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▶ ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100792
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】GlyT1阻害剤の固体形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 413/04 20060101AFI20240719BHJP
   A61K 31/422 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C07D413/04 CSP
A61K31/422
A61P25/00
A61P25/18
A61P25/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024074707
(22)【出願日】2024-05-02
(62)【分割の表示】P 2021563717の分割
【原出願日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】62/841,401
(32)【優先日】2019-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】ガオ ジョー ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ジーガー ぺーター
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ビン-ショウ
(57)【要約】
【課題】グリシントランスポータ-1(GlyT1)の阻害剤の固体形態。また、これらの固体形態の作製方法、これらの固体形態を含む医薬組成物、およびグリシントランスポータ-1の阻害剤による処置に応答する医療状態のためのそれらの使用。
【解決手段】グリシントランスポータ-1(GlyT1)の阻害剤の固体形態が開示されている。本発明はまた、これらの固体形態の作製方法、これらの固体形態を含む医薬組成物、およびグリシントランスポータ-1の阻害剤による処置に応答する医療状態のためのそれらの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式:
【化1】
1
を有する化合物1の固体形態Iであって、
化合物1の形態Iが、
4.6°、10.0°、16.7°、18.0°、19.0°、20.0°および22.7°から選択される2θ角度での少なくとも3つのXRPDピーク、または
131.5ppm、127.2ppm、28.7ppmおよび25.7ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも3つの13C固体核磁気共鳴ピーク、または
-64.3、-64.8、-65.9、-66.8、-78.0、-78.5、-79.3および-80.0ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも3つの19F固体核磁気共鳴ピーク
を特徴とする、化合物1の固体形態I。
【請求項2】
4.6°、10.0°、16.7°、18.0°、19.0°、20.0°および22.7°から選択される2θ角度での少なくとも4つのXRPDピークを特徴とする、請求項1に記載の化合物1の固体形態I。
【請求項3】
4.6°、10.0°、16.7°、18.0°、19.0°、20.0°および22.7°から選択される2θ角度での少なくとも5つのXRPDピークを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物1の固体形態I。
【請求項4】
4.6°、10.0°、16.7°、18.0°、19.0°、20.0°および22.7°から選択される2θ角度でのXRPDピークを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物1の固体形態I。
【請求項5】
131.5ppm、127.2ppm、28.7ppmおよび25.7ppmから選択されるケミカルシフトでの13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物1の固体形態I。
【請求項6】
-64.3、-64.8、-65.9、-66.8、-78.0、-78.5、-79.3および-80.0ppmから選択されるケミカルシフトでの19F固体核磁気共鳴ピークを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物1の固体形態I。
【請求項7】
以下の構造式:
【化2】
2
を有する化合物1の固体形態IIであって、
形態IIが、以下のd値:
4.1°、4.6°、10.0°、16.7°および18.0°(2-シータ)
における特徴的なX線反射、または
130.1ppm、46.6ppmおよび25.0ppm
から選択される特徴的な13C固体NMRケミカルシフト、または
-64.0、-65.6、-66.6、-78.2および-79.1ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも3つの特徴的な19F固体核磁気共鳴ピーク
を有する、化合物1の固体形態II。
【請求項8】
4.1°、4.6°、10.0°、16.7°および18.0°から選択される2θ角度での少なくとも4つのXRPDピークを特徴とする、請求項7に記載の化合物1の固体形態II。
【請求項9】
4.1°、4.6°、10.0°、16.7°および18.0°から選択される2θ角度でのXRPDピークを特徴とする、請求項7または8に記載の化合物1の固体形態II。
【請求項10】
-64.0、-65.6、-66.6、-78.2および-79.1ppmから選択されるケミカルシフトでの19F固体核磁気共鳴ピークを特徴とする、請求項7~9のいずれか1項に記載の化合物1の固体形態I。
【請求項11】
以下の構造式:
【化3】
1
を有する化合物1の固体形態IIIであって、
化合物1の形態IIIが:
4.8°、9.7°、10.3°、13.9°および24.6°から選択される2θ角度での少なくとも3つのXRPDピーク、または
156.6ppm、134.2ppm、46.0ppm、25.5ppmおよび14.3ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも3つの13C固体核磁気共鳴ピーク
を特徴とする、化合物1の固体形態III。
【請求項12】
4.8°、9.7°、10.3°、13.9°および24.6°から選択される2θ角度での少なくとも4つのXRPDピークを特徴とする、請求項11に記載の化合物1の固体形態III。
【請求項13】
4.8°、9.7°、10.3°、13.9°および24.6°から選択される2θ角度でのXRPDピークを特徴とする、請求項11または12に記載の化合物1の固体形態III。
【請求項14】
156.6ppm、134.2ppm、46.0ppm、25.5ppmおよび14.3ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも4つの13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする、請求項11~13のいずれか1項に記載の化合物1の固体形態III。
【請求項15】
156.6ppm、134.2ppm、46.0ppm、25.5ppmおよび14.3ppmから選択されるケミカルシフトでの13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする、請求項11~14のいずれか1項に化合物1の固体形態III。
【請求項16】
請求項1に記載の化合物1による固体形態Iを作製する方法であって、
(a)化合物1およびtert-ブチルメチルエーテル(TBME)または水を加熱して、スラリーを得るステップ、
(b)ステップ(a)のスラリーを冷却するステップ、および
(b)化合物1の形態Iとして得られた固体を収集するステップ
を含む、方法。
【請求項17】
化合物1のアモルファス形態が、ステップ(a)において使用される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項7に記載の化合物1の形態IIを作製する方法であって、
(a)化合物1および2-プロパノールの混合物を70°に加熱して、溶液を得るステップ、
(b)ステップ(a)の溶液をろ過するステップ、
(c)ステップ(b)からのろ液を55℃に冷却するステップ、
(d)ステップ(c)の冷却溶液を水で処理するステップ、
(e)ステップ(d)の水処理済み混合物を20℃に冷却するステップ、および
(f)化合物1の形態IIとして得られた固体を収集するステップ
を含む、方法。
【請求項19】
(d1)ステップ(d)の水処理溶液に種晶添加(seeding)するステップ、
(d2)種晶添加済み溶液を55℃で混合するステップ、および
(d3)20℃に冷却する前に、種晶添加済み溶液を水で処理するステップ
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
化合物1のアモルファス形態、または化合物1の形態Iおよび形態IIの混合物が、ステップ(a)において使用される、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
請求項11に記載の化合物1の固体形態IIIを作製する方法であって、
(a)化合物1およびメタノールの混合物を50~55℃に加熱して、溶液を得るステップ、
(b)ステップ(a)の溶液を40~45℃で濃縮するステップ、
(c)ステップ(b)からの濃縮溶液を25℃に冷却するステップ、および
(d)化合物1の形態IIIとして得られた固体を収集するステップ
を含む、方法。
【請求項22】
化合物1のアモルファス形態が、ステップ(a)において使用される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1から15のいずれか1項に記載の化合物の固体形態を、任意に1種または複数の不活性担体および/または希釈剤と一緒に含む、医薬組成物。
【請求項24】
神経学的障害または精神障害を処置および/または予防するための、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物1の固体形態、または請求項23に記載の医薬組成物を使用する方法。
【請求項25】
神経学的障害または精神障害が、統合失調症の陽性症状および陰性症状、統合失調症に関連する認知障害、およびアルツハイマー病から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
神経学的障害または精神障害の予防および/または処置における使用のための、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物の固体形態、または請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項27】
神経学的障害または精神障害が、統合失調症の陽性症状および陰性症状、統合失調症に関連する認知障害、およびアルツハイマー病から選択される、請求項26に記載の使用のための固体形態。
【請求項28】
神経学的障害もしくは精神障害の処置または予防のための医薬の製造における使用のための請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物の固体形態、または請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項29】
神経学的障害または精神障害が、統合失調症の陽性症状および陰性症状、統合失調症に関連する認知障害、およびアルツハイマー病から選択される、請求項28に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリシントランスポータ-1(GlyT1)の阻害剤の固体形態に関する。本発明はまた、これらの固体形態の作製方法、これらの固体形態を含む医薬組成物、およびグリシントランスポータ-1の阻害剤による処置に応答する医療状態のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
統合失調症は、妄想、幻覚、思考障害および精神病などの一過性陽性症状、ならびに感情の平坦化、注意力の低下、社会的脱離および認知障害などの持続性陰性症状を特徴とする進行性および破壊性神経医学的疾患である(Lewis DA and Lieberman JA, 2000, Neuron, 28: 325-33)。
【0003】
1960年の中頃に、グルタミン酸N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体の非競合的アンタゴニストである、フェンシクリジン(PCP)のような化合物および関連薬剤(例えば、ケタミン)によるグルタミン酸系の遮断によって引き起こされる精神異常作用に基づいて、統合失調症の仮説が提唱された。興味深いことに、健常な志願者では、PCP誘発性精神異常作用は、陽性症状および陰性症状、ならびに認知機能障害と相まって、こうして、患者における統合失調症に非常に似たものとなる(Javitt DC et al., 1999, Biol. Psychiatry, 45:668-679)。Jentsch and Roth, 1999, Neuropsychopharmacology 20:201-225)も参照。したがって、中枢神経系におけるNMDA受容体神経伝達の増大により、統合失調症、ならびにNMDA受容体および/またはグルタミン酸作動性機能障害に関連する他の神経学的疾患および精神医学的疾患に対する新規な処置手法を開発する機会がもたらされる。NMDA受容体は、2つのNR1と2つのNR2サブユニットとの組合せからなるリガンド依存性イオンチャネルであり、活性化されるには、NR2サブユニットにおけるグルタミン酸とNR1サブユニットにおける共アゴニストとしてのグリシンとの同時結合を必要とする(Johnson and Ascher, 1987, Nature 325:529-531)。NMDA受容体活性を増強する1つの戦略は、GlyT1の阻害によるシナプスNMDA受容体の局所微小環境において、グリシン濃度を向上させることである(Bergeron R. et al., 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:15730-15734)。実際に、シナプス間隙においてグリシンを増大させる、直接的なグリシン部位のアゴニストであるD-セリンおよびプロトタイプのGlyT1阻害剤であるサルコシンを用いる臨床検討により、統合失調症の陰性症状の処置に対してある程度の有効性があること、ならびに陽性症状および認知症状の処置に程度は低いが有効性があることが実証されている(Tsai et al., 2004, Biol. Psychiatry 44:1081-1089; Lane et al., 2005, Biol. Psychiatry 63:9-12)。最近、統合失調症患者において、上市されている抗精神病薬に対する補助処置として、第II相臨床試験で試験されたGlyT1阻害剤であるRG1678について、陰性症状に関して臨床的に有効であることが報告された(Umbricht et al., 2011, Schizophr. Bull. 37(Suppl.1):324)。
【0004】
統合失調症の陽性症状および陰性症状に対する様々な動物モデル/試験における、ならびにいくつかの記憶課題における有効性が、様々なGlyT1阻害剤に関する文献中で報告されている(Depoortere et al., 2005, Neuropsychopharmacology 30:1963-1985; Boulay et al., 2008, Pharmacol. Biochem. Behav. 91:47-58, Karasawa et al., 2008, Behav. Brain Res. 186:78-83; Shimazaki et al., 2010, Psychopharmacology 209:263-270; Kinney et al., 2003, J. Neurosci. 23:7586-7591)。
2つの個別のグリシントランスポータ遺伝子が、哺乳動物の脳からクローニングされ(GlyT1およびGlyT2)、これにより、50%のアミノ酸配列相同性を有する2つのトランスポータが生み出されている。GlyT1は、選択的スプライシングおよび選択的プロモータの使用から生じる4種のアイソフォーム(1a、1b、1cおよび1d)を表す。これらのアイソフォームのうちの2種だけが、げっ歯類の脳において見出されている(GlyTlaおよびGlyTlb)。GlyT2もまた、ある程度の異質性を表す。GlyT1は、CNSおよび一部の末梢組織に位置することが知られている一方、GlyT2は、主に後脳および脊髄における、CNSに特異的である(Zafra et al., 1995, J. Neurosci. 15:3952-3969)。GlyT1は、神経膠およびニューロンにおいて発現され、グルタミン酸作動性シナプスに位置することが見出されている(Cubelos et al., 2005, Cereb. Cortex 15:448-459)。
【0005】
グリシントランスポータ阻害剤は、神経学的障害および精神障害の処置に対して検討される。関連する疾患状態の大部分は、精神病、統合失調症(Armer RE and Miller DJ, 2001, Exp. Opin. Ther. Patents 11: 563-572)、重症な大うつ障害などの精神病性気分障害、急性躁病またはうつ病などの精神障害に関連する気分障害、双極性障害に関連する気分障害、および統合失調症に関連する気分障害(Pralong ET et. al., 2002, Prog. Neurobiol., 67:173-202)、自閉性障害(Carlsson ML, 1998, J. Neural Trans. 105:525-535)、年齢に関連する認知症およびアルツハイマー型の老人性認知症を含めた認知症などの認知障害、ヒトを含む哺乳動物における記憶障害、注意欠陥障害および疼痛(Armer RE and Miller DJ, 2001, Exp. Opin. Ther. Patents, 11:563-572)である。
【0006】
GlyT1阻害によるNMDA受容体の活性化の増大により、精神病、統合失調症(陽性症状、陰性症状および認知症状)、認知症、ならびに認知過程が損なわれている他の疾患(注意欠陥障害、アルツハイマー病または他の神経学的および精神障害など)が処置され得る。
【0007】
GlyT1の阻害は、特に、アルツハイマー病または統合失調症に関連する認知障害に関して関心が高い。
特に関心がもたれる阻害性化合物は、WO2013017657に記載されている実施例50であり、これは、以下に示されている構造を有する(本明細書のこれ以降「化合物1」):
【化1】
1
【0008】
WO2013017657は、その構造を記載しているが、化合物1のいかなる具体的な固体形態も記載していない。したがって、例えば、加工性、安定性および溶解度などの有利な医薬品特性を有する化合物1の固体形態が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、化合物1(本明細書において、まとめて「本発明の化合物」)の新規な固体形態に関する。
本発明はまた、本発明の化合物を作製する方法、およびGlyT1のモジュレータとしてのそれらの使用に関する。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、本発明の化合物を、任意に1種もしくは複数の不活性担体および/または希釈剤と一緒に含む、医薬組成物に関する。
本発明のさらなる態様は、神経学的障害または精神障害の予防および/または処置における使用のための、本発明の化合物、または本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。
本発明のさらに別の態様は、統合失調症の陽性症状および陰性症状に関する状態、ならびに統合失調症、アルツハイマー病および他の神経学的障害および精神障害に関連する認知障害などの、GlyT1の阻害により影響を受け得る、疾患または状態の予防および/または処置における使用のための、本発明の化合物、または前記化合物を含む医薬組成物に関する。その使用は、対応する疾患を処置するための医薬の製造を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】WO2013017657の手順に準拠して調製された化合物1(アモルファス形態)のXRPDパターンを示す図である。
図2】化合物1の形態IのX線粉末回折(XRPD)パターンを示す図である。
図3】DSC測定によって決定された化合物1の形態Iの熱分析プロファイルを示す図である。
図4a】化合物1の形態Iの13C固体NMRスペクトルである。
図4b】化合物1の形態Iの19F固体NMRスペクトルである。
図5】化合物1の形態IIのXRPDパターンを示す図である。
図6】DSC測定によって決定された化合物1の形態IIの熱分析プロファイルを示す図である。
図7a】化合物1の形態IIの13C固体NMRスペクトルである。
図7b】化合物1の形態IIの19F固体NMRスペクトルである。
図8】化合物1の形態IIIのXRPDパターンを示す図である。
図9】DSC測定によって決定された化合物1の形態IIIの熱分析プロファイルを示す図である。
図10】化合物1の形態IIIの13C固体NMRスペクトルである。
図11】様々な相対湿度にて25℃で保管した場合の化合物1の形態IIおよびアモルファス化合物1の水取込みを示す、水収着等温線を示すグラフである。
図12a図12aは、化合物1の形態Iのラマンスペクトルであり、図12bは、化合物1の形態IIのラマンスペクトルであり、図12cは、化合物1の形態IIIのラマンスペクトルである。
図12b図12aは、化合物1の形態Iのラマンスペクトルであり、図12bは、化合物1の形態IIのラマンスペクトルであり、図12cは、化合物1の形態IIIのラマンスペクトルである。
図12c図12aは、化合物1の形態Iのラマンスペクトルであり、図12bは、化合物1の形態IIのラマンスペクトルであり、図12cは、化合物1の形態IIIのラマンスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
略称
【表1】

上で議論されるように、本発明は、形態I、形態IIまたは形態IIIとして本明細書に記載されている化合物1の結晶形態、および形態I、形態IIまたは形態IIIのうちの少なくとも2つの混合物(「本発明の結晶性化合物」)に関する。WO2013017657は、化合物のいかなる結晶形態も、化合物1の結晶形態のいかなる調製法も、または本明細書に記載されている化合物1の結晶形態の特性のいずれも言及していない。本発明の化合物は、本明細書の実施例1およびWO2013017657に記載されている、化合物1のアモルファス形態と比べ、有利な特性(例えば、安定性および再現性の改善)を有する。アモルファス形態に勝る改善は、例えば、一層低い吸湿性および異なる固体形態に転化する傾向の低下を含む。例えば、25℃でのアモルファス化合物1の水取込み量は、湿潤窒素パージ下で6時間、90%相対湿度で維持すると、1.4%である。対照的に、25℃での化合物1の形態II(本発明の例示化合物)の水取込み量は、湿潤窒素パージ下で6時間、90%相対湿度(relative)で維持すると、約0.04%しかない(図11を参照)。
【0013】
一実施形態では、本発明は、化合物1の固体形態Iに関する。
一実施形態では、本発明は、化合物1の固体形態IIに関する。
一実施形態では、本発明は、化合物1の固体形態IIIに関する。
形態I、形態IIおよび形態IIIはそれぞれ、他の2つの多形を実質的に含まない形態で調製され得る。例えば、一実施形態では、形態Iは、形態IIおよび形態IIIを実質的に含み得ない。別の実施形態では、形態IIは、形態Iおよび形態IIIを実質的に含み得ない。別の実施形態では、形態IIIは、形態Iおよび形態IIを実質的に含み得ない。本明細書で使用する場合、「実質的に含まない」は、その固体化合物が、形態I、形態IIおよび形態IIIの全モル量に対して、少なくとも約75%の化合物1の1つの結晶形態(例えば、形態II)を含有することを意味する。化合物1の形態I、形態IIまたは形態IIIのモル比は、例えば、本明細書に記載されている方法を使用して決定することができる。
【0014】
一実施形態では、本発明の結晶性化合物は、化合物1の形態I、形態IIおよび形態IIIの全モル量に対して、少なくとも75%の化合物1の形態Iを含む。別の実施形態では、本発明の結晶性化合物は、化合物1の形態I、形態IIおよび形態IIIの全モル量に対して、少なくとも80%の化合物1の形態Iを含む。別の実施形態では、本発明の結晶性化合物は、化合物1の形態I、形態IIおよび形態IIIの全モル量に対して、少なくとも90%の化合物1の形態Iを含む。別の実施形態では、本発明の結晶性化合物は、化合物1の形態I、形態IIおよび形態IIIの全モル量に対して、少なくとも95%の化合物1の形態Iを含む。
【0015】
別の実施形態では、本発明の結晶性化合物は、化合物1の形態I、形態IIおよび形態IIIの全モル量に対して、少なくとも75%の化合物1の形態IIを含む。別の実施形態では、本発明の結晶性化合物は、化合物1の形態I、形態IIおよび形態IIIの全モル量に対して、少なくとも80%の化合物1の形態IIを含む。別の実施形態では、本発明の結晶性化合物は、化合物1の形態I、形態IIおよび形態IIIの全モル量に対して、少なくとも90%の化合物1の形態IIを含む。別の実施形態では、本発明の結晶性化合物は、化合物1の形態I、形態IIおよび形態IIIの全モル量に対して、少なくとも95%の化合物1の形態IIを含む。
【0016】
別の実施形態では、本発明の結晶性化合物は、化合物1の形態I、形態IIおよび形態IIIの全モル量に対して、少なくとも75%の化合物1の形態IIIを含む。別の実施形態では、本発明の結晶性化合物は、化合物1の形態I、形態IIおよび形態IIIの全モル量に対して、少なくとも80%の化合物1の形態IIIを含む。別の実施形態では、本発明の結晶性化合物は、化合物1の形態I、形態IIおよび形態IIIの全モル量に対して、少なくとも90%の化合物1の形態IIIを含む。別の実施形態では、本発明の結晶性化合物は、化合物1の形態I、形態IIおよび形態IIIの全モル量に対して、少なくとも95%の化合物1の形態IIIを含む。
本発明はまた、形態I、形態IIまたは形態IIIのうちの少なくとも2つを含む化合物1に関する。一実施形態では、本発明は、形態Iおよび形態IIの混合物を含む化合物1に関する。別の実施形態では、本発明は、形態Iおよび形態IIIの混合物を含む化合物1に関する。別の実施形態では、本発明は、形態IIおよび形態IIIの混合物を含む化合物1に関する。別の実施形態では、本発明は、形態I、形態IIおよび形態IIIの混合物を含む化合物1に関する。
本発明はまた、化合物1のアモルファス形態と、形態I、形態IIまたは形態IIIとして本明細書に記載されている化合物1の1つまたは複数の結晶形態との組合せ物に関する。
【0017】
特徴付け:
本発明の化合物は、以下に記載されている方法によって特徴付けることができる。形態I、形態IIまたは形態IIIの各々を調製する方法は、実験項目に記載されている。
【0018】
X線粉末回折(XRPD):
形態I、形態IIおよび形態IIIの試料に関するX線粉末回折分析は、グラファイトモノクロメータおよびシンチレーション検出器を備える、パラ集束モードでのCuKα照射(1.54A)を使用する、Bruker AXS X-Ray粉末回折計モデルD8 Advanceで行う。パターンはそれぞれ、2度の範囲にわたり、走査することによって得られる(35度2T、0.05度2Tのステップサイズ、ステップあたり4秒のステップ時間)。形態I、形態IIおよび形態IIIの例示的なXRPDスペクトルは、それぞれ、図2、5および8に見出される。化合物1のアモルファス形態の例示的なXRPDスペクトルが、図1に示されている。表1、3および5は、それぞれ、形態I、IIおよびIIIのX線粉末回折(XRPD)特徴を含む。表1、3および5における報告値は、±0.2 2θの標準偏差を有する。
示差走査熱量測定(DSC)
DSC分析は、一般手順を使用して、示差走査熱量測定器(Q2000、TA instruments、New Castle、DE)で行う。ピンホールを有する波型アルミニウム製パンに約5mgの粉末を秤量した。この試料をQ2000 DSCを使用して、室温から250℃まで10℃/分で加熱する。形態I、形態IIおよび形態IIIの例示的なDSCトレースが、それぞれ、図3、6および9に見出される。結果を以下に報告する。
【0019】
水収着
水収着等温線は、動的水蒸気吸着システム(Advantage、DVS、London、英国)を使用して決定する。25℃にて、試料を10%の刻み幅で段階的に0~90%RHにさらす。少なくとも60分間、各試料を各RH段階で平衡にし、1分以内の質量増加が0.1%未満である場合に平衡とみなし、各RHに対する最大期間を6時間とする。したがって、各試料は、平衡にどれだけ迅速に到達するかに応じて、1~6時間、所与のRHで保持される。
【0020】
固体NMR(SSNMR)
形態I、形態IIおよび形態IIIの試料に関する13C固体NMR(SSNMR)データは、9.4Tにて、Bruker Avance III NMR分光計(Bruker Biospin,Inc.、Billerica、MA)で取得する(1H=400.46MHz、13C=100.70MHz)。試料は、Kel-F(登録商標)ドライブチップを備える外径4mmのジルコニア製ローターに包む。Brukerモデル4BL CP BB WVTプローブをデータ取得に使用し、試料は、マジック角(54.74度)の周りを回転させる。試料スペクトルの取得は、12kHzの回転速度を使用する。標準交差分極パルスシーケンスは、周囲温度および周囲圧における、プロトンチャネル上で傾斜を設けたハートマンハーンマッチパルスにより使用する。パルススシーケンスは、3ミリ秒の接触パルスおよび5秒の待ち時間(recycle delay)を使用する。2パルス位相変調(tppm)デカップリングも、パルスシーケンスに使用する。自由誘導減衰のフーリエ変換の前に、指数関数的な線のブロード化を使用しない。ケミカルシフトは、アダマンタンの二次標準品を使用して基準にし、その高磁場共鳴を29.5ppmに設定する。マジック角は、5kHzの回転速度にて、KBr粉末からの79Brシグナルを使用して設定する。形態I、形態IIおよび形態IIIの例示的な13C SSNMRスペクトルは、それぞれ、図4、7および10に見出される。表2a、4aおよび6は、それぞれ、形態I、IIおよびIIIに対して取得した13C SSNMRスペクトルから得たケミカルシフトを含む。表2a、4aおよび6における報告値は、±0.2ppmの標準偏差を有する。
【0021】
形態I、形態IIおよび形態IIの試料に関する19F固体NMR(SSNMR)データは、9.4Tにて、Bruker Avance III NMR分光計(Bruker Biospin,Inc.、Billerica、MA)で取得する(1H=400.46MHz、19F=376.76MHz)。試料は、Kel-F(登録商標)ドライブチップを備える外径3.2mmのジルコニア製ローターに包む。Brukerモデル 3.2BL BBプローブをデータ取得に使用し、試料は、マジック角(54.74度)の周りを回転させる。試料スペクトルは、22kHzの回転速度で取得する。標準スピンエコーパルスシーケンスは、12秒の待ち時間で使用する。SPINAL-64 1Hデカップリングも使用する。自由誘導減衰のフーリエ変換の前に、指数関数的な線のブロード化を使用しない。ケミカルシフトは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)に由来する最高強度のシグナルを使用して基準にし、その共鳴を-91ppmに設定する。マジック角は、5kHzの回転速度にて、KBr粉末からの79Brシグナルを使用して設定する。形態Iおよび形態IIの例示的な19F SSNMRスペクトルは、それぞれ、図4bおよび7bに見出される。表2bおよび4bは、それぞれ、形態IおよびIIに対して取得した19F SSNMRスペクトルから得たケミカルシフトを含む。表2aおよび4bにおける報告値は、±0.2ppmの標準偏差を有する。
【0022】
ラマンスペクトル
形態I、形態IIおよび形態IIIの試料に関するラマンスペクトルは、Nicolet6700 FT-RamanモジュールAEU0900515分光計で取得する。形態IIは、901 1/cmでのラマン散乱ピークを示しており、これは、形態IおよびIIIでは観察されない。このピークの相対強度は、化合物1の結晶形態で存在する形態IIの相対量を推定するために使用することができる。
【0023】
形態Iの特徴
化合物1の形態IのX線粉末回折(XRPD)パターンが図2に示されている。DSC測定によって決定した化合物1の形態Iの熱分析プロファイルが、図3に示されている。化合物1の形態Iの13C固体NMRスペクトルが、図4aに示されている。化合物1の形態Iの19F固体NMRスペクトルが、図4bに示されている。
【0024】
特徴的なXRPDピーク:形態Iに関する13C固体核磁気共鳴ピークおよび19F固体核磁気共鳴ピークが、それぞれ、表1、表2aおよび表2bに提示されている。
【表2】
【表3】
【表4】
【0025】
本発明の一実施形態では、化合物1の形態Iは、図2のXRPDパターンを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態Iは、表1に示されているXRPD特徴を有する。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態Iは、4.6°、10.0°、16.7°および18.0°から選択される2θ角度での少なくとも3つのXRPDピークを特徴とする。
【0026】
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態Iは、4.6°、10.0°、16.7°、19.0°、20.0°および22.7°から選択される2θ角度でのXRPDピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態Iは、4.6°、9.2°、10.0°、12.2°、16.7°、17.2°、18.5°、19.0°、20.0°、および22.7°から選択される2θ角度でのXRPDピークを特徴とする。本発明のさらに別の実施形態では、化合物1の形態Iは、表2aに示されている、13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。本発明のさらに別の実施形態では、化合物1の形態Iは、表2bに示されている、19F固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
【0027】
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態Iは、131.5ppm、127.2ppm、28.7ppmおよび25.7ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも3つの13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
【0028】
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態Iは、131.5ppm、127.2ppm、28.7ppmおよび25.7ppmから選択されるケミカルシフトでの13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
【0029】
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態Iは、167.2ppm、159.4ppm、156.9ppm、131.5ppm、115.4ppm、127.2ppm、46.8ppm、45.7ppm、28.7ppm、25.7ppmおよび13.7ppmから選択されるケミカルシフトでの13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態Iは、表2bに示されている19F固体核磁気共鳴特徴を有する。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態Iは、-64.3、-64.8、-65.9、-66.8、-78.0、-78.5、-79.3および-80.0ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも3つの19F固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
【0030】
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態Iは、-64.3、-64.8、-65.9、-66.8、-78.0、-78.5、-79.3および-80.0ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも5つの19F固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態Iは、-64.3、-64.8、-65.9、-66.8、-78.0、-78.5、-79.3および-80.0ppmから選択されるケミカルシフトでの19F固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態Iは、表1に示されているXRPD特徴、または表2aに示されている13C固体核磁気共鳴ピーク、または表2bに示されている19F固体核磁気共鳴ピークを有する。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態Iは、4.6°、10.0°、16.7°および18.0°から選択される2θ角度での少なくとも3つのXRPDピーク;131.5ppm、127.2ppm、28.7ppmおよび25.7ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも3つの13C固体核磁気共鳴ピーク;または-64.3、-64.8、-65.9、-66.8、-78.0、-78.5、-79.3および-80.0ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも3つの19F固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態Iは、4.6°、10.0°、16.7°および18.0°から選択される2θ角度でのXRPDピーク;131.5ppm、127.2ppm、28.7ppmおよび25.7ppmから選択されるケミカルシフトでの13C固体核磁気共鳴ピーク;または-64.3、-64.8、-65.9、-66.8、-78.0、-78.5、-79.3および-80.0ppmから選択されるケミカルシフトでの19F固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
【0031】
形態IIの特徴
化合物1の形態IIのX線粉末回折(XRPD)パターンが図5に示されている。DSC測定によって決定した化合物1の形態IIの熱分析プロファイルが、図6に示されている。化合物1の形態IIの13C固体NMRスペクトルが、図7aに示されている。化合物1の形態IIの19F固体NMRスペクトルが、図7bに示されている。
【0032】
特徴的なXRPDピーク:形態IIに関する13C固体核磁気共鳴ピークおよび19F固体核磁気共鳴ピークが、それぞれ、表3、表4aおよび表4bに提示されている。
【表5】
【表6】
【表7】
【0033】
本発明の一実施形態では、化合物1の形態IIは、図5のXRPDパターンを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIは、表3に示されているXRPD特徴を有する。
【0034】
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIは、4.1°、4.6°、10.0°、16.7°および18.0°から選択される2θ角度での少なくとも3つのXRPDピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIは、4.1°、4.6°、10.0°、16.7°および18.0°から選択される2θ角度での少なくとも4つのXRPDピークを特徴とする。
【0035】
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIは、4.1°、4.6°、10.0°、16.7°および18.0°から選択される2θ角度でのXRPDピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIは、4.1°、4.6°、10.0°、15.8°、18.0°、18.5°、19.1°、20.0°、20.9°、22.7°および23.3°から選択される2θ角度でのXRPDピークを特徴とする。
本発明のさらに別の実施形態では、化合物1の形態IIは、表4aに示されている13固体核磁気共鳴特徴を有する。
【0036】
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIは、130.1ppm、46.6ppmおよび25.0ppmから選択されるケミカルシフトでの13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIは、167.3ppm、157.1ppm、130.1ppm、115.6ppm、72.2ppm、47.9ppm、46.6ppm、45.9ppm、25.0ppmおよび12.9ppmから選択されるケミカルシフトでの13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIは、表4bに示されている19F固体核磁気共鳴特徴を有する。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIは、-64.0、-65.6、-66.6、-78.2および-79.1ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも3つの19F固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
【0037】
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIは、-64.0、-65.6、-66.6、-78.2および-79.1ppmから選択されるケミカルシフトでの19F固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIは、表3に示されているXRPD特徴、または表4aに示されている13C固体核磁気共鳴ピーク、または表4bに示されている19F固体核磁気共鳴ピークを有する。
【0038】
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIは、4.1°、4.6°、10.0°、16.7°および18.0°から選択される2θ角度での少なくとも3つのXRPDピーク;130.1ppm、46.6ppmおよび25.0ppmから選択されるケミカルシフトでの13C固体核磁気共鳴ピーク;または-64.0、-65.6、-66.6、-78.2および-79.1ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも3つの19F固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIは、4.1°、4.6°、10.0°、16.7°および18.0°から選択される2θ角度での少なくとも4つのXRPDピーク;130.1ppm、46.6ppmおよび25.0ppmから選択されるケミカルシフトでの13C固体核磁気共鳴ピーク;または-64.0、-65.6、-66.6、-78.2および-79.1ppmから選択されるケミカルシフトでの19F固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIは、4.1°、4.6°、10.0°、16.7°および18.0°から選択される2θ角度でのXRPDピーク;130.1ppm、46.6ppmおよび25.0ppmから選択されるケミカルシフトでの13C固体核磁気共鳴ピーク;または-64.0、-65.6、-66.6、-78.2および-79.1ppmから選択されるケミカルシフトでの19F固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
【0039】
形態IIIの特徴
化合物1の形態IIIのX線粉末回折(XRPD)パターンが図8に示されている。DSC測定によって決定した化合物1の形態IIIの熱分析プロファイルが、図9に示されている。化合物1の形態IIIの13C固体NMRスペクトルが、図10に示されている。
【0040】
形態IIIに関する特徴的なXRPDピークおよび13C固体核磁気共鳴ピークが、それぞれ、表5および表6に提示されている。
【表8】

【表9】
本発明の一実施形態では、化合物1の形態IIIは、図8のXRPDパターンを特徴とする。
【0041】
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIIは、表5に示されているXRPD特徴を有する。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIIは、4.8°、9.7°、10.3°、13.9°および24.6°から選択される2θ角度での少なくとも3つのXRPDピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIIは、4.8°、9.7°、10.3°、13.9°および24.6°から選択される2θ角度での少なくとも4つのXRPDピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIIは、4.8°、9.7°、10.3°、13.9°および24.6°から選択される2θ角度でのXRPDピークを特徴とする。
【0042】
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIIは、4.8°、8.1°、9.7°、10.3°、13.9°、19.3°、19.6°、23.3°および24.6°から選択される2θ角度でのXRPDピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIIは、表6に示されている13C固体核磁気共鳴特徴を有する。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIIは、156.6ppm、134.2ppm、46.0ppm、25.5ppmおよび14.3ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも2つの13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIIは、156.6ppm、134.2ppm、46.0ppm、25.5ppmおよび14.3ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも2つの13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
【0043】
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIIは、156.6および132.5ppmから選択される少なくともケミカルシフトでの少なくとも2つの13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIIは、156.6ppm、134.2ppm、46.0ppm、25.5ppmおよび14.3ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも3つの13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIIは、156.6ppm、134.2ppm、46.0ppm、25.5ppmおよび14.3ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも4つの13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
【0044】
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIIは、156.6ppm、134.2ppm、46.0ppm、25.5ppmおよび14.3ppmから選択されるケミカルシフトでの13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
【0045】
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIIは、156.6ppm、156.0ppm、134.2ppm、132.5ppm、47.6ppm、46.0ppm、44.6ppm、25.5ppm、14.3ppmおよび13.0ppmから選択されるケミカルシフトでの13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIIは、4.8°、9.7°、10.3°、13.9°および24.6°から選択される2θ角度での少なくとも3つのXRPDピーク;または156.6ppm、134.2ppm、46.0ppm、25.5ppmおよび14.3ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも3つの13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIIは、4.8°、9.7°、10.3°、13.9°および24.6°から選択される2θ角度での少なくとも4つのXRPDピーク;または156.6ppm、134.2ppm、46.0ppm、25.5ppmおよび14.3ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも4つの13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
【0046】
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIIは、4.8°、9.7°、10.3°、13.9°および24.6°から選択される2θ角度でのXRPDピーク;または156.6ppm、134.2ppm、46.0ppm、25.5ppmおよび14.3ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも4つの13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIIは、4.8°、9.7°、10.3°、13.9°および24.6°から選択される2θ角度でのXRPDピーク;または156.6ppm、134.2ppm、46.0ppm、25.5ppmおよび14.3ppmから選択されるケミカルシフトでの13C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする。
本発明の別の実施形態では、化合物1の形態IIIは、表5に示されているXRPD特徴、または表6に示されている13C固体核磁気共鳴ピークを有する。
【0047】
形態I、形態II、形態IIIおよびそれらの混合物の調製方法
本発明はまた、化合物1の固体形態を作製する方法に関する。一般に、形態I、形態II、形態IIIおよびそれらの混合物は、好ましくは室温より高い温度、例えば、25℃、より好ましくは約45℃~約80℃にて、好適な溶媒中、化合物1を溶解することによって得ることができる(「溶解ステップ」)。次に、加熱した溶液を冷却し(「冷却ステップ」)、固体として、形態I、形態II、形態IIIまたはそれらの混合物を含む固体/液体を得ることができる。一部の実施形態では、冷却前に加熱溶液をろ過することができる。他の実施形態では、加熱溶液が冷却ステップ前またはその最中に濃縮されてもよい(「濃縮ステップ」)。さらに他の実施形態では、加熱溶液は、共溶媒により処理されてもよい(「共溶媒処理ステップ」)。一部の実施形態では、共溶媒(使用される場合)は、冷却ステップの最中に添加され得る。さらに他の実施形態では、冷却ステップは、段階的な傾斜冷却を含む。さらに他の実施形態では、種結晶または種スラリーを冷却ステップの最中に加える(「種晶添加(seeding)ステップ」)。上記のいずれかの組合せを使用して、形態I、形態II、形態IIIおよびそれらの混合物を得ることができることが理解される。一旦冷却すると、得られた固体を収集して、好適な溶媒により洗浄し、乾燥すると、形態I、形態II、形態IIIまたはそれらの混合物を得ることができる。
【0048】
形態Iおよび形態IIの混合物を作製する方法
一実施形態では、本発明は、化合物1の形態Iおよび形態IIの混合物を作製する方法であって、
(a)化合物1の混合物を2-プロパノール中で70℃に加熱して、溶液を得るステップ、
(b)温度を50℃~70℃に維持しながら、ステップ(a)において得られた溶液を水で処理するステップ、
(c)ステップ(b)の水性混合物を20℃に冷却するステップ、および
(d)化合物1の形態Iおよび形態IIの混合物として、得られた固体を収集するステップ
を含む、方法に関する。
一実施形態では、化合物1のアモルファス形態が、ステップ(a)において使用される。
【0049】
形態Iを作製する方法
別の実施形態では、本発明は、化合物1の固体形態Iを作製する方法であって、
(a)化合物1およびtert-ブチルメチルエーテル(TBME)または水を50℃で加熱して、スラリーを得るステップ、
(b)ステップ(a)のスラリーを冷却するステップ、および
(c)化合物1の形態Iとして得られた固体を収集するステップ
を含む、方法に関する。
一実施形態では、化合物1のアモルファス形態は、直前の実施形態におけるステップ(a)において使用される。
【0050】
別の実施形態では、本発明は、スラリーを冷却するステップの前に、ステップ(b)のスラリーを濃縮するステップをさらに含む、直前に記載されている2つの実施形態の一方に関する。
別の実施形態では、本発明は、化合物1の形態Iを作製する方法であって、
(a)化合物1および2-プロパノールを50~55°に加熱して、溶液を得るステップ、
(b)ステップ(a)の溶液を25℃に冷却するステップ、
(c)ステップ(b)の冷却溶液を水で処理するステップ、および
(d)化合物1の形態Iとして得られた固体を収集するステップ
を含む、方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、直前に記載されている実施形態であって、化合物1のアモルファス形態、または化合物1の形態Iおよび形態IIの混合物が、ステップ(a)において使用される、実施形態に関する。
【0051】
形態IIを作製する方法
別の実施形態では、本発明は、化合物1の形態IIを作製する方法であって、
(a)化合物1および2-プロパノールの混合物を70°に加熱して、溶液を得るステップ、
(b)ステップ(a)の溶液をろ過するステップ、
(c)ステップ(b)からのろ液を55℃に冷却するステップ、
(d)ステップ(c)の冷却溶液を水で処理するステップ、
(e)ステップ(d)の水処理済み混合物を20℃に冷却するステップ、および
(f)化合物1の形態IIとして得られた固体を収集するステップ
を含む、方法に関する。
【0052】
別の実施形態では、本発明は、ステップ(d)の水処理済み溶液に種晶を添加するステップ、種晶添加済み溶液を55℃でさらに混合するステップ、および種晶添加済みを水で処理した後に20℃に冷却するステップをさらに含む、直前の実施形態に記載されている方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、直前に記載されている2つの実施形態の一方であって、化合物1のアモルファス形態、または化合物1の形態Iおよび形態IIの混合物がステップ(a)において使用される、2つの実施形態の一方に関する。
【0053】
別の実施形態では、本発明は、化合物1の形態IIを作製する方法であって、
(a)化合物1(形態Iおよび形態IIの混合物)、2-プロパノールおよび水からなる混合物を55~60℃に加熱して、溶液を得るステップ、
(b)ステップ(a)の溶液をろ過するステップ、
(c)ステップ(b)のろ液を68~70℃に加熱するステップ、
(d)温度を68℃~70℃に維持しながら、ステップ(c)に由来するろ液を水で処理するステップ、
(e)ステップ(d)に由来する水処理済みろ液を62~66℃に冷却するステップ、
(f)ステップ(d)の水処理済み溶液に、化合物1の形態II、水およびイソプロパノールを含む種晶スラリーを用いて種晶添加し、種晶添加済み混合物を得るステップ、
(g)ステップ(f)の種晶添加済み混合物を55℃に冷却するステップ、
(h)ステップ(e)の種晶添加済み溶液を55℃で混合するステップ、
(i)ステップ(h)の種晶添加済み溶液を水で処理して混合物を得るステップ、
(j)ステップ(i)の混合物を55℃で混合するステップ、
(k)ステップ(j)の冷却混合物を20℃に冷却するステップ、および
(l)化合物1の形態IIとして得られた固体を収集するステップ
を含む、方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、直前に記載されている実施形態であって、化合物1のアモルファス形態、または化合物1の形態Iおよび形態IIの混合物が、ステップ(a)において使用される、実施形態に関する。
【0054】
形態IIIを作製する方法
別の実施形態では、本発明は、化合物1の形態IIIを作製する方法であって、
(a)化合物1(形態II)およびメタノールの混合物を50~55℃に加熱して、溶液を得るステップ、
(b)ステップ(a)の溶液を40~45℃で濃縮するステップ、
(c)ステップ(b)からの濃縮溶液を25℃に冷却するステップ、および
(d)化合物1の形態IIIとして得られた固体を収集するステップ
を含む、方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、直前に記載されている実施形態であって、化合物1の形態Iがステップ(a)において使用される、実施形態に関する。
【0055】
処置の方法
本発明の化合物は、グリシントランスポータ1(GlyT1)の選択的阻害剤である。本明細書において議論されている医療概念は、本発明の活性化合物に関する応用の分野として非常に関心が高いと考えられる。本発明の活性化合物は、医薬の開発に使用することができる。このような医薬は、GlyT1の阻害が、治療作用、予防作用または疾患修飾作用をもたらすことができる、疾患の処置に好ましくは使用される。好ましくは、本医薬は、精神病、記憶および学習の機能障害、統合失調症(統合失調症および統合失調症に関連する認知障害の陽性症状ならびに陰性症状)、アルツハイマーのような認知症、ならびに注意欠陥障害、パーキンソン病、てんかんおよび/または双極性障害などの、認知過程が損傷している他の疾患などの疾病を処置するために使用することができる。
【0056】
本医薬は、特に、
軽度認知障害、健忘性軽度認知障害、年齢関連性学習および記憶障害、年齢関連性記憶喪失、血管性認知症、頭蓋脳外傷、脳卒中、脳卒中後に起こる認知症(脳卒中後認知症)、心的外傷後認知症、一般的な集中力障害、子供における学習問題および記憶問題を伴う集中力障害、アルツハイマー病、軽度アルツハイマー病、軽度から中度のアルツハイマー病、中度から重度のアルツハイマー病、前駆期アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭葉の変性を伴う認知症(ピック症候群を含む)、パーキンソン病、進行性核麻痺、大脳皮質基底核変性を有する認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、多発性硬化症、視床変性、クロイツフェルト-ヤコブ認知症、HIV認知症、でんかん、側頭葉てんかん、コルサコフの精神病または統合失調症に関連する認知障害、統合失調症の前駆期、大うつ障害、うつ病、パーキンソン病、てんかん、統合失調感情障害または双極性障害
などの、状態、疾患および/または症候群において起こるもののような、知覚、集中力、認知、学習または記憶を改善するための方法、好ましくは治療法における使用のためのものである。
【0057】
本発明の別の態様は、GlyT1阻害によって利用可能な疾患、特に、不眠症またはナルコレプシーのような睡眠障害、双極性障害、うつ病、物質使用障害/乱用障害、聴覚障害、注意欠陥(過活動)障害、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、自閉スペクトラム障害または衝動制御の障害の処置に関する。
本発明の化合物は、医薬中でまたは医薬として使用することができる。
このような医薬は、好ましくは、CNS疾患の処置における治療法または予防法、好ましくは治療法のためのものである。
代替使用では、本医薬は、CNS疾患を処置するためのものであり、その処置は、GlyT1の阻害によって利用可能である。
代替使用では、本医薬は、GlyT1の阻害によって利用可能な疾患を処置するためのものである。
代替使用では、本医薬は、アルツハイマー病、統合失調症(陽性症状および陰性症状)、またはアルツハイマー病に関連するもしくは統合失調症に関連する認知障害の処置のための方法における使用のためのものである。
本発明のさらなる態様では、本発明は、状態および疾患の上で列挙した群から選択される、状態もしくは疾患の処置または予防の方法であって、それを必要とするヒトにおける、本発明による治療有効量の化合物の投与を含む、方法に関する。
【0058】
本発明の化合物の1日あたりの適用可能な用量範囲は、通常、0.1~5000mg、好ましくは0.1~1000mg、好ましくは2~500mg、より好ましくは5~250mg、最も好ましくは10~100mgである。投与量単位(例えば、錠剤)は、好ましくは2~250mgの間、特に好ましくは10~100mgの間の本発明による活性化合物を含有することができる。
本発明の別の態様は、治療法における使用のため、または医薬としての使用のための本発明の化合物に関する。治療法または医薬は、示されている場合、好ましくは、「処置の方法」と題するこの項目において、上で概説されている状態もしくは疾患の群から選択される状態または疾患の処置のためのものである。
本発明の別の態様は、「処置の方法」と題するこの項目において、上で概説されている状態または疾患の群から選択される状態または疾患の処置のため医薬の製造における使用のための本発明の化合物に関する。
【0059】
医薬組成物
本発明の化合物を投与するための好適な調製は、当業者に明白であり、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、坐剤、ロゼンジ剤、トローチ剤、液剤、シロップ剤、エリキシル剤、サシェ剤、注射剤、吸入剤および散剤などを含む。薬学的活性化合物の含有量は、全体として、組成物の0.05~90質量%、好ましくは0.1~50質量%の範囲にあるべきである。
【0060】
好適な錠剤は、例えば、活性物質と、公知の賦形剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ラクトース/ラクトース一水和物またはマイクロクリスタリンセルロースなどの不活性希釈剤;トウモロコシデンプン、アルギン酸またはクロスカルメロースナトリウムなどの崩壊剤;デンプンまたはゼラチンなどの結合剤;ステアリン酸マグネシウムまたはタルクなどの滑沢剤;および/またはカルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースもしくはポリ酢酸ビニルなどの遅延放出を行うための作用剤とを混合することによって得ることができる。錠剤はまた、いくつかの層を含んでもよい。
【0061】
用語「活性物質」は、形態I、形態IIまたは形態IIIの化合物のうちの1つまたは複数を表す。1つまたは複数の他の活性物質との前述の組合せ物のうちの1つである場合、用語「活性物質」とは、追加的な活性物質も含んでもよい。標準手順は、本明細書において言及されている任意の医薬製剤の調製を考慮すべきである。
したがって、コーティング錠剤は、錠剤と同様に生成したコアを、錠剤コーティングに通常、使用される物質、例えば、コリドン(collidone)またはシェラック、アラビアガム、タルク、二酸化チタンまたは糖でコーティングすることによって調製することができる。遅延放出の実現または不適合性の防止のため、コアはまた、いくつかの層からなってもよい。同様に、錠剤コーティングは、可能性として、錠剤のための上記の賦形剤を使用して、遅延放出を実現するための、ある数または層からなることができる。
経口投与の場合、錠剤は、上述の担体の他に、デンプン、好ましくはバレイショデンプン、ゼラチンなどの様々な添加物と一緒に、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウムおよびリン酸二カルシウムなどの添加物を当然ながら含有してもよい。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクなどの滑沢剤が、錠剤化過程に同時に使用されてもよい。水性懸濁液の場合、活性物質は、上記の賦形剤に加え、様々な風味増強剤または着色剤と組み合わせてもよい。
活性成分/物質または活性部分は、単一担体賦形剤と混合された、またはいくつかの構成成分から構成された複雑な担体と混合された、液剤または懸濁剤のどちらか一方として、親油性担体系または親水性担体系のどちらかの液体状態で、都合よく投与され得る。軟質(ゼラチン)カプセルまたは硬質(ゼラチン)カプセルのどちらか一方のカプセルへのこのような液体製剤の封入は、このような薬学的に活性な物質を投与する非常に便利な方法を提供する可能性が高い。
【0062】
本発明による活性物質を含有するシロップ剤またはエリキシル剤は、サッカリン、シクラメート、グリセロールまたは糖などの甘味剤、および風味増強剤、例えば、バニリンまたはオレンジエキスなどの着香剤をさらに含有してもよい。それらはまた、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの懸濁アジュバントまたは増粘剤、例えば脂肪アルコールとエチレンオキシドの縮合生成物などの湿潤剤、またはp-ヒドロキシベンゾエート(p-hydroxybenzoate)などの保存剤を含有してもよい。
本発明の活性物質を含有するカプセル剤は、例えば、活性物質とラクトースまたはソルビトールなどの不活性担体とを混合し、それらをゼラチンカプセルに詰めることによって調製することができる。
【0063】
使用することができる賦形剤は、例えば、水、薬学的に許容される有機溶媒(パラフィン(例えば、石油留分)、植物油(例えば、ラッカセイ油またはゴマ油)、一官能性もしくは多官能性アルコール(例えば、エタノールまたはグリセロール)など)、担体(例えば、天然無機粉末(例えば、カオリン、クレイ、タルク、チョーク)、合成無機粉末(例えば、高分散ケイ酸およびシリケート)など)、糖(例えば、サトウキビ糖、ラクトースおよびグルコース)、乳化剤(例えば、リグニン、亜硫酸パルプ廃液、メチルセルロース、デンプンおよびポリビニルピロリドン)および滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸およびラウリル硫酸ナトリウム)を含む。
【0064】
ヒトの場合に経口投与するための投与量は、1日あたり1回または複数回の投与で、投与あたり0.5~1000mgである。
【0065】
しかし、時として、体重、投与経路、活性物質への個体の応答、その製剤の性質、および活性物質が投与される時間または間隔に応じて、指定した量から逸脱することが必要となることがある。したがって、一部の場合、上で示されている最小用量未満の使用が十分となり得ることがある一方、他の場合、上限値を超えなければならないことがある。多量に投与する場合、1日かけて、いくつかのより少ない用量に分割することが賢明なことがある。
一実施形態では、本発明は、形態I、形態II、形態III、または形態I、形態IIおよび形態IIIのうちの少なくとも2つの混合物、および薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物に関する。
別の実施形態では、本発明は、化合物1の形態Iおよび薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
別の実施形態では、本発明は、化合物1の形態IIおよび薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0066】
別の実施形態では、本発明は、化合物1の形態IIIおよび薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
別の実施形態では、本発明は、化合物1の形態I、形態IIおよび形態IIIのうちの少なくとも2つ、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
医薬剤形の以下のさらなる例が、その範囲を限定することなく、本発明を例示する。
【0067】
【表10】

他の活性物質との併用療法/組合せ
上記の多形である形態I、形態IIまたは形態IIIはまた、別の活性化合物と一緒に投与され得る。本発明はまた、活性成分のこのような組合せ物を提供する医薬製剤に関し、1つが、化合物1の本発明の固体形態である。
【0068】
このような組合せ物は、固定用量組合せ物(併用される活性成分が、同一医薬剤形の対象物となる)または自由な組合せ用量(活性成分は、個別の医薬製剤である)とすることができる。
【0069】
したがって、本発明のさらなる態様は、本発明の化合物と、例えば、抗精神病薬(ハロペリドール、クロザピン、リスペリドン、クエチアピン、アリプリパゾール、アセナピンおよびオランザピンなど);抗うつ剤(選択的セロトニン再取り込み阻害剤およびデュアルセロトニン/ノルアドレナリン再取り込み阻害剤など);気分安定薬(バルプロ酸リチウムおよびラモトリジンなど);ベータ-セレクターゼ阻害剤;ガンマ-セレクターゼ阻害剤;ガンマ-セレクターゼモジュレータ;アミロイド凝集阻害剤(例えば、シロ-イノシトールなど);直接的または間接的作用性神経保護物質および/または疾患修飾物質;抗酸化剤(例えば、ビタミンE、イチョウ(ginko biloba)またはギンコライドなど);抗炎症物質(例えば、Cox阻害剤、Aβ(Aベータ)を低下させる特性をさらにまたはもっぱら有するNSAIDなど);HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチンなど);アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(ドネペジル、リバスチグミン、タクリン、ガランタミンなど);NMDA受容体アンタゴニスト(例えば、メマンチンなど);AMPA受容体アゴニスト;AMPA受容体ポジティブモジュレータ、AMPカイン、グリシントランスポータ1阻害剤;モノアミン受容体再取り込み阻害剤;神経伝達物質の集中または放出をモジュレートする物質;メシル酸イブタモレンおよびカプロモレリンなどの成長ホルモンの分泌を誘発する物質;CB-1受容体アンタゴニストまたはインバースアゴニスト;抗生物質(ミノサイクリン(minocycline)またはリファンピシンなど);PDE1、PDE2、PDE4、PDE5、PDE9またはPDE10阻害剤、GABAA受容体インバースアゴニスト;GABAAアルファ5受容体インバースアゴニスト;GABAA受容体アンタゴニスト;ニコチン受容体アゴニストもしくは部分アゴニストまたはポジティブモジュレータ;アルファ4ベータ2ニコチン受容体アゴニストまたは部分アゴニストまたはポジティブモジュレータ;アルファ7ニコチン受容体アゴニストもしくは部分アゴニストまたはポジティブアロステリックモジュレータ;ヒスタミン受容体H3アンタゴニスト;5-HT4受容体アゴニストまたは部分アゴニスト;5-HT6受容体アンタゴニスト;アルファ2-アドレナリン受容体アンタゴニスト、カルシウムアンタゴニスト;ムスカリン受容体M1アゴニストもしくは部分アゴニストまたはポジティブモジュレータ;ムスカリン受容体M2アンタゴニスト;ムスカリン受容体M4アンタゴニスト;ムスカリン受容体M4ポジティブアロステリックモジュレータ;代謝型グルタミン酸受容体5、ポジティブアロステリックモジュレータ;代謝型グルタミン酸受容体2アンタゴニスト;代謝型グルタミン酸受容体2/3アゴニスト;代謝型グルタミン酸受容体2ポジティブアロステリックモジュレータ、および本発明による活性化合物の有効性および/もしくは安全性が向上する、ならびに/または望ましくない副作用が低減するような方法で、受容体または酵素をモジュレートする他の物質の群から選択される別の活性化合物との組合せ物である。
【0070】
本発明の化合物はまた、上記の疾患および状態を処置するため、例えば、Aベータまたはその一部による能動免疫付与、またはヒト化抗Aベータ抗体または抗体断片による受動免疫付与などの、免疫療法と組み合わせて使用されてもよい。
【0071】
本発明の化合物はまた、ハロペリドール、フルペンチキソール、フルスピリレン、クロプロチキセン、プロチペンジル、レボメプロマジン、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、パリペリドン、アミスルピリド、ジプラシドン、アリピプラゾール、スルピリド、ゾテピン、セルチンドール、フルフェナジン、ペルフェナジン、ペラジン、プロマジン、クロルプロマジン、レボメプロマジン、ベンペリドール、ブロムペリドール、ピモジド、メルペロン、ピパムペロン、イロペリドン、アセナピン、ペロスピロン、ブロナンセリンおよびルラシドンのような抗精神病薬と組み合わせてもよい。
【0072】
本発明の化合物はまた、アミトリプチリンイミプラミン塩酸塩(TOFRANIL)、イミプラミンマレイン酸塩(SURMONTIL)、ロフェプラミン、デシプラミン(NORPRAMIN)、ドキセピン(SINEQUAN、ZONALON)、トリミプラミン(SURMONTIL)のような抗うつ剤と組み合わせてもよい。
または、本発明の化合物はまた、アラプロクレート、シタロプラム(CELEXA、CIPRAMIL)、エスシタロプラム(LEXAPRO、CIPRALEX)、クロミプラミン(ANAFRANIL)、デュロキセチン(CYMBALTA)、フェモキセチン(MALEXIL)、フェンフルラミン(PONDIMIN)、ノルフェンフルラミン、フロキセチン(PROZAC)、フルボキサミン(LUVOX)、インダルピン、ミルナシプラン(IXEL)、パロキセチン(PAXIL、SEROXAT)、セルトラリン(ZOLOFT、LUSTRAL)、トラゾドン(DESYREL、MOLIPAXIN)、ベンラファキシン(EFFEXOR)、ジメリジン(NORMUD、ZELMID)、ビシファジン、デスベンラファキシン(PRISTIQ)、ブラソフェンスムおよびテソフェンシンなどのセロトニン(5-HT)再取り込み阻害剤と組み合わせてもよい。
【0073】
本発明による組合せ物は、1つおよび同じ剤形で、すなわち、組合せ調製物の形態で提供されてもよく、例えば、2つの構成成分は、1つ錠剤中に、例えば、前記錠剤の異なる層に組み込まれてもよい。
投与量または投与形態は、限定されない。本発明の枠組みでは、任意の好適な剤形が使用されてもよい。例として、剤形は、パッチ剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、ペレット剤、ドラジェ剤、散剤、トローチ剤、坐剤などの固体調製物、液剤、懸濁剤、乳剤、点滴剤、シロップ剤、エリキシル剤などの液体調製物、またはエアゾール剤、噴霧剤などのガス調製物などから選択されてもよい。
剤形は、投与量単位で製剤化されるのが有利であり、各投与単位は、存在する各活性構成成分の単回用量を供給するようになされている。したがって、投与経路および剤形に依存して、成分が選択される。
上記の組合せパートナーのための投与量は、通常、推奨される最低用量の1/5から、通常、推奨される用量の1/1までとするのが好都合となり得る。
剤形は、製剤の性質に応じて、1日あたり、例えば1回、2回、3回または4回、患者に投与される。遅延製剤または徐放性製剤または他の医薬製剤の場合、同一物が異なって適用されてもよい(例えば、毎週1回または毎月1回など)。本発明の活性化合物は、3回またはより少ない回数で、より好ましくは1日1回または1日2回のいずれかで投与されるのが好ましい。
【実施例0074】
(実施例1)
アモルファス化合物1の調製:化合物1のアモルファス形態(「アモルファス化合物1」)は、WO2013017657の実施例50に記載されている通りに調製する。ジアステレオマー混合物(WO2013017657の実施例49に準拠して調製)のキラル分離は、流速を15ml/分の代わりに12ml/分であることを除いて実施例49に記載されている通りに行う。得られた溶離液から減圧下で溶媒を除去して、固体としてのアモルファス化合物1を得る。アモルファス化合物1の試料の、得られた典型的なXRPDパターンが、図1に示されている。
【0075】
(実施例2)
化合物1の形態Iおよび形態IIの混合物の調製:反応器に化合物1のアモルファス形態(20g)および2-プロパノール(75mL)を投入し、この内容物を70℃に加熱する。回分温度を50℃以上に維持しながら、得られた溶液を水(111mL)で処理する。次に、反応器の内容物を1.5時間かけて、20℃に冷却する。この固体をろ過により収集し、水でリンスし、減圧下、40℃で乾燥して、本明細書に記載されている特徴付けの方法に基づいて、化合物1の形態Iおよび形態IIの混合物(15.4g、77%収率)を用意し、ラマン分光法によって求めると、61:39(形態I:形態II)のモル比を有する。
【0076】
(実施例3A)
化合物1の形態Iの調製:アモルファス化合物1(50mg)を4mlのtert-ブチルメチルエーテル(TBME)で処理し、得られたスラリーを2時間、50℃で撹拌する。約2mlの溶媒を減圧下で除去する。次に、この混合物をろ過して、固体を真空オーブン中、40℃で一晩、乾燥し、化合物1の形態Iを得る。
化合物1の形態Iはまた、TBMEの代わりに水を使用して、直前に記載されている手順に準拠して調製することができる。
(実施例3B)
化合物1の形態Iの調製:化合物1の形態Iおよび形態IIの混合物(14g、0.029mol)を2-プロパノール(140mL)に溶解し、50~55℃に加熱する。得られた溶液を室温に冷却し、次に、激しく混合しながら、水(500mL)により処理する。次に、撹拌を停止して、反応器の内容物を少なくとも30分間、撹拌しないで、静置する。次に、得られた固体をろ過により収集し、水、次にヘプタンにより洗浄し、2時間、空気乾燥して、14.6gの化合物1の形態Iを得る。
【0077】
(実施例4A)
化合物1の形態IIの調製:反応器に化合物1の形態Iおよび形態IIの混合物(37g、0.072mol)および140mlのイソプロパノールを投入し、この反応器の内容物を約70℃に加熱する。得られた溶液を真空ろ過し(ろ紙を備えるブフナー漏斗)、ろ液を約55℃に冷却する。次に、この溶液を水(111mL)により処理し、少なくとも4時間、55℃で激しく混合しながら、0.74gの化合物1の形態Iで種晶添加する。追加の水(95.14g)を少なくとも6時間かけて、撹拌した混合物に加え、撹拌を停止して、反応器の内容物を少なくとも4時間かけて、20℃に冷却する。次に、得られた固体をろ過により収集し、水、次にヘプタンにより洗浄し、空気乾燥して、化合物1の形態IIを得る。
種晶添加を形態II、または形態Iおよび形態IIの混合物を用いて行った場合も類似の結果が得られる。
【0078】
(実施例4B)
化合物1の形態IIの調製:反応器に化合物1の形態Iおよび形態IIの混合物(100g、0.195mol)、イソプロパノール(500ml)および水(100ml)を投入する。反応器の内容物を撹拌しながら55~60℃に加熱し、55~60℃で、得られた溶液を真空ろ過する(ろ紙を備えるブフナー漏斗)。撹拌したろ液を68~70℃に加熱し、温度を68~70℃に維持しながら、600mLの水で処理し、30分間かけて、62~66℃に冷却する。0.5時間、62~66℃で熟成した、20gの水および4gのイソプロピルアルコールの混合物中で、化合物1の形態II(2g)の種晶スラリーで溶液に種晶添加し、2~3時間かけて、55℃に冷却する。得られた混合物を2時間、55℃で撹拌し、4~6時間かけて20℃に冷却し、ろ過する。固体を水(200mL)により洗浄し、少なくとも8時間、50~70℃で乾燥させて、化合物1の形態IIを得る。
【0079】
(実施例5)
化合物1の形態IIIの調製:反応器に化合物1の形態II(20g、39mmol)およびメタノール(200mL)を投入し、反応器の内容物を50~55℃に加熱する。次に、反応器の内容物を40~45℃で約80mlに減圧下で濃縮し、少なくとも1時間かけて、室温に冷却し、室温でさらに2時間、撹拌する。固体をろ過により収集してヘプタンにより洗浄し、減圧下、10時間、50℃で乾燥して、19.46gの化合物1の形態IIIを得る。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11
図12a
図12b
図12c
【手続補正書】
【提出日】2024-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式:
【化1】
1
を有する化合物1の固体形態Iであって、
化合物1の形態Iが、
4.6°、10.0°、16.7°、18.0°、19.0°、20.0°および22.7°から選択される2θ角度での少なくとも3つのXRPDピーク、または
131.5ppm、127.2ppm、28.7ppmおよび25.7ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも3つの13C固体核磁気共鳴ピーク、または
-64.3、-64.8、-65.9、-66.8、-78.0、-78.5、-79.3および-80.0ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも3つの19F固体核磁気共鳴ピーク
を特徴とする、化合物1の固体形態I。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
形態I、形態IIおよび形態IIの試料に関する19F固体NMR(SSNMR)データは、9.4Tにて、Bruker Avance III NMR分光計(Bruker Biospin,Inc.、Billerica、MA)で取得する(1H=400.46MHz、19F=376.76MHz)。試料は、Kel-F(登録商標)ドライブチップを備える外径3.2mmのジルコニア製ローターに包む。Brukerモデル 3.2BL BBプローブをデータ取得に使用し、試料は、マジック角(54.74度)の周りを回転させる。試料スペクトルは、22kHzの回転速度で取得する。標準スピンエコーパルスシーケンスは、12秒の待ち時間で使用する。SPINAL-64 1Hデカップリングも使用する。自由誘導減衰のフーリエ変換の前に、指数関数的な線のブロード化を使用しない。ケミカルシフトは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)に由来する最高強度のシグナルを使用して基準にし、その共鳴を-91ppmに設定する。マジック角は、5kHzの回転速度にて、KBr粉末からの79Brシグナルを使用して設定する。形態Iおよび形態IIの例示的な19F SSNMRスペクトルは、それぞれ、図4bおよび7bに見出される。表2bおよび4bは、それぞれ、形態IおよびIIに対して取得した19F SSNMRスペクトルから得たケミカルシフトを含む。表2および4bにおける報告値は、±0.2ppmの標準偏差を有する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
(実施例5)
化合物1の形態IIIの調製:反応器に化合物1の形態II(20g、39mmol)およびメタノール(200mL)を投入し、反応器の内容物を50~55℃に加熱する。次に、反応器の内容物を40~45℃で約80mlに減圧下で濃縮し、少なくとも1時間かけて、室温に冷却し、室温でさらに2時間、撹拌する。固体をろ過により収集してヘプタンにより洗浄し、減圧下、10時間、50℃で乾燥して、19.46gの化合物1の形態IIIを得る。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕以下の構造式:
1
を有する化合物1の固体形態Iであって、
化合物1の形態Iが、
4.6°、10.0°、16.7°、18.0°、19.0°、20.0°および22.7°から選択される2θ角度での少なくとも3つのXRPDピーク、または
131.5ppm、127.2ppm、28.7ppmおよび25.7ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも3つの 13 C固体核磁気共鳴ピーク、または
-64.3、-64.8、-65.9、-66.8、-78.0、-78.5、-79.3および-80.0ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも3つの 19 F固体核磁気共鳴ピーク
を特徴とする、化合物1の固体形態I。
〔2〕4.6°、10.0°、16.7°、18.0°、19.0°、20.0°および22.7°から選択される2θ角度での少なくとも4つのXRPDピークを特徴とする、前記〔1〕に記載の化合物1の固体形態I。
〔3〕4.6°、10.0°、16.7°、18.0°、19.0°、20.0°および22.7°から選択される2θ角度での少なくとも5つのXRPDピークを特徴とする、前記〔1〕または〔2〕に記載の化合物1の固体形態I。
〔4〕4.6°、10.0°、16.7°、18.0°、19.0°、20.0°および22.7°から選択される2θ角度でのXRPDピークを特徴とする、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の化合物1の固体形態I。
〔5〕131.5ppm、127.2ppm、28.7ppmおよび25.7ppmから選択されるケミカルシフトでの 13 C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の化合物1の固体形態I。
〔6〕-64.3、-64.8、-65.9、-66.8、-78.0、-78.5、-79.3および-80.0ppmから選択されるケミカルシフトでの 19 F固体核磁気共鳴ピークを特徴とする、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の化合物1の固体形態I。
〔7〕以下の構造式:
2
を有する化合物1の固体形態IIであって、
形態IIが、以下のd値:
4.1°、4.6°、10.0°、16.7°および18.0°(2-シータ)
における特徴的なX線反射、または
130.1ppm、46.6ppmおよび25.0ppm
から選択される特徴的な 13 C固体NMRケミカルシフト、または
-64.0、-65.6、-66.6、-78.2および-79.1ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも3つの特徴的な 19 F固体核磁気共鳴ピーク
を有する、化合物1の固体形態II。
〔8〕4.1°、4.6°、10.0°、16.7°および18.0°から選択される2θ角度での少なくとも4つのXRPDピークを特徴とする、前記〔7〕に記載の化合物1の固体形態II。
〔9〕4.1°、4.6°、10.0°、16.7°および18.0°から選択される2θ角度でのXRPDピークを特徴とする、前記〔7〕または〔8〕に記載の化合物1の固体形態II。
〔10〕-64.0、-65.6、-66.6、-78.2および-79.1ppmから選択されるケミカルシフトでの 19 F固体核磁気共鳴ピークを特徴とする、前記〔7〕~〔9〕のいずれか1項に記載の化合物1の固体形態I。
〔11〕以下の構造式:
1
を有する化合物1の固体形態IIIであって、
化合物1の形態IIIが:
4.8°、9.7°、10.3°、13.9°および24.6°から選択される2θ角度での少なくとも3つのXRPDピーク、または
156.6ppm、134.2ppm、46.0ppm、25.5ppmおよび14.3ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも3つの 13 C固体核磁気共鳴ピーク
を特徴とする、化合物1の固体形態III。
〔12〕4.8°、9.7°、10.3°、13.9°および24.6°から選択される2θ角度での少なくとも4つのXRPDピークを特徴とする、前記〔11〕に記載の化合物1の固体形態III。
〔13〕4.8°、9.7°、10.3°、13.9°および24.6°から選択される2θ角度でのXRPDピークを特徴とする、前記〔11〕または〔12〕に記載の化合物1の固体形態III。
〔14〕156.6ppm、134.2ppm、46.0ppm、25.5ppmおよび14.3ppmから選択されるケミカルシフトでの少なくとも4つの 13 C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする、前記〔11〕~〔13〕のいずれか1項に記載の化合物1の固体形態III。
〔15〕156.6ppm、134.2ppm、46.0ppm、25.5ppmおよび14.3ppmから選択されるケミカルシフトでの 13 C固体核磁気共鳴ピークを特徴とする、前記〔11〕~〔14〕のいずれか1項に化合物1の固体形態III。
〔16〕前記〔1〕に記載の化合物1による固体形態Iを作製する方法であって、
(a)化合物1およびtert-ブチルメチルエーテル(TBME)または水を加熱して、スラリーを得るステップ、
(b)ステップ(a)のスラリーを冷却するステップ、および
(b)化合物1の形態Iとして得られた固体を収集するステップ
を含む、方法。
〔17〕化合物1のアモルファス形態が、ステップ(a)において使用される、前記〔16〕に記載の方法。
〔18〕前記〔7〕に記載の化合物1の形態IIを作製する方法であって、
(a)化合物1および2-プロパノールの混合物を70°に加熱して、溶液を得るステップ、
(b)ステップ(a)の溶液をろ過するステップ、
(c)ステップ(b)からのろ液を55℃に冷却するステップ、
(d)ステップ(c)の冷却溶液を水で処理するステップ、
(e)ステップ(d)の水処理済み混合物を20℃に冷却するステップ、および
(f)化合物1の形態IIとして得られた固体を収集するステップ
を含む、方法。
〔19〕(d1)ステップ(d)の水処理溶液に種晶添加(seeding)するステップ、
(d2)種晶添加済み溶液を55℃で混合するステップ、および
(d3)20℃に冷却する前に、種晶添加済み溶液を水で処理するステップ
をさらに含む、前記〔18〕に記載の方法。
〔20〕化合物1のアモルファス形態、または化合物1の形態Iおよび形態IIの混合物が、ステップ(a)において使用される、前記〔18〕または〔19〕に記載の方法。
〔21〕前記〔11〕に記載の化合物1の固体形態IIIを作製する方法であって、
(a)化合物1およびメタノールの混合物を50~55℃に加熱して、溶液を得るステップ、
(b)ステップ(a)の溶液を40~45℃で濃縮するステップ、
(c)ステップ(b)からの濃縮溶液を25℃に冷却するステップ、および
(d)化合物1の形態IIIとして得られた固体を収集するステップ
を含む、方法。
〔22〕化合物1のアモルファス形態が、ステップ(a)において使用される、前記〔21〕に記載の方法。
〔23〕前記〔1〕から〔15〕のいずれか1項に記載の化合物の固体形態を、任意に1種または複数の不活性担体および/または希釈剤と一緒に含む、医薬組成物。
〔24〕神経学的障害または精神障害を処置および/または予防するための、前記〔1〕~〔15〕のいずれか1項に記載の化合物1の固体形態、または前記〔23〕に記載の医薬組成物を使用する方法。
〔25〕神経学的障害または精神障害が、統合失調症の陽性症状および陰性症状、統合失調症に関連する認知障害、およびアルツハイマー病から選択される、前記〔24〕に記載の方法。
〔26〕神経学的障害または精神障害の予防および/または処置における使用のための、前記〔1〕~〔15〕のいずれか1項に記載の化合物の固体形態、または前記〔23〕に記載の医薬組成物。
〔27〕神経学的障害または精神障害が、統合失調症の陽性症状および陰性症状、統合失調症に関連する認知障害、およびアルツハイマー病から選択される、前記〔26〕に記載の使用のための固体形態。
〔28〕神経学的障害もしくは精神障害の処置または予防のための医薬の製造における使用のための前記〔1〕~〔15〕のいずれか1項に記載の化合物の固体形態、または前記〔23〕に記載の医薬組成物。
〔29〕神経学的障害または精神障害が、統合失調症の陽性症状および陰性症状、統合失調症に関連する認知障害、およびアルツハイマー病から選択される、前記〔28〕に記載の使用。
【外国語明細書】