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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100799
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】電子ペン及び手書き入力装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/046 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
G06F3/046 E
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075604
(22)【出願日】2024-05-08
(62)【分割の表示】P 2021534542の分割
【原出願日】2020-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2019133713
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】松本 義治
(57)【要約】
【課題】電子ペンの構成が簡単で、低コストで構成できる手書き入力装置を提供する。
【解決手段】磁極が近接あるいは接触した位置の色が変化する磁性シートの下方に、電磁誘導方式の位置検出センサが配設された位置検出装置部と、電子ペンとを備える手書き入力装置である。電子ペンは、筐体のペン先側に、第1のコイルと、この第1のコイルが巻回され、軸心方向の貫通孔を備える第1の磁性体コアと、第1のコイルと共振回路を構成する第1のコンデンサと、第1の磁性体コアの貫通孔を挿通される第1の芯体とを備える。電子ペンは、また、筐体のペン先側とは反対側に、第2のコイル、第2の磁性体コア、第2のコンデンサ、第2の芯体で構成される消しゴム機能部を備える。第1及び第2の芯体は、先端部と、先端部とは反対側とに磁極を有する。第1及び第2の芯体の先端部は、第1及び第2の磁性体コアの一部と共に、筐体の開口から外部に突出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコイルと、
前記第1のコイルが巻回され、軸心方向の貫通孔を備える第1の磁性体コアと、
前記第1のコイルと第1の共振回路を構成する第1のコンデンサと、
ペン先部を有し、前記ペン先部が外部に突出する状態で、前記第1の磁性体コアの前記貫通孔を挿通される第1の芯体と、
を備え、位置検出センサとの間で前記第1の共振回路の共振周波数に対応する周波数の信号を電磁誘導結合によりやり取りするようにする電子ペンであって、
前記第1の芯体は、前記ペン先部と前記ペン先部とは反対側の尾端部とに磁極を有し、
前記第1の芯体の前記ペン先部及び前記第1の磁性体コアの軸心方向の前記第1の芯体の前記ペン先部側の一部は、電子ペンの筐体のペン先側の開口から外部に突出し、かつ、前記第1の芯体の前記ペン先部は、前記第1の磁性体コアの軸心方向の前記第1の芯体の前記ペン先部側の端部から離れた位置になるように構成され、
前記筐体の前記ペン先側とは反対側には消しゴム機能部を備え、
前記消しゴム機能部は、
前記第1のコイルとは別の第2のコイルと、
前記第2のコイルが巻回され、軸心方向の貫通孔を備える磁性体コアと、
前記第2のコイルと前記第1の共振回路の共振周波数とは異なる共振周波数の第2の共振回路を構成する第2のコンデンサと、
先端部が外部に突出する状態で、前記第2の磁性体コアの前記貫通孔を挿通される第2の芯体と、
を備え、
前記第2の芯体は、前記先端部と前記先端部とは反対側の端部とに、前記第1の芯体の前記ペン先部と前記尾端部とは逆極性の磁極を有し、
前記第2の芯体の前記先端部及び前記第2の磁性体コアの軸心方向の前記第2の芯体の前記先端部側の一部は、前記筐体のペン先側とは反対側の開口から外部に突出する
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
前記筐体内には、前記第1の芯体の前記尾端部側が、直接的に、あるいは圧力伝達部材を介して間接的に嵌合される筆圧検出部が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項3】
前記第1の芯体及び/又は前記第2の芯体は、棒状の磁石で構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項4】
前記第1の芯体及び/又は前記第2の芯体は、複数個の磁石が軸心方向に一列に結合されて構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項5】
前記第1の芯体及び/又は前記第2の芯体は、金属製のパイプの中空部内に磁石が収納されて構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項6】
前記第1の芯体及び/又は前記第2の芯体は、樹脂製のパイプの中空部内に磁石が収納されて構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項7】
前記第1の芯体の前記ペン先部側の先端部は保護部材により覆われている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項8】
磁極が近接あるいは接触した位置の色が変化する磁性シートの下方に、電磁誘導方式の位置検出センサが前記磁性シートと重畳して配設された位置検出装置部と、電子ペンとを備える手書き入力装置であって、
前記電子ペンは、
第1のコイルと、
前記第1のコイルが巻回され、軸心方向の貫通孔を備える第1の磁性体コアと、
前記第1のコイルと第1の共振回路を構成する第1のコンデンサと、
ペン先部を有し、前記ペン先部が外部に突出する状態で、前記第1の磁性体コアの前記貫通孔を挿通される第1の芯体と、
を備え、前記位置検出センサとの間で前記第1の共振回路の共振周波数に対応する周波数の信号を電磁誘導結合によりやり取りするようにする電子ペンであって、
前記第1の芯体は、前記ペン先部と前記ペン先部とは反対側の尾端部とに磁極を有し、
前記第1の芯体の前記ペン先部及び前記第1の磁性体コアの軸心方向の前記第1の芯体の前記ペン先部側の一部は、電子ペンの筐体のペン先側の開口から外部に突出し、かつ、前記第1の芯体の前記ペン先部は、前記第1の磁性体コアの軸心方向の前記第1の芯体の前記ペン先部側の端部から離れた位置になるように構成され、
前記筐体の前記ペン先側とは反対側には消しゴム機能部を備え、
前記消しゴム機能部は、
前記第1のコイルとは別の第2のコイルと、
前記第2のコイルが巻回され、軸心方向の貫通孔を備える磁性体コアと、
前記第2のコイルと前記第1の共振回路の共振周波数とは異なる共振周波数の第2の共振回路を構成する第2のコンデンサと、
先端部が外部に突出する状態で、前記第2の磁性体コアの前記貫通孔を挿通される第2の芯体と、
を備え、
前記第2の芯体は、前記先端部と前記先端部とは反対側の端部とに、前記第1の芯体の前記ペン先部と前記尾端部とは逆極性の磁極を有し、
前記第2の芯体の前記先端部及び前記第2の磁性体コアの軸心方向の前記第2の芯体の前記先端部側の一部は、前記筐体のペン先側とは反対側の開口から外部に突出し、
前記位置検出装置部は、
前記位置検出センサを通じて所定の周波数の信号を電磁誘導結合により前記電子ペンに送信し、
前記電子ペンは、前記第1の共振回路又は前記第2の共振回路で前記所定の周波数の信号を受信すると共に、受信した前記信号を、電磁誘導結合により前記位置検出センサに帰還するものであり、
前記第1の共振回路の共振周波数は、前記第1の芯体が前記磁性体コアの前記貫通孔に挿通された状態では前記位置検出センサからの信号の周波数と等しくなるように、前記第1の芯体が前記第1の磁性体コアの前記貫通孔に挿通されていない状態では前記位置検出センサからの信号の周波数よりも低い周波数に設定されていると共に、
前記第2の共振回路の共振周波数は、前記第2の芯体が前記第2の磁性体コアの前記貫通孔に挿通された状態では前記位置検出センサからの信号の周波数と等しくなるように、前記第2の芯体が前記第2の磁性体コアの前記貫通孔に挿通されていない状態では前記位置検出センサからの信号の周波数よりも低い周波数に設定されている
ことを特徴とする手書き入力装置。
【請求項9】
前記磁性シートは、磁性材料からなる粉体を含む複数個のマイクロカプセルからなる層を備え、
前記電子ペンの前記第1の芯体の前記ペン先部の磁極が前記磁性シートに近接あるいは接触した位置においては、前記磁性シートの前記層の前記磁性材料からなる粉体が、前記第1の芯体の前記ペン先部の磁極側に磁気的に吸引されることで、前記磁性シートの表面の、前記第1の芯体の前記ペン先部の磁極が近接あるいは接触した位置の色が変化する
ことを特徴とする請求項8に記載の手書き入力装置。
【請求項10】
前記磁性シートの前記層の前記マイクロカプセルの、前記第1の芯体の前記ペン先部が近接あるいは接触した前記粉体を元の位置に戻すことで、前記磁性シートにおいて前記変化した色を消去する消去部材を備える
ことを特徴とする請求項9に記載の手書き入力装置。
【請求項11】
前記磁性シートは、前記消しゴム機能部の前記第2の芯体が近接あるいは接触した位置で、前記色を変えていた部分の色を元に戻し、
前記位置検出装置部では、前記位置検出センサを通じて前記電子ペンから前記消しゴム機能部用の共振周波数を検出した位置の座標データは消去する
ことを特徴とする請求項8に記載の手書き入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手書き入力装置及びこの手書き入力装置を構成する電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
用紙にボールペンや鉛筆などの筆記具で手書き入力を行う代わりに、電子ペンによる指示位置を検出する位置検出センサを備えた位置検出装置部を有するタブレット端末などの入力装置に、電子ペンを用いて入力することで、入力した手書き情報を電子データとして記憶することが、ペーパーレス化の要求に伴い、一般的になってきている。
【0003】
この場合に、電子ペンにより入力された手書き情報が、使用者により視認で確認できるようにすることが求められる。そのため、タブレット端末では、位置検出センサに重畳して表示パネルを配設すると共に表示制御回路を設け、表示制御回路が、位置検出装置部で検出した電子ペンの指示位置の座標データに対応する表示画像(筆記軌跡等)を表示パネルに確認表示するように制御する。
【0004】
この場合に、表示パネルとしては、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electroluminescence)ディスプレイが用いられる他、例えば特許文献1(特開2007-206845号公報)や特許文献2(特開2007-206846号公報)に記載されているような電気泳動表示パネルなどの電子ペーパーも用いられている。
【0005】
しかし、以上のようなタブレット端末は、手書き筆記情報を、位置検出装置部で検出した電子ペンによる指示位置の座標情報に基づいて表示する表示パネルと表示制御回路を設ける必要があるので、コスト高となるという問題があった。
【0006】
一方、例えば特許文献3(特開2018-37033号公報)には、位置検出センサを備えた位置検出装置部を内部に収納した板状のボードの上に、位置検出センサと重畳するように用紙をクリップ止めできるように構成したボード装置と、ボールペン機能などの筆記具機能を備えると共に、位置検出センサと信号をインタラクションする電子ペンとからなる手書き入力装置が提案されている。
【0007】
この手書き入力装置においては、電子ペンの筆記具機能により用紙に手書き入力すると、その手書き入力された筆記軌跡の座標情報が、位置検出センサを通じて位置検出装置部で検出され、その検出された座標情報は、例えばパソコンなどに出力されたり、内部のメモリ部に記憶されて利用される。
【0008】
この手書き入力装置によれば、電子ペンの筆記具機能が用いられて手書き入力された筆記軌跡は用紙に描かれるので、上述したような手書き情報の確認表示のための表示パネルは不要になり、コストを低減することができて、非常に便利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007-206845号公報
【特許文献2】特開2007-206846号公報
【特許文献3】特開2018-37033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献3の手書き入力装置では、電子ペンがボールペン機能などの筆記具の機能を備える必要があり、電子ペンの構成が複雑かつ、高コストになるという問題がある。また、手書き入力による筆記跡が形成された用紙を保存する用途には便利であるが、用紙の保存を必要としない用途の場合には、ボールペン機能などにより用紙に書き込まれた筆記跡は物理的な消去が容易ではないので、適宜、用紙の交換が必要となり、面倒であるという問題がある。また、用紙の筆記跡が消しゴムで消去可能であったとしても、消しゴムのカスが発生してしまうという問題もある。
【0011】
この発明は、以上の問題点を解決することができる電子ペン及び手書き入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、
第1のコイルと、
前記第1のコイルが巻回され、軸心方向の貫通孔を備える第1の磁性体コアと、
前記第1のコイルと第1の共振回路を構成する第1のコンデンサと、
ペン先部を有し、前記ペン先部が外部に突出する状態で、前記第1の磁性体コアの前記貫通孔を挿通される第1の芯体と、
を備え、位置検出センサとの間で前記第1の共振回路の共振周波数に対応する周波数の信号を電磁誘導結合により行うようにする電子ペンであって、
前記第1の芯体は、前記ペン先部と前記ペン先部とは反対側の尾端部とに磁極を有し、
前記第1の芯体の前記ペン先部及び前記第1の磁性体コアの軸心方向の前記第1の芯体の前記ペン先部側の一部は、電子ペンの筐体のペン先側の開口から外部に突出し、かつ、前記第1の芯体の前記ペン先部は、前記第1の磁性体コアの軸心方向の前記第1の芯体の前記ペン先部側の端部から離れた位置になるように構成され、
前記筐体の前記ペン先側とは反対側には消しゴム機能部を備え、
前記消しゴム機能部は、
前記第1のコイルとは別の第2のコイルと、
前記第2のコイルが巻回され、軸心方向の貫通孔を備える磁性体コアと、
前記第2のコイルと前記第1の共振回路の共振周波数とは異なる共振周波数の第2の共振回路を構成する第2のコンデンサと、
先端部が外部に突出する状態で、前記第2の磁性体コアの前記貫通孔を挿通される第2の芯体と、
を備え、
前記第2の芯体は、前記先端部と前記先端部とは反対側の端部とに、前記第1の芯体の前記ペン先部と前記尾端部とは逆極性の磁極を有し、
前記第2の芯体の前記先端部及び前記第2の磁性体コアの軸心方向の前記第2の芯体の前記先端部側の一部は、前記筐体のペン先側とは反対側の開口から外部に突出する
ことを特徴とする電子ペンを提供する。
【0013】
また、
磁極が近接あるいは接触した位置の色が変化する磁性シートの下方に、電磁誘導方式の位置検出センサが前記磁性シートと重畳して配設された位置検出装置部と、電子ペンとを備える手書き入力装置であって、
前記電子ペンは、
第1のコイルと、
前記第1のコイルが巻回され、軸心方向の貫通孔を備える第1の磁性体コアと、
前記第1のコイルと第1の共振回路を構成する第1のコンデンサと、
ペン先部を有し、前記ペン先部が外部に突出する状態で、前記第1の磁性体コアの前記貫通孔を挿通される第1の芯体と、
を備え、位置検出センサとの間で前記第1の共振回路の共振周波数に対応する周波数の信号を電磁誘導結合により行うようにする電子ペンであって、
前記第1の芯体は、前記ペン先部と前記ペン先部とは反対側の尾端部とに磁極を有し、
前記第1の芯体の前記ペン先部及び前記第1の磁性体コアの軸心方向の前記第1の芯体の前記ペン先部側の一部は、電子ペンの筐体のペン先側の開口から外部に突出し、かつ、前記第1の芯体の前記ペン先部は、前記第1の磁性体コアの軸心方向の前記第1の芯体の前記ペン先部側の端部から離れた位置になるように構成され、
前記筐体の前記ペン先側とは反対側には消しゴム機能部を備え、
前記消しゴム機能部は、
前記第1のコイルとは別の第2のコイルと、
前記第2のコイルが巻回され、軸心方向の貫通孔を備える磁性体コアと、
前記第2のコイルと前記第1の共振回路の共振周波数とは異なる共振周波数の第2の共振回路を構成する第2のコンデンサと、
先端部が外部に突出する状態で、前記第2の磁性体コアの前記貫通孔を挿通される第2の芯体と、
を備え、
前記第2の芯体は、前記先端部と前記先端部とは反対側の端部とに、前記第1の芯体の前記ペン先部と前記尾端部とは逆極性の磁極を有し、
前記第2の芯体の前記先端部及び前記第2の磁性体コアの軸心方向の前記第2の芯体の前記先端部側の一部は、前記筐体のペン先側とは反対側の開口から外部に突出し、
前記位置検出装置部は、
前記位置検出センサを通じて所定の周波数の信号を電磁誘導結合により前記電子ペンに送信し、
前記電子ペンは、前記第1の共振回路又は前記第2の共振回路で前記所定の周波数の信号を受信すると共に、受信した前記信号を、電磁誘導結合により前記位置検出センサに帰還するものであり、
前記第1の共振回路の共振周波数は、前記第1の芯体が前記磁性体コアの前記貫通孔に挿通された状態では前記位置検出センサからの信号の周波数と等しくなるように、前記第1の芯体が前記第1の磁性体コアの前記貫通孔に挿通されていない状態では前記位置検出センサからの信号の周波数よりも低い周波数に設定されていると共に、
前記第2の共振回路の共振周波数は、前記第2の芯体が前記第2の磁性体コアの前記貫通孔に挿通された状態では前記位置検出センサからの信号の周波数と等しくなるように、前記第2の芯体が前記第2の磁性体コアの前記貫通孔に挿通されていない状態では前記位置検出センサからの信号の周波数よりも低い周波数に設定されている
ことを特徴とする手書き入力装置を提供する。
【0014】
上述の構成の電子ペンは、コイルとコンデンサとで構成される共振回路を備える電磁誘導方式の電子ペンにおいて、コイルが巻回される磁性体コアの貫通孔を挿通される芯体が、その軸心方向の両端であるペン先部と尾端部とに磁極を有する構成とされている。すなわち、上述の構成の電子ペンは、電磁誘導方式の電子ペンの芯体を、両端に磁極を備えるものとするだけで構成することができ、特許文献3のような筆記具機能部などの特別の構成を必要としない。
【0015】
そして、手書き入力装置は、上述の構成の電子ペンと、磁極が近接あるいは接触した位置の色が変化する磁性シートの下方に、電磁誘導方式の位置検出センサが、磁性シート状部材と重畳して配設された位置検出装置部とを備えて構成されている。
【0016】
以上の構成の手書き入力装置において、電子ペンの芯体のペン先部が磁性シートに近接あるいは接触すると、芯体のペン先部の磁極により、磁性シートにおいて、電子ペンの芯体のペン先部が近接あるいは接触した位置の色が変化することにより、電子ペンの芯体のペン先部の移動軌跡が筆記跡として磁性シートの表面に表れる。
【0017】
これと同時に、電子ペンの共振回路と位置検出センサとが電磁誘導結合により信号を授受することで、位置検出装置部で、電子ペンの芯体のペン先部の移動軌跡が筆記跡の座標データとして検出される。すなわち、電子ペンの芯体のペン先部の磁性シートの表面上での移動軌跡が、磁性シートの表面に色の変化により表されると共に、その移動軌跡の座標データが位置検出装置部で検出される。
【0018】
以上の構成の手書き入力装置では、磁極が近接あるいは接触した位置の色が変化する磁性シートを用いることで、特許文献3に記載の手書き入力装置のような用紙を不要とすることができる。なお、この種の磁性シートにおいては、専用のイレーサが用意されており、磁極の近接あるいは接触により変化した色の部分を、そのイレーサを用いることで元の色に戻して消去することが容易にできるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明による手書き入力装置の実施形態を構成するタブレット端末の外観を示す図である。
図2】この発明による手書き入力装置の実施形態の要部の一例の構成を示す図である。
図3】この発明による手書き入力装置の実施形態の要部の一例の構成を説明するための図である。
図4】この発明による手書き入力装置の実施形態を構成する電子ペンの要部の構成例を説明するための図である。
図5】この発明による手書き入力装置の実施形態を構成する電子ペンの要部の構成例を説明するための図である。
図6】この発明による手書き入力装置の実施形態の要部の構成例を説明するための図である。
図7】この発明による手書き入力装置の実施形態の電子回路の構成例を示すブロック図である。
図8】この発明による手書き入力装置の実施形態を構成する電子ペンの芯体の他の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[手書き入力装置の実施形態の外観と基本的な構成]
図1は、この発明による手書き入力装置の実施形態の外観を説明するための図である。この実施形態では、手書き入力装置は、タブレット端末1と、電子ペン2とを備えて構成されている。
【0021】
<タブレット端末1の構成例>
この実施形態のタブレット端末1は、厚さが例えば数ミリメートルの薄型の矩形形状の板状体の構成を備え、当該板状体の一方の平面を表面として、この表面の大部分の領域を、電子ペン2による手書き入力領域(指示入力領域)としている。そして、この手書き入力領域の表面を手書き入力面(指示入力面)1Aとしている。図1は、タブレット端末1の手書き入力面1Aを、当該手書き入力面1Aに直交する上方から見た図である。
【0022】
この実施形態では、タブレット端末1の表面において、手書き入力領域の上方の領域には、操作パネル部1Bが設けられている。この操作パネル部1Bには、電源ボタン1Ba、筆記入力終了ボタン1Bb、情報送信ボタン1Bcなどの操作ボタン、及びパワーインジケータ1Bdや通信インジケータ1Beなどの表示インジケータが配設されている。表示インジケータ1Bd及び1Beは、例えばLED(Light Emitting Diode)で構成される。
【0023】
この実施形態のタブレット端末1は、図示を省略したが、充電式のバッテリーを備えており、電源ボタン1Baがオンとされることで、バッテリーから駆動電圧が必要な回路部品に供給される。また、筆記入力終了ボタン1Bbは、後述するように、使用者がページ単位の手書き入力データを記憶部に保存する際に押下操作される。また、この実施形態のタブレット端末1は、後述するように無線通信部を備え、情報送信ボタン1Bcが押下操作されると、記憶しているページ単位の手書き入力データを外部のコンピュータからなるサーバ装置に送信するようにする。
【0024】
パワーインジケータ1Bdは、電源の投入状態の報知用である。通信インジケータ1Beは、タブレット端末1から手書き入力データを送信している状態の報知用である。
【0025】
このタブレット端末1の手書き入力領域には、図2及び図3に示すように、磁性シート11が配置されていると共に、この磁性シート11の下方には、位置検出センサ12が、タブレット端末1の表面に直交する方向において、磁性シート11と重畳するように配設されている。
【0026】
磁性シート11は、図3(A)に示すように、磁性材料粉例えば鉄粉113Fe(図3(A)及び図3(B)では黒点として示す)が泳動可能に閉じ込められたマイクロカプセル113の多数個が、例えばPET(Polyethylene Terephthalate)からなるシート状樹脂基材111とシート状樹脂基材112との間の隙間に閉じ込められてシート状に構成されたものである。この場合に、少なくともシート状樹脂基材111は透明材料とされている。この磁性シート11は、例えばプラス株式会社製のクリーンノートKaiteに用いられている磁性シートを用いることができる。
【0027】
この実施形態では、この磁性シート11のシート状樹脂基材111の表面111aが、図2及び図3(A)に示すように、手書き入力面1Aとなる。
【0028】
この磁性シート11は、当該磁性シート11に磁極が近接あるいは接触していないときには、各マイクロカプセル113内の鉄粉113Feが、図3(B)に示すように、不規則な任意の位置に存在する状態となり、磁性シート11の表面、すなわち、手書き入力面1Aが、全体が所定の地色、例えば白色の状態となる。
【0029】
そして、磁性シート11のシート状樹脂基材111の表面111a側に、磁極が近接あるいは接触すると、当該磁極が近接あるいは接触した位置の近傍のマイクロカプセル113内の鉄粉113Feは、図3(A)に示すように、磁極側に吸引される。このため、磁極が近接あるいは接触した位置においては、磁性シート11の表面、すなわち、手書き入力面1Aは、鉄粉113Feの色、例えば黒色を呈する。マイクロカプセル113内の鉄粉113Feの位置は、磁極が遠ざかっても保持される。したがって、磁性シート11の表面に近接あるいは接触している磁極が移動すると、その移動軌跡が黒色の線となって、磁性シート11の表面に表れることになる。
【0030】
なお、この実施形態の手書き入力装置は、タブレット端末1の磁性シート11の表面に磁気的に吸引されたマイクロカプセル113内の鉄粉113Feの状態を、図3(B)に示した不規則な位置の状態に戻すようにするイレーサ3が付属している。イレーサ3は、周知のようにイレーサ用磁石を備えるもので、所定の大きさの領域の全体を消去することができると共に、その角部を用いることで、筆記跡の一部を細かく消去することもできる。
【0031】
位置検出センサ12は、この磁性シート11の裏面側に、当該磁性シート11と重畳して設けられる。そして、タブレット端末1には、この位置検出センサ12の裏側の領域や、操作パネル部1Bの裏側の領域が利用されて、後述するような位置検出回路やその他の電子部品を含む位置検出装置部13が設けられている。この実施形態では、位置検出センサ12は、位置検出装置部13の一部を構成する。
【0032】
この実施形態の位置検出装置部13は電磁誘導方式のものであり、位置検出センサ12と電子ペン2とは、電磁誘導結合して後述するような信号のインタラクションを行う。そして、位置検出装置部13は、この位置検出センサ12と電子ペン2との間の信号のインタラクションに基づいて、電子ペン2により指示された手書き入力面1A上の座標位置を検出する。
【0033】
位置検出センサ12は、この実施形態では、図3(A)に示すように、絶縁材料からなるフレキシブルシート121に電極導体が配設されて、複数個のループコイルが構成されている。この実施形態では、フレキシブルシート121には、手書き入力面1Aの横方向(X軸方向)に、複数個のX軸方向ループコイルが所定のピッチで配設されると共に、縦方向(Y軸方向)に、複数個のY軸方向ループコイルが所定のピッチで配設される。
【0034】
この実施形態では、互いに直交する方向に配列されるX軸方向ループコイルとY軸方向ループコイルとを構成する電極導体の重なりを避けるために、図3(A)に示すように、フレキシブルシート121の表面及び裏面に、電極導体122及123が形成されると共に、フレキシブルシート121を貫通するスルーホール(図示は省略)を利用することで、X軸方向ループコイルとY軸方向ループコイルが、フレキシブルシート121に形成される。なお、図2では、位置検出センサ12のフレキシブルシート121上には、電極導体122及123は、便宜上、直線状の導体として示したが、実際上は、ループコイルが構成されるものである(後述の図7参照)。
【0035】
<電子ペン2の構成例>
電子ペン2は、この実施形態では、前述したように、電磁誘導方式でタブレット端末1の位置検出装置部13の位置検出センサ12と信号を授受することで、その指示位置をタブレット端末1の位置検出装置部13で検出させるようにする。この実施形態の電子ペン2の機械的な構成は、芯体が磁石(この例では永久磁石)で構成される点を除けば、公知の電磁誘導方式の電子ペンの構成と同様の構成とすることができる。そこで、ここでは、電子ペン2の要部の構成のみを説明して、その他の部分の構成の説明は省略する。
【0036】
図1に示すように、この実施形態の電子ペン2は、例えば樹脂からなる筒状の筐体20の中空部の、軸心方向の一方の開口20a側に、電子ペン本体部21を備えると共に、軸心方向の他方の開口20b側に、消しゴム機能部22を備える。
【0037】
電子ペン本体部21は、コイル211と、当該コイル211が巻回された磁性体コア、この例ではフェライトコア212と、磁石からなる芯体213と、筆圧検出部214と、コイル211と共に共振回路を構成するコンデンサ215とを備えて構成されている。
【0038】
また、消しゴム機能部22は、コイル221と、当該コイル221が巻回された磁性体コア、この例ではフェライトコア222と、磁石からなる芯体223と、コイル221と共に共振回路を構成するコンデンサ224とを備えて構成されている。
【0039】
図4は、電子ペン本体部21の構成例を説明するための図である。この実施形態の電子ペン本体部21においては、図4(A)に示すように、コイル211が巻回されたフェライトコア212のペン先側とは反対側が、例えば樹脂で構成された筒状体部216と結合されている。
【0040】
図4(A)に示すように、この例のフェライトコア212は、例えば円柱状形状のフェライト材料に、芯体213を挿通するための所定の径r1(例えばr1=1mm)の、軸心方向の貫通孔212aが形成されたものとされている。このフェライトコア212の、ペン先側には、徐々に先細となるテーパー部212bが形成されており、位置検出装置部13の位置検出センサ12との間の磁気的な結合を、テーパー部212bがない場合に比して、より強くなるように構成されている。
【0041】
そして、この実施形態では、筒状体部216のフェライトコア212との結合部の近傍には、筆圧検出部214が設けられている。この筆圧検出部214は、例えば、特開2013-161307号公報に開示されているような筆圧に応じて静電容量を可変とする半導体素子を用いた構成としている。なお、筆圧検出部214は、例えば特許文献:特開2011-186803号公報に記載されている周知の機構的な構成の筆圧検出手段を使用した、筆圧に応じて静電容量が変化する可変容量コンデンサの構成とすることもできる。
【0042】
筒状体部216内には、さらにプリント基板217が収納されている。このプリント基板217には、コイル211に並列に接続されて共振回路を構成するコンデンサ215が設けられている。そして、筆圧検出部214で構成される可変容量コンデンサは、このプリント基板217に形成されているコンデンサ215に並列に接続されて、前記共振回路の一部を構成するようにされている。
【0043】
そして、図4(B)に示すように、フェライトコア212の、ペン先側とは反対側が、筒状体部216に設けられている凹部216aに嵌合されることで、フェライトコア212が筒状体部216と結合される。図示は省略するが、このフェライトコア212の筒状体部216との結合の際に、コイル211の一端211a及び211bが、筒状体部216のプリント基板217に設けられているコンデンサ215と並列に接続されるように電気的に接続される。
【0044】
芯体213は、この実施形態では、フェライトコア212の貫通孔212aの内径r1よりも小さい径の棒状の磁石で構成され、この例では、ペン先部213a側の磁極がN極、ペン先部213aとは軸心方向において反対側の端部(尾端部)213bの磁極がS極とされている。そして、芯体213の軸心方向の長さは、フェライトコア212の軸心方向の長さよりも長くされている。
【0045】
この実施形態では、以上のように構成された芯体213は、図4(B)に示すように、フェライトコア212の貫通孔212aを挿通され、尾端部213bが、筆圧検出部214の嵌合凹部214aに嵌合されることで、筆圧検出部214に直接的に嵌合される。そして、この嵌合状態では、芯体213は、フェライトコア212の先端側の開口から、ペン先部が突出する状態とされる。これにより、芯体213のペン先部213a側の磁極が、フェライトコア212のペン先側の端部よりも離れた位置となるようにされる。
【0046】
そして、この実施形態では、図4(B)に示すように、芯体213のペン先部213aは、フェライトコア212のペン先側の一部と共に、電子ペン2の筐体20の開口20aから外部に突出するようにされている。これにより、芯体213のペン先部213aに印可される筆圧は、筆圧検出部に直接的に伝達されるようにされる。
【0047】
この実施形態の電子ペン2は、位置検出装置部13の位置検出センサ12を通じて送信される周波数f0の交流信号を電磁誘導結合により共振回路で受信する。そして、電子ペン2の共振回路は、その受信した交流信号を、電磁誘導結合により位置検出センサ12に帰還する。位置検出装置部13では、電子ペン2から帰還される交流信号の位置検出センサ12上での位置を検出することにより、電子ペン2による指示位置を検出する。また、位置検出装置部13は、電子ペン2から受信した交流信号の周波数あるいは位相の変化を検出することにより、電子ペン2に印加されている筆圧を検出する。
【0048】
以上のような電子ペン2と位置検出センサ12との間での交流信号のインタラクションをできるだけエネルギーロスを少なくして良好に行えるようにするために、電子ペン2の共振回路の共振周波数は、位置検出装置部13からの交流信号の周波数f0に等しく選定される。
【0049】
しかし、この実施形態では、芯体213が磁石で構成されることによる影響を考慮する必要がある。すなわち、磁石からなる芯体213がフェライトコア212の貫通孔212a内に挿通されたときには、フェライトコア212の磁気特性が減少し、これにより、コイル211のインダクタンス値が減少してしまう。このため、コイル211とコンデンサ215からなる共振回路の共振周波数が、位置検出装置部13から送信される交流信号の周波数f0に等しく選定されていたとしても、実効的な共振周波数は、磁石からなる芯体213によるコイル211のインダクタンスの減少分Δfだけ、周波数f0よりも高くなってしまう(図5(A)に示す電子ペン2の共振特性図参照)。
【0050】
そこで、この実施形態の電子ペン2では、磁石からなる芯体213によるコイル211のインダクタンスの減少分を予め考慮して、コイル211とコンデンサ215からなる共振回路の共振周波数を、位置検出装置部13から送信される交流信号の周波数f0よりも低い周波数f1(<f0)に選定するようにする(図5(B)の共振特性図参照)。このようにすれば、フェライトコア212の貫通孔212a内に芯体213が挿通されている状態においては、図5(B)に示すように、コイル211とコンデンサ215とで構成される共振回路の実効的な共振周波数は、周波数f0に等しくなる。
【0051】
また、この実施形態のタブレット端末1の位置検出センサ12は、図示は省略したが、磁性シート11との対向面側とは反対側の面には、外部との電磁遮蔽のためのシート状磁性部材が設けられている。
【0052】
電子ペン2がタブレット端末1の手書き入力面1Aに近接あるいは接触すると、磁石からなる芯体213からの直流磁束が、位置検出センサ12のシート状磁性部材に侵入し、このシート状磁性部材の磁気特性が減少し、これにより、位置検出センサ12のループコイルのインダクタンス値が減少する。このため、電子ペン2のコイル211と位置検出センサ12のループコイルとの磁気結合が減少し、電子ペン2と位置検出センサ12との間でインタラクションする信号の信号レベルが低くなる恐れがある。
【0053】
しかしながら、図6に示すように、位置検出センサ12に形成されているループコイル(図6の例は2回巻きのループコイル)12LCにより囲まれる、鎖交する磁束を検出する範囲(図6で斜線を付してある範囲)に比べて、磁石からなる芯体213のペン先部213aの磁極からの磁束範囲が極めて小さいことと、電子ペン2の芯体213のペン先部213aと位置検出センサ12のシート状磁性部材との間には一定の距離があることから、位置検出装置部13での座標検出の精度を狂わせるほどの影響はない。すなわち、磁石で構成されている芯体213のペン先部213aからの磁束は、電子ペン2のコイル211と位置検出センサ12との磁気結合と、電子ペン2のコイル211、位置検出センサ12及び位置検出センサ12のシート状磁性部材で構成される部分の磁気特性とには、ほとんど影響は与えない。
【0054】
以上のように、この実施形態の手書き入力装置では、電磁誘導方式の電子ペン2の芯体213を磁石で構成しても、位置検出装置部13において、電子ペン2により指示された座標位置を、従来と同等の精度で検出することができる。
【0055】
電子ペン2の消しゴム機能部22は、上述した電子ペン本体部21と同様に構成することができる。すなわち、コイル221が巻回されたフェライトコア222の貫通孔に、棒状の磁石からなる芯体223が挿通されて構成される。この場合に、磁石からなる芯体223の磁極は、その先端側がS極、先端側とは反対側がN極とされて、電子ペン本体部21の芯体213とは逆の磁極の極性となるように構成されている。
【0056】
したがって、磁性シート11の表面に表れている筆記軌跡をなぞるように、消しゴム機能部22の芯体223の先端部が近接あるいは接触されると、電子ペン本体部21の芯体213のペン先部213aのN極の磁極により吸引されてS極に帯磁されていたマイクロカプセル113内の鉄粉113Feは、消しゴム機能部22の芯体223の先端部のS極の磁極により、磁性シート11の表面から離反するようにされて、磁性シート11の表面に表れていた筆記軌跡が消去される。
【0057】
この実施形態の手書き入力装置の位置検出装置部13では、前述した筆記入力検出用の周波数f0の交流信号のほかに、この周波数f0と明確に区別して帰還信号を検出することができる周波数f2(≠f0≠f1)の交流信号を、位置検出センサ12を介して消去指示の検出用として電子ペン2に送信するようにする。
【0058】
そして、電子ペン2の消しゴム機能部22のコイル221は、コンデンサ224と並列に接続されて共振回路を構成する。ただし、この共振回路の共振周波数は、上記の消去指示の検出用の交流信号の周波数f2と等しくなるように構成されて、位置検出装置部13からの周波数f2の交流信号を受信すると共に、位置検出センサ12に帰還するようにする。この場合に、この消しゴム機能部22の共振回路の共振周波数も、電子ペン本体部21の共振回路の共振周波数と同様に、磁石で構成されている芯体223の影響を考慮して、芯体223がフェライトコア222の貫通孔を挿通されて装着されているときに、位置検出装置部13の消去指示を検出するための交流信号の周波数と等しくなるように、周波数f2よりも低い周波数に選定されている。
【0059】
使用者が電子ペン2の消しゴム機能部22の芯体223を磁性シート11の表面に近接あるいは接触している状態では、位置検出装置部13からの消去指示の検出用の交流信号が、消しゴム機能部22の共振回路を介して、周波数f2の交流信号が帰還されるので、位置検出装置部13は、位置検出センサ12を介して、その帰還信号を受信し、位置検出センサ12上における、その受信した位置を検出することで、消去指示がなされた座標位置を検出する。
【0060】
こうして、この実施形態の手書き入力装置では、電子ペン2の電子ペン本体部21のペン先部213aを手書き入力面1Aに近接あるいは接触させることで、磁性シート11の表面にその筆記軌跡を表示させることができると共に、その筆記軌跡の電子データ(筆記データ及び筆圧データ)を検出して記憶することができる。
【0061】
そして、電子ペン2の消しゴム機能部22の芯体223の先端部を手書き入力面1Aに近接あるいは接触させると共に、磁性シート11の表面に表示されている筆記軌跡を辿るように移動させることで、磁性シート11の表面に表示されていた筆記軌跡を消去することができると共に、対応する筆記データ及び筆圧データを、記憶部から削除して消去することができる。
【0062】
なお、磁性シート11用のイレーサ3を用いて磁性シート11上に表示されていた筆記跡を消去した場合には、位置検出装置部13に記憶されている筆記データ及び筆圧データは消去されない。
【0063】
なお、この実施形態は、電子ペン2の消しゴム機能部22には筆圧検出部は設けられない。しかし、消しゴム機能部22にも、電子ペン本体部21と同様に筆圧検出部を設けても勿論良い。
【0064】
この実施形態の電子ペン2おいては、電子ペン本体部21の芯体213のペン先部213aが外部に突出する使用時には、図4(B)に示すように、芯体213のみではなく、フェライトコア212の一部も筐体20の開口部20aから突出しており、フェライトコア212のテーパー部212bの先端から、位置検出センサ12の入力面までの距離が短くなる。したがって、この実施形態の電子ペン2によれば、フェライトコア212が、筐体20の中空部内に留まっている従来の電子ペンに比較して、位置検出センサ12との電磁結合が強くなる。さらに、この実施形態では、フェライトコア212の先端部側は、テーパー部212bとされているので、フェライトコア212の先端の断面積が小さくなり、より磁束密度が大きくなって、位置検出センサ12と強く電磁結合するようになる。
【0065】
したがって、この実施形態の電子ペン2は、細型化された場合であっても、位置検出センサ12と強く電磁結合することができ、位置検出装置部13においては、電子ペン2による指示位置の検出を感度良く検出することができるようになる。
【0066】
この実施形態では、消しゴム機能部22の芯体223及びフェライトコア222も、電子ペン本体部21の芯体213及びフェライトコア212と同様に構成されているものである。
【0067】
<実施形態の手書き入力装置の電子回路の構成例>
図7は、この実施形態の手書き入力装置を構成するタブレット端末1及び電子ペン2の電子回路構成を示す図である。
【0068】
電子ペン2は、図7に示すように、コイル211とコンデンサ215と筆圧検出部214からなる可変容量コンデンサ214Cとで構成される電子ペン本体部21の共振回路RCpと、コイル221とコンデンサ224とで構成される消しゴム機能部22の共振回路RCeとを備える。
【0069】
電子ペン2の電子ペン本体部21の芯体213のペン先部213aを、タブレット端末1の手書き入力面1Aに近接あるいは接触させたときには、共振回路RCpが位置検出センサ12と電磁誘導結合し、周波数foの交流信号をやり取りし、電子ペン2の電子ペン本体部21の芯体213のペン先部213aを、タブレット端末1の手書き入力面1Aに近接あるいは接触させたときには、共振回路RCpが位置検出センサ12と電磁誘導結合して、周波数f0の交流信号をやり取りする。
【0070】
位置検出装置部13の位置検出センサ12には、X軸方向ループコイル群124Xと、Y軸方向ループコイル群125Yとが形成されている。位置検出装置部13の位置検出回路130は、位置検出センサ12のX軸方向ループコイル群124X及びY軸方向ループコイル群125Yを通じて電子ペン2の共振回路RCp及び共振回路RCeに対して電磁結合により信号を送信する。
【0071】
この場合に、位置検出回路130は、筆記入力検出処理と消去入力検出処理とを時分割で行うように構成される。すなわち、位置検出回路130は、筆記入力検出処理を行う筆記入力検出期間TPと、消去入力検出処理を行う消去入力検出期間TEとを交互に実行するようにする。位置検出回路130は、筆記入力検出期間TPには、周波数f0の交流信号を位置検出センサ12を通じて電子ペン2に送信し、また、消去入力検出期間TEには、周波数f2の交流信号を位置検出センサ12を通じて電子ペン2に送信する。
【0072】
そして、電子ペン2は、電子ペン本体部21の芯体213のペン先部213aを、タブレット端末1の手書き入力面1Aに近接あるいは接触させたときには、共振回路RCpが位置検出センサ12からの筆記入力検出期間TPにおける周波数f0の交流信号を受信すると共に、この共振回路RCpから位置検出センサ12に交流信号を帰還する。このとき、消去入力検出期間TEにおける周波数f2は、共振回路RCpの共振周波数f0とは異なるため、共振回路RCpではその信号の受信レベルが低くなり、そのため、位置検出センサ12への帰還する信号のレベルも小さくなり、位置検出回路130での検出対象レベル以下となる。これにより、位置検出回路130は、電子ペン2の電子ペン本体部21の芯体213のペン先部213aが、タブレット端末1の手書き入力面1Aに近接あるいは接触される状態においては、筆記入力検出期間TPで筆記入力検出のみが行われ、消去入力検出期間TEでは消去入力検出処理は行われない。
【0073】
また、電子ペン2は、消しゴム機能部22の芯体223の先端部を、タブレット端末1の手書き入力面1Aに近接あるいは接触させたときには、共振回路RCeが位置検出センサ12からの消去入力検出期間TEにおける周波数f2の交流信号を受信すると共に、この共振回路RCeから位置検出センサ12に交流信号を帰還する。このとき、筆記入力検出期間TPにおける周波数f0は、共振回路RCeの共振周波数f2とは異なるため、共振回路RCeではその信号の受信レベルが低くなり、そのため、位置検出センサ12への帰還する信号のレベルも小さくなり、位置検出回路130での検出対象レベル以下となる。これにより、位置検出回路130は、電子ペン2の消しゴム機能部22の芯体223の先端部が、タブレット端末1の手書き入力面1Aに近接あるいは接触される状態においては、消去入力検出期間TEで消去入力検出のみが行われ、筆記入力検出期間TPでは筆記入力検出処理は行われない。
【0074】
そして、位置検出回路130では、電子ペン2の共振回路RCp又は共振回路RCeからの帰還信号を、電磁結合により位置検出センサ12を通じて受信する。そして、位置検出回路130は、その受信した信号が検出される位置検出センサ12上の位置から、電子ペン2により指示された位置検出センサ12上の位置を検出する。
【0075】
また、位置検出回路130は、筆記入力検出期間TPでは、電子ペン2から受信した信号の位相変化を検出することより共振回路RCpの共振周波数の変化を検出して、電子ペン2の電子ペン本体部21の芯体213に印加された筆圧を検出するようにする。
【0076】
位置検出回路130には、筆記入力検出処理と消去入力検出処理との時分割処理を制御すると共に、以下に説明するような位置検出処理及び筆圧検出処理を制御する位置検出制御部137が設けられている。位置検出制御部137は、発振器131の発振周波数を、筆記入力検出期間TPでは周波数f0とし、消去入力検出期間TEでは周波数f2とするように切り替える。そして、この例では、消去入力検出期間TEでは、筆圧検出処理は行わないように制御する他は、筆記入力検出期間TPと消去入力検出期間TEとで同様の検出処理を行うように制御する。
【0077】
位置検出回路130には、位置検出センサ12のX軸方向ループコイル群124X及びY軸方向ループコイル群125Yが接続される選択回路126が設けられている。この選択回路126は、2つのループコイル群124X,125Yのうちの一のループコイルを順次選択して、共振回路RCp又は共振回路RCeに対して信号を送信させると共に、共振回路RCp又は共振回路RCeから帰還される信号を受信させる。
【0078】
選択回路126に対しては、位置検出制御部137により切替制御される切替回路133が接続される。この切替回路133が送信側端子Tに接続されるときには、発振器131から交流信号が選択回路126に供給され、受信側端子Rに接続されるときには、選択回路126からの信号が、アンプ134を通じて指示位置検出用回路135と、筆圧検出用回路136に供給される。
【0079】
指示位置検出用回路135は、位置検出センサ12のループコイルに発生した誘導電圧、すなわち受信信号を検波し、その検波出力信号をディジタル信号に変換し、位置検出制御部137に出力する。位置検出制御部137は、指示位置検出用回路135からのデジタル信号、すなわち、各ループコイルに発生した誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて電子ペン2のX軸方向及びY軸方向の指示位置の座標値を算出する。
【0080】
一方、筆圧検出用回路136は、受信アンプ134の出力信号を発振器131からの交流信号で同期検波して、それらの間の位相差(周波数偏移)に応じたレベルの信号を得、その位相差(周波数偏移)に応じた信号をデジタル信号に変換して位置検出制御部137に出力する。位置検出制御部137は、筆圧検出用回路136からのデジタル信号、すなわち、送信した電波と受信した電波との位相差(周波数偏移)に応じた信号のレベルに基づいて、電子ペン2の電子ペン本体部21の芯体213に印加されている筆圧を検出する。
【0081】
位置検出制御部137は、筆記入力検出期間TPでは、検出した電子ペン2の指示位置の座標データを筆記データとして、検出した筆圧データと共に、コントロール部140に供給する。位置検出制御部137は、また、消去入力検出期間TEでは、検出した電子ペン2の指示位置の座標データを消去データとして、コントロール部140に供給する。
【0082】
コントロール部140は、メモリ部141と、無線通信部142とを備える。また、図示は省略するが、コントロール部140は、充電式バッテリーと充電回路及び電源回路を備える。そして、このコントロール部140に対して、操作パネル部1Bに設けられている電源ボタン1Ba、筆記入力終了ボタン1Bb及び情報送信ボタン1Bcからなる操作部143が接続されると共に、パワーインジケータ1Bd及び通信インジケータ1Beからなるインジケータ部144が接続される。
【0083】
操作部143の電源ボタン1Baが押下操作されてオンとされると、コントロール部140は、電源電圧Vccを生成して各部に供給し、タブレット端末1を動作状態とする。このとき、コントロール部140は、パワーインジケータ1Bdを点灯して、電源オンを使用者に報知する。電源ボタン1Baが再度押下されると、電源オフの指示となり、コントロール部140は、電源電圧Vccの各部への供給を停止して、非動作状態になり、パワーインジケータ1Bdは消灯される。
【0084】
コントロール部140は、位置検出制御部137から受け取った筆記データ及び筆圧データは、メモリ141に記憶する。そして、コントロール部140は、位置検出制御部137から消去データを受け取ると、メモリ141に記憶している対応する筆記データ及び筆圧データを消去する。
【0085】
そして、コントロール部140は、使用者により筆記入力終了ボタン1Bbが押下されたことを検出すると、その時までにメモリ141に記憶されていた筆記データ及び筆圧データのグループを1ページ分のデータとして記憶するようにする。このとき、1ページ分のデータには、ページ識別情報が付与される。
【0086】
したがって、使用者は、筆記入力終了ボタン1Bbを押下した後には、イレーサ3により磁性シート11の表面の全面に表れている筆記跡を消去して、新たな手書き入力を行うようにすることができる。このとき、イレーサ3は、磁性シート11の表面に表れている筆記跡のみの消去用であるので、コントロール部140は、メモリ141に記憶しているページ単位の筆記データは消去されることはない。
【0087】
以上のようにして、磁性シート11の表面に表れている筆記跡の全てを消去した後、使用者は、電子ペン2を用いて、新たな筆記入力及び消去を行うと、コントロール部140は、当該新たな筆記データ及び筆圧データを、メモリ141に記憶する。そして、使用者が、筆記入力終了ボタン1Bbを押下すると、メモリ141に新たに記憶された筆記データ及び筆圧データは、別ページのデータとして、メモリ141に記憶される。
【0088】
そして、この実施形態では、コントロール部140は、無線通信部142を備えており、例えばコンピュータからなるサーバ装置と無線通信が可能とされている。そして、サーバ装置と無線通信が可能な環境において、使用者がタブレット端末1の操作パネル部1Bの情報送信ボタン1Bcを押下操作すると、コントロール部140は、メモリ141に記憶されているページ単位の筆記データ及び筆圧データを、サーバ装置に送信して、メモリ141を消去するようにする。このとき、コントロール部140は、サーバ装置に筆記データ及び筆圧データを送信中には、通信インジケータ1Beを点灯して、筆記データ及び筆圧データがサーバ装置に送信されていることを報知するようにする。
【0089】
なお、使用者が情報送信ボタンを操作することでメモリ141に記憶されているページ単位筆記データ及び筆圧データを、サーバ装置に送信するのではなく、筆記入力終了ボタンが押下操作されたら、ページ単位の筆記データ及び筆圧データを、サーバ装置に自動的に送信するように、コントロール部140を構成してもよい。その場合には、情報送信ボタンは設ける必要はない。
【0090】
<使用者による実施形態の手書き入力装置の利用態様>
以上のように構成されているこの実施形態の手書き入力装置の使用者による利用態様の流れの例について説明する。
【0091】
タブレット端末1の磁性シート11の表面の手書き入力面1Aには、筆記跡が全く存在しない状態から説明する。この状態において、使用者は、タブレット端末1の電源ボタン1Baを押下して電源オンとしてタブレット端末1に電源を投入する。
【0092】
そして、使用者は、電子ペン2を把持し、電子ペン本体部21の芯体213のペン先部213aを手書き入力面1Aに近接あるいは接触させて、筆記入力を行う。すると、芯体213が磁石で構成されているので、磁性シート11の表面においては、芯体213が近接あるいは接触した位置のマイクロカプセル113内の鉄粉が吸引されることで、その筆記跡が、例えば黒色に変色して、使用者が視認可能となる。
【0093】
これと同時に、タブレット端末1では、磁性シート11の裏面側に配設されている位置検出センサ12と、電子ペン2の電子ペン本体部21の共振回路RCpのコイル211とが電磁誘導結合して、位置検出装置部13において、磁性シート11の表面に表れている筆記跡に対応する筆記データ及び筆圧データが検出されて、コントロール部140のメモリ141に記憶される。
【0094】
この筆記入力中に、入力した筆記跡を消去したいときには、使用者は、電子ペン2を逆さまに持ち替えて、消しゴム機能部22の芯体223の先端部を、タブレット端末1の磁性シート11の表面の当該消去対象の筆記跡の位置に、近接あるいは接触させるようにする。すると、磁性シート11の表面に表れている筆記跡の部分は、磁石からなる芯体223により磁性シート11の地色に戻り、消去される。これと同時に、電子ペン2の消しゴム機能部22の共振回路RCeのコイル221と、位置検出センサ12とが電磁誘導結合して、位置検出装置部13において、磁性シート11の表面に表れている筆記跡の消去データが検出されて、コントロール部140に供給される。この消去データを受けて、コントロール部140は、消去データに対応する筆記データ及び筆圧データをメモリ141から消去する。
【0095】
そして、使用者は、磁性シート11の表面に表れている筆記跡を見ながら、1ページ分の筆記入力が終了したと判断したときには、タブレット端末1の操作パネル部1Bの筆記入力終了ボタン1Bbを押下する。すると、タブレット端末1では、上述したように、それまでに、メモリ141に記憶されていた筆記データ及び筆圧データを1ページ分のデータとして、ページ識別情報を付加してメモリ141に記憶する。
【0096】
次に、使用者は、続いて別ページとして筆記入力を行いたい場合には、イレーサ3を用いて、磁性シート11の表面に表れている筆記跡を消去する。そして、使用者は、電子ペン2の電子ペン本体部21の芯体213のペン先部213aを手書き入力面1Aに近接あるいは接触させて、筆記入力を行う。そして、1ページ分の筆記入力を終了したと判断したときには、筆記入力終了ボタン1Bbを押下する。すると、メモリ141には、先に記憶した1ページ分のデータとは別の識別情報が付与されて、新たな1ページ分の筆記データ及び筆圧データが記憶される。
【0097】
なお、イレーサ3を用いて消去をしなくても、筆記入力終了ボタン1Bbを押下した後の筆記データ及び筆圧データは、新たな1ページ分の筆記データ及び筆圧データとしてメモリ141に記憶されるものである。
【0098】
以上のようにして、タブレット端末1と電子ペン2とを用いることで、タブレット端末1のメモリ141には、1~複数ページ分の筆記データ及び筆圧データを記憶することができる。使用者は、このタブレット端末1を家や会社に持ち帰り、無線通信部142と通信するように設定されているコンピュータと無線接続し、情報送信ボタン1Bcを押下操作する。すると、タブレット端末1は、メモリ141に記憶している1~複数ページの筆記データ及び筆圧データを、コンピュータに無線送信する。そして、タブレット端末1では、無線送信が終了したら、メモリ141の記憶データを消去する。
【0099】
したがって、その後は、タブレット端末1は、新たな筆記入力を受け付けて、上述の動作を繰り返すことができる状態になる。
【0100】
なお、電子ペン2に、当該電子ペン2を識別するためのペン識別情報の記憶部を設け、この記憶部のペン識別情報を、位置検出センサ12との電磁誘導結合を通じて、あるいは別途設けた無線通信手段を通じて、位置検出装置部13に送信し、位置検出装置部13において、筆記データ及び筆圧データをページ識別情報及びペン識別情報と共に記憶するようにしてもよい。
【0101】
<実施形態の効果>
上述の実施形態の手書き入力装置によれば、磁石で構成されている芯体を備える電子ペン2により手書き入力面1A上で筆記入力をすることで、従来と同様にして、筆記データ及び筆圧データからなる筆記入力の電子データを得ることができると共に、磁石により筆記跡を表現することができる磁性シート11を用いることで、LCDなどの表示パネルを不要とすることができ、安価に製造することができる。
【0102】
また、イレーサ3や電子ペン2の消しゴム機能部22を用いることで筆記跡を容易に消去可能な磁性シート11を用いることで、特許文献3のような用紙を用いる必要がなく、携帯に便利であると共に、用紙の場合のような消しゴムカスが生じないので、その点でも有利である。
【0103】
また、この実施形態の手書き入力装置を構成する電子ペン2は、芯体を磁石で構成する点を除けば、既存の電磁誘導式の電子ペンと同様の構成とすることができるので、低コストで構成することができるというメリットもある。
【0104】
また、上述の実施形態の手書き入力装置の位置検出装置部の位置検出センサ12及び位置検出回路130は、既存の電磁誘導方式の位置検出センサ及び位置検出回路をそのまま利用することができるので、その点でもコスト的に有利である。
【0105】
[芯体の変形例]
以上の実施形態では、芯体213及び芯体223は、棒状の磁石のみで構成したが、このような構成に限られるものではない。
【0106】
<芯体の他の構成例の第1の例>
図8(A)及び(B)は、電子ペン本体部21の芯体に適用した変形例の第1の例を説明するための図である。図8(A)は、この第1の例の芯体231と、コイル211が巻回されているフェライトコア212との部分の分解図であり、また、図8(B)は、第1の例の芯体231を、コイル211が巻回されているフェライトコア212の貫通孔212aに挿通させた状態を示している。
【0107】
図8(A)及び(B)に示すように、この第1の例では、芯体231は、棒状の磁石部材2311と、硬質の材料、例えば金属あるいは硬質樹脂からなるパイプ部材2312とで構成される。棒状の磁石部材2311は、この例では、芯体213と同様にペン先部となる軸心方向の一方の端部2311a側の磁極がN極、反対側の磁極がS極とされていると共に、外径が芯体213の外径よりも細く構成されている。
【0108】
パイプ部材2312の外径は、コイル211が巻回されているフェライトコア212の貫通孔212aの内径r1よりも小さい値に選定されている。また、パイプ部材2312の内径は、棒状の磁石部材2311の外径よりわずかに小さい値に選定されている。そして、図8(B)に示すように、棒状の磁石部材2311が、パイプ部材2312の中空部2312aに圧入挿入されて、磁石部材2311とパイプ部材2312とが一体とされた芯体231を構成するようにされている。この場合に、磁石部材2311とパイプ部材2312との間は接着材により接着するようにしてもよい。
【0109】
この場合に、パイプ部材2312の軸心方向の長さは、磁石部材2311の軸心方向の長さよりも短く選定されており、芯体231においては、磁石部材2311の軸心方向の一方の端部2311aが、ペン先部として、パイプ部材2312の軸心方向の一方の端部から突出するように構成されている。また、第1の例では、磁石部材2311の軸心方向の他方の端部もパイプ部材2312の軸心方向の他方の端部から突出するように構成されている。なお、磁石部材2311の軸心方向の他方の端部は、パイプ部材2312の軸心方向の他方の端部から突出していなくてもよい。
【0110】
そして、図8(B)に示すように、芯体231の磁石部材2311のペン先部となる一方の端部2311aは、パイプ部材2312の一部も含めて、フェライトコア212のペン先側の端部よりも突出するように構成される。これにより、芯体231の磁石部材2311のペン先部となる一方の端部2311aの磁極は、フェライトコア212のペン先側の端部よりも離れた位置となるようにされている。
【0111】
この第1の例の芯体231は、磁石からなる芯体を用いた電子ペン2として、上述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。そして、この第1の例の芯体231は、特に、棒状の磁石部材2311が、剛性の大きいパイプ部材2312の中空部2312a内に挿入されて構成されているので、棒状の磁石部材2311が細くても、パイプ部材2312により保護され、芯体として必要十分な剛性を容易に確保することができる。
【0112】
<芯体の他の構成例の第2の例>
図8(C)及び(D)は、電子ペン本体部21の芯体に適用した変形例の第2の例を説明するための図である。図8(C)は、この第2の例の芯体232と、コイル211が巻回されているフェライトコア212との部分の分解図であり、また、図8(D)は、第2の例の芯体232を、コイル211が巻回されているフェライトコア212の貫通孔212aに挿通させた状態を示している。
【0113】
図8(C)及び(D)に示すように、この第2の例では、芯体232は、複数個の磁石素片2321mを軸心方向に一列に並べて連結させて形成した棒状の磁石部材2321と、パイプ部材2322とで構成される。パイプ部材2322は、第1の例の芯体231のパイプ部材2312と同様に、硬質材料である例えば金属あるいは硬質樹脂で構成されると共に、第1の例の芯体231のパイプ部材2312と同様の外径、内径及び長さを有するものとして構成されている。
【0114】
磁石素片2321mは、第1の例の芯体231の磁石部材2311をその軸心方向に直交する方向に輪切りにした円柱状形状のものに等しい。そして、この第2の例の芯体232は、図8(D)に示すように、パイプ部材2322の中空部2322a内に、円柱状形状の磁石素片2321mの複数個を一列に並べて連結した磁石部材2321を圧入嵌合することで構成する。この場合に、パイプ部材2322の中空部2322a内に、円柱状形状の磁石素片2321mの複数個を、順次に圧入嵌合して連結することで芯体232を構成するようにしてもよい。なお、各磁石素片2321mの間及び各磁石素片2321mとパイプ部材2322との間は接着材により接着するようにしてもよい。
【0115】
この第2の例の芯体232においても、磁石部材2321の軸心方向の一方の端部2321aが、ペン先部として、パイプ部材2322の軸心方向の一方の端部から突出するように構成されている。なお、磁石部材2321の軸心方向の他方の端部は、パイプ部材2322の軸心方向の他方の端部から突出するように構成してもよいし、突出していなくてもよい。
【0116】
そして、図8(D)に示すように、芯体232のペン先部2321aは、パイプ部材2322の一部も含めて、フェライトコア212のペン先側の端部よりも突出するように構成される。これにより、芯体232の磁石部材2321のペン先部となる一方の端部2321aの磁極は、フェライトコア212のペン先側の端部よりも離れた位置となるようにされている。
【0117】
この第2の例の芯体232も、磁石からなる芯体を用いた電子ペン2として、上述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。そして、この第2の例の芯体232は、特に、この第2の例の芯体232は、複数個の磁石素片2321mが一列に連結されて構成されるので、芯体232の磁石部材2321のペン先部となる一方の端部2321aへの衝撃荷重が加わった時の耐衝撃特性が向上するという効果を奏する。
【0118】
<芯体の他の構成例の第3の例>
図8(E)は、電子ペン本体部21の芯体に適用した変形例の第3の例を説明するための図である。上述した第1の例及び第2の例の芯体231及び232は、そのペン先部となる磁性部材2311及び2321の一方の端部2311a及び2321aは外部に露出している構成とされているが、この第3の例の芯体は、棒状の磁性部材のペン先部となる一方の端部が保護部材により覆われている例である。
【0119】
図8(E)は、この第3の例の芯体233を、コイル211が巻回されているフェライトコア212の貫通孔212aに挿通させた状態を示している。この例の芯体233は、上述した第2の例の芯体232の磁性部材2321のペン先部となる一方の端部2321aを、保護キャップ2331により覆った構成に等しい。この図8(E)において、第2の例の芯体232の構成部分と同一の部分には、同一参照符号を付してある。
【0120】
保護キャップ2331は、この例では、パイプ部材2322の材質に関係なく、例えば樹脂で構成されている。パイプ部材2322が金属で構成されている場合には、この保護キャップ2331も、金属で構成してもよい。
【0121】
また、保護キャップ2331は、パイプ部材2322の一端側に一体的に構成しておくようにしてもよい。すなわち、内部に中空部を備えると共に、芯体232の磁性部材2321の一方の端部2321a側を閉塞した形状の棒状部材を用意し、この棒状部材のペン先側とは反対側の開口から、磁石部材2321を挿入するようにすることで、芯体233を構成してもよい。
【0122】
この第3の例の芯体233によれば、保護キャップ2331により、磁石からなる芯体のペン先部の欠けを防止することができると共に、手書き入力面と芯体のペン先部との接触時の摩擦を小さくすることができる。
【0123】
なお、図8(E)では、第2の例の芯体232の磁性部材2321のペン先部となる一端2321aを保護部材で覆う場合を示したが、第3の例は、第1の例の芯体231の磁性部材2311のペン先部となる一端2311aを保護部材で覆う場合にも適用できる。
【0124】
なお、上述した第1の例~第3の例は、電子ペン本体部21の芯体だけでなく、消しゴム機能部22の芯体にも全く同様にして適用できることは言うまでもない。
【0125】
[その他の実施形態又は変形例]
なお、上述の実施形態の電子ペン2においては、フェライトコア212のペン先側の端部も、電子ペン2の筐体20の開口20aから外部に突出するようにしたが、開口20aから外部に突出するのは芯体213のペン先部213aのみとして、フェライトコア212は、筐体20の中空部内に存在するように構成してもよい。消しゴム機能部22についても同様である。
【0126】
また、上述の実施形態の電子ペン2は、電子ペン本体部21に加えて消しゴム機能部22を備える構成としたが、消しゴム機能部22は、電子ペン2とは別個の部材として構成してもよい。
【0127】
また、上述の実施形態では、芯体213の尾端部を、筆圧検出部214の嵌合凹部214aに直接的に嵌合させるようにしたが、尾端部と、嵌合凹部214aとの間に筆圧伝達部材を介在させるようにして、芯体213を筆圧検出部に対して間接的に嵌合させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1…タブレット端末、1A…手書き入力面、1B…操作パネル部、2…電子ペン、3…イレーサ、11…磁性シート、12…位置検出センサ、13…位置検出装置部、21…電子ペン本体部、22…消しゴム機能部、211,221…コイル、212,222…フェライトコア、213,223,216,217,218…芯体、214…筆圧検出部、215,224…コンデンサ、2311,2321…磁石部材、2312,2322…パイプ部材、2181…保護キャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8