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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100662
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 512
H01G4/30 515
H01G4/30 201K
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127169
(22)【出願日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】10-2023-0006101
(32)【優先日】2023-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】尹 秉吉
(72)【発明者】
【氏名】尹 碩▲ヒュン▼
(72)【発明者】
【氏名】金 珍友
(72)【発明者】
【氏名】田 仁浩
(72)【発明者】
【氏名】具 本亨
(72)【発明者】
【氏名】金 世容
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲ミン▼禎
(72)【発明者】
【氏名】金 建會
(72)【発明者】
【氏名】李 孝柱
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC04
5E001AC10
5E001AD04
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E001AH01
5E001AH05
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE05
5E082EE18
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG03
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082PP03
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】常温誘電率、高圧印加時の誘電率、X7S特性及び高温高圧印加時のMTTFが改善された積層型電子部品を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、上記内部電極との界面に隣接した領域である界面部を含み、上記界面部は、原子比率1.0%≦Sn/(Ba+Ti+Sn)≦1.5%を満たす領域を含むことができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置されている外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、前記内部電極との界面に隣接した領域である界面部を含み、
前記界面部は、原子比率1.0%≦Sn/(Ba+Ti+Sn)≦1.5%を満たす領域を含む、積層型電子部品。
【請求項2】
前記界面部は、前記内部電極との界面から30nm以内の領域である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記誘電体層は、BaTiO系主成分及び副成分を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記副成分は、原子価可変アクセプタ元素を含む第1副成分を含み、
前記原子価可変アクセプタ元素は、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち一つ以上を含み、
前記第1副成分に含まれた元素のモル数は、Ti100モルに対して0.4モル以上0.55モル以下である、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記副成分は、Mgを含む第2副成分を含み、
前記第2副成分に含まれた元素のモル数は、Ti100モルに対して0.3モル以上0.6モル以下である、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記副成分は、希土類元素を含む第3副成分を含み、
前記希土類元素は、Y、Dy、Tb、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tm、La及びYbのうち一つ以上を含み、
前記第3副成分に含まれた元素のモル数は、Ti100モルに対して1.3モル以上1.5モル以下である、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記副成分は、Si及びAlのうち少なくとも一つを含む第4副成分を含み、
前記第4副成分に含まれた元素のモル数は、Ti100モルに対して2.15モル以上3.15モル以下である、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、
前記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つは、内側のコア部及び前記コア部の少なくとも一部をカバーするシェル部を含むコア-シェル構造を含み、
前記コア部は、原子比率0%<Sn/(Ba+Ti+Sn)≦0.5%を満たす領域を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記シェル部は、原子比率0.5%<Sn/(Ba+Ti+Sn)≦5.0%を満たす領域を含む、請求項8に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記コア-シェル構造の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つのコア部のサイズは、120nm以上160nm以下である、請求項8に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記複数の誘電体結晶粒の平均サイズは、140nm以上260nm以下である、請求項8に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記誘電体層は、複数の誘電体層を含み、
前記複数の誘電体層のうち少なくとも一つの厚さは、2.1μm以上2.5μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
常温誘電率≧3000、7V/μmでのDC-bias誘電率≧1000、-55℃以上125℃以下の温度範囲でのTCC≦±22%、及び温度150℃で電界42V/μmを印加する加速試験条件におけるMTTF≧100時間のうち少なくとも一つの特性を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
複数の誘電体層及び複数の内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置されている外部電極と、を含み、
前記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、前記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つは、内側のコア部及び前記コア部の少なくとも一部をカバーするシェル部を含むコア-シェル構造を含み、
前記シェル部は、原子比率0.5%<Sn/(Ba+Ti+Sn)≦5.0%を満たす領域を含み、
前記複数の誘電体層のうち少なくとも一つの厚さは、2.1μm以上2.5μm以下である、積層型電子部品。
【請求項15】
前記誘電体層は、前記内部電極との界面に隣接した領域である界面部を含み、
前記界面部は、原子比率1.0%≦Sn/(Ba+Ti+Sn)≦1.5%を満たす領域を含む、請求項14に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
前記界面部は、前記内部電極との界面から30nm以内の領域である、請求項15に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)等の映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話等の様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用され得る。コンピュータ、モバイル機器等、各種の電子機器が小型化、高出力化するにつれて、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化への要求が増大している。
【0004】
近年、高信頼性を要求する電装用MLCC市場が拡大するにつれて、これに対する需要が急増している。このような電装用MLCCは微細電流の制御が重要であり、高温、高湿、外部からの衝撃や振動などの過酷な環境で駆動するために、同一容量に比べて高い定格電圧及び高信頼性が要求される。
【0005】
このようなMLCCを実現するために様々な添加剤元素を投入しており、添加剤元素の中で原子価固定アクセプタ、原子価可変アクセプタ、希土類が信頼性に多くの影響を及ぼすことが知られている。すなわち、添加剤元素の添加組成比を最適化して信頼性に優れたチップ(chip)を作製することがMLCC分野の課題解決と見なすことができる。さらに、同じ誘電体組成であっても、微細構造、元素の固溶程度及び分布、並びに工程条件によって特性のばらつきが非常に大きいことが知られており、最適な組成設計に対する重要度は高いといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10-2022-0156269号
【特許文献2】韓国公開特許公報第10-2022-0103601号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、常温誘電率、高圧印加時の誘電率、X7S特性及び高温高圧印加時のMTTFが改善された積層型電子部品を提供することである。
【0008】
但し、本発明が解決しようとするいくつかの課題は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、上記内部電極との界面に隣接した領域である界面部を含み、上記界面部は、原子比率1.0%≦Sn/(Ba+Ti+Sn)≦1.5%を満たす領域を含むことができる。
【0010】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、複数の誘電体層及び複数の内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つは、内側のコア部及び上記コア部の少なくとも一部をカバーするシェル部を含むコア-シェル構造を含み、上記シェル部は、原子比率0.5%<Sn/(Ba+Ti+Sn)≦1.0%を満たす領域を含み、上記複数の誘電体層のうち少なくとも一つの厚さは2.1μm以上2.5μm以下であり得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明のいくつかの効果の一つは、常温誘電率が向上したことである。
【0012】
本発明のいくつかの効果の一つは、高圧印加時の誘電率が向上したことである。
【0013】
本発明のいくつかの効果の一つは、X7S温度特性を満たすことである。
【0014】
本発明のいくつかの効果の一つは、高温高圧印加時のMTTFが改善されることである。
【0015】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示す。
図2】内部電極の積層構造を示す分離斜視図を概略的に示す。
図3図1のI-I’線に沿った断面図を概略的に示す。
図4図1のII-II’線に沿った断面図を概略的に示す。
図5図3のP領域の拡大図を概略的に示す。
図6】誘電体結晶粒の構造を概略的に示す。
図7】(a)は、本発明の一実施形態の誘電体結晶粒にラインプロファイルを実施した領域を表したイメージであり、(b)は、ラインプロファイルを実施した領域のSn含量を示すグラフである。
図8】(a)は、本発明の一実施形態の誘電体結晶粒にラインプロファイルを実施した領域を表したイメージであり、(b)及び(c)は、ラインプロファイルを実施した領域のSn含量を示すグラフである。
図9】本発明の一実施形態の誘電体層をSEMで撮影したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさ等は、より明確な説明のために誇張されることがあり、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0018】
図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示したものに限定されるものではない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素に対しては、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0019】
図面において、第1方向は積層方向又は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0020】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものであり、図2は、内部電極の積層構造を示す分離斜視図を概略的に示すものであり、図3は、図1のI-I’線に沿った断面図を概略的に示すものであり、図4は、図1のII-II’線に沿った断面図を概略的に示すものであり、図5は、図3のP領域の拡大図を概略的に示すものであり、図6は、誘電体結晶粒の構造を概略的に示すものであり、図7(a)は、本発明の一実施形態の誘電体結晶粒にラインプロファイルを実施した領域を表したイメージであり、図7(b)は、ラインプロファイルを実施した領域のSn含量を示すグラフであり、図8(a)は、本発明の一実施形態の誘電体結晶粒にラインプロファイルを実施した領域を表したイメージであり、図8(b)及び図8(c)は、ラインプロファイルを実施した領域のSn含量を示すグラフであり、図9は、本発明の一実施形態の誘電体層をSEMで撮影したイメージである。
【0021】
以下、図1図9を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品について詳細に説明する。但し、積層型電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は、誘電体組成物を利用する様々な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、又はサーミスタなどにも適用することができる。
【0022】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、上記本体110上に配置される外部電極131、132と、を含み、誘電体層111は、内部電極121、122との界面に隣接した領域である界面部111bを含み、界面部111bは1.0%≦Sn/(Ba+Ti+Sn)≦1.5%を満たす領域を含むことができる。
【0023】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0024】
より具体的には、本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量を形成する容量形成部Acを含むことができる。
【0025】
本体110の具体的な形状に特に限定はないが、図示のように、本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0026】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面1、2、第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に互いに対向する第3及び第4面3、4、第1~第4面1、2、3、4と連結され、第3方向に互いに対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0027】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0028】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り限定されない。一般的に、ペロブスカイト(ABO)系材料を使用することができ、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。チタン酸バリウム系材料は、BaTiO系セラミック粉末を含むことができ、セラミック粉末の例示として、BaTiO、BaTiOにCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCa)TiO(0<x<1)、Ba(Ti1-yCa)O(0<y<1)、(Ba1-xCa)(Ti1-yZr)O(0<x<1、0<y<1)又はBa(Ti1-yZr)O(0<y<1)などが挙げられる。
【0029】
また、誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO)などの粉末に、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0030】
一方、IT用MLCCだけでなく、自動車電装用MLCCの市場が拡大するにつれて、同一容量帯で定格電圧が高く信頼性に優れた製品の需要が増加している。最近、高信頼性を要求する電装用MLCC市場が拡大し、これに対する需要が急増している。このような電装用MLCCは、微細電流の制御が重要であり、高温、高湿、外部からの衝撃や振動などの過酷な環境で駆動するために、同一容量に比べて高い定格電圧及び高信頼性が要求される。
【0031】
一般的に、結晶粒のサイズが小さく粒界が多いほど、誘電体の信頼性が向上することが知られている。MLCC誘電体組成物の添加剤元素の中で、原子価固定アクセプタ(fixed valence acceptor)、原子価可変アクセプタ(variable valence acceptor)である遷移金属元素、そして希土類元素(rare earth elements)が信頼性に与える影響は既に広く知られており、一般的に、これらを含む誘電体添加元素組成比の最適化によって信頼性が良好な条件を選定することになる。BME(Base Metal Electrode)MLCCが産業化される間、信頼性を向上させるための組成の最適化作業が継続的に進められてきた。しかし、同じ誘電体組成であっても、微細構造、添加剤元素の分布と固溶の程度、並びに工程条件によって信頼性に大きな差が生じることがある。
【0032】
より具体的には、現在のX5R、X7R、X8R、Y5Vなどの高容量BME MLCCの誘電体は、BaTiO母材、或いはCa、Zrなどが一部固溶した(Ba,Ca)(Ti,Ca)O、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O及びBa(Ti,Zr)Oなどの母材に、Mg、Alなどのような原子価固定アクセプタと、Y、Dy、Ho、Erなどのようなドナー(donor)としての役割を果たす希土類元素とを共にドーピング(co-doping)し、Mn、V、Crのような原子価可変アクセプタ、及び余分なBa、並びにSiO或いはこれを含む焼結助剤などの添加剤をさらに添加して焼結した材料に基づいている。還元雰囲気で焼成する場合に高容量MLCCの正常な容量及び絶縁特性を実現するためには、粒成長の抑制及び耐還元性を実現しなければならず、Mgのような原子価固定アクセプタを適正量添加することにより、この2つの効果を実現できることが知られている。しかし、Mgのような原子価固定アクセプタのみを添加する場合には、誘電体の耐電圧特性及び信頼性が不十分であり、Mn及びVのような原子価可変アクセプタである遷移金属元素と希土類元素とを共に添加することで、耐電圧及び信頼性の向上効果が得られるようになる。前述のように、これらの元素のほとんどは共にドーピング(co-doping)されており、BaTiO母材結晶粒のシェル(shell)領域に固溶してコア-シェル(core-shell)構造を形成し、MLCCの温度による安定した容量特性及び信頼性を実現することができる。したがって、これらの添加剤元素が二次相に含まれたまま偏析(segregation)せずにシェル(shell)領域のBaTiO結晶格子によく固溶した場合にのみ信頼性が良好であるものと予想できる。
【0033】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、優れたDC-bias特性及び高信頼性が要求される電装用MLCCの開発において、副効果を引き起こし得る添加剤の固溶を最小化しながら優れた特性を有する誘電体組成物を提供することができる。
【0034】
本発明の一実施形態において、誘電体層111は、内部電極121、122との界面に隣接した領域である界面部111bを含むことができる。
【0035】
より具体的には、図5を参照して説明すると、誘電体層111は、内部電極121、122との界面に隣接した領域である界面部111bと、内部電極121、122との界面に隣接していない領域である中央部111aとを含むことができる。言い換えれば、誘電体層111は、中央部111aと界面部111bとを含むことができる。
【0036】
このとき、界面部111bは、原子比率1.0%≦Sn/(Ba+Ti+Sn)≦1.5%を満たす領域を含むことができる。
【0037】
ここで、Sn/(Ba+Ti+Sn)において、それぞれのBa、Ti及びSnは、通常の測定方法で検出可能な元素のモル数又はEDS測定による元素の原子百分率(at%)の値を代入した結果であり得る。
【0038】
これにより、本発明の目標特性である、常温誘電率≧3000、7V/μmでのDC-bias誘電率≧1000、-55℃以上125℃以下の温度範囲でのTCC≦±22%、及び温度150℃で電界42V/μmを印加する加速試験条件におけるMTTF≧100時間を満たすことができる。
【0039】
界面部111bは、内部電極121、122との界面から30nm以内の領域を意味することができる。
【0040】
より具体的には、第1内部電極121と第2内部電極122との間に誘電体層111が配置された場合において、誘電体層111のうち第1内部電極121との界面から誘電体層111の中心方向に30nm以内の領域を第1界面部と定義することができ、誘電体層111のうち第2内部電極122との界面から誘電体層111の中心方向に30nm以内の領域を第2界面部と定義することができる。
【0041】
本発明において、特に事情がない限り、界面部111bに対する説明は、第1界面部及び第2界面部に対する説明を含むものとする。
【0042】
すなわち、誘電体層111のうち、内部電極121、122との界面から30nm以内に、原子比率1.0%≦Sn/(Ba+Ti+Sn)≦1.5%を満たす領域が存在することができ、つまり、界面部は、原子比率1.0%≦Sn/(Ba+Ti+Sn)≦1.5%を満たす領域を含むことができる。
【0043】
本発明の一実施形態である図8を参照して説明すると、誘電体層と隣接した内部電極との界面でTEMによってラインプロファイル分析したとき、誘電体層方向に30nm以内の領域に原子比率1.0%≦Sn/(Ba+Ti+Sn)≦1.5%を満たす地点が存在することが確認できる。
【0044】
より具体的に、図8(a)のLine#1領域にTEMによってラインプロファイル分析を行った図8(b)を参照すると、内部電極と誘電体層との界面に該当するLine#1の中央地点(0nm)を起点として、-100nm~0nmの領域は内部電極であり、0nm~+100nmの領域は誘電体層に該当し、界面部である0nm~+30nmの領域に原子比率1.0%≦Sn/(Ba+Ti+Sn)≦1.5%を満たすピーク(peak)形態が存在することが確認できる。
【0045】
同様に、図8(a)のLine#2の領域にTEMによってラインプロファイル分析を行った図8(c)を参照すると、誘電体層と内部電極との界面に該当するLine#2の中心地点(0nm)を起点として、-100nm~0nmの領域は誘電体層であり、0nm~+100nmの領域は内部電極に該当し、界面部である-30nm~0nmの領域に原子比率1.0%≦Sn/(Ba+Ti+Sn)≦1.5%を満たすピーク(peak)形態が存在することが確認できる。
【0046】
一方、誘電体層111は、複数の誘電体結晶粒を含むことができ、複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つは、内側のコア部11及びコア部11の少なくとも一部をカバーするシェル部12を含むコア-シェル構造を含むことができる。
【0047】
言い換えれば、誘電体結晶粒は、コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒10と、コア-シェル構造を有さない誘電体結晶粒10’とを含むことができる。
【0048】
ここで、コア部11は、原子比率0%≦Sn/(Ba+Ti+Sn)≦0.5%を満たす領域、より好ましくは、原子比率0%<Sn/(Ba+Ti+Sn)≦0.5%を満たす領域と定義することができる。
【0049】
シェル部12は、原子比率0.5%<Sn/(Ba+Ti+Sn)≦5.0%を満たす領域、より好ましくは、シェル部12は原子比率0.5%<Sn/(Ba+Ti+Sn)≦1.0%を満たす領域と定義することができる。
【0050】
図6を参照して、コア部11及びシェル部12に含まれた各元素の原子百分率(at%)を測定する方法について説明すると、任意の一つの誘電体結晶粒10において、誘電体結晶粒10の一結晶粒界(grain boundary)と他の結晶粒界とを結ぶ直線のうち、最も長さの長い直線を引いた後、等間隔で9個の点(P1~P9)をつけて、P1~P9の各点における元素含量をSTEM-EDSを用いて分析して測定することができる。
【0051】
より具体的に、本発明の一実施形態である図7を参照して説明すると、任意の一つの誘電体結晶粒10において、一結晶粒界と他の結晶粒界とを結ぶ最も長い直線上に存在する等間隔である9個の点(P1~P9)に含まれた元素の原子百分率(at%)をSTEM-EDS装置で測定することができる。このとき、原子比率0%≦Sn/(Ba+Ti+Sn)≦0.5%を満たす地点であるP2~P7をコア部11と定義することができ、原子比率0.5%<Sn/(Ba+Ti+Sn)≦5.0%を満たす地点であるP1、P8、P9をシェル部12と定義することができる。
【0052】
コア部11が原子比率0%≦Sn/(Ba+Ti+Sn)≦0.5%を満たすか、又はシェル部12が原子比率0.5%<Sn/(Ba+Ti+Sn)≦5.0%を満たすことにより、本発明の目標特性である、常温誘電率≧3000、7V/μmでのDC-bias誘電率≧1000、-55℃以上125℃以下の温度範囲でのTCC≦±22%、及び温度150℃で電界42V/μmを印加する加速試験条件におけるMTTF≧100時間を満たすことができる効果がある。
【0053】
一方、誘電体結晶粒の平均サイズは特に限定されないが、例えば、140nm以上260nm以下であってもよい。
【0054】
誘電体結晶粒の平均サイズが140nm以上260nm以下である場合、誘電特性に優れることができ、焼結及び粒成長の制御が容易であり得る。
【0055】
ここで、誘電体結晶粒の平均サイズは、誘電体層の任意の領域、例えば、任意の3μm×4μm(横×縦)の領域をSEMで観察したとき、当該領域に存在する誘電体結晶粒のサイズを測定して平均した値であることができる。このとき、誘電体結晶粒のサイズは、一結晶粒界から他の結晶粒界まで最も長い直線のサイズに該当することができ、前述の方法で測定した誘電体結晶粒のサイズを平均して誘電体結晶粒の平均サイズを計算することができる。
【0056】
より具体的には、本発明の一実施形態である図9を参照して説明すると、本体110の第1及び第2方向の断面(cross-section)を基準に、中央部に位置する任意の一つの誘電体層の中心をSEMによって3μm×4μmサイズのイメージを得た後、当該領域に存在する誘電体結晶粒のサイズを測定し、これらの平均値を計算して求めることができる。前述の方法で測定した誘電体結晶粒の平均サイズは194.48nmであり、最大結晶粒サイズは397.75nm、最小結晶粒サイズは81.50nmであり、標準偏差(Stdev)値は63.00nmと測定された。標準偏差値を平均値で除した変動係数(CV:coefficient of variation)値(標準偏差/平均)は0.3220であって、これは、誘電体結晶粒のサイズ分布が比較的均一であるものと解釈することができる。
【0057】
誘電体結晶粒のサイズ分布が比較的均一であることにより、信頼性の高い積層型電子部品の提供が可能になる。
【0058】
誘電体結晶粒のサイズ分布が均一であることは、BaTiO母材粒子の表面にSnをコーティングすることにより、粒成長の制御が容易になった結果であり得、Snの添加によって信頼性が向上する効果を奏する。
【0059】
また、コア部11のサイズは特に限定されないが、例えば、120nm以上160nm以下であってもよい。
【0060】
コア部のサイズは、一結晶粒界から他の結晶粒界まで最も長い直線のサイズに該当することができる。
【0061】
一般的に、コア部11のサイズは、その基礎となる焼成前の母材粉末であるBaTiOの誘電体粒子サイズに影響を受けることが知られており、100nm級の粒子サイズを有するBaTiOの誘電体粒子を用いる場合、粒成長の制御が容易であり、目標とする誘電特性、電気的特性など、高信頼性を同時に満たすことができる。
【0062】
また、母材粉末の表面にSnをコーティングしても、コア部11の内部への拡散が容易ではないため、誘電特性を低下させることなく、シェル部12の適正なSn含量を制御して信頼性を向上させることができる。
【0063】
本発明の一実施形態において、誘電体層111は誘電体組成物を用いて形成することができ、誘電体組成物はBaTiO系主成分及び副成分を含むことができる。
【0064】
ここで、誘電体組成物は焼成前の誘電体物質を意味することができ、誘電体層111は焼成後の誘電体物質を意味することができる。
【0065】
以下では、誘電体組成物に含まれ得る副成分について具体的に説明する。ここで説明する副成分は、焼成前の添加剤の酸化物又は炭酸塩の投入含量を基準に説明するが、誘電体組成物を焼成した後には、酸化物又は炭酸塩の形態ではない、誘電体物質、例えば、BaTiOに固溶又は元素位置(site)を置換した形態で存在することができる。焼成前後の元素基準の含量は、特別な事情がない限り、大きな誤差値を有さないことがあり、焼成後のチップ(chip)の状態における元素の含量は、SEM-EDS又はTEM-EDSなどの様々な方法で測定できることは、通常の技術者に自明であるといえる。
【0066】
a)第1副成分
本発明の一実施形態によれば、誘電体組成物は、原子価可変アクセプタ元素の酸化物又は炭酸塩のうち一つ以上を含む第1副成分をさらに含み、原子価可変アクセプタ元素は、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co及びZnのうち一つ以上を含み、第1副成分に含まれた元素のモル数は、Ti100モルに対して0.4モル以上0.55モル以下であり得る。
【0067】
第1副成分に含まれた原子価可変アクセプタ元素は、誘電体組成物が適用された積層型電子部品の焼成温度の低下及び高温耐電圧特性を向上させる役割を果たすことができる。
【0068】
第1副成分に含まれた元素のモル数が0.4モル未満である場合、温度特性がX7Sを満たさない可能性があり、MTTFも100時間以下となる可能性がある。第1副成分に含まれた元素のモル数が0.55モル超過である場合、誘電率が3000以下に低下するおそれがある。
【0069】
b)第2副成分
本発明の一実施形態によれば、誘電体組成物は、Mgの酸化物又は炭酸塩のうち一つ以上を含む第2副成分をさらに含み、第2副成分に含まれた元素のモル数は、Ti100モルに対して0.3モル以上0.6モル以下であり得る。
【0070】
第2副成分のMgは高温特性を高める役割を果たすことができる。
【0071】
第2副成分に含まれた元素のモル数が0.3モル未満である場合、MTTFが100時間以下となる可能性がある。第2副成分に含まれた元素のモル数が0.6モル超過である場合、温度特性がX7Sを満たさない可能性がある。
【0072】
c)第3副成分
本発明の一実施形態によれば、誘電体組成物は、希土類元素の酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含む第3副成分をさらに含み、希土類元素は、Y、Dy、Tb、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tm、La及びYbのうち一つ以上を含み、第3副成分に含まれた元素のモル数は、Ti100モルに対して1.3モル以上1.5モル以下であり得る。このとき、第3副成分に含まれた元素が2種以上である場合、2種以上の元素のモル数を合計した値を意味することができる。
【0073】
第3副成分に含まれた希土類元素は、高温耐電圧特性を向上させる役割を果たすことができる。
【0074】
第3副成分に含まれた元素のモル数が1.3モル未満である場合、MTTFが100時間以下に減少する可能性がある。第3副成分に含まれた元素のモル数が1.5モル超過である場合、誘電率が3000以下に低下する可能性がある。
【0075】
e)第4副成分
本発明の一実施形態によれば、誘電体組成物は、Si及びAlのうち少なくとも一つの酸化物又は炭酸塩、及びSiを含むガラスのうち一つ以上を含む第4副成分をさらに含み、第4副成分に含まれた元素のモル数は、Ti100モルに対して2.15モル以上3.15モル以下であり得る。
【0076】
第4副成分に含まれたSi及びAlは、焼成緻密度を向上させ、誘電率及びDc-bias特性を向上させる役割を果たすことができる。
【0077】
第4副成分に含まれた元素のモル数が0.4モル未満である場合、温度特性がX7Sを満たさない可能性がある。第4副成分に含まれた元素のモル数が0.55モル超過である場合、誘電率が3000以下となる可能性がある。
【0078】
以下では、誘電体層111に含まれた各元素の含量を測定する方法について説明するが、これに特に限定されるものではない。
【0079】
非破壊工法の場合、TEM-EDSを用いて、チップの中央部で誘電体結晶粒内部の成分を分析することができる。焼結が完了した本体の断面のうち誘電体層を含む領域で集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装置を用いて薄片化された分析試料を準備する。そして、薄片化された試料をArイオンミリングを用いて表面のダメージ層を除去し、その後STEM-EDSを用いて得られたイメージで各成分のマッピング(mapping)と定量分析を行う。この場合、各成分の定量分析グラフは、各元素の質量分率(wt%)で得られることができるが、これを原子百分率(at%)又はモル分率(mol%)に換算して表すことができる。
【0080】
また、破壊工法の場合、チップを粉砕して内部電極を除去した後、誘電体層部分を選別し、このように選別された誘電体層を誘導結合プラズマ分光分析器(ICP-OES)、誘導結合プラズマ質量分析器(ICP-MS)などの装置を用いて誘電体の成分を分析することができる。
【0081】
誘電体層111の厚さtdは特に限定する必要はない。
【0082】
但し、積層型電子部品の高容量化を達成するために、誘電体層111の厚さは3.0μm以下であってもよく、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、誘電体層111の厚さは1.0μm以下であってもよく、好ましくは0.6μm以下であってもよく、より好ましくは0.4μm以下であってもよい。
【0083】
ここで、誘電体層111の厚さtdは、第1及び第2内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の厚さtdを意味することができる。
【0084】
一方、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の第1方向のサイズを意味することができる。また、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の平均厚さtdを意味することができ、誘電体層111の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0085】
誘電体層111の第1方向の平均サイズは、本体110の第1及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの誘電体層111の第1方向の平均サイズは、スキャンされたイメージにおいて、一つの誘電体層111を第2方向に等間隔である30個の地点で第1方向のサイズを測定して計算した平均値を意味することができる。上記等間隔である30個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の第1方向の平均サイズをさらに一般化することができる。
【0086】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に積層されてもよい。
【0087】
内部電極121、122は第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができ、第1及び第2内部電極121、122は本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0088】
より具体的には、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出することができ、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。本体110の第3面3には、第1外部電極131が配置されて第1内部電極121と連結され、本体110の第4面4には、第2外部電極132が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0089】
すなわち、第1内部電極121は第2外部電極132とは連結されず、第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されず、第2外部電極132と連結されることができる。このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0090】
一方、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0091】
内部電極121、122を形成する材料は特に限定されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
【0092】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法等を使用することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
一方、内部電極121、122の厚さteは特に限定する必要はない。
【0094】
但し、積層型電子部品の高容量化を達成するために、内部電極121、122の厚さは1.0μm以下であってもよく、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、内部電極121、122の厚さは0.6μm以下であってもよく、より好ましくは0.4μm以下であってもよい。
【0095】
ここで、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の第1方向のサイズを意味することができる。また、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さteを意味することができ、内部電極121、122の第1方向の平均サイズを意味することがきる。
【0096】
内部電極121、122の第1方向の平均サイズは、本体110の第1及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの内部電極の第1方向の平均サイズは、スキャンされたイメージにおいて、一つの内部電極を第2方向に等間隔である30個の地点で第1方向のサイズを測定して計算した平均値であることができる。上記等間隔である30個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極に拡張して平均値を測定すると、内部電極の第1方向の平均サイズをさらに一般化することができる。
【0097】
一方、本発明の一実施形態において、複数の誘電体層111のうち少なくとも一つの平均厚さtdと、複数の内部電極121、122のうち少なくとも一つの平均厚さteは、2×te<tdを満たすことができる。
【0098】
言い換えれば、一つの誘電体層111の平均厚さtdは、一つの内部電極121、122の平均厚さteの2倍よりも大きいことができる。好ましくは、複数の誘電体層111の平均厚さtdは、複数の内部電極121、122の平均厚さteの2倍よりも大きくてもよい。
【0099】
一般的に、高電圧電装用電子部品は、高電圧環境下で絶縁破壊電圧(BDV:Breakdown Voltage)の低下による信頼性の問題が主要な問題点である。
【0100】
したがって、高電圧環境下で絶縁破壊電圧の低下を防止するために、誘電体層111の平均厚さtdを内部電極121、122の平均厚さteの2倍よりもさらに大きくすることにより、内部電極間の距離である誘電体層の厚さを増加させることができ、絶縁破壊電圧特性を向上させることができる。
【0101】
誘電体層111の平均厚さtdが内部電極121、122の平均厚さteの2倍以下である場合には、内部電極間の距離である誘電体層の平均厚さが薄いため、絶縁破壊電圧が低下することがあり、内部電極間の短絡が発生する可能性がある。
【0102】
高電圧電子部品において、内部電極の平均厚さteは1μm以下であってもよく、誘電体層の平均厚さtdは3.0μm以下であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0103】
一方、本体110は、容量形成部Acの第1方向の両端面(end-surface)上に配置されるカバー部112、113を含むことができる。
【0104】
より具体的には、容量形成部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112、及び容量形成部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0105】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を容量形成部Acの上下面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0106】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0107】
一方、カバー部112、113の厚さtcは特に限定する必要はない。
【0108】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtcは100μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下であってもよく、超小型製品では、より好ましくは20μm以下であってもよい。
【0109】
ここで、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の第1方向のサイズを意味することができる。また、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の平均厚さtcを意味することができ、カバー部112、113の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0110】
カバー部112、113の第1方向の平均サイズは、本体110の第1及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、一つのカバー部をスキャンしたイメージにおいて、第2方向に等間隔である30個の地点で第1方向のサイズを測定して計算した平均値を意味することができる。
【0111】
また、前述の方法で測定したカバー部の第1方向の平均サイズは、本体110の第1及び第3方向の断面(cross-section)において、カバー部の第1方向の平均サイズと実質的に同じサイズを有することができる。
【0112】
一方、積層型電子部品100は、本体110の第3方向の両端面(end-surface)上に配置されるサイドマージン部114、115を含むことができる。
【0113】
より具体的に、サイドマージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1サイドマージン部114及び本体110の第6面6に配置された第2サイドマージン部115を含むことができる。
【0114】
サイドマージン部114、115は、図示のように、本体110の第1及び第3方向の断面(cross-section)を基準に、第1及び第2内部電極121、122の第3方向の両端面(end-surface)と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0115】
サイドマージン部114、115は、容量形成部Acに適用されるセラミックグリーンシート上にサイドマージン部114、115が形成される箇所を除き、導電性ペーストを塗布して内部電極121、122を形成し、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極121、122が本体110の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一の誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を容量形成部Acの第3方向の両端面(end-surface)上に第3方向に積層して形成することもできる。
【0116】
サイドマージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0117】
第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0118】
一方、第1及び第2サイドマージン部114、115の幅wmは特に限定する必要はない。
【0119】
但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するためにサイドマージン部114、115の幅wmは100μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下であってもよく、超小型製品では、より好ましくは20μm以下であってもよい。
【0120】
ここで、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115の第3方向のサイズを意味することができる。また、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115の平均幅wmを意味することができ、サイドマージン部114、115の第3方向の平均サイズを意味することができる。
【0121】
サイドマージン部114、115の第3方向の平均サイズは、本体110の第1及び第3方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つのサイドマージン部をスキャンしたイメージにおいて、第1方向に等間隔である10個の地点で第3方向のサイズを測定して計算した平均値を意味することができる。
【0122】
本発明の一実施形態では、セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0123】
外部電極131、132は本体110上に配置され、内部電極121、122と連結されることができる。
【0124】
より具体的に、外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結される第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。すなわち、第1外部電極131は本体の第3面3に配置されて第1内部電極121と連結されることができ、第2外部電極132は本体の第4面4に配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0125】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されてもよく、さらに、多層構造を有してもよい。
【0126】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a、131b、132b及び電極層131a、132a、131b、132b上に配置されるめっき層131c、132cを含むことができる。
【0127】
電極層131a、132a、131b、132bに対するより具体的な例を挙げると、電極層131a、132a、131b、132bは、第1導電性金属及びガラスを含む焼成電極であってもよく、第2導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。
【0128】
ここで、第1導電性金属は第1電極層131a、132aに含まれた導電性金属を意味することができ、第2導電性金属は第2電極層131b、132bに含まれた導電性金属を意味することができる。このとき、第1導電性金属及び第2導電性金属は同一又は異なってもよく、同じ金属物質を含んでもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0129】
また、電極層131a、132a、131b、132bは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次に形成された形態であってもよい。
【0130】
また、電極層131a、132a、131b、132bは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されてもよく、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってもよい。
【0131】
電極層131a、132a、131b、132bに含まれる導電性金属としては、電気伝導性に優れた材料を使用することができ、例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができるが、特にこれらに限定されない。
【0132】
本発明の一実施形態において、電極層131a、132a、131b、132bは、第1電極層131a、132a及び第2電極層131b、132bを含む2層構造を有することができ、これにより、外部電極131、132は、導電性金属及びガラスを含む第1電極層131a、132a及び上記第1電極層131a、132a上に配置され、導電性金属及び樹脂を含む第2電極層131b、132bを含むことができる。
【0133】
第1電極層131a、132aは、ガラスを含むことにより本体110との接合性を向上させる役割を果たし、第2電極層131b、132bは樹脂を含むことにより曲げ強度を向上させる役割を果たすことができる。
【0134】
第1電極層131a、132aに使用される導電性金属は、静電容量の形成のために上記内部電極121、122と電気的に連結できる材質であれば、特に限定されず、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。第1電極層131a、132aは、上記導電性金属粉末にガラスフリットを添加して設けられた導電性ペーストを塗布した後、焼成することにより形成することができる。
【0135】
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、第1電極層131a、132aと電気的に連結されるようにする役割を果たすことができる。
【0136】
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、電極層131a、132aと電気的に連結できる材質であれば、特に限定されず、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0137】
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、球状粒子及びフレーク状粒子のうち1以上を含むことができる。すなわち、導電性金属はフレーク状粒子のみからなるか、又は球状粒子のみからなることができ、フレーク状粒子と球状粒子とが混合された形態であってもよい。ここで、球状粒子は、完全な球状ではない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.45以下の形態を含むことができる。フレーク状粒子とは、平たいかつ細長い形態を有する粒子を意味し、特に限定されるものではないが、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.95以上であってもよい。球状粒子及びフレーク状粒子の長軸と短軸の長さは、セラミック電子部品の第3方向の中央部で切断した第1及び第2方向の断面(cross-section)を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして得られたイメージから測定することができる。
【0138】
第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は、接合性の確保及び衝撃吸収の役割を果たす。第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は、接合性及び衝撃吸収性を有し、導電性金属粉末と混合してペーストを作製できるものであれば、特に限定されず、例えば、エポキシ系樹脂を含むことができる。
【0139】
また、第2電極層131b、132bは、複数の金属粒子、金属間化合物及び樹脂を含むことができる。金属間化合物を含むことにより、第1電極層131a、132aとの電気的連結性をより向上させることができる。金属間化合物は、複数の金属粒子を連結して電気的連結性を向上させる役割を果たし、複数の金属粒子を囲んで互いに連結する役割を果たすことができる。
【0140】
このとき、金属間化合物は、樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属を含むことができる。すなわち、金属間化合物が樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属を含むため、樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属が乾燥及び硬化工程を経る過程で溶融し、金属粒子の一部と金属間化合物を形成して金属粒子を囲むようになる。このとき、金属間化合物は、好ましくは300℃以下の低融点金属を含むことができる。
【0141】
例えば、213~220℃の融点を有するSnを含むことができる。乾燥及び硬化工程を経る過程でSnが溶融し、溶融したSnがAg、Ni又はCuのような高融点の金属粒子を毛細管現象により湿らせ、Ag、Ni又はCu金属粒子の一部と反応してAgSn、NiSn、CuSn、CuSnなどの金属間化合物を形成するようになる。反応に関与しなかったAg、Ni又はCuは金属粒子の形態で残る。
【0142】
したがって、上記複数の金属粒子は、Ag、Ni及びCuのうち一つ以上を含み、上記金属間化合物は、AgSn、NiSn、CuSn及びCuSnのうち一つ以上を含むことができる。
【0143】
めっき層131c、132cは実装特性を向上させる役割を果たす。
【0144】
めっき層131c、132cの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む単一層のめっき層131c、132cであってもよく、複数の層で形成されてもよい。
【0145】
めっき層131c、132cに対するより具体的な例を挙げると、めっき層131c、132cはNiめっき層又はSnめっき層であってもよく、電極層131a、132a、131b、132b上にNiめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよい。また、めっき層131c、132cは、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0146】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これらも本発明の範囲に属するといえる。
【0147】
以下、実施例を挙げて本発明についてより詳細に説明するが、これは本発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【0148】
(実施例)
主成分母材としては、平均粒子サイズが100nmであるBaTiO粉末(パウダー)を使用し、パウダーの表面にSnをドーピングして作製した。Snドーピングは、主成分であるBaTiOを100モルとしたとき、0~2.0モルの範囲内で含量を異ならせて様々なサンプルチップを製造できるようにした。
【0149】
ジルコニアビーズ(beads)を混合/分散媒介体(media)として用い、表1に明示された組成に該当する副成分が含まれた添加剤の原料粉末とSnが表面にドーピングされたBaTiOパウダーを、エタノール/トルエン溶媒、そして分散剤と共に混合して10時間の間ミリング(milling)し、バインダーを混合した後、10時間の追加ミリングを行った。このようにして製造されたスラリーを使用して、シート製造用成形機を用いて3.0μm、3.1μm、3.2μm、3.3μmの厚さの成形シートを製造した。成形シートにNi内部電極の印刷を行った。上下部のカバー部は3.0μm厚のカバー用シートを36層積層して作製し、シートの厚さ別に415層(厚さ3.1μm)、410層(厚さ3.2μm)、405層(厚さ3.3μm)の印刷された活性シートを加圧し、積層して圧着されたバー(bar)を作製した。圧着バーを、切断機を用いて2012(長さ×幅、2.0mm×1.2mm)サイズのチップ(chip)に切断した。作製が完了した2012サイズのMLCCチップは、仮焼(calcination)を行った後、還元雰囲気0.3%H/99.7%N(HO/H/N雰囲気)で1150~1200℃の温度で保持時間2時間の条件で焼成を行った後、1060℃のN雰囲気で3時間の間再酸化を行った。ここで、0.3%H濃度は酸素分圧測定器で起電力741mVの条件に該当する。焼成されたチップにCuペーストでターミネーション工程及び電極焼成を経て外部電極を完成した。これにより、焼成後の誘電体の厚さが約2.1~2.5μmで、誘電体層の数が415~405層である2012サイズのMLCCチップを作製した。
【0150】
MLCCチップの常温静電容量(C、Capacitance)及び誘電損失(DF:dissipation factor)は、LCRメーターを用いて1kHz、AC0.5V/μmの条件で容量を測定した。静電容量とMLCCチップの誘電体の厚さ、内部電極の面積、積層数からMLCCチップ誘電体の誘電率を計算した。常温絶縁抵抗は10個ずつサンプルを取り、DC10V/μmを印加した状態で60秒経過後に測定した。温度による静電容量の変化は、-55℃~125℃の温度範囲で測定された。加速寿命評価(HALT:Highly Accelerated Life Time Test)は、各種類あたり40個の試験片に対して150℃で電界42V/μmに該当する電圧を印加し、故障が発生する時間を測定して平均時間(MTTF: Mean Time to Failure)を算出した。表2、4、6は、表1、3、5に明示された実施例に該当するプロトタイプチップの特性を示す。
【0151】
本実施例では、Ni内部電極を適用できる還元雰囲気の焼成条件において、高い容量とX7S容量-温度(TCC)特性、そして高い高温信頼性など、これら全ての特性を実現できる誘電体及びこれを適用したMLCCチップを実現することを目標とする。
【0152】
このための特性判定基準として、常温誘電率≧3000、7V/μmでのDC-bias誘電率≧1000、-55℃以上125℃以下の温度範囲でのTCC≦±22%、及び温度150℃で電界42V/μmを印加する加速試験条件におけるMTTF≧100時間である特性を目標とし、上記特性を全て満たす場合、特性評価においてOと表記し、特性の一つでも満たしていない場合にはXと表記した。
【0153】
各元素の添加含量はモル数を基準として表し、BaTiO母材100モルに対して添加された元素のモル数を意味する。例えば、実施例1-1において、第1副成分であるMn、Vはそれぞれ0.2mol、0.25molと記載されているが、これはBaTiO100モルに対して、すなわち、Tiに換算すると、Ti100モルに対してMnを0.2モル、Ti100モルに対してVを0.2モル添加したことを意味する。
【0154】
Sn含量は、原子比率であるSn/(Ba+Ti+Sn)の値を意味し、界面部は、誘電体層のうち内部電極との界面から30nm以内の領域を意味する。
【0155】
界面部のSn含量が1.0~1.5%を満たす場合はOと表記し、満たさない場合はXと表記した。また、シェル部のSn含量が0.5超過1.0%以下を満たす場合はOと表記し、満たさない場合はXと表記した。
【0156】
【表1】
【0157】
【表2】
【0158】
表の実施例1-1、1-2、1-3は、主成分が100molのBaTiOであり、母材BaTiOの表面にSnをそれぞれ0、1、2molドーピングしたものと、第1副成分の元素Mnの含量が0.2mol、元素Vの含量が0.25mol、第2副成分の元素Mgの含量が0.6mol、第4副成分の元素Dyの含量が0.9mol、Tbの含量が0.5mol、第5副成分の元素Siの含量が1.65mol、Alの含量が0.4molである試料を焼成雰囲気EMF680mV(水素濃度0.1%)で焼成した実施例を示す。表2の1-1、1-2、1-3は、本実施例に該当する試料の特性を示す。SnをBaTiOの表面にドーピングしていない1-1は、誘電体誘電率が3000以上であり、X7Sを満たしているが、MTTFが100時間以下と目標特性を満たしていない。実施例1-2は、Sn1molをBaTiOの表面にドーピングして作製したものであって、誘電率が3000以上であり、X7Sを満たし、MTTFが100時間以上となり、目標値を達成することができる。しかし、それを超えたSnドーピングでは、特性の実現が不可能である。実施例1-3は、Sn2molをBaTiOの表面にドーピングして作製したものであって、誘電率は実施例1-1及び1-2に比べて上昇するものの、X7SとMTTFを満たしていない。
【0159】
これと同様に、実施例2-3、3-3は、BaTiOの表面にSn2molをドーピングして焼成雰囲気EMF741mV(水素濃度0.3%)、760mV(水素濃度0.5%)で焼成したものであって、誘電率は目標を満たしているものの、X7S及びMTTFを満たしていない。このことから、目標を達成するために適切なSnドーピング(1mol)が必要であることが確認できる。
【0160】
特に、実施例2-2の場合には、BaTiOの表面にSn1molをドーピングし、焼成雰囲気EMF741mV(水素濃度0.3%)で焼成した試料であって、誘電率は目標を満たしており、X7S特性も満し、MTTFに最も優れている。
【0161】
【表3】
【0162】
【表4】
【0163】
表3の実施例4-1、4-2、4-3は、Snを1molドーピングしたBaTiOを用いてシートの厚さ3.1μmで作製した後、焼成雰囲気EMF741mV(水素濃度0.3%)、焼成温度1160~1178℃の範囲で焼成した例を示している。作製されたチップの誘電体層の厚さは2.2~2.25μmである。これらのサンプルは、誘電率が3200以上、DC7V/μmでの誘電率が1000以上、X7Sを満たすものの、MTTFが100時間に至らない。しかし、シートの厚さ3.2、3.3μmで作製して焼成後の誘電体の厚さが2.29~2.46μmである実施例5-1~5-3、6-1~6-3の場合は誘電率が3000以上であり、DC7V/μmでの誘電率が1000以上、X7Sを満たし、MTTFが100時間以上と、目標特性を満たしている。これにより、適切な誘電体層の厚さが特性の実現に必要であることが確認できる。
【0164】
実施例4-1~6-3の内部電極の厚さは1.0μm以下を満たし、内部電極の連結性は90%以上に該当する。具体的には、内部電極の厚さは、実施例4-1が0.781μm、実施例4-2が0.791μm、実施例4-3が0.823μm、実施例5-1が0.827μm、実施例5-2が0.801μm、実施例5-3が0.771μm、実施例6-1が0.814μm、実施例6-2が0.787μm、実施例6-3が0.824μmに該当する。
【0165】
【表5】
【0166】
【表6】
【0167】
表5の実施例8-1~8-3、9-1~9-3、10-1~10-3、11-1~11-3は、主成分BaTiO100molにSnを1molドーピングしており、それぞれ第1副成分、第2副成分、第3副成分及び第4副成分の含量変化による実施例を示し、これらの実施例に該当するサンプルの特性を表6に表している。
【0168】
実施例8-1~8-3は、第1副成分であるMn、Vの総含量を変更して評価したものであって、合計が0.383~0.54molの範囲である。この結果から、第1副成分の含量範囲は0.405~0.54molの範囲で目標特性の実現が可能である。
【0169】
実施例9-1~9-3は、第2副成分であるMgの含量を0.3~0.75molに変更して評価したものであって、0.75molでMTTF及びその他の目標特性は実現されるもの、X7Sを満たしていない。しかし、0.3~0.6molの範囲では目標特性の実現が可能である。
【0170】
実施例10-1~10-3は、第3副成分である希土類元素の総含量が1.4molとなるようにTbとDyの比率を調節して評価しており、Dy/Tbが0.5/0.9=0.56においてMTTFが100時間未満であり、X7Sを満たしておらず、目標特性が実現されない。しかし、Dy/Tbが0.7/0.7=1及び0.9/0.5=1.8では目標特性の実現が可能である。
【0171】
実施例11-1~11-3は、第4副成分であるSi含量が1.65~2.65molの範囲で評価し、誘電率が3000以上であり、DC7V/μmでの誘電率が1000以上、X7Sを満たし、MTTFが100時間以上と、目標特性の実現が可能であることが確認できる。
【0172】
本発明において使用された「一実施形態」という表現は、互いに同じ実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態に説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明と理解することができる。
【0173】
本発明において使用された用語は、単に一実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0174】
10、10’:誘電体結晶粒
11:コア部
12:シェル部
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112、113:カバー部
114、115:サイドマージン部
121、122:内部電極
131、132:外部電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9