IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エシロール・アンテルナシオナルの特許一覧

<>
  • 特開-レンズ要素 図1a
  • 特開-レンズ要素 図1b
  • 特開-レンズ要素 図2
  • 特開-レンズ要素 図3
  • 特開-レンズ要素 図4
  • 特開-レンズ要素 図5
  • 特開-レンズ要素 図6a
  • 特開-レンズ要素 図6b
  • 特開-レンズ要素 図7a
  • 特開-レンズ要素 図7b
  • 特開-レンズ要素 図7c
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100841
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】レンズ要素
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/06 20060101AFI20240719BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20240719BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G02C7/06
G02B3/00 A
G02B5/18
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024079490
(22)【出願日】2024-05-15
(62)【分割の表示】P 2020560128の分割
【原出願日】2019-04-01
(31)【優先権主張番号】18305527.6
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/055222
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ギヨー
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ・フェルミジエ
(72)【発明者】
【氏名】マリウス・プルー
(57)【要約】
【課題】近視又は遠視等の目の異常屈折の進行を抑制し、又は少なくとも遅らせるレンズ要素を提供する。
【解決手段】装用者の目の前に装用されることが意図されるレンズ要素であって、標準装用状況において、装用者の上記目の異常屈折を矯正する装用者の処方に基づく第1の光学機能を装用者に提供するように構成された処方部分と、複数の連続光学要素とを備え、各光学要素は、上記標準装用状況において第2の光学機能及び標準装用状況において目の網膜に結像しないという第3の光学機能であって、それにより、目の異常屈折の進行を遅らせる、第3の光学機能を同時に提供する同時二焦点光学機能を有する、レンズ要素。
【選択図】図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装用者の目の前に装用されることが意図されるレンズ要素であって、
- 標準装用状況において、前記装用者の前記目の異常屈折を矯正する前記装用者の処方に基づく第1の光学機能を前記装用者に提供するように構成された処方部分と、
- 複数の連続する光学要素と、
を備え、
各光学要素は、
- 標準装用状況において0.25ジオプタ以下の第2の光学機能、及び
- 前記標準装用状況において前記目の網膜に結像しないという第3の光学機能であって、それにより、前記目の前記異常屈折の進行を遅らせ、前記第3の光学機能は、前記処方部分の光学機能とは異なり、かつ、前記第2の光学機能とは少なくとも0.1ジオプタ異なる、第3の光学機能、
を同時に提供する同時二焦点光学機能を有する、レンズ要素。
【請求項2】
前記レンズ要素は、眼鏡フレームに搭載されることが意図される縁付きレンズ要素であり、前記レンズ要素の少なくとも1つの面の表面全体は、前記複数の連続する光学要素で覆われる、請求項1に記載のレンズ要素。
【請求項3】
前記光学要素の少なくとも一部は、複数の同心リングに沿って配置される、請求項2に記載のレンズ要素。
【請求項4】
前記光学要素の少なくとも一部は、前記レンズ要素の前面に配置される、請求項1~3の何れか1項に記載のレンズ要素。
【請求項5】
前記光学要素の少なくとも一部は、複屈折材料で作られる、請求項1~4の何れか1項に記載のレンズ要素。
【請求項6】
前記光学要素の少なくとも一部は回折レンズである、請求項1~5の何れか1項に記載のレンズ要素。
【請求項7】
前記光学要素の少なくとも一部はπフレネルレンズである、請求項1~6の何れか1項に記載のレンズ要素。
【請求項8】
前記回折レンズの少なくとも一部は、メタ表面構造を含む、請求項1に記載のレンズ要素。
【請求項9】
前記光学要素の少なくとも一部は、多焦点バイナリ構成要素である、請求項1~8の何れか1項に記載のレンズ要素。
【請求項10】
前記光学要素の少なくとも一部はピクセル化レンズである、請求項1~9の何れか1項に記載のレンズ要素。
【請求項11】
前記第2の光学機能の屈折力と前記第3の光学機能の屈折力との間の差は、0.5D以上である、請求項1~10の何れか1項に記載のレンズ要素。
【請求項12】
前記第1の光学機能の屈折力と前記第3の光学機能の屈折力との間の差は、0.5D以上である、請求項1~11の何れか1項に記載のレンズ要素。
【請求項13】
請求項1~12の何れか1項に記載の装用者の目の前に装用されることが意図されるレンズ要素を提供する方法であって、
- 標準装用状況において、前記装用者の前記目の異常屈折を矯正する前記装用者の処方に基づく第1の屈折力を前記装用者に提供するように構成されたレンズ部材を提供するステップと、
- 複数の連続する光学要素を備えた光学パッチを提供するステップと、
- 前記レンズ部材の前面又は背面の一方に前記光学パッチを配置することによりレンズ要素を形成するステップと、
を含み、
各光学要素は、前記光学パッチが前記レンズ部材の前記前面又は背面の一方に配置された場合、
- 標準装用状況において第2の光学機能及び
- 前記標準装用状況において前記目の網膜に結像しないという第3の光学機能であって、それにより、前記目の前記異常屈折の進行を遅らせる、第3の光学機能
を同時に提供する同時二焦点光学機能を有する、方法。
【請求項14】
請求項1~12の何れか1項に記載の装用者の目の前に装用されることが意図されるレンズ要素を提供する方法であって、前記レンズ要素を鋳造するステップと、前記鋳造するステップ中、前記レンズ要素が前記装用者の前記目の前に装用された場合、
- 標準装用状況において第2の光学機能及び
- 前記標準装用状況において前記目の網膜に結像しないという第3の光学機能であって、それにより、前記目の前記異常屈折の進行を遅らせる、第3の光学機能
を同時に提供する同時二焦点光学機能をそれぞれ有する複数の連続する光学要素を含む光学パッチを提供するステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の目の前に装用されて、近視又は遠視等の目の異常屈折の進行を抑制することが意図されたレンズ要素に関する。
【背景技術】
【0002】
目の近視は、目が遠くの物体を網膜の前で結像することを特徴とする。近視は通常、凹レンズを使用して矯正され、遠視は通常、凸レンズを使用して矯正される。
【0003】
個人によっては、特に子供が、従来の単一視光学レンズを使用して矯正される場合、近くの距離にある物体を観測するとき、すなわち近見視状況において不正確に結像することが観測されてきた。遠見視について矯正された近視の子供の側でのこの結像欠点により、近くの物体の像はまた、網膜の背後、更には中心窩エリアにも形成される。
【0004】
そのような結像欠陥は、そのような個人の近視の進行に影響を及ぼし得る。上記個人の大半で、近視欠陥が時間の経過に伴って増大することを観測し得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Eyal BenEliezer,Emanuel Marom,Naim Konforti,及びZeev Zalevsky著、Experimental realization of an imaging system with an extended depth of field、Appl.Opt.,44(14):2792-2798,May 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、近視又は遠視等の目の異常屈折の進行を抑制し、又は少なくとも遅らせるレンズ要素が必要とされているようである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明は、装用者の目の前に装用されることが意図されるレンズ要素であって、
- 標準装用状況において、装用者の上記目の異常屈折を矯正する装用者の処方に基づく第1の屈折力を装用者に提供するように構成された処方部分と、
- 複数の連続光学要素と、
を備え、
各光学要素は、
- 標準装用状況において第2の光学機能及び
- 上記標準装用状況において目の網膜に結像しないという第3の光学機能であって、それにより、目の異常屈折の進行を遅らせる、第3の光学機能
を同時に提供する同時二焦点光学機能を有する、レンズ要素を提案する。
【0008】
有利なことには、第2及び第3の光学機能を同時に提供する複数の連続光学要素を有することは、装用者の網膜への光フォーカスの部分と、装用者の網膜の前又は背後の何れかにおける光フォーカスの部分とを有することにより近視又は遠視等の目の異常屈折の進行を遅らせる、構成が容易なレンズ要素を有することを可能にする。
【0009】
潜在的には、本発明によるレンズ要素は、網膜にフォーカスすべき光の部分及び目の網膜にフォーカスすべきではない光の部分を選択できるようにすることを更に可能にし得る。
【0010】
単独で又は組み合わせて考慮することができる更なる実施形態によれば、
- 標準装用状況における第2の光学機能の屈折力は、0.25ジオプタ以下であり、且つ/又は
- 各光学要素は光軸を有し、且つ/又は
- レンズ要素は、眼鏡フレームに搭載されることが意図される縁付きレンズ要素であり、レンズ要素の少なくとも1つの面の表面全体は、複数の連続光学要素で覆われ、且つ/又は
- 処方部分の少なくとも部分、例えば、レンズ要素の光学中心周囲の処方部分のゾーンは、光学要素を含まず、且つ/又は
- 処方部分は、複数の光学要素として形成される部分以外の部分として形成され、且つ/又は
- 光学要素の少なくとも部分、例えば全ては、レンズ要素の表面の少なくとも1つに予め定義されたアレイ、例えば正方形アレイ又は六角形アレイで配置され、且つ/又は
- 光学要素の少なくとも部分、例えば全ては、複数の同心リングに沿って配置され、且つ/又は
- 光学要素の少なくとも部分、例えば全ては、レンズ要素の前面に配置され、且つ/又は
- 光学要素の少なくとも部分、例えば全ては、レンズ要素の背面に配置され、且つ/又は
- 光学要素の少なくとも部分、例えば全ては、レンズ要素の前面と背面との間に配置され、且つ/又は
- 光学要素の少なくとも部分、例えば全ては、複屈折材料で作られ、且つ/又は
- 光学要素の少なくとも部分、例えば全ては回折レンズであり、且つ/又は
- 光学要素の少なくとも部分、例えば全てはπフレネルレンズであり、且つ/又は
- 回折レンズの少なくとも部分、例えば全ては、メタ表面構造を含み、且つ/又は
- 光学要素の少なくとも部分、例えば全ては、多焦点バイナリ構成要素であり、且つ/又は
- 光学要素の少なくとも部分、例えば全てはピクセル化レンズであり、且つ/又は
- 第2の光学機能の屈折力と第3の光学機能の屈折力との間の差は、0.5D以上であり、且つ/又は
- 第1の光学機能の屈折力と第3の光学機能の屈折力との間の差は、0.5D以上であり、且つ/又は
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば全ては、人の目の網膜の前に焦面を生み出すように構成された形状を有し、且つ/又は
- 光学要素の少なくとも部分、例えば全ては、高次光学収差を含む光学機能を有し、且つ/又は
- レンズ要素は、処方部分を有する眼科レンズと、レンズ要素が装用される場合、眼科レンズに着脱可能に取り付けられるように構成された複数の連続光学要素を有するクリップオンとを備える。
【0011】
本発明はまた、本発明による装用者の目の前に装用することが意図されるレンズ要素を提供する方法にも関し、本方法は、
-標準装用状況において、装用者の上記目の異常屈折を矯正する装用者の処方に基づく第1の屈折力を装用者に提供するように構成されたレンズ部材を提供するステップと、
- 複数の連続光学要素を備えた光学パッチを提供するステップと、
- レンズ部材の前面又は背面の一方に光学パッチを配置することによりレンズ要素を形成するステップと、
を含み、
各光学要素は、上記パッチがレンズ部材の前面又は背面の一方に配置された場合、
- 標準装用状況において第2の光学機能及び
- 上記標準装用状況において目の網膜に結像しないという第3の光学機能であって、それにより、目の異常屈折の進行を遅らせる、第3の光学機能
を同時に提供する同時二焦点光学機能及び例えば光軸を有する。
【0012】
本発明は、本発明による装用者の目の前に装用することが意図されるレンズ要素を提供する方法に更に関し、本方法は、レンズ要素を鋳造するステップと、鋳造ステップ中、上記レンズ要素が装用者の上記目の前に装用された場合、
- 標準装用状況において第2の光学機能及び
- 上記標準装用状況において目の網膜に結像しないという第3の光学機能であって、それにより、目の異常屈折の進行を遅らせる、第3の光学機能
を同時に提供する同時二焦点光学機能及び例えば光軸をそれぞれ有する複数の連続光学要素を含む光学パッチを提供するステップと、を含む
【0013】
本発明の非限定的な実施形態について添付図面を参照してこれより説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1a】本発明によるレンズ要素の平面図である。
図1b】本発明によるレンズ要素の全体側面図である。
図2】複数の連続フレネル型光学要素により覆われたレンズ要素の一例を表す図である。
図3】第1の回折レンズの半径方向プロファイルの一例を表す図である。
図4】第2の回折レンズの半径方向プロファイルの一例を表す図である。
図5】πフレネルレンズの半径方向プロファイルの一例を示す図である。
図6a】波長の関数としてのπフレネルレンズプロファイルの回折効率を示す図である。
図6b】波長の関数としてのπフレネルレンズプロファイルの回折効率を示す図である。
図7a】本発明のバイナリレンズ実施形態を示す図である。
図7b】本発明のバイナリレンズ実施形態を示す図である。
図7c】本発明のバイナリレンズ実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図中の要素は簡潔且つ明確にするために示されており、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。例えば、図中の要素の幾つかの寸法は、本発明の実施形態の理解改善に役立つために、他の要素よりも誇張されていることがある。
【0016】
本発明は、レンズ要素、特に、人の目の前に装用されることが意図されるレンズ要素に関する。
【0017】
説明の残りの部分において、「上」、「下」、「水平」、「垂直」、「上方」、「下方」、「前」、「後」のような用語又は相対的な位置を示す他の言葉が使用されることがある。これらの用語は、レンズ要素の装用状況において理解されたい。
【0018】
本発明の文脈において、「レンズ要素」という用語は、コンタクトレンズ、カットされていない光学レンズ、特定の眼鏡フレームに嵌まるような縁を有する眼鏡光学レンズ、又は眼科レンズ及び眼科レンズに位置決めされるように構成された光学デバイスを指すことができる。光学デバイスは眼科レンズの前面又は背面に位置し得る。光学デバイスは光学パッチであり得る。光学デバイスは、眼科レンズに取り外し可能に位置決めされるように構成し得、例えば、眼科レンズを有する眼鏡フレームにクリップされるように構成されたクリップであり得る。
【0019】
本発明によるレンズ要素10は、人用に構成され、上記人の目の前に装用されることが意図される。
【0020】
図1aに表されるように、本発明によるレンズ要素10は、
- 処方部分12と、
- 複数の連続光学要素14と
を備える。
【0021】
処方部分12は、標準装用状況の装用者に、装用者の目の異常屈折を矯正する装用者の上記目の処方に基づく第1の光学機能を提供するように構成される。
【0022】
装用状況とは、例えば、装用時前掲角、角膜-レンズ距離、瞳孔-角膜距離、目の回転中心(CRE)-瞳孔距離、CRE-レンズ距離、及びそり角によって定義される装用者の目に相対するレンズ要素の位置として理解されたい。
【0023】
角膜-レンズ距離は、角膜とレンズの背面との間の第1眼位(通常、水平と解釈される)における目の視軸に沿った距離であり、例えば12mmに等しい。
【0024】
瞳孔-角膜距離は、瞳孔と角膜との間の目の視軸に沿った距離であり、通常、2mmに等しい。
【0025】
CRE-瞳孔距離は、目の回転中心(CRE)と角膜との間の目の視軸に沿った距離であり、例えば、11.5mmに等しい。
【0026】
CRE-レンズ距離は、目のCREとレンズの背面との間の第1眼位(通常、水平と解釈される)における目の視軸に沿った距離であり、例えば、25.5mmに等しい。
【0027】
装用時前掲角は、第1眼位におけるレンズの背面の法線と目の視軸との交点である第1眼位(通常、水平と解釈される)におけるレンズの背面と目の視軸との交点における垂直面における角度であり、例えば、-8°に等しい。
【0028】
そり角は、第1眼位におけるレンズの背面の法線と目の視軸との交点である第1眼位(通常、水平と解釈される)におけるレンズの背面と目の視軸との交点における水平面における角度であり、例えば、0°に等しい。
【0029】
標準的な装用状況の一例は、装用時前掲角-8°、角膜-レンズ距離12mm、瞳孔-角膜距離2mm、CRE-瞳孔距離11.5mm、CRE-レンズ距離25.5mm、及びそり角0°により定義し得る。
【0030】
「処方」という用語は、例えば、目の前に位置するレンズにより、装用者の視覚欠陥を矯正するために、眼科医又は検眼医により決定される、屈折力、非点収差、プリズムによる光のブレの1組の光学特性を意味するものと理解されたい。例えば、近視眼の処方は、屈折力の値及び遠方視の軸との非点収差の値を有する。
【0031】
複数の連続光学要素の各光学要素14は、同時二焦点光学機能及び例えば光軸を有する。
【0032】
各光学要素14の光学機能は、互いに異なり得る。
【0033】
同時二焦点光学機能は、
- 標準装用状況において第2の光学機能及び
- 上記標準装用状況において目の網膜に結像しないという第3の光学機能であって、それにより、目の異常屈折の進行を遅らせる、第3の光学機能
を同時に提供する。
【0034】
第2及び第3の光学機能は、少なくとも、提供する屈折力が互いから異なるという点で異なる。本発明の意味では、2つの屈折力間の差の絶対値が0.1D以上である場合、これらの2つの屈折力は異なる。
【0035】
本発明の状況では、標準装用状況において、装用者の目の異常屈折を矯正する装用者の処方に基づく屈折力と異なる少なくとも1つの屈折力を測定し得る、2つの光学要素をリンクするパスがある場合、2つの光学要素は連続すると見なされるべきである。
【0036】
複数の連続光学要素の各光学要素は、可視スペクトル全体で透明である。
【0037】
図1bに示されるように、本発明によるレンズ要素10は、例えば物体側に向かう凸曲面として形成される、物体側面F1と、例えば物体側面F1の曲率と異なる曲率を有する凹面として形成される、目側表面F2とを備える。
【0038】
本発明の実施形態によれば、連続光学要素の少なくとも部分、例えば全ては、レンズ要素の前面に配置される。
【0039】
連続光学要素の少なくとも部分、例えば全ては、眼科レンズの背面に配置し得る。
【0040】
連続光学要素の少なくとも部分、例えば全ては、レンズ要素の前面と背面との間に配置し得る。例えば、レンズ要素は、連続光学要素を形成する屈折率の異なるゾーンを含み得る。
【0041】
本発明の実施形態によれば、レンズ要素は、屈折エリアを有する眼科レンズと、レンズ要素が装用された場合、眼科レンズに取り外し可能に取り付けられるように構成された複数の連続光学要素を有するクリップオンとを備え得る。有利なことには、人は、遠距離環境、例えば屋外にいる場合、クリップオンを眼科レンズから分離させ、最終的に連続光学要素の何れもない第2のクリップオンで置換し得る。例えば、第2のクリップオンはソーラーティントを有し得る。人はまた、いかなる追加のクリップオンもない眼科レンズを使用することもできる。
【0042】
連続光学要素は、レンズ要素の各表面に、独立してレンズ要素に追加し得る。
【0043】
連続光学要素の少なくとも部分、例えば全ては、定義されたアレイ、例えば、同一の正方形若しくは六角形セルを含むアレイ又はランダムに配置されたセルを含むアレイにあり得る。
【0044】
有利なことには、本発明らは、所与の密度の光学要素で、複数の同心リングに沿って配置された光学要素の少なくとも部分、例えば全てを有することが、レンズ要素の全体視力を増大させることを観測した。例えば、2.00mm超の光学要素の2つの隣接する同心リング間の距離Dを有することは、光学要素のこれらの2つのリング間により大きな屈折エリアを成し遂げられるようにし、したがって、よりよい視力を提供する。
【0045】
連続光学要素は、レンズ要素の中心又は任意の他のエリアのようなレンズ要素の特定のゾーンを覆い得る。
【0046】
実施形態によれば、レンズ要素の中心は光学要素を有さないことがある。例えば、フィッティングクロス(fitting cross)でセンタリングされ、1.5mm超、例えば2mm超であり、5mm未満の半径を有する円盤は、連続光学要素を有さないことがある。
【0047】
レンズ要素の異なる部分は、設計要件に応じて連続光学要素を有さないことがある。
【0048】
本発明の実施形態によれば、処方部分は、複数の光学要素として形成される部分以外の部分として形成される。
【0049】
本発明の実施形態によれば、レンズ要素は装用者の目に搭載されることが意図されるコンタクトレンズであり、レンズ要素の物体面の全面は、複数の連続光学要素で覆われる。
【0050】
本発明の好ましい実施形態によれば、レンズ要素は、眼鏡フレームに搭載されることが意図される縁付きレンズ要素であり、レンズ要素の少なくとも1つの面の表面全体は、複数の連続光学要素で覆われる。
【0051】
そのような実施形態の一例を図2に示し、図2では、レンズ要素の面は複数の連続フレネル型光学要素で完全に覆われている。
【0052】
そのような実施形態は、レンズ要素の表面に不連続的に拡散した光学要素を用いてより容易に製造できるようにする。
【0053】
標準装用状況での第2の光学機能の屈折力は、0.25ジオプタ以下であり得、例えば、0.1ジオプタ以下である。本発明の実施形態によれば、第2の光学機能の屈折力は0ジオプタに等しい値であり得る。
【0054】
したがって、処方部分と組み合わせられた各光学要素は、標準装用状況で2つの屈折力を提供し得る。第1及び第2の光学機能に対応する屈折力は、処方された屈折力に近い屈折力、すなわち、0.25ジオプタ以下の差を有する屈折力を提供する。
【0055】
第1及び第3の光学機能に対応する屈折力は、目の網膜以外に光線を結像する屈折力を提供する。
【0056】
連続光学要素の密度又は度数量は、レンズ要素のゾーンに応じて調整し得る。通常、連続光学要素はレンズ要素の周縁に位置決めされて、近視コントロールにおける連続光学要素の効果を増大させ、例えば、網膜の周縁形状に起因した周縁デフォーカスを補償し得る。
【0057】
本発明の好ましい実施形態によれば、2mm~4mmの半径を有する円形ゾーンであって、上記半径+5mm以上のレンズ要素の光学中心の距離に配置された幾何中心を有するあらゆる円形ゾーンについて、上記円形ゾーン内部に配置された光学要素の部分の面積の和と上記円形ゾーンの面積との比率は、20%~70%である。
【0058】
連続光学要素は、直接表面加工、成形、鋳造若しくは射出、エンボス加工、薄膜加工、又はフォトリソグラフィ等のように様々な技術を使用して作製することができる。本発明によれば、特にレンズ要素の表面の1つが平坦である場合、フォトリソグラフィが特に有利であり得る。
【0059】
本発明の実施形態によれば、連続光学要素の少なくとも1つ、例えば全ては、人の目の網膜の前に焦面を生み出すように構成された形状を有する。換言すれば、そのような非連続光学要素は、光束が集中するセクション平面がある場合、そのようなあらゆるセクション平面が人の目の網膜の前に配置されるように構成される。
【0060】
本発明によれば、連続光学要素は多焦点屈折光学機能を有する。
【0061】
本発明の意味では、光学要素は、二焦点面、すなわち、2つの表面屈折力を有する面、三焦面、すなわち、3つの表面屈折力を有する面、例えば、非球面を含む連続変化する表面屈折力を有する累進多焦点面を含む「多焦点屈折マイクロレンズ」である。
【0062】
本発明の実施形態によれば、連続光学要素の少なくとも1つ、例えば全ては複数の材料で作られる。特に、光学要素の屈折率はレンズ要素の材料の屈折率と異なり得る。
【0063】
本発明の実施形態によれば、連続光学要素の少なくとも1つ、例えば全ては複屈折材料で作られる。換言すれば、光学要素は、偏光及び光の伝播方向に依存する屈折率を有する材料で作られる。複屈折は、材料により示される屈折率間の最大差として定量化し得る。
【0064】
本発明の実施形態によれば、光学要素の少なくとも部分、例えば全ては回折レンズである。
【0065】
例えば、光学要素の少なくとも部分、例えば全ては、2つのピクセルのうち1つが各光学機能の一方に関連する、ピクセル化レンズ等のピクセル化光学要素である。ピクセル化レンズの例は、非特許文献1に開示されている。
【0066】
本発明の実施形態によれば、連続光学要素の少なくとも1つ、例えば全ては、不連続面、例えばフレネル面等の不連続性及び/又は不連続性を有する屈折率プロファイルを有する。
【0067】
図3は、本発明に使用し得る連続光学要素の第1の回折レンズ半径方向プロファイルの一例を表す。
【0068】
図4は、本発明に使用し得る連続光学要素の第2の回折レンズ半径方向プロファイルの一例を表す。
【0069】
回折レンズは、図5に見られるように、位相関数ψ(r)が公称波長λにおいてπ位相跳躍を有するフレネルレンズであり得る。位相跳躍が2πの倍数値である単焦点フレネルレンズとは対照的に、明確にするために「πフレネルレンズ」という名称をこれらの構造に与え得る。位相関数が図5に表示されるπフレネルレンズは、主に、λ=550nmでジオプタ度数P(λ)=0δ及び正のもの、例えばP(λ)=3δに関連する2つの回折次数(次数0及び+1)において光を回折する。
【0070】
この設計の利点は、装用者の処方に捧げられた回折次数が色性を有さず、一方、近視の進行を遅らせる第3の光学機能の提供に使用される回折次数が非常に色性を有することである。
【0071】
光学要素の典型的なサイズは2mm以上且つ2.5mm以下である。実際には、装用者の目の瞳孔サイズ未満の光学要素サイズを維持することが有利であることを本発明者らは観測した。
【0072】
例えば、0次数及び+1次数の回折効率は公称波長λにおいて約40%である。
【0073】
装用者の処方に対応する回折次数の効率を上げるために、以下を考慮し得る。
【0074】
回折次数0の効率を上げるために、λの値を下げ得る。図6aはλ=550nmでの回折効率を示し、図6bはλ=400nmの場合の回折効率を示す。この場合、可視スペクトル全域で次数0の回折効率が一般により高く、一方、次数+1の効率がより低いことに気づき得る。この場合、位相跳躍が適用される屈折位相関数のジオプタ度数が、図6aにおける1.5δの代わりに、λ=550nmの場合、1.5400/550≒1.1δに等しい値であるべきである。この結果、図5のリングは拡幅化される。
【0075】
追加又は代替として、図5に示された構成の2つからの1つのリングをゼロに設定し得る。この場合、残りのフレネルリングに起因して同時二焦点機能はなお存在し、一方、0に設定されたリングは、0δジオプタ度数より重要な割合を誘導する。
【0076】
λ=λにおいて図5の位相関数を得、可視スペクトルにおいてより均一な効率を得、且つ/又は2つの主要回折次数のうちの一方に他方との関連で特権を与えるために、2つの異なる屈折率及び異なるアッベ数を有する2つの材料で作られたフレネル構造を適用することを更に考慮し得る。
【0077】
重ねられるフレネル構造との他の組合せを考慮することもできる。
【0078】
本発明の実施形態によれば、連続光学要素の少なくとも1つ、例えば全ては、多焦点バイナリ構成要素、例えば多焦点バイナリレンズである。バイナリレンズは、約1μmの不連続高さを有する半径方向プロファイルを有し得る。
【0079】
例えば、図7aに表されるように、バイナリ構造は主に、-P/2及びP/2として示され、2つの主要回折次数に対応する2つのジオプタ度数を表示する。ジオプタ度数がP/2である図7bに示されるような回折構造に関連する場合、図7cに表される最終構造はジオプタ度数0δ及びPを有する。示された事例はP=3δに関連する。
【0080】
有利なことには、-1次数及び1次数の回折効率は公称波長において約40%であり、加えて、回折効率は可視スペクトル全てにわたり高いまま、通常35%超である。
【0081】
本発明の実施形態によれば、回折レンズの少なくとも部分、例えば全ては、メタレンズとも呼ばれるメタ表面構造を有する。
【0082】
例えば、レンズ要素は、P1は0δであり、制御された色収差を有するジオプタ度数P1、P2の同時二焦点メタレンズのアレイを備え得る。
【0083】
通常、P1=0δは、各波長で同じ焦点を有することを意味する無色又は部分的に無色であることができる。
【0084】
P2の色収差は、有利なことには制御することができ、例えば、焦点距離及び効率は波長に依存することができる。
【0085】
各メタレンズの色収差は、レンズ要素の表面上のメタレンズの位置:近見視、中見視、又は遠見視の関数として異なることができる。
【0086】
各メタレンズ自体は、サブ波長要素のアレイで作製することができる。
【0087】
例えば、サブ波長要素は、円形、矩形、又は楕円形等の任意の形状、任意の寸法を有することができ、等距離であり、同じ方向に全て又は互いと交代で位置合わせすることができる。
【0088】
メタレンズのサブ波長要素は高誘電材料で作られるべきである。
【0089】
各メタレンズは「サブメタレンズ」の組合せで作ることができる。例えば、二焦点性は、空間多重化又は幾つかのサブメタレンズの積層による波長の関数として得ることができる。
【0090】
二焦点性は、空間多重化又は幾つかサブメタレンズの積層により偏光の関数として得ることができる。
【0091】
本発明の実施形態によれば、連続光学要素の少なくとも1つ、例えば全ては、高次光学収差を有する光学機能を有する。例えば、光学要素は、ゼルニケ多項式により定義される連続面で構成されるマイクロレンズである。
【0092】
本発明について、全般的な本発明の概念を限定せずに、実施形態を用いて上述した。
【0093】
例示的な上記実施形態を参照して、多くの更なる変更及び変形が当業者に明らかになり、例示的な上記実施形態は単なる例として与えられ、本発明の範囲の限定を意図せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ決定される。
【0094】
特許請求の範囲において「備える、有する、含む(comprising)」という言葉は他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。異なる特徴が相互に異なる従属クレームに記載されているという事実だけでは、これらの特徴の組合せが有利に使用することができないことを示さない。特許請求の範囲における任意の参照符号は、本発明の範囲の限定として解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0095】
10 レンズ要素
12 処方部分
14 光学要素
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
【外国語明細書】