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特開2024-100761ガラスの開口部を補強する方法及びそこから形成される製品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100761
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ガラスの開口部を補強する方法及びそこから形成される製品
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20240719BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20240719BHJP
   C03B 32/00 20060101ALI20240719BHJP
   E06B 3/70 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
C03C27/12 R
B60J1/00 G
C03B32/00
E06B3/70 D
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024048101
(22)【出願日】2024-03-25
(62)【分割の表示】P 2021506588の分割
【原出願日】2019-08-06
(31)【優先権主張番号】62/715,496
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/795,713
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110434
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】ブロンスタイン,ヴラディスラフ
(72)【発明者】
【氏名】サブラ,イッサム
(72)【発明者】
【氏名】コリ,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】バード,マイケル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】開口部を支持することができる合わせガラス材を提供する。
【解決手段】本発明のガラス製品は、少なくとも1枚のガラス板を有するグレージング12と、前記グレージングの少なくとも一部を通って延在する開口部14と、前記開口部を通って延在する第1のブッシュと、前記開口部の縁部と前記第1のブッシュの外縁との間に設けられた接着剤とを有し、前記グレージングの前記開口部の周りの前記グレージングに前記第1のブッシュの収縮によって圧縮応力が形成されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのガラス板を有するグレージングと、
前記グレージングの少なくとも一部を貫通して延在する開口部と、
前記開口部の少なくとも一部を通って延在するブッシュと、
前記開口部の縁部と前記ブッシュの外縁との間に設けられた接着剤とを有し、
前記ブッシュに機械的な力を加えることで前記ブッシュの外縁を膨張状態にすると共に、前記ブッシュから機械的な力を除去することで前記ブッシュが前記膨張状態からそのサイズを減少させ、前記グレージングの前記開口部の周囲の前記グレージングに径方向内側方向に圧縮応力が形成されることを特徴とするガラス製品。
【請求項2】
請求項1に記載のガラス製品であって、前記グレージングは、第1のガラス板と、前記第1のガラス板に対向する第2のガラス板と、前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間に形成された中間層とを備えることを特徴とするガラス製品。
【請求項3】
請求項2に記載のガラス製品であって、前記第1のガラス板および前記第2のガラス板の少なくとも一方の厚みは、0.1mm以上12mm以下であることを特徴とするガラス製品。
【請求項4】
請求項3に記載のガラス製品であって、前記第1のガラス板および前記第2のガラス板の少なくとも一方の厚さは、0.3mm以上5.0mm以下であることを特徴とするガラス製品。
【請求項5】
請求項4に記載のガラス製品であって、前記第1のガラス板および前記第2のガラス板の少なくとも一方の厚さは、0.4mm以上2.3mm以下であることを特徴とするガラス製品。
【請求項6】
請求項1に記載のガラス製品であって、前記ブッシュの外縁は前記グレージングの任意の膨張よりも高い速度で膨張されることを特徴とするガラス製品。
【請求項7】
請求項1に記載のガラス製品であって、前記ブッシュは、前記開口部の外径よりも小さい外径を有することを特徴とするガラス製品。
【請求項8】
請求項1に記載のガラス製品であって、前記接着剤が、熱的、化学的、または紫外線硬化されていることを特徴とするガラス製品。
【請求項9】
請求項1に記載のガラス製品であって、前記ブッシュは、金属または金属合金からなることを特徴とするガラス製品。
【請求項10】
請求項9に記載のガラス製品であって、前記ブッシュは、アルミニウムまたはアルミニウム含有合金からなることを特徴とするガラス製品。
【請求項11】
請求項1に記載のガラス製品であって、前記のブッシュは、フランジと、本体とを備え、前記フランジは、前記グレージングの外面に沿って前記開口の外側に延び、前記ブッシュの前記本体は、前記開口を通って延在することを特徴とするガラス製品。
【請求項12】
請求項1に記載のガラス製品であって、前記開口部の縁は、2.5μm未満の粗さ(Ra)を有することを特徴とするガラス製品。
【請求項13】
請求項1に記載のガラス製品であって、前記開口部に設けられたシールをさらに備えることを特徴とするガラス製品。
【請求項14】
請求項13に記載のガラス製品であって、前記シールは、前記ブッシュに取り付けられていることを特徴とするガラス製品。
【請求項15】
請求項1に記載のガラス製品であって、他のブッシュをさらに備えることを特徴とするガラス製品。
【請求項16】
少なくとも1つのガラス板を有するグレージングと、
前記グレージングの少なくとも一部を貫通して延在する開口部と、
前記開口部を貫通して前記開口部の縁部に当接する応力発生部材とを備え、
前記応力発生部材に機械的な力を加えることで前記応力発生部材の外縁を膨張状態にすると共に、前記応力発生部材から機械的な力を除去することで前記応力発生部材が前記膨張状態からそのサイズを減少させ、前記開口部の周囲の前記グレージングに径方向内側方向に圧縮応力を発生させることを特徴とするガラス製品。
【請求項17】
請求項16に記載のガラス製品であって、前記グレージングは、第1のガラス板と、前記第1のガラス板に対向する第2のガラス板と、前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間に形成された中間層とを有することを特徴とするガラス製品。
【請求項18】
請求項16に記載のガラス製品において、前記応力発生部材は、樹脂からなり、前記樹脂が硬化したときに、前記樹脂が小さくなることを特徴とするガラス製品。
【請求項19】
請求項18に記載のガラス製品において、前記樹脂は、熱的、化学的、または紫外線硬化されることを特徴とするガラス製品。
【請求項20】
請求項16に記載のガラス製品において、前記開口の縁は、2.5μm未満の粗さ(Ra)を有することを特徴とするガラス製品。
【請求項21】
請求項16に記載のガラス製品において、前記開口部に設けられたシールをさらに備えることを特徴とするガラス製品。
【請求項22】
グレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法であって、
前記開口部を通って延在する少なくとも1つのブッシュを配置し、接着剤を前記ブッシュの外縁上に配する工程と、
前記ブッシュに機械的な力を加えることで前記ブッシュの外縁を前記グレージングの任意の膨張よりも高い速度で膨張させて前記ブッシュを膨張状態にする工程と、
前記ブッシュと前記開口部との間の前記接着剤を硬化させて前記ブッシュを前記開口部の縁部に接着する工程と、
前記ブッシュから機械的な力を除去することで前記ブッシュが前記膨張状態からそのサイズを減少させる工程とを有し、
前記接着剤は、前記ブッシュの外縁及び前記開口の縁部に接着されたままであり、
前記開口部の周囲の前記グレージングに径方向内側方向に圧縮応力が形成されることを特徴とするグレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法。
【請求項23】
請求項22のグレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法であって、前記グレージングが膨張しないことを特徴とするグレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法。
【請求項24】
請求項22のグレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法であって、前記接着剤が、熱的、化学的、または紫外線硬化されることを特徴とするグレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法。
【請求項25】
請求項22のグレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法であって、前記ブッシュの外縁を膨張させることは前記ブッシュを加熱することを含み、前記ブッシュを膨張させた状態から小型化することは前記ブッシュを冷却することを含むことを特徴とするグレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法。
【請求項26】
請求項22のグレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法であって、前記接着剤が熱硬化されることを特徴とするグレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法。
【請求項27】
請求項22のグレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法であって、前記接着剤は、前記ブッシュから前記機械的力が除去される前に、紫外線、熱硬化または化学硬化を用いて硬化されることを特徴とするグレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法。
【請求項28】
請求項22のグレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法であって、前記接着剤は、前記ブッシュが前記膨張状態にあるときに前記開口部の直径と等しい外径を有することを特徴とするグレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法。
【請求項29】
グレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法であって、
前記グレージングの開口部の縁部に応力発生部材を配置し、
前記グレージングの開口部の縁部の前記応力発生部材を硬化し、
前記応力発生部材に機械的な力を加えることで前記応力発生部材を膨張状態にすると共に、前記応力発生部材から機械的な力を除去することで前記応力発生部材がその大きさが減少して前記グレージングの前記開口部の縁部に付着したままとされ、前記開口部の周囲の前記グレージングに径方向内側方向に圧縮応力を形成することを特徴とするグレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法。
【請求項30】
請求項29のグレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法であって、前記応力発生部材は、熱的、化学的、または紫外線硬化されることを特徴とするグレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【関連出願の説明】
【0002】
本出願は、米国法典第35編第1.119(b)若しくは他の国における同様の法律下で、2018年8月7日に出願された「ガラスの開口部を補強する方法及びそこから形成される製品」と題された米国仮特許出願第62/715496号と、2019年1月23日に出願された「ガラスの開口部を補強する方法及びそこから形成される製品」と題された米国仮特許出願第62/795713号の各優先権の恩恵を主張するものであり、これらの各出願の内容が依拠され、ここに全て引用される。
【技術分野】
【0003】
本開示は、一般に、当該開口部に圧縮力を示す開口部を有するガラス製品を対象とする。
【背景技術】
【0004】
ガラスは或る引張応力下で破断し得る。ガラス板又は合わせガラスに開口部が形成されている場合、該ガラスは脆弱化されることがある。脆弱化されたガラスはより容易に破断でき、高い引張応力まで保持することができない可能性がある。開口部を有するガラス板は強化され、強くされたガラスの板が提供される。ガラスの強化は、永久的な残留内部張力および表面圧縮を有し強くされたガラス板を提供する熱または化学的プロセスである。ガラスの任意の開口の形成されやガラスの成形は、ガラス強化工程の後に熱強化ガラスが切断されることはないので、熱強化の前に行われる。強化されたガラスは、永久的な残留表面圧縮のために破断させることは困難であるが、ガラスの任意の部分の損傷は、ガラス板全体の損傷をもたらす可能性がある。
【0005】
合わせガラス材は、ガラス材においてより多くの衝撃の保護を提供することができ、様々な機能を有することができる。複数のガラス板は、種々の機能性中間材料を使用して組み合わされても良い。中間材料は、ガラス積層体に反射または吸収の利益を提供するように機能するか、または切り替え可能な機能性を提供するように機能することができる。合わせガラスは、衝撃が予想される強化ガラスより望ましい場合がある。合わせガラスは、ガラス板の間に中間層を有する少なくとも2枚のガラス板を含むことができる。中間層は、限定されないが、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)又はポリエチレンテレフタレート(PET)、又はアイオノマー材料を含むポリマーシートを含むことができる。
【0006】
ガラス板または合わせガラス板に開口部を設けることは、様々な車両および建築用途に望ましいことがある。しかし、ガラス板に孔を形成することにより、開口部のガラスが弱くなる。種々の用途のためにガラスを強化することは必ずしも望ましい訳でなく、または可能ではない。従って、開口部を支持することができる合わせガラス材を提供することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、概して、少なくとも1枚のガラス板を有するグレージングと、前記グレージングの少なくとも一部を通って延在する開口部と、前記開口部を通って延在するブッシュと、前記開口部の縁部と前記ブッシュの外縁との間に設けられた接着剤とを有し、前記ブッシュに機械的な力を加えることで前記ブッシュの外縁を膨張状態にすると共に、前記ブッシュから機械的な力を除去することで前記ブッシュが前記膨張状態からそのサイズを減少させ、前記グレージングの前記開口部の周囲の前記グレージングに径方向内側方向に圧縮応力が形成されることを特徴とするガラス製品に関する。
【0008】
いくつかの実施形態においては、前記グレージングは、第1のガラス板と、前記第1のガラス板に対向する第2のガラス板と、前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間に形成された中間層とを備える。第1のガラス板及び第2のガラス板の少なくとも一方の厚みは、0.1~12mmであることが好ましく、第1のガラス板及び第2のガラス板の少なくとも一方の厚みは、0.3~5.0mmであることがより好ましく、0.4~2.3mmであることがさらに好ましい。
【0009】
さらなる実施形態では、前記ブッシュは張力を受ける。前記ブッシュは、開口部の元の直径よりも小さい直径を有しても良い。前記接着剤は、熱的又は化学的に硬化され、または紫外線から硬化させることができる。前記ブッシュは、金属又は金属合金から形成されていても良く、好ましくは、アルミニウム又はその合金であっても良い。
【0010】
また別の実施形態では、前記ブッシュは、フランジと、本体とを備え、フランジは、グレージングの外面に対して前記開口部の外側に延び、前記ブッシュの本体は、前記開口部を通って延在する。
【0011】
さらなる実施形態は、2.5μm未満の粗さ(Ra)を有する前記開口の縁部を含む。さらなる実施形態では、シールが開口部に設けられても良く、またブッシュに取り付けられても良い。或る実施形態では、ガラス製品は、他のブッシュを含めるものとすることができる。
【0012】
本開示の別の態様では、ガラス製品は、少なくとも1つのガラス板を有するグレージングと、前記グレージングを通って延在する開口部と、前記開口部を通って延び、前記開口部の縁部に接触する応力発生部材とを含み、前記応力発生部材に機械的な力を加えることで前記応力発生部材の外縁を膨張状態にすると共に、前記応力発生部材から機械的な力を除去することで応力発生部材が前記膨張状態からそのサイズを減少させ、開口部の周囲のグレージングに圧縮応力を発生させる。更なる実施形態においては、前記応力発生部材は、樹脂製であり、前記樹脂を硬化させる際に、前記樹脂の大きさが小さくなることを特徴とする。前記グレージングは、第1のガラス板と、前記第1のガラス板に対向する第2のガラス板と、前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間に形成された中間層とを含めることができる。いくつかの実施形態では、前記樹脂は、熱的に、または化学的に硬化され、または紫外線によって硬化され得る。前記開口の縁は、2.5μm未満の表面粗さを有していても良い。更なる実施形態は、開口部を介して設けられた封止材を含むことができる。
【0013】
本開示は、一般に、グレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法であって、ブッシュの外縁に接着剤を配して、開口部を通って延在する少なくとも1つのブッシュを配置し、機械的な力を加えることで前記ブッシュの外縁部をグレージングの膨張よりも高い速度で膨張させてブッシュを膨張状態にし、前記ブッシュと前記開口部との間の前記接着剤を硬化させて前記ブッシュを開口部の縁部に接着し、前記接着剤が前記ブッシュの外縁及び前記開口部の縁部に接着されたままに、機械的な力を除去することで前記ブッシュが前記膨張状態から縮小され、前記開口部の周囲の前記グレージングに圧縮応力が形成されることを特徴とする。
【0014】
或る実施形態では、グレージングは膨張しない。接着剤は、いくつかの実施形態では、紫外線、熱、または化学的硬化によって硬化され得る。いくつかの実施形態では、ブッシュの外縁を拡張することは、ブッシュを加熱することとされ、ブッシュが膨張状態からサイズを減少させることはブッシュが冷却することを可能にすることを含む。前記接着剤は、熱硬化されていても良い。
【0015】
さらなる実施形態では、ブッシュは、機械的な力を当該ブッシュに適用することによって拡張され、機械的な力がブッシュから除去されると、拡大された状態からサイズが減少する。追加の実施形態では、接着剤は、機械的な力がブッシュから除去される前に、紫外線、熱、または化学的硬化を使用して硬化される。
【0016】
別の実施形態では、接着剤は、ブッシュが膨張状態にあるときに開口の直径に等しい外径を有する。
【0017】
さらなる実施形態において、グレージングの開口部に圧縮応力を形成する方法は、さらに、グレージングの開口部の縁部に応力発生部材を配置するステップと、開口部の縁部に応力発生部材を硬化させるステップとを含み、応力発生部材は、寸法が減少し、ガラス基板の開口の縁部に付着したままとされ、開口部の周囲のグレージングに圧縮応力を形成する。或る実施形態では、応力発生部材は、熱的に、化学的に、または紫外線によって硬化され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本明細書の一部を構成し、本明細書の一部を構成する添付図面は、本開示の1つまたは複数の例示的な態様を例示し、詳細な説明とともに、それらの原理および実施態様を説明する役割を果たす。
【0019】
図1図1は開口部を有するガラス製品を示す。
図2図2は接着剤およびブッシュを内部に有する開口部を有する例示的なガラス製品を示す。
図3図3は本開示の例示的な実施形態による、開口部が圧縮応力下にある接着剤およびブッシュを有する開口部を示す。
図4図4は本開示の例示的な実施形態による、フランジ付きブッシュの端面図を示す。
図5図5図4に示したフランジ付きブッシュの側面図である。
図6図6は展開状態のガラス製品の開口部の断面を示す図である。
図7図7は本開示の例示的な実施形態による、収縮状態のガラス製品の開口部における断面を示す。
図8図8は本開示の別の例示的な実施形態によるガラス製品の開口部における断面を示す。
図9図9は本開示のさらに別の例示的な実施形態によるガラス製品を示す。
図10図10は本開示のさらなる例示的な実施形態によるガラス製品を示す。
図11図11は、ガラスの開口部内に、アルミニウム製ブッシュと接着剤とを有するガラス板を示す。
図12図12は偏光壁の前方に圧縮応力下の開口部を有するガラス片を示す図である。
図13図13は偏光壁の前方に圧縮応力下の開口部を有するガラス片を示す図である。
図14a図14aはガラス開口部を補強するためのブッシュを有するフラットガラスにおけるガラス開口部について、応力計での測定を示す図である。
図14b図14bはガラス開口部を補強するためのブッシュを有するフラットガラスにおけるガラス開口部について、応力計での測定を示す図である。
図15a図15aはガラス開口部の補強より前に曲げガラス中のガラス開口部の応力計での測定を示す図である。
図15b図15bはガラス開口部の補強より前に曲げガラス中のガラス開口部の応力計での測定を示す図である。
図16a図16aはガラス開口部を補強するためのブッシュを有する曲げガラスにおけるガラス開口部について、応力計での測定を示す図である。
図16b図16bはガラス開口部を補強するためのブッシュを有する曲げガラスにおけるガラス開口部について、応力計での測定を示す図である。
図17図17は本開示のさらに別の例示的な実施形態によるワイパー装置を備えたガラス製品におけるガラス開口部を示す断面図である。
図18図18は本開示のさらなる例示的な実施形態による、ガラス製品におけるガラス開口部を示す断面図である。
図19図19は本開示のさらに別の例示的な実施形態によるガラス製品のガラス開口部を示す断面図である。
図20図20は本開示のさらなる例示的な実施形態による、ガラス製品におけるガラス開口部を示す断面図である。
図21図21は本開示の例示的な実施形態による強化された開口部を有するガラス製品の製造プロセスを示す。
図22図22は本開示の別の例示的な実施形態による強化された開口部を有するガラス製品の製造プロセスを示す。
【詳細な説明】
【0020】
本発明は、ガラス製品の少なくとも一部を通る開口を強化する圧縮応力を有するガラス製品及びそのようなガラス製品を製造する方法を提供する。以下の説明では、説明のために、本開示の1つまたは複数の態様の充分な理解を促進するために、特定の詳細が示されている。しかしながら、以下に説明する特定の設計の詳細を採用することなく、以下に説明するように、任意の態様を実施することができることは、いくつかまたはすべての例において明白とされる。
【0021】
ガラス板内に開口部を形成することは、開口部の周りのガラスを弱めることがあり、この開口部は、ガラスに亀裂を生じさせる可能性がある。機械的応力は、機械的特徴部がガラス開口部を通って又はガラス開口部内を移動する際に、ガラスの損壊の危険性をさらに生じ得る。自動車窓内にワイパーを配置するための穴、車両ドア内にサイドウィンドウを取り付けるための開口部、アンテナまたはカメラのための開口部、サンルーフ上のラゲージレールの取り付けのための開口部、ガラスドアにハンドルを配置するための開口部、およびガラス積層体内部を含む電気デバイスを接続するための開口部を含む、様々な用途のために、ガラス中の開口部が望ましい場合がある。従って、開口部を有するガラス製品を強化する必要がある。
【0022】
ガラス板に圧縮応力を導入してガラス強度を向上させることができる。強化された開口部を有するガラス製品と、ガラス製品の開口部に圧縮応力を導入するための方法とがここでは記載されている。本明細書で使用される場合、"ガラス製品"は、グレージングおよび任意の他の組み立てられた部分を含むことができる。グレージングは、単一のガラス板または一緒に積層された複数のガラス板を含むことができる。グレージングは、例えば、第1のガラス板と、第1のガラス板に対向する第2のガラス板と、第1のガラス板と第2のガラス板との間に形成された中間層とを含むことができる。ガラス製品の材料は、ソーダ石灰シリカガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、シリカガラス、およびアクリルガラスを含み、これらに限定されない任意の無機および有機ガラスであっても良い。このような製品に使用されるガラスは、任意の厚さであっても良い。好ましくは、約0.1-12mmの厚さのガラス板の開口を、開示された方法で強化することができる。ガラス板の厚さは0.3-5.0mmであることがより好ましく、0.4-2.3mmであることがさらに好ましい。複数のガラス板を有する合わせガラス製品において、前記ガラス板は、同一または異なる厚さを有していても良い。本明細書に開示されるような強化された開口部を有するガラス板は、平坦であっても屈曲していても良い。また、追加の補強が所望され得るところでは 、強化された開口部を有するガラス板は、強化ガラスまたは非強化ガラスを含むことができる。いくつかの実施形態では、強化開口は、ガラスを強化する前に形成することができる。
【0023】
車両に使用するためのガラス製品10が図1に示されている。ガラス製品10は、グレージング12を通って延びる開口部14を含む。グレージング12の底部付近の開口部14は、開口部14を通って延びるワイパー機構のために使用されることができる。開口部14は、ラゲージラックおよびハンドルのような追加の用途を含む、グレージング12内の任意の適切な位置に形成され得る。さらに、いくつかのグレージング12は、複数の開口14を含むことができる。開口部14は、機械的穿孔、ウォータージェット掘削、化学エッチング、及びレーザー穿孔を含み、またこれらに限定されない様々な方法によって形成することができる。グレージング12の開口部は、円形または楕円形を含むが、これに限定されず様々なサイズおよび形状であってもよい。
【0024】
開口部14の縁は、開口縁に最小の粗さを提供するように形成されても良い。開口部14での表面粗さが小さいほど、ガラスにクラックが形成される抵抗性を向上させることができる。粗い縁部は応力集中を含むことになり、それはガラスの破断につながる。より滑らかな縁部は応力集中を減少させ、亀裂に対する耐性を向上させることができる。前記開口部の縁部は、粗さ(Ra)が2.5μm未満であることが好ましい、より好ましくは2μm未満、さらに好ましくは1.5μm未満である。カットオフ波長λcにおけるiso規格1356-1)に準拠して測定される表面粗さが2.5μmであり、λsが2.5μmである。開口縁の粗さを最小にするために、開口部を形成する化学エッチング又はレーザー穿孔法が好ましい。機械的削孔はまた、研磨のような付加的な仕上げを伴うか又は伴わずに、滑らかな開口部を形成することができる。ガラス製品10を介して開口部14が形成された場合において、開口部14の縁部は、グレージング12の第1面12fと、グレージング12の第2面12bとの間の開口部の内面を含む。
【0025】
図2は、開口部14内にブッシュ16および接着剤18を備えた開口部14を有するグレージング12を示しており、使用されるブッシュ16は、膨張して収縮することができる任意の材料であっても良く、すなわち、膨張及び収縮するために設けられても良い。ブッシュ16は、開口部14の元の直径よりも小さい元の直径を有し、ブッシュの"元の直径"は、膨張前のブッシュの外径である。"接着剤の元の外径"は、膨張と硬化前の接着剤18の外径である。"開口部の元の直径"は、補強前にガラスに切断されたときの開口部14の直径である。いくつかの実施形態では、接着剤18は、ブッシュ16と開口14との間の直径の差の半分未満の厚さを有することができる。
【0026】
いくつかの実施形態においては、ブッシュ16は、ブッシュ16が開口部14a内に載置されるときに開口部14から延びてグレージング12に沿って延びるフランジ22を含むことができる。図4は、ブッシュ16の下端から見たときにフランジ22を有するブッシュ16を示し、図5は、側方から見たときにフランジ22を有するブッシュ16を示す。ブッシュ16は、開口部14内に配置されたときに第1のガラス板の外面または第2のガラス板の外面に沿って延びるフランジ22を含むことができる。フランジ22の外周は、ブッシュ本体部分24の外周よりも大きくされ、そのブッシュ本体部分24はグレージング12に形成された開口部14を通って延び、開口部14の周囲よりも大きい。フランジ22は、接着剤18を硬化させる前に、開口14内のブッシュ16の位置合わせを補助することができる。ブッシュ16の厚さは、ブッシュ材料に依存する。より弱い材料は、より厚いブッシュ16を必要とし得るが、より強い材料は、より薄いブッシュ16を可能にする。開口部14におけるグレージング12の圧縮力を維持するのには十分な強度が要求される。ブッシュ16は、限定されないが、金属またはプラスチックを含む様々な材料であっても良い。使用可能な金属としては、アルミニウム、銅、鋼、錫、亜鉛、鉛、チタンおよび鉄が挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、ブッシュ16は、アルミニウム、銅、鋼、錫などを含む任意の適切な金属の合金から作製され得る。ブッシュ16の材料は、ガラス板材料および使用される接着剤18に基づいて、特定のヤング率および/または熱膨張係数のために選択され得る。いくつかの実施形態では、ブッシュ16は、リング状または円筒状に形成されても良い。好ましくは、ブッシュ16は、開口14の形状に相補的な形状を有することができる。また、ブッシュ16は、グレージングの厚さ方向または斜め方向に実質的に延在する狭いスリットまたはスリットを含むことができ、これは、膨張および収縮を助けることができる。さらに、いくつかの実施形態では、ブッシュは、互いに接続された複数の本体部から構成されても良い。特定の実施形態では、開口部14内に複数のブッシュ16が存在しても良く、例えば、ブッシュ16は、開口部14を通ってグレージング12の両側から配置されても良い。
【0027】
グレージング12の開口部14に圧縮応力を導入するための本明細書に記載の方法は、個々のガラス板またはガラス積層体であるガラス製品を含むが、これらに限定されない任意のガラス製品において使用され得る。ガラス積層体に1枚以上のガラス板を使用した場合には、積層前又は積層後のガラス板に開口部を切断するようにできる。また、前記開口部14は、平板ガラスまたは曲げガラスを介して形成されていても良い。合わせグレージング12を含むいくつかの実施形態において、開口部14が積層前に形成され、開口部14は、積層されるガラス板を切断して形成しても良く、或いはガラス板開口部は、各ガラス板に別々に切断されても良い。ガラス板が積層される前に開口部14がガラス板にそれぞれ切り込まれる場合、開口部が完全に整列しないおそれもある。合わせガラス製品の各側にブッシュ16を使用して、合わせガラス中の各ガラス板に別個に圧縮強度を提供しても良く、すなわち1つよりも多くのブッシュ16を開口部14に使用することもできる。さらなる実施形態では、開口部14は、積層ガラス12において既に積層されたグレージング12に形成されても良く、開口部14は、1つまたは複数のブッシュ16と共に使用されても良い。
【0028】
図3は、開口部14とブッシュ16との間に設けられた接着剤18によって形成された圧縮応力を有する開口部14を示している。いくつかの実施形態では、ブッシュ16は、ブッシュ16と開口部14との間に配置された接着剤18によって膨張してブッシュ16を開口部14に接着することができる。ブッシュ16を拡張するために使用される方法は、熱的および/または機械的な力を含むことができるが、これらに限定されない。熱膨張するブッシュ16の場合には、ブッシュ16は、グレージング12より大きい熱膨張係数を有する。したがって、加熱時に、ブッシュ16は、グレージング12よりも高い速度で膨張し、開口部14内のブッシュ16の外縁は、膨張状態で開口部14の縁に接着され得る。ガラス12の全体またはブッシュ16に局所的に熱処理を施しても良い。ブッシュ16が開口部14の縁部全体に膨張状態で接着されるように、ブッシュ16は、開口部と実質的に同じ形状であっても良い。一部の実施形態では、開口部14の縁部の周りに均一な接着を形成し、収縮した状態では、開口部の周りのグレージングにおいて均一な圧縮が可能であることが好ましい。好ましくは、ブッシュ16と開口部14との間に設けられた接着剤18は、ブッシュ16が膨張状態にある間に熱硬化される。次いで、ブッシュ16を冷却して、ブッシュ16を収縮状態にすることができる。ブッシュ16は開口縁部に取り付けられたままで、開口部14の周囲のグレージングに圧縮応力を形成しても良い。このようにグレージング12は開口部14で強化される。ブッシュ16が膨張状態にあるとき、接着剤18を開口部14の縁部とブッシュ16との間で圧縮することができる。いくつかの実施形態では、図3に示すように、接着剤18は、ブッシュ16が収縮状態にある後に圧縮されたままであっても良い。加熱状態と冷却状態との温度差は制限されず、50k以上80k以下であってもよいし、100k以上であっても良い。温度差は、ブッシュおよびガラスの熱膨張係数およびヤング率、および形成される所望の圧縮応力に依存し得る。
【0029】
図6および図7は、グレージング12に形成された開口部14およびその近傍を断面図で示し、図6は膨張状態のブッシュ16を示し、図7は収縮状態のブッシュ16を示す。図6および図7で、グレージング12は、第1のガラス板26と、第1のガラス板26に対向する第2のガラス板28と、第1のガラス板26と第2のガラス板28との間に形成された中間層30とで形成されている。中間層30は、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、またはポリエチレンテレフタレート(PET)またはアイオノマー材料のようなポリマーシートを含む任意の適切な材料から作製することができる。図6および図7に示されるように、示されたブッシュ16は、開口部142の縁部から第1のガラス板26の第1の表面上に延在するフランジ22を有する。いくつかの実施形態では、フランジは、第2のガラス板の外側表面上に延在するように配置されても良い。膨張状態では、図6に示すように、ブッシュ16は外径DB1を有し、開口部14は内径DE1を有する。膨張状態に至るように、いくつかの実施形態では、ブッシュ16は、外径DB1がブッシュ16の元の外径よりも大きくなるように、加熱または機械的に膨張されて外径DB1を大きくされ、外径DB1はブッシュ16の元の外径よりも大きくされる。ブッシュ16が膨張状態である場合に、一部の実施形態では、開口部14の内径DE1は開口部14の元の内径よりも大きい。開口部14の内径DE1は、ブッシュ16が膨張状態にあるときに開口部14の元の内径よりも同じであっても大きくても良い。ブッシュ16は、開口部14を形成するグレージング12よりも膨張比が大きくなっており、接着剤18は、ブッシュ本体部24の外周壁又は外周から圧縮力を受ける。
【0030】
熱または機械的な力を加える前に、ブッシュ16と開口部14の縁との間に配置された接着剤18は、加熱、紫外線(UV)放射、または任意の他の適切な手段によって適切に硬化され得る。接着剤18を硬化させた後、ブッシュ16を膨張させるために使用される熱または機械力を除去することができる。熱または機械的な力が除去されると、ブッシュ16は、より小さい外径DB2を有するように、徐々に小さくすることができ、グレージング12の開口部14は、内径DE2を有するようにサイズを小さくすることができる。ブッシュ16の収縮状態における外径DB2は、膨張状態におけるブッシュ16の外径DB1よりも小さい。開口部14の収縮状態における内径DE2は、膨張状態における開口部14の内径DE1よりも小さい。接着剤18が硬化した後にブッシュ16が収縮するため、接着剤18が開口部14の径方向内側に引っ張られ、開口部14の縁部が内側に引っ張られる力を受け、開口部14の周囲のガラスに圧縮応力が形成される。接着剤18は、熱または機械力の硬化および除去により、(接着剤18の内径に基づいて)サイズ が減少することがある。好ましくは、接着剤18は、ブッシュ16の熱膨張係数以上の熱膨張係数を有する。接着剤18は、エポキシまたはポリウレタンを含むが、これらに限定されない。使用される接着剤18は、ブッシュ16と同様のヤング率を有することができる。ブッシュ16の大きさが減少した後にブッシュ16に接着された開口縁を維持することにより、接着剤18はガラス中の圧縮応力を維持するのに十分な強度を有することができる。
【0031】
いくつかの実施形態ではブッシュ16が熱膨張して接着剤が熱硬化されるが、ブッシュ16の膨張および接着剤18の硬化はオートクレーブ内で行われても良い。オートクレーブは、ガラス積層体の製造に使用することができ、これは、グレージング12が積層ガラスである場合には、ブッシュ16の熱膨張と同時に行うことができ、接着剤18を硬化させることができる。さらなる実施形態においては、熱膨張及び・又は硬化はブッシュ16及び・又は接着剤18に向けた熱を適用することで誘発されても良い。
【0032】
図8乃至図10は本開示の形態に従うガラス製品のさらなる実施形態を示す。図8は、本開示の態様によるガラス製品のさらなる実施形態を示す。図8は、ガラス板32をグレージングとして有するガラス製品33を示す。ガラス板32は、筒状の開口部31を有して、それにブッシュ36が挿入可能とされていても良い。ブッシュ36の外周と開口部31の内周との間に接着剤34を介在させても良い。ブッシュ36を開口部31内に配置する前に、接着剤34をブッシュ36の外周に配置することができる。いくつかの実施形態では、接着剤34は、開口部31内にブッシュ36を配置する前に開口部31の縁部の周りに配置されても良い。ブッシュ36は膨張されて次いで収縮され、単一のガラス板32の開口縁の周りのガラスに圧縮応力を生じさせる。ガラス製品33では単一のガラス板32の開口縁の周囲のガラスに圧縮応力が形成されるので、ガラス製品33は、特に開口31の縁の周りに耐久性のある構造を有することができる。
【0033】
図9は、第1のガラス板38と、第1のガラス板38に対向する第2のガラス板42と、第1のガラス板38と第2のガラス板42との間に形成された中間層40とを備えたガラス製品37を含む別の実施形態を示す。開口部44が第1のガラス板38を貫通しないように第2のガラス板42を貫通して開口部44を形成しても良い。いくつかの実施形態では、中間層40はまた、開口部または穴を有さないままであっても良い。第1のガラス板38と第2のガラス板42とを積層する前に第2のガラス板42に開口部44を形成することが好ましい。開口部44内にブッシュ46を配置し、ブッシュ46の外周と開口部44の内周との間に接着剤48を設けても良い。ブッシュ46を膨張させた後に収縮させて第2のガラス板42の開口縁周囲のガラスに圧縮応力を生じさせる。ブッシュ46の直径を小さくするので、接着剤48によってブッシュ46に取り付けられた第2のガラス板42の開口の周囲が減少し、開口部の縁でガラスが圧縮される。これにより、第2ガラス板42は、圧縮による開口部44の周囲に強度を付加して構成される。
【0034】
図10は、図9に示すガラス製品37と実質的に同じガラス構造を有するガラス製品51の実施形態をさらに示す。ガラス製品51は、第1のガラス板50と、第1のガラス板50に対向する第2のガラス板54と、第1のガラス板50と第2のガラス板54との間に形成された中間層52とを含むグレージングを含み得る。開口部55が第1のガラス板50を貫通しないように第2のガラス板54を貫通して開口部55を形成することができる。中間層52は、第2のガラス板54の開口部55と位置合わせされた開口部を含むことができ、または特定の実施形態では、中間層52は、開口部を有しないままであっても良い。ブッシュ56は開口部55内に配置され、接着剤57は、ブッシュ56の外周と開口部55の内周との間に配設される。図10に示すように、電子接続部58は、ガラス製品51内に設けられても良い。電子接続部58は、例えば、様々な特徴に電力を供給するために使用されても良く、電子ディスプレイ、塗布層を含む有機発光デバイス、ワイパーの保持エリアを除霜する加熱可能なワイヤなどを含む。電子接続部58は、電源に接続することができブッシュ62の内周を通って開口部55から延出することができるワイヤまたはケーブル60のようなコネクタを含むことができる。電子接続部58はコネクタの厚さに起因してブッシュ56の周囲のガラスに力を加えるが、第2のガラス板54の開口部55に圧縮応力が形成されることにより第2のガラス板54が強化され、ガラス製品51が亀裂の発生は著しく低減される。電子接続部58は、第2のガラス板54と中間層52との間、または第1のガラス板50と中間層52との間に配置されても良く、さらに、電子デバイス58は、2層以上の中間層が合わせガラス製品にある中間層の間に配置され得る。いくつかの実施形態では、電子コネクタ58は、開口部55内に設けられても良い。開口部55は、電源への電気的接続を提供するための任意の適切なサイズとすることができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、開口内でブッシュ16を拡張するために機械的な力を使用することができる。ブッシュ16を開口部14の縁部に向かって拡張するために機械力を使用することができ、ブッシュ16は平坦であってもよいし、内周に沿って3次元形状を有していても良い。ブッシュ16は、当該ブッシュ16の機械的膨張がねじ形状を使用し得るように、ブッシュ16の内周にねじ形状を含むことができる。接着剤18は、ブッシュ16の外周に配置された層として設けられても良く、膨張状態への機械的な力の下でブッシュ16と共に膨張しても良い。膨張状態では、接着剤18の直径が開口部の直径と実質的に等しくなるようにしても良い。ブッシュ16が膨張した状態で接着剤18を硬化させてブッシュ16を開口部14に接着しても良い。このような場合の接着剤18は、熱的、化学的、またはUV放射処理を含む任意の適切な手段によって行うことができる。機械的な力が除去されると、ブッシュ16と接着剤18の大きさを小さくすることができる。開口部14の縁部にブッシュ16を接着したままとし、開口部14のガラスに圧縮応力を形成することができる。開口部14でガラスをこのように強化することができる。ブッシュ16の機械的膨張は、個々のガラス板または合わせガラス製品の開口部内で実行できる。
【0036】
例えば、図11は、本開示の例示的な実施形態を示す。特に、実施例は、本明細書に開示されているように径が2.68mmである開口部72を有する厚さ3.15mmのソーダ石灰シリカガラス板70を有する。ここに開示されるように、ガラス板は個々のガラス板として使用するための、または積層の一部として、任意の適切な厚さを有することができる。ガラス板の開口部72内には、元外径が25mmのアルミニウムブッシュ74が配置された。図11に示すように、内側のアルミニウムブッシュの直径は22mmである。ブッシュ74の好ましい内径は、開口部の意図された使用に依存し得る。開口部72及びそれに使用されるブッシュ74の大きさは限定されず、図11に示す実施形態よりも大きいか又は小さい任意の適切な大きさとすることができる。アルミニウムブッシュ74とガラス開口部72との間に二成分エポキシ樹脂接着剤を配置した。ブッシュ74と接着剤を開口部72の周囲に有するガラス70と140℃に加熱した。接着剤を開口部72の直径まで膨張させ、接着剤をこの温度で硬化させた。冷却時にブッシュ74は大きさが減少するが、開口部72に付着したままである。図12及び図13は、冷却後の偏光壁に対するガラスの強化された開口部における応力を示す。図13は、図12のガラス板を示し、図12のガラス板は90°回転させ、全開口部の周囲に圧縮が存在することを示した。図12および図13に示されるように、白色リング状部分76は、ガラス開口縁とブッシュ74との間に形成された接着剤を示す。圧縮応力の層は、ブッシュ全体の周りの図12および図13のそれぞれにおいて視認された。
【0037】
図14a、図14bは応力計、エッジマスター2(ストレスフォトニクスインク)を用いた計測を示し、図11に示すような平板ガラス試料での偏光壁における発見を検証するものである。エッジマスター2により測定されたように、開口部Op1の縁部に沿って圧縮応力が形成された。圧縮応力は、ブッシュBu1とグレージングの外周Eg1との間に見出された。より具体的には、図14aに示すように、ガラス外周Eg1とブッシュBu1との間の領域は圧縮応力を受け、それは図14aの比較的に白い領域Ac1として示されている。この比較的に白い領域Ac1は、図14bにおいては、ブッシュBu1の外側でゼロよりも下に測定された応力を有する領域として示されている。開口部Op1の外周には比較的白色の領域Ac1が形成されているので、開口部Op1の周りの割れに対してより高い抵抗を有するガラス製品が得られる。
【0038】
図15a、図15b及び図16a、図16bは、曲げられたガラス板を含む別のガラス製品試料を示す。図15a、図15bは、補強のない開口部Op2を有する曲げガラス板の応力測定値を含み、図16a、図16bは、本明細書に開示されるようなブッシュBu3で補強された後の開口部Op3を有する曲げガラス板の応力測定値を含む。
【0039】
図15a、図15bは、開口部Op2を補強することなく、ガラス板を貫通して切断された開口部Op2を有する曲げガラス板の応力測定を示す。開口部のガラス板に強化が施さていない場合、開口部Op2とガラス外周Eg2との間のガラス板は、図15bに示すように、張力を受け、開口部Op2とガラス外周Eg2との間の領域Ar2がゼロより大きい測定応力を有していることを示している。ガラス外周Eg2付近の領域Ac2は、図示のように僅かな圧縮を有していた。
【0040】
ガラス基板に補強を施した後、応力レベルは大きく変化した。図16a、16bは、曲げガラスの開口部Op3にブッシュ補強部が形成された圧縮応力を示している。エッジマスター2応力計を用いてガラス板の開口部Op3の応力を測定した。補強により、開口部Op3の周囲のガラス基板は、開口部Op3と外周Eg3との間のガラス中の領域Ac3の測定した応力がゼロより小さく圧縮されていた。ブッシュBu3に近い相対白色領域Ac3は、張力を受けた領域から圧縮応力を受ける領域とされ、さらに、相対白色領域Ac3とAc4との間の相対的に黒色の領域Ar3は補強なく張力を強く受けていたものが、僅かな張力で、補強後に圧縮に近いものとされる。測定されたレベルとの比較から、強化法の適用時にブッシュBu3の周囲のガラス基板に圧縮応力が形成された。これにより、補強材付きガラス製品は、補強することなく、ガラス製品よりも開口部での割れに対する耐性が高い。
【0041】
上述のガラス製品は、任意の適切な手段によって製造することができる。例えば、次のようにして、ガラス製品を製造することができる。第1に、ガラス製品の製造のためにグレージングを準備することができる。ガラス製品は、単一のガラス板、合わせガラス、または任意の他の適切なグレージングの形態のグレージングから製造することができる。グレージングの全てまたは一部を貫通して開口部が形成されるように、グレージングを穿孔または化学エッチングするなどの任意の適切な手段によって開口を形成することができる。開口部は、円形または楕円形のような任意の適切な形状とすることができる。開口部として矩形または他の任意の多角形の開口が使用されても良い。合わせガラスを含むいくつかの実施形態では、積層前に1つまたは複数のガラス板に開口部を形成することができる。このような積層されたグレージングにおいて、開口部は、グレージングの全体または一部を通って延びることができ、ここで、少なくとも1つのガラス板は、開口部を含まないものとすることができる。
【0042】
前記開口部が円形である場合、グレージングに開口部を形成した後、前記開口部の径よりも僅かに小さい径を有する円形ブッシュが前記開口部内に配設され、前記ブッシュの外周に接着剤が設けられる。いくつかの実施形態では、接着剤は、開口部の縁部またはブッシュの外周部と開口部の内壁との間の隙間に塗布されても良く、接着剤で充填されていても良い。ブッシュは、熱または機械的な力を加えることによって膨張させることができる。熱を加えることは、ブッシュの内部に、例えば電気ヒータなどの熱源によって行うことができる。ブッシュを周方向に均一に膨張させるために、熱源を円筒状にしてブッシュの内周面を均一に加熱するようにしてもよい。いくつかの実施形態では、熱源は、ガラス製品全体を取り囲むか、または片側または両側からブッシュに局所的に熱を加えることができる。ブッシュの直径を拡大するための機械的な力が使用される場合には、その直径を徐々に増大させる円筒形の装置を使用することができる。ある実施形態では、熱および機械的力を同時に加えることができる装置は、ブッシュを膨張させるのに有用である。その後、接着剤は、接着剤が熱硬化性である場合に加熱を含む任意の適切な手段によって硬化することができる。いくつかの接着剤は、硬化剤を含む成分を混合することによって硬化され得る。紫外線硬化型樹脂を用いた場合には、紫外線硬化型樹脂を紫外線照射により硬化させても良い。
【0043】
ブッシュを膨張させて接着剤を硬化させた後、ブッシュを小型化することができる。加熱によって膨張が達成された場合、ブッシュは、当該ブッシュが室温に戻るときに収縮できる。あるいは、ブッシュが機械的な力によって拡張される場合、このような力の適用は、ブッシュのサイズを減少させるために除去される。
【0044】
ブッシュがその寸法を減少させる場合、グレージングの開口部の周囲に圧縮応力が形成され、開口部の周りのガラスの強度が強化されて、それによって亀裂の危険性を低減する。
【0045】
或る実施形態では、開口部、例えば開口部を通って延びる装置と相互作用するように、シールを設けることができる。図17において、開口部80の周囲にシール82が示される。開口部80は、第1のガラス板86と、第1のガラス板86に対向する第2のガラス板88と、第1のガラス板86と第2のガラス板88との間に形成された中間層90とからなるグレージング84に形成され、ブッシュ98は、接着剤99)を介して開口部80内に設けられても良い。いくつかの実施形態では、グレージングは、単一のガラス板であっても良い。窓ガラス84の表面を払拭する装置としてのワイパー機構92は、当該ワイパー機構92の軸96によってシール82を貫通するように設けられ、シール82は、特定の実施形態では、ゴム材料からなる。シール82は、衝撃または不要な力による損傷を防止することによって、開口周辺のグレージングをさらに保護することができる。
【0046】
シールは、合成または天然ゴムまたは他のポリマー材料を含む任意の材料であっても良い。シールがゴムである場合、シールは加硫ゴムを含んでいても良い。シールはブッシュで形成されても良く、ブッシュに取り付けられていてもよいし、ブッシュを含む本明細書に記載されたアセンブリで使用されても良い。シールは、ブッシュなしで本明細書に記載されたアセンブリにさらに使用されても良い。
【0047】
別の実施形態では、ブッシュなしでガラス開口部に圧縮を形成することができる。開口縁に沿って硬化後の寸法が小さくなる収縮材料を配置し、開口縁に沿って所定位置に硬化させても良い。収縮材料は、収縮材料が硬化するにつれてサイズが減少することが好ましい。収縮材料は、限定されるものではないが、ポリウレタンを含むことができる。収縮材料は、硬化後にガラス開口縁に付着したままであり、寸法が減少し、ガラス開口部に圧縮応力が形成される。収縮材料は、硬化され減少したサイズの状態で張力を有する。開口部にシールをさらに使用して、開口部を通って延びる機構と共にシールを形成しても良い。好ましくは、収縮材料は、ガラス開口部の縁部に付着する。図18は、グレージングの開口部を補強するこのような収縮材料を示す。
【0048】
図18は、当該グレージング100を貫通して延びる開口部102を有するグレージング100を示す。収縮材料からなる応力発生部材104は、開口部102を通って延在し、開口部102の縁部に接触して、グレージング100の開口部102の縁部に圧縮応力を発生させる。応力発生部材104は、グレージング100の開口部102の縁部に接着した後に寸法が減少する樹脂化合物から作られていても良い。応力発生部材104の収縮に伴って、開口部102の縁部に圧縮応力を形成して、開口部102でグレージング100を強化することができる。いくつかの実施形態では、グレージング100は、図19に示すように、単一のガラス板または合わせガラスであっても良く、いくつかのさらなる実施形態では、単一のガラス板がさらに、合わせガラスに使用されてもよい。
【0049】
図19には、第1のガラス板106と、第1のガラス板106に対向する第2のガラス板110と、第1のガラス板106と第2のガラス板110との間に形成された中間層108とを有するグレージングが設けられ、開口部114がグレージングを貫通するように形成され、開口部114の内壁に応力発生部材112が設けられている。応力発生部材112は、グレージングの開口部114の内壁に付着した後にサイズが小さくなる樹脂化合物からなる。応力発生部材112の収縮に伴って、開口部114の周囲のグレージングに圧縮応力が発生し、開口部114の周囲のグレージングに強度を与え、グレージングを強化する。代替的に、いくつかの実施形態では、開口部は、上述したように、グレージングが、例えば有機発光デバイスまたは加熱可能な印刷またはコーティングのような電子デバイスを接続するのに適しているように、第2のガラス板のみを貫通するように形成されても良い。
【0050】
図20は、本開示の例示的な実施形態によるガラス製品を示す。特に、図20はそこを通って延びる開口部114を有するグレージングを示す。グレージングは、単一のガラス板または合わせガラスを含むことができる。いくつかの実施形態では、単一ガラス板は、さらに、合わせガラスに使用されても良い。図20に示すように、応力発生部材113は、開口部114の縁部に沿って、外側グレージング面の1つまたは複数に沿って延在することができる。
【0051】
本開示の態様によれば、図21を参照して、強化された開口部を有するガラス製品の製造プロセスは、以下のステップを含むことができる。
【0052】
ステップ2102は、グレージングに少なくとも1つの開口部を形成することを含む。グレージングは、単一のガラス板または積層されたガラス板を含むことができる。前記グレージングは、積層されたガラス板である場合、前記開口部は、積層の前または後に形成されても良い。ステップ2104は、開口部を通って延在する少なくとも1つのブッシュを配置することを含み、接着剤は、ブッシュの外縁上にある。ステップ2106は、ブッシュを外力で膨張することを含む。外力は、加熱または機械的膨張を含む任意の適切な手段を含むことができる。ステップ2108は、ブッシュとグレージングの開口部との間の接着剤を硬化させることを含む。ステップ2110は、ブッシュがサイズを減少させるようにブッシュから外力を除去することと、開口部の周りのグレージングの圧縮を生成することとを含む。
【0053】
本開示の態様によれば、図22を参照して、強化された開口部を有するガラス製品の製造プロセスは、以下のステップを含むことができる。
【0054】
ステップ2202は、グレージングに少なくとも1つの開口部を形成することを含む。ステップ2204は、開口内に少なくとも1つの応力発生部材を配置することを含む。ステップ2206は、応力発生部材が大きさを減少するように応力発生部材を硬化させ、開口部の周囲のグレージングに圧縮応力を形成することを含む。
【0055】
本開示の上記の説明は、当業者が本開示を製造または使用することを可能にするために提供される。本開示に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される共通の原理は、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、他の変形に適用され得る。さらに、図面に関連した上記の説明は、実施例を記載し、実施され得るか、または特許請求の範囲の範囲内にある唯一の例を表すものではない。
【0056】
さらに、説明した態様および/または実施形態の要素を単数形で説明または特許請求することができるが、単数への限定が明示的に述べられていない限り、複数のものが企図される。追加的に、任意の態様および/または実施形態のすべてまたは一部は、別段の記載がない限り、任意の他の態様および/または実施形態のすべてまたは一部と共に利用され得る。したがって、本開示は、本明細書に記載された実施例および設計に限定されるものではなく、本明細書に開示される原理および新規な特徴と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14a
図14b
図15a
図15b
図16a
図16b
図17
図18
図19
図20
図21
図22