(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100696
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】育毛組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20240719BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240719BHJP
A61K 35/19 20150101ALI20240719BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240719BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240719BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20240719BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20240719BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P17/14
A61K35/19
A61P43/00 121
A61K8/49
A61K8/98
A61Q7/00
A61K47/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023203004
(22)【出願日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2023003940
(32)【優先日】2023-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】513066111
【氏名又は名称】株式会社細胞応用技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】522431807
【氏名又は名称】医療法人社団優恵会
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】藤田 千春
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 嘉恵
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB16
4C076BB31
4C076CC18
4C076EE39E
4C076FF15
4C083AA071
4C083AA072
4C083AC542
4C083AC642
4C083AC851
4C083AC852
4C083CC37
4C083DD23
4C083EE22
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZA92
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB38
4C087MA16
4C087MA63
4C087MA66
4C087NA05
4C087ZA92
4C087ZC75
(57)【要約】
【課題】ミノキシジルに多血小板血漿などの血小板由来組成物を含有させることで、血小板に含まれる硫酸基転移酵素の働きでミノキシジルを活性化させると共に血小板由来のサイトカインによる育毛組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】育毛又は発毛化合物を含有する育毛組成物であって、特にミノキシジルと、該ミノキシジルに対する重量比が等量以下である血小板由来組成物とを含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミノキシジルに対する血小板由来組成物の重量比が等量以下となるようにミノキシジル及び血小板由来組成物を含む組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、
ミノキシジルが包摂化合物である組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組成物において、
発毛、育毛、又は薄毛、男性型脱毛症若しくは女性男性型脱毛症の治療に使用される組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育毛剤として用いられるミノキシジルと血小板由来組成物を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
薄毛の治療に用いられるミノキシジルは、化学名を6-(1-ピペリジニル)-2,4-ピリミジンジアミン-3-オキサイドと称し、外用薬として塗布することにより、毛母細胞が刺激されることで血流が改善し、発毛、育毛効果が期待されている(下記特許文献1)。さらに、ミノキシジルの効果をさらに向上させる試みがなされている(下記特許文献2)。また、薄毛の治療において、血小板由来組成物である多血小板血漿(「PRP」)の利用が期待されている(下記特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6628059号公報
【特許文献2】特開2019-137626号公報
【特許文献3】特許第6999927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ミノキシジルはプロドラッグであり、生体内で硫酸基が付与されないと効果を示す活性化体に変換できないために効果には限界があり、ミノキシジルの育毛、発毛効果を高めることが求められている。
【0005】
そこで本発明は、ミノキシジルに多血小板血漿などの血小板由来組成物を含有させることで、血小板由来の硫酸基転移酵素がミノキシジルを活性化させると共に血小板由来のサイトカインによる育毛又は発毛効果を持つ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、ミノキシジルに対する血小板由来組成物の重量比が等量以下となるようにミノキシジル及び血小板由来組成物を含む組成物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の構成により、ミノキシジル及び血小板由来組成物を含むことで、ミノキシジルを活性化させると共に血小板由来のサイトカインによる育毛又は発毛効果を持つ組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る育毛組成物の一実施形態について説明する。
【0010】
本発明の一実施形態に係る育毛組成物は、ミノキシジルに対する血小板由来組成物の重量比が等量以下となるようにミノキシジル及び血小板由来組成物を含む。
【0011】
ミノキシジルは市販されており、例えば、東京化成工業社から購入できる。ミノキシジルの物性は、THE MERCK INDEX 第13版によると、融点248℃、プロピレングリコールへの溶解性75mg/ml、エタノールへの溶解性29mg/ml、2-プロパノールへの溶解性6.7mg/ml、水への溶解性2.2mg/ml(但し、グリセリン、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等への溶解性は記載されていない)、の性質を有する固体である。すなわち、ミノキシジルは、エタノールに29mg/ml程度の溶解性を有し、水にはわずかに溶ける程度である。
【0012】
ミノキシジルは、上記の通り、水にはわずかに溶ける程度であるため、包摂化合物を用いても良い。ミノキシジルをαシクロデキストリン、βシクロデキストリン、γシクロデキストリンなどを用いて包摂錯体を形成させると、水への溶解度を50mg/mL程度まで飛躍的に向上することが可能である。
【0013】
包摂化合物とは、分子化合物の一種で、一方の分子種が籠状、トンネル状あるいは層状の分子規模の空間をつくり、そこへ形状と寸法が適合する他方の分子種が包摂されて生成する化合物のことをいう。クラスレイト化合物clathrate compoundともいう。
【0014】
血小板は、血液に含まれる細胞成分の一種である。血小板は、組織の再生を促す種々の成分が含まれていることから、骨、血管、皮膚などの再生促進機能を有することが知られている。血液中の血小板を高濃度に集めたものを多血小板血漿といい、各種の再生医療に用いられている。また、集めた血小板を破壊し、血小板が持つ成長因子だけ集めて治療に用いる方法も再生医療として用いられている。この血小板にはミノキシジルに硫酸基を付与し活性化体に変換できる硫酸基転移酵素を多量に含む。
【0015】
血液中の血小板を集める方法や血小板の成長因子だけを集める方法は、いくつかの方法が報告されており、その方法は限定されない。どのような方法、状態であっても血小板を用いていれば血小板由来組成物とする。例えば、ACD溶液入り真空採血管を用いて採血を行い、転倒混和後、室温下200Gで15分間の遠心分離を行い、遠心分離で得られた上清を滅菌チューブ1本に集め混和した後、室温下1200Gで15分間遠心分離を行うことで、血小板由来組成物を得ることができる。
【0016】
ミノキシジルは、液体、固体、粉末などの形状で販売されている。液体のミノキシジルと血小板由来組成物を混合する場合は、血小板由来組成物を粉末、液体又はゲル状として混合すれば良い。固体又は粉末のミノキシジルと血小板由来組成物を混合する場合は、血小板由来組成物を液体、ゲル状として混合すれば良い。
【0017】
本実施形態に係る育毛組成物は、ミノキシジル及び血小板由来組成物を含むことで、ミノキシジルを活性化させると共に血小板由来のサイトカインによる育毛又は発毛効果を奏する。従って、特に発毛、育毛、又は薄毛、男性型脱毛症若しくは女性男性型脱毛症の治療に有用である。
【0018】
ミノキシジル及び血小板由来組成物の投与量は、患者の病態によって異なるが、0.01~1mL/cm2であることが好ましく、0.1~0.5mL/cm2であることがより好ましい。
【0019】
ミノキシジル及び血小板由来組成物の使用方法は、患者の病態によって異なるが、1回あたり適量(例えば、約0.5~2ml、好ましくは1~2ml)を皮膚(例えば、頭皮)に適用すればよい。また、ミノキシジルの1日使用量が、例えば約10~150mgとなるように組成物を皮膚(例えば、頭皮)に適用すればよい。投与方法は、剤型に合わせて、塗布、噴霧、注射による皮下又は皮内投与等とすればよい。適用期間は、例えば30日間以上、好ましくは180日間以上とすれば良い。また、効果が十分に得られるまで適用すればよく、例えば30日以上、好ましくは180日以上とすれば良い。適用期間中の適用回数は、1回でもよいし、複数回でもよい。複数回適用する場合の、投与間隔は、7日以上あければ良く、好ましくは21日以上、さらに好ましくは30日以上とすれば良い。複数回適用する場合、次までの投与間隔にミノキシジルのみを投与しても良い。本発明の組成物はまた、毛髪や、頭皮、皮膚に加齢による変化が観察される前に、観察されたときに、または観察された後に適用してもよい。本発明の組成物はまた、本組成物の適用による治療後の対象において、毛髪や、頭皮、皮膚に加齢による変化が観察される前に、観察されたときに、または観察された後に適用を再開してもよい。
【0020】
本実施形態の組成物は、医薬外用剤、医薬部外品、化粧品用の薬学的又は生理学的に許容される添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、酸化防止剤、界面活性剤、増粘剤、保存剤、pH調整剤、安定化剤、刺激軽減剤、防腐剤、着色剤、香料、溶解補助剤等が挙げられる。添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0021】
本実施形態の組成物は、水、及びエタノールの他にも、本発明の効果を損なわない範囲で、医薬外用剤、医薬部外品、化粧品用の薬学的又は生理学的に許容される基剤又は担体を含むことができる。基剤又は担体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0022】
本実施形態の組成物のpHは、約6.6以上であり、約6.7以上が好ましく、約6.8以上がより好ましい。この範囲にpHを調整するために、pH調整剤を用いて行えば良い。pH調整剤は、有機酸又は無機酸でも良く、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0023】
本実施形態の外用組成物を充填する容器は特に限定されない。医薬品外用剤、医薬部外品、化粧品用の容器として用いられるものであれば良く、注射しやすいようにシリンジに組成物が充填されているプレフィルでも良い。
【実施例0024】
以下、本発明について実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
被験者1
被験者1として60歳代の女性から採血を行い、血小板由来組成物を製造した。製造した血小板由来組成物1ccとminox2%(MesoMedica)0.5cc、キシロカイン注射液「1%」エピレナミン(1:100,000)含有(サンドファーマ)0.5cc、生理食塩水(扶桑薬品工業)2ccを混合した。当該被験者1に対して、3~4週間に1回の割合で5回、上記のように作製したミノキシジル及び血小板由来組成物の注入を通常の方法で注射によって行った。5回投与終了時、白髪の減少、ヘアカラーの持ちが良くなった、生え際・頭頂部に産毛が生えきたと効果を実感した。なお、被験者1の患者の施術前(投与前)及び施術後(5回投与終了後)の写真を
図1に示す。
【0026】
被験者2
被験者2として50歳代の男性から採血を行い、血小板由来組成物を製造した。製造した血小板由来組成物1ccとminox2%(MesoMedica)0.5cc、キシロカイン注射液「1%」エピレナミン(1:100,000)含有(サンドファーマ)0.5cc、生理食塩水(扶桑薬品工業)2ccを混合した。当該被験者2に対して、3~4週間に1回の割合で5回、上記のように作製したミノキシジル及び血小板由来組成物の注入を通常の方法で注射によって行った。5回投与終了時、発毛の実感はないが、薄毛の予防効果を実感した。なお、被験者2の患者の施術前(投与前)及び施術後(5回投与終了後)の写真を
図2に示す。
【0027】
被験者3
被験者3として50歳代の男性に対して、3~4週間に1回の割合で3回、ミノキシジル及び血小板由来組成物(10mgミノキシジルと10倍濃縮PRP原液1mLを含む注射液)の注入を通常の方法で注射によって行った。3回投与終了時、生え際・頭頂部に毛髪径(毛幹の太さ)の太い発毛を認め、1毛包からの毛髪の発生本数の増加をきたしたと効果を実感した。なお、被験者3の患者の施術前(投与前)及び施術後(3回投与終了後)の写真を
図3に示す。
【0028】
被験者4
被験者4として50歳代の男性に対して、3~4週間に1回の割合で3回、ミノキシジル及び血小板由来組成物(10mgミノキシジルと10倍濃縮PRP原液1mLを含む注射液)の注入を通常の方法で注射によって行った。3回投与終了時、完全な禿髪部位への発毛の実感はないが、薄毛部位の毛髪径(毛幹の太さ)の向上、1毛包からの毛髪の発生本数の増加を実感した。なお、被験者4の患者の施術前(投与前)及び施術後(3回投与終了後)の写真を
図4に示す。
【0029】
まとめ
各患者の個人差があるものの、ミノキシジル及び血小板由来組成物を含む組成物を用いた毛髪再生の効果、及び患者の満足度を、以下の表1のようにまとめることができる。なお、再生性能の効果については医師が判断を行い、「1」は発毛効果が非常に低い又は満足度が非常に低い、「2」は発毛効果が低い又は満足度が低い、「3」は普通、「4」は発毛効果が高い又は満足度が高い、「5」は発毛効果が非常に高い又は満足度が非常に高いを意味する。
【0030】
【0031】
すなわち、ミノキシジル及び血小板由来組成物を含む組成物を含む製剤を用いた結果、投与部位において血小板に含まれる硫酸基転移酵素によりミノキシジルに硫酸基が付与され、それが活性化体として毛包に働き、毛髪再生が可能になった。このため、高い毛髪再生効果が得られ、患者の満足度も十分得ることができた。