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特開2024-100636スタッドタイヤ用ゴム組成物およびスタッドタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100636
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】スタッドタイヤ用ゴム組成物およびスタッドタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20240719BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240719BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20240719BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20240719BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240719BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C08L9/00
B60C1/00 A
B60C11/00 D
C08L7/00
C08K3/04
C08K3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026948
(22)【出願日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2023003624
(32)【優先日】2023-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】高橋 堅一郎
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131BA02
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB09
3D131BB11
3D131BC12
3D131BC13
3D131BC18
3D131BC19
3D131BC31
3D131EB05U
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB27V
3D131EB28V
3D131EB28X
3D131EB51U
3D131ED03V
3D131ED03X
3D131ED03Z
4J002AC011
4J002AC021
4J002AC022
4J002AC031
4J002AC032
4J002AC061
4J002DA036
4J002DA047
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD140
4J002FD147
4J002FD150
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】氷雪上の競技用タイヤにおいては、スタッドピン付のタイヤを用いてラップタイムの短縮が競われている。氷雪路面上にタイヤを追従させるには、トレッドゴムにある程度の柔らかさを持たせる必要である一方で、トレッドゴムが柔らかい場合、高速・高荷重領域でトレッドに形成されたブロックが撚れてしまい、更に連続走行中にスタッドピンが抜けてしまうという欠点がある。
【解決手段】ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックを50質量部以上配合してなる硫黄加硫されたスタッドタイヤ用ゴム組成物であって、モノスルフィド結合を8~18質量%有し、かつ前記カーボンブラックの体積分率が22~25%であるスタッドタイヤ用ゴム組成物によって上記課題を解決した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックを50質量部以上配合してなる硫黄加硫されたスタッドタイヤ用ゴム組成物であって、
モノスルフィド結合を8~18質量%有し、かつ
前記カーボンブラックの体積分率が22~25%である
ことを特徴とするスタッドタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ジエン系ゴムが、天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴム、並びに、ブタジエンゴムを必須成分とし、前記ジエン系ゴム全体を100質量部としたときに、前記天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴムが50~80質量部、およびブタジエンゴムが50~20質量部を占めることを特徴とする請求項1に記載のスタッドタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記スタッドタイヤ用ゴム組成物の300%モジュラスが、14.5MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載のスタッドタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のスタッドタイヤ用ゴム組成物をキャップトレッドに用いたスタッドタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッドタイヤ用ゴム組成物およびスタッドタイヤに関するものであり、詳しくは、氷雪上路面での追従性、高速高荷重領域のブロック剛性並びにスタッドピンの保持能力を高次にバランスし得るスタッドタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
氷雪上の競技用タイヤにおいては、スタッドピン付のタイヤを用いてラップタイムの短縮が競われている。氷雪路面上にタイヤを追従させるには、トレッドゴムにある程度の柔らかさを持たせる必要である一方で、トレッドゴムが柔らかい場合、高速・高荷重領域でトレッドに形成されたブロックが撚れてしまい、更に連続走行中にスタッドピンが抜けてしまうという欠点がある。したがって、ラップタイムの短縮のためには氷雪上路面での追従性、高速高荷重領域のブロック剛性並びにスタッドピンの保持能力を高次にバランスさせることが求められる。
【0003】
スタッドピンの保持能力を高くして、氷雪上性能およびウェット性能を向上させたスタッドタイヤとしては、例えば下記特許文献1に開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5892298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、氷雪上路面での追従性、高速高荷重領域のブロック剛性並びにスタッドピンの保持能力を高次にバランスし得るスタッドタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ジエン系ゴムに対しカーボンブラックを特定量以上で配合するとともに、硫黄加硫後のモノスルフィド結合量およびカーボンブラックの体積分率を適切に定めることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0007】
すなわち本発明は、ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックを50質量部以上配合してなる硫黄加硫されたスタッドタイヤ用ゴム組成物であって、モノスルフィド結合を8~18質量%有し、かつ前記カーボンブラックの体積分率が22~25%であることを特徴とするスタッドタイヤ用ゴム組成物を提供するものである。
また本発明は、前記スタッドタイヤ用ゴム組成物をキャップトレッドに用いたスタッドタイヤを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のスタッドタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックを50質量部以上配合してなる硫黄加硫されたスタッドタイヤ用ゴム組成物であって、モノスルフィド結合を8~18質量%有し、かつ前記カーボンブラックの体積分率が22~25%であることを特徴としているので、氷雪上路面での追従性、高速高荷重領域のブロック剛性並びにスタッドピンの保持能力を高次にバランスし得る。
【0009】
本発明によれば、組成物中のカーボンブラックの体積分率を上記のように比較的大きくし、硫黄加硫後のゴム組成物に適切な硬度を付与し、高速高荷重領域のブロック剛性を高めている。一方、硫黄加硫後のゴム組成物の硬度を高めると、一般的に氷雪上路面での追従性並びにスタッドピンの保持能力を低下させてしまうが、本発明では、前記カーボンブラックの体積分率を22~25%の範囲に限定しているため、硫黄加硫後のゴム組成物の硬度を高めつつ、氷雪上路面での追従性並びにスタッドピンの保持能力への悪影響を最大限に抑制することを可能にしている。さらに本発明のスタッドタイヤ用ゴム組成物は、モノスルフィド結合を8~18質量%にしているため、硬度の温度依存性を抑制し、氷雪上路面での追従性を高めることができる。したがって本発明によれば、氷雪上路面での追従性、高速高荷重領域のブロック剛性並びにスタッドピンの保持能力の高次にバランスし得るスタッドタイヤ用ゴム組成物およびこれを用いたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明のスタッドタイヤの実施形態からなる、スタッドピンを打ち込んだ後のスタッドタイヤの正面図である。
図2図2は、本発明のスタッドタイヤを構成するスタッドピンの一例を示す側面図である。
図3図3は、スタッドタイヤのトレッド部に形成した植え込み穴の一例を示す断面図である。
図4図4は、図2のスタッドピンを図3の植え込み穴に埋設した状態を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0012】
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、とくに制限されないが、本発明の効果向上の観点から好適な形態として、天然ゴム(NR)および/または合成イソプレンゴム(IR)、並びに、ブタジエンゴム(BR)を必須成分とし、前記ジエン系ゴム全体を100質量部としたときに、前記NRおよび/またはIRが50~80質量部、および前記BRが50~20質量部を占めることが好ましい。また、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を配合することもでき、この形態では、前記ジエン系ゴム全体を100質量部としたときに、前記NRおよび/またはIRが40~60質量部、前記BRが10~40質量部および前記SBRが5~10質量部を占めることが好ましい。
前記ジエン系ゴムの分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
【0013】
(カーボンブラック)
本発明で使用するカーボンブラックは、本発明の効果向上の観点から、窒素吸着比表面積(NSA)が40~320m/gであるのが好ましく50~220m/gであるのがさらに好ましい。
窒素吸着比表面積(NSA)は、JIS K6217-2に準拠して求めることができる。
【0014】
(スタッドタイヤ用ゴム組成物の配合割合)
本発明のスタッドタイヤ用ゴム組成物は、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックを50質量部以上配合してなることを特徴とする。
前記カーボンブラックの配合量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し50質量部未満であると、高速・高荷重域のコーナリング性能が低下する。
前記カーボンブラックの配合量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対し50~90質量部であるのが好ましく60~80質量部であるのがさらに好ましい。
【0015】
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;充填剤;老化防止剤;可塑剤;樹脂;硬化剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0016】
なお、加硫剤としての硫黄の配合量は前記ジエン系ゴム100質量部に対し0.5~2.0質量部であるのが好ましく、1.0~1.8質量部であるのがさらに好ましい。
【0017】
また本発明のスタッドタイヤ用ゴム組成物は、走行中のスタッドピン抜けを防ぎスタッドピン保持性の観点から、300%モジュラスが、14.5MPa以上であることが好ましく、14.5~17.5MPaであることがさらに好ましい。なお300%モジュラスは、JIS K6251に準拠してJIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を用い、JIS K6251に準拠し、温度23℃、引張り速度500mm/分の条件で測定するものとする。
【0018】
本発明のスタッドタイヤ用ゴム組成物は、加硫後のモノスルフィド結合が8~18質量%であり、かつ前記カーボンブラックの体積分率が22~25%である。
前記モノスルフィド結合を8質量%以上にすることにより、硬度の温度依存性を抑制し、氷雪上路面での追従性を高めることができる。また前記モノスルフィド結合を18質量%以下にすることにより、氷雪上路面での追従性を高めることができる。また前記カーボンブラックの体積分率を22~25%にすることにより、硫黄加硫後のゴム組成物の硬度を高めつつ、氷雪上路面での追従性並びにスタッドピンの保持能力への悪影響を最大限に抑制することを可能にしている。
前記モノスルフィド結合は、8~14質量%であるのがさらに好ましい。
前記モノスルフィド結合は、例えば加硫促進剤の量を調整する方法や、加硫温度を低温方向に調整する方法により制御することができる。具体的には、加硫促進剤と硫黄の比率(加硫促進剤/硫黄)を0.4~2.0の範囲内とし、加硫温度は135℃から160℃の範囲に調整することが好ましい。前記カーボンブラックの体積分率は、カーボンブラックの配合量の調整により制御することができる。
【0019】
なお、前記モノスルフィド結合の量は、トルエン膨潤法により測定される。
トルエン膨潤法は、スルフィド結合を選択的に切断する試薬(下記第1表参照)を用いて加硫後のゴム組成物(試験片:7mm×7mm×1mm)を処理し、未処理サンプルおよび各処理サンプルのトルエン膨潤度から、Flory-Rehner式を適用して、ポリスルフィド網目鎖密度を求める方法である。なお、本発明においては、この方法は、「ゴム試験法(日本ゴム協会編、丸善株式会社、平成18年1月30日発行)」の第407~409頁に記載の方法に準じて行う。
ここで、下記第1表中、「THF/トルエン(1:1)」は、テトラヒドロフラン(THF)90mLとトルエン90mLとの混合液を示し、「THF/トルエン(1:1)+2-プロパンチオール+ピペリジン」は、THF90mLとトルエン90mLと2-プロパンチオール3.31mL(0.4mol)とピペリジン3.35mL(0.4mol)との混合液を示し、「THF/トルエン(1:1)+リチウムアルミニウムハイドライド」は、THF200mLとトルエン200mLとリチウムアルミニウムハイドライド10gとの混合溶液を示す。
また、各試薬による処理は、試験片を浸漬させて、室温下で8時間撹拌して行う。
その後、トルエンに16時間浸漬させて、トルエン膨潤度を求める。
【0020】
【表1】
【0021】
νt:トータル網目鎖密度(100%)
νm/νt×100:モノスルフィド網目鎖密度
νd(=(νm+d)-νm)/νt×100:ジスルフィド網目鎖密度
νp(=νt-(νm+d))/νt×100:ポリスルフィド網目鎖密度
【0022】
また、前記カーボンブラックの体積分率は、カーボンブラックの組成物中の配合重量をそれぞれの原料比重で割ることにより求められる体積をAとし、組成物総重量を組成物比重で割って求められる組成物体積をBとしたとき、体積Bに対する体積Aの割合(A/B)として求めることができる。
【0023】
また本発明のスタッドタイヤ用ゴム組成物は従来のタイヤの製造方法に従ってスタッドタイヤを製造するのに使用することができる。本発明のスタッドタイヤ用ゴム組成物は氷雪上路面での追従性、高速高荷重領域のブロック剛性並びにスタッドピンの保持能力を高次にバランスし得ることから、スタッドタイヤのトレッド、とくにキャップトレッドに用いることが好適である。
また本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
【0024】
図1は本発明のスタッドタイヤの実施形態からなる、スタッドピンを打ち込んだ後のスタッドタイヤの正面図である。
【0025】
図1に示すように、トレッド部1には、タイヤ周方向に形成された複数本の縦溝2とタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝3とが形成され、これら縦溝2及び横溝3により複数のブロック4が区画されている。
【0026】
ブロック4には、複数のスタッドピン20が埋設されている。
図2はスタッドピン20を例示する側面図、図3はトレッド部に形成した植え込み穴10を例示する断面図、図4図2のスタッドピンを図3の植え込み穴に埋設した状態を示す断面図である。なお、これら図示の例はスタッドピンとして、ダブルフランジタイプのスタッドピンを記載しているが、本発明のスタッドタイヤは、シングルフランジタイプのスタッドピンを使用することもできる。
【0027】
図2に示すように、スタッドピン20は、円柱状の胴部21、踏面側フランジ部22、底側フランジ部23およびチップ部24により構成されている。踏面側フランジ部22は胴部21よりも径が大きくなるように、胴部21の踏面側(タイヤ径方向外側)に形成されている。チップ部24は踏面側フランジ部22からピン軸方向に突き出すように、他の構成部材よりも硬質な材料で成形されている。底側フランジ部23は、胴部21よりも径が大きくなるように、胴部21の底側(タイヤ径方向内側)に形成されている。
【0028】
一方、植え込み穴10は、図3に示すように、スタッドピン20の踏面側フランジ部22に対応する位置に配置された上側円筒部11と、スタッドピン20の胴部21に対応する位置に配置された下側円筒部12と、この下側円筒部12に隣接する底部13とを備える。ここで上側円筒部11及び底部13の内径は下側円筒部12の内径よりもそれぞれ大きくなっている。
【0029】
なおシングルフランジタイプのスタッドピンの場合、踏面側フランジ部22の径を円柱状の胴部21の径と同じにすることができる。またシングルフランジタイプに対応する植え込み穴についても、上側円筒部11の内径を下側円筒部12の内径と同じにすることができる。
【0030】
ダブルフランジタイプおよびシングルフランジタイプのスタッドピンのいずれにおいても、底側フランジ部23の径は、円柱状の胴部21の径よりも大きくする。また下側円筒部12の内径の内径は、植え込み穴の底部13の内径よりも小さくする。
【0031】
図4に示すように、トレッド部に設けられた植え込み穴10にスタッドピン20を植設すると、植え込み穴10のくびれた下側円筒部12がスタッドピン20を締め付け、スタッドピン20を抜けにくくする。またスタッドピン20の底側フランジ部23の径を、下側円筒部12の内径よりも大きくしたので、スタッドピン20がより一層抜けにくくなる。
【0032】
スタッドピン20の底側フランジ部23の径Dと植え込み穴10の下側円筒部12の内径dとの比(D/d)は、特に限定されるものではないが、好ましくは2.5~5.5より好ましくは3.0~4.0にするとよい。比(D/d)をこのような範囲内にすることにより、スタッドピンが脱落するのを抑制することができる。
【実施例0033】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0034】
標準例、実施例1~4および比較例1~7
サンプルの調製
表2に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で150℃で30分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。得られたゴム組成物について以下に示す試験法で物性を測定した。なお、カーボンブラック体積分率(CB体積分率)、モノスルフィド結合の量および300%モジュラス(300%Mod)は上述の方法により測定した。
【0035】
氷上走行安定性:上記で得られた加硫後のゴム組成物をトレッド部に使用し、タイヤサイズが225/40R18の空気入りタイヤを製作した。なお、該空気入りタイヤは、図1に示すようなトレッド部1の形状を有し、ブロック4には、合計100本のスタッドピン20が打ち込まれている。得られた空気入りタイヤをリムサイズ17×8Jのホイールに組付け、国産2リットルクラスの試験車両に装着し、空気圧240kPaの条件で、実車走行を氷路面からなる1周1.2kmのテストコース上で行い、そのときのラップタイムを測定した。結果は、標準例のラップタイムを100とする指数で示した。指数が大きいほど、ラップタイムが短く、氷上走行安定性に優れることを意味する。
高荷重走行安定性:上記テストコースにおける高速コーナーの区間のラップタイムを測定した。結果は、標準例のラップタイムを100とする指数で示した。指数が大きいほど、高速コーナーの区間のラップタイムが短く、高荷重走行安定性に優れることを意味する。
ピン保持性:上記で得られた空気入りタイヤを装着した試験車両を、上記テストコースの乾燥路面で10,000km走行させた。その後、ブロック4に残存したスタッドピンの数を数えた。結果は、標準例における残存スタッドピンの数を100とする指数で示した。指数が大きいほど、残存スタッドピンの数が多く、ピン保持性に優れることを意味する。
【0036】
結果を表2に示す。なお表2に体積Aおよび体積Bを併せて示した。体積Aは、カーボンブラックの組成物中の配合重量をそれぞれの原料比重で割ることにより求められる体積であり、体積Bは、組成物総重量を組成物比重で割って求められる組成物体積である。カーボンブラックの体積分率は、体積Bに対する体積Aの割合(A/B)で求められる。
【0037】
【表2】
*1:NR(RSS#3)
*2:SBR(日本ゼオン株式会社製 Nipol 1502)
*3:BR(日本ゼオン株式会社製 Nipol BR1220)
*4:カーボンブラック1(東海カーボン社製商品名シースト9、窒素吸着比表面積(NSA)=139m/g)
*5:カーボンブラック2(三菱ケミカル株式会社製DIABLACK GT2、窒素吸着比表面積(NSA)=320m/g)
*6:オイル(出光興産株式会社製ダイアナプロセスNH-70S)
*7:老化防止剤(NOCIL LIMITED製PILFLEX 13)
*8:酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種)
*9:ステアリン酸(日油株式会社製ビーズステアリン酸YR)
*10:加硫促進剤(大内新興化学社製商品名 ノクセラーCZ-G)
*11:硫黄(四国化成工業株式会社製ミュークロンOT-20)
【0038】
表2の結果から、各実施例のゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックを50質量部以上配合してなり、硫黄加硫後のモノスルフィド結合が8~18質量%であり、かつカーボンブラックの体積分率が22~25%であるので、標準例のゴム組成物に比べ、氷雪上路面での追従性(上記氷上走行安定性)、高速高荷重領域のブロック剛性(上記高荷重走行安定性)並びにスタッドピンの保持能力(上記ピン保持性)を高次にバランスし得ることが分かる。
【0039】
一方、比較例1、2、4は、カーボンブラックの体積分率が本発明で規定する上限を超え、またモノスルフィド結合が本発明で規定する下限未満であるので、氷雪上路面での追従性(上記氷上走行安定性)、高速高荷重領域のブロック剛性(上記高荷重走行安定性)並びにスタッドピンの保持能力(上記ピン保持性)を高次にバランスできない。
比較例3は、カーボンブラックの体積分率が本発明で規定する上限を超えているので、氷雪上路面での追従性(上記氷上走行安定性)が低下した。
比較例5は、カーボンブラックの体積分率およびモノスルフィド結合が本発明で規定する下限未満であるので、氷雪上路面での追従性(上記氷上走行安定性)および高速高荷重領域のブロック剛性(上記高荷重走行安定性)が低下した。
比較例6は、モノスルフィド結合が本発明で規定する上限を超えているので、氷雪上路面での追従性(上記氷上走行安定性)が低下した。
比較例7は、カーボンブラックの体積分率が本発明で規定する上限を超えているので、氷雪上路面での追従性(上記氷上走行安定性)が低下した。
【0040】
本発明は、下記実施形態を包含する。
実施形態1:
ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックを50質量部以上配合してなる硫黄加硫されたスタッドタイヤ用ゴム組成物であって、
モノスルフィド結合を8~18質量%有し、かつ
前記カーボンブラックの体積分率が22~25%である
ことを特徴とするスタッドタイヤ用ゴム組成物。
実施形態2:
前記ジエン系ゴムが、天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴム、並びに、ブタジエンゴムを必須成分とし、前記ジエン系ゴム全体を100質量部としたときに、前記天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴムが50~80質量部、およびブタジエンゴムが50~20質量部を占めることを特徴とする実施形態1に記載のスタッドタイヤ用ゴム組成物。
実施形態3:
前記スタッドタイヤ用ゴム組成物の300%モジュラスが、14.5MPa以上であることを特徴とする実施形態1または2に記載のスタッドタイヤ用ゴム組成物。
実施形態4:
実施形態1~3のいずれかに記載のスタッドタイヤ用ゴム組成物をキャップトレッドに用いたスタッドタイヤ。
【符号の説明】
【0041】
1 トレッド部
2 縦溝
3 横溝
4 ブロック
10 植え込み穴
11 上側円筒部
12 下側円筒部
13 底部
20 スタッドピン
21 胴部
22 踏面側フランジ部
23 底側フランジ部
24 チップ部
図1
図2
図3
図4