の確保が容易になる。また、シートバック14の前倒しに連動してバックル装置50の姿勢をシート上下方向の厚みが小さくなる向きに変更することにより、バックル装置50がシートバック14の背もたれ面14Aに強く押し付けられることが抑制される。これにより、車両用シート10をダブルフォールディング状態から通常使用状態に戻したときに、背もたれ面14Aにバックル装置50による圧痕が付くことが抑制される。
【0054】
更に、本実施形態では、ケーブル58がバックル本体54をシート後方側へ引き込むことにより、ウエビング52を含むバックル装置50の全長L1(
図3参照)が短縮される。これにより、ダブルフォールディング状態において、バックル装置50が収納位置に配置された場合に、バックル装置50の収納スペースの省スペース化を図ることができ、シート設計の自由度を高めることができる。
【0055】
<第2実施形態>
以下、
図6~
図7を参照し、第2実施形態に係る車両用シート100について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。この第2実施形態では、バックル装置110に設定された動力伝達部PW2により、シート前方側へのシートバック14の回動に連動して、バックル装置110がシート後方側へ引き込まれつつ、前倒しされる。
【0056】
図6に示されるように、バックル装置110は、長尺帯状のウエビング52を介して車体に連結されたバックル本体54と、バックル本体54に装着されたバックルブーツ112と、を含んで構成されている。バックル本体54とウエビング52は上記第1実施形態と同様の構成であるため詳細な説明を割愛する。ウエビング52の一端はバックル本体54に接続されており、ウエビング52の他端は後方アンカーブラケット114を介して図示しない車体のフロアに固定されている。
【0057】
バックルブーツ112は、長尺筒状をなしており、バックル本体54の基端側に装着されている。これにより、バックル本体54とウエビング52の接続部分がバックルブーツ112によって覆われている。
【0058】
後方アンカーブラケット114は、シート上方側へ立設された縦壁部114Aを有しており、縦壁部114Aにウエビング52の他端が接続されている。また、縦壁部114Aは、動力伝達部PW2を構成する第1ブラケット116の後端部を回動可能に支持している。
【0059】
(動力伝達部)
動力伝達部PW2は、後方アンカーブラケット114に支持された第1ブラケット116と、第1ブラケットとウエビング52とを連結する第2ブラケット118と、第1ブラケット116及び第2ブラケット118と、シートバック14の後端部とを連結するリンクアーム120と、を含んで構成される。
【0060】
第1ブラケット116は、長尺板状をなし、シート前後方向に延びている。第1ブラケット116は、シート後方側に配置される基端側が後方アンカーブラケット114に設けられた支持軸115を介して回動可能に軸支されている。支持軸115は、シート幅方向を軸方向とする軸部材であり、第1ブラケット116をシート幅方向の軸周りに回動可能に支持している。また、支持軸115には、一端が後方アンカーブラケット114に係止され、他端が第1ブラケット116に係止されたねじりバネ117が装着されている。従って、第1ブラケット116は、支持軸115周りにシート前方側へ回動することにより、ねじりバネ117によってシート上方側へ付勢される。
【0061】
第1ブラケット116は、先端側に第1ガイド孔122を有しており、延在方向の中間部に第2ガイド孔124を有している。第1ガイド孔122及び第2ガイド孔124は、第1ブラケット116の延在方向にのびる長孔で構成されている。
【0062】
第1ブラケット116の先端側は、第1ガイド孔122を介して第2ブラケット118に接続されている。第2ブラケット118は、長尺板状をなし、シート前後方向に延びている。第2ブラケット118は、シート前方側に配置される先端側がウエビング52に取り付けられている。また、第2ブラケット118は、延在方向の中間部に設けられた第1スライド軸132と基端側に設けられた第2スライド軸134を有している。第1スライド軸132は、第1ブラケット116の第1ガイド孔122に挿入係止されており、第1ガイド孔122内を摺動可能に構成されている。第2スライド軸134は、第1ブラケット116の第2ガイド孔124に挿入係止されており、第2ガイド孔124内を摺動可能に構成されている。
【0063】
ここで、第2ブラケット118の基端側は、第2スライド軸134を介してリンクアーム120の一端に接続されている。リンクアーム120は、シート幅方向視で円弧状をなしており、延在方向の一端が固定ブラケット41を介してシートバック14の下端部に連結されている。リンクアーム120の一端は、シートバック14に対してシート幅方向の軸周りに回動可能とされている。また、リンクアーム120の他端は、第2スライド軸134に回動可能に支持されている。これにより、第2ブラケット118は、第1ブラケット116に対して略シート前後方向に摺動可能に支持された状態で、シート後方側に配置される基端側がリンクアーム120に連結されている。
【0064】
上記構成の動力伝達部PW2では、
図7に示されるように、シートバック14の位置が背もたれ用位置から前倒し位置へ設定されると、シート前方側へのシートバック14の回動に連動して、リンクアーム120の他端がシート後方側かつ下方側に移動する。これにより、リンクアーム120の他端に連結された第2スライド軸134が、第2ガイド孔124内を摺動して第2ブラケット118をシート後方側へと移動させる。その結果、第2ブラケット118に付与されたシート後方側への引っ張り力により、ウエビング52及びバックル本体54がシート後方側へと引き込まれる。
【0065】
また、リンクアーム120の下方側への移動により、第2スライド軸134を介して第1ブラケット116がシート下方側へと押し下げられる。これにより、ウエビング52を含むバックル装置110全体が後方アンカーブラケット114の支持軸115周りにシート前方側へ回動して前倒しされる。
【0066】
その後、シートバック14の位置が、前倒し位置から背もたれ用位置に戻されると、後方アンカーブラケット114に設定されたねじりバネ117の付勢力により、第1ブラケット116とともにバックル装置110がシート上方側へと立ち起こされる。
【0067】
(作用並びに効果)
以上説明したように、第2実施形態に係る動力伝達部PW2は、第1ブラケット116、第2ブラケット118及びリンクアーム120を介して、シートバック14の回転力をシート後方側への引っ張り力に変換し、バックル装置110に伝達する。これにより、上記第1実施形態と同様に、動力伝達部PW2は、シート前方側へのシートバック14の回動に連動して、バックル装置110をシート後方側へと引き込むことができる。これにより、車両用シート100のシート形態がダブルフォールディング状態になった場合に、バックル装置110のシート前方側への突出を小さくすることができる。
【0068】
更に、動力伝達部PW2では、バックル本体54をシート後方側へ引き込む際に、第1ブラケット116の第1ガイド孔122及び第2ガイド孔124に沿って第2ブラケット118を摺動させる。これにより、ウエビング52を含むバックル装置110の全長L1(
図7参照)がシート前後方向に短縮し、バックル装置110の小型化を図ることができる。
【0069】
<第3実施形態>
以下、
図8~
図10を参照し、第3実施形態に係る車両用シート200について説明する。なお、前述した第1実施形態又は第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。この第3実施形態では、バックル装置210に設定された動力伝達部PW3により、シートクッション12の回動に連動して、バックル装置110がシート後方側へ引き込まれつつ、前倒しされる。
【0070】
図8に示されるように、バックル装置210は、長尺帯状のウエビング52を介して車体に連結されたバックル本体54と、バックル本体54に装着されたバックルブーツ112と、を含んで構成されている。バックル本体54とウエビング52は上記第1実施形態と同様の構成である。また、バックルブーツ112は、上記第2実施形態と同様の構成であるため詳細な説明を割愛する。ウエビング52の一端はバックル本体54に接続されており、ウエビング52の他端は後方アンカーブラケット114を介して図示しない車体のフロアに固定されている。
【0071】
動力伝達部PW3は、後方アンカーブラケット114に支持された第1ブラケット116と、第1ブラケットとウエビング52とを連結する第2ブラケット118と、第1ブラケット116及び第2ブラケット118と、クッション回動支持部20とを連結するケーブル58と、を含んで構成される。第1ブラケット116と第2ブラケット118は、上記第2実施形態と同様の構成であるため、詳細な説明は割愛するが、第2ブラケット118は、第1ブラケット116に対して略シート前後方向に摺動可能に支持されている。
【0072】
ケーブル58は、延在方向の一端がシートクッション12の前端側を支持するクッション回動支持部20に接続されている。クッション回動支持部20は、車体のフロアに固定された前方アンカーブラケット22と、前方アンカーブラケット22に支持されたガイドブラケット24と、ガイドブラケット24に対して第1回転軸26周りに回動可能に支持されたクッション回動リンク28とを含んでいる。前方アンカーブラケット22、ガイドブラケット24、クッション回動リンク28の各構成は、上記第1実施形態と同様であるため、以下では、第1実施形態と異なる構成部分について説明する。
【0073】
クッション回動リンク28は、シート前後方向の前端部からシート幅方向外側に突出するケーブル取付ピン220を有している。ケーブル取付ピン220は、クッション回動リンク28の前端部において、第1回転軸26とは異なる位置に設けられており、シート前方側へのシートクッション12の回動に連動してシート前方側へ移動する。
【0074】
ケーブル58は、延在方向の一端がケーブル取付ピン220に取り付けられた状態で前方ケーブル支持ブラケット230を介してシート後方側へ案内されている。前方ケーブル支持ブラケット230は、前方アンカーブラケット22と共締めされた状態で図示しない車体のフロアに固定されている。
【0075】
ケーブル58は、シート後方側へ案内された後、延在方向の中間部が折り返されてシート前方側へ案内される。延在方向の中間部は、一例として、車体のフロア等に固定された折返しアンカーブラケット240によって折り返されている。また、折返しアンカーブラケット240を介して折り返されたケーブル58の他端は、後方ケーブル支持ブラケット250によってシート前方側へ案内された後、第2ブラケット118から突出する第1スライド軸132に取り付けられている。後方ケーブル支持ブラケット250は、一例として、後方アンカーブラケット46に共締めされた状態で車体のフロアに固定されている。
【0076】
かかる構成により、シート前方側へシートクッション12が回動すると、クッション回動リンク28に設けられたケーブル取付ピン220がシート前方側へ移動し、ケーブル58の一端が引っ張られる。その結果、第1スライド軸132を介して第2ブラケット118に接続されたケーブル58の他端にシート後方側かつ下方側への引っ張り力が作用し、第2ブラケット118の摺動とともにウエビング52及びバックル本体54がシート後方側かつ下方側へ引き込まれる。また、第1ブラケット116は、第2ブラケット118から伝達される引っ張り力により後方アンカーブラケット46の支持軸115周りに回動してシート前方側へ前倒しされる。この状態では、後方アンカーブラケット46に設定されたねじりバネ117によって、第1ブラケット116がシート上方側へ付勢される。
【0077】
(作用並びに効果)
以上説明したように、第3実施形態に係る動力伝達部PW3は、基本的には、上記第2実施形態の構成と踏襲しているため、同様の作用効果を奏することができる。
【0078】
また、第3実施形態では、車両用シート200をダブルフォールディング状態にする際に、シートクッション12を跳ね上げ位置に設定することでバックル装置210を前倒しさせることができる。即ち、動力伝達部PW3は、シートクッション12の回動に連動して、バックル装置210をシート後方側へ引き込む構成となっている。従って、その後に続くシートバック14の前倒し操作を行う前にバックル装置210を予め収納位置へと移動させることができる。
【0079】
[補足説明]
なお、上記第2実施形態及び第3実施形態では、ウエビング52の他端が後方アンカーブラケット46に接続される構成としたが、本発明はこれに限らない。例えば、ウエビング52の他端が第2ブラケット118の前端側に接続される構成としてもよい。
【0080】
また、上記各実施形態では、動力伝達部は、ブラケットを介して車体に連結された第1伝達部材と、前記第1伝達部材のシート前後側において前記第1伝達部材とバックル本体とを連結する第2伝達部材とを含み、前記第1伝達部材は、前記第2伝達部材をシート前後方向に摺動可能に支持するとともに、シートクッション又はシートバックの回動に連動して前記第2伝達部材の相対位置を前記第1伝達部材に対してシート後方側へ変位させることによりウエビングを含むシートバック装置の全長を短縮させている。しかしながら、本発明はこれに限らない。本発明において、バックル装置の全長を短縮させることは必須ではなく、シートクッション又はシートバックの回動に連動して、ウエビングを含むバックル装置全体をシート後方側にスライド移動させる構成としてもよい。
【0081】
なお、第1実施形態では、ブーツケース70が第1伝達部材に相当し、バックルブーツ60が第2伝達部材に相当する。また、第2及び第3実施形態では、第1ブラケット116が第1伝達部材に相当し、第2ブラケット118が第2伝達部材に相当する。
【0082】
なお、各実施形態の構成は、適宜組み合わされて実施可能である。
【符号の説明】
【0083】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
26 第1回転軸(回転軸)
44 第2回転軸(回転軸)
50 バックル装置
52 ウエビング
100 車両用シート
110 バックル装置
200 車両用シート
210 バックル装置
PW1 動力伝達部
PW2 動力伝達部
PW3 動力伝達部