(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100734
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】光信号復調装置と光信号復調方法
(51)【国際特許分類】
H04L 27/38 20060101AFI20240719BHJP
H04B 10/61 20130101ALI20240719BHJP
【FI】
H04L27/38
H04B10/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003029
(22)【出願日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2023003440
(32)【優先日】2023-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載年月日:2023年11月15日 掲載アドレス:https://ieeexplore.ieee.org/document/10319062
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、グリーン社会に資する先端光伝送技術の研究開発の委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】今宿 亙
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA10
5K102AA52
5K102AH11
5K102AH27
5K102PH31
5K102RD26
(57)【要約】
【課題】IEEE 802.3av規格に代表される現在の大容量光通信では、光損失が29dBを超えると全断するという課題があった。
【解決手段】送信された光信号が変換された複素ディジタル信号が入力され、1フレーム内のタイムスロットのうち、シンボルの位置に基づいてインデックス復号符号を復調するインデックス復調部と、
前記複素ディジタル信号が入力され、前記タイムスロットに載った前記シンボルをシンボル復号符号(DE
AP)に復調するシンボル復調部を有し、
前記インデックス復調部は前記シンボルの乗った前記タイムスロットを受信した際に前記シンボル復調部に前記シンボルの存在を示す通知信号を送信し、
前記シンボル復調部は前記通知信号に基づいて前記シンボルを復号する光信号復調装置は、通信レートの低いインデックス信号を復調できるので、光損失が29dBを超えても全断せず通信を維持できる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1フレームを複数のタイムスロットで構成し、少なくとも1つ以上の前記タイムスロットに載せたシンボルと、前記シンボルを載せた前記タイムスロットの時間位置で形成したインデックス符号で原信号を送信する光信号を受信し、前記原信号を復調する光信号復調装置であって、
前記光信号を位相ダイバーシティー検波し複素ディジタル信号(CS)に変換する受信部(RX)と、
前記複素ディジタル信号(CS)が入力され、前記1フレーム内の前記タイムスロットのうち、前記シンボルの位置に基づいてインデックス復号符号(DEId)を復調するインデックス復調工程部(10)と、
前記複素ディジタル信号(CS)が入力され、前記タイムスロットに載った前記シンボルをシンボル復号符号(DEAP)に復調するシンボル復調工程部(20)を有し、
前記インデックス復調工程部(10)は前記シンボルの乗った前記タイムスロットを受信した際に前記シンボル復調工程部(20)に前記シンボルの存在を示す通知信号(アクティベーションパターン信号APCS)を送信し、
前記シンボル復調工程部(20)は前記通知信号(アクティベーションパターン信号APCS)に基づいて前記シンボルを取得し復号する光信号復調装置。
【請求項2】
前記インデックス復調工程部(10)は、
前記複素ディジタル信号(CS)のシンボル強度(PCS)を算出する振幅演算部(11)と、
前記シンボル強度(PCS)が入力され前記フレームの先頭を示す先頭通知信号(STOP)を出力するフレームタイミング抽出部(12)と、
前記シンボル強度(PCS)と前記先頭通知信号(STOP)が入力され、前記フレーム中で前記シンボルの存在を示す前記通知信号(アクティベーションパターン信号APCS)と、前記インデックス復号符号(DEId)を出力するIndexBitデマップ部(14)を有する請求項1に記載された光信号復調装置。
【請求項3】
前記IndexBitデマップ部(14)は、前記インデックス復号符号(DEId)を復号する際にエラー訂正を行う請求項2に記載された光信号復調装置。
【請求項4】
前記シンボル復調工程部(20)は、
前記複素ディジタル信号(CS)が入力され前記受信部(RX)で発生する周波数オフセットが補償されたオフセット補償信号(CSf)を出力する周波数オフセット補償部(22)と、
前記オフセット補償信号(CSf)が入力され前記受信部(RX)で発生する位相ズレが補償されたオフセット&位相補償信号(CSfθ)を出力する位相補償部(23)と、
前記オフセット&位相補償信号(CSfθ)が入力され前記シンボルに対応するシンボル復号符号(DEAP)を出力するAPMBitデマップ部(25)を有する請求項1に記載された光信号復調装置。
【請求項5】
前記周波数オフセット補償部(22)は、
前記複素ディジタル信号(CS)が入力されデータ変調成分を除去し搬送波オフセット・位相成分(CCωθ)を出力する累乗演算部(221)と、
連続する前記シンボルと前記通知信号(アクティベーションパターン信号APCS)によって搬送波オフセット成分(CCω)を抽出する搬送波オフセット成分抽出部(22B1)と、
前記搬送波オフセット成分(CCω)から複素オフセット補償量(CΣφΔf)を求める複素オフセット補償量算出部(22B2)と、
前記複素ディジタル信号(CS)と前記複素オフセット補償量(CΣφΔf)を乗算し、前記オフセット補償信号(CSf)を算出する乗算部(22A6)を有する請求項4に記載された光信号復調装置。
【請求項6】
前記累乗演算部(221)に変えて仮判定演算部(221a)を有する請求項5に記載された光信号復調装置。
【請求項7】
位相補償部(23)は、
前記オフセット補償信号(CSf)が入力されデータ変調成分を除去し搬送波位相成分(CCθ)を出力する累乗演算部(231)と、
前記搬送波位相成分(CCθ)を平均化し、搬送波位相成分の平均値(AV(CCθ))を算出する平均化部(232)と、
前記搬送波位相成分の平均値(AV(CCθ))から光位相差(Δθ)を抽出する位相算出部(233)と、
前記光位相差(Δθ)から複素位相ズレ補償量(CΦθ)を算出する複素位相ズレ補償量算出部(23B1)と、
前記オフセット補償信号(CSf)と前記複素位相ズレ補償量(CΦθ)を乗算し、
前記オフセット&位相補償信号(CSfθ)を算出する乗算部(238)を有する請求項4に記載された光信号復調装置。
【請求項8】
前記累乗演算部(231)に変えて仮判定演算部(231a)を有する請求項7に記載された光信号復調装置。
【請求項9】
前記位相補償部(23)の直後段に位相スリップを補償する位相スリップ補償部(310)が設けられた請求項7に記載された光信号復調装置。
【請求項10】
1フレームを複数のタイムスロットで構成し、少なくとも1つ以上の前記タイムスロットに載せたシンボルと、前記シンボルを載せた前記タイムスロットの時間位置で形成したインデックス符号で原信号を送信する光信号を受信し、前記原信号を復調する光信号復調方法であって、
前記光信号を位相ダイバーシティー検波し複素ディジタル信号(CS)に変換する受信工程(RX)と、
前記複素ディジタル信号(CS)が入力され、前記1フレーム内の前記タイムスロットのうち、前記シンボルの位置に基づいてインデックス復号符号(DEId)を復調するインデックス復調工程(10)と、
前記タイムスロットを受信した際に前記シンボルの存在を示す通知信号(アクティベーションパターン信号APCS)を作成する工程と、
前記複素ディジタル信号(CS)が入力され、前記通知信号(アクティベーションパターン信号APCS)に基づいて前記タイムスロットに載った前記シンボルをシンボル復号符号(DEAP)に復調するシンボル復調工程(20)を有する光信号復調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ伝送ネットワークのうち、特に光アクセスネットワークに適用される光信号復調装置に関するものである。本発明は、従来技術と比較して、低平均光信号電力でも通信回線の接続を維持できる時間領域インデックス光変調方式に基づく光信号を受信できる光信号復調装置を実現する。
【0002】
本発明の光信号復調装置を用いて、時間領域インデックス光変調信号の時間領域インデックス変調規則に則り不規則なタイミングで着信する光シンボルに対しても、従来のディジタルコヒーレント光信号受信器に内蔵される周波数オフセット補償回路、位相補償回路、位相スリップ低減回路と同様の動作を実現する。これにより、時間領域インデックス変調規則に則り符号を送受信するだけでなく、到着光シンボルのコヒーレント検波が可能となる。つまり、従来のディジタルコヒーレント光信号受信器と同様に、M相直交位相振幅光変調規則に則った符号も送受信可能となる。
【背景技術】
【0003】
光アクセスネットワークは、国内においても2000万世帯以上に普及している状況であり、高度情報化社会に欠かせない社会インフラシステムとなっている。
【0004】
特に、近年ではIEEE 802.3av(10GE-PON)規格(非特許文献1)にのっとり、各世帯において最大で10Gbit/sの伝送レートを実現する光アクセスネットワークサービスが展開されつつある。このシステムは、多くの場合において各地方都市の通信局に設置された光回線終端装置(Optical Line Terminal: OLT)からTree状に光ファイバ線路を分岐させ、各世帯に設置されている複数(最大で32)の光回線ユニット(Optical Network Unit: ONU)と接続する構成を採用している(
図30)。
【0005】
このシステムにおいて、前記OLTと前記ONUの光損失バジェットは29dBとなっており、伝送可能距離20kmとなっている。これらの条件を満足できなくなると、通信回線の維持は不可能となり10Gbit/sの伝送レートが全断となる。
【0006】
一方、時間領域インデックス光変調方式(非特許文献2)を採用すると、前記OLTと前記ONUの間の伝送路条件の変化に併せて、光シンボルを間引きすることで平均光電力を一定に保ちつつ、光信号ピーク電力を高くして光信号対雑音比を維持することが可能になる(
図31)。このとき、通信路の相互情報量の絶対値は減少することになるが、規格化相互情報量は1bit/symbolに近い数値を保つことが可能になり、誤り訂正機能の支援により通信回線の接続性を維持することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2014/115840号(特許第5886984号)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】IEEE Std 802.3av-2009, IEEE Standard for Ethernet-Physical Layer Specifications and Management Parameters for 10Gb/s Passive Optical Networks.
【非特許文献2】M.Nakao, T. Ishihara, and S.Sugiura, “Dual-Mode Time-Domain Index Modulation for Nyquiest-Criterion and Faster-Than-Nyquist Single-Carrier Transmissions,”IEEE Access,vol. 5, no.11, pp. 27659-27667,Nov. 2017.
【非特許文献3】K.Kikuchi, “Fundamentals of coherent optical fiber communications,” J.Lightw. Technol., vol.34, no.1, pp.157-179, Aug. 2016.
【非特許文献4】H.Imai and S. HIRAKAWA, “A New Multilevel Coding Method Using Error-Correcting Codes,” IEEE Trans.On Information Theory, vol.IT-23, no.3, pp.371-377, Aug. 1977.
【非特許文献5】鈴木扇太、宮本裕、富澤将人、坂野寿和、村田浩一、美野真司、柴山充文、渋谷誠真、福知清、尾中寛、星田剛司、小牧浩輔、水落隆司、久保和夫、宮田好邦、神尾亨秀,“光通信ネットワークの大容量化に向けたディジタルコヒーレント信号処理技術の研究開発,”電子情報通信学会誌,vol.95, no.12,pp。1100―1116,2012年12月.
【非特許文献6】K.Itoh,“Analysis of the phase unwrapping algorithm,” Applied Optics, vol. 21, no.14, pp.2470, July 1982.
【非特許文献7】A.Alvarado,T. Fehenberger, B.Chen, and F.J.Willems, “Achievable Information Rates for Fiber Optics Applications Aand Computations,” J.Lightw. Technol., vol.36, no.2, pp.424-439, Jan. 2018.
【非特許文献8】J.Li,S.Lin,K.Abdel-Ghaffar,W.E.Ryan,andD.L.Costello,Jr.,“LDPC Code Designs,Constructions,and Unification, Chapter 11” Cambridge University Press,2017,ISBN978-1-107-17568-6.
【非特許文献9】K. Kikuchi, T. Okoshi, M. Nagamatsu, and N. Henmi, “Degradation of bit-error rate in coherent optical communications due to spectral spread of the transmitter and the local oscillator, “J. Lightw. Technol., vol. 2, no.6, pp. 1024-1033, Dec., 1984.
【非特許文献10】S. Ishimura and K. Kikuchi, “Multi-dimensional permutation modulation format for coherent optical communications,” Opt. Exp., vol. 23, no. 12, pp. 15587-15597, 2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
IEEE 802.3av(10GE-PON)規格(非特許文献1)に代表されるように、大容量光通信では、位相ダイバーシティコヒーレント光通信が基本となると考えられる。しかし、動画コンテンツの普及により1通信当たりの通信容量が多くなっている点、伝送距離の延長の社会的要請が見込まれる点、災害時等にアクセス数が増大する点といった理由により今後光損失バジェットが29dBを超える場合が発生しうる。
【0010】
このような場合でも通信トラフィック状態や伝送路条件に合わせてベストエフォート的な光アクセスサービスを提供する必要が出てくると考えられる。つまり、本発明の目的は光損失バジェットが29dBを超えた場合であっても、通信レートを下げてでも、通信状態を維持することができる光通信での復調装置を提供することである。
【0011】
また、本発明では、上記目的を達成するために、コヒーレント光変調方式と時間領域インデックス光変調方式を組み合わせる。その際には間欠的に着信する光シンボルに対しても従来のコヒーレント光信号受信装置と同様に周波数オフセット補償、位相補償等を行える必要があるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記の課題に鑑み光損失バジェットが29dBを超えた場合であっても通信トラフィック状態や伝送路条件に合わせてベストエフォート的な光アクセスサービスを提供する光通信における復調装置および方法を提供するものである。
【0013】
より具体的に本発明に係る光信号復調装置は、
1フレームを複数のタイムスロットで構成し、少なくとも1つ以上の前記タイムスロットに載せたシンボルと、前記シンボルを載せた前記タイムスロットの時間位置で形成したインデックス符号で原信号を送信する光信号を受信し、前記原信号を復調する光信号復調装置であって、
前記光信号を位相ダイバーシティー検波し複素ディジタル信号(CS)に変換する受信部(RX)と、
前記複素ディジタル信号(CS)が入力され、前記1フレーム内の前記タイムスロットのうち、前記シンボルの位置に基づいてインデックス復号符号(DEId)を復調するインデックス復調工程部(10)と、
前記複素ディジタル信号(CS)が入力され、前記タイムスロットに載った前記シンボルをシンボル復号符号(DEAP)に復調するシンボル復調工程部(20)を有し、
前記インデックス復調工程部(10)は前記シンボルの乗った前記タイムスロットを受信した際に前記シンボル復調工程部(20)に前記シンボルの存在を示す通知信号(アクティベーションパターン信号APCS)を送信し、
前記シンボル復調工程部(20)は前記通知信号(アクティベーションパターン信号APCS)に基づいて前記シンボルを取得し復号することを特徴とする。
【0014】
また本発明に係る光信号復調方法は、
1フレームを複数のタイムスロットで構成し、少なくとも1つ以上の前記タイムスロットに載せたシンボルと、前記シンボルを載せた前記タイムスロットの時間位置で形成したインデックス符号で原信号を送信する光信号を受信し、前記原信号を復調する光信号復調方法であって、
前記光信号を位相ダイバーシティー検波し複素ディジタル信号(CS)に変換する受信工程(RX)と、
前記複素ディジタル信号(CS)が入力され、前記1フレーム内の前記タイムスロットのうち、前記シンボルの位置に基づいてインデックス復号符号(DEId)を復調するインデックス復調工程(10)と、
前記タイムスロットを受信した際に前記シンボルの存在を示す通知信号(アクティベーションパターン信号APCS)を作成する工程と、
前記複素ディジタル信号(CS)が入力され、前記通知信号(アクティベーションパターン信号APCS)に基づいて前記タイムスロットに載った前記シンボルをシンボル復号符号(DEAP)に復調するシンボル復調工程(20)を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る光信号復調装置および方法によれば、光損失が29dBを超えない間は、コヒーレント光変調方式で送信し、29dBを超えた場合は時間領域インデックス変調方式も併用することで、通信を維持することができる。
【0016】
また、本発明により、時間領域インデックス光変調信号の時間領域インデックス変調規則に則り不規則なタイミングで着信する光シンボルに対しても、従来のディジタルコヒーレント光信号受信器に内蔵される周波数オフセット補償回路、位相補償回路、位相スリップ低減回路と同様の動作を実現する。これにより、時間領域インデックス変調規則に則り符号を送受信するだけでなく、到着光シンボルのコヒーレント検波が可能となる。つまり、従来のディジタルコヒーレント光信号受信器と同様に、M相直交位相振幅光変調規則に則った符号も送受信可能となる。
【0017】
その結果、本発明は、後述するように複数の動作モードを実現できる。具体的には、本発明を採用したシステムは、通常動作モードにおいてM相直交位相振幅(M-QAM)光変調方式でデータ伝送を実現し、通信容量を確保する(通常モード)。一方、顧客データトラフィックが少ない場合、本発明を採用したシステムは、インデックス光変調動作モードに切り替わり、光信号のピーク電力を確保しつつ平均光信号電力を低減する(ECOモード)。その一方で、伝送路距離が長い、または伝送路条件が悪い場合は、インデックス光変調動作モードに切り替えた上で、光信号のピーク電力を増大させて通信回線の接続性を確保する(Long Reach/Fault Tolerantモード)。このように、本発明は、通信トラフィック状態や伝送路条件にあわせて“ベストエフォート”的な光アクセスサービスを提供可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】時間領域インデックス光変調方式における変調規則の一例を示す。
【
図2】M相直交位相振幅光変調方式における変調規則の一例を示す。
【
図3】本発明で実現しようとする時間領域インデックス光変調方式の伝送路損失(伝送距離に換算可能)と通信容量の関係を示す図である。
【
図4】本発明で実現しようとする時間領域インデックス光変調方式の論理モデル図を示す。
【
図5】本発明の適用先であるシステムが実現する効用を説明する図である。
【
図6】光信号と局発光の光周波数差を示す図である。
【
図7】本発明が実行できる送信モードを示す図である。
【
図8】本発明の光通信受信装置の構成を示す図である。
【
図9】本発明の光通信受信装置の復調部の構成を示す図である。
【
図10】インデックス光変調方式のフレームとシンボルの構成を示す図である。
【
図11】復調部の周波数オフセット補償部の構成を示す図である。
【
図12】周波数オフセット補償の効果を示す図である。
【
図13】復調部の位相補償部の構成を示す図である。
【
図15】周波数オフセット補償部に仮判定演算部を用いた場合の構成を示す図である。
【
図17】仮判定演算部を用いた位相補償部の構成を示す図である。
【
図18】位相補償部に用いられた仮判定演算部の構成を示す図である。
【
図21】第3の実施形態の平均化部の構成を示す図である。
【
図22】第4の実施形態の復調部の構成を示す図である。
【
図23】第4の実施形態で用いられる位相スリップ保証付き位相補償部の構成を示す図である。
【
図24】第5の実施形態の復調部の構成を示す図である。
【
図25】第5の実施形態で用いられる軟判定FEC機能付きIndexBitデマップ部の構成を示す図である。
【
図26】本発明に係る伝送方式の信号対雑音比(SNR)の関数としてのエラーレート(BER)のシミュレーション結果を表すグラフである。
【
図27】2.5Gbpsの時間領域(8,1,BPSK)光信号を偏波多重した場合の典型的なコンステレーション図である。(a)は、周波数補正前であり、(b)は周波数補正および位相補正後の結果を表す。
【
図28】受光パワーとエラーレートの関係を表す実験結果のグラフである。(a)は2.5GBaud偏波多重時間領域(8,1,BPSK)光信号のBERを受信光パワーの関数としてまとめたものであり、(b)は、2.5GBaud偏波多重時間領域(8,1,DBPSK)光信号のBERを受信光パワーの関数としてまとめたものである。
【
図29】時間領域(8,1,BPSK)光信号とBPSK光信号のBERを,シンボルレートで正規化した周波数オフセットの関数として実測とシミュレーションの両方で示したものである。
【
図31】インデックス変調方式を使った場合の信号の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明に係る光信号復調装置の構成と実現動作について図面を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態および一実施例を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。また、以下の実施形態について「~部」と称した部分は、ハード的な構成であってもソフト的な構成であっても実現することができる。また、「~部」と称した部分は、発揮される機能を有する「工程」と称してもよい。また、加算部、乗算部、除算部は「複素」と記載がなくても、複素計算が行われる要素である。
【0020】
本発明の前提となる時間領域インデックス光変調方式の原理は以下の通りである。時間領域インデックス光変調方式は、複数のタイムスロットでインデックス光変調信号フレーム(以下単に「フレーム」と呼ぶ。)を構成する。このフレームを一つの単位として光信号を送受信する。タイムスロットとは、所定の時間幅である。1つのタイムスロットと次のタイムスロットの間には時間的ギャップがある。ただし、送り側と受け側が完全に同期している場合は、時間的なキャップはなくてもよい。時間的ギャップも含めてタイムスロットの時間幅は「Ts」で表す。
【0021】
この条件下で、各フレームの平均光信号電力を送信器の上限近傍の一定値で動作させる場合を考える。この場合、各フレーム内において決まった数の光シンボルを間引きすることで、光シンボルの振幅、ひいては光シンボルの信号対雑音比は大きくなる。それに加えて、時間領域インデックス変調規則に則り、間引く光シンボルの送受信タイムスロットを変化させることで符号を送受信することが可能となる(
図1)。
【0022】
ここでシンボルとはタイムスロット中に送り側が情報を載せた光(光シンボル搬送波:以後単に「光信号LS」ともいう。)をいう。シンボルの間引きとは、タイムスロット中に光がない、若しくは強度が低い(暗い)状態をいう。タイムスロットの変化とは、タイムスロットの時間を変化させる、若しくはタイムスロット中のシンボルの強度を変化させることも含む。
【0023】
図1では、8つのフレームを示した。それぞれのフレームは8つのタイムスロットから構成されている。各タイムスロットにおいて黒色のタイムスロットは光シンボルが載っている。光シンボルにはQPSKといったM-QAM方式で情報が載せられている。例えば、第3フレームでは第3タイムスロットに光シンボルが載っていることを示している。白色のタイムスロットは光シンボルが載っていないタイムスロットである。
図1では、8つのタイムスロットのうち、1つのタイムスロットに光シンボルを載せる場合を示している。光シンボルが載っている光タイムスロットの位置により8つのアクティベーションパターンが考えられる。それぞれのアクティベーションパターンに対してIndexビットを割り当てることで、3ビット分の情報を指定できる。
【0024】
さらに、同時に、光シンボルをコヒーレント検波することで、従来のディジタルコヒーレント光信号受信器と同様のM-QAM光変調シンボルにより符号を送受信可能となる。
図2には、タイムスロットで送られた光シンボルの信号点の例を表す。
図2(a)はQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)信号であり、(b)は16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)信号である。
【0025】
図3にQPSK方式(細線)と後に詳述する本発明の(8,1,QPSK)時間領域インデックス光変調方式(太線)の規格化相互情報量の関係についての一例を示す。「(8,1,QPSK)」は、1フレームを8つのタイムスロットで構成し、そのうちの1つのタイムスロットにシンボルを載せることでインデックス変調方式の通信を行い、そのシンボルはQPSKで変調させ情報を載せているという意味である。
【0026】
図3を参照して、横軸は光損失(dB)であり、縦軸は規格化相互情報量R(ビット/シンボル)を表す。既存のQPSK光変調方式においては光損失バジェット29dBを上回る条件になるとビット誤りが混在することとなり、通信回線が切断される。ここで、通信回路の全断は規格化相互情報量Rが0.81ビット/シンボル以下になるとした。
【0027】
しかしながら、(前方)誤り訂正機能(
図3では、「FEC:Forward Error Correction」と記載。)を受信器に実装した上で、時間領域インデックス光変調方式(「Index変調」と記載。)を採用すると、光損失バジェットの余裕度が合計で10dB程度増大する。この値は、光アクセスネットワークの光ファイバ損失係数0.5dB/kmを仮定とすると20km区間の光損失に相当する。つまり、アクセス光ネットワークの伝送可能距離を40kmに倍増できることを示唆する。
【0028】
時間領域インデックス光変調方式で実現される通信路は、論理的には時間領域インデックス変調規則に則り光シンボルの送受信タイムスロットの1フレーム中のシンボル位置を変化させることで符号を送受信するインデックスビット(以下「INDBit」)チャネルと、M-QAM光変調により符号を送受信する振幅位相変調ビット(以下「APMBit」)チャネルが並列する通信路となる。
【0029】
図4は、INDBitとAPMBitを用いた通信系の全体構成の概念図である。送信側(光信号送信装置1)では、元情報INFが、シリアル/パラレル変換部(S/P)で、INDBitとAPMBitに分けられる。それぞれの信号は誤り訂正符号を付加され(FEC Enc.)、マッピング(MAP)された後、送信部(TX)から送信される。
【0030】
伝送経路2では、論理的にはINDBitチャネル(Index ch)と、APMBitチャネル(APM ch)が送信される。物理的には
図1で示したタイムスロット中に位相変調信号が載せられた状態の光信号LSが送られる。
【0031】
受信側(光信号復調装置3)では、受信部(RX)で受信した信号は、インデックス復調工程部10で、インデックス変調信号が解読され(DMAP)、誤り訂正が行われる(FEC Dec.)。また、シンボル復調工程部20では、振幅位相変調信号は、周波数オフセット補償(FC)され、位相シフト補償(PC)され、解読され(DMAP)、誤り訂正が行われる(FEC Dec.)。また、本発明の光信号復調装置3ではインデックス復調工程部10からシンボル復調工程部20に向かって後述するアクティベーションパターン信号APCSから送られる。このようにしてINDBitとAPMBitは復調される。これらの信号はパラレル/シリアル変換部29でシリアル信号に戻され、元情報INFに相当する復号情報DE(INF)を得る。これら全体の通信容量C(bit/sec)は、(1)式で与えられる。
【0032】
【0033】
ここで、Nは時間領域インデックス光変調信号の1フレームあたりのシンボル数、Kはそのうち光シンボルを挿入するシンボル数、[]はガウス記号、MはM-QAM変調された光シンボルに対して定義する信号点数である。右辺第一項がINDBitチャネル、第二項がAPMBitチャネルの通信容量に相当する。
【0034】
図5は、1フレーム当たりの光シンボル数(K/N)と転送データレートB(ビット/シンボル)の関係を示したものである。白抜きの印は、振幅位相変調ビット(APMbits)だけを用いた場合を示し、黒塗りの印はINDBitを併用した場合を示している。それぞれAPMBitはQPSKである。四角印は1フレームを16タイムスロット、丸印は1フレームを8タイムスロット、三角印は、1フレームを4タイムスロットにした時の場合を示す。ここで、光シンボルの平均数を1/16~1/4に絞り込んだ低平均光信号電力状態で符号を伝送する方式として、固定タイムスロットに光シンボルを割り当てる方式(
図5ではFIMと記載)と時間領域(N,K,QPSK)インデックス光変調方式(
図5ではIMと記載)がある。
【0035】
例えば、光シンボルの平均数を1/8に絞り込んだ低平均光信号電力状態で符号を伝送する方式として、時間領域(8,1,QPSK)インデックス光変調伝送方式(
図5では丸印でKを1とした時:K/N=0.125)では、光シンボル数を1/8に絞り込んだ1/8レートQPSK変調伝送方式(0.25ビット/シンボル)と比較して通信容量が~2.5倍にまで拡大可能となる。
【0036】
本発明は、
図1に示すように、1フレームを複数のタイムスロットで構成し、少なくとも1つ以上の前記タイムスロットにシンボルを載せた光信号を復調する光信号復調装置および方法である。言い換えると、時間領域インデックス光変調方式を採用した光アクセスネットワークの光受信器に、イントラダインディジタルコヒーレント検波方式(非特許文献3)を適用しとうとするものである。この光信号復調装置において、受信した光シンボルを正しく復号するためには、主に下記の課題を解決する必要がある。
(1)インデックス光変調規則に則り光シンボルが不定期に到着する条件下で、周波数オフセット補償、位相補償を行う必要がある。
(2)実現回路は、通常のM-QAM変調伝送にも適用可能である必要がある。
【0037】
(1)の課題は、時間領域インデックス光変調方式を適用することに伴い、必然的に発生する課題である。従来のM-QAM光変調シンボルは、各タイムスロットに必ず光シンボルが存在し、この光シンボルと受信器に内蔵する局発レーザ光と干渉させることで、受信光シンボルと局発レーザ光との間の周波数オフセットと位相差を抽出する。しかしながら、本発明においては、光受信器に対して不定期に到着するM-QAM光変調シンボルから受信光シンボルと局発レーザ光との間の周波数オフセットと位相差を抽出する必要がある。
【0038】
図6は、光信号LSと光信号復調装置3で用いられる局発光Loの周波数の関係を示す。横軸は光周波数を表し、縦方向は光の強度を概念的に示す。光信号復調装置3では、光信号LSと同一周波数の光を局発光Loとして用いるのが望ましいが、局発光Loの周波数を微妙に調整するのは容易ではなく、2つの光は光周波数差Δf(以下「オフセット周波数Δf」とも呼ぶ。)だけ周波数がずれる。
【0039】
(2)の課題は、本発明で実現できる光アクセスネットワークシステムにおいて、伝送レートを可変にしようとする目的から派生するものである。本発明では、実現しようとする光アクセスネットワークシステムの前記OLTと前記ONUの間の伝送路条件の変化に併せて、光シンボルを間引きし、伝送レートを可変にすることができる。
【0040】
図7に、OLT(
図30参照)からONUまでの区間で伝送される1フレーム分を示す。伝送路条件が良い場合は、従来のM-QAM光変調シンボルを伝送する(
図7(a):通常モード)。一方、伝送路条件が悪く光損失バジェット29dBを上回る条件下においては、時間領域インデックス光変調方式に基づき動作し、光シンボルを間引きする(
図7(b):ECOモード)。このような動作を実現する光受信装置においては、同一の光受信器においてM-QAM光変調シンボルと時間領域インデックス光変調シンボルの両者を復調可能とし、受信装置の共通部を多くして効率よく期待動作を実現する必要がある。
【0041】
また、伝送路距離が長い、または伝送路条件が悪い場合は、インデックス光変調動作モードに切り替えた上で、光信号のピーク電力を増大させて通信回線の接続性を確保する(
図7(c):LR/FTモード[Long Reach/Fault Tolerantモード])。光変調動作自体は、ECOモードと同じであるが、光信号のピーク電力が大きくなる。この場合は、INDbit復調部で光シンボルの有無が判断された上でアクティベーションパターンが生成され、APMbit復調部に入力される。APMbit復調部は、このアクティベーションパターンに従い光シンボルが存在するタイムスロットに対してのみM-QAM光変調シンボルを復調する。
【0042】
図7(b)のECOモードでは、インデックス光変調規則に則り光シンボルが不定期に到着する条件下で、インデックス変調規則に則りデータをINDbitチャネルの伝送符号を復号するのと同時に、周波数オフセット補償、位相補償を行いAPMbitチャネルの伝送符号を復号する必要がある。
【0043】
本発明は、これらの課題を解決できる時間領域インデックス光変調方式に対応できるイントラダインディジタルコヒーレント検波光信号復号回路の実現手段を提供する。本発明は、課題(1)の解決手段を提供するだけでなく、課題(2)の要求条件を満足し、光信号復調回路の共通利用部分を多くしながら、従来のM-QAM光変調シンボルの復号と、時間領域(8,1,M-QAM)インデックス光変調シンボルの復号を効率よく実現する手段を提供する。
【0044】
本発明に係る光信号復調装置が復調できる光信号LSは、1フレームをNタイムスロットで構成され、そのうちのKスロットにM-QAM方式のシンボルが載せられた信号である。このように変調された光信号LSを「時間領域(N,K,M-QAM)インデックス光変調信号」と呼ぶ。
【0045】
(第1の実施形態)
図8には、光信号復調装置3の主な部分のブロック図を示す。光ファイバで送信されてきた光信号LSは位相ダイバーシティー検波器RXaで受信され、アナログディジタル変換器RXbでディジタル信号に変換される。その後光偏波補償部RXcで偏波関係の補償がなされる。光偏波補償部RXcには、分散補償部、タイミング位相同期部、偏波分散補償部等が含まれる。これらは光信号LSを位相ダイバーシティー検波し複素ディジタル信号CSに変換する受信部RXである。受信部RXは複素ディジタル信号CSを出力する。複素ディジタル信号CSには、局発光Loと光信号LSの周波数差Δf(
図6参照)、およびM-QAM信号の搬送波成分の位相誤差がまだ含まれている。
【0046】
受信部RXから出力された複素ディジタル信号CSは、インデックス復調工程部10でINDbitチャネルの信号を伝送符号DEIdとして復号し、シンボル復調工程部20で、周波数オフセット補償、位相補償を行いAPMbitチャネルの信号が伝送符号DEAPとして復号される。なお、インデックス復調工程部10やシンボル復調工程部20において誤り訂正が行われることがある。さらに、復号の最終段においても誤り訂正が行われることがある。伝送符号DEIdと伝送符号DEAPはパラレル/シリアル変換部29(「P/S変換部」と記載)でシリアルデータに戻され、原信号INFが復号された復号信号DS(INF)が得られる。本発明に係る光信号復調装置3は、受信部RXの後段にある復調部6を有すれば足りる。また、復調部6はインデックス復調工程部10とシンボル復調工程部20を有すれば足りる。また、伝送符号DEIdはインデックス復号符号DEIdといい、伝送符号DEAPをシンボル復号符号DEAPと呼んでもよい。
【0047】
復調部6が行う時間領域(N,K,M―QAM)インデックス光変調方式を実現する光信号復調を、
図9を用いて説明する。復調部6には、
図8に記載の受信部RXから出力された複素ディジタル信号CS(I軸成分とQ軸成分の2CHで構成される信号)が入力される。複素ディジタル信号CSは分岐部TINで分岐してインデックス復調工程部10の振幅演算部11と、シンボル復調工程部20の遅延部21に入力される。
【0048】
インデックス復調工程部10の振幅演算部11は、複素ディジタル信号CSの絶対値(ないしは絶対値の2乗)を計算し、受信した光シンボルに対応する複素ディジタル信号CSの強度を算出して、これを出力値とする。この出力をシンボル強度PCSとする。
【0049】
フレームタイミング抽出部12は、振幅演算部11の出力値(アクティベーションパターン信号APCS)とインデックス復調工程部10で復号された符号パターン(インデックス復号符号DEId)よりインデックス光変調フレームの先頭タイミングを抽出する。その上で、先頭タイミングを示す先頭通知信号STOPをIndexBitデマップ部14に出力する。
【0050】
<フレームタイミング抽出部12>
フレームタイミング抽出部12は、時間領域(N,K,M-QAM)インデックス光変調方式の場合、Nシンボルで構成されるフレームの先頭タイミングを把握する。
図10にNシンボルで構成されるフレームを示す。
図10を参照して横軸は時間を表す。右に行くほど過去を示す。
図10では、1フレームが8タイムスロット(白塗り長方形)で構成され、1フレーム中の1タイムスロットにシンボル(黒塗り長方形)が載せされる。
図10は、1シンボルで構成されるフレームを示している。
【0051】
図9を再度参照する。フレームタイミング抽出部12を実現する方法は、(1)主信号光シンボルに含まれたトレーニングシンボルから先頭タイミングを把握する方法、(2)制御光チャネル信号からタイミング抽出を用いる方法の二つが主に用いられる。
【0052】
本実施構成では、
図10に示すように(1)主信号光シンボルに含まれたトレーニングフレームから抽出する方法を例示する。もちろん(2)の制御光チャンネル信号からタイミングを抽出してもよい。この場合、Nシンボルで構成される特定フレームパターンをJフレーム分連続させ、これをトレーニングフレームとする。ここではトレーニングフレームは先頭タイムスロットに必ずシンボルが配置されている。この様なトレーニングフレームは、既存のディジタルコヒーレント伝送システムにおいても送信される信号の1/100から1/10程度の割合で挿入され、フレームの先頭に配置されたシンボルに合わせてフレームタイミング信号を出力する方法が知られている(非特許文献5)。
【0053】
また、特定のビットパターンよりフレームの先頭タイミングを決定する方法は、既存の多くの伝送システムでも適用されている伝統的な手法である。例えば、イーサネットフレームの先頭位置は、1010101パターンからタイミング同期を行いながら抽出する。また、10ギガビット級の伝送システムで適用されてきたSynchronous Digital Hierarchy(SDH)伝送システムにおいても特定の符号パターンを挿入してフレームの先頭位置を特定できるように設計されている。本発明のフレームタイミング抽出部12も、このような公知の方法でフレームの先頭シンボルを認識する。
【0054】
本実施例では後述のIndexBitデマップ部14で復号されたビットパターンからトレーニングシンボルがフレームの先頭シンボルに配置されていることを確認しながら先頭通知信号S
TOPが適切なタイミングで出力されるようフレームの先頭タイムスロットを表す先頭通知信号S
TOPを出力する。例えば、
図1に示すような時間領域インデックスス変調規則でシステム設計されている場合は、フレームタイミング抽出部12は、IndexBitデマップ部14から「000」(「10000000」のアクティベーションパターンに対応するインデックス復号符号DE
Id)が出力されていることを確認しながら、適切なタイミングで先頭通知信号S
TOPが出力されるよう制御する。
【0055】
<インデックス復調工程部10>
次にインデックス復調工程部10の動作を説明する。遅延部13は、フレームタイミング抽出部12が正しく駆動しフレーム先頭シンボルに合わせて先頭通知信号STOPが送出されIndexBitデマップ部14に入力されるタイミングと、当該フレームの先頭シンボルがIndexBitデマップ部14に入力されるタイミングとが同期されるよう遅延が調整される。
【0056】
IndexBitデマップ部14は、フレームタイミング抽出部12からのフレームタイミング信号STOPと遅延部13の出力信号(複素ディジタル信号CSの絶対値)PCSを入力とする。IndexBitデマップ部14は、フレームタイミング抽出部12からの先頭通知信号STOPを基準にして、Indexシンボルのフレームタイミングを識別し、遅延部13からの入力信号であるシンボル強度PCS(振幅演算部11で算出した複素ディジタル信号CSの絶対値(ないしは絶対値の2乗))からIndexBitをデマッピングし、複合化された符号であるインデックス復号符号DEIdを出力する。
【0057】
デマッピングの規則は、例えば
図1の時間領域インデックスス変調規則に基づいてデマッピングしてもよい。この場合、遅延部13からの入力信号(シンボル強度P
CS)は、
図1に記載されたアクティベーションパターン信号AP
CSとしてアクティベーションパターンからIndexビットへのデマッピング処理をして復号化される。なお、アクティベーションパターン信号AP
CSからは、1フレーム中のシンボルのあるタイムスロットを知ることができる。
【0058】
<レジスタ部16>
図9を再度参照し、復号化されたインデックス復号符号DE
Idは、レジスタ部16に入力される。レジスタ部16は、遅延部15を経由して入力された先頭通知信号S
TOPに基づき駆動する。先頭通知信号S
TOPがONのときのみ、IndexBitデマップ部14から出力されたインデックス復号符号DE
Idを取り込み、保持する。なお、レジスタ部16の前に誤り符号復号処理が加えられる。
【0059】
一方、IndexBitデマップ部14は、1フレームの中で入力信号(シンボル強度PCS)を判別しているので、アクティベーションパターン信号APCSを作成することができる。このアクティベーションパターン信号APCSはシンボル復調工程部20の周波数オフセット補償部22、APMBitデマップ部25に送信される。以上が、インデックス復調工程部10の動作となる。
【0060】
<シンボル復調工程部20>
次にシンボル復調工程部20の動作を説明する。遅延部21は、IndexBitデマップ部14から出力されるアクティベーションパターン信号APCSが周波数オフセット補償部22に到着するタイミングと、分岐部TINで分岐された複素ディジタル信号CSが周波数オフセット補償部22に到着するタイミングを同期させる。すなわち、周波数オフセット補償部22は、複素ディジタル信号CS中シンボルのあるタイムスロットを取得できる。
【0061】
周波数オフセット補償部22は、複素ディジタル信号CS中のオフセット周波数Δfを推定し、その成分を除去することを目的とする。この複素ディジタル信号CSのオフセット周波数Δfは、本発明の受信部RXに設置されている位相ダイバーシティー検波器RXa(
図8参照)にて発生するものである(
図6参照)。
【0062】
当該位相ダイバーシティー検波器RXaでは、受信光シンボルを検波するために局発レーザ光と干渉させることで、受信光シンボルの位相情報を抽出しようとするが、受信光シンボルと局発レーザ光の光周波数は必ずしも一致せず光周波数の差分が存在する(
図6)。この光周波数差が電気信号の振動周波数となり、当該複素ディジタル信号CSのオフセット周波数Δfとなる。
【0063】
<周波数オフセット補償部22>
次に
図11を参照し、周波数オフセット補償部22を詳説する。本発明の周波数オフセット補償部22は、累乗法とよばれる手法によって複素ディジタル信号CSから変調の影響を取り除き、受信光シンボル搬送波の位相回転を抽出する。
【0064】
周波数オフセット補償部22には、遅延部21から複素ディジタル信号CSが入力される。この複素ディジタル信号CSは分岐され、分岐された一方の複素ディジタル信号CSは累乗演算部221に入力される。ここで、複素ディジタル信号CSに含まれるデータ変調成分を除去する。
【0065】
例えば、QPSK光変調された光シンボルから生成された複素ディジタル信号CSの場合、データ変調成分の位相角はπ/4、3π/4、-π/4、-3π/4(rad)であるので、複素ディジタル信号CSの複素表現は、(2)式のように表される。
【0066】
【0067】
データ変調成分の影響を除去する手段として、4乗演算を行う。すなわち、(2)式の両辺を4乗すると(3)式のように表される。
【0068】
【0069】
データ変調成分の位相角であるπ/4、3π/4、-π/4、-3π/4(rad)は4乗することで消去される。なお、ここでΔωtは周波数オフセットΔfの角周波数表現である。すなわち、データ変調成分の影響が除去され、光シンボルの搬送波成分と局発光Loの光角周波数オフセットΔωおよび光位相差Δθ(位相ズレ)(「搬送波オフセット・位相成分CCωθ」と呼ぶ)が生成される。この搬送波オフセット・位相成分CCωθをサンプル&ホールド部222および225に出力する。搬送波オフセット・位相成分CCωθをあらわに書くと(4)式のようになる。
【0070】
【0071】
サンプル&ホールド部222、224および225は、IndexBitデマップ部14において光シンボルが存在すると判断されたタイミングで生成されるタイミング信号(またはアクティベーションパターン信号APCS)が到着するタイミングで、当該サンプル&ホールド部222および225に入力された搬送波オフセット・位相成分CCωθを保持する。これにより、アクティベーションパターン信号APCSがONのタイミングの光シンボルに対応する搬送波オフセット・位相成分CCωθを保持することができる。
【0072】
サンプル&ホールド部222の出力(搬送波オフセット・位相成分CCωθ)は、遅延部223に入力される。この遅延部223は、光シンボルのタイムスロット時間分の遅延を与え、サンプル&ホールド部224に入力される。このことにより、もしタイミング信号(またはアクティベーションパターン信号APCS)が、光シンボルタイムスロットと等間隔の二連続で到着した場合は、サンプル&ホールド部224でホールドされている複素ディジタル信号は、サンプル&ホールド部222および225でホールドされている搬送波オフセット・位相成分CCωθと比べて、1光シンボルタイムスロット分過去の値がホールドされている。
【0073】
また、もし、タイミング信号(またはアクティベーションパターン信号APCS)が、N光シンボルタイムスロット分の間隔が開くと、サンプル&ホールド部224でホールドされている搬送波オフセット・位相成分CCωθは、サンプル&ホールド部222および225でホールドされている搬送波オフセット・位相成分CCωθと比べて、N光シンボルタイムスロット分過去の値がホールドされている。
【0074】
なお、サンプル&ホールド部224でホールドされている搬送波オフセット・位相成分CCωθを「CCωθ1」とし、サンプル&ホールド部222および225でホールドされている搬送波オフセット・位相成分CCωθとを「CCωθ2」とする。搬送波オフセット・位相成分CCωθ1は、搬送波オフセット・位相成分CCωθ2より時間的に前のシンボルの搬送波オフセット・位相成分CCωθである。
【0075】
いずれの場合も、アクティベーションパターン信号APCSがONのタイミングの光シンボルに対応する搬送波オフセット・位相成分CCωθが連続して保持されている。また、サンプル&ホールド部224および225に保持されている搬送波オフセット・位相成分CCωθの時間間隔も、サンプル&ホールド部224にデータが保持されてから、サンプル&ホールド部225にデータが保持されるまでの光シンボルタイムスロットの数から求めることができる。これにより、インデックス光変調の導入により光シンボルの到着が間欠的になっている状況下でも、単位時間当たりの位相差を求めることができるので、光シンボルと局発光Loの光角周波数オフセットΔω(オフセット周波数Δfに相当する。)を再生することが可能になる。
【0076】
乗算部226は、サンプル&ホールド部224からの入力信号である搬送波オフセット・位相成分CCωθ1の複素共役を演算する。その上で、サンプル&ホールド部225からの入力信号である搬送波オフセット・位相成分CCωθ2に乗算部226で乗算すれば、光シンボルの搬送波成分と局発光の光位相角差(以下、Δθが除去された信号(これを搬送波オフセット成分CCωと呼ぶ。))を得る。すなわち、(5)式のように求められる。
【0077】
【0078】
この搬送波オフセット成分CCω(t)は、サンプル&ホールド部225からの入力信号である搬送波オフセット・位相成分CCωθ2とサンプル&ホールド部224からの入力信号である搬送波オフセット・位相成分CCωθ1の位相差情報を有する。ここで、CCωθ1
*(t)はCCωθ1(t)の複素共役で、t2-t1はそれぞれのシンボルの時間間隔である。別の解釈をすると、サンプル&ホールド部224とサンプル&ホールド部225のホールド値がN光シンボルタイムスロット分の時間間隔でサンプル&ホールドされた複素ディジタル信号であるならば、式(5)の搬送波オフセット成分CCω(t)は、N光シンボルタイムスロット分の時間経過の過程で変化した複素ディジタル信号(再生された光シンボルの搬送波成分に相当)の位相変化量の情報を有することが分かる。
【0079】
サンプル&ホールド部222、遅延部223、サンプル&ホールド部224、225および乗算部226は、搬送波オフセット・位相成分CC
ωθと、アクティベーションパターン信号AP
CSが入力され搬送波オフセット成分CC
ωを抽出する搬送波オフセット成分抽出部22B1と言える。なお、
図11には搬送波オフセット成分抽出部22B1がサンプル&ホールド部222、遅延部223、サンプル&ホールド部224、225および乗算部226を含む意味で「22B1:222、223、224、225、226」と記した。
【0080】
位相算出部227は、式(5)の指数部であるΔω(t2-t1)を出力する。すなわち、位相角の値を出力する。ここで位相角値は、-π≦Δω(t2-t1)≦πの範囲で限定される。そのため、当該位相角値がπ近辺の値からいきなり-π近辺のあたりに跳躍すると誤差が発生する。そこで、アンラップ部228において、δ1=Δω(t2-t1)の跳躍誤差が最小となるように信号処理を行う。この動作のアルゴリズムは例えば非特許文献6を採用してもよい。このアンラップ部228の出力である位相回転値φΔfは、セレクタ部229に入力される。なお、位相回転値φΔfはオフセット周波数Δfによる位相回転値であるので、オフセットによる位相回転値φΔfと呼ぶ。
【0081】
遅延部22A1は、セレクタ部229に入力されるオフセットによる位相回転値φΔfと、セレクタ部229の駆動トリガとなるアクティベーションパターン信号APCSのタイミングが同期するように遅延調整する。このことにより、セレクタ部229は、アクティベーションパターン信号APCSがONのタイミングで、アンラップ部228から入力されたオフセットによる位相回転値φΔfを適切に出力させることができる。
【0082】
一方、セレクタ部229は、アクティベーションパターン信号AP
CSがOffのタイミングでは、レジスタ部22A0(
図11では「0」と示した。)に蓄積されている0値を選択して、これを出力させる。この動作により、アクティベーションパターン信号AP
CSがONのタイミングでは、オフセットによる位相回転値φΔfを出力し、アクティベーションパターン信号AP
CSがOFFのタイミングでは、0値を出力させる動作を安定的に実現できる。そして、これらの出力値を加算部22A2に入力する。
【0083】
加算部22A2は、オフセットによる位相回転量φΔfの累積値を計算する。オフセットによる位相回転値φΔfの累積値を計算するために、加算部22A2の出力値を遅延部22A3に分岐させ、1光シンボルタイムスロット幅分の時間(Ts)を遅延させる。その上で、セレクタ部229から出力されたオフセットによる位相回転値φΔfと一緒に加算部22A2に入力させる。これにより、オフセットによる位相回転値φΔfの累積値ΣφΔf(単に「オフセット累積値ΣφΔf」とも呼ぶ。)の計算が可能となる。すなわち、nシンボルタイムスロット時間後tnにおいてのオフセット累積値ΣφΔf(tn)は、時刻t1における位相回転量をθ1とすると、オフセット累積値ΣφΔfは(6)式のように表される。
【0084】
【0085】
このオフセット累積値ΣφΔf(t)は、同一時間において発生した周波数オフセットに起因する位相回転量(オフセットによる位相回転値φΔf)の総和に他ならない。そこで、このオフセット累積値ΣφΔf(t)を指数演算部22A4に入力する。
【0086】
指数演算部22A4は、加算部22A2の出力値であるΣφΔf(tn)を入力とし、exp{-jΣφΔf(tn)}の複素値を出力させ、乗算部22A6に入力する。この複素値を複素オフセット補償量CΣφΔfと呼ぶ。
【0087】
なお、位相算出部227、アンラップ部228、セレクタ部229、レジスタ部22A0、加算部22A2、遅延部22A3、指数演算部22A4は、搬送波オフセット成分CC
ωから複素オフセット補償量C
ΣφΔfを求める複素オフセット補償量算出部22B2といえる。なお、
図11には複素オフセット補償量算出部22B2が位相算出部227、アンラップ部228、セレクタ部229、レジスタ部22A0、加算部22A2、遅延部22A3、指数演算部22A4を含む意味で「22B2:227、228、229、22A0、22A2、22A3、22A4」と記した。
【0088】
乗算部22A6は、周波数オフセット補償部22に入力された複素ディジタル信号CSと指数演算部22A4から出力される複素オフセット補償量CΣφΔfを乗算する。これにより、周波数オフセット補償部22に入力された式(2)に記載の複素ディジタル信号CSの周波数オフセット成分Δfが補償され、(7)式で示される複素ディジタル信号の出力を得る。この複素ディジタル信号はオフセット周波数が補償された信号であり、オフセット補償信号CSfと呼ぶ。
【0089】
【0090】
ここで、遅延部22A5は、周波数オフセット補償部22に入力された複素ディジタル信号CSに対して、一連のオフセット周波数Δfの抽出に係る累乗演算部221から指数演算部22A4までの信号処理に必要とされる時間遅延(t1からtnまでの時間)と同一の遅延が与えられるように動作する。
【0091】
乗算部22A6の出力は、遅延部22A7を経てサンプル&ホールド部22A8に入力される。遅延部22A7において適切な遅延量を設定されることにより、サンプル&ホールド部22A8は、アクティベーションパターン信号APCSがONのタイミングでオフセット周波数Δfが補償された複素ディジタル信号CSfを出力させることができる。サンプル&ホールド部22A8の出力であるオフセット補償信号CSfは、周波数オフセット補償部22全体の出力となる。したがって、周波数オフセット補償部22は、複素ディジタル信号CSが入力され、受信部RXで発生するオフセット周波数Δfが補償されたオフセット補償信号CSfを出力する。
【0092】
この周波数オフセット補償部22全体の動作の効果を
図12に示す。
図12は、いずれの写真も横軸は実数軸であり、縦軸は虚数軸に相当する。PN7段の疑似ランダムデータパターンをデータ変調成分として周波数オフセット補償部22を作用させた効果を示す結果である。
図12(a)に示すように、周波数オフセット補償部22に入力される前の複素ディジタル信号CSの値は、時間の経過と共に複素平面上で回転する挙動を示す。一方、周波数オフセット補償部22での補償処理を受けると
図12(b)に示すように、周波数オフセット補償部22の出力では複素ディジタル信号CSの値は、静止した状態となる。この出力値であるオフセット補償信号CS
fを位相補償部23に入力する。
【0093】
<位相補償部23>
次に位相補償部23について説明する。
図9で示したように周波数オフセット補償部22の直後に配置された位相補償部23は、
図13のように構成される。まず、入力された複素ディジタル信号(オフセット補償信号CS
f)は、二手に分岐される。そのうちの一方は、累乗演算部231に入力される。ここで、複素ディジタル信号(オフセット補償信号CS
f)に含まれるデータ変調成分を除去し、受信光シンボルの搬送波位相と局発光位相の位相差情報を再生する。この累乗演算部231の動作は、周波数オフセット補償部22の累乗演算部221と同じ動作でよい。累乗演算部221の出力は搬送波位相成分CC
θとする。搬送波位相成分CC
θを顕わに書くと(8)式のようになる。
【0094】
【0095】
平均化部232は、累乗演算部231から出力される複素ディジタル信号(搬送波位相成分CCθ)の実部と虚部の各々についてLシンボル分の平均値Av(CCθ)を演算する。位相算出部233は、平均化部232から出力された受信光シンボルの搬送波位相成分の平均値Av(CCθ)から光位相差Δθを算出する。ここで、光位相差Δθは、光シンボルの搬送波成分と局発光の光位相差である。
【0096】
光位相差Δθは、-π≦Δθ(t2-t1)≦πの範囲で限定される。そのため、当該光位相差Δθがπ近辺の値からいきなり-π近辺のあたりに跳躍すると誤差が発生する。そこで、アンラップ部234において、δ1=Δθ(t2-t1)の跳躍誤差が最小となるように信号処理を行う。このアンラップ部234の動作は、周波数オフセット補償部22のアンラップ部228と同じ動作を実現する。このアンラップ部234の出力である光位相差Δθは、除算部235において、1/M倍され位相ズレ回転値Φθとなる。ここでMは、光シンボルの変調方式に依存する値であり、例えばQPSKの場合は、M=4である。
【0097】
指数演算部236は、除算部235の出力値である位相ズレ回転値Φθを入力とし、exp(-jΦθ)の複素値を出力させ、乗算部238に入力する。この複素値を複素位相ズレ補償量CΦθと呼ぶ。なお、アンラップ部234、除算部235および指数演算部236は、光位相差Δθが入力され複素位相ズレ補償量CΦθを算出する複素位相ズレ補償量算出部23B1と呼んでよい。
【0098】
遅延部237は、位相補償部23に入力された複素ディジタル信号CSf(オフセット補償信号CSf)を入力とする。遅延部237は、累乗演算部231に分岐された複素ディジタル信号CSf(オフセット補償信号CSf)が前記指数演算部236を経て乗算部238に入力されるまでにかかる時間と同じ遅延を与え、乗算部238に出力する。
【0099】
乗算部238は、位相補償部23に入力された複素ディジタル信号CSf(オフセット補償信号CSf)に対して、指数演算部236から出力された複素位相ズレ補償量CΦθを乗算する。乗算部238から出力される複素ディジタル信号は、この乗算処理により位相補償され、データ変調成分の位相角が、定義された信号点の位相角に整合するようになり、光シンボルの搬送波成分と局発光の光位相差Δθは補償される。この信号はオフセット周波数および位相差が補償されているので、オフセット&位相補償信号CSfθと呼ぶ。この乗算部238からの出力であるオフセット&位相補償信号CSfθを位相補償部23全体の出力とし、APMBitデマップ部25に入力する。オフセット&位相補償信号CSfθは(9)式の様に表される。
【0100】
【0101】
以上が、位相補償部23の全体構成となるが、
図14に示すように、位相補償部23に入力される前の複素ディジタル信号CS
f(オフセット補償信号CS
f)の値は、複素平面上で定義された信号点の位置からずれている。一方、位相補償部23で補償処理を受けた結果、位相補償部23の出力では複素ディジタル信号(オフセット&位相補償信号CS
fθ)の値は、
図14に示すように、定義された信号点の付近のものとなる。この出力値をAPMBitデマップ部25に入力する。
【0102】
<APMBitデマップ部25>
再び
図9を参照し、ApmBitデマップ部25について説明する。APMBitデマップ部25は、アクティベーションパターン信号AP
CSに同期して動作する。ここでアクティベーションパターン信号AP
CSは、光シンボルがONのタイミングで検波された複素ディジタル信号(オフセット&位相補償信号CS
fθ)とタイミング同期されるよう、遅延部24を経由して当該APMBiデマップ部25に入力される。当該APMBitデマップ部25は、アクティベーションパターン信号AP
CSがONのタイミングで入力された複素ディジタル信号(オフセット&位相補償信号CS
fθ)からディジタル符号に復号する機能を提供する。
【0103】
複素ディジタル信号(オフセット&位相補償信号CSfθ)からディジタル符号に復号化する方法として、複素平面上の信号点に対してGray符号を付与する方法がある。例えば、QPSK変調の場合、複素平面上の信号点1+j、-1+j、1-j、-1-jに対して、”11”,“01”,“10”,“00”の符号を割り当てる。
【0104】
APMBitデマップ部25は、入力された複素ディジタル信号(オフセット&位相補償信号CSfθ)に対して、信号点毎に尤度を計算し(非特許文献7)、最も尤度が高い信号点の符号を選択して復号する。APMBitデマップ部25の出力をシンボル復号符号DEAPとする。なお、APMBitデマップ部25の後段でレジスタ部27までの間に誤り訂正処理が行われてよい。
【0105】
また、信号点配置には、位相角で90°の回転対称性が存在する。そのため、光シンボルを復号する際に、複素平面のI軸とQ軸の解釈が入れ替わる可能性がある。これを回避するために、APMBitデマップ部25は、IQチャネル判別機能を有している。
【0106】
このIQチャネル判別機能を駆動するために、送信器は、トレーニング光シンボル(複素値1+j)を定期的に挿入し、受信光シンボルの位相基準を与える。IQチャネル判別機能は、トレーニング光シンボルを判別した上で、これより光シンボルの位相基準(複素値1+j)を把握し、光シンボルの位相回転の判別、すなわちIQチャネルの判別を正しく行う。
【0107】
また、本発明は、本発明の機能を有する光伝送システムにおいて、差動符号化方式を採用することにより、本APMBitデマップ部25のIQチャネル判別機能を省略することができる。差動符号化方式に対応したAPMBitデマップ部25では、N-1番目のアクティベーションパターン入力のタイミングで入力された差動符号化複素ディジタル信号SN-1とN番目のアクティベーションパターン入力のタイミングで入力した差動符号化複素ディジタル信号SNの位相差から復号する。例えば、位相差が0のときは00、π/2のときは01、-π/2のときは10、πのときは11等としで復号化する。
【0108】
<レジスタ部27>
レジスタ部27は、遅延部26を経由したアクティベーションパターン信号APCSを入力とし、アクティベーションパターン信号APCSがONのタイミングで、復号されたAPMBitの符号列(シンボル復号符号DEAP)を取得し保持する。ここで遅延部26は、アクティベーションパターン信号APCSと対応するAPMBitデマップ部25で復号されたシンボル復号符号DEAPの到着タイミングが同一となるように遅延時間が設定されている。このレジスタ部27で保存されたAMPBitデータ(シンボル復号符号DEAP)は、インデックス復調工程部10で復号されレジスタ部16に保存されているIndexBitの符号列(インデックス復号符号DEId)とタイミングが同期されながら読み出される。以上が、シンボル復調工程部20の動作となる。
【0109】
<パラレル/シリアル変換部29>
パラレル/シリアル変換部29は、インデックス復調工程部10で復号されレジスタ部16に保存されたIndexBitのインデックス復号符号DEIdとシンボル復調工程部20で復号されレジスタ部27に保存されたAPMBitのシンボル復号符号DEAPを読み出して、これらをシリアルな符号列SDATに変換し、光信号送信装置1で送信しようとした送信符号列(元情報INF)を復号し、復号された原信号(復号情報DE(INF))となる。ここで当該パラレル/シリアル変換部29は、遅延部28にてタイミング調整されたトリガ信号を入力し、この信号に基づきレジスタ部16およびレジスタ部27に蓄積されている符号の読み出し処理が行われる。
【0110】
以上が、本発明の第一の実施形態であるが、本実施形態は時間領域(N,K,M-QAM)インデックス光変調方式に基いて生成された光シンボルを受信できる機能を有する一方で、M-QAM光変調方式に基づいて生成された光シンボルの受信も可能である点に特徴を有する。
【0111】
M-QAM光シンボルだけを受信する際は、IndexBitデマップ部14におけるデマッピング(複素ディジタル信号から符号への変換)は停止するが、アクティベーションパターン信号APCSは、周波数オフセット補償部22に連続的に出力させる。このことにより、周波数オフセット補償部22は、光シンボルの到着周期に併せて連続的に動作する。
【0112】
その結果、M-QAM光変調方式に基づいて生成された光シンボルに対しても、周波数オフセット補償動作を実現することができる。また、本発明の位相補償部23とAPMBitデマップ部25は、もともと、時間領域(N,K,M-QAM)インデックス光変調方式またはM-QAM光変調方式にかかわりなく、光シンボルタイムスロットの周期で連続的に動作するように設計されているので、いずれの方式にも関わらず共通的に動作する。但し、トレーニング光シンボルの判別については、時間領域(N,K,M-QAM)インデックス光変調方式とM-QAM光変調方式の動作モードに合わせて回路を切り替えて動作する。なお、このモード切替およびIndexBitデマップ部14におけるデマッピングの停止は、別の信号として受け取ることとしてよい。
【0113】
パラレル/シリアル変換部29は、時間領域(N,K,M-QAM)インデックス光変調方式とM-QAM光変調方式の動作モードに合わせて、前段に備えてあるレジスタ部16および27からの読み出しパターンを変化させる。例えば、時間領域(8,1,QPSK)インデックス光変調方式の場合は、8光シンボル分のタイムスロットで1フレームを構成し、1フレーム中に1シンボルだけ光シンボルがONになるが、その場合は、シンボルのON/Offパターンが8種類となりIndex Bitで3bitの伝送が可能になる。
【0114】
一方、APMBitはQPSK光変調された光シンボルが1シンボルだけ到着するので2bitの伝送が可能である。パラレル/シリアル変換部29は、時間領域(N,K,M-QAM)インデックス光変調方式で動作する場合は、アクティベーションパターン信号APCSが入力されたタイミングで、レジスタ部16から3bit、レジスタ部27から2bitの符号を読み出す。
【0115】
一方、QPSK光変調された光シンボルを受信する場合、パラレル/シリアル変換部29は、時間領域(N,K,M-QAM)インデックス光変調方式で動作する場合は、アクティベーションパターン信号APCSが入力されたタイミングで、レジスタ部27から2bitずつ符号を読み出す。このような動作を実現することで、時間領域(N,K,M-QAM)インデックス光変調方式とM-QAM光変調方式の動作モード切り替えを実現する。
【0116】
このように、本発明の光信号送信装置1は、時間領域(N,K,M-QAM)インデックス光変調方式とM-QAM光変調方式の両変調方式にほぼ同一の回路構成で対応できる点で特長を有する。
【0117】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態で示したシンボル復調工程部20において配置されている周波数オフセット補償部22および位相補償部23(
図9参照)に配置されている累乗演算部221(
図11参照)および累乗演算部231(
図13参照)の代わりに、後述する仮判定演算部221a(
図15参照)および231a(
図17参照)が適用される。当該仮判定演算部221aおよび231aは、受信光シンボルに対応する複素ディジタル信号CSから、データ変調成分の影響を除去する手段として適用される点で、第1の実施形態における累乗演算部221と同じ機能を提供する。
【0118】
仮判定演算部221aおよび仮判定演算部231aを有する周波数オフセット補償部および位相補償部を、周波数オフセット補償部22aおよび位相補償部23aとする。周波数オフセット補償部22aおよび位相補償部23aは周波数オフセット補償部22および位相補償部23と同じ動作を行う。従って周波数オフセット補償部22aおよび位相補償部23aを含むシンボル復調工程部20の動作も第1の実施形態の場合と変わりはない。
【0119】
図15に周波数オフセット補償部22aの構成を示す。
図11の周波数オフセット補償部22との相違点は、累乗演算部221が仮判定演算部221aに置き換えられている点と、指数演算部22A4の出力である複素オフセット補償量C
ΣφΔfが仮判定演算部2
21aに入力されている点である。
【0120】
図16は、周波数オフセット補償部22aに組み込まれている仮判定演算部221aの構成を示したものである。まず仮判定演算部221aには、光シンボルに対応する下記(7)式の複素ディジタル信号CSが入力される。ここで、光シンボルは、QPSK光変調されていると仮定しており、光シンボルの搬送波成分と局発光の光角周波数オフセットをΔω、光位相差をΔθとしている。この仮判定演算部221aに(10)式で表される複素ディジタル信号CSが入力されると、複素ディジタル信号CSは、二分岐された後、一方は、乗算部2211、もう一方は、乗算部2213に入力される。
【0121】
【0122】
一方、周波数オフセット補償部22aの出力側にある指数演算部22A4からは光角周波数オフセットを補償する信号(複素オフセット補償量CΣφΔf)がフィードバックされている。ただし、このフィードバック信号は、時刻tnよりも過去の時刻tm時点の複素ディジタル信号CS(tm)に基づいて生成された信号であるので、(11)式のように表される。
【0123】
【0124】
(11)式の複素オフセット補償量CΣφΔfが乗算部2211に入力され、(10)式の複素ディジタル信号CSと乗算される。乗算の結果(12)式の複素ディジタル信号CSnpとなる。
【0125】
【0126】
この信号は周波数オフセットΔfの影響による複素ベクトルの連続的位相回転が抑制された信号といえる。この信号を抑制複素ディジタル信号CSnpと呼ぶ。この信号が仮判定部2212に入力される。仮判定部2212は式(12)の抑制複素ディジタル信号CSnpに対して、最も尤度の高い信号点を選択し、光角周波数オフセットや光位相差成分のω(tn-tm)+Δθn-Δθmが除去された(13)式で表される仮判定データ変調成分の逆数値TCS-1
fθを出力し、乗算部2213に入力する。
【0127】
【0128】
乗算部2213は、周波数オフセット補償部22aに入力された式(7)で表現される複素ディジタル信号CSと式(10)で表現される複素ディジタル信号を乗算することで、周波数オフセット補償部22aに入力された複素ディジタル信号CSからデータ変調成分を除去して、下記の(14)式で表現される光シンボルの搬送波オフセット・位相成分CCωθを再生する。この信号は第1の実施形態で示した周波数オフセット補償部22の出力である搬送波オフセット・位相成分CCωθと同じである。
【0129】
【0130】
このように本実施例の仮判定演算部221aは、第1の実施形態の累乗演算部221と同等の動作を実現する。
【0131】
図17に位相補償部23aの構成と、本実施例で新たに具備された仮判定演算部231aの実施例を
図18示す。この実施例は、周波数オフセット補償部22aに具備された仮判定演算部221aと同じ動作を実現する。但し、同一動作を実現する範囲は、式(13)から式(14)までの手続きに関するものである。
【0132】
図18を参照して、仮判定部2311には、オフセット周波数が補償されたオフセット補償信号CS
fが入力される。オフセット補償信号CS
fは(7)式のように求められた。(7)式を再掲する。
【0133】
【0134】
仮判定部2311は式(7)の複素ディジタル信号CSfに対して、最も尤度の高い信号点を選択し、光角周波数オフセットや光位相差成分のΔθn-Δθmが除去された(15)式で表される仮判定データ変調成分の逆数値TCS-1
θを出力し、乗算部2312に入力する。
【0135】
【0136】
(15)式の信号とオフセット補償信号CSfを乗算することで(16)式で表される搬送波位相成分CCθを得ることができる。これは第1の実施形態の位相補償部23の累乗演算部231と同じ動作となる。
【0137】
【0138】
第2の実施形態は、等位相間隔に配置された信号点が定義された時間領域(N,K,M-QAM)インデックス光変調方式ではなく、任意の信号点が定義された時間領域(N,K,M-QAM)インデックス光変調方式にも対応可能である。
【0139】
なお、第2の実施形態のインデックス復調工程部10およびシンボル復調工程部20は、第1実施形態の
図9で示した構成と同一の構成である。従って周波数オフセット補償部22aおよび位相補償部23の入出力信号は同じ信号が入出力される。従って、
図15においても、サンプル&ホールド部222、遅延部223、サンプル&ホールド部224および225は、搬送波オフセット・位相成分CC
ωθと、アクティベーションパターン信号AP
CSが入力され搬送波オフセット成分CC
ωを抽出する搬送波オフセット成分抽出部22B1と言える。また、位相算出部227、アンラップ部228、セレクタ部229、レジスタ部22A0、加算部22A2、遅延部22A3、指数演算部22A4は、搬送波オフセット成分CC
ωから複素オフセット補償量C
ΣφΔfを求める複素オフセット補償量算出部22B2といえる。
【0140】
(第3の実施形態)
図19は本発明の第三の実施形態の復調部6bの構成図である。本実施の形態では、第1の実施形態とほぼ同じ構成であるものの、位相補償部23もアクティベーションパターン信号AP
CSが入力される点で第1の実施形態と相違する。本実施の形態における位相補償部23を位相補償部23bとする。位相補償部23bには、第1の実施形態の場合同様、オフセット周波数Δfが補償されたオフセット補償信号CS
fが入力される。ここで、アクティベーションパターン信号AP
CSは、遅延部30(
図9参照)により、オフセット補償信号CS
fが位相補償部23bに入力されるタイミングと同期するように調整される。
【0141】
本実施形態の位相補償部23bは、
図20のように構成される。入力信号(オフセット補償信号CS
f)は分岐され、一方の信号は仮判定部231a、平均化部232b、位相算出部233、アンラップ部234、除算部235、指数演算部236を通り第1の実施形態の位相補償部23と同様の出力信号(複素位相ズレ補償量C
Φθ)を抽出し、乗算部238に至る。なお、平均化部232bの入出力の信号は、第1の実施形態における平均化部232と同じでるが、構成は異なる。この点は後述する。
【0142】
他方の信号は遅延部237を経て乗算部238に至る。この間の信号の処理は第1の実施形態の場合と同様である。なお、第1の実施形態で使われた累乗演算部231が仮判定部231aに置き換えられている。しかし、第2の実施形態でも説明したように、累乗演算部231と仮判定部231aは、入力信号と出力信号が全く同じになるので、置き換えることができる。もちろん、
図20において、仮判定部231aを累乗演算部231に置き換えてもよい。
【0143】
本実施形態における位相補償部23bは、第1の実施形態の構成に加え、平均化部232bにアクティベーションパターン信号APCSが入力される。さらに出力側にサンプル&ホールド部23A0を具備しており、アクティベーションパターン信号APCSが入力されたタイミングで、到着する位相補償されたオフセット&位相補償信号CSfθをホールドする。ここで、アクティベーションパターン信号APCSは、遅延部239で遅延が調整される。これにより、オフセット&位相補償信号CSfθとこれに対応するアクティベーションパターン信号APCSは、サンプル&ホールド部23A0に到着するタイミングが同期される。このサンプル&ホールド部23A0により、アクティベーションパターン信号APCSが存在するタイムスロットにおけるM-QAM復調信号を得ることができる。
【0144】
本実施形態の位相補償部23bに適用されている平均化部232bは、
図21に示すように構成される。入力された複素ディジタル信号(搬送波位相成分CC
θ)が、アクティベーションパターン信号AP
CSが入力されるたびに1シンボルタイム遅延部2321とサンプル&ホールド部2322の縦列構成に順次Pushされる。これにより、時間領域(N,K,QAM)インデックス光変調規則に基づき光シンボル電力が存在するシンボルタイムスロットのみの複素ディジタル信号を複素加算部2323で加算し、複素除算部2324で除算されることにより、より正確に複素ディジタル信号の平均値を算出できるようになり、最終的には平均化部232bの直後に配置される位相算出部233(
図20参照。)で、より正確な搬送波位相情報を推定できるようになる。
【0145】
(第4の実施形態)
図22は本発明の第4の実施形態である。本実施の形態は、第三の実施形態とほぼ同じ構成であるものの、位相補償部23の機能が強化され位相スリップ低減機能が付加されている点が第3の実施形態と相違する。本実施形態の位相補償部23を位相スリップ低減機能付位相補償部23cと呼ぶ。
【0146】
本実施形態の位相スリップ低減機能付位相補償部23cは、
図23のように構成される。第3実施形態の位相補償部23bと異なるのは、位相スリップ低減機能付位相補償部23cは、第3実施形態の位相補償部23bと同一の構成の位相補償部230に加えて、位相スリップ補償部310が追加されている点である。ここで位相スリップ補償部310は、基本的には特許文献1に記載の構成と同一のものである。
【0147】
位相スリップは、受信光シンボルより周波数オフセット補償および位相補償した複素ディジタル信号の位相が、本来の位相より±90度または180度回転した状態に遷移する現象である。位相スリップを検出するために、位相補償部230で再生され除算部235から出力される搬送波位相情報(位相ズレ回転値Φθ)を利用する。本実施形態では、当該搬送波位相情報は、分岐され遅延差分部312に入力される。ここで遅延差分部312は、遅延部311を経由したアクティベーションパターン信号APCSも入力される。このアクティベーションパターン信号APCSは、光シンボルに対応する複素ディジタル信号から再生された搬送波位相情報(位相ズレ回転値Φθ)が遅延差分部312に入力されるタイミングと同期するよう、遅延部311で調整される。
【0148】
遅延差分部312は、特定時間差における搬送波位相情報(位相ズレ回転値Φθ)の差分を算出する。ここで、前記特定時間差は、平均化部232において平均化される受信光シンボル数の1.0から1.5倍程度の数の光シンボルの受信に係る時間を設定する。遅延差分部312は、この設定時間において発生する搬送波位相の差を検出する。もし、位相スリップが発生していなければ、設定時間における搬送波位相の差分は小さい値となる。一方で、位相スリップが発生している場合は、この搬送波位相の差分が大きくなり1rad以上π/2rad未満の値となる。この搬送波位相の差分をスリップ判定部313に出力する。
【0149】
スリップ判定部313は、遅延差分部312から出力された搬送波位相の差分値から、位相スリップの回転角を判定する。すなわちπ/2、π、-π/2radのいずれかであるかを判定する。その上で、判定結果Resをサンプル&ホールド部314に出力する。また、当該スリップ判定部313は、位相スリップが新規に発生したと判定する度にトリガ信号Trをサンプル&ホールド部314に発出する。
【0150】
ここで、サンプル&ホールド部314は、スリップ判定部313から出力された判定結果Resの負値を次のトリガ信号Trが入力されるまで保持し、保持値を指数演算部315に出力し続ける。指数演算部315は、入力された判定結果Resを入力とし、exp(-j・Res)を乗算部317に出力する。
【0151】
乗算部317は、位相補償部230から出力されたオフセット&位相補償信号CSfθが入力される。このオフセット&位相補償信号CSfθは、遅延部316を経由して入力されている。この遅延部316は、遅延差分部312、スリップ判定部313、サンプル&ホールド部314、指数演算部315に係る遅延時間と同等の遅延が与えられる。その結果、乗算部317は、位相スリップ補償された強化オフセット&位相補償信号FCSfθが出力されるようになる。
【0152】
このように本発明の第4の実施形態は、時間領域(N,K,M-QAM)インデックス光変調信号に対しても位相スリップ補償の実現が可能になる。また本実施形態は、第一の実施形態から第三の実施形態で実現される特徴の全てを有しており、同一の回路で時間領域(M,K,M-QAM)インデックス光変調信号のみならずM-QAM光変調信号の受信も可能になる。
【0153】
(第5の実施形態)
図24は本発明の第5の実施形態である。本実施の形態は、第4の実施形態とほぼ同じ構成であるものの、第4の実施形態とは異なりインデックス復調工程部10におけるデマッピングエラーを訂正し、本発明の光信号復調装置3で発生する符号誤り率を低減させる機能を実現している。インデックス復調工程部10におけるデマッピングエラーの訂正は、軟判定FEC(Forward Error Correction)機能付IndexBitデマップ部14dで実現されている。
【0154】
軟判定FEC機能付IndexBitデマップ部14dは、
図25のように構成される。当該構成部には、複素ディジタル信号に対する振幅演算値が入力されるが、時間領域(N,K,M-QAM)インデックス光変調信号の振幅演算値に対する軟判定処理を実施し(軟判定部141)、IndexBitにデマッピングする。ここでは、フレームタイミング抽出部12から入力されるトリガ信号(先頭通知信号S
TOP)を手掛かりにインデックス光変調信号のNシンボルフレームの先頭タイミングを把握する。
【0155】
そのうえで、Nシンボル分の尤度を計算し、各シンボルタイムスロットにおける光シンボルがOnであるかOffであるかの尤度を計算する。そのうえで、N個の尤度情報を多元LDPC(Low Density Parity Check)符号復号部142(非特許文献8)に入力する。多元LDPC符号復号部142では、光シンボルが存在するタイムスロットを正しく把握し、IndexBitにデマッピングし、インデックス復号符号DEIdを出力する。また同時に、インデックス復号符号DEIdに基づいて、光シンボルが存在するタイムスロットに対応したアクティベーションパターン信号APCSを生成する。
【0156】
このように、第5の実施形態は、第4の実施形態と比較して、IndexBitの符号誤り率のみならず、アクティベーションパターンの発生誤りも低減させることができる。例えば、適切に多元LDPC符号を設計することにより、アクティベーションパターンの発生誤り率を4×10-2程度から10-9にまで大幅に低減できる。
【実施例0157】
<シミュレーション>
図9の復調部6の性能を評価するためにシミュレーションを行った。シミュレータは、N=8シンボル長のサブフレームにおいて、K=1,2,3,4の条件におけるプリFEC(Forward Error Correction:前方誤り訂正機能)ビット誤り率(BER)の性能を評価するように設計されており、サブフレーム長の半分以下である。これは、時間領域(N,K,BPSK)のユークリッド距離がBPSKの半分になるためである。このことは、活性化された時間領域(N,K,BPSK)の各シンボルの光パワーは、BPSKの各シンボルの2倍を超える必要があることを意味する。また、参考のため、時間領域(16,1,BPSK)とBPSKについてもシミュレーションを行った。
【0158】
シミュレーションでは、模擬信号源と局部発振器源における白色ガウス雑音(AWGN)、周波数オフセット、位相雑音を(17)式のように表した。
【0159】
【0160】
ここで、xp(k)は送信時のシンボル、nハット(k)((17)式では「n」の上にキャレットが付く。)はAWGN成分、Δfは信号と局部発振器の周波数オフセット、ΔTはサンプリング時間、θハット(k)((17)式では「θ」の上にキャレットが付く。)はレーザ光源によって付加される位相雑音成分である。
【0161】
また、シミュレーションでは、信号光源と局部発振器のスペクトル線幅が同じであると仮定し、各光源に由来する位相ノイズは、非特許文献9から取得した分散を持つゼロ平均ガウスノイズであるとした。具体的には(18)式である。
【0162】
【0163】
図26は、信号対雑音比(SNR:横軸)の関数としてのBER(縦軸)のシミュレーション結果を示す。ここでは、実験条件をできるだけ忠実にエミュレートするために、ローパスフィルタとして、ロールオフ率0.1のルートレイズドコサインフィルタを組み込んだ。
【0164】
シミュレーションでは、シンボルレートHを25GBaud、周波数オフセットΔAを100MHz、レーザースペクトラムライン幅Δνを100kHzと仮定した。その結果、時間領域-IM方式による受信可能SNRの下限値の拡張が明らかになった。N=8、K=4の変調パラメータ、すなわち時間領域(8,4,BPSK)では、データレートはBPSKより25%高いが、SNRの下界はBPSKより0.2dB悪い。時間領域(8,3,BPSK)では、SNRの下限が1.0dB低下しているが、回線レートはBPSKと同じである。時間領域(8,2,BPSK)の場合、SNRの下限値は2.5dBと大幅に低下し、回線速度は1bit/symbolから6/8bit/symbolに低下している。
【0165】
この値は、4/8ビット/シンボル・ライン・レートを実現する時間領域(8,1,BPSK)では6.5dBに、5/16ビット/シンボル・ライン・レートを実現する時間領域(16,1,BPSK)では8.5dBに拡張される。時間領域(8,1,BPSK)と比較して、時間領域(16,1,BPSK)ではSNRの下限値の拡張は2.0dBに過ぎない。
【0166】
このように、時間領域(N,K,BPSK)方式は、従来のBPSK方式で実現される基本的なラインレートからラインレートを下げることができるため、エネルギー効率の高い運用を実現することができる。これらの拡張は、時間領域(N,K,BPSK)光信号の高いピークパワーに由来する。これらの高いピークパワーは、従来のBPSK光信号の低SNR領域で現れるサイクルスリップの低減にも寄与している。
【0167】
また、これらの拡張は、Index-chに内部FECを適用することなく達成されていることに注意することが重要である。時間領域(N、K、BPSK)システムは、低電力動作中に、フィードフォワード誤り訂正を伴う反復周波数または位相回復技術のような重い回路実装要件を必要としない。
【0168】
<伝送実験>
図9の復調部6を作製した。ここでボーレートとは、活性化パターンを形成しAPMビットデータを伝えない「ヌルシンボル」を含むシンボルレートを示す。疑似ランダム列PRBS(2
7-1)のデータストリームを生成し、Index-chとAPM-chにデマルチプレクスした。この実験では、データストリームは4ビットごとに分離された。分離されたデータは、Index-chでは3ビット、APM-chでは1ビットのデータ部分にデマルチプレクスされた。
【0169】
Index-chの3ビットデータ部の最初の部分は(01000000)のような8シンボル時間スロット長の活性化パターンにマッピングされた。一方、APM-chの1ビット部分の第2部分は(1)や(-1)のように差動プリコーディングされている。複素シンボルは、活性化パターンとプリコーディングされた複素シンボルを乗算するだけで生成される。実際の電気信号は、正負の出力ポートを持つ1CH任意波発生器を用いて生成された。
【0170】
偏波多重は、2シンボルのタイムスロット長を持つ遅延線によってエミュレートされた。これらの2つの電気信号は、偏波多重LiNbO3ベースの光I/Q変調器に入力された。ADCのアナログ帯域幅が限られているため、2.5GBaudという低いシンボルレートの条件を検討したためである。周波数ドリフトを低減するために外部共振器レーザ光源を採用し、そのスペクトル線幅は10~100kHzのオーダーであった。
【0171】
受信機は、光バンドパスフィルタ付き光プリアンプで構成されている。受信した光信号は-17dBmに増幅され、偏波・位相ダイバーシティ受信機に入力される。光周波数ドリフトを最小限に抑えるため、外部共振器レーザ光源を局部発振器として採用した。
【0172】
レーザ光源の温度を制御することで、光信号からの周波数オフセットを約15MHzに制御した。出力パワーは5dBmであった。偏波・位相ダイバーシティ受信機からの4つの出力信号は、アナログ帯域幅、急峻度、ストップバンド減衰がそれぞれ2.0GHz、0.85、60dBのローパスフィルターを用いて、5Gサンプル/秒で動作するADCによってサンプリングされた。したがって、ノイズ帯域幅は2.5Gbaudシンボル検出の理想条件のほぼ2倍となる。そのため、今回の実験では、分散補償器と偏波補償器の実装を省略した。しかし、従来の分散補償器を適用しても大きな問題はないと予想される。
【0173】
図27は、2.5Gbpsの時間領域(8,1,BPSK)光信号を偏波多重した場合の典型的なコンステレーション図である。
図27(a)に示す様に、コンステレーションはゼロ付近に現れ、非特許文献10の順列変調で得られるものと同じである。順列変調とは異なり、TDSC-IM方式では、多段復号を使用することにより、光信号をセット分割方式で復号する。
図27(b)に示すように、ゼロ点付近のコンスタレーションを除去し、搬送波周波数と位相を回復することに成功した。
【0174】
図28(a)は、2.5GBaud偏波多重時間領域(8,1,BPSK)光信号のBERを受信光パワーの関数として示している。測定は,シングルモードファイバを用いたバック・トゥ・バック伝送と20km伝送の両方で実施した.また、2.5GBaud偏波多重BPSK光信号のバック・トゥ・バックBERを測定した。ビットエラーは、光信号パワーが-47dBm以下の領域で急峻に増加した。
【0175】
これは、実験セットのノイズ帯域幅を考慮すると、理論的なショットノイズ限界から2dBのペナルティに相当する。BER=10-3が得られる受信光パワーは,2.5GbaudのBPSK光信号を偏波多重した場合,-49dBmであった。一方,2.5GBaudの偏波多重時間領域(8,1,BPSK)光信号では-55dBmであることを確認した。
【0176】
このように、データ伝送レートをBPSK光信号の半分に下げながら、受信感度が6dB向上することを確認した。この6dBの受信感度向上は、時間領域(8,1,BPSK)でSNRの下限を6.5dBに拡張した
図26の結果と一致する。
【0177】
これはE
b/N
0比の3dBの改善に相当する。この利得は、情報データの伝送に活性化パターンを使用することに由来する。次に、Delayed BPSK受信機の性能評価を行った。この検出方式は、受信機の局部発振器の搬送波周波数と位相偏差を補正するためのCFRモジュールとCPRモジュールの複雑さを軽減できるからである。
図28(b)は,2.5GBaud偏波多重TDSC(8,1,DBPSK)IMとDBPSK光信号のBERを受信光パワーの関数として示している。
【0178】
DBPSK光信号の感度はBPSK光信号に比べて3dB近く劣化した。一方、時間領域(8,1,DBPSK)光信号では劣化は見られなかった。これは、時間領域(8,1,DBPSK)光信号のIndexビットに起因するビットエラーが、APMビットの検出方式を用いることで回避されていることを示している。この結果はまた、Index-chとAPM-chの間に受信感度の最小値の差が存在することを示している。
【0179】
<周波数オフセットに対する耐性>
時間領域(8,1,BPSK)方式は、受信感度の点では優れた性能を実現しているが、キャリア周波数と局部発振器周波数の間の周波数オフセットに対しては本質的に弱い。これは、時間領域(N,K,BPSK)受信機が、活性化パターン信号の助けを借りて、N個のタイムスロット長のサブフレームごとに、既存のK個のタイムスロットから搬送波周波数と位相を回復しなければならないためである。これは時間間隔を増加させ、連続する2つの活性化光シンボル間の位相変化に対する耐性に直接影響する。
【0180】
図29は,時間領域(8,1,BPSK)光信号とBPSK光信号のBERを,シンボルレートで正規化した周波数オフセットの関数として実測とシミュレーションの両方で示している。横軸は規格化されたオフセット周波数であり、縦軸はエラーレートである。2.5GBaudの時間領域(8,1,BPSK)光信号の-50dBmの周波数オフセットの上限はわずか17MHzであるのに対し、2.5GBaudのBPSK光信号の-43dBmの周波数オフセットの上限は800MHzに達することが確認された。活性化された光信号の最長時間間隔は15シンボルタイムスロットに及ぶため,T時間領域(8,1,BPSK)光信号の上限はBPSK光信号の15分の1、約53MHzになると予想された。しかし、この結果は、搬送波周波数と受信局部発振器の間の周波数オフセットの許容範囲が小さいことを示している。
【0181】
以上のように、2.5GBaudの偏波多重時間領域(8,1,BPSK)光信号を20kmのシングルモードファイバで復調することに成功した。データレートがBPSK光信号の半分に低下したにもかかわらず、時間領域(8,1,BPSK)光信号の受信感度は6dB近く向上した。
【0182】
これは、Eb/N0比が3dB向上することを意味し、既存のシステムよりも伝送距離を20km以上拡大して接続性を提供できる。逆に、局部発振器の光パワーを低減することで、前置増幅器のないシステムにおける各光ネットワークユニット(ONU)のエネルギー消費を削減することができる。これらの利点は、CFRモジュールに周波数弁別器を追加することで、復調器の周波数オフセットに対する耐性が低くなるという問題に対処するのに十分である。
【0183】
この制約があっても、時間領域(N,K,M-QAM)方式は、フィードフォワード誤り訂正を用いた反復周波数・位相回復のようなさらなる重い回路実装要件に依存することなく、誤り訂正符号の冗長性や誤り訂正符号のための回路規模を強化することなく、搬送波位相回復の性能を向上させることができる。
【0184】
光アクセスネットワークにおける時間領域(N,K,MQAM)方式の主なユースケースは3つあると考えている。最初のユースケースでは、時間領域(N,K,M-QAM)方式は、トラフィックが少ないリンクに適用される。リンクは省エネモードで運用することができる。第2のユースケースでは、時間領域(N,K,MQAM)方式は、帯域幅よりも経済的な接続を必要とするリモートユーザーに対応するために適用される。
【0185】
リンクは、より高い光ピークパワーを得るために、より高いエネルギーモードで運用される。時間領域(N,K,M-QAM)方式は、従来のM-QAM方式と共通のプラットフォームを開発することで、チャネル容量を適度に犠牲にしながら、この要求に対処できる可能性がある。これにより、遠隔の農村地域が直面しているディジタルデバイドの問題を解決できるかもしれない。また、これら2つの動作モードを自動的に組み合わせることで、従来の非対称ディジタル加入者線(ADSL)ベースの銅線アクセスサービスのように、光ファイバーアクセスリンクの状態に適応した弾力的なリンク容量サービスを開発する道が開けるかもしれない。
【0186】
時間領域(N,K,M-QAM)方式は、時間領域(N,K,QPSK/8-PSK)のようなデュアルモードインデックス変調方式をサポートできる高次のM-QAMベースのシステムにおいても、受信感度の改善に有益であると期待される。これらの方式は、8-PSKと同じチャネル容量を維持しながら、8-PSKと比較して受信感度を約1dB向上させることが期待される。
本発明は、高度情報化社会に欠かせない社会インフラシステムとなっている光アクセスネットワークに適用される。従来の光アクセスネットワークにおいては、前記OLTと前記ONUの光損失バジェットは29dBとなっており、伝送可能距離20kmとなっている。これらの条件を満足できなくなると、通信回線の維持は不可能となり10Gbit/sの伝送レートが全断となる。
本発明は、時間領域インデックス光変調方式を実現し、前記OLTと前記ONUの間の伝送路条件の変化に併せて、光シンボルを間引きすることで伝送レートを可変にすることが可能となる。つまり、伝送路条件が悪く光損失バジェット29dBを上回る条件下においても、追加の光損失バジェットが8dB程度まであれば、徐々に伝送レートを低減させることで通信回線の全断を避けることが可能となる。すなわち、前記OLTからより遠隔地に配備されたONUに対しても、伝送レートの低下があるものの通信回線の接続性を確保し、光アクセスネットワークサービスの提供エリアの拡大、ひいてはディジタルデバイドの解消に貢献できる。