(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100725
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】発光素子及びこれを含む車両用ランプ
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20240719BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20240719BHJP
C09K 11/00 20060101ALI20240719BHJP
C09K 11/88 20060101ALI20240719BHJP
C09K 11/56 20060101ALI20240719BHJP
F21W 103/15 20180101ALN20240719BHJP
F21W 103/35 20180101ALN20240719BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20240719BHJP
F21W 103/45 20180101ALN20240719BHJP
F21W 103/40 20180101ALN20240719BHJP
【FI】
H01L33/50
F21S43/14
C09K11/00 A
C09K11/88
C09K11/56
F21W103:15
F21W103:35
F21W103:20
F21W103:45
F21W103:40
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024002631
(22)【出願日】2024-01-11
(31)【優先権主張番号】10-2023-0005134
(32)【優先日】2023-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】514311645
【氏名又は名称】東義大学校 産学協力団
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【弁理士】
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 香子
(72)【発明者】
【氏名】キム スンフン
【テーマコード(参考)】
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
4H001CA01
4H001CA02
4H001XA16
4H001XA30
4H001XA34
4H001XA48
4H001XB20
4H001XB30
4H001XB40
4H001XB50
4H001XB60
5F142DA14
5F142DA55
5F142DA62
5F142DB37
5F142GA01
5F142GA28
5F142HA01
5F142HA05
(57)【要約】
【課題】発光素子及びこれを含む車両用ランプを提供すること。
【解決手段】本発明は、発光素子及びこれを含む車両用ランプに関するものであって、LED素子に量子ドット薄膜フィルムが形成されることによって、前記量子ドット薄膜フィルムは、LED素子の光を完全吸収することができ、光漏れ現象及び色純度低下の問題を防止することができる。
また、量子ドット薄膜フィルムを形成するために、別途のホストマトリックス(Host matrix)を含まず、量子ドットを蒸着することによって、薄い厚さ範囲で量子ドット薄膜フィルムを形成することができ、柔軟性に優れ、発光モジュールの形状によって多様なデザインの量子ドット薄膜フィルムを形成することができる。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子の上部に配置され、量子ドット薄膜フィルムと、を含み、
前記量子ドット薄膜フィルムは、厚さが0.5μm以上である、
発光素子。
【請求項2】
前記量子ドットは、2-6族量子ドット、3-5族量子ドット、4-6族量子ドット、4族量子ドット、1-3-6族量子ドット及びこれらの混合からなる群より選択される、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記発光素子は、LED素子である、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
前記量子ドット薄膜フィルムは、ホストマトリックスを含まず、
量子ドットまたは散乱粒子が内蔵した(Embeded)量子ドットをエアロゾル化して高速噴射によって発光素子の上部に蒸着して形成される、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発光素子を含む、
車両用ランプ。
【請求項6】
前記車両用ランプは、車両用リアコンビネーションランプ(rear combination lamp)である、
請求項5に記載の車両用ランプ。
【請求項7】
発光素子の上部にエアロゾル蒸着方法によって量子ドットまたは散乱粒子が内蔵した(Embeded)量子ドットを蒸着して量子ドット薄膜フィルムを形成するステップを含み、
前記量子ドット薄膜フィルムは、厚さが0.5μm以上である、
発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子及びこれを含む車両用ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両のリアコンビネーションランプ(rear combination lamp)は、車両の後方部に取り付けられたランプ類を総称するものであり、後進ギアーを入れる際に点くバックランプ、ブレーキペダルを踏む際に点くブレーキランプ、方向指示ランプなどで構成されている。
【0003】
最近には、寿命が長く光効率が高いLED(Light Emitting Diode)を光源として用いるリアコンビネーションランプの使用が徐々に増加している傾向にあり、従来のリアコンビネーションランプの光源モジュールは、LED光源、前記LED光源への電流供給を制御するPCB基板、前記LED光源から出た光をアウットレンズの方へ反射させるための反射板、前記反射板の前方に設けられ、LED光源の光を拡散させる光拡散レンズを含む。
【0004】
ところで、前記のような従来の光源モジュールは、LED光源の前方に反射板が設けられた構成であり、LED光源とアウットレンズとを含む光学系全体のサイズが大きくなり、これによりデザイン自由度が低く重量が重く、原価が上昇するというデメリットがある。
【0005】
従来の光源モジュールは、LED光源から出た光を点、線、面のような単純な発光イメージに変換して照射する方式であり、視認性が低いというデメリットがあり、視認性を改善するためには、LED光源の個数を増加させる必要があるので、このような場合、原価が大きく上昇するというデメリットがある。
【0006】
前記のような問題を解消することができる自動車両用ランプの開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許10-2016-0132175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、発光素子及びこれを含む車両用ランプを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、LED素子に量子ドット薄膜フィルムが形成されることによって、前記量子ドット薄膜フィルムは、LED素子の光を完全吸収することができ、光漏れ現象及び色純度低下の問題を防止することができる発光素子を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、量子ドット薄膜フィルムを形成するために、別途のホストマトリックス(Host matrix)を含まず、量子ドットを蒸着することによって、薄い厚さ範囲で量子ドット薄膜フィルムを形成することができ、柔軟性に優れ、発光モジュールの形状によって多様なデザインの量子ドット薄膜フィルムを形成することができる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を果たすために、本発明の一実施例に係る発光素子は、発光素子と、前記発光素子の上部に配置され、量子ドット薄膜フィルムと、を含み、前記量子ドット薄膜フィルムは、厚さが0.5μm以上であってもよい。
【0012】
前記量子ドットは、2-6族量子ドット、3-5族量子ドット、4-6族量子ドット、4族量子ドット、1-3-6族量子ドット及びこれらの混合からなる群より選択されてもよい。
【0013】
前記発光素子は、LED素子であってもよい。
【0014】
前記量子ドット薄膜フィルムは、ホストマトリックスを含まず、量子ドットまたは散乱粒子が内蔵した(Embeded)量子ドットをエアロゾル化して高速噴射によって発光素子の上部に蒸着して形成されてもよい。
【0015】
本発明の他の一実施例に係る車両用ランプは、前記発光素子を含んでもよい。
【0016】
前記車両用ランプは、車両用リアコンビネーションランプ(rear combination lamp)であってもよい。
【0017】
本発明の他の一実施例に係る発光素子の製造方法は、発光素子の上部にエアロゾル蒸着方法によって量子ドットまたは散乱粒子が内蔵した(Embeded)量子ドットを蒸着して量子ドット薄膜フィルムを形成するステップを含み、前記量子ドット薄膜フィルムは、厚さが0.5μm以上であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、LED素子に量子ドット薄膜フィルムが形成されることによって、前記量子ドット薄膜フィルムは、LED素子の光を完全吸収することができ、光漏れ現象及び色純度低下の問題を防止することができる。
【0019】
また、量子ドット薄膜フィルムを形成するために、別途のホストマトリックス(Host matrix)を含まず、量子ドットを蒸着することによって、薄い厚さ範囲で量子ドット薄膜フィルムを形成することができ、柔軟性に優れ、発光モジュールの形状によって多様なデザインの量子ドット薄膜フィルムを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る量子ドット薄膜フィルムの断面に対するSEM写真である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る量子ドット薄膜フィルムに対するEDS元素分析結果である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る量子ドット薄膜フィルムの断面に対するSEM写真である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る量子ドット薄膜フィルムに対するEDS元素分析結果である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係る量子ドット薄膜フィルムの断面に対するSEM写真である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係る量子ドット薄膜フィルムに対するEDS元素分析結果である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施例に係る量子ドット薄膜フィルムの断面に対するSEM写真である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施例に係る量子ドット薄膜フィルムに対するEDS元素分析結果である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施例に係るLED素子に対するブルー光の漏れ現象の有無に対する実験結果である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施例に係る量子ドット薄膜フィルムが形成されたLED素子の発光スペクトラム測定結果である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施例に係る量子ドット薄膜フィルムが形成されたLED素子の色座標分析結果である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施例に係る量子ドット薄膜フィルムが形成されたLED素子に対する写真である。
【
図13】
図13は、本発明の一実施例に係る量子ドット薄膜フィルムが形成されたLED素子での色座標を確認した結果である。
【
図14】
図14は、本発明の一実施例に係る量子ドット薄膜フィルムが形成されたLED素子での色座標変化率に対する結果である。
【
図15】
図15は、本発明の一実施例に係る散乱粒子が内蔵した量子ドットを含む量子ドット薄膜フィルムに対するSEM断面写真である。
【
図16】
図16は、本発明の一実施例に係る散乱粒子が内蔵した量子ドットを含む量子ドット薄膜フィルムが形成されたLED素子の発光スペクトラム測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有した者が容易に実施するように本発明の実施例について詳しく説明する。しかし、本発明は、色々な異なる形態で具現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0022】
量子ドットは、普通大きさが3~15nm程度の半導体物質からなる半導体ナノ結晶または半導体ナノ粒子で量子閉じ込め効果(quantum confinement effect)を示す粒子を、特に量子ドットという。前記量子ドットは、高い光効率と狭い半値幅(FWHM:full width half maximum)の光学的特性を有する物質であり、既存の半導体バルク状態で現れかった新しい物理的光学的特性が示される。
【0023】
このような新しい特性のため、量子ドットは、既存の蛍光体と異なり、バンドギャップ以上の広い領域帯で波長を吸収して青色波長帯だけでなく、紫外線領域帯で発光体として用いることができる。また、量子ドットは、同じ元素構成成分からなっており、粒子の大きさと模様を制御することによって、多様な波長帯の発光を容易に調節することができるというメリットがある。
【0024】
量子ドットは、コア/シェル構造で構成されており、前記コアは、光学的特性を決定し、シェルはコアを保護する保護層の役目を果たして量子ドットの安全性に影響を及ぼし、またコアとシェルとの界面特性によって発光効率に大きな影響を受ける。
【0025】
量子ドットは、エネルギーバンドギャップで電子とホールとの再結合過程で光学的特性を示す。この過程で、エネルギーが高い短波長帯の光が入射し、電子を励起させて発光させることを光発光(PL:photo luminescence)という。
【0026】
このような光発光特性を用いて、光変換(光制御)を用いたディスプレー用光学フィルムまたはカラーフィルターに適用することができる。
【0027】
前記のように量子ドットを光学フィルムまたはカラーフィルターに適用するためには、量子ドットが凝集されることを防止し、均一に分散させるためにホストマトリックスを含んでいる。
【0028】
前記ホストマトリックスは、透明なレジンであり、一般的にシリコーン、アクリレートなどの疎水性素材を用いている。
【0029】
前記のようにカラーフィルターの適用される場合は、LED発光素子の光を完全に吸収(遮断)することが不可能であり、光漏れ現象が発生し、色純度が低下するという問題が発生し得る。
【0030】
前記のような問題を解消するためには、カラーフィルター内の量子ドットの含有量を増加させる必要があるが、このような場合、カラーフィルターの製作のための費用が増加するという問題があり、量子ドットの含有量の増大は、これを分散させるためのホストマトリックスの含有量も増加することになって、製造されたカラーフィルターの厚さも増加することになる。
【0031】
前記のようにカラーフィルターの厚さが増加すると、前記厚さが厚くなったカラーフィルターが適用された発光素子を適用したランプは、形象の変形の面で、自由度の低くなるという問題がある。
【0032】
そのため、本発明では、発光素子と、前記発光素子の上部に配置され、量子ドット薄膜フィルムと、を含み、前記量子ドット薄膜フィルムは、厚さが0.5μm以上であることを特徴とする。
【0033】
前記量子ドット薄膜フィルムは、厚さが0.5μm以上であり、1μm以上であり、2μm以上であり、好ましくは2.5μm以上であってもよい。た、0.5μm乃至200μmであり、1μm乃至200μmであり、2μm乃至200μmであり、2.5μm乃至200μmであってもよい。
【0034】
前記量子ドット薄膜フィルムの厚さは、光漏れ現象を遮断し、完全波長変換が可能な最小厚さ範囲を限定するためのものである。そのため、前記のように最小厚さが2.5μm以上に量子ドット薄膜フィルムを形成する場合には、発光素子による光漏れ現象を遮断することができ、完全な光吸収が可能で、完全波長の変換が可能であることを特徴とする。
【0035】
後述するように、前記量子ドット薄膜フィルムを形成するとき、量子ドットだけエアロゾル化して蒸着する場合は、最小フィルムの厚さが4.7μmである場合に光が完全に遮断され、完全波長変換が可能であるが、酸化粒子が内蔵した量子ドットをエアロゾル化して蒸着する場合は、最小フィルムの厚さが2.5μm以上または3μm以上で光が完全に遮断され、完全波長変換が可能である。
【0036】
前記のように量子ドット薄膜フィルムは、既存のカラーフィルターを取り替えて用いてもよいものであり、最小厚さ範囲内で優れた光遮断及び完全波長変換により色純度に優れたことを特徴とする。
【0037】
また、前記本発明の発光素子は、量子ドットを用いた赤色発光素子であり、後述するように、ホストマトリックスを別途に含まず、発光素子の上部に直接蒸着される方式で量子ドット薄膜フィルムを形成することを特徴とする。
【0038】
前記量子ドットは、2-6族量子ドット、3-5族量子ドット、4-6族量子ドット、4族量子ドット、1-3-6族量子ドット及びこれらの混合からなる群より選択されてもよい。
【0039】
前記量子ドットは、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTeなどの2-6族量子ドット、InP、InAsなどの3-5族量子ドット、PbS、PbSe、PbTeなどの4-6族量子ドット、Ge、Siなどの4族量子ドット、Cu1-XInXS1-ySey(0<x及びy<1)などの1-3-6族量子ドットまたはこれらの組合を含んでもよいが、必ずこれに限定されるものではない。
【0040】
前記量子ドットは、コア-シェル構造を有してもよく、このとき、前記コアは、前記2-6族量子ドット、3-5族量子ドット、4-6族量子ドット、4族量子ドット、1-3-6族量子ドットまたはこれらの組合などからなってもよく、前記シェルは、単一シェル、二重シェルまたは三重シェルであってもよい。
【0041】
最近、世界的に環境への関心が大きく増加し、有毒性物質に対する規制が強化しているので、カドミウム系コアを有する量子ドットの代わりに、環境にやさしい非カドミウム系量子ドット(InP/ZnS、InP/ZeSe/ZnSなど)を用いてもよく、例えば、前記環境にやさしい非カドミウム系量子ドットがコア-シェル構造を有するとき、前記コアとして前記3-5族量子ドットを用いてもよいが、必ずこれに限定されるものではない。
【0042】
例えば、前記量子ドットは、ペロブスカイト結晶構造を有してもよい。
【0043】
例えば、前記量子ドットは、ペロブスカイト結晶構造を有する金属ハライド系量子ドットであってもよい。この場合、前記ペロブスカイト結晶構造を有する量子ドットは、前記金属ハライド元素によってバンドギャップを調節することができる。前記量子ドットのバンドギャップエネルギーは、1eV乃至5eVであってもよい。
【0044】
例えば、前記ペロブスカイト結晶構造を有する金属ハライド系量子ドットは、下記の化学式1で表されてもよいが、必ずこれに限定されるものではない。
【0045】
[化学式1]
ABX3
前記化学式1において、
Aは、有機陽イオンまたは無機陽イオンであり、
Bは、金属陽イオンであり、
Xは、ハライド陰イオンである。
【0046】
例えば、前記化学式1は、CsPbX´3(X´は、Cl、Br及び/またはI)で表されてもよい。
【0047】
例えば、前記ペロブスカイト結晶構造を有する金属ハライド系量子ドットは、9nm乃至15nmの平均粒径を有する赤色量子ドットであってもよく、このとき、前記赤色量子ドットは、CsPb(BrI)3で表されてもよい。
【0048】
例えば、前記ペロブスカイト結晶構造を有する金属ハライド系量子ドットの大きさは1nm乃至900nmであってもよい。仮に、前記ペロブスカイト結晶構造を有する金属ハライド系量子ドットの大きさを900nm超過に形成する場合、大きいナノ結晶中で熱的イオン化及び電荷運搬体の非偏在化によってエキシトンが発光まで行かずに、自由電荷に分離され消滅されるという根本的な問題がある。
【0049】
前記量子ドット薄膜フィルムは、前述したように、ホストマトリックスを含まず、量子ドットまたは散乱粒子が内蔵した(Embeded)量子ドットをエアロゾル化して高速噴射によって発光素子の上部に蒸着して形成されてもよい。
【0050】
前記散乱粒子は、Al2O3、SiO2、ZnO、ZrO2、BaTiO3、TiO2、Ta2O5、Ti3O5、ITO、IZO、ATO、ZnO-Al、Nb2O3、SnO、MgO及びこれらの組合からなる群より選択される1以上を含んでもよい。
【0051】
前記発光素子はLED素子であり、好ましい一実施例として、LED面発光バックライトであってもよいが、前記例示に限定されず、LED光源は制限されることなくいずれも使用可能である。
【0052】
本発明の他の一実施例に係る車両用ランプは、前記発光素子を含んでもよい。前記車両用ランプは、車両用リアコンビネーションランプ(rear combination lamp)であってもよいが、前記例示に限定されず、車両用ランプにはいずれも使用が可能である。
【0053】
「リアコンビネーションランプ(RCL・rear combination lamp)」は、自動車の後方部に適用したランプを総称する。赤・百・黄色の点灯・点滅など灯火信号を通じて、車両の位置と停止状態、始動状態、車線変更などを示す。「コンビネーションランプ」とも呼ばれる。
【0054】
前記リアコンビネーションランプは、車幅灯、停止灯、方向指示灯、後進灯が一体式で構成されたものが一般的である。光源、レンズ、反射鏡など各種光学系がベゼルに取り付けられ、別途の制御装置が自動車両の運行状態と運転手意志によって灯火信号を統制する。国家別規格やデザインによってフォグランプが追加されてもよい。
【0055】
前記リアコンビネーションランプの光源は、ハロゲン光源が主流となってきた。最近には、燃費効率がハロゲンに対して5倍以上高く、オン・オフ動作が早いLED(発光ダイオード)光源の使用が拡がっている。自動車が100km/hで走るとき、前の車両の停止信号が0.1秒だけ早くても、27mの安全距離を確保するだけにランプの点灯速度は安全において重要である。
【0056】
リアコンビネーションランプは、車両のスタイリングにも欠かせない要素である。ただ、従来のリアコンビネーションランプは、反射体、ライトガイド、ライトカーテンと反射面の質感パターンなど多様な装置が用いられており、カラーフィルターが適用されたLED光源を用いる場合、形象の変更が容易ではない。そのため、本発明では、前記のようにカラーフィルターを要しない発光素子を提供するものであって、本発明の発光素子が適用されたリアコンビネーションランプの場合、LED面発光バックライトの形象を自由に変形することができる点で、多様な形象に変形が可能であり、デザイン自由度が高いリアコンビネーションランプの開発を可能とする。
【0057】
すなわち、本発明の発光素子は、前述したように、LED光源の上部に量子ドットまたは散乱粒子が内蔵した(Embeded)量子ドットをエアロゾル化して高速噴射によって蒸着して量子ドット薄膜フィルムを形成したことを特徴とする。前記量子ドット薄膜フィルムは、光源の形象または材質に制限されず、薄膜フィルムに形成することができる。
【0058】
従来の前記量子ドット薄膜フィルムの「柔軟性」の意味は、前記薄膜フィルムを形成し、前記薄膜フィルム自体が柔軟であるか否かを意味すると言えるが、本発明の量子ドット薄膜フィルムは、光源の上部形状に沿って蒸着して形成されるものであるので、柔軟性の意味が異なる。
【0059】
すなわち、本発明の量子ドット薄膜フィルムは、光源の上部にフィルムの形態で蒸着されることを意味するものであるので、多様な形象の光源が存在しても、前記光源の上部に量子ドットまたは散乱粒子が内蔵した量子ドットが蒸着して緻密な膜を形成することができる。
【0060】
本発明の他の一実施例に係る発光素子の製造方法は、発光素子の上部にエアロゾル蒸着方法によって量子ドットまたは散乱粒子が内蔵した(Embeded)量子ドットを蒸着して量子ドット薄膜フィルムを形成するステップを含み、前記量子ドット薄膜フィルムは、厚さが0.5μm以上であってもよい。
【0061】
前記発光素子、量子ドット及び散乱粒子が内蔵した量子ドットに関する説明は、前述したものと同一であるので、具体的な説明は略するようにする。
【0062】
前記エアロゾル化は、真空条件で実施されてもよい。
【0063】
前記散乱粒子が内蔵した量子ドットは、量子ドットの前駆体物質と散乱粒子粉末を溶媒内で混合した後、前記散乱粒子粉末の表面上でナノ結晶を成長させ、これを粉砕することによって製造されてもよい。これと異なる実施例として、前記既に合成された量子ドットと散乱粒子粉末とを溶媒内で混合した後、前記溶媒を蒸発させてナノ結晶を前記散乱粒子粉末の表面に吸着または結合させ、これを粉砕することによって製造されてもよい。
【0064】
このとき、前記量子ドットの前駆体物質または前記量子ドットと混合する前記散乱粒子粉末は、前記量子ドットより大きい大きさを有してもよい。例えば、前記散乱粒子粉末は、約300nm以上2000nm以下の大きさを有してもよい。一方、前記量子ドットと前記準金属原素酸化物粉末とを混合するにおいて、前記量子ドットは、前記散乱粒子粉末100重量部に対して約0.5重量部乃至20重量部で混合されてもよい。
【0065】
前記散乱粒子が内蔵した量子ドットは、エアロゾル化してコーティングする工程は、エアロゾル蒸着装置を用いて行われてもよい。
【0066】
前記エアロゾル蒸着装置は、エアロゾルチャンバ、蒸着真空チャンバ(Deposition Vacuum chamber)、キャリアガス(Carrier gas)供給手段、真空ポンプ及びノズル(Nozzle)を含んでもよい。前記エアロゾルチャンバには、前記量子ドット及び散乱粒子粉末が収容されてもよく、前記蒸着チャンバにはLED光源、例えば、LED面発光バックライト基板が配置されてもよい。前記キャリアガス供給手段は、前記エアロゾルチャンバにキャリアガスを供給することができ、前記真空ポンプは、前記蒸着チャンバを真空状態に作ることができる。前記ノズルは、前記蒸着チャンバ内で前記基板と一定の間隔離隔するように配置され、連結管を通じて前記エアロゾルチャンバと連結されてもよい。一方、前記エアロゾルチャンバは、前記ノズルが前記複合体粉末を均一なエアロゾル形態で噴射できるように、振動装置(Vibrator)を備えてもよい。
【0067】
前記エアロゾル蒸着工程は、前記エアロゾルチャンバ内に前記量子ドット及び/または散乱粒子粉末を収容させ、前記蒸着チャンバ内にLED光源を配置させた状態で、前記キャリアガス供給手段を通じて前記エアロゾルチャンバにキャリアガスを収入すると、真空状態の蒸着チャンバと前記エアロゾルチャンバとの間の圧力差によって前記量子ドット及び/または散乱粒子粉末がエアロゾル形態で前記ノズルを通じて前記LED光源に噴射され、前記LED光源上に前記散乱粒子が内蔵した量子ドットからなる薄膜を形成することができる。
【0068】
前記エアロゾル蒸着工程のキャリアガスとして、窒素(N2)が用いられてもよい。前記エアロゾル蒸着工程のキャリアガスとして窒素(N2)を用いる場合、窒素は、放電プラズマを形成しないため、量子ドット及び/または散乱粒子粉末の損傷問題を解決することができる。
【0069】
前記エアロゾル蒸着工程の場合、適用された粉末粒子の大きさが約1μm水準の大きさを有する粒子が高速噴射する形態であるので、キャリアガスの種類、粒子模様、キャリアガス流速条件、ノズルデザインなど多様な要素によって劣化現象が誘発されることもあるが、本発明で用いる量子ドットは、その大きさが非常に小さいため(1nm乃至15nm)量子ドットが損傷されるほどのkinetic energyが高くなく、そのため、前記劣化現象は見られず、むしろ、高速噴射方式を用いてかなり緻密な成膜を形成するによって成膜の内部のピンホール、欠点などを解消することができ、成膜厚さを大きく減らすことができるというメリットがある。
【0070】
一方、本発明の実施例に係るエアロゾル化した散乱粒子が内蔵した量子ドットのエアロゾルガス流量を制御し、0.1L/min乃至10L/min、0.1L/min乃至1.0L/min、0.1L/min乃至0.5L/min、0.2L/min乃至0.4L/minであってもよい。前記のようにエアロゾル流量を前記のように制御する場合、量子ドット及び/または散乱粒子粉末に印加される衝撃量を充分に減少させることができるので、発光強度が低くならず、製造される薄膜の機械的特性または光学的特性を低下させない。特に、前記エアロゾルガス流量を前記のように制御することによって、光学的特性の中で輝度特性を大きく改善させることができる。また、エアロゾル時にガス流量を前記のように調節すると、非常に薄い線幅を具現することができるので、マスクなしにパターン工程が可能なメリットも有することができる。
【0071】
製造例1
量子ドットを含む量子ドット薄膜フィルム(RQD層)が形成された発光素子の製造
機械式回転ポンプを用いて、チャンバでほとんど真空状態を作り、CdSeS/CdS/ZnS alloy core/shell赤色量子ドットを100ml当たり24mgの濃度でヘプタン(heptane)に分散した後、エアロゾルチャンバに配置した。前記量子ドットの蒸着は、超音波噴霧器(1.8MHz)と1L/minの速度で注入されたN2キャリアガスを用いて、red QD(RQD)溶液のエアロゾル化した液滴を生成することによって始めた。前記生成されたRQDエアロゾルは、キャリアガスの流れ下でエアロゾルと蒸着チャンバとの間の圧力差によってオリフィスノズル(直径1mm)を早く通過するようにした。前記エアロゾルをノズルから5mm離れたブルーLED基板に早く噴射した。そして、ブルーLED基板に付着した基板ホルダーは、5mm/sのスキャン速度でXY平面に沿って自動に移動するようにした。その結果、RQDがブルーLED基板上に稠密な状態で蒸着され、RQD層を形成した。
【0072】
製造例2
散乱粒子が内蔵した量子ドットを含む量子ドット薄膜フィルムが形成された発光素子の製造
RQDとSiO2との混合物を含むシステムの場合、二つの構成要素が後続の空洞蒸着のために各エアロゾルチャンバからノズルに収束されるようにした。RQD及びSiO2の供給量を制御するために質量流量コントローラーを調整してN2キャリアガスを用いて、エアロゾルガスの流量を0.3L/minに制御し、超音波で生成されたRQDエアロゾルはキャリアガスの流れ下で、エアロゾルと蒸着チャンバとの間の圧力差によってオリフィスノズル(直径1mm)を早く通過するようにした。このエアロゾルをノズルから5mm離れたブルーLED基板に早く噴射した。そして、ブルーLED基板に付着した基板ホルダーは、5mm/sのスキャン速度でXY平面に沿って自動に移動するようにした。その結果、RQD-SiO2がブルーLED基板上に稠密な状態で蒸着され、RQD-SiO2層を形成した。
【0073】
実験例1
蒸着厚さによるSEM断面イメージ及びEDS元素分析結果
前記製造例1で形成されたRQD層は、RQD濃度とスキャン回数とを調整して膜厚さを変更した。RQD層の厚さを0.81μm、2.0μm、3.8μm及び4.7μmで形成し、断面に対するSEM写真を測定した後、EDS元素分析を行った。
【0074】
【0075】
図1は、RQD層の厚さが0.81μmであるRQD層に対する断面であり、
図2は、EDS元素分析結果である。
図3は、RQD層の厚さが2.0μmであるRQD層に対する断面であり、
図4は、EDS元素分析結果である。
図5は、RQD層の厚さが3.8μmであるRQD層に対する断面であり、
図6は、EDS元素分析結果である。
図7は、RQD層の厚さが4.7μmであるRQD層に対する断面であり、
図8は、EDS元素分析結果である。
【0076】
前記実験結果によると、RQD層が均一に蒸着されており、量子ドットの元素がいずれも蒸着されていることを確認することができる。
【0077】
実験例2
光性能評価結果
前記実験例1のRQD層が形成されたブルーLED基板に対する光性能評価を行った。具体的に、下方変換(down-conversion)による蛍光特性を分析するために、Xenonランプを光源とする蛍光光度計(SHIMADZU、RF-5301PC)を用いて、励起及び発光スペクトルを測定した。
【0078】
【0079】
図9は、目視でブルー光の漏れ現象が現れたか否かを確認したもので、厚さが0.8μmである場合は、ブルー光が完全に遮断されないことが目視で確認され、他の場合は、目視で大きい差が確認されなかった。
【0080】
ただ、
図10で、下方変換による蛍光特性を分析して発光スペクトルを確認した結果によると、4.7μm未満の厚さを有する場合には、450nmの波長でピークが現れる点で、ブルー光が確認された。
【0081】
結果的に、4.7μm以上である厚さを有する場合にのみ完全なブルー光の遮断が可能であることを確認した。
【0082】
実験例3
色座標変化及び光効率評価
完全なブルー光の遮断の有無を確認するために色座標変化を確認した。製造例1のようにLED素子を製造し、ブルーLED素子として、2.3W級のHigh power Blue LEDにも同一のブルー光遮断の効果が奏されるか否かを確認した。
【0083】
前記色座標を求める方法は、K SA 0061に従った。また、光効率を評価するために、消費電力、光束及び光効率を測定した。
【0084】
実験結果は、
図11及び表1の通りである。
【表1】
【0085】
前記No.1は薄膜フィルムの厚さが0.8μmであり、前記No.2は薄膜フィルムの厚さが2.0μmであり、前記No.3は薄膜フィルムの厚さが3.8μmであり、前記No.4は薄膜フィルムの厚さが4.7μmである。
【0086】
前記実験結果によると、フィルムの厚さが4.7μmである場合、完全なブルー光遮断効果を奏することができ(
図12参照)、高純度のRedカラーの色座標(Cx:0.6753、Cy:0.3222)を提示した。このとき、光効率は26.4lm/W水準を示した。
【0087】
前記No.4に対して色座標の均一度を評価した結果は、
図13、
図14及び表2の通りである。
【0088】
図13は、薄膜フィルムを形成した後、特定のポイント(1乃至9)で色座標を確認したものであり、
図14は、ブルーLED基板の一部に薄膜フィルムを形成した後、色座標変化率を確認したものである。
【0089】
【0090】
前記実験結果によると、Cx(min)は0.677であり、Cy(min)は0.319であり、Cx(max)は0.680であり、Cy(max)は0.322であり、ΔCxは0.003であり、Δcyは0.003である。
【0091】
前記実験結果は、色座標変化率が非常に小さいことを意味するものであり、前記製造例によって薄膜フィルムを形成する場合、蒸着厚さが非常に均一に形成され、蒸着面全体に対して、均一な発光色を示すことを意味するものと言える。
【0092】
実験例4
散乱粒子が内蔵した量子ドットを含む量子ドット薄膜フィルムに対するSEM断面イメージ及び光性能評価結果
製造例2で製造された散乱粒子が内蔵した量子ドットを含む量子ドット薄膜フィルムに対してSEM断面を測定した。
【0093】
図15によると、散乱粒子及び量子ドットが均一に分布しており、厚さが3μmであることを確認することができる。
【0094】
前記厚さが3μmである量子ドット薄膜フィルムに対し、下方変換による蛍光特性を分析した結果は、
図16の通りである。
【0095】
図16によると、450nmの波長でピークが現れないため、完全なブルー光遮断効果が奏されることを確認した。
【0096】
前述の実験例2と比較して、散乱粒子が内蔵した量子ドットを含む量子ドット薄膜フィルムの場合は、厚さを3μmに下げた場合にも、完全なブルー光の遮断が現れる点で、散乱粒子を含むか否かによって、完全波長変換が可能な薄膜フィルムの厚さが変わることを確認した。
【0097】
以上で本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、以下の請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の色々な変形及び改良形態も、本発明の権利範囲に属するものである。