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特開2024-100627プラズマ輸送装置およびプラズマ輸送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100627
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】プラズマ輸送装置およびプラズマ輸送方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/26 20060101AFI20240719BHJP
   C12N 13/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H05H1/26
C12N13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004756
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】509181046
【氏名又は名称】学校法人西日本工業学園
(74)【代理人】
【識別番号】100172225
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 宏行
(72)【発明者】
【氏名】川崎 敏之
【テーマコード(参考)】
2G084
4B033
【Fターム(参考)】
2G084AA24
2G084CC03
2G084CC08
2G084CC35
2G084DD01
2G084DD17
2G084DD22
2G084FF02
2G084GG02
2G084GG07
4B033ND20
4B033NG05
4B033NH10
4B033NJ10
4B033NK10
(57)【要約】
【課題】液体内に存在する遺伝子や活性種などの被輸送物質を、同じ液体内に存在する細胞に輸送する効率を向上させることができるプラズマ輸送装置及びプラズマ輸送方法を提供することを目的とする。
【解決手段】プラズマ輸送装置100は、細胞300及び被輸送物質400を含む液体200にプラズマを照射するプラズマ照射部160と、プラズマのプラズマ照射条件を制御する制御部140と、を備え、プラズマ照射部160により液体200に向かってプラズマを照射する時に、制御部140によりプラズマ照射条件を制御して液体200に直進流を発生させる。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞及び被輸送物質を含む液体にプラズマを照射するプラズマ照射部と、
前記プラズマのプラズマ照射条件を制御する制御部と、を備え、
前記プラズマ照射部により前記液体に向かってプラズマを照射する時に、前記制御部により前記プラズマ照射条件を制御して前記液体に直進流を発生させる、
プラズマ輸送装置。
【請求項2】
前記プラズマ照射部は、プラズマを発生させるための交流電圧源及びガス発生部と、プラズマを外部に出力するプラズマヘッドと、を備え、
前記プラズマのプラズマ照射条件は、前記交流電圧源の電圧、前記交流電圧源の周波数、前記ガス発生部から出力されるガスの種類、前記プラズマヘッドと液体の距離のうち少なくとも一つを含む、
請求項1に記載のプラズマ輸送装置。
【請求項3】
前記プラズマ照射部により液体に向かってプラズマを照射する時に、前記制御部は、前記プラズマ照射条件を制御することで前記液体に直進流及び渦流を発生させる、
請求項1または2に記載のプラズマ輸送装置。
【請求項4】
前記液体は、体液である、
請求項1または2に記載のプラズマ輸送装置。
【請求項5】
前記制御部により前記プラズマ照射条件を制御して前記液体に直進流を発生させることで、前記被輸送物質を前記細胞に向かって輸送する、
請求項1または2に記載のプラズマ輸送装置。
【請求項6】
前記プラズマ照射部により液体に向かってプラズマを照射する時に、前記制御部により前記プラズマ照射条件を制御して前記液体に直進流及び渦流を発生させることで、前記細胞に向けた前記被輸送物質の輸送及び前記液体の攪拌を順に行う、
請求項1または2に記載のプラズマ輸送装置。
【請求項7】
細胞及び被輸送物質を含む液体に向かってプラズマを照射し、
前記プラズマのプラズマ照射条件を制御し、
前記液体に向かってプラズマを照射する時に、前記プラズマ照射条件を制御して前記液体に直進流を発生させる、
プラズマ輸送方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療や美容、健康促進などのために活用されるプラズマ輸送装置およびプラズマ輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プラズマを利用して、遺伝子を細胞に導入することができる遺伝子導入装置および遺伝子導入方法が記載されている。詳細には、遺伝子導入装置は、遺伝子分散溶液を収納する収納容器と、収納容器の上方に配置された一方の電極と、収納容器の外側面に取り付けられた他方の電極とを備える。そして、各電極間でプラズマを発生させるよう、各電極間に電圧を印加し、遺伝子分散溶液に、発生したプラズマが直接当たるよう配置されている。このような構成を取ることによって、遺伝子導入の効率を向上させようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2014/208425号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、遺伝子分散溶液の流れを制御しているわけではない。従って、遺伝子を細胞に輸送する効率は改善の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、液体内に存在する遺伝子や活性種などの被輸送物質を、同じ液体内に存在する細胞に輸送する効率を向上させることができるプラズマ輸送装置及びプラズマ輸送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプラズマ輸送装置は、細胞及び被輸送物質を含む液体にプラズマを照射するプラズマ照射部と、前記プラズマのプラズマ照射条件を制御する制御部と、を備え、前記プラズマ照射部により前記液体に向かってプラズマを照射する時に、前記制御部により前記プラズマ照射条件を制御して前記液体に直進流を発生させる。
【0007】
本発明のプラズマ輸送方法は、細胞及び被輸送物質を含む液体に向かってプラズマを照射し、前記プラズマのプラズマ照射条件を制御し、前記液体に向かってプラズマを照射する時に、前記プラズマ照射条件を制御して前記液体に直進流を発生させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液体内に存在する遺伝子や活性種などの被輸送物質を、同じ液体内に存在する細胞に輸送する効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態のプラズマ輸送装置の概略の一例を示す図
図2】本発明の一実施の形態のプラズマ輸送装置の構成の一例を示す図
図3】本発明の一実施の形態のプラズマ輸送装置による発生した直進流と渦流を示す図
図4】本発明の一実施の形態のプラズマ輸送装置による直進流と渦流を説明する図
図5】本発明の一実施の形態のプラズマ輸送装置による発生した流れのコントロールの一例を示す図
図6】本発明の一実施の形態のプラズマ輸送装置におけるパルス電圧源の周波数によって流れが変化することを示す図
図7】本発明の一実施の形態のプラズマ輸送装置におけるパルス電圧源の電圧によって流れが変化することを示す図
図8】本発明の一実施の形態のプラズマ輸送装置おける発生ガスの種類によって流れが変化することを示す図
図9】本発明の一実施の形態のプラズマ輸送方法の一例を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(プラズマ輸送装置100の概略説明)
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、方法、フロー等は説明のための例示であって、システム、プログラム、コンピュータ、ケーブルなどの仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
まず、本実施の形態におけるプラズマ輸送装置100について説明する。図1は、本発明の一実施の形態のプラズマ輸送装置の概略の一例を示す図である。図2は、本発明の一実施の形態のプラズマ輸送装置の構成の一例を示す図である。
【0012】
プラズマ輸送装置100は、液体200内に含まれる細胞300に、被輸送物質400を輸送する。プラズマ輸送装置100は、一般的なプラズマ発生機能を備えるとよく、低温プラズマであることが好ましい。本実施形態においては、ガス発生部110から発生されるヘリウムなどのガスと、パルス電圧源120からのパルス高電圧が印加された電極121を備え、プラズマヘッド130からプラズマを発生させることができる。そして、プラズマ輸送装置100は、プラズマヘッド130から発生するプラズマを活用して、細胞300の輸送を効果的に行うことができる。
【0013】
プラズマヘッド130と液体200とは、照射距離Xだけ離れている。なお、プラズマ輸送装置100は、例えばガラス管の周りに取り付けた電極に交流電圧を印加することでプラズマを発生させる機能を備えるなど、図1以外のプラズマ発生の構成を備えても良い。
【0014】
詳細には、プラズマ輸送装置100は、ガス発生部110、パルス電圧源120、電極121、プラズマヘッド130、駆動部131、制御部140、記憶部150を備える。ガス発生部110は、ヘリウムやアルゴンなどのガスを発生させる。パルス電圧源120は交流電圧源であればよく、その中でも正弦波交流高電圧源やパルス電圧源120であることが好ましい。
【0015】
プラズマヘッド130は、発生したプラズマを外部に出力する出口である。駆動部131は、照射距離Xが変化するようにプラズマヘッド130を高さ方向に駆動することや、水平方向(横方向及び奥行方向)に駆動することができる。なお、ガス発生部110、パルス電圧源120、プラズマヘッド130、駆動部131は、プラズマ照射部160に含まれる。ただし、プラズマ照射部160は、ガス発生部110、パルス電圧源120、プラズマヘッド130、駆動部131の全てを備える必要はなく、プラズマを照射することができれば良い。
【0016】
制御部140は、ガス発生部110における、ガスの種類、ガスの量などを制御する。また、パルス電圧源120における電圧の周波数、大きさを制御する。また、制御部140は、駆動部131を制御する。すなわち、制御部140は、パルス電圧源120の電圧、パルス電圧源120の周波数、ガス発生部110から出力されるガスの種類、プラズマヘッド130と液体200の距離、のうち少なくとも一つを含むプラズマのプラズマ照射条件を制御することができる。なお、詳細は後述するが、プラズマ照射条件を調整することで、液体200の流れに変化を制御することができる。
【0017】
記憶部150には、ガス発生部110におけるガスの種類、ガスの量、パルス電圧源120における電圧の周波数、大きさの初期値や過去の履歴を記憶する。
【0018】
液体200は、例えば水、生理食塩水、リンゲル液、体液であると良い。プラズマを液体200に照射することで、液体200中に活性種が生成される。活性種とは例えば活性酸素種を含む。活性酸素種は、反応性の高い酸素種をいい、例えば一重項酸素、スーパーオキサイドアニオンラジカル、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、オゾンなどがある。活性種としては、活性酸素種以外であっても良い。
【0019】
輸送先である細胞300は、人間の細胞、動物や植物の細胞など、いかなる細胞であっても良い。細胞300は1つである必要はなく、複数であったり、複数の細胞からなる組織であったりしても良い。特に、液体200が体液である場合、細胞300は人間や動物の体内の細胞300の一部であっても良い。
【0020】
被輸送物質400は、前述した活性種、カルシウムなどの栄養物質、遺伝子、薬剤分子などが挙げられる。当然、他の物質であっても良い。被輸送物質400が活性種である場合、プラズマを液体200に照射して初めて活性種が生成されることもあるので、その場合は最初から被輸送物質400を液体200内に含む必要はない。被輸送物質400が細胞300付近に効率的に輸送され細胞300内に導入されることで、例えば再生医療において重要な、薬剤の有効時間の長期化や吸収改善、細胞300の回復、改善といった変化を起こすことができる。
【0021】
(直進流と渦流について)
本実施形態においては、制御部140によってプラズマ照射条件を変更することで、液体200内に直進流と渦流を発生させることができる。そこで、これから直進流と渦流の発生について説明する。図3は、本発明の一実施の形態のプラズマ輸送装置による発生した直進流と渦流を示す図である。図4は、本発明の一実施の形態のプラズマ輸送装置による直進流と渦流を説明する図であり、流体解析をおこなった結果を示している。図5は、本発明の一実施の形態のプラズマ輸送装置による発生した流れのコントロールの一例を示す図である。図3、4においては、(a)は液体200に直進流が発生した場合を示し、(b)は液体200に渦流が発生した場合を示す。
【0022】
図3(a)、4(a)においては、直進流が発生しているので、液体200がプラズマヘッド130のある側(上方)から細胞300のある側(下方)に向かう流れが発生している。この流れの大きさや強さは、照射するプラズマの照射条件によって制御するとよい。この上方から下方への流れによって、細胞300に向かって被輸送物質400を届けることができる。その結果、流れがない場合と比較して、細胞300への被輸送物質400の導入効率を高めることができる。
【0023】
また、上方から下方への流れによって、被輸送物質400を細胞300に向かって押す力も発生するので、細胞300への被輸送物質400の導入効率をさらに高めることができる。なお、図3(a)では、1つの被輸送物質400が細胞300内に導入されようとしている場面が示されている。
【0024】
図3(b)、4(b)においては、中心では下方から上方に向かった流れが起こり、その流れが外側に向かい、外側では上方から下方に向かう流れを持つ渦流が発生している。従って、被輸送物質400が細胞300に輸送されているわけではない。渦流であるので、液体200を効果的に攪拌しながら液体200にプラズマを照射することができる。その結果、液体200に対して広範囲にプラズマを照射することができるので、液体200の広範囲において活性種の生成効率を向上させることができる。すなわち、被輸送物質400の一例である活性種を効果的に生成できるので、細胞300への被輸送物質400の導入効率を高めることができる。
【0025】
図5は、プラズマの照射条件を変更するによって、変化する液体200の流れを示している。図5(a)では大きな渦流が発生しているが、プラズマの照射条件を変更することで、図5(b)のように小さな渦流となる。そして、さらにプラズマの照射条件を変更するによって、図5(c)のように直進流とすることができる。
【0026】
また、さらにプラズマの照射条件を変更することによって、図5(d)のように直進流の速度を速めることができる。力強い直進流となる。そして、さらにプラズマの照射条件を変更することによって、図5(e)のように直進流の速度を減衰することができる。
【0027】
このように、プラズマの照射条件を変更することによって、液体200の流れを制御することができる。この流れをそれぞれ活用して、被輸送物質400を細胞300に向かって輸送することや、活性種の生成効率を上げることができ、細胞300への被輸送物質400の導入効率を高めることができる。
【0028】
(プラズマの照射条件について)
液体200の流れを制御するためには、プラズマの照射条件を適宜変更、設定する。プラズマの照射条件とは、例えば、パルス電圧源120の電圧の大きさ、パルス電圧源120の周波数、ガス発生部110から出力されるガスの種類、プラズマヘッド130と液体200の距離、のうち少なくとも一つを含む。また、プラズマの照射条件として、液体200に界面活性剤を混入するか否か、及び混入した界面活性剤の濃度を含んでもよい。すなわち、プラズマの照射条件として、液体200の表面張力の大きさを含んでもよい。
【0029】
図5(a)~(e)の流れの変化は、界面活性剤の濃度を変化させることによって生じている。図5(a)では液体200の界面活性剤の濃度が最も低く、図5(e)に進むほど、界面活性剤の濃度が高くなる。これらプラズマの照射条件を適宜設定することで、所望の流れを発生させることができる。そして、それによって、細胞300への被輸送物質400の導入効率を高めることができる。
【0030】
プラズマの照射条件の一例としてのパルス電圧源120の周波数について説明する。図6は、本発明の一実施の形態のプラズマ輸送装置によるパルス電圧源の周波数によって流れが変化することを示す図である。具体的には、パルス電圧源120の周波数と、液体200の流れとの関係を示している。液体200の流れとは、図3において液体200の中心の流れを測定しており、上方から下方の流れの場合はマイナス、下方から上方への流れの場合はプラスとなる。
【0031】
条件1では、パルス電圧源の周波数が5kHzである。条件2では、パルス電圧源の周波数が10kHzである。条件1と2においては、パルス電圧源の周波数以外の条件は全て同一である。条件1の流れはマイナスであって直進流であることを示しており、条件2の流れはプラスであって渦流であることを示している。すなわち、プラズマの照射条件の一例としてのパルス電圧源120の周波数を変化させることによって、液体200の流れを制御することができる。
【0032】
次にプラズマの照射条件の一例としてのパルス電圧源120の電圧の大きさについて説明する。図7は、本発明の一実施の形態のプラズマ輸送装置におけるパルス電圧源の電圧によって流れが変化することを示す図である。具体的には、パルス電圧源120が出力する電圧の大きさと、液体200の流れとの関係を示している。
【0033】
条件3では、パルス電圧源が出力する電圧が13kVである。条件4では、パルス電圧源の周波数が16kVである。条件3と4においては、パルス電圧源120が出力する電圧の大きさ以外の条件は全て同一である。そして、条件3の流れはマイナスであって直進流であることを示しており、条件4の流れはプラスであって渦流であることを示している。すなわち、プラズマの照射条件の一例としてのパルス電圧源120が出力する電圧の大きさを変化させることによって、液体200の流れを制御することができる。
【0034】
次にプラズマの照射条件の一例としてのガスの種類について説明する。図8は、本発明の一実施の形態のプラズマ輸送装置おける発生ガスの種類によって流れが変化することを示す図である。具体的には、ガス発生部110から発生されるガスの種類と、液体200の流れとの関係を示している。
【0035】
条件5では、ガスの種類はヘリウムである。条件6では、カスの種類はアルゴンである。条件5と6においては、ガスの種類以外の条件は全て同一である。そして、条件5の流れはマイナスであって直進流であることを示しており、条件6の流れはプラスであって渦流であることを示している。すなわち、プラズマの照射条件の一例としてのガスの種類を変化させることによって、液体200の流れを制御することができる。
【0036】
プラズマの照射条件は、他にも照射距離Xの大きさであっても良いし、その他の条件であっても良い。プラズマの照射条件を適宜設定することで、所望の流れを発生させることができる。そして、それによって、細胞300への被輸送物質400の導入効率を高めることができる。
【0037】
(制御方法に関する制御部140の制御手順)
次に、制御方法に関する制御部140の制御手順について説明する。図9は、本発明の一実施の形態のプラズマ輸送方法の一例を示すフロー図である。なお、これらの処理は、図9で示した順序には限定されない。すなわち、あるステップでその前段のステップの結果を利用する関係にある等の制約がない限り、順序を入れ替えてもよい。
【0038】
プラズマヘッド130より、プラズマが液体200に向かって照射される(ST1)。液体200には細胞300と被輸送物質400が含まれる。ただし、被輸送物質400が、プラズマを液体200に照射した際に生成される活性種であった場合、プラズマが照射されるまでは液体200内に被輸送物質400は含まれない。なお、プラズマ照射は、ST2以降であっても良い。
【0039】
そして、制御部140は、プラズマの照射条件の調整を行う(ST2)。前述した通り、プラズマの照射条件とは、例えば、パルス電圧源120の電圧の大きさ、パルス電圧源120の周波数、ガス発生部110から出力されるガスの種類、プラズマヘッド130と液体200の距離、のうち少なくとも一つを含む。また、プラズマの照射条件として、液体200に界面活性剤を混入するか否か、及び混入した界面活性剤の濃度を含んでもよい。そして、調整されたプラズマ照射条件において、プラズマを照射する(ST3)。
【0040】
そして、調整したプラズマ条件によって所望の流れが発生していたら(ST4:YES)、プラズマの照射を継続し(ST5)、その後輸送処理を終える。調整したプラズマ条件において所望の流れが発生していなければ(ST4:NO)、ST2に戻る。なお、所望の流れとは、例えば直進流や渦流のことである。
【0041】
(まとめ)
プラズマ輸送装置100は、細胞300及び被輸送物質400を含む液体200にプラズマを照射するプラズマ照射部160と、プラズマのプラズマ照射条件を制御する制御部140と、を備え、プラズマ照射部160により液体200に向かってプラズマを照射する時に、制御部140によりプラズマ照射条件を制御して液体200に直進流を発生させる。これによって、液体内に存在する遺伝子や活性種などの被輸送物質を、同じ液体内に存在する細胞に輸送する効率を向上させることができる。
【0042】
また、プラズマ照射部160は、プラズマを発生させるための交流電圧源であるパルス電圧源120及びガス発生部110と、プラズマを外部に出力するプラズマヘッド130と、を備え、プラズマのプラズマ照射条件は、交流電圧源であるパルス電圧源120の電圧、交流電圧源であるパルス電圧源120の周波数、ガス発生部110から出力されるガスの種類、プラズマヘッド130と液体200の距離のうち少なくとも一つを含む。これによって、プラズマのプラズマ照射条件を適切に制御し、液体内に存在する遺伝子や活性種などの被輸送物質を、同じ液体内に存在する細胞に輸送する効率を向上させることができる。
【0043】
また、プラズマ照射部160により液体200に向かってプラズマを照射する時に、制御部140は、プラズマ照射条件を制御することで液体200に直進流及び渦流を発生させる。これにより、細胞300への被輸送物質400の導入効率を高めることができる。
【0044】
また、液体200は、体液であってもよい。これにより、体内の体液内に含まれる被輸送物質を、同じく体内に存在する細胞に輸送する効率を向上させることができる。
【0045】
また、制御部140によりプラズマ照射条件を制御して液体200に直進流を発生させることで、被輸送物質400を細胞300に向かって輸送する。これによって、液体内に存在する遺伝子や活性種などの被輸送物質を、同じ液体内に存在する細胞に輸送する効率をより向上させることができる。
【0046】
また、プラズマ照射部160により液体200に向かってプラズマを照射する時に、制御部140によりプラズマ照射条件を制御して液体200に直進流及び渦流を発生させることで、細胞300に向けた被輸送物質400の輸送及び液体200の攪拌を順に行う。これにより、細胞300への被輸送物質400の導入効率を高めることができる。
【0047】
細胞300及び被輸送物質400を含む液体200に向かってプラズマを照射し、プラズマのプラズマ照射条件を制御し、液体200に向かってプラズマを照射する時に、プラズマ照射条件を制御して液体200に直進流を発生させる。これによって、液体内に存在する遺伝子や活性種などの被輸送物質を、同じ液体内に存在する細胞に輸送する効率を向上させることができる。
【0048】
なお、上述した輸送は、医療目的だけでなく、美容目的や健康促進を目的とした場合など幅広い目的に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
液体内に存在する遺伝子や活性種などの被輸送物質を、同じ液体内に存在する細胞に輸送する効率を向上させることができるプラズマ輸送装置及びプラズマ輸送方法を提供する。
【符号の説明】
【0050】
100 プラズマ輸送装置
110 ガス発生部
120 パルス電圧源
121 電極
130 プラズマヘッド
131 駆動部
140 制御部
150 記憶部
200 液体
300 細胞
400 被輸送物質

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9