(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100775
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】改変κ軽鎖結合ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 14/195 20060101AFI20240719BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20240719BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
C07K14/195 ZNA
C07K1/22
C12N15/31
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024071815
(22)【出願日】2024-04-25
(62)【分割の表示】P 2022124822の分割
【原出願日】2015-12-11
(31)【優先権主張番号】1451563-9
(32)【優先日】2014-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】1451564-7
(32)【優先日】2014-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(71)【出願人】
【識別番号】516105833
【氏名又は名称】サイティバ・バイオプロセス・アールアンドディ・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゴ,グスタフ
(72)【発明者】
【氏名】アンデル,マッツ
(72)【発明者】
【氏名】ビョルクマン,トマス
(57)【要約】
【課題】1つには、アルカリ安定性の向上したポリペプチドを提供すること。
【解決手段】本発明は、配列番号2~6又は12で定義されるか、又はそれらと95%以上又は98%の配列相同性を有する親ドメインの1以上のアスパラギン残基が、アスパラギンでも、プロリンでも、システインでもない別のアミノ酸残基に変異されている、PeptostreptococcusのプロテインLの変異結合ドメインを含むκ軽鎖結合ポリペプチドを開示する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PeptostreptococcusのプロテインLの1つの変異結合ドメイン又は前記ドメインの多量体を含むκ軽鎖結合ポリペプチドであって、
前記ドメインにおいて、配列番号4によって定義されるか又は配列番号4と少なくとも95%の配列同一性を有する親ドメインの少なくとも1つのアスパラギン残基が、アスパラギンでもプロリンでもシステインでもない別のアミノ酸残基に変異しており、
前記ドメインの少なくとも1つが、変異N45A及びN60Qを含み、
アルカリ安定性が、配列番号1によって定義されるポリペプチドと比較して改善されており、
前記ポリペプチドが、複数の変異結合ドメインを含むか又はそれらからなり、前記ドメインの少なくとも1つにおける前記変異が、以下の(i)~(v):
(i)N45A、
(ii)N60Q、
(iii)N10QとN45A、
(iv)N10QとN60Q、及び
(v)N10QとN45AとN60Q
からなる群から選択される、
ポリペプチド。
【請求項2】
前記ドメインの各々における前記変異が、前記(i)~(v)からなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
複数の変異結合ドメインを含むか又はそれらからなり、各ドメインが、変異N45A及びN60Qを含む、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
2、3、4、5又は6個の変異結合ドメインを含むか又はそれらからなる、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記ドメインが、最大15個のアミノ酸を含む要素によって連結される、請求項3又は4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の複数のポリペプチドが、固体支持体にカップリングされている、分離マトリックス。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、多点結合によって前記固体支持体にカップリングされている、請求項6に記載の分離マトリックス。
【請求項8】
0.1M NaOH中22±2℃での100回の10分間のインキュベーションのサイクルの後のκ軽鎖含有タンパク質に対する前記マトリックスの結合容量が、前記インキュベーションの前の結合容量の少なくとも40%である、請求項6又は7に記載の分離マトリックス。
【請求項9】
前記インキュベーションの後の結合容量が、前記インキュベーションの前の結合容量の少なくとも50%である、請求項8に記載の分離マトリックス。
【請求項10】
前記インキュベーションの後の結合容量が、前記インキュベーションの前の結合容量の少なくとも55%である、請求項9に記載の分離マトリックス。
【請求項11】
請求項6~10のいずれか1項に記載の分離マトリックスが使用される、κ軽鎖含有タンパク質を単離する方法。
【請求項12】
a)κ軽鎖含有タンパク質を含む液体試料を、請求項6~10のいずれか1項に記載の分離マトリックスと接触させるステップ、
b)前記分離マトリックスを、洗浄液で洗浄するステップ、
c)前記κ軽鎖含有タンパク質を、溶出液を用いて前記分離マトリックスから溶出するステップ、及び
d)前記分離マトリックスを、洗浄液で洗浄するステップ
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップa)~d)が、少なくとも10回繰り返される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップa)~d)が、少なくとも50回繰り返される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップa)~d)が、少なくとも50~200回繰り返される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記洗浄液が、アルカリである、及び/又は、前記洗浄液が、0.01~1.0MのNaOH若しくはKOHを含む、請求項12~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記洗浄液が、12~14のpHを有するアルカリである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記洗浄液が、0.05~1.0MのNaOH又はKOHを含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記洗浄液が、0.05~0.1MのNaOH又はKOHを含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野
本発明は、アフィニティークロマトグラフィーの分野に関し、具体的には、プロテインLのκ軽鎖結合ドメインを含むポリペプチドであって、様々な種類の免疫グロブリン及び免疫グロブリンフラグメントのアフィニティークロマトグラフィーに有用なポリペプチドに関する。本発明は、かかるポリペプチドを含む分離マトリックス及びかかる分離マトリックスを使用した分離方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
免疫グロブリン及び免疫グロブリンフラグメントは、世界中で製造又は開発されている最も一般的なバイオ医薬製品である。この治療薬市場の高い商業的需要及びその価値のため、製薬会社は、付随するコストを抑制しながら、その生産プロセスの生産性を最大限にすることが重視されている。
【0003】
典型的には、ブドウ球菌プロテインA又はその変異体を含むマトリックスによるアフィニティークロマトグラフィーは、インタクトな免疫グロブリン分子の精製における重要なステップの1つとして常用されている。免疫グロブリンのFc鎖に対するプロテインAの選択性の高い結合は、不純物及び夾雑物の除去率が非常に高い汎用ステップをもたらす。
【0004】
Fc鎖を欠くが、κ軽鎖サブクラス1、3又は4を有する抗体フラグメント、例えば、Fab、一本鎖可変フラグメント(scFv)、二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE;bispecific T-cell engager)、ドメイン抗体などに対しては、Peptostreptococcus magnus由来のプロテインLを含むマトリックス(B Akerstrom,L Bjorck:J.Biol.Chem.264,19740-19746,1989;W Kastern et al:J.Biol.Chem.267,12820-12825,1992;BHK Nilson et al:J.Biol.Chem.267,2234-2239,1992及び米国特許第6822075号)が、所要の高い選択性をもたらす精製プラットフォームとして多大な有望性を示す。米国特許第6822075号に開示されたプロテインLは、配列番号1のアミノ酸配列のN末端に追加のAVEN配列を加えたものを含んでいる。
【0005】
配列番号1(プロテインL)
KEETPETPETD SEEEVTIKAN LIFANGSTQT AEFKGTFEKA TSEAYAYADT LKKDNGEYTV DVADKGYTLN IKFAGKEKTPEE PKEEVTIKAN LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADA LKKDNGEYTV DVADKGYTLN IKFAGKEKTPEE PKEEVTIKAN LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKENGKYTV DVADKGYTLN IKFAGKEKTPEE PKEEVTIKAN LIYADGKTQT AEFKGTFAEA TAEAYRYADL LAKENGKYTA DLEDGGYTIN IRFAGKKVDEKPEE。
【0006】
プロテインLマトリックスは、GE Healthcare Bio-Sciences社(スウェーデン)からCapto(商標)L(Capto Lデータファイル29-0100-08 AC、2014)として市販されており、κ軽鎖含有タンパク質、例えば、インタクトな抗体、Fabフラグメント、scFvフラグメント、ドメイン抗体などの分離に使用することができる。健康なヒトによって産生される抗体の約75%はκ軽鎖を有し、多くの治療用モノクローナル抗体及び抗体フラグメントはκ軽鎖を含む。
【0007】
いずれのバイオプロセスクロマトグラフィー用途でも、夾雑物を確実に除去するための総合的な注意が必要である。かかる夾雑物は、例えば、クロマトグラフィー手順で固定相又はマトリックスに吸着される非溶出分子であることがあり、例えば、タンパク質、炭水化物、脂質、細菌及びウイルスを始めとする不要な生体分子又は微生物であることがある。マトリックスからのかかる夾雑物の除去は、通常、後で使用する前にマトリックスを再生しておくために、所望の生成物の最初の溶出後に行われる。かかる除去は、通常、定置洗浄(CIP)として知られる手順を伴い、固定相から夾雑物を溶出させることのできる試薬が使用される。このような試薬としてクロマトグラフィー媒体で多用される部類のものは、マトリックスに流すアルカリ溶液である。現在最も広く使用されている洗浄剤及び消毒剤はNaOHであり、夾雑の程度及び性状に応じて、0.05M乃至1M程度の濃度で使用することが望ましい。しかし、プロテインLは、プロテインAなどと比べるとアルカリ感受性の高いタンパク質であり、多数のサイクルでは約15mM以下のNaOHにしか耐えられない。このことは、十分な洗浄を担保するには、あまり望ましくない追加の洗浄液(例えば尿素又はグアニジニウム塩)も使用しなくてはならないおそれがあることを意味する。
【0008】
従前、アルカリpH値に耐える改良された性質を示す改変プロテインAリガンドの開発に向けた広範な研究が行われている。例えば、国際公開2003/080655には、特定のアスパラギン変異を有するプロテインAドメインが、天然タンパク質よりもかなりアルカリ安定性が高いと開示されている。
【0009】
そこで、アルカリ洗浄手順に対して向上した安定性を有するプロテインL由来リガンドを含有する分離マトリックスを得ることが当技術分野で依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【0011】
本発明の概要
本発明の一態様は、アルカリ安定性の向上したポリペプチドを提供することである。これは、請求項1に記載のポリペプチドによって達成される。
【0012】
1つの利点は、プロテインL及び親ポリペプチドでアルカリ安定性が改善されることである。追加の利点は、プロテインLで例証されるκ軽鎖含有タンパク質に対する選択性の高い結合が、本発明のポリペプチドで保持されることである。
【0013】
本発明の第2の態様は、アルカリ安定性の向上したポリペプチド又は多量体をコードする核酸又はベクターを提供することである。これは、特許請求の範囲に記載の核酸又はベクターによって達成される。
【0014】
本発明の第3の態様は、アルカリ安定性の向上したポリペプチド又は多量体を発現できる発現系を提供することである。これは、特許請求の範囲に記載の発現系によって達成さ
れる。
【0015】
本発明の第4の態様は、κ軽鎖含有タンパク質と選択的に結合することができて、改善されたアルカリ安定性を示す分離マトリックスを提供することである。これは特許請求の範囲に記載の分離マトリックスによって達成される。
【0016】
本発明の第5の態様は、κ軽鎖含有タンパク質を単離するための効率的かつ経済的な方法を提供することである。これは、特許請求の範囲に記載の方法によって達成される。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態は従属請求項に記載される。
【0018】
定義
「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、本明細書では互換的に用いられ、抗体のフラグメント、抗体又は抗体フラグメントを含む融合タンパク質及び抗体又は抗体フラグメントを含むコンジュゲートも包含する。
【0019】
本明細書において、「κ軽鎖結合ポリペプチド」及び「κ軽鎖結合タンパク質」という用語は、それぞれ、抗体のκ軽鎖サブクラス1、3又は4(BHK Nilson et al:J.Biol.Chem.267,2234-2239,1992などではVκI、VκIII及びVκIVとも呼ばれる)に結合できるポリペプチド又はタンパク質を意味し、例えばプロテインL、並びにその結合特性を保持した変異体、フラグメント又は融合タンパク質を包含する。
【0020】
「κ軽鎖含有タンパク質」という用語は、「免疫グロブリンκ軽鎖含有タンパク質」の同義語として用いられ、本明細書では、抗体由来のκ軽鎖サブクラス1、3又は4(BHK Nilson et al:J.Biol.Chem.267,2234-2239,1992などではVκI、VκIII及びVκIVとも呼ばれる)を含むタンパク質を意味し、κ軽鎖サブクラス1、3又は4を含有する任意のインタクトな抗体、抗体フラグメント、融合タンパク質、コンジュゲート又は組換えタンパク質を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図面の簡単な説明
【
図1】米国特許第6822075号及びW Kastern et al:J Biol.Chem.267,12820-12825,1992に記載のプロテインLの5つのκ軽鎖結合ドメインのアライメントを示す。
【
図2】プロテインLの様々なκ軽鎖結合ドメインのアルカリ安定性を示す。
【
図3】プロテインLの変異κ軽鎖結合ドメインのアルカリ安定性を示す。
【
図4】4つのドメインを含むプロテインLリガンドのアルカリ安定性を示す。
【
図5】プロテインLの変異二量体、四量体及び六量体κ軽鎖結合ドメインのアルカリ安定性を、プロテインLと対比して、示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施形態の詳細な説明
一態様では、本発明は、Peptostreptococcus magnusのプロテインLの1以上の結合ドメインであって、各々、ドメイン2、ドメイン3及びドメイン4からなる群から選択される1以上の結合ドメインを含んでいるか或いはそれらから実質的になるκ軽鎖結合ポリペプチドについて開示する。ドメイン2は、配列番号3又は配列番号12で定義されるアミノ酸配列を有していてもよいし、或いは配列番号3又は配列番号12と90%以上、例えば95%以上の配列相同性を有していてもよい。配列番号12は、31位にアラニンを有する配列番号3の変異体である。ドメイン3は、配列番号4で定義されるアミノ酸配列を有していてもよいし、或いは配列番号4と90%以上、例えば95%以上の配列相同性を有していてもよい。ドメイン4は、配列番号5で定義されるア
ミノ酸配列を有していてもよいし、或いは配列番号5と90%以上、例えば95%以上の配列相同性を有していてもよい。
【0023】
ポリペプチドのある実施形態では、各ドメインはドメイン3及びドメイン4からなる群から選択されるか、或いは各ドメインはドメイン3である。具体的には、ポリペプチドは、ドメイン3の多量体を含んでいるか或いはそれらから実質的になることができる。
【0024】
特定の実施形態では、これらのドメインの2以上は、ドメイン2、ドメイン3及びドメイン4からなる群から選択されるか、或いはドメイン3及びドメイン4からなる群から選択される。
【0025】
ある実施形態では、ポリペプチドは、PeptostreptococcusのプロテインLのドメイン1を全く含まない。ドメイン1は、配列番号2で定義されるアミノ酸配列を有していてもよいし、或いは配列番号2と90%以上、例えば95%以上の配列相同性を有していてもよい。
【0026】
ポリペプチドの特定の実施形態では、結合ドメインの1以上、例えばすべての結合ドメインで、少なくとも配列番号2~5の45位に対応する位置のアミノ酸(例えば、配列番号2~5又は12の45位のアミノ酸)は、アスパラギンでも、プロリンでも、システインでもないアミノ酸に変異されている。45位のアミノ酸は、例えば、アラニンに変異させることができる。
【0027】
ポリペプチドのある実施形態では、結合ドメインの1以上、例えばすべての結合ドメインで、少なくとも配列番号2~5の10位に対応する位置のアミノ酸(例えば、配列番号2~5又は12の10位のアミノ酸)は、アスパラギンでも、プロリンでも、システインでもないアミノ酸に変異されている。10位のアミノ酸は、例えば、グルタミンに変異させることができる。
【0028】
ポリペプチドの特定の実施形態では、結合ドメインの1以上、例えばすべての結合ドメインで、少なくとも配列番号2~5の60位に対応する位置のアミノ酸(例えば、配列番号2~5又は12の60位のアミノ酸)は、アスパラギンでも、プロリンでも、システインでもないアミノ酸に変異されている。60位のアミノ酸は、例えば、グルタミンにと変異させることができる。
【0029】
具体的には、結合ドメインの1以上、例えばすべての結合ドメインは、N10Q;N45A;N60Q;N10Q、N45A;N45A、N60Q、N10Q、N60Q及びN10Q、N45A、N60Qからなる群から選択される変異或いはN45A;N10Q、N45A;N45A、N60Q及びN10Q、N45A、N60Qからなる群から選択される変異を有していてもよい。
【0030】
ポリペプチドのある実施形態では、結合ドメインの1以上、例えばすべての結合ドメインで、少なくとも配列番号2~5の19位に対応する位置のアミノ酸(例えば、配列番号2~5又は12の19位のアミノ酸)は、グルタミンでも、アスパラギンでも、プロリンでも、システインでもないアミノ酸に変異されている。19位のアミノ酸は、例えば、グルタミン酸又はアラニンに変異させることができる。具体的には、結合ドメインの1以上、例えばすべての結合ドメインがQ19E及びQ19Aからなる群から選択される変異を有していてもよい。
【0031】
ポリペプチドの特定の実施形態では、結合ドメインの1以上、例えばすべての結合ドメインが、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号
13及び配列番号14で定義される配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。或いは、結合ドメインの1以上、例えばすべての結合ドメインは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11で定義される配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有していてもよい。ポリペプチドは、クローニングプロセスに由来する或いは切断されたシグナル配列由来の残基を構成する複数のアミノ酸残基を、N末端にさらに含んでいてもよい。追加のアミノ酸残基の数は、例えば15以下、例えば10以下又は5以下であってもよい。具体例として、ポリペプチドは、N末端にAQV配列を含んでいてもよい。
【0032】
配列番号7(ドメイン3、N45A変異)
PKEEVTIKAN LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKEAGKYTV DVADKGYTLN IKFAGKEKTPEE。
【0033】
配列番号8(ドメイン3、N10Q、N45A変異)
PKEEVTIKAQ LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKEAGKYTV DVADKGYTLN IKFAGKEKTPEE。
【0034】
配列番号9(ドメイン3、N45A、N60Q変異)
PKEEVTIKAN LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKEAGKYTV DVADKGYTLQ IKFAGKEKTPEE。
【0035】
配列番号10(ドメイン3、N10Q、N60Q変異)
PKEEVTIKAQ LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKENGKYTV DVADKGYTLQ IKFAGKEKTPEE。
【0036】
配列番号11(ドメイン3、N10Q、N45A、N60Q変異)
PKEEVTIKAQ LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKEAGKYTV DVADKGYTLQ IKFAGKEKTPEE。
【0037】
配列番号12(ドメイン2の変異体)
PKEEVTIKAN LIYADGKTQT AEFKGTFEEA AAEAYRYADA LKKDNGEYTV DVADKGYTLN IKFAGKEKTPEE。
【0038】
配列番号13(ドメイン3、Q19A変異)
PKEEVTIKAN LIYADGKTAT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKENGKYTV DVADKGYTLN IKFAGKEKTPEE。
【0039】
配列番号14(ドメイン3、Q19E変異)
PKEEVTIKAN LIYADGKTET AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKENGKYTV DVADKGYTLN IKFAGKEKTPEE。
【0040】
ある実施形態では、ポリペプチドは、上述の実施形態で定義される複数の変異又は非変異ドメインを含んでいるか或いはそれらから実質的になる多量体である。多量体は、例えば、二量体、三量体、四量体、五量体又は六量体であってよい。多量体は、多量体のすべてのユニットが同一であるホモ多量体であってもよいし、或いは1以上のユニットが他のユニットと異なるヘテロ多量体であってもよい。有利には、多量体中のすべてのユニットは、例えば、上述の変異を含むことによってアルカリ安定性である。ドメインは、これらドメインのC末端とN末端との間のペプチド結合によって直接相互に連結することができる。或いは、多量体中の2以上のユニットは、オリゴマー又はポリマー種を含むエレメント、例えば、15又は30以下のアミノ酸、例えば1~5、1~10又は5~10のアミノ酸を含むエレメントなどによって連結することができる。かかる連結の性質は、好ましくは、ドメインの空間的立体配座を不安定化してはならない。これは、例えば、連結内のシステインの存在を回避することによって達成することができる。さらに、連結は、好ましくは、ドメインの特性を損なわないように、アルカリ環境において十分に安定でなければならない。この目的のために、連結がアスパラギンを含まない場合に有利である。連結がグルタミンを含まない場合、さらに有利であり得る。多量体は、クローニングプロセスに由来する或いは切断されたシグナル配列由来の残基を構成する複数のアミノ酸残基を、N末端にさらに含んでいてもよい。付加的なアミノ酸残基の数は、例えば15以下、例え
ば10以下又は5以下であってもよい。具体例として、多量体はN末端にAQV配列を含んでいてもよい。
【0041】
特定の実施形態では、多量体は、配列番号15、配列番号16、配列番号17及び配列番号18からなる群から選択される配列、例えば配列番号16、配列番号17及び配列番号18からなる群より選択される配列を含んでいるか或いはそれらから実質的になる。
【0042】
配列番号15(ドメイン3、四量体)
PKEEVTIKAN LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKENGKYTV DVADKGYTLN IKFAGKEKTPEE PKEEVTIKAN LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKENGKYTV DVADKGYTLN IKFAGKEKTPEE PKEEVTIKAN LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKENGKYTV DVADKGYTLN IKFAGKEKTPEE PKEEVTIKAN LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKENGKYTV DVADKGYTLN IKFAGKEKTPEE。
【0043】
配列番号16 ドメイン3(N10Q、N45A、N60Q)2
PKEEVTIKAQ LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKEAGKYTV DVADKGYTLQ IKFAGKEKTPEE PKEEVTIKAQ LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKEAGKYTV DVADKGYTLQ IKFAGKEKTPEE。
【0044】
配列番号17 ドメイン3(N10Q、N45A、N60Q)4
PKEEVTIKAQ LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKEAGKYTV DVADKGYTLQ IKFAGKEKTPEE PKEEVTIKAQ LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKEAGKYTV DVADKGYTLQ IKFAGKEKTPEE PKEEVTIKAQ LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKEAGKYTV DVADKGYTLQ IKFAGKEKTPEE PKEEVTIKAQ LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKEAGKYTV DVADKGYTLQ IKFAGKEKTPEE。
【0045】
配列番号18 ドメイン3(N10Q、N45A、N60Q)6
PKEEVTIKAQ LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKEAGKYTV DVADKGYTLQ IKFAGKEKTPEE PKEEVTIKAQ LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKEAGKYTV DVADKGYTLQ IKFAGKEKTPEE PKEEVTIKAQ LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKEAGKYTV DVADKGYTLQ IKFAGKEKTPEE PKEEVTIKAQ LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKEAGKYTV DVADKGYTLQ IKFAGKEKTPEE PKEEVTIKAQ LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKEAGKYTV DVADKGYTLQ IKFAGKEKTPEE PKEEVTIKAQ LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKEAGKYTV DVADKGYTLQ IKFAGKEKTPEE。
【0046】
ある実施形態では、上述のポリペプチド及び/又は多量体は、システイン残基、複数のリジン残基及び複数のヒスチジン残基からなる群から選択される1以上のカップリングエレメントをC末端又はN末端にさらに含む。カップリングエレメントは、例えば、C末端の単一システインであってよい。カップリングエレメントは、C末端又はN末端に直接連結していてもよく、又は15個以下のアミノ酸、例えば1~5、1~10又は5~10個のアミノ酸を含むリンカーを介して連結していてもよい。この延長部は、好ましくは、変異タンパク質の特性を損なわないように、アルカリ環境で十分に安定でなければならない。この目的のために、延長部がアスパラギンを含まない場合に有利である。延長部がグルタミンを含まない場合、さらに有利であり得る。C-又はN-末端システインを有することの利点は、システインチオールと支持体上の求電子基との反応を介してタンパク質の末端カップリングを達成できることである。これは、結合容量にとって重要な、カップリングタンパク質の優れた可動性を提供する。
【0047】
ポリペプチド又は多量体のアルカリ安定性は、それをSPRチップ、例えば実施例に記載のBiacore CM5センサーチップにカップリングさせ、所定の温度、例えば22±2℃でアルカリ溶液中でインキュベーションする前後に、例えば特定のκ軽鎖含有タンパク質又は(IgG分子の大部分がκ軽鎖を有する)ヒトポリクローナルIgGを使用して、該チップのκ軽鎖結合容量を測定することによって評価することができる。インキュベーションは、例えば、0.1MのNaOH中で、10分間のサイクルを多数、例えば
50、96又は100サイクル実施することができる。0.1M NaOH中22±2℃で10分間のインキュベーションを96~100回繰り返した後のマトリックスの結合容量は、インキュベーション前の結合容量の40%以上、例えば50%以上又は55%以上であり得る。或いは、上記のように測定した特定の変異体の96~100サイクル後の残存結合容量を、親ポリペプチド/多量体の残存結合容量と比較することができる。この場合、変異体の残存結合容量は、親ポリペプチド/多量体の105%以上、例えば110%以上、125%以上、150%以上又は200%以上であり得る。
【0048】
本発明はまた、PeptostreptococcusのプロテインLの1以上の変異結合ドメインを含むκ軽鎖結合ポリペプチドを開示しており、このポリペプチドにおいて配列番号2~6又は12で定義されるか或いは配列番号2~6又は12と95%以上又は98%の配列相同性を有する親ドメインの1以上のアスパラギン残基は、アスパラギンでも、プロリンでも、システインでもない別のアミノ酸残基に変異されている。ポリペプチドは、少なくとも変異N45A及び/又は変異N60Qを含んでよい。特定の実施形態では、変異は、N45A;N10Q、N45A;N45A、N60Q、N10Q、N60Q及びN10Q、N45A、N60Qからなる群から選択されるか、或いはN45A;N10Q、N45A;N45A、N60Q及びN10Q、N45A、N60Qからなる群から選択される。親ポリペプチドと比較したアルカリ安定性は改善され、上述の通り測定することができる。
【0049】
ある実施形態では、ポリペプチドは、複数の変異結合ドメイン、例えば2、3、4、5又は6個のドメインを含むか、又はそれらから本質的になり、各ドメインは変異N10Q、N45A及びN60Qの1以上、例えばN45A及び/又はN60Qを含む。具体的には、各ドメインにおける変異は、N45A;N10Q、N45A;N45A、N60Q、N10Q、N60Q及びN10Q、N45A、N60Qからなる群から選択することができるか、又はN45A;N10Q、N45A;N45A、N60Q及びN10Q、N45A、N60Qからなる群から選択することができる。ドメインは、場合により、15個以下のアミノ酸を含むエレメントによって互いに連結させることができる。
【0050】
第2の態様では、本発明は、上述の実施形態によるポリペプチド又は多量体をコードする核酸について開示する。したがって、本発明は、ポリペプチド又は多量体をコードするRNA及びDNAなどの本核酸配列のすべての形態を包含する。本発明は、コード配列に加えて、本発明によるポリペプチド又は多量体の発現に必要なシグナル配列を含む、プラスミドなどのベクターを包含する。一実施形態では、該ベクターは、本発明による多量体をコードする核酸を含み、各ユニットをコードする個別の核酸は、相同又は異種のDNA配列を有してよい。
【0051】
第3の態様では、本発明は、上述のような核酸又はベクターを含む発現系について開示する。該発現系は、例えば、本ポリペプチド又は多量体を発現するように改変されたグラム陽性又はグラム陰性の原核宿主細胞系、例えば、バチルス属又は大腸菌(Escherichia coli)であってよい。代替の実施形態では、発現系は、酵母、例えばPichea pastoris又はSaccharomyces cerevisiaeなどの真核宿主細胞系である。
【0052】
第4の態様では、本発明は、上述の任意の実施形態による複数のポリペプチド又は多量体が固体支持体にカップリングされている分離マトリックスについて開示する。かかるマトリックスは、κ軽鎖含有タンパク質の分離に有用であり、ポリペプチド/多量体の改善されたアルカリ安定性に起因して、該マトリックスは、洗浄中の高度なアルカリ条件に耐え、このことはバイオプロセスの分離設定における長期間の繰り返し使用に必須である。マトリックスのアルカリ安定性は、所定の温度、例えば22±2℃でアルカリ溶液中でイ
ンキュベーションする前後に、例えば特定のκ軽鎖含有タンパク質又はヒトポリクローナルIgGを使用して、κ軽鎖結合容量を測定することによって評価することができる。インキュベーションは、例えば、0.1MのNaOH中で、15分間のサイクルを多数、例えば100、200又は300サイクル実施することができる。0.1M NaOH中22±2℃で15分間のインキュベーションを100回繰り返した後のマトリックスの結合容量は、インキュベーション前の結合容量の80%以上、例えば85%以上、90%以上又は95%以上であり得る。或いは、インキュベーションは0.1M NaOH中で4時間のサイクルを多数、例えば6サイクル実施して、総インキュベーション時間を24時間にしてもよい。22±2℃における0.1M NaOH中、総インキュベーション時間24時間の後のマトリックスの結合容量は、インキュベーション前の結合容量の80%以上、例えば85%以上、90%以上又は95%以上であり得る。
【0053】
当業者には理解されるように、発現されたポリペプチド又は多量体は、支持体に固定化する前に適度に精製しなければならない。かかる精製方法は当業界において周知であり、タンパク質ベースのリガンドの支持体への固定化は、標準的な方法を用いて容易に行われる。適切な方法及び支持体は、以下に具体的に述べる。
【0054】
本発明によるマトリックスの固体支持体は、任意の適切な周知の種類であってよい。従来のアフィニティー分離マトリックスは、多くの場合有機性であり、親水性表面を使用する水性媒体に曝露している、すなわちヒドロキシ(-OH)、カルボキシ(-COOH)、カルボキシアミド(-CONH2、N-置換型であってもよい)、アミノ(-NH2、置換されていてもよい)、オリゴ-又はポリエチレンオキシ基をそれらの外部に曝露し、存在する場合にはその内部にも曝露しているポリマーに基づく。固体支持体は、適切には多孔質であり得る。空隙率は、Gel Filtration Principles and Methods,Pharmacia LKB Biotechnology 1991,pp6-13に記載の方法による逆サイズ排除クロマトグラフィーによって測定されたKav又はKd値(特定のサイズのプローブ分子に利用可能な細孔容積の割合)として表すことができる。定義上、Kd及びKav値は両方とも常に0~1の範囲内にある。有利には、分子量110kDaのデキストランをプローブ分子として用いて測定した場合、Kav値は0.6~0.95、例えば、0.7~0.90又は0.6~0.8であり得る。この利点は、支持体が、本発明のポリペプチド/多量体及び該ポリペプチド/多量体に結合する免疫グロブリンの両方を収容することができ、結合部位への、及び結合部位からの免疫グロブリンの質量輸送を提供することができる細孔を大きな割合で有することである。
【0055】
ポリペプチド又は多量体は、例えば、リガンド中に存在するチオール、アミノ及び/又はカルボキシ基を利用する従来のカップリング技術を介して支持体に結合させることができる。ビセポキシド、エピクロロヒドリン、CNBr、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)などは、周知のカップリング試薬である。支持体とポリペプチド/多量体との間に、スペーサとして知られる分子を導入することができ、これによりポリペプチド/多量体の利用可能性が改善され、ポリペプチド/多量体の支持体への化学的カップリングが促進される。適切なスペーサは、例えば、エピクロロヒドリン、ブタンジオールジエポキシド、アリルグリシジルエーテルなどを用いた支持体の活性化によって導入することができる。或いは、ポリペプチド/多量体は、非共有結合、例えば物理吸着又は生体特異的吸着よって支持体に結合させてもよい。
【0056】
ある実施形態では、マトリックスは、支持体にカップリングされた、5~20、例えば5~15mg/ml、5~11mg/ml又は8~11mg/mlのポリペプチド又は多量体を含む。カップリングされるポリペプチド/多量体の量は、カップリングプロセスに使用するポリペプチド/多量体の濃度、使用するカップリング条件及び/又は使用する支
持体の細孔構造によって制御することができる。概して、マトリックスの絶対結合容量は、カップリングされたポリペプチド/多量体の量に伴い、少なくとも細孔がカップリングされたポリペプチド/多量体によって著しく狭窄される点まで増加する。カップリングされたポリペプチド/多量体1mg当たりの相対結合容量はカップリングレベルが高くなると減少し、上記の範囲内で最適な費用便益をもたらす。
【0057】
ある実施形態では、ポリペプチドは、多点結合を介して支持体にカップリングされる。これは、ポリペプチド中の複数の反応性基が支持体中の反応性基と反応するようなカップリング条件を使用することによって適切に行うことができる。典型的には、多点結合は、配列中のアミノ酸残基のいくつかの固有の反応基、例えばリジン中のアミンと、支持体上の反応基、例えばエポキシド、シアネートエステル(例えば、CNBr活性化由来)、スクシンイミジルエステル(例えば、NHS活性化由来)との反応を伴うことができる。しかし、ポリペプチド中の異なる位置に反応性基を故意に導入して、カップリング特性に影響を及ぼすことも可能である。リジンを介した多点カップリングを提供するために、カップリング反応は、リジンの一級アミンのかなりの部分が非プロトン化求核状態であるpHにおいて、例えば、8.0より高い、例えば10より高いpHにおいて適切に実施される。
【0058】
特定の実施形態では、ポリペプチド又は多量体は、チオエーテル結合を介して支持体にカップリングされる。かかる結合を実施する方法は、この分野において周知であり、標準的な技術及び装置を使用して当業者によって容易に実施される。チオエーテル結合は、柔軟で安定であり、一般的にアフィニティークロマトグラフィーでの使用に適している。特に、チオエーテル結合が、ポリペプチド又は多量体上の末端又は近末端のシステイン残基を介している場合、カップリングされたポリペプチド/多量体の可動性が向上し、結合容量及び結合反応速度が改善される。ある実施形態では、ポリペプチド/多量体は、上記のタンパク質に提供されるC末端システインを介してカップリングされる。このことは、システインチオールと支持体上の求電子基、例えばエポキシド基、ハロヒドリン基との効率的なカップリングを可能にし、チオエーテル架橋カップリングをもたらす。ポリペプチド/多量体は、例えば、一点結合を介して、例えば、単一のシステインを介してカップリングされても、又は例えば、ポリペプチド/多量体の近末端の複数のリジン又は他のカップリング基を使用する指向性の多点結合によってカップリングされてもよい。
【0059】
特定の実施形態では、支持体は、ポリヒドロキシポリマー、例えば多糖類を含む。多糖類の例としては、例えば、デキストラン、デンプン、セルロース、プルラン、寒天、アガロースなどが挙げられる。多糖類は本質的に親水性であり、非特異的相互作用の程度は低く、反応性(活性化可能な)ヒドロキシル基含量が高く、バイオプロセスに使用されるアルカリ性洗浄液に対して一般に安定である。
【0060】
ある実施形態では、支持体は、寒天又はアガロースを含む。本発明で使用する支持体は、標準的な方法、例えば逆懸濁ゲル化(S Hjerten:Biochim Biophys Acta 79(2),393-398(1964))により容易に調製することができる。或いは、塩基性マトリクッスは、SEPHAROSE(商標)FF(GE Healthcare)の名称で販売されている架橋アガロースビーズなどの市販品である。大規模分離に特に有利な一実施形態では、支持体は、米国特許第6602990号又は米国特許第7396467号(当該特許は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている方法を使用して、その剛性を増加させるように適合され、それによってマトリックスは高い流量により適切となる。
【0061】
特定の実施形態では、多糖類又はアガロース支持体などの支持体は、ヒドロキシアルキルエーテル架橋などで架橋される。かかる架橋を生成する架橋剤試薬は、例えば、エピク
ロロヒドリンのようなエピハロヒドリン、ブタンジオールジグリシジルエーテルのようなジエポキシド、アリルハライド又はアリルグリシジルエーテルのようなアリル化試薬であってよい。架橋は、支持体の剛性に有益であり、化学的安定性を改善する。ヒドロキシアルキルエーテル架橋はアルカリ安定性であり、著しい非特異的吸着を引き起こさない。
【0062】
又は、固体支持体は、合成ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリヒドロキシアルキルアクリレート、ポリヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドなどに基づく。ジビニル及びモノビニル置換ベンゼンに基づくマトリックスなどの疎水性ポリマーの場合、マトリックス表面は、多くの場合親水化されて、上で定義した親水性基を周囲の水性液体に曝露する。かかるポリマーは、標準的な方法に従って容易に製造され、例えば、「Styrene based polymer supports developed by suspension polymerization」(R Arshady:Chimica e L’Industria 70(9),70-75(1988))を参照されたい。或いは、SOURCE(商標)(GE Healthcare)などの市販品が使用される。別の代替としては、本発明による固体支持体は、無機性の支持体、例えばシリカ、酸化ジルコニウムなどを含む。
【0063】
さらに別の実施形態では、固体支持体は、表面、チップ、キャピラリー、又はフィルター(例えば、膜又は深層フィルターマトリックス)などの別の形態である。
【0064】
本発明によるマトリックスの形状に関して、一実施形態では、マトリックスは多孔質モノリスの形態である。別の実施形態では、マトリックスは、多孔質又は非多孔質であり得るビーズ又は粒子の形態である。ビーズ又は粒子の形態のマトリックスは、充填床として、又は懸濁形態で使用することができる。懸濁形態には、粒子又はビーズが自由に移動する膨張床及び純粋な懸濁液として知られる形態が含まれる。モノリス、充填床及び膨張床の場合、分離手順は一般に、濃度勾配を用いた従来のクロマトグラフィーに従う。純粋な懸濁液の場合、バッチ様式が使用される。
【0065】
第6の態様では、本発明は、上述の分離マトリックスを使用する、κ軽鎖含有タンパク質の単離方法について開示する。
【0066】
特定の実施形態では、本方法は、
a)κ軽鎖含有タンパク質を含む液体試料と、上述の分離マトリックスとを接触させるステップ、
b)分離マトリックスを洗浄液で洗浄するステップ、
c)κ軽鎖含有タンパク質を、溶出液を用いて分離マトリックスから溶出するステップ、
d)分離マトリックスを洗浄液で洗浄するステップ、
を含む。
【0067】
本方法はまた、ステップa)の前に、上述の実施形態のいずれかによるアフィニティー分離マトリックスを用意し、κ軽鎖含有タンパク質及び1以上の他の物質を液体試料として含む溶液を用意するステップ、及びステップc)の後に、溶出液を回収し、場合によりこの溶出液を、例えばアニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、マルチモーダルクロマトグラフィー及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィーによる追加の分離ステップに供するステップをさらに含む。液体試料、洗浄液及び溶出液の適切な組成並びに分離を実施するための一般的な条件は、アフィニティークロマトグラフィーの分野、特にプロテインLクロマトグラフィーの分野において周知である。κ軽鎖含有タンパク質及び1以上の他の物質を含む液体試料は、宿主細胞タンパク質(HCP)、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、大腸菌又は酵母細胞のタンパク質を含み得る。CHO細胞及び大腸菌のタンパク質の含量は、これらのタンパク質に対する免疫アッセイ、例えばC
HO HCP又は大腸菌HCP用ELISAキット、Cygnus Technologies社により簡便に決定することができる。宿主細胞タンパク質又はCHO細胞/大腸菌/酵母タンパク質は、ステップb)の間に脱着させることができる。
【0068】
溶出は、プロテインL媒体からの溶出に使用される任意の適切な溶液を使用して行うことができる。これは、例えば、pH4以下、例えばpH2.5~4又は2.8~3.5の溶液又はバッファーであってよい。ある実施形態では、溶出バッファー又は溶出バッファー勾配は、少なくとも1種のモノ-、ジ-又はトリ-官能性カルボン酸又はかかるカルボン酸の塩を含む。特定の実施形態では、溶出バッファー又は溶出バッファー勾配は、酢酸塩、クエン酸塩、グリシン、コハク酸塩、リン酸塩及びギ酸塩からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン種を含む。
【0069】
ある実施形態では、洗浄液は、pH12~14を有するようなアルカリである。かかる溶液は、特に間隔の上端において、マトリックスの効率的な洗浄を提供する
【0070】
特定の実施形態では、洗浄液は、0.01~1.0MのNaOH又はKOH、例えば0.05~1.0又は0.05~0.1MのNaOH又はKOHを含む。本発明のポリペプチドの高い安定性は、かかる比較的強いアルカリ溶液の使用を可能にする。
【0071】
ある実施形態では、ステップa)~d)は10回以上、例えば50回以上又は50~200回繰り返される。これは、マトリックスが何度も再使用できるという点でプロセスの経済性にとって重要である。
【実施例0072】
実施例
タンパク質の変異導入
単量体構築物を、米国特許第6822075号(配列番号1)に開示された4つのκ軽鎖結合ドメインを含むプロテインLから設計した。これらは、N末端から開始して1、2、3及び4と番号が付けられている(
図1)。DNAフラグメントはDNA合成会社(DNA2.0)から購入した。それぞれN末端システインを有する4つの単量体構築物を、pJexpress201クローニングベクター中で調製した。構築物の概要については、配列番号2、4、5、12を参照されたい。標的タンパク質をペリプラズムに局在化させるための大腸菌GAPプロモーター及びOmpAシグナルペプチド配列を含有する構築物を、発現ベクターpGOにサブクローニングした。4つのドメインをコードする配列は、FspI及びPstIの制限酵素認識部位をそれぞれ5’側及び3’側に含むオリゴヌクレオチドで増幅することによって調製した。各ドメインをコードする調製されたDNAフラグメントをFspI及びPstI(New England Biolabs)を用いて消化した。それとは別に、FspI及びPstIを用いる消化により発現ベクターを調製し、アガロースゲル電気泳動により精製し、回収した。両方を混合し、Quickライゲーションキット(New England Biolabs)で連結した。各ドメインを発現する連結させたプラスミドにより、ヒートショック法を用いて化学的コンピテント大腸菌K12株を形質転換させた。
【0073】
ドメイン3のアミノ酸N10、N45、Q19、及びN60の追加の変異を、lacオペロン制御機構(配列番号7-11、13-14)の下でT5プロモーターを含む発現ベクターpJexpress401(DNA2.0)において調製した。構築物は、C末端システインを含まずに、OmpAシグナルペプチドを含むもの、及び含まないものを設計した。
【0074】
ドメイン3の四量体、N45、N10及びN60の変異を有するドメイン3の、二量体、四量体及び六量体も、C末端システイン(配列番号15-18)を有するもの、及び有
さないものをpJexpress401において調製した。
【0075】
構築物の発現及び精製
大腸菌K12組換え細胞を、25mg/lのカナマイシンを添加したLB-ブロス(10gのペプトン、5gの酵母エキス、5gのNaCl)を含む振盪フラスコ中で、37℃で600nmの光学濃度が0.8に達するまで培養した。この時点で、タンパク質発現を、最終濃度1mMのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(VWR International)を用いて誘導した。誘導後、温度を30℃に下げ、培養物を5時間インキュベートした。培養を停止し、細胞を4000xgで15分間遠心分離し、上清を廃棄した。細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で培養体積の1/10に再懸濁し、2分間の活性時間でパルス音波処理を使用して超音波処理した。超音波処理された試料を、6000xgで30分間の遠心分離、続いて0.2μmの細孔径を有する膜による精密濾過によって、細胞破片から清澄化した。
【0076】
精製されたリガンドをLC-MSを用いて分析して、純度を決定し、分子量が(アミノ酸配列に基づいて)予測と一致することを確認した。
【0077】
実施例1
非変異単一ドメインの場合にはC末端のシステイン及びN末端のAQV配列をさらに含む、表1に記載の精製された単量体リガンドを、(チップ上のカルボキシメチル基のアミンのカルボジイミドカップリング用)のGE Healthcareのアミンカップリングキットを使用して、Biacore機器(GE Healthcare社(スウェーデン))において約1000RUのシグナル強度を得るために十分な量でBiacore CM5センサーチップ(GE Healthcare社(スウェーデン))に固定した。固定した表面のIgG結合容量を追跡するために、1mg/mlのヒトポリクローナルIgG(Gammanorm)をチップ上に流し、シグナル強度を記録した。次いで、該表面を定置洗浄(CIP)、すなわち室温(22±2℃)において100mMのNaOHで10分間洗い流した。これを96サイクル繰り返し、各サイクル後のIgG結合容量(シグナル強度)の相対的喪失として、固定リガンドのアルカリ安定性を追跡した。非変異ドメインの結果を
図2に示し、この結果はドメイン1が他のドメインよりも明らかに低いアルカリ安定性を有し、ドメイン3が最も高いアルカリ安定性を有することを示している。ドメイン3の単一ドメインアスパラギン変異体についての結果を
図3に示し、この結果は変異と並行して参照として使用した親ドメイン3と比較して、すべての変異体について改善されたアルカリ安定性を示している。
【0078】
【0079】
実施例2
表2に記載の精製されたマルチドメインリガンドを、(チップ上のカルボキシメチル基のアミンのカルボジイミドカップリング用)のGE Healthcareのアミンカッ
プリングキットを使用して、Biacore機器(GE Healthcare社(スウェーデン))において約1000RUのシグナル強度を得るために十分な量でBiacore CM5センサーチップ(GE Healthcare社(スウェーデン))に固定した。プロテインLは、N-末端に追加のAIHNRA配列を有していた。固定した表面のIgG結合容量を追跡するために、1mg/mlのヒトポリクローナルIgG(Gammanorm)をチップ上に流し、シグナル強度を記録した。次いで、該表面を定置洗浄(CIP)、すなわち室温(22±2℃)において100mMのNaOHで10分間洗い流した。これを96サイクル繰り返し、各サイクル後のIgG結合容量(シグナル強度)の相対的喪失として、固定リガンドのアルカリ安定性を追跡した。結果を表2及び
図4に示し、これらの結果は、四量体ドメイン3が、参照として並行して実施したプロテインLと比較してアルカリ安定性の向上したことを示している。
【0080】
【0081】
実施例3
表3に記載の精製マルチドメインリガンドをBiacore CM5センサーチップに固定化し、実施例2で使用した方法により評価した。リガンドの記号表示の末尾にある-cysは、リガンドが、配列番号16~18で定義された配列に加えてC末端システインを有することを示している。結果を表3及び
図5に示し、これらの結果は、すべての変異ドメイン3の二量体、四量体及び六量体が、参照として並行して実施したプロテインLと比較してアルカリ安定性の向上したことを示す。
【0082】
【0083】
実施例4
表4の精製二量体、四量体及び六量体のリガンドを、下記の方法を用いてアガロースビーズに固定し、容量について評価した。結果を表4に示す。
【0084】
【0085】
活性化
使用したベースマトリックスは、米国特許第6602990号の方法に従って調製された、メジアン径85μm(体積加重)の、Gel Filtration Principles and Methods,Pharmacia LKB Biotechno
logy 1991,pp6-13に記載されている方法にしたがって、逆ゲル濾過クロマトグラフィーのKav値が分子量110kDaのデキストランに対して0.70に相当する細孔サイズを有する硬質架橋アガロースビーズである。
【0086】
25mL(g)の水切りしたベースマトリックス、10.0mLの蒸留水及び2.02gのNaOHを、100mLフラスコ中で機械的に撹拌しながら25℃で10分間混合した。4.0mLのエピクロロヒドリンを加え、反応を2時間進行させた。活性化されたゲルを、10ゲル沈殿物体積(GV)の水で洗浄した。
【0087】
カップリング
活性化ゲルを5GVの0.2Mリン酸塩/1mM EDTA pH11.5(カップリングバッファー)で洗浄した。15mlのゲル+13mgのリガンド/ゲル(5.0ml)+5.5mlのカップリングバッファー+4.7gの硫酸ナトリウムを、50mlフラスコ中で混合し、30℃で18.5時間撹拌した。測定したpHは10.8であった。
【0088】
固定後、ゲルを3xGVの蒸留水で洗浄し、次に5xGVの0.1Mのリン酸/1mMのEDTA pH8.5で洗浄した。ゲル+1GV{0.1Mのリン酸塩/1mMのEDTA/7.5%のチオグリセロールpH8.5}を混合し、フラスコを45℃で2時間20分間撹拌した。次いで、ゲルを1xGVの0.1M HAc及び1xGVの{0.1M TRIS/0.15M NaCl pH8.5}で交互に洗浄し、次いで6xGVの蒸留水で洗浄した。ゲル試料をアミノ酸分析のために外部研究室に送り、リガンド含量(mg/mlゲル)を全アミノ酸含量から計算した。使用したカップリングプロトコルは、多点カップリングを提供し、各ドメインのいくつかのリジンがゲルに結合された。
【0089】
2mlの樹脂をTRICORN(商標)5 100カラムに充填した。
【0090】
タンパク質
a)パパイン消化したIgG mAbから調製した精製Fabを、平衡化バッファー中で1mg/mlに希釈した。
b)熱処理した大腸菌上清から調製した精製Dabを、平衡バッファー中で1mg/mlに希釈した。Dabは、κ軽鎖のみを含み、抗原結合部位を全く含まなかった。
【0091】
平衡化バッファー
APBリン酸バッファー20mM+0.15M NaCl、pH7.4(Medicago)。
【0092】
吸着バッファー
APBリン酸バッファー20mM+0.15M NaCl、pH7.4(Medicago)。
【0093】
溶出バッファー
25mMクエン酸塩 pH2.5。
【0094】
ブレークスルー容量は、AKTAExplorer10システムを用いて滞留時間4分で測定した。安定したベースラインが得られるまで、バイパスカラムを通して平衡バッファーを流した。これは自動ゼロ化の前に行った。100%UVシグナルが得られるまで試料をカラムに適用した。その後、安定したベースラインが得られるまで、平衡バッファーを再度適用した。
【0095】
UVシグナルが最大吸光度の85%に到達するまで試料をカラムに負荷した。次にカラ
ムを平衡化バッファーで洗浄し、pH2.5において流速0.5ml/分で溶出した。
【0096】
10%のブレークスルー容量を計算するために、下記の式を使用した。これは、カラム流出液中のFab/Dabの濃度が供給液中のFab/Dab濃度の10%になるまでにカラムに負荷されたFab/Dabの量である。
【0097】
【0098】
10%ブレークスルーにおける動的結合容量(DBC)を計算し、曲線の形状を研究した。この曲線をさらに、結合、溶出及びCIPピークに関して研究した。動的結合容量(DBC)は、10%及び80%のブレークスルーについて計算した。
【0099】
本明細書では、本発明を最良の形態を含めて開示するとともに、装置又はシステムの製造・使用及び方法の実施を始め、本発明を当業者が実施できるようにするため、例を用いて説明してきた。本発明の特許性を有する範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に自明な他の例も包含する。かかる他の例は、特許請求の範囲の文言上の差のない構成要素を有しているか、或いは特許請求の範囲の文言と実質的な差のない均等な構成要素を有していれば、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する。
[実施態様1]
PeptostreptococcusのプロテインLの1以上の変異結合ドメインを含むκ軽鎖結合ポリペプチドであって、配列番号2~6又は12で定義される或いはそれらと95%以上又は98%の配列相同性を有する親ドメインの1以上のアスパラギン残基が、アスパラギンでもプロリンでもシステインでもない別のアミノ酸残基に変異している、ポリペプチド。
[実施態様2]
少なくとも変異N45Aを含む、実施態様1に記載のポリペプチド。
[実施態様3]
少なくとも変異N60Qを含む、実施態様1又は2に記載のポリペプチド。
[実施態様4]
変異が、N10Q;N45A;N60Q;N10Q、N45A;N45A、N60Q、N10Q、N60Q及びN10Q、N45A、N60Qからなる群から選択されるか、又はN45A;N10Q、N45A;N45A、N60Q、N10Q、N60Q及びN10Q、N45A、N60Qからなる群から選択される、実施態様1乃至3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
[実施態様5]
各ドメインが変異N45A及び/又はN60Qを含む、複数の変異結合ドメイン、例えば2、3、4、5又は6個のドメインを含むか、又はそれらから本質的になる、実施態様1乃至4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
[実施態様6]
各ドメインにおける変異が、N10Q;N45A;N60Q;N10Q、N45A;N45A、N60Q、N10Q、N60Q及びN10Q、N45A、N60Qからなる群から選択されるか、又はN45A;N10Q、N45A;N45A、N60Q、N10Q、N60Q及びN10Q、N45A、N60Qからなる群から選択される、実施態様5に記
載のポリペプチド。
[実施態様7]
ドメインが、15個以下のアミノ酸を含む要素によって連結されている、実施態様5又は6に記載のポリペプチド。
[実施態様8]
0.1M NaOH水溶液中22±2℃で10分間のインキュベーションを96~100回繰り返した後の、κ軽鎖含有タンパク質に対する残存結合容量によって測定されるアルカリ安定性が、親ポリペプチドと比較して改善される、実施態様1乃至7のいずれか1項に記載のポリペプチド。
[実施態様9]
親ドメインが、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列で定義されるか、又はそれらと95%以上又は98%の配列相同性を有する、実施態様1乃至8のいずれか1項に記載のポリペプチド。
[実施態様10]
親ドメインが、配列番号4で定義されるか、又はそれと95%以上又は98%の配列相同性を有する、実施態様1乃至9のいずれか1項に記載のポリペプチド。
[実施態様11]
実施態様1乃至10のいずれか1項に記載のポリペプチド又は多量体をコードする核酸又はベクター。
[実施態様12]
実施態様11に記載の核酸又はベクターを含む発現系。
[実施態様13]
実施態様1乃至10のいずれか1項に記載の複数のポリペプチドが固体支持体にカップリングされている分離マトリックス。
[実施態様14]
ポリペプチドが、多点結合によって固体支持体にカップリングされている、実施態様13に記載の分離マトリックス。
[実施態様15]
0.1M NaOH中22±2℃で10分間のインキュベーションを100回繰り返した後の、κ軽鎖含有タンパク質に対するマトリックスの結合容量が、インキュベーションの前の結合容量の40%以上、例えば50%以上又は55%以上である、実施態様13乃至14のいずれか1項に記載の分離マトリックス。
[実施態様16]
実施態様13乃至15のいずれか1項に記載の分離マトリックスが使用される、κ軽鎖含有タンパク質を単離する方法。
[実施態様17]
a)κ軽鎖含有タンパク質を含む液体試料と、実施態様13乃至15のいずれか1項に記載の分離マトリックスとを接触させるステップ、
b)分離マトリックスを洗浄液で洗浄するステップ、
c)κ軽鎖含有タンパク質を、溶出液を用いて分離マトリックスから溶出するステップ、
d)分離マトリックスを洗浄液で洗浄するステップ、
を含む、実施態様16に記載の方法。
[実施態様18]
洗浄液が、pH12~14を有するようなアルカリである、実施態様17に記載の方法。
[実施態様19]
洗浄液が0.01~1.0MのNaOH又はKOH、例えば0.05~1.0M又は0.05~0.1MのNaOH又はKOHを含む、実施態様17又は18に記載の方法。
[実施態様20]
ステップa)~d)が10回以上、例えば50回以上又は50~200回繰り返される
、実施態様17乃至19のいずれか1項に記載の方法。