(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100689
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】結束機
(51)【国際特許分類】
B65B 27/10 20060101AFI20240719BHJP
B65B 13/18 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B65B27/10 B
B65B13/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023190917
(22)【出願日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2023004108
(32)【優先日】2023-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】浅井 政敏
【テーマコード(参考)】
3E052
【Fターム(参考)】
3E052AA41
3E052BA20
3E052CA18
3E052FA01
3E052HA12
3E052HA17
3E052JA01
3E052KA05
3E052LA14
(57)【要約】
【課題】対象物への接触を抑制することが可能となる結束機及び結束方法を提供すること。
【解決手段】本開示に係る結束機は、上下方向に積層された複数のステープルを収容可能に構成されたマガジンと、上端に位置するステープルを他のステープルから分離し、分離したステープルを前方に移動可能に構成されたドライバと、分離したステープルを変位させることにより第1対象物と第2対象物とを結束可能に構成された変位部とを備える。
【選択図】
図30
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1脚部と第2脚部とを有し、前記第1脚部と前記第2脚部の間が開口したステープルを保持するマガジンと、
前記マガジンに保持された前記ステープルを、開口部を前にして前方に押し出し、前記第1脚部と前記第2脚部を前記マガジンの前方に移動させるドライバと、
前記マガジンの前方に移動させられた前記第1脚部を変位させることにより、前記第1脚部と前記第2脚部との間に挿入される結束対象物を結束する変位部と
を備える結束機。
【請求項2】
前記変位部は、上面視において前記第1脚部を前記第2脚部と交差させるように変位させ、
前記マガジンは、前記第1脚部と前記第2脚部を交差させたときの交点よりも後方に位置する
請求項1に記載の結束機。
【請求項3】
前記変位部は、前記マガジンの前方に移動させられた前記第1脚部の内方に位置する第1支点部と、前記第1脚部の外方に位置し、前記第1脚部を、前記第1支点部を支点に内方に曲げる曲げ部とを有し、
前記マガジンは、前記第1支点部よりも後方に位置する
請求項1に記載の結束機。
【請求項4】
前記変位部は、前記マガジンの前方に移動させられた前記第1脚部の外方に位置する第2支点部と、前記第1脚部の外方に位置し、前記第2支点部を支点に内方に回動することで前記第1脚部を内方に曲げる曲げ部とを有し、
前記マガジンは、前記第2支点部よりも後方に位置する
請求項1に記載の結束機。
【請求項5】
前記マガジンは、側面視において、結束位置における前記ステープルの後端を通過し、前方に対して下方に60度傾斜した仮想直線よりも後方に位置する
請求項1に記載の結束機。
【請求項6】
前記ドライバは、前記マガジンに保持された前記ステープルの全部を前記マガジンの前方に移動させる
請求項2から5のいずれかに記載の結束機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結束機及び結束方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステープル等の結束具を用いて、ワイヤ等に植物等を結束することが知られている。
【0003】
特許文献1には、このようなステープルの一例が記載されている。このステープルは、左右一対のアームと、アーム間に設けられた凸状突起とを備えている。
【0004】
特許文献2には、マウントシェルに着脱可能に接続される充電式電源を備える電気的なバインディング用のマシンが記載されている。特許文献2記載のバインディング用のマシンは、特許文献1記載のステープルを用いて結束することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1839482号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第CN111903423号明細書
【特許文献3】特開2023-013317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるステープル等は、第1対象物と第2対象物という2つの対象物の相対的移動を拘束するものであるから、第1対象物と第2対象物を結束する結束具(ステープル)に相当する。
【0007】
特許文献2は、特許文献1に記載のステープルを用いる結束機を開示する。
【0008】
しかしながら特許文献2に記載されている結束機は、結束部の先端直下にステープルを収容するためのマガジンが配置されているため、結束の際、マガジンが対象物に接触して対象物を傷つけてしまうことがある。
【0009】
そこで本発明は、従来技術と比較して、対象物への接触を抑制することが可能となる結束機及び結束方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願は、第1脚部と第2脚部とを有し、前記第1脚部と前記第2脚部の間が開口したステープルを保持するマガジンと、前記マガジンに保持された前記ステープルを、開口部を前にして前方に押し出し、前記第1脚部と前記第2脚部を前記マガジンの前方に移動させるドライバと、前記マガジンの前方に移動させられた前記第1脚部を変位させることにより、前記第1脚部と前記第2脚部との間に挿入される結束対象物を結束する変位部とを備える結束機を開示する。
【0011】
ここで前記変位部は、上面視において前記第1脚部を前記第2脚部と交差させるように変位させ、前記マガジンは、前記第1脚部と前記第2脚部を交差させたときの交点よりも後方に位置するように構成されてもよい。
【0012】
ここで前記変位部は、前記マガジンの前方に移動させられた前記第1脚部の内方に位置する第1支点部と、前記第1脚部の外方に位置し、前記第1脚部を、前記第1支点部を支点に内方に曲げる曲げ部とを有し、前記マガジンは、前記第1支点部よりも後方に位置するように構成されてもよい。
【0013】
ここで前記変位部は、前記マガジンの前方に移動させられた前記第1脚部の外方に位置する第2支点部と、前記第1脚部の外方に位置し、前記第2支点部を支点に内方に回動することで前記第1脚部を内方に曲げる曲げ部とを有し、前記マガジンは、前記第2支点部よりも後方に位置するように構成されてもよい。
【0014】
前記マガジンは、側面視において、結束位置における前記ステープルの後端を通過し、前方に対して下方に60度傾斜した仮想直線よりも後方に位置するように構成してもよい。
前記ドライバは、前記マガジンに保持された前記ステープルの全部を前記マガジンの前方に移動させるように構成されてもよい。
【0015】
前記ドライバは、前記マガジンに保持された前記ステープルの全部を前記マガジンの前方に移動させるように構成されてもよい。
【0016】
さらに本出願は、上下方向に積層された複数のステープルを収容可能に構成されたマガジンと、上端に位置する前記ステープルを他の前記ステープルから分離し、分離した前記ステープルを前方に移動可能に構成されたドライバと、分離した前記ステープルを変位させることにより第1対象物と第2対象物とを結束可能に構成された変位部とを備える結束機を開示する。
【0017】
前記結束機は、前記マガジンに収容される前記ステープルを上方に移動可能に構成されたプッシャをさらに備えてもよい。
【0018】
ここで前記変位部は、前記マガジンよりも前方に突出する第1変位部と、前記マガジンよりも前方に突出する第2変位部とを備えてもよい。
【0019】
ここで結束機は、前記マガジンよりも前方の領域で、前記ステープルを変位可能に構成されてもよい。
【0020】
ここで結束機によって変位される前記ステープルは、第1脚部と、前記第1脚部より長い第2脚部と、前記第1脚部と前記第2脚部とを接続する本体部とを含んでよい。
【0021】
ここで結束機の前記第2変位部は、前記マガジンの前方の領域を上下方向に延伸し前記第1変位部と前記第2変位部との間の領域を貫通する前記第2対象物を、上面視において包囲して前記第1脚部と交差するように、前記第2脚部を変位可能に構成されていてもよい。
【0022】
結束機の前記マガジンは、上下方向に延伸し前方を向いて形成された前端面を含むマガジン壁部を備え、かつ、上下方向に垂直な仮想平面で前記マガジン壁部を切断した切断面における前記前端面は、前記第1脚部と前記第2脚部とが交差する交点よりも後方に位置するように構成されていてもよい。
【0023】
前記マガジン壁部は、前記第1脚部に対向して設けられ、上下方向に延伸し前方を向いて形成された第1表面を含む第1壁部と、前記第2脚部に対向して設けられ、上下方向に延伸し前方を向いて形成された第2表面を含み、前記第1壁部よりも前方に形成された部分を含む第2壁部と、前記本体部に対向して設けられ、前記第1壁部よりも後方に形成された部分を含む第3壁部とを備えるように構成されてもよい。
【0024】
前記第1表面は、前記第1壁部の前端部の表面に相当し、前記第2表面は、前記第2壁部の前端部であって、前記マガジンの前端部の表面に相当するように、前記マガジンを構成してもよい。
【0025】
結束機の前記ドライバは、上端に位置する前記ステープルを他の前記ステープルから分離させて、前方の結束位置に移動可能に構成されてよい。ここで結束機の前記変位部は、前記結束位置に移動した前記ステープルを変位可能に構成されており、上下方向に垂直な仮想平面で前記マガジン壁部を切断した切断面における前記第2壁部の前端は前記結束位置にある前記ステープルの後端よりも前方に位置し、この切断面における前記第1壁部の前端は前記結束位置に配置された前記ステープルの後端よりも後方に位置するように構成されてよい。
【0026】
前記結束位置に移動した前記ステープルを上下方向に投影した領域と、前記マガジンに収容された他の前記ステープルを上下方向に投影した領域が互いに離間するように、前記ドライバは、上端に位置する前記ステープルを他の前記ステープルから分離させて、前方の結束位置に移動可能に構成されてよい。
【0027】
前記マガジンは、前後方向に第1長さを有する前記ステープルを保持可能に構成されており、前記ドライバは、前記ステープルを前記第1長さの50%以上の距離前方に移動可能に構成されてよい。
【0028】
結束機はさらに、前記ステープルを曲げることにより変位させるための曲げの支点となる壁部を更に備え、前記マガジンは、上下方向に延伸し前方を向いて形成された表面を含むマガジン壁部を備え、かつ、上下方向に垂直な仮想平面で前記マガジン壁部を切断した切断面における前記マガジン壁部の表面が、前記支点よりも後方に位置するように構成されてよい。
【0029】
本出願はさらに、上下方向に積層された複数のステープルを収容可能に構成されたマガジンと、上端に位置する前記ステープルを他の前記ステープルから分離し、分離した前記ステープルを前方の結束位置に移動可能に構成されたドライバと、分離した前記ステープルを変位させることにより第1対象物と第2対象物とを結束可能に構成された変位部とを備える結束機を開示する。ここで前記マガジンは、側面視において、前記結束位置における前記ステープルの後端を通過し、前方に対して60度傾斜し下方に対して30度傾斜する仮想直線よりも後方に配置されている。
【0030】
これら結束機は、成長する植物を結束することに適した構成を備えてよい。
【0031】
本出願は、第1脚部と、第2脚部と、前記第1脚部と前記第2脚部とを接続する本体部を含み、前記第1脚部と前記第2脚部との間に開口が形成されるステープルを用いて第1対象物と第2対象物とを結束する結束機を開示する。この結束機は、前記第1対象物と係合可能に前記第1脚部を変位させる第1変位部と、前記第2対象物を前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部で囲んで前記第1対象物と係合可能に前記第2脚部を変位させる第2変位部とを備える。
【0032】
前記第2変位部は、上面視において、前記第1脚部と交差する位置まで前記第2脚部を変位可能に構成されてもよい。
【0033】
前記結束機は、第1対象物が挿入される第1挿入部と、前記第2対象物が挿入される第2挿入部とを備えてもよい。更に前記第1変位部は、前記第1挿入部に挿入された前記第1対象物と係合するように前記第1脚部の先端部を変位させ、前記第2変位部は、前記第2挿入部に挿入された前記第2対象物を囲むように前記第2脚部を変位させてもよい。
【0034】
前記結束機は、前記ステープルを前記ステープルの開口方向に移動させる移動部を備えてもよい。更に前記第2変位部は、前記移動部が前記開口方向に移動するにつれて、前記第2脚部を前記ステープルの内方に変位させてもよい。
【0035】
移動部は、前記開口方向に移動可能なドライブを含んでもよい。
移動部は、前記開口方向に移動可能なスライダを含んでもよい。
移動部は、前記開口方向に移動可能なドライブ及びスライダを含んでもよい。
【0036】
前記第2変位部は、前記移動部が前記開口方向に移動するにつれて、前記第2脚部を前記ステープルの内方に湾曲させるように構成されてもよい。
【0037】
前記第2変位部は、前記移動部のスライダが前記開口方向に移動するにつれて、前記第2脚部を前記ステープルの内方に屈曲させるように構成されてもよい。
【0038】
前記第2変位部は、前記第2脚部の外側に設けられ、前記開口方向に移動する前記移動部が当接して前記第2脚部を屈曲させるアームを含んでもよい。
【0039】
前記第1変位部は、前記移動部が前記開口方向に移動するにつれて前記第1脚部の先端部を円弧状に湾曲させることにより前記第1対象物と係合するように構成されてもよい。
【0040】
前記第1変位部は、前記第1対象物及び前記第1脚部が挿入される第1挿入部を含んでもよい。
【0041】
前記第1挿入部は、挿入された前記第1脚部の先端部を円弧状に湾曲させることにより挿入された前記第1対象物と係合する内壁を含んでもよい。
【0042】
前記第1変位部は、前記第1対象物を挟むように前記第1脚部の先端部を折り返すように構成されてもよい。
【0043】
本出願は、結束方法を開示する。この結束方法は、第1脚部と、第2脚部と、前記第1脚部と前記第2脚部とを接続する本体部とを含み、前記第1脚部と前記第2脚部との間に開口が形成されるステープルを用いて第1対象物と第2対象物とを結束する結束方法である。前記第1脚部を変位させて前記第1対象物と前記第1脚部を係合させ、前記第2脚部を変位させて、前記第2対象物を前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部で囲んで前記第1対象物と前記第2脚部を係合させる。
【0044】
前記第1脚部を変位させて前記第1対象物と前記第1脚部を係合させることは、前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部を貫通する平面から離間する下方に前記第1脚部の前記先端を進行させることを含んでもよい。
【0045】
前記第2脚部を変位させて、前記第2対象物を前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部で囲んで前記第1対象物と前記第2脚部を係合させることは、前記平面から離間する上方に前記第2脚部の前記先端を進行させることを含んでもよい。
【0046】
前記第1脚部を変位させて前記第1対象物と前記第1脚部を係合させることは、前記第1脚部の前記先端から、第1距離以下の部分を変位させて前記第1対象物と前記第1脚部を係合させることを含んでもよい。
【0047】
前記第2脚部を変位させて前記第1対象物と前記第2脚部を係合させることは、前記第2脚部の前記先端から、前記第1距離より大きい第2距離以下の部分を変位させて前記第1対象物と前記第2脚部を係合させることを含んでもよい。
【0048】
前記第2脚部を変位させて、前記第2対象物を前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部で囲んで前記第1対象物と前記第2脚部を係合させることは、上面視において、前記第1脚部と交差する位置まで前記第2脚部を第1回転方向に変位させて、前記第2脚部の先端部に前記第1対象物と前記第2対象物との間隙を通過させることと、前記第2脚部を前記第1回転方向と反対の第2回転方向に変位させて、前記第1対象物と前記第2対象物との間隙を通過した前記第2脚部の先端部を前記第1対象物に係合させることを含んでもよい。
【0049】
上面視において、前記第1脚部と交差する位置まで前記第2脚部を第1回転方向に変位させて、前記第2脚部の先端部に前記第1対象物と前記第2対象物との間隙を通過させることは、前記第2脚部を第1回転方向に曲げながら、前記第2脚部の先端部を前記第1回転方向と反対の第2回転方向に曲げることを含んでもよい。
【0050】
前記第1脚部を変位させて前記第1対象物と前記第1脚部を係合させることは、前記第1脚部の先端部を前記第1回転方向に曲げて前記第1対象物と前記第1脚部の先端部を係合させることを含んでもよい。
【0051】
なお上面視とは、結束前の前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部を貫通する平面に垂直な方向から見る視点のことをいい、平面視と呼んでもよい。
【0052】
本発明において、「第1対象物と第2対象物とを結束する」とは第1対象物に対する第2対象物の移動を制限することをいう。ここで結束に用いるステープルは、必ずしも、第1対象物又は第2対象物と当接することを要しない。例えば、ステープルが第2対象物と当接しない場合であっても、ステープルが第2対象物を包囲した状態で第1対象物と係合することにより、第1対象物に対する第2対象物の移動を制限することが可能となるから、「第1対象物と第2対象物とを結束する」は、このような状態を含む。
【0053】
本発明において、「屈曲する」又は「折り曲げる」とは局所的に曲げられることをいう。そのため屈曲されたとき、局所的に曲げられた部分以外の部分は、元の形状を実質的に維持する。例えば、直線的に延伸する部材を屈曲するとき局所的に曲げられた部分以外の部分は、直線的に延伸した形状を実質的に維持する。
【0054】
本発明において、「湾曲する」とは所定範囲にわたり弓なりに曲げられることをいう。そのため湾曲されたとき、湾曲された部材は、所定範囲にわたり滑らかに変形する。
【0055】
本発明において、「曲げる」とは屈曲及び湾曲を含む。
本発明において「第1脚部」とは、ステープルの一方の端部を含む部分をいい、「第2脚部」とは、ステープルの他方の端部を含む部分をいう。本発明の「第1脚部」は、実施形態に示される第1脚部に限定されるものではなく、本発明の「第2脚部」は、実施形態に示される第1脚部に限定されるものではない。例えば本発明の「第1脚部」は、例えば実施形態に示される第2脚部に示される形状を備えてもよいし、本発明の「第2脚部」は、例えば実施形態に示される第1脚部に示される形状を備えてもよい。
本発明において「マガジン」とは、プッシャと協働して、ステープルを保持するための機能を発揮する構成をいう。例えば「マガジン」と結束機本体とを接続して一体化するための部品は、本発明の「マガジン」には相当しない。例えば「マガジン」を結束機本体と装着するために、「マガジン」の上端と結束機本体との間に配設されるアダプタは、ステープルを保持するための機能を発揮する部分ではなく、「マガジン」と結束機本体とを接続するための部品であるから、本発明の「マガジン」には相当しない。同様に「マガジン」を保持するためにグリップと「マガジン」とを接続する部品は、本発明の「マガジン」には相当しない。またプッシャそのものは、「マガジン」には相当しない。
また本発明における「マガジン」は、ステープルを保持可能に構成するための部品であるから、本実施形態に示された構成以外の構成であってもよい。例えば、また本発明における「マガジン」は、ステープルの一方の端部が露出するようにステープルを保持可能に構成された部品であってもよい。同様に本発明における「マガジン」は、ステープルの両方の端部が露出するようにステープルを保持可能に構成された部品であってもよい。このような構成は、例えば両端部を接続する本体部を保持することによりステープルを保持可能であるから、「マガジン」に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1A】
図1Aは、上面視における結束前のステープルの一例を示す図である。
【
図1B】
図1Bは、上面視における結束後のステープルの一例を示す図である。
【
図1C】
図1Cは、正面視における結束後のステープルの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態にかかる結束機を用いた結束方法の模式図である。
【
図3】
図3は、一実施形態にかかる結束機の右側面視における断面図である。
【
図4A】
図4Aは、一実施形態にかかる結束機の上面視における断面図である。
【
図4B】
図4Bは、一実施形態にかかる結束機の正面視における断面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態にかかる結束機の前端側を示す部分拡大図(斜視図)である。
【
図6A】
図6Aは、一実施形態にかかるドライバの斜視図である。
【
図6B】
図6Bは、一実施形態にかかるドライバの上面視における平面図である。
【
図7A】
図7Aは、一実施形態におけるスライダの斜視図である。
【
図7B】
図7Bは、一実施形態にかかるスライダの上面視における平面図である。
【
図8A】
図8Aは、一実施形態にかかる結束機の側面視における断面の部分拡大図である。
【
図8B】
図8Bは、一実施形態にかかる結束機の背面視における断面の部分拡大図である。
【
図9】
図9は、一実施形態にかかる結束機のナット部品等を示す部分拡大図(斜視断面図)である。
【
図10】
図10は、一実施形態にかかる結束機の離脱部等を示す断面図である。
【
図11A】
図11Aは、一実施形態にかかる結束機の正面視における初期状態を示す部分拡大図である。
【
図11B】
図11Bは、一実施形態にかかる結束機の上面視における初期状態を示す部分拡大図である。
【
図12A】
図12Aは、一実施形態にかかる結束機の上面視における塑性変形開始時を示す部分拡大図である。
【
図12B】
図12Bは、一実施形態にかかる結束機の側面視における塑性変形開始時を示す部分拡大図である。
【
図12C】
図12Cは、一実施形態にかかる結束機の前端部の部分拡大斜視図である。
【
図13】
図13は、一実施形態にかかる当接部材24(爪部材)の斜視図である。
【
図14】
図14は、一実施形態にかかる当接部材24(爪部材)による塑性変形時の正面視における断面図である。
【
図15】
図15は、一実施形態にかかる第2アームの斜視図である。
【
図17A】
図17Aは、一実施形態に係る結束機のドライバ移動開始時を示す正面視における部分拡大図である。
【
図17B】
図17Bは、一実施形態に係る結束機のドライバ移動開始時を示す上面視における部分拡大図である。
【
図18】
図18は、一実施形態に係る結束機により分離したステープルが前進している様子を示す上面視における部分拡大図である。
【
図19】
図19は、一実施形態に係る結束機によりステープルが第1外壁部を通過した後を示す上面視における部分拡大図である。
【
図20】
図20は、一実施形態に係る結束機によりステープルが変位開始位置に到達したときの様子を示す上面視における部分拡大図である。
【
図21A】
図21Aは、使用者が第1対象物を第1挿入部に挿入し、第2対象物を第2挿入部に挿入したときの正面視における結束機の前端部分を示す部分拡大図である。
【
図21B】
図21Bは、使用者が第1対象物を第1挿入部に挿入し、第2対象物を第2挿入部に挿入したときの上面視における結束機の前端部分を示す部分拡大図である。
【
図22A】
図22Aは、第1対象物及び第2対象物が挿入された後にスライダが前進を再開したときの正面視における結束機の前端部分を示す部分拡大図である。
【
図22B】
図22Bは、第1対象物及び第2対象物が挿入された後にスライダが前進を再開したときの上面視における結束機の前端部分を示す部分拡大図である。
【
図23A】
図23Aは、スライダが前進して第2脚部が変形されているときの正面視における結束機の前端部分を示す部分拡大図である。
【
図23B】
図23Bは、スライダが前進して第2脚部が変形されているときの上面視における結束機の前端部分を示す部分拡大図である。
【
図24A】
図24Aは、スライダが最も前進する直前の正面視における結束機の前端部分を示す部分拡大図である。
【
図24B】
図24Bは、スライダが最も前進する直前の上面視における結束機の前端部分を示す部分拡大図である。
【
図25A】
図25Aは、スライダの後退開始後における結束機の前端部分の正面視における部分拡大図並びに拡大斜視図である。
【
図25B】
図25Bは、スライダの後退開始後における結束機の前端部分の上面視における部分拡大図並びに拡大斜視図である。
【
図25C】
図25Cは、スライダの後退開始後における結束機の前端部分の部分拡大斜視図である。
【
図26A】
図26Aは、スライダが更に後退したときの結束機の前端部分の正面視における部分拡大図並びに拡大斜視図である。
【
図26B】
図26Bは、スライダが更に後退したときの結束機の前端部分の上面視における部分拡大図並びに拡大斜視図である。
【
図26C】
図26Cは、スライダが更に後退したときの結束機の前端部分の部分拡大斜視図である。
【
図27】
図27は、上面視における結束前のステープルの一例を示す図である。
【
図28】
図28は、一実施形態にかかる結束機の右側面視における断面図である。
【
図29】
図29は、一実施形態にかかる結束機の左側面視における断面図である。
【
図30】
図30は、一実施形態にかかる結束機を斜め上方から見た斜視図である。
【
図31B】
図31Bは、一実施形態にかかる結束機を上下方向に垂直な平面で切断して下方から見た斜視断面図である。
【
図32】
図32は、一実施形態にかかる結束機を上下方向に垂直な平面で切断して下方から見た断面図である。
【
図33A】
図33Aは、一実施形態にかかる結束機のドライバによってステープルが前方に移動中の様子を示す斜視図である。
【
図33B】
図33Bは、一実施形態にかかる結束機のドライバによって前方に移動し、結束位置に到達したステープルを示す斜視図である。
【
図34】
図34は、一実施形態にかかる結束機を用いて対象物Pを結束している様子を示す側面図である。
【
図35】
図35は、一実施形態にかかる結束機を用いて変位したステープルを示す背面図である。
【
図37】
図37は、一実施形態に係る結束機の右側面図である。
【
図38】
図38は、一実施形態に係る結束機の上面視における断面図である。
【
図41】
図41は、一実施形態に係る結束機を後方から見た斜視図である。
【
図42】
図42は、一実施形態にかかる結束機を用いて変位したステープルを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではない。
【0058】
[ステープルSの構成]
まず本実施形態に係るステープルSの構成について説明する。ステープルSは、塑性変形可能な可塑性を有する線材から構成される。ステープルSは、ワイヤ又はクリップと呼ばれる場合がある。ステープルSは、例えば、金属製の線材又は針金(表面がめっき処理又は樹脂等でコーティングされたものを含む。)を含む。
【0059】
図1Aは本実施形態に係る結束前のステープルSを示し、
図1B及び
図1Cは、それぞれ、結束後の結束状態におけるステープルSの上面視及び正面視を示す(但し説明の便宜上、
図1Cにおいて第1対象物G及び第2対象物P等説明に不要な部品は省略されている)。
【0060】
ステープルSは、第1脚部S1と、第2脚部S2と、第1脚部S1と第2脚部S2とを接続する本体部S3を含む。
【0061】
結束前の状態において、ステープルSの第1脚部S1と第2脚部S2は離間して設けられるため、第1脚部S1と第2脚部S2との間には開口が設けられる。本体部S3における閉塞している部分から開口に向かう方向(
図1Aにおける紙面左方向)を開口方向D1と呼ぶ。結束機10にセットされるときステープルSの開口方向D1は、後述する前方X1と一致する。
【0062】
第1脚部S1は、ステープルSの一方の端部を含む部分であり、開口方向D1に延伸する第1部S1Bと、第1部S1Bから曲げられて外側に延びる先端部S1Aとを含む。第1部S1Bと先端部S1Aとがなす角度を屈曲角α1と呼び、先端部S1Aのうち、第1部S1Bと接続するために屈曲している部分を屈曲部と呼ぶ。本実施形態においては、屈曲角α1は90度以下である。
【0063】
第2脚部S2は、ステープルSの他方の端部を含む部分であり、開口方向D1に延伸する第2部を含む。結束状態を示す上面視(
図1B)において、第2脚部S2は、第1脚部S1と交差するように曲げられて開口を閉塞する。従って本実施形態に係る第2脚部S2は、開口の幅、即ち、第1脚部S1と第2脚部S2との間隔よりも長く形成される。また、第2脚部S2は、第1脚部S1よりも長く形成される。
【0064】
本体部S3は、第1脚部S1と第2脚部S2とを接続する部分である。本実施形態に係る本体部S3は、直線的に延伸する辺部を含む。しかしながら本体部S3の形状はこれに限られるものではなく、例えば、外方に湾曲する湾曲部を含んでもよいし、一又は複数の辺部と一又は複数の湾曲部とから構成されてもよい。
【0065】
図1Bに示される結束状態において、ステープルSの第1脚部S1の先端部S1Aは、同図において概ね時計回り(以下、上面視において概ね時計回りの方向を「第1回転方向R1」と呼ぶ場合があり、概ね反時計回りの方向を「第2回転方向R2」と呼ぶ場合がある。)に曲げられて、上面視において第1脚部S1と交差する。従って、第1対象物Gを第1脚部S1で挟み込むことが可能となる。
図1Cに示されるように第1脚部S1の先端部S1Aは、結束前の第1脚部S1、第2脚部S2及び本体部S3を貫通する平面PLから離間する下方Z2に先端が進行するように曲げられる。
【0066】
一方でステープルSの第2脚部S2の一部は、第1回転方向R1に折り曲げられることにより開口を閉塞する。開口が閉塞されるので、ステープルSに囲まれる第2対象物PからステープルSが外れることを抑制することが可能となる。更に
図1Cに示されるように、第2脚部S2の先端部S2Aは、結束前の第1脚部S1、第2脚部S2及び本体部S3を貫通する平面PLから離間する上方Z1に先端が進行するように曲げられる。このように第1脚部S1の先端が下方Z2に進行するように曲げられて第1対象物Gに係合し、第2脚部S2の先端が上方Z1に進行するように曲げられて第2対象物Pに係合することにより、第1対象物Gの第1脚部S1との係合位置から、第2脚部S2との係合位置までの領域に張力を発生させやすくすることが可能となる。従って、第1対象物Gが撓んでステープルSが脱落等することを抑制することが可能になる。
【0067】
加えて第2脚部S2は、上面視において開口を閉塞するように、第1脚部S1と交差する位置までステープルSの内方に向かう第1回転方向R1に折り曲げられる。このとき、第2脚部S2の先端部S2Aは、第1対象物Gと第2対象物Pとの間隙を通過する。その後、第2脚部S2は、上面視において第1回転方向R1と反対の第2回転方向R2に変位して、第1対象物Gと第2対象物Pとの間隙を通過した第2脚部S2の先端部S2Aを第1対象物Gに係合させる。その結果、第1脚部S1の先端部S1Aと第2脚部S2の先端部S2Aとで第1対象物Gを挟み込むように係合することが可能となる。仮に第2対象物Pが成長しても、第1脚部S1と第2脚部S2は、それぞれ第1対象物Gを挟み込む力を強める方向に曲げられる。よって第2対象物Pが成長しても、第1対象物GからステープルSが外れにくくすることが可能となる。
【0068】
なお、第2脚部S2を、第1回転方向R1に変位させるとき、第2脚部S2を第1回転方向R1に曲げながら第2脚部S2の先端部S2Aを第1回転方向R1と反対の第2回転方向R2に曲げることが好ましい。このような構成とすることにより、第1対象物Gと第2対象物Pとの間隙を通過した第2脚部S2の先端部S2Aを第2回転方向R2に変位させることにより、第2脚部S2の先端部S2Aを第1対象物Gに容易に係合させることが可能となる。
【0069】
結束前のステープルSの状態を示す
図1Aと、結束後のステープルSの状態を示す
図1B及び
図1Cとの比較から明らかなように、第1脚部S1のうち変位する部分の第1脚部S1の先端からの距離を第1距離DS1とし、第2脚部S2のうち変位する部分の第2脚部S2の先端からの距離を第2距離DS2とするとき、第2距離DS2は、第1距離DS1より大きく、例えば、第2距離DS2は、第1距離DS1の2倍より大きい。このようにステープルSを非対称に曲げることによって、第2脚部S2を、第1脚部S1に近接して保持される第1対象物Gに、好適に係合させることが可能となる。
【0070】
更に
図1Aに示されるように、第1脚部S1の先端から第1距離DS1の位置に相当する第1脚部S1の変位する部分と変位しない部分との境界位置は、第2脚部S2の先端から第2距離DS2の位置に相当する第2脚部S2の変位する部分と変位しない部分との境界位置よりも開口方向D1に進行した位置に相当する。
【0071】
このような構成とすることにより、スライダ44を開口方向D1に進行させたときに、先に第2脚部S2の変位を開始し、第2脚部S2が変位を開始した後に、第1脚部S1の変位を開始させることが可能となる。このため、同時に大きな負荷が結束機10にかかることを抑制することが可能になる。
【0072】
なおステープルSの形状は、
図1Aに示されるものに限られない。例えば、第1脚部S1と第2脚部S2とが必ずしも平行でなくてもよく、例えば、先端に進行するほど開口幅が狭くなっても、あるいは、先端に進行するほど開口幅が広くなっても、上述した技術的効果の少なくとも一部は発揮されるようにステープルSを曲げることが可能であることは当業者に理解される。また、第1脚部S1と第2脚部S2が同じ長さであっても、第1脚部S1の先端が余剰するものの、上述した技術的効果の少なくとも一部は発揮されるようにステープルSを曲げることが可能であることは当業者に理解される。
【0073】
また、ステープルSの曲げ方は、
図1B及び
図1Cに示されるものに限られない。例えば、第2脚部S2の先端部S2Aは曲げられなくてもよい。第2脚部S2の先端部S2Aが曲げられなくても、第2脚部S2を第1対象物Gに係合させることが可能であるから、上述した技術的効果の少なくとも一部は発揮されることは当業者に理解される。
【0074】
以下では、
図1Aに示されるステープルSを
図1B及び
図1Cに示されるように曲げるための結束機10の構成の一例を説明する。
【0075】
図2(A)乃至(E)は、本発明の一実施形態に係る結束機10の構成及び結束機10によって曲げられるステープルSの様子を概念的に説明する模式図である。同図においてステープルSの本体部S3は静止している。
【0076】
なお相対的な方向の関係を説明するために、便宜的に、
図2における紙面左方向を前方X1と呼び、紙面右方向を後方X2と呼び、紙面垂直の手前方向を上方Z1と呼び、紙面垂直の奥行方向を下方Z2と呼び、紙面下方を右方Y1と呼び、紙面上方を左方Y2と呼ぶ場合がある。上面視は結束機10等を上方Z1の位置から下方Z2を向いて見たときの視点をいい、正面視は結束機10等を前方X1の位置から後方X2を向いて見たときの視点をいい、側面視は結束機10等を右方Y1又は左方Y2を向いて見たときの視点をいう。
【0077】
また後述するステープルSを結束機10にセットしたときに、ステープルSを基準として、ステープルSで囲まれる領域(後述する第2対象物Pが挿入される領域)からステープルSの外側に向かう方向を外方と呼び、ステープルSの外側からステープルSで囲まれる領域に向かう方向を内方と呼ぶ場合がある。
【0078】
図2(A)等に示されるように、結束機10は、前方X1に移動する移動部品の一例としてスライダ44を備える。更に結束機10は、ステープルSの第1脚部S1を変位させるための第1変位部20を備える。第1変位部20は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、異なる部品を異なる方向に移動させることにより、第1対象物Gと係合可能にステープルSの第1脚部S1を変位させる。
【0079】
なおスライダ44は、一体的に形成されてもよいし、連動して移動する複数の部品から構成されてもよい。
【0080】
本実施形態における第1変位部20は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、ステープルSの内方(右方Y1)かつ後方X2に傾斜する方向に移動する当接部材24を含む。当接部材24は、ステープルSの先端部S1Aの領域に当接して先端部S1Aを塑性変形するように曲げることから掴み部と呼ばれる場合がある。
【0081】
なお第1変位部20は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、ステープルSの内方(右方Y1)である前方X1と略垂直方向に移動することによりステープルSの先端部S1Aに当接して先端部S1Aを曲げる部品を含んでもよい。
【0082】
これに替えて第1変位部20は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、ステープルSの外方(左方Y2)に移動することによりステープルSの先端部S1Aに当接して先端部S1Aを曲げる部品を含んでもよい。
【0083】
これに替えて第1変位部20は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、ステープルSを第1回転方向R1に移動することによりステープルSの先端部S1Aに当接して先端部S1Aを曲げる部品を含んでもよい。
【0084】
これに替えて第1変位部20は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、ステープルSを第2回転方向R2に移動することによりステープルSの先端部S1Aに当接して先端部S1Aを曲げる部品を含んでもよい。
【0085】
スライダ44等の移動部品による前方X1への移動に基づいて、当接部材24等の部品を異なる方向へ移動させるための機構については、本実施形態に開示される機構又は他の機構を利用することが可能である。
【0086】
スライダ44等の移動部品による前方X1への移動に基づいて、当接部材24等の部品を第1回転方向R1又は第2回転方向R2に回転させるための機構については、本実施形態に開示される機構又は他の機構を利用することが可能である。
【0087】
更に結束機10は、ステープルSの第2脚部S2を変位させるための第2変位部30を備える。第2変位部30は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、異なる部品を異なる方向に移動させることにより、第1対象物Gと係合可能にステープルSの第2脚部S2を変位させる。
【0088】
本実施形態における第2変位部30は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、第1回転方向R1に回転することにより第2脚部S2を塑性変形するように曲げるアーム(第2アームと呼ばれる場合もある。)を含む。本実施形態においてアームは、ステープルSの第2脚部S2に当接して第2脚部S2を第1脚部S1に近づく方向に曲げながら、上方Z1に傾斜する方向にも曲げることから傾斜曲げ部と呼ばれる場合がある。
【0089】
図2(A)では、第2変位部30は、スライダ44と接続されており、スライダ44の前端部を支点として回転可能に構成されている。しかしながら後述する実施形態において説明されるように、第2変位部30は、スライダ44と接続されていなくてもよい。例えば第2変位部30は、スライダ44と接続されておらず、スライダ44の第2前端部44A2によって第1回転方向R1に回転することにより第2脚部S2を塑性変形するように曲げる第2アーム32を備えてもよい。
【0090】
なお第2変位部30は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、ステープルSの内方(左方X1)である前方X1と略垂直方向に移動することによりステープルSの第2脚部S2に当接して第2脚部S2を曲げる部品を含んでもよい。
【0091】
これに替えて第2変位部30は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、ステープルSの外方(右方Y1)に移動することによりステープルSの第2脚部S2に当接して第2脚部S2を曲げる部品を含んでもよい。
【0092】
これに替えて第2変位部30は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、ステープルSを第2回転方向R2に移動することによりステープルSの第2脚部S2に当接して第2脚部S2を曲げる部品を含んでもよい。
【0093】
本実施形態における第2変位部30は更に付加的に、第2脚部S2の先端部S2Aを当接させながら通過させることにより、第2脚部S2の先端部S2Aを反対方向(外方)に曲げる支持壁部68Aを含む。支持壁部68Aは、第2脚部S2の先端部S2Aを曲げることから先端曲げ部と呼ばれる場合がある。
【0094】
ただし予め外方に曲がっている先端部が形成されているステープルを利用する場合、結束機は、支持壁部68Aを含まなくてもよい。
【0095】
本実施形態における結束機10は更に付加的に、第2脚部S2の曲げの支点として機能する支点66Aを含む。本実施形態においては、第2内壁部66の前端が支点66Aとして機能する。また、第2脚部S2の支点66Aに当接する部分から先端までの距離が、第2距離DS2に相当する。
【0096】
図2(A)は、ステープルSの曲げ開始直後の様子を示す上面視における模式図である。同図に示されるように、前方に移動するスライダ44によって第2変位部30が第1回転方向R1に回転を開始する。このため第2変位部30に当接するステープルSの第2脚部S2は、支点66Aを支点として曲がり始める。同時に第2脚部S2の先端部S2Aは、支持壁部68Aに当接しながら支持壁部68Aを通過する。従って、第2脚部SをステープルSの内方に相当する第1回転方向R1に曲げながら、第2脚部S2の先端部S2AをステープルSの外方に相当する第2回転方向R2に曲げることが可能となる。
【0097】
図2(B)及び(C)は、ステープルSの曲げ開始後の様子を示す上面視における模式図である。同図に示されるように、更に前方に移動するスライダ44によって第2変位部30が更に第1回転方向R1に回転する。このため第2変位部30は、支点66Aを支点として第2脚部S2を更に第1回転方向R1に曲げる。
【0098】
図2(D)は、ステープルSの第2脚部S2が曲げられて、上面視において、第1脚部S1と交差したときの様子を示す模式図である。なお本実施形態において第2脚部S2は、第1脚部S1に近づく方向に曲げられながら、上方Z1に傾斜する方向にも曲げられるため、第1脚部S1と干渉しない。同図に示されるように、更に前方に移動するスライダ44によって第2変位部30が更に第1回転方向R1に回転し、90度以上回転するため、第2変位部30は、上面視において、第1脚部S1と交差する位置まで第2脚部S2を曲げることが可能に構成されている。
【0099】
図2(E)は、ステープルSの第1脚部S1が曲げられている様子を示す上面視における模式図である。同図に示されるように、前方に移動するスライダ44によって第1変位部20の当接部材24は、内方(右方Y1)及び後方X2に傾斜する方向に移動して、第1脚部S1の先端部S1Aを曲げる。先端部S1Aは図に示されるように、第1脚部S1に対して上方Z1に折り曲げられてもよいし、下方Z2に折り曲げられてもよい。このように第1脚部S1の先端部S1を曲げることによって、第1脚部S1で第1対象物Gを挟み込むことが可能となる。
【0100】
また本実施形態においては、第1変位部20と第2変位部30とスライダ44とが当接するタイミングが異なるように両者を配置することによって、ステープルSの第1脚部S1の曲げが開始するタイミングと、ステープルSの第2脚部S2の曲げが開始するタイミングとをずらすように構成されている。このような構成とすることにより、結束機10に、同時に大きな負荷が生じることを抑制することが可能となる。また、曲げ量が大きい第2脚部S2の曲げを先に開始することによって、第1脚部S1の曲げが終了するタイミングと第2脚部S2の曲げが終了するタイミングを大きくずれることを抑制することが可能となる。
【0101】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態に係る結束機10の詳細構成について説明する。
【0102】
図3は、右側面視における結束機10の断面図である。
図4Aは、上面視における結束機10の断面図である(但し便宜上、図を90度回転させている。以下便宜上の理由により同様に図を回転させている場合がある。更に説明をわかりやすくするために説明されない構成(例えば結束機10の筐体)については省略されている(以下同様の理由により図において一部構成を省略する場合がある)。
【0103】
図4Bは、
図4AにおけるA-A断面で結束機10を切断した正面視における結束機10の断面図である。
図5は結束機10の前端部分の拡大斜視図である。
【0104】
[結束機10の構成概要]
この結束機10は、開口が形成されているステープルSを用いて第1対象物Gと第2対象物Pとを結束する。なお、一実施形態に係るステープルS(
図1A、
図1B)の構成については上述した。
【0105】
第1対象物Gは、例えば、ワイヤ、梁、紐、棒、パイプ、樹木の枝等である。第1対象物Gは、ガイド要素と呼ばれる場合がある。第2対象物Pは、例えば、草木や樹木等の茎、蔓、枝、果物等である。結束機10は、ステープルSの第1脚部S1を第1対象物Gと係合するように変位させるとともに、第2対象物PをステープルSが囲むように第2脚部S2を第1対象物Gと係合するように変位させることにより、第1対象物Gに対する第2対象物Pの移動を制限し、第1対象物Gと第2対象物Pとを結束する。
【0106】
結束機10は、第1対象物Gと係合可能にステープルSの第1脚部S1を変位させる第1変位部20と、第1対象物Gと係合可能にステープルSの第2脚部S2を変位させる第2変位部30とを備える。第2変位部30は、第2対象物PをステープルSの第1脚部S1、第2脚部S2及び本体部S3で囲んだ状態で第2脚部S2の先端部S2Aを第1対象物Gと係合することにより、第1対象物Gと第2対象物Pとを結束可能に構成される。
【0107】
より具体的には、結束機10は、使用者によって把持されるように上下方向に延在し、結束機10を駆動するためのスイッチが設けられたグリップ12と、上下方向に積層された複数のステープルSを収容可能に構成されるマガジン14(
図3)と、マガジン14に収容される複数のステープルSを上方Z1に付勢するプッシャ16と、上端に位置するステープルSを前方X1に押すことにより上端に位置するステープルSを他のステープルSと分離させて、前方X1に移動させるドライバ42と、ドライバ42及びスライダ44を移動させるための移動機構と、スライダ44によってステープルSの第1脚部S1を変位させるための第1変位部20と、スライダ44によってステープルSの第2脚部S2を変位させるための第2変位部30と、ステープルSの他のステープルSからの離脱時の移動路を提供する離脱部56とを備える。
【0108】
ここで第1変位部20は、ドライバ42によってステープルSが前方X1に移動しているときに第1脚部S1の先端部S1Aが当接しながら通過することによって先端部S1Aを変位させるための第1外壁部62及び第1内壁部64を含む。
【0109】
また第1変位部20は、前方X1に移動するスライダ44の第1前端部44A1によって押されることにより回転する第1アーム22と、第1アーム22の回転に伴ってステープルSの内方に向かって第1脚部S1の先端部S1Aに当接しながら移動することにより、第1脚部S1の先端部S1Aを曲げる当接部材24とを含む。当接部材24は、爪部材と呼ばれる場合がある。
【0110】
第2変位部30は、前方X1に移動するスライダ44の第2前端部44A2によって押されることにより回転する第2アーム32を含む。第2アーム32は、ステープルSの第2脚部S2に当接しながら回転することにより、第2脚部S2を屈曲可能に構成される。このとき、上述したように第2対象物PをステープルSの第1脚部S1、第2脚部S2及び本体部S3で囲んで第2脚部S2を第1対象物Gに係合させることにより、第1対象物Gと第2対象物Pを結束することが可能となる。
【0111】
本実施形態に係る結束機10は、スライダ44等の部品を前方X1へ並進運動させ、並進運動した部品で第1アーム22及び第2アーム32を押して回転運動に変換することにより、ステープルSの第1脚部S1及び第2脚部S2をそれぞれ変位させている。しかしながら、第1脚部S1又は第2脚部S2を変位させる手段はこれに限られるものではない。例えば、第1脚部S1を変位させるための手段として、ドライバ42又はスライダ44によって第1脚部S1の先端部S1Aが前進すると、先端部S1Aが円弧状に変位する手段を搭載してもよい。また、並進運動を回転運動に変換するための構成として、並進運動を回転運動に変換するための他の手段を採用してもよい。更に本実施形態においては第1アーム22及び第2アーム32は上面視において共に同一方向に回転させて第1脚部S1及び第2脚部S2を変位させるが、これに限られるものではなく、例えば、第2アーム32を反対方向に回転させて第2脚部S2を変位させてもよい。
【0112】
以下本実施形態に係る結束機10の詳細な構成について説明する。
【0113】
[ドライバ及びスライダの移動機構(送り機構)]
結束機10のドライバ42は、前方X1に移動することにより、ステープルSを前方X1に移動させる機能を有する。ドライバ42は、他のステープルSと連結された上端のステープルSを前方X1に移動させることにより、他のステープルSと分離するように構成され、更にステープルSを前方X1に移動させて第1脚部S1の先端部S1Aを第1変位部20が含む第1外壁部62に当接させて通過させることにより、第1脚部S1の先端部S1Aを変位させるように構成されている。
【0114】
図6Aは、本実施形態に係るドライバ42の斜視図であり、
図6Bは、上面視におけるドライバ42の平面図である。これら図面に示されるように、ドライバ42は、板状に形成されており、ステープルSの本体部S3に当接する前端面42Sを有する前端部と、前端部より後方X2に設けられ、下方Z2に突出するドライバ凸部42Cが形成された後端部とを含む。
【0115】
ドライバ42の前端部は、ステープルSの本体部S3の形状にあわせて、前後方向に対して傾斜して設けられる前端面42Sを含む。
【0116】
更にドライバ42の前端部の左端は、ステープルSの左端に相当する第1脚部S1の第1部S1B乃至本体部S3の第1脚部S1に接続する部分に外方である左方Y2から当接して第1脚部S1を支持するために、前方X1に延在する壁面を有するように前方X1に延伸する突端部42Bを有する。
【0117】
図4B及び
図8Bに示されるようにドライバ42は、ベース46に設けられた凹部に嵌められることにより前後方向に移動するようにガイドされる。ドライバ42の上面は、ベース46に設けられた凹部に嵌められるスライダ44の底面に当接されるためドライバ42の上方Z1への移動が制限される。また、ドライバ42の左右の側面は、前後方向に延在して設けられるベース46の左右の壁面にそれぞれ当接されるためドライバ42の左右への移動が制限される。更にドライバ42の後端部に形成され、下方Z2に突出するドライバ凸部42Cは、ベース46の凹部に挿入される。ドライバ凸部42Cの左右の壁面及び底面は、それぞれベース46の壁面及び上面に対向する。以上のような構成によりドライバ42は、前後方向に移動するようにガイドされる。
【0118】
下方Z2に突出するドライバ凸部42Cの底部には、3本の溝が形成される。具体的には、後述する切替ブロック48(「ブロック」の一例)の第1爪部48C1によって前方X1に押されることにより前方X1に移動するための第1溝42G1と、第2爪部48C2によって後方X2に押されることにより後方X2に移動するための第2溝42G2と、第3爪部48C3によって前方X1に押されることにより前方X1に移動するための第3溝42G3とが形成されている。同図に示されるように、第1溝42G1、第2溝42G2及び第3溝42G3は、互いに平行に、それぞれ前後方向に延在して設けられる。また、第1溝42G1及び第3溝42G3の前端(第1溝42G1及び第3溝42G3の後方X2を向いた溝の側面)は、前後方向において同じ位置に設けられる。また、第2溝42G2の後端(第2溝42G2の前方X1を向いた溝の側面)は、第1溝42G1及び第3溝42G3の前端(第1溝42G1及び第3溝42G3の後方X2を向いた溝の側面)よりも後方X2に設けられる。一方で、第1溝42G1及び第3溝42G3は、第2溝42G2の後端よりも後方X2に延在して設けられる。
【0119】
後述するように前進時に第1溝42G1及び第3溝42G3という2つの溝を用いてドライバ42を前進させ、後退時に第2溝42G2という1つの溝を用いてドライバ42を後退させることにより、相対的に高負荷となる前進時に好適にドライバ42が前方X1に移動可能な構成を採用した。また、上面視において第2溝42G2をボールねじ50の中心軸と重複するように設け、第1溝42G1と第3溝42G3が第2溝42G2を挟むように設けることによりドライバ42がバランス良く前進及び後退可能に構成した。
【0120】
ドライバ42は、結束機10のベース46上に載置され、ベース46上を前後方向に移動可能に構成される。このため、第1溝42G1、第2溝42G2及び第3溝42G3を形成することによって、ベース46の上面の一部は上方Z1に露出する。
【0121】
結束機10のスライダ44は、前方X1に移動して第1変位部20及び第2変位部30を前方X1に押すことにより、ステープルSの第1脚部S1及び第2脚部S2を変位させる機能を有する。本実施形態にかかるスライダ44は、第1変位部20の第1アーム22を前方X1に押して第1アーム22を回転させる第1前端部44A1と、第2変位部30に第2アーム32を前方X1に押して第2アーム32を回転させる第2前端部44A2とを含む。
【0122】
図7Aは本実施形態に係るスライダ44の斜視図であり、
図7Bは上面視におけるスライダ44の平面図である。これら図面に示されるように、スライダ44は、板状に形成されており、ステープルSの第1脚部S1が配置される左側において前方X1に延伸する第1前端部44A1と、ステープルSの第2脚部S2が配置される側において第1前端部44A1と離間して前方X1に延伸する第2前端部44A2とを有する。
【0123】
更にスライダ44は、後述するナット部品52にボルト固定されるための固定部44Bを備える。
【0124】
図4Bに示されるようにスライダ44は、ベース46に設けられた凹部に嵌められることにより前後方向に移動するようにガイドされる。スライダ44の上面は、ベース46又は筐体に固定されたガイドに当接することによって上方Z1への移動を制限される。また、スライダ44の左右の側面は、前後方向に延在して設けられるベース46の左右の壁面に当接することによって左右への移動を制限される。更にスライダ44の底面は、ベース46の上面及びドライバ42の上面に支持される。このような構成によりスライダ44(及びスライダ44が積層されるドライバ42)は、前後方向に移動するようにガイドされる。
【0125】
スライダ44の第1前端部44A1及び第2前端部44A2の構成については後述する。
【0126】
結束機10のナット部品52(
図4A、
図8A及び
図8B等)は、ドライバ42及びスライダ44を前方X1及び後方X2に移動させる機能を有する。本実施形態に係るナット部品52には、ボールねじ50の雄ねじと不図示のボール部材を介して螺合する雌ねじが形成されている。このためボールねじ50が順方向に回転することによりナット部品52は前方X1に移動し、ボールねじ50が逆方向に回転することによりナット部品52は後方X2に移動する。ナット部品52は、スライダ44と固定されている。また、
図8Aに示されるようにナット部品52の前端面は、スライダ44の後端面に当接する。このため、ナット部品52とスライダ44は回転モーメントが抑制された態様で一体的に前方X1及び後方X2に移動可能に構成されている。
【0127】
更にナット部品52は、第1爪部48C1、第2爪部48C2及び第3爪部48C3が設けられる切替ブロック48(
図8B)を保持するために下方Z2に突出する円環状の保持部52Aを含む。ナット部品52とナット部品52に保持される切替ブロック48は一体的に前方X1及び後方X2に移動可能に構成されている。保持部52Aは、第1爪部48C1が第1溝42G1に、第2爪部48C2が第2溝42G2に、第3爪部48C3が第3溝42G3に挿入可能なように切替ブロック48を保持する。
【0128】
ナット部品52、スライダ44及びドライバ42は、前方X1及び後方X2に移動可能に構成されているため、移動部と呼ばれる場合がある。
【0129】
図8Aは、結束機10を側面から見た側面視において結束機10をボールねじ50の中心軸50AXを含む垂直断面で切断した部分拡大図である。
図8Bは、結束機10を後方X2から見た背面視において結束機10をボールねじ50の中心軸50AXに垂直な垂直断面で切断した部分拡大図である。
図9は、結束機10の斜視断面図におけるナット部品52等を示す部分拡大図である。
【0130】
図8Bに示されるように、ナット部品52と切替ブロック48との間には、切替ブロック48の底面をベース46の表面に押し付ける弾性力を発生させるための弾性部材49が挿入される。従って切替ブロック48は、上下方向に移動可能に構成されており、ナット部品52と切替ブロック48との上下方向の間隔は、切替ブロック48が通過するベース46の表面形状に応じて変動する。
【0131】
本実施形態において、ナット部品52は、モータ54及びボールねじ50によって前方X1及び後方X2に移動可能に構成される。
【0132】
モータ54(
図4A)はボールねじ50を回転させる。モータ54は、結束機10の後端部に設けられる。なお結束機10は着脱自在に設けられるバッテリを備え、モータ54はバッテリの電源によって回転駆動可能に構成されてもよい。本実施形態にかかる結束機10は更に減速機55を備えており、モータ54は減速機55によりトルクを増加させてボールねじ50を回転させる。更に結束機10の後端部には、モータ54を制御するための制御装置に相当するCPUが搭載されているプリント配線基板が搭載されている。
【0133】
ボールねじ50(
図4A、
図8A及び
図8B)は、結束機10の略中心を前後方向に延伸して設けられる。上述したようにボールねじ50には、ナット部品52の雌ねじと不図示のボール部材を介して螺合する雄ねじが形成されている。
【0134】
ベース46(
図4B、
図8A及び
図8B)は、ドライバ42及びスライダ44を支持する。
図4Bに示されるように、ベース46は、ドライバ42の底面に当接乃至対向することによりドライバ42を下方Z2から支持する支持面と、ドライバ42の左端の側面に当接乃至対向することによりドライバ42を左方Y2から支持するために、前後方向に延在する壁部を有する。更にベース46は、ドライバ42の右端に当接乃至対向することによりドライバ42を右方Y1から支持するために、前後方向に延在する壁部を有する。このような構成により、ベース46は、前後方向に移動するようにドライバ42をガイドする。
【0135】
更にベース46は、ドライバ42上に載置されるスライダ44の底面に当接乃至対向することによりスライダ44を下方Z2から支持する支持面と、スライダ44の左端に当接乃至対向することによりスライダ44を左方Y2から支持するために、前後方向に延在する壁部を有する。更にベース46は、スライダ44の右端に当接乃至対向することによりスライダ44を右方Y1から支持するために、前後方向に延在する壁部を有する。このような構成により、ベース46は、前後方向に移動するようにスライダ44をガイドする。
【0136】
図9に示されるように、ベース46には、後方X2に進行するほど上方Z1に突出するようにテーパが設けられた第1突起46A1と、前方X1に進行するほど上方Z1に突出するようにテーパが設けられた第2突起46A2と、後方X2に進行するほど上方Z1に突出するようにテーパが設けられた第3突起46A3とが形成される。
【0137】
第1突起46A1は、ドライバ42が後方X2に移動したときに第1爪部48C1の経路上(第1溝42G1の内部)に設けられる。
【0138】
第2突起46A2は、ドライバ42が前方X1に移動したときに第2爪部48C2の経路上(第2溝42G2の内部)に設けられる。
【0139】
第3突起46A3は、ドライバ42が後方X2に移動したときに第3爪部48C3の経路上(第3溝42G3の内部)に設けられる。
【0140】
第1突起46A1乃至第3突起46A3は、それぞれ、ドライバ42の高さ(ドライバ42の板厚)と同一又はドライバ42よりも高く形成するのが好ましい。
【0141】
第1突起46A1及び第3突起46A3は、前後方向において同じ位置に設けられる。第2突起46A2は、第1突起46A1及び第3突起46A3よりも前方X1に設けられる。
【0142】
以上のような構成によれば、モータ54がボールねじ50を順方向に回転させると、ナット部品52、ナット部品52に固定されるスライダ44及びナット部品52に保持される切替ブロック48は、共に前方X1に移動する。また、切替ブロック48の第1爪部48C1、第2爪部48C2及び第3爪部48C3がそれぞれ第1溝42G1、第2溝42G2及び第3溝42G3内に挿入されているため、第1爪部48C1の前面及び第3爪部48C3の前面は、第1溝42G1の後方X2を向いた側面と第3溝42G3の後方X2を向いた側面にそれぞれ当接する。このため弾性部材49によってベース46の表面に押し付けられる切替ブロック48は、ベース46の表面を下方Z2に押し付けながら、第1爪部48C1の前面及び第3爪部48C3の前面によってドライバ42を前方X1に移動させる。その結果、ドライバ42とスライダ44は共に前方X1に移動する。ドライバ42とスライダ44が共に前方X1に移動する移動動作を第1移動動作と呼ぶ。
【0143】
その後、切替ブロック48が第2突起46A2が設けられた位置まで前進すると、第2爪部48C2は第2突起46A2の傾斜面に従って上方Z1に移動する。このため切替ブロック48が前方X1に移動しながら上方Z1に移動する。その結果、第1爪部48C1の前面及び第3爪部48C3の前面は、当接していた第1溝42G1の側面及び第3溝42G3の側面よりも上方Z1に移動する。従って、切替ブロック48はドライバ42の上に乗り上げ、ドライバ42は前方X1への移動を停止する。このとき第1移動動作は終了する。
【0144】
第1移動動作の終了後、モータ54がボールねじ50を順方向に更に回転させると、切替ブロック48は、ドライバ42上を前方X1に移動する。このときスライダ44とドライバ42のうち、スライダ44のみが前方X1に移動する。ドライバ42とスライダ44のうちスライダ44のみが前方X1に移動する移動動作を第2移動動作と呼ぶ。ドライバ42に対してスライダ44が所定量前進すると、モータ54はボールねじ50の順方向の回転を停止する。このとき第2移動動作は終了する。
【0145】
なお、第2移動動作中、切替ブロック48とドライバ42との摩擦によりドライバ42が前進する可能性がある。このため結束機10は、第2移動動作中のドライバ42の前進を停止させるためのストッパを備えてもよい。例えばベース46に開口穴を形成しこの開口穴から上方Z1に付勢されるボール等のストッパを露出させ、一方でドライバ42の底面には、ボールが挿入される凹みを設け、第1移動動作が終了しドライバ42の前方X1への移動を停止すべき位置において、ストッパと凹部とが係合するように構成することで、第2移動動作中のドライバ42の前進及び後退を抑制することが可能である。
【0146】
後述するように第1移動動作において、前方X1に移動するドライバ42を用いて上端のステープルSを前方X1に押すことにより、上端のステープルSを前方X1に移動させて他のステープルSと分離させることが可能となる。更に第1移動動作において、前方X1に移動するドライバ42を用いて上端のステープルSを前方X1に移動させながら、第1脚部S1の先端部S1Aを第1外壁部62に当接させることにより、第1脚部S1の先端部S1Aが第1脚部S1の第1部S1Bとなす屈曲角α1を更に小さくするように第1脚部S1を変位(塑性変形)させることが可能となる。
【0147】
また第2移動動作においてドライバ42は前方X1への移動を停止するからドライバ42に押されていたステープルSも前方X1への移動を停止する。従って、第2移動動作においてスライダ44を前進させることにより、ステープルSを停止させた状態で、スライダ44の第2前端部44A2により第2変位部30の第2アーム32を前方X1に押して回転させて、第1脚部S1、第2脚部S2及び本体部S3で囲んで第1対象物Gと係合するようにステープルSの第2脚部S2を変位させることが可能となる。更にステープルSを停止させた状態で、スライダ44の第1前端部44A1により第1変位部20の第1アーム22を回転させることにより第1対象物Gと係合するようにステープルSの第1脚部S1を変位させることが可能となる。
【0148】
なお結束機10は、ドライバ42及びスライダ44の移動量を制御するために、モータ54の回転量を取得するためのホールセンサその他のセンサを更に備えてもよい。更に結束機10は、ナット部品52の前後方向の位置を検出し、制御するためにナット部品52に取り付けられる磁石と、ナット部品52に取り付けられた磁石の位置を取得するためのホールセンサその他のセンサを更に備えてもよい。
【0149】
結束動作の完了後、モータ54がボールねじ50を逆方向に回転させることによりナット部品52、ナット部品52と固定されるスライダ44及びナット部品52に保持される切替ブロック48は、共に後方X2に移動する。このとき切替ブロック48は、停止しているドライバ42上を後方X2に移動する。
【0150】
更にモータ54がボールねじ50を逆方向に回転させると、ベース46に設けられた第2突起46A2の傾斜面に従って切替ブロック48の第2爪部48C2が後方X2に移動しながら下方Z2に移動するため、切替ブロック48の第1爪部48C1、第2爪部48C2及び第3爪部48C3がそれぞれ第1溝42G1、第2溝42G2及び第3溝42G3内の領域に挿入される。更にモータ54がボールねじ50を逆方向に回転させると切替ブロック48が後方X2に移動して、切替ブロック48の第2爪部48C2の後面が第2溝42G2の前方X1を向いた側面に当接する。このため切替ブロック48は、弾性部材49によってベース46の表面を下方Z2に押し付けながら、第2爪部48C2の後面によってドライバ42を後方X2に移動させる。このとき、ナット部品52、スライダ44、切替ブロック48及びドライバ42は、共に後方X2に移動する。
【0151】
更にモータ54がボールねじ50を逆方向に回転させて切替ブロック48が第1突起46A1及び第3突起46A3が設けられた位置まで後退すると、切替ブロック48の第1爪部48C1及び第3爪部48C3は、それぞれ、第1突起46A1及び第3突起46A3の傾斜面に従って上方Z1に移動する。このため切替ブロック48は後方X2に移動しながら上方Z1に移動する。その結果、第2爪部48C2の後面は、当接していた第2溝42G2の側面よりも上方Z1に移動する。従って、切替ブロック48はドライバ42の上に乗り上げ、ドライバ42は後方X2への移動を停止する。結束機10は、ドライバ42の後方X2への移動を規制するために、上述した構成又はその他の構成からなるストッパを備えてもよい。
【0152】
その後更にモータ54がボールねじ50を逆方向に回転させると、切替ブロック48は、ドライバ42上を後方X2に移動する。このときドライバ42とスライダ44のうちスライダ44のみが後方X2に移動する。ドライバ42に対してスライダ44が所定量後退すると、モータ54はボールねじ50の逆方向の回転を停止する。
【0153】
その後、モータ54がボールねじ50を順方向に回転させると、ナット部品52、ナット部品52に固定されるスライダ44及びナット部品52に保持される切替ブロック48は、共に前方X1に移動する。切替ブロック48の第1爪部48C1及び第3爪部48C3が、それぞれ、第1溝42G1前端の側面及び第3溝42G3前端の側面に当接乃至近接する位置まで、ナット部品52、スライダ44及び切替ブロック48を、共に前方X1に移動させることにより、その後に、第1移動動作に移行することが可能となる。
【0154】
以上のような構成により結束機10は、ドライバ42とスライダ44とが共に前進する第1移動動作と、ドライバ42とスライダ44のうちスライダ44のみが更に前方X1に移動する第2移動動作を実行可能に構成されている。
【0155】
なお初期状態におけるナット部品52の位置は限定されるものではない。例えば、初期状態から起動直後は、スライダ44のみが前方に移動し、その後にドライバ42及びスライダ44が開始する第1移動動作が実行するように結束機10を構成してもよい。
【0156】
[離脱部の送り曲げ機構]
離脱部は、ドライバ42によって分離し前方X1に移動するステープルSの移動路及び第1変位部20及び第2変位部30による変位中にステープルSを支持する支持壁を含む。
【0157】
図10に示されるように離脱部56は、スライダ44の移動に伴って上下動が可能に設けられている。離脱部56は、スライダ44の移動に伴ってスライダ44の一部が入り込む間隙56Aが形成されている。スライダ44の一部が離脱部56の間隙56Aに入り込むことで離脱部56の上下位置を安定させることができ、ステープルSの変形を確実に行える。
【0158】
図11A及び
図11Bは、初期状態(待機状態)における正面視及び上面視における結束機10の前端部分を示す部分拡大図である。
【0159】
第1外壁部62は、ドライバ42によってステープルSが前方X1に移動しているときに、第1脚部S1の先端部S1Aが当接しながら通過することにより、第1脚部S1の先端部S1Aが第1脚部S1の第1部S1B(第1脚部S1の先端部S1Aに接続する部分)となす屈曲角α1を更に小さくするように塑性変形させる。
【0160】
従って第1外壁部62は、ステープルSの第1脚部S1の先端部S1Aの一部のみが接触する位置に設けられている。
【0161】
第1内壁部64は、ドライバ42によってステープルSの第1脚部S1が前方X1に移動しているとき及び第1脚部S1の変位時に、第1脚部S1の内側に設けられることによって第1脚部S1を内側から支持する。第1内壁部64は、第1脚部S1の移動経路に沿って設けられた底面と、第1脚部S1の移動方向である前後方向に略平行に設けられ第1脚部S1を内側から支持する壁面とを有する。
【0162】
一方で第1外壁部62は、第1内壁部64の壁面との間隙が前方X1に進行するほど小さくなるように傾斜する壁面を含むように設けられている。このような構成により、第1脚部S1の先端部S1Aが前方X1に進行するほど、屈曲角α1が小さくなるように先端部を変位させることが可能となる。
【0163】
更に本実施形態における第1外壁部62は、少なくとも、第1内壁部64の壁面との間隙が相対的に大きく減少する壁面が形成された第1領域62A(
図9)と、第1領域62Aより前方X1に設けられ第1内壁部64の壁面との間隙が小さく減少する壁面が形成された第2領域62B(同図)とを含む。
【0164】
第1領域62Aにおける第1外壁部62の壁面と第1内壁部64の壁面との間隙(前方X1と垂直な左右方向における距離)の平均減少率を第1減少率とし、第2領域62Bにおける第1外壁部62の壁面と第1内壁部64の壁面との間隙(前方X1と垂直な左右方向における距離)の平均減少率を第2減少率とするとき、第1減少率の絶対値は、第2減少率の絶対値より大きい。換言すると、上面視における前後方向と第1外壁部62の第1領域62Aの壁面とがなす角は、上面視における前後方向と第1外壁部62の第2領域62Bの壁面とがなす角より大きい。
【0165】
屈曲部の屈曲角α1が小さいほど変位に対して反発する弾性力は小さくなるから、上記構成によりスムーズに第1脚部S1の先端部S1Aを曲げることが可能となる。
【0166】
なお第1脚部S1が接触しない壁面は、上記構成に限られるものではない。例えば、第1内壁部64の上部を外方に突出するように設けて第1部S1Bの上面に対向する壁面を設けることにより、第1部S1Bが上方Z1に変位することを規制するように第1内壁部64を設けてもよい。
【0167】
更に第1内壁部64には、先端部S1A及び当接部材24が第1部S1Bの下方Z2を通過することを許容するための貫通孔が形成されている(
図5)。
【0168】
[離脱部の支持壁]
離脱部は、更に第2脚部S2の変位時に第2脚部S2の内側に設けられることによって第2脚部S2を内側から支持する壁面を有する第2内壁部66を含む。第2内壁部66は、第2脚部S2の移動経路に沿って前後方向に略平行に設けられ設けられた底面を更に有する。
【0169】
第2内壁部66の前端は、第2脚部S2を屈曲させるときの支点として機能する。このため第2内壁部66は、第2脚部S2の屈曲部位である第2脚部S2の先端から第2距離DS2の位置に前端が設けられる。第2脚部S2は開口を閉塞する距離を有する必要があるため、第2内壁部66の前端は、第2脚部S2の先端からステープルSの開口幅以上の距離離間した位置に設けられる必要がある。第2脚部S2の先端部S2Aは、先端支持部68によって支持される。また、ステープルSの開口幅は、第1内壁部64の壁面と第2内壁部66の壁面との幅に相当する。このため、先端支持部68(のうち第2脚部S2の先端が対向する面)と第2内壁部66の前端との距離は、ステープルSの開口幅に相当する第1内壁部64の壁面と第2内壁部66の壁面との幅よりも大きくなるように第2内壁部66は設けられている。
【0170】
第2変位部30は更に第2脚部S2の先端部S2Aを支持する先端支持部68を含む。先端支持部68は、第2脚部S2の内側に設けられ、先端部S2Aを内側から支持する壁面を有する支持壁部68Aを含む。
【0171】
[第1変位部]
第1変位部20は、第1対象物Gと係合可能に第1脚部S1を変位させる機能を有する。
【0172】
本実施形態に係る第1変位部20は、スライダ44の第1前端部44A1によって押されることにより回転する第1アーム22と、第1アーム22の回転に伴ってステープルSの内方に向かって第1脚部S1の先端部S1Aに当接しながら移動することにより、第1脚部S1の先端部S1Aが塑性変形するように曲げる当接部材24(爪部材)とを備える。
【0173】
まずスライダ44の第1前端部44A1の構成を説明する。
【0174】
図7A及び
図7Bに示されるようにスライダ44の第1前端部44A1は、スライダ44の左方Y2端部に、前方X1に延伸して設けられる。第1前端部44A1は、前方X1移動時に第1アーム22と当接することにより第1アーム22を第1回転方向R1に回転させるために上方Z1に突出する第1凸部44A11と、後方X2移動時に第1アーム22と当接することにより第1アーム22を第1回転方向R1と反対の第2回転方向R2に回転させる第2凸部44A12を含んでいる。
【0175】
第1凸部44A11は、第2凸部44A12よりも後方X2に設けられる。また、第1凸部44A11は、第2凸部44A12よりも外側(左方Y2)に設けられる。このような構成により第1アーム22の回転軸と第1凸部44A11との距離を第2凸部44A12との距離よりも大きくすることが可能となるため、高負荷となる前進時に大きな回転トルクを発生させることが可能となる。
【0176】
スライダ44の第1前端部44A1は更に前方X1に延伸する突端部44A13を含む。突端部44A13は、第1脚部S1の先端部S1Aの塑性変形時に第1脚部S1の先端部S1Aに接続する第1部S1Bを上方Z1から押さえつけることにより、第1部S1Bが曲がってしまうことを抑制する。
【0177】
続いて第1変位部20の第1アーム22について説明する。第1アーム22は、スライダ44の第1前端部44A1によって前方X1に押されることにより第1方向に回転して、当接部材24を内方に並進移動させる部材である。
【0178】
図12Aは、上面視における第1変位部20による塑性変形開始時における結束機10の前端部分を示す部分拡大図であり、
図12Bは左側面視における第1変位部20の断面の部分拡大図であり、
図12Cは結束機10の前端部の拡大斜視図である。但し便宜上、各図において説明に不要な部品は省略されている。
【0179】
図12A等に示されるように、第1アーム22の回転軸22AXは、ステープルSの第1脚部S1の外方(右方Y1)かつ前方X1に設けられている。また、第1アーム22の回転軸22AXは、上下方向を向くように前後方向に垂直に設けられている。更に第1アーム22は、待機時において回転軸22AXから後方X2に延在して設けられる部分を有し、この部分の後端には、下方Z2に突出し、後方X2かつ内方に傾斜して延在する壁部を有する。この壁部の後方X2を向いた面は初期状態において後方X2かつ外方を向き、この壁部の前方X1を向いた面は前方X1かつ内方を向く。この壁部の後方X2を向いた面は、前進する第1凸部44A11に当接する面を含む。この壁部は、第1凸部44A11に当接することによって第1回転方向R1に回転しながら第1凸部44A11と第2凸部44A12との間の領域を貫通するように移動する。また、この壁部の前方X1を向いた面は、後退する第2凸部44A12に当接する面を含む。従って壁部は、第2凸部44A12に当接することによって第1回転方向R1と反対の第2回転方向R2に回転しながら元の位置に戻るように構成されている。
【0180】
図12Cに示されるように第1アーム22の後端部には更に、下方Z2に突出する凸部22Cが設けられる。この凸部22Cは、当接部材24の端部に設けられる凹部24Aと係合する。この凸部22Cが第1アーム22の回転軸22AXを中心に第1回転方向R1に回転することにより、当接部材24は、ステープルSの内方に向かって進行するように構成されている。
【0181】
図13は、当接部材24(爪部材)の斜視図を示している。当接部材24は、第1アーム22によって押され、ステープルSの内方かつ下方Z2に傾斜する方向に進行することにより、ステープルSの第1脚部S1の先端部S1Aを塑性変形させる機能を有する。当接部材24によって、第1脚部S1の先端部S1Aは、上面視において第1脚部S1の先端部S1Aに接続する第1部S1Bと交差し、かつ、結束前の第1脚部S1、第2脚部S2及び本体部S3を貫通する平面PLから離間する下方Z2に先端が進行するように曲げられる。第1対象物Gを挟み込んだ状態で第1脚部S1の先端部S1Aを内方かつ下方Z2に塑性変形させることにより、第1脚部S1の先端部S1Aは、第1部S1Bと干渉することなく第1対象物Gを挟みこむことが可能となる。
【0182】
同図に示されるように当接部材24の末端には、第1アーム22の下方Z2に突出する凸部22Cと係合する凹部24Aが設けられる。第1アーム22の凸部22Cが第1回転方向R1に回転するとき、凹部24Aの側面が当接して当接部材24は、内方かつ下方Z2に傾斜する方向に進行し、この凸部22Cが第2回転方向R2に回転するとき、凹部24Aの他の側面が当接して当接部材24は、上方Z1かつ外方に傾斜する方向に戻る。
【0183】
当接部材24の先端は、先端部を掴むように当接する当接面24Bと、当接面24Bと側面との接続部に設けられ、先端部を塑性変形させる応力を作用させるための角部24Cを含む。ここで当接面24BはステープルSの断面形状にあわせて窪むように形成されている。また当接面24Bは、角部24Cよりも先に先端部S1Aに当接するように傾斜して形成されている。このような構成により当接面24Bで先端部S1Aを掴むように取り込んだ後に、角部24Cで先端部S1Aを塑性変形させることが可能となるから、角部24Cによって塑性変形される先端部S1Aの位置を安定させることが可能となる。
【0184】
図14は、正面視における当接部材24による先端部S1Aの塑性変形後の断面図及びこの断面における領域Aの拡大図を示す。同図に示されるように、当接部材24は、内方に向かって下降するように傾斜するベース46の傾斜面上に載置されることにより、ステープルSの内方(第2アーム32に接近する方向)かつ下方Z2に傾斜する方向に進行するようにガイドされている。第1脚部S1の第1部S1Bは、スライダ44の底面によって上方Z1から、第1内壁部64によって内側及び下方Z2(但し先端部S1Aが第1部S1Bの下方Z2を通過する部分を除く)から支持される。加えて当接部材24の当接面24Bは塑性変形時に第1部S1Bの外面に対向する。このため、第1脚部S1の先端部S1Aの塑性変形時に、第1部S1Bが曲がってしまうことを抑制することが可能となる。
【0185】
[第2変位部]
第2変位部30は、第1対象物Gと係合可能に第2脚部S2を変位させる機能を有する。
【0186】
第2変位部30は、スライダ44の第2前端部44A2によって第1回転方向R1に回転することにより第2脚部S2を塑性変形するように曲げる第2アーム32を備える。
【0187】
まずスライダ44の第2前端部44A2の構成を説明する。
【0188】
図7A及び
図7Bに示されるようにスライダ44の第2前端部44A2は、スライダ44の右方Y1端部に、前方X1に延伸して設けられる。第2前端部44A2は、前方X1移動時に第2アーム32と当接することにより第2アーム32を第1回転方向R1に回転させるために前方X1を向いて形成された第1表面44A21及び第2表面44A22と、この第1前面44A21及び第2表面44A22よりも前方X1に設けられ後方X2を向いて形成された第3表面44A23とを含む。この第1表面44A21及び第2表面44A22と、第3表面44A23との間に第2アーム32の後端部32Bを配設することによりスライダ44の前進時に第2アーム32は第1回転方向R1に回転し、スライダ44の後退時に第2アーム32は第2回転方向R2に回転して元の位置に戻る。
【0189】
スライダ44の第1表面44A21は、前進するスライダ44の第1前端部44A1が第2アーム32の後端部32Bに最初に当接する面に相当する。第1表面44A21に当接する第2アーム32の後端部32Bの面を第1後端面32B1と呼ぶ。
【0190】
スライダ44の第2表面44A22は、第1表面44A21が第1後端面32B1に当接し第2アーム32が第1回転方向R1の回転を開始した後に、更に前進するスライダ44の第2前端部44A2が第2アーム32の後端部32Bに当接する面に相当する。第2表面44A22に当接する第2アーム32の後端部32Bの面を第2後端面32B2と呼ぶ。
【0191】
図7B等に示されるように、上下方向に関し、第1表面44A21は第2表面44A22の上方Z1に設けられ、前後方向に関し第1表面44A21は第2表面44A22の後方X2に設けられ、左右方向に関し第1表面44A21は第2表面44A22の右方Y1、即ち、ステープルSを基準として、第1表面44A21は第2表面44A22よりも外方(右方Y1)に設けられる。
【0192】
この構成により、スライダ44は、第1表面44A21で第2アーム32を押した後に、第2表面44A22で第2アーム32を更に押すことが可能となるから、スライダ44のストロークに対する第2アーム32の回転角度を大きくすることが可能となる。
【0193】
更に、スライダ44の第1表面44A21に当接する接触点(「第1接触点」の一例)における第1後端面32B1の法線と、第1接触点と回転軸32AXとを結ぶ直線とがなす角度(「第1角度」の一例)は、第1接触点がない場合における、スライダ44の第2表面44A22に当接する接触点(「第2接触点」の一例)における第2後端面32B2の法線と、第2接触点と回転軸32AXとを結ぶ直線とがなす角度(「第2角度」の一例)よりも90度に近いようにスライダ44及び第2アーム32は形成されている。
【0194】
第2アーム32の回転により接触点が切り替わった時点で、スライダ44の第1表面44A21に当接する接触点(「第1接触点」の一例)における第1後端面32B1の法線と、第1接触点と回転軸32AXとを結ぶ直線とがなす角度(「第1角度」の一例)は、スライダ44の第2表面44A22に当接する接触点(「第2接触点」の一例)における第2後端面32B2の法線と、第2接触点と回転軸32AXとを結ぶ直線とがなす角度(「第2角度」の一例)と同等になるように、スライダ44及び第2アーム32は形成されている。
若しくは、スライダ44の第2表面44A22に当接する接触点(「第2接触点」の一例)における第2後端面32B2の法線と、第2接触点と回転軸32AXとを結ぶ直線とがなす角度(「第2角度」の一例)の方が90度に近いようにスライダ44及び第2アーム32は形成されている。
【0195】
この構成により、第1表面44A21が第1後端面32B1に当接するときの回転モーメントを、第2表面44A22が第2後端面32B2に当接するときの回転モーメントよりも、相対的に大きくすることが可能となる。
【0196】
後述するように、第2脚部S2は第2アーム32の回転開始時に2つの箇所を同時に曲げる必要があることから、第2アーム32には、回転開始時に大きな負荷がかかる。このため、負荷がかかる回転開始時にスライダ44の第1表面44A21で第2アーム32を前方X1に押すことにより、第2アーム32に相対的に大きな回転モーメントを発生させることが可能となる。なお、回転モーメントを高めるために第2アーム32の回転軸32AXと第1後端面32B1との距離は、第2アーム32の回転軸32AXと第2後端面32B2との距離よりも大きくてもよい。換言すると、第2アーム32の回転軸32AXと第2後端面32B2との距離は、第2アーム32の回転軸32AXと第1後端面32B1との距離よりも小さくてもよい。
【0197】
続いて第2アーム32について説明する。
図15は、第2アーム32を下方から見た斜視図である。
図16A及び
図16Bは、それぞれ、第2アーム32の平面図及び背面図である。
【0198】
これら図面に示されるように、第2アーム32は、初期状態において回転軸32AXから後方X2に延在する後端部32Bと、回転軸32AXよりも前方X1に延在する先端部32Cとを含む。
【0199】
後端部32Bの第1後端面32B1は、第2後端面32B2よりも後方X2に設けられるから、スライダ44の第1表面44A21を第1後端面32B1に当接させ、その後に第2表面44A22を第2後端面32B2に当接させることが可能となる。
【0200】
回転軸32AXは、第1後端面32B1及び第2後端面32B2よりも中心側である左方Y2(内方)に設けられる。このため後端部32Bが前方X1に押されることにより第2アーム32の先端部32Cは、ステープルSの内方乃至第1アーム22に接近する方向に向かう第1回転方向R1に回転する。
【0201】
更に回転軸32AXは、下方Z2に進行するほど内方(左方Y2)に進行するように傾斜して設けられる。このため第1回転方向R1に回転する第2アーム32の先端部32Cは、第1回転方向R1に回転するほど上方Z1に進行するように設けられている。その結果、第2アーム32によって塑性変形されるステープルSの第2脚部S2も、回転するほど上方Z1に進行し、結束前の第1脚部S1、第2脚部S2及び本体部S3を貫通する平面PLよりも上方Z1の位置において、第1対象物Gと係合可能に構成されている。
【0202】
第2アーム32の先端部32Cは、第2脚部S2に当接する本体部32C1と、曲げ戻し用の突起32C2とを含む。本体部32C1は、回転軸32AXと離間した位置において第1回転方向R1に突出する2つの凸部が上下に離間して設けられる。この凸部で上下から第2脚部S2を挟み込むことにより第2脚部S2をしっかりと保持して塑性変形させることが可能となる。
【0203】
第2アーム32は、本体部32C1よりも第1回転方向R1に進行した位置に設けられ、下方Z2に突出する曲げ戻し用の突起32C2を含む。第2アーム32を第1回転方向R1に回転させて第2脚部S2を曲げた後に、第2アーム32を第2回転方向R2に回転させてこの突起32C2により第2脚部S2を第2回転方向R2に戻すことによって、第2脚部S2の先端部S2Aを第1対象物Gに係合させることが可能となる。
【0204】
曲げ戻し用の突起32C2は、第1回転方向R1に進行するほど下方Z2に突出するように傾斜して形成される。このような構成により第2回転方向R2に回転させたとき、曲げ戻し用の突起32C2は、第2脚部S2を第2回転方向R2に戻しながら、スムーズに第1対象物Gに係合している第2脚部S2を乗り越えることが可能となる。なお、塑性変形されるステープルSには、下方Z2のステープルSを介してプッシャ16により上方Z1に向かう付勢力が作用している。第2脚部S2の変位時の仰角(結束前の第1脚部S1、第2脚部S2及び本体部S3を貫通する平面PLに対して、例えば、10度から45度)及び曲げ戻し突起32C2の傾斜角度は、この付勢力に抗して突起が第2脚部S2を乗り越えられるように設計されている。
【0205】
[結束機を用いた結束方法]
以下、結束機10を用いた結束方法について説明する。
【0206】
上述したように
図11A及び
図11Bは、初期状態(待機状態)における正面視及び上面視における結束機10の前端部分を示す部分拡大図である。
【0207】
このとき、上端のステープルSは、下方Z2のマガジン14内に収容される一又は複数のステープルSと連結されている。また、ドライバ42は、上端のステープルSの本体部S3の後方X2に位置している。ドライバ42の前端と上端のステープルSの本体部S3との間には、わずかな隙間がある。スライダ44は、左端に設けられる突端部44A13がわずかにステープルSと重なっている。
【0208】
図17A及び
図17Bは、使用者がスイッチを操作して、ドライバ42が移動を開始した直後における正面視及び上面視における結束機10の前端部分を示す部分拡大図である。使用者がスイッチを操作するとモータ54が回転を開始し、これに伴ってボールねじ50が順方向に回転するためナット部品52及びナット部品52に固定されるスライダ44が前方X1への移動を開始する。ナット部品52に保持される切替ブロック48の第1爪部48C1及び第3爪部48C3は第1溝42G1内及び第3溝42G3内に挿入されているため第1爪部48C1の前面及び第3爪部48C3の前面は第1溝42G1の後方X2を向いた側面及び第3溝42G3の後方X2を向いた側面に当接し、ドライバ42の前方X1への移動を開始させる。従ってドライバ42とスライダ44が共に前進する第1移動動作が開始する。
【0209】
図8Aに示されるように、ベース46はドライバ42の高さが上端のステープルSとほぼ一致するように設けられている。このためベース46上を前方X1に移動するドライバ42の前端面42Sは上端のステープルSの本体部S3に当接し、ステープルSの本体部S3を前方X1に押し出す。下方Z2のステープルSの内側には、下方Z2のステープルSの前方X1への移動を禁止する分離ブロック18(
図5)が設けられている。このため上端のステープルSのみが下方Z2のステープルSから分離して分離ブロック18上を前方X1に移動する。
【0210】
図18は、ドライバ42が前進してステープルSの第1脚部S1の先端部S1Aが離脱部の誘導路上を前進しているときにおける上面視における結束機10の前端部分を示す部分拡大図である。なお、正面視は
図17Aと同一であるから図を省略する。
【0211】
ボールねじ50が順方向の回転を継続するためスライダ44は前方X1に移動する。このためスライダ44の第1前端部44A1は、突端部44A13が第1脚部S1上に位置するように前進し、第2前端部44A2は結束機10の右端に沿って前進する。スライダ44と共にドライバ42も前進する。第1脚部S1の先端部S1Aは、第1外壁部62の進入部に相当する第1領域62Aの壁面に接触する。また、第1脚部S1の第1部S1Bの内側は、第1内壁部64の壁面に接触する。第1外壁部62の壁面と第1内壁部64の壁面との間隔は、前方X1に進行するほど減少するから、第1脚部S1は、前進するほど屈曲角α1が小さくなるように塑性変形する。このとき、ドライバ42の突端部42Bは第1部S1B及び本体部S3の左端を外側から支持し、スライダ44の突端部44A13は第1脚部S1の上面に当接し第1脚部S1を上方Z1から押さえつけることにより第1部S1Bが曲がってしまうことを抑制する。第1領域62Aにおける第1外壁部62の壁面と第1内壁部64の壁面との間隔は相対的に大きく減少するから、第1脚部S1の先端部S1Aと第1部S1Bの角度は相対的に大きく減少する。続く第2領域62Bにおける第1外壁部62の壁面と第1内壁部64の壁面との間隔は相対的に小さく減少するから、屈曲角は相対的に小さく減少する。
【0212】
図19は、ドライバ42が前進してステープルSの第1脚部S1の先端部S1Aが第1外壁部62を通過したときにおける、結束機10の前端部の上面視における部分拡大図である。なお、正面視は
図17Aと同一であるから図を省略する。同図に示されるように、第1外壁部62を通過することにより、先端部は塑性変形し、屈曲角α1は大きく減少する。
【0213】
図20は、ドライバ42が最も前進してステープルSが変位開始位置に到達したときの様子を示す上面視における部分拡大図である。このときステープルSの第1脚部S1の屈曲部が、第1内壁部64の前端(第1内壁部64の後方X2を向いた内壁面)に到達し、第2脚部S2の先端部S2Aが先端支持部68の前端(先端支持部68の後方X2を向いた内壁面)に到達する。なお、正面視は
図17Aと同一であるから図を省略する。
【0214】
このとき第1脚部S1の屈曲部及び第1部S1Bの内側面及び下面は、第1内壁部64によって下方Z2及び右方Y1(内方)から支持される。また、第1脚部S1の屈曲部は第1内壁部64によって前方X1からも支持される。更に第1部S1Bの上面はスライダ44の第1前端部44A1の突端部44A13によって上方Z1から支持される。
【0215】
一方で第2脚部S2の先端部S2Aの内側面及び下面は、先端部によって下方Z2及び左方Y2(内方)から支持される。
【0216】
更に本体部S3の内側面及び第2脚部S2の本体部S3との接続部の内側面は、第2内壁部66によって内方から支持される。
【0217】
このときドライバ42を前方X1に押していた切替ブロック48の第2爪部48C2は、第2突起46A2によって上方Z1に移動する。その結果切替ブロック48がドライバ42の上に乗り上げるため、ドライバ42は前方X1への移動を停止し、第1移動動作が終了する。同時に、ベース46に形成された穴から上方Z1に付勢されたボールがドライバ42の底面に設けられた凹部に嵌りストッパとして機能するため、切替ブロック48との摩擦力によりドライバ42が前方X1又は後方X2へ移動することが抑制される。
【0218】
スライダ44の第1前端部44A1の第1凸部44A11及び第2凸部44A12は、第1アーム22の後端に接近する。また、スライダ44の第2前端部44A2の第1表面は、第2アーム32の第1後端面32B1に近接又は当接する。
【0219】
第1移動動作の終了後、制御装置によってモータ54は回転を停止する。このとき使用者は、第1対象物G及び第2対象物Pを結束機10の所定位置にセットする。本実施形態において第1対象物Gはガイド要素として機能する紐である。従って使用者は、第1対象物Gである紐を第1脚部S1の屈曲部に挿入する。本実施形態において第2対象物Pは茎である。従って使用者は、第2対象物Pである茎をステープルSで囲まれる領域に挿入する。結束機10の第1対象物G及び第2対象物Pが挿入される部分を第1挿入部及び第2挿入部と呼ばれる場合がある。本実施形態において第1対象物Gは第1内壁部64で支持される第1脚部S1の屈曲部に挿入されるので、第1内壁部64は第1挿入部に相当する。また第2対象物Pは第1内壁部64、第2内壁部66で挟まれるように後方X2に窪んで設けられる結束機10の凹部に挿入されるので、この凹部は第2挿入部に相当する。
【0220】
図21A及び
図21Bは、使用者が第1対象物Gを第1挿入部に挿入し、第2対象物Pを第2挿入部に挿入したときの正面視及び上面視における結束機10の前端部分を示す部分拡大図である。
【0221】
その後使用者がスイッチを操作すると、又は、第1挿入部及び第2挿入部にそれぞれ設けられたコンタクトセンサ等のセンサにより第1対象物G及び第2対象物Pが挿入されたことが検出されると、再びモータ54は回転を開始する。モータ54が回転を再開し、これに伴ってボールねじ50が順方向に回転するためナット部品52及びナット部品52に固定されるスライダ44が前方X1への移動を開始する。切替ブロック48はドライバ42上を前進するためドライバ42は前進しない。このためドライバ42とスライダ44のうちスライダ44のみが前進する第2移動動作が開始する。
【0222】
図22A及び
図22Bは、第2移動動作においてスライダ44が更に前進したときの正面視及び上面視における結束機10の前端部分を示す部分拡大図である。第2移動動作においてドライバ42は前進しない。このためステープルSの本体部S3の内側面は第1内壁部64及び第2内壁部66により支持され、外側面はドライバ42により支持されて静止している。
【0223】
スライダ44の第1前端部44A1の第1凸部44A11は、第1アーム22の後端部の下方Z2に突出して傾斜する方向に延在する壁部の後方X2を向いた面に当接して、第1アーム22を前方X1に押す。第1アーム22の回転軸22AXは、このとき第1凸部44A11に対して前方X1及び外方(左方Y2)の位置に設けられている。このため第1アーム22は第1回転方向R1への回転を開始する。第1アーム22の後端部の壁部は、第1凸部44A11と第2凸部44A12の間隙の領域を通過しながら第1回転方向R1に回転する。なおこの時点において第1脚部S1は第1変位部20によって塑性変形されていない。
【0224】
一方で第2前端部44A2の第1表面44A21は第2アーム32の第1後端面32B1に当接し第2アーム32を前方X1に押す。第2アーム32の回転軸32AXは、このとき第1後端面32B1に対して前方X1かつ内方(左方Y2)に位置するから第2アーム32も第1回転方向R1への回転を開始する。第2アーム32の本体部S3の2つの突起に上下から挟まれる第2脚部S2は、第2内壁部66の前端を支点として、内方に向かって屈曲されようとする。
【0225】
このとき第2脚部S2の先端部S2Aは、第2脚部S2の内側に設けられる先端支持部68の支持壁部68Aの壁面によって内方から支持されている。このため、第2脚部S2が第2内壁部66の前端を支点としてステープルSの内方に向かって屈曲されると同時に、第2脚部S2の先端部S2Aが先端支持部68の支持壁部68Aの壁面に当接しながら支持壁部68Aを通過することよって反対方向(外方)に曲げられる。
【0226】
上述したように第2アーム32の回転軸32AXは、下方Z2に進行するほど内方に進行するように傾斜しているから、第2脚部S2の先端部S2Aは、第1回転方向R1に回転するほど、第1脚部S1に接近しながら上方Z1に進行する。
【0227】
またステープルSの第2脚部S2の先端部S2Aと支持壁部68Aの壁面とが当接している期間と、スライダ44の第1表面44A21と第2アーム32の第1後端面32B1とが当接している期間が、少なくとも一部の期間において重複するように構成されるから、高負荷の時に相対的に大きな回転モーメントを発生させることが可能である。
【0228】
図23A及び
図23Bは、第2移動動作においてスライダ44が更に前進したときの正面視及び上面視における結束機10の前端部分を示す部分拡大図である。
【0229】
第1アーム22は、スライダ44の第1前端部44A1の第1凸部44A11に押されることにより更に第1回転方向R1に回転する。このときスライダ44の第1前端部44A1の突端部44A13は第1内壁部64の前端に到達するため、スライダ44は、第1脚部S1の第1部S1Bの上面を上方Z1から押さえつける。このため第1脚部S1の第1部S1Bは、スライダ44及び第1内壁部64によって、上方Z1、下方Z2及び内方から支持される。
【0230】
第2アーム32の第2後端面32B2は、スライダ44の第2前端部44A2の第2表面44A22によって押されることにより更に第1回転方向R1に回転する。
図23Bに示されるように、第2アーム32によって保持される第2脚部S2は第1脚部S1と交差する位置まで屈曲されるため、結束前のステープルSに設けられていた開口は上面視において閉塞され、ステープルSの第1脚部S1、第2脚部S2及び本体部S3は上面視において第2対象物Pを包囲する。なお
図23Aに示される正面視において、第2脚部S2の先端部S2Aは、上方Z1に移動し第1対象物Gに近接する。
【0231】
またステープルSの第2脚部S2の先端部S2Aと支持壁部68Aとが当接している期間が経過した後に、スライダ44の第2表面44A22と第2アーム32の第2後端面32B2とが当接しているから、相対的に低負荷の時に相対的に小さな回転モーメントを発生させることが可能である。
【0232】
図24A及び
図24Bは、第2移動動作においてスライダ44が最も前進する直前の正面視及び上面視における結束機10の前端部分を示す部分拡大図である。
【0233】
第1アーム22は、スライダ44の第1前端部44A1の第1凸部44A11に押されることにより更に第1回転方向R1に回転し、第1対象物Gに接触し、第1対象物Gを押して変位させる。また、第1アーム22の下方Z2に突出する凸部22Cは、当接部材24の末端に設けられる凹部24Aと当接する。このため、第1アーム22の凸部22Cの回転に伴って当接部材24は、ステープルSの内方かつ下方Z2に傾斜する方向に進行を開始する。まず当接部材24の当接面24Bが第1脚部S1の先端部S1Aに当接し、その後当接部材24の角部24Cが第1脚部S1の先端部S1Aに当接し、先端部を折り返すように塑性変形させる。当接部材24によって折り返される第1脚部S1の先端部S1Aは、第1部S1Bの下方Z2を通過し、上面視において第1部S1Bと交差するように屈曲する。第1部S1Bと先端部S1Aが交差する位置における断面図に相当する
図14に示されるように第1部S1B(上方)と先端部S1A(下方)が上下に隣接するように先端部S1Aを塑性変形させることが可能となる。このとき当接部材24の先端及び第2脚部S2の先端は、第1内壁部64に形成され、上面視においてステープルSで囲まれる領域に連通する貫通孔の内部に侵入する。同図に示されるように第1部S1Bは、スライダ44及び第1内壁部64によって、上方、下方(但し折り返された先端部S1A及び当接部材24が通過する部分を除く)及び内方から囲まれているため、曲がることが抑制される。
【0234】
以上のプロセスにより第1脚部S1は第1対象物Gを挟み込む。第1脚部S1は塑性変形されているから、第1脚部S1と第1対象物Gの係合は容易に外れにくい。
【0235】
一方で第2アーム32の第2後端面32B2は、スライダ44の第2前端部44A2の第2表面によって押されることにより更に第1回転方向R1に回転する。このため第2脚部S2は、上面視において、第1対象物Gを超えて第2対象物Pに近接する。
【0236】
以後、モータ54はボールねじ50を逆回転させるため、スライダ44は後退を開始する。
【0237】
図25A及び
図25B並びに
図25Cは、スライダ44の後退開始後における結束機10の前端部分の正面視及び上面視における部分拡大図並びに部分拡大斜視図である。
【0238】
スライダ44が後退を開始すると、スライダ44の第1前端部44A1の第2凸部44A12が、第1凸部44A11と第2凸部44A12との間の領域を貫通するように移動する第1アーム22の壁部の前方X1を向いた面に当接して後方X2に押すことにより、第1アーム22を第2回転方向R2に回転させる。
【0239】
またスライダ44の第2前端部44A2の第3表面は、第2アーム32の後端部に当接して後方X2に押すことにより、第2アーム32を第2回転方向R2に回転させる。第2アーム32が第2方向に回転すると、第2アーム32の本体部S3よりも第1回転方向R1に進行した位置に下方Z2に突出して設けられる曲げ戻し用の突起32C2が第2脚部S2に当接しこれを第2回転方向R2に押す。このため第2脚部S2は第2回転方向R2に変位し、その結果第2脚部S2の屈曲部は、第1対象物Gに係合する。
図25Aに示されるように、第2脚部S2が第1対象物Gに係合することにより、第1対象物Gは変位し、第1脚部S1と第1対象物Gとの係合位置と、第2脚部S2と第2対象物Pとの係合位置との間に張力が発生する。このため第1対象物Gが撓んでしまい、第1対象物Gと第2脚部S2との係合が外れてしまうことを抑制することが可能となる。
【0240】
図26A及び
図26B並びに
図26Cは、スライダ44が更に後退したときの結束機10の前端部分の正面視及び上面視における部分拡大図並びに部分拡大斜視図である。
【0241】
スライダ44の第1前端部44A1の第2凸部44A12は、第1凸部44A11と第2凸部44A12との間の領域を貫通するように移動する第1アーム22の壁部の前方X1を向いた面に当接しながらこれを後方X2に押すため、第1アーム22は更に第2回転方向R2に回転する。
【0242】
この状態から、第1アーム22が更に第2回転方向R2に回転して
図21Bに示される初期位置まで回転すると、第1アーム22の下面に設けられた凹部に弾性部材で付勢されたボール部材が嵌まり込む。これにより、第1アーム22は初期位置に保持される。
【0243】
スライダ44の第2前端部44A2の第3表面は、第2アーム32の後端部の前方X1を向いた面に当接しながらこれを後方X2に押すため、第2アーム32は更に第2回転方向R2に回転する。第2脚部S2は第1対象物Gに係合するため、第2アーム32の曲げ戻し用の突起32C2は、これ以上第2脚部S2を第2回転方向R2に変位させることができなくなる。このため第2アーム32の曲げ戻し用の突起32C2は、第2脚部S2を下方Z2に僅かに押し下げながら第2脚部S2を乗り越える。
図26Cに示されるようにステープルSには、下方Z2のステープルSを介してプッシャ16により上方Z1に向かう付勢力が作用しているため、この付勢力に抗して曲げ戻し用の突起32C2が第2脚部S2を乗り越えられるように、結束機10は構成されている。
【0244】
この状態から、第2アーム32が更に第2回転方向R2に回転して
図21Bに示される初期位置まで回転すると、第2アーム32の下面に設けられた凹部に弾性部材で付勢されたボール部材が嵌まり込む。これにより、第2アーム32は初期位置に保持される。
【0245】
結束動作の完了後、更にモータ54がボールねじ50を逆方向に回転させると、ベース46に設けられた第2突起46A2の傾斜面に従って切替ブロック48の第2爪部48C2が後方X2に移動しながら下方Z2に移動するため、切替ブロック48の第1爪部48C1、第2爪部48C2及び第3爪部48C3がそれぞれ第1溝42G1、第2溝42G2及び第3溝42G3内の領域に挿入される。このとき第1アーム22及び第2アーム32は概ね初期状態の位置に戻る。更にモータ54がボールねじ50を逆方向に回転させると切替ブロック48が後方X2に移動して、切替ブロック48の第2爪部48C2の後面が第2溝42G2の前方X1を向いた側面に当接する。このため切替ブロック48は、弾性部材49によってベース46の表面を下方Z2に押し付けながら、第2爪部48C2の後面によってドライバ42を後方X2に移動させる。このためドライバ42を初期状態の位置に戻すことが可能となる。
【0246】
以上のプロセスにより第2脚部S2は第1対象物Gに係合する。上述したように第2脚部S2は上面視において第1対象物Gと第2対象物Pとの間隙を通過(貫通)した状態で第1対象物Gに係合するから、第2対象物PはステープルSに囲まれる。このため第2対象物PとステープルSの係合が容易に外れることが抑制される。また、第2対象物Pが成長して第2脚部S2が曲がっても、第1対象物Gへの係合が強まるから、第1対象物GとステープルSの係合が容易に外れることも抑制される。
【0247】
但し本実施形態に係る結束機10は変形可能である。例えば、第1変位部20は、当接部材24を用いることなく、第1アーム22によって第1脚部S1の先端部S1Aを塑性変形するように構成してもよい。例えば、第1アーム22と当接部材24を一体化したような部品を設け、これを回転させることにより第1脚部S1の先端部S1Aを塑性変形させてもよい。このとき第1アーム22の回転軸22AXを傾斜させ、第1回転方向R1に回転するほど下降するように第1アーム22を設けることによって、先端部が第1部S1Bの下を通過するように第1アーム22を構成してもよい。反対に、第1回転方向R1に回転するほど上昇するように第1アーム22を設けることによって、先端部が第1部S1Bの上を通過するように第1アーム22を構成してもよい。例えば、当接部材24によって折り返される第1脚部S1の先端部S1Aは、第1部S1Bの上方Z1を通過し、上面視において第1部S1Bと交差するように屈曲させてもよい。一方で、第2脚部S2は、第2脚部S2及び本体部S3を貫通する平面PLから離間する下方Z2に進行するように曲げてもよい。
【0248】
[第2実施形態]
以下、本実施形態に係る結束機100の詳細構成について説明する。なお同一乃至類似する構成乃至機能については同一乃至類似する名称乃至符号を用いて説明を省略乃至簡略化し、異なる部分を中心に説明する。
【0249】
[ステープルS0の構成]
図27は本実施形態に係る結束前のステープルS0を示している。
ステープルS0は、第1脚部S10と、第2脚部S20と、第1脚部S10と第2脚部S20とを接続する本体部S30とを含む点においてステープルSと共通する。ステープルSと同様に、結束前の状態において、ステープルS0の第1脚部S10と第2脚部S20は離間して設けられるため、第1脚部S10と第2脚部S20との間には開口が設けられる。本体部S30における閉塞している部分から開口に向かう方向(
図27における紙面左方向)を開口方向D1と呼ぶ。結束機100にセットされるときステープルS0の開口方向D1は、前方X1と一致する。したがって使用者は、開口から第2対象物PをステープルS0内に挿入することができる。
【0250】
第1脚部S10は、ステープルS0の一方の端部を含む部分であり、開口方向D1に延伸する第1部S10Bと、第1部S10Bから曲げられて外側乃至外方に延びる先端部S10Aとを含む。第1部S10Bと先端部S10Aとがなす角度を屈曲角α1と呼び、先端部S10Aのうち、第1部S10Bと接続するために屈曲している部分を屈曲部と呼ぶ。本実施形態においては、屈曲角α1は90度以下であり、好ましくは90度未満の鋭角である。
【0251】
第2脚部S20は、ステープルS0の他方の端部を含む部分であり、開口方向D1に延伸する第2部を含む。結束状態において、第2脚部S20は、第1脚部S10と交差するように曲げられて上面視において開口を閉塞する。従って本実施形態に係る第2脚部S20は、開口の幅、即ち、第1脚部S10と第2脚部S20との間隔よりも長く形成される。また、第2脚部S20は、第1脚部S10よりも長く形成される。
【0252】
本体部S30は、第1脚部S10と第2脚部S20とを接続する部分である。本実施形態に係る本体部S30は、外方に凸となるように湾曲する湾曲部S30Aと、内方に凸となるように湾曲する湾曲部S30Bを含んでいる。湾曲部S30Aの長さは湾曲部S30Bの長さよりも大きく、かつ、湾曲部S30Aの曲率は湾曲部S30Bの曲率よりも大きくなるように形成される。湾曲部S30Aは、一端において第1脚部S10の第1部S10Bと接続し、外方に向かって凸となるように湾曲し、他端において湾曲部S30Bと接続する。湾曲部S30Bは、一端において湾曲部S30Aと接続し、内方に向かって凸となるように湾曲し、他端において第2脚部S20と接続する。
【0253】
なおステープルの形状は、ステープルS0に限られるものではなく、第1脚部S10、第2脚部S20及び本体部S30は、それぞれ、一又は複数の辺部と一又は複数の湾曲部とから構成されてもよい。
また便宜的に、本実施形態においてステープルS0の一方の端部を含む部分を第1脚部S10と呼び、他方の端部を含む部分を第2脚部S20と呼んだ。しかしながら本発明の「第1脚部」は、実施形態に示される第1脚部に限定されるものではなく、本発明の「第2脚部」は、実施形態に示される第1脚部に限定されるものではない。例えば本発明において第2脚部S20を第1脚部と呼んでもよいし、第1脚部S10を第2脚部と呼んでもよい。
【0254】
ステープルS0は、ステープルSと同じ様に曲げられることにより、第1対象物Gと第2対象物Pとを結束する。ステープルS0の第1脚部S10の先端部S10Aは、結束機100の第1変位部200(
図30)によって曲げられることにより、第1脚部S10に挟まれている第1対象物Gと係合する。ステープルS0の第2脚部S20は、結束機100の第2変位部300によって、上面視において第2対象物Pを包囲しつつステープルS0の開口を閉塞するように曲げられる。同時に結束機100の第2変位部300によって、第2脚部S20の先端部S20Aは、第1対象物Gと係合可能に外方に曲げられる。このように、ステープルS0によって第2対象物Pを包囲しつつ、ステープルS0の先端部S10A及び先端部S20Aを共に第1対象物Gと係合させることにより、第1対象物Gと第2対象物Pとを結束することが可能となる。
【0255】
本出願の発明者らは、結束機を用いて結束する際に、ステープルを収容するためのマガジンが対象物に接触して対象物を傷つけてしまうことがある点に着目した。特に結束の対象物が柔らかい植物等の場合、対象物が傷つくと価値が損なわれてしまう可能性がある。そこで結束機の使用者は、マガジンが対象物に接触しないように結束機の角度や位置等を変更しながら結束を行わなければならない。しかしながら植物等は個体差を有するため、使用者は結束をするたびに対象物の大きさや形状に合わせて結束機の角度や位置等を変更しなければならない。重量のある結束機の角度や位置等を結束するたびに変更することは、使用者にとって大きな負荷となり、結果として作業効率(結束効率)の低下につながる。
【0256】
そこで本実施形態に係る結束機100(
図28乃至
図30等)は、上下方向に積層された複数のステープルS0を収容可能乃至保持可能に構成されるマガジン140を備えると共に、上端に位置するステープルS0を他のステープルS0と分離させて前方X1に移動させるドライバ420を備えることにより、ステープルS0をマガジン140の前方X1へ移動させる構成を実現した。さらに結束機100は、前方X1の所定位置(結束位置)に移動したステープルS0を変位させる変位部を備えることにより、マガジン140よりも前方X1の所定位置において結束を実行可能に構成されている。以下詳述する。
【0257】
[結束機100の構成]
以下、本実施形態に係る結束機100の構成について結束機10と異なる点を中心に説明する。結束機100は、マガジン140に関する構成が結束機10と異なるため、この点を中心に説明する。
【0258】
図28は、右側面視における結束機100の断面図であり、
図29は、左側面視における結束機100の断面図であり、
図30は斜め上方から見た結束機100の斜視図である(但し以降の図面において説明をわかりやすくするために、本明細書において説明されない構成(例えば
図30における結束機100の筐体)については省略されている場合がある)。
【0259】
結束機100は、結束機10と同様に、開口が形成されているステープルを用いて第1対象物Gと第2対象物Pとを結束する。ここで、第1対象物G及び第2対象物Pは、第1実施形態において説明された第1対象物G及び第2対象物Pとそれぞれ同一であるから説明を省略する。第1対象物Gは例えばガイド要素として機能する紐であり、第2対象物Pは例えば植物である。結束機100は、結束機10と同様に、ステープルS0の第1脚部S10を第1対象物Gと係合するように変位させるとともに、上面視において第2対象物Pを包囲しつつ第1対象物Gと係合するように第2脚部S20を変位させる。この結果、第1対象物Gに対する第2対象物Pの移動が制限されるので、第1対象物Gと第2対象物Pとを結束することが可能となる。
【0260】
このようにステープルS0を変位させるために、結束機100は、第1対象物Gと係合可能にステープルS0の第1脚部S10を変位させる第1変位部200(
図29)と、第1対象物Gと係合可能にステープルS0の第2脚部S20を変位させる第2変位部300とを備える。第2変位部300は、第2対象物PをステープルS0の第1脚部S10、第2脚部S20及び本体部S30で囲んだ状態で第2脚部S20の先端部S20Aが第1対象物Gと係合するように第2脚部S20を変位させる。
【0261】
より具体的には、結束機100は、使用者が把持するためのグリップ120(
図28)と、上下方向に積層された複数のステープルS0を収容可能に構成されるマガジン140と、マガジン140に収容されるステープルS0を上方Z1に付勢することにより、上端のステープルS0が前方X1に移動した後に、残るステープルS0を上方Z1に移動させるプッシャ150(ステープルを上方に移動するための「上方移動手段」の一例)と、上端に位置するステープルS0を前方X1に押すことにより上端に位置するステープルS0を他のステープルS0と分離させて、前方X1に移動させるドライバ420(
図30)と、ドライバ420及びスライダ440を共に前方X1に移動させる第1移動動作及びドライバ420とスライダ440のうちスライダ440のみを前方X1に移動させる第2移動動作を実行するためのモータ540ならびに移動機構と、第2移動動作において前進するスライダ440に当接して回転する第1アームを備えることによって、ステープルS0の第1脚部S10を変位させるための第1変位部200(「変位部」の一例)と、第2移動動作において前進するスライダ440に当接して回転する第2アームを備えることによってステープルS0の第2脚部S20を変位させるための第2変位部300(「変位部」の一例)と、他のステープルS0から分離して前方X1に移動するステープルS0の移動路を提供する離脱部560とを備える。
【0262】
ここでグリップ120、プッシャ150、ドライバ420、スライダ440、ドライバ420及びスライダ440を移動させるためのモータ540ならびに第1移動動作及び第2移動動作を実行するための移動機構、第1変位部200、第2変位部300、離脱部560を含む結束機100の各構成は、それぞれ第1実施形態に示されるグリップ12、プッシャ16、ドライバ42、スライダ44、ドライバ42及びスライダ44を移動させるためのモータ54ならびに第1移動動作及び第2移動動作を実行するための移動機構、第1変位部20、第2変位部30、離脱部56を含む結束機10の対応する各構成と同一乃至類似する構成から実現することが可能であることが当業者に理解されるから詳細な説明を省略する。
【0263】
[マガジン140の構成]
以下本実施形態のマガジン140の詳細構成について説明する。
図31Aは、結束機100を下方から見た斜視図である。
図31Bは、上下方向に垂直な平面(左右方向及び前後方向に平行な平面)で結束機100を切断して下方Z2から見た斜視断面図である。
図32は、上下方向に垂直な平面で結束機100を切断して下方Z2から見た断面図である。
【0264】
これら図面に示されるようにマガジン140は、結束機100の中心を通過し前後方向及び上下方向に平行な平面を基準として、非対称に形成されている。開口方向D1に平行な直線を基準として非対称に形成されているステープルS0(
図27)に合わせてマガジン140を非対称に形成することにより、対象物への接触を抑制することが可能となる。
【0265】
マガジン140は、上下方向に積層された複数のステープルS0を収容乃至保護するために、上下方向に延伸して形成された複数の壁部(「マガジン壁部」の一例)を備える。
具体的にはマガジン140は、マガジン壁部として、下方向に積層された複数のステープルS0の第1脚部S10を収容乃至保護するための第1壁部140W1を備えている。第1壁部140W1は、第1脚部S10の形状に合わせて、第1部S10B(
図27)と対向するように、上下方向及び前後方向に延伸し、左右方向に垂直な壁面を有する壁部と、この壁部に接続し、先端部S10Aと対向するように、上下方向に延伸し前後方向に対して傾斜した方向に延伸する壁部と、これら2つの壁部に接続し、第1壁部140W1の前端部(前方X1の端部)に相当し、上下方向に延伸する壁部とを備える。この壁部は、上下方向に延伸し前方X1を向いて形成された第1表面140W1Sを含んでいる。
図32に示されるように、第1表面140W1Sは、前後方向における位置P1に形成されている。
【0266】
さらにマガジン140は、マガジン壁部として、下方向に積層された複数のステープルS0の第2脚部S10を収容乃至保護するための第2壁部140W2を備えている。第2壁部140W2は、第2脚部S20の形状に合わせて、第2部S20Bの側方と対向するように、上下方向及び前後方向に延伸し、左右方向に垂直な壁面を有する壁部と、第2部S20Bの前端と対向するように、上下方向に延伸する壁部と、第2壁部140W2の前端部(前方X1の端部)に相当し、上下方向に延伸する壁部とを備える。この壁部は、上下方向に延伸し前方X1を向いて形成された第2表面140W2Sを含んでいる。
図32に示されるように、第2表面140W2Sは、マガジン140そのものの前端面にも相当し、前後方向における位置P2に形成されている。同図に示されているように、第2壁部140W2は、第1壁部140W1よりも前方X1に形成された部分を含んでいるため、位置P2は、位置P1よりも前方X1に位置する。換言すると位置P1は、位置P2よりも後方X2に位置する。
【0267】
さらにマガジン140は、マガジン壁部として、上下方向に積層された複数のステープルS0の本体部S30を収容するための第3壁部140W3を備えている。第3壁部140W3は、本体部S30の湾曲部S30Aの形状に合わせて、湾曲部S30Aの後方X2を向いた面と対向するように、上下方向に延伸し後方X2に凸となる湾曲した壁面を有する壁部と、湾曲部S30Aの前方X1を向いた面と対向するように、上下方向に延伸し後方X2に凸となる湾曲した壁面を有する壁部を備え、この2つの壁部で湾曲部S30Aを前後から挟み込むようにして上下方向に積層された複数のステープルS0を収容可能に構成されている。
図32に示されるように、第3壁部140W3は、第1壁部140W1よりも後方X2に形成された部分を含んでいる。
【0268】
以上の構成によれば、第1壁部140W1は、第2壁部140W2よりも後方X2に設けられているため、第1壁部140W1の前方X1であって、第1変位部200の下方Z2にスペースを確保することが可能となる。このように非対称なステープルS0を収容するためのマガジン140を同じく非対称に形成し、第1壁部140W1の前方X1にスペースを確保することにより、このようなスペースがない結束機と比較して、対象物Pへの接触を抑制することが可能となる。
なお
図31Aに示されるように、第1壁部140W1と第2壁部140W2との間の領域には、プッシャ150が配設されてもよい。ただしプッシャは異なる位置に配設されてもよいし、知られた他の構成のプッシャに代替されてもよい。
【0269】
[マガジン140と移動後のステープルS0の位置関係]
次いでマガジン140と移動後のステープルS0の位置関係について説明する。本実施形態に係る結束機100のドライバ420は、マガジン140に収容され上端に位置するステープルS0を他のステープルS0から分離し、分離したステープルS0を前方X1の所定位置に移動可能に構成されている。
図33Aは、ドライバ420によって上端に位置していたステープルS0が前方X1に移動中の様子を示す斜視図であり、
図33Bは、ドライバ420によって前方X1に移動し、所定位置に到達したステープルS0の様子を示す斜視図である。なおステープルS0は所定位置にて変位部により変位されることにより、対象物Pと対象物Gとを結束する。このため所定位置は、結束位置と呼ばれる場合がある。これら図面に示されるように、結束機100は、ステープルS0の本体部S30の内方を向いた表面を支持するための内壁部660を備えている。本体部S30の形状に合わせて内壁部660は、外方(後方X2)に凸に湾曲し、湾曲部S30Aの内側を支持可能に構成された湾曲部660Aと、内方に窪み(内方に凸に湾曲し)、湾曲部S30Bの内側を支持可能に構成された湾曲部660Bとを備えている。後述するように湾曲部660Bの前端は、第2脚部S20の曲げの支点として機能する支点660BPを含む。同図に示されるように、支点660BPは、湾曲部S30Bと第2脚部S20との接続部の内方を向いた表面に対向する位置に設けられる。なおステープルS0は所定位置にて変位部により変位して結束を行う。このため所定位置は、結束位置と呼ばれる場合がある。
【0270】
本実施形態に係る結束機100は、ステープルS0の前方X1への移動量を結束機10よりも大きくすることによって、マガジン140が対象物に接触して対象物を傷つけてしまう事態を抑制可能に構成されている。
具体的には、マガジン140に収容されるステープルS0の前後方向の長さをステープル長さL1(
図32。「第1長さ」の一例)とすると、ドライバ420は、長さL1の50%以上の距離、好ましくは、長さL1の75%以上の距離、さらに好ましくは、長さL1の100%以上の距離、ステープルS0を前方に移動可能に構成されている。
本実施形態においてドライバ420は、長さL1の約100%の距離、ステープルS0を前方X1に移動可能に構成されている。その結果、同図に示されるようにマガジン140に収容されている移動前においてステープルS0の後端S30Pは前後方向における位置P3に存在する。そして移動後の所定位置(結束位置)においてステープルS0の後端S30Pは、位置P3から長さL1に相当する距離前方の、前後方向における位置P4に存在する。
【0271】
したがって上下方向に垂直な仮想平面でマガジン壁部を切断した切断面を示す
図32において、マガジン140の前端面に相当する第2表面140W2Sは、前方X1に移動後の所定位置に配置されたステープルS0の後端S30Pよりも前方X1に位置する。また、第1壁部140W1の前端に相当する第1表面140W1Sは、同じく前方X1に移動後の所定位置に配置されたステープルS0の後端S30Pよりも後方X2に位置する。
【0272】
さらに、マガジン140に収容されている移動前のステープルS0を上下方向に投影した領域と、ドライバ420によって前方X1に移動した後の所定位置に配置されたステープルS0を上下方向に投影した領域とは、重複することなく、互いに離間している。
【0273】
このため、所定位置に配置されたステープルS0の下方Z2であってマガジン140の前方X1の領域にスペースを確保することが可能となる。よって、マガジン140の前方Z1の領域を上下方向に延伸し、第1変位部200と第2変位部300との間の領域を貫通する第2対象物PをステープルS0で包囲するように変位させて結束する際に、結束機100が第2対象物Pに接触して傷つけてしまうことを抑制することが可能となる。
【0274】
なお、移動前のステープルS0と、移動後のステープルS0とが重複しないようにステープルS0を移動させるためには、ステープルS0のうち開口方向D1(前方X1)と平行に延伸する部分の長さ以上の距離、ステープルS0を前方X1に移動させることが必要になる。本実施形態に示されるステープルS0は、第1脚部S10よりも第2脚部S20の方が長く形成されているから、第2脚部S20のうち開口方向D1(前方X1)と平行に延伸する部分の長さ以上の距離、ステープルS0を前方X1に移動させることが必要になる。ここで本実施形態に示されるステープルS0は、湾曲部S30Aと第2脚部S20との間に、湾曲部S30Bを挿入している。このため、湾曲部S30Aと第2脚部S20とを直接接続する場合と比較して、第2脚部S20のうち開口方向D1(前方X1)と平行に延伸する部分の長さを短くすることが可能となる。
【0275】
さらに
図34の側面視に示されるように、結束機100のマガジン140は、結束位置に配置されたステープルS0の後端S30Pを通過し、前方X1に対して60度傾斜し下方Z2に対して30度傾斜する仮想直線ILよりも後方X2に配置されている。
鉛直上方に延伸している植物の茎等を第2対象物Pとして結束機100を水平方向から30度傾けて結束する場合、第2対象物Pは、仮想直線ILと略平行に延伸する。また、結束は、結束位置に配置されたステープルS0の後端S30Pよりも前方X1の領域で行われる。したがって第2対象物Pの結束は、結束位置に配置されたステープルS0の後端S30Pを通過する仮想直線ILよりも前方X1の領域において行われる。一方でマガジン140は、仮想直線ILよりも後方X2に配置される。したがってこのような構成によれば、結束機100のマガジン140が第2対象物Pに接触して傷つけてしまうことを抑制することが可能となる。
加えて同図に示されるように、結束は、茎のうち葉や枝が出ている節の上方ではなく節の下方の部分である。ここで結束機100のマガジン140は、結束領域に対して下方Z2に延伸しているから、上方Z1にマガジンが延伸する結束機と比較して、マガジン140が葉や枝に接触することを抑制することも可能となる。
【0276】
[マガジン140と結束領域との位置関係]
次いでマガジン140と結束領域との位置関係について説明する。結束領域とは、ステープルを用いて結束をすることができる領域であり、本実施形態においては、ステープルS0を用いて結束するために対象物Pが存在することができる領域に相当する。
本実施形態において、前方X1の結束位置に配置されたステープルS0は、内壁部660によって支持された状態で内壁部660の前端に相当する支点660BPを支点として第2変位部300によって曲げられる(
図33B)。すなわち第2変位部300の第2アームは、支点660BPを支点として、上面視において第1脚部S10と交差するように第2脚部S20を曲げることにより、対象物Pを包囲した状態で、第2脚部S20を対象物Gと係合させる。対象物Pを包囲するためには、対象物Pは、上面視において変位後のステープルS0によって包囲される領域に存在する必要がある。このため、本実施形態において結束領域は、変位後のステープルS0によって包囲される領域に相当する。
【0277】
図35は、変位後のステープルS0によって包囲される結束領域ARを示す、結束機100を下方Z2から見た背面図である。同図に示されるように変位後の状態において、第2脚部S20は、内壁部660の支点660BPを支点として曲げられており、第1脚部S10と上面視において交差する。結束領域ARは、内壁部660によって支持されている本体部S30、第1脚部S10及び第2脚部S20で囲まれる領域に相当し、結束領域ARの前端AR1は、第1脚部S10と第2脚部S20とが交差する交点に相当する。
同図に示されるように、位置P2(マガジン140の前端面に相当する第2壁部140W2の第2表面140W2Sが形成されている前後方向の位置)は、結束領域ARの前端AR1(第1脚部S10と第2脚部S20との交点)よりも後方X2に位置する。したがって、マガジン140が結束領域ARを貫通する対象物Pに接触して対象物Pを傷つけてしまう事態を抑制することが可能である。
なおマガジン140の前端面(に相当する第2表面140W2S)がステープルS0に包囲される領域ARの後端AR2よりもさらに後方X2に位置するように結束機100を変形してもよい。このような構成によれば、上面視において、第2対象物Pが存在し得る領域ARよりもマガジン140の前端面が後方X2に位置するから、結束機100と第2対象物Pとの接触をさらに抑制することが可能となる。
【0278】
続いてステープルS0のうち変位する部分と、マガジン140との位置関係について説明する。前方X1に移動後の所定位置に配置されたステープルS0の第2脚部S20は、内壁部660によって支持された状態で、支点660BPを支点として第2変位部300によって曲げられる。このため第2脚部S20のうち支点660BPに対向する部分(第2脚部S20と湾曲部S30Bとの接続部分)から前方X1の部分は、変位する部分となる。一方で、ステープルS0のうち本体部S30など内壁部660で支持されている部分は、内壁部660によってステープルS0が変位できないため、変位しない部分に相当する。また第1脚部S10は、第1実施形態において説明したのと同様に、第1対象物Gと係合するために先端部S10A付近が変位し、第1部S10Bは変位しない。以上のとおりであるから
図32に示されるように、前後方向において、ステープルS0の変位する部分は、支点660BPから前方X1の部分に相当する。
【0279】
一方でマガジン140の前端面(本実施形態においては第2壁部140W2の第2表面140W2S)が形成されている前後方向の位置P2は、支点660BPよりも後方X2に位置し、したがって、ステープルS0のうち変位する部分よりも後方X2に位置する。換言すると結束機100は、ステープルS0を、マガジン140の前端面よりも前方X1の領域で変位させるように構成されている。このような構成により、マガジン140が結束領域ARを貫通する対象物Pに接触して対象物Pを傷つけてしまう事態を抑制することが可能となる。
【0280】
なおステープルの変位方法及び結束方法は、本実施形態に示された方法に限られるものではない。例えば、ステープルの一方の脚部を第1対象物に係合させ、他方の脚部を第2対象物に係合させるように、ステープルを変位させてもよい。このような実施態様においても、上面視または背面視において、ステープルが変位する部分よりも後方にマガジンの前端面が位置するように結束機を構成することによって、マガジンが第1対象物または第2対象物に接触して傷つけてしまう事態を抑制することが可能となる。
【0281】
[結束方法]
以下本実施形態に係る結束機100を用いた結束方法について説明する。ただし上述したとおりマガジン140に関する構成を除くと、結束機10と結束機100とは同一乃至類似する構成から実現することが可能であることが当業者に理解されるから詳細な説明を省略する。
【0282】
まず上下方向に積層された複数のステープルS0は、結束機100のマガジン140によって収容・保持されている。
【0283】
次いで上端に位置するステープルS0は、下方に位置する他のステープルS0から分離して前方X1に移動する。ステープルS0を分離させて前方X1に移動させることは、例えば、第1実施形態において詳述された構成に基づいて、移動機構によって前方X1に移動するドライバ420を用いて実現することが可能である。
【0284】
その後、ステープルS0は、前方X1の所定位置(結束位置)において静止する。そしてステープルS0が静止した状態で使用者は、第1脚部S10の屈曲部に第1対象物G(例えばガイド要素として機能する紐)が挿入され、ステープルS0の開口内の領域に第2対象物P(例えば植物)が挿入されるように結束機100を動かす。このとき本実施形態に係る結束機100によれば、マガジン140が第2対象物Pに接触して傷つけてしまう事態を抑制することが可能となる。
【0285】
そして結束機100は、ステープルS0の第1脚部S10及び第2脚部S20を変位させる。ステープルS0を変位させることは、例えば、
図2において模式的に示され、第1実施形態において詳述された構成に基づいて、移動機構によって前方X1に移動するスライダ440、ステープルS0の第1脚部S10を変位させるための第1変位部200及びスライダ440によってステープルS0の第2脚部S20を変位させるための変位する第2変位部300を用いて実現することが可能である。すなわち前方への移動を回転運動に変換する機構は知られているから、モータ540によって前方X1に移動するスライダ440によって第1変位部200の第1アームを押して、第1アームを回転させることが可能である。第1実施形態に示されたのと同様の構成により第1アームの回転に伴ってスライダを移動させて第1脚部S10を曲げて変位させ、第1脚部S10と第1対象物Gとを係合させることが可能となる。
【0286】
同様に前方X1に移動するスライダ440によって第2変位部300の第2アームを押して、第2アームを回転させることが可能である。第1実施形態に示されたのと同様の構成により第2アームの回転に伴って第2脚部S20を曲げて変位させるとともに、第2脚部S20の先端部S20Aを反対方向に曲げて、第2対象物Pを包囲しつつ先端部S20Aと第1対象物Gとを係合させることが可能となる(
図2(A)~(E))。
以上のとおりであるから、本実施形態に係る結束機100及び結束方法によれば、マガジン140の前方にスペースを確保することが可能となる。このため、マガジン140によって第2対象物Pを傷つけてしまう事態を抑制することが可能となる。また、第2対象物Pが傷つかないように結束機100の角度や位置等を変更する必要性が相対的に低減するから、作業効率を向上させることが可能となる。
【0287】
[第3実施形態]
以下、本実施形態に係る結束機の構成について説明する。本実施形態は、特許文献3に記載されている結束機を基本構成として備える結束機に、第2実施形態の構造を適用した例を開示する。このため特許文献3及び本出願の他の実施形態に開示された結束機の各構成と同一乃至類似する構成乃至機能を発揮する構成については、同一又は類似する名称を用いて説明を適宜省略乃至簡略化する。
【0288】
[ステープルS4の構成]
まず本実施形態に係るステープルS4の構成について説明する。ステープルS4の素材等についてはステープルS等と同様であるから説明を省略する。
【0289】
図36Aは本実施形態に係る結束前のステープルS4を示し、
図36Bは結束後の結束状態におけるステープルS4の上面視を示す。
【0290】
このステープルS4は、第1脚部S14と、第2脚部S24と、第1脚部S14と第2脚部S24とを接続する本体部S34とを含む点においてステープルS等と共通する。ステープルSと同様に、結束前の状態において、ステープルS4の第1脚部S14と第2脚部S24は離間して設けられるため、第1脚部S14と第2脚部S24との間には開口が設けられる。本実施形態においても本体部S34における閉塞している部分である本体部S34から開口に向かう方向(
図36Aにおける紙面左方向)を開口方向D1と呼ぶ。本実施形態に係る結束機104(後述)にセットされるときステープルS4の開口方向D1は、ステープルS4の移動方向である前方X1と一致する。したがって使用者は、第2対象物Pに対して相対的に結束機104を前方に移動させることにより、ステープルS4の開口からステープルS4内に第2対象物Pを挿入することができる。
【0291】
ステープルS4は、第1脚部S14と第2脚部S24とを接続し茎等の第2対象物Pを囲む本体部S34と、本体部S34の一方の端部に接続し、屈曲して外側に延びる第1部S141及び第1部S141から更に屈曲して開口方向D1に延びる第2部S142を備える第1脚部S14と、本体部S34の他方の端部に接続し、開口方向D1に延伸する第3部S243及び第3部S243の先端部から外側に曲げられる第4部S244とを備える第2脚部S24と、を備える。同図に示されるように本体部S34はC字状乃至半円の円弧状に湾曲して形成される。なお本体部S34と第2部S142とを接続する第1部S141はクランク部と呼ばれる場合があり、第4部S244はフック部乃至先端部と呼ばれる場合がある。
【0292】
後述するように第1脚部S14の先端部は、ガイド要素である第1対象物Gの周囲を螺旋状に湾曲するように曲げられることにより第1対象物Gに係合する。一方で第2脚部S24は
図36Bに示されるように、上面視において開口を閉塞するように、第1対象物Gに接近する方向に大きく曲げられることにより、第4部S244であるフック部が第1対象物Gに係合する。ここで第3部S243は、閉塞された開口を広げ元の位置に戻る方向に弾性を有するので、第4部S244は、開口を広げる方向、即ち、第1脚部S14から離れる方向に、第1対象物Gに張力を加えることが可能となる。従って、第1対象物Gが撓んでステープルS4が脱落等することを抑制することが可能になる。
【0293】
[結束機104の構成概要]
以下では、
図36Aに示されるステープルS4を
図36Bに示されるように曲げるための結束機104の構成の一例を説明する。左右反転している点(すなわち特許文献3に開示された結束機は左方Y2に第1変位部200が設けられ右方Y1に第2変位部300が設けられている一方で、本実施形態に開示される結束機104は右方Y1に第1変位部204が設けられ左方Y2に第2変位部304が設けられ、これに伴いステープルも左右反転して形成されている点)を除き、特許文献3に開示された結束機と本実施形態の結束機104の基本構成は共通するため、当業者が同文献、本願明細書の記載及び本出願当時の技術水準に基づけば実施可能な程度に適宜省略乃至簡略化して、結束機104の各構成を説明する。
【0294】
図37は結束機104の右側面図であり、
図38は結束機104の上面視における断面図である。結束機104は、開口が形成されているステープルS4を用いて第1対象物Gと第2対象物Pとを結束する。結束機104は、第1対象物Gと係合可能にステープルS4の第1脚部S14を変位させる第1変位部204と、第1対象物Gと係合可能にステープルS4の第2脚部S24を変位させる第2変位部304とを備える。第2変位部304は、第2対象物PをステープルS4の第1脚部S14、第2脚部S24及び本体部S34で囲んだ状態で第2脚部S24の先端部を第1対象物Gと係合させることにより、第1対象物Gと第2対象物Pとを結束可能に構成されている。
【0295】
具体的には、結束機104は、使用者によって把持されるように上下方向に延在し、結束機104を駆動するためのスイッチ124Sが設けられたグリップ124と、上下方向に積層された複数のステープルS4を保持可能に構成されるマガジン144(
図37)と、マガジン144に収容される複数のステープルS4を上方Z1に付勢する、図示しないプッシャ165と、上端に位置するステープルS4を開口方向D1と一致する前方X1に押すことにより上端に位置するステープルS4を他のステープルS4と分離させて、前方X1に移動させるドライバ424(
図38)と、ドライバ424を移動させるための移動機構と、ステープルS4の第1脚部S14を湾曲又は屈曲させることにより変位させるための第1変位部204(同図。クリンチャ部と呼ばれる場合がある。)と、ステープルS4の第2脚部S24を湾曲又は屈曲させることにより変位させるための第2変位部304(同図)とを備える。
【0296】
[ドライバ及びドライバの移動機構]
同文献に記載されているように、結束機104は、内蔵するモータ544で、結束機104の略中心を前後方向に延伸して設置されるボールねじ504を順方向または逆方向に回転させることにより、ナット部品524及びこれに固定されるドライバ424を前方または後方に移動可能に構成されている。ナット部品524及びドライバ424は、前方X1及び後方X2に移動可能に構成されているため、移動部と呼ばれる場合がある。なお結束機104は、モータ544の出力軸に接続される減速機554と、モータ544の制御装置に相当するCPUが搭載されているプリント配線基板をさらに備えている。
【0297】
ドライバ424は、前方X1に移動することにより、マガジン144に保持され上下方向に積層されている複数のステープルS4のうち上端のステープルS4を、ステープルS4の開口が前、本体部S34が後となる前後関係を維持した状態で、他のステープルS4と分離させて前方X1に移動可能に構成されている。ドライバ424は、分離されたステープルS4を更に前方X1に移動させて第1脚部S14を第1変位部204(後述)に当接させることにより第1脚部S14を塑性変形させ、第2脚部S24を第2変位部304(後述)が含む第1ガイド壁304W1及び第2ガイド壁304W2(
図40A等)に当接させることにより第2脚部S24を塑性変形させるように構成されている。
【0298】
[第1変位部]
第1変位部204(「変位部」の一例)は、ドライバ424によって前方X1に移動するステープルS4の第1脚部S14を第1対象物Gと係合可能に変位させる機能を有する。ただしドライバ424によって前方X1に移動するステープルS4を変位させるための構成は、結束対象物等に応じて種々変形可能であり、他の実施形態に係る第1変位部や、他の知られた構成を備えるように変形されてもよい。
【0299】
同文献を含む本出願当時の技術水準に基づけば当業者であれば容易に実施可能であるため詳細な説明を省略するが、本実施形態に係る第1変位部204は、ドライバ424によって前進するにつれてステープルS4の第1脚部S14の第2部S142先端が挿入されることにより、第1脚部S14の先端部を円弧状又は螺旋状に湾曲させながら下方Z2に進行させる円筒状の内壁面が形成された孔部と、第1脚部S14の先端部を孔部に誘導する溝部とを含む(例えば同文献の孔部210と、溝部211に相当する)。孔部は第1脚部S14の前方X1に設けられているため、ステープルS4の前進によって第2部S142の先端を孔部の内壁面に当接させ、内壁面の形状に従って第2部S142の先端が螺旋状に進行するように第2部S142を変位させることが可能となる。
【0300】
このような構成によれば、ガイド要素となる第1対象物G(
図41等)である例えばガイド紐を孔部の中心軸に沿って配置させた状態で第1脚部S14の第2部S142の先端を孔部に挿入させることにより、第2部S142の先端が第1対象物Gを囲むように螺旋状に進行させることが可能となるので、第1脚部S14を第1対象物Gに係合させることができる。なお孔部には第1対象物Gが挿入されるので、孔部は第1挿入部と呼ばれる場合がある。第1対象物Gと第1脚部S14との係合を強めるために、孔部の内壁面の内径は、ステープルS4の線径の2倍と第1対象物Gの外径との合計値未満であることが好ましい。このように内径を設定することにより、第1対象物G又はステープルS4の一部が押しつぶされるため、ステープルS4と第1対象物Gとの係合を強めることが可能となる。
【0301】
[第2変位部]
第2変位部304(「変位部」の一例。
図40A等)は、ドライバ424によって前方X1に移動するステープルS4の第2脚部S24を第1対象物Gと係合可能に変位させる機能を有する。同文献を含む本出願当時の技術水準に基づけば当業者であれば容易に実施可能であるため詳細な説明を省略するが、本実施形態に係る第2変位部304は、ドライバ424が前方X1に移動するにつれて、第2脚部S24をステープルS4の内方に変位可能に構成されている。具体的には第2変位部304は、ステープルS4の変位開始前の初期状態において第2脚部S24の外側に設けられ、開口方向D1(前方X1と一致するため、開口方向D1は前方X1と呼ばれてもよい。以下同じ)に移動するステープルS4の第2脚部S24が当接することにより第2脚部S24を湾曲させるための第1ガイド壁304W1を有する。この第1ガイド壁304W1は、ステープルS4の外方(左方Y2)に向かって窪む凹部を有する。
【0302】
さらに第2変位部304は、ステープルS4の変位開始前の初期状態において第2脚部S24の前方X1に設けられ、開口方向D1に移動するステープルS4の第2脚部S24が当接することにより第2脚部S24を湾曲させる第2ガイド壁304W2を含んでいる。この第2ガイド壁304W2は、後方X2を向いた壁面を有し、さらに後方X2に突出する凸部304P2を有している。この凸部304P2は、初期状態において、前後方向において第2脚部S24の前方に設けられ、左右方向において第2脚部S24の内方に設けられ、右方Y1(内方)に進むほど、後方X2への突出量が大きくなるように、第2ガイド壁304W2の内方端部に設けられている。
【0303】
以上のとおりであるから、第1変位部204及び第2変位部304は、ステープルS4の開口に第2対象物Pが挿入された状態で、ドライバ424によって前方X1に移動するステープルS4の第1脚部S14及び第2脚部S24を変位させて第1対象物Gと係合させることにより、第2対象物Pを結束可能に構成されている。
【0304】
[可動壁]
本実施形態に係る結束機104は、ステープルS4の移動方向を案内するための可動壁161A、可動壁161B、及び可動壁161Cを備えている(以下、これら3つの可動壁を可動壁161と総称する)。これらの可動壁161は、ステープルS4の内側(内方)を向いた表面と対向して設けられ、かつ、ドライバ424によって前方X1に移動するステープルS4によって前方X1に押されると下方に移動して、ガイド位置から退避可能に構成されている。
【0305】
図39A及び
図39Bは、結束機104の前端部をそれぞれ上方左側及び上方右側から見た斜視図である。
図39Aに示されるように可動壁161Aは、第1脚部S14の先端部(前端部と呼ばれる場合がある。)の内側に設けられている。第1脚部S14の内側に可動壁161Aを設けることにより、第1脚部S14が内方に変位することを阻害し、前方X1に案内することが可能となる。
【0306】
可動壁161Bは、第1脚部S14のクランク部、すなわち、第1部S141の前方であって第2部S142の内側に設けられている。クランク部に可動壁161Bを設けることにより、クランク部の第2部S142が内方に変位することを阻害し、前方X1に案内することが可能となる。
【0307】
図39Bに示されるように可動壁161Cは、第2脚部S24の第3部S243先端部の内側に設けられている。第2脚部S24の内側に可動壁161Cを設けることにより、第2脚部S24が内方に変位することを阻害し、前方X1に案内することが可能となる。
【0308】
[結束方法]
以下、結束機104を用いた結束方法について説明する。なお孔部内に挿入される第1対象物G及び第1変位部204と第2変位部304との間に設けられる凹部(「第2挿入部」と呼ばれる場合がある。)内に挿入される第2対象物Pは説明の便宜のため図から省略されている。また説明の便宜上一部構成が図から省略される場合がある。例えば
図40A等において、第2変位部304等の上方に設けられたカバー等は省略されている。
【0309】
図40A乃至40Fは、結束機104を用いてステープルS4を第1対象物Gに係合させるプロセスを示す上面視における断面図である。
図40Aは、ステープルS4の変位開始前(移動開始前)の初期状態における結束機104の前端部の平面図である。同図において複数のステープルS4は前後方向において同じ位置に上下方向に積層されている。この状態からドライバ424が前方へ移動を開始することによりドライバ424によって前方に押されるステープルS4は前方X1への移動を開始する。このとき可動壁161A乃至可動壁161Cは、それぞれステープルS4の第1脚部S14又は第2脚部S24の内側に位置することにより、ステープルS4が意図しない方向へ変位してしまうことを抑制し、前方X1へ移動するようにガイドする。なおドライバ424は、ステープルS4の本体部S34の上方を覆うように設けられた屋根部を備えているため、同図において本体部S34の一部はドライバ424の屋根部によって覆われている。
【0310】
図40Bは、上端のステープルS4の変位開始後の状態における結束機104の前端部の平面図である。同図に示されるように、上端のステープルS4は、下方のステープルS4から分離して前方X1に移動している。この時点において既に可動壁161Bは、ステープルS4の第1部S141により押されることにより下方に退避している。一方で可動壁161A及び可動壁161Cは、それぞれステープルS4の第1脚部S14及び第2脚部S24の内方のガイド位置に位置することにより、第1脚部S14及び第2脚部S24を前方に案内する。同図及び
図40Cに示されるように、第2脚部S24の前方X1には第2ガイド壁304W2が設けられていることからさらにドライバ424が前進すると、第2脚部S24のフック部S244が第2ガイド壁304W2の後方X2を向いた壁面304WSに当接し、壁面304WSに沿って変形しながら進行する。壁面304WSは後方X2を向いて概ね左右方向に平行に形成されている部分を有するため、フック部S244は前方X1に進行することができず、したがって前方X1に移動しようとする第3部S243は外方に膨らむように湾曲する。ここで第1ガイド壁304W1は、第2脚部S24の外方(右方Y1)に設けられ、かつ、ステープルS4の内方を向いて外方(右方Y1)に窪むように形成された凹面を有するので、
図40Bに示されるように第3部S243はこの凹部の凹面に少なくとも一部が当接するように外方に膨らんで湾曲することとなる。
【0311】
ドライバ424により押されることによりステープルS4が前方X1に更に移動すると、ステープルS4の第3部S243が更に内方(左方Y2)に膨らむように湾曲する。これにより、ステープルS4の第3部S243の一部が、第1ガイド壁304W1の前方X1の端部に形成された凸部304P1に当接する。ステープルS4が前方X1に更に移動すると、
図40Cに示されるようにステープルS4の第3部S243は、第1ガイド壁304W1の凸部304P1を支点として、第2ガイド壁304W2の壁面304WSにより後方X2に向けて曲げられる。このように、本実施形態では、第2ガイド壁304W2の壁面304WSが、ステープルS4の第3部S243を曲げる曲げ部として機能する。また、第1ガイド壁304W1の凸部304P1が、ステープルS4の第3部S243を曲げる際の第1支点部として機能する。
【0312】
図40C及び
図40Dに示されるように第2ガイド壁304W2は、内方(左方Y2)に進行するほど後方X2への突出量を大きくする凸部304P2を含んでいる。そのため、ドライバ424により押されることによりステープルS4が前方X1に更に移動すると、ステープルS4のフック部S244は凸部304P2に当接しながら後方X2に進行するように誘導される。これにより、ステープルS4の第3部S243が外方に膨らんで湾曲する。フック部S244が第2ガイド壁304W2を乗り越えるとき、第2脚部S24の弾性によりフック部S244は前方X1に進行し、今度は、第2脚部S24の第3部S243が凸部304P1に当接する。以上のようなプロセスにより第2脚部S24は、概ね、紙面反時計回りに湾曲して、上面視において第1脚部S14に接近する方向に曲げられる。
【0313】
フック部S244が第2ガイド壁304W2を乗り越えた後に、第1脚部S14の先端は、第1変位部204の孔部への進入を開始する。ステープルS4は可撓性及び可塑性を有するため、ステープルS4が開口方向D1に移動すると第1脚部S14の先端は螺旋を描いて湾曲しながら孔部の内壁に沿って進行する。従って、螺旋の軸上に第1対象物Gを配置した状態でステープルS4を前方に移動させることにより、第1対象物Gを軸として第1対象物Gの外周を囲む螺旋状に、ステープルS4の第1脚部S14の先端部を第1対象物Gに係合させることが可能となる。
【0314】
更にドライバ424がステープルS4を前進させると、フック部S244は、第2変位部304に、上方Z1及び後方X2を向いて傾斜する傾斜面に当接して上方Z1に移動する。
図40Eに示されるようにその後フック部S244は、上面視において第1対象物Gと第2対象物Pとの間の領域を通過して、第1脚部S14と交差する位置まで進行する。フック部S244を含む第2脚部S24は、上方に移動するように形成された傾斜面に当接することにより上方Z1に移動しているため、第1脚部S14と干渉しない。
【0315】
図40Fは、ドライバ424が後退中の状態を示している。ドライバ424の後退に伴ってステープルS4の第2脚部S24は復元するように弾性力を発揮するため、第2脚部S24は、紙面時計回りの方向に変位し第1対象物Gに接近して第1対象物Gに係合する。なお、第1ガイド壁304W1も、フック部S244の上方Z1への移動を促進するように、第2脚部S24が当接する面に、上方を向いた傾斜面を形成してもよい。
【0316】
以上のような結束方法により第2対象物Pを第1脚部S14、第2脚部S24及び本体部S34で囲んで結束するように、第1対象物Gに第1脚部S14と第2脚部S24とを係合させることが可能となる。ここでガイド部である可動壁161を備えることにより結束機104は、ステープルS4の前方X1への移動を妨げることなく、ステープルS4の前方X1への移動を案内することが可能である。
図41は、ステープルS4が第1対象物Gに係合している様子を示す後方斜視図である(ただし図において、ステープルS4に囲まれる位置に配置される第2対象物Pは省略されている。)。
【0317】
[マガジン144と各部との位置関係]
次いでマガジン144と各部との位置関係について説明する。
図42は、変位後のステープルS4によって包囲される結束領域AR10を示す、結束機104を上方Z1から見た平面図である。同図に示されるように変位後の状態において、第2脚部S24は、第1脚部S14と上面視において交差する。結束領域AR10は、ステープルS4の本体部S34、第1脚部S14、及び第2脚部S24により囲まれる領域に相当する。
【0318】
なお、
図42では、ステープルS4の第1脚部S14と第2脚部S24とが交差する交点が符号Csで示されている。また、マガジン144の前端面の前後方向の位置が符号P2で示されている。
【0319】
同図に示されるように、マガジン144の位置P2はステープルS4の交点Csよりも後方X2に位置している。したがって、マガジン144が結束領域AR10を貫通する第2対象物Pに接触して第2対象物Pを傷つけてしまう事態を抑制することが可能である。
【0320】
なお、マガジン144の位置P2が、図中の結束領域AR10の位置AR11よりも後方X2に配置されていてもよい。位置AR11は結束領域AR10の後端の位置である。このような構成によれば、上面視において、第2対象物Pが存在し得る領域AR10よりもマガジン144の前端面が後方X2に位置するから、結束機104と第2対象物Pとの接触を抑制することが可能となる。
【0321】
また、
図42から明らかなように、マガジン144の位置P2は、第1ガイド壁304W1の凸部304P1よりも後方X2に位置している。このような構成により、マガジン144が結束領域AR10を貫通する第2対象物Pに接触して第2対象物Pを傷つけてしまう事態をさらに抑制することが可能となる。
【0322】
また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
たとえば、第1実施形態に示される結束機10を、ステープルSの前方への移動量をより大きくするように変形することにより、本実施形態に係る結束機100と同様の構成を備えさせてもよい。
【0323】
例えば本発明は、第1脚部と第2脚部とを有し、前記第1脚部と前記第2脚部の間が開口し、互いに連結されているステープルを保持するマガジンと、一の前記ステープルを、開口部を前にして前方に押し出し、少なくとも前記第1脚部と前記第2脚部を、前記マガジンによって保持されている他の前記ステープルよりも前方に移動させるドライバと、前方に移動した一の前記ステープルの前記第1脚部を変位させることにより、前記第1脚部と前記第2脚部との間に挿入される結束対象物を結束する変位部とを備えるように構成してもよい。
【0324】
このような構成によれば、一の前記ステープルを、他の前記ステープルよりも前方に移動させて結束を行うことが可能となるから、ステープルを保持するためのマガジンによって対象物が傷つけてしまう事態を抑制することが可能となる。
【0325】
ここで一の前記ステープルの後端を、マガジンによって保持されている他のステープルの前端よりも前方に移動させてもよい。
【0326】
また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。たとえば、当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実施形態における一部の構成要素に、他の知られた構成を追加することができる。また、ある実施形態における一部の構成要素を、他の知られた構成要素と置換することができる。当業者の通常の創作能力の発揮により本出願に開示された各構成要素を他の知られた構成要素と合理的に組み合わせること、又は、置換することが可能である。
【0327】
本出願に係る発明は、上記した実施の形態を含む発明の他、以下の付記として記載される結束機又は結束方法として実施することが可能である。
即ち本出願は、以下に示される結束機を更に開示する。
【0328】
(付記1)
第1脚部と第2脚部とを有し、前記第1脚部と前記第2脚部の間が開口し、互いに連結されているステープルを保持するマガジンと、一の前記ステープルを、開口部を前にして前方に押し出し、少なくとも前記第1脚部と前記第2脚部を、前記マガジンによって保持されている他の前記ステープルよりも前方に移動させるドライバと、前方に移動した一の前記ステープルの前記第1脚部を変位させることにより、前記第1脚部と前記第2脚部との間に挿入される結束対象物を結束する変位部とを備える結束機。
(付記1-A)
前記ドライバは、一の前記ステープルの後端を、前記マガジンによって保持されている他の前記ステープルの前端よりも前方に移動可能に構成される付記1に記載の結束機。
【符号の説明】
【0329】
10、100、104 結束機
12、120、124 グリップ
14、140、144 マガジン
16、150 プッシャ
18 分離ブロック
20、200、204 第1変位部
22 第1アーム
22AX 第1アームの回転軸
22C 凸部
24 当接部材(爪部材)
24A 凹部
24B 当接面
24C 角部
30、300、304 第2変位部
32、320 第2アーム(曲げ部)
32AX 第2アームの回転軸(第2支点部)
32B 後端部
32B1 第1後端面
32B2 第2後端面
32C 先端部
32C1 本体部
32C2 突起
42、420、424 ドライバ
42S 前端面
42B 突端部
42C ドライバ凸部
42G1 第1溝
42G2 第2溝
42G3 第3溝
44、440 スライダ
44A1 第1前端部
44A11 第1凸部
44A12 第2凸部
44A13 突端部
44A2 第2前端部
44A21 第1表面
44A22 第2表面
44A23 第3表面
44B 固定部
46 ベース
46A1 第1突起
46A2 第2突起
46A3 第3突起
48 切替ブロック
48C1 第1爪部
48C2 第2爪部
48C3 第3爪部
50、504 ボールねじ
50AX 中心軸
52、524 ナット部品
52A 保持部
54、540、544 モータ
62 第1外壁部
62A 第1領域
62B 第2領域
64 第1内壁部
66 第2内壁部
66A、660BP 支点(第1支点部)
68 先端支持部
68A 支持壁部
230 ガイド保持機構
S、S0 ステープル
S1、S10 第1脚部
S1A、S10A 先端部
S1B 第1部
α1 屈曲角
DS1 第1距離
S2、S20 第2脚部
S2A、S20A 先端部
DS2 第2距離
S3、S30 本体部
G 第1対象物
P 第2対象物
PL 平面
X1 前方
X2 後方
Y1 右方
Y2 左方
Z1 上方
Z2 下方
D1 開口方向
R1 第1回転方向
R2 第2回転方向