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特開2024-100736複数の検出器を用いるライブ化学撮像
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100736
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】複数の検出器を用いるライブ化学撮像
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/2206 20180101AFI20240719BHJP
   G01N 23/2252 20180101ALI20240719BHJP
   H01J 37/252 20060101ALI20240719BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20240719BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20240719BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G01N23/2206
G01N23/2252
H01J37/252 A
H01J37/28 B
H01J37/244
H01J37/22 502H
【審査請求】未請求
【請求項の数】34
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024003090
(22)【出願日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】2300537.4
(32)【優先日】2023-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】507329985
【氏名又は名称】オックスフォード インストルメンツ ナノテクノロジー ツールス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー ハイド
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ステイサム
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ピナード
(72)【発明者】
【氏名】サイモン バージェス
(72)【発明者】
【氏名】ハイサム マンスール
【テーマコード(参考)】
2G001
5C101
【Fターム(参考)】
2G001AA03
2G001BA05
2G001BA07
2G001BA15
2G001BA30
2G001CA01
2G001CA03
2G001CA10
2G001DA02
2G001DA06
2G001EA03
2G001EA05
2G001GA01
2G001GA06
2G001HA03
2G001HA07
2G001HA13
2G001HA15
2G001JA13
2G001KA01
2G001PA14
2G001QA01
2G001SA16
5C101AA03
5C101BB06
5C101EE22
5C101EE51
5C101GG03
5C101GG09
5C101GG20
5C101GG28
5C101GG42
5C101HH25
5C101HH27
5C101HH34
5C101HH35
5C101HH36
5C101KK06
(57)【要約】
【課題】顕微鏡内で試料を分析する方法を提供する。
【解決手段】本方法は、電子検出器と、第1のX線検出器と、第2のX線検出器とを用いて複合画像フレームのシリーズを取得する段階であって、複合画像フレームを取得する段階が、集束電子ビームに試料の領域を横断させる段階と、電子セットを電子検出器を用いてモニタする段階と、得られるX線の第1及び第2のセットをそれぞれ第1のX線検出器及び第2のX線検出器を用いてモニタする段階と、複合画像フレームを生成するように第1の画像フレームと1又は2以上の第2の画像フレームとを組み合わせる段階とを含む上記取得する段階と、各複合画像フレームを順番に示すように更新される視覚ディスプレイ上に複合画像フレームのシリーズを表示する段階とを含む。顕微鏡内で試料を分析するためのシステムも提供する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡内で試料を分析する方法であって、
電子検出器と、第1のX線検出器と、第2のX線検出器とを用いて複合画像フレームのシリーズを取得する段階であって、
前記第1のX線検出器が、前記試料と集束電子ビームが前記試料に向けてそこから射出する電子ビーム源との間に位置決めされ、かつ前記第1のX線検出器には、前記第1のX線検出器と前記試料との間に挟まれて前記第1のX線検出器上への電子の入射を低減するように構成されたフィルタ部材が設けられ、
前記第2のX線検出器には、前記第2のX線検出器上への電子の入射を低減するように構成された偏向器配置が設けられ、かつ
前記複合画像フレームを取得することが、
(a)前記集束電子ビームに前記試料の領域を横断させる段階、
(b)第1の画像フレームを取得するために前記電子検出器を用いて前記試料の前記領域内の複数の場所から放出された、得られる電子のセットをモニタする段階であって、前記第1の画像フレームが、前記複数の場所に対応する複数のピクセルであって、前記複数の場所から放出されてモニタされた電子から導出された値を有する前記複数のピクセルを含む、前記モニタする段階、
(c)前記複数の場所に対応する複数のピクセルであって、それぞれの化学元素に特徴的であって前記複数の場所から放出されてモニタされたX線から、第1の判断基準に従って導出された値を有する前記複数のピクセルを各々が含む1又は2以上の第2の画像フレームを取得するために、それぞれ前記第1のX線検出器及び前記第2のX線検出器を用いて、前記複数の場所から放出された、得られるX線の第1及び第2のセットをモニタする段階であって、前記電子のセットと前記X線の第1及び第2のセットが、前記試料から実質的に同時に放出される、前記モニタする段階、及び
(d)前記複合画像フレームが、前記領域内の前記複数の場所から放出されてモニタされた電子及びX線から導出されたデータを提供するような前記複合画像フレームを生成するために、前記第1の画像フレームと前記1又は2以上の第2の画像フレームとを組み合わせる段階、
を含む、
前記取得する段階と、
前記複合画像フレームのシリーズを視覚ディスプレイ上に表示する段階であって、前記視覚ディスプレイが各複合画像フレームを順番に示すように更新される、前記視覚ディスプレイ上に表示する段階と、
を含む方法。
【請求項2】
前記1又は2以上の第2の画像フレームの各々に関して:
それぞれの前記化学元素に従って第1の判断基準がそれぞれ構成され、
前記第2の画像フレームによって含まれる前記複数のピクセルの前記値は、それぞれの前記第1の判断基準に従って導出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の判断基準は、段階(c)が、
合計データを、モニタされた前記X線の第1のセットを表すデータをモニタされた前記X線の第2のセットを表すデータと合計することにより、かつ前記1又は2以上の第2の画像フレームのうちの各々の前記ピクセルの前記値が前記合計データから取得されるように取得する段階、
を更に含むように構成されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の判断基準は、前記1又は2以上の第2の画像フレームの各々に関して、前記第1の判断基準に従った前記ピクセルの値の前記導出が、それぞれの前記化学元素を表す第1及び第2の値のセットを取得するように前記第1及び第2のX線検出器の各々から取得されたデータを処理する段階を含むように構成され、
前記ピクセルの値は、前記第1及び第2の値のセットから取得される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ピクセルの値を取得することは、前記第1及び第2の値のセットを合計することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ピクセルの値を取得することは、前記第1及び第2の値のセットのうちの選択されたものから前記ピクセルの値を取得することを含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記ピクセルの値を取得することは、重み付き関数に従って、前記第1及び第2の値のセットを組み合わせることを含む、請求項4~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第1の判断基準は、モニタされた前記X線の第1のセットから導出された第1のX線データ及びモニタされた前記X線の第2のセットから導出された第2のX線データの各々の信号対ノイズ比をそれぞれ表す第1及び第2の信号対ノイズパラメータのうちの少なくとも一方に基づいている、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
第2の画像フレームに関して、前記ピクセルの値が、それぞれの前記化学元素に関してより高い信号対ノイズ比を有する前記第1のX線データ及び前記第2のX線データのうちのX線データから優先的に導出されるように、前記第1の判断基準が前記第1及び第2の信号対ノイズパラメータの比較に基づいている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
各第2の画像フレームに関して、ピクセルの値が、前記第2の画像フレームに対応する前記化学元素に特徴的なX線に関して前記第1及び第2のX線検出器の各々によって出力された信号の強度に従って導出されるように、前記第1の判断基準が構成されている、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、前記複合画像フレームのシリーズのうちの少なくとも1つを取得する段階中にモニタされた前記X線の第2のセットに基づいて、識別された化学元素のセットを投入する段階を更に含み、
前記複合画像フレームのシリーズのうちの前記少なくとも1つを取得する段階中に、段階(c)は、識別された化学元素の前記セットの各化学元素に対してそれぞれの第2の画像フレームを取得する段階を含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第1の判断基準は、前記ピクセルの値が前記X線の第1のセットのみから導出されるように構成されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複合画像フレームを取得する段階は、前記1又は2以上の第2の画像フレームのうちの少なくとも1つに関してかつ集約判断基準に従って:
前記第2の画像フレーム内の前記ピクセルの1又は2以上の部分集合の各々に関して、1又は2以上のそれぞれの集約ピクセルの値を取得するように前記部分集合内の前記ピクセルの前記値を組み合わせる段階、及び
前記第2の画像フレーム内のピクセルの前記1又は2以上の部分集合の各々を、それぞれの前記集約ピクセルの値に等しい値を有する集約ピクセルで置換する段階、
を更に含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記集約判断基準は、前記第2の画像フレーム内の前記ピクセルの前記値がそこから導出される、前記X線をモニタするのに使用される前記X線検出器に依存して構成される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記部分集合の各々は、前記ピクセルの値がそこから導出される、それぞれのモニタされた前記X線に対応する信号パラメータの値に従って構成されたピクセル数を含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記信号パラメータは、前記ピクセルの値がそこから導出される、モニタされた前記X線のセットに従って構成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ピクセル数が、モニタされた前記X線の第1のセットによって含まれるX線から導出されたピクセルの値を有する第2の画像フレームに対するよりも、モニタされた前記X線の第2のセットによって含まれるX線から導出されたピクセルの値を有する第2の画像フレームに対して、より大きいように、前記信号パラメータが構成される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記ピクセル数が、前記電子ビームが前記試料に衝突する場所で前記第2の画像フレームの前記ピクセルの値がそこから導出される前記X線をモニタするのに使用される前記第1及び第2のX線検出器のうちの一方の全センサー区域によって範囲が定められる立体角に依存するように、前記信号パラメータが構成されている、請求項15~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記ピクセル数が、より小さい立体角に対してより大きく、かつより大きい立体角に対してより小さいように、前記信号パラメータが構成されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
段階(c)は、少なくとも2つの第2の画像フレームを取得する段階を含み、
前記第2の画像フレームのうちの少なくとも1つが、前記複数の場所に対応し、且つ、前記第1のセットによって含まれてそれぞれの化学元素に特徴的でかつ前記複数の場所から放出されたモニタされたX線から前記第1の判断基準に従って導出された値を有する、複数のピクセルを含み、
前記第2の画像フレームのうちの少なくとも1つの他のものが、前記複数の場所に対応し、且つ、前記第2のセットによって含まれてそれぞれの化学元素に特徴的でかつ前記複数の場所から放出されたモニタされたX線から前記第1の判断基準に従って導出された値を有する、複数のピクセルを含む、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、前記複合画像フレームのシリーズの少なくとも一部分を取得する段階中にモニタされた前記X線の第1及び第2のセットのいずれか又は両方に従って識別されたスペクトルピークのセットに対応する前記複合画像フレームのシリーズの前記少なくとも一部分に対する化学元素のセットを定める段階を更に含み、
複合画像フレームを取得する段階(c)は、前記化学元素のセットの各化学元素に対応するそれぞれの第2の画像フレームを取得する段階を含む、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記1又は2以上の第2の画像フレームのうちの第1のものの前記ピクセルは、第1の化学元素のそれぞれとは異なる第2の化学元素のそれぞれに特徴的なモニタされたX線の第4のセットのそれぞれと組み合わされた、モニタされたX線の第3のセットのそれぞれの組合せから導出された値を有し、モニタされたX線の第3及び第4のセットのそれぞれが、前記第1の判断基準に従って前記第1及び第2のセットから選択される、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
段階(c)は、複数の第2の画像フレームを取得する段階を含み、
前記複合画像フレームを生成することは、前記第2の画像フレームのうちの2又は3以上を並置することを含む、請求項1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
段階(c)は、複数の第2の画像フレームを取得する段階を含み、
前記複合画像フレームを生成することは、前記第2の画像フレームのうちの2又は3以上をオーバーレイすることを含む、請求項1~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
顕微鏡内で試料を分析するためのシステムであって、
試料と、集束電子ビームが前記試料に向けてそこから射出する電子ビーム源と、の間に使用時に位置決めされるように構成された第1のX線検出器と、
前記第1のX線検出器と前記試料との間に使用時に挟まれるように設けられ、前記第1のX線検出器上への電子の入射を低減するように構成されたフィルタ部材と、
使用時に第2のX線検出器上への電子の入射を低減するように構成された偏向器配置が設けられた該第2のX線検出器と、
電子検出器と、前記第1のX線検出器と、前記第2のX線検出器とを用いて複合画像フレームのシリーズを取得するように構成された制御モジュールであって、
複合画像フレームを取得する段階が、
(a)前記集束電子ビームに前記試料の領域を横断させる段階、
(b)複数の場所に対応する複数のピクセルであって、前記複数の場所から放出されてモニタされた電子から導出された値を有する前記複数のピクセルを含む第1の画像フレームを取得するために、前記電子検出器を用いて前記試料の前記領域内の前記複数の場所から放出された、得られる電子のセットをモニタする段階、
(c)前記複数の場所に対応する複数のピクセルであって、それぞれの化学元素に特徴的であって前記複数の場所から放出されたモニタされたX線から、第1の判断基準に従って導出された値を有する前記複数のピクセルを各々が含む1又は2以上の第2の画像フレームを取得するために、それぞれ前記第1のX線検出器及び前記第2のX線検出器を用いて、前記複数の場所から放出された、得られるX線の第1及び第2のセットをモニタする段階であって、前記電子のセットと前記X線の第1及び第2のセットが、前記試料から実質的に同時に放出される、前記モニタする段階、及び
(d)前記複合画像フレームが、前記領域内の前記複数の場所から放出されてモニタされた電子及びX線から導出されたデータを提供するような前記複合画像フレームを生成するために、前記第1の画像フレームと前記1又は2以上の第2の画像フレームとを組み合わせる段階、
を含む、前記制御モジュールと、
前記複合画像フレームの前記シリーズを視覚ディスプレイ上に表示するように構成された表示モジュールであって、前記視覚ディスプレイが各複合画像フレームを順番に示すように更新される、前記表示モジュールと、
を含むシステム。
【請求項26】
試料と、集束電子ビームが前記試料に向けてそこから射出する電子ビームアセンブリの磁極片と、の間に使用時に位置決めされるように構成された検出器モジュールを含み、前記検出器モジュールが、前記第1のX線検出器と前記フィルタ部材とを含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記検出器モジュールは、電子検出器を更に含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記偏向器配置は、電子を前記第2のX線検出器から離れるように偏向する磁場を発生するための磁石配置を含む、請求項25~27のいずれかに記載のシステム。
【請求項29】
前記磁石配置は、前記第2のX線検出器に対して近位に永久磁石及び電磁石のうちのいずれか1つ以上を含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記磁石配置は、前記顕微鏡の電子ビームアセンブリの磁石を含む、請求項28又は29に記載のシステム。
【請求項31】
前記偏向器配置は、電子を前記第2のX線検出器から離れるように偏向する電場を発生するための電極配置を含む、請求項25~30のいずれかに記載のシステム。
【請求項32】
前記偏向器配置は、100eVよりも高くかつ前記集束電子ビームの構成されたビームエネルギよりも低いエネルギを有する電子の少なくとも99%を、前記第2のX線検出器から離れるように偏向するように構成されている、請求項25~31のいずれかに記載のシステム。
【請求項33】
前記第1のX線検出器及び前記第2のX線検出器のうちの一方又は各々の位置を制御してそれらの衝突を防止するように構成されたインターロック機構を更に含む、請求項25~32のいずれかに記載のシステム。
【請求項34】
請求項1~24のいずれか1項に記載の方法を1又は2以上のプロセッサに実行させるように前記1又は2以上のプロセッサによって実行可能な命令を格納する非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーションを改善して高データ品質及び高速で試料の元素分析を提供するために電子検出器と共に複数のX線検出器を使用して電子顕微鏡内の試料に関する分析撮像データを取得すること及びそのための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、試料の面を探査するために走査電子顕微鏡(SEM)内で使用される典型的なシステムを示している。電子ビームは、減圧チャンバの内側に生成され、通常は磁気又は静電レンズの組合せによって集束される。ビームが試料に衝突すると、一部の電子は、試料から後方散乱され(後方散乱電子又はBSE)、又は試料と相互作用して2次電子(SE)とX線のようないくつかの他の放出物とを生成する。
【0003】
図2は、走査電子顕微鏡(SEM)100内のX線分析のための公知の装置を示している。
【0004】
従来の分析では、X線スペクトルは、試料101によってそれが集束電子ビーム102によって衝突された時に放出される個々のX線光子のエネルギを感知及び測定することによって測定される。(本明細書では、慣例は、電子ビームが試料に向けて垂直下向きに進行し、これが「下方」及び「上方」のような言葉に対する背景であることに注意されたい。実際に、電子ビームは、垂直上向きを含むあらゆる方向に向けることができる。)各X線光子は、エネルギ粒子であり、エネルギは、典型的には、固体検出器105を使用してX線エネルギに相関する電荷に変換される。電荷は、計数を記録することができるように測定され、記録された測定値のヒストグラムは、デジタルX線エネルギスペクトルを表している。化学元素に固有のピークは、X線エネルギスペクトル内で識別され、これらのピークの強度は、電子ビーム102の直ぐ下にある材料の元素含有量を決定するための判断基準として使用することができる。
【0005】
X線検出器105、電子顕微鏡の最終磁極片104、及び試料101は、通常は、全て同じ真空チャンバ内にある。真空は、電子を数keVエネルギまで加速してガス分子上で散乱することなく幅狭ビームに集束することができるように主として必要である。しかし、試料がより高い圧力の領域にある間に電子ビームが真空領域内に集束される場合がある代替構成がある。X線検出器は、電子ビームと同じ真空領域に又はより高い圧力の領域に位置付けられる場合がある。X線信号以外に、試料から後方散乱した電子(BSE)からの信号も、材料から後方散乱した電子の割合が材料の平均原子番号(Z)と共に増大するので、異なる材料を区別するのに有用である。その結果、多くの場合に、後方散乱電子検出器(BSED)が、試料101の上方かつ磁極片104の下方に位置決めされる。BSED検出器106は、典型的には、集束ビーム102が試料に達する時に通過する中心孔の周りに位置決めされた1又は2以上のセンサーセグメントを含む。この配置は、集束ビームが試料に衝突する点である「プローブスポット」でBSEDセグメントによって範囲が定められる収集立体角を最大に拡大し、それによってBSE信号を最大に強めるように設計される。試料内で発生し、面から射出する2次電子を検出し、それによって「SE」信号を生成するために、典型的に「Everhart-Thornley」型のものであってチャンバの一方の側に装着された追加の検出器が使用される。SE信号は、通常はBSE信号よりもかなり強く、入射ビームに対する面の向きに非常に高い感度を有する。
【0006】
集束入射ビームを磁気的又は静電的に偏向し、試料面上のピクセル位置の2D格子にわたって順番に配置することによってビームがいずれかの他のパターンでラスター化又は走査される場合に、モニタ上に表示することができて試料の拡大像を提供するデジタル画像は、各位置でのSE信号又はBSE信号を用いて構成することができる。この原理は、走査電子顕微鏡(SEM)に関する公知の作動原理であり、特にSE画像は、面トポグラフィを示すので、試料の付近をナビゲートするのに非常に有利である。試料上にいずれかのトポグラフィが存在する場合に、いずれかの傾斜面ファセットも、その向きに依存してある一定の方向に強くなるBSE信号を生成することになる。BSE信号は、電子ビームに対する法線から離れたファセットの傾斜方向にあるセンサー領域に関して強く、反対方向にあるセンサーに関して弱い。面傾斜に対するこの感度は、走査領域内の材料の組成変化によって生成される「原子番号コントラスト」又は「Zコントラスト」と干渉する「トポグラフィコントラスト」を画像内に生成する。BSE信号に対するトポグラフィの方向効果を最小にするために、BSE検出器の全感知区域が、入射電子ビームに対して対称に位置決めされることが必須である。理想的には、感知区域が中心孔の周りに完全回転対称性を有する円盤であることが考えられるが、回転対称性を維持しながら全感知区域を含む複数の独立したセンサーセグメントを使用するのにいくつかの利点がある。例えば、Micron Semiconductorのカタログ:http://79.170.44.80/micronsemiconductor.co.uk/wp-ontent/uploads/2017/03/MSL-OEM-Catalogues.pdfに見られるように、4回回転対称性を有する「4四分円」配置が一般的である。マルチセグメント化BSE検出器の全てのセグメントがビームの周りに対称に電子を収集するのに使用される場合に、トポグラフィコントラストではなく「原子番号」コントラストが優勢であることは公知である。例えば、ウィキペディア掲載記事:https://en.wikipedia.org/wiki/Scanning_electron_microscope#Detection_of_backscattered_electronsを参照されたい。
【0007】
すなわち、磁極片直下の106へのBSE検出器の配置は、BSE信号に関して良好な収集効率を提供するだけでなく、局所面傾斜よりも材料の平均原子番号の方をより的確に表す信号を収集することも可能にする。各ピクセル位置でのBSE信号を用いて、各ピクセル強度が当該位置での材料の原子番号を示す画像を構成することができる。
【0008】
同じ位置106を用いて、環状X線検出器に関する収集立体角を最大に拡大することができる。しかし、位置106にあるBSEDをX線検出器で置換することにより、トポグラフィに対する感度を持たないBSE信号を検出する性能が奪われることが考えられる。Soltau他(Microsc Microanal15(相補2)、2009年、204 5)は、BSEに対するセンサーセグメントのリングをX線センサーセグメントの外側リングで取り囲むことによってこの問題を解消する方法を提案している。
【0009】
BSE検出器セグメントは、中心孔に最も近く、かつその周りに対称に位置決めされるが、一方でX線検出器セグメントも同じく対称に位置決めされ、かつ中心孔からは遠い。
【0010】
この配置は、BSEDセグメントとX線センサーセグメントとの両方を試料に近づけてBSEDの全感知区域に関して4回回転対称性を維持するが、X線センサーセグメントに関する収集立体角は、BSEDセンサーを受け入れるために中心孔から離れた場所に位置決めされることによって損なわれる。更に、所与の区域に関して個々のX線センサーセグメントが「シリコンドリフト検出器」(SDD)型のもの(例えば、https://en.wikipedia.org/wiki/Silicon_drift_detectorを参照されたい)である場合に、円形センサーセグメントで最適な応答時間が得られ、従って、周囲リング配置にあるX線センサーセグメントの細長形状は、所与の感知区域に関する応答時間に関して最適ではない。
【0011】
X線検出器セグメントは後方散乱電子にも感度を有することになり、X線よりも高い強度のBSEがセンサーセグメントに衝突するので、通常、BSE信号は、弱いX線信号を凌駕し、有利なX線スペクトルの取得を妨げると考えられる。従って、低エネルギのX線がセンサーに通過することを許しながら最も高いエネルギのBSEの透過を防止するのに適切な厚みを有するフィルタ材料を試料とセンサーの間に挟むことが必要である。Liebel他(Microsc.Microanal.20(相補3)、2014年、1118~1119ページ)は、BSEセンサーとX線センサーとの組合せをX線センサーの前にあるフィルタと併用する配置を提案している。
【0012】
EDS(エネルギ分散型X線分光測定)構成を使用するSEMでは、X線信号は、電子信号と比較して非常に弱い。従来の分析手法は、オペレータが潜在的な着目領域を見つけるために試料面上の付近を検索する時に試料上で変化する視野の絶え間ない観察を可能にするほど十分に高速なリフレッシュ速度によるライブ更新電子画像を使用することである。当該の着目領域が位置付けられた状態で、当該領域からX線データは、収集されてX線データから導出された化学元素組成情報を着目視野の追加画像として使用するか又は典型的には単一合成画像内に電子データ(画像の輝度及びコントラスト)と組み合わせて混色するかのいずれかによって電子画像を改善するのに使用される。領域が着目に値しないことを組成情報が示した場合に、ライブ更新電子画像を用いて検索が再開される。この手順は、オペレータが決定を下す上で電子画像によって伝達される輝度及び形状の情報のみを有し、これらの情報は、組成変化と必ずしも一致するとは限らないので、重要な組成含有量を有する一部の領域を見落す可能性があることで非常に非効率的である場合がある。
【0013】
WO2019/016559に説明されている手法は、ライブ更新画像を同じリフレッシュ速度の化学元素組成情報によって改善するようにX線データを電子信号データと同時に取得する段階を含み、従って、より詳細な分析に適する可能性がより高い着目領域をオペレータが見つけることを助けるより多くの視覚的手掛かりを提供する。
【0014】
例えば、試料を移動する又は倍率を変化させることによって画像が変化する間に試料に関する有利情報をオペレータに示すほど十分に高速にリフレッシュされて十分に高い空間解像度を有するX線画像フレーム又は元素マップを収集する時に、従来のEDS検出器は、非常に高いビーム電流を使用する時にのみ十分な信号を生成することができる。
【0015】
達成可能なビーム電流は、電子アセンブリのタイプに依存する。高ビーム電流を達成するために、典型的には、SEMレンズ及び開口構成を変更しなければならず、この変更は、典型的には、大きいビーム直径に至り、空間解像度の一部の損失をもたらす。更に、高いビーム電流は、一部の試料に損傷を与える場合がある。
【0016】
試料が弾力性を示し、空間解像度が許容可能であるビーム電流であっても、組成情報の品質を改善するために可能な限り強いX線信号を取得することが望ましい。
【0017】
立体角を拡大し、それによってX線信号を強める1つの方法は、複数の従来EDS検出器を使用することによるものである。鉱石鉱物の単体分離の定量化では、粒子の分離に向けてデータの収集に4つまでの検出器を有するシステムが使用されてきた(例えば、Pirrie他、2009年、DOI:10.1007/978-1-4020-9204-6_26)。そのようなシステムは、スループットを改善することができるが、得られる立体角が最も大きい単一従来EDS検出器が生成するものよりもそれほど大きくないことに起因して、依然として高いビーム電流を使用する。更に、そのようなシステムは高価であり、専用電子顕微鏡配置を必要とし、殆どのポートを占有して他のセンサーの利用可能性及び電子顕微鏡の作動を厳しく制限する。
【0018】
試料の直ぐ上にかつ磁極片の直ぐ下に位置決めされたX線検出器は、それが試料に十分に近い場合にX線信号のかなり大きい強度増大を提供することができる。
【0019】
しかし、この位置では、試料から後方散乱した電子を経路変更するための磁石を受け入れるのに一般的に不十分な空間しかなく、上述のように、後方散乱電子がX線検出器に過負荷を与えるか又はそれを損傷することを防止するほど十分な厚みの適切な材料の層を試料と検出器の感知区域の間に挟む必要がある。残念ながら、この電子フィルタは、特に低エネルギX線に関してX線信号も減衰させることになる。
【0020】
後方散乱電子がフィルタ材料に衝突する時に、これらの電子の吸収の作用は、フィルタからの特性X線の放出を提供することになり、そのうちの一部は、X線センサーによって検出されることになる。従って、例えば、炭素フィルタは、炭素X線信号を生成することになり、この信号は、当該元素に関する信号を際立たせるか又は当該元素が視野に不在である場合に当該元素に関する誤感知信号を発生させることになる。
【0021】
低ビームエネルギでは、低エネルギX線のそれほど大きい減衰を引き起こさない薄めのフィルタが使用される場合がある。しかし、フィルタ厚が減少すると、フィルタが検出器から遮断することができる後方散乱電子のエネルギも減少することになる。従って、薄めのフィルタは、より低いビームエネルギの使用を一般的に必要とする。これは、多くの元素の検出をより低い強度のみを有してそれほど正確な結果を与えない低エネルギ線に限定する。
【0022】
走査電子顕微鏡では、入射電子は、典型的に20keVのエネルギまで加速され、このエネルギまでのBSEを遮断するために、少なくとも6ミクロン厚のマイラーのようなフィルタが必要である。
【0023】
そのようなフィルタが設けられた場合に、検出器は、エネルギが約1keVよりも低いX線に対して感度が低くなり、従って、1keVよりも低い特性線放出を有する元素は、X線スペクトル内で識別することが困難になる。例えば、元素Be、B、C、N、O、F、Ne、Naは、そのようなフィルタが設けられた場合に検出することが非常に困難であると考えられる。
【0024】
一部の既存配置による更に別の問題は、BSEセンサーとX線センサーとの組合せを含有するモジュールが、典型的なBSE検出器よりも大きい直径を有するので、モジュールは、顕微鏡の一方の側に装着された検出器又はいずれかの他の付属デバイスに対する試料103への視線を部分的又は完全に掩蔽する場合があることである。図2は、顕微鏡磁極片104の下方にある大口径検出器モジュール106によって従来配置で発生する側部装着式検出器105の視線遮蔽を示している。従って、既存配置は、センサー105及び106の両方の同時使用を一般的に除外し、分析を一度に1つのみの検出器成分を用いて実行することを必要とする。
【0025】
広範囲のX線エネルギを検出するための1つのソリューションは、WO 2014/202608 A1に説明されており、かつ異なる条件に対して異なるフィルタの使用を伴っている。しかし、試料を精査するために即時にデータを収集する段階は、訪れることになるいずれかの視野に存在する元素が検出可能であることを必要とする。フィルタが、炭素、酸素、又は窒素に特徴的であるような低エネルギX線を透過するほど十分に薄く製造される場合に、入射ビームエネルギを低減しなければならず、そうでなければ後方散乱電子がフィルタを貫通してX線センサーに到達することになる。ビームエネルギのこの低減は、より高いエネルギのX線の発生を低減し、一方の側に装着された従来検出器と比較してサブ磁極片検出器の収集立体角の利点を低減する。実際に、これは、広い化学元素範囲に関して試料面上の大きい区域を探査するのに1よりも多いフィルタ及び顕微鏡ビーム構成が必要とされ、未知の試料に関する対話型探査のための全ての元素の即時連続検出を非実用的にすることを意味する。
【0026】
顕微鏡のレンズが、X線検出器から離れるようにBSEを経路変更するための場を設けるように設計される特殊顕微鏡構成(US 11145487 B2)ではフィルタに関する要件を回避することができる。そのような設計は、走査電子顕微鏡で一般的な他の付属品に適合しない可能性があると考えられる。更に、そのような構成は、試料面を電子レンズの最終部分の近くに配置することも必要とし、この配置は、完全に平坦であるのではなく高さが変化する試料面を探査するために試料台を移動する時に非実用的である場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】WO 2019/016559
【特許文献2】WO 2014/202608 A1
【特許文献3】US 11145487 B2
【特許文献4】WO 2022/008924 A
【特許文献5】WO 2012/110754 A1
【特許文献6】PCT/GB2021/051752
【特許文献7】US 8,049,182 B2
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】Micron Semiconductorのカタログ、http://79.170.44.80/micronsemiconductor.co.uk/wp-ontent/uploads/2017/03/MSL-OEM-Catalogues.pdf
【非特許文献2】ウィキペディア掲載記事、https://en.wikipedia.org/wiki/Scanning_electron_microscope#Detection_of_backscattered_electrons
【非特許文献3】Soltau他(Microsc Microanal15(相補2)、2009年、204 5)
【非特許文献4】ウィキペディア掲載記事、https://en.wikipedia.org/wiki/Silicon_drift_detector
【非特許文献5】Liebel他(Microsc.Microanal.20(相補3)、2014年、1118~1119ページ)
【非特許文献6】Pirrie他、2009年、DOI:10.1007/978-1-4020-9204-6_26
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
電子顕微鏡内で試料を探査しながら電子検出器からの形態情報と広い元素範囲に関する高品質化学組成データとの連続表示を提供する試料分析のためのより有効な対話型手法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の第1の態様により、顕微鏡内で試料を分析する方法を提供し、本方法は、電子検出器と、第1のX線検出器と、第2のX線検出器とを用いてシリーズの複合画像フレームを取得する段階を含み、第1のX線検出器は、試料と集束電子ビームが試料に向けてそこから射出する電子ビーム源との間に位置決めされ、第1のX線検出器には、それと試料の間に挟まれて第1のX線検出器上への電子の入射を低減するようになったフィルタ部材が設けられ、第2のX線検出器には、その上への電子の入射を低減するように構成された偏向器配置が設けられ、複合画像フレームを取得する段階は、a)集束電子ビームに試料の領域を横断させる段階と、b)この試料の領域内の複数の場所に対応する複数のピクセルであって、これらの場所から放出されてモニタされた電子から導出された値を有する上記複数のピクセルを含む第1の画像フレームを取得するために、これらの場所から放出された得られる電子セットを電子検出器を用いてモニタする段階と、c)これら複数の場所に対応する複数のピクセルであって、それぞれの化学元素に特徴的であり、かつこれらの場所から放出されてモニタされたX線から第1の判断基準に従って導出された値を有する上記複数のピクセルを各々が含む1又は2以上の第2の画像フレームを取得するために、これらの場所から放出された得られるX線の第1及び第2のセットをそれぞれ第1のX線検出器及び第2のX線検出器を用いてモニタする段階であって、電子セットと第1及び第2のセットのX線とが試料から実質的に同時に放出される上記モニタする段階と、d)これら複数の場所から放出されてモニタされた電子及びX線から導出されたデータを提供するために複合画像フレームを生成するように第1の画像フレームと1又は2以上の第2の画像フレームとを組み合わせる段階とを含み、本方法は、更に、複合画像フレームシリーズを視覚ディスプレイ上に表示する段階を含み、視覚ディスプレイは、各複合画像フレームを順番に示すように更新される。
【0031】
本発明者は、公知の検出器配置及び分析技術に関連付けられた問題を複数の検出器とそこから画像データを導出する段階とを伴う新しい手法によって解消することができることを認識した。効率的で迅速な試料ナビゲーションは、第1のものが広い収集立体角を有するように位置決めされ、第2のものにX線信号の伝達を損なうことなく入射電子の効果を軽減するための偏向器配置が設けられた2つのX線検出器を用いて分析下にある試料から放出された粒子をモニタする段階と、生成及び表示することができる元素マップの品質を最適化するような第1の判断基準に従う特定の方式でモニタされたX線データを利用する段階とにより、より高い品質の元素分析視覚データと共に可能にされる。
【0032】
本方法は、顕微鏡視野が変化している時の使用に適する十分に高速のリフレッシュ速度で実時間撮像を提供することができ、かつ非常に高いビーム電流を必要とすることなく低原子番号元素に関する低エネルギ情報の損失を回避しながら形態情報と組成情報に関するX線強度とを組み合わせることができるソリューションを提供する。
【0033】
側部装着式検出器には、偏向器配置を設けることができ、かつそれは、電子フィルタをほぼ必要としない。すなわち、低原子番号元素に関して、側部装着式の第2の検出器は、典型的には、一般的に電子フィルタが装備されたサブ磁極片検出器である第1の検出器よりもかなり高い信号を達成することができる。
【0034】
側部装着式検出器の部分的又は全体的な遮蔽は、より小さいサブ磁極片検出器を使用する又は作動距離を長くすることによって回避することができるが、それによって一般的に立体角が縮小し、この立体角の縮小は、本発明の開示で後に説明し、かつWO 2022/008924 Aに例証されているように特殊成形されたサブ磁極片検出器を使用することによって軽減することができる。
【0035】
本方法は、少なくとも1つの電子検出器、少なくとも1つのサブ磁極片検出器、及び1又は2以上の側部装着式X線検出器から信号を同時に収集する段階と、側部装着式補助検出器の改善された低エネルギ応答を用いて低Z元素に関する追加の情報を提供する段階とを伴う場合がある。
【0036】
この手法は、試料に存在する元素を決定するための側部装着式X線検出器の使用も可能にする。これは、スペクトル上で自動的な又は自動化されたピーク識別ルーチンを使用することによって行うことができる。画像内の全てではないにしても、いくつかのピクセルから取得された全てのスペクトルを組み合わせた(例えば、合計した)スペクトルを使用することにより、サブ磁極片検出器よりも大きい元素範囲に敏感な側部装着式検出器を用いて特に軽量元素、すなわち、より低い原子番号を有する元素に関して存在元素を検出するための信号対ノイズ比(S/N)を与える十分な信号を発生させることができる。
【0037】
元素識別に側部装着式の第2のX線検出器を使用することにより、システムによって識別されてソフトウエアによって表示されることになる元素リストに対してフィルタの後方散乱トリガX線蛍光発光によって引き起こされるいずれの軽量元素アーチファクト信号の影響も回避することができる。
【0038】
本方法は、典型的には、電子からの情報と試料内の全ての元素のX線からの情報との同時収集を可能にする。次に、これらのデータは処理され、例えば、試料のトポグラフィを表す電子画像を当該元素に関して最も高いX線強度を有する検出器を用いる元素画像と共に示すことにより、複合画像フレーム内でソフトウエアインタフェース視覚ディスプレイ又はグラフィカルユーザインタフェース(GUI)上に提示することができる。これらの画像は、別々に表示され、及び/又は各元素に異なる色相が与えられ、電子画像が画像内の各ピクセルに関する強度を提供する状態でオーバーレイされる場合がある。
【0039】
本方法は、好ましくは、組合せ画像を実時間で表示することにより、顕微鏡下にある試料の実時間追跡を容易にする。シリーズの得られた複合画像フレームの順次の迅速な提示は、検出器によって分析されている試料の「ライブ」視野をオペレータに提供する。本発明の開示の状況では、このシリーズは、連続して発生する複数の複合画像フレームとして理解することができる。シリーズは、順序を有するものと考えることができる。一般的に、この順序は、複合画像フレームが得られた順序、及び/又は複合画像フレームの各々の構成要素フレーム、すなわち、第1の画像フレーム及び第2の画像フレームが取得された順序であるか又はそれに対応する。一般的に、複合画像フレームシリーズの順序は、これらのフレームが表示される順序と同じ順序である。
【0040】
このシリーズは、当該複合画像フレームセットがフレームのより大きいセット又はシリーズの部分集合であることを除外しない。シリーズは、得られたフレームの更に別のセット又はシリーズとの時間的な及び/又は各セット又はシリーズを構成する複合画像フレームに関する重複の可能性も必ずしも除外しない。シリーズに、例えば、当該シリーズの一部とは見なされない更に別のフレームが割り込む場合が可能である。例えば、関与複合画像フレームが、同じか又は異なる方式で得られる可能性があると考えられ、そのような割り込み複合画像フレームは、当該シリーズの一部と見なされるとは考えられない。しかし、好ましくは、シリーズは割り込みのないシリーズである。
【0041】
本発明の開示では、複合画像フレームを取得する段階が上記に列挙した段階を含むという特徴は、シリーズを構成する各複合画像フレームを取得する段階が典型的な実施形態ではこれらの段階を含むことを意味するとして理解することができる。
【0042】
列挙する電子検出器は、2次電子検出器とすることができる。一部の実施形態では、段階(b)のモニタする段階は、2次電子検出器及び後方散乱電子検出器のいずれか一方又は両方を含むことができる電子センサー配置を用いて実行することができる。いずれかの他の検出器、顕微鏡、又は試料に対する1又は2以上の検出器の相対的な配置は、異なる実施形態で異なる場合がある。
【0043】
典型的には、試料とビーム源との間への第1のX線検出器の配置は、第1のX線検出器及び/又はそれを含むモジュールを集束電子ビームが試料に向けてそこから射出する電子ビームアセンブリの磁極片の下方に配置することによって実施される。第1のX線検出器は、ビーム軸線に関して磁極片と同じ高さにするか又は磁極片を部分的又は完全に取り囲む又は取り巻くことができる。
【0044】
走査電子顕微鏡では、使用時に電子ビームのある程度の集束度が一般的に必要とされることは理解されるであろう。この集束度は、視野上の画像の走査を容易にする。一般的に、集束電子ビームに適用される集束度は、第1の画像フレーム、第2の画像フレーム、複合画像フレームのうちのいずれか1又は2以上に関する望ましいか又は予め決められた空間解像度に従って設定又は構成される。実際に、達成される集束は、他の因子による影響を受ける場合があり、構成する程度とは異なる場合がある。更に、少なくともある程度まで焦点ぼけ電子ビームを用いて本方法を実施することができることも考えており、すなわち、段階(a)に関して言及するビームは、一般的に電子ビームと呼ぶことができる。
【0045】
フィルタ部材は、フィルタ層として設けることができる。一般的に、フィルタ部材は、X線検出器活性区域の全て又は実質的に全てをビームが入射するか又はこのビームに応答して粒子を放出する試料領域から遮蔽するように選択されるサイズ、形状、及び/又は位置を有する。好ましくは、フィルタ部材又はフィルタ層は、第1のX線検出器の活性区域のものよりも大きいか又はそれに等しいフットプリント及び/又は面積を有する。好ましくは、フィルタ部材は、第1のX線検出器の1又は2以上のセンサー要素の上にこれらのセンサーの直ぐ上方に位置決めされる。このフィルタ部材は、電子フィルタと呼ぶ場合がある。フィルタ部材は、電子を遮断するように挿入されるものとして理解することができる。一般的に、フィルタ部材は、上述のように1又は2以上のセンサー要素内に設けることができる第1のX線検出器の活性区域の少なくとも一部分上に又はそれにわたって配置される。
【0046】
第1のX線検出器を特に後方散乱電子のような電子から遮断又は保護するように適応及び/又は配置されたフィルタ部材は、その小さいサイズ要件及び空間要件に起因してビームスポットに大きい収集立体角の範囲を定めるように指定された通りに第1のX線検出器を配置することを可能にしながらX線検出器に対するこれらの電子の望ましくない効果を低減する。言い換えれば、電子トラップのような典型的な偏向器配置とは異なり、フィルタ部材は薄く、従って、典型的には、試料とサブ磁極片検出器の間に受け入れることができる。好ましくは、フィルタ部材は、使用時にX線検出器上に入射すると考えられる電子の少なくとも一部分、より好ましくは全て、特に最も高いエネルギを有するものを遮断するようになっている。一般的に、フィルタ部材は、フィルタ材料を貫通するこれらの電子の透過を遮断又は防止することによって作動する。言い換えれば、フィルタ部材は、そこを透過する電子の量を低減するようになっている。一般的に、フィルタ部材は後方散乱電子から保護するようになっているが、これに代えて又はこれに加えて、フィルタ部材は、第1のエネルギ範囲のエネルギを有するX線の透過を許しながら可視光及び赤外線放射線のうちのいずれか1又は2以上の透過を遮断するように適応させることができる。上述の第1のX線検出器上への電子の入射は、第1のX線検出器の1又は複数のセンサー要素上へのこれらの電子の入射と考えることができる。
【0047】
第2のX線検出器は、本発明の開示で上述した従来X線検出器であり、典型的には、エネルギ分散型検出器(EDS)である。一般的に、第2のX線検出器は、使用時に電子顕微鏡の側部ポートに装着される。一般的に、試料及び磁極片から遠くかつより大きい検出器デバイスを可能にする第2のX線検出器の位置決めに起因して、第2のX線検出器は、第1のX線検出器とは異なる方式で、特に電子偏向器配置を用いて入射電子から保護することができる。一般的に、上述の偏向器配置は、磁石配置を含む又はそれとして設けられる。この配置は、1又は2以上の磁石を含むことができる。磁石は、永久磁石及び電磁石のいずれか又は両方を含むことができ、一般的に永久磁石のペア又はアレイとして設けられる。
【0048】
典型的には、偏向器配置は、第2のX線検出器上への電子の入射を低減するために電子を偏向するように構成される。一般的に、偏向器配置は、電気及び/又は磁気の偏向器配置であるか又はそれを含む。この配置は、例えば、場を発生させることによって電子を検出器の少なくとも感知区域又は活性区域から離れるように偏向するように構成することができる。この場は、磁場及び電場(静電場のような)のいずれか又は各々を含むことができる。場は、いくつかの手段によって生成又は発生される場合がある。典型的な配置では、偏向器配置を電子トラップと呼ぶ場合がある。上述の第2のX線検出器及び/又は特にその活性区域上への電子の入射は、少なくとも、使用時に偏向器配置が不在の場合に発生する又は発生すると考えられる電子の入射を意味する。
【0049】
典型的には、試料領域は、顕微鏡の視野に対応する。この領域は、視覚画像として複合画像フレームに示される試料面の部分として理解することができる。
【0050】
放出される電子及びX線は、これら又はその放出が、電子ビームが試料と相互作用することによってもたらされるという理由から「得られる電子及び得られるX線」と呼ぶ。
【0051】
試料の領域内の複数の場所は、ビームによる領域の通過経路に沿う複数の場所としても理解することができる。電子信号及びX線信号が試料のこれら複数の場所からそこに電子ビームが入射することに起因して放出される粒子に基づいて収集又はサンプリングされるという意味で、これらの場所は、サンプリング点又はサンプリング場所と呼ぶ場合もある。複数の場所は、モニタされた電子とモニタされたX線の両方に関して同じである。すなわち、電子データとX線データとの好ましくは同時の取得に向けて、好ましくは、同じサンプリング場所が使用される。この同じサンプリング場所は、本方法によって提供することができる短い待機時間の「ライブ」撮像に寄与する。各第2の画像フレームは、各画像フレームのピクセルに対応する複数のサンプリング場所に対応する複数のピクセルを含む。モニタされた場所とピクセルの間に1対1対応の関係がある必要は必ずしもないが、この1対1対応の関係は好ましいことは理解されるであろう。一部の実施形態では、少なくとも一部のピクセルに関して改善された信号対ノイズ比を有するより低い解像度の画像フレームを生成するために、複数の場所に関する信号を組み合わせて単一ピクセルを形成することができる。
【0052】
第1の判断基準は、少なくとも一部の実施形態では、フィルタ部材によるより低いエネルギのX線の有害な減衰を補償するために適用することができる。第1の判断基準は、例えば、より高いエネルギのスペクトル部分に1つ又は各々の特性ピークを有する元素に関して第2の画像フレームのピクセル値を導出するのに第1のX線セットからのX線が第2のセットからのX線と比較して優先的に使用されるように構成することができる。それとは逆に、この判断基準は、より低いエネルギのスペクトル部分にピークを有する元素に関して、第1のX線セットからのものよりも第2のセットからのX線を優先的に表すように構成することができる。
【0053】
典型的には、それぞれの化学元素に特徴的であり、かつ複数の場所から放出されてモニタされたX線からのピクセル値の導出段階は、それぞれの化学元素に特徴的であり、かつ複数の場所から放出されてモニタされたX線を用いてピクセル値を導出することと考えることができる。
【0054】
それぞれの第1の判断基準は、各第2の画像フレーム又は各それぞれの元素に対して使用することができる。言い換えれば、1又は2以上の第2の画像フレームの各々に関してそれぞれの第1の判断基準をそれぞれの化学元素に従って構成することができ、第2の画像フレームに含まれる複数のピクセルの値は、それぞれの第1の判断基準に従って導出することができる。このようにして、各第2の画像フレームに対してそれぞれの第1の判断基準を構成することにより、第2の画像フレーム内にマップされる所与の元素と、データを撮像するためにこれらのデータを2つのX線センサーから取得する方法との間に直接関係を定めることを可能にする。所与の第2の画像フレーム内にマップされる元素に特徴的な第1の判断基準を構成することは、適切な場合に各元素に関して2つの検出器からの出力を別様に処理することができる点で、特に、化学元素に関するX線画像に関するピクセル値を導出データの品質を最適化するか又は改善するように個々の当該元素に対して特異的に選択することができる方法で導出することができることに起因して有利である。このようにして、広いX線エネルギ範囲、及びそれに対応する広い元素範囲にわたってより良好な信号及び高品質画像データが利用可能である。元素固有の第1の判断基準は、本方法中に識別することができるか又は過去に識別されたものとすることができる元素自体、又はその性質、カテゴリ、又は分類に依存してピクセル値を導出する特定のモードを適用することによって実施することができる。元素固有の判断基準は、化学元素に対応するモニタされたX線のエネルギ値に依存して、すなわち、モニタされたデータから識別された特定の元素が不在であっても、それに関係なく、問題の元素に対応するモニタされたX線のエネルギに基づいて実施することができる。
【0055】
所与の第2の画像フレームに適するように構成された所与の第1の判断基準は、複合画像フレームの取得中に取得された別の第2の画像フレームに適するように構成することができる別の第1の判断基準と同じであっても又は異なっていてもよく、これは、好ましくは、複数の複合画像フレームシリーズ又はその各々に適用される。一般的に、それぞれの第1の判断基準は、元素の1又は2以上の特性X線ピークに対応する1又は2以上のエネルギ値又はエネルギ値範囲に従って構成される。元素固有の第1の判断基準は、1又は2以上の元素又は値に適するように特異的に構成することができ、又は指定又は予め決められたエネルギ範囲に収まる特性ピーク又は指定又は予め決められたエネルギ閾値よりも高いか又は低い特性ピークを有するいずれかの元素に関して第2の画像フレームのピクセル値が予め決められた方式で導出されるように構成することができる。一部の場合に、この判断基準は、特に、複数の第2の画像フレームに対応するそれぞれの複数の化学元素に特徴的なX線をモニタすることに関して第1のX線検出器と第2のX線検出器との相対的な性能が同じか又は十分に同様である時に又は2つの元素の特性ピークが類似のエネルギを有するか又はX線スペクトル上で所与のエネルギ範囲に収まる場合に、複数の第2の画像フレームに関して、少なくとも得られる所与の複合画像フレームに関して同じとすることができる。例えば、それぞれの第2の画像フレームを主として又は完全に第2の検出器の出力から導出することができる同一又は類似の第1の判断基準は、複数の軽量元素、又は予め決められた又は指定の閾値エネルギ値よりも低いエネルギの特性ピークを有する複数の元素に適するように、当該範囲のX線に対する検出器性能が第1の検出器よりも第2の検出器で優れていることが予想されることに基づいて構成することができる。しかし、個々の第1の判断基準は、任意の数の元素又は対応するフレームに対して別様に構成することができる。
【0056】
一部の実施形態では、第1の判断基準は、第1及び第2の検出器又はそこからのデータのうちの1つ又は各々のものの達成、予想、推定、又は他に推測されるX線信号又は信号対ノイズ比に基づいて選択、構成、又は算定することができるので、第1の判断基準を信号判断基準、信号品質判断基準、又は信号強度判断基準と呼ぶ場合がある。特に、この判断基準は、所与の化学元素に対応する所与の特性元素ピーク又はそのセットに対する2つの検出器の相対的な信号性能に基づく場合がある。
【0057】
第1の判断基準は、本方法の一部として例えば検出器のうちのいずれか1又は2以上によって得られるデータに基づいて選択又は構成することができる。しかし、好ましくは、この判断基準は、例えば、1又は2以上のX線エネルギ範囲に関する検出器配置の既知又は推定の性質又は幾何学形状(フィルタの性質及び幾何学形状を含む)に基づいて予め決定される。
【0058】
この判断基準は、第2の画像フレームのピクセル値を導出する特定の方式が基づく条件として理解することができる。
【0059】
一部の実施形態では、X線元素フレームの内容を導出することへの第1の判断基準の使用は、第2の画像フレームに含まれるピクセルの値が、それぞれの化学元素に特徴的であり、かつ複数の場所から放出され、各々が第1及び第2のセットから第1の判断基準に従って選択される第3のセットのモニタされたX線の各々から実質的に導出されることを意味すると考えることができる。第3のX線セットの有効な選択は、第1及び第2のX線検出器から取得されたデータから選択する又はこれらのデータを他に処理することによって行われる。すなわち、理論上の第3のセットは、これらのX線検出器から導出されたデータから第1の判断基準に基づいて行われる選択によって定められる。この選択は、第2の画像フレームを取得する段階の一部として理解することができる。第2の画像フレームを取得する段階は、典型的には、第1及び第2の検出器から取得されたデータを第1の判断基準によって決定される特定の方式で第3のX線セットが第1及び第2のセットから選択されるように処理する段階を含む。その意味で、第1の判断基準を選択判断基準と呼ぶ場合がある。
【0060】
理論上の第3のセット又は各対応する第2の画像フレームに対する各第3のセットは、第1及び第2のセットのモニタされたX線の組合せ又は和集合の部分集合として理解することができる。一部の実施形態では、この判断基準は、所与の第2の画像フレームを生成するのにどの1又は複数のセットのモニタされたX線及び従ってどの1又は複数の検出器が使用されるかに関する選択がこの判断基準に基づいて実質的に行われるという意味で検出器選択判断基準と考えることができる。
【0061】
第2の画像フレームのピクセル値がそこから導出されるモニタされたX線は、これらのX線が、方法の段階(c)でモニタされる得られるX線と同じか又はそれに含まれるという意味で「モニタされた」X線であると理解されるであろう。同様に、第2の画像フレームのピクセル値がそこから導出されるX線は、第1及び/又は第2のセットのモニタされたX線のモニタされたX線であることも理解されるであろう。
【0062】
ピクセル値がそこから導出されるモニタされたX線は、特に、典型的には、少なくとも第1及び第2のセットのモニタされたX線の部分集合である。所与のフレームのピクセル値を最終的に導出する起点であるX線は、上述のように第3のX線セットと考えることができる。しかし、好ましい実施形態では、典型的には、X線自体の意図的な選択はない。すなわち、典型的には、第3のセットを取得するためのX線の選択又は操作はない。代わりに、第3のセットは、第1及び/又は第2のセットの構成要素を含み、第2の画像フレームのピクセル値を導出する方式によって定められる内容を有する理論上のセットとして理解することができる。この導出は、第1の判断基準に従って実行される。言い換えれば、第3のセットは、それぞれの元素に関して、顕微鏡視野に対応するマップを表す画像フレームを取得するために実施される処理のタイプによって定めることができる。従って、第3のセットは、元素に関する画像フレームを導出する起点であるX線光子として定めることができる。一般的に、セットの内容は、第1の判断基準の結果として第1及び第2のセットから選択される。従って、第1の判断基準は、2つのX線データセットをモニタする段階と元素マップの発生段階中の段階とを定めるものと考えることができる。
【0063】
それぞれの化学元素に特徴的なモニタされたX線は、当該元素に対応するか又はそれを表すX線として理解することができる。特に、これらのX線は、それぞれの化学元素に特徴的なエネルギを有することができる。すなわち、好ましくは、各々の第2の画像フレームがそれぞれの化学元素に対応し、そのピクセルの値は、X線信号を表すことができ、すなわち、特定の元素に特徴的なX線に関してこれらのピクセル(任意的に追加の処理が実施されたもの)に対応する試料場所から感受されたモニタされたX線から導出することができる。
【0064】
それぞれの化学元素に特徴的なX線は、それぞれのエネルギ範囲又はそれぞれのエネルギ範囲セット内にエネルギを有するX線として理解することができる。従って、各第2の画像フレームは、エネルギ範囲又はそのセットに対応することができる。一般的に、これらの範囲は、それぞれの特性スペクトルピーク又はそのセットに対応する。一般的に、所与の第2の画像フレームのピクセル値がそこから導出されるモニタされたX線は、当該エネルギ範囲のみにあり、すなわち、元素マップを発生させるのに使用されるX線光子は、典型的には、当該元素に対する望ましいピーク又はそのセット内のものに限定される。
【0065】
一部の実施形態では、第2の画像フレームのピクセル値を導出する時に従う第1の判断基準は、試料面の面特徴部及び面の高さ又は高低の変化が、検出器によって感受されるX線に対して有する可能性がある効果の取得画像フレームに対する影響を低減するように構成される。従って、一部の実施形態では、第1の判断基準は、試料の領域の面トポグラフィに従って構成される。従って、本方法は、試料トポグラフィ情報を取得する段階を含むことができ、第1の判断基準は、面トポグラフィ情報に従って構成される。面トポグラフィ情報は、電子検出器によって得られたデータに基づいて取得することができ、例えば、モニタされた電子セットから導出することができ、又はいずれかの他の手段、例えば、過去に実施された試料又はその領域のトポグラフィ分析から利用可能である。面トポグラフィ情報は、面の領域又はその1又は2以上の部分領域の面トポグラフィを示す、特徴付ける、又は定量化するフラグ又はパラメータを含むことができる。
【0066】
個々の化学元素又は複数の元素に関してトポグラフィに関する判断基準の調節を加えることができる。例えば、試料は、粗なトポグラフィを有することができ、又は試料の領域は、面特徴部による遮蔽及び陰影付け、局所的な面の向きに対する射出角の変化、及び試料面によるX線の吸収率の変化のうちのいずれかに起因して当該領域から放出されるX線又は検出器によるこれらのX線の検出に影響を及ぼす可能性があると考えられる面プロファイルを有する場合がある。典型的に側部ポートに装着される第2の検出器は、典型的には、トポグラフィによる影響を第1の検出器よりも有意に受ける。この理由から、例えば、第2の検出器が所与の元素又はX線エネルギに関して不十分な信号対ノイズ比のみを有することが見込まれるにも関わらず、第2の検出器の出力を高度に優先するように第1の判断基準を構成することを有利とすることができる。
【0067】
第1のX線検出器は、試料とビーム源の間のこの検出器の位置に起因して、好ましくは、検出器の幾何学形状に起因して、一般的にそのような効果による影響をそれほど強く受けない。例えば、好ましくは、第1のX線検出器には、集束ビーム軸線の周りに対称に位置決めされた活性区域又は感知区域が設けられる。そのような対称配置は、上記で示唆したように、高い面トポグラフィの効果を有利に軽減する。従って、少なくとも1つの化学元素又は第2の画像フレームに関してピクセル値を優先的に、主として、又は完全に第1のX線検出器の出力に基づいて導出するように第1の判断基準を構成することを有利とすることができる。好ましくは、試料面トポグラフィに従う第1の判断基準の構成段階は、第1のX線検出器によって出力されたデータ及び第2のX線検出器によって出力されたデータのいずれを用いて第2の画像フレームを生成するかに従って1又は2以上の重み係数を調節する段階を含む。一般的に、そのような調節は、第2のX線検出器によって出力されたデータのピクセル値への相対寄与を低減するように1又は2以上の係数を調節する段階を含む。
【0068】
試料が明白なトポグラフィを有する場合に、本発明の開示に提供する判断基準を含むモードのうちのいずれかに加えて又はその代わりに試料トポグラフィに従って第1の判断基準を構成することによって生成X線画像フレームを改善することができる。
【0069】
第1の判断基準は、所与の第2の画像フレームに含まれる複数のピクセルの各々のものの値が同じ方法で導出されるように構成することができる。一部の実施形態では、判断基準は、フレーム内の1又は2以上のピクセル又はそのセットに関する組合せモードを変更するように構成することができ、例えば、第1のX線検出器からのデータと第2のX線検出器からのデータとを組み合わせるための異なる重み係数を第2の画像フレームの異なる部分に適用するように構成することができる。この構成は、第1の判断基準が、第2の画像フレームの特定の部分に関するピクセル値を試料の対応する部分がトポグラフィによる影響を受けるか否かに依存して適用することができる方法の調節として面トポグラフィに従って構成される実施形態では特に有利である。例えば、試料面の領域内の1又は2以上の場所のセットの各々から第2のX線検出器への視線が試料面の突出部分によって遮蔽される場合に、第2の画像フレームのピクセル値が、当該場所セットに対応するピクセルセットに関して当該フレーム内の他のピクセルと比較して優先的に第1のX線検出器からのデータに基づくように第1の判断基準を構成することができる。1又は2以上のピクセル、ピクセルセット、又は第2の画像フレームの一部分に特異的な第1の判断基準の構成は、取得された面トポグラフィ情報に従って、例えば、トポグラフィ効果による影響を受けるか又は受けないことを面トポグラフィ情報が示すことができる試料上の領域の対応する場所、場所セット、又は領域の一部分に従って実行することができる。
【0070】
試料から実質的に同時に、好ましくは同時に放出される電子セット、並びに第1及び第2のセットのX線は、セット内で個々に放出される粒子間のいずれかの同時性を含意するのではなく、全体的に試料から同時に放出されるセットを意味することができる。
【0071】
上述のセットの放出の同時性は、検出器の各々によってモニタされるそれぞれの粒子セットが同時に、又は試料上へのビームの同じ入射に応答して放出されることとして理解することができる。
【0072】
典型的には、モニタする段階は、同時又は実質的に同時である。すなわち、異なる検出器は、同じ視野に関する異なる情報を同時に取り込むように作動させることができる。ビームの通過は、複数の場所がビームによって同時ではなく順番に照明されることを一般的に意味することは理解されるであろう。好ましくは、複合画像フレームの取得中の複数の場所の各々に関する3つの粒子セット、すなわち、電子及びX線の各々のものの放出は、同時又は実質的に同時である。すなわち、各サンプリング点又は各サンプリング場所では、複数の検出器は、(実質的に)同時に放出された粒子をモニタすることができる。好ましくは、3つ全ての検出器は、各々によって収集される信号を最大に強めるために各場所での全滞留時間にわたって粒子をモニタする。しかし、所与の試料場所に関して1つの検出器は、それが追加の粒子及びその各々のセットの粒子を実質的にモニタするように別の検出器よりも長い期間にわたってモニタすることができる。そのような追加の粒子は、検出器又は画像フレームのうちのいずれかに関して画像フレームに関する信号を強めるために当該フレームを取得する段階に含めることができる。段階(d)で言及した放出X線は、典型的には、1又は2以上の第2の画像フレームの各々が対応する元素で特徴付けられるそれぞれのピーク又はそのセット内にエネルギを有するX線である。
【0073】
複合画像フレームシリーズの表示段階は、好ましくは実時間で行われる。実時間は、ユーザがナビゲーションアクションを起こすことと、このアクションが視覚ディスプレイ上に表現されることとの間に判別可能な遅延が実質的にないことを意味するとして理解することができる。好ましくは、この表示は、表示された複合画像フレームシリーズを含む移動画像又はビデオの形態にある。本発明の開示に使用する「移動画像」という表現は、シリーズを構成するフレーム間での視野又は画像内容の変化を必ずしも意味するとは限らない。一般的に、移動画像は、移動の外見を有するか又はその印象を与える機能を有する画像の連続体を意味する。
【0074】
シリーズ内の各複合画像フレーム又はその少なくとも一部分は、好ましくは、当該複合画像フレームを取得するのに(a)、(b)、(c)、及び(d)のうちのいずれか1又は2以上を実行した後の予め決められた期間内で視覚ディスプレイ上に表示される。従って、予め決められた期間は、粒子信号の取り込みに対する表示の待ち時間を制限することができる。この期間は、典型的には、1s、好ましくは、500ms、より好ましくは、300ms、更に好ましくは、100msである。待ち時間は、フレーム間で変化する可能性があるが、典型的には、この期間を超えず、好ましくは、シリーズに関して実質的に不変である。
【0075】
本方法は、典型的には、画像データが事実上即時に利用可能になるように、画像データを取得するや否又はそれを処理及び表示する段階を含む。このようにして、ユーザは、実時間複合画像フレームの試料の付近のナビゲーションを案内するためのフィードバックとして使用することができる。そのようなライブナビゲーションに関してユーザとの対話手法の例、及び複合画像フレームを編成、フォーマット、及び表示するのに適する方法の例は、WO 2019/016559 A1の8~10ページに説明されている。画像フレームを着色合成画像に組み合わせるために、WO 2012/110754 A1に説明されているような技術を使用することができる。
【0076】
視覚ディスプレイのフレーム速度、すなわち、シリーズを構成する連続複合画像フレームを視覚ディスプレイ上に表示する速度は、異なる実施形態の間で異なる場合があり、構成可能とすることができる。一部の実施形態では、複合画像フレームを表示するフレーム速度は、少なくとも1フレーム毎秒、好ましくは、少なくとも3フレーム毎秒、より好ましくは、20フレーム毎秒である。一部の実施形態では、いずれか所与の時点で単一複合画像フレームが処理される。そのような実施形態では、上記で提示した例示的フレーム速度は、それぞれ1秒又はそれ未満、0.3秒又はそれ未満、及び0.05秒又はそれ未満の複合画像の取得時間又は処理時間に対応する。
【0077】
一部の実施形態では、複合画像フレームシリーズを取得及び表示する速度は、少なくとも10フレーム毎秒、好ましくは、少なくとも18フレーム毎秒、より好ましくは、少なくとも25フレーム毎秒、更に好ましくは、少なくとも50フレーム毎秒である。従って、好ましくは、複合画像フレームシリーズは、移動画像の形態で表示され、好ましくは、フレーム表示速度は、ビデオフレーム速度に等しい。
【0078】
有利なことに、取得画像は、視野が変更される時に顕微鏡のオペレータが画像内の変化を追跡して対処することを可能にするほど十分に高速に表示及びリフレッシュすることができる。
【0079】
本発明の開示に提供するように、第1の判断基準は、X線検出器の出力をいくつかの方法で処理するように構成することができる。一実施形態では、第1の判断基準は、第2の画像フレームを取得するために第1の検出器と第2の検出器との両方からのX線データを単純に合計させるように構成することができる。従って、第1の判断基準は、段階(c)が、第1のセットのモニタされたX線を表すデータを第2のセットのモニタされたX線を表すデータと合計することによってデータを合計し、1又は2以上の第2の画像フレームの各々のもののピクセルの値が合計データから取得されるようにする段階を更に含むように構成することができる。上述のように、この判断基準は、第1の検出器と第2の検出器との両方からのデータを特定の方式でコンパイルすることによって第2の画像フレームのピクセル値を導出する時に従う条件と呼ぶ場合がある。データの合計段階は、重み係数に従って重み付けされた合計に従って実行することができる。重み係数は、いずれかの非負値を有するように構成することができることは理解されるであろう。好ましくは、第1及び第2のデータは、複数の化学元素に関し、より好ましくは、複数の元素に関するピークを含むエネルギ範囲に関する。一般的に、検出器のいずれか又は各々によって検出されるピーク及び/又は元素の全てが含まれる。第1及び第2のデータは、それぞれ、後に開示する実施形態に関して説明する第1及び第2のデータと同じとすることができるか又は異なるとすることができる。
【0080】
一部の場合に、第1の判断基準は、第1及び第2のセットのモニタされたX線から導出された代表的なデータが、問題の第2の画像フレームに関してそれぞれの化学元素に特徴的なモニタされた放出信号の対応する推定値を取得するように処理され、各値がこれらの推定値の組合せによって取得されるように選択することができる。従って、一部の実施形態では、第1の判断基準は、1又は2以上の第2の画像フレームの各々に関して段階(c)、特に第1の判断基準に従うピクセル値の導出段階が、それぞれの化学元素を表す第1及び第2の値セット(例えば、各ピクセルに関する1又は2以上の値のような1又は2以上の値のセット)を取得するように第1及び第2のX線検出器の各々から取得されたデータを処理する段階を含むように構成することができる。ピクセル値は、第1及び第2の値セットから利用可能である。
【0081】
複合画像フレームを取得する段階が、第1及び第2の値セットを取得するように第1及び第2の検出器のデータを処理する段階を必要とするように第1の判断基準が構成される実施形態では、これらの値セットからのピクセル値の取得段階は、いくつかの代替方法を用いて実行することができる。所与の分析手順は、これらの手法のうちのいずれか1又は2以上によってピクセル値を取得させるように第1の判断基準を構成する段階を含むことができる。
【0082】
第1に、一部の実施形態では、ピクセル値の取得段階は、第1の値セットと第2の値セットとを合計する段階を含むことができる。これは、例えば、複合画像フレームの取得中の1つのみの第2の画像フレームに対して又は複数の第2の画像フレームに対して又はこれらの画像フレームの各々に対して適用することができる。異なるフレーム及び/又は化学元素に対して他の組合せ技術を使用することができる。これは、上記に説明したピクセル値取得手法に適用することができる。
【0083】
第2に、ピクセル値の取得段階は、一部の実施形態では第1及び第2の値セットのうちの選択セットからピクセル値を取得する段階を含むことができる。この段階は、第1及び第2の値セットのうち選択セットのみから又は他方のセットを除いてピクセル値を取得する段階を含むことができる。値セットのうちの選択セットは、第2の判断基準に従って決定又は選択することができる。第2の判断基準は、第1の判断基準と同じか又は別々とすることができる。一般的に、第2の判断基準は、選択が、第1及び第2の値セットに関する信号対ノイズ比に基づくように構成される。
【0084】
第2の判断基準は、得られるデータが最大又は最適の信号対ノイズ比を有するように構成することができる。
【0085】
第3に、ピクセル値の取得段階は、第1の値セットと第2の値セットとを重み付き関数に従って組み合わせる段階を含むことができる。重み付け段階は、複合画像フレームの1又は2以上の第2の画像フレームに関して一様とすることができ、又はモニタされた放出信号が強いか又は良好な信号対ノイズ比を提供することが予想される推定値を優先するように第1の判断基準によって構成することができる。第1及び第2のX線検出器によってモニタされる予想X線放出及びこの放出に関する推定値の不確実性を既知の化学組成を有する試料に関して算定することができる。
【0086】
関数の重み付けは、上述の組合せのS/Nを最適化することを目的として各結果の可能性の高い信号対ノイズ比又は算定信号対ノイズ比に基づいて選択することができる。一部の実施形態では、重み付けは、元素のうちの1又は2以上に関してピクセル値の取得段階が少なくともこれらの元素に関して上述した第1の手法で上述したように第1のセットと第2のセットとを合計する段階を含むことができるように等しいように構成することができる。重み付き関数は、重み付き合計又は重み付き平均を含むことができる。
【0087】
一部の実施形態では、所与の第2の画像フレームは、段階(c)で取得される別の第2の画像フレームとは異なる関数に従って生成することができる。これに代えて、いずれか2又は3以上の第2の画像フレームは、同じ関数を使用することができる。好ましくは、この同じ関数は、複数の第2の画像フレームに適用され、及び/又は複数の複合画像フレームを形成する。好ましくは、この段階は、上述の組合せが最も高いS/Nを有するX線信号を表す値セットに向けて重み付けられるように実施される。一般的に、この関数は、第1及び第2の値セットのうちのいずれか又は各々のものの推定S/N又は算定S/Nに依存する。
【0088】
一部の実施形態では、S/Nは、第1の判断基準を構成するのに使用される重要な因子であることは理解されるであろう。判断基準は、X線検出器のうちの1つ又は各々が例えばパラメータとして表されるS/N性能に従って構成することができる。従って、一部の実施形態では、第1の判断基準は、第1のセットのモニタされたX線から導出された第1のX線データ及び第2のセットのモニタされたX線から導出された第2のX線データの各々に関して測定、算定、モデル化、模擬、又は推定することができる信号対ノイズ比をそれぞれ表す第1及び第2の信号対ノイズパラメータのうちの少なくとも一方に基づく場合がある。一般的に、第1の判断基準は、第1の信号対ノイズパラメータと第2の信号対ノイズパラメータとの両方に基づいている。しかし、これに代えて、この判断基準は、パラメータのうちの1つだけに依存して例えば当該パラメータが例えば所与の元素に関する許容可能信号性能を示すための閾値よりも大きいか否かに基づいて構成することができる。
【0089】
これに代えて、この判断基準は、2つのX線検出器のうちで所与の元素に関して高い信号対ノイズ比を有する方又は当該元素に関して高い信号対ノイズ比を有するデータを生成する機能を有する方を示す単一パラメータに基づく場合がある。
【0090】
典型的には、これらのパラメータのうちのいずれも、値、例えば、信号対ノイズ比又は信号レベルの測定値又は推定値のような数値として与えられるが、これに代えて又はこれに加えて、これらの特性の定量的表現を含むことができる。第1及び第2の信号対ノイズパラメータは、少なくとも、得られる所与の複合画像フレームに関して第1及び第2のX線検出器の各々に関する信号対ノイズ比を表すものと考えることができる。
【0091】
第1の判断基準は、第2の画像フレームに関してピクセル値を第1のデータ及び第2のデータのうちでそれぞれの化学元素に関して高い信号対ノイズを有する方のX線データから優先的に導出することができるように第1の信号対ノイズパラメータと第2の信号対ノイズパラメータとの比較に基づく場合がある。一般的に、この比較は、各第2の画像フレームに関して又は第2の画像フレームを取得することに関連する各化学元素に関して行われる比較である。一般的に、この比較は、本方法を実施する前に行われる。一般的に、この比較は、各元素に関して各検出器に対して達成可能なS/Nのモデルに基づいて算定される。上述した高い方の信号対ノイズデータからのピクセル値の優先的導出は、1又は2以上の第2の画像フレームの各々に対して適用することができる。
【0092】
第2の画像フレームを生成するのに最終的に使用され、第3のX線セットと呼ぶ場合があるX線に対して考察すると、上述の判断基準は、第2の画像フレームに関してそれぞれの第3のX線セットが、第1及び第2のデータのうちでそれぞれの化学元素に関して高い信号対ノイズ比を有する方のデータを導出する起点であるX線を優先的に含むような比較に一般的に基づいている。第1及び第2のデータのうちの特定のものからのピクセル値の優先的な導出段階は、検出器のうちで当該元素に関して低いS/Nを有する方によってモニタされるX線を表すデータよりも優先的に及び/又はそれよりも高い程度でこれらのデータのうちの優先的な方からピクセル値を導出することと考えることができる。従って、理論上の第3のX線セットの大部分は、低S/N検出器ではなく高S/N検出器から利用可能である。
【0093】
各データセットの信号対ノイズ比は、典型的には、複数の因子による影響を受ける。一般的に、この信号対ノイズ比は、検出器に依存し、更に試料、ビーム電流、ビームエネルギ、及び滞留時間のうちのいずれか1又は2以上に依存する可能性もある。比較を行う及び/又は第1の判断基準を構成するために、所与のシステムに関してS/Nに影響を及ぼすいくつかの因子、すなわち、第1に、検出器の感知区域と、入射電子のビーム電流と、電子エネルギとによって試料上の場所に範囲が定められる全収集立体角、第2に、特性放出エネルギを有するX線に関するフィルタの部分透過率及び電子検出プロセスでのいずれかの信号損失、第3に、検出器が特性放出エネルギで単波長X線に露出された時にエネルギヒストグラムで記録されるエネルギ解像度又は見かけエネルギの分散、第4に、化学元素の濃度、背景制動放射のいずれかの残留寄与、及びデータ処理によって除去されなかった他の化学元素からのいずれかの放出を利用可能である。
【0094】
これらの要件のうちの第1、第2、及び第3のものは、典型的には、特定のシステムに関して算定することができるが、一般的には、第4のものは、試料上で異なる化学組成を有する複数の場所でS/Nを異なるものにすることになる。従って、データをどのように組み合わせるべきかを決定することができる第1の判断基準は、100%濃度の化学元素を有する領域上にビームが入射する時に到達することが予想されるS/Nに一般的に基づいている。
【0095】
第1の判断基準は、例えば、ある一定の状況でより適切とすることができる1又は2以上のエネルギ又は範囲に関する信号対ノイズ比に従って構成することができる。
【0096】
フィルタ部材は、透過X線に対してハイパスフィルタ効果を有し、予め決められた値よりも小さいエネルギを有する実質的に全てのX線を除去することができる。しかし、典型的には、このフィルタ効果はステップ関数ではなく、X線からの減衰信号は、低いエネルギでは益々減衰するが、依然としてある程度の値を有する場合がある。従って、第1の判断基準は、好ましくは、第1のX線検出器によって出力された信号と第2のX線検出器によって出力された信号とを第2の画像フレームを導出する時にこれらのデータを考慮するように組み合わせるように構成される。
【0097】
これに代えて又はこれに加えて、第1の判断基準は、第1及び第2の検出器のうちの1つ又は各々に関する信号強度に基づいて選択することができる。従って、一部の実施形態では、第1の判断基準は、各第2の画像フレームに関して例えば少なくとも複合画像フレームの取得中に、このような第2の画像フレームに対応する化学元素に特徴的な入射X線又はモニタされたX線を表す又はその検出に対応する第1及び第2のX線検出器の各々によって出力された信号に従ってピクセル値が導出されるように構成することができる。
【0098】
取得される第2の画像フレームに対応するそれぞれの元素が高エネルギ特性ピーク又は低エネルギ特性ピークのいずれを有するかに基づく第1及び第2の検出器のうちの特定のものからのX線データの選択又はその優先的な処理は、第1の判断基準が閾値に基づくことによって実行することができる。一部の実施形態では、第1の判断基準は、第2の画像フレームに対応する化学元素を特徴付けるX線のエネルギ範囲が予め決められた閾値よりも高い場合にピクセル値を第1のセットのモニタされたX線から導出し、このエネルギ範囲が予め決められた閾値よりも小さい場合にピクセル値を第2のセットのモニタされたX線から導出するように構成される。上述のエネルギ範囲は、典型的には、それぞれの化学元素に関する特性ピーク又はそのセットのうちの1つに対応する。いくつかの元素及び/又はいくつかの閾値に関して値は、モニタされたX線信号内の当該元素の特性ピークに対応するエネルギ範囲と一致するか又はその中に収まることができる。そのような場合に、ピクセル値を実質的に導出する起点である第3のX線セットは、第1又は第2のセットのX線のいずれかから優先的又は限定的に選択することができ、又は例えばピーク又はそのセットに対応するエネルギ範囲にある閾値の位置に基づく重み付けを用いる第1のX線セットと第2のセットのX線との重み付き組合せとして実質的に選択することができる。第1又は第2のセットから導出されるピクセル値は、典型的には、第1及び第2のセットのうちの他方よりも優先的に当該セットから導出され、一部の実施形態では第1及び第2のセットの他方を除く値を含む。
【0099】
一部の実施形態では、典型的には、ステップ関数ではなく上述した遷移(例えば、連続)関数を含むフィルタ部材の上述した減衰関数に起因して第2の閾値を使用することができる。従って、第2の画像フレームを生成するのに、第1の閾値と第2の閾値との両方よりも小さいエネルギを有するX線を検出器の一方又はそれに対応する取得データから限定的に取得することができ、これらの閾値の両方よりも大きいエネルギを有するX線を他方から限定的に取得することができ、これら2つの閾値の間に収まるエネルギを有するX線をこれらのデータの組合せから取得することができる。
【0100】
一部の実施形態では、第1及び第2の上述の予め決められた閾値のいずれか一方又は両方を集束電子ビームが試料に衝突する場所で第1及び第2のX線検出器の各々の全センサー区域によって範囲が定められる立体角、並びにフィルタ部材に特徴的なX線透過率を表すフィルタパラメータのうちのいずれか一方又は両方に従って構成することができる。これに代えて又はこれに加えて、フィルタパラメータは、関数、例えば、X線エネルギの関数を含む又はそれによって定めることができる。一般的に、これらのパラメータ又は関数は、異なるエネルギに対して異なり、典型的には、低エネルギX線に対して透過率が低いので、フィルタ部材を貫通するX線の透過率に対する効果を表すように構成される。
【0101】
一部の好ましい実施形態では、本方法は、試料の領域に存在する化学元素を識別する段階を含む。例えば、複合画像フレームの一部としてそのような元素のリストを提供することができる。一般的に、そのような実施形態では、本方法は、識別された化学元素のセットを生成する、それに追加する、それを更新する、又はそれから削除する段階を含むことができる投入段階を更に含む。投入段階は、複合画像フレームシリーズのうちの少なくとも1つ、好ましくは複数のシリーズ、より好ましくはシリーズの全ての取得中にモニタされる第2のセットのX線に基づく場合がある。識別された化学元素のセットは、第2の検出器によってモニタされるX線に存在するとして識別されたものを含むことができる。好ましくは、識別は、複合画像フレームを取得する前又はその間に視野/試料領域のうちの全て又は一部にわたって収集されたX線のスペクトルに基づいている。
【0102】
典型的には、複合画像フレームシリーズのうちの少なくとも1つの取得中に、段階(c)は、識別された化学元素のセットの各化学元素に関してそれぞれの第2の画像フレームを取得する段階を含む。好ましくは、これは、少なくとも複合画像フレームシリーズのうちでピークが識別されたものと同じものに対して又はピークリストが投入れている第2のX線信号に基づいて適用される。
【0103】
そのような実施形態では、複合画像フレームに対して取得される第2の画像フレームの枚数が、識別されたピークの個数又は元素のタイプ数と少なくとも同程度に多いことは理解されるであろう。従って、そのような実施形態では、典型的には、第2の画像フレームの各々は、識別されたエネルギ範囲のうちの当該範囲にあるそれぞれの第3のモニタされたX線エネルギセットに対応し、そこから導出された値を有する複数のピクセルを含む。化学化合物は、複数の第2の画像フレームを使用することによって表すことができ、任意的にこれらのフレームは、複合画像フレーム内に重複させるか又は他に組み合わせることができる。例えば、試料視野が二酸化珪素を含む場合に、その構成元素の両方に特徴的なX線が一般的にモニタされ、これらの元素の各々に関して第2の画像フレームが取得される。従って、各複合画像フレームは、珪素及び酸素の各々に関する少なくともそれぞれの第2の画像フレームを含むと考えられる。珪素及び酸素の第2の画像フレーム又は元素マップは、化合物内のこれらの元素の存在を互いに示すように重複させるか又は組み合わせることができる。
【0104】
識別された元素のリスト又はセットを必要とする場合に、本方法は、ピクセル値が第1のX線セットからのみ又は限定的に導出されるように第1の判断基準を構成する段階を含むことができる。従って、一部の場合に、第2の画像フレームは、第2のX線検出器によって得られたデータから導出されず、代わりに、この検出器は、視野に存在する化学元素を識別するのに使用される。画像フレームに対して使用されるデータに対するこの制限は、異なる実施形態ではフレームのシリーズの一部分だけに対して又は識別されたエネルギ範囲セットの一部分だけに対して課すことができる。
【0105】
一部の実施形態では、一部の試料又は分析システムを使用する場合に、取得複合画像フレームの少なくとも構成要素が、フレームの空間解像度又はピクセル解像度を代償として改善された分析データ品質を提供することができるように取得データのS/Nを高めるためのピクセル集約を使用することが有利である。従って、例えば、所与の第2の画像フレームに関して、すなわち、シリーズを構成する複合画像フレームのうちの1又は2以上を取得する最中に取得される第2の画像フレームのうちの1又は2以上に関して複合画像フレームを取得する段階は、1又は2以上の第2の画像フレームのうちの少なくとも1つ、好ましくは、各々に関して第3の判断基準と呼ぶ場合がある集約判断基準に従って第2の画像フレーム内のピクセルの1又は2以上の部分集合の各々に関して1又は2以上のそれぞれの集約ピクセル値を取得するように部分集合内のピクセルの値を組み合わせる段階と、第2の画像フレーム内の1又は2以上のピクセル部分集合の各々をそれぞれの集約ピクセル値に等しい値を有する集約ピクセル又はスーパーピクセルで置換する段階とを更に含むことができる。従って、画像フレーム内で近接又は隣接するピクセルの群をこれらのピクセルのピクセル値の加算、平均、又はあらゆる組合せによって種分け又は集約し、これらの加算、平均、又はあらゆる組合せの値を有する種分けされた又は集約されたピクセルを生成することができる。種分けされた又は集約されたピクセルは、その構成ピクセルよりも大きいサイズを用いて特に視覚ディスプレイ上に表すことができる。一般的に、そのような実施形態では、この種分け又は集約は、第2の画像フレーム内のピクセルの複数の部分集合に対して好ましくは第2の画像フレーム内のピクセルの全て又は実質的に全てに対して適用され、これらのピクセルは集約ピクセルに対応し、従って、第2の画像フレーム内の全てのピクセルが、得られるピクセルの階調の中に集約される。
【0106】
典型的には、各部分集合は、2又は3以上を含み、従って、部分集合をピクセル群と考えることができることは理解されるであろう。1又は2以上のそれぞれの集約ピクセル値を有するスーパーピクセルの1又は2以上のセットと呼ぶ場合がある。各集約値セットは、ピクセルの部分集合又は群に好ましくは1対1対応することができる。
【0107】
これらの実施形態では、集約判断基準は、第2の画像フレーム内のピクセルの値がそこから導出されるX線をモニタするのに使用されるX線検出器に依存して構成され、すなわち、集約判断基準は、典型的には、このX線検出器に依存する。言い換えれば、集約判断基準は、第1の検出器及び第2の検出器のうちで第2の画像フレームのピクセル値を優先的に、主として、又は限定的に導出する起点である方に基づく場合がある。すなわち、集約判断基準は、第2の画像フレームを実質的に選択する起点である第3のセットのモニタされたX線に基づく場合があり、特にこのような第3のセットが第1のセットのモニタされたX線又は第2のセットのモニタされたX線のいずれから選択されるか又はいずれに含まれるかに基づく場合がある。これに加えて又はこれに代えて、集約判断基準は、第2の画像フレーム内に表されるX線をモニタするのに使用された検出器に基づく場合がある。
【0108】
部分集合又は群の各々は、ピクセル値がそこから導出されるそれぞれのモニタされたX線に対応する信号パラメータ値に従って構成された部分集合サイズと呼ぶ場合があるピクセル数を含むことができる。信号パラメータ値は、1又は2以上の性質、例えば、セットのモニタされたX線のうちの1又は2以上を表すデータに関する信号強度又はS/Nの測定値又は推定値に基づく場合がある。これに代えて又はこれに加えて、部分集合サイズは、信号対ノイズパラメータ値に従って構成することができる。これらのパラメータ値のいずれか又は各々は、集約判断基準に関して説明したものと同じとすることができる。パラメータ値は、例えば、第2の画像フレームのピクセル値が第1のX線セット又は第2のセットのX線のいずれから優先的に導出されるかに基づいて予め定めることができる。そのような実施形態では、ピクセル群のサイズは、好ましくは、X線信号源に依存し、従って、第1又は第2の検出器及び/又は例えばこれらの検出器からの使用データが組み合わされる場合は両方の検出器に依存する。
【0109】
従って、典型的には、部分集合サイズは、画像フレームに含まれるピクセルの少なくとも部分集合に関して群内のピクセルの個数がより低い信号強度値又はより低い信号対ノイズ比に関して多くなるように構成される。
【0110】
上述の信号パラメータは、ピクセル値を導出するか又はそれぞれの第3のセットを選択する起点であるセットのモニタされたX線に従って構成することができ、これは、パラメータが、問題の第2の画像フレームを取得するのに使用される検出器に依存して構成されることを示すことができる。
【0111】
信号パラメータは、スーパーピクセルサイズと呼ぶ場合もある部分集合サイズ又は上述のピクセル数が、第1のセットのモニタされたX線に含まれるX線から少なくとも優先的又は限定的に導出されたピクセル値を有する第2の画像フレームに関してよりも第2のセットのモニタされたX線に含まれるX線から少なくとも優先的又は限定的に導出されたピクセルを有する第2の画像フレームに関して大きいように構成することができる。すなわち、X線データに関するより高い集約度は、データが第1の検出器よりも優先的に又は第1の検出器からのデータを除いて第2の検出器を用いて取得された場合に適用することができる。
【0112】
信号パラメータは、ピクセルサイズ又はピクセル数が、第2の画像フレームのピクセル値がそこから導出されるX線をモニタするのに使用される第1及び第2のX線検出器の一方の全センサー区域により、電子ビームが試料に衝突する場所に範囲が定められる立体角に依存するように構成することができる。
【0113】
信号パラメータは、群サイズがより小さい立体角に対してより大きく、大きい立体角に対してより小さいように構成することができる。
【0114】
上述したピクセルデータの集約は、空間解像度を代償としてデータに関する信号対ノイズ比に改善を加えることを可能にすること、並びに異なる元素に関して及び/又はX線検出器(又は代わりにそこから取得されたデータ)のうちの異なるものに関して異なる程度でこの譲歩を行うことができることは理解されるであろう。集約(又は潜在的にピクセル「種分け」と呼ぶ)手法は、例えば、近接するピクセル値、例えば、2×2又は4×4のセットを組み合わせる段階を含むことができる。この段階は、視野を網羅し、すなわち、未種分け又は種分け前のピクセルと実質的に同じ広がりを有するスーパーピクセルの少なめの個数(集約を受けるフレームピクセルの個数と比較して)の「スーパーピクセル値」を生成する。
【0115】
1つの第2の画像フレーム内のピクセル数が、複合画像フレームの別の画像フレーム、例えば、第1の画像フレーム又は異なる化学元素に対応する別の第2の画像フレーム内のピクセル数よりも少ない場合に、他の画像フレームに関するピクセル値の個数と同じ個数を与えるために、このような1つの第2の画像フレームに関するピクセル値セット数を複製、内挿、及びアップスケール処理のうちのいずれか1又は2以上のような公知の技術によって増大することができる。同一個数のピクセルを含む又はそれから構成される所与の複合画像フレームの2又は3以上の画像フレームを有することにより、複合画像フレームの準備を容易にすることができる。
【0116】
種分けが使用されない実施形態では、それにも関わらず、画像詳細部のある程度のぼけという代償を払って低ゾーン通過空間フィルタリング又は「平滑化」によって表示X線画像のS/Nを任意的に改善することができる。例えば、空間畳み込み又はフーリエ変換フィルタを使用するそのような平滑化は、典型的には、同じピクセル数及び改善された信号対ノイズを有するが、典型的には、ある程度のぼけ又は高空間周波数詳細部の損失も伴う画像を発生させることになることは理解されるであろう。そのような平滑化された画像は、同じピクセル数を有する別の画像と即座にオーバーレイさせることができる。
【0117】
一部の実施では、第1の検出器と第2の検出器との両方からのデータが、各複合画像フレーム内に含まれる。従って、一部の実施形態では、段階(c)は、少なくとも2つの第2の画像フレームを取得する段階を含み、第2の画像フレームのうちの少なくとも1つは、複数の場所に対応する複数のピクセルであって、少なくとも第1のセットに含まれ、それぞれの化学元素に特徴的であり、複数の場所から放出されてモニタされたX線から第1の判断基準に従って導出された値を有する上記の複数のピクセルを含み、第2の画像フレームのうちの少なくとも1つの他は、複数の場所に対応する複数のピクセルであって、第2のセットに含まれ、それぞれの化学元素に特徴的であり、複数の場所から放出されてモニタされたX線から第1の判断基準に従って導出された値を有する上記の複数のピクセルを含む。上述の2つの各々の化学元素は、同じか又は異なる場合がある。
【0118】
一部の実施では、複合画像フレームの内容を顕微鏡視野に存在する識別された元素に従って修正することが可能である。従って、一部の場合に、新しい元素が識別された時に新しい元素フレーム、すなわち、第2の画像フレームを追加すること、及び/又は元素が視野内にもはや存在しないことが識別された時に当該元素フレーム、すなわち、第2の画像フレームを複合画像フレームから削除することができる。従って、本方法は、複合画像フレームシリーズの少なくとも一部分を取得する最中にモニタされる第1及び第2のセットのX線のいずれか又は両方に従って識別されたスペクトルピークセットに対応するこの複合画像フレームシリーズの当該部分に関する化学元素のセットを定める段階を更に含むことができる。
【0119】
上記で示唆したように、所与の複合画像フレーム内に含まれていた元素又はその対応する第2の画像フレームを例えば視野内の表示元素の存在量が低減した又は消滅した場合に、1又は2以上の複合画像フレームから除外することができる。複合画像フレームシリーズの当該部分は、複合画像フレームシリーズの少なくとも一部、好ましくは、全てとすることができる。
【0120】
複合画像フレームを取得する段階(c)は、化学元素のセットの各化学元素に対応するそれぞれの第2の画像フレームを取得する段階を含むことができる。すなわち、それぞれの第3のセットのモニタされたX線であって、その各々のエネルギ範囲のエネルギを有し、複数の場所から放出され、第1及び第2のセットから第1の判断基準に従って各々が選択される上記のそれぞれの第3のセットのモニタされたX線に対応し、そこから導出された値を有する複数のピクセルを含むそれぞれの第2の画像フレームを取得することができる。
【0121】
一部の実施形態では、1又は2以上の第2の画像フレームのうちの第1のもののピクセルは、それぞれの第3のセットのモニタされたX線をそれぞれの第1の化学元素とは異なるそれぞれの第2の化学元素に特徴的なそれぞれの第4のセットのモニタされたX線と組み合わせた組合せから導出された値を有し、各それぞれの第3及び第4のセットのモニタされたX線は、第1及び第2のセットから第1の判断基準に従って選択される。
【0122】
第2の画像フレームは、単一化学元素のみを特徴付けるモニタされたX線を表す又はそこから導出された値を有することに限定する必要はないことは理解されるであろう。一部の場合に、第2の画像フレームのピクセル値は、2又は3以上のエネルギ範囲、ピーク、又は化学元素を表すことができる。取得された第2の画像フレームのうちの第1のもの一部の実施形態ではこれらのフレームのうちの1よりも多く、又は部分集合、可能であれば全てが、上述のように第3のセットと第4のセットとの組合せから導出された値を有することができる。いずれか1又は2以上の第2の画像フレームが、第4、第5、又は更に別の化学元素を特徴付けるか、又はそれぞれのエネルギ範囲のエネルギを有するか又はそれぞれの更に別の元素ピークに対応する第4、第5、又は更に別のX線セットを表すことができる。各第2の画像フレームは、異なる個数のエネルギ範囲又はピークを有する元素に対応することができる。ピークのうちの1又は2以上は、2又は3以上の第2の画像フレームに共通とすることができる。それぞれの第4のセットは、それぞれの第3のセットが一般的にそうであるようにそれぞれの第2の画像フレームに対応するとして理解することができる。
【0123】
言い換えれば、複合画像フレームを取得する時は、1又は2以上の更に別の化学元素に関するデータを追加で組み込んだ第2の画像フレームを生成することができる。一部の実施形態では、単一色を多元素の第2の画像フレームに割り当てることによって当該色が1よりも多い元素の組合せを表すことができ、従って、視野でのこれらの多元素の存在が当該色でマップされ、それによって多元素マップが、複合画像フレーム内に当該色によって表される。すなわち、本方法は、複数の場所に対応する複数のピクセルであって、それぞれの複数の化学元素に特徴的であり、かつ複数の場所から放出されてモニタされたX線から第1の判断基準に従って導出された値を有する上記の複数のピクセルを各々が含む1又は2以上の第2の画像フレームを取得する段階を含むことができる。多元素の第2の画像フレームを発生させる2つの主な方法が考えられている。
【0124】
第1に、所与の複合画像フレームに関して1よりも多い元素からの信号の合計に各々が個々に対応するX線画像、第2の画像フレーム、又はこれらの複数を形成することができる。1又は2以上の多元素の第2の画像フレームの各々は、複合画像フレームの形成時に含めることができる。一部の実施形態では、複合画像フレーム内への多元素マップを含むことは、各々がそれぞれの化学元素に対応する複数の第2の画像フレームを取得し、複数の第2の画像フレームを単一組合せ画像フレーム又はピクセルアレイに組み合わせて組合せ画像フレームを複合画像フレーム内に含める段階と、組合せ画像フレーム内に表される複数の化学元素の各々に関する個々の第2の画像フレームを取得してこれら複数の単一元素の第2の画像フレームを複合画像フレームを発生させるように又はその発生段階の一部として組合せ画像に組み合わせる段階とによって同等に行うことができることは理解されるであろう。これらの手法のいずれか又は各々を得られる所与の複合画像フレームシリーズ内で使用することができる。従って、多元素マップを生成させる段階に含まれる計算段階及び/又は画像処理段階のいずれかを段階(c)及び/又は段階(d)では実施することができる。
【0125】
第2に、個々の元素のセットに関する元素マップ又は第2の画像フレームは、単なる合計ではなく、ある条件に従って又は数学公式を用いて組み合わせることができる。例えば、顕微鏡を操作しているユーザが、有意な濃度の2つの元素A及びBを含有する材料を探しているが、2つの元素のいずれも又は一方しか存在しない材料には興味がない場合に、第2の画像フレームは、マップAとマップBとの両方での対応するピクセル値がそれぞれの閾値よりも大きい時にのみ非ゼロピクセルを示すA及びBに関するX線マップから構成することができると考えられる。これは、特定の組成の材料又は化合物を含有する可能性が高い領域を強調表示することでユーザを助けると考えられる。従って、それぞれの複数の化学元素に特徴的なモニタされたX線からのそのような第2の画像フレームの値の導出段階は、元素組合せ判断基準に従って実行することができる。元素組合せ判断基準は、第1の判断基準に含めるか又はそれに従って構成することができ、又はその逆も同様である。すなわち、これら2つの判断基準は、相互関連性又は相互依存性を有することができる。一部の好ましい実施形態では、元素組合せ判断基準は、複数の元素に対応する第2の画像フレームの各ピクセルに関してピクセル値が、当該元素に特徴的であり、かつピクセルに対応する場所から放出されたX線から導出されたそれぞれの値と閾値の間の複数の元素のうちの少なくとも1つ、好ましくは各々に関する比較に従って導出されるように構成することができる。例えば、元素組合せ判断基準は、各第2の画像フレームのピクセルに関して上述した比較のうちの1つ又は各々では、すなわち、当該元素のうちの1つ又は各々に関して閾値を超えた場合に、ピクセル値を比較で使用された複数の表示元素に対応する複数の各々の値の合計又は平均のような組合せとして設定又は導出することができるように構成することができる。一部の実施形態では、上述の比較のいずれか又は各々で閾値を超えなかった場合に、ピクセル値をゼロ値のような予め決められた値に設定することができる。それにも関わらず、少なくとも、元素組合せ判断基準及び/又は比較が依存する個々の元素値が、それぞれの化学元素に特徴的であり、かつ複数の場所から放出されてモニタされたX線から導出されるという意味で、そのような予め決められた値は、これらのモニタされたX線から導出されることは理解されるであろう。
【0126】
複合画像フレームを生成するのに第2の画像フレームを互いに組み合わせる異なるモードが考えられている。一部の実施形態では、段階(c)は、複数の第2の画像フレームを取得する段階を含み、複合画像フレームを生成する段階は、第2の画像フレームのうちの2又は3以上を並置する段階を含む。
【0127】
一部の実施形態は、複数の第2の画像フレームを取得する段階を含む段階(c)を含み、従って、複合画像フレームを生成する段階は、例えば、ピクセル値を組み合わせるための公知の画像処理技術を使用することによって第2の画像フレームのうちの2又は3以上をオーバーレイする段階を含むことができる。
【0128】
本発明の第2の態様により、顕微鏡内で試料を分析するためのシステムを提供し、システムは、試料と集束電子ビームが試料に向けてそこから射出する電子ビーム源との間に使用時に位置決めされるようになった第1のX線検出器と、使用時に第1のX線検出器と試料の間に挟まれるように設けられ、第1のX線検出器上への電子の入射を低減するようになったフィルタ部材と、第2のX線検出器であって、使用時にその上への電子の入射を低減するようになった偏向器配置が設けられた上記の第2のX線検出器と、電子検出器、第1のX線検出器、第2のX線検出器を用いて複合画像フレームシリーズを取得するように構成された制御モジュールとを含み、複合画像フレームを取得する段階は、a)集束電子ビームに試料の領域を横断させる段階、b)試料の領域内の複数の場所に対応する複数のピクセルであって、これらの場所から放出されてモニタされた電子から導出された値を有する上記の複数のピクセルを含む第1の画像フレームを取得するために、複数の場所から放出された得られる電子セットを電子検出器を用いてモニタする段階、c)複数の場所に対応する複数のピクセルであって、それぞれの化学元素に特徴的であり、かつ複数の場所から放出されてモニタされたX線から第1の判断基準に従って導出された値を有する上記の複数のピクセルを各々が含む1又は2以上の第2の画像フレームを取得するために、複数の場所から放出された得られるX線の第1及び第2のセットをそれぞれ第1のX線検出器及び第2のX線検出器を用いてモニタする段階であって、電子セットと第1及び第2のセットのX線とが、試料から実質的に同時に放出される上記のモニタする段階、及びd)領域内の複数の場所から放出されてモニタされた電子及びX線から導出されたデータを提供するために複合画像フレームを生成するように第1の画像フレームと1又は2以上の第2の画像フレームとを組み合わせる段階を含み、システムは、更に、複合画像フレームシリーズを各複合画像フレームを順番に示すように更新される視覚ディスプレイ上に表示するように構成された表示モジュールを含む。
【0129】
使用時にビームスポットに大きい収集立体角の範囲を定めるように位置決めされた1又は2以上のセンサー要素を有する第1のX線検出器を含む検出器又は検出器モジュールを使用することが特に有利である。そのような構成を有する検出器又はモジュールを使用することにより、電子顕微鏡での試料のナビゲーション及び分析を有意に改善することができる。好ましくは、この改善は、そのような検出器を含むモジュールが、典型的には、電子ビームアセンブリの一方の側に位置決めされた第2のX線検出器に関して電子ビームが試料に衝突するスポットへの視線を遮蔽しないことを好ましくは保証しながら、X線検出器と後方散乱電子検出器との両方の収集に関して大きい全立体角を維持することを可能にする配置によって達成される。典型的には、フィルタ部材は、使用時に第1のX線検出器と試料の間に挟まれるように構成、位置決め、配置、又は位置付けられる。この構成、位置決め、配置、又は位置付けは、フィルタ部材を試料に対面する第1のX線検出器の面を覆う材料層として配置することによって達成される。
【0130】
制御モジュールは、顕微鏡、特にその電子ビームアセンブリを制御するように構成することができる。一般的に、好ましくは、制御モジュールが得られる電子セットをモニタさせる電子検出器は、典型的には、システムとは別々である。しかし、典型的には、電子検出器は、システムが検出器を制御することができるようにシステムとデータ通信している。
【0131】
好ましくは、システムは、第1のX線検出器を含む検出器モジュールを含む。より好ましくは、検出器モジュールは、電子ビームと試料の間の相互作用によって発生したX線及び後方散乱電子を感受するように電子ビームアセンブリの磁極片の下方に位置決めされるようになっている。好ましい実施形態では、第1のX線検出器は、複数のX線センサー要素であって、そのいずれかによって感受される個々のX線光子のエネルギをモニタするように構成された上記の複数のX線センサー要素を含む。好ましくは、第1のX線検出器の複数のX線センサー要素は、20mm2よりも大きい全活性面積を有する。好ましくは、電子ビーム軸線に関する検出器モジュールの半径方向の広がりは、検出器モジュールの少なくとも第1の部分に関して10mmよりも小さい。このようにして、検出器モジュールのビーム軸線に関する半径方向の広がりを制限する段階は、モジュールが、第2のX線検出器に対してビームスポットへの視線を与えるように切欠き部分、ノッチ、又は開口を含む段階を含むことができる。
【0132】
適切な検出器モジュールの例は、PCT/GB2021/051752に説明されており、この文献の全内容が引用によって本明細書に組み込まれている。
【0133】
上記で示唆したように、一部の実施形態では、システムは、試料と集束電子ビームが試料に向けてそこから射出する電子ビームアセンブリの磁極片との間に使用時に位置決めされるようになっており、第1のX線検出器とフィルタ部材とを含む検出器モジュールを含む。より典型的には、モジュールは、それが第1の態様に関して説明する配置と同じく磁極片の上方、周囲、又は内側に存在することができるように試料と電子ビーム源の間に位置決めされるように適応させることができる。検出器モジュールは、好ましくは、電子検出器を更に含むことができる。電子検出器は、電子セットをモニタするのに使用することができる。これに代えて、電子検出器は、電子セットをモニタするのに使用されるものとは異なる更に別の検出器、例えば、2次電子検出器とすることができる。モジュールに含まれる電子検出器は、可能な場合は1又は2以上の個別した又は別々の活性センサー区域として配置された1又は2以上のセンサー要素を含むことができる。
【0134】
一部の好ましい実施形態では、磁極片の下方の空間は、第1のX線検出器に加えて後方散乱電子の検出器又はセンサー要素(BSE)によって共有される。電子ビームが試料に衝突する位置といずれかの補助検出器の間の視線を保証するために検出器内に上述のノッチ又は切欠き部を保持しながら大きい立体角を取得することを可能にするように不規則な形状を有するBSE検出器を使用することができることが見出されている。このようにして、一部の実施形態で含まれる可能性がある第2のX線検出器を含むことができる側部装着式検出器への視線が保持される。非平面試料上への陰影付け効果の得られる信号強度がセンサーモジュールの幾何学形状による影響を受けないことを保証するために、典型的には、BSEセンサーの対称性の維持が重要である。これに関しては、本発明の開示で後により詳細に説明する。
【0135】
偏向器配置は、電子を第2のX線検出器から離れるように偏向するために磁場を発生させるための磁石配置を含むことができる。磁石配置は、永久磁石及び電磁石のうちのいずれか一方又は両方を含むことができる。そのような磁石のうちのいずれか一方又は両方は、第2のX線検出器に近接させることができる。これは、典型的には、そのような磁石の発生磁場の強度及び広がりを考慮して電磁偏向によって1又は複数のX線センサー要素上への電子の入射を好ましくは電子ビームを偏向させることなく低減するのにこれらの磁石が十分に近いことを構成する。一般的に、少なくとも1つの磁石が、第2のX線検出器に結合又は固定される。第2のX線検出器と偏向器配置との両方は、好ましくは、検出器モジュールの当該部分に設けること、例えば、単一デバイスの一部として互いに取り付けることができる。
【0136】
一部の実施形態では、第2のX線検出器は、電子顕微鏡自体の1又は2以上の構成要素、例えば、電子ビームを集束するようになった磁気レンズが発生させる浮遊磁場を電子偏向機能の少なくとも一部を与えるのに利用する。従って、一部の実施形態では、磁石配置は、顕微鏡の電子ビームアセンブリの磁石を含む。より典型的には、偏向器配置は、使用時に電磁場を発生させる電子顕微鏡の構成要素を含むことができる。顕微鏡の上述の磁石又は他の構成要素は、それ自体が第2の態様によるシステムの一部を形成する必要はないことは理解されるであろう。電子ビーム構成要素が発生させた場が作用してこの偏向を提供するように第2のX線検出器を配置するか又は使用時に位置決めされるようになっていることによって第2のX線デバイスに電子偏向場を与えるという意図でシステムの第2のX線デバイスに偏向器配置を設けることができる。
【0137】
磁気偏向に加えて又はその代わりに、第2のX線検出器上への電子の入射を低減するか又は回避するのに電場を使用することができる。従って、典型的には、偏向器配置は、電子を第2のX線検出器から離れるように偏向するための電場を発生させるための電極配置を含むことができる。
【0138】
偏向器配置は、好ましくは、100eVよりも高く、かつ集束電子ビームの構成されたビームエネルギよりも低いエネルギを有する電子のうちの少なくとも99%を第2の検出器から離れるように偏向するようになっている。好ましくは、偏向器配置は、そのように特化して構成される。例えば、この配置は、上述のエネルギを有する入射電子を偏向させるための平均又は最低の場強度を有する磁場又は電場を少なくとも使用時に好ましくは少なくとも視野領域内に発生させるように構成することができる。好ましくは、この場は、上述のエネルギ範囲にあり、第2のX線検出器の活性区域と一致する未偏向又は偏向前の軌道を有する電子がこの場に帰することができ、これらの電子の軌道を当該センサー区域と一致しないものに変化させる偏向力を受けるような場の強度、方向、及び/又は広がりのものである。例えば、センサーから逸れる偏向軌道、又は電子の入射が検出器を損傷するか又はそれに影響を及ぼすことにはならないシステムの別の構成要素又はいずれかの他の構造体、例えば、壁部材又はセンサーを少なくとも部分的に取り囲むものと一致する偏向軌道を発生場との相互作用によって引き起こすことができる。言い換えれば、第2の検出器から離れる上述の偏向は、偏向器配置が、検出器のセンサー上に入射する軌道から入射しない軌道への変化を起こすようになっていることとして理解することができる。好ましくは、上述の割合の電子は、第2の検出器のX線センサー区域、好ましくは、全X線センサー区域から離れるように偏向される。構成されたビームエネルギは、使用時に試料上に入射する電子ビームに含まれる電子の最低、平均、又は最高のエネルギを意味することができる。
【0139】
一部の実施形態では、システムは、第1のX線検出器及び第2のX線検出器の一方又は各々のもの並びに検出器を含むモジュールの位置及び/又は移動をこれらの検出器の衝突を防止するように制御するように構成されたインターロック機構を更に含む。一般的に、インターロック機構は、異なるデバイス又はシステムを接続するか又はその機能を調整するためのデバイス又は機構であることを理解することができる。そのような実施形態では、第1のX線検出器と第2のX線検出器間、又はこれらの検出器を含むモジュールと検出器の支持構成要素間の衝突を防止することができる。例えば、インターロック機構は、第2の検出器が第1の検出器を後退させる行程に存在する場合に、衝突を回避するために第1の検出器を後退させる前に自動的に第2の検出器を最初に後退させることになるように構成することができる。第1の検出器が完全に後退された後に、インターロックによって自動的に第2の検出器が挿入され、その初期位置、すなわち、インターロックによる関与前の位置に戻される。第2の検出器が第1の検出器の挿入を阻害している場合に、検出器の挿入中、すなわち、第1の検出器を挿入する前に類似の機能が与えられ、第2の検出器は完全に後退され、第1の検出器の挿入後に再挿入されることになる。
【0140】
本発明の第3の態様により、第1の態様による方法を実行するように構成された命令、プログラムコード、又はコードを格納するか又はこれらが格納された非一時的コンピュータ可読媒体を提供する。これらの命令は、1又は2以上のプロセッサ、例えば、第2の態様に関して説明したシステムのうちのいずれかのような顕微鏡内で試料を分析するためのシステムのプロセッサに第1の態様による方法のような方法を実施させるように1又は2以上のプロセッサによって実行可能とすることができる。
【0141】
次に、本発明の例を類似の特徴を類似の参照記号によって表示した添付図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0142】
図1】従来技術の試料からの電子画像及びX線画像を記録するための走査電子顕微鏡システムの構成を示す概略図である。
図2】従来技術の電子顕微鏡内のX線分析のための配置を示す概略図である。
図3】本発明による例示的方法を示す流れ図である。
図4】本発明による例示的方法を実施するのに使用することができる走査電子顕微鏡内のX線検出器配置を示す概略図である。
図5】本発明による第1の例示的システムの一部の斜視図である。
図6】走査電子顕微鏡の最終レンズ磁極片の真下の位置にある第1の例示的システムの一部を形成する第1の例示的検出器モジュールを含む図5に示すシステム構成要素の側面図及び平面図である。
図7】本発明による例示的システムの一部を形成することができる第2の例示的検出器モジュールの平面図である。
図8】本発明による例示的システムの一部を形成することができる第3の例示的検出器モジュールの平面図である。
図9】走査電子顕微鏡内で本発明による例示的方法を実施することを目的とする図7に示す第1の例示的モジュールを含む例示的配置の下方からの図である。
図10図9に示す配置の側面図である。
図11】本発明による例示的方法によって取得された例示的電子画像フレームを表示するユーザインタフェースを示す図である。
図12】本発明による例示的方法によって取得された図11と同じ顕微鏡視野に対応する例示的X線画像フレームを表示するユーザインタフェースを示す図である。
図13】本発明による例示的方法によって取得された例示的複合画像フレームを表示するユーザインタフェースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0143】
ここで、図1図13を参照して本発明による顕微鏡内で試料を分析する方法及びシステムの例を説明する。
【0144】
本発明による例示的方法の段階を図3の流れ図に示している。この流れ図は、電子顕微鏡の作動中に図4に示す例示的装置によって取り込まれる単一複合画像フレームをそのようなフレーム時系列で取り込んで表示するための段階300を示している。
【0145】
段階311では、集束電子ビーム電子顕微鏡にその構成視野に対応する試料407の領域を通過させる。
【0146】
顕微鏡の最終レンズ磁極片422から射出するビームの試料材料上への入射に応じた材料とビームの間の相互作用結果として粒子が放出される。段階311中に、全視野にわたって分析データを取り込むことを可能にするために、ビームスポット423に試料407の領域を走査させる。放出粒子は、典型的には、後方散乱電子と2次電子とX線とを含む。段階313及び315では、放出粒子のうちの2次電子とX線とが、電子検出器(図示せず)、第1のX線検出器408、及び第2のX線検出器409によって同時にモニタされる。電子ビーム(図示せず)を領域にわたって走査させて試料の視野領域内の複数の場所からX線と電子とを放出させる時に、両方のタイプの分析データを実時間でライブ視覚化することを可能にするために、X線と電子とが同時に取得される。段階313では、電子データを用いて第1の画像フレームが取得される。この第1の画像フレームのピクセルは、試料の領域内の上述の場所、すなわち、ビームをこれらの場所の上に入射させた時に電子信号及びX線信号を取り込むサンプリング場所に対応する。
【0147】
相応に、段階315では、複数のサンプリング場所から放出されたX線から導出されたX線信号を各々が視覚化する少なくとも1つの第2の画像フレームが取得される。
【0148】
段階315は、第1及び第2のX線検出器408、409によって得られるデータをX線検出配置の信号収集性能に基づいて最適化するための第2の画像フレームの内容を導出するための判断基準の使用を伴う。第2のX線検出器409の収集立体角が第1のX線検出器408のものよりも小さいことを見ることができる。この例では、第2のX線検出器409は、走査電子顕微鏡の側部ポート上に装着された従来のEDS検出器である。ビームスポットではこの検出器の区域によって範囲が定められた限られた立体角は、このセンサーから導出されるX線信号に関する信号対ノイズ比(S/N)を制限する。一方で第1のX線検出器408は、電子レンズの磁極片422の下方に装着され、入射電子ビームを取り囲むセンサーと、試料に対面する感知区域とを有し、従って、そのセンサーの全てに対して第2の検出器409と比較してかなり大きい全収集立体角を取得する機能を有する。このようにして、第1のX線検出器408は、より高いS/Nを利用可能である。しかし、上述のように、高エネルギ後方散乱電子に対するX線検出器セグメントの感度に起因して第1及び第2のX線検出器の各々にセンサー要素又はその領域上への電子の入射を低減するための配置が設けられる。第2のX線検出器409の配置は、この検出器に向けて進行する実質的に全ての後方散乱電子を検出器のセンサー区域から離れるように経路変更する機能を有する強い磁場を発生させる電子トラップ、この例では永久磁石ペアの包含を可能にする。それに反して磁極片422と試料407との間への第1のX線検出器408の配置は、電磁電子偏向デバイスに対して不十分な空間しか残さず、従って、第1のX線検出器408には、試料407に対面するセンサー区域の面の上に位置決めされた第1の材料の層が設けられる。第1の検出器408の前にあるフィルタ材料は、後方散乱電子を遮断する。このフィルタは、これに加えて2次電子を遮断するが、これらの電子は、典型的に低いエネルギのみを有する。一方でこのフィルタ材料は、更にX線にも影響を及ぼし、特に第1の検出器408上への低エネルギX線の入射を低減する。
【0149】
得られる所与の複合画像フレームに関して段階315で発生させる各第2の画像フレームは、特定の化学元素に対応する。所与の化学元素に関する第2の画像フレームを取得するために、上述の第1の判断基準は、好ましくは、S/Nが最適化されるようにいくつかの異なる方法で構成及び実施することができる。第1の検出器は、典型的には、低いエネルギに関して低いS/Nしか得ないので、一般的に、この判断基準は、X線エネルギスペクトルの下端部に特性ピークを有する化学元素を表す第2の画像フレームが、第2のX線検出器409によって得られたデータからのものである第2のセットのX線から優先的に導出されるように選択される。一般的に、第1の判断基準は、より高いエネルギの特性ピークを有する元素を表す第2の画像フレームに関して第1のX線セットを収集する大きい収集立体角及び従ってより高いS/Nに起因してピクセル値が上記とは逆に第1のX線検出器408から優先的に導出されるように構成される。しかし、異なる例示的方法では、第1の判断基準は、利用可能なX線データからピクセル値を導出する様々な異なる方法によって段階315で第2の画像フレームを得させる広範な異なる方法から構成される。
【0150】
段階313でモニタされる電子セットと段階315でモニタされる第1及び第2のセットのX線とは、試料から実質的に同時に放出される。すなわち、モニタされる電子とモニタされる(いずれかのX線検出器により)X線との両方は、段階311での電子ビームによる試料の照明の結果として同時に放出される。従って、典型的には、段階313でのモニタと段階315でのモニタとは、それぞれの粒子セットの各々の検出器による感受が実質的に同時であるという意味でも同時である。一般的に、電子検出器と第1及び第2のX線検出器とは、複数の場所の各々に関して、すなわち、好ましくは電子ビームを各サンプリング点上に集束させる滞留時間の時間幅にわたってそれぞれの粒子を同時にモニタする。従って、そのような実施形態での同時性は、モニタが、滞留時間と同時である及び/又はそれと同程度である予め決められた時間フレームの範囲を用いて実行されることを意味するとして理解することができる。
【0151】
モニタされた電子信号を表す第1の画像フレームと、それぞれの化学元素に関するモニタされたX線信号を各々が表す1又は2以上の第2の画像フレームとが得られた状態で、これらのフレームは、複合画像フレームを生成するように段階316で組み合わされる。次に、段階317では、当該フレームが、実時間で更新されるストリーム、ビデオ、又はフレームシーケンスの一部として表示され、それによって試料の分析が容易になる。その後に、時系列での複合画像フレームを取得するために、各複合画像フレームに関して段階311~317が繰り返される。
【0152】
図5には、第1の例示的システムが示されている。例示的システム520の描かれたセクションは、使用時に顕微鏡磁極片の下に位置決めされるようになった下向きX線検出器モジュール508を支持する後退可能側部アーム524と、一体的電子トラップ512が設けられた第2のX線検出器509とを含む。第2のX線検出器509は、電子ビーム510が上に入射する試料507まで無掩蔽の視線を有するようにアーム524内に装着される。アーム524は、電気接続部(図示せず)と、外部ヒートシンク(図示せず)への冷却経路とを更に設ける。この第1の例示的システムは、X線検出器508、509と電子顕微鏡の電子検出器とを用いて画像フレームのシリーズを取得するように構成された制御モジュール(図示せず)を更に含む。制御モジュールは、コンピュータデバイスを含む又はそれによって構成することができ、説明する方法の段階を実行し、及び/又は方法の各々の部分を実行するように説明する構成要素を制御するようになった1又は2以上のプロセッサを含むことができ、更にこれらを実施するのに必要な電気接続部及びデータ接続部を含む。
【0153】
電子トラップ512は、1又は2以上の永久磁石ペア又は円形ハルバッハ磁石アレイを含むことができ、第2の検出器509上に入射すると考えられる後方散乱電子をこの検出器から離れるように経路変更するために強い場を発生させるようになっている。トラップは、浮遊磁場が電子顕微鏡の集束物体と干渉しないようにこの浮遊磁場を制限する軟鉄エンクロージャを更に含む(例えば、US 8,049,182 B2を参照されたい)。第2のX線検出器509は、顕微鏡磁極片の下方に使用されるようになったモジュール内にあり、後方散乱電子を遮断するための材料のフィルタを必要とする第1のX線検出器508内のセンサー要素よりもかなり高い感度を低エネルギX線に対して有する。
【0154】
第2のX線検出器509が支持アーム524に装着されたこの例の利点は、単一電子顕微鏡移植しか必要とされない点、及びアーム内の導管がX線検出器508の両方に対する電気要件及び冷却要件を受け入れることができる点である。
【0155】
この例には電子顕微鏡の電子検出器を示していないが、電子検出器は、この計器内の当業技術で公知の適切な場所に配置することができる。
【0156】
図6は、走査電子顕微鏡の最終レンズ磁極片622の真下の位置にある図5に示すシステム構成要素の側面図及び平面図を示しており、検出器モジュール618は、平面図で見ることができる第1のX線検出器608を含む。システムが含む検出器モジュールと考えることができるアームの他の構成要素に対して固定された位置に装着された第2の検出器609は、全ての検出器が試料607上のプローブスポットの明瞭な視線を有することを保証するように構成要素の幾何学形状を含むことを可能にする。第2の検出器609に対する視線は、アーム624内の開口625を通して設けられる。
【0157】
この構成では、開口625は、検出器モジュール618が含む複数のセンサーに関して2回回転対称性を保持するように位置付けられた対称切欠き部として設けられる。この例では、検出器モジュール618は、対称配置を有する4つの後方散乱電子センサー要素627に加えて、2つの明確に異なるセンサー要素として設けられた第1のX線センサー608を含む。
【0158】
本発明による例示的システムの一部を形成することができる第2の例示的検出器モジュールを図7の平面図に示している。このモジュールは、シリコンドリフト検出器の形態にある第1のX線検出器708によって構成された2つの円形X線センサーと、2回回転対称性を有する2つの後方散乱電子センサーセグメント727とを含む。ほぼ長円形のモジュールの外部境界は、第2のX線検出器又はいずれかの付属検出器のいずれかの方向の遮蔽を低減するために電子ビーム610の軸線から外周囲までの半径方向距離が短縮された2つの領域を設けるように構成される。この配置を使用すると、21.2mmの長さを有するモジュールは、14mm2又はそれ以上の全面積を与え、ビーム軸線から外周囲までに4.5mmよりも短い最短半径方向距離を有して2つのシリコンドリフト検出器センサーを受け入れることができる。この例及び図6に示す上述の例では、集束電子ビームが試料に向けて進行することを可能にするための中心孔733がモジュール内に必要とされる。電子顕微鏡での長期使用後に、この開口733の上に汚染材料が蓄積される場合があり、更に電子電荷が材料上に蓄積される場合がある。孔の縁部が集束電子ビーム610に過度に近い場合に、ビームプロファイルを歪ませて顕微鏡画像品質の劣化を提供する場合がある。モジュール支持アーム624が電子顕微鏡上の側部ポートから挿入される場合に、孔633、733の側壁からの集束電子ビームの距離を最大にするために、孔は、電子ビーム軸線と慎重に位置合わせされなければならない。孔が小さいほど、位置合わされることが困難である。更に、入射ビーム内の電子のうちのごく一部分は、主集束ビームの内側に収まらず、主ビームを有意に超えて延びる強度の「ビームテール」を構成する場合がある。このビームテールの一部が開口の側部に当たる場合に、汚染の蓄積を悪化させる場合がある。従って、これらの潜在的な問題を最小にするために可能な限り大きい中心孔733を設けることが有利である。しかし、これを受け入れるためにモジュール718内のセンサー要素がアクセスから遠く離れるように位置決めされる場合に、試料ビームスポットで範囲が定められる立体角が縮小し、従って、性能損失が伴う。殆どの走査電子顕微鏡ではこれらの影響を回避するために、中心孔の内径を最適には少なくとも1.5mmとし、好ましくは2.5mmよりも大きくすることができることが見出されている。
【0159】
磁極片の下方にX線センサー708を有することの追加の利点は、例えば、粗いか又は傾斜した面を有し、集束電子ビームが凹部で材料に衝突する可能性がある試料に関して、このセンサーが側部装着式付属検出器に対しては捉えることができない材料から放出されたX線を検出することができる点である。プローブスポットから放出されたX線は、到達する視線が存在し、凹部の側壁によって掩蔽されない第1のX線検出器のいずれの部分にも到達することができる。従って、電子ビーム軸線からの短い半径方向距離内に可能な限り大きいセンサー活性区域を有することが望ましい。センサーの面が、試料上のプローブスポットから6mmの距離にある場合に、水平に対して45°の仰角θで放出されたX線は、この軸線から6mmの半径方向距離でセンサーに衝突すると考えられる。凹部のベースにある材料に対していずれかの分析性能を与えるために、この軸線の6mm内にX線センサーの全活性面積の少なくとも半分を有することが望ましい。
【0160】
集束ビーム軸線の周りに少なくとも2回の回転対称性を有するモジュール内にBSEセンサー要素727を設けると、この配置は、全BSE信号に対するトポグラフィの効果を低減し、従って、面の局所的な向きよりも材料組成の方をより的確に表すことで有利である。特に大きい面トポグラフィを有する試料を観察する時は、第1のX線検出器センサー要素を集束ビーム軸線の周りに対称に配置することも有利である。入射電子ビームが「崖」のベースにある物体に衝突する場合に、崖自体が、X線検出器センサー要素の一方へのX線の通過を妨害する場合がある。しかし、他方のX線センサー要素が直径方向に正反対にある場合に、このセンサー要素は、物体の明瞭な視野を変わらずに有することができ、従って、物体からのX線放出を検出することができる。更に、局所面が平坦な試料に関して、かつ第1のX線検出器センサー要素との両方がプローブスポットの明瞭な視野を有する場合に関して、放出X線は、面の向きに依存する試料自己吸収のようないわゆる「マトリックス」効果を受けることになる。面が水平から傾斜しており、第1のX線検出器センサー要素が集束電子ビーム軸線の周りに2回回転対称性を有する場合に、2つのセンサーからの信号を平均することにより、マトリックス効果に対する面傾斜の影響が低減することになる。
【0161】
センサーの2回回転対称性は、トポグラフィ効果を低減するのに有利であるが、入射電子ビームが試料面上の異なる位置に偏向された時に励起信号に対するセンサーの全体応答が変化することになる。集束電子ビームが試料上の軸外位置に偏向された時に、電子又はX線に対する収集立体角は、試料上のビーム位置に近いセンサーでは大きい。両方のセンサーを試料面上に投影した場所の間の線に沿う位置では、一方のセンサーに関する収集立体角の拡大は、反対のセンサーに関する立体角の縮小によってほぼ補償される。しかし、この線に対して直角な方向のビーム位置では、中心軸線からの距離が増加する時に、収集立体角は両方のセンサーに関して小さくなる。
【0162】
SEMの倍率が高いほど、視野を網羅するための試料上の最大走査偏向は小さくなり、視野範囲にある異なる位置での信号検出のいずれの効率変化も小さくなる。しかし、200Xというかなり低い倍率にある典型的なSEMでは、視野の幅は約1.5mmになり、例えば、図7に示す設計では、位置による収集立体角の変化は、視野にわたって数パーセントの応答変化をもたらす場合がある。BSE信号は、異なる組成の材料を区別することができ、従って、信号閾値を定めて視野範囲で異なる材料の領域を線引きすることができるが、材料の平均原子番号が類似の時に、信号収集効率のいずれの空間変化もこの線引きを不確かにすることになる。従って、この応答不均一性の程度は、BSE信号に対して特に重要である。BSE放出の物理過程は公知であり、角度とエネルギとの両方の関数として後方散乱電子の分布を予想することができるようにモンテカルロ法によって模擬することができる。ビーム位置は、視野の左上又は右下にある時に2つのBSEセンサーの一方又は他方に最も近く、合計応答は、この位置が中心軸線上の時よりも3.3%大きい。ビーム位置は、右上又は左下にある時に両方のセンサーから遠く離れ、合計応答は、中心位置に関するものよりも3%小さい。
【0163】
大きい視野に関するこの応答不均一性が許容不能である用途では、従来の方法は、フルディスク又は4回対称セグメント化BSE検出器を使用することであると考えられる。しかし、この方法は、SDDのX線センサーをビーム軸線から遠く離れるように移動する段階を必要とし、X線検出に対する収集立体角を損なうと考えられる。BSE電子の強度は、面に対する法線との放出角のほぼ余弦として低下することは公知なので、BSEセンサーのリングをX線センサーの外側に置く代替手法は、センサーの単位面積当たりのBSE信号を低減すると考えられる。BSE感度又はX線感度のいずれかを改善するためにモジュールの直径を拡大すると、SEMチャンバ内の他の機器又は一方の側に装着された検出器の視線を妨害する可能性が高まると考えられる。これらの性能損失を回避するために、本発明による例示的システムは、図8に示す26.5mmの長さを有するモジュールよって例証する2回回転対称性のみを有する長円形モジュールに関する大きい視野にわたってより均一なBSE応答を有利に達成する。
【0164】
図8は、本発明による例示的システムの一部を形成することができる第3の例示的検出器モジュールを平面図に示している。モジュール818は、中心孔833の両側に第1のX線検出器808を形成する2つの円形X線センサー要素と、2回回転対称性を有する4つの後方散乱電子センサー要素827a、827b、827c、827dとを含む。
【0165】
BSEセンサー要素827c及び827dは、中心軸線に最も近く、従って、BSE電子を検出するのに最も効率的である。センサー要素827c及び827dに関する合計応答は、大きい視野にわたって不均一性を示すと考えられ、この場合に、最も弱い応答は、これらのセンサーを結ぶ垂直線に対して直角な線の最遠端部にあると考えられる。SDDのX線センサー808の外側にある追加のBSEセンサー827a及び827bは、この感度降下を補償することを助ける。その結果、ここでもまた、BSEセンサーの入射面が試料の面の5.8mm上方に位置決めされる図8の寸法を有するモジュールに関して全てのセンサーの和に関するBSE応答が算定される時に、試料上の1.5mmの平方面積にわたる応答均一性が改善される。この場合の最大応答は、中心位置よりも0.2%しか大きくなく、最小応答は0.7%しか小さくない。
【0166】
余弦放出応答に起因するセンサー827c及び827dと比較した効率の低下を補償するためにBSEセンサー827a及び827bのサイズを拡大することにより、全BSE応答の均一性は、更に改善することができる。しかし、均一性を改善するのに必要とされる変更は、モジュールの長さを余儀なく長くすると考えられる。余弦放出応答に起因する信号損失を補償するために、直径を拡大する代わりに、BSEセンサー827a及び827bの応答を電子的なデジタル又はソフトウエアの計算法によって増幅することができる。図8のモジュールでは、センサー1及び2に関する合計応答が加算されてセンサー827a及び827bに関する合計応答の3.3倍になることに対応する結果を与える増幅が使用される場合に、最小応答は中心位置の場合と同じであり、最大応答は0.2%しか大きくない。
【0167】
センサー827a及び827bからの信号のこの増幅を使用すると、均一性は改善されるが、信号の当該部分でのノイズも増幅される。根本的に最小ノイズは、センサーに当たる電子束によって制限され、センサーが小さいほどノイズは大きい。従って、増幅定数が大きいほど全体応答でのノイズは有意に増加することになり、従って、ビーム位置による応答均一性の改善と全体応答の信号対ノイズの低減の間には相反関係が存在する。BSEセンサーをより多くのセグメントに分割し、それらの信号を合計する前に異なるレベルの増幅を施し、それによって空間応答の均一性を更に改善することができると考えられる。
【0168】
図7に示すモジュールを含む走査電子顕微鏡で本発明による方法を実施するための例示的配置の下方からの図を描く図9には、本発明による有利な実施の例を示している。サブ磁極片検出器モジュール918が、下方から、すなわち、試料(図示せず)の方向から示されており、支持アーム924の上に設けられる。モジュール918は、2つの円形センサー要素と2つの後方散乱電子センサー要素927a、927bとを含む第1のX線検出器908を含む。モジュールは、側部装着式検出器のための切欠き部幾何学形状を有するように成形される。この例では、従来の側部装着式検出器909として設けられた第2のX線検出器が示されており、電子トラップ912を含む。第2のX線検出器909には、検出器モジュール918の切欠き部929の部分によって試料(図示せず)への視線が設けられる。モジュール918は、集束電子ビーム(図示せず)がビームアセンブリから試料に通過することができるように中心孔933を更に含む。この配置は、計器の側部に装着された2次電子検出器926を更に含む。
【0169】
これに加えて、この例による装置は、第2のX線検出器と同様であり、上記と反対の計器側部に位置決めされた更に別のX線検出器919を含む。図10は、この装置の側面図を示している。この更に別のX線検出器は、システムがモニタすることができるX線信号に更に別の改善を施し、第2のX線検出器からの信号及びデータと共に処理することができる信号及びデータを発する追加のX線センサー活性区域を含む点で第2のX線検出器の一部と考えることができる。
【0170】
第1のX線検出器の2つのX線センサー要素及び2つの後方散乱センサー要素は、電子源からの電子ビームを電子光学円柱によって試料上に集束することを可能にする開口の周りに対称に位置決めされる。センサーの対称配置は、信号の強度が検出器の幾何学形状に依存しないように設計される。サブ磁極片センサー配置を支持する後退可能アーム924は、外部ヒートシンクへの熱除去のためのヒートパイプを有するTECによってセンサーヘッドの冷却を提供する。アームは、外部前置増幅回路への電力、制御、及び信号の出力のための電気接続を更に提供する。アーム924の形状は、その脚部が図10に示すようにセンサーヘッドの底部と同じ高さにあるように設計される。すなわち、顕微鏡チャンバ内の全ての試料がモジュールヘッドの高さの下方に装着されることを前提として、オペレータによって制御されるモータ駆動X-Y台によって試料が付近に移動される時に検出器との衝突をなくすことができる。アームは、外部モータによって後退及び挿入され、それによって検出器は、磁極片の下方の使用時位置から顕微鏡真空チャンバの壁の完全に外側にある不使用時の位置まで移動する。これは、フィルタがX線センサーを後方散乱電子から保護することになる条件以外の条件、又は装置が必要とされない状況、例えば、より短い作動距離が使用される時に顕微鏡を使用することを可能にする。
【0171】
この例には、システムの構成要素の位置及び移動を制御するように構成されたインターロックが有利に設けられる。この場合に、アーム1024は、第2の検出器1009の方向から離れるように後退するように位置決めされるので、1009が移動されなかったとしてもアームと検出器の間に衝突が発生するとは考えられない。しかし、代替配置では、位置合わせが異なる場合があり、従って、構成要素が移動された時に衝突する可能性があると考えられる。例えば、第2のX線検出器1009がサブ磁極片モジュール1018の上面の高さの下方に突出する代替配置では、インターロックが不在の場合に、挿入又は後退中にこの検出器との衝突がもたらされると考えられる。この場合に、この例のインターロックは、アーム1024を移動する前にこの検出器1009を後退させるように作動することになる。
【0172】
下方突出検出器1009は、サブ磁極片検出器のアームを後退させる前にいずれの潜在的な衝突をも回避するために、システム構成要素を配置するための1又は2以上のモータ又はアクチュエータを制御するインターロックソフトウエアが自動的に後退させる。
【0173】
X線センサーの前には、エネルギが20keVまでの後方散乱電子の大部分を阻止し、装置を使用する時に20kVのビームエネルギを使用することを可能にするように設計されたフィルタがある。このフィルタを使用することにより、WO 2022/008924 A1に説明されているように、エネルギが1keVよりも高いX線を検出することができる。
【0174】
2つの側部装着式従来EDS検出器909、919が設けられた電子トラップ912、942は、電子銃の最大エネルギ(通常は30keV)までの後方散乱電子を遮断するようになっている。切欠き部は、磁極片の下方8.5mmの設計作動距離で作動する時にサイズが最大で150mm2のX線センサーへの完全な視線を与える。
【0175】
2次電子検出器926は、電子衝撃中に試料によって放出された2次元素を検出するために設けられる。この検出器手段の前には、視線を試料まで案内する付勢式収集格子を必要としない。
【0176】
この例示的システムを使用すると、2次電子と後方散乱電子とX線とを同時に収集することができる。
【0177】
検出器からの信号は、真空チャンバの外側の検出器本体内の前置増幅器を通して伝達される。次に、電子信号及びX線信号は、4つまでの信号(2つのサブ磁極片センサーと2つまでの従来EDS検出器)を処理する信号パルスプロセッサの中に伝達される。電子信号は別々に処理される。
【0178】
この例では、上述の方法中に得られた画像フレームは、視覚ディスプレイ上でグラフィカルコンピュータユーザインタフェース内に提示される。案内式ユーザインタフェースの一部分が図11図13に示されている。
【0179】
電子ビームが、段階311の場合と同じく試料の視野にわたって走査される時に、各チャネルに関するX線スペクトルと電子強度とが各ピクセルに関して格納される。サブ磁極片X線センサー要素からのスペクトルは、単一スペクトルに合計される。電子信号又は元素に関する信号強度を各ピクセルに示すことによって画像が構成される。元素強度は、当該元素を特徴付けるX線の線に対応する選択エネルギ範囲にあるX線全数を計数することによって算定される。
【0180】
通常作動時に、2つまでの第1の画像フレーム、すなわち、電子画像フレームと、いくつかの第2の画像フレーム、すなわち、元素画像フレームとが同時に表示される。電子画像は、2次電子検出器1026からもたらされ、組合せ信号は、サブ磁極片ヘッド1018内の2つの電子センサー要素からもたらされる。
【0181】
例示的電子画像フレームを図11に示している。この図の左のフレームは、2次電子検出器からの画像を示しており、右のフレームは、磁極片下検出器内の後方散乱センサー要素からを示している。
【0182】
表示されることになる元素は、自動ピーク識別ルーチンによって決定される。このルーチンは、視野内の全てのピクセルの合計であるスペクトル(合計スペクトル)を側部装着式従来検出器1009から取得して元素リストを形成する。
【0183】
各フレームに関して識別されたいずれの新しい元素も元素リストに追加することができ、例えば、先に調査した顕微鏡視野内で先に検出され、もはや検出されないいずれの元素も削除することができる。
【0184】
元素画像である第2の画像フレームが、リスト内の各元素に関して表示される。第2の画像フレームは、各元素に関して最も高い信号強度を選択することに依存して磁極片下センサーの組合せによって提供されたデータ又は側部装着式従来検出器からのデータのいずれかから形成される。いずれから形成されるかは、センサーの相対的立体角に依存して変化することになるが、この例示的機器では、1.2keVよりも高いエネルギを有する(この例では使用されるフィルタは、1.2keVよりも低いエネルギを有するX線を徐々に減衰させるので)線によって特徴付けられる元素に関するデータが、モジュール1018内の第1の磁極片下検出器から導出されることになり、1.2keVよりも低いスペクトル線を有する元素に関する画像フレームが、従来検出器1009、1019からのデータを使用することになる。
【0185】
図12は、図11の電子画像と同じ視野を描く第2の画像フレームの例示的X線画像を示している。表示すX線画像フレームCKa1-2及びO Ka1は、エネルギが1.2keVよりも低いX線から算定したものであり、従って、側部装着式の第2の検出器909及び更に別の検出器919によって取得されたデータから算定したものである。SiKa1、AlKa1、TIKa1、及びPKa1は、エネルギが1.2keVよりも高いX線から算定されたものであり、従って、サブ磁極片X線検出器908のデータから算定されたものである。
【0186】
この例では、第1の判断基準は、各第2の画像フレームが、第1のX線検出器908及び第2のX線検出器909によって出力されたデータからモニタされたX線エネルギに基づいて選択されるデータから導出されるように構成される。所与のX線元素マップを生成するのにどの検出器データを使用すべきかを決定する閾値エネルギ値を有効にするような判断基準は、X線画像データの品質を最適化する1つの方式である。しかし、本発明の開示で上述したように、他の処理方式が考えられている。
【0187】
更に、そのような閾値に対する値は、各センサーによってモニタされる信号に影響を及ぼす複数の因子に基づいて選択することができ、所与の機器、センサー構成要素、及び/又はこれらの特定の相対配置に特徴的とすることができる。
【0188】
取得された画像フレームは、複合画像フレームを生成するためにいくつかの方法で組み合わせることができる。これらの画像フレームは、別々に表示することができる。これらの画像フレームは、1つの画像(一般的に、電子画像、すなわち、第1の画像フレーム)からのピクセル値を表す強度と、各元素画像フレームに対して異なる色を選択することによって算定された各複合画像フレームピクセルに対する色相とを電子画像の強度と共に有する複合画像として表示し、図13に示すような結果を生成することができる。この図は、本発明による例示的方法によって取得された例示的複合画像フレームを表示するユーザインタフェースを示している。
【0189】
複合画像フレームは、2次電子フレーム又は第1の画像フレーム(ピクセル強度を決定する)と複数の元素マップに基づいて決定された色相とで形成された複合画像1337を含む。各ピクセル色相は、元素固有の第2の画像フレームの対応するピクセル値による寄与に基づいて、各ピクセル色相にMg(オレンジ色)とAl(青色)とSi(緑色)とCr(黄色)とFe(赤紫色)とを含む色が割り当てられる。これに加えて、この例では、複合画像フレームは、第2の側部装着式従来EDS検出器909、919(エネルギ0.5keV)によって得られた信号から導出された酸素元素マップと、第1のサブ磁極片X線検出器(エネルギ>1.2keV)908によって取得されたデータから導出された他のマップとを含む個々の元素の第2の画像フレーム1338を含む。2次電子検出器924及びサブ磁極片ヘッド918内の電子センサー927からの電子画像1339、1340も示されている。
【0190】
本発明の開示で説明する例示的方法及びシステムは、試料に存在する全ての元素の電子とX線とでの同時情報のモニタを可能にする。上記で示唆したように、次に、これらからのデータは、いくつかの異なる方法で処理され、ソフトウエアインタフェース上に提示することができる。これらの方法は、各第2の画像フレームのピクセル値を導出する時に従う第1の判断基準を別様に構成することによって実施することができる。
【0191】
上述した第1の例示的手法は、形態を示すための電子画像フレームを取得し、更に元素画像を当該元素に関して最も高いX線強度を感受するか又は最も高い信号対ノイズ比を有するデータを出力する第1及び第2のX線検出器から構成されるX線検出器を用いて取得する段階、及びこれらの画像フレームを各元素に異なる色相が与えられ、電子画像が強度を提供する状態で並置フレームとして複合画像フレーム内で表示する及び/又はこれらの画像フレームを重ねる段階として要約することができる。
【0192】
ディスプレイを表示することができる更に別の方法は、以下の通りである。
【0193】
第2の手法は、例えば、平均原子番号の大きい差に起因する可能性があるX線背景放射の変化を除去する段階を含むことができる。この処理は、2又は3以上の元素からの信号を上述した処理方法によって分離することができない場合にも適切とすることができる。
【0194】
これは、形態を示すための電子画像フレームを取得し、更に元素画像を当該元素に関して最も高いX線強度を有する検出器を用いて取得し、これらの元素画像をノイズを除去し、近接して発生するピークを分離するように各ピクセルにおいて処理する段階、及びこれらの画像フレームを各元素に異なる色相が与えられ、電子画像が強度を提供する状態で別々に表示する及び/又は重複させる段階として要約することができる。
【0195】
有利に使用することができる第3の例示的手法は、ピクセルを互いに加算することによって取得分析データを種分けする段階を含む。例えば、4つのピクセルから構成される2×2ブロックは、各々、その構成ピクセルを互いに加算することができる。このようにして、例えば、256×256ピクセルアレイの画像フレームは、より高い強度のピクセルを有する128×128ピクセル画像フレームになることができる。すなわち、X線データからの元素画像は、ピクセルを組み合わせて電子画像よりも低い画像解像度を提供するが、改善されたS/Nを有することができる。
【0196】
この手法の有利な変形は、異なる検出器からのデータから導出された元素画像を異なる量だけ種分けし、側部入射の第2のX線検出器909からのより低い強度又はより低いS/Nのデータからの画像をより大きい程度に種分けする段階を含む。例えば、より小さい立体角の従来検出器909からのデータにピクセル解像度を代償としてより高い程度のピクセル集約及び従ってS/N改善が適用されるように、側部装着式検出器909からの元素画像が4×4ピクセルブロックを種分けすることができると考えられ、磁極片下検出器908からの元素画像が2×2のピクセルブロックを種分けすることができると考えられる。
【0197】
この手法は、形態を示すための電子画像フレームを取得し、更にX線元素画像を当該元素に関して最も高いX線強度を有する検出器を用いて取得する段階、並びに補助的にピクセルをその強度に依存して異なるレベルまで組み合わせるか又は平滑化する段階として要約することができる。このようにして、電子画像に関するピクセルは、サブ磁極片検出器からのものよりも高い解像度を有すると考えられる。従来検出器からのものは、最低強度を有し、従って、最も高い種分けレベルを有すると考えられる。ここでもまた、複数の画像フレームは、各元素に異なる色相が与えられ、電子画像が強度を提供する状態で別々に表示される及び/又は重ね合わせられると考えられる。
【0198】
第4の例示的手法では、例えば、両方の検出器のS/Nが同様であり、差が信号レベルによってほぼ決定される場合に、少なくとも一部の元素に関して2つの異なるタイプのX線検出器からの信号を互いに組み合わせることを有利とすることができる。この手法は、元素が高エネルギ線を有する場合に適用することができ、それに対して、上述の手法では、磁極片下検出器908が、それが最も高い強度を有するので使用される。
【0199】
この第4の手法は、形態を示すための電子画像を取得し、更に強度及び信号対ノイズ比を最大に高めるために第1の検出器908と第2の検出器909との両方から又は1つのタイプのX線検出器からの強度の合計を取ることによって元素画像を取得する段階、並びに複数の画像フレームを各元素に異なる色相が与えられ、電子画像が強度を提供する状態で別々に表示する及び/又は重複させる段階として要約することができる。
【0200】
第5の手法は、磁極片下検出器ヘッド918内の磁極片下後方散乱電子検出器927からの信号の加算段階を伴う。そのような電子センサーがサブ磁極片モジュール内に含まれる場合に、後方散乱電子を検出して原子又は材料のコントラスト画像を形成することができる。この画像は、第1の画像フレームに関して2次電子検出器926によって得られた信号に帰することができる有利な画像詳細部の量が少なくなるように研磨されてトポグラフィを持たない試料に対して有利である。
【0201】
複合画像フレームは、原子番号コントラストを示す電子画像、トポグラフィを示すための電子画像、及び各元素に関して最も高いX線強度を有するX線検出器からのデータを用いる元素画像のうちのいずれか1又は2以上を含むことができる。ここでもまた、複数の複合画像フレームは、各元素に異なる色相が与えられ、電子画像が強度を提供する状態で別々に表示する及び/又は重複させることができる。
【0202】
第6の例示的手法は、同一組成の区域を手動か又は位相クラスター化手法を使用するかのいずれかで選択することができる取得後モードを含む。これらの区域からのスペクトルは、これらの区域内のピクセルの合計を取ることによって算定することができる。従来検出器909のより良好なスペクトル解像度に起因してこの検出器を使用することが有利になる。更に、これらの区域の組成を決定するための定量的アルゴリズムも確立されている。このアルゴリズムは、WO 2022/008924 A1に説明されている手法の変形である。しかし、この場合に、組成は、新しい元素画像が生成されることなく決定される。この手法は、X線画像から識別された同じ化学的性質のピクセルを合計してスペクトルを形成する段階として要約することができる。側部入射検出器からの各位相からの合計スペクトルは、組成を決定するのに使用することができる。
【0203】
本発明は、以下の番号を振った条項を参照することによって更に理解することができる。
【0204】
条項1.電子顕微鏡内の分析器システムであって、上記電子顕微鏡が、2次電子又は後方散乱電子を検出するための電子検出器を含み、分析器システムが、ビーム源と試料の間に位置決めされた第1の検出器モジュールであって、試料に対面し、入射荷電粒子ビームを少なくとも部分的に取り囲む1又は2以上のX線センサー部分と、試料とX線センサーの間にあるフィルタとを有する上記の第1の検出器モジュールと、X線センサーと電子トラップとを含む第2の検出器モジュールと、電子顕微鏡システム、第1の検出器モジュール、及び第2の検出器モジュールを制御するための制御セクションと、第1及び第2の検出器モジュールからの出力信号に基づいて元素分析を実施するための元素分析器と、第1の検出器モジュールを電子検出器と組み合わせて用いて1又は2以上の複合画像を表示する画像表示セクションであって、顕微鏡の視野が変化している間に複合画像フレームのシリーズを実時間で視覚ディスプレイ上に表示する上記の画像表示セクションとを含む分析器システム。
【0205】
条項2.画像表示セクションが、第1及び第2の検出器モジュールを電子検出器と組み合わせて用いて1又は2以上の複合画像を表示する条項1による装置。
【0206】
条項3.X線検出器からの画像が、低下する強度レベルに従ってより多く種分けされる条項2による装置。
【0207】
条項4.第1の検出器モジュールが、1又は2以上の電子検出器も含む条項1による装置。
【0208】
条項5.画像表示セクションが、第1及び第2の検出器モジュールを電子検出器と組み合わせて用いて1又は2以上の複合画像を表示する条項4による装置。
【0209】
条項6.X線検出器からの画像が、低下する強度レベルに従ってより多く種分けされる条項5による装置。
【0210】
条項7.2つの検出器位置が既知であり、2つの検出器の挿入及び後退が、衝突を回避するように調整される条項1による装置。
【符号の説明】
【0211】
607 試料
608 第1のX線検出器
610 電子ビーム
612 電子トラップ
625 開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2024-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡内で試料を分析する方法であって、
電子検出器と、第1のX線検出器と、第2のX線検出器とを用いて複合画像フレームのシリーズを取得する段階であって、
前記第1のX線検出器が、前記試料と集束電子ビームが前記試料に向けてそこから射出する電子ビーム源との間に位置決めされ、かつ前記第1のX線検出器には、前記第1のX線検出器と前記試料との間に挟まれて前記第1のX線検出器上への電子の入射を低減するように構成されたフィルタ部材が設けられ、
前記第2のX線検出器には、前記第2のX線検出器上への電子の入射を低減するように構成された偏向器配置が設けられ、かつ
前記複合画像フレームを取得することが、
(a)前記集束電子ビームに前記試料の領域を横断させる段階、
(b)第1の画像フレームを取得するために前記電子検出器を用いて前記試料の前記領域内の複数の場所から放出された、得られる電子のセットをモニタする段階であって、前記第1の画像フレームが、前記複数の場所に対応する複数のピクセルであって、前記複数の場所から放出されてモニタされた電子から導出された値を有する前記複数のピクセルを含む、前記モニタする段階、
(c)前記複数の場所に対応する複数のピクセルであって、それぞれの化学元素に特徴的であって前記複数の場所から放出されてモニタされたX線から、第1の判断基準に従って導出された値を有する前記複数のピクセルを各々が含む1又は2以上の第2の画像フレームを取得するために、それぞれ前記第1のX線検出器及び前記第2のX線検出器を用いて、前記複数の場所から放出された、得られるX線の第1及び第2のセットをモニタする段階であって、前記電子のセットと前記X線の第1及び第2のセットが、前記試料から実質的に同時に放出される、前記モニタする段階、及び
(d)前記複合画像フレームが、前記領域内の前記複数の場所から放出されてモニタされた電子及びX線から導出されたデータを提供するような前記複合画像フレームを生成するために、前記第1の画像フレームと前記1又は2以上の第2の画像フレームとを組み合わせる段階、
を含む、
前記取得する段階と、
前記複合画像フレームのシリーズを視覚ディスプレイ上に表示する段階であって、前記視覚ディスプレイが各複合画像フレームを順番に示すように更新される、前記視覚ディスプレイ上に表示する段階と、
を含む方法。
【請求項2】
前記1又は2以上の第2の画像フレームの各々に関して:
それぞれの前記化学元素に従って第1の判断基準がそれぞれ構成され、
前記第2の画像フレームによって含まれる前記複数のピクセルの前記値は、それぞれの前記第1の判断基準に従って導出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の判断基準は、段階(c)が、
合計データを、モニタされた前記X線の第1のセットを表すデータをモニタされた前記X線の第2のセットを表すデータと合計することにより、かつ前記1又は2以上の第2の画像フレームのうちの各々の前記ピクセルの前記値が前記合計データから取得されるように取得する段階、
を更に含むように構成されている、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の判断基準は、前記1又は2以上の第2の画像フレームの各々に関して、前記第1の判断基準に従った前記ピクセルの値の前記導出が、それぞれの前記化学元素を表す第1及び第2の値のセットを取得するように前記第1及び第2のX線検出器の各々から取得されたデータを処理する段階を含むように構成され、
前記ピクセルの値は、前記第1及び第2の値のセットから取得される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記ピクセルの値を取得することは、前記第1及び第2の値のセットを合計することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ピクセルの値を取得することは、前記第1及び第2の値のセットのうちの選択されたものから前記ピクセルの値を取得することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記ピクセルの値を取得することは、重み付き関数に従って、前記第1及び第2の値のセットを組み合わせることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の判断基準は、モニタされた前記X線の第1のセットから導出された第1のX線データ及びモニタされた前記X線の第2のセットから導出された第2のX線データの各々の信号対ノイズ比をそれぞれ表す第1及び第2の信号対ノイズパラメータのうちの少なくとも一方に基づいている、請求項に記載の方法。
【請求項9】
第2の画像フレームに関して、前記ピクセルの値が、それぞれの前記化学元素に関してより高い信号対ノイズ比を有する前記第1のX線データ及び前記第2のX線データのうちのX線データから優先的に導出されるように、前記第1の判断基準が前記第1及び第2の信号対ノイズパラメータの比較に基づいている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
各第2の画像フレームに関して、ピクセルの値が、前記第2の画像フレームに対応する前記化学元素に特徴的なX線に関して前記第1及び第2のX線検出器の各々によって出力された信号の強度に従って導出されるように、前記第1の判断基準が構成されている、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、前記複合画像フレームのシリーズのうちの少なくとも1つを取得する段階中にモニタされた前記X線の第2のセットに基づいて、識別された化学元素のセットを投入する段階を更に含み、
前記複合画像フレームのシリーズのうちの前記少なくとも1つを取得する段階中に、段階(c)は、識別された化学元素の前記セットの各化学元素に対してそれぞれの第2の画像フレームを取得する段階を含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の判断基準は、前記ピクセルの値が前記X線の第1のセットのみから導出されるように構成されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複合画像フレームを取得する段階は、前記1又は2以上の第2の画像フレームのうちの少なくとも1つに関してかつ集約判断基準に従って:
前記第2の画像フレーム内の前記ピクセルの1又は2以上の部分集合の各々に関して、1又は2以上のそれぞれの集約ピクセルの値を取得するように前記部分集合内の前記ピクセルの前記値を組み合わせる段階、及び
前記第2の画像フレーム内のピクセルの前記1又は2以上の部分集合の各々を、それぞれの前記集約ピクセルの値に等しい値を有する集約ピクセルで置換する段階、
を更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記集約判断基準は、前記第2の画像フレーム内の前記ピクセルの前記値がそこから導出される、前記X線をモニタするのに使用される前記X線検出器に依存して構成される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記部分集合の各々は、前記ピクセルの値がそこから導出される、それぞれのモニタされた前記X線に対応する信号パラメータの値に従って構成されたピクセル数を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記信号パラメータは、前記ピクセルの値がそこから導出される、モニタされた前記X線のセットに従って構成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ピクセル数が、モニタされた前記X線の第1のセットによって含まれるX線から導出されたピクセルの値を有する第2の画像フレームに対するよりも、モニタされた前記X線の第2のセットによって含まれるX線から導出されたピクセルの値を有する第2の画像フレームに対して、より大きいように、前記信号パラメータが構成される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ピクセル数が、前記電子ビームが前記試料に衝突する場所で前記第2の画像フレームの前記ピクセルの値がそこから導出される前記X線をモニタするのに使用される前記第1及び第2のX線検出器のうちの一方の全センサー区域によって範囲が定められる立体角に依存するように、前記信号パラメータが構成されている、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ピクセル数が、より小さい立体角に対してより大きく、かつより大きい立体角に対してより小さいように、前記信号パラメータが構成されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
段階(c)は、少なくとも2つの第2の画像フレームを取得する段階を含み、
前記第2の画像フレームのうちの少なくとも1つが、前記複数の場所に対応し、且つ、前記第1のセットによって含まれてそれぞれの化学元素に特徴的でかつ前記複数の場所から放出されたモニタされたX線から前記第1の判断基準に従って導出された値を有する、複数のピクセルを含み、
前記第2の画像フレームのうちの少なくとも1つの他のものが、前記複数の場所に対応し、且つ、前記第2のセットによって含まれてそれぞれの化学元素に特徴的でかつ前記複数の場所から放出されたモニタされたX線から前記第1の判断基準に従って導出された値を有する、複数のピクセルを含む、請求項に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、前記複合画像フレームのシリーズの少なくとも一部分を取得する段階中にモニタされた前記X線の第1及び第2のセットのいずれか又は両方に従って識別されたスペクトルピークのセットに対応する前記複合画像フレームのシリーズの前記少なくとも一部分に対する化学元素のセットを定める段階を更に含み、
複合画像フレームを取得する段階(c)は、前記化学元素のセットの各化学元素に対応するそれぞれの第2の画像フレームを取得する段階を含む、請求項に記載の方法。
【請求項22】
前記1又は2以上の第2の画像フレームのうちの第1のものの前記ピクセルは、第1の化学元素のそれぞれとは異なる第2の化学元素のそれぞれに特徴的なモニタされたX線の第4のセットのそれぞれと組み合わされた、モニタされたX線の第3のセットのそれぞれの組合せから導出された値を有し、モニタされたX線の第3及び第4のセットのそれぞれが、前記第1の判断基準に従って前記第1及び第2のセットから選択される、請求項に記載の方法。
【請求項23】
段階(c)は、複数の第2の画像フレームを取得する段階を含み、
前記複合画像フレームを生成することは、前記第2の画像フレームのうちの2又は3以上を並置することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項24】
段階(c)は、複数の第2の画像フレームを取得する段階を含み、
前記複合画像フレームを生成することは、前記第2の画像フレームのうちの2又は3以上をオーバーレイすることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項25】
顕微鏡内で試料を分析するためのシステムであって、
試料と、集束電子ビームが前記試料に向けてそこから射出する電子ビーム源と、の間に使用時に位置決めされるように構成された第1のX線検出器と、
前記第1のX線検出器と前記試料との間に使用時に挟まれるように設けられ、前記第1のX線検出器上への電子の入射を低減するように構成されたフィルタ部材と、
使用時に第2のX線検出器上への電子の入射を低減するように構成された偏向器配置が設けられた該第2のX線検出器と、
電子検出器と、前記第1のX線検出器と、前記第2のX線検出器とを用いて複合画像フレームのシリーズを取得するように構成された制御モジュールであって、
複合画像フレームを取得する段階が、
(a)前記集束電子ビームに前記試料の領域を横断させる段階、
(b)複数の場所に対応する複数のピクセルであって、前記複数の場所から放出されてモニタされた電子から導出された値を有する前記複数のピクセルを含む第1の画像フレームを取得するために、前記電子検出器を用いて前記試料の前記領域内の前記複数の場所から放出された、得られる電子のセットをモニタする段階、
(c)前記複数の場所に対応する複数のピクセルであって、それぞれの化学元素に特徴的であって前記複数の場所から放出されたモニタされたX線から、第1の判断基準に従って導出された値を有する前記複数のピクセルを各々が含む1又は2以上の第2の画像フレームを取得するために、それぞれ前記第1のX線検出器及び前記第2のX線検出器を用いて、前記複数の場所から放出された、得られるX線の第1及び第2のセットをモニタする段階であって、前記電子のセットと前記X線の第1及び第2のセットが、前記試料から実質的に同時に放出される、前記モニタする段階、及び
(d)前記複合画像フレームが、前記領域内の前記複数の場所から放出されてモニタされた電子及びX線から導出されたデータを提供するような前記複合画像フレームを生成するために、前記第1の画像フレームと前記1又は2以上の第2の画像フレームとを組み合わせる段階、
を含む、前記制御モジュールと、
前記複合画像フレームの前記シリーズを視覚ディスプレイ上に表示するように構成された表示モジュールであって、前記視覚ディスプレイが各複合画像フレームを順番に示すように更新される、前記表示モジュールと、
を含むシステム。
【請求項26】
試料と、集束電子ビームが前記試料に向けてそこから射出する電子ビームアセンブリの磁極片と、の間に使用時に位置決めされるように構成された検出器モジュールを含み、前記検出器モジュールが、前記第1のX線検出器と前記フィルタ部材とを含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記検出器モジュールは、電子検出器を更に含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記偏向器配置は、電子を前記第2のX線検出器から離れるように偏向する磁場を発生するための磁石配置を含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項29】
前記磁石配置は、前記第2のX線検出器に対して近位に永久磁石及び電磁石のうちのいずれか1つ以上を含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記磁石配置は、前記顕微鏡の電子ビームアセンブリの磁石を含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
前記偏向器配置は、電子を前記第2のX線検出器から離れるように偏向する電場を発生するための電極配置を含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項32】
前記偏向器配置は、100eVよりも高くかつ前記集束電子ビームの構成されたビームエネルギよりも低いエネルギを有する電子の少なくとも99%を、前記第2のX線検出器から離れるように偏向するように構成されている、請求項25に記載のシステム。
【請求項33】
前記第1のX線検出器及び前記第2のX線検出器のうちの一方又は各々の位置を制御してそれらの衝突を防止するように構成されたインターロック機構を更に含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項34】
請求項に記載の方法を1又は2以上のプロセッサに実行させるように前記1又は2以上のプロセッサによって実行可能な命令を格納する非一時的コンピュータ可読媒体。
【外国語明細書】