(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100687
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】重合体複合材料のリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/24 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
C08J11/24 ZAB
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187018
(22)【出願日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】112101517
(32)【優先日】2023-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523413149
【氏名又は名称】チェン ユー ティン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】チェン ユー ティン
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401AA26
4F401CA67
4F401CA68
4F401CA75
4F401CA91
4F401CB26
4F401EA20
4F401EA60
4F401EA62
4F401EA77
4F401FA01Z
(57)【要約】
【課題】重合体複合材料のリサイクル方法の提供。
【解決手段】a.予熱された第1のグリコリシス剤を、ポリウレタン廃棄物とポリエチレンテレフタラート廃棄物とを含む重合体複合材料と混合して、プレミックスを得るステップと、b.前記プレミックスを180℃~240℃の範囲内に加熱して液状化プレミックスを得るステップと、c.前記液状化プレミックスを分解して、ポリオール混合物を得るステップと、d.第2のグリコリシス剤と前記ポリオール混合物との間で熱交換を行って冷却ポリオール混合物及び予熱された前記第2のグリコリシス剤を得るステップと、含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.予熱された第1のグリコリシス剤を、ポリウレタン廃棄物とポリエチレンテレフタラート廃棄物とを含む重合体複合材料と混合して、プレミックスを得るステップと、
b.前記プレミックスを180℃~240℃の範囲内に加熱して液状化プレミックスを得るステップと、
c.前記液状化プレミックスを分解して、ポリオール混合物を得るステップと、
d.第2のグリコリシス剤と前記ポリオール混合物との間で熱交換を行って、冷却ポリオール混合物及び予熱された前記第2のグリコリシス剤を得るステップと、含む、ことを特徴とする重合体複合材料のリサイクル方法。
【請求項2】
前記ステップaにおいて、前記予熱された第1のグリコリシス剤の温度は60℃~80℃の範囲内である、ことを特徴とする請求項1に記載の重合体複合材料のリサイクル方法。
【請求項3】
前記ステップdにおいて、予熱前の前記第2のグリコリシス剤の温度は0℃~50℃の範囲内である、ことを特徴とする請求項1に記載の重合体複合材料のリサイクル方法。
【請求項4】
前記ステップdを行った後、前記冷却ポリオール混合物の温度は65℃~85℃の範囲内である、ことを特徴とする請求項1に記載の重合体複合材料のリサイクル方法。
【請求項5】
前記重合体複合材料は、ビニルポリマー、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリシロキサン、天然繊維、金属及びガラスを含まない、ことを特徴とする請求項1に記載の重合体複合材料のリサイクル方法。
【請求項6】
前記第1のグリコリシス剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、リグニン及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリオールである、ことを特徴とする請求項1に記載の重合体複合材料のリサイクル方法。
【請求項7】
前記第2のグリコリシス剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、リグニン及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリオールである、ことを特徴とする請求項1に記載の重合体複合材料のリサイクル方法。
【請求項8】
前記ステップcにおいて、分解は、二軸スクリュー押出機中で行う、ことを特徴とする請求項1に記載の重合体複合材料のリサイクル方法。
【請求項9】
前記ステップaの後で且つ前記ステップbの前に、前記プレミックスに触媒を添加するステップa′を更に含む、ことを特徴とする請求項1に記載の重合体複合材料のリサイクル方法。
【請求項10】
前記ステップcにおいて、前記液状化プレミックスに改質添加剤を添加して、前記液状化プレミックスを分解することにより、ポリオール混合物を得る、ことを特徴とする請求項1に記載の重合体複合材料のリサイクル方法。
【請求項11】
前記ステップdの後に、前記冷却ポリオール混合物に硬化剤を使用して、前記冷却ポリオール混合物を固化成形するステップeを更に含む、ことを特徴とする請求項1に記載の重合体複合材料のリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体複合材料のリサイクル方法に関し、特にポリウレタン廃棄物とポリエチレンテレフタラート廃棄物とを含む重合体複合材料のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重合体複合材料により製造された製品は、一般的に異なる複数種の有機高分子材料、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、天然ゴム、ポリウレタン(PU)、ポリエステル(polyester)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリアミド(polyamide)、棉、本革、木材などを含むだけでなく、金属、ガラスなどの無機材料も含み、このような製品は、その使用後の廃棄物のリサイクル工程が非常に複雑で多くのエネルギーを消費し、且つ、リサイクルの速度が遅い、異臭が生じやすいなどの問題を抱えている。そのため、重合体複合材料で作られた製品はゴミとして焼却や埋立処分されることが多く、リサイクルが困難である。
【0003】
前述の有機高分子材料の中で、ポリウレタンは、フォーム、フィルム、コーティング、靴の部品、弾性防水部品及びその他の製品の製造に広く使用され、一方、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルは、布繊維、フィルム、射出成形品及びその他の製品の製造に広く使用されている。
【0004】
特許文献1には、PU及びPET廃棄物の回収、処理、リサイクル方法が開示されており、該方法は、化学的グリコリシス(バッチプロセス、batch process)、接着成形、注入充填及び注型などのプロセス及びポリウレタンとポリエチレンテレフタレートを組み合わせた製品の設計が含まれており、廃棄物により汚染及び資源の浪費を大幅に減少できる。
【0005】
なお、現在、100%リサイクル達成と謳われている製品は、製造材料が完全に廃棄物をリサイクルしたものであることを指し、製品自体が完全にリサイクルできることを指すものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】台湾特許出願公開第202222941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術の少なくとも1つの問題点を解消する重合体複合材料のリサイクル方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明は、a.予熱された(preheated)第1のグリコリシス剤(glycolysis agent)を、ポリウレタン(PU)廃棄物とポリエチレンテレフタラート(PET)廃棄物とを含む重合体複合材料と混合して、プレミックス(premix)を得るステップと、
b.前記プレミックスを180℃~240℃の範囲内に加熱して液状化プレミックスを得るステップと、
c.液体になった前記液状化プレミックスを分解(degrade)して、ポリオール混合物を得るステップと、
d.第2のグリコリシス剤と前記ポリオール混合物との間で熱交換を行って、冷却ポリオール混合物及び予熱された前記第2のグリコリシス剤を得るステップと、含む、ことを特徴とする重合体複合材料のリサイクル方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の重合体複合材料のリサイクル方法は、予熱された第1のグリコリシス剤と重合体複合材料との混合物から形成された液状化プレミックスを分解し、そして、分解により得られたポリオール混合物と第2のグリコリシス剤との間で熱交換を行って、予熱された第2のグリコリシス剤がリサイクルされるようにすることによって、予熱された第1のグリコリシス剤として機能し、重合体複合材料を連続的にリサイクルすることができ、それにより、熱エネルギーの消費量、分離、包装及び運送コストを有効的に減少し、ポリオール混合物の生産速度を大幅に上げ、よってエネルギーの節約及び二酸化炭素排出の削減を達成する効果をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の重合体複合材料のリサイクル方法の実施例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の重合体複合材料のリサイクル方法は、ポリウレタン(PU)廃棄物とポリエチレンテレフタラート(PET)廃棄物とを含む重合体複合材料をリサイクルする方法であって、以下のステップa~ステップdを含む。
【0012】
ステップaにおいては、予熱された(preheated)第1のグリコリシス剤(glycolysis agent)を、ポリウレタン廃棄物とポリエチレンテレフタラート廃棄物とを含む重合体複合材料と混合して、プレミックス(premix)を得る。
【0013】
ステップbにおいては、前記プレミックスを180℃~240℃の範囲内に加熱して液状化プレミックスを得る。
【0014】
ステップcにおいては、前記液状化プレミックスを分解(degrade)して、ポリオール混合物を得る。
【0015】
ステップdにおいては、第2のグリコリシス剤と前記ポリオール混合物との間で熱交換を行って、冷却ポリオール混合物及び予熱された第2のグリコリシス剤を得る。
【0016】
一部の実施形態において、前記ステップaにおいて、前記予熱された第1のグリコリシス剤の温度は60℃~80℃の範囲内である。
【0017】
一部の実施形態において、前記ステップdにおいて、予熱前の前記第2のグリコリシス剤の温度は0℃~50℃の範囲内である。
【0018】
一部の実施形態において、前記ステップdを行った後、前記冷却ポリオール混合物の温度は65℃~85℃の範囲内である。
【0019】
一部の実施形態において、前記重合体複合材料は、ビニルポリマー(vinyl polymer)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリアミド(polyamide)、ポリシロキサン(polysiloxane)、天然繊維、金属及びガラスを含まない。
【0020】
一部の実施形態において、前記ステップaにおいて、前記第1のグリコリシス剤は、ポリオール(複数のヒドロキシ基を含む有機化合物)である。
【0021】
該ポリオールは、小分子ポリオール、ポリメリックポリオール(polymeric polyol)またはこれらの組み合わせであることができる。
【0022】
一部の実施形態において、該小分子ポリオールは、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(propylene glycol)、ブチレングリコール(butylene glycol)及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。
【0023】
一部の実施形態において、該ポリメリックポリオールは、ポリエーテルポリオール(polyether polyol)、ポリエステルポリオール(polyester polyol)、リグニン(lignin)及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。
【0024】
本発明の具体的な実施例において、該第1のグリコリシス剤は、ジエチレングリコールである。
【0025】
一部の実施形態において、前記ステップdにおいて、熱交換に供される第2のグリコリシス剤は、前述のステップaの第1のグリコリシス剤と同じタイプのポリオールである。前記ステップdで得た予熱された前記第2のグリコリシス剤は、循環使用するように、前記ステップaに戻して予熱された前記第1のグリコリシス剤としてポリマーと混合することができる。
【0026】
一部の実施形態において、前記ステップcにおいて、分解は、二軸スクリュー押出機中で行う。
【0027】
一部の実施形態において、前記ステップaの後で且つ前記ステップbの前に、前記プレミックスに触媒を添加するステップa′を更に含む。
【0028】
本発明の具体的な実施例において、該触媒は、酢酸亜鉛である。
【0029】
一部の実施形態において、前記ステップcにおいて、前記液状化プレミックスに改質添加剤(modifying additive)を添加して、前記プレミックスを分解することにより、ポリオール混合物を得る。
【0030】
本発明の具体的な実施例において、該改質添加剤は、エポキシ樹脂である。
【0031】
一部の実施形態において、前記ステップdの後に、前記冷却ポリオール混合物に硬化剤を使用して、前記冷却ポリオール混合物を固化成形するステップeを更に含む。
【0032】
一部の実施形態において、固化成形は、硬化剤と該冷却ポリオール混合物とのキャスティングによって実行される。
【0033】
本発明の具体的な実施例において、該硬化剤は、イソシアネート(isocyanate)である。
【0034】
以下、本開示の実施例について説明する。これらの実施例は、例示的かつ説明的なものであり、且つ、本発明を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【実施例0035】
<実施例>
図1に示されるように、本発明の重合体複合材料のリサイクル方法の実施例の具体的なステップは、以下に示される。
【0036】
ステップa:予熱された第1のグリコリシス剤とする75℃に予熱された回収のジエチレングリコール(台湾Oriental Union Chemical Corporation社製)225kgを、PU弾性体廃棄物40kgとPU軟質廃棄物35kgとPET廃棄物200kgとからなる重合体複合材料と混合して、プレミックスを得た。
【0037】
ステップa′:該プレミックスに触媒とする酢酸亜鉛(台湾King Yu Chemicals Co., Ltd.社製、CAS番号:5970-45-6)0.085kgを添加した。
【0038】
ステップb:該プレミックスを220℃に加熱して液状化プレミックスを得た。
【0039】
ステップc:ステップbの後に、220℃の温度を有する二軸スクリュー押出機(twin-screw extruder、台湾ZENIX INDUSTRIAL CO., LTD.社製、型番ZPT-77HT)内にて該液状化プレミックスに改質添加剤とするエポキシ樹脂(台湾Epotech Composite Corporation社製、型番:TFE-TFTM01)25kgを添加し、続いて混合及び押出を行って(回転速度:400rpm、滞留時間:約40分)、該液状化プレミックスを分解することにより、220℃のポリオール混合物を得た。
【0040】
ステップd:ステップcの後に、第2のグリコリシス剤とする20℃の回収のジエチレングリコール(台湾Oriental Union Chemical Corporation社製)1000kgと該ポリオール混合物との間で熱交換を行って、約75℃に予熱された第2のグリコリシス剤及び約80℃に冷却した冷却ポリオール混合物を得た。該約75℃の予熱された第2のグリコリシス剤は、ステップaにおける予熱された第1のグリコリシス剤として循環使用するものである。
【0041】
ステップe:ステップdの後に、該約80℃の冷却ポリオール混合物に硬化剤とするイソシアネート(ドイツBASF社製、型番:Lupranat(登録商標)M20S)を注入し、金型内で固化成形し、それにより成形品を得た。
【0042】
使用後の該成形品は、ステップaにおける重合体複合材料としてリサイクルすることができる。
【0043】
上記の内容によれば、本発明の重合体複合材料のリサイクル方法は、予熱された第1のグリコリシス剤と重合体複合材料との混合物から形成された液状化プレミックスを分解し、そして、分解により得られたポリオール混合物と第2のグリコリシス剤との間で熱交換を行って、予熱された第2のグリコリシス剤がリサイクルされるようにすることによって、予熱された第1のグリコリシス剤として機能し、重合体複合材料を連続的にリサイクルすることにより、ポリウレタン及びポリエチレンテレフタラートのみを含む製品の製造が可能になり(即ち、重合体複合材料のポリウレタン廃棄物とポリエチレン廃棄物は完全にリサイクルされる)、それにより、熱エネルギーの消費量、分離、包装及び運送コストを有効的に減少し、ポリオール混合物の生産速度を大幅に上げ、よってエネルギーの節約及び二酸化炭素排出の削減を達成する効果をもたらすことができる。
【0044】
本発明は、例示的な実施形態と考えられるものに関連して説明されてきたが、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではなく、そのような修正及び同等の配置をすべて包含するように最も広い解釈の精神及び範囲内に含まれる様々な配置を対象とすることが意図されていることが理解される。
【0045】
上記実施形態は例示的に本発明の原理及び効果を説明するものであり、本発明を制限するものではない。本技術を熟知する当業者であれば本発明の精神及び範囲から離れないという前提の下、上記の実施形態に対して若干の変更や修飾が可能である。従って、当業者が本発明の主旨から離れないという前提の下、行った全ての変更や修飾も本発明の保護範囲に含まれるものとされるべきである。