(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100690
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】結束機
(51)【国際特許分類】
B65B 13/18 20060101AFI20240719BHJP
B65B 27/10 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B65B13/18 A
B65B27/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023190918
(22)【出願日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2023004106
(32)【優先日】2023-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】浅井 政敏
【テーマコード(参考)】
3E052
【Fターム(参考)】
3E052AA41
3E052BA20
3E052CA18
3E052CB05
3E052CB07
3E052FA01
3E052HA12
3E052HA17
3E052JA01
3E052KA05
3E052LA06
3E052LA14
(57)【要約】
【課題】マガジンに保持されているステープルを他のステープルと分離させて移動させる際に、ステープルを意図どおりに移動させることが可能となる結束機及び結束方法を提供すること。
【解決手段】上端に位置するステープルを他のステープルと分離させて、前方に移動可能に構成されたドライバと、前記ステープルの内方を向いた表面と対向して設けられ、かつ、前記ドライバによって前方に移動する前記ステープルによって移動可能に構成された可動壁と、分離した前記ステープルを変位させることにより第1対象物と第2対象物とを結束可能に構成された変位部とを備える結束機。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1脚部と第2脚部とを有し、前記第1脚部と前記第2脚部の間が開口したステープルを保持するマガジンと、
前記マガジンに保持された前記ステープルを、前記開口を前にして前方に移動させるドライバと、
前記ドライバによって前記ステープルが移動する際、前記第1脚部の内側をガイドするガイド部と、
前記ドライバによって移動させられた前記ステープルの前記第1脚部を変位させることにより、前記開口に挿入された結束対象物を結束する変位部と
を備え、
前記ガイド部は、前記ステープルが所定距離移動すると、前記第1脚部の内側をガイドするガイド位置から退避する
結束機。
【請求項2】
前記ガイド部は、下方に移動して前記ガイド位置から退避する
請求項1に記載の結束機。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記ステープルに当接して下方に移動する
請求項2に記載の結束機。
【請求項4】
前記ガイド部は、後方に向けて上方に傾斜し、前記ステープルが当接する傾斜面を有する
請求項3に記載の結束機。
【請求項5】
前記ガイド部は、上方に移動して前記ガイド位置から退避する
請求項1に記載の結束機。
【請求項6】
前記ガイド部は、前記ステープルに当接して上方に移動する
請求項5に記載の結束機。
【請求項7】
前記ガイド部は、後方に向けて下方に傾斜し、前記ステープルに当接する傾斜面を有する
請求項6に記載の結束機。
【請求項8】
前記ガイド部は、前記マガジンの上方に設けられる
請求項1に記載の結束機。
【請求項9】
前記ガイド部は、前記第1脚部の内側をガイド可能な前方に平行な壁面を有する
請求項1に記載の結束機。
【請求項10】
前記変位部は、前記第1脚部の内方に位置する支点部と、前記第1脚部の外方に位置し、前記支点部を支点に前記第1脚部を内方に曲げる曲げ部とを有し、
前記所定距離は、少なくとも前記第1脚部の先端が前記支点部を通過するまでの距離である
請求項1に記載の結束機。
【請求項11】
前記変位部は、前記第1脚部の内方に位置する支点部と、前記第1脚部の外方に位置し、前記支点部を支点に前記第1脚部を内方に曲げる曲げ部とを有し、
前記曲げ部は、前記第1脚部に係合し、内方に曲げた前記第1脚部を曲げ戻す係合部を有し、
前記所定距離は、少なくとも前記第1脚部の先端が前記係合部を通過するまでの距離である
請求項1に記載の結束機。
【請求項12】
前記ドライバとともに前方に移動し、前記第2脚部の内側をガイドする第2ガイド部を備える請求項1に記載の結束機。
【請求項13】
前記ドライバとともに前方に移動し、前記変位部を動作させるスライダを備え、
前記第2ガイド部は、前記スライダに設けられ、前記スライダの前方への移動に伴い前方に移動する請求項12に記載の結束機。
【請求項14】
前方に移動した前記第2ガイド部の後方の位置に移動可能に構成され、前記移動により前記第2脚部の内側をガイドする支持可動壁を備える請求項13に記載の結束機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結束機及び結束方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステープル等の結束具を用いて、ワイヤ等に植物等を結束することが知られている。
【0003】
特許文献1には、このようなステープルの一例が記載されている。このステープルは、左右一対のアームと、アーム間に設けられた凸状突起とを備えている。
【0004】
特許文献2には、マウントシェルに着脱可能に接続される充電式電源を備える電気的なバインディング用のマシンが記載されている。特許文献2記載のバインディング用のマシンは、特許文献1記載のステープルを用いて結束することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1839482号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第CN111903423号明細書
【特許文献3】特開2023-013317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるステープル等は、第1対象物と第2対象物という2つの対象物の相対的移動を拘束するものであるから、第1対象物と第2対象物を結束する結束具(ステープル)を開示する。
【0007】
特許文献2は、特許文献1に記載のステープルを用いる結束機を開示する。
【0008】
しかしながら、いずれの特許文献に記載された発明も、マガジンに保持されているステープルを結束部に移動させる際に、ステープルの先端部等が意図しない方向に変位してしまうという課題を解決するための手段を提供するものではない。
【0009】
そこで本発明は、マガジンに保持されているステープルを結束部に移動させる際に、ステープルの変形を抑制しながら移動させることが可能となる結束機及び結束方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願は、第1脚部と第2脚部とを有し、前記第1脚部と前記第2脚部の間が開口したステープルを保持するマガジンと、前記マガジンに保持された前記ステープルを、前記開口を前にして前方に移動させるドライバと、前記ドライバによって前記ステープルが移動する際、前記第1脚部の内側のガイド位置にて前記第1脚部をガイド可能に構成されたガイド部と、前記ドライバによって移動させられた前記ステープルの前記第1脚部を変位させることにより、前記開口に挿入された結束対象物を結束する変位部とを備え、前記ガイド部は、前記ステープルが所定距離移動すると、前記ガイド位置から退避する結束機を開示する。
【0011】
ここで前記ガイド部は、前記ステープルが前方に所定距離移動すると、下方に移動して前記ガイド位置から退避するように構成されてよい。
また前記ガイド部は、前記ステープルが前方に所定距離移動すると、前記ステープルに当接して下方に移動するように構成されてよい。
前記ガイド部は、後方に向けて上方に傾斜し、前記ステープルが当接する傾斜面を有してよい。
【0012】
前記ガイド部は、前記ステープルが前方に所定距離移動すると、上方に移動して前記ガイド位置から退避するように構成されてよい。
前記ガイド部は、前記ステープルが前方へ所定距離移動すると、前記ステープルに当接して上方に移動するように構成してもよい。
前記ガイド部は、後方に向けて下方に傾斜し、前記ステープルに当接する傾斜面を有してよい。
【0013】
前記ガイド部は、前記マガジンの上方に設けられてよい。
前記ガイド部は、前方に平行な壁面を有してよい。
【0014】
前記結束機において、前記変位部は、前記第1脚部の内方に位置する支点部と、前記第1脚部の外方に位置し、前記支点部を支点に前記第1脚部を内方に曲げる曲げ部とを有し、前記所定距離は、少なくとも、前記第1脚部の先端が前記支点を通過するまでの距離(前記マガジンに保持された前記ステープルの前記第1脚部の先端の位置から、前記先端が前記支点を通過する位置までの距離)であってよい。
【0015】
前記変位部は、前記第1脚部の内方に位置する支点部と、前記第1脚部の外方に位置し、前記支点部を支点に前記第1脚部を内方に曲げる曲げ部とを有し、前記曲げ部は、前記第1脚部に係合し、内方に曲げた前記第1脚部を曲げ戻す係合部を有し、前記所定距離は、少なくとも、前記第1脚部の先端が前記係合部を通過するまでの距離(前記マガジンに保持された前記ステープルの前記第1脚部の先端の位置から、前記先端が前記支点を通過する位置までの距離)であってもよい。
【0016】
本出願の結束機はさらに、前記ドライバとともに前方に移動し、前記第2脚部の内側をガイドする第2ガイド部を備えてよい。
【0017】
この結束機は、前記ドライバとともに前方に移動し、前記変位部を動作させるスライダを備えてよい。ここで前記第2ガイド部は、前記スライダに設けられ、前記スライダの前方への移動に伴い前方に移動するように構成してもよい。
【0018】
この結束機はさらに、前方に移動した前記第2ガイド部の後方の位置に移動可能に構成され、前記移動により前記第2脚部の内側をガイドする支持可動壁を備えてよい。
【0019】
本出願は、第1脚部と、第2脚部と、前記第1脚部と前記第2脚部とを接続する本体部を含み、前記第1脚部と前記第2脚部との間に開口が形成されるステープルを用いて第1対象物と第2対象物とを結束する結束機を開示する。この結束機は、前記第1対象物と係合可能に前記第1脚部を変位させる第1変位部と、前記第2対象物を前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部で囲んで前記第1対象物と係合可能に前記第2脚部を変位させる第2変位部とを備える。
【0020】
前記第2変位部は、上面視において、前記第1脚部と交差する位置まで前記第2脚部を変位可能に構成されてもよい。
【0021】
前記結束機は、第1対象物が挿入される第1挿入部と、前記第2対象物が挿入される第2挿入部とを備えてもよい。更に前記第1変位部は、前記第1挿入部に挿入された前記第1対象物と係合するように前記第1脚部の先端部を変位させ、前記第2変位部は、前記第2挿入部に挿入された前記第2対象物を囲むように前記第2脚部を変位させてもよい。
【0022】
前記結束機は、前記ステープルを前記ステープルの開口方向に移動させる移動部を備えてもよい。更に前記第2変位部は、前記移動部が前記開口方向に移動するにつれて、前記第2脚部を前記ステープルの内方に変位させてもよい。
【0023】
移動部は、前記開口方向に移動可能なドライブを含んでもよい。
【0024】
移動部は、前記開口方向に移動可能なスライダを含んでもよい。
【0025】
移動部は、前記開口方向に移動可能なドライブ及びスライダを含んでもよい。
【0026】
前記第2変位部は、前記移動部が前記開口方向に移動するにつれて、前記第2脚部を前記ステープルの内方に湾曲させるように構成されてもよい。
【0027】
前記第2変位部は、前記移動部のスライダが前記開口方向に移動するにつれて、前記第2脚部を前記ステープルの内方に屈曲させるように構成されてもよい。
【0028】
前記第2変位部は、前記第2脚部の外側に設けられ、前記開口方向に移動する前記移動部が当接して前記第2脚部を屈曲させるアームを含んでもよい。
【0029】
前記第1変位部は、前記移動部が前記開口方向に移動するにつれて前記第1脚部の先端部を円弧状に湾曲させることにより前記第1対象物と係合するように構成されてもよい。
【0030】
前記第1変位部は、前記第1対象物及び前記第1脚部が挿入される第1挿入部を含んでもよい。
【0031】
前記第1挿入部は、挿入された前記第1脚部の先端部を円弧状に湾曲させることにより挿入された前記第1対象物と係合する内壁を含んでもよい。
【0032】
前記第1変位部は、前記第1対象物を挟むように前記第1脚部の先端部を折り返すように構成されてもよい。
【0033】
本出願は、結束方法を開示する。この結束方法は、第1脚部と、第2脚部と、前記第1脚部と前記第2脚部とを接続する本体部とを含み、前記第1脚部と前記第2脚部との間に開口が形成されるステープルを用いて第1対象物と第2対象物とを結束する結束方法である。前記第1脚部を変位させて前記第1対象物と前記第1脚部を係合させ、前記第2脚部を変位させて、前記第2対象物を前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部で囲んで前記第1対象物と前記第2脚部を係合させる。
【0034】
前記第1脚部を変位させて前記第1対象物と前記第1脚部を係合させることは、前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部を貫通する平面から離間する下方に前記第1脚部の前記先端を進行させることを含んでもよい。
【0035】
前記第2脚部を変位させて、前記第2対象物を前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部で囲んで前記第1対象物と前記第2脚部を係合させることは、前記平面から離間する上方に前記第2脚部の前記先端を進行させることを含んでもよい。
【0036】
前記第1脚部を変位させて前記第1対象物と前記第1脚部を係合させることは、前記第1脚部の前記先端から、第1距離以下の部分を変位させて前記第1対象物と前記第1脚部を係合させることを含んでもよい。
【0037】
前記第2脚部を変位させて前記第1対象物と前記第2脚部を係合させることは、前記第2脚部の前記先端から、前記第1距離より大きい第2距離以下の部分を変位させて前記第1対象物と前記第2脚部を係合させることを含んでもよい。
【0038】
前記第2脚部を変位させて、前記第2対象物を前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部で囲んで前記第1対象物と前記第2脚部を係合させることは、上面視において、前記第1脚部と交差する位置まで前記第2脚部を第1回転方向に変位させて、前記第2脚部の先端部に前記第1対象物と前記第2対象物との間隙を通過させることと、前記第2脚部を前記第1回転方向と反対の第2回転方向に変位させて、前記第1対象物と前記第2対象物との間隙を通過した前記第2脚部の先端部を前記第1対象物に係合させることを含んでもよい。
【0039】
上面視において、前記第1脚部と交差する位置まで前記第2脚部を第1回転方向に変位させて、前記第2脚部の先端部に前記第1対象物と前記第2対象物との間隙を通過させることは、前記第2脚部を第1回転方向に曲げながら、前記第2脚部の先端部を前記第1回転方向と反対の第2回転方向に曲げることを含んでもよい。
【0040】
前記第1脚部を変位させて前記第1対象物と前記第1脚部を係合させることは、前記第1脚部の先端部を前記第1回転方向に曲げて前記第1対象物と前記第1脚部の先端部を係合させることを含んでもよい。
【0041】
なお上面視とは、結束前の前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部を貫通する平面に垂直な方向から見る視点のことをいい、平面視と呼んでもよい。
【0042】
本発明において、「第1対象物と第2対象物とを結束する」とは第1対象物に対する第2対象物の移動を制限することをいう。ここで結束に用いるステープルは、必ずしも、第1対象物又は第2対象物と当接することを要しない。例えば、ステープルが第2対象物と当接しない場合であっても、ステープルが第2対象物を包囲した状態で第1対象物と係合することにより、第1対象物に対する第2対象物の移動を制限することが可能となるから、「第1対象物と第2対象物とを結束する」は、このような状態を含む。
【0043】
本発明において、「屈曲する」又は「折り曲げる」とは局所的に曲げられることをいう。そのため屈曲されたとき、局所的に曲げられた部分以外の部分は、元の形状を実質的に維持する。例えば、直線的に延伸する部材を屈曲するとき局所的に曲げられた部分以外の部分は、直線的に延伸した形状を実質的に維持する。
【0044】
本発明において、「湾曲する」とは所定範囲にわたり弓なりに曲げられることをいう。そのため湾曲されたとき、湾曲された部材は、所定範囲にわたり滑らかに変形する。
【0045】
本発明において、「曲げる」とは屈曲及び湾曲を含む。
本発明において「第1脚部」とは、ステープルの一方の端部を含む部分をいい、「第2脚部」とは、ステープルの他方の端部を含む部分をいう。本発明の「第1脚部」は、実施形態に示される第1脚部に限定されるものではなく、本発明の「第2脚部」は、実施形態に示される第1脚部に限定されるものではない。例えば本発明の「第1脚部」は、例えば実施形態に示される第2脚部に示される形状を備えてもよいし、本発明の「第2脚部」は、例えば実施形態に示される第1脚部に示される形状を備えてもよい。
本発明において「ステープルを保持する」ことは、ステープルの全体を収容してステープルを保持する態様の他、ステープルの一部(例えば、ステープルの脚部の一方の端部又は双方の端部)が外方に露出するようにステープルを保持する態様を含む。なおマガジンに保持されるステープルは、接着剤等を用いて互いに連結されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1A】
図1Aは、上面視における結束前のステープルの一例を示す図である。
【
図1B】
図1Bは、上面視における結束後のステープルの一例を示す図である。
【
図1C】
図1Cは、正面視における結束後のステープルの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態にかかる結束機を用いた結束方法の模式図である。
【
図3】
図3は、一実施形態にかかる結束機の右側面視における断面図である。
【
図4A】
図4Aは、一実施形態にかかる結束機の上面視における断面図である。
【
図4B】
図4Bは、一実施形態にかかる結束機の正面視における断面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態にかかる結束機の前端側を示す部分拡大図(斜視図)である。
【
図6A】
図6Aは、一実施形態にかかるドライバの斜視図である。
【
図6B】
図6Bは、一実施形態にかかるドライバの上面視における平面図である。
【
図7A】
図7Aは、一実施形態におけるスライダの斜視図である。
【
図7B】
図7Bは、一実施形態にかかるスライダの上面視における平面図である。
【
図8A】
図8Aは、一実施形態にかかる結束機の側面視における断面の部分拡大図である。
【
図8B】
図8Bは、一実施形態にかかる結束機の背面視における断面の部分拡大図である。
【
図9】
図9は、一実施形態にかかる結束機のナット部品等を示す部分拡大図(斜視断面図)である。
【
図10】
図10は、一実施形態にかかる結束機の離脱部等を示す断面図である。
【
図11A】
図11Aは、一実施形態にかかる結束機の正面視における初期状態を示す部分拡大図である。
【
図11B】
図11Bは、一実施形態にかかる結束機の上面視における初期状態を示す部分拡大図である。
【
図12A】
図12Aは、一実施形態にかかる結束機の上面視における塑性変形開始時を示す部分拡大図である。
【
図12B】
図12Bは、一実施形態にかかる結束機の側面視における塑性変形開始時を示す部分拡大図である。
【
図12C】
図12Cは、一実施形態にかかる結束機の前端部の部分拡大斜視図である。
【
図13】
図13は、一実施形態にかかる当接部材24(爪部材)の斜視図である。
【
図14】
図14は、一実施形態にかかる当接部材24(爪部材)による塑性変形時の正面視における断面図である。
【
図15】
図15は、一実施形態にかかる第2アームの斜視図である。
【
図17A】
図17Aは、一実施形態に係る結束機のドライバ移動開始時を示す正面視における部分拡大図である。
【
図17B】
図17Bは、一実施形態に係る結束機のドライバ移動開始時を示す上面視における部分拡大図である。
【
図18】
図18は、一実施形態に係る結束機により分離したステープルが前進している様子を示す上面視における部分拡大図である。
【
図19】
図19は、一実施形態に係る結束機によりステープルが第1外壁部を通過した後を示す上面視における部分拡大図である。
【
図20】
図20は、一実施形態に係る結束機によりステープルが変位開始位置に到達したときの様子を示す上面視における部分拡大図である。
【
図21A】
図21Aは、使用者が第1対象物を第1挿入部に挿入し、第2対象物を第2挿入部に挿入したときの正面視における結束機の前端部分を示す部分拡大図である。
【
図21B】
図21Bは、使用者が第1対象物を第1挿入部に挿入し、第2対象物を第2挿入部に挿入したときの上面視における結束機の前端部分を示す部分拡大図である。
【
図22A】
図22Aは、第1対象物及び第2対象物が挿入された後にスライダが前進を再開したときの正面視における結束機の前端部分を示す部分拡大図である。
【
図22B】
図22Bは、第1対象物及び第2対象物が挿入された後にスライダが前進を再開したときの上面視における結束機の前端部分を示す部分拡大図である。
【
図23A】
図23Aは、スライダが前進して第2脚部が変形されているときの正面視における結束機の前端部分を示す部分拡大図である。
【
図23B】
図23Bは、スライダが前進して第2脚部が変形されているときの上面視における結束機の前端部分を示す部分拡大図である。
【
図24A】
図24Aは、スライダが最も前進する直前の正面視における結束機の前端部分を示す部分拡大図である。
【
図24B】
図24Bは、スライダが最も前進する直前の上面視における結束機の前端部分を示す部分拡大図である。
【
図25A】
図25Aは、スライダの後退開始後における結束機の前端部分の正面視における部分拡大図並びに拡大斜視図である。
【
図25B】
図25Bは、スライダの後退開始後における結束機の前端部分の上面視における部分拡大図並びに拡大斜視図である。
【
図25C】
図25Cは、スライダの後退開始後における結束機の前端部分の部分拡大斜視図である。
【
図26A】
図26Aは、スライダが更に後退したときの結束機の前端部分の正面視における部分拡大図並びに拡大斜視図である。
【
図26B】
図26Bは、スライダが更に後退したときの結束機の前端部分の上面視における部分拡大図並びに拡大斜視図である。
【
図26C】
図26Cは、スライダが更に後退したときの結束機の前端部分の部分拡大斜視図である。
【
図27】
図27は、上面視における結束前のステープルの一例を示す図である。
【
図28】
図28は、一実施形態にかかる結束機の右側面視における断面図である。
【
図29】
図29は、一実施形態にかかる結束機を斜め上方から見た斜視図である。
【
図30】
図30は、一実施形態にかかる結束機を斜め上方から見た部分拡大斜視図である。
【
図31】
図31は、一実施形態にかかる結束機を斜め上方から見た部分拡大斜視図である。
【
図32】
図32は、一実施形態にかかる結束機においてステープルが可動壁に接触している様子を示す部分拡大斜視図である。
【
図33】
図33は、一実施形態にかかる結束機における一の可動壁を示す斜視断面図である。
【
図34】
図34は、一実施形態にかかる結束機における一の可動壁を示す斜視断面図である。
【
図35】
図35は、一実施形態にかかる結束機においてステープルが可動壁に接触している様子を示す部分拡大斜視図である。
【
図36】
図36は、初期状態(待機状態)における結束機101の前端部を前方X1から見た斜視図である。
【
図37】
図37は、第1移動動作の完了時における結束機101の前端部を前方X1から見た斜視図である。
【
図38】
図38は、第2移動動作の結束動作時の第1内壁部641の内部構成を示す斜視図である。
【
図40】
図40は、一実施形態に係る結束機の右側面図である。
【
図41】
図41は、一実施形態に係る結束機の上面視における断面図である。
【
図44】
図44は、一実施形態に係る結束機を後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではない。
【0048】
[ステープルSの構成]
【0049】
まず本実施形態に係るステープルSの構成について説明する。ステープルSは、塑性変形可能な可塑性を有する線材から構成される。ステープルSは、ワイヤ又はクリップと呼ばれる場合がある。ステープルSは、例えば、金属製の線材又は針金(表面がめっき処理又は樹脂等でコーティングされたものを含む。)を含む。
【0050】
図1Aは本実施形態に係る結束前のステープルSを示し、
図1B及び
図1Cは、それぞれ、結束後の結束状態におけるステープルSの上面視及び正面視を示す(但し説明の便宜上、
図1Cにおいて第1対象物G及び第2対象物P等説明に不要な部品は省略されている)。
【0051】
ステープルSは、第1脚部S1と、第2脚部S2と、第1脚部S1と第2脚部S2とを接続する本体部S3を含む。
【0052】
結束前の状態において、ステープルSの第1脚部S1と第2脚部S2は離間して設けられるため、第1脚部S1と第2脚部S2との間には開口が設けられる。本体部S3における閉塞している部分から開口に向かう方向(
図1Aにおける紙面左方向)を開口方向D1と呼ぶ。結束機10にセットされるときステープルSの開口方向D1は、後述する前方X1と一致する。
【0053】
第1脚部S1は、ステープルSの一方の端部を含む部分であり、開口方向D1に延伸する第1部S1Bと、第1部S1Bから曲げられて外側に延びる先端部S1Aとを含む。第1部S1Bと先端部S1Aとがなす角度を屈曲角α1と呼び、先端部S1Aのうち、第1部S1Bと接続するために屈曲している部分を屈曲部と呼ぶ。本実施形態においては、屈曲角α1は90度以下である。
【0054】
第2脚部S2は、ステープルSの他方の端部を含む部分であり、開口方向D1に延伸する第2部を含む。結束状態を示す上面視(
図1B)において、第2脚部S2は、第1脚部S1と交差するように曲げられて開口を閉塞する。従って本実施形態に係る第2脚部S2は、開口の幅、即ち、第1脚部S1と第2脚部S2との間隔よりも長く形成される。また、第2脚部S2は、第1脚部S1よりも長く形成される。
【0055】
本体部S3は、第1脚部S1と第2脚部S2とを接続する部分である。本実施形態に係る本体部S3は、直線的に延伸する辺部を含む。しかしながら本体部S3の形状はこれに限られるものではなく、例えば、外方に湾曲する湾曲部を含んでもよいし、一又は複数の辺部と一又は複数の湾曲部とから構成されてもよい。
【0056】
図1Bに示される結束状態において、ステープルSの第1脚部S1の先端部S1Aは、同図において概ね時計回り(以下、上面視において概ね時計回りの方向を「第1回転方向R1」と呼ぶ場合があり、概ね反時計回りの方向を「第2回転方向R2」と呼ぶ場合がある。)に曲げられて、上面視において第1脚部S1と交差する。従って、第1対象物Gを第1脚部S1で挟み込むことが可能となる。
図1Cに示されるように第1脚部S1の先端部S1Aは、結束前の第1脚部S1、第2脚部S2及び本体部S3を貫通する平面PLから離間する下方Z2に先端が進行するように曲げられる。
【0057】
一方でステープルSの第2脚部S2の一部は、第1回転方向R1に折り曲げられることにより開口を閉塞する。開口が閉塞されるので、ステープルSに囲まれる第2対象物PからステープルSが外れることを抑制することが可能となる。更に
図1Cに示されるように、第2脚部S2の先端部S2Aは、結束前の第1脚部S1、第2脚部S2及び本体部S3を貫通する平面PLから離間する上方Z1に先端が進行するように曲げられる。このように第1脚部S1の先端が下方Z2に進行するように曲げられて第1対象物Gに係合し、第2脚部S2の先端が上方Z1に進行するように曲げられて第2対象物Pに係合することにより、第1対象物Gの第1脚部S1との係合位置から、第2脚部S2との係合位置までの領域に張力を発生させやすくすることが可能となる。従って、第1対象物Gが撓んでステープルSが脱落等することを抑制することが可能になる。
【0058】
加えて第2脚部S2は、上面視において開口を閉塞するように、第1脚部S1と交差する位置までステープルSの内方に向かう第1回転方向R1に折り曲げられる。このとき、第2脚部S2の先端部S2Aは、第1対象物Gと第2対象物Pとの間隙を通過する。その後、第2脚部S2は、上面視において第1回転方向R1と反対の第2回転方向R2に変位して、第1対象物Gと第2対象物Pとの間隙を通過した第2脚部S2の先端部S2Aを第1対象物Gに係合させる。その結果、第1脚部S1の先端部S1Aと第2脚部S2の先端部S2Aとで第1対象物Gを挟み込むように係合することが可能となる。仮に第2対象物Pが成長しても、第1脚部S1と第2脚部S2は、それぞれ第1対象物Gを挟み込む力を強める方向に曲げられる。よって第2対象物Pが成長しても、第1対象物GからステープルSが外れにくくすることが可能となる。
【0059】
なお、第2脚部S2を、第1回転方向R1に変位させるとき、第2脚部S2を第1回転方向R1に曲げながら第2脚部S2の先端部S2Aを第1回転方向R1と反対の第2回転方向R2に曲げることが好ましい。このような構成とすることにより、第1対象物Gと第2対象物Pとの間隙を通過した第2脚部S2の先端部S2Aを第2回転方向R2に変位させることにより、第2脚部S2の先端部S2Aを第1対象物Gに容易に係合させることが可能となる。
【0060】
結束前のステープルSの状態を示す
図1Aと、結束後のステープルSの状態を示す
図1B及び
図1Cとの比較から明らかなように、第1脚部S1のうち変位する部分の第1脚部S1の先端からの距離を第1距離DS1とし、第2脚部S2のうち変位する部分の第2脚部S2の先端からの距離を第2距離DS2とするとき、第2距離DS2は、第1距離DS1より大きく、例えば、第2距離DS2は、第1距離DS1の2倍より大きい。このようにステープルSを非対称に曲げることによって、第2脚部S2を、第1脚部S1に近接して保持される第1対象物Gに、好適に係合させることが可能となる。
【0061】
更に
図1Aに示されるように、第1脚部S1の先端から第1距離DS1の位置に相当する第1脚部S1の変位する部分と変位しない部分との境界位置は、第2脚部S2の先端から第2距離DS2の位置に相当する第2脚部S2の変位する部分と変位しない部分との境界位置よりも開口方向D1に進行した位置に相当する。
【0062】
このような構成とすることにより、スライダ44を開口方向D1に進行させたときに、先に第2脚部S2の変位を開始し、第2脚部S2が変位を開始した後に、第1脚部S1の変位を開始させることが可能となる。このため、同時に大きな負荷が結束機10にかかることを抑制することが可能になる。
【0063】
なおステープルSの形状は、
図1Aに示されるものに限られない。例えば、第1脚部S1と第2脚部S2とが必ずしも平行でなくてもよく、例えば、先端に進行するほど開口幅が狭くなっても、あるいは、先端に進行するほど開口幅が広くなっても、上述した技術的効果の少なくとも一部は発揮されるようにステープルSを曲げることが可能であることは当業者に理解される。また、第1脚部S1と第2脚部S2が同じ長さであっても、第1脚部S1の先端が余剰するものの、上述した技術的効果の少なくとも一部は発揮されるようにステープルSを曲げることが可能であることは当業者に理解される。
【0064】
また、ステープルSの曲げ方は、
図1B及び
図1Cに示されるものに限られない。例えば、第2脚部S2の先端部S2Aは曲げられなくてもよい。第2脚部S2の先端部S2Aが曲げられなくても、第2脚部S2を第1対象物Gに係合させることが可能であるから、上述した技術的効果の少なくとも一部は発揮されることは当業者に理解される。
【0065】
以下では、
図1Aに示されるステープルSを
図1B及び
図1Cに示されるように曲げるための結束機10の構成の一例を説明する。
【0066】
図2(A)乃至(E)は、本発明の一実施形態に係る結束機10の構成及び結束機10によって曲げられるステープルSの様子を概念的に説明する模式図である。同図においてステープルSの本体部S3は静止している。
【0067】
なお相対的な方向の関係を説明するために、便宜的に、
図2における紙面左方向を前方X1と呼び、紙面右方向を後方X2と呼び、紙面垂直の手前方向を上方Z1と呼び、紙面垂直の奥行方向を下方Z2と呼び、紙面下方を右方Y1と呼び、紙面上方を左方Y2と呼ぶ場合がある。上面視は結束機10等を上方Z1の位置から下方Z2を向いて見たときの視点をいい、正面視は結束機10等を前方X1の位置から後方X2を向いて見たときの視点をいい、側面視は結束機10等を右方Y1又は左方Y2を向いて見たときの視点をいう。
【0068】
また後述するステープルSを結束機10にセットしたときに、ステープルSを基準として、ステープルSで囲まれる領域(後述する第2対象物Pが挿入される領域)からステープルSの外側に向かう方向を外方と呼び、ステープルSの外側からステープルSで囲まれる領域に向かう方向を内方と呼ぶ場合がある。
【0069】
図2(A)等に示されるように、結束機10は、前方X1に移動する移動部品の一例としてスライダ44を備える。更に結束機10は、ステープルSの第1脚部S1を変位させるための第1変位部20を備える。第1変位部20は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、異なる部品を異なる方向に移動させることにより、第1対象物Gと係合可能にステープルSの第1脚部S1を変位させる。
【0070】
なおスライダ44は、一体的に形成されてもよいし、連動して移動する複数の部品から構成されてもよい。
【0071】
本実施形態における第1変位部20は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、ステープルSの内方(右方Y1)かつ後方X2に傾斜する方向に移動する当接部材24を含む。当接部材24は、ステープルSの先端部S1Aの領域に当接して先端部S1Aを塑性変形するように曲げることから掴み部と呼ばれる場合がある。
【0072】
なお第1変位部20は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、ステープルSの内方(右方Y1)である前方X1と略垂直方向に移動することによりステープルSの先端部S1Aに当接して先端部S1Aを曲げる部品を含んでもよい。
【0073】
これに替えて第1変位部20は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、ステープルSの外方(左方Y2)に移動することによりステープルSの先端部S1Aに当接して先端部S1Aを曲げる部品を含んでもよい。
【0074】
これに替えて第1変位部20は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、ステープルSを第1回転方向R1に移動することによりステープルSの先端部S1Aに当接して先端部S1Aを曲げる部品を含んでもよい。
【0075】
これに替えて第1変位部20は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、ステープルSを第2回転方向R2に移動することによりステープルSの先端部S1Aに当接して先端部S1Aを曲げる部品を含んでもよい。
【0076】
スライダ44等の移動部品による前方X1への移動に基づいて、当接部材24等の部品を異なる方向へ移動させるための機構については、本実施形態に開示される機構又は他の機構を利用することが可能である。
【0077】
スライダ44等の移動部品による前方X1への移動に基づいて、当接部材24等の部品を第1回転方向R1又は第2回転方向R2に回転させるための機構については、本実施形態に開示される機構又は他の機構を利用することが可能である。
【0078】
更に結束機10は、ステープルSの第2脚部S2を変位させるための第2変位部30を備える。第2変位部30は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、異なる部品を異なる方向に移動させることにより、第1対象物Gと係合可能にステープルSの第2脚部S2を変位させる。
【0079】
本実施形態における第2変位部30は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、第1回転方向R1に回転することにより第2脚部S2を塑性変形するように曲げるアーム(第2アームと呼ばれる場合もある。)を含む。本実施形態においてアームは、ステープルSの第2脚部S2に当接して第2脚部S2を第1脚部S1に近づく方向に曲げながら、上方Z1に傾斜する方向にも曲げることから傾斜曲げ部と呼ばれる場合がある。
【0080】
図2(A)では、第2変位部30は、スライダ44と接続されており、スライダ44の前端部を支点として回転可能に構成されている。しかしながら後述する実施形態において説明されるように、第2変位部30は、スライダ44と接続されていなくてもよい。例えば第2変位部30は、スライダ44と接続されておらず、スライダ44の第2前端部44A2によって第1回転方向R1に回転することにより第2脚部S2を塑性変形するように曲げる第2アーム32を備えてもよい。
【0081】
なお第2変位部30は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、ステープルSの内方(左方Y2)である前方X1と略垂直方向に移動することによりステープルSの第2脚部S2に当接して第2脚部S2を曲げる部品を含んでもよい。
【0082】
これに替えて第2変位部30は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、ステープルSの外方(右方Y1)に移動することによりステープルSの第2脚部S2に当接して第2脚部S2を曲げる部品を含んでもよい。
【0083】
これに替えて第2変位部30は、スライダ44による前方X1への移動に基づいて、ステープルSを第2回転方向R2に移動することによりステープルSの第2脚部S2に当接して第2脚部S2を曲げる部品を含んでもよい。
【0084】
本実施形態における第2変位部30は更に付加的に、第2脚部S2の先端部S2Aを当接させながら通過させることにより、第2脚部S2の先端部S2Aを反対方向(外方)に曲げる支持壁部68Aを含む。支持壁部68Aは、第2脚部S2の先端部S2Aを曲げることから先端曲げ部と呼ばれる場合がある。
【0085】
ただし予め外方に曲がっている先端部が形成されているステープルを利用する場合、結束機は、支持壁部68Aを含まなくてもよい。
【0086】
本実施形態における結束機10は更に付加的に、第2脚部S2の曲げの支点として機能する支点66Aを含む。本実施形態においては、第2内壁部66の前端が支点66Aとして機能する。また、第2脚部S2の支点66Aに当接する部分から先端までの距離が、第2距離DS2に相当する。
【0087】
図2(A)は、ステープルSの曲げ開始直後の様子を示す上面視における模式図である。同図に示されるように、前方に移動するスライダ44によって第2変位部30が第1回転方向R1に回転を開始する。このため第2変位部30に当接するステープルSの第2脚部S2は、支点66Aを支点として曲がり始める。同時に第2脚部S2の先端部S2Aは、支持壁部68Aに当接しながら支持壁部68Aを通過する。従って、第2脚部SをステープルSの内方に相当する第1回転方向R1に曲げながら、第2脚部S2の先端部S2AをステープルSの外方に相当する第2回転方向R2に曲げることが可能となる。
【0088】
図2(B)及び(C)は、ステープルSの曲げ開始後の様子を示す上面視における模式図である。同図に示されるように、更に前方に移動するスライダ44によって第2変位部30が更に第1回転方向R1に回転する。このため第2変位部30は、支点66Aを支点として第2脚部S2を更に第1回転方向R1に曲げる。
【0089】
図2(D)は、ステープルSの第2脚部S2が曲げられて、上面視において、第1脚部S1と交差したときの様子を示す模式図である。なお本実施形態において第2脚部S2は、第1脚部S1に近づく方向に曲げられながら、上方Z1に傾斜する方向にも曲げられるため、第1脚部S1と干渉しない。同図に示されるように、更に前方に移動するスライダ44によって第2変位部30が更に第1回転方向R1に回転し、90度以上回転するため、第2変位部30は、上面視において、第1脚部S1と交差する位置まで第2脚部S2を曲げることが可能に構成されている。
【0090】
図2(E)は、ステープルSの第1脚部S1が曲げられている様子を示す上面視における模式図である。同図に示されるように、前方に移動するスライダ44によって第1変位部20の当接部材24は、内方(右方Y1)及び後方X2に傾斜する方向に移動して、第1脚部S1の先端部S1Aを曲げる。先端部S1Aは図に示されるように、第1脚部S1に対して上方Z1に折り曲げられてもよいし、下方Z2に折り曲げられてもよい。このように第1脚部S1の先端部S1を曲げることによって、第1脚部S1で第1対象物Gを挟み込むことが可能となる。
【0091】
また本実施形態においては、第1変位部20と第2変位部30とスライダ44とが当接するタイミングが異なるように両者を配置することによって、ステープルSの第1脚部S1の曲げが開始するタイミングと、ステープルSの第2脚部S2の曲げが開始するタイミングとをずらすように構成されている。このような構成とすることにより、結束機10に、同時に大きな負荷が生じることを抑制することが可能となる。また、曲げ量が大きい第2脚部S2の曲げを先に開始することによって、第1脚部S1の曲げが終了するタイミングと第2脚部S2の曲げが終了するタイミングを大きくずれることを抑制することが可能となる。
【0092】
[第1実施形態]
【0093】
以下、第1実施形態に係る結束機10の詳細構成について説明する。
【0094】
図3は、右側面視における結束機10の断面図である。
図4Aは、上面視における結束機10の断面図である(但し便宜上、図を90度回転させている。以下便宜上の理由により同様に図を回転させている場合がある。更に説明をわかりやすくするために説明されない構成(例えば結束機10の筐体)については省略されている(以下同様の理由により図において一部構成を省略する場合がある)。
【0095】
図4Bは、
図4AにおけるA-A断面で結束機10を切断した正面視における結束機10の断面図である。
図5は結束機10の前端部分の拡大斜視図である。
【0096】
[結束機10の構成概要]
【0097】
この結束機10は、開口が形成されているステープルSを用いて第1対象物Gと第2対象物Pとを結束する。なお、一実施形態に係るステープルS(
図1A、
図1B)の構成については上述した。
【0098】
第1対象物Gは、例えば、ワイヤ、梁、紐、棒、パイプ、樹木の枝等である。第1対象物Gは、ガイド要素と呼ばれる場合がある。第2対象物Pは、例えば、草木や樹木等の茎、蔓、枝、果物等である。結束機10は、ステープルSの第1脚部S1を第1対象物Gと係合するように変位させるとともに、第2対象物PをステープルSが囲むように第2脚部S2を第1対象物Gと係合するように変位させることにより、第1対象物Gに対する第2対象物Pの移動を制限し、第1対象物Gと第2対象物Pとを結束する。
【0099】
結束機10は、第1対象物Gと係合可能にステープルSの第1脚部S1を変位させる第1変位部20と、第1対象物Gと係合可能にステープルSの第2脚部S2を変位させる第2変位部30とを備える。第2変位部30は、第2対象物PをステープルSの第1脚部S1、第2脚部S2及び本体部S3で囲んだ状態で第2脚部S2の先端部S2Aを第1対象物Gと係合することにより、第1対象物Gと第2対象物Pとを結束可能に構成される。
【0100】
より具体的には、結束機10は、使用者によって把持されるように上下方向に延在し、結束機10を駆動するためのスイッチが設けられたグリップ12と、上下方向に積層された複数のステープルSを収容可能に構成されるマガジン14(
図3)と、マガジン14に収容される複数のステープルSを上方Z1に付勢するプッシャ16と、上端に位置するステープルSを前方X1に押すことにより上端に位置するステープルSを他のステープルSと分離させて、前方X1に移動させるドライバ42と、ドライバ42及びスライダ44を移動させるための移動機構と、スライダ44によってステープルSの第1脚部S1を変位させるための第1変位部20と、スライダ44によってステープルSの第2脚部S2を変位させるための第2変位部30と、ステープルSの他のステープルSからの離脱時の移動路を提供する離脱部56とを備える。
【0101】
ここで第1変位部20は、ドライバ42によってステープルSが前方X1に移動しているときに第1脚部S1の先端部S1Aが当接しながら通過することによって先端部S1Aを変位させるための第1外壁部62及び第1内壁部64を含む。
【0102】
また第1変位部20は、前方X1に移動するスライダ44の第1前端部44A1によって押されることにより回転する第1アーム22と、第1アーム22の回転に伴ってステープルSの内方に向かって第1脚部S1の先端部S1Aに当接しながら移動することにより、第1脚部S1の先端部S1Aを曲げる当接部材24とを含む。当接部材24は、爪部材と呼ばれる場合がある。
【0103】
第2変位部30は、前方X1に移動するスライダ44の第2前端部44A2によって押されることにより回転する第2アーム32を含む。第2アーム32は、ステープルSの第2脚部S2に当接しながら回転することにより、第2脚部S2を屈曲可能に構成される。このとき、上述したように第2対象物PをステープルSの第1脚部S1、第2脚部S2及び本体部S3で囲んで第2脚部S2を第1対象物Gに係合させることにより、第1対象物Gと第2対象物Pを結束することが可能となる。
【0104】
本実施形態に係る結束機10は、スライダ44等の部品を前方X1へ並進運動させ、並進運動した部品で第1アーム22及び第2アーム32を押して回転運動に変換することにより、ステープルSの第1脚部S1及び第2脚部S2をそれぞれ変位させている。しかしながら、第1脚部S1又は第2脚部S2を変位させる手段はこれに限られるものではない。例えば、第1脚部S1を変位させるための手段として、ドライバ42又はスライダ44によって第1脚部S1の先端部S1Aが前進すると、先端部S1Aが円弧状に変位する手段を搭載してもよい。また、並進運動を回転運動に変換するための構成として、並進運動を回転運動に変換するための他の手段を採用してもよい。更に本実施形態においては第1アーム22及び第2アーム32は上面視において共に同一方向に回転させて第1脚部S1及び第2脚部S2を変位させるが、これに限られるものではなく、例えば、第2アーム32を反対方向に回転させて第2脚部S2を変位させてもよい。
【0105】
以下本実施形態に係る結束機10の詳細な構成について説明する。
【0106】
[ドライバ及びスライダの移動機構(送り機構)]
【0107】
結束機10のドライバ42は、前方X1に移動することにより、ステープルSを前方X1に移動させる機能を有する。ドライバ42は、他のステープルSと連結された上端のステープルSを前方X1に移動させることにより、他のステープルSと分離するように構成され、更にステープルSを前方X1に移動させて第1脚部S1の先端部S1Aを第1変位部20が含む第1外壁部62に当接させて通過させることにより、第1脚部S1の先端部S1Aを変位させるように構成されている。
【0108】
図6Aは、本実施形態に係るドライバ42の斜視図であり、
図6Bは、上面視におけるドライバ42の平面図である。これら図面に示されるように、ドライバ42は、板状に形成されており、ステープルSの本体部S3に当接する前端面42Sを有する前端部と、前端部より後方X2に設けられ、下方Z2に突出するドライバ凸部42Cが形成された後端部とを含む。
【0109】
ドライバ42の前端部は、ステープルSの本体部S3の形状にあわせて、前後方向に対して傾斜して設けられる前端面42Sを含む。
【0110】
更にドライバ42の前端部の左端は、ステープルSの左端に相当する第1脚部S1の第1部S1B乃至本体部S3の第1脚部S1に接続する部分に外方である左方Y2から当接して第1脚部S1を支持するために、前方X1に延在する壁面を有するように前方X1に延伸する突端部42Bを有する。
【0111】
図4B及び
図8Bに示されるようにドライバ42は、ベース46に設けられた凹部に嵌められることにより前後方向に移動するようにガイドされる。ドライバ42の上面は、ベース46に設けられた凹部に嵌められるスライダ44の底面に当接されるためドライバ42の上方Z1への移動が制限される。また、ドライバ42の左右の側面は、前後方向に延在して設けられるベース46の左右の壁面にそれぞれ当接されるためドライバ42の左右への移動が制限される。更にドライバ42の後端部に形成され、下方Z2に突出するドライバ凸部42Cは、ベース46の凹部に挿入される。ドライバ凸部42Cの左右の壁面及び底面は、それぞれベース46の壁面及び上面に対向する。以上のような構成によりドライバ42は、前後方向に移動するようにガイドされる。
【0112】
下方Z2に突出するドライバ凸部42Cの底部には、3本の溝が形成される。具体的には、後述する切替ブロック48(「ブロック」の一例)の第1爪部48C1によって前方X1に押されることにより前方X1に移動するための第1溝42G1と、第2爪部48C2によって後方X2に押されることにより後方X2に移動するための第2溝42G2と、第3爪部48C3によって前方X1に押されることにより前方X1に移動するための第3溝42G3とが形成されている。同図に示されるように、第1溝42G1、第2溝42G2及び第3溝42G3は、互いに平行に、それぞれ前後方向に延在して設けられる。また、第1溝42G1及び第3溝42G3の前端(第1溝42G1及び第3溝42G3の後方X2を向いた溝の側面)は、前後方向において同じ位置に設けられる。また、第2溝42G2の後端(第2溝42G2の前方X1を向いた溝の側面)は、第1溝42G1及び第3溝42G3の前端(第1溝42G1及び第3溝42G3の後方X2を向いた溝の側面)よりも後方X2に設けられる。一方で、第1溝42G1及び第3溝42G3は、第2溝42G2の後端よりも後方X2に延在して設けられる。
【0113】
後述するように前進時に第1溝42G1及び第3溝42G3という2つの溝を用いてドライバ42を前進させ、後退時に第2溝42G2という1つの溝を用いてドライバ42を後退させることにより、相対的に高負荷となる前進時に好適にドライバ42が前方X1に移動可能な構成を採用した。また、上面視において第2溝42G2をボールねじ50の中心軸と重複するように設け、第1溝42G1と第3溝42G3が第2溝42G2を挟むように設けることによりドライバ42がバランス良く前進及び後退可能に構成した。
【0114】
ドライバ42は、結束機10のベース46上に載置され、ベース46上を前後方向に移動可能に構成される。このため、第1溝42G1、第2溝42G2及び第3溝42G3を形成することによって、ベース46の上面の一部は上方Z1に露出する。
【0115】
結束機10のスライダ44は、前方X1に移動して第1変位部20及び第2変位部30を前方X1に押すことにより、ステープルSの第1脚部S1及び第2脚部S2を変位させる機能を有する。本実施形態にかかるスライダ44は、第1変位部20の第1アーム22を前方X1に押して第1アーム22を回転させる第1前端部44A1と、第2変位部30に第2アーム32を前方X1に押して第2アーム32を回転させる第2前端部44A2とを含む。
【0116】
図7Aは本実施形態に係るスライダ44の斜視図であり、
図7Bは上面視におけるスライダ44の平面図である。これら図面に示されるように、スライダ44は、板状に形成されており、ステープルSの第1脚部S1が配置される左側において前方X1に延伸する第1前端部44A1と、ステープルSの第2脚部S2が配置される側において第1前端部44A1と離間して前方X1に延伸する第2前端部44A2とを有する。
【0117】
更にスライダ44は、後述するナット部品52にボルト固定されるための固定部44Bを備える。
【0118】
図4Bに示されるようにスライダ44は、ベース46に設けられた凹部に嵌められることにより前後方向に移動するようにガイドされる。スライダ44の上面は、ベース46又は筐体に固定されたガイドに当接することによって上方Z1への移動を制限される。また、スライダ44の左右の側面は、前後方向に延在して設けられるベース46の左右の壁面に当接することによって左右への移動を制限される。更にスライダ44の底面は、ベース46の上面及びドライバ42の上面に支持される。このような構成によりスライダ44(及びスライダ44が積層されるドライバ42)は、前後方向に移動するようにガイドされる。
【0119】
スライダ44の第1前端部44A1及び第2前端部44A2の構成については後述する。
【0120】
結束機10のナット部品52(
図4A、
図8A及び
図8B等)は、ドライバ42及びスライダ44を前方X1及び後方X2に移動させる機能を有する。本実施形態に係るナット部品52には、ボールねじ50の雄ねじと不図示のボール部材を介して螺合する雌ねじが形成されている。このためボールねじ50が順方向に回転することによりナット部品52は前方X1に移動し、ボールねじ50が逆方向に回転することによりナット部品52は後方X2に移動する。ナット部品52は、スライダ44と固定されている。また、
図8Aに示されるようにナット部品52の前端面は、スライダ44の後端面に当接する。このため、ナット部品52とスライダ44は回転モーメントが抑制された態様で一体的に前方X1及び後方X2に移動可能に構成されている。
【0121】
更にナット部品52は、第1爪部48C1、第2爪部48C2及び第3爪部48C3が設けられる切替ブロック48(
図8B)を保持するために下方Z2に突出する円環状の保持部52Aを含む。ナット部品52とナット部品52に保持される切替ブロック48は一体的に前方X1及び後方X2に移動可能に構成されている。保持部52Aは、第1爪部48C1が第1溝42G1に、第2爪部48C2が第2溝42G2に、第3爪部48C3が第3溝42G3に挿入可能なように切替ブロック48を保持する。
【0122】
ナット部品52、スライダ44及びドライバ42は、前方X1及び後方X2に移動可能に構成されているため、移動部と呼ばれる場合がある。
【0123】
図8Aは、結束機10を側面から見た側面視において結束機10をボールねじ50の中心軸50AXを含む垂直断面で切断した部分拡大図である。
図8Bは、結束機10を後方X2から見た背面視において結束機10をボールねじ50の中心軸50AXに垂直な垂直断面で切断した部分拡大図である。
図9は、結束機10の斜視断面図におけるナット部品52等を示す部分拡大図である。
【0124】
図8Bに示されるように、ナット部品52と切替ブロック48との間には、切替ブロック48の底面をベース46の表面に押し付ける弾性力を発生させるための弾性部材49が挿入される。従って切替ブロック48は、上下方向に移動可能に構成されており、ナット部品52と切替ブロック48との上下方向の間隔は、切替ブロック48が通過するベース46の表面形状に応じて変動する。
【0125】
本実施形態において、ナット部品52は、モータ54及びボールねじ50によって前方X1及び後方X2に移動可能に構成される。
【0126】
モータ54(
図4A)はボールねじ50を回転させる。モータ54は、結束機10の後端部に設けられる。なお結束機10は着脱自在に設けられるバッテリを備え、モータ54はバッテリの電源によって回転駆動可能に構成されてもよい。本実施形態にかかる結束機10は更に減速機55を備えており、モータ54は減速機55によりトルクを増加させてボールねじ50を回転させる。更に結束機10の後端部には、モータ54を制御するための制御装置に相当するCPUが搭載されているプリント配線基板が搭載されている。
【0127】
ボールねじ50(
図4A、
図8A及び
図8B)は、結束機10の略中心を前後方向に延伸して設けられる。上述したようにボールねじ50には、ナット部品52の雌ねじと不図示のボール部材を介して螺合する雄ねじが形成されている。
【0128】
ベース46(
図4B、
図8A及び
図8B)は、ドライバ42及びスライダ44を支持する。
図4Bに示されるように、ベース46は、ドライバ42の底面に当接乃至対向することによりドライバ42を下方Z2から支持する支持面と、ドライバ42の左端の側面に当接乃至対向することによりドライバ42を左方Y2から支持するために、前後方向に延在する壁部を有する。更にベース46は、ドライバ42の右端に当接乃至対向することによりドライバ42を右方Y1から支持するために、前後方向に延在する壁部を有する。このような構成により、ベース46は、前後方向に移動するようにドライバ42をガイドする。
【0129】
更にベース46は、ドライバ42上に載置されるスライダ44の底面に当接乃至対向することによりスライダ44を下方Z2から支持する支持面と、スライダ44の左端に当接乃至対向することによりスライダ44を左方Y2から支持するために、前後方向に延在する壁部を有する。更にベース46は、スライダ44の右端に当接乃至対向することによりスライダ44を右方Y1から支持するために、前後方向に延在する壁部を有する。このような構成により、ベース46は、前後方向に移動するようにスライダ44をガイドする。
【0130】
図9に示されるように、ベース46には、後方X2に進行するほど上方Z1に突出するようにテーパが設けられた第1突起46A1と、前方X1に進行するほど上方Z1に突出するようにテーパが設けられた第2突起46A2と、後方X2に進行するほど上方Z1に突出するようにテーパが設けられた第3突起46A3とが形成される。
【0131】
第1突起46A1は、ドライバ42が後方X2に移動したときに第1爪部48C1の経路上(第1溝42G1の内部)に設けられる。
【0132】
第2突起46A2は、ドライバ42が前方X1に移動したときに第2爪部48C2の経路上(第2溝42G2の内部)に設けられる。
【0133】
第3突起46A3は、ドライバ42が後方X2に移動したときに第3爪部48C3の経路上(第3溝42G3の内部)に設けられる。
【0134】
第1突起46A1乃至第3突起46A3は、それぞれ、ドライバ42の高さ(ドライバ42の板厚)と同一又はドライバ42よりも高く形成するのが好ましい。
【0135】
第1突起46A1及び第3突起46A3は、前後方向において同じ位置に設けられる。第2突起46A2は、第1突起46A1及び第3突起46A3よりも前方X1に設けられる。
【0136】
以上のような構成によれば、モータ54がボールねじ50を順方向に回転させると、ナット部品52、ナット部品52に固定されるスライダ44及びナット部品52に保持される切替ブロック48は、共に前方X1に移動する。また、切替ブロック48の第1爪部48C1、第2爪部48C2及び第3爪部48C3がそれぞれ第1溝42G1、第2溝42G2及び第3溝42G3内に挿入されているため、第1爪部48C1の前面及び第3爪部48C3の前面は、第1溝42G1の後方X2を向いた側面と第3溝42G3の後方X2を向いた側面にそれぞれ当接する。このため弾性部材49によってベース46の表面に押し付けられる切替ブロック48は、ベース46の表面を下方Z2に押し付けながら、第1爪部48C1の前面及び第3爪部48C3の前面によってドライバ42を前方X1に移動させる。その結果、ドライバ42とスライダ44は共に前方X1に移動する。ドライバ42とスライダ44が共に前方X1に移動する移動動作を第1移動動作と呼ぶ。
【0137】
その後、切替ブロック48が第2突起46A2が設けられた位置まで前進すると、第2爪部48C2は第2突起46A2の傾斜面に従って上方Z1に移動する。このため切替ブロック48が前方X1に移動しながら上方Z1に移動する。その結果、第1爪部48C1の前面及び第3爪部48C3の前面は、当接していた第1溝42G1の側面及び第3溝42G3の側面よりも上方Z1に移動する。従って、切替ブロック48はドライバ42の上に乗り上げ、ドライバ42は前方X1への移動を停止する。このとき第1移動動作は終了する。
【0138】
第1移動動作の終了後、モータ54がボールねじ50を順方向に更に回転させると、切替ブロック48は、ドライバ42上を前方X1に移動する。このときスライダ44とドライバ42のうち、スライダ44のみが前方X1に移動する。ドライバ42とスライダ44のうちスライダ44のみが前方X1に移動する移動動作を第2移動動作と呼ぶ。ドライバ42に対してスライダ44が所定量前進すると、モータ54はボールねじ50の順方向の回転を停止する。このとき第2移動動作は終了する。
【0139】
なお、第2移動動作中、切替ブロック48とドライバ42との摩擦によりドライバ42が前進する可能性がある。このため結束機10は、第2移動動作中のドライバ42の前進を停止させるためのストッパを備えてもよい。例えばベース46に開口穴を形成しこの開口穴から上方Z1に付勢されるボール等のストッパを露出させ、一方でドライバ42の底面には、ボールが挿入される凹みを設け、第1移動動作が終了しドライバ42の前方X1への移動を停止すべき位置において、ストッパと凹部とが係合するように構成することで、第2移動動作中のドライバ42の前進及び後退を抑制することが可能である。
【0140】
後述するように第1移動動作において、前方X1に移動するドライバ42を用いて上端のステープルSを前方X1に押すことにより、上端のステープルSを前方X1に移動させて他のステープルSと分離させることが可能となる。更に第1移動動作において、前方X1に移動するドライバ42を用いて上端のステープルSを前方X1に移動させながら、第1脚部S1の先端部S1Aを第1外壁部62に当接させることにより、第1脚部S1の先端部S1Aが第1脚部S1の第1部S1Bとなす屈曲角α1を更に小さくするように第1脚部S1を変位(塑性変形)させることが可能となる。
【0141】
また第2移動動作においてドライバ42は前方X1への移動を停止するからドライバ42に押されていたステープルSも前方X1への移動を停止する。従って、第2移動動作においてスライダ44を前進させることにより、ステープルSを停止させた状態で、スライダ44の第2前端部44A2により第2変位部30の第2アーム32を前方X1に押して回転させて、第1脚部S1、第2脚部S2及び本体部S3で囲んで第1対象物Gと係合するようにステープルSの第2脚部S2を変位させることが可能となる。更にステープルSを停止させた状態で、スライダ44の第1前端部44A1により第1変位部20の第1アーム22を回転させることにより第1対象物Gと係合するようにステープルSの第1脚部S1を変位させることが可能となる。
【0142】
なお結束機10は、ドライバ42及びスライダ44の移動量を制御するために、モータ54の回転量を取得するためのホールセンサその他のセンサを更に備えてもよい。更に結束機10は、ナット部品52の前後方向の位置を検出し、制御するためにナット部品52に取り付けられる磁石と、ナット部品52に取り付けられた磁石の位置を取得するためのホールセンサその他のセンサを更に備えてもよい。
【0143】
結束動作の完了後、モータ54がボールねじ50を逆方向に回転させることによりナット部品52、ナット部品52と固定されるスライダ44及びナット部品52に保持される切替ブロック48は、共に後方X2に移動する。このとき切替ブロック48は、停止しているドライバ42上を後方X2に移動する。
【0144】
更にモータ54がボールねじ50を逆方向に回転させると、ベース46に設けられた第2突起46A2の傾斜面に従って切替ブロック48の第2爪部48C2が後方X2に移動しながら下方Z2に移動するため、切替ブロック48の第1爪部48C1、第2爪部48C2及び第3爪部48C3がそれぞれ第1溝42G1、第2溝42G2及び第3溝42G3内の領域に挿入される。更にモータ54がボールねじ50を逆方向に回転させると切替ブロック48が後方X2に移動して、切替ブロック48の第2爪部48C2の後面が第2溝42G2の前方X1を向いた側面に当接する。このため切替ブロック48は、弾性部材49によってベース46の表面を下方Z2に押し付けながら、第2爪部48C2の後面によってドライバ42を後方X2に移動させる。このとき、ナット部品52、スライダ44、切替ブロック48及びドライバ42は、共に後方X2に移動する。
【0145】
更にモータ54がボールねじ50を逆方向に回転させて切替ブロック48が第1突起46A1及び第3突起46A3が設けられた位置まで後退すると、切替ブロック48の第1爪部48C1及び第3爪部48C3は、それぞれ、第1突起46A1及び第3突起46A3の傾斜面に従って上方Z1に移動する。このため切替ブロック48は後方X2に移動しながら上方Z1に移動する。その結果、第2爪部48C2の後面は、当接していた第2溝42G2の側面よりも上方Z1に移動する。従って、切替ブロック48はドライバ42の上に乗り上げ、ドライバ42は後方X2への移動を停止する。結束機10は、ドライバ42の後方X2への移動を規制するために、上述した構成又はその他の構成からなるストッパを備えてもよい。
【0146】
その後更にモータ54がボールねじ50を逆方向に回転させると、切替ブロック48は、ドライバ42上を後方X2に移動する。このときドライバ42とスライダ44のうちスライダ44のみが後方X2に移動する。ドライバ42に対してスライダ44が所定量後退すると、モータ54はボールねじ50の逆方向の回転を停止する。
【0147】
その後、モータ54がボールねじ50を順方向に回転させると、ナット部品52、ナット部品52に固定されるスライダ44及びナット部品52に保持される切替ブロック48は、共に前方X1に移動する。切替ブロック48の第1爪部48C1及び第3爪部48C3が、それぞれ、第1溝42G1前端の側面及び第3溝42G3前端の側面に当接乃至近接する位置まで、ナット部品52、スライダ44及び切替ブロック48を、共に前方X1に移動させることにより、その後に、第1移動動作に移行することが可能となる。
【0148】
以上のような構成により結束機10は、ドライバ42とスライダ44とが共に前進する第1移動動作と、ドライバ42とスライダ44のうちスライダ44のみが更に前方X1に移動する第2移動動作を実行可能に構成されている。
【0149】
なお初期状態におけるナット部品52の位置は限定されるものではない。例えば、初期状態から起動直後は、スライダ44のみが前方に移動し、その後にドライバ42及びスライダ44が開始する第1移動動作が実行するように結束機10を構成してもよい。
【0150】
[離脱部の送り曲げ機構]
【0151】
離脱部は、ドライバ42によって分離し前方X1に移動するステープルSの移動路及び第1変位部20及び第2変位部30による変位中にステープルSを支持する支持壁を含む。
【0152】
図10に示されるように離脱部56は、スライダ44の移動に伴って上下動が可能に設けられている。離脱部56は、スライダ44の移動に伴ってスライダ44の一部が入り込む間隙56Aが形成されている。スライダ44の一部が離脱部56の間隙56Aに入り込むことで離脱部56の上下位置を安定させることができ、ステープルSの変形を確実に行える。
【0153】
図11A及び
図11Bは、初期状態(待機状態)における正面視及び上面視における結束機10の前端部分を示す部分拡大図である。
【0154】
第1外壁部62は、ドライバ42によってステープルSが前方X1に移動しているときに、第1脚部S1の先端部S1Aが当接しながら通過することにより、第1脚部S1の先端部S1Aが第1脚部S1の第1部S1B(第1脚部S1の先端部S1Aに接続する部分)となす屈曲角α1を更に小さくするように塑性変形させる。
【0155】
従って第1外壁部62は、ステープルSの第1脚部S1の先端部S1Aの一部のみが接触する位置に設けられている。
【0156】
第1内壁部64は、ドライバ42によってステープルSの第1脚部S1が前方X1に移動しているとき及び第1脚部S1の変位時に、第1脚部S1の内側に設けられることによって第1脚部S1を内側から支持する。第1内壁部64は、第1脚部S1の移動経路に沿って設けられた底面と、第1脚部S1の移動方向である前後方向に略平行に設けられ第1脚部S1を内側から支持する壁面とを有する。
【0157】
一方で第1外壁部62は、第1内壁部64の壁面との間隙が前方X1に進行するほど小さくなるように傾斜する壁面を含むように設けられている。このような構成により、第1脚部S1の先端部S1Aが前方X1に進行するほど、屈曲角α1が小さくなるように先端部を変位させることが可能となる。
【0158】
更に本実施形態における第1外壁部62は、少なくとも、第1内壁部64の壁面との間隙が相対的に大きく減少する壁面が形成された第1領域62A(
図9)と、第1領域62Aより前方X1に設けられ第1内壁部64の壁面との間隙が小さく減少する壁面が形成された第2領域62B(同図)とを含む。
【0159】
第1領域62Aにおける第1外壁部62の壁面と第1内壁部64の壁面との間隙(前方X1と垂直な左右方向における距離)の平均減少率を第1減少率とし、第2領域62Bにおける第1外壁部62の壁面と第1内壁部64の壁面との間隙(前方X1と垂直な左右方向における距離)の平均減少率を第2減少率とするとき、第1減少率の絶対値は、第2減少率の絶対値より大きい。換言すると、上面視における前後方向と第1外壁部62の第1領域62Aの壁面とがなす角は、上面視における前後方向と第1外壁部62の第2領域62Bの壁面とがなす角より大きい。
【0160】
屈曲部の屈曲角α1が小さいほど変位に対して反発する弾性力は小さくなるから、上記構成によりスムーズに第1脚部S1の先端部S1Aを曲げることが可能となる。
【0161】
なお第1脚部S1が接触しない壁面は、上記構成に限られるものではない。例えば、第1内壁部64の上部を外方に突出するように設けて第1部S1Bの上面に対向する壁面を設けることにより、第1部S1Bが上方Z1に変位することを規制するように第1内壁部64を設けてもよい。
【0162】
更に第1内壁部64には、先端部S1A及び当接部材24が第1部S1Bの下方Z2を通過することを許容するための貫通孔が形成されている(
図5)。
【0163】
[離脱部の支持壁]
【0164】
離脱部は、更に第2脚部S2の変位時に第2脚部S2の内側に設けられることによって第2脚部S2を内側から支持する壁面を有する第2内壁部66を含む。第2内壁部66は、第2脚部S2の移動経路に沿って前後方向に略平行に設けられ設けられた底面を更に有する。
【0165】
第2内壁部66の前端は、第2脚部S2を屈曲させるときの支点として機能する。このため第2内壁部66は、第2脚部S2の屈曲部位である第2脚部S2の先端から第2距離DS2の位置に前端が設けられる。第2脚部S2は開口を閉塞する距離を有する必要があるため、第2内壁部66の前端は、第2脚部S2の先端からステープルSの開口幅以上の距離離間した位置に設けられる必要がある。第2脚部S2の先端部S2Aは、先端支持部68によって支持される。また、ステープルSの開口幅は、第1内壁部64の壁面と第2内壁部66の壁面との幅に相当する。このため、先端支持部68(のうち第2脚部S2の先端が対向する面)と第2内壁部66の前端との距離は、ステープルSの開口幅に相当する第1内壁部64の壁面と第2内壁部66の壁面との幅よりも大きくなるように第2内壁部66は設けられている。
【0166】
第2変位部30は更に第2脚部S2の先端部S2Aを支持する先端支持部68を含む。先端支持部68は、第2脚部S2の内側に設けられ、先端部S2Aを内側から支持する壁面を有する支持壁部68Aを含む。
【0167】
[第1変位部]
【0168】
第1変位部20は、第1対象物Gと係合可能に第1脚部S1を変位させる機能を有する。
【0169】
本実施形態に係る第1変位部20は、スライダ44の第1前端部44A1によって押されることにより回転する第1アーム22と、第1アーム22の回転に伴ってステープルSの内方に向かって第1脚部S1の先端部S1Aに当接しながら移動することにより、第1脚部S1の先端部S1Aが塑性変形するように曲げる当接部材24(爪部材)とを備える。
【0170】
まずスライダ44の第1前端部44A1の構成を説明する。
【0171】
図7A及び
図7Bに示されるようにスライダ44の第1前端部44A1は、スライダ44の左方Y2端部に、前方X1に延伸して設けられる。第1前端部44A1は、前方X1移動時に第1アーム22と当接することにより第1アーム22を第1回転方向R1に回転させるために上方Z1に突出する第1凸部44A11と、後方X2移動時に第1アーム22と当接することにより第1アーム22を第1回転方向R1と反対の第2回転方向R2に回転させる第2凸部44A12を含んでいる。
【0172】
第1凸部44A11は、第2凸部44A12よりも後方X2に設けられる。また、第1凸部44A11は、第2凸部44A12よりも外側(左方Y2)に設けられる。このような構成により第1アーム22の回転軸と第1凸部44A11との距離を第2凸部44A12との距離よりも大きくすることが可能となるため、高負荷となる前進時に大きな回転トルクを発生させることが可能となる。
【0173】
スライダ44の第1前端部44A1は更に前方X1に延伸する突端部44A13を含む。突端部44A13は、第1脚部S1の先端部S1Aの塑性変形時に第1脚部S1の先端部S1Aに接続する第1部S1Bを上方Z1から押さえつけることにより、第1部S1Bが曲がってしまうことを抑制する。
【0174】
続いて第1変位部20の第1アーム22について説明する。第1アーム22は、スライダ44の第1前端部44A1によって前方X1に押されることにより第1方向に回転して、当接部材24を内方に並進移動させる部材である。
【0175】
図12Aは、上面視における第1変位部20による塑性変形開始時における結束機10の前端部分を示す部分拡大図であり、
図12Bは左側面視における第1変位部20の断面の部分拡大図であり、
図12Cは結束機10の前端部の拡大斜視図である。但し便宜上、各図において説明に不要な部品は省略されている。
【0176】
図12A等に示されるように、第1アーム22の回転軸22AXは、ステープルSの第1脚部S1の外方(右方Y1)かつ前方X1に設けられている。また、第1アーム22の回転軸22AXは、上下方向を向くように前後方向に垂直に設けられている。更に第1アーム22は、待機時において回転軸22AXから後方X2に延在して設けられる部分を有し、この部分の後端には、下方Z2に突出し、後方X2かつ内方に傾斜して延在する壁部を有する。この壁部の後方X2を向いた面は初期状態において後方X2かつ外方を向き、この壁部の前方X1を向いた面は前方X1かつ内方を向く。この壁部の後方X2を向いた面は、前進する第1凸部44A11に当接する面を含む。この壁部は、第1凸部44A11に当接することによって第1回転方向R1に回転しながら第1凸部44A11と第2凸部44A12との間の領域を貫通するように移動する。また、この壁部の前方X1を向いた面は、後退する第2凸部44A12に当接する面を含む。従って壁部は、第2凸部44A12に当接することによって第1回転方向R1と反対の第2回転方向R2に回転しながら元の位置に戻るように構成されている。
【0177】
図12Cに示されるように第1アーム22の後端部には更に、下方Z2に突出する凸部22Cが設けられる。この凸部22Cは、当接部材24の端部に設けられる凹部24Aと係合する。この凸部22Cが第1アーム22の回転軸22AXを中心に第1回転方向R1に回転することにより、当接部材24は、ステープルSの内方に向かって進行するように構成されている。
【0178】
図13は、当接部材24(爪部材)の斜視図を示している。当接部材24は、第1アーム22によって押され、ステープルSの内方かつ下方Z2に傾斜する方向に進行することにより、ステープルSの第1脚部S1の先端部S1Aを塑性変形させる機能を有する。当接部材24によって、第1脚部S1の先端部S1Aは、上面視において第1脚部S1の先端部S1Aに接続する第1部S1Bと交差し、かつ、結束前の第1脚部S1、第2脚部S2及び本体部S3を貫通する平面PLから離間する下方Z2に先端が進行するように曲げられる。第1対象物Gを挟み込んだ状態で第1脚部S1の先端部S1Aを内方かつ下方Z2に塑性変形させることにより、第1脚部S1の先端部S1Aは、第1部S1Bと干渉することなく第1対象物Gを挟みこむことが可能となる。
【0179】
同図に示されるように当接部材24の末端には、第1アーム22の下方Z2に突出する凸部22Cと係合する凹部24Aが設けられる。第1アーム22の凸部22Cが第1回転方向R1に回転するとき、凹部24Aの側面が当接して当接部材24は、内方かつ下方Z2に傾斜する方向に進行し、この凸部22Cが第2回転方向R2に回転するとき、凹部24Aの他の側面が当接して当接部材24は、上方Z1かつ外方に傾斜する方向に戻る。
【0180】
当接部材24の先端は、先端部を掴むように当接する当接面24Bと、当接面24Bと側面との接続部に設けられ、先端部を塑性変形させる応力を作用させるための角部24Cを含む。ここで当接面24BはステープルSの断面形状にあわせて窪むように形成されている。また当接面24Bは、角部24Cよりも先に先端部S1Aに当接するように傾斜して形成されている。このような構成により当接面24Bで先端部S1Aを掴むように取り込んだ後に、角部24Cで先端部S1Aを塑性変形させることが可能となるから、角部24Cによって塑性変形される先端部S1Aの位置を安定させることが可能となる。
【0181】
図14は、正面視における当接部材24による先端部S1Aの塑性変形後の断面図及びこの断面における領域Aの拡大図を示す。同図に示されるように、当接部材24は、内方に向かって下降するように傾斜するベース46の傾斜面上に載置されることにより、ステープルSの内方(第2アーム32に接近する方向)かつ下方Z2に傾斜する方向に進行するようにガイドされている。第1脚部S1の第1部S1Bは、スライダ44の底面によって上方Z1から、第1内壁部64によって内側及び下方Z2(但し先端部S1Aが第1部S1Bの下方Z2を通過する部分を除く)から支持される。加えて当接部材24の当接面24Bは塑性変形時に第1部S1Bの外面に対向する。このため、第1脚部S1の先端部S1Aの塑性変形時に、第1部S1Bが曲がってしまうことを抑制することが可能となる。
【0182】
[第2変位部]
【0183】
第2変位部30は、第1対象物Gと係合可能に第2脚部S2を変位させる機能を有する。
【0184】
第2変位部30は、スライダ44の第2前端部44A2によって第1回転方向R1に回転することにより第2脚部S2を塑性変形するように曲げる第2アーム32を備える。
【0185】
まずスライダ44の第2前端部44A2の構成を説明する。
【0186】
図7A及び
図7Bに示されるようにスライダ44の第2前端部44A2は、スライダ44の右方Y1端部に、前方X1に延伸して設けられる。第2前端部44A2は、前方X1移動時に第2アーム32と当接することにより第2アーム32を第1回転方向R1に回転させるために前方X1を向いて形成された第1表面44A21及び第2表面44A22と、この第1表面44A21及び第2表面44A22よりも前方X1に設けられ後方X2を向いて形成された第3表面44A23とを含む。この第1表面44A21及び第2表面44A22と、第3表面44A23との間に第2アーム32の後端部32Bを配設することによりスライダ44の前進時に第2アーム32は第1回転方向R1に回転し、スライダ44の後退時に第2アーム32は第2回転方向R2に回転して元の位置に戻る。
【0187】
スライダ44の第1表面44A21は、前進するスライダ44の第1前端部44A1が第2アーム32の後端部32Bに最初に当接する面に相当する。第1表面44A21に当接する第2アーム32の後端部32Bの面を第1後端面32B1と呼ぶ。
【0188】
スライダ44の第2表面44A22は、第1表面44A21が第1後端面32B1に当接し第2アーム32が第1回転方向R1の回転を開始した後に、更に前進するスライダ44の第2前端部44A2が第2アーム32の後端部32Bに当接する面に相当する。第2表面44A22に当接する第2アーム32の後端部32Bの面を第2後端面32B2と呼ぶ。
【0189】
図7B等に示されるように、上下方向に関し、第1表面44A21は第2表面44A22の上方Z1に設けられ、前後方向に関し第1表面44A21は第2表面44A22の後方X2に設けられ、左右方向に関し第1表面44A21は第2表面44A22の右方Y1、即ち、ステープルSを基準として、第1表面44A21は第2表面44A22よりも外方(右方Y1)に設けられる。
【0190】
この構成により、スライダ44は、第1表面44A21で第2アーム32を押した後に、第2表面44A22で第2アーム32を更に押すことが可能となるから、スライダ44のストロークに対する第2アーム32の回転角度を大きくすることが可能となる。
【0191】
更に、スライダ44の第1表面44A21に当接する接触点(「第1接触点」の一例)における第1後端面32B1の法線と、第1接触点と回転軸32AXとを結ぶ直線とがなす角度(「第1角度」の一例)は、第1接触点がない場合における、スライダ44の第2表面44A22に当接する接触点(「第2接触点」の一例)における第2後端面32B2の法線と、第2接触点と回転軸32AXとを結ぶ直線とがなす角度(「第2角度」の一例)よりも90度に近いようにスライダ44及び第2アーム32は形成されている。
【0192】
第2アーム32の回転により接触点が切り替わった時点で、スライダ44の第1表面44A21に当接する接触点(「第1接触点」の一例)における第1後端面32B1の法線と、第1接触点と回転軸32AXとを結ぶ直線とがなす角度(「第1角度」の一例)は、スライダ44の第2表面44A22に当接する接触点(「第2接触点」の一例)における第2後端面32B2の法線と、第2接触点と回転軸32AXとを結ぶ直線とがなす角度(「第2角度」の一例)と同等になるように、スライダ44及び第2アーム32は形成されている。
【0193】
若しくは、スライダ44の第2表面44A22に当接する接触点(「第2接触点」の一例)における第2後端面32B2の法線と、第2接触点と回転軸32AXとを結ぶ直線とがなす角度(「第2角度」の一例)の方が90度に近いようにスライダ44及び第2アーム32は形成されている。
【0194】
この構成により、第1表面44A21が第1後端面32B1に当接するときの回転モーメントを、第2表面44A22が第2後端面32B2に当接するときの回転モーメントよりも、相対的に大きくすることが可能となる。
【0195】
後述するように、第2脚部S2は第2アーム32の回転開始時に2つの箇所を同時に曲げる必要があることから、第2アーム32には、回転開始時に大きな負荷がかかる。このため、負荷がかかる回転開始時にスライダ44の第1表面44A21で第2アーム32を前方X1に押すことにより、第2アーム32に相対的に大きな回転モーメントを発生させることが可能となる。なお、回転モーメントを高めるために第2アーム32の回転軸32AXと第1後端面32B1との距離は、第2アーム32の回転軸32AXと第2後端面32B2との距離よりも大きくてもよい。換言すると、第2アーム32の回転軸32AXと第2後端面32B2との距離は、第2アーム32の回転軸32AXと第1後端面32B1との距離よりも小さくてもよい。
【0196】
続いて第2アーム32について説明する。
図15は、第2アーム32を下方から見た斜視図である。
図16A及び
図16Bは、それぞれ、第2アーム32の平面図及び背面図である。
【0197】
これら図面に示されるように、第2アーム32は、初期状態において回転軸32AXから後方X2に延在する後端部32Bと、回転軸32AXよりも前方X1に延在する先端部32Cとを含む。
【0198】
後端部32Bの第1後端面32B1は、第2後端面32B2よりも後方X2に設けられるから、スライダ44の第1表面44A21を第1後端面32B1に当接させ、その後に第2表面44A22を第2後端面32B2に当接させることが可能となる。
【0199】
回転軸32AXは、第1後端面32B1及び第2後端面32B2よりも中心側である左方Y2(内方)に設けられる。このため後端部32Bが前方X1に押されることにより第2アーム32の先端部32Cは、ステープルSの内方乃至第1アーム22に接近する方向に向かう第1回転方向R1に回転する。
【0200】
更に回転軸32AXは、下方Z2に進行するほど内方(左方Y2)に進行するように傾斜して設けられる。このため第1回転方向R1に回転する第2アーム32の先端部32Cは、第1回転方向R1に回転するほど上方Z1に進行するように設けられている。その結果、第2アーム32によって塑性変形されるステープルSの第2脚部S2も、回転するほど上方Z1に進行し、結束前の第1脚部S1、第2脚部S2及び本体部S3を貫通する平面PLよりも上方Z1の位置において、第1対象物Gと係合可能に構成されている。
【0201】
第2アーム32の先端部32Cは、第2脚部S2に当接する本体部32C1と、曲げ戻し用の突起32C2とを含む。本体部32C1は、回転軸32AXと離間した位置において第1回転方向R1に突出する2つの凸部が上下に離間して設けられる。この凸部で上下から第2脚部S2を挟み込むことにより第2脚部S2をしっかりと保持して塑性変形させることが可能となる。
【0202】
第2アーム32は、本体部32C1よりも第1回転方向R1に進行した位置に設けられ、下方Z2に突出する曲げ戻し用の突起32C2を含む。第2アーム32を第1回転方向R1に回転させて第2脚部S2を曲げた後に、第2アーム32を第2回転方向R2に回転させてこの突起32C2により第2脚部S2を第2回転方向R2に戻すことによって、第2脚部S2の先端部S2Aを第1対象物Gに係合させることが可能となる。
【0203】
曲げ戻し用の突起32C2は、第1回転方向R1に進行するほど下方Z2に突出するように傾斜して形成される。このような構成により第2回転方向R2に回転させたとき、曲げ戻し用の突起32C2は、第2脚部S2を第2回転方向R2に戻しながら、スムーズに第1対象物Gに係合している第2脚部S2を乗り越えることが可能となる。なお、塑性変形されるステープルSには、下方Z2のステープルSを介してプッシャ16により上方Z1に向かう付勢力が作用している。第2脚部S2の変位時の仰角(結束前の第1脚部S1、第2脚部S2及び本体部S3を貫通する平面PLに対して、例えば、10度から45度)及び曲げ戻し突起32C2の傾斜角度は、この付勢力に抗して突起が第2脚部S2を乗り越えられるように設計されている。
【0204】
[結束機を用いた結束方法]
【0205】
以下、結束機10を用いた結束方法について説明する。
【0206】
上述したように
図11A及び
図11Bは、初期状態(待機状態)における正面視及び上面視における結束機10の前端部分を示す部分拡大図である。
【0207】
このとき、上端のステープルSは、下方Z2のマガジン14内に収容される一又は複数のステープルSと連結されている。また、ドライバ42は、上端のステープルSの本体部S3の後方X2に位置している。ドライバ42の前端と上端のステープルSの本体部S3との間には、わずかな隙間がある。スライダ44は、左端に設けられる突端部44A13がわずかにステープルSと重なっている。
【0208】
図17A及び
図17Bは、使用者がスイッチを操作して、ドライバ42が移動を開始した直後における正面視及び上面視における結束機10の前端部分を示す部分拡大図である。使用者がスイッチを操作するとモータ54が回転を開始し、これに伴ってボールねじ50が順方向に回転するためナット部品52及びナット部品52に固定されるスライダ44が前方X1への移動を開始する。ナット部品52に保持される切替ブロック48の第1爪部48C1及び第3爪部48C3は第1溝42G1内及び第3溝42G3内に挿入されているため第1爪部48C1の前面及び第3爪部48C3の前面は第1溝42G1の後方X2を向いた側面及び第3溝42G3の後方X2を向いた側面に当接し、ドライバ42の前方X1への移動を開始させる。従ってドライバ42とスライダ44が共に前進する第1移動動作が開始する。
【0209】
図8Aに示されるように、ベース46はドライバ42の高さが上端のステープルSとほぼ一致するように設けられている。このためベース46上を前方X1に移動するドライバ42の前端面42Sは上端のステープルSの本体部S3に当接し、ステープルSの本体部S3を前方X1に押し出す。下方Z2のステープルSの内側には、下方Z2のステープルSの前方X1への移動を禁止する分離ブロック18(
図5)が設けられている。このため上端のステープルSのみが下方Z2のステープルSから分離して分離ブロック18上を前方X1に移動する。
【0210】
図18は、ドライバ42が前進してステープルSの第1脚部S1の先端部S1Aが離脱部の誘導路上を前進しているときにおける上面視における結束機10の前端部分を示す部分拡大図である。なお、正面視は
図17Aと同一であるから図を省略する。
【0211】
ボールねじ50が順方向の回転を継続するためスライダ44は前方X1に移動する。このためスライダ44の第1前端部44A1は、突端部44A13が第1脚部S1上に位置するように前進し、第2前端部44A2は結束機10の右端に沿って前進する。スライダ44と共にドライバ42も前進する。第1脚部S1の先端部S1Aは、第1外壁部62の進入部に相当する第1領域62Aの壁面に接触する。また、第1脚部S1の第1部S1Bの内側は、第1内壁部64の壁面に接触する。第1外壁部62の壁面と第1内壁部64の壁面との間隔は、前方X1に進行するほど減少するから、第1脚部S1は、前進するほど屈曲角α1が小さくなるように塑性変形する。このとき、ドライバ42の突端部42Bは第1部S1B及び本体部S3の左端を外側から支持し、スライダ44の突端部44A13は第1脚部S1の上面に当接し第1脚部S1を上方Z1から押さえつけることにより第1部S1Bが曲がってしまうことを抑制する。第1領域62Aにおける第1外壁部62の壁面と第1内壁部64の壁面との間隔は相対的に大きく減少するから、第1脚部S1の先端部S1Aと第1部S1Bの角度は相対的に大きく減少する。続く第2領域62Bにおける第1外壁部62の壁面と第1内壁部64の壁面との間隔は相対的に小さく減少するから、屈曲角は相対的に小さく減少する。
【0212】
図19は、ドライバ42が前進してステープルSの第1脚部S1の先端部S1Aが第1外壁部62を通過したときにおける、結束機10の前端部の上面視における部分拡大図である。なお、正面視は
図17Aと同一であるから図を省略する。同図に示されるように、第1外壁部62を通過することにより、先端部は塑性変形し、屈曲角α1は大きく減少する。
【0213】
図20は、ドライバ42が最も前進してステープルSが変位開始位置に到達したときの様子を示す上面視における部分拡大図である。このときステープルSの第1脚部S1の屈曲部が、第1内壁部64の前端(第1内壁部64の後方X2を向いた内壁面)に到達し、第2脚部S2の先端部S2Aが先端支持部68の前端(先端支持部68の後方X2を向いた内壁面)に到達する。なお、正面視は
図17Aと同一であるから図を省略する。
【0214】
このとき第1脚部S1の屈曲部及び第1部S1Bの内側面及び下面は、第1内壁部64によって下方Z2及び右方Y1(内方)から支持される。また、第1脚部S1の屈曲部は第1内壁部64によって前方X1からも支持される。更に第1部S1Bの上面はスライダ44の第1前端部44A1の突端部44A13によって上方Z1から支持される。
【0215】
一方で第2脚部S2の先端部S2Aの内側面及び下面は、先端部によって下方Z2及び左方Y2(内方)から支持される。
【0216】
更に本体部S3の内側面及び第2脚部S2の本体部S3との接続部の内側面は、第2内壁部66によって内方から支持される。
【0217】
このときドライバ42を前方X1に押していた切替ブロック48の第2爪部48C2は、第2突起46A2によって上方Z1に移動する。その結果切替ブロック48がドライバ42の上に乗り上げるため、ドライバ42は前方X1への移動を停止し、第1移動動作が終了する。同時に、ベース46に形成された穴から上方Z1に付勢されたボールがドライバ42の底面に設けられた凹部に嵌りストッパとして機能するため、切替ブロック48との摩擦力によりドライバ42が前方X1又は後方X2へ移動することが抑制される。
【0218】
スライダ44の第1前端部44A1の第1凸部44A11及び第2凸部44A12は、第1アーム22の後端に接近する。また、スライダ44の第2前端部44A2の第1表面は、第2アーム32の第1後端面32B1に近接又は当接する。
【0219】
第1移動動作の終了後、制御装置によってモータ54は回転を停止する。このとき使用者は、第1対象物G及び第2対象物Pを結束機10の所定位置にセットする。本実施形態において第1対象物Gはガイド要素として機能する紐である。従って使用者は、第1対象物Gである紐を第1脚部S1の屈曲部に挿入する。本実施形態において第2対象物Pは茎である。従って使用者は、第2対象物Pである茎をステープルSで囲まれる領域に挿入する。結束機10の第1対象物G及び第2対象物Pが挿入される部分を第1挿入部及び第2挿入部と呼ばれる場合がある。本実施形態において第1対象物Gは第1内壁部64で支持される第1脚部S1の屈曲部に挿入されるので、第1内壁部64は第1挿入部に相当する。また第2対象物Pは第1内壁部64、第2内壁部66で挟まれるように後方X2に窪んで設けられる結束機10の凹部に挿入されるので、この凹部は第2挿入部に相当する。
【0220】
図21A及び
図21Bは、使用者が第1対象物Gを第1挿入部に挿入し、第2対象物Pを第2挿入部に挿入したときの正面視及び上面視における結束機10の前端部分を示す部分拡大図である。
【0221】
その後使用者がスイッチを操作すると、又は、第1挿入部及び第2挿入部にそれぞれ設けられたコンタクトセンサ等のセンサにより第1対象物G及び第2対象物Pが挿入されたことが検出されると、再びモータ54は回転を開始する。モータ54が回転を再開し、これに伴ってボールねじ50が順方向に回転するためナット部品52及びナット部品52に固定されるスライダ44が前方X1への移動を開始する。切替ブロック48はドライバ42上を前進するためドライバ42は前進しない。このためドライバ42とスライダ44のうちスライダ44のみが前進する第2移動動作が開始する。
【0222】
図22A及び
図22Bは、第2移動動作においてスライダ44が更に前進したときの正面視及び上面視における結束機10の前端部分を示す部分拡大図である。第2移動動作においてドライバ42は前進しない。このためステープルSの本体部S3の内側面は第1内壁部64及び第2内壁部66により支持され、外側面はドライバ42により支持されて静止している。
【0223】
スライダ44の第1前端部44A1の第1凸部44A11は、第1アーム22の後端部の下方Z2に突出して傾斜する方向に延在する壁部の後方X2を向いた面に当接して、第1アーム22を前方X1に押す。第1アーム22の回転軸22AXは、このとき第1凸部44A11に対して前方X1及び外方(左方Y2)の位置に設けられている。このため第1アーム22は第1回転方向R1への回転を開始する。第1アーム22の後端部の壁部は、第1凸部44A11と第2凸部44A12の間隙の領域を通過しながら第1回転方向R1に回転する。なおこの時点において第1脚部S1は第1変位部20によって塑性変形されていない。
【0224】
一方で第2前端部44A2の第1表面44A21は第2アーム32の第1後端面32B1に当接し第2アーム32を前方X1に押す。第2アーム32の回転軸32AXは、このとき第1後端面32B1に対して前方X1かつ内方(左方Y2)に位置するから第2アーム32も第1回転方向R1への回転を開始する。第2アーム32の本体部S3の2つの突起に上下から挟まれる第2脚部S2は、第2内壁部66の前端を支点として、内方に向かって屈曲されようとする。
【0225】
このとき第2脚部S2の先端部S2Aは、第2脚部S2の内側に設けられる先端支持部68の支持壁部68Aの壁面によって内方から支持されている。このため、第2脚部S2が第2内壁部66の前端を支点としてステープルSの内方に向かって屈曲されると同時に、第2脚部S2の先端部S2Aが先端支持部68の支持壁部68Aの壁面に当接しながら支持壁部68Aを通過することよって反対方向(外方)に曲げられる。
【0226】
上述したように第2アーム32の回転軸32AXは、下方Z2に進行するほど内方に進行するように傾斜しているから、第2脚部S2の先端部S2Aは、第1回転方向R1に回転するほど、第1脚部S1に接近しながら上方Z1に進行する。
【0227】
またステープルSの第2脚部S2の先端部S2Aと支持壁部68Aの壁面とが当接している期間と、スライダ44の第1表面44A21と第2アーム32の第1後端面32B1とが当接している期間が、少なくとも一部の期間において重複するように構成されるから、高負荷の時に相対的に大きな回転モーメントを発生させることが可能である。
【0228】
図23A及び
図23Bは、第2移動動作においてスライダ44が更に前進したときの正面視及び上面視における結束機10の前端部分を示す部分拡大図である。
【0229】
第1アーム22は、スライダ44の第1前端部44A1の第1凸部44A11に押されることにより更に第1回転方向R1に回転する。このときスライダ44の第1前端部44A1の突端部44A13は第1内壁部64の前端に到達するため、スライダ44は、第1脚部S1の第1部S1Bの上面を上方Z1から押さえつける。このため第1脚部S1の第1部S1Bは、スライダ44及び第1内壁部64によって、上方Z1、下方Z2及び内方から支持される。
【0230】
第2アーム32の第2後端面32B2は、スライダ44の第2前端部44A2の第2表面44A22によって押されることにより更に第1回転方向R1に回転する。
図23Bに示されるように、第2アーム32によって保持される第2脚部S2は第1脚部S1と交差する位置まで屈曲されるため、結束前のステープルSに設けられていた開口は上面視において閉塞され、ステープルSの第1脚部S1、第2脚部S2及び本体部S3は上面視において第2対象物Pを包囲する。なお
図23Aに示される正面視において、第2脚部S2の先端部S2Aは、上方Z1に移動し第1対象物Gに近接する。
【0231】
またステープルSの第2脚部S2の先端部S2Aと支持壁部68Aとが当接している期間が経過した後に、スライダ44の第2表面44A22と第2アーム32の第2後端面32B2とが当接しているから、相対的に低負荷の時に相対的に小さな回転モーメントを発生させることが可能である。
【0232】
図24A及び
図24Bは、第2移動動作においてスライダ44が最も前進する直前の正面視及び上面視における結束機10の前端部分を示す部分拡大図である。
【0233】
第1アーム22は、スライダ44の第1前端部44A1の第1凸部44A11に押されることにより更に第1回転方向R1に回転し、第1対象物Gに接触し、第1対象物Gを押して変位させる。また、第1アーム22の下方Z2に突出する凸部22Cは、当接部材24の末端に設けられる凹部24Aと当接する。このため、第1アーム22の凸部22Cの回転に伴って当接部材24は、ステープルSの内方かつ下方Z2に傾斜する方向に進行を開始する。まず当接部材24の当接面24Bが第1脚部S1の先端部S1Aに当接し、その後当接部材24の角部24Cが第1脚部S1の先端部S1Aに当接し、先端部を折り返すように塑性変形させる。当接部材24によって折り返される第1脚部S1の先端部S1Aは、第1部S1Bの下方Z2を通過し、上面視において第1部S1Bと交差するように屈曲する。第1部S1Bと先端部S1Aが交差する位置における断面図に相当する
図14に示されるように第1部S1B(上方)と先端部S1A(下方)が上下に隣接するように先端部S1Aを塑性変形させることが可能となる。このとき当接部材24の先端及び第2脚部S2の先端は、第1内壁部64に形成され、上面視においてステープルSで囲まれる領域に連通する貫通孔の内部に侵入する。同図に示されるように第1部S1Bは、スライダ44及び第1内壁部64によって、上方、下方(但し折り返された先端部S1A及び当接部材24が通過する部分を除く)及び内方から囲まれているため、曲がることが抑制される。
【0234】
以上のプロセスにより第1脚部S1は第1対象物Gを挟み込む。第1脚部S1は塑性変形されているから、第1脚部S1と第1対象物Gの係合は容易に外れにくい。
【0235】
一方で第2アーム32の第2後端面32B2は、スライダ44の第2前端部44A2の第2表面によって押されることにより更に第1回転方向R1に回転する。このため第2脚部S2は、上面視において、第1対象物Gを超えて第2対象物Pに近接する。
【0236】
以後、モータ54はボールねじ50を逆回転させるため、スライダ44は後退を開始する。
【0237】
図25A及び
図25B並びに
図25Cは、スライダ44の後退開始後における結束機10の前端部分の正面視及び上面視における部分拡大図並びに部分拡大斜視図である。
【0238】
スライダ44が後退を開始すると、スライダ44の第1前端部44A1の第2凸部44A12が、第1凸部44A11と第2凸部44A12との間の領域を貫通するように移動する第1アーム22の壁部の前方X1を向いた面に当接して後方X2に押すことにより、第1アーム22を第2回転方向R2に回転させる。
【0239】
またスライダ44の第2前端部44A2の第3表面は、第2アーム32の後端部に当接して後方X2に押すことにより、第2アーム32を第2回転方向R2に回転させる。第2アーム32が第2方向に回転すると、第2アーム32の本体部S3よりも第1回転方向R1に進行した位置に下方Z2に突出して設けられる曲げ戻し用の突起32C2が第2脚部S2に当接しこれを第2回転方向R2に押す。このため第2脚部S2は第2回転方向R2に変位し、その結果第2脚部S2の屈曲部は、第1対象物Gに係合する。
図25Aに示されるように、第2脚部S2が第1対象物Gに係合することにより、第1対象物Gは変位し、第1脚部S1と第1対象物Gとの係合位置と、第2脚部S2と第2対象物Pとの係合位置との間に張力が発生する。このため第1対象物Gが撓んでしまい、第1対象物Gと第2脚部S2との係合が外れてしまうことを抑制することが可能となる。
【0240】
図26A及び
図26B並びに
図26Cは、スライダ44が更に後退したときの結束機10の前端部分の正面視及び上面視における部分拡大図並びに部分拡大斜視図である。
【0241】
スライダ44の第1前端部44A1の第2凸部44A12は、第1凸部44A11と第2凸部44A12との間の領域を貫通するように移動する第1アーム22の壁部の前方X1を向いた面に当接しながらこれを後方X2に押すため、第1アーム22は更に第2回転方向R2に回転する。
【0242】
この状態から、第1アーム22が更に第2回転方向R2に回転して
図21Bに示される初期位置まで回転すると、第1アーム22の下面に設けられた凹部に弾性部材で付勢されたボール部材が嵌まり込む。これにより、第1アーム22は初期位置に保持される。
【0243】
スライダ44の第2前端部44A2の第3表面は、第2アーム32の後端部の前方X1を向いた面に当接しながらこれを後方X2に押すため、第2アーム32は更に第2回転方向R2に回転する。第2脚部S2は第1対象物Gに係合するため、第2アーム32の曲げ戻し用の突起32C2は、これ以上第2脚部S2を第2回転方向R2に変位させることができなくなる。このため第2アーム32の曲げ戻し用の突起32C2は、第2脚部S2を下方Z2に僅かに押し下げながら第2脚部S2を乗り越える。
図26Cに示されるようにステープルSには、下方Z2のステープルSを介してプッシャ16により上方Z1に向かう付勢力が作用しているため、この付勢力に抗して曲げ戻し用の突起32C2が第2脚部S2を乗り越えられるように、結束機10は構成されている。
【0244】
この状態から、第2アーム32が更に第2回転方向R2に回転して
図21Bに示される初期位置まで回転すると、第2アーム32の下面に設けられた凹部に弾性部材で付勢されたボール部材が嵌まり込む。これにより、第2アーム32は初期位置に保持される。
【0245】
結束動作の完了後、更にモータ54がボールねじ50を逆方向に回転させると、ベース46に設けられた第2突起46A2の傾斜面に従って切替ブロック48の第2爪部48C2が後方X2に移動しながら下方Z2に移動するため、切替ブロック48の第1爪部48C1、第2爪部48C2及び第3爪部48C3がそれぞれ第1溝42G1、第2溝42G2及び第3溝42G3内の領域に挿入される。このとき第1アーム22及び第2アーム32は概ね初期状態の位置に戻る。更にモータ54がボールねじ50を逆方向に回転させると切替ブロック48が後方X2に移動して、切替ブロック48の第2爪部48C2の後面が第2溝42G2の前方X1を向いた側面に当接する。このため切替ブロック48は、弾性部材49によってベース46の表面を下方Z2に押し付けながら、第2爪部48C2の後面によってドライバ42を後方X2に移動させる。このためドライバ42を初期状態の位置に戻すことが可能となる。
【0246】
以上のプロセスにより第2脚部S2は第1対象物Gに係合する。上述したように第2脚部S2は上面視において第1対象物Gと第2対象物Pとの間隙を通過(貫通)した状態で第1対象物Gに係合するから、第2対象物PはステープルSに囲まれる。このため第2対象物PとステープルSの係合が容易に外れることが抑制される。また、第2対象物Pが成長して第2脚部S2が曲がっても、第1対象物Gへの係合が強まるから、第1対象物GとステープルSの係合が容易に外れることも抑制される。
【0247】
但し本実施形態に係る結束機10は変形可能である。例えば、第1変位部20は、当接部材24を用いることなく、第1アーム22によって第1脚部S1の先端部S1Aを塑性変形するように構成してもよい。例えば、第1アーム22と当接部材24を一体化したような部品を設け、これを回転させることにより第1脚部S1の先端部S1Aを塑性変形させてもよい。このとき第1アーム22の回転軸22AXを傾斜させ、第1回転方向R1に回転するほど下降するように第1アーム22を設けることによって、先端部が第1部S1Bの下を通過するように第1アーム22を構成してもよい。反対に、第1回転方向R1に回転するほど上昇するように第1アーム22を設けることによって、先端部が第1部S1Bの上を通過するように第1アーム22を構成してもよい。例えば、当接部材24によって折り返される第1脚部S1の先端部S1Aは、第1部S1Bの上方Z1を通過し、上面視において第1部S1Bと交差するように屈曲させてもよい。一方で、第2脚部S2は、第2脚部S2及び本体部S3を貫通する平面PLから離間する下方Z2に進行するように曲げてもよい。
【0248】
[第2実施形態]
以下、本実施形態に係る結束機100の詳細構成について説明する。なお同一乃至類似する構成乃至機能については同一乃至類似する名称乃至符号を用いて説明を省略乃至簡略化し、異なる部分を中心に説明する。
【0249】
[ステープルS0の構成]
まず本実施形態に係るステープルS0の構成について説明する。なおステープルS0の素材等についてはステープルSと同様であるから説明を省略する。
【0250】
図27は本実施形態に係る結束前のステープルS0を示している。
【0251】
ステープルS0は、第1脚部S10と、第2脚部S20と、第1脚部S10と第2脚部S20とを接続する本体部S30とを含む点においてステープルSと共通する。ステープルSと同様に、結束前の状態において、ステープルS0の第1脚部S10と第2脚部S20は離間して設けられるため、第1脚部S10と第2脚部S20との間には開口が設けられる。本体部S30における閉塞している部分から開口に向かう方向(
図27における紙面左方向)を開口方向D1と呼ぶ。結束機100にセットされるときステープルS0の開口方向D1は、前方X1と一致する。したがって使用者は、開口から第2対象物PをステープルS0内に挿入することができる。
【0252】
第1脚部S10は、ステープルS0の一方の端部を含む部分であり、開口方向D1に延伸する第1部S10Bと、第1部S10Bから曲げられて外側乃至外方に延びる先端部S10Aとを含む。第1部S10Bと先端部S10Aとがなす角度を屈曲角α1と呼び、先端部S10Aのうち、第1部S10Bと接続するために屈曲している部分を屈曲部と呼ぶ。本実施形態においては、屈曲角α1は90度以下であり、好ましくは90度未満の鋭角である。
【0253】
第2脚部S20は、ステープルS0の他方の端部を含む部分であり、開口方向D1に延伸する第2部を含む。結束状態において、第2脚部S20は、第1脚部S10と交差するように曲げられて上面視において開口を閉塞する。従って本実施形態に係る第2脚部S20は、開口の幅、即ち、第1脚部S10と第2脚部S20との間隔よりも長く形成される。また、第2脚部S20は、第1脚部S10よりも長く形成される。
【0254】
本体部S30は、第1脚部S10と第2脚部S20とを接続する部分である。本実施形態に係る本体部S30は、外方に凸となるように湾曲する湾曲部S30Aと、内方に凸となるように湾曲する湾曲部S30Bを含んでいる。湾曲部S30Aは湾曲部S30Bよりも長く、かつ、湾曲部S30Aの曲率が湾曲部S30Bの曲率よりも大きくなるように形成される。湾曲部S30Aは、一端において第1脚部S10の第1部S10Bと接続し、外方に向かって凸となるように湾曲し、他端において湾曲部S30Bと接続する。湾曲部S30Bは、一端において湾曲部S30Aと接続し、内方に向かって凸となるように湾曲し、他端において第2脚部S20と接続する。
【0255】
なおステープルの形状は、ステープルS0に限られるものではなく、第1脚部S10、第2脚部S20及び第3脚部S30は、それぞれ、一又は複数の辺部と一又は複数の湾曲部とから構成されてもよい。また、ステープルS0は、U字状、コ字状、または、V字状等の開口を有する如何なる形状に形成されていてもよい。 ステープルS0は、ステープルSと同じ様に曲げられることにより、第1対象物Gと第2対象物Pとを結束する。具体的には、ステープルS0の第1脚部S10の先端部S10Aは、結束機100の第1変位部200(
図29)によって曲げられることにより、第1脚部S10に挟まれている第1対象物Gと係合する。ステープルS0の第2脚部S20は、結束機100の第2変位部300によって、第2対象物Pを包囲しつつステープルS0の開口を閉塞するように曲げられる。同時に結束機100の第2変位部300によって、第2脚部S20の先端部S20Aは、第1対象物Gと係合可能に外方に曲げられる。このように、ステープルS0によって第2対象物Pを包囲しつつ、ステープルS0の先端部S10A及び先端部S20Aを共に第1対象物Gと係合させることにより、第1対象物Gと第2対象物Pとを結束することが可能となる。
【0256】
本出願の発明者らは、マガジンに保持されており、接着剤等によって互いに連結されている複数のステープルを他のステープルと分離させる際に、ステープルの先端部等が前方と平行に進行せず、内方または外方に変位してしまうことがある点に着目した。ステープルの先端部等が内方または外方に変位してしまうと、正しくステープルを意図どおりに前方に送ることができなくなってしまう。また、ステープルの脚部の先端部がすぼまってしまうために対象物を挿入することが困難となる場合もある。
【0257】
例えば第1実施形態に係る結束機10の第1移動動作において、前方X1に移動するドライバ42を用いて上端のステープルSを前方X1に押すことにより、上端のステープルSを前方X1に移動させて他のステープルSと分離させる際に、第2脚部S2の先端部S2Aが内方または外方に変位してしまうと、第2脚部S2の先端部S2Aが結束機10の部品間の隙間に挟まって正しくステープルSを送ることができなくなったり、あるいは、先端支持部68の支持壁部68A(
図20)の壁面と対向するように第1脚部S1の先端部S1Aを配置できなくなったりする、といった事態が生じ得る。
【0258】
このような課題は、非対称な形状を有するステープルにおいて生じやすい。マガジンによって保持される複数のステープルは接着剤等によって連結して一体化されているから、上端に位置するステープルを他のステープルと分離するためには、上端のステープルに力を作用させる必要がある。ここでステープルが非対称な形状を有すると、ステープルの分離に要する力も非対称なものとなる。例えばステープルSは、第1脚部S1よりも長い第2脚部S2を有するから、第1脚部S1は相対的に分離しやすく、第2脚部S2は相対的に分離しにくい。その結果ステープルSに回転モーメントが生じて先端部等が内方または外方に変位してしまう可能性がある。
【0259】
ステープルS0も、ステープルSと同様に、第1脚部S10よりも長い第2脚部S20を有するから、同様の課題を生じる可能性がある。加えてステープルS0の本体部S30は、湾曲している部分を有するから、分離時にステープルS0が湾曲部S30Aに沿う周方向に回転してしまう可能性もある。
【0260】
そこで本実施形態に係る結束機100は、上端に位置するステープルS0を他のステープルS0と分離させて、ステープルS0の開口が前となるように(ステープルS0の本体部が後となるように)、前方X1に移動可能に構成されたドライバ420と、ステープルS0の内側のガイド位置において、ステープルS0の進行方向をガイドするように設けられたガイド部とを備えている。ガイド部は、ステープルS0の移動方向を案内するための構成を備えていればよく、例えば、壁部から構成される。ガイド位置は、ステープルS0の移動方向を案内可能な位置であればよく、例えば、ステープルS0の内側(内方)においてステープルS0と近接して対向する位置でよい。このガイド部は、ステープルS0が所定距離するとステープルS0のガイド位置から退避するように構成されている。
【0261】
本実施形態に係る結束機100は、ガイド部として、ステープルS0の内側(内方)を向いた表面と対向して設けられ、かつ、ドライバ420によって前方X1に移動するステープルS0によって前方X1に押されると、上方又は下方に移動して、ガイド位置から退避可能に構成された可動壁160A、可動壁160B及び可動壁160Cとを備えている(以下、これら3つの可動壁を可動壁160と総称する)。
【0262】
このような結束機100によれば、ステープルS0の内側(内方)を向いた表面と対向して設けられる可動壁160を備えるから、ステープルS0を他のステープルS0と分離させる際に、ステープルS0の先端部S20Aまたは先端部S10Aのいずれか一方または双方が内方または外方に変位してしまうことを抑制することが可能となる。さらにこの可動壁160は、前方X1に向かう力が作用すると、上方Z1または下方Z2等に移動可能に構成されている。このため、ドライバ420によって前方X1に移動するステープルS0が可動壁160に当接すると、可動壁160は、上方Z1または下方Z2等に移動する。したがって可動壁160が設けられているために、ステープルS0が前方X1へ移動できなくなることがない。なお、可動壁160が可動してガイド位置から退避する時点までのステープルS0の前方X1への移動量(「所定距離」と呼ばれる場合がある。)は、適宜変更可能である。本実施形態における可動壁160は、後述するように、ステープルS0自身が可動壁160に接触して可動壁160を押し上げる、又は、押し下げるように構成されているため、ステープルS0の前方X1への移動開始時点の位置(マガジン140に保持されていたステープルS0の位置)と、前方X1に移動して可動壁160に接触するときの位置との間隔が所定距離に相当する。後述するように、可動壁160を設ける位置を前方X1又は後方X2に変更することにより、所定距離を変更することが可能となるから、可動壁160がガイド位置から退避するタイミングを変更することが可能となる。
【0263】
なお第1実施形態と同様に、ステープルS0で囲まれる領域(第2対象物Pが挿入される領域)からステープルS0の外側に向かう方向を外方と呼び、ステープルS0の外側からステープルS0で囲まれる領域に向かう方向を内方と呼ぶ場合がある。また、本実施形態に係る結束機100は3つの可動壁160を備えているが、本発明はこれに限られるものではない。本発明に係る結束機は、1個、2個または4個以上の可動壁を備えていてもよい。
【0264】
[結束機100の構成]
以下、本実施形態に係る結束機100の構成について結束機10と異なる点を中心に説明する。本実施形態に係る結束機100は、3つの可動壁160を備えている点が結束機10と異なるため、この点を中心に説明する。
【0265】
図28は右側面視における結束機100の断面図であり、
図29は斜め上方から見た結束機100の斜視図である(但し以下の図面において説明をわかりやすくするために、本明細書において説明されない構成(例えば
図29における結束機100の筐体)については省略されている場合がある)。
【0266】
結束機100は、結束機10と同様に、開口が形成されているステープルを用いて第1対象物Gと第2対象物Pとを結束する。ここで、第1対象物G及び第2対象物Pは、第1実施形態において説明された第1対象物G及び第2対象物Pとそれぞれ同一であるから説明を省略する。第1対象物Gは例えばガイド要素として機能する紐であり、第2対象物Pは例えば植物である。結束機100は、結束機10と同様に、ステープルS0の第1脚部S10を第1対象物Gと係合するように変位させるとともに、第2対象物Pを囲みつつ第1対象物Gと係合するように第2脚部S20を変位させる。この結果、第1対象物Gに対する第2対象物Pの移動が制限されるので、第1対象物Gと第2対象物Pとを結束することが可能となる。
【0267】
結束機100は、第1対象物Gと係合可能にステープルS0の第1脚部S10を変位させる第1変位部200(
図29)と、第1対象物Gと係合可能にステープルS0の第2脚部S20を変位させる第2変位部300とを備える。第2変位部300は、第2対象物PをステープルS0の第1脚部S10、第2脚部S20及び本体部S30で囲んだ状態で第2脚部S20の先端部S20Aが第1対象物Gと係合するように第2脚部S20を変位させる。
【0268】
より具体的には、結束機100は、グリップ120(
図28)と、上下方向に積層された複数のステープルS0を収容可能に構成されるマガジン140と、マガジン140に収容されるステープルS0を上方Z1に付勢することにより、上端S0のステープルS0が前方X1に移動した後に、残るステープルS0を上方Z1に移動させるプッシャ150(ステープルを上方に移動するための「上方移動手段」の一例)と、上端に位置するステープルS0を前方X1に押すことにより上端に位置するステープルS0を他のステープルS0と分離させて、前方X1に移動させるドライバ420(
図29)と、ドライバ420及びスライダ440を移動させるためのモータ540ならびに移動機構と、前進するスライダ440に当接して回転することによって、ステープルS0の第1脚部S10を変位させるための第1変位部200と、前進するスライダ440に当接して回転することによってステープルS0の第2脚部S20を変位させるための第2変位部300と、他のステープルS0から分離して前方X1に移動するステープルS0の移動路を提供する離脱部560とを備える。
【0269】
ここでグリップ120、プッシャ150、ドライバ420、スライダ440、ドライバ420及びスライダ440を移動させるためのモータ540ならびに移動機構、第1変位部200、第2変位部300、離脱部560を含む結束機100の各構成は、それぞれ第1実施形態に示されるグリップ12、プッシャ16、ドライバ42、スライダ44、ドライバ42及びスライダ44を移動させるための移動機構、第1変位部20、第2変位部30を含む結束機10の対応する各構成と同一乃至類似する構成から実現することが可能であることが当業者に理解されるから詳細な説明を省略する。
【0270】
[可動壁160の構成]
以下本実施形態に係る結束機100が備える可動壁160の詳細構成について説明する。
図30及び
図31は、上下方向に積層され、マガジン140に保持されている複数のステープルS0を含む領域を示す結束機100の部分拡大斜視図である。
図32は、前方X1に移動するドライバ420によって他のステープルS0から分離して前方X1に移動するステープルS0が可動壁160Aと接触している様子を示す斜視図である。
【0271】
[可動壁160Aの構成]
図30乃至
図32等に示されるように、結束機100は、ステープルS0の第2脚部S20の先端部S20Aが内方に変位することを抑制するための可動壁ユニット170Aを備える。可動壁ユニット170Aは、第2脚部S20の内方を向いた表面と対向する壁面160AWが形成された可動壁160Aと、可動壁160Aを上方Z1に移動可能に支持する支持アーム162Aと、可動壁160Aを下方Z2に付勢する弾性体164Aとを備える。
【0272】
可動壁160Aは、第2脚部S20の内側に設けられている。第2脚部S20の内側に可動壁160Aを設けることにより、第2脚部S20が内方に変位することを阻害し、前方X1に移動させることが可能となる。より具体的には、可動壁160Aは、第2脚部S20と近接して対向する壁面を備えている。内方に変位した第2脚部S20は、この壁面に接触し前方X1へ案内される。
【0273】
ここで可動壁160Aの壁面は、第2脚部S20の内側(内方)を向いた表面と対向し、かつ、前方X1と平行に延伸している表面を含んでいる。したがって可動壁160Aは、広範囲にわたって第2脚部S2の内方への変位を抑制することが可能となる。
【0274】
さらに可動壁160Aは、ステープルS0の第2脚部S20の先端部S20Aに対向して設けられている。このため、他のステープルS0から分離した際に変位しやすい先端部S20Aの内方への変位を好適に抑制することが可能となる。なお、第2脚部S20の先端部S20Aが内方に変位するとき、本体部S30を介して第2脚部S20に接続している第1脚部S10の先端部S10Aは外方に変位するから、可動壁160Aは、第1脚部S10の外方への変位を抑制しているともいえる。
【0275】
加えて可動壁160Aの後方X2を向いた面には、下方Z2を向いて傾斜している(前方X1に進行するほど下方Z2に移行する)傾斜面(後方に向けて下方に傾斜し、ステープルS0に当接する傾斜面乃至テーパ面)160AT(
図31)が形成されている。この傾斜面160ATは下方Z2を向いて傾斜しているから、前方X1へ向かう力が作用すると可動壁160Aに上方Z1に向かう力を作用させることが可能となる。このため、ステープルS0と接触することにより、可動壁160Aは上方Z1に移動して、ステープルS0の本体部S30の上に乗り上げることが可能となる。
【0276】
支持アーム162Aは、可動壁160Aと一体的に形成されており、可動壁160Aに接続して外方(右方Y1)に延伸する部分と、この部分に接続し後方X2に延伸する部分を有する。さらに支持アーム162Aは、可動壁160Aよりも後方X2の位置に設けられる回転軸160AAXを中心に回転可能(回動可能)に構成されている。この回転軸160AAXは、左右方向(右方Y1または左方Y2)に平行である。したがって支持アーム162Aが回転することにより、支持アーム162Aと一体的に形成され、回転軸160AAXよりも前方X1に位置する可動壁160Aは上方Z1に移動可能に構成される。
【0277】
弾性体164Aは、例えば圧縮ばねから構成可能であり、回転軸160AAXよりも後方X2において、支持アーム162Aを上方Z1に付勢する。したがって弾性体164Aは、回転軸160AAXを介して前方X1に位置する支持アーム162A及び可動壁160Aを下方Z2に付勢する。このような構成により、いったん上方Z1に移動した可動壁160Aは、ステープルS0が通過すると弾性体164Aにより反対方向に回転することにより、下方Z2に移動して元の位置に戻ることが可能となる。
【0278】
図31に示されるように、第2脚部S20の前方X1(可動壁160Aの前方)には、第2脚部S20の前方X1への進行を案内する固定壁166が設けられている。固定壁166は、第2脚部S20を下方Z2から支持する底面166Aと、第2脚部S20の外側(外方であり本実施形態では右方Y1)を向いた表面に対向する壁面166Bとを備えている。固定壁166は、結束機100の本体に固定されている。前方X1へ進行するステープルS0の第2脚部S20が仮に外方に変位しても、壁面166Bは、第2脚部S20の外方への変位を禁止し、第2脚部S20を前方X1へ案内する。固定壁166の壁面166B及び底面166Aには、第2脚部S20の先端部S20Aの進行方向を案内するための勾配面が設けられている。
一方で第2アーム320は、第2アーム32の曲げ戻し用の突起32C2と同様の構成を有し、下方Z2に突出して設けられた曲げ戻し用の突起(「第1脚部を曲げ戻す係合部」の一例)を備えている。
第2脚部S20の先端部S20Aは、第2アーム320の曲げ戻し用の突起と、固定壁166の壁面166Bとの間隙を通過するように前進する。第2脚部S20の先端部S20Aが第2アーム320の曲げ戻し用の突起の外側を通過することにより、第2アーム320が第2回転方向R2に回転したときに、第2アーム320の曲げ戻し用の突起が第2脚部S20に当接してこれを第2回転方向R2に変位させることが可能となる。
【0279】
図32は、前方X1に進行するステープルS0が可動壁160Aに接触したときの様子を示す斜視図である。上述したようにステープルS0は、2つの脚部である第1脚部S10及び第2脚部S20と2つの脚部を接続する本体部S30を有し、脚部が本体部S30よりも前方X1に位置するように前進する。一方で可動壁160は、第1脚部S10または第2脚部S20の内側、すなわち、第1脚部S10と第2脚部S20との間に設置される。このためステープルS0が前方X1に移動すると、必ず可動壁160と接触する。例えば可動壁160Aは、第2脚部S20の内側に設けられているから、ステープルS0が前方X1に移動すると必ず本体部S30(湾曲部S30B)と接触する。ここで可動壁160Aは、後方X2かつ下方Z2を向いて傾斜する傾斜面160ATを備えているから、ステープルS0から傾斜面160ATに前方X1に向かう力が作用すると、可動壁160Aは弾性体164Aの弾性力に抗して上方Z1に移動して、本体部S30の上に乗り上げる。したがってステープルS0は前方X1に移動することができる。
【0280】
なお可動壁160Aの前後方向の位置を調整することにより、可動壁160Aが上方に移動するタイミングを調整することが可能である。可動壁160Aを相対的に前方X1に位置させるとステープルS0が可動壁160Aと接触するタイミングが遅くなり、可動壁160Aを相対的に後方X2に位置させるとステープルS0が可動壁160Aと接触するタイミングが早くなる。本実施形態においては、可動壁160Aは、ドライバ420によって前方X1に移動するステープルS0の第2脚部S20の先端部S20Aが固定壁166の壁面166Bと第2アーム320に下方Z2に突出して設けられた曲げ戻し用の突起との間隙を通過した後に、上方Z1に移動可能に構成されている。すなわち可動壁160Aは、ステープルの少なくとも一方の脚部の先端(本実施形態においては、第2脚部S20の先端部S20A)がこの脚部を曲げ戻すための係合部(本実施形態においては、第2アーム320の曲げ戻し用の突起)を通過するまでの距離(「所定距離」の一例)をステープルS0が前方X1へ移動した後に、ガイド位置から退避するように設けられている。
このような構成により、可動壁160AによりステープルS0の変位を抑制している期間と、固定壁166によりステープルS0の変位を抑制している期間とが少なくとも一部重複することとなるから、間断なくステープルS0の変位を抑制することが可能となる。また、ステープルS0の先端部S20Aが、ステープルS0を曲げ戻すための係合部(本実施形態においては、第2アーム320の曲げ戻し用の突起)を通過した後に、可動壁160Aがガイド位置から退避するように設けられているから、ステープルS0が係合部の内側を進行した結果、曲げ戻しができなくなってしまう事態を抑制することが可能となる。
【0281】
[可動壁160Bの構成]
本実施形態に係る結束機100はさらに可動壁160Bを含む可動壁ユニット170B(
図33)を備える。可動壁ユニット170Bは、第2脚部S20の内方を向いた表面と対向する壁面が形成された可動壁160Bと、可動壁160Bを下方Z2から支持し、上方Z1に付勢する弾性体164Bとを備える。
【0282】
可動壁160Bは、前方Xに向かう力が作用すると上方Z1ではなく下方Z2に移動可能に設けられている点で、可動壁160Aと異なる。
図30に示されるように可動壁160Bは、湾曲部S30Bのうち第2脚部S20と接続する部分の内方を向いた表面と対向して設けられる壁面を有する第1壁部160B1と、第1壁部160B1より後方X2に設けられ、第2脚部S20のうち湾曲部S30Bと接続する部分の内方を向いた表面と対向して設けられる壁面を有する第2壁部160B2とを備える。可動壁160Bは、さらに離脱部560の下方Z2において、第1壁部160B1と第2壁部160B2とを接続する接続部160B3(
図33)を備えている。
図30に示されるように、第1壁部160B1と第2壁部160B2は、前方X1に延伸して設けられ、前方X1と平行で、ステープルS0の内側を向いた面と対向する壁面をそれぞれ有する。さらに第1壁部160B1と第2壁部160B2は、それぞれ、後方X2及び上方Z1を向いて傾斜する(前方X1に進行するほど上方Z1に移行する)傾斜面(後方に向けて上方に傾斜し、ステープルS0に当接する傾斜面乃至テーパ面)160BT1及び傾斜面(テーパ面)160BT2が形成されている。したがって前方X1に移動するステープルS0がこれら傾斜面160BT1及び傾斜面160BT2の少なくとも一方に接触すると、可動壁160Bには下方Z2に向かう力が作用する。
【0283】
図33は、結束機100を前後方向に平行で、湾曲部S30Bと第2脚部S20との接続部を通過する断面で切断した斜視断面図である(ただし上端のステープルS0以外のステープルS0を省略している)。同図に示されるように、可動壁ユニット170Bは、可動壁160Bの下方Z2に設けられ、可動壁160Bを下方Z2から支持するとともに上方Z1に付勢する弾性体164Bを備える。
【0284】
以上の構成を備える可動壁160Bは、マガジン140に保持されている複数のステープルS0の内側に設けられている(
図30、
図31)。このため可動壁160Bは、マガジン140の上方Z1に設けられている。すなわち待機状態の側面視において、可動壁160Bの少なくとも上端(上方Z1の端部)は、マガジン140の上端(上方Z1の端部)よりも上方Z1に位置し、かつ、同じく待機状態の平面視において、可動壁160Bの少なくとも一部乃至全部は、マガジン140によって包囲される領域内に設けられる。
【0285】
以上の構成によれば、第2脚部S20及び湾曲部S30Bの内側にそれぞれ設けられる第1壁部160B1及び第2壁部160B2により、第2脚部S20及び湾曲部S30Bの内方への変位を抑制し、前方X1への移動を案内することが可能となる。また、可動壁160Bは、第2脚部S20及び湾曲部S30Bの内側に設けられているから、ステープルS0が前方X1に移動すると必ず本体部S30と接触する。ここで可動壁160Bには、後方X2及び上方Z1を向いて傾斜する傾斜面160BT1及び傾斜面160BT2が形成されているから、ステープルS0から傾斜面160BT1または傾斜面160BT2の少なくとも一方に前方X1に向かう力が作用すると、可動壁160Bは弾性体164Bの弾性力に抗して下方Z2に移動する。したがってステープルS0は前方X1に移動することができる。
【0286】
可動壁160Bは、ステープルS0が曲げられている部分である湾曲部S30Bと第2脚部S20との接続部に対向して設けられている。このため、他のステープルS0から分離した際に変位しやすい部分の内方への変位を好適に抑制することが可能となる。
【0287】
また可動壁160B(「第1の可動壁」の一例)は、マガジン140の上方Z1に設けられており、マガジン140が設けられている下方Z2に移動可能に構成されている。したがって結束機100の高さが大きくなってしまうことを抑制することが可能となる。一方で可動壁160Bの前方に設けられる可動壁160A(「第2の可動壁」の一例)は、上方Z1に移動して、ステープルS0の本体部S30の上に乗り上げることでステープルS0を前進させる。
【0288】
[可動壁160Cの構成]
本実施形態に係る結束機100はさらに可動壁160Cを含む可動壁ユニット170Cを備える。
図34は本実施形態に係る結束機100を前後方向に平行で、本体部S30を通過する断面で切断した斜視断面図である。可動壁ユニット170Cは、第1脚部S10の内方を向いた表面と対向する壁面が形成された可動壁160Cと、可動壁160Cを下方Z2に移動可能に支持する支持アーム162Cと、可動壁160Cを上方Z1に付勢する弾性体164Cとを備える。
【0289】
可動壁160Cは、第1脚部S10の内側に設けられている。第1脚部S10の内側に可動壁160Cを設けることにより、第1脚部S10が内方に変位することを阻害し、前方X1に移動させることが可能となる。より具体的には、可動壁160Cは、第1脚部S10と近接して対向する壁面を備えている。内方に変位した第2脚部S20は、この壁面に接触し前方X1へ案内される。ここで可動壁160Cの壁面は、第1脚部S10の内側(内方)を向いた表面と対向し、かつ、前方X1と平行に延伸している。さらに可動壁160Cは、ステープルS0の第1脚部S10の屈曲部に対向して設けられている。このため、他のステープルS0から分離した際に変位しやすい部分の内方への変位を好適に抑制することが可能となる。
【0290】
可動壁160Cの後方X2を向いた面には、上方Z1を向いて傾斜している(前方X1に進行するほど上方Z1に移行する)傾斜面(テーパ面)160CTが形成されている。この傾斜面160CTは上方Z1を向いて傾斜しているから、前方X1へ向かう力が作用すると可動壁160Cに下方Z2に向かう力を作用させることが可能となる。このため、ステープルS0と接触することにより、可動壁160Cは下方Z2に移動して、ステープルS0を前方X1に進行させることが可能となる。
【0291】
支持アーム162Cは、可動壁160Cと一体的に形成されており、可動壁160Cに接続して外方(右方Y1)に延伸する部分と、この部分に接続し後方X2に延伸する部分を有する。さらに支持アーム162Cは、可動壁160Cよりも後方X2の位置に設けられる回転軸160CAXを中心に回転可能(回動可能)に構成されている。この回転軸は、左右方向(右方Y1または左方Y2)に平行である。したがって支持アーム162Cが回転することにより、支持アーム162Cと一体的に形成され、回転軸160CAXよりも前方X1に位置する可動壁160Cは下方Z2に移動可能に構成される。弾性体164Cは、回転軸160CAXよりも前方X1において、支持アーム162Cを上方Z1に付勢する。したがって弾性体164Cは、支持アーム162C及び可動壁160Cを上方Z1に付勢する。このような構成により、いったん下方Z2に移動した可動壁160Cは、ステープルS0が通過すると、弾性体164Cにより上方Z1に移動して元の位置に戻ることが可能となる。
【0292】
図35は、他のステープルS0から分離して前方X1に進行するステープルS0が可動壁160Cに接触したときの様子を示す斜視図である。上述したようにステープルS0が前方X1に移動すると、ステープルS0の第1脚部S10と第2脚部S20との間に設けられている可動壁160Cは、必ず本体部S30(湾曲部S30A)と接触する。ここで可動壁160Cは、後方X2かつ上方Z1を向いて傾斜する傾斜面160CTを備えているから、ステープルS0から傾斜面160CTに前方X1に向かう力が作用すると、可動壁160Cは弾性体164Cの弾性力に抗して下方Z2に移動して、本体部S30の下方に移動する。したがってステープルS0は前方X1に移動することができる。
【0293】
以上のとおりであるから、本実施形態に係る結束機100によれば、ステープルS0が前方X1から変位してしまうことを抑制し、ステープルS0を意図どおりに移動させることが可能となる。
【0294】
なお上述したとおり結束機100は、いずれか一つの可動壁160を備えていればよい。ただし、ステープルS0の一方の脚部である第1脚部S10に対して少なくとも一つの可動壁160を設け、他方の脚部である第2脚部S20に対して少なくとも一つの可動壁160を設けることにより、第1脚部S10及び第2脚部S20の外方への変位も、内方への変位も抑制することが可能となる。すなわち第1脚部S10が内方に変位しようとすると、可動壁160Aまたは可動壁160Bが内方への変位を抑制し、第1脚部S10が外方に変位しようとすると、第2脚部S20の内側に設けられる可動壁160Cが第2脚部S20の内方への変位を抑制するから、ひいては、第1脚部S10の外方への変位を抑制することが可能となる。
【0295】
このような可動壁160は、前方X1に移動するステープルS0が通過する領域上に設けられるから、前方X1に進行するステープルS0に確実に接触することが可能となる。特に可動壁160をマガジン140の上方に設け、前方X1に向かう力が作用すると下方Z2に移動可能に構成すると、可動壁160を設けることにより結束機100の寸法が大きくなることを抑制することが可能となる。
【0296】
なお可動壁160を複数設ける場合、ステープルS0が衝突するタイミングが異なるように各可動壁160を設けてもよい。このような構成によりモータ540の負荷変動のばらつきを小さくすることが可能となる。
【0297】
以上のとおりであるから、本実施形態に係る結束機100によれば、マガジンに保持されているステープルを他のステープルと分離させて移動させる際に、ステープルを意図どおりに移動させることが可能となる結束機及び結束方法を提供することを目的とする。
【0298】
[結束方法]
以下本実施形態に係る結束機100を用いた結束方法について説明する。ただし上述したとおり可動壁160を設けた点を除くと、結束機10と結束機100とは同一乃至類似する構成から実現することが可能であることが当業者に理解されるから詳細な説明を省略する。
【0299】
まず上下方向に積層された複数のステープルS0は、結束機100のマガジン140によって保持されている。
【0300】
次いで上端に位置するステープルS0は、下方に位置する他のステープルS0から分離して前方X1に移動する。ステープルS0を分離させて前方X1に移動させることは、例えば、第1実施形態において詳述された構成に基づいて、移動機構によって前方X1に移動するドライバ420を用いて実現することが可能である。
【0301】
その後、ステープルS0は、前方X1の所定位置に静止する。そしてステープルS0が静止した状態で使用者は、第1脚部S10の屈曲部に第1対象物G(例えばガイド要素として機能する紐)を挿入し、ステープルS0の開口内の領域に第2対象物P(例えば植物)を挿入する。
【0302】
そして結束機100は、ステープルS0の第1脚部S10及び第2脚部S20を変位させる。ステープルS0を変位させることは、例えば、
図2において模式的に示され、第1実施形態において詳述された構成に基づいて、移動機構によって前方X1に移動するスライダ440、ステープルS0の第1脚部S10を変位させるための第1変位部200及びスライダ440によってステープルS0の第2脚部S20を変位させるための変位する第2変位部300を用いて実現することが可能である。すなわち前方への移動を回転運動に変換する機構は知られているから、モータ540によって前方X1に移動するスライダ440によって第1変位部200の第1アームを押して、第1アームを回転させることが可能である。第1実施形態に示されたのと同様の構成により第1アームの回転に伴ってスライダを移動させて第1脚部S10を曲げて変位させ、第1脚部S10と第1対象物Gとを係合させることが可能となる。
【0303】
同様に前方X1に移動するスライダ440によって第2変位部300の第2アーム320(「曲げ部」の一例)を押して、第2アーム320を回転させることが可能である。第1実施形態に示されたのと同様の構成により第2アーム320の回転に伴って、支点部(第1実施形態における第2内壁部66の前端)を支点として、第2脚部S20を曲げて変位させるとともに、第2脚部S20の先端部S20Aを反対方向に曲げて、第2対象物Pを包囲しつつ先端部S20Aと第1対象物Gとを係合させることが可能となる(
図2(A)~(E))。
図2を用いて説明すると、前方X1に移動するスライダ44によって第2変位部30の第2アーム(「曲げ部」の一例)が回転するため、支点66A(「支点部」の一例)を支点として、第2脚部S2を曲げて変位させることが可能となる。ここで同図に示されるように、支点66Aは第2脚部S20の内方に位置し、第2アームは第2脚部S20の外方に位置する。
【0304】
このような構成において少なくとも一つの可動壁160は、ステープルの少なくとも一方の脚部の先端(本実施形態においては、第2内壁部66に相当する第2内壁部の前方端部)を通過するまでの距離(「所定距離」の一例)をステープルS0が前方X1へ移動した後に、ガイド位置から退避するように設けられていることが好ましい。
このような構成により、ステープルS0の先端部S20Aが、ステープルS0を曲げ戻すための第2内壁部を通過した後に、可動壁160がガイド位置から退避するように設けられているから、ステープルS0が第2内壁部に衝突してしまう事態を抑制することが可能となる。
【0305】
以上のとおりであるから本実施形態によれば、マガジンに保持されているステープルを他のステープルと分離させて移動させる際に、ステープルを意図どおりに移動させることが可能となる結束機及び結束方法を提供することを目的とする。
【0306】
特にステープルが移動方向を軸として非対称的な形状を有する場合に、ステープルを意図どおりに移動させることが可能となる。 なお本実施形態においてはステープルS0が他のステープルS0から分離して移動する方向を前方と規定したが、これに限られるものではない。例えば、ステープルが他の方向に移動する形態を備える結束機であっても、本発明を適用することが可能である。その場合、前方を所定方向とし、上下方向を所定方向と交差する方向としてもよい。
【0307】
[第3実施形態]
以下、本実施形態に係る結束機の構成について説明する。なお同一乃至類似する構成乃至機能については同一乃至類似する名称乃至符号を用いて説明を省略乃至簡略化し、異なる部分を中心に説明する。
【0308】
本実施形態に係る結束機は、ドライバと共に前方に移動する可動壁を備える。この可動壁は、前方に移動可能(可動可能)に構成されているため、前方可動壁(「第2ガイド部」の一例)と呼ばれる場合がある。前方可動壁は、ステープルの内方を向いた表面と対向して設けられる。このため前方可動壁は、ドライバによって前方に移動するステープルの内方を向いた表面と対向した状態を維持しながら、ステープルと共に前方に移動可能に構成されている。このため、前方可動壁によっても、ステープルの第1脚部又は第2脚部変位を抑制し、前方への移動を案内することが可能となる。このような前方可動壁は、ドライバに設けられてもよいし、スライダに設けられてもよい。
【0309】
本実施形態においてはスライダが前方可動壁を備える結束機の実施形態について説明する。以下本実施形態に係る結束機101について説明する。結束機101は、前方可動壁441Wが設けられたスライダ441と、前方可動壁441Wを含むスライダ441の前端部が侵入する第1内壁部641とを備えている。
図36は初期状態(待機状態)における結束機101の前端部を前方X1から見た斜視図であり、
図37は第1移動動作の完了時における結束機101の前端部を前方X1から見た斜視図である。また
図38は、第2移動動作の結束動作時における第1内壁部641の内部構成を示す斜視図である。なお説明の便宜のため、
図38において第1内壁部641の一部は、省略されている。
【0310】
スライダ441の構成について説明する。スライダ441は、第1前端部の突端部44A13に設けられた前方可動壁441Wを備えている点を除き、スライダ44(
図7Aと同様の構成を備えており、具体的には、スライダ44の第1凸部44A11及び第2凸部44A12に相当する構成を備えた第1前端部と、スライダ44の第1表面44A21、第2表面44A22及び第3表面44A23に相当する構成を備えた第2前端部とを備えている。スライダ441の第1前端部の突端部441A13は、前方X1に延伸してステープルS0の上方Z1に位置する天井壁と、ステープルS0の第1脚部S10の内方(Y1)に位置する前方可動壁441Wとを備える(
図38)。
【0311】
天井壁は、ステープルS0の第1脚部S10の上方Z1に位置するため、第1脚部S10の上方Z1を向いた表面と近接して、または、接触して対向する壁面を有している。このため天井壁は、ステープルSの第1脚部S10の上方Z1への変位を抑制する。
前方可動壁441Wは、ステープルS0の第1脚部S10の内方(Y1)に位置するため、第1脚部S10の内方(Y1)を向いた表面と近接して、または、接触して対向する壁面を有している。このため前方可動壁441Wは、ステープルSの第1脚部S10の内方(Y1)への変位を抑制する。
【0312】
図36に示されるように、結束機101は、上下方向に積層された複数のステープルS0を収容可能(保持可能)に構成されたマガジン140を備えている。初期状態(待機状態)においてスライダ441の前方可動壁441Wは、上端のステープルS0の第1脚部S10の内方(Y1)に配置されてよい。すなわち前方可動壁441Wは、第1脚部S10と第2脚部S20との間の領域に、第1脚部S10に近接して配置される。
【0313】
その後第1移動動作が始まり、他の実施形態において説明された構成と同様の構成により、ドライバ420とスライダ441とが共に前方X1への移動を開始する。前方X1に移動するドライバ420は、上端のステープルS0を前方X1に押すことにより、上端のステープルS0を他のステープルS0と分離させて前方X1に移動させる。このときドライバ420と共にスライダ441は前方X1に移動するから、前方可動壁441Wも前方X1に移動することになる。このため前方可動壁441Wは、前方X1へ移動するステープルS0の第1脚部S10の内方を向いた表面と対向した状態を維持しながら、ステープルS0と共に前方X1に移動する。したがって
図37に示されるように、第1移動動作が完了したとき、スライダ441の前方可動壁441Wは、依然としてステープルS0の第1脚部S10の内方(Y1)に配置されている。
以上のような構成によれば、マガジン140に保持されているステープルS0を他のステープルS0と分離させて移動させる際に、ステープルS0が意図しない方向に変位してしまうことを抑制することが可能となる。また、前方可動壁441WはステープルS0と共に前進するから、ステープルS0の前方X1への移動を妨げることを抑制することが可能となる。
【0314】
その後、第1対象物Gである例えば紐を第1脚部S10の屈曲部に挿入し、第2対象物Pである例えば茎をステープルS0で囲まれる領域に挿入した後に、第2移動動作を開始させる。第2移動動作においては、ドライバ420とスライダ441のうちスライダ441のみが前方X1に移動し、ステープルS0は停止する。ステープルS0を停止させた状態で前進するスライダ441の第1前端部により第1変位部200の第1アーム220を回転させることにより第1対象物Gと係合するようにステープルS0の第1脚部S10を変位させることが可能となる。一方で前進するスライダ441の第2前端部により第2変位部300の第2アーム320を回転させることにより、第2対象物Pを第1脚部S10、第2脚部S20及び本体部S30で囲んで第1対象物Gと係合するようにステープルSの第2脚部S20を変位させることが可能となる。
【0315】
[支持可動壁642Wの構成]
上述されたように、ステープルS0の第1脚部S10の先端部S10Aは、結束機101の第1変位部200によって曲げられることにより、第1脚部S10に挟まれている第1対象物Gと係合する。ここで、結束機101の第1変位部200によって先端部S10Aが曲げられる際に生じる内部応力によって、第1脚部S10の第1部S10Bが変位する可能性がある。このため結束機101は、先端部10Aが曲げられる際に内部応力が作用し、その結果変位する可能性を有する第1脚部S10の第1部S10Bを内方から支持する構成を備えることが好ましい。
【0316】
一方で本実施形態に係る結束機101は、第1移動動作及び第2移動動作において前方X1に移動する可動壁441Wを備えているから、可動壁441Wが通過する領域(すなわち第1部S10Bの内方の領域)に固定された壁部を設けることによって、第1部S10Bを内方から支持する構成を実現することは容易ではない。
そこで結束機101の第1内壁部641は、第2移動動作において前方X1に移動するスライダ441の前端に設けられた突端部441A13に押されることによって、第1移動動作において前方X1に移動したステープルS0の第1部S10Bの内方を向いた表面と対向する位置に移動可能に構成された可動壁642Wを含む支持可動壁ユニット642Uを備えている。ここで可動壁642Wは、結束時においてステープルS0を支持することから、支持可動壁642Wと呼ばれる場合がある。
【0317】
図38に示されるように、結束機101の第1内壁部641は、支持可動壁642を含む支持可動壁ユニット642Uを備えている。支持可動壁ユニット642Uは、左右方向(右方Y1または左方Y2)に平行な回転軸642AXを中心に回転可能に構成された支持可動壁642Wと、回転軸642AXよりも前方X1において、支持可動壁642Wの前端部642Fを上方Z1に付勢する弾性体642Sとを備えている。
支持可動壁642Wは、回転軸642AXよりも前方X1の部分に相当する前端部642Fと、前端部642Fと一体的に形成され、回転軸642AXよりも後方X2の部分に相当する後端部642Rとを備えている。
前端部642Fは、例えば圧縮ばねから構成される弾性体642Sによって付勢されることにより第2移動動作開始前の状態(スライダ441が前方X1に移動する前の状態)においてスライダ441の突端部441A13の前方X1に離間した位置に配置され、第2移動動作において前方X1に移動するスライダ441の突端部441A13が接触して回転軸642AXを中心に回転することにより下方Z2に移動可能に構成されている。
【0318】
後端部642Rは、第2移動動作開始前の状態(スライダ441が前方X1に移動する前の状態)においてスライダ441の突端部441A13よりも下方Z2に配置され、第2移動動作において前方X1に移動するスライダ441の突端部441A13が前端部642Fに接触して回転軸642AXを中心に回転することにより、前方可動壁441Wと同じ高さまで上方Z1に移動可能に構成されている。このとき後端部642Rは、前方可動壁441Wが通過した領域に侵入するように上方Z1に移動して、突端部441A13の後方X2であって、かつ、前方X1に移動したステープルS0の第1部S10Bの内方に相当する位置において、第1部S10Bの内方を向いた表面(第2脚部S20を向いた表面)と対向する。
この状態において、ステープルS0の第1脚部S10の先端部S10Aは、結束機101の第1変位部200によって曲げられることにより、第1脚部S10に挟まれている第1対象物Gと係合する。このとき第1部S10Bは後端部642Rによって内方から支持されるため、第1部S10Bが変位して第1対象物Gとうまく係合できない事態を抑制することが可能となる。
結束後、スライダ441は後方X2への移動を開始する。ここで前方可動壁441Wの後端には、後方X2に進行するほど上方Z1に進行するように傾斜するテーパ面が形成されている。支持可動壁642Uの後端部642Rは後方X2へ移動するスライダ441の前方可動壁441Wのテーパ面に接触して下方Z2に押し下げられ、これに伴い後端部642Rは回転軸642AXを基準として回転して上方Z1に移動するため、支持可動壁642Uは元の位置に復帰する。
【0319】
以上のとおりであるから結束機101によれば、マガジン140に保持されているステープルS0を他のステープルS0と分離させて移動させる際に、ステープルS0が意図と異なる方向に変位してしまうことを抑制することが可能となる。
【0320】
なお結束機101は、付加的に、更なる結束支持壁644と、この支持壁644を下方Z2から上方Z1に付勢する弾性体644Sとを備えてもよい(
図38)。支持壁644は、ステープルS10の内側に配置されるため、第1部S10Bの内方を向いた表面と対向する壁面を有する。このため第1部S10Bの内方への変形乃至変形を抑制することが可能となる。このように、特に変位乃至変形しやすい箇所に、複数の結束支持壁を設けることにより、結束時におけるステープルS10の変位乃至変形を抑制することが可能となる。
【0321】
さらに結束機101は、当業者に合理的に理解される範囲で変更、追加及び削除可能である。例えば結束機101は、前方可動壁441Wと可動壁160のうち、可動壁160Wを備えずに前方可動壁441Wのみを備えるように変形してもよい。
【0322】
一方で結束機101は、可動壁160を備えてもよい。例えば、結束機101は、ステープルS0の第1脚部S10の内側に前方可動壁441Wを備え、かつ、第2脚部S20の内側に可動壁160A及び可動壁160Bを備えてもよい。
また結束機101のスライダ441は、天井壁と前方可動壁441Wのうち、天井壁を備えずに前方可動壁441Wのみを備えるように変形されてもよい。
また結束機101は、複数の前方可動壁を備えるように変形されてもよい。例えば、ステープルS0の第1脚部S10の内側に第1の前方可動壁を設け、かつ、第2脚部S20の内側に第2の前方可動壁を設けてよい。
【0323】
さらに結束機101は、支持可動壁ユニット642Uを備えなくてもよい。これに替えて結束機101は、結束時において前方可動壁441Wの後端で、ステープルS0の第1部S10Bを支持可能となるように前方可動壁441を変形してもよい。
【0324】
[第4実施形態]
以下、本実施形態に係る結束機の構成について説明する。本実施形態は、特許文献3に記載されている結束機を基本構成として備える結束機に、第2実施形態として開示された可動壁を適用した例を開示する。このため特許文献3及び本出願の他の実施形態に開示された結束機の各構成と同一乃至類似する構成乃至機能を発揮する構成については、同一又は類似する名称を用いて説明を適宜省略乃至簡略化する。
【0325】
[ステープルS4の構成]
まず本実施形態に係るステープルS4の構成について説明する。ステープルS4の素材等についてはステープルS等と同様であるから説明を省略する。
【0326】
図39Aは本実施形態に係る結束前のステープルS4を示し、
図39Bは結束後の結束状態におけるステープルS4の上面視を示す。
【0327】
このステープルS4は、第1脚部S14と、第2脚部S24と、第1脚部S14と第2脚部S24とを接続する本体部S34とを含む点においてステープルS等と共通する。ステープルSと同様に、結束前の状態において、ステープルS4の第1脚部S14と第2脚部S24は離間して設けられるため、第1脚部S14と第2脚部S24との間には開口が設けられる。本実施形態においても本体部S34における閉塞している部分である本体部S34から開口に向かう方向(
図39Aにおける紙面左方向)を開口方向D1と呼ぶ。本実施形態に係る結束機104(後述)にセットされるときステープルS4の開口方向D1は、ステープルS4の移動方向である前方X1と一致する。したがって使用者は、第2対象物Pに対して相対的に結束機104を前方に移動させることにより、ステープルS4の開口からステープルS4内に第2対象物Pを挿入することができる。
【0328】
ステープルS4は、第1脚部S14と第2脚部S24とを接続し茎等の第2対象物Pを囲む本体部S34と、本体部S34の一方の端部に接続し、屈曲して外側に延びる第1部S141及び第1部S141から更に屈曲して開口方向D1に延びる第2部S142を備える第1脚部S14と、本体部S34の他方の端部に接続し、開口方向D1に延伸する第3部S243及び第3部S243の先端部から外側に曲げられる第4部S244とを備える第2脚部S24と、を備える。同図に示されるように本体部S34はC字状乃至半円の円弧状に湾曲して形成される。なお本体部S34と第2部S142とを接続する第1部S141はクランク部と呼ばれる場合があり、第4部S244はフック部乃至先端部と呼ばれる場合がある。
【0329】
後述するように第1脚部S14の先端部は、ガイド要素である第1対象物Gの周囲を螺旋状に湾曲するように曲げられることにより第1対象物Gに係合する。一方で第2脚部S24は
図39Bに示されるように、上面視において開口を閉塞するように、第1対象物Gに接近する方向に大きく曲げられることにより、第4部S244であるフック部が第1対象物Gに係合する。ここで第3部S243は、閉塞された開口を広げ元の位置に戻る方向に弾性を有するので、第4部S244は、開口を広げる方向、即ち、第1脚部S14から離れる方向に、第1対象物Gに張力を加えることが可能となる。従って、第1対象物Gが撓んでステープルS4が脱落等することを抑制することが可能になる。
【0330】
[結束機104の構成概要]
以下では、
図39Aに示されるステープルS4を
図39Bに示されるように曲げるための結束機104の構成の一例を説明する。左右反転している点(すなわち特許文献3に開示された結束機は左方Y2に第1変位部200が設けられ右方Y1に第2変位部300が設けられている一方で、本実施形態に開示される結束機104は右方Y1に第1変位部204が設けられ左方Y2に第2変位部304が設けられ、これに伴いステープルも左右反転して形成されている点)を除き、特許文献3に開示された結束機と本実施形態の結束機104の基本構成は共通するため、当業者が同文献、本願明細書の記載及び本出願当時の技術水準に基づけば実施可能な程度に適宜省略乃至簡略化して、結束機104の各構成を説明する。
【0331】
図40は結束機104の右側面図であり、
図41は結束機104の上面視における断面図である。結束機104は、開口が形成されているステープルS4を用いて第1対象物Gと第2対象物Pとを結束する。結束機104は、第1対象物Gと係合可能にステープルS4の第1脚部S14を変位させる第1変位部204と、第1対象物Gと係合可能にステープルS4の第2脚部S24を変位させる第2変位部304とを備える。第2変位部304は、第2対象物PをステープルS4の第1脚部S14、第2脚部S24及び本体部S34で囲んだ状態で第2脚部S24の先端部S244を第1対象物Gと係合させることにより、第1対象物Gと第2対象物Pとを結束可能に構成されている。
【0332】
具体的には、結束機104は、使用者によって把持されるように上下方向に延在し、結束機104を駆動するためのスイッチ124Sが設けられたグリップ124と、上下方向に積層された複数のステープルS4を保持可能に構成されるマガジン144(
図40)と、マガジン144に収容される複数のステープルS4を上方Z1に付勢するプッシャ(不図示)と、上端に位置するステープルS4を開口方向D1と一致する前方X1に押すことにより上端に位置するステープルS4を他のステープルS4と分離させて、前方X1に移動させるドライバ424(
図41)と、ドライバ424を移動させるための移動機構と、ステープルS4の第1脚部S14を湾曲又は屈曲させることにより変位させるための第1変位部204(同図。クリンチャ部と呼ばれる場合がある。)と、ステープルS4の第2脚部S24を湾曲又は屈曲させることにより変位させるための第2変位部304(同図)とを備える。
【0333】
[ドライバ及びドライバの移動機構]
同文献に記載されているように、結束機104は、内蔵するモータ544で、結束機104の略中心を前後方向に延伸して設置されるボールねじ504を順方向または逆方向に回転させることにより、ナット部品524及びこれに固定されるドライバ424を前方または後方に移動可能に構成されている。ナット部品524及びドライバ424は、前方X1及び後方X2に移動可能に構成されているため、移動部と呼ばれる場合がある。なお結束機104は、モータ544の出力軸に接続される減速機554と、モータ544の制御装置に相当するCPUが搭載されているプリント配線基板をさらに備えている。
【0334】
ドライバ424は、前方X1に移動することにより、マガジン144に保持され上下方向に積層されている複数のステープルS4のうち上端のステープルS4を、ステープルS4の開口が前、本体部S34が後となる前後関係を維持した状態で、他のステープルS4と分離させて前方X1に移動可能に構成されている。ドライバ424は、分離されたステープルS4を更に前方X1に移動させて第1脚部S14を第1変位部204(後述)に当接させることにより第1脚部S14を塑性変形させ、第2脚部S24を第2変位部304(後述)が含む第1ガイド壁304W1及び第2ガイド壁304W2(
図43A等)に当接させることにより第2脚部S24を塑性変形させるように構成されている。
【0335】
[第1変位部]
第1変位部204(「変位部」の一例)は、ドライバ424によって前方X1に移動するステープルS4の第1脚部S10を第1対象物Gと係合可能に変位させる機能を有する。ただしドライバ424によって前方X1に移動するステープルS4を変位させるための構成は、結束対象物等に応じて種々変形可能であり、他の実施形態に係る第1変位部や、他の知られた構成を備えるように変形されてもよい。
【0336】
同文献を含む本出願当時の技術水準に基づけば当業者であれば容易に実施可能であるため詳細な説明を省略するが、本実施形態に係る第1変位部204は、ドライバ424によって前進するにつれてステープルS4の第1脚部S14の第2部S142先端が挿入されることにより、第1脚部S14の先端部を円弧状又は螺旋状に湾曲させながら下方Z2に進行させる円筒状の内壁面が形成された孔部と、第1脚部S14の先端部を孔部に誘導する溝部を含む(例えば同文献の孔部210と、溝部211に相当する)。孔部は第1脚部S14の前方X1に設けられているため、ステープルS4の前進によって第2部S142の先端を孔部214の内壁面に当接させ、内壁面の形状に従って第2部S142の先端が螺旋状に進行するように第2部S142を変位させることが可能となる。
【0337】
このような構成によれば、ガイド要素となる第1対象物G(
図44等)である例えばガイド紐を孔部の中心軸に沿って配置させた状態で第1脚部S14の第2部S142の先端を孔部214に挿入させることにより、第2部S142の先端が第1対象物Gを囲むように螺旋状に進行させることが可能となるので、第1脚部S14を第1対象物Gに係合させることができる。なお孔部には第1対象物Gが挿入されるので、孔部は第1挿入部と呼ばれる場合がある。第1対象物Gと第1脚部S14との係合を強めるために、孔部の内壁面の内径は、ステープルS4の線径の2倍と第1対象物Gの外径の合計値未満であることが好ましい。このように内径を設定することにより、第1対象物G又はステープルS4の一部が押しつぶされるため、ステープルS4と第1対象物Gとの係合を強めることが可能となる。
【0338】
[第2変位部]
第2変位部304(「変位部」の一例。
図43A等)は、ドライバ424によって前方X1に移動するステープルS4の第2脚部S24を第1対象物Gと係合可能に変位させる機能を有する。同文献を含む本出願当時の技術水準に基づけば当業者であれば容易に実施可能であるため詳細な説明を省略するが、本実施形態に係る第2変位部304は、ドライバ424が前方X1に移動するにつれて、第2脚部S24をステープルS4の内方に変位可能に構成されている。具体的には第2変位部304は、ステープルS4の変位開始前の初期状態において第2脚部S24の外側に設けられ、開口方向D1(前方X1と一致するため、開口方向D1は前方X1と呼ばれてもよい。以下同じ)に移動するステープルS4の第2脚部S24が当接することにより第2脚部S24を湾曲させるための第1ガイド壁304W1を有する。この第1ガイド壁304W1は、ステープルS4の外方(左方Y2)に向かって窪む凹部を有する。
【0339】
さらに第2変位部304は、ステープルS4の変位開始前の初期状態において第2脚部S24の前方X1に設けられ、開口方向D1に移動するステープルS4の第2脚部S24が当接することにより第2脚部S24を湾曲させる第2ガイド壁304W2を含んでいる。この第2ガイド壁304W2は、後方X2を向いた壁面を有し、さらに後方X2に突出する凸部304Pを有している。この凸部304Pは、初期状態において、前後方向において第2脚部S24の前方に設けられ、左右方向において第2脚部S24の内方に設けられ、右方Y1(内方)に進むほど、後方X2への突出量が大きくなるように、第2ガイド壁304W2の内方端部に設けられている。
【0340】
以上のとおりであるから、第1変位部204及び第2変位部304は、ステープルS4の開口に第2対象物Pが挿入された状態で、ドライバ424によって前方X1に移動するステープルS4の第1脚部S14及び第2脚部S24を変位させて第1対象物Gと係合させることにより、第2対象物Pを結束可能に構成されている。
【0341】
[ガイド部]
ステープルS4は、ステープルS等と同様に先端部等が前方と平行に進行せず、内方または外方に変位してしまう可能性がある、という課題を有する。特にステープルS4は、ステープルS等と同様に非対称な形状を有する結果ステープルの分離に要する力も非対称なものとなるため、先端部等が内方または外方に変位してしまう可能性を有する。
【0342】
そこで本実施形態に係る結束機104は、上端に位置するステープルS4を他のステープルS4と分離させて、ステープルS4の開口が前となるように(ステープルS4の本体部S34が後となるように)、前方X1に移動可能に構成されたドライバ424と、ステープルS4の内側のガイド位置において、ステープルS4の進行方向をガイドするように設けられたガイド部とを備えている。ガイド部は、ステープルS4の移動方向を案内するための構成を備えていればよく、例えば、壁部から構成される。ガイド位置は、ステープルS4の移動方向を案内可能な位置であればよく、例えば、ステープルS4の内側(内方)においてステープルS4と近接して対向する位置でよい。このガイド部は、ステープルS4が所定距離前方X1に移動するとステープルS4のガイド位置から退避するように構成されている。
【0343】
本実施形態に係る結束機104は、ガイド部として、ステープルS4の内側(内方)を向いた表面と対向して設けられ、かつ、ドライバ424によって前方X1に移動するステープルS4によって前方X1に押されると下方に移動して、ガイド位置から退避可能に構成された可動壁161A、可動壁161B及び可動壁161Cとを備えている(以下、これら3つの可動壁を可動壁161と総称する)。これら3つの可動壁161は、第2実施形態において開示された可動壁160と同様に構成されてよいため適宜詳細な説明を省略するが、いずれも前方にステープルS4が通過する領域に設けられ、かつ、前方X1に向かう力が作用すると下方Z2等に移動可能(退避可能)に構成されている。このような構成により、ステープルS4の前方X1への移動を妨げることなく、ステープルS4の前方X1への移動を案内することが可能となる。
【0344】
なお可動壁161は、可動壁160Aと同様に、上方Z1に移動して退避するように構成されてもよい。また可動壁161は、ステープルS4の前方への移動に伴ってステープルS4が通過する領域から退避するように構成されていればよく、必ずしもステープルS4と当接することにより退避するように構成される必要はない。例えば可動壁161は、前方X1に移動するドライバ424(ドライバ424と一体化されている部品を含む)と当接することにより上方Z1または下方Z2に移動可能に構成されてもよい。
【0345】
なお、ステープルS4が移動を開始してから、可動壁161が可動してガイド位置から退避する時点までのステープルS4の前方X1への移動量(「所定距離」と呼ばれる場合がある。)は、ステープルS4の形状等に応じて、適宜変更可能である。
【0346】
図42A及び
図42Bは、結束機104の前端部をそれぞれ上方左側及び上方右側から見た斜視図である。
図42Aに示されるように可動壁161Aは、第1脚部S14の先端部(前端部と呼ばれる場合がある。)の内側(「ガイド位置」の一例)に設けられている。第1脚部S14の内側に可動壁161Aを設けることにより、第1脚部S14が内方に変位することを阻害し、前方X1に案内することが可能となる。
【0347】
具体的には可動壁161Aは、第1脚部S14の内側(内方)を向いた表面と近接して対向し、前方X1と平行に延伸している壁面(表面)を備えているから、内方に変位した(または内方に変位しようとする)第1脚部S14をこの壁面に接触させることにより前方X1へ案内することが可能となる。
【0348】
さらに可動壁161Aは、後方X2及び上方Z1を向いて傾斜する(前方X1に進行するほど上方Z1に移行する)傾斜面(後方に向けて上方に傾斜し、ステープルS4に当接する傾斜面乃至テーパ面)161A1を有している。この傾斜面161A1は、第1部S141が通過する領域に設けられている。したがって前方X1に移動するステープルS4の第1部S141がこの傾斜面161A1に接触すると、可動壁161Aには下方Z2に向かう力が作用する。このため可動壁161Aは下方に移動可能に構成される。
なお可動壁161Aは下方に設けられるばね等の付勢部材によって、上方Z1に付勢された状態で支持されてもよい。
【0349】
さらに同図に示されるように可動壁161Bは、第1脚部S14のクランク部、すなわち、第1部S141の前方であって第2部S142の内側(「ガイド位置」の一例)に設けられている。クランク部に可動壁161Bを設けることにより、クランク部の第2部S142が内方に変位することを阻害し、前方X1に案内することが可能となる。
具体的には可動壁161Bは、第1脚部S14の第2部S142の内側(内方)を向いた表面と近接して対向し、前方X1と平行に延伸している壁面(表面)と、後方X2及び上方Z1を向いて傾斜する(前方X1に進行するほど上方Z1に移行する)傾斜面(後方に向けて上方に傾斜し、ステープルS4に当接する傾斜面乃至テーパ面)161B1を有している。したがって前方X1に移動するステープルS4の第1部S141が接触することにより、可動壁161Bは下方に移動可能に構成されている。可動壁161Bも、可動壁161Aと同様に下方に設けられる付勢部材によって上方Z1に付勢されるように支持されてよい。
【0350】
なお可動壁161Bは、第1部S141のすぐ前方のガイド位置に設けられているから、可動壁161Bがガイド位置から退避するまでのステープルS4の前方X1への移動量(「所定距離」の一例)、すなわちステープルS4の第1部S141と傾斜面161B1との前後方向の距離は、相対的に小さい。一方で可動壁161Aは、第1部S141の先端近傍のガイド位置に設けられているから、可動壁161Aがガイド位置から退避するまでのステープルS4の前方X1への移動量(「所定距離」の一例)、すなわち、ステープルS4の第1部S141と傾斜面161B1との前後方向の距離は、相対的に大きい。
【0351】
このような構成により、可動壁161Bは、マガジン144によって保持されていた上端のステープルS4が他のステープルS4から分離した直後にステープルS4のクランク部が変位してしまうことを効果的に抑制することが可能となる。一方で可動壁161Aは、第1部S141が傾斜面161A1に到達して当接するまでの相対的に長期間にわたり、前後方向に長く延伸するステープルS4の第2部S142が変位してしまうことを効果的に抑制することが可能となる。
【0352】
図42Bに示されるように可動壁161Cは、第2脚部S24の第3部S243先端部の内側(「ガイド位置」の一例)に設けられている。第2脚部S24の内側に可動壁161Cを設けることにより、第2脚部S24が内方に変位することを阻害し、前方X1に案内することが可能となる。可動壁161Cは、第2脚部S24の第3部S243先端の内側(内方)を向いた表面と近接して対向し、前方X1と平行に延伸している壁面(表面)と、後方X2及び上方Z1を向いて傾斜する(前方X1に進行するほど上方Z1に移行する)傾斜面(後方に向けて上方に傾斜し、ステープルS4に当接する傾斜面乃至テーパ面)161C1を有している。したがって前方X1に移動するステープルS4の本体部S34が接触することにより、可動壁161Cは下方に移動可能に構成されている。可動壁161Cも、可動壁161Aと同様に下方に設けられる付勢部材によって上方Z1に付勢されるように支持されてよい。
【0353】
ここで本実施形態の可動壁161は、第1脚部S14の内側をガイドするガイド部(可動壁161A及び可動壁161B)及び第2脚部S24の内側をガイドするガイド部(可動壁161C)の双方を備える。ここで第1脚部S14が外方に変位しようとするとき第2脚部S24は内方に変位し、第2脚部S24が外方に変位しようとするとき第1脚部S14は内方に変位するから、第1脚部S14の内側及び第2脚部S24の内側のそれぞれにガイド部を設けることにより、結束機104は、実質的にはステープルS4の外方への変位を抑制することも可能に構成されている。
【0354】
また、3つの可動壁161A乃至可動壁161Cは、退避するタイミングがそれぞれ異なるように設けられてよい。例えば、可動壁161B、可動壁161A、可動壁161Cの順番で各可動壁はそれぞれ異なるタイミングで退避するように構成されてもよい。このように退避するタイミングを異ならせることによって、可動壁161からステープルS4に作用する上方Z1に向かう反力を分散させることが可能となる。
【0355】
[結束方法]
以下、結束機104を用いた結束方法について説明する。なお孔部内に挿入される第1対象物G及び第1変位部204と第2変位部304との間に設けられる凹部(「第2挿入部」と呼ばれる場合がある。)内に挿入される第2対象物Pは説明の便宜のため図から省略されている。また説明の便宜上一部構成が図から省略される場合がある。例えば
図43A等において、第2変位部304等の上方に設けられたカバー等は省略されている。
【0356】
図43A乃至43Fは、結束機104を用いてステープルS4を第1対象物Gに係合させるプロセスを示す上面視における断面図である。
図43Aは、ステープルS4の変位開始前(移動開始前)の初期状態における結束機104の前端部の平面図である。同図において複数のステープルS4は前後方向において同じ位置に上下方向に積層されている。この状態からドライバ424が前方へ移動を開始することによりドライバ424によって前方に押されるステープルS4は前方X1への移動を開始する。このとき可動壁161A乃至可動壁161Cは、それぞれステープルS4の第1脚部S14又は第2脚部S24の内側に位置することにより、ステープルS4が意図しない方向へ変位してしまうことを抑制し、前方X1へ移動するようにガイドする。なおドライバ424は、ステープルS4の本体部S34の上方を覆うように設けられた屋根部を備えているため、同図において本体部S34の一部はドライバ424の屋根部によって覆われている。
【0357】
図43Bは、上端のステープルS4の変位開始後の状態における結束機104の前端部の平面図である。同図に示されるように、上端のステープルS4は、下方のステープルS4から分離して前方X1に移動している。この時点において既に可動壁161Bは、ステープルS4の第1部S141が傾斜面161B1に当接したことにより、下方に退避している。一方で可動壁161A及び可動壁161Cは、それぞれステープルS4の第1脚部S14及び第2脚部S24の内方のガイド位置に位置することにより、第1脚部S14及び第2脚部S24を前方に案内する。同図及び
図43Cに示されるように、第2脚部S24の前方X1には第2ガイド壁304W2が設けられていることからさらにドライバ424が前進すると、第2脚部S24のフック部S244が第2ガイド壁304W2の後方X2を向いた壁面304WSに当接し、壁面304WSに沿って変形しながら進行する。壁面304WSは後方X2を向いて概ね左右方向に平行に形成されている部分を有するため、フック部S244は前方X1に進行することができず、したがって前方X1に移動しようとする第3部S243は外方に膨らむように湾曲する。ここで第1ガイド壁304W1は、第2脚部S24の外方(右方Y1)に設けられ、かつ、ステープルS4の内方を向いて外方(右方Y1)に窪むように形成された凹面を有するので、第3部S243はこの凹部の凹面に少なくとも一部が当接するように外方に膨らんで湾曲することとなる。
【0358】
図43C及び
図43Dに示されるように第2ガイド壁304W2は、内方(左方Y2)に進行するほど後方X2への突出量を大きくする凸部304Pを含んでいるためフック部S244は、凸部304Pに当接しながら後方X2に進行するように誘導される。フック部S244が第2ガイド壁304W2を乗り越えるとき、第2脚部S24の弾性によりフック部S244は前方X1に進行し、今度は、第2脚部S24の第3部S243が凸部304Pに当接する。以上のようなプロセスにより第2脚部S2は、概ね、紙面反時計回りに湾曲して、上面視において第1脚部S1に接近する方向に曲げられる。
【0359】
フック部S244が第2ガイド壁304W2を乗り越えた後に、第1脚部S14の先端は、第1変位部204の孔部への進入を開始する。ステープルS4は可撓性及び可塑性を有するため、ステープルS4が開口方向D1に移動すると第1脚部S14の先端は螺旋を描いて湾曲しながら孔部の内壁に沿って進行する。従って、螺旋の軸上に第1対象物Gを配置した状態でステープルS4を前方に移動させることにより、第1対象物Gを軸として第1対象物Gの外周を囲む螺旋状に、ステープルS4の第1脚部S14の先端部を第1対象物Gに係合させることが可能となる。
【0360】
更にドライバ424がステープルS4を前進させると、フック部S244は、第2変位部304に、上方Z1及び後方X2を向いて傾斜する傾斜面に当接して上方Z1に移動する。
図43Eに示されるようにその後フック部S244は、上面視において第1対象物Gと第2対象物Pとの間の領域を通過して、第1脚部S14と交差する位置まで進行する。フック部S244を含む第2脚部S24は、上方に移動するように形成された傾斜面に当接することにより上方Z1に移動しているため、第1脚部S14と干渉しない。
【0361】
図43Fは、ドライバ424が後退中の状態を示している。ドライバ424の後退に伴ってステープルS4の第2脚部S24は復元するように弾性力を発揮するため、第2脚部S24は、紙面時計回りの方向に変位し第1対象物Gに接近して第1対象物Gに係合する。なお、第1ガイド壁304W1も、フック部S244の上方Z1への移動を促進するように、第2脚部S24が当接する面に、上方を向いた傾斜面を形成してもよい。
【0362】
以上のような結束方法により第2対象物Pを第1脚部S14、第2脚部S24及び本体部S34で囲んで結束するように、第1対象物Gに第1脚部S14と第2脚部S24を係合させることが可能となる。ここでガイド部である可動壁161を備えることにより結束機104は、ステープルS4の前方X1への移動を妨げることなく、ステープルS4の前方X1への移動を案内することが可能である。
図44は、ステープルS4が第1対象物Gに係合している様子を示す後方斜視図である(ただし図において、ステープルS4に囲まれる位置に配置される第2対象物Pは省略されている。)。
【0363】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。たとえば、当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実施形態における一部の構成要素に、他の知られた構成を追加することができる。例えば結束機は、第1実施形態の第1変位部と第4実施形態の第2変位部を備えてもよいし、別の結束機は、第4実施形態の第1変位部と第1実施形態の第2変位部を備えてもよい。また、ある実施形態における一部の構成要素を、他の知られた構成要素と置換することができる。当業者の通常の創作能力の発揮により本出願に開示された各構成要素を他の知られた構成要素と合理的に組み合わせること、又は、置換することが可能である。
【0364】
本出願に係る発明は、上記した実施の形態を含む発明の他、以下の付記として記載される結束機又は結束方法として実施することが可能である。
【0365】
即ち本出願は、以下に示される結束機を更に開示する。当業者によって理解されるように、以下に示される結束機において、上記実施形態に記載された各構成を採用することが可能である。
(付記1)
他のステープルと連結されているステープルを分離させて、所定方向に移動可能に構成されたドライバと、
前記ドライバによって移動する前記ステープルが通過する領域に設けられ、前記所定方向と交差する方向に移動可能に構成された可動壁と、
前記可動壁が移動した後に、前記ステープルを変位させることにより第1対象物と第2対象物とを結束可能に構成された変位部と、
を備える結束機。
【0366】
(付記2)
ガイド要素と植物とを結束するための結束機であって、
上端に位置するステープルを他のステープルと分離させて、前方に移動可能に構成されたドライバと、
前記ステープルの内方を向いた表面と対向して設けられ、かつ、前記ドライバによって前方に移動する前記ステープルによって移動可能に構成された可動壁と、
分離した前記ステープルを変位させることにより前記ガイド要素と前記植物とを結束可能に構成された変位部と、
を備える結束機。
【0367】
(付記3)
第1脚部と第2脚部とを有し、前記第1脚部と前記第2脚部の間が開口したステープルを保持するマガジンと、
前記マガジンに保持された前記ステープルを、前記開口を前にして前方に移動させるドライバと、
前記ドライバとともに前方に移動し、前記第1脚部または前記第2脚部のうち、少なくとも一方の脚部の内側をガイドするガイド部と、
前記ドライバによって移動させられた前記ステープルの前記第1脚部または前記第2脚部のうち、少なくとも一方の脚部を変位させることにより、前記開口に挿入された結束対象物を結束する変位部と
を備える結束機。
【符号の説明】
【0368】
10、100、104 結束機
12、120、124 グリップ
14、140、144 マガジン
16、150 プッシャ
18 分離ブロック
20、200、204 第1変位部
22 第1アーム
22AX 第1アームの回転軸
22C 凸部
24 当接部材(爪部材)
24A 凹部
24B 当接面
24C 角部
30、300、304 第2変位部
32 第2アーム
32AX 第2アームの回転軸
32B 後端部
32B1 第1後端面
32B2 第2後端面
32C 先端部
32C1 本体部
32C2 突起
42、420、424 ドライバ
42S 前端面
42B 突端部
42C ドライバ凸部
42G1 第1溝
42G2 第2溝
42G3 第3溝
44、440、441 スライダ
44A1 第1前端部
44A11 第1凸部
44A12 第2凸部
44A13 突端部
44A2 第2前端部
44A21 第1表面
44A22 第2表面
44A23 第3表面
44B 固定部
46 ベース
46A1 第1突起
46A2 第2突起
46A3 第3突起
48 切替ブロック
48C1 第1爪部
48C2 第2爪部
48C3 第3爪部
50、504 ボールねじ
50AX 中心軸
52、524 ナット部品
52A 保持部
54、540、544 モータ
62 第1外壁部
62A 第1領域
62B 第2領域
64 第1内壁部
66 第2内壁部
66A 支点(支点部)
68 先端支持部
68A 支持壁部
160A、160B、160C 可動壁
160AT、160BT1、160BT2、160CT 傾斜面
160B1 第1壁部
160B2 第2壁部
162A、162C 支持アーム
164A、164B、164C 弾性体
230 ガイド保持機構
642W 支持可動壁
S、S0 ステープル
S1、S10 第1脚部
S1A、S10A 先端部
S1B 第1部
α1 屈曲角
DS1 第1距離
S2、S20 第2脚部
S2A、S20A 先端部
DS2 第2距離
S3、S30 本体部
G 第1対象物
P 第2対象物
PL 平面
X1 前方
X2 後方
Y1 右方
Y2 左方
Z1 上方
Z2 下方
D1 開口方向
R1 第1回転方向
R2 第2回転方向