(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100762
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】炭素質材料分散液およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/05 20170101AFI20240719BHJP
H01M 4/62 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
C01B32/05
H01M4/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024065757
(22)【出願日】2024-04-15
(62)【分割の表示】P 2020115485の分割
【原出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】593053335
【氏名又は名称】リファインホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100196276
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】中條 勝
(72)【発明者】
【氏名】岩船 光紘
(72)【発明者】
【氏名】深澤 健佑
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇夫
(72)【発明者】
【氏名】竹山 友潔
(57)【要約】
【課題】 リチウムイオン二次電池用の導電助剤として用いられた際に、非常に優れた電気的特性を安定して発揮することができる、炭素質材料が高濃度かつ均一に分散して、容易に塗工可能である炭素質材料分散液を提供する。
【解決手段】 溶媒純度が99.9%以上の窒素含有複素環アミド化合物からなる非水系溶媒中に炭素質材料を分散させた炭素質材料分散液であって、
総質量に対する炭素質材料濃度が15~30質量%、必要に応じて添加される所定のアミン化合物を除く分散液中のアミン成分濃度が質量分率3×10
-6未満、分散液中の水分濃度が質量分率1×10
-3未満であることを特徴とする炭素質材料分散液。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒純度が99.9%以上の窒素含有複素環アミド化合物からなる非水系溶媒中に炭素質材料を分散させた炭素質材料分散液であって、総質量に対する炭素質材料濃度が15~30質量%、必要に応じて添加される所定のアミン化合物を除く分散液中のアミン成分濃度が質量分率3×10-6未満、分散液中の水分濃度が質量分率1×10-3未満であることを特徴とする炭素質材料分散液。
【請求項2】
溶媒純度が99.9%以上の窒素含有複素環アミド化合物からなる非水系溶媒中に炭素質材料を分散させた炭素質材料分散液の製造方法であって、
前記非水系溶媒中のアミン成分濃度が質量分率3×10-6未満であることを確認するアミン管理濃度確認工程と
前記非水系溶媒中の水分濃度が質量分率5×10-4未満であることを確認する水分管理濃度確認工程と
前記アミン管理濃度確認工程および水分管理濃度確認工程における条件を満たした非水系溶媒に対し、総質量に対する炭素質材料濃度が15~30質量%となるように炭素質材料を添加し攪拌混合する分散工程を有する製造方法により得られたものである請求項1に記載の炭素質材料分散液。
【請求項3】
窒素含有複素環アミド化合物が2-ピロリドン類である請求項1に記載の炭素質材料分散液。
【請求項4】
窒素含有複素環アミド化合物がN-メチル-2-ピロリドンである請求項1に記載の炭素質材料分散液の製造方法。
【請求項5】
分散剤として樹脂系分散剤が配合されたものである請求項1~4のいずれかに記載の炭素質材料分散液の製造方法。
【請求項6】
分散剤として所定のアミン化合物を配合するであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の炭素質材料分散液。
【請求項7】
炭素質材料がカーボンブラックであることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の炭素質材料分散液。
【請求項8】
炭素質材料がカーボンブラックであり、窒素含有複素環アミド化合物がN-メチル-2-ピロリドンである請求項1~7のいずれかに記載の炭素質材料分散液。
【請求項9】
粘度が50~500mPa・sであることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の炭素質材料分散液。
【請求項10】
レーザー回折粒度分布計で測定したときに、粒径ピークが2か所以上形成されるものである請求項1~9のいずれかに記載の炭素質材料分散液。
【請求項11】
レーザー回折粒度分布計で測定したときに、粒径ピークが2か所以上形成され、少なくともこれらのピークのうちの主な2つのピークP1とP2の高さの比(P1:P2)が、1:0.7~0.7:1である請求項1~10のいずれかに記載の炭素質材料分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素質材料分散液およびその製造方法に関するものである。詳しく述べると本発明は、電池分野、特にリチウムイオン二次電池の製造において、電極層を形成する上で導電助剤として好適に用いられる炭素質材料の分散液およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ポータブルパーソナルコンピューター、スマートフォン、携帯電話などの電子機器分野、あるいは、電気自動車およびハイブリッド自動車などの自動車分野などの多くの分野において、高容量で高出力のリチウムイオン二次電池が広く利用されている。これらの分野のさらなる発展の上では、リチウムイオン二次電池の高性能化や生産プロセスの効率化が求められる。
【0003】
リチウムイオン二次電池に使用される電極は、電極スラリーを集電体に塗工し、乾燥した後、プレスで圧縮形成することにより作製されるのが一般的である。電極スラリーは、溶媒中に電極活物質、導電助剤、バインダー等を混合して調製される。
【0004】
このような電極スラリーを効率よく調製するために、あらかじめ溶媒中に導電助剤である炭素質材料を分散させた炭素質材料分散液を利用することが提案されている(例えば、特許文献1~3)。炭素質材料分散液を用いて電極スラリーを作製する場合、炭素質材料分散液と電極活物質との混練が容易となり、炭素質材料が均一に分散した導電性の良好な電極が得られる。
【0005】
例えば、リチウムイオン二次電池用正極において、正極活物質として用いられるものとしては、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム遷移金属複合酸化物であり、それ自体は電子伝導性、即ち導電性に乏しい。そのため、リチウム遷移金属複合酸化物に導電性を付与するために、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等の炭素質材料を導電助剤として電極に添加している。
【0006】
炭素質材料分散液に求められる特性として、例えば、特許文献4においては、正極剤ペーストに混ぜる炭素質材料分散液におけるカーボンブラック等の炭素質材料の分散状態が電池性能に影響を与えることが記載されている。
【0007】
炭素質材料分散液は、ペースト化して正極活物質に混錬するときに、混ぜやすくするために低粘度化したほうが良い。また、電池材料に他の金属粒子等のコンタミネーションを防ぐために、フィルター等の不純物除去前処理をするにあたっても炭素質材料分散液の粘度は低い方が良い。一方で電極を製造するためには、最終的に溶媒を乾燥する必要があるため、溶媒量は少ない方が良い。
【0008】
また正極用のペーストを作るためには、正極活物質と導電助剤が均等に混合しており、且つ導電助剤が導電性を保つような分散が必要となる。さらに金属箔への接着用途でポリフッ化ビニリデン樹脂(PVdF)等のバインダー成分が溶解している。なお、溶媒としてはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に代表される非水系溶媒が使用される。
【0009】
従来、炭素質材料分散液において上記したような低粘度化を達成するために、揮発性のpH調整剤であるアミン系化合物を添加しているが、このようなアミン系化合物を添加しても、炭素質材料分散液の特性が安定せず、一定の粘度にならなかった。
【0010】
ところで、特許文献5においては、ポリフッ化ビニリデンを2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドンのような窒素含有複素環アミド化合物の溶剤に溶解し、この樹脂溶解液を金属板、樹脂成形体等の基材の表面に塗布し、基材に耐水性、耐候性を付与した皮膜を形成する技術において、該樹脂溶液が該窒素含有複素環アミド化合物溶剤中に含まれる微量の不純物によって着色し、これを用いて形成された皮膜が着色し、例えばこの皮膜を備える樹脂容器をLEDやICの精密部材の搬送容器として用いた場合、皮膜に含まれる不純物の存在が、これら精密部材を組み込んだ電子機器、自動車部品の誤作動の原因となる問題の存在、およびこれを解決する上で、予め窒素含有複素環アミド化合物を(i)固体の酸性物質と接触させたもの、或いは(ii)酸性物質と接触させた後に蒸留により回収したものを用いることを提案している。そして、これらの着色を生起する不純物は窒素含有複素環アミド化合物を単に蒸留処理しても除去されないが、上記方法で処理したものを用いることで、着色の問題が解消されたことが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2015-30777号公報
【特許文献2】特開2016-46188号公報
【特許文献3】特開2018-45820号公報
【特許文献4】国際公開WO2014/042266
【特許文献5】特開平10-310795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記したように従来の炭素質材料分散液においては、性能の安定性、炭素質材料が高濃度かつ均一に分散して、容易に塗工可能であることが求められていたが、実用上、十分満足のできる特性を有するものがなかった。
【0013】
従って、本発明は、改良された炭素質材料分散液を提供することを課題とする。本発明はまた、リチウムイオン二次電池用の導電助剤分散液として好適である炭素質材料分散液およびその製造方法を提供することを課題とする。本発明はさらに、炭素質材料が高濃度かつ均一に分散して、容易に塗工可能である炭素質材料分散液およびその製造方法を提供することを課題とする。本発明はさらに、リチウムイオン二次電池用の導電助剤として用いられた際に、非常に優れた電気的特性を安定して発揮することができる炭素質材料分散液およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決してなる炭素質材料分散液を製造する上で鋭意研究を重ねた結果、N-メチル-2-ピロリドン等の窒素含有複素環アミド化合物には、不純物としてアミン成分が含まれることが多く、炭素質材料分散液を用いてリチウムイオン二次電池用の電極を形成しようとした場合に、この不純物であるアミン成分によってロット毎に一定の粘度にならず塗工トラブルといった悪影響が生じる場合があることが判明した。
【0015】
上述したように電極用のペーストには、金属箔への接着用途でポリフッ化ビニリデン樹脂(PVdF)等のバインダー成分が添加され、N-メチル-2-ピロリドン等の窒素含有複素環アミド化合物は、このポリフッ化ビニリデン樹脂等のバインダー成分を溶解することができる溶媒ではある。しかし窒素含有複素環アミド化合物中に不純物として含まれるアミン成分の一部は、ポリフッ化ビニリデン樹脂がフッ素系樹脂であることから、水分が存在すると、塩基性物質による脱フッ酸反応を生じさせると思われ、実際にポリフッ化ビニリデン樹脂に影響が強いアミン成分ほど、着色する傾向があり、UV吸収スペクトルでも変化が大きくなることが判った。このUV吸収スペクトルを指標に調査した結果、また、我々の調査で、アミンの種類によってもポリフッ化ビニリデン樹脂への影響度が異なることが分かった。
【0016】
本発明者らは、これらの点から、炭素質材料分散液を製造するにおいて、非水系溶媒として用いるN-メチル-2-ピロリドン等の窒素含有複素環アミド化合物中のアミン成分濃度および水分濃度が所定以下のものとなるように管理し、これらの所定条件を満たした非水系溶媒を用いて炭素質材料分散液を調製することにより、炭素質材料濃度を15~30質量%と高濃度のものとしても低粘度であり、また得られた炭素質材料分散液を、例えば、リチウムイオン二次電池用の電極スラリーを製造する上で用いた場合にも、ロット毎のスラリーの粘度が一定で、非常に優れた電気的特性を安定して発揮する電極を形成できるものであることを見出し本発明に到達したものである。
【0017】
なお、本発明においては、低粘度化を達成するために揮発性のpH調整剤である所定のアミン化合物を必要に応じて添加しているが、当該所定のアミン化合物は、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン樹脂等に影響が少なく、炭素質材料の分散に効果が高いアミン化合物であって、非水系溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン等の窒素含有複素環アミド化合物中に不純物として含まれる不特定なアミン化合物を排除した上で、当該所定のアミン化合物を添加することで、電極スラリーを調製する上で更に正極活物質およびバインダーに混錬したときにも安定した混錬状態となり、バインダー本来の機能を保たせることにも成功した。これらによって、最終的に正極ペーストを製造する際に、常にアミン成分濃度が管理されている状態であるため、ロット毎の粘度のばらつきが抑えられるようになり、製造時のトラブルが激減した。
【0018】
すなわち、上記課題を解決する本発明は、溶媒純度が99.9%以上の窒素含有複素環アミド化合物からなる非水系溶媒中に炭素質材料を分散させた炭素質材料分散液の製造方法であって、
前記非水系溶媒中のアミン成分濃度が質量分率3×10-6未満であることを確認するアミン管理濃度確認工程と
前記非水系溶媒中の水分濃度が質量分率5×10-4未満であることを確認する水分管理濃度確認工程と
前記アミン管理濃度確認工程および水分管理濃度確認工程における条件を満たした非水系溶媒に対し、総質量に対する炭素質材料濃度が15~30質量%となるように炭素質材料を添加し攪拌混合する分散工程を有することを特徴とする炭素質材料分散液の製造方法である。
【0019】
本発明に係る炭素質材料分散液の製造方法の一実施形態においては、窒素含有複素環アミド化合物が2-ピロリドン類である炭素質材料分散液の製造方法が示される。
【0020】
本発明に係る炭素質材料分散液の製造方法の一実施形態においては、窒素含有複素環アミド化合物がN-メチル-2-ピロリドンである炭素質材料分散液の製造方法が示される。
【0021】
本発明に係る炭素質材料分散液の製造方法の一実施形態においては、分散剤として樹脂系分散剤を添加するものであることを特徴とする炭素質材料分散液の製造方法が示される。
【0022】
本発明に係る炭素質材料分散液の製造方法の一実施形態においては、分散剤として所定のアミン化合物を添加するものであることを特徴とする炭素質材料分散液の製造方法が示される。
【0023】
本発明に係る炭素質材料分散液の製造方法の一実施形態においては、炭素質材料がカーボンブラックであることを特徴とする炭素質材料分散液の製造方法が示される。
【0024】
本発明に係る炭素質材料分散液の製造方法の一実施形態においては、分散処理は、分散液をレーザー回折粒度分布計で測定したときに、粒径ピークが2か所以上形成される状態となるように行われるものである炭素質材料分散液の製造方法が示される。
【0025】
上記課題を解決する本発明はまた、上記した炭素質材料分散液の製造方法により得られることを特徴とする炭素質材料分散液であって、総質量に対する炭素質材料濃度が15~30質量%、必要に応じて添加される所定のアミン化合物を除く分散液中のアミン成分濃度が質量分率3×10-6未満、分散液中の水分濃度が質量分率1×10-3未満であることを特徴とする炭素質材料分散液である。
【0026】
本発明に係る炭素質材料分散液の一実施形態においては、炭素質材料がカーボンブラックであり、窒素含有複素環アミド化合物がN-メチル-2-ピロリドンである炭素質材料分散液が示される。
【0027】
本発明に係る炭素質材料分散液の一実施形態においては、粘度が50~500mPa・sであることを特徴とする炭素質材料分散液が示される。
【0028】
本発明に係る炭素質材料分散液の一実施形態においては、レーザー回折粒度分布計で測定したときに、粒径ピークが2か所以上形成されるものである炭素質材料分散液が示される。
【0029】
本発明に係る炭素質材料分散液の一実施形態においては、レーザー回折粒度分布計で測定したときに、粒径ピークが2か所以上形成され、少なくともこれらのピークのうちの主な2つのピークP1とP2の高さの比(P1:P2)が、1:0.7~0.7:1である炭素質材料分散液が示される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、低い溶媒含有率において高度に分散された低粘度でかつ、良好な電気的特性を発揮することができる炭素質材料分散液を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明に係る炭素質材料分散液の一実施形態における粒度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下本発明を具体的実施形態に基づいてより詳細に説明する。
【0033】
<炭素質材料分散液の製造方法>
本発明に係る炭素質材料分散液の製造方法は、溶媒純度が99.9%以上の窒素含有複素環アミド化合物からなる非水系溶媒中に炭素質材料を分散させた炭素質材料分散液の製造方法であって、
前記非水系溶媒中のアミン成分濃度が質量分率3×10-6未満であることを確認するアミン管理濃度確認工程と
前記非水系溶媒中の水分濃度が質量分率5×10-4未満であることを確認する水分管理濃度確認工程と
前記アミン管理濃度確認工程および水分管理濃度確認工程における条件を満たした非水系溶媒に対し、総質量に対する炭素質材料濃度が15~30質量%となるように炭素質材料を添加し攪拌混合する分散工程を有することを特徴とする。
【0034】
(窒素含有複素環アミド化合物)
本発明で用いられる窒素含有複素環アミド化合物としては、例えば一般式(I)
【0035】
【0036】
〔式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素、または炭素数1~4のアルキル基である。〕
で示される2-ピロリドン類が挙げられる。
【0037】
具体的には、2-ピロリドン類としては、例えば、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン、5-メチル-2-ピロリドン、5-エチル-2-ピロリドン、5-プロピル-2-ピロリドン等が挙げられ、これらは単独で、又は二種以上混合して使用される。これら2-ピロリドン類の中でもN-メチル-2-ピロリドンが特に好ましい。
【0038】
本発明で用いられるこのような窒素含有複素環アミド化合物、特に、N-メチル-2-ピロリドンとしては、その合成方法および供給経路としては、特に限定されるものではなく、いずれの合成方法および供給経路を経たものであっても良いが、基本的に不純物としてのアミン成分および水分の混入が起こり難いものであることが望ましい。
【0039】
例えば、N-メチル-2-ピロリドンは、特に限定されるものではないが、以下に示すような合成方法により製造され、必要に応じて、吸着あるいは蒸留等の精製処理を経たもの(新製造品)を用いることができる。
【0040】
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の製造方法としては、例えば、主に、γ-ブチロラクトン(GBL)とメチルアミンとを、シャフト型反応塔中で、200~350℃で、約10MPaで反応させることによって製造される方法(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial chemistry, 5thEd., Vol. A22, 第458頁~第459頁);
γ-ブチロラクタム(2-ピロリドン、γ-BL)を、270℃で、かつ約120バールで、たとえば、3個の撹拌式反応器のカスケードにおいて、液体アンモニアとの完全な反応によって、GBLから製造し(選択率:94モル%)、かつNMPが、メチルアミンとの同様で形成される方法(Winnacker、Kuechler“Chemische Technologie”第4版.1982年 第6巻、第99頁第5~9行);
例えば、特開平10-158238号に記載されるように、水の存在下250から300℃まででγ-BLと過剰のモノメチルアミン(MMA)とを反応させてNMPを形成させる方法;
特開平1-190667号に記載されるように、γ-BLと過剰のMMAとの反応によるNMPの製造の製造方法;
特開平7-218751号に記載されるように、γ-BLまたはその開鎖誘導体をジメチルアミン(DMA)および/またはトリメチルアミン(TMA)と共に200℃以上で加熱することによるNMPの合成する方法;
特開平1-186864号に記載されるように、水の存在下で対応するラクトンを第2級アミンと反応させ、中間体として対応するN,N-ジアルキル-オメガ-ヒドロキシカルボキサミドを経由してN-アルキル化ラクタムを製造する方法(なお、この特許公報に記載される実施例1によれば、γ-BLと水性DMAとの反応によってNMPが60%の収率で得られ、そしてγ-ヒドロキシ酪酸のメチルアミドが追加的に形成されている。この公報による更なる1つの実施例においてもγ-BLとDMAとの対応する反応でNMPの60%の収率が報告されている。);
特開平1-186863に記載されるように、水の存在下で対応するラクトンを第3級アミンまたは第3級若しくは第4級アンモニウム化合物と反応させ、対応するアルコールを除去することによってN-アルキル化ラクタムを製造する方法(なお、この特許公報の実施例1によれば、γ-BLと水性TMAとの反応によってNMPが8%の収率で得られ、そして大量の副生成物、例えばγ-ヒドロキシ酪酸のメチルアミド、2-ピロリドンおよびγ-ヒドロキシ酪酸が形成されている。);
特公平4-47021420号に記載されるように、水の存在下で、GBLとMeNH2とを一緒に反応させることによる、NMPの合成方法;
Chem.Abstracts 124:145893(CN-A-1104635)に記載されるように、GBLとMeNH2とを、220~290℃で、かつ≧6MPaで反応させることによる、NMPの合成方法(GBL、30%濃度の水性MeNH2および水からなる混合物、1:1.4:5.6の比で、280℃で、かつ6MPaで回分的に反応させることによって、NMPが97%の収率で得られる);
国際特許公報WO99/52867号に記載されるように、液相中で、3個の連続した反応工程において、GBLとMMAとを反応させることによって、NMPを連続的に製造する方法(その際、第1段階は150~220℃の温度、第2段階は220~270℃の温度、および第3段階は250~310℃の温度で操作されている。3個のすべての工程の圧力は、30~90ATE(30.4および91.2バール)、好ましくは40~60ATE(40.5および60.8バール)である。GBLとMMAとのモル比は、1:1.05~1:1.4である);
Chem.Abstract 82:13994に記載されるように、GBL 1部と、MMA 2部および水 2~4部(=モル比1:5.5:9.6~19.1)とを、200~300℃で、特に230~300℃(2時間)で反応させることによって製造する方法;
Chem.Abstract 87:5802に記載されるように、GBLと、MMAおよび水との反応を、1:1.4:4の混合物(モル比=1:3.9:19.1)で、250℃で、かつ45~50kg/cm2で行う方法;
米国特許第2964535号に示されるように、水性溶液中で、アルカリ金属水酸化物で処理し、その後に蒸留することによるNMPの精製方法;さらに、
特表2006-503793号に示されるように、GBLとMMAとを、液相で反応させることによって、NMPを連続的に製造するための方法において、GBLおよびMMAを、1:1.08~1:2のモル比で使用し、かつ320~380℃の温度で、かつ70~120バールの絶対圧で反応させるNMPを連続的に製造する方法;
などが、非限定的に例示できる。
【0041】
あるいは例えば、リチウムイオン二次電池製造プロセスやポリフッ化ビニリデン樹脂溶解液を金属板、樹脂成形体等の基材の表面に塗装する塗装プロセス、その他の任意のプロセスにおいて用いられたN-メチル-2-ピロリドンの排液等から、蒸留精製プロセスを経て得られる再生品のいずれを用いることも可能である。
【0042】
このうち、特に、リチウムイオン二次電池製造プロセスからの排液から得られる再生品が、アミン成分濃度および水分濃度のいずれについても良好にコントロールしやすいことから、好ましく用いられる。特に、本発明に係る製造方法により製造された炭素質材料分散液を用いた、リチウムイオン二次電池製造プロセス等の製造プロセスからの排液から得られる再生品が最も望ましいものである。すなわち、本発明に係る製造方法により製造された炭素質材料分散液を用いた製造プロセスからの排液から得られる再生品を再度本発明に係る製造方法にかける態様が好ましく用いられ得る。
【0043】
本発明において非水系溶媒として用いられる窒素含有複素環アミド化合物に関して、その不純物として想定されるものは、主に後述するようなアミン化合物および水分であるが、それ以外の成分に関しても当然極力含まれないものであることが望ましく、その意味から少なくとも99.9%以上の純度であり、より好ましくは99.95%以上の純度であることが望ましい。なお、この純度はカールフィッシャー水分計とガスクロマトグラフィーにより測定されるものである。
【0044】
(炭素質材料)
使用される炭素質材料としては、導電性を有するものであり、粉粒状の形態を呈し得るものであれば特に限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック(CB)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)、グラフェン、フラーレン、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化性炭素、コークス類、グラファイト類等が挙げられ、これらを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。炭素質材料としては、特にCBが好ましい。さらにCBとしては、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等が挙げられ、そのいずれを用いることが可能である。このうち例えば、アセチレンブラックは、その製法上で金属成分含有量が本来的に低いものとなるものであるため好ましい。
【0045】
なお、カーボンブラックとしては、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、黒鉛化処理されたカーボンブラックなども使用できる。カーボンブラックの酸化処理は、カーボンブラックを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることによって、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基のような酸素含有極性官能基をカーボンブラック表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンブラックの分散性を向上させる。
【0046】
炭素質材料は、また、必要に応じて、炭素質材料分散液の製造に先立ち混入する金属不純物を除去するために乾式での磁選処理にかけられる、および/または、炭素質材料分散液として非水系溶媒に分散させた後に、湿式にて磁選処理にかけられることが可能である。
【0047】
ここで本明細書において非水系溶媒に分散される原料としての炭素質材料の「粉粒状」の形態とは、少なくとも、上述するような非水系溶媒中に分散し得るものであれば限定されるものではない。さらに、その形状としても、特に限定されるものではなく、概略球状のものに限られず、楕円状、薄片状、針状ないし短ファイバー状、不定形等が含まれ得る。
【0048】
なお、カーボンブラックに関しては、例えば、カーボンブラック協会(https://carbonblack.biz/index.html)のウェブサイトにおいても説明されるように、カーボンブラックの分解できない最小単位は、アグリゲート(aggregate)(一次凝集体)であり、その一部分(ドメイン(domain)を粒子と通称する。この粒子は、ナノマテリアルで最小単位として定義される粒子に該当して考えられるがあくまでもアグリゲートの一部である。アグリゲートは、ファン・デルワ―ルス力等の物理的な力によりアグロメレート(agglomerate)(二次凝集体)を構成する。さらに、カーボンブラックの製品は、飛散防止のため、ハンドリング性向上のために圧縮処理や造粒処理によりビードという加工された粒子の形で、輸送販売されることが殆どである。
【0049】
例えば、平均粒子径10~100nm程度の粒子径を呈している一次凝集体、このような一次凝集体が凝集して平均粒子径0.1~100μm程度の二次凝集体を呈しているもの、あるいはさらにハンドリング性を考慮して圧縮処理や造粒処理により平均粒子径500~5000μm程度の加工された粒子とされたものなどが含まれ得る。
なお、カーボンブラック導電性の観点から、導電性炭素微粒子としては一次粒子がある程度連なり連鎖状または房状等の構造を形成したアグリゲートのものが好ましい。アグリゲートにおける該一次粒子の連なりは、ストラクチャーとも言われ、かかる発達の程度は、粒度分布測定(動的光散乱法またはレーザー回折/光散乱法)や電子顕微鏡(走査型または透過型のいずれも使用可能である。)観察により把握することができる。このような構造のものは、正極活物質粒子間に効率よく導電パスを形成することができる。このため、より少ない使用量で正極活物質層に優れた導電性を付与することができる。
【0050】
(アミン管理濃度確認工程および水分管理濃度確認工程)
本発明に係る製造方法においては、まず、使用する純度99.9%以上の非水系溶媒に関してそのアミン成分濃度および水分濃度を確認するアミン管理濃度確認工程および水分管理濃度確認工程を実施する。
【0051】
このアミン管理濃度確認工程および水分管理濃度確認工程は、使用する非水系溶媒のロット毎に行うこともできるし、あるいは連続的製造プラントにおいて、一定間隔あるいは任意間隔にて例えば、試料採取管路を通じて取り出した非水系溶媒サンプルに対して行うことができる。
【0052】
このアミン管理濃度確認工程および水分管理濃度確認工程は、別個の工程とすることもできるしあるいは同時に行う工程とすることも可能である。
【0053】
アミン管理濃度確認工程は、通常、イオンクロマトグラフィーを使用して行う。予め混入が予想されるアミン種の全てのピークについて検量線を用いて定量する方法、あるいは内部標準法、標準添加法等により実施可能である。これによって、前記非水系溶媒中のアミン成分濃度が質量分率3×10-6未満であること、より好ましくは2×10-6未満であること、さらに望ましくは1×10-6未満であるとの基準を満たしているかどうかを確認する。ここで、このようなアミン管理濃度を設けるのは、前記非水系溶媒中のアミン成分濃度が質量分率3×10-6以上であると、炭素質材料分散液が不安定なものとなる虞れがある。さらに、調製された炭素質材料分散液に後述するようなバインダー成分を配合した際に、炭素質材料分散液のロット毎に粘度のばらつきが生じ作業性が低下する虞れ等があるためである。なお、非水系溶媒中に不純物として含まれる不特定のアミン種の一部として、特に限定されるものではないが、例えば、エチレンジアミン、シクロヘキシルアミン、ジプロピルアミン、2-エチルピペリジン、モルホリンなどが含まれていると上記したような炭素質材料分散液の粘度等に対する影響力を及ぼす可能性が高くなると思われるが、上述したような非水系溶媒中のアミン成分濃度が質量分率3×10-6未満であるという濃度管理を行うことによって、このような影響性の高いと想定されるようなアミン類が不純物として仮に含まれていたとしても、所期の改善効果が発揮されるものである。
なお、後述するように炭素質材料分散液を調製するにおいて、分散剤としての所定のアミン化合物を添加する場合、ここでいうアミン成分濃度、すなわちアミン管理濃度には、当該所定のアミン化合物に係る濃度は含まれず、それ以外のアミン成分の総量である(仮に使用する非水系溶媒中に不純物として元々、当該所定アミン化合物と同じ化合物が含まれていた場合には、後から分散剤として添加した量と、元々不純物として存在していた量との合計量を、アミン管理濃度の算出から除外するものとする。)。
【0054】
また、水分管理濃度確認工程は、例えば、カールフィッシャー水分濃度計又は近赤外吸光度式微量水分濃度計、屈折率式濃度計等を使用して、実施することが可能である。あるいはイオン液体カラムを用いたガスクロマトグラフィーによってより精度高く実施することも可能である。これによって、前記非水系溶媒中の水分濃度が質量分率5×10-4未満、より望ましくは2×10-4未満、さらに望ましくは1×10-4未満であるとの基準を満たしているかどうかを確認する。ここで、このような水分管理濃度を設けるのは、本発明に係る炭素質材料分散液において、分散液中の(水分を含む意味での)溶媒は、通常、当該炭素質材料分散液を用いて製品を製造する上で、最終的に除去されるものである。従って、溶媒中の水分量が多くなることは、このような製品製造工程における不具合を生じる虞れが大きくなる。さらに、調製された炭素質材料分散液に後述するようなバインダー成分を配合した際に、非水系溶媒中の水分の存在が、上記したような配合物における粘度のばらつきに大きな影響を及ぼす虞れ等があるためである。
【0055】
使用する非水系溶媒が、アミン管理濃度確認工程および水分管理濃度確認工程のいずれにおいても、その基準を満たしていると判断された場合には、この非水系溶媒に炭素質材料を分散させる分散工程に進む。
【0056】
一方、アミン管理濃度確認工程および水分管理濃度確認工程のいずれかにおいて、非水系溶媒がその基準を満たしていないと判断された場合には、当該非水系溶媒をそのまま分散処理に使用することはない。
【0057】
当該非水系溶媒を、例えば、(1)蒸留精製、(2)硫酸、硝酸、リン酸、塩酸等の鉱酸類、イソポリ酸やヘテロポリリン酸、タングスト硅酸、モリブド硅酸等のヘテロポリ酸類のような水溶性無機酸類、ゼオライト、アルミナ、シリカ-アルミナ、シリカ-酸化マグネシウム、シリカ-酸化ジルコニウム等のような水不溶性の無機固体酸、酸性前処理された活性炭;強酸性陽イオン交換樹脂等の水不溶性の酸性陽イオン交換樹脂;酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、シュウ酸等の有機カルボン酸などの酸性物質との接触、あるいは(3)酸性物質と接触させた後に蒸留精製する等の精製処理を行った後、再度、アミン管理濃度確認工程および水分管理濃度確認工程にかける。
【0058】
もちろん当該非水系溶媒の使用を使用せず、別の新たな非水系溶媒を、アミン管理濃度確認工程および水分管理濃度確認工程にかけることも可能である。
【0059】
(分散工程)
非水系溶媒が、アミン管理濃度確認工程および水分管理濃度確認工程のいずれにおいても、その基準を満たしていると判断された場合には、この非水系溶媒に炭素質材料を添加し攪拌混合して、分散させ、分散液総質量に対する炭素質材料濃度が15~30質量%となる炭素質材料分散液を調製する。
分散液総質量に対する炭素質材料濃度としては、さらに16~28質量%が好ましく、特に好ましくは18~25質量%である。炭素質材料の濃度が上記より少ない場合、製品製造における溶媒除去に必要とするエネルギーの増大や、分散液の輸送コストや溶媒のコストの上昇がある。一方、炭素質材料の濃度が上記より多いと、十分な流動性を得ることが困難となり、ハンドリング性が悪くなる。
【0060】
分散装置としては、特に限定されるものではなく、顔料分散等に通常用いられている分散機を使用することができる。例えば、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」等、シルバーソン社製「アブラミックス」等)類、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、コロイドミル(PUC社製「PUCコロイドミル」、IKA社製「コロイドミルMK」)類、コーンミル(IKA社製「コーンミルMKO」等)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS-5」、奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
好ましくは、最終的にメディアミル、特に、平均粒子径0.05~2mmのビーズを用いたメディアミルで、炭素質材料を分散させて調製されたものであることが好ましい。さらに好ましくは、このようなメディアミルによる分散処理に先立ち、以下に詳述するようなせん断型分散装置を用いて分散処理を行い、続いてメディアミルによる分散処理を施すことにより調製されたものであることがより好ましい。
【0062】
なお、メディアミルに用いるビーズの粒子径としては、あまり小さすぎると、カーボンブラックの一次凝集体といった炭素質材料が微細に破断されてしまう虞れがあり、また、分散処理に過大なエネルギーが必要となる。また、取り扱いが困難となるため、ビーズの平均粒径が、0.05mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることが特に好ましい。一方、ビーズが大きすぎると、単位体積あたりのビーズ個数が少なくなるため分散効率が低下し、炭素質材料の粉砕が不十分となり、アスペクト比が大きい状態で炭素質材料の粒子が存在することとなって、塗料やコーティング剤としての液性が得られなくなる虞れがある。このため、ビーズの平均直径が、2mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることが特に好ましい。
【0063】
メディアミルに用いられる分散メディアとしてのビーズの材質は特に限定されるものではなく、例えば、アルミナ、ジルコニア、鋼、クロム鋼、ガラスなどを例示することができるが、このうち、製品へのコンタミネーション、また、比重に起因する運動エネルギーの大きさ等を考慮すると、ジルコニアビーズを用いることが好ましい。
【0064】
ビーズの形状も特に限定されるものではないが、一般的には球形状のものが使用される。
【0065】
メディアミルは構造としては、特に限定されるものではなく、各種公知のメディアミルが適用できる。具体的には、各種公知のアトライター、サンドミル、ビーズミルなどが挙げられる。
【0066】
なお、ビーズのベッセルへの充填割合はベッセルや撹拌機構や構造等によって決定すればよく、特に限定されるものではないが、その割合が低すぎると炭素質材料に対し十分な粉砕ないし切断作用を発揮できなくなる虞れがある。一方、その割合が高すぎると、回転に大きな駆動力を必要とし、またビーズの磨耗による被処理媒体の汚染の増大を引き起こす虞れがある。このため、ビーズの充填割合は、例えば、ベッセルの有効容積の70~85容積%程度とすることが望ましい。
【0067】
また、処理時間、軸回転数、ベッセル内圧、モーター負荷等の操作条件は、炭素質材料の配合量、および分散させるべき樹脂の特性、特に、粘度や炭素質材料との相溶性などにより左右され、その目的に応じて適宜設定すればよい。
【0068】
また、このようなメディアミルによる分散処理に先立ち、その他の攪拌装置、例えば、ディスパー、ホモミキサー等のせん断型撹拌機を用いて予備分散処理を行うことが可能である。
【0069】
このようにして分散処理を行うことによって、粘度が50~500mPa・s、より好ましくは100~400mPa・s、さらに好ましくは150~300mPa・s程度の分散液を調製する。
【0070】
また、このようにして炭素質材料分散液を調製するにおいて、得られる分散液中の炭素質材料はレーザー回折粒度分布計で測定したときに、
図1に示すように、粒径ピークが2か所以上形成されるものであるものとなるように、分散処理することが望ましい。このように粒径ピークが2か所以上形成されることで、良好な分散性および流動性を発揮しつつも、カーボンブラック等の凝集構造がある程度は好適に維持され、例えば、電極を形成した際において良好な導電特性が発揮され得る。
【0071】
特に、カーボンブラック等の一次粒子ないし一次凝集体と二次凝集体とがいずれも十分な割合で存在するような状態が望ましく、レーザー回折粒度分布計で測定したときに、粒径ピークが2か所以上形成され、少なくともこれらのピークのうちの2つの主要なピークP1とP2の高さの比(P1:P2)が、1:0.7~0.7:1であるような態様となることが望ましい。
【0072】
(分散剤)
本発明の炭素質材料分散液を上記したようにして調製する上で、上記したような高い流動性を得る上で、好ましくは、分散剤として樹脂系分散剤および/または所定のアミン化合物を添加することが望ましい。特に望ましくは、樹脂系分散剤および所定のアミン化合物の双方を添加することが望ましい。
【0073】
樹脂系分散剤としては、ポリビニルアルコール類、メチルセルロース及びエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース類、ポリビニルアセタール類、ポリビニルピロリドン類等が挙げられ、このうち特にポリビニルアルコール、メチルセルロース等が好ましい。またこの樹脂系分散剤の添加量としては、分散液総量に対し0.01~5質量%、より好ましくは0.05~3質量%、さらに好ましくは0.1~2質量%程度である。
【0074】
所定のアミン化合物としては、例えば、3級アミン、2級アミン、1級アミン、環状アミン、およびアルカン骨格にアミノ基とヒドロキシ基を有する化合物であるアルカノールアミンないしはアミノアルコール類、あるいはジグリコールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(THAM)、モルホリン等のその他のアミン類が例示され得る。特に限定されるわけではないが、このうち例えば2-メチルアミノエタノール、2-アミノ-1-ブタノール、4-エチルアミノ-1-ブタノール、トリエチルアミン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール(AEPD)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、THAM等が特に好ましい。またこの所定のアミン化合物の添加量としては、分散液総量に対し0.01~5%、より好ましくは0.05~3%、さらに好ましくは0.1~2%程度である。
【0075】
(バインダー)
本発明の炭素質材料分散液には、さらに、バインダーを含有させることができる。あるいはまた、本発明の炭素質材料分散液を用いて例えば電極用スラリーを調製する場合において、このようなバインダーを組み合わせて用いることができる。
【0076】
使用するバインダーとしては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルピロリドン等を構成単位として含む重合体または共重合体;ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂;スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類;ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の変性体や混合物、および共重合体でも良い。リチウムイオン二次電池用途においては、特に、分子内にフッ素原子を有する高分子化合物、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン等の使用が好ましい。
【0077】
また、バインダーとしてのこれらの樹脂類の重量平均分子量は、10,000~2,000,000が好ましく、100,000~1,000,000がより好ましく、200,000~1,000,000が特に好ましい。分子量が小さいとバインダーの耐性や密着性が低下することがある。分子量が大きくなるとバインダーの耐性や密着性は向上するものの、バインダー自体の粘度が高くなり作業性が低下するとともに、凝集剤として働き、分散された粒子が著しく凝集してしまうことがある。
【0078】
本発明の想定する産業上の利用可能性から、バインダーは、フッ素原子を有する高分子化合物を含むことが好ましく、フッ素原子を有する高分子化合物であることが好ましく、フッ化ビニリデン系共重合体であることがさらに好ましく、ポリフッ化ビニリデンであることが特に好ましい。
【0079】
<炭素質材料分散液>
本発明に係る炭素質材料分散液は、上述したような本発明に係る炭素質材料分散液の製造方法により得られることを特徴とする炭素質材料分散液であって、総質量に対する炭素質材料濃度が15~30質量%、必要に応じて添加される所定のアミン化合物を除く分散液中のアミン成分濃度が質量分率3×10-6未満、分散液中の水分濃度が質量分率1×10-3未満であることを特徴とする炭素質材料分散液である。
【0080】
炭素質材料分散液のアミン成分濃度としては、製造方法におけるアミン管理濃度であると同様に、質量分率3×10-6未満であること、より好ましくは2×10-6未満であること、さらに望ましくは1×10-6未満であることが望ましい。
【0081】
一方、炭素質材料分散液の水分濃度としては、質量分率1×10-3未満、より好ましくは5×10-4未満、さらに望ましくは2×10-4未満である。製造方法における水分管理濃度は、質量分率5×10-4未満、より望ましくは2×10-4未満、さらに望ましくは1×10-4未満であるのに対して、製品である炭素質材料分散液の水分濃度は若干上昇した許容範囲となっている。これは、製造に用いる非水系溶媒の水分濃度を上記のような範囲内に管理していても、製造工程時あるいはその後の保管時等において、製品が空気中の水分を吸湿して水分量が上昇する可能性があるためである。しかし、このように製品中の水分量が、製造時の水分管理濃度よりも若干上昇しても、製品特性の上では特段問題のないものである。逆に言えば、製造時の水分管理濃度は、このように製品が空気中の水分を吸湿して水分濃度が上昇しても製品特性に影響を与えないものであるところを見越して、予め低めに設定したものとなる。
【0082】
なお、本発明に係る炭素質材料分散液に関して、上記した製造方法における説明においても記述した通り、炭素質材料がカーボンブラックであり、窒素含有複素環アミド化合物がN-メチル-2-ピロリドンである態様が望ましい。同様に、前述したように、レーザー回折粒度分布計で測定したときに、粒径ピークが2か所以上形成されるものであること、さらに少なくともこれらのピークのうちの主な2つのピークP1とP2の高さの比(P1:P2)が、1:0.7~0.7:1である態様が望ましい。
【0083】
また、本発明に係る炭素質材料分散液に関して、特に限定されるものではないが、その粘度が50~500mPa・s、さらに好ましくは100~400mPa・s、より望ましくは150~300mPa・s、であることが望ましい。
【0084】
(炭素質材料分散液の用途)
本発明の炭素質材料分散液は、さらに上記したようなバインダーおよび以下のような電極活物質を含有させ、電極用ペーストとして調製することができる。特に、上記分散剤、炭素質材料としてのカーボンブラック、非水系溶媒としてのN-メチル-2ピロリドンを含む炭素質材料分散液に、バインダーおよび電極活物質を含有させた電極用ペーストとして使用することが好ましい。
【0085】
(電極活物質)
リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、および導電性高分子等を使用することができる。
例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V2O5、V6O13、TiO2等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS2、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子を使用することもできる。また、上記の無機化合物や有機化合物を混合して用いてもよい。
【0086】
リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能なものであれば特に限定されない。例えば、金属Li、その合金であるスズ合金、シリコン合金、鉛合金等の合金系、LiXFe2O3、LiXFe3O4、LiXWO2、チタン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ケイ素酸リチウム等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン等の導電性高分子系、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気相成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素質材料が挙げられる。これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することもできる。
【0087】
これらの電極活物質は、平均粒子径が0.05~100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1~50μmの範囲内である。本明細書でいう電極活物質の平均粒子径とは電子顕微鏡で測定した粒子径の平均値である。
【0088】
この電極ペーストは、上記炭素質材料分散液と、バインダーと、電極活物質とを混合することにより製造することができる。各成分の添加順序等については限定されるものではなく、例えば、全成分を一括に混合する方法、上述の方法で予め作製した炭素質材料分散液に残りの成分を投入して混合する方法、上述の方法で予め作製した炭素質材料分散液にバインダーを添加して混錬した後、この混錬物に電極活物質を投入して混合する方法等が挙げられる。
【0089】
この電極ペーストを製造するための装置としては、上述した本発明の炭素質材料分散液を作製する際に用いられるものと同様のものを使用することができる。
【実施例0090】
以下、実施例に基づき、本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。本実施例中、部は質量部を、%は質量%を、それぞれ表す。
実施例及び比較例で使用したカーボンブラック(「CB」と略記することがある)、分散剤、バインダー等を以下に示す。
【0091】
<カーボンブラック>
・デンカブラック粒状品(デンカ社製):アセチレンブラック、比表面積69m2/g。
【0092】
<非水系溶媒>
非水系溶媒として以下のものを使用した。
・N-メチル-2-ピロリドン(NMP)。
非水系溶媒NMPとして、各種のものを用意した。その組成については、以下のとおりである。
NMP-A:日本リファイン(株)において製造された、リチウムイオン二次電池製造プロセスからの排液よりの蒸留精製品。
NMP-B:市販されるNMPの新液。
NMP-C1:上記NMP-B 16.67質量部を上記NMP-A 483.33質量部と混合したもの。
NMP-C2:上記NMP-B 50.00質量部を上記NMP-A 450.00質量部と混合したもの。
NMP-AW1:上記NMP-Aに精製水0.01%を添加した比較品。
NMP-AW2:上記NMP-Aに精製水0.05%を添加した比較品。
NMP-AW3:上記NMP-Aに精製水0.10%を添加した比較品。
NMP-AA1:上記NMP-Aに2-エチルピペリジンを質量分率3×10-6となるように添加したもの。
NMP-AA2:上記NMP-Aにモルホリンを質量分率3×10-6となるように添加したもの。
NMP-AA3:上記NMP-Aにトリエチルアミンを質量分率3×10-6となるように添加したもの。
【0093】
<分散剤>
・ポリビニルアルコール500(関東化学):重合度500、けん化度86.5~89.0%、以下PVAと略記する。
【0094】
<所定のアミン化合物>
・AEPD:2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール。
【0095】
<バインダー>
・KFポリマーW9100(クレハ社製):ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、重量平均分子量約280000。以下、W9100と略記する。
【0096】
<炭素質材料分散液の評価>
実施例1~14、比較例1~9で得られた炭素質材料分散液の評価は、初期粘度値および粘度変化率の測定により行った。評価方法は以下の通りである。
【0097】
<初期粘度値および粘度変化率>
本発明で課題である分散安定性は、得られる炭素質材料分散液の経時での粘度変化率より評価できる。粘度変化率は分散後の粘度測定値(初期粘度値)を基準としたときの、25℃で10日間、17日間または30日間静置保存した後の粘度測定値の変化率によって評価した。変化の少ないものほど安定性が良好であることを示す。粘度値の測定は、B型粘度計(東機産業社製「BL」)を用いて、分散組成物温度25℃、B型粘度計ローター回転速度60rpmにて、分散組成物をヘラで充分に撹拌した後、直ちに行った。測定に使用したローターは、粘度値が100mPa・s未満の場合はNo.20を、100mPa・s以上500mPa・s未満の場合はNo.21を、500mPa・s以上2000mPa・s未満の場合はNo.22を、2000mPa・s以上10000mPa・s未満の場合はNo.23のものをそれぞれ用いた。
【0098】
<NMP中のアミン成分濃度、水分および不純物濃度>
[予備試験1]
上記した非水系溶媒としての各種NMPのアミン成分濃度(質量分率)、水分(質量分率)および溶媒純度を、イオンクロマトグラフィー、カールフィッシャー水分濃度計およびガスクロマトグラフィーによりそれぞれ測定した。
その結果、それぞれ以下のような分析値が示された。
NMP-A: アミン成分濃度0.05×10-6、水分3×10-5、溶媒純度99.95%
NMP-C1:アミン成分濃度1.0×10-6、水分3×10-5、溶媒純度99.95%
NMP-C2:アミン成分濃度3.0×10-6、水分3×10-5、溶媒純度99.95%
NMP-AW1:アミン成分濃度0.05×10-6、水分1.3×10-4、溶媒純度99.95%
NMP-AW2:アミン成分濃度0.05×10-6、水分5.3×10-4、溶媒純度99.95%
NMP-AW3:アミン成分濃度0.05×10-6、水分1×10-3、溶媒純度99.94%
NMP-B:アミン成分濃度3.0×10-5、水分3×10-5、溶媒純度99.95%
NMP-AA1:アミン成分(2-エチルピペリジン)濃度3.0×10-6、水分3×10-5、溶媒純度99.95%
NMP-AA2:アミン成分(モルホリン)濃度3.0×10-6、水分3×10-5、溶媒純度99.95%
NMP-AA3:アミン成分(トリエチルアミン)濃度3.0×10-6、水分3×10-5、溶媒純度99.95%
なお、NMP-A、NMP-C1、NMP-AW1以外は、本発明に係る所定のアミン管理濃度および水分管理濃度の許容範囲の少なくともいずれかを外れるものであった。
【0099】
<炭素質材料分散液の調製>
[実施例1]
ガラス瓶にN-メチル-2-ピロリドンとしてNMP-A77.5部と分散剤としてのPVA1部および所定のアミンとしてのAEPD0.5部を仕込み、充分に混合溶解、または混合分散した後、カーボンブラック粒状品21部を加え、ジルコニアビーズをメディアとして、ビーズミルで粘度が250mPa・s以下になるまで分散した。炭素質材料分散液D-1を得た。炭素質材料分散液D-1の初期粘度値は174mPa・sであった。またレーザー回折粒度分布計で測定した粒径のピークは
図1に示すように1.01μmと0.25μmに存在し、そのピーク比は1.0:0.9であった。
25℃で10日間静置後の分散液の粘度値は166mPa・sであり、粘度変化率は5%であり、17日間静置後の分散液の粘度値は160mPa・sであり、粘度変化率は8%であり、30日間静置後の分散液の粘度値は161mPa・sであり、粘度変化率は8%であった。
【0100】
[実施例2]
N-メチル-2-ピロリドンとしてNMP-Aに代えて、NMP-C1を用いる以外は同様にして、炭素質材料分散液D-C1を得た。調製した分散液の初期粘度値は212mPa・sであり、25℃で30日間静置後の分散液の粘度値は192mPa・sであり、粘度変化率は9%であった。
【0101】
[比較例1]
N-メチル-2-ピロリドンとしてNMP-Aに代えて、NMP-C2を用いる以外は同様にして、炭素質材料分散液D-C2を得た。調製した分散液の初期粘度値は217mPa・sであり、25℃で30日間静置後の分散液の粘度値は183mPa・sであり、粘度変化率は16%であった。
【0102】
[比較例2]
N-メチル-2-ピロリドンとしてNMP-Aに代えて、NMP-Bを用いる以外は同様にして、炭素質材料分散液D-Bを得た。調製した分散液の初期粘度値は211mPa・sであり、25℃で30日間静置後の分散液の粘度値は180mPa・sであり、粘度変化率は15%であった。
【0103】
[実施例3]
N-メチル-2-ピロリドンとしてNMP-Aに代えて、NMP-AW1を用いる以外は同様にして、炭素質材料分散液D-AW1を得た。調製した分散液の初期粘度値は210mPa・sであった。25℃で10日間静置後の分散液の粘度値は191mPa・sであり、粘度変化率は10%であった。
【0104】
[比較例3]
N-メチル-2-ピロリドンとしてNMP-Aに代えて、NMP-AW2を用いる以外は同様にして、炭素質材料分散液D-AW2を得た。調製した分散液の初期粘度値は220mPa・sであった。25℃で10日間静置後の分散液の粘度値は183mPa・sであり、粘度変化率は16%であった。
【0105】
[比較例4]
N-メチル-2-ピロリドンとしてNMP-Aに代えて、NMP-AW3を用いる以外は同様にして、炭素質材料分散液D-AW3を得た。調製した分散液の初期粘度値は223mPa・sであった。25℃で10日間静置後の分散液の粘度値は183mPa・sであり、粘度変化率は18%であった。
【0106】
[参考例1]
N-メチル-2-ピロリドンとしてNMP-Aに代えて、NMP-AA1を用いる以外は同様にして、炭素質材料分散液D-AA1を得た。調製した分散液の初期粘度値は190mPa・sであった。25℃で17日間静置後の分散液の粘度値は158mPa・sであり、粘度変化率は17%であった。
【0107】
[参考例2]
N-メチル-2-ピロリドンとしてNMP-Aに代えて、NMP-AA2を用いる以外は同様にして、炭素質材料分散液D-AA2を得た。調製した分散液の初期粘度値は205mPa・sであった。25℃で17日間静置後の分散液の粘度値は175mPa・sであり、粘度変化率は15%であった。
【0108】
[参考例3]
N-メチル-2-ピロリドンとしてNMP-Aに代えて、NMP-AA3を用いる以外は同様にして、炭素質材料分散液D-AA3を得た。調製した分散液の初期粘度値は207mPa・sであった。25℃で17日間静置後の分散液の粘度値は179mPa・sであり、粘度変化率は14%であった。
【0109】
[実施例4]
実施例1で調製された炭素質材料分散液24.5部に対して、実施例1と同じNMP-A 70.5部と、バインダーW9100を5部添加し、スターラーにて60℃にて1時間充分に混合分散処理して塗工用ペーストを調製した。調製した塗工用ペーストの初期粘度値は155mPa・sであり、その後45℃で7日間静置後のペーストの粘度値は599mPa・sであって、塗工時における十分な作業性と、その後の適度な硬化性を示唆するものであった。
【0110】
[実施例5]
実施例2で調製された炭素質材料分散液24.5部に対して、実施例2と同じNMP-C1 70.5部と、バインダーW9100を5部添加し、スターラー60℃にて1時間充分に混合分散処理して塗工用ペーストを調製した。調製した塗工用ペーストの初期粘度値は165mPa・sであり、その後45℃で7日間静置後のペーストの粘度値は550mPa・sであって、塗工時における十分な作業性と、その後の適度な硬化性を示唆するものであった。
【0111】
[比較例6]
比較例1で調製された炭素質材料分散液24.5部に対して、比較例1と同じNMP-C2 70.5部とバインダーW9100を5部添加し、スターラーにて60℃にて1時間充分に混合分散処理して塗工用ペーストを調製した。調製した塗工用ペーストの初期粘度値は135mPa・sであり、その後45℃で7日間静置後のペーストの粘度値は403mPa・sであって、塗工時における十分な作業性を示したが、その後の硬化性に関しては実施例4に比べてかなり低下することを示唆するものであった。
【0112】
[比較例7]
比較例2で調製された炭素質材料分散液24.5部に対して、比較例2と同じNMP-B 70.5部と、バインダーW9100を5部添加し、スターラーにて60℃にて1時間充分に混合分散処理して塗工用ペーストを調製した。調製した塗工用ペーストの初期粘度値は128mPa・sであり、その後45℃で7日間静置後のペーストの粘度値は402mPa・sであって、塗工時における十分な作業性を示したが、その後の硬化性に関しては実施例4に比べてかなり低下することを示唆するものであった。
【0113】
[参考例4]
参考例1で調製された炭素質材料分散液24.5部に対して、参考例1と同じNMP-AA1 70.5と、バインダーW9100を5部添加し、スターラーにて60℃にて1時間充分に混合分散処理して塗工用ペーストを調製した。調製した塗工用ペーストの初期粘度値は140mPa・sであり、その後45℃で7日間静置後のペーストの粘度値は356mPa・sであって、塗工時における十分な作業性がなく、その後の硬化性に関しては実施例4に比べてかなり低下することを示唆するものであった。
【0114】
[参考例5]
参考例2で調製された炭素質材料分散液24.5部に対して、参考例2と同じNMP-AA2 70.5部と、バインダーW9100を5部添加し、スターラーにて60℃にて1時間充分に混合分散処理して塗工用ペーストを調製した。調製した塗工用ペーストの初期粘度値は136mPa・sであり、その後45℃で7日間静置後のペーストの粘度値は320mPa・sであって、塗工時における十分な作業性がなく、その後の硬化性に関しては実施例4に比べてかなり低下することを示唆するものであった。
【0115】
[参考例6]
参考例3で調製された炭素質材料分散液24.5部に対して、参考例3と同じNMP-AA3 70.5部と、バインダーW9100を5部添加し、スターラーにて60℃にて1時間充分に混合分散処理して塗工用ペーストを調製した。調製した塗工用ペーストの初期粘度値は131mPa・sであり、その後45℃で7日間静置後のペーストの粘度値は316mPa・sであって、塗工時における十分な作業性がなく、その後の硬化性に関しては実施例4に比べてかなり低下することを示唆するものであった。
溶媒純度が99.9%以上の窒素含有複素環アミド化合物からなる非水系溶媒中に炭素質材料を分散させた炭素質材料分散液であって、総質量に対する炭素質材料濃度が15~30質量%、必要に応じて添加される所定のアミン化合物を除く分散液中のアミン成分濃度が質量分率3×10-6未満、分散液中の水分濃度が質量分率1×10-3未満であることを特徴とする炭素質材料分散液。
レーザー回折粒度分布計で測定したときに、粒径ピークが2か所以上形成され、少なくともこれらのピークのうちの主な2つのピークP1とP2の高さの比(P1:P2)が、1:0.7~0.7:1である請求項1~10のいずれかに記載の炭素質材料分散液。